特集●黄斑疾患診療トピックスあたらしい眼科30(2):177.184,2013特集●黄斑疾患診療トピックスあたらしい眼科30(2):177.184,2013光干渉断層計(OCT)最前線UpdateonOpticalCoherenceTomography丸子一朗*はじめに光干渉断層計(OCT)は,1997年にわが国に導入されて以来さまざまな黄斑疾患の形態評価に利用されている.2006年にはじめて市販化されたスペクトラルドメイン(SD)OCTはさらに高速化・高解像度化され現在では臨床だけではなく研究レベルにおいてもなくてはならないものとなり,各種黄斑疾患の病態解明に大きな役割を果たしている.最近では,撮影画像を複数枚重ね合わせる①加算平均処理により,1枚のみ撮影した画像では描出されなかった病変が描出でき,また逆に映り込んでしまったアーチファクトなどのノイズを軽減することが可能となった.さらに,この方法に加えて後述する②enhanceddepthimaging(EDI)とよばれる手法を用いることで脈絡膜の観察が簡単に可能となった.一方で,通常のOCTよりも長波長の光源を使用した③高侵逹(SS)OCTが研究・開発され,それを用いた網膜だけでなく深部の脈絡膜・強膜を観察する試みも進んでいる.本稿では,これまでは描出できずに観察できていなかったOCT所見について具体的な症例を紹介しながら,特に①②③で示した新しい手法や装置について解説する.IOCT最前線①:加算平均処理加算平均処理をすることで,OCT上のアーチファクトやノイズを軽減できることはわかっていたが,初期のOCT,いわゆるタイムドメイン(TD)OCTでは1枚の画像を撮影するのに約1秒程度の時間を要していたため複数枚の画像が同じ位置の画像であると証明できないことから,それらの画像を重ね合わせてもノイズを軽減するどころか逆に実際の画像とかけ離れてしまうため実用的ではなかった.SD-OCTの時代になると撮影速度が大幅に速くなったためほんの一瞬で複数枚の撮影が可能となり,ほとんどずれも生じなくなったことで実用レベルでの加算平均処理が可能となった.またHeidelberg図1加算平均処理によるOCT画像重ね合わせの枚数によって画像の鮮明さが増しているのがわかる.上段:重ね合わせなし,中段:10枚加算,下段:100枚加算.*IchiroMaruko:福島県立医科大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕丸子一朗:〒960-1295福島市光が丘1番地福島県立医科大学医学部眼科学講座0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(43)177社のSpectralisOCTのように自動固視追尾機能(eyetracking)がついている装置では固視微動が生じたり瞬目したりしてもほぼずれることなく画像を撮影可能で重ね合わせ画像取得がより簡便である(図1).最近ではその他NIDEK社のRS-3000の最上位機種でも自動追尾機能が付属している.ここでは加算平均処理で新たに注目されるようになったhyperreflectivefociおよび視細胞内節外節境界(IO/OS)ラインと網膜色素上皮ラインの間に観察されるいわゆる第3のラインについて紹介する.1.Hyperreflectivefoci初期の糖尿病網膜症の視力低下の原因の一つに黄斑部に浮腫をきたす糖尿病黄斑症がある.糖尿病黄斑症では黄斑部網膜の肥厚が生じているが,これは黄斑部網膜血管の内皮異常に伴う血管透過性亢進による網膜の膨化,.胞様黄斑浮腫,中心窩網膜.離によって起こる1).実際にOCTで詳細に観察するとそのいずれもが別個に起図2糖尿病黄斑症(75歳,男性.右眼矯正視力0.3)上:眼底写真.網膜出血,硬性白斑,黄斑浮腫が眼底後極部全体に観察される.下:OCT水平断.黄斑浮腫だけでなく,一部漿液性網膜.離もみられる.Hyperreflectivefociを示す高反射点が多数みられる.こっているわけではなく,同時に観察されることも多い.近年,加算平均処理によりノイズを除去したSDOCT画像において糖尿病黄斑症例を観察すると網膜浮腫を生じている部位に多数の高反射点が存在していることが報告され,これをhyperreflectivefociとよんだ2)(図2).これまでのTD-OCTや重ね合わせなしのSD-OCTでも高反射点は描出されていたが,微細な病変であるためこれらのOCTでは再現性が低くノイズと解釈されていたと考えられる.Hyperreflectivefociは通常網膜外網状層を中心に観察されるが,中心窩.離を伴う症例では網膜.離内にも存在が確認されることもある.これは網膜内に貯留されている滲出液が網膜下に移動し中心窩.離が形成される際に外網状層に蓄積されていたhyperreflectivefociが滲出液と一緒に網膜下に流入するからと考えられている.糖尿病黄斑症では中心窩への硬性白斑の蓄積は視力を極度に低下させる因子であるが,hyperreflectivefociが多く描出される症例で中心窩での硬性白斑の沈着が多いことも報告されている.このため,hyperreflectivefociは硬性白斑の前駆物質であり,網膜下での蓄積が中心窩への硬性白斑の沈着の原因になっている可能性が指摘されており,注目されている3).同様の所見は網膜静脈分枝閉塞症による黄斑部浮腫でも観察されている4).2.第3のラインSD-OCTでは網膜10層の詳細な観察が可能となった.このなかで外境界膜は解剖学的には膜が形成されているわけではないが,光学的な境界面が形成されることから高反射のラインとして観察される.また,視細胞層内には10層の分類に含まれない高反射帯が観察されることがわかってきた.このラインは解剖学的にははっきりしたものがあるわけではないが,外境界膜が描出されるのと同様の機序で視細胞の内節と外節の境界部に光学的に強い反射が起こっていることが推察され,現在でも一般的にIS/OSラインとよばれている.実際,網膜色素変性や網膜.離術後の症例などにおいて視力不良例でIS/OSの描出が不良なことが多いことからさまざまな黄斑疾患でIS/OSが観察できるかどうかは視力予後を推測するうえで重要である.178あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013(44)さらに最近加算平均処理によるノイズ軽減によって,IS/OSと網膜色素上皮細胞の高反射の間にもう一つの高反射帯が描出されることがわかってきた.これについては,まだ完全に解釈されたわけではないことから外境図3正常眼OCT画像(50歳,男性)網膜の各層が鮮明に描出され,第3のラインも途切れなく観察できる.界膜,IS/OSラインから数えて3番目のラインということで第3のライン(3rdlineor3rdband)とよばれている(図3).第3のラインは基本的にIS/OSおよび網膜色素上皮のラインと平行に走っているが,中心窩ではIS/OSがやや上に凸の山型になっているのに対し,第3のラインは網膜色素上皮と平行のままで凹凸は観察されない.分子解剖学レベルでは視細胞外節の末端は網膜色素上皮細胞の微絨毛まで続いているが,中心窩では傍中心窩よりも視細胞外節がやや長いことが示されていることから,第3のラインは視細胞外節末端(coneoutersegmenttips:COST)と考えられるようになった.一方で,Spaideら5)は解剖学的所見およびOCTによる網膜外層ラインの位置関係を詳細に比較することでこ図4中心暗点を主訴に来院したが,矯正視力1.2と視力良好で,初期occultmaculardystrophyと診断された症例(61歳,男性)上左:マイクロペリメトリー.感度が良好な部位と不良な部位が混在している.上右:多局所網膜電図.ほぼ正常だが,中心窩部分だけ振幅が小さい.下:OCT画像.網膜全体がやや菲薄化し,第3のラインが中心窩で不鮮明になっている.(45)あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013179れまでの考え方と異なる見解を示している.それによれば,IS/OSや第3のラインにしても光学的境界面というだけにしては厚みをもった組織としてOCTで描出されていることから,この2つはもう少し広い範囲を表しており,IS/OSとしているラインは視細胞内節のミオイドとエリプソイドのミトコンドリアを多く含むエリプソイド全体を,第3のラインは外節末端ではなく外節末端を含む網膜色素上皮の微絨毛に包まれている全体(conesheathorcontactcylinder)と推察している.これが正体だとするとこれまでのIS/OSラインやCOSTラインというように“線”というよりも2ndbandや3rdbandのように“帯”とよぶほうが適切かもしれない.なお,本稿では,これ以降も読者にわかりやすいようにIS/OSと第3のラインの呼称を使用する.第3のラインは正常眼においても必ず描出できるわけではないことがわかっている.Riiら6)はSD-OCTで正常眼の46眼中44眼(96%)で第3のラインが描出可能であったと報告している.自験例では中心窩部位を斜めにすることなくまっすぐ水平に撮影することで117眼中115眼(98.3%)において第3のラインは描出可能であった.描出できない症例において実際第3のラインが存在しないのか解像度が不足しているのかについては今のところ不明であり,今後の研究が待たれる.また,これまでoccultmaculadystrophy(図4)やBest病,AZOOR(acutezonaloccultouterretinopathy)7)などで第3のラインの描出不良が指摘されているが,その描出の有無が視力や網膜感度などとどれほど関連しているかも詳細は不明である.IIOCT最前線②:EDI.OCT脈絡膜は全眼球血流の80.90%を占めるとされ,視細胞を含む視機能への影響は少なくないことは明らかである.ただし,脈絡膜血流や形態的な変化が生じても網膜への直接的な影響がなければ,それはサブクリニカルな変化であり自覚症状も生じないことからその発見および評価は困難であった.これまでもインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA)を用いれば脈絡膜血流はある程度評価可能であったが,侵襲的な検査であることやもともと三次元的な組織で厚みのある脈絡膜を二次元的180あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013にしか観察できないなどの限界があった.2008年にSpaideら8)が市販のOCT装置を用いた脈絡膜を観察する方法としてEDI-OCTの手法を報告した.通常SDOCTにおいては,光源の至適距離から遠ざかるほど画質は低下し,逆に近いとより高い画質が得られる.実際臨床的にOCT撮影をしているときには,上方が硝子体側,下方が脈絡膜側を表示することが一般的で,その場合は光源の至適距離に網膜が近接するようになるので網膜側が高感度な画像が得られる.この特性を脈絡膜観察に利用するのがEDI-OCTの手法である.Heidelberg社のSpectralisOCTでは,OCT装置を近接させることで画面全体に通常とは上下反転した画像が得られる.この画像は,光源からの至適位置が脈絡膜側になるため,脈絡膜が鮮明に映しだされている.SpectralisOCTではこれにさらに先述した固視の自動追尾機能と加算平均処理を組み合わせることで,より鮮明な脈絡膜像の取得が可能である.現在はモニター上にEDIボタンがあり,それをマウスでクリックしただけで,EDIモードで撮影が可能であり,その場合には自動的に上下反転を元に戻してくれるため観察が容易である.他のOCT装置でもEDI-OCTの手法は可能で,トプコン社の3D-OCT,NIDEK社のRS-3000,Optvue社のRTvueなどでも脈絡膜観察用の設定がソフトウェアとして組み込まれている.脈絡膜をOCTで観察してみると正常や疾患眼に限らず加齢,眼軸延長,眼屈折値に伴い薄くなる傾向が示されている.筆者は脈絡膜をOCTで観察可能となったことの現在までの最大のメリットは,脈絡膜の厚みを数値として評価可能にしたことと考えている.これによって各疾患や症例ごとの脈絡膜が比較可能となった.各OCT装置にはそれぞれ網膜厚を測定するためにキャリパー機能が付属しており,これをそのまま脈絡膜厚測定に用いることができる.脈絡膜厚の測定は,網膜色素上皮ラインの下縁から脈絡膜-強膜境界(CSI)までと定義できるが,症例によっては,鮮明に描出されない場合もあり注意が必要である.現在のところ網膜厚測定のように自動測定可能なソフトウェアはなく,あってもまだ未完成であるため必要に応じてマニュアル測定をしなければならない.これため測定者や装置によって同じ症例,(46)図5慢性型中心性漿液性脈絡網膜症(63歳,男性.右眼矯正視力0.6)左上:眼底写真.中心窩から下方にかけて漿液性網膜.離がみられる.左下:EDI-OCT垂直断.中心窩を含む漿液性網膜.離がみられる.脈絡膜は肥厚し,中心窩下脈絡膜厚は459μm.右上:フルオレセイン蛍光眼底造影.黄斑部に過蛍光がみられるが,漏出点は特定できない.右下:インドシアニングリーン蛍光眼底造影.黄斑部に脈絡膜血管透過性亢進を示す過蛍光が観察できる.同じ画像での再現性の問題も指摘されている.最近までに,正常眼9,10)を含め中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)10,11)(図5),Vogt-Koyanagi-Harada(原田)病12,13)(図6),加齢黄斑変性14.16),強度近視17,18)(図7)などのさまざまな疾患でEDI-OCTを用いた脈絡膜観察について報告されている.正常眼の脈絡膜厚に関してMalgolisら9)は,中心窩下脈絡膜厚は287μmで鼻側視神経乳頭周辺に近づくにつれて薄くなっていることを報告している.自験例では177眼で調査して平均中心窩下脈絡膜厚は250μmであった10).最近中国での50歳以上の正常異常を問わない3,233例(平均65歳)における多数例のpopulationbasedstudyでも中心窩下脈絡膜厚は253.8μmであった19).疾患ごとの脈絡膜の違いとして厚くなる症例の代表はCSCや原田病であり,薄くなる代表では強度近視があげられる.Imamuraら11)はEDI-OCTの手法を用いてCSC症例19例28眼の脈絡膜を観察し,その平均中心窩脈絡膜厚は505μmと肥厚していることを初めて報告した.自験例では片眼発症のCSC症例66例の脈絡膜厚をEDI-OCTの手法で測定して,平均中心窩下脈絡膜厚は414μmと年齢調整した正常眼と比較して有意に肥厚していることを報告した10)(図5).また,原田病は脈絡膜でメラノサイトへの自己免疫反応による炎症が起きていることが知られており,急性期には肥厚しているとされる.筆者らは8例16眼の急性期原田病の脈絡膜をEDI-OCTの手法で観察してみたところ,治療前の平均中心窩下脈絡膜厚は805μm(47)あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013181図6原田病(21歳,女性.左眼矯正視力0.6)上段:初診時.中心窩に滲出性網膜.離がみられる.脈絡膜は肥厚しており,脈絡膜厚は900μm以上で測定できない.中段:ステロイド治療3日後.網膜.離はやや減少している.脈絡膜は全層観察可能で,中心窩下脈絡膜厚は580μm.下段:ステロイド治療1カ月後.網膜.離は消失.中心窩下脈絡膜厚は348μmまで減少している.と著しく肥厚していた.また,全例でステロイド治療を実施し1カ月後に滲出性網膜.離は消失したが,経過中は治療3日後524μm,2週間後には341μmと脈絡膜での炎症が治療に反応して抑制されたことで脈絡膜が急速に薄くなることが示された12).Nakayamaら13)も同様に急性期の肥厚があること,症例によっては治療後一度薄くなっても再度厚くなるようなリバウンドを示すことがあると報告している.眼軸延長をきたす強度近視眼では,脈絡膜の菲薄化が報告されている.これはEDIOCTでなく通常の撮影方法でSD-OCTを撮っても脈絡膜が観察できることからもわかる.Ikunoら17)は強度近182あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013図7強度近視眼(33歳,男性.眼軸長34mm.右矯正視力0.3)上:眼底写真.黄斑部萎縮が著明.下:高侵逹OCT水平断.網膜はほぼ正常だが,脈絡膜が菲薄化しているのがわかる.強膜は全層観察可能で,その後方に一部眼窩脂肪がみえる.視眼をSD-OCTで観察し平均中心窩下脈絡膜厚は99.3μmであることを報告している.これはEDI-OCTによるFujiwaraら18)の報告である93μmとほぼ同等であった.強度近視眼には後部ぶどう腫を伴う症例があるが,その特殊型として中心窩がドーム状に隆起したdome-shapedmaculaがある.Imamuraら20)はこのような症例では脈絡膜および強膜も薄いが,中心窩で強膜が他の部位と比較して相対的に厚くなっているためドーム状になると考察している.IIIOCT最前線③:SS.OCTEDI-OCTの手法で各種疾患の脈絡膜観察における研(48)究は進んだが,光源の特性上網膜の深部から脈絡膜を観察する場合にはどうしても限界が存在する.さらなる深部観察のために,通常の光源よりも長波長の1,050nmのSLDを用いたOCTが研究,開発されてきた.理論上より深く達することが可能であり,その侵逹性から高侵逹(highpenetration:HP)OCTともよばれる.ただし,現在ではこの光源を用いた装置はsweptsource(SS)方式の撮影方法を導入しているため一般的にはSS-OCTとよばれている.SS-OCTの原理および構造的特徴は既報に譲るが,その特性としては,通常のSD-OCTより高速化し,光源の深度による減衰が少ないという利点がある.つまり,SS-OCTでは脈絡膜・強膜だけでなく網膜や硝子体側でも光の減衰なく深さによらず高解像度の画層を取得でき,臨床上有用である.強度近視眼についてはEDI-OCTの項でも触れたが,.8D以上の近視眼を指すことが多く通常眼軸長が26.5mm以上と延長している.筆者らは強度近視症例35例58眼(男性7例,女性28例,平均65.5歳)に対してSS-OCTで脈絡膜・強膜を観察した21).その結果,平均中心窩下脈絡膜厚および強膜厚はそれぞれ52±38μm,335±130μmであった.正常眼の剖検眼では強膜厚は約1mm程度とされていることから強度近視眼では強膜が菲薄化していることがわかる(図7).同時に中心窩から上下および鼻側,耳側3mmで強膜厚を測定してみると中心窩下が相対的に厚くなっていることが確認された.このことは眼軸が延長しても眼底後極部の強膜はある程度厚みを残すような機構の存在を示唆している.前述のdome-shapedmaculaではそれが極端にドーム状に隆起している場合を指すと考えられる.傾斜乳頭症候群は胎生期の眼杯閉鎖不全によって生じる視神経乳頭の先天異常であるが,多くの症例で視神経乳頭傾斜に端を発して下方にぶどう腫形成をみる.ぶどう腫の上縁が黄斑部を横断するような症例では黄斑部萎縮を伴い,しばしば中心窩.離を生じ視力不良となる.筆者らは傾斜乳頭症候群9例14眼に対してSS-OCTで垂直断撮影を実施したところ22),平均中心窩下脈絡膜厚は144μmでその上下方1.5mm部位(上211μm,下156μm)と比較すると上方のぶどう腫外より有意に薄くなっていた.また,そのときの平均中心窩下強膜厚は(49)図8傾斜乳頭症候群(72歳,女性.左矯正視力0.9)上:眼底写真.視神経乳頭の下方への傾斜とそれから下方に続くぶどう腫が確認できる.下方ぶどう腫の上縁は黄斑部を横断し,同部位には萎縮巣が観察できる.下:高侵逹OCT垂直断.上方から下方のぶどう腫にかけて斜めに観察される.脈絡膜は中心窩付近で最も薄くなっており,同部位で網膜色素上皮のラインが不整になっている.493μmで,同様に上下1.5mm部位(上414μm,下398μm)と比較すると有意に中心窩下で厚くなっていた(図8).このことは相対的ではあるものの中心窩の強膜がその上下と比較して厚くなっていることを示している.これはその発生機序はまったく異なるが局所的にdome-shapedmaculaと類似しており両疾患の発症メカニズムを知るうえで興味深い.おわりに本稿ではOCT最前線として,OCT研究が進むにあたりポイントとなった技術的または機械的な革新に関する①加算平均処理,②EDI-OCT,③SS-OCTについて解説した.こうしてみてみると,それぞれの段階を経あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013183て硝子体,網膜,脈絡膜,強膜と眼底後極部を形成しているすべての部位がOCTで少なからず観察できるようになってきていることがわかる.実際にはこれ以外にも,超広角OCT,補償光学を用いたOCT,偏光OCT,ドップラーOCTなどのさらに進化したOCTの開発が進んでいる.今後はこれらを含めた形態学的解析が今以上に進むことと,さらには形態学的だけでなく機能的な評価も合わせて行われ,さらなる病態解明が進むことが期待される.文献1)OtaniT,KishiS,MaruyamaY:Patternsofdiabeticmacularedemawithopticalcoherencetomography.AmJOphthalmol127:688-693,19992)BolzM,Schmidt-ErfurthU,DeakGetal:Opticalcoherencetomographichyperreflectivefoci:amorphologicsignoflipidextravasationindiabeticmacularedema.Ophthalmology116:914-920,20093)UjiA,MurakamiT,NishijimaKetal:Associationbetweenhyperreflectivefociintheouterretina,statusofphotoreceptorlayer,andvisualacuityindiabeticmacularedema.AmJOphthalmol153:710-717,20124)OginoK,MurakamiT,TsujikawaAetal:Characteristicsofopticalcoherencetomographichyperreflectivefociinretinalveinocclusion.Retina32:77-85,20125)SpaideRF,CurcioCA:Anatomicalcorrelatestothebandsseenintheouterretinabyopticalcoherencetomography:literaturereviewandmodel.Retina31:1609-1619,20116)RiiT,ItohY,InoueMetal:Fovealconeoutersegmenttipslineanddisruptionartifactsinspectral-domainopticalcoherencetomographicimagesofnormaleyes.AmJOphthalmol153:524-529,20127)TsunodaK,FujinamiK,MiyakeY:Selectiveabnormalityofconeoutersegmenttiplineinacutezonaloccultouterretinopathyasobservedbyspectral-domainopticalcoherencetomography.ArchOpht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