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多摩地域の内科医における糖尿病眼手帳第4 版に対する アンケート調査

2023年2月28日 火曜日

《第27回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科40(2):237.242,2023c多摩地域の内科医における糖尿病眼手帳第4版に対するアンケート調査大野敦粟根尚子佐分利益生廣瀬愛谷古宇史芳赤岡寛晃廣田悠祐小林高明松下隆哉東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科CQuestionnaireSurveyontheDiabeticEyeNotebook4thEditionamongPhysiciansintheTamaAreaAtsushiOhno,NaokoAwane,MasuoSaburi,AiHirose,FumiyoshiYako,HiroakiAkaoka,YusukeHirota,TakaakiKobayashiandTakayaMatsushitaCDepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversityC目的:2020年に第C4版に改訂された糖尿病眼手帳(以下,眼手帳)に対するアンケート調査を内科医を対象として行い,その結果に回答者が糖尿病を専門としているか否かで差を認めるかを検討した.方法:多摩地域の内科医に眼手帳第C4版に対するアンケートへの回答をC2021年に依頼し,回答者を糖尿病が専門のC38名(専)と非専門のC26名(非)に分け調査結果を比較した.結果:両群とも「眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感はない」がほぼC100%.受診の記録の記載内容は「ちょうど良い」がC70%前後,「詳しすぎる」もC20%前後認め,不要と感じる項目は中心窩網膜厚と抗CVEGF療法とする回答が多かった.福田分類は(専)で「無いままでよい」,(非)で「どちらともいえない」が最多であったが,復活を(専)のC12%が希望した.第C4版で「HbA1cが追加されてよかった」が(非)で多い傾向を認めた.結論:眼手帳の受診の記録が詳しすぎるとの回答をC20%前後認め,不要と感じる項目として糖尿病黄斑浮腫関連の回答が多く,内科医への啓発活動が必要と思われる.CPurpose:WeconductedaquestionnairesurveyofphysiciansontheDiabeticEyeNotebook(DEN,revisedtotheC4thCeditionCin2020)C,CandCexaminedCifCthereCwasCaCdi.erenceCinCtheCresultsCdependingConCwhetherCorCnotCtheCrespondentswerediabetesspecialists.Methods:In2021,wesentquestionnairesonthe4th-editionDENtophysi-ciansCinCtheCTamaCarea,CandCdividedCtheCrespondentsCintoCthoseCwhospecialize(S)indiabetes(n=38)andCthoseCwhodonotspecialize(NS)indiabetes(n=26)andcomparedthe.ndings.Results:InboththeSandNSgroup,nearlyCallCpatientsCagreedCtoCtheChandingCoverCtheCDENCophthalmologicalCdata.COfCtheCmedicalCrecordsCcollected,Capproximately70%CwereCadequate,CwhileCapproximately20%CwereCtooCdetailed,CandCfovealCretinalCthicknessCandCanti-VEGFtherapyweretheitemsmostfrequentlydeemedunnecessary.ThemostcommonanswertotheFuku-daclassi.cationwasthatitdidnotneedtobeS,neitherNS,yet12%ofSrespondentsstatedthatitwasacceptedifrevised.ItwasdeemedgoodthatHbA1cwasaddedinthe4thedition,butthattendencywasmorecommonintheCNSCresponses.CConclusion:About20%CofCtheCrespondentsCansweredCthatCtheCrecordsCofCconsultationsCinCtheCDENCwereCtooCdetailed,CandCmanyCrespondedCthatCdiabeticCmacularCedemaCrelatedCitemsCwereCunnecessary,CthusCindicatingthatthephysiciansneedtobefurthereducated.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(2):237.242,C2023〕Keywords:糖尿病眼手帳,アンケート調査,受診の記録,糖尿病黄斑浮腫,福田分類.diabeticCeyeCnotebook,Cquestionnairesurvey,recordofconsultations,diabeticmacularedema,Fukudaclassi.cation.C〔別刷請求先〕大野敦:〒193-0998東京都八王子市館町C1163東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科Reprintrequests:AtsushiOhno,M.D.Ph.D.,DepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversity,1163Tate-machi,Hachioji-city,Tokyo193-0998,JAPANC表1アンケート回答者の背景(人数)専門医非専門医p値【年齢】20歳代:3C0歳代:4C0歳代:5C0歳代:6C0歳代:7C0歳代1:7:8:12:7:1(無回答C2名)0:2:6:4:7:5(無回答C2名)C0.12【臨床経験年数】10年以内:1C1.C20年:2C1.C30年:3C1.C40年:4C1年以上4:10:12:9:2(無回答C1名)2:5:9:4:4(無回答C2名)C0.64【就業施設】診療所:2C00床以下の病院:2C00床以上の病院:大学病院22:1:1:8(無回答C6名)19:0:0:0(無回答C7名)C0.03【定期通院糖尿病患者数】11.C30名:3C1.C50名:5C1.C100名:1C01.C300名:3C01名.C500名:5C01名以上1:1:7:13:2:1C3(無回答C1名)11:6:4:2:0:0(無回答C3名)<C0.001はじめに糖尿病診療の地域医療連携を考える際に重要なポイントの一つが,内科と眼科の連携である.東京都多摩地域では,1997年に内科医と眼科医が世話人となり糖尿病治療多摩懇話会を設立し,内科と眼科の連携を強化するために両科の連携専用の「糖尿病診療情報提供書」を作成し地域での普及を図った1).また,この活動をベースに,筆者(大野)はC2001年の第C7回日本糖尿病眼学会での教育セミナー「糖尿病網膜症の医療連携.放置中断をなくすために」に演者として参加した2)が,ここでの協議を経てC2002年C6月に日本糖尿病眼学会より『糖尿病眼手帳』(以下,眼手帳)の発行されるに至った3).眼手帳は発行後C20年が経過し,その利用状況についての報告が散見され4.7),2005年には第C2版,2014年には第C3版に改訂された.多摩地域では,眼手帳に対する内科医の意識調査を発行C7年目,10年目に施行し,13年目には過去C2回の調査結果と比較することで,発行後C13年間における眼手帳に対する内科医の意識の変化を報告した8).第C3版においては糖尿病黄斑症の記載が詳細になり,一方,初版から記載欄を設けていた福田分類が削除され,第C2版への改訂に比べて比較的大きな変更になった.さらに2020年には第C4版に改訂されて「HbA1c」の記入欄が設けられ,「糖尿病黄斑浮腫の現状と治療内容」に関する詳細な記載項目が増えた.そこで多摩地域では,2021年C4.5月に眼手帳第C4版に対する内科医を対象としたアンケート調査を施行したので,その結果に糖尿病の専門性の有無で差があるかを検討した.CI対象および方法アンケートの対象は,多摩地域で糖尿病診療に関心をもつ内科医C65名で,「日本糖尿病学会員ですか,糖尿病について関心がありますか?」の質問に対する回答結果【①日本糖尿病学会の会員,②会員ではないが糖尿病が専門・準専門,③専門ではないが関心はある,④あまり関心がない】により,専門医(①C32名+②C6名)38名と非専門医(③C26名+④C0名)26名(1名は不明)のC2群に分けた.アンケート回答者の背景を表1に示す.年齢は,専門医が50歳代のC33.3%,非専門医がC60歳代のC29.2%がそれぞれ最多でも,両群間に有意差は認めなかった.臨床経験年数は,専門医・非専門医ともC21.30年がC30%台でもっとも多く,両群間に有意差は認めなかった.就業施設は,専門医が診療所C68.8%,病院C31.2%,非専門医は診療所C100%で,非専門医で診療所勤務者が多い傾向を認めた.糖尿病の定期通院患者数は,専門医はC101名以上の回答がC75.6%,非専門医はC50名以下の回答がC73.9%を占め,両群間に有意差を認めた.アンケート調査はC2021年C4.5月に実施した.眼手帳の協賛企業である三和化学研究所の医薬情報担当者が各医療機関を訪問して医師にアンケートを依頼し,直接回収する方式で行ったため,回収率はほぼC100%であった.アンケートの配布と回収という労務提供を依頼したことで,協賛企業が本研究の一翼を担う倫理的問題が生じているが,アンケートを通じて眼手帳の啓発を同時に行いたいと考え,そのためには協力をしてもらうほうが良いと判断し,依頼した.なお,アンケート内容の決定ならびにデータの集計・解析には,三和化学研究所の関係者は関与していない.また,アンケート用紙の冒頭に,「集計結果は,今後学会などで発表し機会があれば論文化したいと考えておりますので,ご了承のほどお願い申し上げます」との文を記載し,集計結果の学会での発表ならびに論文化に対する了承を得た.アンケートの設問は,以下のとおりである.問1.眼手帳の認知度・活用度問2.眼手帳を持参される患者数問3.眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感問4.眼手帳の「受診の記録」の記載内容への御意見問5.「受診の記録」の記載内容で不要と感じる項目問6-1).眼手帳の「受診の記録」への項目追加希望問6-2).第C3版から「福田分類」が消えたことへの御表2眼手帳の認知度・活用度と持参される患者数眼手帳の認知度・活用度専門医非専門医1)2)すでに眼科医から発行されて,外来時に「眼手帳」から診療情報を得ている眼科医から発行されて外来時に見たことはあるが,活用はしていない31名(C91.2%)1名(2C.9%)3名(1C2.0%)8名(3C2.0%)3)外来とは別のところ(研究会等)で見たことや聞いたことはある1名(2C.9%)5名(2C0.0%)4)眼手帳の存在自体今回はじめて知った9名(3C6.0%)5)その他の状況1名(2C.9%)p<0.001無回答C4C1C眼手帳を持参される患者数専門医非専門医1)5名未満1名(3C.2%)6名(5C4.5%)2)5.C9名2名(6C.5%)3名(2C7.3%)3)10.C19名8名(2C5.8%)4)20名以上20名(C64.5%)2名(1C8.2%)p<0.001無回答C1表3眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感と「受診の記録」の記載内容眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感専門医非専門医1)全くない33名(C86.8%)22名(C88.0%)2)ほとんどない4名(1C0.5%)3名(1C2.0%)3)多少ある1名(2C.6%)4)かなりあるp=0.1無回答C1C眼手帳の「受診の記録」の記載内容専門医非専門医1)詳しすぎて理解しにくい項目がある8名(2C2.2%)4名(1C6.0%)2)3)必要な情報が入っていてちょうど良いもっと詳しい内容がほしい27名(C75.0%)1名(2C.8%)17名(C68.0%)4)わからない4名(1C6.0%)p=0.056無回答C2C1C意見問6-3).第C4版で「HbA1c」が追加されたことへの御意見各設問に対する結果は,無回答者を除く回答者数,カッコ内に百分比で示した.問C2は,問C1で眼手帳を活用中,診療で見るが未活用した回答の専門医C32名,非専門医C11名を対象に施行した.問C5は,問C4で詳しすぎると回答した専門医C8名,非専門医C4名を対象に施行した.両群の回答結果の比較は度数がC5未満のセルが多いため,統計ソフトCEZR(EasyR)を用いてCFisherの正確確率検定を行い,統計学的有意水準は5%とした.II結果1.糖尿病眼手帳の認知度・活用度(表2上段)専門医は「外来時に眼手帳から診療情報を得ている」の91.2%,非専門医は「眼手帳の存在自体今回はじめて知った」のC36.0%が最多回答で,専門医において有意に認知度が高く活用もされていた.C2.眼手帳を持参される患者数(表2下段)専門医は「20名以上」の回答がC64.5%,非専門医は「5名未満」の回答がC54.5%を占め,専門医で有意に多かった.C3.眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感(表3上段)両群とも「全くない」がC85%以上,「ほとんどない」を合わせてほぼC100%で,有意差を認めなかった.次回受診予定HbA1c矯正視力眼圧白内障糖尿病網膜症糖尿病網膜症の変化糖尿病黄斑浮腫中心窩網膜厚本日の抗VEGF療法抗VEGF薬総投与回数図1「受診の記録」の記載内容で不要と感じる項目問C4で「詳しすぎる」と回答した人のみに質問(専門医:8名,非専門医C4名).表4「受診の記録」の項目に対する御意見眼手帳の「受診の記録」への項目追加希望専門医非専門医1)特にない30名(C88.2%)21名(C95.5%)2)ある4名(1C1.8%)1名(4C.5%)p=0.64無回答C4C4C第C3版から「福田分類」が消えたことへの御意見専門医非専門医1)無いままでよい16名(C47.1%)8名(3C8.1%)2)復活してほしい4名(1C1.8%)3)どちらともいえない14名(C41.2%)13名(C61.9%)p=0.17無回答C4C5C第C4版で「HbAC1c」が追加されたことへの御意見専門医非専門医1)追加されてよかった22名(C62.9%)18名(C90.0%)2)必要なかった3名(8C.6%)3)どちらともいえない10名(C28.6%)2名(1C0.0%)Cp=0.11無回答C3C6C4.眼手帳の「受診の記録」の記載内容への御意見(表35.「受診の記録」の記載内容で不要と感じる項目(図1)下段)問C4で「詳しすぎる」と回答した人が不要と感じる項目両群とも「必要な情報が入っていてちょうど良い」がC70は,両群とも中心窩網膜厚と抗CVEGF療法関連項目が多か%前後でもっとも多く,「詳しすぎて理解しにくい項目があった.る」はC20%前後認めた.6-1).眼手帳の「受診の記録」への項目追加希望(表4上段)「特にない」との回答が両群ともC85%以上を占め,有意差はなかった.C6-2).第3版から「福田分類」が消えたことへの御意見(表4中段)専門医で「無いままでよい」,非専門医で「どちらともいえない」がそれぞれもっとも多く,一方復活希望は専門医で12%認めたが,両群間に有意差はなかった.C6-3).第4版で「HbA1c」が追加されたことへの御意見(表4下段)「追加されてよかった」が,専門医のC62.9%に比し非専門医はC90.0%と多い傾向を認めた.CIII考按1.糖尿病眼手帳の認知度・活用度専門医は眼手帳をC90%以上の回答者が活用中であったのに対し,非専門医はC12%にとどまっていた.今回のアンケート項目にないため推測の範囲内ではあるが,眼科への定期受診率が非専門医の方が低いために眼手帳を見る機会も少ないことが考えられる.また,今回のアンケートでは「眼手帳は眼科医から渡すべきか」との項目も設けたが,その回答において「内科医から渡しても良い」との回答が専門医は31.6%で非専門医のC16.0%の約C2倍を占めており,専門医では糖尿病連携手帳と眼手帳の同時配布率が高いことも非専門医との活用度の差につながっている可能性が考えられる.C2.眼手帳を持参される患者数眼手帳の持参患者数は専門医で有意に多かったが,糖尿病の定期通院患者数は専門医がC101名以上,非専門医はC50名以下の回答がそれぞれ約C75%を占めて有意差を認めているためと思われる.C3.眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感は,両群とも「全く・ほとんどない」がほぼC100%であったことより,糖尿病初診患者には,たとえ糖尿病連携手帳を未持参でも眼科医からの眼手帳の配布が望まれる.ただそのためには,外来における時間的余裕と眼手帳の配布ならびに眼手帳記載時のメディカルスタッフによるサポート体制の確保が必要と思われる.一方,多摩地域の眼科医に対する眼手帳のアンケート調査において「眼手帳は眼科医から患者に渡すほうが望ましいと考えるか」の設問に対し,「眼科医が渡すべき」の回答が2020年はC2015年に比べてC14.3%減り,「内科医から渡してもかまわない」の回答がC12.7%増えていた9).したがって,内科医も眼科医からの配布を待つ受け身の姿勢ではなく,糖尿病初診患者に糖尿病連携手帳と眼手帳を同時配布し,初診の段階での眼科受診を勧める姿勢が望まれる.C4.眼手帳の「受診の記録」の記載内容への御意見多摩地域の内科医における眼手帳発行C7・10・13年目の意識調査8)では,「必要な情報が入っていてちょうど良い」との回答がC71.75%で今回の結果とほぼ一致していたが,一方「詳しすぎて理解しにくい項目がある」はC3.3.8.5%にとどまり,今回のC20%前後の回答率とは差を認めた.C5.「受診の記録」の記載内容で不要と感じる項目詳しすぎて理解しにくいために不要と感じる項目としては,専門医でも中心窩網膜厚と抗CVEGF療法関連項目をあげていた.「眼手帳の目的」がC16頁に三つ記載されているが,そのなかでもっとも重要な項目は「③患者さんに糖尿病眼合併症の状態や治療内容を正しく理解してもらう」ことであると筆者は考えている.眼手帳第C3版への改訂にあたり,患者サイドに立った眼手帳をめざしてC1頁の「眼科受診のススメ」の表記を患者にわかりやすい表記に変更しただけでなく,糖尿病黄斑症への理解を助けるために眼手帳後半のお役立ち情報に光干渉断層計(OCT)や薬物注射を加えるなどの改変を行い.その結果患者さんにとってわかりやすくなったとの回答が多摩地域の眼科医においてC2015年のC54.5%から2020年はC64.9%とC10%増えていた9).今回の結果を踏まえて,第C4版への改訂にあたり糖尿病黄斑浮腫関連の情報提供に関し内科医が「受診の記録」を理解するのに十分であるのか,さらに先にあげた眼手帳の目的③を考えた際に,第C4版でも患者に正しく理解してもらうわかりやすさが確保されているのか今後検証していくべきと思われる.C6-1).眼手帳の「受診の記録」への項目追加希望「特にない」との回答が両群とも85%以上を占めていたが,眼手帳発行C7・10・13年目の意識調査8)でもC90%以上を占めており,今回の結果とほぼ一致していた.C6-2).第3版から「福田分類」が消えたことへの御意見専門医で「無いままでよい」がC47%でもっとも多いものの,復活希望もC12%認めた.多摩地域の眼科医でのアンケート調査では,眼手帳発行C10年目までの回答において,受診の記録のなかで記入しにくい項目として福田分類が多く選ばれていた10).福田分類は,内科医にとっては網膜症の活動性をある程度知ることのできる分類であるため記入してもらいたい項目ではあるが,その厳密な記入のためには蛍光眼底検査が必要となることもあり,眼科医にとっては埋めにくい項目と思われる1).また,糖尿病網膜症病期分類は,改変Davis分類,さらに国際重症度分類と主流が変わり,眼手帳の第C3版では受診の記録から福田分類は削除されたが,多摩地域の眼科医でのC2020年の調査では福田分類の復活希望が27.5%でC2015年のC2.9%より約C25%有意に増加していた9).福田分類に関しては,国際的には過去の分類の位置づけとなりつつも,一部復活の希望もあることより,内科・眼科連携の観点からも重要なポイントであるので,今後のアンケート調査においては復活希望の回答者にその理由を聞いてみたい.C6-3).第4版で「HbA1c」が追加されたことへの御意見(表4下段)HbA1cが追加されてことに対しては,とくに非専門医で9割の支持を得た.受診の記録に追加したい項目に関して多摩地域の眼科医においてCHbA1c記入欄の希望が多かった10)ことより,まずは内科医から糖尿病連携手帳の発行による臨床検査データの提供に心がけてきた.第C4版でCHbA1cの記載欄が追加されてことにより,連携手帳をまずは開いて直近のCHbA1c値を確認したうえで,眼手帳に転記していただく方式が確立できたと思われる.おわりに多摩地域の内科医に眼手帳第C4版に関するアンケート調査をC2021年C4.5月に施行し,回答者が糖尿病を専門としているか否かで結果に差を認めるかを検討した.その結果,眼手帳の認知率や持参する患者数は専門医で有意に高値であった.受診の記録が詳しすぎるとの回答をC20%前後認め,不要と感じる項目として黄斑浮腫関連の回答が多く,内科医への啓発活動が必要と思われた.HbA1cの追加に対しては,とくに非専門医での評価が高かった.謝辞:アンケート調査にご協力いただきました多摩地域の内科医師の方々,またアンケート用紙の配布・回収にご協力いただきました三和化学研究所東京支店多摩営業所の伊藤正輝氏,篠原光平氏,鈴木恵氏,林浩介氏,折小野千依氏,中尾亮太氏に厚くお礼申し上げます.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)大野敦,植木彬夫,馬詰良比古ほか:内科医と眼科医の連携のための糖尿病診療情報提供書の利用状況と改良点.日本糖尿病眼学会誌7:139-143,C20022)大野敦:糖尿病診療情報提供書作成までの経過と利用上の問題点・改善点.眼紀53:12-15,C20023)大野敦:クリニックでできる内科・眼科連携─「日本糖尿病眼学会編:糖尿病眼手帳」を活用しよう.糖尿病診療マスター1:143-149,C20034)善本三和子,加藤聡,松本俊:糖尿病眼手帳についてのアンケート調査.眼紀55:275-280,C20045)糖尿病眼手帳作成小委員会:船津英陽,福田敏雅,宮川高一ほか:糖尿病眼手帳.眼紀56:242-246,C20056)船津英陽:糖尿病眼手帳と眼科内科連携.プラクティスC23:301-305,C20067)船津英陽,堀貞夫,福田敏雅ほか:糖尿病眼手帳のC5年間推移.日眼会誌114:96-104,C20108)大野敦,粟根尚子,小暮晃一郎ほか:多摩地域の内科医における糖尿病眼手帳に対する意識調査─発行C7・10・13年目の比較─.プラクティス34:551-556,C20179)大野敦,粟根尚子,赤岡寛晃ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳の第C3版に関するアンケート調査結果の推移.あたらしい眼科39:510-514,C202210)大野敦,粟根尚子,梶明乃ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳に対するアンケート調査結果の推移(第C2報).ProgMedC34:1657-1663,C2014***

多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳の第3 版に関する アンケート調査結果の推移

2022年4月30日 土曜日

《第26回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科39(4):510.514,2022c多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳の第3版に関するアンケート調査結果の推移大野敦粟根尚子赤岡寛晃廣田悠祐梶邦成小林高明松下隆哉東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科CChangesintheResultsofaQuestionnaireSurveyontheThirdEditionoftheDiabeticEyeNotebookbyOphthalmologistsintheTamaAreaAtsushiOhno,NaokoAwane,HiroakiAkaoka,YusukeHirota,KuniakiKaji,TakaakiKobayashiandTakayaMatsushitaCDepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversityC目的:2014年に第C3版に改訂された糖尿病眼手帳(以下,眼手帳)に対する眼科医の意識調査をC2015年とC2020年に施行し,調査結果の推移を検討した.方法:多摩地域の眼科医に眼手帳,とくに第C3版の改訂ポイントに関するアンケートをC2015年とC2020年に依頼し,50名とC42名から回答を得た.結果:受診の記録で記入しにくい項目は「糖尿病黄斑症とその変化」の選択者が増え,黄斑症の記載が詳細になったことへの負担感が増していた.福田分類の復活希望がC25%有意に増加した.受診の記録の追加希望項目は,内科関連から眼科関連項目に移行していた.「眼手帳は眼科医が渡すべき」が減り,「内科医でもよい」が増えた.「第C3版への改訂で患者にとってわかりやすくなった」がC10%増えた.結論:2020年はC2015年に比し,第C3版への改訂で糖尿病黄斑症の記載が詳細になったことへの負担感が増え,福田分類の復活希望がC25%に有意に増加していた.一方,患者にとってわかりやすくなったとの回答が増えていた.CPurpose:Anophthalmologist’sattitudesurveyontheDiabeticEyeNotebook(EyeNotebook)revisedtothe3rdeditionin2014wasconductedin2015and2020,andthetransitionofthesurveyresultswasexamined.Meth-ods:In2015and2020,weaskedophthalmologistsintheTamaareatosurveytheEyeNotebook,especiallytherevisionCpointsCofCtheC3rdCedition,CandCreceivedCresponsesCfromC50CandC42Cphysicians,Crespectively.CResults:Thenumberofphysicianswhoselecteddiabeticmaculopathyanditschangesasitemsthatweredi.cultto.lloutintherecordofconsultations,aswellastheburdenofadetaileddescriptionofdiabeticmaculopathy,increased.ThehopeCforCtheCrevivalCofCtheCFukudaCclassi.cationCincreasedCsigni.cantlyCby25%.CTheCitemsCtoCbeCaddedCtoCtheCrecordCofCconsultationsCwereCshiftingCfromCthoseCrelatedCtoCinternalCmedicineCtoCthoseCrelatedCtoCophthalmology.CThenumberofanswersthatophthalmologistsshouldprovidetotheEyeNotebookhasdecreased,whilethenum-berofanswersthatphysiciansmayprovidehasincreased.Althoughitincreasedby10%,therevisiontothe3rdeditionCmadeCitCeasierCforCpatientsCtoCunderstand.CConclusions:ComparedCtoC2015,CtheCburdenCofCaCdetailedCdescriptionofdiabeticmaculopathywasincreasedin2020,andthehopefortherevivaloftheFukudaclassi.cationsigni.cantlyCincreasedCby25%.COnCtheCotherChand,CanCincreasingCnumberCofCrespondentsCsaidCitCwasCeasierCforCpatientstounderstand.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(4):510.514,C2022〕Keywords:糖尿病眼手帳,アンケート調査,受診の記録,糖尿病黄斑症,福田分類.diabeticeyenotebook,ques-tionnairesurvey,recordofconsultations,diabeticmaculopathy,Fukudaclassi.cation.Cはじめに1997年に内科医と眼科医が世話人となり糖尿病治療多摩懇糖尿病診療の地域医療連携を考える際に重要なポイントの話会を設立し,内科と眼科の連携を強化するために両科の連一つが,内科と眼科の連携である.東京都多摩地域では,携専用の「糖尿病診療情報提供書」を作成し地域での普及を〔別刷請求先〕大野敦:〒193-0998東京都八王子市館町C1163東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科Reprintrequests:AtsushiOhno,M.D.,Ph.D.,DepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversity,1163Tate-machi,Hachioji-city,Tokyo193-0998,JAPANC510(118)図った1).また,この活動をベースに,筆者(大野)はC2001年の第C7回日本糖尿病眼学会での教育セミナー「糖尿病網膜症の医療連携─放置中断をなくすために」に演者として参加した2)が,ここでの協議を経てC2002年C6月に日本糖尿病眼学会より『糖尿病眼手帳』(以下,眼手帳)が発行されるに至った3).眼手帳は,2002年C6月に日本糖尿病眼学会より発行されてからC14年が経過し,その利用状況についての報告が散見される4.7)が,多摩地域では,眼手帳に対する眼科医の意識調査を発行半年目,2年目,7年目,10年目に施行してきた.そして発行半年目,2年目の結果をC7年目の結果と比較した結果8),ならびにC10年目を加えた過去C4回のアンケート調査の比較結果9)を報告してきた.眼手帳はC2014年C6月に第C3版に改訂されたが,糖尿病黄斑症の記載が詳細になり,一方,初版から記載欄を設けていた福田分類が削除され,第C2版への改訂に比べて比較的大きな変更になった.そこで第C3版への改訂からC1年後のC2015年に第C3版に対する眼科医の意識調査を行い報告した10)が,今回さらにC5年後のC2020年に再度同じ調査を行ったので,調査結果の推移を報告する.CI対象および方法アンケートの対象は,多摩地域の病院・診療所に勤務する糖尿病診療に関心をもつ眼科医で,2015年C50名,2020年42名から回答があった.回答者の背景は表1に示すとおりで,2020年はC2015年に比し女性の回答者の割合が有意に増え,臨床経験年数と定期通院糖尿病患者数が増加傾向を認めた.なおC2015年のアンケート調査はC6.7月に施行されたが,眼手帳の協賛企業の医薬情報担当者が各医療機関を訪問して医師にアンケートを依頼し,直接回収する方式で行ったため,回収率はほぼC100%であった.アンケートの配布と回収という労務提供を依頼したことで,協賛企業が本研究の一翼を担う倫理的問題が生じているが,アンケートを通じて眼手帳の啓蒙を同時に行いたいと考え,そのためには協力をしてもらうほうが良いと判断し,実施した.なお,アンケート内容の決定ならびにデータの集計・解析には,上記企業の関係者は関与していない.一方,2020年のアンケート調査はC1.3月に施行されたが,2015年の際の倫理的問題を考慮し,多摩地域のなかの八王子市・町田市・多摩市・日野市・稲城市・青梅市・立川市・国立市・府中市・調布市の医師会に所属する眼科医に郵送でアンケート用紙の配布と記入を依頼し,FAXで回収する方式に変更した.郵送総数はC141件で回答数はC42件のため,回収率はC29.8%であった.また,アンケート用紙の冒頭に,「集計結果は,今後学会などで発表し機会があれば論文化したいと考えておりますので,ご了承のほどお願い申し上げます」との文を記載し,集計結果の学会での発表ならびに論文化に対する了承を得た.第C26回日本糖尿病眼学会においては全C10項目で報告したが,本稿では誌面の制約もあり,とくに第C3版の改訂ポイントを中心に下記の項目につき,2015年C50名,2020年C42名の回答結果を比較検討した.問C1.4頁からの「受診の記録」のなかで記入しにくい項目問C2-1.受診の記録における「糖尿病黄斑症」の記載の詳細化の是非問C2-2.受診の記録における「糖尿病黄斑症の変化」の記載の是非問C2-3.受診の記録における福田分類削除の是非問3.受診の記録への追加希望項目表1アンケート回答者の背景(人数)2015年2020年p値(c2検定)【日本糖尿病眼学会】会員:非会員:無回答11:30:97:30:5C0.51【性別】男性:女性:無回答37:8:517:12:1C3<C0.005【年齢】30歳代:4C0歳代:5C0歳代:6C0歳代:7C0歳代6:14:21:6:31:8:18:9:6C0.17【勤務先】開業医:病院勤務:その他・無回答42:7:139:1:2C0.12【臨床経験年数(年)】.10:11.20:21.30:30.40:41.:無回答2:11:22:12:3:00:6:15:12:4:5C0.097【定期通院糖尿病患者数(名)】.9:10.29:30.49:50.99:1C00.:無回答3:13:17:4:10:30:9:7:11:11:4C0.057C表2受診の記録における変更ポイントへの評価「糖尿病黄斑症」の記載の詳細化の是非2015年2020年1)適切な改変69.2%54.3%2)細かくて記載が大変になった25.6%34.3%3)その他の御意見5.1%11.4%Cc2検定p=0.36無回答11名7名「糖尿病黄斑症の変化」の記載の是非2015年2020年1)必要な項目47.6%54.5%2)必要だが記載しにくくないほうがよい38.1%33.3%3)元々不要9.5%6.1%4)その他の御意見4.8%6.1%Cc2検定p=0.89無回答8名9名福田分類削除の是非2015年2020年1)ないままでよい60.0%50.0%2)復活してほしい2.9%27.5%3)どちらともいえない37.1%22.5%Cc2検定p=0.01無回答15名2名表4眼手帳は眼科医から患者に渡すほうが望ましいか2015年2020年1)眼科医が渡すべきである22.0%7.7%2)内科医から渡してもかまわない36.0%48.7%3)どちらでもよい42.0%43.6%Cc2検定p=0.16無回答0名3名問C4.眼手帳は眼科医から患者に渡すほうが望ましいと考えるか問C5.眼手帳第C3版への改訂の患者さんへのわかりやすさ問C1は複数回答が可につき無回答者を除く回答者中の回答割合で表示し,問C2.5は無回答者を除く回答者の百分比で示した.両年の回答結果の比較にはCc2検定を用い,統計学的有意水準はC5%とした.CII結果1.4ページからの「受診の記録」のなかで記入しにくい項目(図1)2020年はC2015年に比べて,記入しにくい項目は「とくになし」との回答者がC11%減り,「糖尿病黄斑症」「糖尿病黄斑症の変化」を選択する回答者が増加していた.2.1.受診の記録における「糖尿病黄斑症」の記載の詳細化の是非(表2上段)糖尿病黄斑症の記載が詳細になったことは「適切な改変」表3「受診の記録」への追加希望項目2015年2020年1)とくにない93.3%83.3%2)ある6.7%16.7%Cc2検定p=0.18無回答5名6名<自由記載コメント>【2015年】・血糖データ(FBS,HbA1c)本人か内科医の記載で・HbA1c・内科医へのアドバイスの項目(何カ月でHbA1cを何%降下させる等)【2020年】・網膜レーザー光凝固(光凝固)未・済みの項目が欲しい・緑内障,黄斑変性など(病名のみでも可)・他の眼底疾患・治療の項目:抗CVEGF薬注射・変化あり・ステージ不変の項目(出血箇所は変わってもステージは同じなどという場合があるので)・病院名,記載者名の追記スペース(転院などで変更があるので)表5眼手帳第3版への改訂の患者へのわかりやすさ2015年2020年1)患者にとってわかりやすくなった54.5%64.9%2)あまりかわりない18.2%13.5%3)どちらともいえない27.3%21.6%Cc2検定p=0.64無回答6名5名との回答が両年とももっとも多かったが,「細かくて記載が大変になった」の回答が有意差は認めないもののC2020年は2015年よりもC8.7%増えていた.2.2.受診の記録における「糖尿病黄斑症の変化」の記載の是非(表2中段)黄斑症の変化は「必要な項目」との回答が両年ともC50%前後でもっとも多く,ついで「必要だが記載しにくくないほうがよい」がC30%台で,両年間で差を認めなかった.2.3.受診の記録における福田分類削除の是非(表2下段)福田分類は「ないままでよい」が両年とも最多の回答も60%からC50%とC10%減り,復活希望がC2020年はC2015年に比しC25%有意に増加していた.C3.受診の記録への追加希望項目(表3)受診の記録への追加希望は「とくにない」の回答がC10%減少し,「希望項目あり」の回答がC10%増えていた.その回答者における自由記載コメントを表3の下段に記載したが,追加希望項目は内科関連から眼科関連項目に移行していた.図1「受診の記録」のなかで記入しにくい項目4.眼手帳は眼科医から患者に渡すほうが望ましいと考えるか(表4)眼手帳は「眼科医が渡すべき」の回答がC2020年はC2015年に比べてC14.3%減り,「内科医から渡してもかまわない」の回答がC12.7%増えていたが,有意差は認めなかった.C5.眼手帳第3版への改訂の患者さんへのわかりやすさ(表5)眼手帳第C3版への改訂にあたり,患者サイドに立った眼手帳を目指してC1頁の「眼科受診のススメ」などの表記を患者にわかりやすい表記に変更したが,その結果患者さんにとってわかりやすくなったとの回答がC54.5%からC64.9%とC10%増えていた.CIII考按1.4ページからの「受診の記録」のなかで記入しにくい項目多摩地域の眼科医における眼手帳第C2版までのアンケート調査では,記入しにくい項目として,「福田分類」のつぎに「糖尿病網膜症の変化」があげられていた9).今回「糖尿病網膜症とその変化」の選択者がC2015年よりC2020年で減り,「糖尿病黄斑症とその変化」の選択者が増えていたことより,網膜症よりも黄斑症とその経時的変化を記載することの負担感が増していると思われる.2.1.受診の記録における「糖尿病黄斑症」の記載の詳細化の是非黄斑症の記載が細かくて大変になったとの回答が増えた背景として,「局所性」と「びまん性」の選択は両者が混在することも多く必ずしも容易ではないことを,第C3版の利用期間が延びるにつれて実感される回答者が増えたことが考えられる.2.2.受診の記録における「糖尿病黄斑症の変化」の記載の是非問1(図1)で「受診の記録」のなかで記入しにくい項目として「糖尿病黄斑症の変化」の回答者がC16.3%からC26.5%まで約C10%増加しているにもかかわらず,問C2-2では「糖尿病黄斑症の変化」の記載は必要との回答が有意差はないものの約C7%増えて,記載しにくくないほうがよいが約C5%減っており,両結果は逆の動きを示した.黄斑症の変化の評価は抗CVEGF療法の浸透とともに臨床上重要となっており,記入しにくくても必要と考える眼科医が増えているためと思われる.「糖尿病黄斑症の変化」における改善・不変・悪化の線引きは容易ではなく,これも記入しにくい背景として考えられる.眼手帳はC2020年のアンケートの回収が終了したC3月に第C4版に改訂されて,黄斑症の記載が中心窩網膜厚(μm)の数値を直接記載するように変更された.これにより第C3版よりも客観的に臨床経過をみることができるようになり,改善・不変・悪化からの選択よりは負担感が減っている可能性もあり,今後第C4版の改訂ポイントに関するアンケートの実施も計画していきたい.2.3.受診の記録における福田分類削除の是非多摩地域の眼科医に対する眼手帳発行C10年目までのアンケート調査では,10年目の回答において,受診の記録のなかで記入しにくい項目として「福田分類」と「変化」が多く選ばれ,とくに福田分類の増加率が高かった9).福田分類は,内科医にとっては網膜症の活動性をある程度知ることのできる分類であるため記入していただきたい項目ではあるが,その厳密な記入のためには蛍光眼底検査が必要となることもあり,眼科医にとっては埋めにくい項目と思われる1).こうした流れもあり,眼手帳の第C3版では受診の記録から福田分類は削除されたが,今回の結果では福田分類の復活希望がC25%有意に増加していた.この背景は不明であるが,内科・眼科連携の観点からも重要なポイントであるので,今後のアンケート調査において,復活希望の回答者にその理由を聞いてみたい.C3.受診の記録への追加希望項目追加希望ありの回答がC10%増え,追加希望項目は内科関連から眼科関連項目に移行していた.内科関連項目はHbA1cが多かったが,HbA1cが併記されれば血糖コントロール状況と網膜症や黄斑症の推移との関連が見やすくなる,眼底検査の間隔が決めやすくなるなどのメリットが考えられ,今後の導入が期待されていたが第C4版で導入された.一方,眼科関連項目は表3下段に示したように多岐にわたるが,このうち治療の項目:抗CVEGF薬注射に関しては第C4版で記載欄が設けられた.C4.眼手帳は眼科医から患者に渡すほうが望ましいと考えるか多摩地域の眼科医に対する眼手帳発行C10年目までのアンケート調査9)では,7年目までは「眼科医が渡すべき」がC40%前後と横ばいで,「内科医でもよい」が減少気味であったが,10年目に前者が著減し後者が有意な増加を示した.眼手帳発行C8年目にあたるC2010年には,内科医側からの情報源である「糖尿病健康手帳」が「糖尿病連携手帳」に変わり,それに伴い眼手帳のサイズも連携手帳に合わせて大判となった.両手帳をつなげるビニールカバーも眼手帳無料配布の協賛企業から提供されており,その結果,内科医が連携手帳発行時に眼手帳も同時に発行する機会が増えた.このような習慣の継続が,眼手帳は内科医から渡してもかまわないとの回答がC12.7%増えた背景の一つと思われる.C5.眼手帳第3版への改訂の患者へのわかりやすさ眼手帳第C3版への改訂では,「眼科受診のススメ」の表記だけでなく,眼手帳後半のお役立ち情報にCOCTや薬物注射を加えるなどの改変を行っている.2015年ではまだ第C2版のままの患者も少なくなかったと思われるが,2020年になれば第C3版に切り替わった患者も増えており,その結果第C3版改訂時の工夫により患者にとって「わかりやすくなった」と実感する回答者がC10%増えたと思われる.謝辞:アンケート調査にご協力頂きました多摩地域の眼科医師の方々に厚く御礼申し上げます.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)大野敦,植木彬夫,馬詰良比古ほか:内科医と眼科医の連携のための糖尿病診療情報提供書の利用状況と改良点.日本糖尿病眼学会誌7:139-143,C20022)大野敦:糖尿病診療情報提供書作成までの経過と利用上の問題点・改善点.眼紀53:12-15,C20023)大野敦:クリニックでできる内科・眼科連携─「日本糖尿病眼学会編:糖尿病眼手帳」を活用しよう.糖尿病診療マスター1:143-149,C20034)善本三和子,加藤聡,松本俊:糖尿病眼手帳についてのアンケート調査.眼紀55:275-280,C20045)糖尿病眼手帳作成小委員会:船津英陽,福田敏雅,宮川高一ほか:糖尿病眼手帳.眼紀56:242-246,C20056)船津英陽:糖尿病眼手帳と眼科内科連携.プラクティスC23:301-305,C20067)船津英陽,堀貞夫,福田敏雅ほか:糖尿病眼手帳のC5年間推移.日眼会誌114:96-104,C20108)大野敦,梶邦成,臼井崇裕ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳に対するアンケート調査結果の推移.あたらしい眼科28:97-102,C20119)大野敦,粟根尚子,梶明乃ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳に対するアンケート調査結果の推移(第C2報).ProgMedC34:1657-1663,C201410)大野敦,粟根尚子,永田卓美ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳の第C3版に関するアンケート調査.あたらしい眼科34:268-273,C2017***

涙道内視鏡検査の検査中操作が与える身体的苦痛の実態 調査

2021年5月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科38(5):595.599,2021c涙道内視鏡検査の検査中操作が与える身体的苦痛の実態調査鎌尾知行*1武田太郎*2三谷亜里沙*1鄭暁東*1白石敦*1*1愛媛大学大学院医学系研究科眼科学講座*2愛媛大学医学部附属病院屈折矯正センター・手術部CMeasurementofPhysicalDistresswithDacryoendoscopyExaminationTomoyukiKamao1),TaroTakeda2),ArisaMitani1),XiaodongZheng1)andAtsushiShiraishi1)1)DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversityGraduateSchoolofMedicine,2)SurgicalOperatingDepartmentandRefractiveSurgeryCenter,EhimeUniversityHospitalC目的:涙道内視鏡検査の各操作が与える身体的苦痛の強度を明らかにすること.対象および方法:対象はC2018年6月.2019年C8月に愛媛大学附属病院で涙管チューブ挿入術を施行した患者のうち,術前に涙道内視鏡検査を行った43例(男性C14例,女性C29例,平均年齢C73.4C±9.5歳)と,術後に検査を行ったC79例(男性C27例,女性C52例,平均年齢C72.3C±9.6歳).点眼麻酔,涙道内麻酔後に蒸留水灌流下涙道内視鏡検査を施行し,麻酔と検査操作の苦痛強度を視覚的アナログスケール(VAS)でアンケート調査した.術前後の各麻酔,検査操作を比較検討した.結果:点眼,涙道内麻酔には有意差がなかったが,涙点拡張が術前C37.3C±29.7,術後C7.4C±16.4,涙道内視鏡操作が術前C43.4C±32.2,術後C19.3C±22.6と術前が術後より有意に高かった.結論:術前の涙道内視鏡検査は,点眼麻酔と涙道内麻酔では不十分な可能性がある.CPurpose:Toinvestigatetheintensityofphysicaldistresscausedbyeachoperationinpatientswithlacrimalductobstructionwhounderwentdacryoendoscopy.PatientsandMethods:Thisstudyinvolved122patientswithlacrimalductobstructionwhounderwentdacryoendoscopyexaminationatEhimeUniversityHospital.Ofthe122patients,C43CwereCexaminedCpreCsurgeryCandC79CwereCexaminedCpostCsurgery.CTheCproceduresCwereCperformedCundertopicalandlocalanesthesiaintothelacrimalductwithoxybuprocainehydrochloride0.4%andlidocaine4%.Dacryoendoscopyexaminationwasperformedwhileinjectingsalinethroughthewaterchannel,andthepaininten-sitywasexaminedviaavisualanaloguescale(VAS)within30-minutespostexamination.TheVASofanesthesiaandCeachCoperationCwereCthenCcompared.CResults:NoCstatisticallyCdi.erenceCinCe.ectivenessCbetweenCtopicalCandClocalanesthesiawasobserved.However,theVASofdilationoflacrimalpunctaanddacryoendoscopyexaminationbeforeCsurgeryCwereCsigni.cantlyChigherCthanCthatCafterCsurgery.CConclusions:OurC.ndingsCsuggestCthatCtopicalCandlocalanesthesiaisinadequateforpreventingpreoperativedacryoendoscopy-relatedphysicaldistress.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(5):595.599,C2021〕Keywords:涙道内視鏡検査,麻酔,視覚的アナログスケール,身体的苦痛,アンケート調査.dacryoendoscopyCexamination,anesthesia,visualanalogscale,physicaldistress,questionnaire.Cはじめに涙道診療における検査は,細隙灯顕微鏡検査や涙管通水検査,CT,MRI,涙道造影検査などさまざまあるが,以前は術前に涙道内を直接観察することが不可能で,涙道内を観察できるのは涙.鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)などの観血的手術時のみであった.わが国ではC2000年前後に涙道内視鏡が開発され,低侵襲で涙道内の観察が可能となった1,2).そのため,涙道閉塞の部位や閉塞状態,涙道内の炎症の程度,涙道内の結石や異物,肉芽の有無など,今まで観察できなかった涙道内所見を,涙道内視鏡検査で術前に容易に観察することが可能となった.わが国では涙道内視鏡を用いた涙管チューブ挿入術の開発〔別刷請求先〕鎌尾知行:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院医学系研究科眼科学講座Reprintrequests:TomoyukiKamao,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversityGraduateSchoolofMedicine,Shitsukawa,Toon-city,Ehime791-0295,JAPANCにより,涙道閉塞に対する涙管チューブ挿入術の治療成績が向上し3.5),DCRに並ぶ治療法としての地位を確立し,それに伴い徐々に涙道内視鏡が普及している.さらにC2018年度の診療報酬改定において涙道内視鏡検査が保険収載され,涙道内視鏡検査は涙道診療に必須の検査となりつつある.この検査は,現在のところ低侵襲で涙道内を観察できる唯一の方法であるが,決して非侵襲ではない.しかし,涙道内視鏡検査の各操作の身体的苦痛強度について調査した報告は筆者らが知る限りない.そこで本研究では,術前後の涙道内視鏡検査時の各操作における苦痛強度を調査した.CI対象および方法対象はC2018年C6月.2019年C8月に愛媛大学附属病院眼科にて術前もしくは術後に同一検者が涙道内視鏡検査を行った患者のうち,本研究に同意が得られた満C20歳以上の男女で,片側もしくは両側に涙道閉塞を認める患者C122例(男性41例,女性C81例,平均年齢C72.7C±9.5歳)である.なお,アンケートの回答に協力が得られないものは除外した.麻酔は,オキシブプロカイン塩酸塩C0.4%をC2回,リドカイン塩酸塩(リドカイン)4%をC1回C2分ごとに点眼して点眼麻酔を行ったのち,リドカインC4%を上涙点から涙道内に注入して涙道内表面麻酔を行い,5分以内に涙道内視鏡検査を開始した.涙道内視鏡検査は,涙点拡張針(イナミ)を用いて上下涙点を拡張後,プローブ径C0.9Cmmの弯曲タイプの硬性涙道内視鏡(LAC-06FY-H,町田製作所)を用いて,蒸留水灌流下,涙道内視鏡検査を施行した.術前の涙道内視鏡検査は全例で両側に施行した.一方,術後の涙道内視鏡検査は治療側のみ施行した.また,術後の涙道内視鏡検査の施行時期は涙管チューブ抜去時または,涙管チューブ抜去半年後に施行した.涙道内視鏡検査のアンケート調査方法は,検査内容とアンケート調査内容を涙道内視鏡検査施行前に十分に説明し,検査中,操作内容を患者に声掛けを行ってから各操作を行った.検査終了後C30分以内に点眼麻酔,涙道内麻酔,涙点拡張,涙道内視鏡操作,灌流液流入,検査前の緊張の程度のC6項目の苦痛強度を,視覚的アナログスケール(VisualCAna-logScale:VAS)を用いてC100Cmmの線上に印をつけさせた.0は苦痛または緊張なし,100は我慢できない苦痛または緊張とした.男女比,年齢および,麻酔,検査操作,緊張の程度のVASについて,術前群と術後群,片側群と両側群,涙管チューブ抜去時と抜去半年群で比較検討した.また,麻酔,検査操作,緊張の程度それぞれの相関関係を検討した.男女比の比較についてはCc2検定を,年齢やCVASの比較についてはCStudent’st-testを用い,相関関係についてはCPearsonの積率相関係数を計算し,いずれも有意水準はC5%とした.統計解析にはCJMP11.2(SASinstitute)を使用した.本研究は,愛媛大学医学部附属病院臨床研究審査委員会(1601003)の承認のもと行った.CII結果表1に患者背景を示した.対象として選択されたのは,術前に涙道内視鏡検査を行ったC43例(男性C14例,女性C29例,平均年齢C73.4C±9.5歳)と,涙管チューブ挿入術治療後に涙道内視鏡検査を行ったC79例(男性C27例,女性C52例,平均年齢C72.3C±9.6歳)である.術前群は全例両側涙道内視鏡検査を施行したが,術後群の涙道内視鏡検査は治療側のみで,40例が片側に,39例が両側に行った.また,術後群の涙道内視鏡検査の施行時期は涙管チューブ抜去時または涙管チューブ抜去半年後に行ったが,35例が涙管チューブ抜去時,44例が涙管チューブ抜去半年後に行った.術前群と術後群,片側群と両側群,涙管チューブ抜去時群と涙管チューブ抜去半年後群の各C2群で男女比,年齢に有意差はなかった.術前群と術後群の各麻酔,検査操作の苦痛強度,緊張の程度のCVASを比較検討した(表2).涙点拡張は,術前群には全例必要であったが,術後群はC39例が必要で,40例は不要であったため,必要であったC39例のCVASの平均を示している.麻酔については,点眼麻酔,涙道内麻酔とも術前群と術後群で有意差を認めなかった.一方,検査操作については,涙点拡張が術前群C37.3C±29.7,術後群C15.0C±20.9,涙道内視鏡操作が術前群C43.4C±32.2,術後群C19.3C±22.6と術前群が術後群と比較してスコアが有意に高かった(p=0.0002,<0.0001).灌流液流入はC2群間で有意差を認めなかった.緊張の程度については,術前群C43.1C±7.5,術後群C20.0C±20.8と術前群が術後群と比較してスコアが有意に高かった(p<0.0001)(表2).術後群の涙道内視鏡検査は治療側のみで,検査の片側例と両側例で各麻酔,検査操作の苦痛強度,緊張の程度に差があるか比較検討した.その結果,6項目のCVASに有意差を認めなかった(表3).また,術後群の涙道内視鏡検査は涙管チューブ抜去時または,涙管チューブ抜去半年後に行ったため,検査の施行時期でC6項目のCVASに差があるか比較検討したが(表4),いずれも有意差を認めなかった.つぎに術前群の涙道内視鏡検査において,各麻酔,検査操作の苦痛強度,緊張の程度のCVASの相関関係を検討した.VASの高かった涙道内麻酔,涙点拡張,涙道内視鏡操作,灌流液流入のC4項目については,それぞれ有意な正の相関を認めた(表5).一方,点眼麻酔と緊張の程度のCVASについてはいずれの項目とも有意な相関を認めなかった.CIII考按本研究では,術前後の涙道内視鏡検査時の各操作における表1患者背景症例数男性女性年齢術前群43例14例29例C73.4±9.5歳術後群79例27例52例C72.3±9.6歳片側40例15例25例C71.2±10.6歳両側39例12例27例C73.4±8.4歳涙管チューブ抜去時35例14例21例C70.5±10.8歳涙管チューブ抜去半年後44例13例31例C73.8±8.4歳年齢:平均値±標準偏差.表3片側群と両側群の麻酔,検査操作,緊張のVAS片側群両側群Cn=40Cn=39p値点眼麻酔C9.9±12.6C5.3±11.8C0.1029涙道内麻酔C24.1±25.0C20.9±18.1C0.5107涙点拡張C16.7±24.1C13.6±18.1C0.6444涙道内視鏡操作C21.8±24.8C16.9±20.0C0.3397灌流液流入C18.6±24.2C16.3±17.9C0.6304検査前の緊張C19.4±22.3C20.5±19.4C0.8138C平均値±標準偏差.涙点拡張を行った片側C40例,両C39例のVASの平均を示している.表5術前群の涙道内視鏡検査における涙道内麻酔,涙点拡張,涙道内視鏡操作,灌流液流入の苦痛強度のVASの相関涙点拡張涙道内視鏡操作灌流液流入涙道内麻酔C涙点拡張C涙道内視鏡操作CrCprCprCpC0.7278C<C0.0001C0.4107C0.0062C0.7061C<C0.00010.5305C0.00030.6225C<C0.00010.5365C0.0002Cr=相関係数.身体的苦痛の強度をCVASを用いて検討した.その結果,術前の涙道内視鏡検査において涙点拡張と涙道内視鏡操作のVASが術後より有意に高いことが明らかとなった.涙道内視鏡はC1979年にCCohenらの発表した硬性光学視管(dacryoscopy)が始まりとされている6).この内視鏡は先端に観察レンズ,硬性管の中に中継レンズがあり,手元に映る像を直接覗き込む方式であった.上涙点から硬性光学視管の先端を,下涙点から光源を挿入して涙道内を観察していたが,内視鏡のサイズが非常に大きく侵襲性の高い検査装置であった.その後さまざまな涙道内視鏡が開発され,2002年にはわが国で現在一般的に使用されている硬性涙道内視鏡が登場した2).わが国の涙道内視鏡の特徴はハンドピース先端(117)表2術前群と術後群の麻酔,検査操作,緊張のVAS術前群Cn=43術後群Cn=79p値点眼麻酔C9.4±15.9C7.6±12.4C0.5044涙道内麻酔C23.0±25.6C22.5±21.8C0.9088涙点拡張C37.3±29.7C15.0±20.9C0.0002涙道内視鏡操作C43.4±32.2C19.3±22.6<C0.0001灌流液流入C19.5±21.6C17.5±21.2C0.6204検査前の緊張C43.1±7.5C20.0±20.8<C0.0001平均値±標準偏差.涙点拡張のCVASの値は,涙点拡張を行った症例(術前群は全例,術後群はC39例)の平均を示している.他項目は,術前術後とも全例の平均を示している.表4涙管チューブ抜去時群と涙管チューブ抜去半年後群の麻酔,検査操作,緊張のVAS涙管チューブ涙管チューブ抜去時群C抜去半年後群Cp値n=35n=44点眼麻酔C6.3±11.9C8.7±12.8C0.4116涙道内麻酔C24.1±23.6C21.3±20.5C0.5721涙点拡張C10.5±18.0C16.8±21.9C0.3983涙道内視鏡操作C18.8±18.1C19.8±25.8C0.3397灌流液流入C18.8±21.8C16.4±20.9C0.6251検査前の緊張C18.5±18.7C21.1±22.5C0.5813平均値±標準偏差.涙点拡張を行った涙管チューブ抜去時C35例,涙管チューブ抜去半年後C44例のCVASの平均を示している.のプローブが無理なく涙道内に挿入できるように細く(0.7.0.9Cmm径)設計されていることである.その中に観察用レンズと灌流口,照明を装備しており,涙道内を灌流液で拡張し,照明光で涙道内を照らしながら観察することが可能である.プローブはストレートタイプと弯曲タイプのC2種類があるが,硬性内視鏡であるためストレートタイプでは涙道内に存在する生理的屈曲部位を超えるのにプローブに無理が生じたり,涙道に医原性裂孔を形成するリスクが高くなる.一方,弯曲タイプはプローブ先端からC10Cmmの位置で約C27°弯曲しているが,これは日本人の涙道の走行に対応した形状となっており7),その弯曲を利用すれば涙道内を損傷することなく涙道内全体の観察が可能となった.これらの涙道内視鏡プローブの形状の工夫によって,涙道内視鏡検査の低侵襲化に成功した.涙道内視鏡検査は大きく麻酔と検査手技操作のC2種類に分類される.麻酔については標準的な方法が確立されておらず,各施設でさまざまな方法で行われているが,当院では点眼麻酔と涙道内表面麻酔のみで涙道内視鏡検査を行っている.一方,検査手技操作における患者に対する侵襲は涙点拡張と涙道内視鏡操作,灌流液の流入の三つに分けられる.そのため点眼麻酔,涙道内表面麻酔,涙点拡張,涙道内視鏡操あたらしい眼科Vol.38,No.5,2021C597作,灌流液流入に加え,検査前の緊張の程度のC6項目の苦痛強度をCVASを用いて評価した.術前群と術後群でC6項目について比較検討すると,点眼麻酔と涙道内麻酔,灌流液流入についてはC2群間で有意差を認めなかったが,涙点拡張と涙道内視鏡操作,検査前の緊張のC3項目で術前群が術後群より有意にCVASが高かった.涙点拡張において,術前群が術後群より有意にCVASが高かった.涙点は硬い線維組織からなる盛り上がった構造で,開口部の内径はC0.2.0.3Cmmと報告されている8).現在の涙道内視鏡の先端プローブがC0.7.0.9Cmm径であるため,挿入に際しては涙点拡張が必要となる.涙点拡張に際しては涙点の硬い線維組織が伸展され,一部で断裂する.この侵害刺激が加わると,涙点近傍の皮下組織に存在する侵害受容器の末梢側終末に備わる受容体が活性化され,三叉神経に含まれる侵害受容性ニューロンを介して中枢へとシグナルが伝達され疼痛を感知する(侵害受容性疼痛).点眼麻酔や涙道内表面麻酔では,涙点涙小管の表層には麻酔が作用すると考えられるが,重層扁平上皮下には麻酔作用が及びにくいと考えられる.そのため術前の涙点拡張でCVASが高値を示したと考えられる.一方,術後の涙点拡張のCVASは低値であった.涙道内視鏡手術に際しては,涙道内視鏡に外径C1.1.1.3Cmmの外套を装着して手術を行うため,それ以上に涙点を拡張する必要がある.そのため,術中に十分な涙点拡張操作が加えられている.術後涙点径はやや狭小化するものの,元の状態に戻ることはなく,術前より拡張した状態が維持される.実際,79例中C40例(50.6%)は術後の涙道内視鏡検査において涙点拡張が不要であった.残りのC39例についても少しの涙点拡張操作で十分涙道内視鏡を挿入可能であったため,侵害刺激も軽度となり,術後の涙点拡張のCVASは術前より有意に低くなったと考えられる.涙道内視鏡操作においても術前群が術後群より有意にVASが高かった.涙道内視鏡検査においては灌流液で涙道内を拡張しながら涙道内視鏡を操作する.涙道閉塞が存在する術前では,灌流液による涙道内圧上昇が惹起されやすく,涙道壁の伸展による侵害刺激も大きくなり,VASが高くなったと考えられる.一方,涙道閉塞が解除された術後であれば,灌流液による涙道内圧上昇は軽度であり,術後の涙道内視鏡操作のCVASは術後より有意に低くなったと考えられる.当院では涙道内視鏡の破損リスクを軽減する目的で蒸留水で灌流しているが,蒸留水は低浸透圧なので灌流中に疼痛を惹起するリスクがあり,生理食塩水を選択すると術前後の涙道内視鏡操作のCVASをさらに低減できた可能性がある.検査前の緊張の程度においても術前群が術後群より有意にVASが高かった.経験のない検査や治療を受ける場合,不安を感じ緊張のCVASが高値となる.本研究を行うにあたり,検査内容を涙道内視鏡検査施行前に十分に説明したが,術前の不安や緊張を取り除くことは困難であった.一方,術後の涙道内視鏡検査施行前の緊張のCVASは低値であった.患者は疼痛を経験すると,疼痛への恐怖から同様の体験をする場合に不安が強くなる9).今回,涙道内視鏡検査や手術を経験したものでは緊張の程度のCVASが低値であったことは,涙道内視鏡検査や手術中に強い疼痛を経験しておらず,不安や恐怖がない状態で術後の涙道内視鏡検査を受けていると考えられ,涙道内視鏡検査や手術が低侵襲に行われていることを示している.ただしCVASスコアがC30以上である場合,「中等度の疼痛がある」と評価されるため10),術後群の涙道内視鏡検査の麻酔C2項目と手術操作C3項目や,術前群の点眼麻酔,涙道内麻酔,灌流液流入についてはCVASがC30未満であり,患者への侵襲は抑えられていると考えられる.しかし,術前群のCVASが有意に高かった涙点拡張と涙道内視鏡操作についてはCVASがC30以上であり,中等度の疼痛を自覚していると考えられる.つまり,術後群の涙道内視鏡検査については十分な麻酔効果を得られていたが,術前の涙道内視鏡検査については不十分であり,疼痛を低減する麻酔方法の検討が望ましい.前述したように,涙道内視鏡検査の麻酔については標準的な方法が確立されておらず,各施設でさまざまな方法で行われている.当院では点眼麻酔と涙道内表面麻酔のみで涙道内視鏡検査を行っている.術前検査時の疼痛を緩和する方法の一つとして滑車下神経麻酔があげられるが,一過性散瞳,視力低下,眼球運動障害,球後出血などの合併症がある.当院では術前に行う初回涙道内視鏡検査においては,片側の涙道疾患であっても必ず両側検査を行っている.そのため,両側に滑車下神経麻酔を行うと,帰宅が困難となる場合が多くなり,滑車下神経麻酔の施行は容易ではない.術前の涙道内視鏡検査においては合併症の少ない麻酔方法について検討の余地がある.涙道内視鏡検査について検査側や検査時期によりCVASが変化するか検討した.その結果,術後涙道内視鏡検査の片側検査群と両側検査群で差は認めなかった.また,涙管チューブ抜去時群と涙管チューブ抜去半年後群でも差は認めなかった.つまり,術後の涙道内視鏡検査については,検査側や検査時期によってCVASが変化しないため,検査側や検査時期によって麻酔方法を検討する必要はなく,点眼麻酔と涙道内表面麻酔で低侵襲に検査可能である.術前の涙道内視鏡検査において,各麻酔,検査操作の苦痛強度,緊張の程度のCVASの相関関係を検討した結果,点眼麻酔を除いた涙道内麻酔,涙点拡張,涙道内視鏡操作,灌流液流入のC4項目について,それぞれ有意な正の相関を認めた.VASは疼痛の強度という単一次元において感度が高く,再現性があり,同一被験者内で信頼性と妥当性が高いとされる11).しかし,疼痛は主観的な知覚であり,疼痛に対する耐性や経験,性格などが影響し,疼痛刺激に対する認識の個人差を生み出している.そのため疼痛の閾値の低い患者は麻酔,検査操作による侵襲でCVASが高くなる傾向にあり,閾値の高い患者ではCVASが低くなる傾向にある.そのため涙道内麻酔,涙点拡張,涙道内視鏡操作,灌流液流入のC4項目で有意な正の相関がみられたと考えられる.点眼麻酔についてはCVASのスコアが低いこと,点眼麻酔の経験にばらつきが大きいことが影響して相関がなかったと考えられる.疼痛の知覚には感覚的側面と情動的側面がある12).そのため不安や恐怖,うつ状態など精神状態が疼痛の閾値に影響すると考えられている.しかし,緊張の程度のCVASは涙道内麻酔,涙点拡張,涙道内視鏡操作,灌流液流入のC4項目と有意な相関を認めなかった.つまり緊張の程度によって患者の知覚する疼痛の程度を予想することは困難であり,患者の緊張状態により麻酔方法を変更するといった対策を取ることはむずかしいと考えられる.本研究の限界としては,単施設で行われた結果であることがあげられる.検査の身体的苦痛強度をCVASを用いて評価するにあたり,結果が正確になるようにアンケートに回答困難な高齢者を除外し,検査前と検査中に各操作を十分に説明して行った.そして終了後速やかにアンケートの回答を得た.ただし,疼痛には個体差や精神状態などさまざまな要因が影響するため,今後多施設多数例で検討したい.今回,筆者らは術前後の涙道内視鏡検査時の各操作における身体的苦痛の強度をCVASにより初めて明らかにした.術後の涙道内視鏡検査については点眼麻酔と涙道内表面麻酔で低侵襲に行えることが明らかとなった.一方,術前の涙道内視鏡検査については涙点拡張と涙道内操作のCVASが高く,今回の麻酔では十分な麻酔効果が得られていないことが示唆された.術前検査における麻酔方法についてはさらなる検討が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)佐々木次壽:涙道内視鏡所見による涙道形態の観察と涙道内視鏡併用シリコーンチューブ挿入術.眼科C41:1587-1591,C19992)鈴木亨:涙道ファイバースコピーの実際.眼科C45:2015-2023,C20033)井上康:涙道から見た流涙症─確実な涙管チューブ挿入術.眼科手術22:161-166,C20094)MimuraM,UekiM,OkuHetal:Indicationsforande.ectsofCNunchaku-styleCsiliconeCtubeCintubationCforCprimaryCacquiredClacrimalCdrainageCobstruction.CJpnCJCOphthalmolC59:266-272,C20155)鈴木亨:鼻涙管閉塞症のシリコーンチューブ留置術の手術時期.眼科手術20:305-309,C20076)CohenCSW,CPrescottCR,CShermanCMCetal:Dacryoscopy.COphthalmicSurgC10:57-63,C19797)NariokaCJ,CMatsudaCS,COhashiY:CorrelationCbetweenCanthropometricfacialfeaturesandcharacteristicsofnaso-lacrimalCdrainageCsystemCinCconnectionCtoCfalseCpassage.CClinExpOphthalmolC35:651-656,C20078)BurkatCCN,CLucarelliMJ:AnatomyCofCtheClacrimalCsys-tem.In:TheCLacrimalsystem:diagnosis,Cmanagement,Candsurgery(Cohen,CAJCetCaleds)C,CSpringer,CNewCYork,Cp3-19,C20069)VlaeyenJW,LintonSJ:Fear-avoidancemodelofchronicmusculoskeletalpain:ACstateCofCtheCart.CPainC85:317-332,C200010)DownieWW,LeathamPA,RhindVMetal:Studieswithpainratingscales.AnnRheumDisC37:378-381,C197811)BerckerCM,CHughesB:UsingCaCtoolCforCpainCassessment.CNursTimesC86:50-52,C199012)NakaeCA,CMashimoT:PainCandCemotion.CPAINCRESEARCHC25:199-209,C2010***

薬局における点眼指導実態アンケート調査報告

2021年2月28日 日曜日

《原著》あたらしい眼科38(2):225.231,2021c薬局における点眼指導実態アンケート調査報告西原克弥山東一孔堀清貴参天製薬(株)日本メディカルアフェアーズグループCSurveyReportontheConditionsofEyeDropGuidanceinPharmaciesKatsuyaNishihara,KazunoriSantoandKiyotakaHoriCSantenPharmaceuticalCo.,LtdJapanMedicalA.airsGroupC目的:薬局の点眼指導の実態を把握すること.対象および方法:本調査の趣旨に同意した調剤薬局企業(15社)傘下のC1,462店舗で実施した.実態調査は,点眼指導の有無,時間,手段,指導内容と頻度,小児・高齢者の指導の有無と指導内容,洗眼指導の有無などについて,アンケート形式で行った.結果:点眼指導の実施率はC96.1%であった.点眼指導にかける時間はC5分未満がもっとも多く,点眼指導の手段は,ほぼ全店舗で「口頭による説明」が施行されていた.点眼指導内容は「点眼:眼瞼を下にひく・容器の先が目に触れないよう点眼する」「あふれた液のふき取り」「点眼後の閉瞼」を“いつも指導する”は,「点眼前の手洗い」「点眼後の閉瞼」を“いつも指導する”に比べ高い頻度であった.小児または高齢者への指導経験の有無は,「ある」がC4割強,「ない」がC5割強を占めた.クラスター分析を行った結果,点眼指導は四つのクラスターに分類することができた.結論:個々の患者に対応するため,点眼指導にはいくつかのバリエーションが存在するが,点眼薬の処方機会の多さと時間的な制約,点眼指導に対する意識の差といった要素により,店舗間で指導内容の相違がみられた.今後,この点を是正していくことが点眼治療の質の向上につながると考えられた.CObjective:Toinvestigatetheactualguidanceprovidedinretailpharmaciesforophthalmic-solutioneye-dropinstillation.Subjectsandmethods:Asurveywasconductedat1462pharmaciesunderthecontrolof15pharma-ceuticalcompaniesthatagreedtothepurposeofthesurvey.Thecontentofthequestionnaireincludedthefollow-ing:presenceorabsenceofeyedrops,time,means,content,andfrequencyofeyedrops,presenceorabsenceofguidanceCforCchildrenCandCtheCelderly,CandCpresenceCorCabsenceCofCeyeCwashingCguidance.CResults:OphthalmicCguidancewasdeliveredto96.1%ofthepatients.Theaveragetimespentforophthalmicguidancewaslessthan5minutes,andthemethodofinstructionwas“verbal”innearlyallpharmacies.Regardingthecontentofophthalmicguidance,CtheCfrequencyCof“alwaysCinstructing”wasChigherCthanCthatCof“washingChandsCbeforeCinstillation”andC“closingeyelidsafterinstillation”for“instillation:pullingtheeyelidsdownanddroppingtheeyesothatthetipsofthecontainersdonottouchtheeyes,”“wipingo.theover.owsolution,”and“closingtheeyelidsafterinstilla-tion.”Approximatelyhalfoftherespondentswere“yes”or“no”withregardtotheexperienceofprovidingguid-ancetochildrenortheelderly.Clusteranalysisshowedthattheclusterscouldbeclassi.edintofourclusters.Con-clusions:ItCwasCspeculatedCthatCsomeCpharmaciesCwereCnotCadequatelyCpreparedCforCtheCocularCguidanceCofCindividualpatients.Fromtheclusteranalysis,itwasthoughtthatfactorssuchasthenumberofeye-dropprescrip-tions,CtimeCconstraints,CandCdi.erencesCinCawarenessCofCophthalmicCguidanceChadCanCin.uenceConCnotCbeingCade-quatelyprepared.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(2):225.231,C2021〕Keywords:点眼指導,点眼手技,アンケート調査,薬局.guidanceoninstillation,ocularinstilltionprocedure,questionnairesurvey,pharmacy.C〔別刷請求先〕西原克弥:〒533-8651大阪市東淀川区下新庄C3-9-31参天製薬(株)サイエンスインフォメーションチームReprintrequests:KatsuyaNishihara,ScienceInformationTeam,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,3-9-31,Shimo-Shinjo,Higashiyodogawa-ku,Osaka533-8651,JAPANCはじめに眼科疾患に対する治療は,点眼薬を主要薬剤とする治療(点眼治療)が基本であり,点眼アドヒアランスだけでなく,点眼手技を含めた点眼薬の取り扱いも治療効果に影響を与えると考えられている.すなわち,点眼薬がもつ有効性と安全性を確保するためには,用法用量を遵守し,正しい点眼方法で確実に薬液を眼に点眼することが求められる.それゆえ,点眼薬処方時の正しい点眼方法の指導(点眼指導)は不可欠である.その一方で,高齢者や緑内障患者1),白内障術後の点眼指導上の課題2)が報告されており,医師,薬剤師,看護師など点眼治療にかかわる医療従事者が共通認識をもち,点眼薬の服薬指導に携わることが重要である..今回,筆者らは,点眼指導の実態を把握することを目的に薬局店舗を対象とした点眼指導実態アンケート調査を実施したので報告する.CI対象および方法1.アンケートの対象と調査方法対象は,本調査の趣旨に同意した調剤薬局企業(15社)傘下のC1,462店舗である.調査期間はC2019年C6月のC1カ月間である.実態調査は,点眼指導の有無,時間,手段,指導内容と頻度,小児・高齢者の指導の有無と指導内容,洗眼指導の有無などについてアンケート形式の調査を行った.調査内容の詳細は表1に示した.調査手法は,Googleフォームまたは調査用紙を利用し,各店舗につきC1件の回答を回収し集計した.C2.統計学的検討実態調査の結果は,単純集計して点眼指導の実態を検討した.また,点眼指導の内容に関する詳細な傾向を明らかにするため,潜在クラス分析(クラスター分析)を行った.クラスター分析では,全店舗をC4クラスターに分類した後,各クラスターにおける点眼指導内容の特徴について検討した.クラスター分類に用いた分析変数の各クラスター間での相違は,分散分析を用いて検討した.判定は,p<0.05を有意差ありと判定した.統計学的解析にはCJMP(Ver.14,CSASInstituteInc.)を用いた.CII結果1.調査店舗の背景都道府県別の調査店舗数を表2に示す.Q1の回答から,月平均の点眼薬処方箋枚数は,点眼薬処方箋がC100枚未満の店舗の割合がC75.0%であったのに対し,100枚以上C500枚未満の割合がC17.0%,500枚以上の割合がC7.7%で,点眼薬処方箋がC100枚以上の店舗の割合はC24.7%であった(表3).C2.点眼指導の実態Q2において点眼指導を「新規に点眼薬を処方する患者さんすべてに実施している」または「点眼指導が必要と思われる患者さんに実施している」とした店舗はC1,462店舗中1,405店舗で,実施率はC96.1%であった.その内訳を表4に示す.「Q3:点眼指導が必要と思われる患者さん」の質問に対する回答は,「高齢者」がもっとも多く,「保護者」「小児」「障害者」の順であった(表5).点眼指導にかける時間は,5分未満がもっとも多く(図1),Q4:点眼指導の手段は,ほぼ全店舗で「口頭による説明」が施行されており,紙媒体のチラシや指導箋を利用している割合はC42.3%,点眼手技動画の利用割合はC0.3%であった(表6).なお口頭と紙媒体を併用する店舗はC41.1%であった.表1アンケート調査内容店舗の所在地(都道府県)Q1)月平均,点眼薬の処方箋をどのくらい受けていますか?Q2)点眼指導を実施されていますか?Q3)Q2)で「点眼指導が必要と思われる患者さんに実施している」と答えた方にお聞きします.必要と思われる患者さんをすべて教えてください.Q4)点眼方法に係る指導の手段を教えてください(複数回答可)Q5)基本の点眼方法に係る指導の内容とその頻度を教えてください.-①点眼前の手洗い-②点眼:眼瞼を下にひく・容器の先が目に触れないよう点眼する-③あふれた液のふき取り-④点眼後の閉瞼-⑤点眼後の涙.部圧迫Q6)小児の点眼で指導されたことがある点眼手技はありますか?Q7)Q6)で「ある」と答えた方にお聞きします.どのような手技ですか(自由記載)Q8)高齢者の点眼で指導されたことがある点眼手技はありますか?Q9)Q8)で「ある」と答えた方にお聞きします.どのような手技ですか?(自由記載)Q10)洗眼方法について洗眼指導されたことはありますか?Q11)Q10)で「ある」と答えた方にお聞きします.どのような指導内容ですか?(自由記載)表2都道府県別の調査店舗数表3点眼薬処方箋枚数(月平均)回答数割合(%)5枚未満C207C14.25.C20枚未満C377C25.820.C100枚未満C513C35.1100.C500枚未満C248C17.0500枚以上C112C7.7未記入C5C0.3合計C1,462表5点眼指導が必要と思われる患者回答数割合(%)高齢者C644C91.9小児C436C62.2保護者C480C68.5障害者C294C41.9新規,あるいは初めてC33C4.7慣れていない,不安そうな患者C24C3.4未記入C4C0.6Q5では,点眼指導内容として「点眼前の手洗い」,「点眼:眼瞼を下にひく・容器の先が目に触れないよう点眼する」,「あふれた液のふき取り」「点眼後の閉瞼」「点眼後の涙.部圧迫」のC5項目の基本的な点眼指導頻度を調査し,その表4点眼指導の実施状況回答数割合(%)新規に点眼薬を処方する患者さんすべてに実施しているC704C48.2点眼指導が必要と思われる患者さんに実施しているC701C47.9実施していないC54C3.7未記入C3C0.2合計C1,4620.40.0■:5分未満:5分以上10分未満:10分以上:その他図1点眼指導にかける時間の割合(%)点眼指導にかける時間は,5分未満がもっとも多い.結果を図2に示した.「点眼:眼瞼を下にひく・容器の先が目に触れないよう点眼する」「あふれた液のふき取り」「点眼後の閉瞼」を“いつも指導する”は,「点眼前の手洗い」「点眼後の閉瞼」を“いつも指導する”に比べ高い頻度であっ表6点眼指導の手段回答数割合(%)口頭C1,385C98.6紙の資料C595C42.3動画C4C0.3実地してもらい,悪いところを指導C23C1.6薬剤師が手本C21C1.5未記入C1C0.1C点眼:眼瞼を下にひく・容器の先が目に触れないよう点点眼前の手洗い眼するあふれた液のふき取り点眼後の閉瞼点眼後の涙.部圧迫2.42.02.53.5■C:ほとんど指導しない■B:ときどき指導する■A:いつも指導するD:指導しない:未記入図2点眼指導内容の実施割合(%)「点眼:眼瞼を下にひく・容器の先が目に触れないよう点眼する」「あふれた液のふき取り」「点眼後の閉瞼」を“いつも指導する”は,「点眼前の手洗い」「点眼後の閉瞼」に比べ高い頻度であった.小児の点眼指導の有無高齢者の点眼指導の有無0.10.4■:ある:ない:未記入図3小児と高齢者への点眼指導の有無の割合(%)「ある」および「ない」は,「ない」が多かった.た.Q6.9で小児および高齢者に対する点眼指導の実態を調査した.小児または高齢者への指導経験の有無は,「ある」がC4割強,「ない」がC5割強を占めた(図3).指導した手技(回答は自由記載)については,アフターコーディングの結果,小児では「寝ているときに点眼」「プロレス法」,高齢者では「げんこつ法」「点眼補助具」の回答割合が高かった(図4).洗眼方法の指導経験(Q10)は,「ある」がC11.2%であった.C3.クラスター分析アンケート結果から,互いに似た性質をもつ薬局店舗をグルーピングし,そこから得られる課題を抽出するためクラスター分析を行った.分析変数を「点眼指導の手段」「基本的なC5項目の点眼指導内容」「小児と高齢者への指導経験」の調査結果としたところ,四つのクラスターに分類することができた.クラスター解析に用いた分析変数は分散分析の結果,クラスター間で有意に差がある変数であった(図5).四つのクラスターの定義づけを「点眼薬処方箋枚数」の結果と掛け合わせた結果を表7に示した.泣いているときは寝て点眼点眼しない目尻,横から入れる容器を持つ手を固定目を閉じて点眼点眼補助具30.7%33.0%プロレス法(子供を固定)げんこつ法寝ているときに点眼0.0%5.0%10.0%15.0%20.0%25.0%30.0%35.0%0.0%5.0%10.0%15.0%20.0%25.0%30.0%35.0%図4小児と高齢者の点眼手技小児,高齢者に点眼指導を実施している店舗におけるその手技方法の割合(アフターコーディング)処方箋枚数指導手段小児指導の有無高齢者指導の有無クラスター1クラスター2クラスター3クラスター40%20%40%60%80%100%*p<0.0001*p<0.0001*p<0.00010%40%80%0%40%80%0%40%80%■20枚以上100枚未満■口頭+紙資料■口頭のみ■ある■ない■ある■ない■100枚以上紙資料のみ■他の説明■20枚未満20%60%100%20%60%100%20%60%100%①②③④⑤クラスター1クラスター2クラスター3クラスター4#p<0.0001#p<0.0001#p<0.0001#p<0.0001#p<0.00010%40%80%0%40%80%0%40%80%0%40%80%0%40%80%20%60%100%20%60%100%20%60%100%20%60%100%20%60%100%■A:いつも指導する■B:ときどき指導する■C:ほとんど指導しないD:指導しない①点眼前の手洗い②点眼:眼瞼を下にひく・容器の先が目に触れないよう点眼する③あふれた液のふき取り④点眼後の閉瞼⑤点眼後の涙.部圧迫図5クラスター分析分析変数を「点眼指導の手段」「基本的なC5つの点眼指導内容」「小児と高齢者への指導経験」の調査結果としたところ,四つのクラスターに分類することができた.表7クラスターの定義づけクラスター分類定義クラスターC1点眼薬の処方箋枚数が少ない薬局で,点眼指導はときどき実施する薬局クラスターC2点眼薬の処方箋枚数が比較的多い薬局で,紙(チラシ)資材も併用しながらC5項目の点眼指導を積極的に実施している.ただし,小児・高齢者への点眼手技指導は,高齢者・小児の接触機会が少ないことからクラスターC3より実施頻度は低いクラスターC3点眼薬の処方箋枚数が多い薬局で,小児・高齢者への点眼手技指導については指導する機会の多さから実施頻度は高いが,5項目の点眼指導は紙(チラシ)に頼る傾向があるクラスターC4点眼薬の処方箋枚数が少ない薬局で,点眼指導はクラスターC1より消極的クラスターAS1S2S3S4S5B13322223221111123112222143444443処方箋数3213数字は変数内の順位図6各変数のクラスター順位A:紙資材の利用頻度,B:小児・高齢者の点眼指導の実施頻度.S1:点眼指導内容「点眼前の手洗い」の実施頻度,S2:点眼指導内容「点眼前の手洗い点眼:眼瞼を下にひく・容器の先が目に触れないよう点眼する」の実施頻度,S3:点眼指導内容「あふれた液のふき取り」の実施頻度,S4:点眼指導内容「点眼後の閉瞼」の実施頻度,S5:点眼指導内容「点眼後の涙.部圧迫」の実施頻度.CIII考察今回のアンケート調査に参加した調査店舗の背景は,都道府県別の分布をみると,おおむね人口比率と似た傾向を示したが,中国地方と九州地方の調査店舗数が少なかった(佐賀県は調査店舗が0).また,点眼薬処方箋枚数では,月平均がC500枚以上の店舗割合がC7.7%であったことから,本調査ではごく標準的な院外薬局が抽出されていると考えられ,眼科関連の処方箋をおもに扱う薬局によるバイアスは考慮しなくてよいと考えられた.今回の対象店舗における点眼指導の実施率はC96.1%とほぼすべての薬局で実施されており,実施方法としては口頭による説明がC98.6%とほとんどを占め,紙資材を併用する店舗はC41.1%であった.近年動画による点眼指導が効果的3,4)との報告があるが,本調査結果で動画の利用率はC0.3%であり,紙資材や動画を使用した点眼指導が普及していない実態が浮き彫りになった.また,基本的なC5項目の点眼指導の実施頻度は,点眼時動作の「点眼:眼瞼を下にひく・容器の先が目に触れないよう点眼する」と「点眼直後のふき取り・閉瞼」の指導頻度は比較的高い傾向がみられたが,「点眼前の手洗い」「点眼後の涙.部圧迫」の指導頻度は低い傾向がみられた.すなわち,点眼指導すべきC5項目が一連の点眼手技であることが十分に認識されていないために指導内容の実施頻度にばらつきがみられたものと考えられた.また,涙.部圧迫については,白内障術後などは,感染症のリスクから実施すべきではないとの報告(文献)が実施頻度を低値にしていることに多少影響している可能性が考えられた.五つの指導内容で“いつも実施する”が,一番高くてC34%であったこと,また小児,高齢者への点眼指導がC50%に達していないことは,個々の患者に対応するための点眼指導がまだ十分に準備されていない店舗があることが推察された.クラスター分析では四つのタイプの薬局店舗に分類することができた.クラスターC2とC3はC1とC2より点眼薬の処方箋枚数が多い店舗タイプであるが,この二つの相違点としては,点眼薬処方箋枚数,紙資材の利用頻度,基本的なC5項目の点眼指導頻度,高齢者・小児の点眼手技指導率があげられる.すなわち,クラスターC3は点眼薬処方に慣れている薬局店舗と考えられ,眼科関連の処方箋を多く扱っている店舗であると推察される.さらに,点眼薬の処方機会の多さとそれによる服薬指導にかかる時間的な制約から,基本的なC5項目の点眼指導については,より効率的な紙資材を多用したことが推察された.クラスターC3におけるこれらの背景が,クラスターC2より五つの点眼指導の実施頻度が少なくなった理由であると考えられた.しかしながら眼科に近接した薬局では,アクセスのよさから高齢者や小児の患者の来局機会は多くなると推測できるため,処方箋枚数が多い店舗では,小児・高齢者の点眼手技の直接指導の頻度がクラスターC2より高くなったと考えられた.点眼薬の処方箋枚数が少ないクラスターC1とC4の違いは,基本的なC5項目の点眼指導の頻度であったことから,点眼指導に対する意識の差が頻度の差となって現れたのではないかと推察した.クラスターC4は,眼科以外の診療科から,内服薬とともに点眼薬が処方される処方箋を扱う機会が多い店舗であると推察され,服薬指導が内服薬中心に行われていて,点眼薬の服薬指導が十分に行われていない可能性が示唆された.これらクラスター分析の結果から,薬局における点眼指導の実態を解釈してみると,点眼指導の内容と頻度は,点眼薬の処方機会の多さと時間的な制約,点眼指導に対する意識の差といった要素が影響を与えていると考えられた.今後,点眼指導内容の統一化を図るためには,統一化を妨げる要因を排除すること,つまり処方の機会や時間的な制約に影響されない指導手段を構築することと,点眼指導をする側,される側の教育と理解の促進を図っていくことが重要と考えられる.謝辞:本論文投稿にあたりご助言をいただきました庄司眼科医院・日本大学医学部視覚科学系眼科学分野の庄司純先生に深謝2)大松寛:白内障術前抗菌点眼薬の施行率と点眼方法の観いたします.察.IOL&RS32:644-646,C20183)野田百代:入院前からの点眼指導への介入.日本視機能看護学会誌3:15-18,C2018文献4)小笠原恵子:白内障手術患者に対するCDVDを用いた個別1)谷戸正樹:点眼指導の繰り返しによる点眼手技改善効果.点眼指導の取り組み.日本農村医学会雑誌C63:846-847,あたらしい眼科35:1675-1678,C2018C2015C***

眼科医・内科医における糖尿病眼手帳に対する 意識調査結果の年次推移の比較から見えてきたもの

2019年1月31日 木曜日

《第23回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科36(1):87.91,2019c眼科医・内科医における糖尿病眼手帳に対する意識調査結果の年次推移の比較から見えてきたもの大野敦粟根尚子赤岡寛晃梶邦成小林高明松下隆哉東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科ComparisonofAnnualTrendofSurveyonConsciousnessRegardingDiabeticEyeNotebookforOphthalmologistsandInternistsAtsushiOhno,NaokoAwane,HiroakiAkaoka,KuniakiKaji,TakaakiKobayashiandTakayaMatsushitaDepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversity目的・方法:東京都多摩地域の眼科医と内科医における『糖尿病眼手帳』(以下,眼手帳)に対する意識調査の年次推移を報告してきたが,両者の共通項目を比較し,眼手帳に対する意識の差が生まれてきた背景を考察した.結果:眼科医では,眼手帳を渡すことと内科医が渡すことへの抵抗は減少し,より早期に渡すようになり,眼手帳の広まりを感じ始めてきた.一方内科医では,眼手帳の認知度・活用度が有意に低下し,眼手帳が渡されるべき範囲が狭まっていた.その背景として,2009年までは内科医は『糖尿病健康手帳』を用いており,眼科所見欄がなかったことより眼手帳の有用性は高かった.一方2010年に糖尿病連携手帳が登場し眼底検査の記載欄が設けられたことで,糖尿病網膜症が出現するまでは眼手帳は使わなくてもよいと考える内科医が増え,その結果眼手帳の認知度・活用度の低下につながった可能性がある.結論:眼科医への調査結果より,今後は糖尿病連携手帳との併用により,糖尿病患者の内科・眼科連携のさらなる推進が期待される.一方内科医への調査結果より,眼手帳の普及ならびに有効活用にはさらなる啓発活動が必要である.Purpose・Methods:WehavereportedonannualtrendsinsurveyofattitudestowardtheDiabeticEyeNote-book(EyeNotebook)forophthalmologistsandinternistsintheTamaarea,andhavecomparedtheitemscommontoboth,examiningthebackgroundofdi.erencesinconsciousnessregardingtheEyeNotebook.Results:Ophthal-mologistshavebeguntofeelthespreadoftheEyeNotebookastheresistancetohandovertotheEyeNotebookandtothephysicianhandeddownhasdecreasedandgaveitearlier.Meanwhile,amonginterniststhedegreeofrecognitionandutilizationoftheEyeNotebookdecreasedsigni.cantly,andthefrequencywithwhichtheEyeNotebookwasbeingpassedalongwasdiminishing.Asbackgroundforthis,in2009internistsusedthediabeteshealthnotebook,andtheusefulnessoftheEyeNotebookwashigherthanthatoftheophthalmologic.ndingcol-umn.Ontheotherhand,asthediabetescooperationnotebookappearedin2010andthedescriptioncolumnoffun-dusexaminationwasestablished,anincreasingnumberofinternistsfeltitunnecessarytousetheEyeNotebookuntildiabeticretinopathyappeared;thismayhaveledtoadeclineinawarenessandutilization.Conclusion:Basedontheophthalmologistresults,furthercooperationbetweenophthalmologistsandinternistsofdiabeticpatientsisexpectedthroughuseofthediabetescooperationnotebook.Theinternistresults,ontheotherhand,indicatefurtherneedforeducationalactivitiesthatencouragedisseminationande.ectiveutilizationoftheEyeNotebook.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)36(1):87.91,2019〕Keywords:眼科・内科連携,糖尿病眼手帳,糖尿病連携手帳,アンケート調査.cooperationbetweenophthal-mologistandinternist,DiabeticEyeNotebook,diabetescooperationnotebook,questionnairesurvey.〔別刷請求先〕大野敦:〒193-0998東京都八王子市館町1163東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科Reprintrequests:AtsushiOhno,M.D.Ph.D.,DepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversity1163Tate-machi,Hachioji-city,Tokyo193-0998,JAPANはじめに糖尿病診療の地域医療連携を考える際に重要なポイントの一つとなるのが,内科と眼科の連携である.東京都多摩地域では,1997年に設立した糖尿病治療多摩懇話会において,内科と眼科の連携を強化するために両科の連携専用の「糖尿病診療情報提供書」を作成し,地域での普及を図った1).また,この活動をベースに,筆者は2001年の第7回日本糖尿病眼学会での教育セミナー「糖尿病網膜症の医療連携─放置中断をなくすために」に演者として参加した2)が,ここでの協議を経て糖尿病眼手帳(以下,眼手帳)の発行に至っている3).眼手帳は,2002年6月に日本糖尿病眼学会より発行されてから16年が経過し,利用状況についての報告が散見され4.7),2005年には第2版,2014年には第3版に改訂された.眼手帳発行後,内科と眼科の連携がより緊密となり,眼科の通院中断率が現実に減少しているか否かの把握が今後の課題となるが,その前提として,発行された眼手帳に対する眼科医および内科医における意識の変化を調査することが重要と考え,多摩地域で経年的にアンケート調査を施行し,その年次推移を報告してきた8.10).本稿では両者の調査結果を比較することで見えてきた多摩地域の眼科医および内科医における眼手帳の実態と課題を検討した.I対象および方法多摩地域の病院・診療所に勤務している眼科医として,発行半年目96名(男性56名,女性24名,不明16名),2年目71名(男性43名,女性28名),7年目68名(男性38名,女性22名,不明8名),10年目54名(男性41名,女性13名),13年目50人(男性37人,女性8人,不明5人)に,内科医として,発行7年目122名(男性97名,女性9名,不明16名),10年目117名(男性101名,女性16名),13年目114名(男性74名,女性13名,不明27名)に協力をいただいた.なおアンケート調査は,眼手帳の協賛企業の医薬情報担当者がアンケートを持って各医療機関を訪問して医師にアンケートを依頼し,回答後直接回収する方式で行ってきた.アンケートの配布と回収という労務提供を眼手帳の協賛企業の医薬情報担当者に依頼したことで,協賛企業が本研究の一翼を担うことになり倫理的問題が生じているが,アンケートを通じて眼手帳の啓発を同時に行いたいと考え,そのためには眼手帳の協賛企業に協力をしてもらうほうがよいと判断し,実施してきた.なお,アンケート内容の決定ならびにアンケートデータの集計・解析には,上記企業の関係者は関与していない.またアンケート用紙の冒頭に,「集計結果は,今後学会などで発表し機会があれば論文化したいと考えておりますので,ご了承のほどお願い申し上げます」との文章を記載し,集計結果の学会での発表ならびに論文化に対する了承を得た.アンケート項目は,眼科医用10項目,内科医用8項目で構成されているが,誌面の制約上,本稿では両アンケートの共通項目のうち,下記の5項目を取り上げた.1.眼手帳の利用状況,認知度・活用度2.眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感3.眼手帳が渡されるべき範囲4.眼手帳は眼科医が渡すべきか5.眼手帳の広まり上記の5項目に対するアンケート調査結果の推移について比較検討した.各回答結果の比較にはc2検定を用い,統計学的有意水準は5%とした.II結果1.眼手帳の利用状況,認知度・活用度(図1)眼科医における眼手帳の利用状況は,「積極的配布」と「時々配布」を合わせて,7,10年目は60%,13年目は70%を超えていたが,有意差は認めなかった.一方,内科医における眼手帳の認知度・活用度は,7年目に比べて10,13年目は有意に減少していた.2.眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感(図2)眼科医における抵抗感は,「まったくない」と「ほとんどない」を合わせて,2,7年目は80%,10,13年目は90%を超え,5群間で有意差を認めた.内科医における眼科医が渡すことへの抵抗感は,「まったくない」と「ほとんどない」を合わせて各群90%を超え,3群間で有意差は認めなかった.3.眼手帳が渡されるべき範囲(図3)眼科医における眼手帳を渡したい範囲は,経年的に「全ての糖尿病患者」の比率が増加し,「網膜症が出現してきた患者」の比率は減少し,5群間に有意差を認めた.一方,内科医からみた眼手帳が渡されるべき範囲は,7,10年目に比べて13年目は,「全ての糖尿病患者」の比率が減少し,「網膜症が出現してきた患者」の比率は有意に増加していた.4.眼手帳は眼科医が渡すべきか(図4)眼科医では,眼手帳は眼科医が渡すべきとの回答が10,13年目に減り,内科医が渡してもよいとの回答が有意に増加していた.内科医では,眼手帳は眼科医から渡すべきとの回答が10年目に減り,内科医が渡してもかまわないとの回答が増加傾向を示した.5.眼手帳の広まり(図5)眼科医では,半年目.7年目までと比べて10年目,13年c2検定:p=0.41(未回答除く)c2検定:p<0.005(未回答除く)c2検定:p=0.1(未回答除く)■必要とは思うが配布していない■必要性を感じず配布していない眼手帳を今回はじめて知った■その他の配布状況2年目■積極的に配布している■時々配布している7年目10年目1名13年目■全くない■ほとんどない■多少ある■かなりある半年目2年目7年目10年目13年目2名c2検定:p<0.05(未回答除く)■活用中■未活用■研究会等で見聞きしたことはある知らなかったその他2年目7年目2名10年目13年目図1眼手帳の利用状況,認知度・活用度c2検定:p<0.05(未回答除く)■正直あまり渡したくない■その他■全ての糖尿病患者■網膜症が出現してきた患者半年目2年目7年目10年目7名13年目半年目2年目7年目10年目13年目c2検定:p=0.08(未回答除く)図2眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感c2検定:p<0.01(未回答除く)■全糖尿病患者■糖尿病網膜症の出現してきた患者半年目2年目7年目10年目13年目9名c2検定:p<0.05(未回答除く)■眼科医が渡すべき■内科医でもよい■どちらでもよい半年目2年目7年目10年目5名13年目図4眼手帳は眼科医が渡すべきか図3眼手帳が渡されるべき範囲c2検定:p=0.0001(未回答除く)■かなり広まっている■あまり広まっていないどちらともいえない半年目2年目7年目10年目7名13年目c2検定:p=0.66(未回答除く)■かなり広まっているあまり広まっていないどちらともいえない半年目2年目7年目10年目13年目8名図5眼手帳の広まり目は眼手帳がかなり広まっているとの回答が40%前後に有意に増加していた.一方,内科医で眼手帳がかなり広まっているとの回答は各群とも10%台にとどまり,あまり広まっていないと思うが過半数を超えていた.III考按多摩地域の眼科医における眼手帳に対する意識調査を発行半年.13年目に5回施行してその結果を比較したところ,眼手帳発行後13年の間に眼手帳を渡すことならびに内科医が渡すことへの抵抗は減少し,より早期に渡すようになり,眼手帳の広まりを感じ始めてきた.一方,多摩地域の内科医における眼手帳に対する意識調査を発行7,10,13年目に施行しその結果を比較したところ,眼手帳の認知度・活用度が有意に低下し,内科医からみた眼手帳が渡されるべき範囲が狭まっていた.上記のように多摩地域の眼科医と内科医の間で,発行後13年の間に眼手帳に対する意識の差が生じている.そこでその背景について,考察してみた.内科医における眼手帳の認知度・活用度の低下,眼手帳が渡されるべき範囲が狭まった背景として,発行7年目の2009年は内科側からの情報提供手段としては「糖尿病健康手帳」を用いており,眼科所見を書くスペースがなかったことより,眼手帳の有用性は高かったと思われる.その後2010年に「糖尿病連携手帳(以下,連携手帳)」の初版が登場し,狭いながらも眼底検査の記載欄が設けられたことで,少なくとも糖尿病網膜症が出現するまでは連携手帳の眼底検査欄を利用し,眼手帳は使わなくてもよいのではないかと考える内科医が増え,その結果眼手帳の認知度・活用度の低下につながった可能性が考えられる.以上のことを踏まえると,連携手帳と眼手帳を両科の連携にいかに利用していくかが今後の課題であるが,連携手帳における眼科記入欄は,第2版までは「検査結果」の右上隅に2頁おきに記載する形式であったが,第3版では14,15頁に「眼科・歯科」の頁が新設され,時系列で4回分記入できるように改訂されている.すなわち,眼科受診の記録を時系列でみることのできる眼手帳の優位性が,連携手帳の改訂により崩されたことになる.そこで八王子市内の27眼科診療所に,連携手帳第3版への改訂後の眼手帳の位置付けに関するアンケート調査を施行した(回答率:81.5%).その結果,連携手帳第3版の持参患者に対する眼手帳の利用方針は,眼手帳の時系列での記載方式が連携手帳にも採用されたので網膜症が出現してから渡したいとの回答よりも,眼科の記入項目が少ないのですべての糖尿病患者に眼手帳を渡したいとの回答がほぼ2倍でもっとも多かった11).以上の結果より,眼手帳20頁からの情報提供による教育効果への期待を含めて,今後も両手帳の併用を積極的に勧めていきたい.まとめ眼科医の眼手帳に対する意識調査の年次推移の結果より,今後は連携手帳との併用により,糖尿病患者の内科・眼科連携のさらなる推進が期待される.一方,内科医の眼手帳に対する意識調査の年次推移の結果より,眼手帳の普及ならびに有効活用にはさらなる啓発活動が必要である.謝辞:アンケート調査に長年にわたりご協力いただきました多摩地域の眼科医ならびに内科医の方々に厚くお礼申し上げます.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)大野敦,植木彬夫,馬詰良比古ほか:内科医と眼科医の連携のための糖尿病診療情報提供書の利用状況と改良点.日本糖尿病眼学会誌7:139-143,20022)大野敦:糖尿病診療情報提供書作成までの経過と利用上の問題点・改善点.眼紀53:12-15,20023)大野敦:クリニックでできる内科・眼科連携―「日本糖尿病眼学会編:糖尿病眼手帳」を活用しよう.糖尿病診療マスター1:143-149,20034)善本三和子,加藤聡,松本俊:糖尿病眼手帳についてのアンケート調査.眼紀5:275-280,20045)糖尿病眼手帳作成小委員会:船津英陽,福田敏雅,宮川高一ほか:糖尿病眼手帳.眼紀56:242-246,20056)船津英陽:患者説明からみる糖尿病スタッフのための最新眼科知識糖尿病眼手帳と眼科内科連携.プラクティス23:301-305,20067)船津英陽,堀貞夫,福田敏雅ほか:糖尿病眼手帳の5年間推移.日眼会誌114:96-104,20108)大野敦,粟根尚子,梶明乃ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳に対するアンケート調査結果の推移(第2報).ProgMed34:1657-1663,20149)大野敦,粟根尚子,永田卓美ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳に対する意識調査─発行半年.13年目の推移─.糖尿病合併症29(Suppl-1):132,201510)大野敦,粟根尚子,小暮晃一郎ほか:多摩地域の内科医における糖尿病眼手帳に対する意識調査─発行7・10・13年目の比較─.プラクティス34:551-556,201711)大野敦:糖尿病患者の内科・眼科連携の進め方─糖尿病眼手帳・連携手帳の位置付け─.糖尿病合併症31:56-59,2017***

多焦点眼内レンズの挿入を検討している患者に対する多施設アンケート調査

2018年9月30日 日曜日

《原著》あたらしい眼科35(9):1281.1285,2018c多焦点眼内レンズの挿入を検討している患者に対する多施設アンケート調査ビッセン宮島弘子*1南慶一郎*1神前太郎*2吉田伸利*2*1東京歯科大学水道橋病院眼科*2日本アルコン株式会社CMulti-siteQuestionnaireSurveyofJapaneseCandidatePatientsforMultifocalIntraocularLensImplantationHirokoBissen-Miyajima1),KeiichiroMinami1),TaroKanzaki2)andNobutoshiYoshida2)1)DepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollegeSuidobashiHospital,2)AlconJapanLtd.多焦点眼内レンズ(IOL)を検討している患者C238名に対して,11施設にてアンケート調査を行い,眼鏡使用状況,白内障により困っている動作と改善したい動作,簡単な説明提示前後における多焦点CIOLに関する理解度,手術費用の提示前後における関心度を調査した.眼鏡装用はC87.4%,遠方ないしは近方視力が必要な動作で不便という回答が45.67%,中間距離でC29.31%,改善したい割合も同程度であった.多焦点CIOLにより眼鏡依存度が減ることに対する理解度は高かった.ハロー,グレア,コントラスト感度低下などの多焦点CIOLの不具合を理解していたのは半数以下と低かったが,調査用紙にて簡単な説明を提示後,不具合への理解度は改善していた.関心度は,費用提示前がC75%であったが,提示後はC54%に減っていた.本調査から,多焦点CIOLの特徴を十分理解してもらうためには,1回の説明ではなく,繰り返しの説明が有効であると考えられた.SurveyCofC238CcandidatesCforCmultifocalCintraocularClens(MF-IOL)implantationCwasCperformedCatC11Csites.Questionnaireincludedspectacledependency,di.cultyofdailyactivitiesandactivitiespatientshopedtoimprove;CunderstandingCofCbene.tsCandCriskCofCMF-IOLCandCitsCimprovementCafterCbriefCexplanation,CandCe.ectCofCsurgerycostonMF-IOLpreference.Ofthepatients,87.4%werespectacledependent;two-thirdsexperienceddi.cultiesandCwantedCtoCimproveCnearCandCdistanceCvision-relatedCactivities.CThisCdecreasedCtoCone-thirdCwhenCitCcameCtoCactivitiesCregardingCintermediateCvision.CBene.tsCofCMF-IOLCwereCwellCunderstood,CwhileCcomplicationsCsuchCasChalo,glareanddecreasedcontrastsensitivitywereunderstoodbylessthanhalf,whichratioimprovedwithaddi-tionalCexplanation.CMF-IOLCwereCacceptedCbyC75%,CthisCrateCdroppingCtoC54%CafterCshowingCsurgeryCcost.CForCimprovingpatientsatisfaction,repeatedexplanationofMF-IOL’sdrawbacks,aswellasbene.ts,ise.ective.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(9):1281.1285,C2018〕Keywords:多焦点眼内レンズ,アンケート調査,患者理解度.multifocalintraocularlens,questionnairesurvey,patientunderstanding.Cはじめに多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)を用いた水晶体再建術は,遠方に加え近方においても,良好な裸眼視力を得ることが期待できる1,2).わが国では,2008年に先進医療として承認され,実施施設は年々増加し,2017年C8月時点でC580施設以上が登録され,先進医療として使用されている多焦点CIOL挿入例は,厚生労働省先進医療会議資料の2016年度実績報告(2015年C7月.2016年C6月)でC11,478例と報告されている.一方,厚生労働省レセプト情報・特定健診等情報データベースによれば,単焦点CIOLを.内に挿入する水晶体再建術例はC2015年度でC1,453,747例であり,多焦点CIOLの普及率はわずかC0.7%程度である.先進医療の対象とならない国内未承認の多焦点CIOLも使用されているが,それを含めても1%未満と推察される.〔別刷請求先〕ビッセン宮島弘子:〒101-0061東京都千代田区神田三崎町C2-9-18東京歯科大学水道橋病院眼科Reprintrequests:HirokoBissen-Miyajima,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollegeSuidobashiHospital,2-9-18Kanda-misaki-cho,Chiyoda-ku,Tokyo101-0061,JAPAN普及率が低い要因として,白内障患者の理解度の低さ,遠近とも良好な裸眼視力の必要性の低さ,保険適用外のため自費負担が大きいこと,グレア,ハロー,コントラスト感度の低下など多焦点CIOL特有の術後不具合などがあげられる.しかし,挿入後の不満例3,4),摘出例5)については検討されているが,多焦点CIOLを検討している患者に対して,IOLに関する理解度,関心度,および選択する要因などについての調査はなされていない.そこで,多焦点CIOLを検討している患者に対して,アンケート調査を多施設で行った.CI対象および方法アンケートの調査対象は,白内障により水晶体再建術が予定され,多焦点CIOLを検討し,これに関する説明を受けた患者とした.2016年C11.12月にC11施設(稲村眼科クリニック,大内眼科,岡眼科クリニック,クイーンズアイクリニック,高槻病院眼科,多根記念眼科病院,ツカザキ病院眼科,トメモリ眼科・形成外科,東京歯科大学水道橋病院眼科,藤田眼科,フジモト眼科)にて,説明後に調査票C240部を配布した.調査票は,患者背景(年齢,性別など)に加えて,表1に示す項目を順に質問,提示した.Q1は患者の眼鏡使用状況,Q2は白内障により困っている動作と,手術によって改善したい動作と,患者の背景に関する質問とした.Q3では,多焦点CIOLの利点と懸念点の理解度を調べた.次に,多焦点CIOLの特徴と費用の簡単な説明を提示した後,多焦点CIOLの期待と懸念に関して質問した(Q5).また,患者が支払う手術費用を提示する前後において多焦点CIOLへの関心度を聞き,費用による影響も調べた(Q4,6,7).調査票の記入は患者自身が行い,第三者機関の調査会社に直接郵送し,そこで開封され集計された.CII結果回収された調査票は配布したC240部中C238部(238名)であった.患者の性別は,男性C93名(39%),女性C140名(59%),未回答C5名,年齢は,40歳未満C6名,40歳代C10名,50歳代32名,60歳代84名,70歳以上99名,未回答7名と,60歳以上がC77%を占めた.眼鏡装用状況(Q1)は,全距離で不使用はC30名(12.6%),1カ所の距離のみで使用は68名(28.6%),2カ所以上の距離で使用はC140名(58.8%)であった.遠方,中間,近方の各距離における眼鏡装用を図1に示す.不使用の回答は近方視でもっとも少なかった.図2は,白内障により困っている動作と,手術によって改善したい動作(Q2)の回答結果である.遠くを見る,信号を見るといった遠方視と,本を読む,パソコンを使うといった近方視における動作が不便と感じている回答がC45.67%,手術により,これらの改善を望む割合もC49.63%と同様であった.一方,身だしなみ,カーナビ,足元といった中間距離での動作に対して不便を感じるのがC29.31%,これらの改善を望む割合はC35.37%であった.多焦点CIOLを挿入する白内障手術に関して(Q3,図3),多焦点CIOLの効果を得るために費用が増加することについてはC82%の患者が理解していたのに対して,グレア,ハロー,ぼやける,かすむといった多焦点CIOLに特有の不具合があることに関しては,よく理解していると回答したのが50%以下と理解度は低かった.アンケート設問途中に,白内障手術における単焦点CIOLと多焦点CIOLの特徴を図と文章で記載した簡単な説明文を入れ(表1),この追加説明後における多焦点CIOLへの期待と懸念(Q5)の回答結果を図4に示す.眼鏡使用頻度が減るという多焦点CIOLの効果への期待がC90%近くであった.多焦点CIOLの懸念点であるグレア,ハロー,コントラスト感度低下に対しても,8.9割の患者が気になると回答したが,各質問に対して,気になる,気にならないのC2択の回答が96%以上から得られ,未回答が減り,追加説明により不具合に関する理解度は改善した.図5は単焦点,多焦点CIOLへの関心度(Q4,6)の結果である.手術費用を提示する前は,多焦点CIOLへの関心度(できれば選びたい,あるいは,どちらかと言えば選びたい)は,単焦点CIOLに関心があるC45%と比べて,75%と高かった.両CIOLに必要な手術費用を提示した後では,多焦点CIOLへの関心度はC54%と低下し,単焦点CIOLを選択する患者はC58%に増加した.多焦点CIOLに対して許容できる費用(Q7)は,29万円以下がC60%,30万円以上がC23%,費用にかかわらず多焦点IOLを選択しないがC12%であった.CIII考按多焦点CIOLについて,臨床成績や満足度が検討されているが,興味がある患者の背景や理解度などに関する検討は,筆者らの知る限りない.白内障手術において,多焦点CIOLの普及が低い要因として,白内障患者の多焦点CIOLへの理解度が低いこと,裸眼において良好な遠方および近方視力の必要性が低いこと,保険適用でなく先進医療あるいは自費のため費用負担が大きいこと,グレア,ハロー,コントラスト感度の低下など多焦点CIOL特有の術後不具合がありうることなどが考えられる.本調査は各施設におけるCIOL説明後に行ったにもかかわらず,多焦点CIOLの効果に対する理解度は高いが,術後不具合について,あまり理解されていないことが回答結果からわかった.また,費用負担が大きくなることによって,多焦点CIOLへの関心度が低下することが確認された.多焦点CIOLを検討している患者の術前眼鏡使用率はC87.4表1アンケート調査票の質問内容Q1.術前の眼鏡装用(常に使用;必要時;使用しないのC3択)①本を読む,新聞を読むなど(30.40Ccm程度の近見視時)②パソコン画面の文字を見るなど(50.100Ccm程度の中間視時)③運転時の道路標識を見るなど(遠見視)Q2.白内障により困っている動作と,手術によって改善したい動作①本や新聞,雑誌などを読む②パソコン(iPadやタブレットを含む)を使う③身だしなみを整える(ひげ剃り,化粧,など)④運転中にカーナビを見る⑤足元を確認する(例えば,段差のある場所がみづらい,など)⑥信号や道路標識等の看板を見る⑦遠くを見る(ゴルフ時など)⑧とくにないQ3.白内障手術に関する理解度(よく理解している;あまり理解していない;聞いたことがないのC3択)①眼内レンズには単焦点と多焦点のC2種類がある②単焦点CIOLに比べ,多焦点CIOLを選択すると手術費用の負担が高くなる③単焦点CIOLでは,読書時などに眼鏡を使う必要が生じる④多焦点CIOLでは,日常生活で眼鏡を使う頻度が減る⑤多焦点CIOLでは,グレア(強い光をまぶしく感じる),ハロー(光の周辺に輪がかかって見える)が生じることがある⑥多焦点CIOLでは,「ぼやける」,「かすむ」といった見えづらい症状が起こることがある白内障手術と,単焦点と多焦点CIOLの簡単な説明の提示Q4.両CIOLの特徴のみ(費用を考慮しない)における関心度(できれば選びたい;どちらかと言えば選びたい;どちらかと言えば選びたくない;できれば選びたくないのC4択)①単焦点CIOL②多焦点CIOLQ5.多焦点CIOLに対する期待と懸念①日常生活で眼鏡を使用する頻度が減る(期待している;期待していないのC2択)②グレア,ハローが生じることがある(気にならない;気になるのC2択)③見えづらい症状が起こることがある(気にならない;気になるのC2択)Q6.費用を提示後の患者の関心度(できれば選びたい;どちらかと言えば選びたい;どちらかと言えば選びたくない;できれば選びたくないのC4択)①単焦点CIOL②多焦点CIOLQ7.多焦点CIOLに対して許容できる費用①C29万円以下②C30万円以上③費用に関わらず多焦点CIOLを選択しない常用■必要時■不使用■未回答期待あり■期待なし■未回答眼鏡を使用する頻度が減る近見視中間視遠方視0%20%40%60%80%100%グレア,ハローが生じることがある0%20%40%60%80%100%見えづらい症状が起こる図1術前の眼鏡装用ことがある0%20%40%60%80%100%0%20%40%60%80%100%図4簡単な説明後の多焦点IOLに対する期待と懸念本や新聞,雑誌などを読むパソコンを使う身だしなみを整える運転中にカーナビを見る足元を確認する信号や道路標識などの看板を見る遠くを見るとくにない67%63%48%49%29%困っている動作37%■改善した動作31%35%29%36%50%51%45%51%9%5%■どちらかといえば選びたくない■できれば選びたくない■未回答多焦点IOL単焦点IOL費用提示前費用提示前0%20%40%60%80%100%費用提示前費用提示前58%17%14%8%33%21%25%18%眼内レンズには単焦点と6%多焦点の2種類がある調査結果より,多焦点CIOLの効果に対する理解度は高い多焦点IOLでは,手術費用7%ことがわかり,各施設で行っている説明会などが有効と考えの負担が高くなるられた.一方,グレア,ハロー,コントラスト感度の低下な単焦点IOLでは,読書など6%に眼鏡を使う必要が生じるどが理解されていないことがわかり,この点は改善されるべ多焦点IOLでは,日常生活で6%きと考える.術後不満例の主因は,コントラスト感度低下に起因する視機能低下で3,4,7,8),多焦点IOL摘出例の原因でハローが生じることがあるwaxyvisionがもっとも多かったことからも明らかである5).多焦点IOLでは,「ぼやける」,「かすむ」といった見えづらい術後に不満を訴える,あるいは摘出に至る例を少なくするために,患者が術前に多焦点CIOL特有の不具合を理解するこ図3白内障手術に関する理解度%と高かった.LaserinCsituCkeratomileusis(LASIK)などの屈折矯正手術を受けた患者では,白内障術後も眼鏡に依存しない良好な遠方および近方裸眼視力を望むため,多焦点IOLの希望が多い傾向にある6).一方,本対象の高い術前眼鏡使用率は,屈折矯正手術歴が少なかったことを示している.そのことは,屈折矯正手術を受けていなくても,術後もとが重要である.本調査で,回答の間に簡単な説明を追加し(図1),その後の調査で理解度が上がっていることが確認できた.このことから,多焦点CIOLの特徴を十分理解してもらうためには,1回の説明ではなく,簡単な特徴をまとめた文章を使ってでもいいので,繰り返しの説明が有効であることが示唆された.今回は,多焦点CIOLを検討している患者に対する調査であったため,費用提示前の関心度がC75%と高かった.保険適用の単焦点CIOLを用いた手術との費用差を提示すると,多焦点CIOL希望者は約C3割減少した.多焦点CIOLの希望は,患者が期待する術後視力,先進医療特約が使える医療保険に加入しているかによって回答は異なるが,多焦点CIOLに興味があっても,費用面により単焦点CIOLを選択する例が多いことがわかった.白内障患者の多焦点CIOL挿入後の裸眼遠方および近方視力の改善に対しては多くの報告があるが1,2),費用対効果の分析は,米国や台湾で眼鏡不要の点から検討されているのみである9,10).わが国では,単焦点CIOLを挿入する白内障手術の費用対効果が分析されているのみである11).患者に多焦点IOLの効果に見合った費用負担であることを理解してもらうためには,術後の遠方および近方視力と満足度の評価を含め,わが国における費用対効果の評価が望まれる.本アンケート調査は,AlconLaboratories,Inc.の補助金のもとに実施された.文献1)AlioCJL,CPlaza-PucheCAB,CFernandez-BuenagaCRCetCal:Multifocalintraocularlenses:Anoverview.SurvOphthal-molC62:611-634,C20172)deCSilvaCSR,CEvansCJR,CKirthiCVCetCal:MultifocalCversusCmonofocalCintraocularClensesCafterCcataractCextraction.CCochraneDatabaseSystRevC12:CD003169,C20163)deVriesNE,WebersCA,TouwslagerWRetal:Dissatis-factionafterimplantationofmultifocalintraocularlenses.JCataractRefractSurgC37:859-865,C20114)ビッセン宮島弘子,吉野真未,大木伸一ほか:回折型多焦点眼内レンズ挿入後不満例の検討.あたらしい眼科C30:C1629-1632,C20135)KamiyaCK,CHayashiCK,CShimizuCKCetCal:MultifocalCintra-ocularClensCexplantation:aCcaseCseriesCofC50Ceyes.CAmJOphthalmolC158:215-220,C20146)吉野真未,南慶一郎,平沢学ほか:LaserCinCsituCker-atomileusis(LASIK)術後多焦点眼内レンズ挿入眼の術後成績.日眼会誌119:613-618,C20157)WoodwardCMA,CRandlemanCJB,CStultingCRD:Dissatisfac-tionCafterCmultifocalCintraocularClensCimplantation.CJCCata-ractRefractSurgC35:992-997,C20098)GalorCA,CGonzalezCM,CGoldmanCDCetCal:IntraocularClensCexchangeCsurgeryCinCdissatis.edCpatientsCwithCrefractiveCintraocularlenses.JCataractRefractSurgC35:1706-1710,C20099)MaxwellWA,WaycasterCR,D’SouzaAOetal:AUnitedStatescost-bene.tcomparisonofanapodized,di.ractive,presbyopia-correcting,CmultifocalCintraocularClensCandCaCconventionalmonofocallens.JCataractRefractSurgC34:C1855-1861,C200810)LinJC,YangMC:Cost-e.ectivenesscomparisonbetweenmonofocalandmultifocalintraocularlensimplantationforcataractCpatientsCinCTaiwan.CClinCTherC36:1422-1430,C201411)HiratsukaCY,CYamadaCM,CMurakamiCACetCal:Cost-e.ec-tivenessCofCcataractCsurgeryCinCJapan.CJpnCJCOphthalmolC55:333-342,C2011***

八王子市内の眼科診療所における眼科・内科連携と 糖尿病眼手帳に関する意識調査結果の推移

2018年1月31日 水曜日

《第22回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科35(1):131.135,2018c八王子市内の眼科診療所における眼科・内科連携と糖尿病眼手帳に関する意識調査結果の推移大野敦粟根尚子梶邦成小林高明松下隆哉東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科CChangesinResultsofConsciousnessSurveyonCooperationbetweenOphthalmologistandInternist,andDiabeticEyeNotebookatOphthalmologyClinicinHachiojiCityAtsushiOhno,NaokoAwane,KuniakiKaji,TakaakiKobayashiandTakayaMatsushitaCDepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversity目的・方法:八王子市内の眼科診療所との糖尿病患者の眼科・内科連携をめざすために,両科の連携と糖尿病眼手帳(以下,眼手帳)に対する意識を,2002年,2010年,2016年に調査し,その結果の推移を検討した.結果:内科医から臨床情報を得るもっとも多い手段は「糖尿病連携手帳を見る」で,その回答率はC3年ともC80%以上であった.通院しやすい眼科選択のための八王子市内の地図作成時の掲載許可は,いずれもC80%を超えていて,その情報をもとに地図を改訂した.眼手帳を患者に渡すことへの抵抗感は経年的に減少を認めた.眼手帳を渡したい範囲は,「すべての糖尿病患者」との回答の比率が経年的に増えていた.眼手帳は「眼科医が渡すべき」との回答が減少し,「内科医」もしくは「どちらでもよい」との回答が増加した.結論:2002年に比べてC2010年とC2016年は,各アンケート項目において眼科・内科連携に積極的な施設が増えていた.眼手帳を渡すことへの抵抗感は減少し,より早期に渡すようになり,眼科医が渡すことへのこだわりが減っていた.CPurpose・Methods:ToCfosterCcooperationCbetweenCophthalmologistsCandCinternistsCwithCdiabeticCpatientsCinHachiojiCity,wesurveyedcooperationbetweenfamiliesandawarenessoftheDiabeticEyeNotebook(EyeNote-book)in2002,2010and2016,andexaminedthetrendinresults.Results:ThemostcommonmeansofobtainingclinicalCinformationCfromCinternistsCwasCviaCtheCdiabetesCcooperationCnotebook;theCresponseCrateCwasCmoreCthan80%forthe3years.ThepermissionofpublishingatthetimeofcreatingaHachiojiCitymapforeasierophthal-mologyclinicchoicewasmorethan80%;themapwasrevisedbasedonthatinformation.ResistancetodeliveringtheCEyeCNotebookCtoCtheCpatientCdecreasedCoverCtime.CInCtheCrangeCthatCICwantedCtoCpassCtheCEyeCNotebook,CtheCresponserateforalldiabeticpatientsincreasedovertime.ResponsesindicatingthattheEyeNotebookshouldbehandedCoverCbyCtheCophthalmologistCdecreased,CandCresponsesCindicatingCthatCinternistCorCeitherCshouldCdoCsoCincreased.CConclusion:InC2010CandC2016,CasCcomparedCwithC2002,CophthalmologyCclinicsCpressingCforCcooperationCbetweenCophthalmologistsCandCinternistsCwereCincreasingCforCeachCquestionnaireCitem.CResistanceCtoCsharingCtheCEyeNotebookhasdecreased,theNotebookwashandedoverearlier,andtheattentiontoophthalmologistshandeddownwasdecreasing.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(1):131.135,C2018〕Keywords:眼科・内科連携,糖尿病眼手帳,アンケート調査.cooperationbetweenophthalmologistandinter-nist,DiabeticEyeNotebook,questionnairesurvey.Cはじめに高尾駅からもバス便であるため,自家用車での通院患者の割筆者らの所属する東京医科大学八王子医療センターは,八合が高い.しかし,眼科受診の際には自家用車での受診は困王子市のなかでも山梨県や町田市との境に位置し,最寄りの難であり,そのため眼科への定期受診の間隔があいてしまう〔別刷請求先〕大野敦:〒193-0998東京都八王子市館町C1163東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科Reprintrequests:AtsushiOhno,M.D.,Ph.D.,DepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversity,1163Tate-machi,Hachioji-city,Tokyo193-0998,JAPAN患者もまれではない.そこで糖尿病・内分泌・代謝内科(以下,当科)では,糖尿病患者の診療において,通院しやすい地元の眼科開業医との連携を重要視してきた1).上記の方針のもと,当科では八王子市内の眼科診療所との積極的な眼科・内科連携をめざし,両科の連携と連携のツールとしての糖尿病眼手帳(以下,眼手帳)の位置付けに対する意識調査を,眼手帳発行C6カ月目のC2002年C11月,発行C8年目のC2010年C6月に施行し報告した2,3).今回,眼手帳発行14年目のC2016年C5月に再度同様な調査を施行した4)ので,本稿では意識調査結果の推移を報告する5).CI対象および方法アンケートの対象は,八王子市内で開業中の眼科診療所で,アンケートの配布施設数,回答施設数,回答率は,2002年C20施設,12施設,60%,2010年C25施設,20施設,80%,2016年C27施設,22施設,81.5%と,回答率の上昇を認めた.回答者のプロフィールを表1に示すが,性別はC3年とも男性がC3/4を占めた.年齢は,2002年,2010年がC40歳代,2016年はC50歳代がそれぞれもっとも多く,3群間に有意差を認めた.一方,眼科医としての臨床経験年数は,2002年,2010年がC11.20年,2016年はC21.30年の回答が最多であったが,3群間に有意差を認めなかった.なおアンケート調査は,眼手帳の協賛企業の医薬情報担当者がアンケートを持って各医療機関を訪問して医師にアンケートを依頼し,回答後直接回収する方式で行った.今回,アンケートの配布と回収という労務提供を眼手帳の協賛企業の医薬情報担当者に依頼したことで,協賛企業が本研究の一翼を担うことになり倫理的問題が生じているが,アンケートを通じて眼手帳の啓発を同時に行いたいと考え,そのためには眼手帳の協賛企業に協力をしてもらうほうが良いと判断し,実施した.なお,アンケート内容の決定ならびにアンケートデータの集計・解析には,上記企業の関係者は関与していない.またアンケート用紙の冒頭に,「集計結果は,今後学会などで発表し機会があれば論文化したいと考えておりますので,御了承のほどお願い申し上げます」との文章を記載し,集計結果の学会での発表ならびに論文化に対する了承を得た.誌面の制約上,本稿での報告対象としたアンケート項目は,下記のとおりである.I.糖尿病患者の眼科・内科連携について1.内科からの臨床情報(血糖コントロール状況など)を得る主な手段2.内科との連携手段3.自宅から通院しやすい眼科診療所を選択してもらうための八王子市内の地図の改訂版作成時の掲載希望II.眼手帳について4.眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感5.眼手帳を今後どのような糖尿病患者に渡したいか6.眼手帳は眼科医から患者に渡す方が望ましいか上記のC6項目に対するC2002年,2010年,2016年に施行したアンケート調査結果について比較検討した.3回の回答結果の比較にはCc2検定を用い,統計学的有意水準はC5%とした.表1回答者のプロフィール性別2002年2010年2016年男性75%(9名)75%(1C5名)77.3%(C17名)C女性25%(3名)25%(5名)22.7%(5名)年齢2002年2010年2016年30歳代25%(3名)C40歳代50%(6名)50%(1C0名)27.3%(6名)50歳代25%(5名)50%(1C1名)60歳代16.7%(2名)20%(4名)13.6%(3名)70歳代8.3%(1名)5%(1名)9.1%(2名)臨床経験年数2002年2010年2016年.1C0年8.3%(1名)C11.2C0年41.7%(5名)45%(9名)27.3%(6名)21.3C0年33.3%(4名)35%(7名)50%(1C1名)31年.16.7%(2名)15%(3名)22.7%(5名)無回答5%(1名)c2検定Cp=0.98c2検定Cp=0.01c2検定Cp=0.48II結果1.内科からの臨床情報(血糖コントロール状況など)を得るおもな手段(表2)3年とも「患者持参の糖尿病(連携)手帳を見る」がC80%以上の回答率でもっとも多く,ついで「患者から直接聞く」がC60.70%台であった.C2.内科との連携手段(表3)2002年は市販の,2010年とC2016年は自院のオリジナルの診療情報提供書の利用がそれぞれもっとも多い傾向を認めた.C3.自宅から通院しやすい眼科診療所を選択してもらうための八王子市内の地図の改訂版作成時の掲載希望(表4)「掲載して欲しい」と「どちらでもかまわない」を合わせると,2002年C83.3%,2010年C100%,2016年C95.5%といずれもC80%を超えていた.最新のC2016年の結果において,回答されたC22施設のうち閉院予定のC1施設を除くC21施設から掲載許可が得られたので,その情報をもとに地図を改訂した.C4.眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感(表5上段)有意差は認めないが,2010年とC2016年の方が眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感は少なかった.C5.眼手帳を今後どのような糖尿病患者に渡したいか(表5中段)眼手帳を渡したい範囲は,有意差は認めないものの「すべての糖尿病患者」と回答した割合が,2002年よりもC2010年・2016年はC60%台に増えていた.C6.眼手帳は眼科医から患者に渡すほうが望ましいか(表5下段)「眼科医が渡すべき」との回答がC2002年よりもC2010年・2016年は減少し,「内科医」もしくは「どちらでもよい」との回答が約C85%に増加した.CIII考按1.内科からの臨床情報(血糖コントロール状況など)を得るおもな手段今回の結果より,血糖コントロール状況を把握する方法として,内科医の発行する糖尿病(連携)手帳の利用が最多ではあったが,手帳を持参されない患者においては血糖値やHbA1c値を聞くとの回答がC60.70%台を占めていた.この背景には,糖尿病(連携)手帳の発行がまだ十分とはいえない状況が考えられるため,手帳の普及も今後の課題である.C2.内科との連携手段今回の検討において,筆者らが作成にかかわった糖尿病治療多摩懇話会作成の糖尿病診療情報提供書6,7)の利用率は,表2内科からの臨床情報(血糖コントロール状況など)を得るおもな手段2002年2010年2016年1)2)患者持参の糖尿病(連携)手帳を見る患者から直接聞く91.7%75%80%70%81.8%63.6%3)内科医に手紙や電話で連絡をとる16.7%15%0%4)その他の手段10%9.1%無回答(5%)複数回答者ありc2検定:p=0.62表3内科との連携手段表4自宅から通院しやすい眼科診療所を選択してもらうための2002年2010年2016年1)自院のオリジナルの診療情報提供書を主に用いている33.3%50%50%2)市販の診療情報提供書を主に用いている50%30%27.3%3)糖尿病治療多摩懇話会作成の糖尿病診療情報提供書を主に用いている33.3%5%4.5%4)その他の手段25%13.6%無回答(5%)(4C.5%)C八王子市内の地図の改訂版作成時の掲載希望2002年2010年2016年1)掲載して欲しい66.7%75%81.8%2)どちらでもかまわない16.7%25%13.6%3)掲載して欲しくない16.7%4.5%Cc2検定:p=0.31c2検定:p<0.1表5眼手帳に関する3つのアンケート結果眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感2002年2010年2016年1)まったくない41.7%75%72.7%2)ほとんどない50%15%27.3%3)多少ある8.3%10%0%4)かなりある0%C眼手帳を今後どのような糖尿病患者に渡したいか2002年2010年2016年1)すべての糖尿病患者41.7%65%68.2%2)網膜症の出現してきた患者58.3%35%31.8%3)正直あまり渡したくない0%Cc2検定p=0.14c2検定p=0.29眼手帳は眼科医から患者に渡す方が望ましいか2002年2010年2016年1)眼科医が渡すべきである33.3%15%13.6%2)内科医から渡してもかまわない16.7%35%13.6%3)どちらでも良い41.7%50%72.7%無回答(8C.3%)C2002年にC33.3%認めたものの,2010年とC2016年はC5%以下にとどまり,自院のオリジナルの診療情報提供書の利用が50%で最多であった.連携に熱心な眼科医ほどオリジナルの紹介状を持っている可能性は高く,糖尿病患者専用の提供書をわざわざ利用する必要性を感じないこともうなずける.また眼科医の記入する部分は,糖尿病専門医として欲しい情報が多く含まれており,眼科が発信元になる場合にその記入する部分の多さは負担になることが予想される.それに比べて眼科医がもらえる情報量は多いとはいえず,患者数が多く外来の忙しい眼科医ほど現在の提供書には魅力を感じないかもしれない.そこで日常臨床では,病状が比較的安定している際の両科の連携手段として,糖尿病連携手帳と糖尿病眼手帳の併用を頻用しており,これにより外来での時間的負担を軽減したうえで,より細やかな連携が可能である.C3.自宅から通院しやすい眼科診療所を選択してもらうための八王子市内の地図の改訂版作成時の掲載希望2010年とC2016年の掲載許可は,全回答施設から得ることができ,その情報をもとに作成したマップの利用により,自家用車でないと当センターに来院困難な糖尿病患者に通院しやすい地元の眼科診療所を紹介することが容易になった.また院内の眼科においても,より重症患者を中心の診療が可能になり,待ち時間の短縮も期待される.C4.眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感多摩地域の眼科医における眼手帳に対するアンケート調査c2検定p=0.21C結果の推移において,眼手帳発行C2年目以降「まったくない」と「ほとんどない」を合わせてC80%を超えていた8)が,今回の八王子の結果はさらにその比率が高かった.外来における時間的余裕ならびに眼手帳の配布時と記載時のコメディカルスタッフによるサポート体制が確保されれば,配布率の上昇が期待できる結果といえる.C5.眼手帳を今後どのような糖尿病患者に渡したいか眼手帳を「すべての糖尿病患者に渡したい」との回答が,眼手帳発行半年後のC2002年C11月にC41.7%占めた.前述の多摩地域での検討では,同回答が半年目でC27.1%にとどまり8),船津らの発行C1年目の調査でもC24.8%であった9)ことより,八王子市内の眼科診療所における眼手帳発行直後からの「すべての糖尿病患者」の選択率の高さが浮き彫りにされた.またC2010年とC2016年は同回答がC60%台に増えていたが,この結果も多摩地域での検討8)におけるC7年目C45.6%,10年目C51.9%,船津らの検討でのC6年目の調査9)でのC31.8%を上回っていた.眼手帳は,糖尿病患者全員の眼合併症に対する理解を向上させる目的で作成されているため,今後すべての糖尿病患者に手渡されることが望まれる.C6.眼手帳は眼科医から患者に渡すほうが望ましいか「眼科医が渡すべき」との回答がC2002年はC33.3%認めたが,2010年とC2016年はC15%以下に減少し,「内科医」もしくは「どちらでもよい」との回答がC85%以上に増加した.先の多摩地域での検討8)では,7年目までは「眼科医が渡すべき」がC40%前後と横ばいで,「内科医でもよい」が減少気味であったが,10年目に前者が著減し後者が有意な増加を示した.先の設問C4とC5の結果を合わせて年次推移をみると,八王子市内の眼科診療所における眼手帳の早期からの広範囲の有効利用による眼科・内科連携への積極的な取り組みが浮き彫りにされた.謝辞:アンケート調査にご協力頂きました八王子市内の眼科診療所の医師の方々に厚く御礼申し上げます.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)大野敦:眼科と内科の診療連携.月刊糖尿病C7:53-60,C20152)大野敦,齋藤由華,旭暢照ほか:眼科診療所に対する眼科・内科連携ならびに糖尿病眼手帳に関するアンケート調査.日内会誌92((臨時増刊号):177,20033)大野敦,梶明乃,梶邦成ほか:八王子市内の眼科診療所に対する糖尿病眼科・内科連携と糖尿病眼手帳に関する意識調査.網膜C2010講演抄録集:119,20104)大野敦,粟根尚子,小暮晃一郎ほか:八王子市内の眼科診療所における糖尿病患者の眼科・内科連携と糖尿病眼手帳第C3版の位置付けに関する意識調査.糖尿病合併症C30(Supplement-1):191,20165)大野敦,粟根尚子,小暮晃一郎ほか:八王子市内の眼科診療所における眼科・内科連携と眼手帳に関する意識調査結果の推移.糖尿病合併症30(Supplement-1):246,20166)大野敦,植木彬夫,馬詰良比古ほか:内科医と眼科医の連携のための糖尿病診療情報提供書の利用状況と改良点.日本糖尿病眼学会誌7:139-143,C20027)大野敦:糖尿病診療情報提供書作成までの経過と利用上の問題点・改善点.眼紀53:12-15,C20028)大野敦,粟根尚子,梶明乃ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳に対するアンケート調査結果の推移(第C2報).ProgMed34:1657-1663,C20149)糖尿病眼手帳作成小委員会:船津英陽,福田敏雅,宮川高一ほか:糖尿病眼手帳.眼紀56:242-246,C2005***

多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳の第3版に関するアンケート調査

2017年2月28日 火曜日

《第21回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科34(2):268.273,2017c多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳の第3版に関するアンケート調査大野敦粟根尚子永田卓美梶邦成小林高明松下隆哉東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科QuestionnaireSurveyResultsamongTamaAreaOphthalmologistsregardingtheThirdeditionoftheDiabeticEyeNotebookAtsushiOhno,NaokoAwane,TakumiNagata,KuniakiKaji,TakaakiKobayashiandTakayaMatsushitaDepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversity目的:『糖尿病眼手帳』(以下,眼手帳)は2014年6月に第3版に改訂された.改訂1年後に第3版に対する眼科医の意識調査を行ったので報告する.方法:多摩地域の眼科医に対し,1)眼手帳配布に対する抵抗感,2)「精密眼底検査の目安」の記載があることの臨床上の適正度,3)受診の記録で記入しにくい項目,4)受診の記録における①「糖尿病黄斑症」の記載の詳細化の是非,②「糖尿病黄斑症の変化」の記載の是非,③福田分類削除の是非,5)眼手帳第3版への改訂の患者さんへのわかりやすさについて調査し,回答者50名全体の結果ならびに日本糖尿病眼学会の会員11名と非会員30名の比較結果を検討した.結果・結論:受診の記録において会員は黄斑症の変化,非会員は網膜症の変化が記入しにくいとの回答が多く,会員は黄斑症の記載が詳細になったことは細かくて記載が大変との回答が5割を占めた.福田分類の復活希望は3%にとどまった.Purpose:TheDiabeticEyeNotebook(EyeNotebook)hasbeenrevisedtothethirdedition(June2014);weherereportontheawarenesssurveyofophthalmologistsforthethirdeditionoftherevisedoneyear.Methods:ThesubjectswereophthalmologistsintheTamaarea.Thesurveyitemswere:1)senseofresistancetoprovidingtheEyeNotebook,2)clinicalappropriatenessofthedescription“guidelinesforthoroughfunduscopicexamina-tion”,3)di.cultitemsto.llinontherecordofvisit,4)①prosandconsofdetaileddescriptionofdiabeticmacu-lopathy,②prosandconsofdescriptionofchangeindiabeticmaculopathy,③prosandconsofdeletingtheFuku-daclassi.cation.5)Clarityofrevisiontothethirdeditionofthepatient’sEyeNotebook.Weexaminedtheresultsofcomparingmembers(11persons),non-members(30persons),respondents(50persons)andoverallresults,aswellastheJapaneseSocietyofOphthalmicDiabetology.ResultsandConclusion:Ontherecordofvisit,manyresponsesaredi.cultto.llinregardingchangesinthediabeticmaculopathyofmembersandchangesinthedia-beticretinopathyofnon-members.Memberanswersofaverynotedanditismostwelcomethatdescriptionsofdiabeticmaculopathyhavecometoaccountforover50%.PreferenceforrevivaloftheFukudaclassi.cationreachedonly3%.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(2):268.273,2017〕Keywords:糖尿病眼手帳,アンケート調査,糖尿病網膜症,眼科・内科連携.diabeticeyenotebook,question-nairesurvey,diabeticretinopathy,cooperationbetweenophthalmologistandinternist.はじめに立し,内科と眼科の連携を強化するために両科の連携専用の糖尿病診療の地域医療連携を考える際に重要なポイントの「糖尿病診療情報提供書」を作成し地域での普及を図った1).一つが,内科と眼科の連携である.多摩地域では,1997年またこの活動をベースに,筆者は2001年の第7回日本糖尿に内科医と眼科医が世話人となり糖尿病治療多摩懇話会を設病眼学会での教育セミナー「糖尿病網膜症の医療連携─放置〔別刷請求先〕大野敦:〒193-0998東京都八王子市館町1163東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科Reprintrequests:AtsushiOhno,M.D.,Ph.D.,DepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversity,1163Tate-machi,Hachioji-city,Tokyo193-0998,JAPAN268(126)中断をなくすために」に演者として参加した2)が,ここでの協議を経て『糖尿病眼手帳』(以下,眼手帳)の発行に至っている3).眼手帳は,2002年6月に日本糖尿病眼学会より発行されてから14年が経過し,その利用状況についての報告が散見される4.7)が,多摩地域では,眼手帳に対する眼科医の意識調査を発行半年目,2年目,7年目,10年目に施行してきた.そして発行半年目8),2年目9)の結果を7年目の結果と比較した結果10),ならびに10年目を加えた過去4回のアンケート調査の比較結果11)を報告してきた.眼手帳は2014年6月に第3版に改訂されたが,糖尿病黄斑症の記載が詳細になり,一方初版から記載欄を設けていた福田分類が削除され,第2版への改訂に比べて比較的大きな変更になった.そこで第3版への改訂から1年後の2015年6.7月に,第3版に対する眼科医の意識調査を行ったので,本稿ではその結果のうち,第3版での改訂ポイントを中心に報告する.I対象および方法アンケートの対象は,多摩地域の病院・診療所に勤務中の糖尿病診療に関心をもつ眼科医で,50名から回答があり,回答者の背景は下記に示す通りであった.1.性別:男性74%(37名),女性16%(8名),無回答10%(5名).2.年齢:30歳代12%,40歳代28%,50歳代42%,60歳代12%,70歳代6%で,50歳代・40歳代の順に多く,両年代で全体の70%を占めた.3.勤務先:開業医84%,病院勤務14%,無回答2%.4.臨床経験年数:10年以内4%,11.20年22%,21.30年44%,31.40年24%,41年以上6%で,21.30年の回答がもっとも多かった.5.定期通院中の担当糖尿病患者数:10名未満6%,10.29名26%,30.49名34%,50.99名8%,100名以上20%,無回答6%で,30.49名の回答がもっとも多かった.6.日本糖尿病眼学会:会員22%(11名),非会員60%(30名),無回答18%(9名).なおアンケート調査は2015年6.7月に施行されたが,眼手帳の協賛企業の医薬情報担当者がアンケートを持って各医療機関を訪問して医師にアンケートを依頼し,回答後直接回収する方式で行ったため,回収率はほぼ100%であった.今回,アンケートの配布と回収という労務提供を眼手帳の協賛企業の医薬情報担当者に依頼したことで,協賛企業が本研究の一翼を担うことになり倫理的問題が生じているが,アンケートを通じて眼手帳の啓蒙を同時に行いたいと考え,そのためには眼手帳の協賛企業に協力をしてもらうほうが良いと判断し,実施した.なお,アンケート内容の決定ならびにアンケートデータの集計・解析には,上記企業の関係者は関与していない.またアンケート用紙の冒頭に,「集計結果は,今後学会などで発表し機会があれば論文化したいと考えておりますので,御了承のほどお願い申し上げます」との文を記載し,集計結果の学会での発表ならびに論文化に対する了承を得た.今回報告対象としたアンケート項目は,下記のとおりである.問1.眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感問2.「精密眼底検査の目安」の記載があることの臨床上の適正度問3.4頁からの「受診の記録」のなかで記入しにくい項目問4-1.受診の記録における「糖尿病黄斑症」の記載の詳細化の是非問4-2.受診の記録における「糖尿病黄斑症の変化」の記載の是非問4-3.受診の記録における福田分類削除の是非問5.眼手帳第3版への改訂の患者さんへのわかりやすさ上記の問1.5に対するアンケート調査結果について,回答者50名全体の結果ならびに日本糖尿病眼学会の会員11名と非会員30名の比較結果を検討した.会員と非会員の回答結果の比較にはc2検定を用い,統計学的有意水準は5%とした.II結果1.眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感(図1)眼手帳を渡すことへの抵抗は「まったくない」と「ほとんどない」を合わせて90%を超えていた.糖尿病眼学会の会員と非会員の比較では,両群間に有意差はなかった.2.「精密眼底検査の目安」の記載があることの臨床上の適正度(図3)眼手帳1ページの「眼科受診のススメ」(図2)の下段に「精密眼底検査の目安」が記載されていることおよび記載内容ともに「適当」との回答が全体の89%を占めた.糖尿病眼学会の会員と非会員の比較では,「目安の記載自体が混乱のもとなので不必要」との回答が会員で28.6%と有意に多かった(c2検定:p=0.001).3.4ページからの「受診の記録」のなかで記入しにくい項目(図4,5)記入しにくい項目としては,「糖尿病網膜症の変化」と「糖尿病黄斑症の変化」が17%前後で多かった(図4).糖尿病眼学会の会員と非会員の比較では,会員は「糖尿病黄斑症の変化」,非会員は「糖尿病網膜症の変化」の回答がともに20%を超えて多かった(図5).4.1.受診の記録における「糖尿病黄斑症」の記載の詳細化の是非(図6)黄斑症の記載が詳細になったことは「適切な改変」との回答が69%でもっとも多かった.糖尿病眼学会の会員と非会員の比較では,会員は「細かくて記載が大変になった」が50%,非会員は「適切な改変」が76%で,それぞれもっと■まったくない■ほとんどない■多少ある■かなりある0%20%40%60%80%100%〈糖尿病眼学会会員(11名)と非会員(30名)の比較〉図1眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感も多かった(c2検定:p=0.07).4.2.受診の記録における「糖尿病黄斑症の変化」の記載の是非(図7)黄斑症の変化は「必要な項目」が48%,「必要だが記載しにくく,ないほうがよい」が38%と回答が分かれていた.糖尿病眼学会の会員と非会員の比較では,両群間に有意差はなかった.4.3.受診の記録における福田分類削除の是非(図8)福田分類は「ないままでよい」が60%と最多で,復活希望は3%にとどまった.糖尿病眼学会の会員と非会員の比較では,復活希望は会員で14.3%,非会員は0%であった.5.眼手帳第3版への改訂の患者さんへのわかりやすさ(図9)患者さんサイドに立った眼手帳をめざして,1ページの「眼科受診のススメ」などの表記を患者さんにわかりやすい表記に変更(図2)したが,患者さんにとってわかりやすくなったとの回答が全体の54.5%を占めた.糖尿病眼学会の会員と非会員の比較では,非会員は「わかりやすくなった」が63%,会員は「どちらともいえない」が44%で,それぞれもっとも多かった.図2「眼科受診のススメ」の推移■適当■不必要■修正必要(%)2.2複数回答可無回答7名を除く43名中の回答割合で表示80(無回答5名)0%20%40%60%80%100%40〈糖尿病眼学会会員(11名)と非会員(30名)の比較〉20特になし糖尿病黄斑症の変化糖尿病黄斑症糖尿病網膜症の変化糖尿病網膜症白内障眼圧矯正視力次回受診予定日図3「精密眼底検査の目安」の記載があることの臨床上の適正度図44ページからの「受診の記録」のなかで記入しにくい項目適切細かくて記載が大変その他(%)(無回答11名)8060400%20%40%60%80%100%〈糖尿病眼学会会員(11名)と非会員(30名)の比較〉200特になし糖尿病黄斑症の変化糖尿病黄斑症糖尿病網膜症の変化糖尿病網膜症白内障眼圧矯正視力次回受診予定日図54ページからの「受診の記録」のなかで記入しにくい項目図6受診の記録における「糖尿病黄斑症」の記載の詳細化の<糖尿病眼学会会員(11名)と非会員(30名)の比較>是非必要記載しにくくないほうがよい元々不要その他ないままでよい復活してほしいどちらともいえない2.9(無回答8名)(無回答15名)0%20%40%60%80%100%0%20%40%60%80%100%〈糖尿病眼学会会員(11名)と非会員(30名)の比較〉〈糖尿病眼学会会員(11名)と非会員(30名)の比較〉図7受診の記録における「糖尿病黄斑症の変化」の記載の是非図8受診の記録における福田分類削除の是非0%20%40%60%80%100%〈糖尿病眼学会会員(11名)と非会員(30名)の比較〉図9眼手帳第3版への改訂の患者さんへのわかりやすさIII考按1.眼手帳を糖尿病患者に渡すことへの抵抗感多摩地域の眼科医に対する眼手帳に関するアンケート調査結果の推移11)をみると,眼手帳配布に対する抵抗感は,2年目以降「まったくない」と「ほとんどない」を合わせて80%を超えており,今回の結果も同様であった.外来における時間的余裕ならびに配布,手帳記載時にコメディカルスタッフによるサポート体制が確保されれば,配布率の上昇が期待できる.2.「精密眼底検査の目安」の記載があることの臨床上の適正度糖尿病眼学会の会員において,「目安の記載自体が混乱のもとなので不必要」との回答が28.6%と有意に多かった.これが糖尿病の罹病期間や血糖コントロール状況を加味せずに,検査間隔を決めるむずかしさを示唆しており,受診時期は主治医に従うように十分説明してから手帳を渡すことの必要性を改めて示している.3.4ページからの「受診の記録」のなかで記入しにくい項目多摩地域の眼科医における眼手帳第2版までのアンケート調査では,記入しにくい項目として,「福田分類」のつぎに「糖尿病網膜症の変化」があげられている11).今回その項目と「糖尿病黄斑症の変化」が多かったことは,網膜症や黄斑症の経時的変化を記載することの負担感を示している.4.1.受診の記録における「糖尿病黄斑症」の記載の詳細化の是非7割の回答者が黄斑症の記載が詳細になったことは適切な改変と評価しているものの,学会員の半数は細かくて記載が大変になったと回答している.おそらく定期通院中の糖尿病患者数が多く,かつ黄斑症の患者も多いため,記載に対する負担感が強いと思われる.4.2.受診の記録における「糖尿病黄斑症の変化」の記載の是非黄斑症の記載の詳細化に対する高評価に比べると,黄斑症の変化は必要だが「記載しにくくないほうがよい」との回答も4割弱認めた.この項目の記載には,OCTによる診察ごとの比較が不可欠であり,その煩雑さが記載のしにくさを反映していると考えられる.4.3.受診の記録における福田分類削除の是非多摩地域の眼科医に対する眼手帳発行10年目までのアンケート調査では,10年目の回答において,受診の記録のなかで記入しにくい項目として「福田分類」と「変化」が多く選ばれ,とくに福田分類の増加率が高かった11).福田分類は,内科医にとっては網膜症の活動性をある程度知ることのできる分類であるため記入して頂きたい項目ではあるが,その厳密な記入のためには蛍光眼底検査が必要となることもあり,眼科医にとっては埋めにくい項目と思われる1).こうした流れもあり,眼手帳の第3版では受診の記録から福田分類は削除されたが,今回の結果では福田分類は「ないままでよい」が6割を占め,復活希望は3%にとどまった.したがって,現時点で眼手帳の第3版の改訂方針は眼科医に支持されているといえるが,今後は福田分類削除に対する内科医の意見も聞いてみたい.5.眼手帳第3版への改訂の患者さんへのわかりやすさ眼手帳第3版への改訂では,図2の「眼科受診のススメ」の表記だけでなく,眼手帳後半のお役立ち情報にOCTや薬物注射を加えるなどの改変を行っている.こうした工夫が,患者さんにとって「わかりやすくなった」との回答が過半数を占める評価につながったと思われる.以上のアンケート結果より,眼手帳の第3版における改訂ポイントに対しておおむね好意的な受け入れ状況を示したが,一部の記載項目では,とくに日本糖尿病眼学会会員において負担感をもつ回答者も認めた.今後は,さらに多くの医療機関で眼手帳を利用してもらうために,眼手帳の目的を理解してもらうための啓発活動ならびに眼手帳のより利用しやすい方法の提案が必要と思われる.謝辞:アンケート調査にご協力頂きました多摩地域の眼科医師の方々に厚く御礼申し上げます.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)大野敦,植木彬夫,馬詰良比古ほか:内科医と眼科医の連携のための糖尿病診療情報提供書の利用状況と改良点.日本糖尿病眼学会誌7:139-143,20022)大野敦:糖尿病診療情報提供書作成までの経過と利用上の問題点・改善点.眼紀53:12-15,20023)大野敦:クリニックでできる内科・眼科連携─「日本糖尿病眼学会編:糖尿病眼手帳」を活用しよう.糖尿病診療マスター1:143-149,20034)善本三和子,加藤聡,松本俊:糖尿病眼手帳についてのアンケート調査.眼紀55:275-280,20045)糖尿病眼手帳作成小委員会:船津英陽,福田敏雅,宮川高一ほか:糖尿病眼手帳.眼紀56:242-246,20056)船津英陽:糖尿病眼手帳と眼科内科連携.プラクティス23:301-305,20067)船津英陽,堀貞夫,福田敏雅ほか:糖尿病眼手帳の5年間推移.日眼会誌114:96-104,20108)大野敦,植木彬夫,住友秀孝ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳の利用状況と意識調査.日本糖尿病眼学会誌9:140,20049)大野敦,粂川真理,臼井崇裕ほか:多摩地域の眼科医における発行2年目の糖尿病眼手帳に対する意識調査.日本糖尿病眼学会誌11:76,200610)大野敦,梶邦成,臼井崇裕ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳に対するアンケート調査結果の推移.あたらしい眼科28:97-102,201111)大野敦,粟根尚子,梶明乃ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳に対するアンケート調査結果の推移(第2報).ProgMed34:1657-1663,2014***

緑内障患者点眼アドヒアランス向上を目指した製薬会社の啓発活動への医療従事者の評価

2016年10月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科33(10):1509?1517,2016c緑内障患者点眼アドヒアランス向上を目指した製薬会社の啓発活動への医療従事者の評価河嶋洋一*1菊池順子*2兵頭涼子*3木村泰朗*4*1京都ひとみケアリサーチ*2新お茶の水ファーマシー*3南松山病院眼科*4上野眼科医院EvaluationbyMedicalPersonnelofPharmaceuticalCompanies’EducationalActivities,AimedatImprovingInstillationAdherenceinGlaucomaPatientsYoichiKawashima1),JunkoKikuchi2),RyokoHyodo3)andTairoKimura4)1)KyotoHitomiCareResearch,2)Shin-OchanomizuPharmacy,3)DepartmentofOphthalmology,MinamimatsuyamaHospital,4)UenoEyeClinic緑内障患者の点眼アドヒアランス向上を目的とした試みがいくつか報告されている.そのなかで,製薬会社の啓発活動に対する眼科施設や調剤薬局に在籍する医療従事者からの満足度,活用度を今回,医療従事者への直接面談方式によるアンケート調査で実施した.全国33施設,141名の協力を得た.その結果,緑内障疾患の説明資材や眼球模型などの満足度,活用度が高い反面,患者の正しい点眼方法や毎日の点眼の重要性に関する資材や点眼補助具などに対する満足度,活用度が低いことがわかった.さらに,今後の製薬会社に期待する活動内容として,資材類,実物類からの視点と製品開発からの視点の両面でいくつかの有用な提案を得た.Sometrialsaimedatimprovinginstillationadherenceinglaucomapatientshavebeenreported.Medicalpersonnelatophthalmicfacilitiesanddispensingpharmaciesweresurveyedbyquestionnaire,throughface-to-faceinterview,toinvestigatesatisfactionratingandutilizationofeducationalactivitiesprovidedbythepharmaceuticalcompanies.Cooperatinginthesurveywere141medicalpersonnelfrom33facilitiesthroughoutthecountry.Resultsclearlyindicatedthatsatisfactionratingandutilizationofexplanationmaterialandlikeeyeballmodelsaboutglaucomadiseasearehigh.Ontheotherhand,materialsexplainingtopatientstheproperinstillationmethodandtheimportanceofdailyinstillation,ortheinstillationguidetool,arelow.Thissurveyprovidedusefulsuggestions,fromtheviewpointofbothexplanationmaterialsandproductdevelopment,regardingpharmaceuticalcompanyactivitiesforthefuture.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(10):1509?1517,2016〕Keywords:緑内障,点眼アドヒアランス,アンケート調査,製薬会社,満足度.glaucoma,instillationadherence,questionnaire,pharmaceuticalcompany,satisfactionrating.はじめに慢性疾患である緑内障治療において,正しい点眼の継続性,すなわち患者個々の点眼アドヒアランスの良否が治療効果に及ぼす影響は大きい1?3).一方,自覚症状に乏しく,長期間の点眼治療を必要とする緑内障において良好なアドヒアランスを維持するためには,疾患と点眼治療の重要性への理解を目的とした啓発活動が重要となる.そのなかで,医療従事者から患者への関与,すなわちコーチングとよばれる医療行為がきわめて重要である4?6).このコーチング内容をサポートする手段はいろいろあり,そのうちの一つとして,治療に用いられる緑内障点眼薬を販売する製薬会社の啓発活動,すなわち,疾患説明資材,点眼薬情報,点眼方法提案,点眼容器,点眼補助具などの資材類,実物類の提供がある.しかしながら,これらの製薬会社の活動に対する医療従事者側からの評価に関する体系だった調査はこれまでほとんど報告されていない.そこで,今回,製薬会社からの資材類,実物類の提供活動に対する評価を目的とし,調査者が対象者となる医療従事者に直接面談することでアンケート調査を実施した.本報では,種々の資材類,実物類に対するアンケート調査による評価結果とそこからみえてくる今後の製薬会社に期待される活動について報告する.I対象および方法2015年3?5月の3カ月間に,眼科治療を実施する医療施設に在籍し,事前の了解が得られた医療従事者を対象とした直接面談方式によるアンケート調査を実施した.まず,アンケート調査の目的を説明した後に,製薬会社が提供している実際の資材類,実物類(表1および図1)を供覧し,最後に,表2に示す設問内容のアンケート調査用紙に無記名式,自記式での回答とした.各医療従事者がこれまでに使用経験した資材類,実物類に限っての回答とし,また,職務内容上,回答できない設問に対しては,無記入とした.なお,表1(代表例を図1の写真に示す)に示す資材類,実物類は,各種の緑内障点眼薬を販売している参天製薬株式会社,千寿製薬株式会社,日本アルコン株式会社,ファイザー株式会社と川本産業株式会社(市販の点眼補助具)の5社から提供を受けた.II結果アンケートを実施し,回収しえたのは全国33施設〔内訳は大学病院6施設,総合病院1施設,眼科病院3施設(薬剤科を含む),眼科医院14施設,調剤薬局9施設〕の141名〔内訳は眼科医37名,看護師40名,薬剤師21名,視能訓練士20名,その他(検査,受付などの眼科スタッフ)23名〕であった.1.アンケート調査結果最初に,全18設問のうち,数値での表示可能な14設問に対する回答結果を表3および図2(製薬会社から提供される資材類,実物類に関する設問)に示す.2.資材類,実物類に対するコメントおよび不満足理由つぎに,設問⑪および⑮で回答を得た,製薬会社から提供されている資材類,実物類のどういう点が評価されていないのかの回答を項目別に表4に示す(代表的な内容をそれぞれ3つ記載,括弧内は回答者の職種).3.結果のまとめ製薬会社から提供される資材類,実物類に関する調査結果を中心に簡単に列記する.1.自前の資材類との併用も合わせて,製薬会社からの資材類を約90%の割合で採用している.また,複数製薬会社の同様の資材類からの選択基準としては,「文字数が少なく,文字も大きく,イラストなどが多い内容となっている」ことであった.2.資材類,実物類に対する満足度は,満足しているものもあるが不満足のものも両方あるという評価がもっとも高く,いずれも70%を超えていて,ほぼ不満足であるという評価と合わせると80?87%に達した.3.資材類に対する満足度としては,全体として緑内障疾患説明冊子が約40%ともっとも高い評価であったが,眼科医では眼球模型が34%と一番高い評価であった.一方,不満足であるのは,点眼治療重要性説明冊子,点眼指導法説明冊子,点眼チェックシート類の3つであった.4.実物類に対する満足度としては,点眼容器の使用性,識別性に対して,満足,不満足の両方があり,医療現場のなかで,使いやすい容器と使いにくい容器が混在している現状が示された.また,点眼補助具に対しては不満足が高く,とくに眼科医からの評価が低かった.III考按一般的なデータ調査において,調査者が直接説明し,その場で対象者に回答を記入してもらう方法は,質の高い調査を行うことができる利点があり,さらに対象者に質問内容の理解を促すことで,回答の精度や回答率の向上が期待できる7).一方,今回のような製薬会社の活動に対するアンケート調査において,製薬会社の構成員(調査者)が行うとバイアスがかかる可能性が否定できず,そういう意味からも特定の製薬会社に属さない調査者が行うことで精度の高い結果が得られるものと考える.また,今回は1人の調査者がすべてのアンケート調査を実施したので,調査者の違いによる説明や回答結果のバラツキなどが生じることはなかったと考察する.つぎに,点眼治療効果を高めるためには,疾患の理解,点眼薬治療の理解,正しい毎日の点眼の実行という3つのステップ(点眼アドヒアランスの維持)が必要とされ,さらに正しい毎日の点眼には,識別性(複数の点眼薬を間違えずに点眼),正確性(眼の上に正確に1滴を点眼),継続性(毎日,負担なく点眼)の3項目の理解と実施が重要である8).製薬会社から提供される資材類,実物類はこれらの3つのステップおよび3つの重要項目いずれにも関与し,今回の調査にあたっては,最初に医療従事者にこれらの資材類,実物類の再確認のための説明を行った.今回,緑内障患者の点眼アドヒアランス向上を目的とした製薬会社の啓発活動に対する医療従事者からの評価を調査した.すべての回答者の経験年数で5年以上が87%であり,とくに眼科医,看護師,薬剤師は90%以上であった.さらに約80%以上は10年以上の経験者であり,これまでの豊富な経験を元にした回答が得られたと考える(設問③).点眼アドヒアランス評価に重要な緑内障患者がどれぐらい正確に点眼できているかの設問④に対しては,眼科医,看護師,視能訓練士,その他といった眼科施設内の医療従事者では,56?70%で10人中7?8人以上が正確に点眼できているとの回答であった.一方,おもに調剤薬局に勤務する薬剤師では,半分以下の患者しか正確に点眼していないが約90%と差が出た.また,全体として,10人中1人未満の割合で,いくら点眼指導しても正確に点眼できない患者が存在するとの回答もあった.また,正確に点眼できていない根拠として(設問⑤),もっとも多いのは点眼薬の減少するスピードが予想より早すぎる,あるいは遅すぎるという回答であった.二番目の根拠として,眼科医では眼圧下降効果が期待以下であったというのに対し,看護師,薬剤師などでは患者本人からの申告,すなわち,毎日の点眼を忘れるときがあるとか,多剤のうち何種類か点眼していないなどの声を聞いているというものであった.患者は眼科医よりも看護師などのより身近と感じる医療従事者に毎日の点眼状況を申告していると考察される.さらに,患者からの申告による根拠では同じように高い比率である看護師などの眼科施設内の医療従事者とおもに調剤薬局での医療従事者である薬剤師との間に正確な点眼患者比率に差がみられたことに対しては,薬剤師は眼科医や看護師などと比較して,一人ひとりの患者の点眼状況について常に把握すべく,投薬本数管理や点眼正確度確認などをより細かく観察,判断していると考えられ,このことがより現実的な数字の差に表れたのではないかと考える.以上のような医療従事者および患者によるアドヒアランス評価(表3)をもとに,緑内障患者の点眼アドヒアランス向上への寄与を目的とした製薬会社の活動,すなわち,いろいろな資材類,実物類の提供に対する医療従事者の満足度,活用度を調査した(図2).まず,患者説明,指導用資材の出処については(設問⑥),自前の資材類との併用も合わせて,製薬会社からの資材類を約90%の割合で採用していることがわかった.また,複数の製薬会社からの同様の資材(たとえば,疾患説明資材)のどれを選択するかについては(設問⑦),「文字数が少なく,文字も大きく,イラストなどが多い内容となっている」ことがもっとも高い基準であった.患者やその家族がより理解しやすい,読みやすいというのが一番大事だと考えられていて,今後の新しい資材類作成時の参考になるものと考える.まず,資材類に対する満足度では(設問⑧),ほぼ満足(20%),ほぼ不満足(9%)とともに,満足しているものもあるが不満足のものも両方ある,という評価が71%ともっとも高かった.個別の資材類への評価としては(設問⑨および⑩),全体として緑内障疾患説明冊子が約40%の一番高い評価を得ていたが,眼科医では25%であり,眼球模型が34%ともっとも高い満足度であった.一方,不満足であるのは,点眼治療重要性説明冊子,点眼指導法説明冊子,点眼チェックシート類の3つが高く,いずれも患者点眼アドヒアランスの向上を目的とした「正しい毎日の点眼の実行」に必要な資材類であった.これらの資材類に対する具体的な意見のうち代表的なものを表4(1)?(3)に示すが,患者の点眼実態など患者の現実に即した内容が多く,製薬会社の今後の活動改善に有用な意見と考える.また,緑内障点眼薬使用状況のアンケート調査に関する高橋らの報告9)によると,年齢が若いほど指示どおりの点眼ができていないことも明らかになっているので,スマートフォンなどのアプリケーションソフトの充実が求められるという意見(表4(3)-2)も今後重要と考える.これらのアプリケーションソフトについては,現在2社からの提供があるが,現状ではその有用性に関する報告はなされておらず,今後の調査とさらなる開発が待たれる.さらに,満足度が高い疾患説明冊子や眼球模型に対しても,より満足度,活用度を高めたいという願望を込めた貴重な意見が得られた(表4(4),(5)).つぎに,実物類に対する満足度においても(設問⑫),ほぼ満足(13%),ほぼ不満足(13%)とともに,満足しているものもあるが不満足のものも両方ある,という評価が74%ともっとも高く,資材類への評価と類似していた.ただ,不満足であるという評価が眼科医と比較して看護師,薬剤師,視能訓練士で高く,患者の毎日の点眼がうまく行っていない理由として患者本人からの申告としている結果と関連しているのではないかと考える.満足,不満足両方の評価(設問⑬および⑭)で,点眼容器の使用性,識別性が挙げられているが,点眼補助具に対しては不満足が高く,とくに眼科医からの評価が低かった.今回,調査に用いた点眼補助具には,特定の製薬会社が自社の点眼容器形状のみに使用可能な点眼補助具(ファイザー株式会社からのXal-Ease)を無料提供しているもの(無料で提供する場合,自社の製品のみに使用できることが条件となる)と,市販品という形で,有料で入手できるもの(川本産業株式会社からのらくらく点眼など)の両者が含まれている.実際,医療現場では両者が使用されているが,前者は他の資材類などと同様,正しい点眼治療のための啓発を目的としたものであり,一方,後者は啓発というよりビジネスの要素が大きい.ただ,後者の場合,患者がインターネット情報などを元に購入するというケースよりも医療従事者が正しい点眼治療のための患者啓発を目的として,患者に紹介し,購入してもらっているケースが多いとの医療機関側からの情報を得,啓発活動の一環としての役割が存在するものと考え,今回は両者をまとめて評価した.これらの実物類に対する具体的な意見のうち代表的なものを表4(6),(7)示すが,現在までに報告されている点眼容器の使用性や識別性に関する研究結果10?13)に加え,今後の点眼容器開発に留意すべき重要な意見と考える.また,点眼しやすい容器と点眼しにくい容器など同一実物類で相反する回答を出したのが141名中44名と約30%の混在率評価であった.医療現場のなかで,使いやすい容器と使いにくい容器が混在している現状が示されていると考えるが,今回の調査では別々の設問であったため,もし混在しているかどうかを直接確認する設問であれば,この混在率はもっと高い数字が出ていたと予測する.また,点眼補助具に関しては,このような使いにくい容器を販売している製薬会社自らに新しい点眼補助具の開発を求める意見に繋がっていると考える.さらに,今後の製薬会社の活動を考える観点から,医療従事者が患者やその家族説明に対しての役割分担についてどのような意見を持っているか,設問⑰を設定した.単独あるいはいろいろな職種の組み合わせでの回答をみると,眼科医からその他(受付)までのすべての医療従事者のチーム医療体制が重要であることが改めて明らかとなり,製薬会社にはすべてのメンバーに均質化された情報提供が求められていると考えられる.また,視能訓練士については,種々の検査時に入手可能となる患者個々の運動能力,体位制限,認知力などの点眼アドヒアランス判断のための基本情報の共有化に力を発揮しているという意見が複数の医療従事者からあった.上記の満足度,不満足度を踏まえたうえでの今後の製薬会社への要望として,表5に示すような資材類や実物類が提案されたが(設問⑯),臨床試験段階も含めて世界的な緑内障点眼薬新薬が非常に少ない現状を考えたときに,現状のなかでの改善策としていずれも検討の価値があるのではと考える.最後に,医療従事者が毎日の点眼治療で考えていることを聞いた設問⑱に対しても多くの回答を得たが,そのなかでいくつかの回答をキーワード的にまとめたものをつぎに示す.“1回の説明ですべてを理解できる患者はいない.治療を繰り返すなかで,疾患の今の状態の説明,毎日の点眼重要性の理由説明,正しい点眼方法の理解,指導など,同じことを何度も繰り返すことで,患者のアドヒアランスは確実に上がると思う.患者が同じ質問を繰り返したとしても,それにしっかり答える必要がある.治療に携わる人間がこれをめんどうだと思っては,そこで緑内障の治療は「おしまい」と考える.”製薬会社にはこのような医療従事者の思いに応えるためにも,今後も継続して有用で活発な啓発活動が求められている.文献1)ChenPP:Blindnessinpatientswithtreatedopen-angleglaucoma.Ophthalmology110:726-733,20032)JuzychMS,RandhawaS,ShukairyAetal:Functionalhealthliteracyinpatientswithglaucomainurbansettings.ArchOphthalmol126:718-724,20083)高橋真紀子,内藤知子,溝上志朗ほか:緑内障点眼薬使用状況のアンケート調査“第二報”.あたらしい眼科29:555-561,20124)吉川啓司,松元俊,内藤知子ほか:緑内障セミナー緑内障3分診療を科学する!─アドヒアランスとコーチング─.眼科52:679-694,20105)兵頭涼子,山嵜淳,大音静香:点眼治療アドヒアランス向上を目指した意識調査.あたらしい眼科27:395-399,20106)荒佐夜香,菊池順子:緑内障治療開始時の服薬指導治療継続に向けて.薬局薬学5:76-81,20137)谷川琢海:第5回調査研究方法論?アンケート調査の実施方法?.日放技学誌66:1357-1361,20108)庄司純,河嶋洋一,吉川啓司:点眼薬クリニカルハンドブック第2版.p18-26,金原出版,20159)高橋真紀子,内藤知子,溝上志朗ほか:緑内障点眼薬使用状況のアンケート調査“第一報”.あたらしい眼科28:1166-1171,201010)兵頭涼子,溝上志朗,川崎史朗ほか:高齢者が使いやすい緑内障点眼容器の検討.あたらしい眼科24:371-376,200711)大塚忠史:点眼アドヒアランスの向上を指向した医療用点眼容器の開発.人間生活工学12:32-38,201112)高橋嘉子,井上結美子,柴田久子ほか:緑内障点眼薬識別法とリスク要因,あたらしい眼科29:988-992,201213)東良之:〔医療過誤防止と情報〕色情報による識別性の向上参天製薬の医療用点眼容器ディンプルボトルの場合.医薬品情報学6:227-230,2005〔別刷請求先〕河嶋洋一:〒610-1146京都市西京区大原野西境谷町3-8-54京都ひとみケアリサーチReprintrequests:YoichiKawashima,Ph.D.,KyotoHitomiCareResearch,3-8-54OharanoNishisakaidanicho,Nishikyo-ku,Kyoto610-1146,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY1510あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(124)表1製薬会社提供の資材類,実物類①疾患の理解のコーチング:緑内障疾患に関する冊子,緑内障患者の見え方シミュレーションツール,眼球模型,眼球断面図・パネル類②点眼薬治療の理解のコーチング:点眼薬の種類・効果・副作用に関する冊子,点眼治療の重要性に関する冊子③正しい毎日の点眼の実行のコーチング:(ⅰ)識別性:点眼容器・キャップの形状・色調,ラベルの表示・色調,点眼薬識別シール,点眼チェックシート(ⅱ)正確性:正しい点眼方法指導冊子(点眼方法実写DVDを含む),点眼しやすい点眼容器形状,点眼補助具(ⅲ)継続性:毎日の点眼の重要性説明冊子,点眼継続に負担のない点眼容器形状,点眼補助具,点眼チェックシート,点眼お知らせサイト表2アンケート設問内容①職種を教えて下さい.1.眼科医,2.看護師,3.薬剤師,4.視能訓練士,5.その他()②所属機関を教えて下さい.1.大学病院,2.総合病院,3.眼科病院,4.眼科医院,5.調剤薬局③今の職種での経験年数を教えて下さい.1.3年未満,2.3?5年未満,3.5?10年未満,4.10年以上④緑内障患者さんのどれぐらいが,毎日ちゃんと決められた通りに点眼していると思われますか?1.ほぼ全員,2.10人中7?8人,3.半分ぐらい,4.10人中2?3人,5.それ以下⑤ちゃんと点眼していないことは,どういうことで感じられていますか?複数回答可です.1.点眼液の減少のスピード(速すぎる,遅すぎる),2.効果の弱さ,3.副作用発現の多さ(眼瞼周りの変化など),4.その他()⑥患者さんへの説明,指導には,どのような資材を使用されていますか?1.製薬会社からの資材,2.自前の資材,3.両方の資材⑦製薬会社からの資材を使われている場合,複数会社からの種々の資材の中で一つを選択される基準としては,どういう点を一番重視されていますか?1.説明しやすい内容や順序となっている,2.文字数が少なく,文字も大きく,イラストなどが多い内容となっている,3.最新の情報,知見も含め,レベルの高い内容となっている,4.その他()⑧現状の製薬会社からの資材で満足されていますか?1.満足している,2.満足していない,3.満足と不満足の両方が存在⑨満足している資材としては,どういう内容のものですか?複数回答可です.1.疾患説明冊子,2.点眼治療薬説明冊子,3.点眼治療重要性説明冊子,4.点眼指導法説明冊子,5.眼球模型や眼球断面図・パネルなどの資材,6.点眼チェックシートや点眼薬識別シールなどの資材,7.その他()⑩満足していない資材としては,どういう内容のものですか?複数回答可です.1.疾患説明冊子,2.点眼治療薬説明冊子,3.点眼治療重要性説明冊子,4.点眼指導法説明冊子,5.眼球模型や眼球断面図・パネルなどの資材,6.点眼チェックシートや点眼薬識別シールなどの資材,7.その他()⑪満足していない理由を教えて下さい.⑫製薬会社が提供しています実物(点眼容器や点眼補助具など)で満足されていますか?1.満足している,2.満足していない,3.満足と不満足の両方が存在⑬満足している実物としては,どういう内容のものですか?複数回答可です.1.点眼しやすい容器,2.識別しやすい容器やラベル表示,3.点眼補助具,4.その他()⑭満足していない実物としては,どういう内容のものですか?複数回答可です.1.点眼しにくい容器,2.識別しにくい容器やラベル表示,3.点眼補助具,4.その他()⑮満足度を上げるために,製薬会社に望まれるものとその理由を教えて下さい.(対象となる実物名:)(その理由:)⑯今後,製薬会社に新規に開発,提供して欲しい資材や実物はありますか?1.ある(),2.ない⑰患者さんやそのご家族への下記の「疾患と治療法」初めの6項目毎の説明は,どういう職種のメンバーが行うのが適切あるいは効果的だとお考えですか?次の番号からお選び下さい.複数回答可です.1.眼科医,2.看護師,3.薬剤師,4.視能訓練士,5.その他疾患と治療法(),効果と副作用(),用法・用量(),点眼方法(),禁忌,使用上の注意(),医療コスト()⑱最後に,先生が患者さんの毎日の点眼治療について,日頃お考えのご意見やご提言がありましたら,教えて頂けませんでしょうか.図1資材類および実物類の代表例の写真(125)あたらしい眼科Vol.33,No.10,201615111512あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(126)表3アンケート調査結果(1)設問①および②職種および所属機関1.大学病院2.総合病院3.眼科病院4.眼科医院5.調剤薬局全体6施設17名1施設1名3施設17名14施設87名9施設19名眼科医6施設10名0施設0名3施設8名14施設19名0施設0名看護師1施設1名1施設1名1施設6名5施設32名0施設0名薬剤師0施設0名0施設0名1施設2名0施設0名9施設19名視能訓練士1施設5名0施設0名0施設0名5施設15名0施設0名その他1施設1名0施設0名1施設1名5施設21名0施設0名設問③経験年数1.3年未満2.3?5年未満3.5?10年未満4.10年以上全体10名(7%)9名(6%)25名(18%)97名(69%)眼科医0名(0%)1名(3%)3名(8%)33名(89%)看護師2名(5%)2名(5%)4名(10%)32名(80%)薬剤師0名(0%)0名(0%)5名(24%)16名(76%)視能訓練士7名(35%)2名(10%)5名(25%)6名(30%)その他1名(4%)4名(17%)8名(35%)10名(43%)設問④毎日の正確な点眼患者比率(10人中)1.ほぼ全員2.7?8人3.約半分4.2?3人5.それ以下全体4名(3%)69名(49%)57名(40%)11名(8%)0名(0%)眼科医1名(3%)20名(54%)14名(38%)2名(5%)0名(0%)看護師1名(3%)21名(53%)15名(38%)3名(11%)0名(0%)薬剤師0名(0%)3名(14%)13名(62%)5名(24%)0名(0%)視能訓練士0名(0%)14名(70%)6名(30%)0名(0%)0名(0%)その他2名(9%)11名(48%)9名(39%)1名(4%)0名(0%)設問⑤不正確な点眼根拠(複数回答可)1.減少スピード2.効果弱い3.副作用多い4.患者申告など全体106名(48%)30名(14%)22名(10%)61名(28%)眼科医31名(46%)16名(24%)8名(12%)12名(18%)看護師27名(44%)8名(13%)5名(8%)21名(34%)薬剤師19名(44%)4名(9%)8名(19%)12名(28%)視能訓練士8名(38%)1名(5%)1名(5%)11名(52%)その他21名(78%)1名(4%)0名(0%)5名(19%)設問⑰単独あるいは組み合わせによる患者説明(複数回答可)1位2位3位疾患・治療法眼科医眼科医+看護師眼科医+薬剤師効果・副作用眼科医+薬剤師眼科医眼科医+看護師+薬剤師用法・用量眼科医+薬剤師薬剤師眼科医+看護師+薬剤師点眼方法看護師+薬剤師薬剤師看護師眼科医+看護師+薬剤師禁忌・注意点薬剤師眼科医+薬剤師眼科医+看護師+薬剤師医療コスト薬剤師その他(眼科スタッフ)眼科医+薬剤師(127)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161513図2アンケート調査結果(2)(グラフ中の数字は回答人数を示す)1514あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(128)表4資材類,実物類に対するコメントおよび不満足理由(1)点眼治療重要性説明冊子1.薬理作用の異なる多剤併用時の科学的根拠の説明が不十分(眼科医)2.いくら重要性を説明しても脱落例が多いが,どれ位の眼圧を保っていればいいかとか,今自分がどれ位の位置にいるとか,目安になる情報が入っていれば良いのだが(薬剤師)3.1滴滴下でOKとしているが,1滴で十分である科学的根拠(薬理学的,薬動力学的)が説明されていない(薬剤師)(2)点眼指導法説明冊子1.説明冊子だけでは指導しきれないので,実際に目の前で点眼してみせる(薬剤師,看護師)2.視弱障害の程度にあった説明が必要で,たとえば軽症例と重症例では説明内容も変えたほうが良い(眼科医)3.高齢の患者や手指・首の動きの悪い患者が点眼する説明内容になっていない(薬剤師,看護師)(3)点眼チェックシート1.チェックシートは単独使用のものが多いが,点眼忘れが多いのは多剤併用者であるため,現行のものは使いにくい(看護師,薬剤師)2.アドヒアランスの悪い患者は若い忙しい世代が多いため,もっとスマートフォンなどのアプリケーションソフトを充実させたほうが良い(眼科医)3.実際の患者の要求に沿っているか,その有用性に疑問(眼科医)(4)疾患説明冊子1.機序やしくみの説明が多く,患者の将来困るであろうことのイメージがわきにくい(眼科医)2.「自分は大丈夫」と簡単に考える患者には,冊子だけでは十分に伝えられないが,結局は人と人で伝える部分が大きく,眼科スタッフの頑張る部分と思う(眼科スタッフ)3.患者によって疾患,自覚が違い,患者によっては余分な不安を誘発させたり,逆に安易にとらえられてしまうことがあり,使用しづらい(眼科スタッフ)(5)眼球模型1.現状のものは,緑内障の説明には使いづらく,病態に特化した模型へのアレンジを望む(眼科医)2.OCT(opticalcoherencetomograph,光干渉断層計)による診断結果と連動できるようなアレンジがあれば(眼科医)3.現状のものは壊れやすいから,もっと頑丈なものを(眼科医)(6)点眼容器の使用性・識別性1.容器の硬さに差が大きく,押す力によっては2?3滴出てしまう(薬剤師,看護師)2.使用性を向上させるために容器形状を工夫しようとすると,形状が似てきて,会社間での識別性が悪くなる(これまでは,同一会社製品間での問題であったが)(眼科医,薬剤師,看護師)3.ミニ点眼薬(使い切りユニットドーズタイプ点眼薬)について,最近1日1?2回点眼の緑内障ミニ点眼薬がいくつか販売されているが,ドライアイミニ点眼薬(1日5?6回点眼)との識別性が悪く,患者の過剰点眼を危惧する(眼科医,薬剤師)(7)点眼補助具1.現状のものは真上からの点眼でなければ,うまく眼の上に点眼できない.したがって,補助具を使って点眼できる人は,補助具なしでも点眼できる(薬剤師,看護師)2.患者の使用継続性が悪いのが問題(眼科医,看護師,薬剤師)3.点眼しにくい容器を出している製薬会社自らが,新しい補助具の開発,販売をすべきである(眼科医,薬剤師)(129)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161515表5今後,製薬会社に新規に提供して欲しい資材類,実物類(代表例)(1)資材類,実物類からの視点1.今回明らかになった不満足点からの改良への着手(毎日の正確な点眼支援)2.製薬会社自らによる点眼補助具の開発(操作容易,真上からの点眼不要)3.押す力に関係なく,1滴だけ点眼できる容器(多剤点眼時には,とくに必要)(2)製品開発からの視点1.配合剤点眼薬の充実【PG(プロスタグランジン関連薬)+CAI(炭酸脱水酵素阻害薬),PG+CAI+b(b遮断薬)など】2.眼内(前房,後房内)埋め込み型などのDDS(drugdeliverysystem,薬物送達システム)製剤(毎回の点眼行為を必要としない究極のアドヒアランス)3.医療従事者や患者の安心度の高いオーソライズド・ジェネリック(先発メーカーとの契約のもと,添加剤の種類・量,製造方法などが同じ)の開発1516あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(130)(131)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161517

眼科単科病院を受診する糖尿病患者の網膜症に対する説明

2016年4月30日 土曜日

《原著》あたらしい眼科33(4):613〜618,2016©眼科単科病院を受診する糖尿病患者の網膜症に対する説明吉崎美香*1安田万佐子*1大須賀敦子*1井出明美*1荒井桂子*1大音清香*2井上賢治*2堀貞夫*1*1医療法人社団済安堂西葛西・井上眼科病院*2医療法人社団済安堂井上眼科病院Nurses’ExplanationtoDiabeticPatientsIsEffectiveinEducationRegardingSeverityStageofDiabeticRetinopathyMikaYoshizaki1),MasakoYasuda1),AtsukoOosuga1),AkemiIde,KeikoArai1),KiyokaOohne2),KenjiInoue2)andSadaoHori1)1)NishikasaiInouyeEyeHospital,2)InoueEyeHospital目的:糖尿病眼手帳(以下,眼手帳)を活用し,看護師が糖尿病網膜症(以下,網膜症)病期の説明を行うことにより,患者の網膜症に対する知識を高め,定期受診を促す効果を調べること.対象および方法:平成26年6~10月に当院を受診し同意の得られた糖尿病患者で,医師が記載した眼手帳をもとに看護師が網膜症について説明した946名と,再診時(説明後1~4カ月後)に看護師により再度アンケートを実施した199名に対して聞き取り調査を行い,医師による眼底検査で診断された網膜症病期と比較した.対象者は外来を受診した糖尿病患者を無作為に抽出し,医師が記載した糖尿病眼手帳を基に同意の得られた患者とした.井上眼科病院倫理委員会の承認を得て実施した.結果:眼手帳説明時の調査で,当院の患者は,罹病期間は6年以上が77.3%を占め,5年未満の患者は22.2%で長期間罹病患者が多かった.手帳に関して内科用手帳(連携手帳)に比べ眼手帳を知っていると回答した患者は19%と少なかった.自分の網膜症病期を知っていると回答した患者は20.8%で,医師の所見と一致したのは18%であった.説明後再診時の調査が行えた199名のうち,自分の網膜症病期を覚えていた患者は53.7%,医師の所見と一致した患者は38.2%であった.このうち,眼手帳説明時に自分の病期を知っていたのは31名,再診時に病期を覚えていたのは80.6%,医師の所見と一致したのは71.0%,説明時に自分の病期を知らなかった168名のうち,再診時に覚えていたのは48.8%であった.医師の所見と一致したのは33.3%であった.また,自分の患者が網膜症病期を理解していると推測している医師は少なかった.結論:看護師による眼手帳を用いた網膜症病期の説明は,患者に自分の病期に対する関心をもたせる効果があることが示唆された.しかし,一度の説明では理解がむずかしいこともわかった.今後は再診時の調査を行い,再度の説明が必要になると思われた.Purpose:Toevaluatetheeffectofthediabeticeyenotebook(DEN)indeepeningdiabeticpatients’knowledgeofdiabeticretinopathy(DR)andencouragingthemtoreceiveperiodicophthalmicexaminations.SubjectsandMethods:Aninitialquestionnairesurveybynurseswasconductedon946consecutivediabeticpatientswhovisitedourhospitalbetweenJuneandSeptember2014.SeveritystageofDRandophthalmologicalinformation,includingvisualacuityandintraocularpressure,wereconcurrentlydescribedintheDENbyophthalmologists,andnursesexplainedtheseverityofDRineachpatient.After1-4months,asecondsurveywasperformedon199patientswhohadundergonetheinitialsurvey.Theywereaskedtheirseveritystageandwerecomparedtothosediagnosedbyophthalmologists.Results:DRdurationexceeded6yearsin77.3%ofpatients;20.8%ofpatientsansweredthattheyknewtheirownstage,and18.0%agreedwiththestagediagnosedbyophthalmologistsatthetimeofinitialsurvey.Aftertheexplanationbynurses,53.7%ofpatientsansweredthattheyrememberedtheseveritystageatthetimeofsecondsurvey,andtheansweragreedwiththatdiagnosedbyophthalmologistsin38.2%.TheexplanationbynurseswaseffectiveforthepatientsinunderstandingtheirDRstage,thoughitwasnotsatisfactoryenoughforidealpatienteducation.Conclusion:TheexplanationofDRandseveritystagewaseffectiveinenhancingpatients’interestintheirownDR.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(4):613〜618,2016〕Keywords:糖尿病網膜症,糖尿病眼手帳,アンケート調査,病期説明,患者教育.diabeticretinopathy,diabeticeyenotebook(DEN),questionnairesurvey,explanation,patienteducation.はじめに糖尿病網膜症(以下,網膜症)の発症・進展予防には,内科・眼科の連携,患者自身の病識と定期的な受診が必要である.地域密着型眼科単科の中核病院である西葛西・井上眼科病院(以下,当院)では,糖尿病の患者が多く,緊急を要する場合,内科でのコントロール状況が把握できない状況で手術を行う場合がある.このような状況のなか,眼底検査をして初めて糖尿病と判明する患者や,術前検査で糖尿病が見つかる患者もおり,治療に当たり予期しない全身合併症を発症する場合がある.そこでコメディカルがチーム医療に貢献する準備として,前回,筆者らは当院を受診する糖尿病患者の実態調査を行った1).その結果,①眼合併症の詳しい知識をもつ患者は少なく,自分の網膜症病期を知っていると回答した患者は15%と少なかった.②糖尿病手帳を持っていて内科受診時に利用していた人は42%,眼科受診時に利用していた人は17%と少なかった.③手帳を利用していて自分の網膜症病期を正確に知っていたのは,知っていると回答した患者の30%(全体の約5%)ということがわかった.この結果を踏まえて,今回,医師が記載した糖尿病眼手帳(以下,眼手帳)をもとに,看護師が患者に網膜症病期の説明を行い,その後の再受診時に説明した内容を覚えているか,アンケート調査をしたので報告する.I対象および方法対象:平成26年6~10月に当院を受診し,医師が記載した眼手帳をもとに看護師が網膜症について説明した946名(男性:542名,女性:404名)で,年齢は65.9歳±11.4歳(平均年齢±標準偏差)であった.このうち199名に対し,再受診時(説明後1~4カ月)に看護師により再度アンケート調査をした.また,当院の医師10名に対し,眼手帳配布状況について調査した.調査項目:医師が記載した眼手帳をもとに看護師が説明を行ったときのアンケート(10項目)(表1)と再診時に行ったアンケート(5項目)(表2)の回答を患者から聞き取り,回答欄に看護師が記入した.また,当院の医師10名に対して6項目のアンケート(表3)を行った.さらに,医師による眼底検査で診断された網膜症病期と患者のアンケート調査の結果を比較したII結果1.眼手帳説明時のアンケート調査(表4)罹病期間は6年以上が77.3%,5年未満は22.2%で,長期間罹病患者が多かった.自分が糖尿病であることを認識していないと思われる患者も含まれていた.糖尿病罹患後眼科受診までの期間は1年以内がもっとも多かったが,10年以上を過ぎて初受診する患者も15%にみられた.眼科を受診して糖尿病を診断された患者が6.9%含まれていた.糖尿病と診断されてから眼科を受診し,今でも継続して受診している患者は90.4%であった.内科の糖尿病治療を中断したことのある患者は12.7%で,大部分は継続して治療を受けていた.眼手帳を知っていたのは19.0%,糖尿病連携手帳(以下,連携手帳:内科用)を知っていたのは46.1%,連携手帳を持っていたのは44.3%,このうち診察時に医師に見せていたのは75.2%(全体の33.3%)であった.また,自分の網膜症病期を知っていたのは20.8%,医師から自分の病期の説明を聞いたことがあるのは23.3%であった.2.説明後再診時の調査(表5)帰宅後眼手帳を見た患者は77.3%,自分の網膜症病期を理解できたのは69.8%,自分の病期を覚えていたのは53.7%,今後定期的に眼科受診をすると答えたのは99.0%であった.説明を受けた後の感想では,自分の病期に対する理解と今後の通院に対する積極性がみられた.3.当院の医師に対する質問(表6)眼手帳・連携手帳を活用しているのは9名(90.0%)で,全員に渡しているのは1名だけであった.網膜症が出たときに渡す場合が多く,眼手帳を必ず記入しているのは7人だった.自分の患者が網膜症病期を理解していると推測している医師は少なかった.自分の患者が網膜症病期を理解していないと思う理由として,①人によるが,糖尿病患者は糖尿病の病態をしっかりと理解できていない方が多い.②定期的に受診に来る患者が少ない.③自ら再来時期を指定してきてしかも○年後という患者もいる.という意見があった.4.網膜症病期:患者の申告と眼科医の診断との比較(表7)眼手帳説明時の調査で,自分の網膜症病期を知っていると回答した患者は946人中197人(20.8%)で,医師の眼底所見と一致したのは173人(18%)であった.説明後再診時の調査が行えた199人では,自分の網膜症病期を覚えていると回答した患者は199人中107人(53.7%)で,医師の所見と一致したのは78人(38.2%)であった.手帳説明時に自分の病期を知っていると回答したのは再調査の行えた199人中31人,そのなかで再診時に病期を覚えていると回答したのは25人(80.6%),さらに医師の所見と一致したのは22人(71.0%)であった.説明時に自分の病期を知らなかった168人のうち,再診時に覚えていたのは82人(48.8%),さらに医師の所見と一致したのは56人(33.3%)であった.III考按眼手帳と連携手帳の併用により,患者にも参加してもらう内科・眼科連携が可能であり,それが網膜症の管理につながる.患者に糖尿病眼合併症の状態や治療内容を正しく理解してもらうための十分な情報提供をめざすならば,連携手帳に眼手帳を併用して経過観察すべきである7).といわれている.1.眼手帳説明時のアンケート調査今回の調査で,糖尿病罹病期間は6年以上が77.3%を占め,5年未満の患者は22.2%で長期間罹病患者が多かったが,内科用の手帳を知っていた患者437名(46.2%)に対して,眼手帳を知っていた患者は179名(18.9%)と少なかった.また,手帳を持っていた患者も半数以下と少なかった.網膜症病期の説明を聞いたことがある患者は,23.3%と少なかった.このことからも患者が眼手帳や連携手帳を利用する率は少なく病期を正しく理解できていなかったのではないかと推測される.2.説明後再診時の調査手帳説明後,99%の患者が,今後定期的に眼科を通院しようと思うと回答したことから,定期的な眼科受診の必要性は理解されたと思われ,放置中断を防止するきっかけになるのではないかと思われる.3.当院の医師に対する質問当院の医師に対する調査で,患者の眼手帳を渡しているかの調査で,8割の医師がA1以上になったときに渡すと回答し,また,自分の患者は網膜症病期を理解していないと思っている医師が7割で,医師に対する調査で理解していないと思う理由として,①人によるが,糖尿病患者は糖尿病の病態をしっかりと理解できていない方が多い.②定期的に受診に来る患者が少ない.③自ら再来時期を指定してきて,しかも○年後という患者もいる.という意見であった.患者に糖尿病眼合併症の状態や治療内容を正しく理解してもらうための十分な情報提供をめざすならば,連携手帳に眼手帳を併用してフォローすべきであるという既報の結論からすると,当院では実施できていなかったことから,正しい知識をもっていた患者が少なかったのではないかと推測される.4.網膜症病期:患者の申告と眼科医の診断との比較眼手帳を活用した網膜症病期の説明後,医師の所見と患者の回答した網膜症病期が一致したのは39.1%,最初自分の網膜症病期を知らないと回答した患者の48.8%が自分の病期を覚えていると回答し,医師の所見と一致した患者は56名,網膜症病期を知らないと回答した患者の33.3%が医師の所見と一致した結果であった.手帳を用いて説明を行ったことにより,自分の病期を知らないと回答した患者の33.3%が医師の所見と一致した病期を覚えていたことから,手帳を用いた説明は患者に関心をもたせるきっかけになったと思われる.今回手帳を配布するに当たり,眼手帳にカバーを付けて配布した.内科用の連携手帳を持っている患者には,眼手帳と内科用の手帳をカバーに挟んで合体させ,これを内科・眼科両方の医師に見せるように指導を行った.このようにして配布したことにより,連携手帳を持っていなかった患者のなかには,眼手帳を内科医に見せたことにより,内科医で連携手帳をもらった患者もいた.眼手帳に内科医がHbA1C値を記入してくれていた患者もみられた.このことからも眼手帳が内科・眼科の連携につながるきっかけになっていると思われた.以上の結果より,眼手帳と連携手帳の併用により,患者にも参加してもらう内科・眼科連携が可能であり,それが網膜症の管理につながると考えられる.患者に糖尿病眼合併症の状態や治療内容を正しく理解してもらうための十分な情報提供をめざすならば,連携手帳に眼手帳を併用してフォローすべきであるという既報の結論と一致する7).網膜症を診察していくうえで,内科医とは常に連絡が必要であり,連携手帳・眼手帳を持つ患者については眼科の診察結果を記録する.なかでもとくに密接な連携を必要とするのは,2型糖尿病の初診時,入院して血糖のコントロールをつけるとき,腎症悪化時,眼科手術時である.2型糖尿病の初診時は眼底検査が必要である.罹病期間が特定できないことも多く,内科初診時すでに増殖網膜症となっている場合も珍しくない.当院の調査でも,視機能低下の自覚があり眼科を受診して糖尿病と診断された患者が6.9%いた1).また,すでに重症単純網膜症や増殖前網膜症をきたしている場合は,血糖の急速な正常化により,網膜症の重篤な進行をきたすことがあるといわれている8).眼科医が眼手帳に記入し,内科医に見せてもらうことで,内科医での血糖コントロール時の指標になると思われ,正確に眼所見が内科医に伝わり連携をとれると考える.IV結論看護師による糖尿病眼手帳を用いた網膜症病期の説明は,患者教育に効果があることが示唆された.また,定期的な眼科受診の必要性も理解できた.しかし,一度の説明ではなかなか理解されないこともわかった.今回の調査は,まだ途中経過なので,今後病期説明後再診時の調査を長期にわたり繰り返し行い,再度の説明により患者教育の達成をめざしたい.本稿の要旨は第20回日本糖尿病眼学会にて発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)吉崎美香,安田万佐子,大須賀敦子ほか:眼科単科病院を受診する糖尿病患者実態調査.あたらしい眼科32:269-273,20152)若江美千子,福島夕子,大塚博美ほか:眼科外来に通院する糖尿病患者の認識調査.眼紀51:302-307,20003)菅原岳史,金子能人:岩手糖尿病合併症研究会のトライアル2.眼紀55:197-201,20044)小林厚子,岡部順子,鈴木久美子:内科糖尿病外来患者の眼科受診実態調査.日本糖尿病眼学会誌8:83-85,20035)船津英陽,宮川高一,福田敏雄ほか:糖尿病眼手帳.眼紀56:242-246,20056)中泉知子,善本三和子,加藤聡:患者の意識改革を目指す糖尿病教育の方向性について─患者アンケート調査から─.あたらしい眼科28:113-117,20117)大野敦:糖尿病眼手帳を活用した糖尿病網膜症の管理.日本糖尿病眼学会誌19:32-36,20148)有馬美香,松原央:糖尿病網膜症の管理における病診連携.眼紀51:283-286,2000〔別刷請求先〕吉崎美香:〒134-0088東京都江戸川区西葛西3丁目12-14西葛西・井上眼科病院Reprintrequests:MikaYoshizaki,NishikasaiInouyeEyeHospital,3-12-14Nishikasai,Edogawa-ku,Tokyo134-0088,JAPAN0910-1810/16/¥100/頁/JCOPY(131)613表1糖尿病眼手帳説明時アンケート調査調査日年月日NO.()ID氏名年齢()男・女担当医()1.糖尿病罹病期間2.糖尿病罹患後眼科受診したか3.罹病後眼科受診までの期間4.内科治療を1年以上放置したことがあるか5.糖尿病眼手帳を知っていたか6.糖尿病手帳(内科用)を知っていたか7.糖尿病手帳は持っていたか8.「7」で手帳を持っていると回答した方は,診察時に見せていたか9.自分の網膜症病期を知っていたか10.医師から自分の網膜症の病期の説明を聞いたか表2糖尿病眼手帳を説明し,次回受診後のアンケート調査調査日年月日手帳説明時からアンケート調査までの期間(週・カ月)医師の次回診察の指示は(週・カ月)指示通りに来院しているか1.帰宅後眼手帳を見たか2.自分の網膜症病期が理解できたか3.自分の網膜症病期を覚えていたか4.説明を受けて(手帳をもらって)どのように感じたか(複数回答)5.今後定期的に眼科を受診するか表3医師に対するアンケート調査1.糖尿病手帳・糖尿病眼手帳を活用しているか2.眼手帳を渡しているか3.2.で渡すと回答された方は,どのような患者に渡すか4.どのような時に渡していますか?5.眼手帳を記入するか6.自分の患者が網膜症病期を理解しているか614あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016(132)表4眼手帳説明時の調査罹病期間人(%)21年以上26127.611~20年26227.76~10年208222~5年15616.51年以内545.7わからない40.4糖尿病ではない10.1はい(人)(%)いいえ(人)(%)2糖尿病罹患後に眼科受診・治療したか現在も通院中85590.4過去に自己中断歴があるか21525.164074.94内科放置したことがあるか1258215糖尿病眼手帳を知っていたか17919767816糖尿病手帳(内科)を知っていたか43746.150953.87糖尿病手帳を持っていたか41944.352755.78診察時に見せていたか31575.210424.89自分の網膜症病期を知っていたか19720.874979.110医師から自分の病期の説明をきいたか22023.372676.7罹病後眼科受診までの期間人(%)1年以内34538.22~5年17919.86~10年位12013.311~20年位13515覚えていない60.6眼科受診してわかった626.9糖尿病かどうかまだわからない161.8糖尿病ではない242.7(133)あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016615表5説明後再診時の調査はい(人)(%)いいえ(人)(%)1帰宅後眼手帳を見たか15477.34522.62自分の網膜症病期が理解できたか13769.86231.13自分の網膜症病期を覚えているか10753.79246.24今後定期的に眼科受診するか1979920.1手帳の説明を受けてどのように感じたか(複数回答)人眼の状況が把握でき良かった111詳しいことがわかり不安になった28血糖のコントロールを頑張ろう86内科・眼科をきちんと通院しよう113表6当院の医師に対する質問はい(人)(%)いいえ(人)(%)1糖尿病眼手帳・連携手帳を活用しているか10100002糖尿病眼手帳を渡しているか9901103眼手帳を記入するか101004自分の患者が網膜症病期を理解しているか330770どのような時に眼手帳を渡すか人%初診時110網膜症発症時660患者にいわれた時330どのような時に手帳記入するか(複数回答あり)人%毎回記入763.6患者から提示された時327.2内科医に伝えたいとき10.9表7網膜症病期:患者の申告と眼科医の診断比較再診時に病期を覚えていた人医師の診断と一致した人人(%)人(%)説明時に自分の病期を知っている31人2580.62271説明時に自分の病期を知らない168人8248.85633.3計199人10753.87839.2616あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016(134)(135)あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016617618あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016(136)