監修=大橋裕一連載.MyboomMyboom第37回「寺田佳子」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)連載.MyboomMyboom第37回「寺田佳子」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)自己紹介寺田佳子(てらだ・よしこ)広島市立広島市民病院眼科私は1994年に岡山大学を卒業し,母校の眼科に入局しました.関連病院での研修後に大学院へ進学,神経解剖学教室(当時)にもお世話になり,「実験」をかじり始めました.その後,2000年から2年間,ボストンのMassachusettsEye&EarInfirmaryのJoanWMiller先生の下で脈絡膜新生血管の動物モデルやPDTなどの仕事に携る機会をいただきました.臨床的には大学院時代から白神史雄先生の下で黄斑部疾患の診療を始め,現在に至っています.残念ながら,米国滞在中に自分がいかに「creativeかつuniqueでない」か気づいてしまいました.現在は広島でどっぷり臨床と教育にいそしむ毎日です.眼科のmyboom:「四十の手習い」さて,プロフィールでも書いたとおり,大学院の頃から黄斑疾患の診療を始め,今でもこれが自分の中ではもっとも興味のあることです.当時はSLOでのICG造影を安定して行うことが現在よりやや困難であり,被験者の方に何度もお願いしながら時間をかけて行っていました.造影のビデオ(これだけでなんだか前時代的ですね)をコマ送りしながら栄養血管を探し,見つかれば栄養血管凝固,しかし圧倒的多数ではそんなものははっきりせず,中心窩下に新生血管を見つけるとその後には絶望的な外来が待っていました.時代は進み,現在は抗VEGF療法花盛りとなりました.画像診断も発達し,(89)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY再生治療も現実的になりつつあるなど以前とはうって変わった外来診療になったと思います.OCTなどから得られる情報は大量かつ繊細ですが,ついつい画像に頼ってしまい眼底を見ることがおざなりになってしまい,反省しきりです.まぶしがる患者さんと根競べのように眼底を観察することがかなり減ってきましたが,今一度眼底をしっかり見ることを心がけるようにしています.が,だんだんどれが本当に「何もない」黄斑なのかわからない気がしてきました.日々の外来では治験のようにきっちりした治療スケジュールを実践することはむずかしいし,もしかしたら必要ないのかもしれません.しかし,そうするとデータがとれず,これがちょっとジレンマです.というわけで,これまで私の外来はかなり患者平均年齢が高かったのですが,ここ5年ほどすさまじく平均年齢が下がり,ドラ○もんやアン○ンマンと一緒に診療をしています.というのも,当院は広島医療圏では最大級の周産期母子医療センターを有しており,小児循環器,小児外科,形成外科などもあるため,いわゆる小児病院ではありませんが,眼科にもたくさんの子供たちがやってくるからです.小児を得意としていた同僚が退職して以来,私も実にさまざまな子供たちをみる機会を得ることになりました.本来ならば不惑の40代を過ごす予定が四十の手習い(正しくは「六十の手習い」で,三十や四十ではまだまだ若造なのです!)が始まったのです.とくに未熟児診療はこれまで超低出生体重児が日常的にいる病院に勤務しなかったこともあり,最初は手探りでした.患者さんに迷惑をかけるわけにもいかず,まさにこの点では研修医になった気分でもう一度勉強を始めました.いつも,命の危険が減った頃に視覚についての少し厳しい話をご家族にしないといけないのが心苦しいところです.複雑な子供の手術を手がけるにはまだ道のりあたらしい眼科Vol.32,No.2,2015261写真2私の手のひらに乗せた3尾の小鰯手袋のサイズは6です.写真3まさに食べられる前の小鰯一体何尾が犠牲になったのかわかりません.写真1診察グッズドラ○もんやアン○ンマンと「黄斑変性チェックシート」が並んでいます.は遠いですが,できる限りの医療を広島の子供たちに提供できるように,もう少し頑張ってみたいと思っています.家でのmyboom:「ヒカリモノ」私のお気にいりは「ヒカリモノ」です.というと,ちょっとゴージャスな生活を想像されるかもしれません.私の好きなヒカリモノは,貴金属ではなく,アジやイワシなどのいわゆる「青魚」です.元々広島の出身で,その後の生活も岡山,香川と瀬戸内ばかり.ちなみにボストンも海沿いであり,常に魚が生活の中にありました.手術前の患者さんにアレレルギーの問診をすると,結構な確率で「サバで蕁麻疹が出ました」「青魚は食べられません」と答えられます.これを聞くと,こっそり心の中で「残念ね」と思ってしまいます.DHAやEPAもたっぷりです.釣りが趣味というわけではなく,もっぱら食べる専門です.美味しくいただけるお店の紹介は他にお願いするとして,魚さえ手に入れば家でも結構いろいろできます.広島といえば小鰯.天麩羅も格別ですが,このあたりでは小鰯を刺身にします.8~10cm程度の小さなカタクチイワシ(Engraulisjaponicus,カタクチイワシ科)を刺身にしたもので,たっぷりの青ネギと生姜醤油で食べるとご飯もお酒も進みます(ちなみに,マイワシ(Sardinopsmelanostictus)も美味です262あたらしい眼科Vol.32,No.2,2015が,こちらはニシン科です).小さい魚で足がとてもはやいのが難点ですが,新鮮な小鰯があれば誰でも簡単に調理できるので興味のある方にはお勧めです.ティースプーンで身をこそげ,しっかり水で洗います.「小鰯は7回洗えば鯛の味」とこのあたりでは教えられます.冬は手が凍りそうになりますが,これを頑張ると料亭の味(見た目は保障できません…)に近づけます.もう一つ,最近の興味は魚を酢で〆ることです.最初に塩をすると思い込んでいましたが,適度に脱水できればよいわけですから,サバなど素人には砂糖を使うほうが失敗がありません.季節や脂のノリ具合で酢の種類や濃度,〆る時間も変えたほうが上手くいくようです.でも,実験ノートはつけていないので,なかなか同じ味が再現できません….こんな話をしていると,魚をさばくのは大変ではないか,といわれますが,大丈夫ですよ.魚は痛いとか言いませんし,自分のペースでやれば良いのですから.今回はあまり学問的な内容にならずすみません.次のプレゼンターは,私が心から尊敬する筑波大学の加治優一先生です.ボストン滞在中に知り合いました.眼科臨床のみならず多角的に研究を進めておられ,いつも眼鏡の奥の瞳がきらきらしている先生です.きっと研究の魅力満載なお話が読めると思います.どうぞよろしくお願いいたします.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.(90)