———————————————————————- Page 10910-1810/09/\100/頁/JCOPY状,初診時視力,臨床所見,治療薬(点眼,眼軟膏,結膜下注射,内服,点滴),塗抹検鏡,分離培養,検出菌,外科的治療の有無,3 カ月後の転帰,3 カ月後の視力である.患者へのアンケートは CL の商品名,種類,装用方法,処方された施設,購入先,週当たりの装用日数,装用時間,週当たりの洗浄回数,こすり洗いの有無,レンズケースの交換頻度,定期検査の頻度,取り扱い説明書の有無,週当たりの消毒の頻度,消毒の種類,装用方法遵守の程度,1 日ディスポーザブルソフトコンタクトレンズ(SCL)の使用期間,2 週間頻回交換 SCL の使用期間,定期交換(1, 3 カ月)SCL の使用期間などである.2. 対象症例今回の検討期間は平成 19 年 4 月~平成 20 年 8 月中旬,症例数は 233 例,年齢は 9~90 歳(平均 28 歳),性別は女性 104 例,男性 129 例であった.3. 初診時視力初診時矯正視力(両眼症例は悪いほうの視力)は,光覚弁~手動弁が 43 例(18%),指数弁~0.03 が 51 例(22%),0.04~0.06 が 9 例(4%),0.07~0.09 が 6 例(3%),0.1~0.3 が 35 例(15%),0.4~0.6 が 27 例(12%),0.7以上が 40 例(17%),記載なしが 22 例(9%)であった.視力としては約 5 割が初診時視力 0.1 未満であり重症例が多かった.はじめに近年コンタクトレンズ(CL)は使い捨てレンズ,特に2 週間タイプが主流となっている.それに伴い CL ケアもマルチパーパスソリューション(MPS)が主流となっている.ここ数年わが国においてはアカントアメーバ角膜炎の急増が大きな問題である.この現象は 2 週間タイプレンズの増加,消毒効果の弱い MPS でのケアが関係していることが容易に想像される.CL ユーザーの CLケアも非常にばらつきがあり,一部のユーザーは非常に危ない使用方法をしているのを頻繁に見かける.このような状況から,日本コンタクトレンズ学会と日本眼感染症学会は共同で CL 関連角膜感染症全国調査を平成 19年 4 月から行っている.今回その調査結果の途中経過を中心に述べる.ICL関連角膜感染症全国調査平成 19 年 4 月から全国 224 施設で調査を開始した.対象は CL 装用が原因と考えられる角膜感染症で入院治療を要した症例である.各施設の担当医あてに症例入力画面(担当医に依頼する調査内容と患者用アンケート)を送付し,調査終了後にホームページに書き込んでもらった.調査期間は当初は 1 年間であったが,その後 1 年延長され計 2 年となった.1. 調査内容担当医への調査内容は,年齢,性別,左右,自覚症(9)ツꀀ 1167ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 589 8511ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 377 2ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 特集●コンタクトレンズ関連角膜感染症 あたらしい眼科 26(9):1167~1171,2009コンタクトレンズ関連角膜感染症 全国症例調査Surveillance of Contact Lens-Related Corneal Infections in Japan福田昌彦*———————————————————————- Page 21168あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,2009(10)メーバの 35 株,その他のグラム陰性桿菌の 24 株,セラチアの 18 株などであった.微生物が多く検出された部位は角膜病巣,CL ケースであった.グラム陰性桿菌(緑膿菌)とアカントアメーバが多かった.アカントアメーバが塗抹検鏡あるいは分離培養で確認されたのは全部で 55 例(24%)であった.5. 3カ月後の矯正視力1.0 以 上 が 85 例(36%),0.7~0.9 が 37 例(16%),0.4~0.6 が 30 例(13%),0.1~0.3 が 16 例(7%),0.07~0.09 が 0 例(0%),0.04~0.06 が 4 例(2%),指数弁~0.03 が 12 例(5%),光覚弁~手動弁が 3 例(1%),0が 1 例(0.4%),記載なしが 45 例(19%)であった(図1).0.1 未満に限ってみると 20 例(9%)であった.CL による角膜感染症の重症例では失明に至る高度の視力障害が発生することが確認された.4. 細菌検査塗抹検鏡が行われたのは 181 例(78%)であった.結果は表 1 に示す.微生物が検出された部位は角膜病巣,結膜 ,眼脂,CL,CL ケース,その他に分類した.検出された微生物種はグラム陽性球菌,グラム陽性桿菌,グラム陰性球菌,グラム陰性桿菌,糸状真菌,アカントアメーバに分類した.微生物が検出された頻度は角膜病巣,CL ケース,CL の順に多かった.最も多く検出された微生物はアカントアメーバの 44 検体とグラム陰性桿菌の 44 検体であった.この 2 種も角膜病巣,CL ケースから多く検出された.分離培養が行われたのは 218 例(94%)で微生物が検出されたのは 144 例で,検出率は 66%であった.結果は表 2 に示す.微生物種は黄色ブドウ球菌,表皮ブドウ球菌,コリネバクテリウム,セラチア,その他のグラム陰性桿菌,アスペルギルス,アカントアメーバに分類された.多く検出されたのは緑膿菌の 58 株,アカントア表 1塗抹検鏡(181/233,78%)菌種グラム陽性球菌24グラム陽性桿菌16グラム陰性球菌9グラム陰性桿菌44糸状菌3アカントアメーバ44角膜病巣1413425140結膜 210100眼脂100400CL201305CL ケース8642227その他000000 太字は特に多く注意を要するもの.〔下村嘉一:CL 関連角膜感染症全国調査.眼科プラクティス第 28 巻ツꀀ 眼感染症の謎を解く,p.356,文光堂,2009 より引用〕表 2分離培養(218/233,94%),検出率(144/218,66%),主要な菌のまとめ菌種黄色ブドウ球菌7表皮ブドウ球菌11コリネバクテリウム13緑膿菌58セラチア18その他のグラム陰性桿菌24アスペルギルス1アカントアメーバ35角膜病巣3464734032結膜 12411000眼脂01171000CL22182600CL ケース124261221117その他01020001 太字は特に多く注意を要するもの.〔下村嘉一:CL 関連角膜感染症全国調査.眼科プラクティス第 28 巻ツꀀ 眼感染症の謎を解く,p.356,文光堂,2009 より引用〕———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,20091169(11)般眼科と眼科併設販売店が 40~50%であり,CL 量販店は 1/4 程度であった.医師の処方なし,インターネット,外国での購入も若干名認めた.取り扱い説明書をもらわなかった人も約 10%に認めた.8. CL装用スケジュールの遵守装用スケジュールについては,守っていたが 43 例(18%),ほぼ守っていたが 79 例(34%),ほとんど守っていなかったが 50 例(21%),全く守っていなかったが 8例(3%),記載なしが 53 例(23%)であった(図 4).レンズタイプ別にみると,終日装用レンズを終日が 1146. 使用レンズタイプ2 週間頻回交換 SCL が 127 例(54%),定期交換(1,3カ月)SCLが39例(17%),1日ディスポーザブルSCLが16例(7%),カラーCLが11例(5%),ガス透過性ハード CL が 7 例(3%),従来型 SCL が 7 例(3%),1 週間連続装用 SCL が 4 例(2%),ポリメチルメタクリレート(PMMA)素材ハード CL が 3 例(1%),オルソK レンズが 2 例(1%),不明が 17 例(7%)であった(図2 ).2 週間タイプが半数以上であり,その他はすべてのレンズタイプに発症していた.海外での報告があるように夜間に装用するタイプのオルソケラトロジーレンズでも発症が認められた.7. CL処方を受けた施設,購入先,取り扱い説明書処方を受けた施設は,一般眼科が 94 例(40%),CL量販店隣接眼科が 65 例(28%),眼鏡店内眼科が 29 例(12%),医師の処方なしが 9 例(4%),その他が 5 例(2%),一般病院,大学病院が 6 例(3%),記載なしが 25例(11%)であった.購入先は,眼科施設に併設する販売店が 117 例(50%),CL 量販店が 55 例(24%),眼鏡店が 20 例(9%),その他が 10 例(4%),インターネットが 7 例(3%),外国で購入が 2 例(1%),記載なしが 22 例(9%)であった(図 3).取り扱い説明書をもらったが 165 例(71%),もらわなかったが 27 例(12%),記載なしが 41 例(18%)であった.処方を受けた施設,実際の購入先では,予想に反し一19%36%16%13%7%5%2%1%1%:1.0以上:0.7~0.9:0.4~0.6:0.1~0.3:0.04~0.06:指数弁~0.03:光覚弁~手動弁:0:記載なし図 13カ月後の矯正視力〔図 1~10 は,福田昌彦:コンタクトレンズ関連角膜感染症の実態と疫学.日本の眼科 80:693-698, 2009 より引用〕9%50%24%9%3%4%1%:眼科に併設する販売店:CL量販店:眼鏡店:その他:インターネット:外国で購入:記載なし図 3CLの購入先ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 頻回交換ツꀀツꀀツꀀ 定期交換ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ カ ーツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 連 装用ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ ーツꀀツꀀツꀀツꀀ ルツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 明図 2使用レンズタイプツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 守ツꀀ いたツꀀツꀀ 守ツꀀ いたツꀀ とツꀀ 守ツꀀ いなツꀀ た 全 守ツꀀ いなツꀀ たツꀀツꀀ な 図 4CL装用スケジュールの遵守———————————————————————- Page 41170あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,2009(12)2 週間レンズ,1 日レンズでは約半数,定期交換(1,3 カ月)SCL では約 1/4 が決められた期間より長期に装用していた.10.消毒薬使用していた消毒薬あるいは保存薬は,MPS が 126例(54%),過酸化水素が 10 例(4%),煮沸が 1 例(0.4%),記載なしが 96 例(41%)であり,MPS が過半数であった.回答が得られなかったものも MPS が大勢を占めていると推測された.11.CLの洗浄,消毒,こすり洗いCL の洗浄に関しては,毎日が 87 例(37%),時々が32例(14%),週2~3回が23例(10%),週4~6回が20 例(9%),ほとんどしないが 18 例(8%),全くしないが 9 例(4%),ツꀀ その他が 8 例(3%),ツꀀ 記載なしが 36 例(15%)であった(図 7).CL の消毒に関しては,毎日が69 例(30%),時々が 20 例(8%),全くしないが 18 例(8%),ほとんどしないが 13 例(6%),週 4~6 が 13 例( 6 % ),ツꀀ 週 2 ~ 3 が 1 4 例 ( 6 % ),ツꀀ そ の 他 が 5 例 ( 2 % ),ツꀀ 記例,終日装用レンズを連続が 56 例,連続装用レンズを終日が 21 例,連続装用レンズを連続が 11 例,記載なしが 31 例(13%)であった.装用スケジュールをほとんどあるいは全く守っていなかったのは 1/4 であり,終日装用レンズを連続装用しているケースもみられた.9. レンズタイプ別の装用期間2 週間頻回交換 SCL(127 例)の使用期間は,2 週間以内が 46 例(36%),2~3 週間が 32 例(25%),3 週間~1 カ月が 21 例(17%),1 カ月を超えたが 15 例(12%),記載なしが 13 例(10%)であった(図 5).1 日 SCL(16例)の使用期間は,1 日が 6 例(38%),2~3 日が 4 例(25%),1~2 週間が 1 例(6%),2 週間~1 カ月が 2 例(13%),1 カ月を超えたが 1 例(6%),記載なしが 2 例(13%)であった(図 6).定期交換(1,3 カ月)SCL(39例)の使用期間は,決められた期間以内が 26 例(67%),超過した期間が 1 週間以内 1 例(3%),1~2 週間が 4 例(10%),2 週間~1 カ月が 2 例(5%),1 カ月を超えたが 4 例(10%),記載なしが 2 例(5%)であった.36%25%17%12%10%:2週間以内:2~3週間:3週間~1カ月:1カ月~:記載なし図 52週間頻回交換SCLの使用期間ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 日ツꀀツꀀツꀀ 日ツꀀツꀀツꀀ 週間ツꀀ 週間ツꀀ カ月ツꀀ カ月ツꀀツꀀツꀀ な 図 61日SCLの使用期間ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 日 時ツꀀ 週ツꀀツꀀ 回 週ツꀀツꀀ 回ツꀀ とツꀀツꀀ ない 全ツꀀ ないツꀀ のツꀀツꀀツꀀ な 図 7CLの洗浄ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 日 時ツꀀ 週ツꀀツꀀ 回 週ツꀀツꀀ 回ツꀀ とツꀀツꀀ ない 全ツꀀ ないツꀀ のツꀀツꀀツꀀ な 図 8CLの消毒———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,20091171(13)約 3 割,定期検査をほとんどあるいは全く受けない人は約 3 割であった.おわりに細菌検査では緑膿菌を中心としたグラム陰性桿菌とアカントアメーバが多く検出された.検出部位は角膜病巣部と CL ケースが多かった.レンズタイプでは 2 週間頻回交換 SCL が約半数であった.CL の処方を受けたのは一般眼科と CL 量販店隣接眼科が多く,購入先は眼科施設に併設する販売店,CL 量販店が多かった.CL の洗浄を毎日しない人は約半数,CL の消毒を毎日しない人は約 4 割,こすり洗いを毎日しない人は約 7 割であった.レンズケース交換をほとんどあるいは全くしない人は約 3 割,定期検査をほとんどあるいは全く受けない人は約 3 割であった.CL の装用期間については 2 週間頻回交換 SCL,1 日 SCL では約半数,定期交換(1,3 カ月)SCL では約 1/4 が決められた期間より長期に装用していた.CL 装用に関連する重症の角膜感染症はグラム陰性桿菌とアカントアメーバが多く,特にアカントアメーバの急増が大きな問題であると考えられた.重症の感染を起こした症例の CL の扱い,定期検査に関する意識は非常に低いことが明らかとなった.CL は医師の定期検査が必要な高度管理医療機器で,危険を伴うものであり,使用期間,消毒,保管方法の遵守が大切であることのますますの啓発が必要であると考えられた.文献 1) 感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス─分離菌・患者背景・治療の現況─.日眼会誌 110:961-972, 2006 2) 大橋裕一,鈴木崇,原祐子ほか:コンタクトレンズ関連細菌性角膜炎の発症メカニズム.日コレ誌 48:60-67, 2006 3) Nagington J, Watson PG, Playfair TJ et al:Amoebic infection of the eye. Lancet 2:1537-1540, 1974 4) 石橋康久:アカントアメーバ角膜炎 37 自験例の分析.眼科 44:1233-1239,2002 5) 糸井素純,植田喜一,岡野憲二ほか:インターネットによるコンタクトレンズ眼障害のアンケート調査.日コレ誌 50:111-121, 2008載なしが 81 例(34%)であった(図 8).CL のこすり洗いは,毎日が 43 例(18%),ほとんどしないが 37 例(16%),時々が 37 例(16%),全くしないが 36 例(15%),週2~3回が18例(8%),週4~6回が19例(8%),その他が 7 例(3%),記載なしが 37 例(16%)であった.CL の洗浄を毎日しない人は約半数,CL の消毒を毎日しない人は約 4 割,こすり洗いを毎日しない人は約 7割であった.12.レンズケース交換,CLの定期検査レンズケース交換は,3 カ月以内が 46 例(20%),6カ月以内が 20 例(9%),不定期が 43 例(18%),ほとんどしないが 43 例(18%),全くしないが 32 例(14%),その他が 12 例(5%),記載なしが 37 例(16%)であった(図 9).CL の定期検査は,1 カ月が 2 例(1%),3 カ月が53例(23%),6カ月が36例(15%),1年が10例(4%),不定期が 31 例(13%),ほとんど受けないが 28例(12%),全く受けないが 42 例(18%),その他が 2例(1%),記載なしが 29 例(12%)であった(図 10).レンズケース交換をほとんどあるいは全くしない人は20%9%18%18%5%14%16%:3カ月以内:6カ月以内:不定期:ほとんどしない:全くしない:その他:記載なし図 9レンズケース交換12%23%16%4%13%18%12%1%1%:1カ月:3カ月:6カ月:1年:不定期:ほとんど受けない:全く受けない:その他:記載なし図 10CLの定期検査