‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

眼内レンズ:浅前房・閉塞隅角眼の白内障手術適応

2014年11月30日 日曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋337.浅前房・閉塞隅角眼の白内障手術適応栗本康夫神戸市立医療センター中央市民病院眼科白内障手術は閉塞隅角に対する強力な治療手段である.しかし,浅前房・閉塞隅角症例の白内障手術は合併症リスクが通常よりも高いので,前房が少し浅いようだから,あるいは隅角が少し狭いようだからといって安易に手術を適応すべきではない.白内障の程度と隅角閉塞のリスクをよく吟味したうえで治療適応を決める必要がある.●はじめに原発閉塞隅角緑内障(primaryangleclosureglaucoma:PACG)は,隅角が閉塞することで房水の流出路が閉ざされて眼圧が上昇する緑内障病型であり,一般に狭い隅角や浅い前房を解剖学的特徴とする.治療の第一義は狭隅角の原因となっている解剖学的問題の解決にあり,そのための治療として白内障手術はきわめて有効な選択肢である.ただし,原発閉塞隅角症(primaryangleclosure:PAC)とPACGの白内障手術は,通常の白内障症例における手術に較べて合併症リスクが高いので,その適応は慎重に検討されねばならない.●手術適応手術適応の大原則は,手術のリスクに対してベネフィットが上回ることであるが,PACの白内障手術では白内障による視機能障害と閉塞隅角のリスクの2つの観点から適応を検討する.以下に,閉塞隅角に対する白内障手術の適応について,対象症例が白内障そのものの治療適応を有するかどうかに分けて述べる.閉塞隅角については,病期別に手術適応を考えていく.白内障の治療適応がある場合:原発閉塞隅角症疑い(primaryangleclosuresuspect:PACS),PAC,PACGのすべての病期において,白内障手術を閉塞隅角治療の第一選択とすべきである.白内障手術による閉塞隅角の治療効果は強力で汎用性も高いので,レーザー治療などを迂回することなく,一期的に白内障手術を施行すべきである.白内障の治療適応が弱い,もしくはない場合:まずは閉塞隅角に対する治療適応があるかどうかを検討し,治療適応ありと診断されれば,白内障手術が最適な治療選(69)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY択肢かどうかの検討を行う.PACにおける隅角閉塞のメカニズムは,瞳孔ブロック,プラトー虹彩,水晶体因子,悪性緑内障因子の4つに分類され,隅角閉塞のメカニズムが異なれば有効な治療方法も異なる(表1).白内障手術は,瞳孔ブロック,プラトー虹彩,および水晶体因子の3つのメカニズムに対して有効なので,これらのメカニズムに基づく閉塞隅角は白内障手術の適応となりえる.以下,病期別に適応について述べる.●PACS(原発閉塞隅角症疑い)まだ疾患は発症していないので,原則は経過観察とし,PACに進行した時点で治療を検討する.ただし,急性原発閉塞隅角症(acuteprimaryangleclosure:APAC)発症のリスクが高い眼は予防的治療の適応となる.APAC発症を予見することはむずかしいが,筆者の多数例の経験からは,中心前房深度2.0mm以下の症例ではAPACを発症するリスクがあり,1.7mm未満の症例ではAPACのリスクはかなり高い.前房深度1.7mm未満の症例と1.7~2.0mmで強い瞳孔ブロックを認めるか,暗室うつむき試験で陽性もしくは疑い陽性を示す症例では予防的治療を検討する.APACにおける主要な隅角閉塞メカニズムは瞳孔ブロックなので,レー表1隅角閉塞メカニズムと治療の有効性瞳孔ブロックプラトー虹彩形状水晶体因子悪性緑内障因子レーザー虹彩切開術◎×××レーザー隅角形成術×~○○××白内障手術◎○◎×~?◎:著効,○:有効,×:無効あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141635 手術前手術後手術前手術後図1浅前房・閉塞隅角眼に対図2浅前房・閉塞隅角眼に対する白内障手術する白内障手術前後浅前房・閉塞隅角眼に対する白浅前房・閉塞隅角眼に白内障手内障手術は通常症例よりも難易術を施行すると,劇的に前房は度が高いので,個々の症例に応深化し,隅角は開大する.じて手術適応とリスクを丁寧に検討する必要がある.ザー虹彩切開術を選択してもよい.ただし,PAC症例には遠視が多く,高齢者では老視もある.こうした症例では屈折矯正上のメリットも考慮してよいだろう.また,レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症を避けるため,あるいはPACGへの進行を防ぐために長期的な観点から白内障手術を優先的に選択すべきと考える専門家は多く,筆者もその1人であるが,この点については議論がある.高齢者のPACS症例では程度の差はあれども白内障を認めない症例はないので,白内障手術を他の治療方法と比較したメリットとデメリットおよびリスクをよく説明し,患者と相談のうえで治療方法を決定するのがよいだろう.●PAC(原発閉塞隅角症)すでに閉塞隅角が生じており,放置すれば緑内障性視神経症(glaucomatousopticneuropathy:GON)を発症してPACGに進行する可能性が高い.したがって,原則として治療適応である.ただし,隅角所見にてPACに分類される症例でも,眼圧が正常で負荷試験でも問題を認めない症例については,慎重な経過観察でもよい可能性がある.治療方法については,瞳孔ブロックが支配的な症例ではレーザー虹彩切開術,プラトー虹彩形状が主体の症例ではレーザー隅角形成術を選択してもよいが,屈折矯正上のメリットや長期的予後の観点から白内障手術を選択すべきとの考え方があるのはPACSの項で述べたとおりである.白内障を認めず調節力も健常な若年のプラトー虹彩形状主体の症例に対しては,レーザー隅角形成術や低濃度ピロカルピン点眼を先行し,その効果を見きわめたうえで白内障手術の適応を検討するのがよいだろう.一方,高齢者のマルチメカニズムによるPAC症例では白内障手術を第一選択に考えるのが合理的である.●PACG(原発閉塞隅角緑内障)PACGは失明リスクの高い緑内障病型であり,適切に治療しなければ,短期間にGONが進行することも珍しくない.最も汎用性が高く強力な治療法である白内障手術を第一選択にすべきと筆者は考えている.ただし,若年者については,GONが軽度で視野にまだ余裕があるならば,まず他の治療を施行し,その経過をみたうえで白内障手術の適応を検討するのもよいだろう.一方,GONが進行している症例では,より低い術後眼圧を得るために濾過手術との同時手術も検討する.●おわりに白内障手術はPACにおける機能的隅角閉塞を解除する治療として最強の治療手段で,病初期に施行すれば事実上の治癒に持ち込むことが可能である.その一方で手術のリスクは通常の白内障症例よりも高く,手術合併症のために,緑内障進行例では視神経が致命的なダメージを受けかねない.白内障手術の効力をPACG診療で存分に発揮するためには,個々の症例に応じて適応とリスクを丁寧に検討すると同時に,術者の技量や手術設備と術後管理体制についても,慎重な吟味を行うことが重要である.

コンタクトレンズ:屈折検査(1)オートレフケラトメータ,視野・眼底検査

2014年11月30日 日曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方はじめの一歩監修/下村嘉一6.屈折検査(1)オートレフケラトメータ,梶田雅義梶田眼科視野・眼底検査オートレフラクトメータとオートケラトメータの機能を備えた装置がオートレフケラトメータである.最近の新しい検査装置は自動制御で,作働もスピーディになっており,データ取得に要する時間も非常に短くなっている.●オートレフラクトメータ部分オートレフラクトメータ(以下,オートレフ)のデータを読むときに注意しなければならないのは,生体の眼の屈折は常に動いており,動きの中の代表値として結果を記録しているということである(図1).安定したデータが取得できれば,円柱度数の信頼度は高いと考える.球面度数には必ず調節が介入していると考えて,次の自覚的屈折検査に進むことが大切である.従来の自覚的屈折検査は,球面レンズで最小錯乱円の屈折を求めてから,乱視矯正を行う手順であるが,オートレフが普及した現在では,オートレフの値を参照して円柱レンズ度数と円柱軸を先に決めてから球面度数を求めると,検査の能率がアップする.そのために,図2に示すようなフローチャートの利用をお勧めしたい.もちろん,自覚的屈折検査で求めた屈折値は,片眼で最良視[D]-638歳女性-5-4測定結果-3-3.50D-2-10[sec][D]時間-622歳女性-5-4測定結果-3-4.75D-2-10024681012[sec]時間図1屈折値の揺れ無限遠視標を見ているときの屈折値を12秒間記録したものである.上段の38歳女性では屈折値の揺れは少なく屈折値は比較的正しい値が記録されているが,下段の22歳女性では屈折値の揺れが大きく屈折値もかなり近視寄りの値で記録されていることがわかかる.(67)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY0屈折値屈折値24681012力が得られる最弱屈折値を求めただけで,その値が,眼鏡やコンタクトレンズの度数にして快適である保障はまったくない.必ず,両眼同時雲霧法1)を用いて,両眼視で適切な矯正度数を求めて,矯正用具を処方して欲しい.●オートケラトメータ部分角膜曲率半径はハードコンタクトレンズの処方に必要なデータである.かつてのオフサルモメータによる測定では,そのままハードコンタクトレンズのベースカーブに使用できるデータが得られた.しかし,眼内レンズの普及に伴い,術後予測屈折値を決定するために角膜中心部分の曲率をさらに正確に測定する必要がでてきた.そのため,オフサルモメータでは直径4.5mm程度で測定したのが,ケラトメータでは直径3.0mm程度で測定が行われるようになった.白内障術後予測屈折値の精度は上がったが,ハードコンタクトレンズの処方には利用しにくい値になっている.ハードコンタクトレンズの処方に必要なデータは直径5~6mmの角膜曲率半径である視力値1.0以上スタート球面度数に+0.75Dを加える円柱度数オートレフの円柱値より小さい自覚的乱視検査オートレフの円柱1.0未満球面度数に-0.25Dを加える値より大きい円柱度数に-0.50Dor-0.25Dを加える球面値がオートレフ未満で視力値球面値がオートレフ値に達しても視力値1.0未満1.0未満のとき視力値1.0以上あるいは球面・円柱ともに完全矯正に達したとき終了図2自覚屈折測定のフローチャートスタート地点では,円柱度数はオートレフで得られた円柱度数から0.75D減じた値で,軸度はオーレフの値に10°ステップで近似させる.球面度数はオートレフの値から.0.75Dを減じた値を検眼枠に装入する.一度は1.0未満の視力になる屈折値を導き出し,そこから測定をするのがポイントである.あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141633 1634あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(00)ため,フルオレセインによるフィッティング検査が重要になってきている(図3).ソフトコンタクトレンズの処方にはそれよりもさらに周辺の曲率半径が必要であるため,オートケラトメータの測定値はある程度参考にはなるものの信頼度は低い.レンズのセンタリングが良いこと,瞬目ごとに適切な動きが認められること,レンズ周辺部分が浮き上がったり,角膜や結膜を圧迫していないことなどのフィッティング確認が非常に大切である.特にサークルレンズやカラーコンタクトレンズはクリアレンズに比べてベースカーブの曲率半径は小さく設計されている.日本人の角膜曲率半径は欧米に比べて大きくなっており,現在市販されているカラーコンタクトレンズのベースカーブでは3割くらいの人で,フィッティング不良が生じている.フィッティング不良は眼障害の原因になるので,フィッティング確認を忘れてはならない.正しくフィッティングできない場合には希望があっても処方すべきではない.●眼底検査コンタクトレンズ診療は眼疾患の発見に絶好の機会である.眼底疾患は視神経乳頭と上耳側動静脈と下耳側動静脈で囲まれる血管アーケードと呼ばれる部分に異常が出やすいので,初診時には観察しておくことが望ましい.また,網膜裂孔は網膜最周辺部に起こりやすいので,飛蚊症の自覚がある場合などには散瞳を行い周辺網膜まで検査を行うことが望ましい.網膜裂孔があることに気づかないで,コンタクトレンズ装用練習のため眼球を強く押したりすることが原因で網膜.離に発展することもある.●視野検査自覚症状がなくても眼底検査で視神経乳頭陥凹拡大などの視神経乳頭に異常が確認できる場合には,視野検査を行うことが望ましい.視野検査はGoldmann視野計で行う動的量的視野とHumphrey視野計などで行う静的量的視野検査がある.動的量的視野検査では検査に対する熟練が必要であるが,静的量的視野検査は自動音声まで内蔵されており,装置のマニュアルに沿って操作を行えば,適切に検査が遂行されるようになってきている.コンタクトレンズ診療で緑内障や視路疾患が発見されることも少なくない.文献1)梶田雅義,山田文子,伊藤説子ほか:両眼同時雲霧法の評価.視覚の科学20:11-14,1999ZS936角膜曲率半径(水平方向7.72mm,垂直方向7.52mm)HCL(7.50/-3.00/8.8)HCL(7.60/-3.00/8.8)HCL(7.70/-3.00/8.8)HCL(7.80/-3.00/8.8)SteepSteepGoodFlat図3ハードレンズのフィッティングオートケラトメータの値は角膜の中心部分の曲率を測定しているので,ハードレンズのフィッティングには参考程度の値にしかなっていない.フルオレセイン染色で,適切なフィッティングが得られるベースカーブを決定することが必要である.スティープなときにはレンズの周辺辺部が角膜に強く当たっている(矢印の内側).フラットなときにはレンズの中央部分が角膜に強く当たっている.直径6mm径内くらいが角膜に均等に接触するフィッティングが良好である.

写真:ランドルト環型角膜上皮炎

2014年11月30日 日曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦366.ランドルト環型角膜上皮炎細谷比左志JCHO神戸中央病院図2図1のシェーマCの字を連ねたような形の上皮の盛り上り病変を認める.図1初診時左眼.拡大写真.フルオレンセイン染色写真Cの字を連ねたようなフラクタル図形の角膜上皮の盛り上がりを認めるが,前房炎症や細胞浸潤はない.図3初診から4日後の左眼.フルオレンセイン染色写真図1にみられた病変の広がりを認める.図4図3と同時期の右眼.拡大写真.フルオレンセイン染色写真左眼と同様のCの字を連ねたようなフラクタル図形の角膜上皮の盛り上がりを認めるが,前房炎症や細胞浸潤はない.(65)あたらしい眼科Vol.31,No.11,201416310910-1810/14/\100/頁/JCOPY ランドルト環型角膜上皮炎は,異物感や羞明を主訴とする角膜上皮の病変で,ほとんどが両眼性で非対称性である.1992年に大橋らが最初に報告1)して以来,数例の報告がみられる2,3).所見は非常に特徴的で,両眼の角膜上皮レベルに図1のような,アルファベットのCの字(あるいは視力検査で用いるランドルト環)を並べてくっつけたような形の上皮の盛り上がりを認め,炎症所見はなく,細胞浸潤も認めない.筆者の経験した症例は,67歳の女性で,初診は2007年12月21日.左眼の異物感を主訴に受診.視力は,両眼とも矯正で(1.0)と低下しておらず,眼圧も正常,角膜知覚も低下していなかった.両眼の角膜に図1のような病変を認め,フルオレセインで染色すると,少しフルオレセインをはじくような所見がみられ,上皮の盛り上がりを認めた.図1は左眼であるが,右眼も同様の所見であり病変は左よりやや小さかった.肺癌の既往があり1年前から抗癌剤のTS-1Rを内服している.クラビットR点眼と0.1%フルメトロン点眼を処方して経過をみたが,改善せず病変は拡大した(図3,4).患者の同意を得て,4日後の12月25日に病変のやや大きかった左眼の上皮を掻爬し,同時にサンプルを採取した.2日後には上皮はほぼ治癒し,右眼も上皮掻爬した.PCRにて涙液および掻爬した上皮検体のウイルスを調べた.単純ヘルペス1型,2型,水痘帯状疱疹ウイルス,EBウイルス,サイトメガロウイルス,ヘルペス6型,7型,8型を調べたがいずれも陰性であった.上皮は治癒したが,1月15日にTS-1R内服を再開したところ4日後に上皮病変が再発.TS-1Rを中止し,クラビットR点眼,0.1%リンデロン点眼,ヒアレインR点眼を1日4回点眼を再開.上皮掻爬は患者が希望せず,点眼だけで経過を観察していたところ,2週後には完全に治癒した.その後再発はない.最近,Inoueらは,ランドルト環型角膜上皮炎の11例をまとめて報告している4).その特徴は,異物感,羞明を主訴とする両眼性,非対称性の上皮に限局した病変で,炎症所見を伴わない.特徴的な所見は,本症例のようなCの字を連ねたようなフラクタル図形の病変で,全体として環をなしている.上皮は盛り上がったようになっている.ロストック共焦点顕微鏡により,角膜上皮層のうち,表層細胞レベルでは細胞のballooningと細胞質の高輝度反射像が,翼細胞レベルでは細胞核と細胞膜の高輝度の反射像が,基底細胞レベルではランドルト環型になったリッジ形成が,さらに基底細胞の最基底レベルでは高反射のprecipitatesが観察された.炎症所見はなかった.年齢は17~73歳,うち40~50代が大半の64%を占めている.91%が両眼性である.Inoueらの論文でもHHV(humanherpesvirus)の1~8型まで調べているが陰性であった.冬季に悪化する傾向があり3カ月程で改善するという傾向があり,筆者の症例とも一致する.こういった症例は,比較的身近で経験するかも知れず,これを読んでいるあなたの外来にも,明日にでもこのような病変をもった患者が受診するかもしれない.(ウイルス分離については当時大阪大学に在籍されていた井上智之先生にご協力いただきました.深謝いたします.)文献1)大橋裕一,前田直之,山本修士ほか:ランドルト環型角膜上皮炎の1例.臨眼46:594-595,19922)小池美香子,栃久保哲男,飯野直樹ほか:ランドルト環型角膜上皮炎の2例.眼紀49:31-34,19983)細谷比左志,神鳥美智子,真下永ほか:花弁状角膜上皮炎(ランドルト環型角膜上皮炎)の1例.角膜カンファランス・日本角膜移植学会抄録集.3:91,20094)TInoue,NMaeda,XZhengetal:Landoltring-shapedepithelialkeratopathy.Anovelclinicalentityofthecornea.JAMAOphthalmol.doi:10.1001/jamaophthalomol.2014.2381PublishedonlineJuly17,20141632

カラーコンタクトレンズによる眼障害を生じた患者への対応

2014年11月30日 日曜日

特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1621.1626,2014特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1621.1626,2014カラーコンタクトレンズによる眼障害を生じた患者への対応AdviceforPatientsWhoHaveSufferedEyeDamageDuetoCosmeticColoredContactLensUsees月山純子*はじめにカラーコンタクトレンズ(カラーCL)による眼障害を生じた患者への対応は難しい.治療はさておき,患者との信頼関係の築き方が難しい.多くの眼科医やスタッフが感じておられるのではないだろうか?筆者も以前は,患者に対して怒って厳しく注意をしていたが,重症であっても再診しないことが多いため,最近は怒らないようにしている.カラーCLにより眼障害を起こす患者は,これまでの患者と異なる傾向がある.眼障害を起こして初めて眼科を受診するという患者も多い.そもそも彼らにはCLは眼科で処方を受けるものという概念がないように思う.なぜなら,わが国では眼科を受診しなくても,雑貨店やインターネット通販などで,簡単にCLが買えるからである.芸能人が装用し,ファッション雑誌などでカラーCLをアイメイクの一部として紹介されているような現在の状況では,CLを装用するには眼科を受診してからという基本的な考えが欠落していても不思議ではない.特に10代の若い世代では,CL装用年齢になったときからすでにこの状況なので,CLが医療機器という認識がないように思う.日本眼科学会,眼科医会,コンタクトレンズ学会,コンタクトレンズ協会,国民生活センターなどからの啓発活動が国民に浸透し,一日も早く法整備が整って,この状況が改善されることを願うが,われわれ眼科医療従事者は,まず目の前の患者の対応をしなければならない.本稿では,少しでも説得力のある説明をし,患者と良好な信頼関係を築くために知っておきたいことについて述べる.IカラーCL患者の約半数は問題があっても眼科を受診しない2014年5月に発表された国民生活センターの調査1)によると,10代,20代のカラーCLユーザー1,000名へのアンケート調査では,最近の1年間に眼の調子が悪くなったことがあったかという質問には,23.7%があったと回答したが,そのうち49.4%が眼科を受診していなかった.カラーCLの患者の約半数は問題があっても眼科を受診しないという結果は眼科医療従事者にとって残念である.自覚症状は,多い順に「異物感」「充血」「目の痛み」であった.ソフトCL(SCL)は,絆創膏を貼ったように痛みを軽減させるバンテージ効果があるために自覚症状が出にくく,重症化が懸念される.カラーCLによる眼障害で眼科を受診したら,頭ごなしに怒るのではなく,まず眼科に来たことを認めることが大切である.今後の信頼関係を築くうえで大切なステップであると思う.もしも来ていなかったら,もっと大変なことになっていたと患者に伝え,病状を写真や図を見せながら説明する.放置した場合に起こりうる怖い合併症の写真なども用いる.患者は,いきなり怒られると異常があっても眼科受診をためらうようになってしまい,少し良くなったら,再び眼科医を介さないインターネット通販や雑貨店での購*JunkoTsukiyama:博寿会山本病院眼科/近畿大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕月山純子:〒648-0072和歌山県橋本市東家6-7-26博寿会山本病院眼科0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(55)1621 1622あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(56)名を特定しようと詳しく聞くと,インターネットを通じて購入したカラーCLであることが判明した.少しでも怪しいと思ったら,カラーCLの使用を疑って詳細に問診する必要がある.III気をつけたい個人輸入の未承認カラーCLカラーCLのなかでも,安全性に対して特に心配なのが,個人輸入の未承認カラーCLである.図2は個人輸入の未承認カラーCLを使用していて角膜炎を生じた症例の片眼の写真である.さすがに角膜炎を生じている患眼は,CLを装用して来院しなかったが,痛くないほうの眼は,カラーCLを装用して来院した.非常に大きなサイズのカラーCLであることがわかる.その場で購入したWebサイトから製品名を確認し,後で詳しく調べたところ,そのカラーCLは国内未承認の個人輸入カラーCLであることが判明した.また,患眼に使用していたカラーCLの培養検査を行ったところ,Serattiamarcescens(3+)が検出された.直径15mmを超えるような,いわゆるデカ目カラコンといわれるカラーCLは,個人輸入の未承認カラーCLの可能性が高くなる.未承認のカラーCLは,生物学的,物理化学的要求事項といった最低限の安全基準でさえクリアしているかどうかわからない.個人輸入代行業者のWebサイトは,ほとんどが日本語で書かれており,通常のインターネット通販と同様,日本語でのやり取りになるので,購入者自身も個人輸入をしているということに気がついていないことも多い.個人輸入の場合は,海外から届くので到着までの日数がかかることが多く,1回の購入レンズの数が2カ月分程度までに制限さ入をし続ける可能性が高い.眼科受診を躊躇したことで,重篤な眼障害や後遺症が生じるという事態は避けなければならない.反抗的な態度の患者に対応するのは骨が折れるが,その場では,ふてくされている患者でも,内心は自分でも何となく悪いと思っていることも多い.調子の悪いときには,眼科医を頼って欲しいと願いながら,怒りを抑え修行をしているような気持ちで筆者も診療している.II初診時に聞くべきこと,できることをなるべく全てやる残念ながら,カラーCLによる眼障害の患者は,重症であっても約束どおり来院しないことが多い.カラーCLの種類の特定や,ケア方法や使用法に関する問診,検査,治療など初診の際にできることは,なるべく全てやるようにしたい.購入ルートがインターネット通販や雑貨店であることが多いので,買ったCLの種類を特定するために,その場でスマートフォンなどからWebサイトを確認させると,レンズの種類が判明することがある.また,芸能人がプロデュースしているカラーCLでは,その芸能人の名前から判明することもある.医師が聞き出しにくければ,スタッフを通じて問診する.少なくとも個人輸入の未承認レンズか承認レンズかの確認はしておきたい.また,カラーCLを使用していたことを言わない患者もいる.図1は痛くなったときのみ,眼科に繰り返し来院していた症例である.使用していたのは,1日使い捨てのSCLとのことであったが,何度も角膜浸潤を生じており,新生血管も侵入してきた.使用していたレンズabc図1繰り返し角膜浸潤を生じたが,カラーCLを装用していることがわからなかった症例a:2011年6月4日右眼,b:2012年4月4日左眼,c:2012年7月9日左眼.繰り返し角膜浸潤を生じたが,カラーCLを装用していることがわからなかった症例.疑わしいと思ったら,カラーCLの使用歴をこちらから確認する.abc図1繰り返し角膜浸潤を生じたが,カラーCLを装用していることがわからなかった症例a:2011年6月4日右眼,b:2012年4月4日左眼,c:2012年7月9日左眼.繰り返し角膜浸潤を生じたが,カラーCLを装用していることがわからなかった症例.疑わしいと思ったら,カラーCLの使用歴をこちらから確認する. 図2直径15mmを超える個人輸入未承認カラーCL大きなカラーCLを見たら,日本で未承認の個人輸入カラーCLの可能性も考え,購入先を確認する.= 図3カラーCLを使用していて角膜新生血管を生じた症例角膜新生血管を診たら慢性的に低酸素負荷があったことを疑い,使用レンズや使用方法について詳細に問診する. あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141625(59)VIII角膜曲率半径や屈折値に注意する角膜曲率半径や屈折値にも注意する必要がある.低含水性HEMA素材は含水率が約38%と少なく,SCLのなかでも比較的固めで,形状保持性が高い.このため,本来は複数のベースカーブやサイズのトライアルのなかから,トライ&エラーでフィッティング検査を行って処方されるべきであるが,インターネット通販や雑貨店などを通じた購入では,眼科を受診せずに使用されていることが多い.また,ほとんどのカラーCLはサイズもベースカーブも種類が一つしかない.このため,フィッティング不良による眼障害に注意する.フィッティングが悪いと,高含水性のSCLであっても角膜が変形することがある.変形により屈折値が大きく変化していることもあり注意を要する.図5は,インターネット通販で購入したカラーCL装用者で生じた角膜変形の症例である10).患者は2週間頻回交換型で高含水のカラーCLを使用していた.もとも止するだけで改善することが多く,経過は良好であることが多い.しかし,再診を指示しても次回来院しないことも多い.軽快したためであると思われるが,同じ様なCLを同じ様に使用すれば,また繰り返す.受診時に,患者教育をしっかり行うことが大切である.S-3.75R18.32R27.95角膜乱視-2.0DAx167°S-3.5R18.28R28.04角膜乱視-1.25DAx170°bcS-1.5R18.69R28.16角膜乱視-2.75DAx174°aS-4.75R18.26R27.95角膜乱視-1.75DAx170°d図5カラーCL装用者でみられた角膜変形の症例a:初診時,b:1週間後,c:1カ月後,d:2カ月後.SCLであっても角膜の変形により,屈折度数や角膜曲率が大きく変動することがある.安定するまでCLの装用を中止するが,この症例のように時間がかかることもある.(文献10より転載許可を得て掲載)図4輪部充血タイトフィッティングや酸素不足で生じやすい.S-3.75R18.32R27.95角膜乱視-2.0DAx167°S-3.5R18.28R28.04角膜乱視-1.25DAx170°bcS-1.5R18.69R28.16角膜乱視-2.75DAx174°aS-4.75R18.26R27.95角膜乱視-1.75DAx170°d図5カラーCL装用者でみられた角膜変形の症例a:初診時,b:1週間後,c:1カ月後,d:2カ月後.SCLであっても角膜の変形により,屈折度数や角膜曲率が大きく変動することがある.安定するまでCLの装用を中止するが,この症例のように時間がかかることもある.(文献10より転載許可を得て掲載)図4輪部充血タイトフィッティングや酸素不足で生じやすい. -消費者が医療機関を受診医療機関.医師にしか因果関係がわからない情報.消費者は「自分が悪い」と思っているが,実は製品にも問題があると思われる情報など医療機関から消費者庁に報告図6消費者庁への情報提供の流れ

カラーコンタクトレンズ使用者のコンプライアンス

2014年11月30日 日曜日

特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1613~1619,2014特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1613~1619,2014カラーコンタクトレンズ使用者のコンプライアンスColoredContactLensUserCompliance宇津見義一*はじめに日本眼科医会(以下,日眼医)は,コンタクトレンズ(CL)の眼障害調査から,CL使用者の7~10%に眼障害が発生していると予想している1).その原因はCLの処方,定期検査,装用法,ケア方法にて,患者が眼科医の指導や添付文書の内容を守らなかったというコンプライアンスの低下が挙げられ,特におしゃれ用カラーコンタクトレンズ(カラーCL)で問題と考えられている2).カラーCLによるトラブルは急増している.カラーCLはレンズ側と使用者側の問題点が指摘されている.さらに販売側,処方医側の問題がある.カラーCLは薬事法で認可された高度管理医療機器であってもトラブルが非常に多く注意が必要である.個人輸入などでは認可されていない粗悪品も少なくなく,レンズ規格など多くの問題点がある.また,インターネット・通信販売店,雑貨店,大型ディスカウントショップなどでは,眼科医師の処方を受けていない者などにカラーCLを販売しているために,使用者は使用方法もわからないでいる者も少なくないのが現状である.使用者の問題点としてはコンプライアンスの低下がある.日常診療においてカラーCL使用者はコンプライアンスの低い者に多く遭遇する.一般のCL使用者とは病識,常識,知識などが異なっている場合が少なくない.今回はCL(カラーCL含む)の各調査において得られたCL使用者のコンプライアンスの現状,さらにコンプライアンスへの対応を述べる.IカラーCLの使用状況カラーCLの一般での正確な使用率のデータはない.しかし,学校での使用率は徐々に報告されている.一般の使用率は,平成15年(2003年)に日本コンタクトレンズ学会,日眼医,日本コンタクトレンズ協会が共同で組織した日本コンタクトレンズ協議会の母集団を特定した46施設4,974例の報告では0.4%3)がある.学校での使用率は,日眼医の調査では,全国の学校でのカラーCL使用者では中学生は平成21年(2009年)が0.2%,平成24年(2012年)が0.4%,高校生は平成21年(2009年)が0.6%,平成24年(2012年)が3.2%と年度毎に増加し,高校生では有意に増加していた.また,使用経験のある中学生は平成21年(2009年)が2.2%,平成24年(2012年)が4.4%,高校生は平成21年(2009年)が3.3%,平成24年(2012年)が11.6%と中高生ともに有意に増加していた4~5).使用経験では学校により使用率の頻度差が大きく,某大阪府立高校が83.3(全体のCL使用率13.87〔以下同様〕)%,某埼玉県立高校が73.3(19.3)%,某東京都立高校が34(32.85)%など高い使用率のある高校もある.また,坂本ら都市部の1高校の報告では使用率は20.8%6)などがある.以上のように,カラーCL使用経験者が高率の高校もあり大きな問題であり,生徒のコンプライアンス,学校関係者,学校医の啓発,指導などの点に考慮する必要がある.従来,使用者は接客業の者が多かったが,学校現*YoshikazuUtsumi:宇津見眼科医院〔別刷請求先〕宇津見義一:〒231-0066横浜市中区日ノ出町2-112宇津見眼科医院0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(47)1613 場でも増加し問題となっている.IICL調査でのコンプライアンス平成21年(2009年)に日眼医はインターネット・通信販売によるCL眼障害を調査した.インターネット・通信販売により障害を生じたCL種類は図1に示すが,度数のあるカラーCLが16.7%,度数のないカラーCLが29.2%で,カラーCL眼障害が全体の45.9%を占めていた.インターネット・通信販売使用者は10~30代が多く,購入先はインターネット販売が76.9%,通信販売が19.8%であり,これらのCL使用者の60.0%は医師の処方を受けておらず(図2),定期検査はまったく受け0.0%0.0%1.0%3.1%0.0%HCL従来型SCL1日使い捨てSCL0.0%1週間連続装用使い捨てSCL2週間交換SCL30日間連続装用使い捨てSCL定期交換(1~3カ月)SCL度数のあるカラーSCL度数のないカラーSCLオルソKレンズその他5.2%0.0%無回答図1インターネット・通信販売のCL眼障害症例のCL種類237医療機関中66機関から回答(眼障害94症例).カラーCLの眼障害が全体の45.9%を占めている(文献7より改変)0.0%0.0%0.0%1カ月に1回3カ月に1回不定期6.7%6カ月に1回1年に1回不定期に受けていたほとんど受けていなかったまったく受けていないその他無回答図3インターネット・通信販売のCL眼障害症例の定期検査状況237医療機関中66機関から回答(眼障害94症例).(文献7より改変)29.2%度数なしカラーSCL16.7%1DSCL28.1%FRSCL16.7%度数あるカラーSCL3.4%55.1%まったく受けない27.0%ほとんど受けず3.4%4.5%ていないが55.1%,ほとんど受けていないが27.0%と半数以上は医師の管理を受けていなかった(図3).さらにCL使用期限の超過,終日装用CLの連続装用,不適切なレンズケアをしているものが数多くおり,コンプライアンスが著しく低下していた7).インターネット・通信販売による購入者は眼障害が悪化してから眼科を受診する傾向がある.長時間装用・洗浄不良・消毒不適・使用期限を超えた装用など使用の問題や,定期検査の不徹底・不適切な説明指導・不適切な処方などの問題が多くある.インターネット・通信販売利用者の大半はカラーCL使用者であり,患者のコンプライアンスの低下が非常に懸念されるところである.CL自体の問題は少ないが,アンケート調査ではCL自体の問題は抽出しにくいと考える(表1).平成20年(2008年)に日眼医はインターネットを利用してCL使用者9,904名のアンケート調査を行った8).表2のようにインターネットでのCL購入者は12.4%,18%眼科診療所60%医師の処方なし2%1%4%6%0%眼鏡店隣接診療所9%CL量販店隣接診療所一般病院(大学病院を除く)大学病院一般眼科診療所眼鏡店隣接の眼科診療所CL量販店に隣接する眼科診療所医師の処方は受けていないその他無回答図2インターネット・通信販売のCL眼障害症例のCL処方場所237医療機関中66機関から回答(眼障害94症例).(文献7より改変)表1CL眼障害の主な原因.眼障害のおもな原因はCL自体よりむしろ・コンプライアンスの問題長時間装用,洗浄の不良,消毒の不適,使用期限を超えた装用など・定期検査の不適・不適切な説明指導・不適切な処方など→アンケート調査ではCL自体の問題は現れにくい1614あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(48) あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141615(49)%であるのに対してカラーCLによる眼障害が大幅に増加している.平成24年(2012年)の日眼医のCL眼障害調査のカラーCL使用者は10~20代の女性が多く,定期検査を受診している者が僅か3.6%など,コンプライアンスに問題があることが明らかになった10).平成24年(2012年)日本コンタクトレンズ学会のカラーCL眼障害調査報告(395例)では,年齢層は10~14歳が2.0%,15~19歳が40.5%,20~24歳が30.1%,25~29歳が15.9%であり,中高生から使用する者が多いと考えられた.購入先はネット・通信販売が52.7%,ディスカウントショップ,雑貨店・化粧品店が28.4%,量販店が9.6%,眼科隣接CL販売店が5.1%であり,15歳以下はネット・通信販売が60%,ディスカウントショップ,雑貨店・化粧品店が35%で,眼科隣接CL販売店での購入はなかった.若い者ほどインターネット・通信販売などで購入する傾向がある(図4).また,購入時に眼科受診をしなかった者は全年齢で80.3%,15歳以下が95.0%で,ほとんどの中学生は初めてのCLがカラーCLと推測された.カラーCL使用者の大半はコンプライアンスなど関係なく,眼科医を受診する必要のあることを理解していない(図5).また,カラーCL使用者に眼障害が多い理由は,患者のコンプライアンスが低いこと,一部のカラーCLの性能に問題があることを挙げている11).平成26年(2014年)5月22日に国民生活センターはカラーCLの使用注意を呼びかけた.薬事法で認可された17製品を調査し,着色部分がレンズ最表面に確認されたものが17銘柄中11銘柄あり,色素が角膜,まぶたに直接触れていた.9銘柄は色素が表面に確認されているにもかかわらず,色素がレンズ内部に埋め込まれていると広告表示していた.6銘柄はレンズの厚さ,直径,曲率半径,度数などの基準を満たしていなかった.酸素透過性の低い低含水性素材のレンズは短期使用でも眼障害を生じやすい.度数入りの16銘柄中15銘柄が8時間使用で角膜浮腫,角結膜上皮障害,輪部充血などの治療や使用中止が必要な眼障害を生じた.カラーCLは酸素の通りにくい素材が多く,着色の影響が透明のCLより眼障害を生じやすいなど製品の危険性について警告している12).さらに,カラーCLを使用している者(10代,定期検査を医師の指示どおりに受けているは23.5%,医師・添付文書の指示どおり,ほぼ指示どおりCLを使用しているのは57.3%であり,コンプライアンスの低下が目立った.日本コンタクトレンズ協議会は,平成21年(2009年)にインターネットを利用したCL使用者のコンプライアンス調査を実施した.対象としてインターネットを利用している102,624名にアンケートを行い,CL使用者29,194名の中からハードCLと従来型ソフトCL(SCL)使用者を除いた,1日使い捨てSCL,2週間頻回交換SCL,おしゃれ用カラーCL使用者10,008名を調査した2).表2のようにインターネット販売・通信販売など非対面販売でCLを購入している者が24.8%と前述の平成20年(2008年)のインターネット調査の約2倍と増加していた.1カ月または3カ月ごとに定期検査を受けている者は18.8%,普段使用方法を守っている者は21.7%と著しくコンプライアンスが低下していた.さらに視力補正用SCLに比較し視力補正用カラーCLのコンプライアンスは多くの項目で低下しており(表3),視力補正用SCLに比較し,度なしおしゃれ用SCLはほとんどの項目で有意にコンプライアンスが低下しており,特に「医師の定期検査を受けている」が僅か6.4%であった(表4).初診時医師の処方を受けてCLを購入している者は92.4%であるのに定期検査を受けている者が19.0%であることは,初回は医師の処方を受けても,その後は医師の処方を受けずにインターネット・通信販売でCLを購入している者が多いと考えられる.実際,今までに定期検査に来ていた患者が受診しなくなり,その間はインターネット・通信販売でCLを購入し1年後位に再診する場合が多い.筆者はこのような患者が増加しているのを実感している.再診する患者の共通点は医師の診察を受けないのが心配であるとのことであり,インテリジェンスが高い者が多く,コンプライアンスはまだ少しは保たれており再診するのだと考える.平成23年(2011年)の日眼医のCL眼障害調査では,インターネット・通信販売でCLを購入し眼障害を生じた者の中でカラーCL使用者が64.8%であった9).前述の平成21年(2009年)度の日眼医の同調査では7)45.9 1616あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(50)を理解した上で,必ず眼科医を受診し,眼科医の処方に従ったレンズを選び,粗悪品を消費者が見分けることは困難なので,必ず眼科を受診して眼科医と相談の上で選んで欲しい.異常時は眼科を受診し,異常がなくても必ず眼科医の定期検査を受診するよう推奨している.さらに,業界団体に安全な商品開発を望み,厚生労働省には20代の各500名,計1,000名)にアンケート調査を実施した.カラーCL購入時に43.5%が眼科を受診したことがなく,3カ月に1回以上の定期検査を受診している者が17%と少なく,まったく受けていない人が30.6%であり,眼異常があった約23%のうち半数は眼科を受診しなかった.カラーCLを使用する場合はそのリスク表3視力補正用SCLと視力補正用カラーSCLの比較(%)視力補正用SCL視力補正用カラーSCL2週間交換1日ディスポ2週間交換1日ディスポ医師の処方を受けている93.191.094.092.5対面販売で購入している74.871.776.282.1定期検査を受けている20.018.610.712.3装用方法を守っている24.322.523.813.2規定の交換時期で交換39.378.844.065.1過去1年でトラブルなし51.349.747.641.5トラブル時に眼科を受診41.945.236.454.8毎日こすり洗いを実施55.0─44.0─ケースを3カ月以内で交換37.2─20.2─(文献2より改変)表4視力補正用SCLと度なしおしゃれ用SCLの比較(%)視力補正用SCL度なしおしゃれ用SCL比率の差の検定医師の処方を受けている92.494.3定期検査を受けている19.06.4購入時に定期検査を受けることが伝達されている54.837.6p<0.01トラブル時1週間以内眼科受診43.625.9p<0.05レンズケース3カ月以内交換36.96.6p<0.05SCLを毎日消毒57.545.4p<0.05(文献2より改変)表2インターネットを利用したCL使用者調査インターネットでのCL購入者初診時医師の処方を受けてCL購入定期検査を医師の指示どおりに受けている医師・添付文書の指示どおり,ほぼ指示どおりCLを使用普段装用方法を守っている平成20年(2008年)(9,904名)インターネットCL使用調査*112.4%23.5%57.3%平成21年(2009年)(10,008名)インターネットCL使用者のコンプライアンス調査*224.8%92.4%18.8%21.7%(*1文献8より,*2文献2より.)表3視力補正用SCLと視力補正用カラーSCLの比較(%)視力補正用SCL視力補正用カラーSCL2週間交換1日ディスポ2週間交換1日ディスポ医師の処方を受けている93.191.094.092.5対面販売で購入している74.871.776.282.1定期検査を受けている20.018.610.712.3装用方法を守っている24.322.523.813.2規定の交換時期で交換39.378.844.065.1過去1年でトラブルなし51.349.747.641.5トラブル時に眼科を受診41.945.236.454.8毎日こすり洗いを実施55.0─44.0─ケースを3カ月以内で交換37.2─20.2─(文献2より改変)表4視力補正用SCLと度なしおしゃれ用SCLの比較(%)視力補正用SCL度なしおしゃれ用SCL比率の差の検定医師の処方を受けている92.494.3定期検査を受けている19.06.4購入時に定期検査を受けることが伝達されている54.837.6p<0.01トラブル時1週間以内眼科受診43.625.9p<0.05レンズケース3カ月以内交換36.96.6p<0.05SCLを毎日消毒57.545.4p<0.05(文献2より改変)表2インターネットを利用したCL使用者調査インターネットでのCL購入者初診時医師の処方を受けてCL購入定期検査を医師の指示どおりに受けている医師・添付文書の指示どおり,ほぼ指示どおりCLを使用普段装用方法を守っている平成20年(2008年)(9,904名)インターネットCL使用調査*112.4%23.5%57.3%平成21年(2009年)(10,008名)インターネットCL使用者のコンプライアンス調査*224.8%92.4%18.8%21.7%(*1文献8より,*2文献2より.) 5%:15歳以下不明2.0%:全年齢0%その他2.3%0%眼科隣接CL販売店5.1%0%CL量販店9.6%雑貨店・35%28.4%大型ディスカウントショップ60%ネット・通信販売52.7%図4カラーCL購入先状況カラーCL眼障害例:395例〔男性2.3%(9例),女性97.7%〕(文献11より改変)不明受診した受診していない6.3%13.4%5.0%80.3%95.0%0%:15歳以下:全年齢図5カラーCL購入時の眼科受診の有無カラーCL眼障害例:395例〔男性2.3%(9例),女性97.7%〕(文献11より改変) 1618あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(52)コンタクトレンズの安全性」についての要望が通知17)された.内容は,消費者がカラーCLを適正に購入,使用できるよう,カラーCLの販売業者が販売時に適切な情報提供などを行うよう指導することの要望である.さらに消費者庁消費者安全課長から「カラーコンタクトレンズの安全性」について要請する通知18)が発出され,国民生活センター通知と同様にカラーコンタクトレンズ販売業者に対する指導の要請があった.内容は前述の平成24年(2012年)7月18日通知14)と平成25年(2013年)6月28日の再周知16)の指導に基づき,CLについての適切な情報提供などが行われるよう再度周知徹底することを要望し,特に未成年者へのカラーCLの販売の際には,適正な使用方法について十分な説明を行うとともに,購入時の医療機関への受診勧奨を徹底することなどの注意喚起を要望している.前述のように,行政による再三の注意喚起によってもカラーCL使用者のコンプライアンスの向上は困難と考える.カラーCL販売業者の中には店頭,販売所(ネット含む)での購入にはCL処方せんは不要と広告する営利優先の販売が横行している.したがって,眼科ではCL処方目的にて来院する患者の減少を実感している.以上の行政通知はいずれも法的な罰則がないために,行政の今後の適切な対応が必要である.Vカラーコンタクトレンズの処方筆者は平成20年(2008年)頃まではカラーCL処方には否定的であった.しかし,一般眼科での処方を拒めば,使用者は不適切な販売所で眼科医の介在なしに購入し,さらなる眼障害の増加が懸念されたために,どうしてもカラーCLを希望する場合には処方している.現在,薬事法で認可されたカラーCLは約300品目である.3社からの販売以外は酸素透過性の低い素材で1カ月の従来型使用方法が多い.そのために筆者はコンプライアンスが保たれている者,酸素透過性の高い素材,1日使い捨てタイプ,1日6~8時間の短い時間での使用,そして通常は透明なCLを使用し,カラーCL使用が必要な場合のみの使用を推奨している.カラーCLの使用は美容目的であり風紀上の問題もあるため,学校現場には好ましくないと考える.たが,現在は同様の質問をすると多数の者が正解する.学校,地区などでの啓発活動そしてマスコミ報道などにより,正しいCLの知識が周知されつつある.しかし,一部の地区でコンプライアンス向上のために啓発活動を実施しても限度がある.カラーCLを含むCLコンプライアンスの向上を図るために日本コンタクトレンズ学会,日眼医,日本コンタクトレンズ協会,日本コンタクトレンズ協議会は,今迄に学会発表,論文,ポスター,冊子・チラシの作成,インターネットのホームページを通じての注意喚起,テレビ,ラジオ,新聞,雑誌などメディアによる啓発,学校現場での健康教育,行政によるものなど膨大な啓発活動を実施してきた.しかし,現実には眼科医の診察を受けないでCLを購入するものがさらに増加し,眼障害を生じている.最近の行政の対応としては,平成24年(2012年)7月に厚生労働省医薬品食品局長から各都道府県に発せられた「CL販売時の取り扱いについて」の通知において,CL販売では,CLを購入する者に,医療機関の受診状況を確認し,それを記載,保存し,医療機関を受診していない場合は,CLの健康被害などの情報提供を行い,医療機関を受診するよう勧奨した.さらに,日本コンタクトレンズ協会が制定した「CLの販売自主基準」を徹底するように通達した.その基準には,CL販売店はCLの販売にあたっては,眼科医療機関のCL指示書(CL処方せんと同様)に基づいて販売するよう努めること,CL使用者に対しては,眼科医の指示を受け,それを守ることが記載されている14).その後,平成24年(2012年)度厚生労働科学研究(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)による「コンタクトレンズ販売の実態調査に基づく販売規制のあり方に関する研究」の研究報告書15)により,CLの販売に際し,使用者への必要事項の確認や適切な情報提供が不十分な事例があるという実態が報告され,平成25年(2013年)6月28日付にて,各都道府県知事に対してCLの販売業者に平成24年(2012年)7月の通知14)の遵守が図られるように再通知16)がされた.その後,平成26年(2014年)5月22日に国民生活センター商品テスト部長から厚生労働省に対して「カラー あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141619(53)おわりにカラーCL使用者のコンプライアンスを改善するのは難しく,さらに販売業者の不適切な販売などにより,カラーCLがインターネット・通信販売,営利優先の販売店などでは処方せんなし,眼科医の介在なしで販売している場合が多い.カラーCLの不適切販売がきっかけとなり,通常のCL使用者が同様に眼科医の介在なしでCL購入をするケースが増加しているのを筆者は実感している.ここまで来ると行政の罰則のある積極的な介入が必要と考える.文献1)植田喜一,宇津見義一,佐野研二ほか:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成20年度).日本の眼科80:940-946,20102)植田喜一,上川眞己,田倉智之ほか:インターネットを利用したコンタクトレンズ装用者のコンプライアンスに関するアンケート調査.日本の眼科81:394-407,20103)日本コンタクトレンズ協議会CL眼障害調査小委員会(糸井素純,植田喜一,宇津見義一ほか):コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査,日本の眼科74:497-507,20034)宇津見義一,宮浦徹,柏井真理子ほか:平成21年度学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査.日本の眼科83:1097-1114,20125)宇津見義一,宮浦徹,柏井真理子ほか:平成24年度学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査.日本の眼科85:346-366,20146)坂本則敏,宇津見義一(神奈川県眼科医会):高校生におけるコンタクトレンズ汚染の感染経路の検討.平成25年度第44回全国学校保健・学校医大会第5分科会(眼科)詳録集,p39-44,20137)植田喜一,宇津見義一,佐野研二ほか:インターネット・通信販売による購入者のコンタクトレンズ眼障害の集計結果報告(平成21年度).日本の眼科81:75-84,20108)植田喜一,宇津見義一,佐野研二ほか:インターネットを利用したコンタクトレンズ使用者の実態調査,日本の眼科80:947-953,20099)高橋和博,宇津見義一,藤堂勝巳ほか:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成23年度).日本の眼科83:513-520,201210)高橋和博,魚谷純,山下秀明ほか:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成24年度).日本の眼科94:801-810,201311)渡邉潔,植田喜一,佐渡一成ほか:カラーコンタクトレンズ装用にかかわる眼障害調査報告.日コレ誌56:2-10,201412)国民生活センター報道発表:カラーコンタクトレンズの安全性─カラコンの使用で目に障害も─.独立行政法人国民生活センター報道発表資料,p1~57,平成26年(2014年)5月22日13)宇津見義一,池田桐子,戸倉純ほか:横浜市中学・高等学校のコンタクトレンズ教育による装用状況の効果.第44回日本コンタクトレンズ学会総会展示発表,平成13年6月30日~7月1日,東京,200114)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について.厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0718第17号,平成24年7月18日15)田倉智之:コンタクトレンズ販売の実態調査に基づく販売規制のあり方に関する研究.厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業(指定型)研究事業)総括研究報告書,平成24年3月31日16)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について(再周知).厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0628第17号,平成25年6月28日17)独立行政法人国民生活センター商品テスト部長:カラーコンタクトレンズの安全性.独立行政法人国民生活センター商品テスト部長通知,26独国生商第41号,平成26年5月22日18)消費者庁消費者安全課長:カラーコンタクトレンズの安全性.消費者庁消費者安全課長通知,消安全第186号,平成26年5月28日

カラーコンタクトレンズの種類

2014年11月30日 日曜日

特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1607~1612,2014特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1607~1612,2014カラーコンタクトレンズの種類ClassificationsofCosmeticSoftContactLenses佐渡一成*はじめに日本コンタクトレンズ学会では2012年7月から3カ月間,カラーコンタクトレンズ(カラーCL)に関する眼障害調査を行い,全国の97施設から395例の報告があった1).この結果を受けて,国民生活センターが,カラーCL17銘柄に参考として日本で承認を受けていない個人輸入品3銘柄を加え,安全性や使用実態などを調べた結果を公表した*1).今回は,2010年3月から2014年7月の間に,さど眼科(以下,当院)から厚生労働省医薬食品局安全対策課へカラーCLに関する医療機器安全性情報報告書*2)をFAXした結果(当院の報告)*3)のサマリーを示す.1)合計148人(1人で複数のCLを装用していた者がありカラーCLは157件).2)性別:148人すべて女性.3)年齢:16~19歳31名(20.9%),20~29歳95名(64.2%)30~39歳19名(12.8%),40~45歳3名(2.0%)4)レンズ名の判明率:157件中148件のレンズ名が判明(94.3%)し,不明は9件であった.5)眼障害:角膜潰瘍9例(6.1%),角膜浸潤44例(29.7%),角膜びらん10例(6.8%),表層角膜炎61例(41.2%),続発虹彩炎13例(8.8%),急性結膜炎22例(14.9%),結膜びらん14例(9.5%),アレルギー性結膜炎45例(30.4%)などであった.Iカラーコンタクトレンズの分類・種類1.これまで報告されている分類①目的による分類:整容目的/おしゃれ目的整容目的のカラーCLは虹彩付ソフト*4)(グループⅠ)が1種類あるが,当院の報告中では0件であり,148人(157件)のすべてがおしゃれ目的の美容用レンズであった.②認可の有無による分類わが国の認可について確認できたもの148件中,認可あり134件(90.5%),未認可14件が(9.5%)であった.未認可14件のうち,1件の細隙灯顕微鏡写真を示す(図1).③視力補正を行うか否か(度の有無)による分類非視力補正用(度なし)52件(33.1%),視力補正用(度あり)104件(66.2%),不明1件.度なしの報告例52件のうち5件の細隙灯顕微鏡写真を図2~6に,度ありの報告例104件のうち4件を図7~10に示した.④装用期間による分類1日:50件(31.6%),2週間:21件(13.4%),1カ月:48件(30.6%),1カ月を超えるもの:24件(15.3%),不明:14件.1カ月を超えるもので国内認可を得ているものは整容目的の虹彩付レンズのみであり,未認可のものに加えて,認可を受けた期間より長く装用可能と広告に謳い販売されているものがある.*KazushigeSado:さど眼科〔別刷請求先〕佐渡一成:〒980-0021仙台市青葉区中央2-4-11水昌堂ビル2Fさど眼科0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(41)1607 図124歳,女性:角膜血管侵入(商品名:ウイスキーロック/使用推奨期間:8カ月/ID:3・・77)図223歳,女性:角膜びらん(商品名:キャンディーマジック/使用推奨期間:6カ月/ID:3・・15)図319歳,女性:角膜びらん(商品名:スターダスト/使用図420歳,女性:角膜びらん(商品名:ツッティ/使用推奨推奨期間:1カ月/ID:3・・45)期間:1カ月/ID:3・・20)図523歳,女性:角膜潰瘍(商品名:トゥインクルアイズ/使用推奨期間:不明/ID:3・・09)図628歳,女性:角膜浸潤,アレルギー性結膜炎(商品名:ヴィーナスアイズ/使用推奨期間:1カ月/ID:3・・45) 図721歳,女性:角膜潰瘍,角膜浸潤,続発虹彩炎(商品名:ワンデーアキュビューディファイン/使用推奨期間:1日/ID:3・・47)図930歳,女性:角膜浸潤,表層角膜炎(商品名:ビューノ2Wビューティー/使用推奨期間:2週間/ID:3・・65)図824歳,女性:角膜浸潤(商品名:2Wアキュビューディファイン/使用推奨期間:2週間/ID:3・・08)図1020歳,女性:アレルギー性結膜炎(商品名:キャンディーマジック/使用推奨期間:1カ月/ID:3・・99) 1610あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(44)例中1例,計20例中13例(65.0%)は量販店隣接眼科で検査を受けて,12例(60.0%)は量販店隣接の販売店で購入していた.定期的に検査を受けていたものが10例(50.0%)であったが,最初だけ検査を受けたものの以後は検査を受けずにネット通販で購入を繰り返していたもの,検査をまったく受けていなかったものがそれぞれ5名(25.0%)ずつであった.〇眼科で検査を受けることなくネットで販売されているカラーCLキャンディーマジック(10例).エンジェルカラー(8例).ツッティ(6例).ラヴェール,ティアモ,エバーカラーワンデー,アイラックスイノバ(各5例),パラカラグレイリー,ドーリーポップ,スゥイートデイズ,アイコフレワンデーUV(各4例).ワンデーピュアナチュラル,フォーリンアイズ,ヴィーナスアイズ(各3例).ラバーズカラー,ビーハートビーワンデー,ネオサイトワンデーリング,トゥインクルアイズ,ロデオ,ダリエクストラ,アイビーブラック(各2例).ウルコン,マックスカラー,マジックブラウン,プリメ,ピュリーム,セクシービジョン,スターダスト,シルキーレーベル14,パシャブラック,シュプリーム,ザピエル,ウイスキーロック,sb3カラコン,マリーブラウン(各1例),合計97件は量販店隣接眼科を含めて一切眼科的な検査を受けずに,ネット通販や総合ディスカウントストアで購入が繰り返されていた.「はじめだけ」6件,「しばらく受けていない」4件を含めて97件全員が当院受診時には検査を受けずにカラーCLを装用していた.(レンズ名に下線を引いたものは国内での認可を受けていないと思われたもの)上記のように,眼科での処方も定期検査も受けない状態でも容易にCLが購入できること.販売されていることは早急に対処を要する事態である.一方,「比較的安全であると考えられている1日使い捨てタイプで,グループIVのサークルレンズ」であるワンデーアキュビューディファインのトラブル発生数がCL商品別では最多の17件であった.ディファインは販売量,使用者数も多いことからトラブルの数が多くみられた面も大きいと思われるが,17例中8例(47.1%)は検査を受けずに購入を繰り返しており,「比較的安全2.これまでされてこなかった分類「どこで処方を受けていたか」「定期検査を受けていたか」「どこで購入していたか」による分類ⅰ)どこで処方を受けていたか眼科専門医5件(3.2%),量販隣接眼科29件(18.5%),処方医療機関なし113件(72.0%),不明10件(6.4%).ⅱ)定期検査を受けていたかあり30件(19.1%),なし106件(67.5%),最初だけ・しばらくなし16件(10.2%),不明5件(3.2%).ⅲ)どこで購入していたかネット通販74件(47.1%),総合ディスカウントストア39件(24.8%),量販店隣接の販売店30件(19.1%),カラコン専門店3件(1.9%),薬局チェーン店3件(1.9%),眼鏡チェーン店2件(1.3%),不明6件(3.8%).ⅰ)ⅱ)ⅲ)の結果,カラーCLは,「眼科や量販店で処方されているカラーCL(ネットでも購入可能)」と「眼科で検査を受けることなくネットで販売されているカラーCL」の2つに分類できることがはっきりした.〇眼科や量販店で処方されているカラーCL(ネットでも購入可能)ワンデーアキュビューディファインの報告例は,17件中10件(58.8%)が量販店隣接眼科で処方を受けていた.検査を受けていないものが6名(35.3%),眼科専門医で処方を受けていたものが1例であった.購入は量販店隣接の販売店が12名(70.6%),ネット通販が5名(29.4%).定期的に検査を受けていたものが9例(52.9%)であったが,最初だけ検査を受けたものの以後は検査を受けずにネット通販で購入を繰り返していたものが2名.検査をまったく受けていなかったものが6名(35.3%)であった.2Wアキュビューディファインは,14件中9件(64.3%)が量販店隣接眼科で処方を受けており,眼科専門医で処方を受けていたものが4例(28.6%),検査を受けていないものは1名であった.フレッシュルックデイリーズイルミネート5例中3例,ビューノ2Wビューティー5例中3例,ワンデーアイレリアル3例中3例フェアリー5例中2例,ワンデースパークリングカラー1例中1例,グラングラン1例中1例,計20例中13例(65.0%)は量販店隣接眼科で検査を受けて,12例(60.0%)は量販店隣接の販売店で購入していた.定期的に検査を受けていたものが10例(50.0%)であったが,最初だけ検査を受けたものの以後は検査を受けずにネット通販で購入を繰り返していたもの,検査をまったく受けていなかったものがそれぞれ5名(25.0%)ずつであった.〇眼科で検査を受けることなくネットで販売されているカラーCLキャンディーマジック(10例).エンジェルカラー(8例).ツッティ(6例).ラヴェール,ティアモ,エバーカラーワンデー,アイラックスイノバ(各5例),パラカラグレイリー,ドーリーポップ,スゥイートデイズ,アイコフレワンデーUV(各4例).ワンデーピュアナチュラル,フォーリンアイズ,ヴィーナスアイズ(各3例).ラバーズカラー,ビーハートビーワンデー,ネオサイトワンデーリング,トゥインクルアイズ,ロデオ,ダリエクストラ,アイビーブラック(各2例).ウルコン,マックスカラー,マジックブラウン,プリメ,ピュリーム,セクシービジョン,スターダスト,シルキーレーベル14,パシャブラック,シュプリーム,ザピエル,ウイスキーロック,sb3カラコン,マリーブラウン(各1例),合計97件は量販店隣接眼科を含めて一切眼科的な検査を受けずに,ネット通販や総合ディスカウントストアで購入が繰り返されていた.「はじめだけ」6件,「しばらく受けていない」4件を含めて97件全員が当院受診時には検査を受けずにカラーCLを装用していた.(レンズ名に下線を引いたものは国内での認可を受けていないと思われたもの)上記のように,眼科での処方も定期検査も受けない状態でも容易にCLが購入できること.販売されていることは早急に対処を要する事態である.一方,「比較的安全であると考えられている1日使い捨てタイプで,グループIVのサークルレンズ」であるワンデーアキュビューディファインのトラブル発生数がCL商品別では最多の17件であった.ディファインは販売量,使用者数も多いことからトラブルの数が多くみられた面も大きいと思われるが,17例中8例(47.1%)は検査を受けずに購入を繰り返しており,「比較的安全2.これまでされてこなかった分類「どこで処方を受けていたか」「定期検査を受けていたか」「どこで購入していたか」による分類ⅰ)どこで処方を受けていたか眼科専門医5件(3.2%),量販隣接眼科29件(18.5%),処方医療機関なし113件(72.0%),不明10件(6.4%).ⅱ)定期検査を受けていたかあり30件(19.1%),なし106件(67.5%),最初だけ・しばらくなし16件(10.2%),不明5件(3.2%).ⅲ)どこで購入していたかネット通販74件(47.1%),総合ディスカウントストア39件(24.8%),量販店隣接の販売店30件(19.1%),カラコン専門店3件(1.9%),薬局チェーン店3件(1.9%),眼鏡チェーン店2件(1.3%),不明6件(3.8%).ⅰ)ⅱ)ⅲ)の結果,カラーCLは,「眼科や量販店で処方されているカラーCL(ネットでも購入可能)」と「眼科で検査を受けることなくネットで販売されているカラーCL」の2つに分類できることがはっきりした.〇眼科や量販店で処方されているカラーCL(ネットでも購入可能)ワンデーアキュビューディファインの報告例は,17件中10件(58.8%)が量販店隣接眼科で処方を受けていた.検査を受けていないものが6名(35.3%),眼科専門医で処方を受けていたものが1例であった.購入は量販店隣接の販売店が12名(70.6%),ネット通販が5名(29.4%).定期的に検査を受けていたものが9例(52.9%)であったが,最初だけ検査を受けたものの以後は検査を受けずにネット通販で購入を繰り返していたものが2名.検査をまったく受けていなかったものが6名(35.3%)であった.2Wアキュビューディファインは,14件中9件(64.3%)が量販店隣接眼科で処方を受けており,眼科専門医で処方を受けていたものが4例(28.6%),検査を受けていないものは1名であった.フレッシュルックデイリーズイルミネート5例中3例,ビューノ2Wビューティー5例中3例,ワンデーアイレリアル3例中3例フェアリー5例中2例,ワンデースパークリングカラー1例中1例,グラングラン1 図1145歳,女性:pre.perimetricglaucoma(商品名:ワンデーアキュビューディファイン/使用推奨期間:1日/ID:3・・01) 1612あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(46)が必要」で「販売店は医師の処方を順守するシステム(現在模索中)を早急に構築すること」が欠かせないと筆者は考えている2).将来,「いわゆるCL処方せんの法制化(購入には医師の処方が必須とする一方,医師は処方に責任を持つこと)」に加えて,「医師の処方に従ったものしか販売・購入できないルール」が確立され,保険診療の枠外であれば,筆者はカラーCLの処方を否定するつもりはない.文献1)渡邉潔,植田喜一,佐渡一成ほか:カラーコンタクトレンズ装用にかかわる眼障害調査報告.日コレ誌56:1-10,20142)佐渡一成:CLバトルロイヤルサードステージ第37回カラーコンタクトレンズに対する取り組み.日コレ誌56:206-213,2014参考URL*1)独立行政法人国民生活センター:カラーコンタクトレンズの安全性─カラコンの使用で目に障害も─.http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20140522_1.html*2)医薬品・医療機器等安全性情報報告制度:http://www.info.pmda.go.jp/info/houkoku.html*3)さど眼科で経験・報告したカラーコンタクトレンズトラブル一覧(2010年3月から2014年7月).http://www.sado-ec.com/images/pdf/c_trouble.pdf*4)虹彩付ソフト(シード):http://www.seed.co.jp/products/contact/list/list_01.html*5)カラーCL比較通販データベース:http://contactkontakuto.web.fc2.com/color/bunrui.htm問題,3)使用者のコンプライアンスが悪いという問題がある.医師の処方が必須となれば,粗悪品は淘汰されるが,2)の販売ルートの問題が解決しなければ,使用者は「検診は受けずに,ネットや雑貨店で購入を繰り返す」ので責任を持った処方・指導はできない.結果,「軽い気持ちで利用して目に障害が起きる(消費者庁長官の発言)」という悪循環は断ち切れない.販売ルート問題の解決には「いわゆるCL処方せんの法制化(購入には医師の処方が必須とする一方,医師は処方に責任を持つこと)が必須である」が,法制化だけでは不十分で「医師の処方に従ったものしか販売・購入できないルールを確立する」ことが欠かせない.このような状況にならない限り,「国民の健康的な生活を確保(医師法1条)」することはできないと考えている.(日コレ誌56巻3号CLバトルロイヤルサードステージ第37回カラーコンタクトレンズに対する取り組み.より引用).コンプライアンスの悪い使用者はそもそもCL装用の禁忌であり,コンプライアンスが改善しないのであればCLを処方してはならない.そして,コンプライアンスの悪い使用者が多い原因の一つは,「眼科を受診しなくてもCLを自由に購入できる現在の状況」である.コンプライアンスの悪い使用者を減らす(結果的にCLトラブルが減る)ためには「CL購入には医師の処方

カラーコンタクトレンズのケア

2014年11月30日 日曜日

特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1599.1605,2014特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1599.1605,2014カラーコンタクトレンズのケアLensCareforCosmeticContactLenses東原尚代*はじめにカラーコンタクトレンズ(以下,カラコン)による眼障害が増加している1,2).2014年5月に発表された独立行政法人国民生活センターによる調べでは,通信販売でカラコンを購入する者が約8割だったことより,眼科を受診してレンズケアについて直接指導を受けていないカラコン装用者が非常に多いということがわかかる(http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20140522_1.html).特に,コンタクトレンズを眼科で処方された経験がなく,カラコンを初めて装用するケースでは,友人の装用を見よう見まねで装用するために,眼障害を生じるリスクが高くなる.筆者も患者の希望でカラコンを処方することがあるが,酸素透過性が高く色素が表裏面に露出しない素材で,かつ,安全面から1日使い捨てレンズを選択している.1日使い捨てであればレンズケアは不要なため,普段はカラコンのレンズケアについて考えることがあまりない.しかし,市場に出回るカラコンは1日使い捨てだけでなく,2週間から1年まで使用できる頻回交換型あるいは定期交換型が多い.また,最近は安全性の低いカラコン装用によって眼障害を生じた患者を診る機会も増え,安全な材質のカラコンを装用するよう指導するだけでなく,レンズケアの重要性についても教育する必要性が出てきたように感じる.本稿では,適切なカラコンのケアについて考えてみたい.Iカラコンが推奨するレンズケアは?現在,流通しているカラコンは相当数あるので,すべてのカラコンのケアについて調査することができないが,いくつかのカラコンの添付文書を確認したので紹介する(表1).2ウィークアキュビューディファインRでは,「煮沸消毒はせず,化学消毒のみ使用すること」とあった.ケア方法はこすり洗い併用でありクリアレンズと同様であったが,過酸化水素やポピヨンヨード製剤による消毒の可否について記載はなかった.煮沸消毒を禁忌とする理由についてメーカーに問合せをすると,一般にソフトコンタクトレンズでは煮沸消毒で蛋白質汚れの固着やレンズ変形の恐れがあるためという見解であった.また,メニコンReiRも同様に自社製品を用いた化学消毒を推奨していたが,それ以外の消毒剤を使ってケアすることには記載がなかった.筆者がインターネットやカラコンショップで購入したカラコンの添付文書には,化学消毒のみと記載されているものや眼科医の指導を仰ぐように記載されているもの,また「過酸化水素や煮沸消毒はしないでください」と明確に記載されているものがあった.カラコンは基本的に化学消毒を推奨することが多いようであるが,煮沸消毒や過酸化水素,ポピヨンヨード製剤による消毒については必ずしも記載がない.実際,眼科医に判断を委ねるような記載もあるので,個々のカラコンと各種ケア用品を実際に使用して問題がないか検証する必要があると思われた.*HisayoHigashihara:医療法人博吾会ひがしはら内科眼科クリニック/京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕東原尚代:〒621-0861京都府亀岡市北町57-13医療法人博吾会ひがしはら内科眼科クリニック0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(33)1599 表1筆者が調べた頻回交換.定期交換カラコン商品名(販売元)パッケージ外観レンズ素材と規格推奨するレンズケア2ウィークアキュビューディファイン(ジョンソンエンドジョンソン)1箱6枚入り,2週間交換グループIV構成モノマー:2-HEMAおよびMAABC8.3mm,DIA14.0mm・煮沸消毒は禁忌・化学消毒のみグループII2WEEKメニコンRei(株式会社メニコン)構成モノマー:N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN-ビニルピロリドン・化学消毒を推奨1箱6枚入り,2週間交換BC8.6mm,DIA14.5mmグラーヴェ2WEEKS(製造販売元:InnovaVision株式会社,販売元:株式会社アイセイ)1箱6枚入り,2週間交換グループI構成モノマー:2-HEMAおよびEGDMABC8.7mm,DIA14.0mm・化学消毒を推奨・ケア用品に関する詳細は眼科医に相談と記載グループI・過酸化水素系の消毒剤おフェアリー(販売:株式会社シ構成モノマー:2-HEMAおよびよび煮沸消毒は禁忌ンシア,製造国:大韓民国)EGDMA・化学消毒のみBC8.6mm,DIA14.2mm1箱2枚入り,1カ月交換グループIティービュー(販売:PIA株式構成モノマー:HEMAおよび・煮沸消毒禁忌会社,製造:大韓民国)EGDMA・化学消毒のみ1箱2枚入り,1カ月交換BC8.6mm,DIA14.5mmツッティヴァニティリッチ(販売:PIA株式会社,製造:大韓民国)1箱2枚入り,1カ月交換グループI構成モノマー:HEMAおよびEGDMABC8.6mm,DIA14.8mm・煮沸消毒禁忌・化学消毒のみキャンディーマジック(販売元:株式会社code,製造販売元:株式会社ElDoradoグループI構成モノマー:2-HEMAおよびEGDMABC8.9mm,DIA14.5mm・化学消毒(過酸化水素消毒を除く)が可能1箱1枚入り,1カ月交換アイラックスイノバ・ガーデングループI(製造販売元:InnovaVision株構成モノマー:2-HEMAおよび・煮沸消毒または化学消毒式会社,販売元:株式会社アイEGDMAと記載セイ)1箱1枚入り,2週間.1年交換BC8.7mm,DIA14.0mm(医師の指導による)HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート,MAA:メタクリル酸,EGDMA:エチレングリコールジメタクリラート,BC:ベースカーブ,DIA:直径1600あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(34) 表2ケア用品の長所と短所およびカラコン使用可否についてレンズケアの種類長所短所代表的な製品(販売元)カラーコンタクトレンズ使用可否(添付文書)こすり洗いの有無記載()内はその時間や回数煮沸消毒・優れた消毒効果がある・レンズケースの滅菌もできる・誤使用による眼障害が少ない・SCLの白濁,変形,汚れの固着,劣化などの影響が強い・装用感が変化することがある・巨大乳頭性結膜炎や角膜上皮障害のリスク・コンセントが必要・最近は入手が困難MPS・洗浄とすすぎ,消毒,保存が1本で・煮沸消毒,過酸化水素消毒,ヨード消毒よりレニューRフレッシュ(ボシュロム)全てのコンタクトレンズに使用可○(両面を各々10秒間)行えるので簡便・コンタクトレンズ劣化などの影響が消毒効果が劣る・毎日のレンズケースのオプティ・フリーRプラス(アルコン)全ソフトコンタクトレンズ適用○(両面を各々20秒)少ない・薬液そのものに毒洗浄と乾燥が必要で,1.3カ月に1回は交換するエピカコールド(メニコン)全てのソフトコンタクトレンズに使用可○(両面を各々20.30回)性がないので誤使用による眼障害のリスクがない・レンズ種類との相性がある・稀にアレルギーが生じカラコンケア(メニコン)※エピカコールドと有効成分は同じ全てのソフトコンタクトレンズに使用可○(両面を各々20.30回)・消毒は4時間で完了る場合があるバイオクレンRワン(オフテクス)ソフトコンタクトレンズ(グループI.IV)の消毒○(両面を各々20.30回)カラケア(オフテクス)※バイオクレンワンと有効成分は同じカラコン専用ケア○(両面を各々20.30回)コンプリートR(エイエムオー・ジャパン)すべてのソフトコンタクトレンズに使える○(両面を各々20.30回)過酸化水素消毒・MPSよりも高い消毒効果が期待できる・煮沸消毒より消毒効果が劣る・中和が完了するのに時間がかかる・誤使用による眼障害のエーオーセプトRクリアケアR(アルコン)すべてのソフトコンタクトレンズに使える△(消毒前に別売の保存液でこすり洗いすることで,安全で清潔なレンズを装用することができる)リスクあり・残留過酸化水素による眼刺激症状・中和後の消毒の持続性がないので長期保存できない・こすり洗いする場合には,別売のすすぎ液が必要コンセプトワンステップR(エイエムオー・ジャパン)すべてのソフトコンタクトレンズに使用できるが,虹彩付きソフトレンズ(レンズの虹彩部分に着色しているカラーソフトレンズ)には使用できないと記載あり△(レンズ装用前に,すすぎ液ですすいでから装用することで,レンズをより快適に装用できる)ポピヨンヨード製剤・過酸化水素とほぼ同等の高い消毒効果が期待できる・中和に時間がかかる・ヨウ素に対し過敏症の既往歴があれば慎重使用となるバイオクレンRファーストケアEX(オフテクス)すべてのソフトコンタクトレンズ対応△(中和後,装用する前にレンズの両面を20.30回指で軽くこすり洗いする)○:こすり洗いが必須△:こすり洗いは推奨(35)あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141601 表3各種レンズケア(化学消毒)の専用容器レンズケアの種類代表的な製品(販売元)専用容器容器の形態とその特徴MPSレニューRフレッシュ(ボシュロム)ディスクタイプオプティ・フリーRプラス(アルコン)ディスクタイプエピカコールド(メニコン)ディスクタイプカラコンケア(メニコン)ディスクタイプ(女性ウケしそうなパステルピンク色の蓋)バイオクレンRワン(オフテクス)ディスクタイプカラケア(オフテクス)ディスクタイプコンプリートR(エイエムオー・ジャパン)ディスクタイプ過酸化水素消毒エーオーセプトRクリアケア(アルコン)レンズカップに中和ディスクのついたレンズケースが特徴ポピヨンヨード製剤バイオクレンRファーストケアEX(オフテクス)透明なカップと蓋裏に設置されたレンズケースが特徴1602あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(36) 図2こすり洗いにて色落ちしたカラコン左:カラコンをこすり洗いしている様子.右:こすり洗いした後,MPSが水色に変色した.図3国内最大直径のカラコントレー左には,アキュビューディファイン(BC8.3mm,DIA14.0mm),右には日本最大のカラコン(BC8.6mm,DIA図1ドラッグストアに陳列されるカラコン専用のMPS14.8mm).一目見ただけでも,サイズの差は歴然である. 図4エーオーセプトRクリアケアの専用容器左:中和ディスクのついたレンズホルダー.中:レンズホルダーの計測(10.0mm×10.0mm).右:バスケット(蓋)を内側から計測(16.0mm×16.0mm).図5バイオクレンRファーストケアEXの専用容器左:蓋裏に設置されたレンズホルダー.中:レンズホルダーの計測(15.0mm×15.0mm).右:バスケット(蓋)を内側から計測(13.0mm×13.0mm).図614.8mm径のカラコンを収納したときの様子エーオーセプトRクリアケア(左),バイオクレンRファーストケアEX(右)いずれも巨大カラコンを中央に上手く設置すれば蓋で挟み込むことなく収納できることがわかった. あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141605(39)消毒効果が期待できるが,その添付文書にはカラコン使用不可との記載はなく,こすり洗いも必須ではない(推奨のみ)点で,色素が脱色する恐れのあるカラコンでも使用可能と解釈できるかもしれない.III専用ケースにカラコンは収納できるのか?次に,ケア用品の容器について考えてみたい.ほとんどのMPSの専用容器がディスク状(トレータイプ)であるのでカラコンのサイズは気にせず収納できるが,過酸化水素消毒やポピヨンヨード製剤は特殊な専用ケースであるため,直径の大きなカラコンがホルダー内に収納できるかどうかが問題である(表3).そこで,カラコン使用不可ではないエーオーセプトR(過酸化水素消毒)とバイオクレンRファーストケアEX(ポピヨンヨード製剤)の専用ケースを用いて巨大カラコンの収納が可能か検証を行った.使用したカラコンは,現在,日本で入手できるカラコンのなかで最大直径14.8mmの製品である(図3).エーオーセプトRおよびバイオクレンRファーストケアEXのレンズホルダーのバスケット(蓋)の直径の計測結果を図4,5に示す.実際に,巨大カラコンを入れると,いずれの専用容器も蓋の密閉性が高くない(遊びがある)ために問題なく収納することができた(図6).ただし,カラコンの設置がホルダー中心より大きく偏位した場合には,蓋を閉めたときにレンズを挟み込む危険性があるので注意が必要と思われた.おわりに今回,いくつかのカラコンのレンズケアについて調査したが,おもにMPSでのケアを推奨していた.MPSは,通常,ソフトコンタクトレンズの両面を20.30回こすり洗いする必要があり,こすり洗いをして色落ちするカラコンが少なからず存在するため,そもそも色素の着色に問題があるカラコンはレンズケアの観点からも装用してはいけないと考えられた.また,殺菌力の高さからカラコンにも過酸化水素消毒が望まれるが,カラコン使用不可とする過酸化水素製剤あるいは過酸化水素は使用不可とするカラコンがあることを知っておかなければならず,カラコンあるいはケア用品のそれぞれの添付文書をよく確認する必要があると思われた.また,ポピヨンヨード製剤による消毒の可否について明確に記載したカラコンは筆者が調査した中では存在しなかった.ポピヨンヨード製剤はこすり洗いについても必須ではないことと,巨大サイズのカラコンも収納できる点で,角膜感染症予防の観点からも使用を推奨してもよいかもしれない.文献1)日本コンタクトレンズ協議会CL眼障害調査小委員会:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査.日本の眼科74:497-507,20032)渡邉潔,植田喜一,佐渡一成ほか:カラーコンタクトレンズ装用にかかわる眼障害調査報告.日本コンタクトレンズ学会誌56:2-10,2014

カラーコンタクトレンズの色素

2014年11月30日 日曜日

特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1591.1597,2014特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1591.1597,2014カラーコンタクトレンズの色素PigmentsUsedforCosmeticContactLenses松澤亜紀子*はじめにカラーコンタクトレンズ(カラーSCL)と透明なレンズ(クリアSCL)の一番大きな違いは,着色部分が存在することである.この着色部分には,瞳の色や大きさを変えるためにさまざまな金属や色素が使用されている.日本に流通しているカラーSCLの多くは,「色素がレンズ内にサンドウィッチされているため,直接色素が目に触れない」と謳われている.しかし,韓国に流通していたカラーSCLの一部では色素湧出や細胞毒性が認められたため,2012年韓国の食品医薬品安全庁は該当製品の販売中止と回収・廃棄の指示を出した1).わが国で多く流通しているカラーSCLは,絶対安全であると言い切れるのであろうか?本稿では,さまざまな方法でカラーSCLの色素について観察を行った結果をもとに,カラーSCLの安全性について検証を行った.I色素の存在部位1.着色パターンによる分類カラーSCLには,着色パターンとしてOpaquetypeとEnhancetypeの2種類がある.OpaquetypeのカラーSCLは,瞳の色を変えることを目的としているため比較的着色内径が小さい傾向にある(図1a).一方Enhancetypeは,瞳を大きく見せることを目的としているため着色内径も着色外径も大きい傾向にある(図1b).2.レンズ切片による色素の観察カラーSCLを薄く切ったレンズ切片を作製し,光学顕微鏡を用いて観察を行った.着色部分は,製造工程の問題であると推測されるが,レンズの眼瞼側または角膜側に偏在していた(図2a,b).そのなかでも,色素がレンズの眼瞼側に偏在しているものの,色素とレンズ表面との間に透明帯が存在し,色素がレンズ素材でサンドウィッチされた構造となっている製品(図3a),色素がレンズ角膜側の最表面に近い所に偏在し,レンズ表面もやや不整であるためサンドウィッチ構造となっているのか確認することが困難な製品が存在した(図3b).3.前眼部光干渉断層計(AS.OCT)による観察レンズ切片の作製は手技的にむずかしく,すべてのカラーSCLのレンズ切片を作製することはむずかしい.しかし,AS-OCTではカラーSCLを装用したまま非侵襲的に撮影を行うことができるため,カラーSCLを装用している人に気軽に撮影することが可能である.カラーSCLを装用したままAS-OCTの撮影を行った画像では,着色部分は高反射に描出され後方にシャドーが観察できる.レンズ切片同様に着色部位は眼瞼側と角膜側に偏在していることが確認できる(図4a,b).しかし,レンズ角膜側に色素が偏在したレンズでは,色素と角結膜の境界が不明瞭となることや,レンズ最表面に近い部分に色素が存在した場合には,解像度の問題からレンズ切片より色素の存在部位の判定はむずかしく,色素がサン*AkikoMatsuzawa:聖マリアンナ医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕松澤亜紀子:〒216-8511川崎市宮前区菅生2-16-1聖マリアンナ医科大学眼科学教室0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(25)1591 1592あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(26)であるため,含水性の素材からできているソフトコンタクトレンズを観察するためには乾燥または凍結処理を行わなくてはならず,通常の含水した状態のレンズを観察することは困難である2,3).そのため,不揮発性・不燃性・イオン導電性をもつイオン液体を用いてレンズの固定を行い,レンズの変形を最小限に抑えて電子顕微鏡での観察を行った.1.色素の露出電子顕微鏡を用いて色素が偏在する側のレンズ表面を1万倍に拡大した像とレンズ切断面を5,000倍に拡大した像の観察を行い,図5に示したとおり色素の露出を3ドウィッチ構造であるかの判断はむずかしい.II色素の露出とレンズの凹凸レンズ切片やAS-OCTを用いたカラーSCLの観察において,色素がレンズ表面近くに偏在している場合,色素がレンズ表面に露出しているかの判断は困難である.そこで,電子顕微鏡(SEM)を用いてレンズ表面への色素の露出度判定を試みた.しかし,電子顕微鏡内は真空ab図1着色パターンによる分類a:瞳の色を変えるOpaquetype,b:瞳の大きさを変えるEnhancetype.:色素部分ab図2レンズ切片による色素の観察:色素の偏在a:眼瞼側に色素が偏在しているレンズ,b:角膜側に色素が偏在しているレンズ.:色素部分:透明帯ab図3レンズ切片による色素の観察:色素の局在a:眼瞼側に色素が偏在しているが,色素がサンドイッチ構造となっている.b:角膜側のレンズ表面近くに色素が存在しレンズ表面は凹凸を認める.:色素部分(高反射):後方シャドーab図4AS.OCTによる色素の観察a:眼瞼側に色素が偏在しているレンズ,b:角膜側に色素が偏在しているレンズ.ab図1着色パターンによる分類a:瞳の色を変えるOpaquetype,b:瞳の大きさを変えるEnhancetype.:色素部分ab図2レンズ切片による色素の観察:色素の偏在a:眼瞼側に色素が偏在しているレンズ,b:角膜側に色素が偏在しているレンズ.:色素部分:透明帯ab図3レンズ切片による色素の観察:色素の局在a:眼瞼側に色素が偏在しているが,色素がサンドイッチ構造となっている.b:角膜側のレンズ表面近くに色素が存在しレンズ表面は凹凸を認める.:色素部分(高反射):後方シャドーab図4AS.OCTによる色素の観察a:眼瞼側に色素が偏在しているレンズ,b:角膜側に色素が偏在しているレンズ. あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141593(27)a:表面平滑レンズ表面(500倍)b:表面平滑レンズ表面(10,000倍)c:軽度凹凸レンズ表面(500倍)e:表面凹凸レンズ表面(500倍)d:表面平滑レンズ表面(10,000倍)f:表面平滑レンズ表面(10,000倍)図6表面平滑度の分類表面切断面表面切断面表面切断面a:露出なしレンズ表面(10,000倍)b:露出なしレンズ切断面(5,000倍)c:色素露出±レンズ表面(10,000倍)e:色素露出レンズ表面(10,000倍)d:色素露出±レンズ切断面(5,000倍)f:色素露出レンズ切断面(5,000倍):色素部分図5色素露出度の分類a:表面平滑レンズ表面(500倍)b:表面平滑レンズ表面(10,000倍)c:軽度凹凸レンズ表面(500倍)e:表面凹凸レンズ表面(500倍)d:表面平滑レンズ表面(10,000倍)f:表面平滑レンズ表面(10,000倍)図6表面平滑度の分類表面切断面表面切断面表面切断面a:露出なしレンズ表面(10,000倍)b:露出なしレンズ切断面(5,000倍)c:色素露出±レンズ表面(10,000倍)e:色素露出レンズ表面(10,000倍)d:色素露出±レンズ切断面(5,000倍)f:色素露出レンズ切断面(5,000倍):色素部分図5色素露出度の分類 1594あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(28)の上に直接色素がプリントされていると推測される.そのため,レンズ素材に色素が十分に内包されにくく,レンズ表面に色素が露出しやすくなっている可能性がある.2.レンズ表面の凹凸電子顕微鏡を用いてレンズ表面の凹凸を500倍,1万倍に拡大した像の観察を行い,図6に示したとおり表面の凹凸を3段階に分類した.1つ目は,500倍の拡大でも1万倍の拡大でもレンズ表面に凹凸がない「表面平滑」である(図6a,b).2つ目は,500倍の拡大ではレンズ表面に凹凸を確認できないが,1万倍の拡大ではレンズ表面に凹凸が確認できる「軽度凹凸」である(図6c,d).3つ目は500倍の拡大でも1万倍の拡大でもレンズ表面に凹凸が確認できる「表面凹凸」である(図6e,f).表1に現在国内で市販されている22製品のカラーSCLに対して,電子顕微鏡を用いた色素露出と表面凹凸に関する結果を示す.色素がサンドウィッチ構造となっており「露出なし」の製品は9製品,「色素露出±」が8製品,「色素露出」が5製品に認められた.また,表面平滑度では,「表面平滑」は2製品しかなく,「軽度凹凸」は6製品,「表面凹凸」が14製品に認められた.コンタクトレンズの形状,外観に対する承認基準では「対象を10倍率以上に拡大して観察できる装置を用いて観察するとき,表面に角膜などに対して有害な傷または凹凸があってはならない」と記されている.どの程度の色素露出や凹凸が角結膜などに有害であるのかは議論の余地はあるが,実際にカラーSCLを装用し色素部分に一致した角膜上皮障害を呈する症例を経験することもパターンに分類した.1パターン目は,色素がレンズ表面に観察できず,切断面の観察において色素の存在部位とレンズ表面の間に透明帯が存在し,色素がサンドウィッチ構造となっている「露出なし」パターンである(図5a,b).2パターン目は,レンズ表面に色素と思われる軽度の凹凸が確認でき(図5c),切断面の観察においてレンズ表面と色素部分にはっきりした境界が認められない(図5d)「色素の露出±」である.このパターンの着色方法は,色素をレンズと同じ素材で混ぜ合わせ,それを透明なレンズ上に展着させているのではないかと推測される.そのため,完全に色素がレンズ素材に内包されていない場合には,レンズ表面に色素が露出してしまう可能性がある.3パターン目は,レンズ表面においても切断面においても色素と色素のない透明部分の境界がはっきりとした色素層が確認できる(図5e,f)「色素露出」である.このパターンの着色方法は,レンズ素材表1色素露出度と表面平滑度着色が角膜側(13製品)着色が眼瞼側(9製品)表面平滑度分類表面平滑度分類平滑軽度凹凸表面凹凸平滑軽度凹凸表面凹凸色素露出度分類サンドウィッチ─3製品4製品2製品──色素露出±─2製品──1製品5製品色素露出──4製品──1製品図7カラーSCL装用に伴う角膜上皮障害色素部分に一致した輪状の角膜上皮障害を認める.表1色素露出度と表面平滑度着色が角膜側(13製品)着色が眼瞼側(9製品)表面平滑度分類表面平滑度分類平滑軽度凹凸表面凹凸平滑軽度凹凸表面凹凸色素露出度分類サンドウィッチ─3製品4製品2製品──色素露出±─2製品──1製品5製品色素露出──4製品──1製品図7カラーSCL装用に伴う角膜上皮障害色素部分に一致した輪状の角膜上皮障害を認める. a:顕微鏡像c:チタン成分(青)d:塩素成分(黄緑)1mm1mm1mmb:光学顕微鏡像e:酸素成分(緑)f:鉄成分(茶)1mm1mm図8EDSによる成分分析レンズのdot部分に一致してチタン,塩素,酸素,鉄の成分が検出された. a:こすり洗い前b:こすり洗い(10回)後図9ケアによる色素の色落ち黄色dot部分の色が消褪している.(平成26年5月22日独立行政法人国民生活センターの発表より) あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141597(31)sen.go.jp/pdf/n-20140522_1.pdf平成26年5月6)入江亮介,石田雅彦,大谷津崇ほか:MRI検査におけるカラーコンタクトレンズの研究─画像評価と温度変化について─.日本放射線技術学会東京部会雑誌107:73-78,20087)平岡孝浩:カラーCLが視機能に与える影響.日コレ誌56:57-60,2014

カラーコンタクトレンズによる眼障害の実態

2014年11月30日 日曜日

特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1583.1589,2014特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1583.1589,2014カラーコンタクトレンズによる眼障害の実態SurveyofEyeInjuriesDuetoColoredContactLens渡邉潔*はじめにカラーコンタクトレンズ(カラーCL)を使用する若年者が急増し,眼障害も増えている.カラーCLの問題点としては,装用者のカラーCLに対する知識不足,販売方法,カラーCL自体の性能,眼科医がカラーCLの診察に不慣れなどが考えられる.非視力補正カラーCL(度なしカラーCL)は,2008年までは高度管理医療機器として扱われなかった.安全性を確認されていないカラーCLを購入し,角膜潰瘍,角膜びらん,角膜感染症などを生じた症例が多く報告されたため,2009年2月4日に,「度なしカラーCLも高度管理医療機器に含める」という内容の薬事法施行令の一部改正の政令が公布され,同年11月4日から施行された.2009年の発表では,コンタクトレンズ(CL)装用者は1,500.1,870万人といわれているが1),度なしカラーCLが加わってさらにCL装用者は増加している.厚生労働省の承認を受けたカラーCLは,2009年には10品目以下であったが,2013年1月21日現在では19社,38製品,258品目(販売名)にも増えていることからも,カラーCL使用者数が急増していると考えられる.米国ではCLを販売するためには医師またはオプトメトリストのCL処方せんがなければ販売してはいけないが,日本ではCL処方せんが法制化されていないため,許可さえ取れば医師のCL処方せんなしに自由にCLを販売できる.したがって,高度管理医療機器であるCLが,大型ディスカウント店やインターネット通信販売で小学生であっても自由に購入できるという危険な状況になっている.はじめてのCLがカラーCLという女子中学生・高校生が増えてきている.大阪府の高校3年生女子生徒のアンケートでは,約半数がカラーCLの経験があるという報告もある2).眼科を受診せず,友人と大型ディカウント店に行き,デザインと価格などで購入する.眼の状態やフィッティングの診察,装用方法やケア方法の指導も受けないままにカラーCLを使用していることが,カラーCLによる眼障害の激増の原因になっている.一方,眼科医の間で最近よく聞く意見は,「カラーCLの眼障害が多いはずなのに診療所に受診する患者が少ない」である.その理由は,カラーCL装用者の多くは,眼痛や結膜充血があっても眼科に受診するという発想がないからである.また,受診すると医師に叱られるので鬱陶しいという装用者もいる.明らかに,CL装用者の眼科離れが加速している.日本コンタクトレンズ学会が2012年に行ったカラーCLにかかわる障害調査でも,カラーCL装用者が眼科の診察を受けずにカラーCLを購入している実態が明らかになった3).本調査は,カラーCLによる眼障害の実態を把握すること,および医療機器安全性情報報告書の厚生労働省への提出を推進することを目的に日本コンタクトレンズ学会の全会員にカラーCLの障害報告を依頼したものである.*KiyoshiWatanabe:ワタナベ眼科〔別刷請求先〕渡邉潔:〒530-0001大阪市北区梅田1丁目大阪駅前ダイヤモンド地下街5-5270ワタナベ眼科0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(17)1583 I日本コンタクトレンズ学会の調査方法は,2012年7月,本会正会員1,105名に,カラーCLにかかわる眼障害の調査の依頼趣意書と医療機器安全性情報報告書およびアンケート用紙を送付した.あわせて日本眼科医会にも本調査の協力を求めた.2012年7月1日から9月30日までの3カ月間を調査期間とした.調査の結果は,報告総数395例であった.報告数は,都道府県別にみると,大阪府,愛知県,東京都,福岡県など大都市に多かった.97施設からの報告があり,施設数も,東京都,大阪府,愛知県,北海道が多かった(表1).ここで注目したいのが,日本のなかでも地域差があるということである.表1都道府県別報告数都道府県名報告数施設数都道府県名報告数施設数大阪638岡山42愛知428沖縄31東京4110埼玉31福岡273栃木31山口264鹿児島21宮城253熊本21北海道247兵庫21千葉215三重22京都175宮崎22静岡174和歌山22青森133岩手11愛媛94大分11徳島82岐阜11長野72高知11群馬63滋賀11富山62鳥取11福島62広島11茨城51(文献3より)表2素材分類別の症例数素材症例数不明268グループI97グループII7グループIV23(文献3より)年齢は13.55歳までで,平均22.2歳であった.15.29歳が全体の86.5%(342名)と多かった(図1).性別は,女性が386名(97.7%)で男性が9名(2.3%)であった.装用しているカラーCLのメーカー名が不明と答えたものが64.3%で,レンズ名が不明と答えたものが62.5%であった(図2).レンズ名が判明した症例のなかで,添付文書でFoodandDrugAdministration(FDA)による素材の分類が確認できたものをまとめると,グループIが97例,グループIIが7例,グループIVが23例であった(表2).レンズ名が不明の症例は,ほとんどがグループIであると推測される.大都市部ではグループIがほとんどであり,地方都市の一部ではグループIVの頻度がやや多く,地域差がみられた.地方都市では眼科に受診してカラーCLを装用する者が多く,眼科で処方されたカラーCLはほとんどがグループIVやIIであるためと考えられる.含水性ソフトCL(シリコーンハイパーセント10~14歳2.0%15~19歳40.5%20~24歳30.1%25~29歳15.9%30~34歳5.1%35~39歳3.8%40~44歳1.3%45~49歳0.8%50歳以上0.5%01020304050図1年齢(文献3より)メーカー名レンズ名メーカー名不明64.3%レンズ名不明62.5%メーカー名判明35.7%レンズ名判明37.5%図2メーカー名とレンズ名(文献3より)1584あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(18) あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141585(19)頻回交換,1カ月定期交換だけであり,1カ月以上使用する従来型は承認されていない.しかし,大型ディスカウント店では度なしカラーCLを6カ月から1年使用できると表示して販売しているところもある.障害発生時に使用していたCLの使用日数は,1日目が11.9%,2日から2週間までが21.3%,2週間を超えて1カ月未満は14.4%,1カ月を超えて2カ月未満が30.1%,不明が22.3%であった(図8).多くの眼科医は,1日目でも障害を起こすことに驚く.IIIの項に述べる国民生活センター・日本眼科医会・日本コンタクトレンズ学会の共同研究でも,1日目の8時間の装用であっても角膜障害が16銘柄中12銘柄にみられたことより,たとえ1日でも装用すること自体が危険なカラーCLがあることがわかる.連続装用(寝ている間も装用)を許可されたカラーCLは承認されていない.しかし,終日装用(夜寝るまでにはずす)が84.1%で,連続装用が7.3%,不明が8.6%であり,装用方法を知らないものがいることもわかった.装用日数は,毎日が64.6%,週に4日以上が8.1%,週に3日以内が7.6%,不定期が7.1%,その他2.0%,不明10.6%であった(図9).今回の調査では,カラーCLを毎日装用している者が多く,透明なCLとの併用は少なかった.透明なCLとカラーCLを併用している者は,眼科を受診しCLの装用方法などの指導を受けていることが多いため,障害を起こす頻度が少なかったのではないかと推測する.1日の装用時間は,16時間以上が17.2%,8.16時間が53.2%,4.8時間が11.1%,4時間未満が1.8%,不規則1.5%,その他0.3%,不明が14.9%であった.定期検査は,まったく受けていないが79.8%,年に1回が1.8%,半年に1回が4.8%,3カ月に1回が3.5%,月に1回が0.5%,その他が0.5%,不明が9.1%であった(図10).自覚症状なしが7.6%であった.自覚症状は,多い順に,充血58.0%,疼痛44.4%,異物感30.0%,眼脂26.2%,流涙17.3%,かすみ14.1%,かゆみ11.9%,乾燥感10.6%,視力低下8.0%であった(図11).他覚所見は,多い順に,点状表層角膜症36.6%,アレドロゲルを除く)のグループIは低含水の素材で,グループIIやグループIVに比べて酸素透過性が低いことは知られており,角膜への酸素の供給量が少ないため眼障害を生じやすい.また,未承認のカラーCLも個人輸入のインターネット通信販売で流通しているが,報告例のほとんどは厚生労働省が承認したカラーCLであった.カラーCLの度数の有無は,度数ありが41.0%,度数なしが43.3%,不明が15.7%であった(図3).度数ありのカラーCL使用者は,視力測定もせずに自分の見え方だけで適当に度数を決めて注文していることが多い.カラーCLのタイプは,角膜径を大きく見せて虹彩色を変える派手なデザインのカラーCLが52.4%,角膜径を大きく見せるだけのリング状(サークル)カラーCLが17.7%,不明が29.9%であった(図4).眼科を受診して購入した49例のうち,リング状が26例(53.1%),虹彩色を変えるものが23例(46.9%)とほぼ同じであった.一方,眼科を受診しなかった317例をみると,リング状が51例(16.1%),虹彩色を変えるカラーCLが174例(54.9%),不明が92例(29.0%)であった.眼科に受診しなかった患者は,虹彩色を変える派手なカラーCLを選択する者の多いことがわかった.購入先は,インターネット通信販売が52.7%,大型ディスカウント店・雑貨店・化粧品店が28.4%,量販店が9.6%,眼科施設に隣接した販売店が5.1%,薬局が0%,その他が2.3%,不明が2.0%であった(図5).購入時に眼科に受診した人は13.4%,受診していない人が80.3%,不明が6.3%であった(図6).大都市では,透明なCLの購入時であっても多くの装用者は眼科に受診しない.CL量販店も併設の診療所を閉鎖し,販売店だけを残し,CL処方せんなしでCLが購入できると店先で声掛けをしている店も増えてきた.このままでいくと,地方都市も2.3年のうちに同じ状況になり,コンビニエンスストアでCLを販売する可能性もある.規定された使用サイクルは,1日が14.7%,2週間が6.1%,1カ月が32.7%,2カ月以上が30.6%,不明が15.9%であった.使用期間が2週間以内がわずか20.8%であった(図7).度ありカラーCLには1カ月以上使用する従来型として承認されているカラーCLも少数ある.一方,度なしカラーCLは,毎日使い捨て,2週間回が1.8%,半年に1回が4.8%,3カ月に1回が3.5%,月に1回が0.5%,その他が0.5%,不明が9.1%であった(図10).自覚症状なしが7.6%であった.自覚症状は,多い順に,充血58.0%,疼痛44.4%,異物感30.0%,眼脂26.2%,流涙17.3%,かすみ14.1%,かゆみ11.9%,乾燥感10.6%,視力低下8.0%であった(図11).他覚所見は,多い順に,点状表層角膜症36.6%,アレドロゲルを除く)のグループIは低含水の素材で,グループIIやグループIVに比べて酸素透過性が低いことは知られており,角膜への酸素の供給量が少ないため眼障害を生じやすい.また,未承認のカラーCLも個人輸入のインターネット通信販売で流通しているが,報告例のほとんどは厚生労働省が承認したカラーCLであった.カラーCLの度数の有無は,度数ありが41.0%,度数なしが43.3%,不明が15.7%であった(図3).度数ありのカラーCL使用者は,視力測定もせずに自分の見え方だけで適当に度数を決めて注文していることが多い.カラーCLのタイプは,角膜径を大きく見せて虹彩色を変える派手なデザインのカラーCLが52.4%,角膜径を大きく見せるだけのリング状(サークル)カラーCLが17.7%,不明が29.9%であった(図4).眼科を受診して購入した49例のうち,リング状が26例(53.1%),虹彩色を変えるものが23例(46.9%)とほぼ同じであった.一方,眼科を受診しなかった317例をみると,リング状が51例(16.1%),虹彩色を変えるカラーCLが174例(54.9%),不明が92例(29.0%)であった.眼科に受診しなかった患者は,虹彩色を変える派手なカラーCLを選択する者の多いことがわかった.購入先は,インターネット通信販売が52.7%,大型ディスカウント店・雑貨店・化粧品店が28.4%,量販店が9.6%,眼科施設に隣接した販売店が5.1%,薬局が0%,その他が2.3%,不明が2.0%であった(図5).購入時に眼科に受診した人は13.4%,受診していない人が80.3%,不明が6.3%であった(図6).大都市では,透明なCLの購入時であっても多くの装用者は眼科に受診しない.CL量販店も併設の診療所を閉鎖し,販売店だけを残し,CL処方せんなしでCLが購入できると店先で声掛けをしている店も増えてきた.このままでいくと,地方都市も2.3年のうちに同じ状況になり,コンビニエンスストアでCLを販売する可能性もある.規定された使用サイクルは,1日が14.7%,2週間が6.1%,1カ月が32.7%,2カ月以上が30.6%,不明が15.9%であった.使用期間が2週間以内がわずか20.8%であった(図7).度ありカラーCLには1カ月以上使用する従来型として承認されているカラーCLも少数ある.一方,度なしカラーCLは,毎日使い捨て,2週間 不明15.7%度数あり41.0%度数なし43.3%図3レンズの度数の有無(文献3より)不明2.0%その他2.3%眼科5.1%量販店9.6%通販52.7%雑貨店大型ディスカウントショップ28.4%図5購入先(文献3より)不明1日15.9%14.7%2週間6.1%2カ月を超える30.6%1カ月32.7%図7レンズの規定使用期間(文献3より)不明29.9%虹彩色を変えるCL52.4%リング(サークル)状17.7%図4カラーCLのタイプ(文献3より)不明受診した6.3%13.4%受診していない80.3%図6購入時の眼科受診の有無(文献3より)1日11.9%不明22.3%2日から2週間21.3%1カ月を超える30.1%2週間を超えて1カ月未満14.4%図8障害発生時に使用していたCLの使用日数(文献3より) 不明その他10.6%2.0%不定期7.1%3日以内7.6%4日以上毎日使用8.1%64.6%図9装用日数(文献3より)7.6%充血自覚症状なし58.0%疼痛44.4%異物感30.0%眼脂26.2%流涙17.3%かすみ14.1%かゆみ11.9%乾燥感10.6%視力低下8.0%020406080(%)図11自覚症状(文献3より)14.4%汚れ内面着色8.9%外面着色8.1%材質劣化3.3%破損0.5%変形0.3%キズ0.3%05101520(%)図13CL自体の原因(文献3より)に露出しており,それが原因とされるものが多かった.一部のカラーCLは,承認申請ではサンドイッチ構造だとしていても,角膜側に色素が露出しているものがあり,それがサンドペーパーのように角膜や結膜をこする(21)その他0.5%不明月に1回9.1%0.5%3か月に1回3.5%半年に1回4.8%年1回1.8%なし79.8%図10定期検査(文献3より)点状表層角膜症角膜びらん角膜浸潤角膜潰瘍角膜新生血管角膜内皮細胞減少虹彩炎毛様充血アレルギー性結膜炎巨大乳頭結膜炎低矯正・過矯正(%)01020304036.6%15.8%17.2%5.3%3.7%1.1%2.8%17.8%21.9%4.4%1.3%図12他覚所見(文献3より)処方せんなしで購入したこと説明指導を受けていないこと不適切な処方不適切な説明指導0図14処方,指導が原因(文献3より)58.2%44.3%17.5%11.9%20406080(%)可能性があると考えられる.処方,指導が原因とされた詳細は,処方せんなしで購入したこと(58.2%),説明指導を受けていないこと(44.3%),不適切な処方(17.5%),不適切な説明指導あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141587 1588あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(22)同研究の結果を2014年5月22日に国民生活センターが記者発表をした(以下,国民生活センターのアンケート)4).2013年の第56回日本コンタクトレンズ学会で筆者が発表した,大阪における接客業の女性のカラーCL装用の実態(以下,接客業のアンケート)と女子高校生のアンケート5)を比較してみた.アンケート調査は対象によって結果が異なってくると考えられ,4つのアンケート調査を比較してみた(表3).図15のように,医療への関心度と年齢について考えると,国民生活センターの対象は,インターネット調査にボランティアで参加してくれる人であるため,非常に医療に関心があると考えられる.日本コンタクトレンズ学会の調査の対象も,眼科に受診してくれた優良な患者であり,医療には関心が高い.一方,接客業の女性は,仕事が忙しく眼科に受診することは少なく,眼痛や充血があっても市販薬を点眼してなんとか治そうとする.さらに,女子高校生は結膜炎などでもまったく眼科に受診したことがないという者が多い.カラーCLの購入先を比較してみると,インターネット通信販売と大型ディスカウント店の2者の合計が,国民生活センターが48%,日本CL学会が81%,接客業の女性が93%,女子高校生が80%であり,やはり国民生活センターのアンケート調査の対象者は医療に関心のあることがわかった(表4).カラーCL購入時の眼科受診の有無は,眼科に受診した者が,国民生活センターが41.3%,日本コンタクトレンズ学会が13%,接客業の女性が7%,女子高校生(11.9%)であり,処方せんに従った販売の義務化が必要と考えられた(図14).II若年者の問題本障害調査のなかで特に危惧するのは,若年者の障害例である.大都市では,中学生からカラーCLを装用している者が多い.5歳ごとの年齢層別にみると,最も多い年齢層は,15.19歳までであり全体の40.5%を占めた.10.14歳までという年齢層も2.0%(8名)いた.以下に15歳以下の20例だけの集計を示した.度数なしが75.0%,度数ありが25.0%であった.虹彩色を変える派手なカラーCLが60.0%,リング状が15.0%,デザイン不明が25.0%であった.購入先は,インターネット通信販売が60.0%,雑貨店35.0%,不明が5.0%で,眼科に併設された販売店はなかった.購入時に眼科に受診した者はまったくいなかった(受診なしが95.0%,不明が5.0%).また,定期検査も,まったく受けていないが95.0%,不明が5.0%であった.15歳以下は,虹彩色を変える派手なカラーCLを好み,眼科に受診せずにインターネット通信販売や雑貨店でカラーCLを購入し,定期検査も受けていないことが明らかになった.今後,このような若年の装用者が爆発的に増え,成人になることが懸念される.眼科学校医や養護の先生にお願いしたいことは,中学校,高校の学校の現場で,CLの装用の指導を徹底的に行っていただきたいということである.III他のアンケート調査との比較カラーCLの購入先や購入時の眼科受診の有無について,いくつかのアンケートを比較してみた.国民生活センター,日本眼科医会,日本コンタクトレンズ学会の共表3カラーCLのアンケート調査の比較調査機関調査方法調査時期対象人数国民生活センターインターネット2013年1,000名日本CL学会眼科医の問診2012年395名渡邉潔(接客業の女性を対象)接客業の職場でのアンケート2012年2013年152名145名渡邉潔(女子高校生を対象)学校での問診2012年2013年451名454名年齢若年者成人医療に関心が低い眼科に受診しない医療に関心が高い眼科に受診する女子高校生接客業の女性日本コンタクトレンズ学会眼障害報告国民生活センターインターネットアンケート図15調査対象の比較表3カラーCLのアンケート調査の比較調査機関調査方法調査時期対象人数国民生活センターインターネット2013年1,000名日本CL学会眼科医の問診2012年395名渡邉潔(接客業の女性を対象)接客業の職場でのアンケート2012年2013年152名145名渡邉潔(女子高校生を対象)学校での問診2012年2013年451名454名年齢若年者成人医療に関心が低い眼科に受診しない医療に関心が高い眼科に受診する女子高校生接客業の女性日本コンタクトレンズ学会眼障害報告国民生活センターインターネットアンケート図15調査対象の比較 表4カラーCLの購入先(比較)国民生活ネット通販39.2%センター大型ディスカウント店9.3%2者の合計48%日本CL学会ネット通販53%大型ディスカウント店28%2者の合計81%接客業女性ネット通販84%大型ディスカウント店9%2者の合計93%女子高校生大型ディスカウント店51%ネット通販29%2者の合計80%表5カラーCL購入時の眼科受診の有無(比較)国民生活センター受診した41.3%日本CL学会受診した13%接客業女性受診した7%女子高校生受診した0%

カラーコンタクトレンズが眼に及ぼす影響

2014年11月30日 日曜日

特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1577.1582,2014特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1577.1582,2014カラーコンタクトレンズが眼に及ぼす影響TheImpactofColoredContactLensWearontheEye糸井素純*はじめに2009年2月4日に薬事法施行令の一部改正の政令が公布され,これまで医療機器ではなかった,おしゃれを目的とした度なしカラーコンタクトレンズ(CL)も高度管理医療機器として管理されることになった.それに伴い,いわゆる“度あり”といわれる視力補正用カラーCLも数多く市場に登場するようになった.その一方で,一部を除き,ほとんどのカラーCLは,医師の処方を経ずに,インターネット,薬局,大型雑貨店などで購入されている.カラーCL装用者は,レンズの素材などに左右される安全性を無視して,色素のデザインや価格だけでカラーCLを選択するようになっている.一般に流通している透明なソフトコンタクトレンズ(SCL)の素材は高含水性ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA),中含水性HEMA,あるいはシリコーンハイドロゲルが主流であるが,カラーCLの素材は,一図1前眼部OCT(SS.1000)CASIAの2D画像色素が眼瞼側のカラーCLの断面像.部を除き低含水性HEMAである.特に10代の女性たちが好む虹彩の色を変えるタイプは,低含水性HEMA素材しか流通していない.低含水性HEMA素材のカラーCLは,透明な低含水性HEMA素材のSCLと比較しても,さまざまな問題点を抱えている.本稿では低含水性HEMA素材のカラーCLに焦点を絞り,カラーCLが眼に及ぼす影響について解説する.I低含水性HEMA素材のカラーCLの問題点問題点1:色素が角膜側,あるいは眼瞼側に偏在している問題点2:レンズ表面の凹凸が顕著である多くのカラーCLはサンドウィッチ構造を謳っているが,実際の色素の分布を断面で確認すると,色素はレンズの表層近くに分布し,角膜側,あるいは眼瞼側に偏在している(図1,2).低含水性HEMA素材のカラーCL図2前眼部OCT(SS.1000)CASIAの2D画像色素が角膜側のカラーCLの断面像.*MotozumiItoi:道玄坂糸井眼科医院〔別刷請求先〕糸井素純:〒150-0043東京都渋谷区道玄坂1-10-19糸井ビル1F道玄坂糸井眼科医院0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(11)1577 を実体顕微鏡で確認すると,色素が多層にプリントされ,最表面は薄い透明な膜で覆われていることが確認できる.ただし,製品によっては,レンズ表面への色素の露出が確認できる製品もある.また,レンズ表面を原子間力電子顕微鏡で観察した報告では,中含水性HEMA素材のカラーCLの2製品に比べて,低含水性HEMA素材のカラーCLの1製品が明らかにレンズ表面の凹凸が顕著で,着色部位の摩擦係数が高いことが報告されている1).問題点3:酸素透過性が低い現在,日本で販売されている含水率50%以上のHEMA素材のカラーCLは6品目である.前述したように,その他のカラーCLは低含水性HEMA素材を用いている.低含水性HEMA素材のカラーCLの酸素透過係数(Dk値)はメーカー表示で最大で12×(10.11cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)である.明確な資料はないが,そのほとんどがPolymacon(USAN)素材で作製されていると推測される.1984年にHoldenらは,Polymacon素材のSCLを安全に終日装用するためには,平均レンズ厚(調和平均)で33μm未満とする必要があると報告している2)が,現在販売されている低含水性HEMA素材のカラーCLで,この基準を満たしているものは一つもない.色素の存在が,CLの酸素透過性をさらに低下させているとの意見もある.従来は,色素の存在は,酸素透過性には影響しないと考えられていたが,同じ素材,同じレンズ厚でも,カラーCLの色素のパターンにより角膜浮腫の程度に差があると報告されている3).問題点4:レンズの硬さが硬い問題点5:レンズ径が大きい問題点6:ベースカーブが1つだけで,変更できないSCLの素材は,約45年前に日本に最初に登場した低含水性HEMA素材に始まり,その後,中含水性HEMA,高含水性HEMA,そしてシリコーンハイドロゲル素材へと時代とともにより安全なものへと進歩してきた.その時代の変遷のなかで,素材だけでなく,レンズデザインもより薄くなり,ベースカーブの選択肢も減り,レンズ径も13.8.14.5mmと以前よりも大きいものが主流となった.この時代に逆行してしまったのが低含水性HEMA素材のカラーCLである.低含水性HEMA素材はレンズ硬が硬く,柔軟性がない.色素の存在により,同素材の透明なCLよりも硬くなっている可能性が高い.低含水性HEMA素材で,タイト症状を起こさないようにするには,レンズ厚を極限まで薄くする(0.035mm未満)か,眼の形状に合わせて,レンズの規格(レンズ径,ベースカーブ)を決定する必要がある.販売枚数は少なくなったが,従来型SCLとして,今でも低含水性HEMA素材のSCLが販売されているが,カラーCLと異なり,13.0.13.5mmとレンズ径が小さいものが多く,レンズ径の選択も可能で,ベースカーブも4.5種類が用意され,眼の角膜曲率半径を考慮して,選択できるようになっている(表1).流通している低含水性HEMA素材のカラーCLは,レンズ厚(中心部)も0.06mm(実測値)以上で,レンズ径が大きく,ベースカーブも1つしかなく,選択ができない.そのためタイト症状を起こしやすい.II低含水性HEMA素材のカラーCLによる眼障害とその原因低含水性HEMA素材のカラーCLは,SCLであり,表1おもな低含水性HEMA素材の従来型ソフトコンタクトレンズの規格製造あるいは輸入元含水率(%)中心厚(mm)レンズ径(mm)BC(mm)旭化成アイミー株式会社400.03513.5,14.08.4,8.8旭化成アイミー株式会社380.0713.58.4,8.8,9.2株式会社クラレ38.60.1213.08.1,8.3,8.5,8.7,8.9,9.1,9.3株式会社シード350.0613.0.13.58.0,8.3,8.6,8.9,9.2ボシュロム株式会社38.60.025.0.03514.08.00.10.08株式会社トーメー37.50.0912.0,12.5,13.0,13.5,14.07.5,7.8,8.1,8.4,8.7,9.0,9.3,9.6,9.91578あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(12) 図31日使い捨てカラーCL装用者にみられた角膜上皮図41カ月交換カラーCL装用者にみられた角膜上皮障害障害色素による角膜側のレンズ表面の凹凸が原因と考えられ色素の露出が原因と考えられた.た.図5各種カラーCL装用(8時間)による角膜浮腫の違い左上:非装用,右上:中含水性1日使い捨てカラーCL,左下:低含水性1日使い捨てカラーCL,右下:低含水性1カ月交換カラーCL. 図61カ月交換カラーCL装用者にみられた酸素不足が原因と考えられた点状表層角膜症図7カラーCL装用者にみられた角膜変形カラーCLの装用歴:13年.上段:初診時(左:instantaneousradiusmap,右:pachymetrymap),下段:SCL装用中止1カ月後(左:instantaneousradiusmap,右:pachymetrymap). 図81カ月交換カラーCL装用者にみられた結膜ステイ図91カ月交換カラーCLの短時間(8時間)装用後ニングにみられた角膜変形タイト症状が原因と考えられた.上:装用前,下:装脱直後. 図10サークルタイプの1日使い捨てカラーCL装用者にみられた角膜潰瘍上方の角膜輪部に病変がみられる.