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硝子体手術のワンポイントアドバイス 133.斜視手術既往眼に対する強膜バックリング手術(中級編)

2014年6月30日 月曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載133133斜視手術既往眼に対する強膜バックリング手術(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに若年者の周辺部裂孔に起因する網膜.離は,一般に強膜バックリング手術が第一選択となる.裂孔が最周辺部に位置していても,通常はエクスプラントで大半の症例は裂孔閉鎖が可能であるが,斜視手術既往眼では,バックルの設置に苦慮することがある.この場合,強膜半層切開とインプラントを用いた術式は一つのオプションとなりうる1).●症例16歳,男性.近医で両眼の裂孔原性網膜.離を指摘された.既往歴として7歳で左眼外斜視手術(前後転術)を受けていた.両眼とも眼底周辺部に網膜無血管領域が存在し,耳側最周辺部の網膜無血管野内に裂孔が多発していた.両眼とも耳側に網膜.離を認め,右眼は黄斑部近傍に及び,左眼は黄斑部を含んでいた(図1).まず左眼に対して強膜バックリング術を施行した.術中所見:全周で結膜切開を行い,外眼筋を露出し制御糸をかけた.水平直筋の付着部近傍には斜視術後の強い癒着を認めたため,丁寧に癒着を.離したのち,経強膜冷凍凝固を施行した.外直筋は斜視手術の際に後転されていたので,本来の付着部より4mm後方に付着部が移動していた.外直筋付着部ぎりぎりに#501シリコーンスポンジを縫着しても,裂孔よりかなり後極にバックルの隆起が出ることが予想されたため,外直筋付着部直下にバックルを設置する目的で,H型の強膜半層弁を作製した(図2).ついで#501シリコーンスポンジをインプラントとして同部位に埋没し(図3),強膜弁を縫合した.網膜下液排除は強膜半層弁よりも後極で施行した.術後,ガスタンポナーデの追加を要したが,水晶体は温存したまま網膜は復位した.右眼に対しては,後日,バックル手術を施行し復位を得た.術後,左眼の眼球運動障害は認めず,バックルの隆起も十分に保持できている.図1左眼の術前眼底写真耳側周辺部から黄斑部にかけて網膜.離を認める.裂孔は周辺部に位置していた.図2手術のシェーマ鼻側外直筋4mm後転耳側外直筋は斜視手術の際元の筋付着部に後転されており,バックル設置部位が付着部の直下に位置して内直筋6.5mmいた.インプラント設短縮置のためH型の強膜前後転術による半層弁を作製した.筋付着部の移動図3術中所見#501シリコーンスポンジをインプラントとして同部位に埋没した.●斜視手術既往眼に対する強膜バックリング手術のオプション本症例は家族性滲出性硝子体網膜症(familialexudativevitreoretinopathy:FEVR)が疑われ,硝子体手術の適応も考えたが,FEVRでは肥厚した後部硝子体膜が中間周辺部から周辺部にかけて網膜と強固に癒着していることが多く,硝子体手術の難易度も高いと判断して,まずは強膜バックリング手術を試みた.強膜半層切開+インプラント手術は,鋸状縁裂孔や毛様体裂孔に対して適応となることが多かったが,今回はその方法を応用したものである.近年はこのような症例に対して水晶体切除を併用した硝子体手術を施行する術者が多いと考えられるが,本法は水晶体を温存できる利点もあり,強膜バックリング手術の一つのオプションとなりうる.文献1)三宅淳子,佐藤孝樹,家久来啓吾ほか:斜視手術既往眼に発症した裂孔原性網膜.離に対してインプラント法を施行した1例.眼科手術26:465-468,2013(85)あたらしい眼科Vol.31,No.6,20148590910-1810/14/\100/頁/JCOPY

眼科医のための先端医療 162.高侵達光干渉断層計による加齢黄斑変性の観察

2014年6月30日 月曜日

監修=坂本泰二◆シリーズ第162回◆眼科医のための先端医療山下英俊HPOCTとは高侵達光干渉断層計による加齢黄斑変性の観察佐柳香織(大阪大学医学部眼科学教室)はじめに光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は保険収載されたことにより,多くの施設で採用され,いまや網膜画像診断には欠かせない機器となってきています.加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の診断や治療効果判定には,これまで造影検査が主に用いられてきましたが,OCTが加わることで診断精度が増し,造影検査の試行回数が減ってきています.筆者の施設でもAMDの診断の際には造影検査とOCTの両者を用いていますが,経過観察中は病態に大きな変化がない場合は,OCTのみで行っていることも多くなっています.OCTは技術の進歩に伴い,time-domain(TD)からspectral-domain(SD)へと進化し大幅に撮影時間が短縮し,画像解像度が向上しました.高侵達OCT(highpenetrationopticalcoherencetomography:HPOCT)はTDOCTやSDOCTの波長よりも長波長の光源を用いることで,より深部組織まで光が到達し,硝子体から強膜,脈絡膜まで観察が可能になりました.本稿ではHPOCTのAMD診断への有用性を解説したいと思います.HPOCTは従来のOCTと比較して長波長の光源(1,000.1,060nm)を用いて組織への侵達度を高めた機器です(図1).技術的な面から,ほとんどがsweptsourceを採用しています.組織への侵達度が高いことから,網膜色素上皮下や脈絡膜の組織,病変の観察に優れていています1).SDOCT同様,linescanだけでなく一定面積の走査ができるため,病変の全体像を把握でき,黄斑外の病変でも見のがしが少なくなっています.従来のOCTと比べ,白内障による影響も少ないとの報告もあります.同様に網膜色素上皮下や脈絡膜を観察する方法として,SDOCTを用いたenhanceddepthimaging(EDI)があります2).現在,HPOCTはTopcon社から市販されています.このHPOCTは中心波長1,050nm,深さ方向解像度は8μm,横方向分解能は20μm,スキャンスピードは100,000A-scan/秒です.撮影方法は市販のSDOCTと同様にlinescan,crossscan,radialscan,circlescan,3Dスキャンがあり,走査長は最大12mm,またB-scan画像を最大50枚まで重ね合わせることによって,よりコントラストが高い画像を得ることも可能です.また,3Dスキャンで撮影した画像から冠状断画像(en-face画像)も構築できます.AMDへの応用1.網膜色素上皮下病変の観察AMDは主に網膜色素上皮上(II型)あるいは網膜色素上皮下(I型)に脈絡膜新生血管(choroidalneovas-cularization:CNV)が発生する典型的AMDと,その特殊型である網膜色素上皮下にポリープ状病巣と異常血図1正常眼左がSDOCT,右がHPOCT画像である.SDOCT画像と比較して,脈絡膜の血管構造が詳細に描出されている.(81)あたらしい眼科Vol.31,No.6,20148550910-1810/14/\100/頁/JCOPY 図2加齢黄斑変性左がSDOCT,右がHPOCT画像である.HPOCT画像では網膜下出血内に網膜色素上皮.離があることがわかる.また,脈絡膜まで描出されている.管網が存在するポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV),網膜内の血管腫が網膜下へと進展する網膜内血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)に分類されます.AMDの診断,治療効果の判定には従来,蛍光造影検査が用いられてきて,現在でも必須の検査ではありますが,最近では非侵襲的で定量性のあるOCTを併用している施設が多くなっています.とくにOCTの定量性を利用し,網膜内浮腫や網膜下液などの滲出性変化を数値化して,AMD治療の主流となっている抗VEGF薬治療の際の再治療判定に用いています.SDOCTは出血やfibrinなどの高輝度を示す病変の下や網膜色素上皮.離内の病変の観察ではシグナルが減衰するためやや劣っており,HPOCTのほうが優れています.たとえば,濃いfibrin下のCNVがI型かII型かどうかの判定は,HPOCTでは簡単にできる場合があります(図2).2.脈絡膜の変化HPOCTのもう一つの特徴として,従来のOCTと比較して脈絡膜の描出にも優れている点があげられます.これまで正視眼の脈絡膜厚は,組織学的検討により170.220μmとされてきました.また,年齢を追うごとに薄くなっていくことが知られています.また,日内変動があることも報告されています.OCTを用いた脈絡膜厚は網膜色素上皮から強膜脈絡膜境界までの長さをさし,機器に内蔵されたキャリパーを用いてマニュアルで測定します3).AMDには先述のように典型的AMD,PCV,RAPのサブタイプがあり,既報ではAMDの中心窩脈絡膜厚204.245μm,PCVは243.319μmとなっており,多くの報告でPCVの方が典型AMDよりも中心窩脈絡膜厚は厚いとしています4,5).また,治療によって脈絡膜厚が変化することも報告されており,抗VEGF薬投与単独では脈絡膜には影響が少ないが,光線力学的療法後には脈絡膜厚は減少するといわれています6,7)(発症時脈絡膜が厚くなる原田病や中心性漿液性脈絡膜症では,治療によって脈絡膜厚が減少することが報告されています).脈絡膜厚にはもともと個体差がありますから,脈絡膜厚だけで診断することはできませんが,診断に迷った際には補助的な役割をはたします.また,治療法による脈絡膜厚変化の解析が進めば,治癒機序の解明や治療の選択基準の確立に役立つのではと期待されます.おわりにAMDの診断の際,従来の造影検査にOCTを併用することで診断精度を上げることができます.冠状断像に関しても,今後,解像度がさらに高まれば,インドシアニングリーン蛍光造影(indocyaninegreenangiography:ICGA)の代わりとして非侵襲的な脈絡膜循環の評価が可能となるでしょう.また,AMDの発症機序についても,脈絡膜や網膜色素上皮下の観察が欠かせません.本稿が高侵達OCTの理解を深める一助となりましたら幸いです.文献1)SayanagiK,GomiF,IkunoYetal:Comparisonofspec-tral-domainandhigh-penetrationOCTforobservingmorphologicchangesinage-relatedmaculardegenerationandpolypoidalchoroidalvasculopathy.GraefesArchClinExpOphthalmol252:3-9,20142)MargolisR,SpaideRF:Apilotstudyofenhanceddepth856あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014(82) imagingopticalcoherencetomographyofthechoroidinnormaleyes.AmJOphthalmol147:811-815,20093)IkunoY,KawaguchiK,NouchiTetal:ChoroidalthicknessinhealthyJapanesesubjects.InvestOphthalmolVisSci51:2173-2176,20114)KoizumiH,YamagishiT,YamazakiTetal:Subfovealchoroidalthicknessintypicalage-relatedmaculardegenerationandpolypoidalchoroidalvasculopathy.GraefesArchClinExpOphthalmol249:1123-1128,20115)ChungSE,KangSW,LeeJHetal:Choroidalthicknessinpolypoidalchoroidalvasculopathyandexudativeage-relatedmaculardegeneration.Ophthalmology118:840845,20116)YamazakiT,KoizumiH,YamagishiTetal:Subfovealchoroidalthicknessafterranibizumabtherapyforneovascularage-relatedmaculardegeneration:12-monthresults.Ophthalmology119:1621-1627,20127)MarukoI,IidaT,SuganoYetal:Subfovealretinalandchoroidalthicknessafterverteporfinphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol151:594-603,2011■「高侵達光干渉断層計による加齢黄斑変性の観察」を読んで■今回は大阪大学医学部眼科学教室の佐柳香織先生にでの臨床医学の歴史で臨床医が経験してきたことでよる高侵達光干渉断層計(HPOCT)の仕組みと臨床す.とくに眼科学は臨床検査を眼科医自らの手で多く的な意義についての解説です.学会でも注目の分野でを行う診療科ですから,新しい技術を眼科疾患の診療あり,読者の先生方が学会に出席した場合に,今後,に応用する力をもち,技術開発を担当する技術者には発表のなかで多く接することになると考えます.っきりとした目的をもって要求することができる眼科波長を長波長の光源(1,000.1,060nm)とすること医は,技術開発のキーになれると考えます.昨今,日で組織への侵達度,とくに網膜下のCNVや脈絡膜へ本の成長戦略で医療技術を世界に売り出すことが大きの侵達度を高めた機器であることを明解に説明していな柱となっています.世界が高齢化し眼科医療への需ただきました.これにより,出血やfibrinなどの高輝要がますます高まり,産業としての眼科医療機器の開度を示す病変の下や網膜色素上皮.離内の病変の観察発への期待も大きくなってくると考えます.佐柳先生でHPOCTのほうが優れていて,fibrin下のCNVがの紹介されたHPOCTの開発と日常臨床への応用は,I型かII型かどうかの判定を可能にするとのこと,日大きなヒントをこのような医療機器開発の世界に投げ常臨床での有用性が大きいことがわかります.また,かけていると考えます.日本発信の眼科医療機器が世これまで検査法の発達が臨床的な意味づけに比較して界の眼科医療に貢献し,それにより日本の医療機器産遅れていた脈絡膜の病態を新たに観察する手段として業が大きな恩恵を受けることは,国民の眼科医療の充HPOCTがきわめて有用で,今後の大きな可能性をも実にもつながることですので,われわれ眼科医が日常つことをわかりやすく説明していただきました.臨床から育んだアイデアを形にするようなシステムの新しい技術が新たな疾患概念を作り,それが実際の構築が望まれます.疾患の診断,治療に大きな役割をはたすことはこれま山形大学眼科山下英俊☆☆☆(83)あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014857

新しい治療と検査シリーズ 218.エクスプレスTM(EX-PRESSTM

2014年6月30日 月曜日

新しい治療と検査シリーズ218.エクスプレスTM(EX.PRESSTM)プレゼンテーション:石田恭子東邦大学医療センター大橋病院眼科コメント:稲谷大福井大学医学部感覚運動医学講座眼科学.バックグラウンド緑内障濾過手術のゴールドスタンダードは長らく線維柱帯切除術であったが,本術式は強力な眼圧下降が得られる反面,濾過量の定量性が困難で,術早期の過剰濾過に伴う浅前房や脈絡膜.離などの合併症が生じやすい.緑内障ドレナージデバイスであるアルコン社のエクスプレス(EX-PRESS)は1998年にイスラエルで開発され,2005年以降,強膜弁下挿入器具として濾過手術に使用されている.本術式は緑内障インプラント手術と呼ばれるもので,器具を通して房水を導くため,より定量性のある濾過手術を行える可能性がある..新しい器具の原理と特徴エクスプレスは調圧弁をもたないglaucomadrainagedeviceで,強膜弁下から前房内に挿入し,毛様体から産生され瞳孔領を通り前房に出た房水を,本器具を通じて結膜下へ導き結膜濾過胞に貯留させ,眼圧を下降させる(図1).エクスプレスモデルP-50は,全長が2.64mm,Shaftの太さが400μm,内腔が50μm,眼内迷入や眼外突出を防ぐ目的で,前房側にかえし,強膜側に鍔が付いている.房水の流入口は2カ所あり,先端部が閉塞した場合に備えて,上側面にも流入口が付けられている.また,鍔にはverticalchannelと呼ばれる溝が付いており,エクスプレスを通じて流れ込んだ房水がより後方へ流れるように工夫されている.エクスプレスは心臓治療用ステントと同じステンレス鉱製で,組織異物反応や炎症反応が少なく,3テスラ以下の磁場強度でのMRI撮影であれば偏位や熱発生はなく,安全とされている.なお,エクスプレス本体は専用のデリバリーシステム(EXPRESSdeliverysystem:EDS)の先端に搭載された状態で販売されている.(79)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY房水の流れ図1エクスプレスインプラント手術眼での房水の流れ.実際の手術方法基本的には線維柱帯切除術に準ずる.上方の象限に円蓋部もしくは輪部基底の結膜切開を行い,次に輪部基底の強膜弁を,強膜岬を超えて強角膜移行部(グレーゾーン)まで切込み作製する.症例に応じて,増殖阻害剤であるマイトマイシンC(MMC)を塗布した後,生理食塩水で十分洗浄する.強膜弁下の強角膜移行部の下端で,強膜岬の上に相当する位置から,25ゲージ針にて虹彩面に水平に前房穿刺し,デバイス挿入路を作製する.ペンを持つようにEDSを保持し,挿入孔を通じて,EDSに搭載されたエクスプレスをはじめは90°水平に倒して前房内に挿入する.エクスプレスのかえしとshaftが完全に前房内に入り,鍔の部分でそれ以上前に入らないことを確認した後,EDSを正位に戻し,deliverysystemのボタンを押すと,先端のエクスプレスがリリースされ,移植は完了する.エクスプレス留置後,本器具の前房内での位置が適切であること,さらにサイドポートからBSSを入れてエクスプレスから房水が流れ出ることを確認し,強膜弁を10-0ナイロン糸にて房水流量を確認しながら縫合あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014853 図2手術例耳上に結膜濾過胞,同部位の前房内にエクスプレスが留置されている.する.最後に結膜を房水漏出のないようにしっかり縫合する(図2)..本方法の良い点(エクスプレスの利点と成績)前房開放時間が少なく挿入が比較的容易であること,流出路の大きさが標準化(50μm)できること,虹彩切除や線維柱帯切除が不要であることがその利点としてあげられる.虹彩切除や線維柱帯切除を行わないため,術中の出血や炎症を軽減でき,また,流出路の大きさが標準化できることから,過剰濾過に伴う合併症を減少させる可能性がある.エクスプレス併用濾過手術と線維柱帯切除術を比較した研究では,手術成功の定義を5≦眼圧≦21mmHgとすると,両術式の手術成績は同等であるが,術後1週間以内の低眼圧(眼圧<5mmHg)や脈絡表1エクスプレスと線維柱帯切除術との比較エクスプレス線維柱帯切除術前房開放時間短長手術手技(虹彩,線維柱帯切除)の必要性必要不要前房出血少多術後視力回復早遅手術コスト高安膜.離は有意に少なかった1).また,線維柱帯切除術の成績を比較したメタ解析では,両術式の手術成績および眼圧下降率は同等としながら,術後合併症としての前房出血が有意に少ないことが報告されている2).さらに術後炎症の程度が比較的軽度なため,線維柱帯切除術と比較し一般に術後視力回復が早い3~5).エクスプレスと線維柱帯切除術との比較を表1に示す.文献1)MarisPJJr,IshidaK,NetlandPA:ComparisonoftrabeculectomywithEx-PRESSminiatureglaucomadeviceimplantedunderscleralflap.JGlaucoma16:14-19,20072)WangW,ZhouM,HuangWetal:Ex-PRESSimplantationversustrabeculectomyinuncontrolledglaucoma:ameta-analysis.PLoSOne8:e63591,20133)GoodTJ,KahookMY:AssessmentofblebmorphologicfeaturesandpostoperativeoutcomesafterEx-PRESSdrainagedeviceimplantationversustrabeculectomy.AmJOphthalmol151:507-513,20114)SugiyamaT,ShibataM,KojimaSetal:Thefirstreportonintermediate-termoutcomeofEx-PRESSglaucomafiltrationdeviceimplantedunderscleralflapinJapanesepatients.ClinOphthalmol5:1063-1066,20115)Beltran-AgulloL,TropeGE,JinYetal:ComparisonofvisualrecoveryfollowingEx-PRESSversustrabeculectomy:resultsofaprospectiverandomizedcontrolledtrial.JGlaucoma2013[Epubaheadofprint].EX.PRESSに対するコメント.線維柱帯や虹彩切除の手間が省けるので,虹彩から腔が細すぎるので,目視で確認もできなければ管腔のの出血が少なく,駆逐性出血を起こす危険の高い前房中を掃除することもできない.また,アジア人の狭い開放時間が短い.流量が安定しているので,術後の低前房に挿入すると,エクスプレスの先端が虹彩に接触眼圧に伴う合併症が少ない.エクスプレスは濾過手術することも多い.異物反応が少ないとはいえ,ステン選択の敷居を下げた画期的なデバイスであるといえる.レスは異物反応を起こす.トラベクレクトミーではなしかし,術後眼圧が上昇したときに,エクスプレスく,エクスプレスが絶対適応の症例はどういった症例がじゃまで思いきったニードリングができないことなのかと質問されると私も答えに窮してしまう.形や,実はエクスプレスの管腔が詰まっているのでは?状,材質ともに改良の余地が残されていると思う.という疑念が湧いてしまう.チューブが不透明かつ管854あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014(80)

私の緑内障薬チョイス 13.眼炎症と相性のよい配合点眼薬-コソプト®とアゾルガ®

2014年6月30日 月曜日

連載⑬私の緑内障薬チョイス企画・監修山本哲也連載⑬私の緑内障薬チョイス企画・監修山本哲也13.眼炎症と相性のよい配合点眼薬岩尾圭一郎熊本大学医学部附属病院眼科―コソプトRとアゾルガR―ぶどう膜炎などの眼炎症に伴う眼圧上昇例では,プロスタグランジン関連薬は潜在的に炎症を惹起するリスクがあるため,なるべくその使用を回避したい.すでに複数の点眼を使用されて眼圧も高めであることが多いため,アドヒアランスの面や強い眼圧下降作用が期待できる点で,コソプトRやアゾルガRの処方をお勧めしたい.症例呈示58歳,男性.2週間前から右眼の視力低下と顕著な充血を自覚.近医を受診したところ,前眼部炎症を認め,ぶどう膜炎との診断の下にリンデロンR点眼が開始される.しかし,眼圧上昇と角膜浮腫が生じたため紹介受診となる.初診時,右眼視力矯正0.2,右眼眼圧28mmHg.角膜上皮および実質浮腫,豚脂様角膜後面沈着物が生じており,前房内に強い炎症を認めた(図1).明らかな皮疹などは認めなかったが,ヘルペスなどのウイルス感染性ぶどう膜炎が疑われた.リンデロンR点眼,1%アトロピンR点眼による消炎に加え,眼圧下降点眼を検討すべきであると判断した.前房水採取・PCRを行ったところ,水痘・帯状疱疹ウイルス(varicellazostervirus:VZV)陽性であることが判明し,VZVに伴う虹彩ぶどう膜炎と最終的に診断された.抗ウイルス薬の内服・眼軟膏,抗炎症点眼,眼圧下降点眼で加療を行ったところ,消炎とともに眼圧下降が起こり,8カ月後には点眼をすべて中止としたが,眼圧は正常化し炎症の再燃もない.ぶどう膜炎と緑内障点眼本症例のようなぶどう膜炎とそれに関連して眼圧上昇がみられる場合,その点眼のチョイスには気を配る必要がある.現代の開放隅角緑内障治療では,眼圧下降作用の強さと1日1回でよいという使い勝手の良さから,プロスタグランジン関連薬(PG薬)群がファーストラインの座を確保している.しかしながら,ぶどう膜炎などの炎症に続発する緑内障に対しては,その作用機序から炎症を増悪させる潜在的リスクを持ち合わせるため,少し事情が異なる.ぶどう膜炎の既往がまったくない緑内(77)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY図1水痘・帯状疱疹ウイルス性虹彩毛様体炎著明な毛様充血と角膜浮腫が認められる.角膜後面には豚脂様沈着があり,強い炎症を伴う肉芽腫性ぶどう膜炎の所見である.障眼ですら,いずれのPG薬を使用した場合でも,頻度はけっして高くないものの,炎症が惹起されることが知られる1).本欄の記載内容は,執筆者の個人的見解であり,関連する企業とは一切関係ありません(編集部).あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014851 図2ぶどう膜炎続発緑内障の点眼表当院で患者に渡ししている点眼表の1例である.ぶどう膜炎続発緑内障では,抗炎症のための副腎皮質ステロイド点眼をはじめ,多くの点眼を必要とする.炎症に対するステロイド薬でステロイド誘発眼圧上昇をきたしている可能性が高い場合,炎症管理はほぼできているが徐々に眼圧上昇を生じた場合などは,慎重な管理下にPG薬を使用することも可能とする報告も散見されるようになってきている2)が,急性期の強い炎症状態では可能な限りその使用は避けたほうが望ましい1).以上の点を踏まえ,炎症に伴う眼圧上昇機転における選択肢としては,PG薬に次ぐ眼圧下降効果が期待できるb遮断薬,a2刺激薬,炭酸脱水酵素阻害薬があげられよう.ぶどう膜炎続発緑内障症例の点眼の特徴原発緑内障と異なり,眼炎症眼では多くの点眼を必要とするケースが多い(図2).抗炎症の主力となるリンデロンR点眼やアトロピンR点眼,虹彩後癒着を防ぐための散瞳薬,場合によってはステロイド薬による易感染性に対して予防的に抗菌薬点眼を処方する医師もいらっしゃるであろう.このような多種類の点眼に加え,さらに眼圧下降点眼を追加することになるが,このような続発緑内障の場合,眼圧レベルは少し高めであることが一般的で,単剤のみではいささか不安を感じることも多い.原発緑内障症例で視野進行に伴い徐々に点眼数が増えていく場合と異なり,初回から一度に多くの点眼が処方されるわけであるから,患者サイドからもそれぞれの点眼の役割や重要性を理解するのは困難な状態であると思われ,初発ぶどう膜炎のケースではとくにアドヒアランスの面で気を遣う.そのため,筆者は配合剤をうまく使って,なるべく少ない点眼で管理したいと考えおり,852あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014図3コソプトRとアゾルガRb遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬配合剤として,これまでのコソプトRに加え,2013年からアゾルガRが新しく使用できるようになった.全身的・局所的に合併症の心配がなければ,最初からb遮断薬/炭酸脱水酵素阻害薬配合剤の積極的な使用を行っている.幅が広がったb遮断薬.炭酸脱水酵素阻害薬配合剤この連載でも何度かチモロールとドルゾラミドの合剤であるコソプトRの有用性・利便性が取り上げられているが,これに加え,ドルゾラミドとの合剤であるアゾルガRもわが国で使用が可能となった(図3).この2剤間には,眼圧下降作用に有意な差はないと報告されている3).眼刺激症状の程度や懸濁性点眼独特の使用感など,患者の受け入れやすさなどから点眼が選択できるようになったのは歓迎したい.点眼がとくに多くなりがちな炎症性続発緑内障には,これらの配合剤点眼の利用をぜひ一度検討していただきたい.文献1)山本聡一郎,岩尾圭一郎,平田憲ほか:プロスタグランジン関連眼圧下降薬で惹起された前部ぶどう膜炎.あたらしい眼科28:115,20112)ChangJH,McCluskeyP,MissottenTetal:Useofocularhypotensiveprostaglandinanaloguesinpatientswithuveitis:doestheiruseincreaseanterioruveitisandcystoidmacularoedema?BrJOphthalmol92:916-921,20083)ManniG,DenisP,ChewPetal:Thesafetyandefficacyofbrinzolamide1%/timolol0.5%fixedcombinationversusdorzolamide2%/timolol0.5%inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.JGlaucoma18:293300,2009(78)

抗VEGF治療:抗VEGF薬と地図上萎縮

2014年6月30日 月曜日

●連載抗VEGF治療セミナー監修=安川力髙橋寛二5.抗VEGF薬と地図状萎縮白潟ゆかり香川大学医学部眼科学講座地図状萎縮(geographicatrophy:GA)は萎縮型AMDの代表的所見として知られているが,萎縮型AMDにおけるGAとは別に,滲出型AMDに対する抗VEGF薬療法後にもGAが生じることがわかってきた.GAが進行するとdrymaculaを維持できていても視力が低下してしまうため,注意してフォローする必要がある.GAを生じる疾患加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)は,萎縮型AMDと滲出型AMDに分類される.萎縮型AMDでは,網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)が変性・萎縮して脈絡膜血管が透見できる地図状萎縮(geographicatrophy:GA)を認める.滲出型AMDは,通常の脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)から起こるものを典型AMDといい,滲出型AMDの特殊型として,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)と網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)がある.GAは萎縮型AMDに特徴的な所見であるが,滲出型AMDに対する抗VEGF(vascularendothelialcellgrowthfactor)薬療法後にもGAが生じることがあり,経過とともに拡大する傾向があることが近年数多く報告されている.滲出型AMDに対する抗VEGF治療後のGA発生現在,滲出型AMDに対する治療の中心は抗VEGF薬である.ラニビズマブ(ルセンティスR)を用いた大規模スタディであるMARINAstudyやANCHOR図1RAPの長期経過中にGAの拡大を認めた症例78歳,女性.RAP:初診時矯正視力は0.07,検眼鏡(左)にてアーケード内に多数のドルーゼンがあり,網膜出血も認める.眼底自発蛍光画像(FAF)(右)で小さいGAが多発しているのがわかる.Ranibizumab硝子体内注射を計3回施行し,滲出性変化は消失した.studyでは,抗VEGF薬療法により視力の維持改善を得られている.その一方で,2年の経過でMARINAstudyでは9%,ANCHORstudyでは10%の症例で15文字以上の視力低下をきたしたとも報告されている1,2).Rosenfeldらは,視力低下につながる所見として,RPEの異常や萎縮性瘢痕などがあげられること,それらは時間の経過とともにGAへ発展し,視力低下をきたす可能性があることを指摘している3).CATTstudyでは,2年間にわたる抗VEGF薬療法を行った後,18.3%の症例でGAが発生したと報告されている4).また,IVANstudyでは2年の経過で30%の症例でGAが認められている5).両試験とも,抗VEGF薬の投与回数が多いほうが有意にGA発生率が高いため,GAの発症に抗VEGF薬が関与する可能性が指摘されている.また,滲出型AMDのサブタイプのうち,RAPの症例でGAの発生率が高かったと報告されている4)(図1,2).抗VEGF薬とGA発生の関連VEGF-Aアイソフォームのうち,VEGF-Aは血管新生や炎症惹起,透過性亢進などの病理的作用に(165)大きく関与していると考えられている.一方,VEGF-A121はマウスの脈絡膜毛細血管板の正常な機能維持に関与(75)あたらしい眼科Vol.31,No.6,20148490910-1810/14/\100/頁/JCOPY し6),神経保護作用や,脈絡膜毛細血管板の層構造の形成を維持するという生理的機能もあると報告されている7).このような生理的役割をもったVEGF-A121を過剰に抑制することが,GAの発生・拡大につながるのではないかと危惧されている.現在,使用可能な抗VEGF薬は,ペガプタニブ(マクジェンR),ラニビズマブ,アフリベルセプト(アイリーアR)で,これらが使用可能となる前はベバシズマブ(アバスチンR)をオフラベルで使用していた.ベバシズマブ,ラニビズマブ,アフリベルセプトはVEGF-Aのすべてのアイソフォームを阻害する薬剤で,ペガプタニブはVEGF-A165を選択的に阻害する.また,アフリベルセプトはVEGF-AだけでなくVEGF-B,胎盤増殖因子(placentalgrowthfactor:PlGF)も阻害するなど,作用が少し異なるが,抗VEGF薬の種類でGAの発生率が異なるかについては現時点では明確にはわかっていない.抗VEGF薬投与とGA発生の関連は,さらに長期経過を観察しなければわからないことも多い.中心窩外のGAはただちに視力低下につながるわけではなく,現実に抗VEGF薬を用いた各大規模スタディでは良好な視力維持改善効果が得られ,毎月の固定投与の視力経過はprorenata(PRN)投与よりも安定した視力経過が得られている.その一方で,drymaculaが維持できていても,しばしばGAは徐々に拡大し,中心窩外のGAも経過とともに中心窩に向かって拡大してくる8).GA領域の視細胞は萎縮するため,GAが中心窩に及んで視力が大きく低下してしまうことが懸念されている.今後に向けて抗VEGF薬療法においては,OCTでdrymaculaを維持することが視力の維持改善に最も重要であり,滲出性変化を繰り返すと徐々に視力が低下してくる.したがって,実臨床の場においてもアンダートリートメントにならないよう注意する必要がある.しかし,抗VEGF850あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014図2初診時より4年3カ月後Ranibizumab硝子体内注射3回施行後,drymaculaを維持していたが,網膜出血が少量残存している.GAは著明に拡大した.矯正視力は0.15となった.薬の投与回数の増加に伴う費用負担や全身への副作用のリスクに加えて,GA発生・拡大を極力抑えるという観点からも,投与方法やフォローアップの方法を工夫して,抗VEGF薬の過剰投与を避ける努力も大切である.また,フォローアップ中は,滲出性変化の有無だけでなく,眼底自発蛍光画像でRPEの異常やGAの発生・拡大のチェックも忘れず行う必要がある.文献1)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:Ranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1419-1431,20062)BrownDM,MichelsM,KaiserPKetal:Ranibizumabversusverteporfinphotodynamictherapyforneovascularage-relatedmaculardegeneration:Two-yearresultsoftheANCHORstudy.Ophthalmology116:57-65.e5,20093)RosenfeldPJ,ShapiroH,TuomiLetal:Characteristicsofpatientslosingvisionafter2yearsofmonthlydosinginthephaseIIIranibizumabclinicaltrials.Ophthalmology118:523-530,20114)GrunwaldJE,DanielE,HuangJetal:Riskofgeographicatrophyinthecomparisonofage-relatedmaculardegenerationtreatmentstrials.Ophthalmology121:150-161,20145)ChakravarthyU,HardingSP,RogersCAetal:AlternativetreatmentstoinhibitVEGFinage-relatedchoroidalneovascularisation:2-yearfindingsoftheIVANrandomisedcontrolledtrial.Lancet382:1258-1267,20136)MarnerosAG,FanJ,YokoyamaYetal:Vascularendothelialgrowthfactorexpressionintheretinalpigmentepitheliumisessentialforchoriocapillarisdevelopmentandvisualfunction.AmJPathol167:1451-1459,20057)Saint-GeniezM,KuriharaT,SekiyamaEetal:AnessentialroleforRPE-derivedsolubleVEGFinthemaintenanceofthechoriocapillaris.ProcNatlAcadSciUSA106:18751-18756,20098)LindbladAS,LloydPC,ClemonsTEetal:ChangeinareaofgeographicatrophyintheAge-RelatedEyeDiseaseStudy.AREDSreportnumber26.ArchOphthalmol127:1168-1174,2009(76)

緑内障:Triggerfish®による眼圧測定

2014年6月30日 月曜日

●連載168168監修=岩田和雄山本哲也168.TriggerfishRによる眼圧測定新明康弘北海道大学大学院医学研究科医学専攻感覚器病学講座眼科学分野緑内障セミナースイスのSENSIMED社が開発したTriggerfishRは,軟性のシリコーンでできたコンタクトレンズの内部にマイクロチップと測定器が埋め込まれており,最長24時間にわたり眼圧を5分おきに自動的に測定記録する装置である.高コストであることと,角膜厚などへの影響から実際の測定値をmmHgに変換することができないなど定量性に欠けることが今後の課題である.●はじめに眼圧は24時間のうちに変動しており,日内変動の幅は緑内障の進行に関与するという報告がある1,2).筆者の施設では,眼圧のコントロールが一見良いにもかかわらず,視野狭窄が進行していくような患者には,1泊入院での24時間眼圧測定を行っている.すると外来を受診しないような夜中や早朝に,眼圧が上昇している患者が存在することがわかる.●コンタクトレンズ型眼圧計TriggerfishRスイスのSENSIMED社が開発したTriggerfishRは,軟性のシリコーンでできたコンタクトレンズで,内部に信号処理用マイクロチップ,測定器(圧センサー)と送信用アンテナが埋め込まれている(図1).コンタクトレンズに内蔵する圧センサーは角膜と強膜の移行部に円周状に配置され,その部位の引き伸ばされる力を測定することで眼圧の変動をみている3,4).患者は測定器が読み取った眼圧情報を受信するアンテナを目の周りに貼り付け,ポケットサイズの記録装置を24時間,装着する4)(図2).同時に,この受信用アンテナは,測定用コンタクトレンズにラジオ波を送ることで,マイクロチップの駆動電力を供給する役割も担っており,それによって測定器のコードレス化を実現している.測定用コンタクトレンズはSteep(ベースカーブ8.4)Medium(ベースカーブ8.7),Flat(ベースカーブ9.0)(,)の3種類がある.記録が終わると記録装置をPCに接続して,専用の解析ソフトで読み込むことになる(図3).医療器具としての認可は日本で受けていないので,あくまでも研究目的ということでのみ個人輸入ができる(73)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY図1センサーを実際に装着したところ図2アンテナと記録装置アンテナはシールになっており,患者眼周囲に貼って使用する.黒いボックスが記録装置で,充電して使用する.あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014847 図3記録された実際のデータ画面(http://www.sensimed.ch/参照).●TriggerfishRの導入コストコンタクトレンズ型センサーとアンテナはシングルユースで,とくにコンタクトレンズ型センサーに関しては,測定時にシリアルナンバーをPCから入力して,接続した記録装置に記憶させる仕組みである.同一患者に日を変えて測定しようとしても,一度使用したコンタクトレンズでは2回目の記録はできない.コンタクトレンズ型センサーが800スイスフラン(約9万円),アンテナが80スイスフラン(約9千円)なので,一度記録を行うと約10万円がランニングコストとして発生する.アンテナは目の周囲に貼るシール付きなので,こちらもリユースには向いていない.記録装置とソフトウエアは約100万円であり,こちらには使用回数に制限はない.●TriggerfishRの限界眼圧は24時間連続的に測定しているわけではなく,実際には5分毎にセンサーと記録装置が無線で通信を行って記録されている.コンタクトレンズ型センサーを長時間入れていると,ある程度センサーに厚みと硬さがあるので,あたかもオルソケラトロジーのように角膜が変形して,屈折が変化することがあり,角膜厚自体も浮腫により増加する5).通常1日程度で元に戻るので心配はないが,翌日眼を使うような仕事が控えている場合には,測定を避けたほうがよい.角膜上皮にも軽度の障害848あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014を起こすので,ドライアイ眼では原則禁忌と考えている.また記録は一度に片眼しか行えない.測定した眼圧はmVeqという独自の単位で表示される.残念ながら,これをmmHgに変換する計算式は現在までに存在しない.実際コンタクトレンズ型センサーの装着前後でアプラネーション眼圧計で眼圧を測定しても,mVeqの値との間に相関はみられない.おそらく装着による角膜浮腫などの影響によるものと思われる.文献1)AsraniS,ZeimerR,WilenskyJetal:Largediurnalfluctuationsinintraocularpressureareanindependentriskfactorinpatientswithglaucoma.JGlaucoma9:134142,20002)LeePP,WaltJW,RosenblattLCetal:GlaucomaCareStudyGroupAssociationbetweenintraocularpressurevariationandglaucomaprogressiondatafromaUnitedStateschartreview.AmJOphthalmol144:901-907,20073)LeonardiM,LeuenbergerP,BertrandDetal:Firststepstowardnoninvasiveintraocularpressuremonitoringwithasensingcontactlens.InvestOphthalmolVisSci45:3113-3117,20044)MansouriK,WeinrebR:Continuous24-hourintraocularpressuremonitoringforglaucoma─timeforaparadigmchange.SwissMedWkly142:w13545,20125)DeSmedtS,MermoudA,SchnyderC:24-hourintraocularpressurefluctuationmonitoringusinganoculartelemetrySensor:tolerabilityandfunctionalityinhealthysubjects.JGlaucoma21:539-544,2012(74)

屈折矯正手術:角膜移植後の屈折矯正手術とFLAKのメリット

2014年6月30日 月曜日

屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載169大橋裕一坪田一男169.角膜移植後の屈折矯正手術と坂谷慶子みなとみらいアイクリニックFLAKのメリット角膜移植後であっても,屈折矯正手術は安全性において大きな問題はなく,有効な方法であり,日常生活に必要な裸眼視力を獲得することが可能である.FLAK(femtosecondlaser-assistedkeratoplasty)は縫合の最小化により,乱視の軽減だけでなく,創傷治癒・抜糸時期の早期化の利点があり,角膜移植後の屈折矯正手術を早期に行える可能性がある.●角膜移植後の屈折矯正手術角膜移植後の視力回復を妨げる要因としては,拒絶反応や感染症,上皮障害などがあげられるが,最も大きな要因は屈折異常であることが多い.角膜移植後の乱視を軽減するためには,手術終了時に移植片の歪みを最小限にすることと,術後に選択抜糸やアジャストを行うなどの適切な追加処置が必要である.それでも角膜の不正乱視を生じやすいことが知られており,眼鏡では十分な矯正視力が得られないことが多い.また,強い近視や遠視が生じる場合もあり,不同視のために眼鏡装用が困難となることもある.このような症例では,コンタクトレンズ(contactlens:CL)での矯正が選択されるが,CL不耐,フィッティング不良,高齢のためにCLの取り扱いが困難など,CLでの矯正もむずかしい場合があり,屈折矯正手術が選択肢の一つとなりえる.移植後一定期間が経過して創傷治癒が完成し,抜糸が終了した後,角膜形状や屈折度数が安定したものが屈折矯正手術の適応となる.報告されている屈折矯正手術としては,乱視矯正角膜切開術(astigmatickeratotomy:AK),laserinsitukeratomileusis(LASIK)や有水晶体眼内レンズ(phakicintraocularlens:p-IOL)挿入術などがあり,それぞれ安全性で大きな問題はなく,高い効果を示したとするものが多い1.4).1.AK角膜のスティープな方向に切開を加えてフラット化させる方法である.通常,グラフト接合部の内側に弧状に切開を置く.切開の深さと長さで矯正量を調節し,中等度までの乱視矯正に適しているが,球面度数はほとんど変化しないので近視や遠視を伴っている場合には別の矯正法が適している.2.LASIKおよびphotorefractivekeratectomy(PRK)LASIKはPRKに比べて疼痛が少なく視力回復が早いこと,術後のヘイズが生じにくいことが利点としてあげられる.角膜移植後に行うLASIKの合併症としては,フラップ形成不全,フラップずれ,矯正誤差(予測性が劣る),矯正視力低下などのリスクが通常のLASIKと比較すると若干高くなる.また,拒絶反応や移植片不全の惹起などの可能性についても,術前に十分なインフォームド・コンセントが必要である.フラップ作製にはマイクロケラトームを使用する.強い吸引圧をかけるが,グラフト接合部にずれを生じたという合併症の報告はなく,フラップは接合部をまたぐ形になるが,創傷治癒が完成していれば問題はない.しかし,接合部が菲薄化している症例や角膜曲率が極端にフラットまたはスティープである症例では,フラップ形成不全の可能性が高くなる.また,瞼裂狭小例ではマイクロケラトームの吸引不良が起こりやすく,LASIKの適応を慎重に判断しなければならない.術前の角膜厚と術後のベッド厚については通常のLASIKと基準は同じである.また,角膜内皮細胞の機能が低下している症例ではフラップの接着が弱い傾向があり,フラップを戻してからの安静時間を長めにとり,バンデージソフトCLを装用する.3.p.IOL高度の屈折異常や角膜の薄い症例などでは,p-IOL(ArtisanR/ArtiflexR/ICLRなど)を用いた矯正が適応となることがある.角膜移植眼では内皮細胞が減少している症例も少なくないので,術中ソフトシェル法で角膜内皮を保護する,後房型のレンズを選択するなどの配慮が必要である.(71)あたらしい眼科Vol.31,No.6,20148450910-1810/14/\100/頁/JCOPY abcabc図角膜トポグラフィの変化a:角膜移植前0.04(0.1×S.4.00D(C.3.00DAx10).b:角膜移植全抜糸後0.5(1.5×S.0.25D(C.3.00DAx65).c:LASIK後1.2(1.5×S.0.25D(C.0.75DAx100).●フェムトセカンドレーザーを使用した角膜移植の利点FLAKでは,さまざまな形状の角膜切開を行うことができる.従来のトレパンと角膜パンチで切開する方法と比較して,トップハット型やジグザグ型に切開を行うと,実質の接着面積が広くなることにより創口の強度が増加する.そのため,縫合が少なくてすむので角膜乱視の発生を軽減することができ,創傷治癒が早まるので抜糸を早期に行うことができる.その結果,早期の視力回復が得られる可能性がある5).当院においてFLAK後にiDesigniLASIKを行った846あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014症例を紹介する.【症例】22歳,男性.円錐角膜.初診時視力は0.04(0.1×S.4.00D(C.3.00DAx10°).iFSフェムトセカンドレーザーを使用してジグザグ切開にて全層角膜移植を施行し,移植後11カ月で全抜糸した.視力0.5(1.5×S.0.25D(C.3.00DAx65°)を得たが,裸眼視力改善の希望が強く,6カ月後にLASIKを施行した.LASIK前の角膜厚は608μm,内皮細胞数は1,795/mm2,直径は11.4mm,K値は42.25Dであった.ケラトームはNIDEK社製のMK-2000/9.0リング/130ヘッドを使用した.AMO社製のiDesignにて照射プログラムを作成し,エキシマレーザーはVISXStarS4IRを使用した.合併症はなく,1.2(1.5×S.0.25D(C.0.75DAx100°)と良好な裸眼視力が得られた(図).●おわりに今後も長期にわたって慎重に経過を観察する必要があるが,角膜移植後であっても屈折矯正手術は安全性において大きな問題はなく,有効な方法であり,日常生活に必要な裸眼視力を獲得することが可能である.とくに,不同視による眼鏡矯正困難や,CL不耐に対しては有用な屈折矯正方法であり,患者の満足度は高い.FLAKでは,縫合の最小化による乱視の軽減化だけでなく,創傷治癒・抜糸時期の早期化の利点により,角膜移植後の屈折矯正手術を早期に行える可能性がある.文献1)ViswanathanD,KumarNL:Bilateralfemtosecondlaser-enabledintrastromalastigmatickeratotomytocorrecthighpost-penetratingkeratoplastyastigmatism.JCataractRefractSurg39:1916-1920,20132)LeeHS,KimMS:FactorsrelatedtothecorrectionofastigmatismbyLASIKafterpenetratingkeratoplasty.JCataractRefractSurg26:960-965,20103)MoshirfarM,BarsamCA,ParkerJW:ImplantationofanArtisanphakicintraocularlensforthecorrectionofhighmyopiaafterpenetratingkeratoplasty.JCataractRefractSurg30:1578-1581,20044)AlfonsoJF,LisaC,AbdelhamidAetal:Posteriorchamberphakicintraocularlensesafterpenetratingkeratoplasty.JCataractRefractSurg35:1166-1173,20095)ChamberlainWD,RushSW,MathersWDetal:Comparisonoffemtosecondlaser-assistedkeratoplastyversusconventionalkeratoplasty.Ophthalmology118:486-491,2011(72)

眼内レンズ:強角膜一面切開創のOCT画像

2014年6月30日 月曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎334.強角膜一面切開創のOCT画像小池伸子財団法人田附興風会医学研究所北野病院眼科水晶体超音波乳化吸引術において,創口作製は,その後に続く眼内操作を安全に遂行するための重要なステップである.また,創構築の良否は,術後感染症や手術惹起乱視に影響すると思われる.近年の光干渉断層計(OCT)技術の進歩は,白内障手術創の非侵襲的な形態的解析を可能なものとしている.強角膜一面切開創の術後早期にみられる形態的特徴および創傷治癒過程を,前眼部OCTの断層画像で評価した.●創口作製法について小切開白内障手術における創口作製法には角膜切開と強角膜切開がある.角膜切開は比較的簡便だが,創閉鎖の確実性では強角膜切開が勝っていると思われる.眼内炎の発症頻度については賛否両論あるが,角膜切開のほうが強角膜切開に比べてリスクが高いとの報告がある.強角膜四面切開は創を弁状に作製しているので確実な創閉鎖が期待できるが,手技はやや煩雑である.強角膜一面切開は角膜切開の簡便さと強角膜切開の創の堅牢さを兼ね備えた切開法と考えられ,近年では創口作製手技の主流となっている.●術後早期の所見今回,強角膜一面切開の切開部を前眼部OCT(RTVue-100)を用いて観察したが,術後1日目から6カ月後までの各時期で特徴的な所見が得られた.図1に示すように,創部に対して垂直の断面を撮影した.まず,術後早期に切開創の結膜側と内皮側に見られる所見を解説する.結膜側の創の切れ込み(図2)は術後1日目では91.8%で認められた.術後約1週間で35.1%に減少し,術後1カ月では全例で結膜表面は平滑化した.結膜側の創の癒合が完成すれば,創経由での感染リスクは減少すると考えられ,抗生物質点眼薬の使用期間の妥当性を検討するうえで有力な根拠となる.創の内皮側の所見としては,デスメ膜.離,亀裂(図2),段差(図3)が認められる.デスメ膜.離は術後1日目には55.7%で認められ,術後2.3週目では14%となり,1カ月には1.6%となった.亀裂は術後1日目には41.2%に認められたが,術後2.3週目には著減し,術後1カ月で消失した.段差は術後1日目では50.5%(69)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY図1OCT撮影部デスメ膜.離結膜の亀裂内皮側の亀裂250μm図2結膜側の創の切れ込み,デスメ膜.離,亀裂に認められ,術後1カ月では2.9%程度となったが,以後6カ月目まで残存した.以上の結果から,強角膜一面切開創の内皮側の治癒機転は1カ月程度で完成するものと考えられる.あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014843 内皮側の段差250μm図3段差内皮側の段差250μm図3段差隆起250μm図5創の接合面の隆起収縮250μm図4創の接合面の収縮●術後1カ月以降の所見術後1カ月目以降に出現する所見として,内皮側の創の接合面における収縮(図4),隆起(図5)がある.いずれの所見も術後1カ月目から漸増する傾向にあった.収縮の所見は術後早期に見られる段差と似ているが,段差が遷延したものではなく,時間経過とともに出現したものである.自検例では2.3週で16%,6カ月で37%にみられた.Wangら1)は角膜切開での“retraction”の発症頻度は術後2.3週で33.3%,1.3年で75.0%,3年で90.5%と報告しており,変化は長期にわたるものと思われる.隆起の所見は術後6カ月目で約60%に認められた.これらの所見は,創の瘢痕形成の過程と考えられる.●まとめ透明角膜切開における創部の観察を行った既報では,術後1日目の創の内皮側の亀裂は85.7%1),70%2)であったが,自検例では41.2%と少ない結果だった.強角膜一面切開は強膜組織を含む創構築であり,このことが内皮側の創の形態回復にも寄与すると思われる.また,強角膜一面切開は結膜による創表面の被覆も期待できることから,感染対策としてもすぐれた手技であると考える.文献1)WangL,DixitL,WeikertMetal:Wound-healingchangesinclearcornealcataractincisionsEvaluatedusingFourier-domainopticalcoherencetomography.JCataractRefractSurg38:660-665,20122)XiaY,LiuX,LuoLetal:Earlychangesinclearcorneaincisionafterphacoemulsification:ananteriorsegmentopticalcoherencetomographystudy.ActaOphthalmol87:764-768,2009

コンタクトレンズ:ハードコンタクトレンズ-素材,装用期間,装用方法,乱視用,老視用など-

2014年6月30日 月曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方はじめの一歩監修/下村嘉一1.ハードコンタクトレンズ糸井素純道玄坂糸井眼科医院―素材,装用期間,装用方法,乱視用,老視用など―●特徴現在,ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)の主流となっているガス透過性ハードコンタクトレンズ(rigidgaspermeablecontactlens:RGPCL)の特徴は,ソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)に比べて,重篤な眼障害の発生頻度が少なく,眼球への酸素供給量が多く,円錐角膜,強度角膜乱視などの角膜乱視の矯正が可能であることである.角膜に傷ができても,SCLではバンデージ効果のため痛みを感じにくいが,HCLでは痛みを感じ,結果として,傷が重症化しにくい.HCL装用下の酸素供給は主に瞬目によるレンズの動きに伴う涙液交換により行われ,SCL装用下の酸素供給は主に素材を通過する酸素による.そのためSCLでは,レンズ厚が厚くなるほど,酸素供給量が低下するが,HCLではレンズ度数が厚くなっても,フィッティングが良好であれば,高いレベルの酸素供給を確保できる.HCLは,角膜上でも,その形状が保持されるため,眼鏡では矯正できない角膜乱視を矯正することができる.その一方で,HCLには装用開始初期の特有の異物感があり,毎日,一定時間以上装用しないと,異物感は軽減しにくい.SCLに比べて,レンズが小さく,目への接着性が弱いため,レンズがずれたり,紛失することも多い.3時9時の角結膜上皮障害,眼瞼下垂などHCL特有の合併症もある.●素材HCLは,非ガス透過性ハードコンタクトレンズ(polymethylmethacrylatecontactlens:PMMACL)とRGPCLに大別される.PMMACLが日本に登場したのは1951年であり,60年以上の歴史があるが,近年,RGPCLの普及により,PMMACLの処方割合はHCLの1%未満となっている.RGPCLにおいては,次々と酸素透過性の高い素材が開発され,素材の酸素透過性により低Dk(40未満),中Dk(40以上,90未満),高Dk(90以上)の3種類に分類されている.日本では高(67)0910-1810/14/\100/頁/JCOPYハードコンタクトレンズの素材■PMMA■低Dk0.7%10.6%■中Dk■高Dk28.2%60.4%2013年2月図1日本におけるハードコンタクトレンズ素材別の処方割合DkのRGPCLが最も普及している(図1)が,欧米では中DkのRGPCLが最も普及している1).これは日本の酸素透過性を重視する考え方と欧米のレンズの汚れやフィッティングを重視する考え方の相違によるものと考える.●装用期間一部,6カ月交換,あるいは,1年交換のHCLと販売されているものもあるが,ほとんどのHCLは従来型として販売されている.つまり,変形,傷,破損などのレンズの劣化,あるいは度数の変化,角膜形状の変化など装用者側の要因で交換し,定められた装用期間はない.一般的にはRGPCLの寿命は2.3年と考えられている.酸素透過性が高い素材ほど,寿命は短い.逆に低Dk素材のRGPCLであれば,管理状態が良ければ,10年近く使用できることもある.●装用方法終日装用と連続装用である.終日装用は就寝前までには必ずコンタクトレンズ(contactlens:CL)をはずす使用方法であり,連続装用はCLを就寝中もはずさずにあたらしい眼科Vol.31,No.6,2014841 842あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014(00)連続して装用する使用方法をいう.これまでは,多くのRGPCLが連続装用CLとしての認可を受けていたが,実際には終日装用で使用されており,近年,新しく国の認可を受けたRGPCLは,たとえ酸素透過性が高い素材であっても,終日装用CLとして販売されていることが多い.●特殊な目的のHCLHCLには乱視用,老視用,円錐角膜用,角膜移植術後用,屈折矯正術後用,オルソケラトロジーレンズなどの特殊目的のCLがある.●乱視用一般に乱視用のCLはトーリックCLと呼ばれる.トーリックCLは,角膜上でCLの軸が適正な位置に安定することが必要であり,そのためにレンズデザインに工夫がなされている.乱視矯正と軸安定のためのレンズデザインにより,トーリックHCLは後面トーリック,前面トーリック,両面トーリックにレンズデザインを分けることができる.●老視用一般に老視用のCLは遠近両用,バイフォーカル,あるいはマルチフォーカルCLなどと呼ばれる.交代視型と同時視型があり,交代視型は目線の移動が必要であるが,像の鮮明度は良好である.●円錐角膜用,角膜移植術後用,屈折矯正術後用これら特殊目的でデザインされたHCLは,多段カーブHCLである.処方目的に応じて,中央部,中間周辺部,周辺部のそれぞれの部位で,HCLの後面カーブが異なる値で設定されている.角膜形状にフィットするようにレンズデザインが工夫されている.●オルソケラトロジーレンズ多段カーブHCLで,HCLのもつオルソケラトロジー(角膜扁平)効果により,近視を矯正するものである.この近視矯正効果は可逆的なものである.効果を維持させるためには,原則としてretainerlens(維持レンズ)の装用が必要となる.●適応(表1)CLの適応には,絶対的なものなく,状況に応じた判断が必要となる.そのため,処方する医師は,処方前のスクリーニング検査を確実に実施し,各種CLの特徴を理解し,患者の年齢,目の状態,希望する装用方法などを加味した上で,CLの適応を見きわめ,適切なCLを選択し,最適な状態で処方する.文献1)MorganPB,WoodsCA,TranoudisIGetal:Internationalcontactlensprescribingin2013.ContactLensSpectrumJanuary:30-35,2014表1ガス透過性ハードコンタクトレンズの適応良い適応1.円錐角膜,角膜不整乱視,強度角膜乱視などの角膜乱視比較的良い適応1.強度近視2.装用時間が長い3.若年者(装用期間が長いことが予想される)4.週7日装用を予定している5.軽度のドライアイ悪い適応1.過激なスポーツ(柔道,ラグビー,サッカーなど)2.マリンスポーツ(サーフィン,ダイビングなど)あまり良くない適応1.occasionaluse2.スポーツ(テニス,野球,バスケットボールなど)3.ハードコンタクトレンズ特有の異物感の訴えが強い人,あるいは継続する人4.3時9時の角結膜上皮障害,結膜充血の程度が強い人5.コンタクトレンズ装用による眼瞼下垂の人6.中高年のハードコンタクトレンズ未経験者ZS931

写真:慢性中心性漿液性脈絡網膜症(chronic CSC)

2014年6月30日 月曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦361.慢性中心性漿液性脈絡網膜症加藤雄人京都府立医科大学眼科学教室(chronicCSC)舞鶴赤十字病院眼科図2図1のシェーマ①:atrophictract(descendingtract)図1眼底カラー写真(パノラマ合成)黄斑部を含め,漿液性網膜.離(SRD)は認めない.後極部から網膜下方にかけて広範な網膜色素上皮(RPE)の萎縮(atrophictract)を認める.図4光干渉断層計(OCT)像,水平断図3眼底自発蛍光(FAF,パノラマ合成)萎縮したRPEに一致して著明な低蛍光を示している.SRDは認めていないが,すでに視細胞内節外節接合部(IS/OSライン)は消失している.深部強調画像(EDI-OCT)では脈絡膜の肥厚(両矢印)と脈絡膜大血管の拡張像(*)を認める.(65)あたらしい眼科Vol.31,No.6,20148390910-1810/14/\100/頁/JCOPY 中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouschori-oretinopathy:CSC)は壮年男性に好発し,ストレスやステロイド薬などが発症の誘因となり,黄斑部に平坦な漿液性網膜.離(serousretinaldetachment:SRD)をきたす疾患である.急性期には黄斑部にSRDをきたしても視力低下が軽度なものが多い.また,黄斑外に病変がある場合は自覚症状がほとんどなく,初診時にすでに再発例や遷延例である症例にしばしば遭遇する.慢性CSC(chronicCSC)はSRDの再発,遷延を特徴とし,長期間にわたりSRDが続くため,網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)障害をきたす.SRDは急性CSCに比べ小さい傾向があり,検眼鏡的には網膜内および網膜下の黄白色の沈着物やRPE萎縮を認めることが多い.RPE障害が強いものはdiffuseretinalpigmentepitheliopathy(DRPE)と呼ばれることもある1).濃縮された網膜下液が遷延し,重力で下方に垂れ広がることで広範囲なRPE委縮を帯状にきたすことがあり,atrophictractもしくはdescendingtractと呼ばれる(図1,2).RPEの代謝状況を反映する眼底自発蛍光(fundusautofluorescence:FAF)ではatrophictractに一致して帯状の低蛍光を呈し,RPEの広範囲な萎縮として観察できる(図3).光干渉断層計(OCT)ではSRDの遷延に伴い外顆粒層の菲薄化,視細胞外節の伸長所見や欠損像,視細胞内節外節接合部(IS/OSライン)の反射減弱もしくは欠損,中心窩網膜の菲薄化などを特徴とする.近年ではOCT深部強調画像(EDI-OCT)により脈絡膜の肥厚(脈絡膜血管拡張)が見られることが明らかとなった.治療は急性CSCと同様,フルオレセイン蛍光眼底造影での漏出点への網膜光凝固を検討するが,面状の蛍光漏出をきたしている症例では光線力学的療法(photodynamictherapyPDT)が奏効する2,3).文献1)IidaT,SpaideRF,HaasAetal:Leopard-spotpatternofyellowishsubretinaldepositsincentralserouschorioretinopathy.ArchOphthalmol120:37-42,20022)YannuziLA,SlakterJS,GrossNEetal:Indocyaninegreenangiography-guidedphotodynamictherapyfortreatmentofchronicentralserouschorioretinopathy:apilotstudy.2003.Retina32Suppl1:288-298,20123)YannuzziLA,SlakterJS,GrossNEetal:Indocyaninegreenangiography-guidedphotodynamictherapyfortreatmentofchroniccentralserouschorioretinopathy:apilotstudy.Retina23:288-298,2003840あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014(00)