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新しい治療と検査シリーズ 224.円錐角膜に対するマイクロ波による角膜熱形成後のジグザグ全層角膜移植術

2015年1月30日 金曜日

新しい治療と検査シリーズ224.円錐角膜に対するマイクロ波による角膜熱形成後のジグザグ全層角膜移植術プレゼンテーション:稗田牧京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学コメント:島﨑潤東京歯科大学市川総合病院眼科.バックグラウンド円錐角膜は非炎症性,進行性の角膜変形性疾患で,思春期に発症し徐々に進行するが,30歳前後に進行は停止することが多い.初期には眼鏡,ソフトコンタクトレンズで矯正できるが,変形が進めばハードコンタクトレンズ(HCL)でないと矯正視力が得られなくなる.HCLでも矯正できなくなれば角膜移植の適応となる.円錐角膜の全層角膜移植は,透明治癒の長期予後は良好だが,術後の乱視は平均5~6Dと比較的強いことが報告されている1).これは変形した角膜をトレパンで円形に打ち抜いてもドナー角膜とマッチせず,歪みを作ることが原因と考えられる.Businらは角膜中央部をバイポーラで焼灼後,トレパンで打ち抜く術式を開発し,術後の角膜屈折力と乱視の軽減に効果があることを報告している2).フェムトセカンドレーザーを用いたジグザグ全層移植は,術後早期の視力回復と乱視軽減効果があり,ドナー図1マイクロ波による角膜中央部の熱形成マイクロ波により,内径3.8mm・外径4.3mmの範囲を角膜表面から250μmまで65℃に上昇させ,ドーナツ状に角膜中央部を熱形成する.とホストの接合部がなめらかで,角膜ヒステレーシスは正常眼に近いなど多くのメリットを有する3).しかしながら,進行した円錐角膜においてはホストの角膜変形の影響は避けがたく,術後乱視が大きくなる傾向にあった.そこで筆者らは,進行した円錐角膜眼に対して,マイクロ波による熱形成4)を行った後にジグザグ全層角膜移植を行い,良好な成績を得ているので紹介する..マイクロ波角膜熱形成の原理筆者らが使用しているのはKeraflexR(Avedro社)という近視矯正用として開発された機器である.眼球にサクションリングを固定して,角膜中央にセンタリングしたあと,内径3.8mm・外径4.3mmのドーナツ状のプローブを角膜表面に押し当てて(図1)フットスイッチを押すだけで,簡単に角膜中央部を熱凝固できる.マイクロ波で角膜表面から250μmの深さまで65℃に上昇させ,コラーゲン線維が収縮することで角膜中央部が平図2熱形成がされた角膜にフェムトセカンドレーザーで全層切開をした術中所見熱形成の瘢痕が瞳孔を囲む白い部分.レーザーで全層切開しても前房は保たれている.(109)あたらしい眼科Vol.32,No.1,20151090910-1810/15/\100/頁/JCOPY 表1通常のジグザグ移植との比較本術式裸眼視力改善傾向眼鏡視力改善角膜屈折力平坦化屈折度遠視化乱視減少傾向坦化する.この効果は一過性のものであり,角膜移植をしなければ術後年余にわたって元の形状に戻ってゆく..使用方法マイクロ波角膜熱形成は角膜移植の約1カ月前に点眼麻酔下に手術室で行っている.術後に中央部の角膜上皮は脱落するので,治療用ソフトコンタクトレンズを乗せて上皮障害がなくなるまでコンタクトは継続する.術後炎症が強いので,最初の1週間はベタメタゾンと抗菌薬点眼を行う.熱形成後2週間以上経過すれば,フェムトセカンドレーザーを用いたジグザグ全層移植を通常と同様に行うことができる(図2).ドーナツ状に熱凝固された部位は白斑となっており,レーザー照射のセンタリングはこの白斑の中央に合わせるとよい.縫合は8糸の端端縫合と16針の連続縫合で行う.円錐角膜への通常のジグザグ切開では,場所によって角膜が薄く,ジグザグの2段目がほとんどなくなることもある.熱形成することで中央が平坦化するだけでなく,薄い角膜が中央に引き寄せられ,周辺角膜がほぼ正常な厚みとなるので,ジグザグ形状が正常角膜に近い形に作製できる..本方法の良い点(表1)円錐角膜眼は,トレパン全層角膜移植でグラフトのサイズを同一にすると著しく近視化し,強い乱視が出やすい.熱形成することで,ジグザグ全層角膜移植を同一サイズのグラフトで入れ替えても,術後角膜は正常に近く,乱視も減り,裸眼視力が改善する傾向にある.とくに眼鏡矯正視力は早期から改善する.術後患者の自覚的な反応も良く,その改善は明らかと思われる.文献1)GrossRH,PoulsenEJ,DavittSetal:Comparisonofastigmatismafterpenetratingkeratoplastybyexperiencedcorneasurgeonsandcorneafellows.AmJOphthalmol123:636-643,19972)BusinM,ZambianchiL,FranceschelliFetal:Intraoperativecauterizationofthecorneacanreducepostkeratoplastyrefractiveerrorinpatientswithkeratoconus.Ophthalmology105:1524-1529;discussion1529-1530,19983)稗田牧,脇舛耕一,川崎諭ほか:前眼部光干渉断層計によるフェムトセカンドレーザーを用いたジグザグ形状全層角膜移植とトレパン全層角膜移植における角膜後面接合部の比較.あたらしい眼科28:1197-1201,20114)BarsamA,PatmoreA,MullerDetal:Keratorefractiveeffectofmicrowavekeratoplastyonhumancorneas.JCataractRefractSurg36:472-476,2010.「円錐角膜に対するマイクロ波による角膜熱形成後のジグザグ全層角膜移植術」へのコメント.角膜クロスリンキングや角膜内リングなど,円錐角トセカンドレーザーを用いた全層角膜移植の前に,熱膜に対する新しい治療法がつぎつぎに出現し,以前よ形成を行うことで移植後の角膜形状改善を図る方法でり早期に外科的治療に踏み切るケースも増えてきた.ある.この方法は,器械さえあれば難易度は高くなしかしながら,進行例に対する角膜移植は今でも最後く,安全性も高いので有用性は高いと思われる.今後の手段として有用であり,その予後改善に向けてさまは,どの程度進行した円錐角膜に熱形成の併用が望まざまな工夫が行われている.角膜熱形成は,円錐角膜しいのか,フェムトセカンドレーザーを用いない角膜の角膜形状矯正法として以前より行われてきたが,術移植にも有用であるのかなどの検討がなされることを後角膜形状の予測性が悪いことと,屈折の戻りが大き期待する.いことが欠点であった.今回示された方法は,フェム☆☆☆110あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(110)

私の緑内障薬チョイス 20.配合剤か? 多剤併用か?

2015年1月30日 金曜日

連載⑳私の緑内障薬チョイス企画・監修山本哲也連載⑳私の緑内障薬チョイス企画・監修山本哲也20.配合剤か?多剤併用か?澤田明岐阜大学医学部眼科学教室2010年にわが国で初めて眼圧下降薬の配合剤ザラカムRが登場して以来,つぎつぎと配合剤が上市されている(表1).わが国では正常眼圧緑内障が多いため,プロスタグランジン関連薬以外の眼圧下降薬はその効果がわかりにくいことが多い.配合剤は利便性には非常に優れたところが確かにあるが,1剤1剤の効果を判定しながら薬物追加をするといった理念は失われないのだろうか?自験例での考察現在,眼圧下降薬における配合剤のシェアはうなぎのぼりのようであるが,本来はすべての緑内障患者に処方されるべきではない.配合剤と単剤2種の眼圧下降効果を比較した非劣性試験において,統計学的には両者はほぼ同等となっている.だが,たとえばプロスタグランジン製剤とb遮断薬の合剤では,従来1日2回点眼であったb遮断薬が実際のところ1日1回点眼となっている.したがって,眼圧下降効果はやや劣ると考えるのが自然である.図1に当科で施行したA配合剤とその併用2剤とのクロスオーバー試験(preliminaryresults)11症例の結の論文1)をみても,そうした傾向は変わらないものが多い(図2).1mmHg未満であるので問題にならないと一部の読者は思うかもしれないが,現在,一番眼圧下降作用が強いプロスタグランジン関連薬でさえ,正常眼圧緑内障症例では平均2.5mmHg程度しか眼圧下降を得ることができない2)ことから考えると,この眼圧差は無視できないものだと思う.171615平均14.813平均14.6眼圧(mmHg)果を示す.平均年齢は65.3歳,すべて女性が対象である.眼圧測定はほぼ同時刻にGoldmann圧平眼圧計で14施行した.全員,当院緑内障外来通院中の患者であり,平均14.2平均13.5点眼をしっかり守る方々だと理解していただいてさしつ12平均14.0かえないと思う.統計学的に有意な差は,A配合剤と211種併用時の眼圧で認められなかった.しかしながら,眼BaselineA配合剤2種併用A配合剤2種併用1カ月2カ月圧実測値の平均をみてみると,A配合剤使用時と2種図1自験例の結果併用時の眼圧差は0.7~0.8mmHgとなっている.海外Baselineにおいては,A配合剤1種あるいは併用2種使用.表1わが国で利用可能な眼圧下降薬の配合剤商品名発売年使用回数/日内容併用時回数/日ザラカムRデュオトラバRタプコムRコソプトRアゾルガR2010201020142010201311122ラタノプロスト+(0.5)チモロールトラボプロスト+(0.5)チモロールタフルプロスト+(0.5)チモロール(1)ドルゾラミド+(0.5)チモロールブリンゾラミド+(0.5)チモロール33354本欄の記載内容は,執筆者の個人的見解であり,関連する企業とは一切関係ありません(編集部).(107)あたらしい眼科Vol.32,No.1,20151070910-1810/15/\100/頁/JCOPY ■B配合剤群(n=255)■2種併用群(n=247)ベースライン眼圧:25.4±2.325.2±2.4AveAM8PM0PM4眼圧変化値(mmHg)-12-11-10-9-8-7-6-5-4-3-2-10-8.7-9.0-9.1-9.5-8.7-9.1-8.2-8.3p=0.15p=0.12p=0.06p=0.78図2B配合剤1種と併用2種使用の眼圧比較(文献1より改変引用)では,配合剤って悪いの?配合剤使用は2種併用よりも眼圧下降効果は総じて劣ることが多いようだが,配合薬使用のメリットもまた多い.現在,プロスタグランジン関連薬,b遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬にa2刺激薬を加えた4種類の眼圧下降薬が緑内障薬物治療の主流を形成している.もしこの4種を点眼併用すると,少なく見積もっても1日6回点眼しなければならない計算となるが,配合剤使用により点眼回数を減少させれば,アドヒアランスを向上させることができる.また,3種類の点眼薬投与が,薬物治療と手術療法選択との境界と考えている臨床家が多いが,そうした症例での配合剤切り替えは,もう1種類の追加点眼薬スペースを確保することになる.さらに,ほとんどの点眼薬に含有されている塩化ベンザルコニウムによる副作用軽減にもつながる.しかしながら,単に配合剤に点眼変更するのみでアドヒアランスが向上するというのは,医療側の思い込みで●ある.アドヒアランスを向上させるためには,点眼数や点眼回数のほかに,医師と患者のコミュニケーションや治療目的の理解といった患者.医師間の信頼関係にかかわる要素がからんでくる.植田ら3)は,すでに眼圧下降薬にて加療されている緑内障患者に対し,医師による小冊子を用いた疾患に関する説明(1カ月に1度,3カ月間)を行い,介入後のほうが眼圧下降効果は大きかったと報告している.配合剤の本来の目的がアドヒアランスを向上させ,さらなる確実な眼圧下降を得るところにあるため,治療目的や点眼変更の必要性をしっかり説明したうえで処方するのが望ましい.また,なかなかむずかしい問題ではあるが,配合剤変更が効果的な患者を見きわめることも重要である.そうした患者.医師間のコミュニケーションにかかわる問題をおろそかにすると,それは単なる配合剤の“乱用”にほかならなくなり,逆にアドヒアランスを低下させる要因となる.文献1)DiestelhorstM,LarssonLI:European-CanadianLatanoprostFixedCombinationStudyGroup:A12-week,randomized,double-masked,multicenterstudyofthefixedcombinationoflatanoprostandtimololintheeveningversustheindividualcomponents.Ophthalmology113:70-76,20062)SawadaA,YamamotoT,TakatsukaN:Randomizedcrossoverstudyoflatanoprostandtravoprostineyeswithopen-angleglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmol250:123-129,20123)植田俊彦,笹元威宏,平松類ほか:緑内障における患者教育が眼圧下降とその持続に及ぼす効果.あたらしい眼科28:1491-1494,2011108あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(108)

眼瞼・結膜セミナー:結膜組織の解剖と病理を知ろう

2015年1月30日 金曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人1.結膜組織の解剖と病理を知ろう小幡博人自治医科大学眼科学講座結膜は眼表面を構成する粘膜で,正常では杯細胞(gobletcell)を含む重層立方(円柱)上皮をもつ.翼状片やドライアイなどの病的状態において,この上皮は重層扁平上皮に化生し,杯細胞が消失する.ヘルシーな結膜とは杯細胞を含む常に濡れた粘膜である.●はじめに結膜は眼球と眼瞼を結ぶ薄い粘膜組織である.また,角膜とともに眼表面を構成する.結膜の表面積は角膜の約17倍といわれ1),眼球を守るために広大な結膜が存在しているようにも想像される.●結膜上皮は何上皮?結膜は上皮と粘膜固有層からなる.結膜上皮は3.5層の重層立方ないし円柱上皮である2.5).重層扁平上皮と記載している書物も多いが,それは誤りである.重層扁平上皮とは表層の細胞が扁平になっているものをいうが,結膜の表層の細胞は扁平ではなく立方形である.重層扁平上皮である角膜上皮と比較するとよくわかる(図1).●結膜は杯細胞を含む粘膜結膜上皮内に杯細胞(gobletcell)が散在していることが結膜の特徴である.杯細胞は上皮細胞間に存在し,ab結膜上皮は重層立方上皮角膜上皮は重層扁平上皮ab図1結膜上皮と角膜上皮の違い図2結膜の杯細胞結膜上皮(a)は3.5層の重層立方ないし円柱上皮であるが,杯細胞はPAS染色(a)やAlcianblue染色(b)に陽性であり,角膜上皮(b)は表層の細胞が扁平な5.6層の重層扁平上皮で多種多様な粘液を分泌していることがわかる.ある.結膜上皮は杯細胞(矢印)を含むことも特徴である.(105)あたらしい眼科Vol.32,No.1,20151050910-1810/15/\100/頁/JCOPY 106あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(106)粘液(ムチン)を分泌する.このムチンは,涙液の保持,潤滑剤,異物や微生物の除去など眼表面を保護する役割を果たしている.杯細胞は中性ムコ多糖を染めるPAS染色や酸性ムコ多糖を染めるAlcianblue染色に陽性であり,多種多様な粘液を分泌している(図2).●扁平上皮化生とは?化生(metaplasia)とは,分化した細胞が別の系統の分化した細胞に変化することである.気管支を例にとると,正常な気管支上皮は線毛円柱上皮であるが,喫煙者の気管支上皮では扁平上皮化生(squamousmetaplasia)を生じている(図3).これは,線毛円柱上皮が喫煙という外的刺激から身を守るために重層扁平上皮に化けたということである.●結膜上皮は容易に扁平上皮化生し,杯細胞が消失する結膜上皮も,瞼裂斑や翼状片などの隆起性病変やドライアイなどで容易に扁平上皮化生を起こす.扁平上皮化生を生じた結膜上皮は,杯細胞が消失し,表層の上皮が扁平になっている(図4).結膜疾患の病理標本でみる結膜上皮は重層扁平上皮の形態を示すことが多いが,これは病的な結膜をみているのである.●ヘルシーな結膜とは?杯細胞が消失し,扁平上皮化生した結膜はヘルシーな結膜とは言いがたい.眼表面が常にウエットでヘルシーであるために,涙液と結膜杯細胞の存在は必要不可欠なのである.文献1)WatskyMA,JablonskiMM,EdelhauserHF:Comparisonofconjunctivalandcornealsurfaceareasinrabbitandhuman.CurrEyeRes7:483-48,19882)SnellRS,LempMA:ClinicalAnatomyoftheEye.2nded.BlackwellScience,Malden,19983)小幡博人:結膜の正常構造.大鹿哲郎(編):眼科学.第2版.文光堂,東京,p44-47,2011図4結膜の扁平上皮化生翼状片の標本であるが,表層の上皮は扁平化し,角膜上皮と同様の重層扁平上皮となっている.杯細胞が消失していることに注目.図3気管支の扁平上皮化生正常な気管支上皮は線毛円柱上皮(a)であるが,喫煙者の気管支上皮では扁平上皮化生(b)を生じており,まったく異なる上皮に化けている.ab106あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(106)粘液(ムチン)を分泌する.このムチンは,涙液の保持,潤滑剤,異物や微生物の除去など眼表面を保護する役割を果たしている.杯細胞は中性ムコ多糖を染めるPAS染色や酸性ムコ多糖を染めるAlcianblue染色に陽性であり,多種多様な粘液を分泌している(図2).●扁平上皮化生とは?化生(metaplasia)とは,分化した細胞が別の系統の分化した細胞に変化することである.気管支を例にとると,正常な気管支上皮は線毛円柱上皮であるが,喫煙者の気管支上皮では扁平上皮化生(squamousmetaplasia)を生じている(図3).これは,線毛円柱上皮が喫煙という外的刺激から身を守るために重層扁平上皮に化けたということである.●結膜上皮は容易に扁平上皮化生し,杯細胞が消失する結膜上皮も,瞼裂斑や翼状片などの隆起性病変やドライアイなどで容易に扁平上皮化生を起こす.扁平上皮化生を生じた結膜上皮は,杯細胞が消失し,表層の上皮が扁平になっている(図4).結膜疾患の病理標本でみる結膜上皮は重層扁平上皮の形態を示すことが多いが,これは病的な結膜をみているのである.●ヘルシーな結膜とは?杯細胞が消失し,扁平上皮化生した結膜はヘルシーな結膜とは言いがたい.眼表面が常にウエットでヘルシーであるために,涙液と結膜杯細胞の存在は必要不可欠なのである.文献1)WatskyMA,JablonskiMM,EdelhauserHF:Comparisonofconjunctivalandcornealsurfaceareasinrabbitandhuman.CurrEyeRes7:483-48,19882)SnellRS,LempMA:ClinicalAnatomyoftheEye.2nded.BlackwellScience,Malden,19983)小幡博人:結膜の正常構造.大鹿哲郎(編):眼科学.第2版.文光堂,東京,p44-47,2011図4結膜の扁平上皮化生翼状片の標本であるが,表層の上皮は扁平化し,角膜上皮と同様の重層扁平上皮となっている.杯細胞が消失していることに注目.図3気管支の扁平上皮化生正常な気管支上皮は線毛円柱上皮(a)であるが,喫煙者の気管支上皮では扁平上皮化生(b)を生じており,まったく異なる上皮に化けている.ab

抗VEGF治療:加齢黄斑変性に対するTreat and Extend法

2015年1月30日 金曜日

●連載抗VEGF治療セミナー監修=安川力髙橋寛二12.加齢黄斑変性に対する細川海音森實祐基岡山大学眼科TreatandExtend法加齢黄斑変性に対する抗VEGF薬の投与方法について,これまでにさまざまな提唱がなされているが,現在のところ一定の見解には至っていない.本稿では,抗VEGF薬の投与方法の一つであるTreatandExtend法について概説する.抗VEGF薬の投与方法加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)に対する抗VEGF(vascularendothelialgrowthfactor)療法の維持期における投与方法は,事前に計画した間隔で投与を行うプロアクティブ投与(計画的投与)と病態の悪化がみられてから投与を行うリアクティブ投与(事後対応的投与)に分類される.プロアクティブ投与はさらに,個々の病態によらず一定の投与間隔で抗VEGF薬を投与するFixedDose法と,個々の患者に合わせて投与間隔を変更するTreatandExtend法に分類される.リアクティブ投与はPRN(prorenata:必要に応じて)法と呼ばれることが多い.FixedDose法については過去の臨床試験の結果1~3)から,1カ月ごとまたは2カ月ごとの投与によって,導入期に改善した視力を2年間維持できることが示されている.しかし,実際の臨床において,すべての患者に毎月投与を行うことは患者,医師ともに負担が大きく現実的ではない.また,現在わが国ではPRN法が広く行われているが,毎月診察が必須であり,患者,医師ともに負担の大幅な軽減には至らない.実際の臨床では治療のタイミングが遅れることも多く,臨床試験で示されたような有効性が得られないことも指摘されている.TreatandExtend法の概要TreatandExtend法は,プロアクティブかつ個別化された維持期の投与方法として提唱され4),現在,欧米を中心に普及してきている投与方法である.TreatandExtend法では,滲出所見の有無にかかわらず診察日に計画的に抗VEGF薬を投与し,再発を認めない限り1ないし2週間ずつ投与および診察の間隔を延長する.そして,再発を認めた場合は1ないし2週間ずつ投与およ(103)び診察の間隔を短縮する.その結果,滲出性変化のない状態を維持するためにもっとも適切な投与および診察の間隔を決定することが可能となる(図1).現在のところ,延長および短縮の判断基準とその期間,最大投与間隔などについては施設によって違いがみられる.抗VEGF薬投与の導入期を設けていない施設もある.TreatandExtend法の治療成績Oubrahamらは,AMD患者に対してラニビズマブを投与し,TreatandExtend法(n=38眼)とPRN法(n=52眼)による治療成績をレトロスペクティブに比較検討した.その結果,1年の経過観察時点で,TreatandExtend法はPRN法に比べて良好な視力改善効果を示した(順に+10.8±8.8ETDRS文字,+2.3±17.4ETDRS文字,p=0.036).投与回数はTreatandExtend法がPRN法よりも多かったが(7.8±1.3回,5.2±1.9回,p<0.001),来院回数では両者に差はみられなかった(8.5±1.1回,8.8±1.5回,p=0.2085)5).また,Abediらは,AMD患者に対してラニビズマブを用いてTreatandExtend法を行い(n=120眼),2年間経過を観察した.その結果,これまでに報告されたFixedDose法の臨床試験と比べて投与回数が少ない(1年目8.6回,2年目5.6回)にもかかわらず,同程度の視力改善効果が得られた1,2,6).TreatandExtend法の長所,短所TreatandExtend法は,黄斑に滲出性変化が生じる前に計画的に抗VEGF薬の再投与を行うことによって,黄斑を滲出性変化のない状態に維持することを目標とする.そのため,滲出性変化を認めてから再投与を行うPRN法と比べて,再発を繰り返すことによる黄斑の不可逆的障害を軽減できる可能性がある.また,すべてのあたらしい眼科Vol.32,No.1,20151030910-1810/15/\100/頁/JCOPY ABCDEFGV.A.=(0.9)V.A.=(0.8)ABCDEFGV.A.=(0.9)V.A.=(0.8)図1AMDに対するTreatandExtend法の治療経過78歳,女性.右眼典型AMD,occultwithnoclassicCNV.治療前視力(0.8).黄斑部に漿液性網膜.離を認めた(A,B,C).そこで,アフリベルセプトを4週間隔で計3回投与したところ滲出性変化が消退した.そのため,6週間後に4回目の投与を行った(D:4回目の投与日のOCT).4回目の投与日に滲出性変化がみられなかったため,投与間隔を8週(E),さらに経過が良好であったため10週まで延長した.すると滲出性変化が再発した(F)ので,投与間隔を8週に短縮し滲出性変化が消退した(G).現在は8週間隔で投与を継続している.投与は計画的に行われるため,PRN法のように来院時に急遽再投与を行うことはなく,患者側の不安や医師側の負担を軽減する効果もある.さらに,一定の投与間隔を継続するFixedDose法と比べて,状態の安定した患者に対しては投与および診察間隔を延長するため,結果として投与および診察回数が減り,患者や医師の負担軽減や医療経済学的な負担軽減につながる.しかし,TreatandExtend法は,FixedDose法と同様に滲出性変化の有無にかかわらず診察時に計画的に抗VEGF薬の投与を行う方法であるため,たとえば導入期以降に,抗VEGF薬を投与しなくても滲出性変化をきたさない症例に対しては,過剰投与を行ってしまう可能性がある.今後,どのような患者に対してTreatandExtend法を行うべきか検討が必要である.また,TreatandExtend法については現在のところ大規模ランダム化比較試験に基づくエビデンスがなく,今後の報告が待たれる.文献1)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:Ranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1419-1431,20062)BrownDM,MichelsM,KaiserPKetal:Ranibizumabversusverteporfinphotodynamictherapyforneovascularage-relatedmaculardegeneration:two-yearresultsoftheANCHORStudy.OPHTHA116:57-65,20093)Schmidt-ErfurthU,KaiserPK,KorobelnikJ-Fetal:Intravitrealafliberceptinjectionforneovascularage-relatedmaculardegeneration:ninety-six-weekresultsoftheVIEWstudies.Ophthalmology121:193-201,20144)SpaideR:Ranibizumabaccordingtoneed:atreatmentforage-relatedmaculardegeneration.AJOPHT143:679680,20075)OubrahamH,CohenSY,SamimiSetal:Injectandextenddosingversusdosingasneeded:acomparativeretrospectivestudyofranibizumabinexudativeage-relatedmaculardegeneration.Retina31:26-30,20116)AbediF,WickremasingheS,IslamAFMetal:Anti-VEGFtreatmentinneovascularage-relatedmaculardegeneration:atreat-and-extendprotocolover2years.Retina34:1531-1538,2014104あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(104)

緑内障:OCTの見方

2015年1月30日 金曜日

●連載175緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也175.OCTの見方三木篤也大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は緑内障診断にとても有用な機器である.しかし最近,OCTの検査結果を鵜呑みにしたために誤診を招く症例をみることが多くなった.本項では,OCTの信頼度チェックの手順を紹介する.OCTを正しく使用する一助となれば幸いである.OCTによる網膜神経線維層(retinalnervefiberlayer:RNFL),黄斑部神経節細胞複合体厚(ganglioncellcomplex:GCC),および視神経乳頭トポグラフィーの測定は,緑内障に伴う構造的異常の評価法として非常に有用である.その一方で,最近では「OCT緑内障」(OCT所見のみで緑内障と診断されるが,実際には緑内障ではない症例のこと)なる診断名(?)が広がっているように,OCTに依存した診断により,過剰診断や誤診を招くケースもときおりみられる.しかし,日常臨床でみられるこういった誤診のかなりの部分は,OCT画像そのものが適切に撮影できていない信頼度不良例に基づいていることに最近筆者は気がついた.とくに,(過去の筆者のように)OCTのプリントアウトに表示される数値やカラーコードを頭から信用し,元の画像をチェックしないで診断を行う臨床家には,この間違いが起こりやすい.本項では,OCTの信頼度をチェックする基本的な手順を紹介する.●信頼度チェックの手順静的視野検査を読影する際には,固視不良,偽陽性,偽陰性といった信頼度の指標をチェックし,これらが一定の基準を満たしていない場合には信頼度不良として慎重に結果を解釈することが求められる.OCTでもまったく同じことがいえるのであり,信頼度のチェックは不可欠である.OCTの信頼度を確認する方法はいくつかあるが,筆者は,①シグナル強度,②センターリング,③セグメンテーション,④画像の高さ,の4項目をとくに重視している.シグナル強度:すべてのOCT機器で数値化されて示されている.数値の基準は機器により異なるので,販売(101)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY図1シグナル強度が弱い例右眼のSSI(画像左上方.白囲み)が5と低い.画像のシグナルが弱く,鼻側の一部ではRNFL層の検出が困難となっている.者に確認されたい.図1はシグナル強度が低い画像の1例である.この症例に使用したRS-3000の場合は,シグナル強度はSSI(signalstrengthindex)という数値で示される.SSIは数値が大きいほどシグナル強度が強く,10が最大であるが,一般的には6以上が信頼度のある画像とされる.図1の右眼ではSSIが5しかなく,シグナル強度が弱い.このため,シグナル(網膜などの組織からの反射)とノイズ(アーチファクト)との差が小さいために,網膜の層構造を正しく検出することができない.センターリング:乳頭周囲サークルが正しい位置にあるかどうかである.理想的には,乳頭の中心にサークルの中心が合致すべきであるが,乳頭変形があるような症例では,図2の左眼のように,OCTが自動で設定するサークルの位置が,明らかに乳頭の中心からずれることがある.この場合,サークルの位置が正しい位置にあるあたらしい眼科Vol.32,No.1,2015101 図2センターリング不良の例左眼のサークルの中心は視神経乳頭中心から大きくはずれている.図3セグメンテーション不良の例網膜厚が薄く,右眼はシグナルも弱いため,RNFL層が正しく検出されていない.場合と比べて乳頭縁からサークルまでの距離が異なるため,RNFL厚の測定値も変化する.とくに部位(セクター)別のRNFL厚はセンターリングずれの影響を受けやすい.セグメンテーション:RNFLやGCCなど対象の網膜層を正しく検出しているかどうかである.上記のSSIが低い場合や乳頭の変形が強い場合,大きな傍乳頭網脈絡図4画像がはみ出している例高度近視で視神経乳頭周囲も前後に長く伸びているため,画像の範囲をはみ出してしまっている.はみ出している部分の網膜厚は当然正確に測定できない.膜萎縮(parapapillaryatrophy:PPA)がある場合などはセグメンテーション不良が起こりやすい(図3).画像の高さ:網膜のZ軸方向の位置が正しい位置にあるかどうかである.撮像するうえでは,OCT機器と眼球との距離が適切であるかどうかと言い換えられる.とくに図4のような高度近視眼においては,RNFLスキャンがZ軸方向に大きく伸びているので,一部が画像外にはみ出てしまうようなことが起こり得る(図2も実は少しはみ出している).●おわりにどんな検査でも,得られた数値なり画像なりが正確なものでなければ診断価値はない.OCTにおいても信頼度のチェックは不可欠なことをもう一度強調したい.ここでは傍乳頭RNFLを例にとったが,黄斑部GCCにおいてもまったく同じことがいえる.OCTで緑内障を診断する際には,まず上記のような信頼度の指標をチェックし,信頼度が一定の基準を満たさない画像については慎重に解釈することが必要である.☆☆☆102あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(102)

屈折矯正手術:屈折矯正手術患者の薬剤耐性菌保菌

2015年1月30日 金曜日

屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載176大橋裕一坪田一男176.屈折矯正手術患者の薬剤耐性菌保菌北澤耕司京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学屈折矯正手術後のMRSA角膜炎患者をレトロスペクティブに解析すると,医療従事者が多いことが報告されている.今回,屈折矯正手術前患者に対してプロスペクティブに保菌調査を行ったところ,120例中2例で鼻腔粘膜からMRSAを検出し,その2例は医療従事者であった.●はじめにLaserinsitukeratomileusis(LASIK)に代表される屈折矯正手術は,フェムトセカンドレーザー,虹彩紋理認識システムIR(irisregistration),eyetrackingsystemなど手術機器の発展に伴い,術後予測屈折精度はきわめて高いレベルに到達している.しかし,たとえ機械の進歩が進んでも術後感染症が完全に消失することはない.屈折矯正手術を受ける患者の多くは矯正視力が1.0以上であるケースが多く,患者側も高い術後結果を要求する.他科で耐性菌が問題となっているように,眼科でもキノロン系耐性黄色ブドウ球菌(キノロン耐性MSSA),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)などの薬剤耐性菌による感染症が近年問題となっている.これらの耐性菌による術後感染症はときに予後不良となり,著明な視力障害を残すことも少なくない.●屈折矯正術後の薬剤耐性菌による角膜感染症図1の症例は,Epi-LASIK手術後にキノロン耐性MSSAによる両眼の角膜感染症を発症した患者である.患者は51歳の女性で,職業は看護師.Epi-LASIKを施行後,経過は良好であったが,再近視化(regression)による裸眼視力低下のため再手術を受けた.再手術後2日目に強い眼痛を自覚したため近医眼科を受診し,結膜.培養検査でキノロン耐性MSSAを検出した.図2の症例は,27歳女性,職業は看護師.Epi-LASIK術後2日目より眼痛,視力低下を自覚し受診.角膜病巣部よりMRSAを検出した.これらの2症例に共通する背景因子は医療従事者であるということである.Solomonらは,文献的検索を行い,屈折矯正術後にMRSA角膜炎を発症した患者12例のうち,9例が医療従事者であったと報告している1).また,Nomiらは屈折矯正手術後MRSA患者を2症例報告しており,両者とも医療従事者であったことを報告している2).●医療従事者におけるMRSA保菌以前より,医療従事者ではMRSAの保菌率が高いことが報告されている.筆者らは以前に,眼科専門病院と大学病院で従事する医師,看護師,視能訓練士,医療介図1症例1(51歳,女性)Epi-LASIK術後2日目から両眼の眼痛,視力低下を自覚.キノロン耐性MSSAを検出.職業は看護師.(99)あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015990910-1810/15/\100/頁/JCOPY 図2症例2(27歳,女性)術後2日目に右眼の眼痛,視力低下を自覚.MRSAを検出.職業は看護師.助に対して鼻腔粘膜の保菌を調査したところ,医師3名,看護師1名にMRSAを検出し,視能訓練士,医療介助では検出されなかったことを報告した3).職種別のMRSA保菌率は医師3名/44名(6.8%),看護師1名/19名(5.3%),その他のコメディカル0名/15名(0%)であり,医師,看護師はその他の職種よりもMRSA保菌率が高い傾向であった.一般健常人の鼻前提培養でのMRSA検出率が約1%であることから,医療従事者では著明に保菌率が高いことがわかる.また木村らは,眼表面感染症は鼻腔粘膜の保菌と関連があると報告しており,たとえ結膜での保菌が認められなくても,鼻腔粘膜に存在する菌が眼表面感染症を引き起こす可能性があることを報告している4).このことは屈折矯正手術後のMRSA感染症に医療従事者が多いことを示唆している.さらに,筆者らは屈折矯正手術前患者120例の鼻腔粘膜についてプロスペクティブに検討したところ,120例中2例でMRSAを検出した(表1).その2例の患者の職業を調べてみると医師と看護師であった.120例のうち医療従事者は20例で,医療従事者のMRSA保菌率は2/20(10.0%)と著明に高く,医療従事者は非医療従事者と比較すると,有意にその保菌率は高かった.そのほか,年齢,性別,アトピー性皮膚炎の既往,喘息の既往,コンタクトレンズの使用歴についても検討したところ,アトピー性皮膚炎の既往があると有意にMRSA表1屈折矯正手術前患者の鼻粘膜におけるMRSA陽性/陰性の患者背景MRSA(+)MRSA(.)p-value*患者数2118年齢(歳)NS.30176<30142性別NS男性156女性162職業p=0.03医療従事者218非医療従事者0100アトピー性皮膚炎p=0.02あり015なし2103喘息NSあり010なし2108コンタクトレンズ使用歴NSあり1104なし114*Fisher検定保菌率が高く,その他の背景因子ではMRSA保菌に有意な差を認めなかった.●まとめ以上のことから,医療従事者に対する屈折矯正手術をするときは,術後MRSAを含む耐性菌による角膜感染症に対して注意を払う必要があると考える.文献1)SolomonR,DonnenfeldED,PerryHDetal:MethicillinresistantStaphylococcusaureusinfectiouskeratitisfollowingrefractivesurgery.AmJOphthalmol143:629-634,20072)NomiN,MorishigeN,YamadaNetal:Twocasesofmethicillin-resistantStaphylococcusaureuskeratitisafterEpi-LASIK.JpnJOphthalmol52:440-443,20083)木村直子,外園千恵,東原尚子:前眼部におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の検出と鼻前庭保菌との関連.日眼会誌111:504-508,20074)北澤耕司,外園千恵,稗田牧ほか:眼科医療従事者におけるMRSA保菌の検討.あたらしい眼科28:689-692,2011100あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(100)

眼内レンズ:電動インジェクターと創口負荷

2015年1月30日 金曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋339.電動インジェクターと創口負荷大内雅之大内眼科電動眼内レンズ(IOL)インジェクターは,モーターの動力により,一定の速度かつ強いトルクでIOLを押し出す,まったく新しいコンセプトのデバイスである.電動インジェクターは,カートリッジ内圧や創口での抵抗の変化に影響を受けず,そのためロケット発射することなく,より小さな創口から安全なIOL挿入が可能となる.●はじめに極小切開手術では,水晶体摘出,IOL挿入,両方の極小化が必要であり,これまでその進化の方向性は,レンズ素材,折りたたみ形状,カートリッジ構造などに向けられてきた.しかし,近年登場した電動IOLインジェクター(図1)は,まったく異なった角度からこれらに挑戦した新しいコンセプトのデバイスである.IOLを電動で挿入することに含まれる意義は,恐らくまだ十分に周知されていないと思われる.ここでは,電動インジェクターの簡単な仕様紹介とともに,電動インジェクターの意義を解説する.●基本仕様と操作本装置は,超音波白内障手術装置に装着し,フットスイッチでコントロールする.まず,通常のインジェク図1電動インジェクター,ハンドピースの外観ab図2電動インジェクターによる挿入(a)と画面表示(b)b:左下に設定,左上に挿入速度がリアルタイム表示される.ター同様,IOLをカートリッジに装.し,このカートリッジをハンドピースに装着する.プリロードスイッチで,IOLがカートリッジ先端より少し手前(プリロード位置)まで進んでくるので,ここで挿入準備完了である.カートリッジを創口に入れ(あるいは,あてがい),フットスイッチを踏むと,プランジャーがIOLを眼内に挿入してくれる(図2).挿入速度は,フットスイッチおよびパネル設定で任意に変えられる.●IOL挿入と創口ストレス小さな創口からインジェクターを用いてIOLを挿入する際の創口ストレスは,高速短時間で挿入したほうが小さい1).これは,IOL通過中,カートリッジが膨張し,とくに縦径が増すからである.通常,創口は水平に作製されるため,これが上下方向に伸展されると,受けるストレスがとくに強くなることは自明である(図3).メーカーによっては,カートリッジ断面が横長楕円形状に作られているものもあり,正円のものより小さな創口に適して.いるが,それでも,光学部中心が通過するときには必ず縦方向への伸展が起こっているため,IOLの創口通過時間はできるだけ短くすることが望ましい.切開創は横長中空のカートリッジ断面光学部通過中の断面創口ストレス大図3IOL挿入時の,創口断面のシェーマカートリッジ挿入で創口は上下に伸展されるが,IOLが光学部通過中は,カートリッジがさらに上下に伸展するため,創口ストレスもさらに増加する.(97)あたらしい眼科Vol.31,No.1,2015970910-1810/15/\100/頁/JCOPY プランジャー抵抗(N)2520眼内レンズ光学部のカートリッジ先端通過15赤:woundassisted法10黄:カートリッジ埋没挿入505101520プランジャー進行距離(cm)図4IOL挿入中にカートリッジにかかる圧光学部がカートリッジ先端に近づくにつれて圧は上昇し,光学部を通過すると圧は急激に消失へ向かう.この短時間の圧落差に術者が反応できないと,IOLのロケット発射が起こる.挿入時の圧抵抗が強いwoundassisted法では,それが顕著である.●インジェクターによるマニュアル挿入の問題と,電動インジェクターIOLがカートリッジ先端を通過して眼内に放出された後は,プランジャー抵抗(プッシュ式インジェクターであれば,親指にかかる力)が一気に下がるため,術者がこの変化に対応できないと,IOLのロケット発射(暴発)につながってしまう(図4).したがって,とくに極小切開,woundassisted法を採っている術者は,できるだけ素早く,かつロケット発射しないプランジャーの押し加減を,経験と勘で現状は行っていることになる.しかし,IOLはパワーによって厚みが異なり,レンズの保管条件,粘弾性物質の種類や温度によってもカートリッジ内腔と光学部の摩擦が異なるため,この状況は,常にロケット発射と背中合わせの微妙なバランスの上に成り立ったいわば職人技であり,初級術者には勧められなかった.しかし,この電動インジェクターは,プランジャーを「押す」のではなく,ネジ式インジェクターをベースに,モーターでプランジャーを「回す」構造で,かつモーター動力が強力なため,カートリッジ内,創口内でのあらゆる圧抵抗の変化にかかわらず,プランジャーは一定速度で前進していく.そのため,ロケット発射せず,高速挿入が可能になっている.表1眼内レンズ挿入による創口負荷高速電動挿入*1マニュアル挿入創口拡大幅(mm)前眼部OCTスコア*20.05±0.066/40眼0.12±0.05*316/40眼*4*1:挿入速度4.4mm/secでの電動挿入*2:前眼部OCTによる段差・列隙・隆起のダメージ所見が確認された眼数*3:p<0.01(Mann-Whitney検定)*4:p=0.01(Fisherの直接確率計算法)術者はカートリッジ挿入角度,挿入中のIOL進行方向,対側.赤道部のみに注意を払っておけばよい.●より小切開の可能性これまでに筆者は,2.2mm切開からの同一ソフトシングルピースIOL挿入において,眼内挿入速度4.4mm/secで電動インジェクターを用いた高速挿入を行うと,従来のマニュアル挿入と比べて,IOL挿入前後の創口拡大幅が有意に小さく,創口挫滅所見も少ないことを確認している(表1).また,この電動インジェクターの使用で,メーカー推奨切開幅角膜2.4mmのIOLを,2.0mmの角膜切開創から無理なく眼内へ挿入できることを,豚眼および臨床でも確認している.これらはすべて,電動インジェクターによってIOLの安全な高速挿入が可能になったことによる福音である.●おわりにこれまでにも白内障IOL手術の進化は,さまざまな視点から進められてきたが,新たに国内導入された電動インジェクターは,創口ストレスと挿入の安全性について,まったく新しいコンセプトから切り込んだデバイスであり,副効果として,さらなる小切開手術への可能性も広げる器具として期待される.文献1)OuchiM:Effectofintraocularlensinsertionspeedonsurgicalwoundstructure.JCataractRefractSurg38:1771-1776,2012

コンタクトレンズ:フィッティング理論(ソフトコンタクトレンズ編)

2015年1月30日 金曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方はじめの一歩監修/下村嘉一8.フィッティング理論(ソフトコンタクトレンズ編)●はじめに日本で承認を得ているハードコンタクトレンズ(HCL)は角膜レンズといって角膜径より小さいサイズであるが,ソフトコンタクトレンズ(SCL)は角膜径よりも大きいサイズで,角膜だけでなく球結膜(強膜)にも触れるので,強角膜レンズと称する.ある経線方向でみると,SCLは角膜頂点と結膜(強膜)の3点で接触している.HCLではレンズ下の涙液をフルオレセインで染色することによって,角膜前面とレンズ後面との関係を評価できるが,含水性のSCLはレンズ自体が染色されるため,上記の評価がむずかしい.したがって,SCLは患者の眼に装着し,センタリングと動きなどからフィッティングを判定しなければならない.SCLは素材,サイズ,ベースカーブ(BC),厚み,硬さ,度数などによってフィッティングが異なる.本稿では,これらがフィッティングに及ぼす影響について概説する.●センタリング正面視でレンズがほぼ中央に位置し,角膜全体を覆っているかをみる.レンズと角膜がほぼ同心円状にあることがベストであるが,レンズが上眼瞼でわずかにもち上げられる程度は許容範囲である.レンズが下方にずれる場合や,レンズのエッジがたわんだり,浮き上がる場合はフラットフィットである.一方,レンズ下の周辺部に空胞が生じて,それが瞬目で外に抜けない場合はスティープフィットである.上方視や下方視,側方視をしたときのレンズの位置を観察して,レンズが過度にずれる場合もフラットフィットである.●動きレンズの動きについては,ルーズフィットやタイトフィットでないことを確認する.上方視や側方視をしてもレンズがほとんど動かない,あるいは瞬目をしてもレ(95)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY植田喜一ウエダ眼科ンズがほとんど動かない状態をタイトフィットといい,逆にレンズが大きく動く状態をルーズフィットという.●サイズとBC角膜径の小さい症例や瞼裂幅の狭い症例ではサイズの小さいレンズを,角膜径の大きい症例ではサイズの大きいレンズを選択する.角膜曲率半径が小さい症例ではBCの小さいレンズを,角膜曲率半径が大きい症例ではBCの大きいレンズを選択するが,サイズとBCの決定はレンズのセンタリングと動きによることが多い.サイズを大きくしたり,BCを小さくするとsagittaldepth(弧の深さ)が深くなり,スティープなフィッティングになる(図1).レンズが下方に偏位する症例では,サイズを大きくしたり,BCを小さくするとセンタリングが良くなることが多い.●厚みと硬度薄くてやわらかいレンズは角結膜表面にフィットしやすいため,センタリングが良く動きが少ないが,厚くて硬いレンズは動きが大きくなる.●度数強度遠視を矯正するハイプラスのレンズは周辺部に比して中心部が厚くなるので,レンズ全体の重心は前方に位置するため,下方に偏位しやすい.一方,強度近視を矯正するハイマイナスのレンズはその逆で,角膜上に安定しやすいが,タイトフィットになりやすい.●素材SCLにはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を主体としたハイドロゲルレンズとHEMAにシリコーンを共重合させたシリコーンハイドロゲルレンズがある.ハイドロゲルレンズは含水率が50%以上の高含水率素材のものと,50%未満の低含水率のものに分けられる.透明な視力補正用のハイドロゲルレンズの多くあたらしい眼科Vol.31,No.1,201595 96あたらしい眼科Vol.31,No.1,2015(00)は,高含水率,薄型なので動きは少ないが,瞬目による上下の動きは必要である.動きが少ない場合は,タイトフィットでないことをチェックするために,プッシュアップテスト(下眼瞼を指で押えて,レンズを上方にずらしたときにレンズがスムーズに動き,指を離したときに元の位置に戻るかどうかを観察するテスト)を行ってレンズがスムーズに動くことを観察する.一方,低含水率のハイドロゲルレンズは酸素不足を生じやすいので,瞬目に伴うレンズ下の涙液交換が必要であり,固着しないためにも,瞬目によってレンズが上下に0.50~1.00mm程度動くようにフィットさせることが大切である.近年,問題になっているカラーSCLの多くは低含水率のハイドロゲル素材でサイズが大きいので,瞬目によって十分な上下運動があるかを確認する必要がある.☆☆☆ZS938サイズの変化に伴うSAGの変化BCの変化に伴うSAGの変化サイズ(13.5mm)サイズ(13.5mm)サイズ(13.0mm)SAG大SAG大SAG小SAG小BC(8.4mm)BC小(8.1mm)BC大(8.4mm)(BC:同じ)(サイズ:同じ)図1Sagittaldepth(SAG)の変化同じBC(例として8.4mm)であればサイズが大きい(13.0mmと13.5mmであれば13.5mm)ほど,同じサイズ(例として13.5mm)であればBCが小さい(8.4mmと8.1mmであれば8.1mm)ほどSAGは深くなり,角結膜上で安定する.

写真:SEEK後の空気瞳孔ブロック

2015年1月30日 金曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦368.DSAEK後の空気瞳孔ブロック上松聖典長崎大学眼科図1nDSAEK(non.Descemet'sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty:Descemet膜非.離角膜内皮移植)施行3時間後の空気瞳孔ブロックの写真前房がすべて空気で満たされ,瞳孔縁や下方虹彩切除部から房水が前房内に移行できない.眼圧は45mmHgと上昇している.図2図1のシェーマと断面図①グラフト,②瞳孔,③虹彩切除部,④空気(断面図の黄色部分),⑤眼内レンズ.図5図4のシェーマと断面図①グラフト,②瞳孔,③虹彩切除部,④空気(断面図の黄色部分),⑤房水,⑥眼内レンズ.図3前房空気除去直後の写真空気除去すると下方の虹彩切除部から房水が前房内に移行し,空気瞳孔ブロックが解除される.眼圧は9mmHgに低下した.図4nDSAEK施行1日後の写真前房の約6割が空気であり,グラフトの接着は良好である.下方の虹彩切除部から房水が前房内に移行でき,眼圧は16mmHg.(93)あたらしい眼科Vol.31,No.1,2015930910-1810/15/\100/頁/JCOPY 空気による高眼圧は,内皮グラフトを接着させるため空気を前房に入れるDescemet膜.離角膜内皮移植(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty:DSAEK)特有の合併症であり,いくつかのタイプがある.一つは,前房内の空気が虹彩を後方に圧迫し,房水が瞳孔領から前房にまわらなくなる「空気瞳孔ブロック」である(図1).この場合は,散瞳薬で瞳孔を広げた後に,空気を除去することでブロックを解除することができる.提示した症例ではあらかじめ下方に虹彩切除をしておいたので,散瞳せずに空気を少量抜くだけでブロックが解除できた(図2,3).空気瞳孔ブロックの予防には,DSAEKの術終了時に散瞳薬を点眼することや,空気の量をブロックが起きない程度に減らしておくことが有効である.しかし,放射状角膜後面切開術後の水疱性角膜症など,空気によるタンポナーデをしっかりしておきたい症例もある.このような症例では,下方に虹彩切除を行っておけば,空気を前房いっぱいに満たして手術を終了することができる.グラフト接着不良の際も,空気をいっぱいに再注入しタンポナーデ効果を高めることもできる.空気瞳孔ブロックを起こしても,術後診察の際,少量の空気を除去することで,房水が下方虹彩切除部から前房に移行し,すぐにブロックを解除することが可能である1).空気による高眼圧のもう一つのタイプは,空気が後房にまわるものである.とくにZinn小帯が弱い眼では,空気が虹彩下からゆるいZinn小帯を通過して,後房に移行する場合がある.虹彩の後方に空気があると,仰臥位では虹彩が前方に圧迫され隅角が閉塞する.全周性に隅角が閉塞すると高眼圧を生じる.さらに重度になると,前房が消失し,悪性緑内障(aqueousmisdirectionsyndrome)となる可能性もある2).頭位の変換で空気の圧迫を解除したり,前眼部の処置で前房を形成したりすることで解除できるが,悪性緑内障になれば硝子体手術が必要になる場合がある.このような合併症の可能性があるので,DSAEKでは手術の数時間後に診察する必要がある.文献1)小林顕:角膜内皮移植(DSAEK).新ESNOW10角膜手術(島崎潤,ビッセン宮島弘子編),p58-68,メジカルビュー社,20122)PriceJr.FW,PriceMO:Descemet’sstrippingwithendothelialkeratoplastyin200eyes.Earlychallengesandtechniquestoenhancedonoradherence.JCataractRefractSurg32:411-418,200694

角膜疾患関連続発緑内障への対処法

2015年1月30日 金曜日

特集●役に立つ角膜疾患診療の知識あたらしい眼科32(1):83~90,2015特集●役に立つ角膜疾患診療の知識あたらしい眼科32(1):83~90,2015角膜疾患関連続発緑内障への対処法TherapeuticStrategyfortheSecondaryGlaucomaRelatedtoCornealDiseases森和彦*はじめに角膜疾患関連続発緑内障は難治緑内障の一つとされる.とくに角膜移植後に合併する緑内障は移植後の失明原因として常に上位に位置しており,角膜が透明になっても視神経障害のために失明に至る例も少なくない.術後の一過性高眼圧を除いた角膜移植後続発緑内障の発症頻度は全体では30%程度とされているが,角膜移植の原因疾患によってその頻度が大きく異なっている.たとえば無水晶体性水疱性角膜症では続発緑内障発症頻度が20~70%ともっとも高く,円錐角膜や先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(congenitalhereditarycornealendothelialdystrophy:CHED)などでは低いとされている1).一般に角膜移植後の続発緑内障発症・増悪のリスクとしては,角膜移植前から存在している緑内障の既往,無水晶体無硝子体眼,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)摘出術併用例などがあげられている.角膜疾患に関連した緑内障の眼圧上昇メカニズム(表1)は,角膜の病態や移植の有無,経過期間によって異なっており,異常な増殖組織や炎症に続発した隅角閉塞,移植後早期の前房内残留粘弾性物質,出血,炎症,角膜浮腫や浅前房による周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS),瞳孔ブロック,ステロイド緑内障,拒絶反応に伴う炎症・虹彩前癒着の進行,悪性緑内障など,さまざまな原因があげられる.近年はシクロスポリンに代表されるステロイド以外の免疫抑制療法が広く用いられるようになり,ステロイド長期使用例の減少に伴いステロイド緑内障の頻度は減少傾向にある.いずれの病態においても角膜疾患続発緑内障では,高眼圧のみならず治療としての緑内障手術によっても惹起された炎症が角膜の透明性維持に悪影響を及ぼすため,十分な管理上の注意が必要である.I重要ポイント1.眼圧測定角膜疾患関連続発緑内障の診断においてもっとも重要なポイントは眼圧上昇の判定である.眼圧測定のゴールデンスタンダードであるGoldmann圧平眼圧計(Goldmannapplanationtonometer:GAT)は角膜厚や角膜表面性状の影響を受け,不整な眼表面状態や角膜厚が厚い水疱性角膜症では正確な眼圧が測定困難である.しかし,DSAEK(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty)やDMEK(Descemet’smembraneendothelialkeratoplasty)では角膜厚は大きくは変化しないため眼圧値に対する影響は少ない.眼表面に非接触で測定可能という利点から頻用されるノンコンタクトトノメーター(non-contacttonometer:NCT)は,角膜疾患例において安定した測定値を得ることは困難であり,あくまでも参考程度にしかならない.トノペンR(Reichert社)は接触面積が小さいことから眼表面疾患でも正確に測定できる可能性が高いが,実際にはばらつきが大きく,やはり参考程度の値しか得られない.リバウンドトノメーターであるアイケアR(ICAREFINLAND*KazuhikoMori:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕森和彦:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(83)83 84あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(84)度判定すら困難な場合が多いし,移植片拒絶反応や移植した上皮細胞の脱落の恐れから基本的に接触型検査自体が不可な場合もある.このような場合でも緑内障手術の適応や術式を決定するためには隅角検査が必須であることから,接触面積の少ないZeiss型やSussman型の隅角鏡を用い,スコピゾルを大量に使用したり治療用ソフトコンタクトレンズ上から行ったりすることで何とか隅角検査を試みることが大切である.そのためにも常日頃から角膜上皮に負担をかけない隅角検査手技をマスターしておくことが必要である.非接触式検査である前眼部光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)による画像解析は,隅角検査が不可能な症例の隅角形状を判断する際の次善の策として有用である.現在利用できる前眼部OCTの中では,タイムドメイン型のVisanteTM(CarlZeiss社)と比較して,スペクトラルドメイン型のCasiaR(トーメーコーポレーション)のほうが短時間かつ高解像度で全周の隅角をスキャンできるため有用性に勝る.ただ非接触式であるがゆえに機能的閉塞と器質的閉塞の差のような動的変化を捉えることは困難である.また,あくまでもカラー情報をもたず隅角形状を捉えるのみであることから,隅角の異常所見を捕捉する能力としては隅角検査に劣ることを認識すべきである.また,さらに後方の虹彩裏面や毛様体突起部などの所見を得るためには,超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscope:UBM)が有用であるが,接触式検査であるために隅角検査と同様の制限がある.4.眼表面性状と炎症点状表層角膜症や遷延性角膜上皮欠損の有無,涙液動態などの眼表面性状は,緑内障点眼治療における薬剤選択に影響する因子として重要であるため,フルオレセイン染色を用いてしっかりと確認する必要がある.また,通常は見落とされがちな上方もしくは下方結膜の状態に関しても,緑内障の術式選択に当たって濾過手術やチューブシャント手術を成功させるために非常に重要な所見であり,瘢痕性変化や瞼球癒着,結膜.短縮の有無などについて十分な診察が必要である.社)は接触面積がさらに小さいことからかなり正確な眼圧値が得られるが,GATと同様に角膜厚の影響を受けるので当てる場所によって値が大きく異なることがある.さらには培養角膜上皮移植や羊膜移植などの眼表面再建術の術後早期には角膜に触れることすら差し控えざるを得ない.最終的にはGATとNCT,その他の眼圧計の値を参考にしながら,眼瞼上から強膜越しに眼球に触れて判断するタクタイル法で眼圧上昇を確認するのがもっとも確実である.そのためにも常日頃から眼球を触診し,眼瞼上から眼圧を推測する感性を養っておく必要がある.2.眼圧上昇は一過性か持続性か次に重要なポイントは原疾患の治療経過と眼圧上昇との関係である.たとえば角膜移植後早期には,前房内の残存粘弾性物質や炎症により眼圧が高値を示すことが多いが,これらは経過をみているうちに下降してくる一過性のものである.一方,移植後を含めた角膜疾患の経過中には点眼・内服を含めてステロイド薬を使用することが多く,眼圧上昇例の中には高頻度にステロイド緑内障が含まれている.したがって治療経過,とくにステロイド使用歴と眼圧上昇との時間的関係について知っておくことはきわめて重要である.通常,ステロイドレスポンダーはステロイド使用開始後,2週間程度経過してから眼圧が上昇してくることが多いが,線維柱帯からの房水流出に余裕のない場合にはステロイド開始後,短期間で眼圧上昇をきたすこともある.また,眼内炎症遷延時には炎症に伴って眼圧が上昇している場合もあり,炎症程度との関連性も眼圧上昇機序を理解するうえで重要となる.さらに症例によっては基礎疾患として原発緑内障や外傷性緑内障などを有している場合もあり,問診による既往歴の聴取も重要となる.3.隅角所見PASの有無は緑内障の治療法や予後に影響を与えるもっとも重要な因子であり,vanHerick法によって隅角開大度を判定するのはもちろんのこと,眼表面状態が許されるなら隅角検査を実施すべきである.ただ角膜疾患の中には混濁のためにvanHerick法による隅角開大 あたらしい眼科Vol.32,No.1,201585(85)し,小さな光源を用いるOCTでは乱反射が少なく網膜や視神経の画像が撮れることもある.また,V-4の視標を用いた大まかな視野検査だけでも緑内障性視野障害の程度を知るためには重要な手がかりとなる.ゆえに,たとえ混濁によって眼底がみえそうもない症例でも,何とかしてみようとする努力,視野を取ろうとする努力を怠ってはならない.5.視神経乳頭と視野所見眼表面疾患を有する場合には眼底透見困難で視野検査も施行できないことが多いため,えてしてこれらの検査がなおざりにされてしまう危険性がある.しかしながら,倒像鏡もしくは細隙灯顕微鏡の光量を可能な限り少なくし,光軸も絞り込むことで混濁角膜からの乱反射を防止すれば,視神経乳頭を何とか透見できることも多い表2角膜原疾患と眼圧上昇機序原疾患眼圧上昇機序ICE/PPD/眼内上皮増殖直接的隅角閉塞円錐角膜ステロイドLI後水疱性角膜症炎症/基礎疾患としてのPACG化学外傷炎症/ステロイド/直接障害感染症炎症眼表面再建炎症/ステロイドICE:虹彩角膜内皮症候群,PPD:後部多形性角膜変性症LI:レーザー虹彩切開術,PACG:原発閉塞隅角緑内障表1角膜疾患関連続発緑内障眼圧上昇隅角形状炎症との関連ステロイド使用診断持続性開放なしありステロイド緑内障なしなしPOAG合併/線維柱帯障害などあり炎症反応性眼圧上昇閉塞あり炎症性続発閉塞隅角緑内障/瞳孔ブロック/悪性緑内障/異常増殖組織による閉塞一過性術後炎症/残存粘弾性物質POAG:原発開放隅角緑内障cleftofTMIOP=13mmHgIOP=39mmHgABCDE図1化学外傷後続発緑内障酸による化学外傷後.右眼瘢痕性角膜混濁(A)に対し,全層角膜移植術+眼表面再建術を施行したところ眼圧が著明に上昇(39mmHg,B).鼻下側にて線維柱帯切開術を施行(C,D)し,13mmHgに下降.前眼部OCTにて線維柱帯切開部が確認できる(E)表2角膜原疾患と眼圧上昇機序原疾患眼圧上昇機序ICE/PPD/眼内上皮増殖直接的隅角閉塞円錐角膜ステロイドLI後水疱性角膜症炎症/基礎疾患としてのPACG化学外傷炎症/ステロイド/直接障害感染症炎症眼表面再建炎症/ステロイドICE:虹彩角膜内皮症候群,PPD:後部多形性角膜変性症LI:レーザー虹彩切開術,PACG:原発閉塞隅角緑内障表1角膜疾患関連続発緑内障眼圧上昇隅角形状炎症との関連ステロイド使用診断持続性開放なしありステロイド緑内障なしなしPOAG合併/線維柱帯障害などあり炎症反応性眼圧上昇閉塞あり炎症性続発閉塞隅角緑内障/瞳孔ブロック/悪性緑内障/異常増殖組織による閉塞一過性術後炎症/残存粘弾性物質POAG:原発開放隅角緑内障cleftofTMIOP=13mmHgIOP=39mmHgABCDE図1化学外傷後続発緑内障酸による化学外傷後.右眼瘢痕性角膜混濁(A)に対し,全層角膜移植術+眼表面再建術を施行したところ眼圧が著明に上昇(39mmHg,B).鼻下側にて線維柱帯切開術を施行(C,D)し,13mmHgに下降.前眼部OCTにて線維柱帯切開部が確認できる(E) 86あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(86)前房であるうえに前房内炎症が高度に生じることから,続発閉塞隅角緑内障をきたしやすい.さらに化学外傷後(図1)には,化学物質による直接的な房水流出路障害,化学物質による炎症の影響,消炎のためのステロイドの影響の3要因が相互に絡み合って眼圧上昇が発症するため,隅角形状や眼表面状態をしっかりと判断する必要がある.III角膜疾患関連続発緑内障の治療方針治療の基本は他の続発緑内障ととくに変わるところはない.視神経の障害程度を見きわめたうえで,必要最小限の薬物で最大限の効果を狙いつつ眼圧上昇の原因に応じた治療を行う.しかしながら,角膜疾患眼の特殊性として眼底透見性が不良なことが多いため,つい原疾患の対象である前眼部ばかりに目が行きがちとなり,経過観察中に気づいた頃には視野検査や視神経乳頭検査がまったくなされていなかったということのないように留意すべきである.緑内障治療の面からはかなり制限を課された状況下で診断・治療を進めてゆかねばならない点で,II診断へのアプローチ前述のポイントをもとに緑内障の重症度や病型を診断することになる(表1)が,角膜疾患の種類によって,ある程度は眼圧上昇機序の類推が可能である(表2).虹彩角膜内皮症候群(図3~5)や後部多形性角膜変性症(posteriorpolymorphouscornealdystrophy:PPD),眼内上皮増殖(epithelialingrowth)などでは増殖細胞により隅角が閉塞されPASを生じる続発閉塞隅角機序により眼圧上昇をきたす.一方,角膜移植後緑内障(図1~4)においては一般的にステロイドを使用していることから,眼圧上昇には多かれ少なかれステロイドの影響が加味されている.中でも円錐角膜に対する全層角膜移植術後症例では,若年者の割合が多いことからもステロイド緑内障の頻度が非常に高い.また,それ以外の角膜疾患であっても,基礎疾患として緑内障を有さず,明らかに開放隅角かつ眼内炎症が軽微であればステロイド緑内障を強く疑う根拠となる.レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症に対する全層角膜移植術後症例では,元来浅IOP=17mmHgIOP=27mmHgABCD図2DSAEK眼への線維柱帯切開術原発閉塞隅角緑内障発作後の水疱性角膜症(A).DSAEK施行後に眼圧上昇(27mmHg,B).隅角癒着解離術+線維柱帯切開術を施行し(C,D),眼圧はよく下降(17mmHg).IOP=17mmHgIOP=27mmHgABCD図2DSAEK眼への線維柱帯切開術原発閉塞隅角緑内障発作後の水疱性角膜症(A).DSAEK施行後に眼圧上昇(27mmHg,B).隅角癒着解離術+線維柱帯切開術を施行し(C,D),眼圧はよく下降(17mmHg). あたらしい眼科Vol.32,No.1,201587(87)ロスタグランジン製剤などの点眼や炭酸脱水酵素阻害薬の点眼・内服治療から開始する.ステロイドは可能であるならば,より力価の弱いものに変更するか完全に中止するかして,シクロスポリンなどのステロイド以外の免疫抑制療法に切り替える.炭酸脱水酵素は角膜内皮にも角膜疾患関連続発緑内障は他の続発緑内障と比べてきわめて特殊であるといえる.IV薬物療法の基本通常,早期の眼圧上昇に対しては,bブロッカーやプIOP=22mmHgABCDIOP=19mmHgIOP=29mmHgEFGHIOP=8mmHgIJ図3虹彩角膜内皮症候群(Chandler症候群)に対するDSAEK後緑内障隅角変化の少ない虹彩角膜内皮症候群(A,B).DSAEK施行時に虹彩縫合を試み,PASの進行を予防(D~F).眼圧上昇に対し,エクスプレスRフィルトレーションデバイスを用いた濾過手術施行.異常角膜内皮の増殖はチューブ先端にまでは及びにくく,濾過胞形成良好(H,I).IOP=22mmHgABCDIOP=19mmHgIOP=29mmHgEFGHIOP=8mmHgIJ図3虹彩角膜内皮症候群(Chandler症候群)に対するDSAEK後緑内障隅角変化の少ない虹彩角膜内皮症候群(A,B).DSAEK施行時に虹彩縫合を試み,PASの進行を予防(D~F).眼圧上昇に対し,エクスプレスRフィルトレーションデバイスを用いた濾過手術施行.異常角膜内皮の増殖はチューブ先端にまでは及びにくく,濾過胞形成良好(H,I). ABCDEF図4本態性虹彩萎縮に対する全層角膜移植後緑内障周辺部虹彩萎縮を伴う水疱性角膜症(A,B).全層角膜移植後に眼圧上昇(C).広範なPASを認め上方結膜の瘢痕も高度であったため,経毛様体扁平部硝子体手術と後眼部型バルベルトR緑内障インプラント挿入術を施行し,術後の眼圧は安定化(D~F).ABCEFDIOP=15mmHg図5虹彩角膜内皮症候群(Cogan.Reese症候群)に合併した緑内障虹彩表面を膜状組織が被覆(A,B).PASのない部位でエクスプレスRフィルトレーションデバイスを用いた濾過手術施行.術後3年の時点では濾過良好(D~F).存在し,角膜の透明性維持に関与していることから,内な限り添加されていないか濃度が少ないほうが望まし皮細胞が減少しているような状況下では可能な限り使用い.しかしながら,抗緑内障薬は眼圧下降を主目的としを制限したほうが望ましい.塩化ベンザルコニウムなどていることから,その決定に当たっては主剤の効果を基の防腐剤は眼表面に対して障害的に作用するため,可能準にすべきであり,副作用を恐れて眼圧下降効果の劣る88あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(88) あたらしい眼科Vol.32,No.1,201589(89)薬剤を投与することは本末転倒である.抗緑内障点眼薬はいずれも角膜上皮障害ならびに結膜充血などの副作用を引き起こす可能性があるので,基本的には多剤併用は可能な限り3剤までにとどめるべきであり,点眼薬使用中には眼表面状態の十分な管理・注意が必要である.なお,新しい抗緑内障薬として上市されたROCK阻害薬については,角膜内皮や眼表面に対する影響など未知のことが多く,今後の検討が必要である.V角膜疾患関連続発緑内障に対する手術療法先に述べた内科的療法によっても眼圧がコントロールできない場合には,観血的療法を選択せざるを得ない.角膜移植後緑内障に対する緑内障術式としては,移植した角膜内皮に対する影響や免疫抑制に伴う易感染性を考慮すれば,少しでも適応があるならまずは線維柱帯切除術よりも線維柱帯切開術を選択したほうが良い(図1).すなわち,角膜の透明性が良好で隅角の状態が確認できPASが少ない症例では,眼圧上昇の機序としてステロイド緑内障の関与が強く疑われるため,線維柱帯切開術が良い適応となる.部分的なPASが存在していても癒着期間が短い場合,もしくは面状ではなく線状に癒着をきたしている場合であれば,隅角癒着解離術と線維柱帯切開術の併用が可能である(図2).しかしながら,前述の条件を満たさないときには他の難治続発緑内障の場合と同様にマイトマイシンC(MitomycinC:MMC)併用線維柱帯切除術が必要となる症例が多い.MMC併用線維柱帯切除術の成功率は30~70%(経過観察期間1~5年)と報告によりさまざまであるが,角膜再移植例,無水晶体眼,PASによる閉塞隅角を認める症例では眼圧コントロール成績が低下する1).一方,虹彩角膜内皮症候群や眼内上皮増殖などの眼内増殖性疾患に続発する緑内障に対しては,線維柱帯切開術では切開部の増殖組織による閉鎖のため,線維柱帯切除術でも強膜弁癒着が生じやすいため,いずれも手術成績が不良となる.このような場合にはショートチューブタイプを含めたチューブシャント手術の適応と考えられる(図3,5).ただし,エクスプレスシャント(日本アルコン社)は閉塞隅角緑内障では適応外であり,挿入部位の隅角が開大していることが必要条件となる.さらに眼表面も同時に障害されている化学外傷やSte-vens-Johnson症候群,眼類天疱瘡など眼表面疾患を有する症例では,濾過胞作製部位の結膜も障害されていることから線維柱帯切除術自体が施行困難となるため,ロングチューブタイプのチューブシャント手術の適応と考えられる(図4).しかしながら,バルベルト(エイエムオー・ジャパン社)やアーメド(NewWorldMedical社)などのドレナージデバイス移植は,デバイス先端の角膜内皮への慢性的接触が発生するために,内皮脱落や移植片の拒絶反応などの合併症が多いのが難点である.毛様溝から虹彩裏面後房へ挿入する方法や毛様体扁平部から硝子体腔に挿入する方法は,角膜内皮への影響を最小化できるが,後者では必ず硝子体手術を併用する必要があるため,角膜混濁による眼底透見性の程度が硝子体手術の可否を決める条件となる.眼内内視鏡を用いた硝子体手術も盛んに行われるようになっており,角膜混濁があっても硝子体手術の制限にはならなくなってきている.以上のような観血的手術療法によっても眼圧コントロールが得られない症例には,最終手段としての毛様体破壊術を考慮せざるを得ない.半導体レーザーを用いた経強膜毛様体レーザー光凝固術がもっとも一般的であるが,眼内炎症が遷延したような症例では毛様体突起の位置自体が大幅にずれている場合もあるために術後の眼圧予測がむずかしいだけでなく,惹起された炎症による移植片拒絶反応,低眼圧,視力低下,眼球癆などの合併症がある.近年,これらの合併症を予防し過剰凝固を抑制するために,眼内内視鏡を用いて直視下に毛様体突起部のみを選択的に光凝固する手法など種々の新しい手法が開発されているが,移植角膜などに対する影響に関しては報告されていない.まとめ角膜疾患関連続発緑内障では,通常の緑内障検査を正確に行うことができないために診断が困難であり,発見や治療が遅れることが多い.しかしながら,緑内障の眼圧コントロールが角膜疾患の治療成績にも影響することから,眼圧上昇時の抗緑内障点眼薬による角膜上皮障害には十分に注意して診察する必要がある.また,眼表面炎症の抑制や角膜移植片の拒絶予防の目的で長期にわた 90あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(90)りステロイドや免疫抑制薬を使用する例も多いため,ステロイド緑内障の発症のみならず線維柱帯切除術後の濾過胞感染にも十分な注意が必要である.文献1)SteinJD,McDonnellPJ,LeePP:Penetratingkeratoplastyandglaucoma.PrinciplesandPracticeofOphthalmology,2ndEd.(edsAlbertDM,JakobiecFA,eds),p2860-2873,Saunders,Philadelphia,20002)荒木やよい,森和彦,成瀬繁太ほか:角膜移植後緑内障に対する緑内障手術成績の検討.眼科手術19:229-232,20063)AndreMetal:Glaucomaassociatedwithtrauma.Chemi-calburns,TheGlaucomas.ClinicalScience,2ndEd.(RitchR,ShieldsMB,KrupinT,eds),Chapter59,p1271-1275,Mosby,St.Louis,19964)森和彦:角膜移植と緑内障.眼科プラクティス11緑内障診療の進めかた(根木昭編),p70-71,文光堂,2006