監修=大橋裕一連載②MyboomMyboom第2回「奥村直毅」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す連載②MyboomMyboom第2回「奥村直毅」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す自己紹介奥村直毅(おくむら・なおき)同志社大学生命医科学部医工学科ティッシュエンジニアリング研究室・助教私は2001年に京都府立医科大学を卒業し眼科学教室に入局しました.大学病院での研修医生活に続いて,高知県にある町田病院で勉強させていただきました.2006年から京都府立医科大学大学院で角膜内皮疾患に対する新規治療法の開発を目指した研究を行いました.2011年からは現職である同志社大学に助教として着任しました.現在は少し臨床のウエイトを減らして,京都府立医科大学の木下茂教授,同志社大学の小泉範子教授のご指導のもと角膜内皮疾患の研究に重きをおいた生活をしております.研究のmyboom2001年の入局当時,京都府立医科大学では重症眼表面疾患に対しての培養粘膜上皮移植を始めた直後ということもあり,日本および世界からも多くの先生方が常に見学に来られており活発なディスカッションが行われていました.大学卒業直後の私にはとても華やかで輝いて見えておりましたので,そうした空気のなかで自分も研究をしてみたいと,なんとなく感じていました.もちろん研修医当時はどこでもそうなのでしょうが労働基準法の適用外でしたので,そのうちいつかはといった程度のものでした.大学院入学後に,いよいよ木下茂教授に研究テーマを相談させていただくことになりましたが,研修医当時の培養粘膜上皮移植の華やかさの刷り込みのためか,臨床応用につながるものが良いと信じておりま(85)0910-1810/12/\100/頁/JCOPYしたので,当時サルをモデルとしての培養角膜内皮移植実験を進めておられた小泉範子先生にお願いして角膜内皮の研究を始めさせていただきました.基本的には何をやってもうまくいかない時期が続きましたが,当初は大学院の期間限定での研究かと思って,大して気にせず過ごしておりました.そんなことで大学院生として自覚に欠けた生活をしておりましたが,Rhoキナーゼ阻害薬という薬剤に出会い,それが角膜内皮に興味深い作用を幾つかもっていることを明らかにすることができました.このあたりからすっかり夢中になっております.興味深い作用のうちの一つは培地に加えると細胞が増殖するという現象でしたが,点眼したらどうだろうかというやや飛躍した思い込みのもと,ウサギ,サルの角膜内皮障害モデルに点眼してみることにしました.結果は驚くべきことに非常に良いものであり,木下教授らの強力なリーダシップのもと水疱性角膜症患者に対する臨床研究がスタートしました.現在はまだ安全性試験という位置づけですが,一部の患者さんでは視力が1.5と劇的に改善して予定していた角膜移植をキャンセルするに至りました.もちろんすべての水疱性角膜症がこの点眼薬で治るというわけではないのでしょうが,今後の展開に大いに期待しています.私たちの研究グループでは薬物療法のみならず,培養角膜内皮移植の研究開発を行っています.当初はシート状に培養した角膜内皮を移植することを想定していましたが,一つの有力なオプションとして培養細胞を懸濁液として前房内に注入することを考えています.このこと自体は東京大学の三村達哉先生など何人かの研究者がすでに提唱されていたアイデアです.問題は,普通に培養細胞を注入するだけだと前房水に流されてしまうということです.私たちはRhoキナーゼ阻害薬が角膜内皮細胞の細胞接着を促進するということを明らかにしましたが,懸濁液に混ぜて前房内に注入するとうまい具合に角あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012373〔写真1〕京都府立医科大学眼科医局セミナーの配信サイト膜にくっつくのではないかと,ここでもやや飛躍した思いのもと動物実験を繰り返しました.結果は非常に望ましいもので,現在臨床応用を目標とした研究を行っています.現在私は,Rhoキナーゼ阻害薬点眼薬と培養角膜内皮移植の開発を目標とした研究に情熱を注いでいます.期間限定で華やかな世界に憧れて始めた研究ですが,すっかりはまってしまっておりますので,まさにmyboomかと思っています.いろいろな取り組みのmyboom京都府立医科大学の眼科学教室では医局セミナーをすべて録画して,専用のウェブサイトでいつでも見られるようにしています(写真1).もちろん医局の先生方の協力があってのことで私の仕事ではありませんが,サイトの設計に少し関係しましたので紹介させていただきます.具体的にはセミナーでの発表がすべてサイトにアップロードされYouTubeのようなイメージで端末を選ばず見ることができます.公開範囲は,現在のところ大学内と関連病院の先生方に限っていますが,今後教育的な内容や演者の許可が得られたものについては広く公開を予定しています.私自身も特に教育的な内容については374あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012〔写真2〕第10回YOBC(若手医師交流会)の集合写真電車での移動時間によくiPadで視聴しています.もちろん最新の研究に関する公開に適さないものや,講演内容の著作権に関する問題には十分な注意が必要ですが,今後の有力な情報ソースになるのではないかと感じております.ところで,せっかく「あたらしい眼科」にフリーな内容で執筆できるスペースを頂きましたのでYOBC(YoungOphthalmologists’BorderlessConference)という会について本連載第1回目の鈴木先生に続いて紹介させていただきたいと思います.YOBCは,親しい先生方と持ち回りで幹事をしながら,若い眼科医同士が知り合いを作って楽しいお酒を飲むことを目的として日本臨床眼科学会,日本眼科学会の際の年2回のペースで集まっています.前回は第10回の記念大会でしたので,木下教授が若い医師に向けて真面目な話あり,笑いありの記念講演をしてくださいました(写真2).すでに会も10回を数え,私も若い眼科医というには微妙に苦しくなってはおりますが,医局の枠を超えて仲の良い先生たちとのお酒が楽しくて参加を続けております.幹事の不備をいつも皆に叱られていますので,この場をお借りして宣伝させていただくことにいたします.次回のプレゼンターは東京医科大学の臼井嘉彦先生です.優秀かつパワフルな親しい友人であり,密かに尊敬している人物です.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.(86)