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遺伝性白内障ICR/fラットの水晶体混濁におけるインターロイキン18およびDNA分解酵素の関与

2009年5月31日 日曜日

———————————————————————-Page1(95)6750910-1810/09/\100/頁/JCLS28回日本眼薬理学会原著》あたらしい眼科26(5):675680,2009cはじめに白内障とは水晶体が白く混濁するすべての現象をいい,現在まで数多くの研究がなされている1).白内障は全世界の失明の約40%を占めており,罹患率は加齢に伴って増加し,80歳以上の高齢者ではほとんどが何らかの形で白内障の症状を示すことが報告されている2).この白内障のおもな発症〔別刷請求先〕伊藤吉將:〒577-8502東大阪市小若江3-4-1近畿大学薬学部製剤学研究室Reprintrequests:YoshimasaIto,Ph.D.,SchoolofPharmacy,KindaiUniversity,3-4-1Kowakae,Higashi-Osaka,Osaka577-8502,JAPAN遺伝性白内障ICR/fラットの水晶体混濁におけるインターロイキン18およびDNA分解酵素の関与長井紀章*1伊藤吉將*1,2竹内典子*3臼井茂之*4平野和行*4*1近畿大学薬学部製剤学研究室*2同薬学総合研究所*3名城大学薬学部生理学研究室*4岐阜薬科大学薬剤学研究室InvolvementofInterleukin18andDNaseII-likeAcidDNaseinCataractFormationinICR/fRatNoriakiNagai1),YoshimasaIto1,2),NorikoTakeuchi3),ShigeyukiUsui4)andKazuyukiHirano4)1)SchoolofPharmacy,2)PharmaceutialResearchandTechnologyInstitute,KindaiUniversity,3)SectionofBiochemistry,FacultyofPharmacy,MeijoUniversity,4)LaboratoryofPharmaceutics,GifuPharmaceuticalUniversityIharacataractrat(ICR/fラット)はヒト加齢白内障に類似した水晶体混濁を示す遺伝性白内障モデル動物である.本研究ではこのICR/fラット白内障発症機構を明らかにするために,近年白内障発症の要因として報告されたインターロイキン18(IL-18)およびDNA分解酵素(DNaseII-likeacidDNase:DLAD)のICR/fラット水晶体混濁における関与について検討した.2263日齢の間ではICR/fラット水晶体は透明性を維持し,混濁は認められなかった.しかしながら,77日齢より水晶体混濁が開始し,91日齢では成熟白内障に達した.水晶体混濁開始直前の63日齢および成熟白内障時の91日齢では22日齢のICR/fラット水晶体と比較しIL-18活性化関連遺伝子(IL-18,IL-18Rおよびcaspase-1)および成熟型IL-18蛋白発現量の上昇が認められた.一方,DLAD遺伝子発現量は,いずれの日齢においても変化はみられず,ICR/fラット水晶体核部への未切断ゲノムDNA残存も認められなかった.これらの結果はIL-18がICR/fラット水晶体混濁に関与する可能性を強く示唆した.また,ICR/fラット水晶体ではDNA分解酵素の低下や核部へのゲノムDNA残存が起こらないことを明らかとした.TheIharacataractrat(ICR/frat)isarecessivehereditarycataractstrainwhosemechanismofcataractdevelopmentissimilartothatofsenilecataractsinhuman.Inthisstudy,wedemonstratedtheinvolvementofinterleukin18(IL-18),whichleadstointerferon-gamma,andDNaseII-likeacidDNase(alsocalledDNaseIIb,DLAD)inthelensesofICR/fratsduringcataractdevelopment.AlthoughthelensesofICR/fratsweretranspar-entatage22to63days,lensopacicationstartedat77days,thelensesof91-day-oldICR/fratsbecomingentire-lyopaque.ThegeneexpressionlevelscausingIL-18activation(IL-18,IL-18receptorandcaspase-1)increasedat63daysofage;theexpressionofmatureIL-18proteinintheICR/fratlensesalsoincreaseswithage.Ontheoth-erhand,theDLADmRNAexpressionlevelsdidnotchangewithage,whileundigestedDNAwasdegradedinthelensnucleiof91-day-oldICR/frats.TheseresultssuggestthatincreasedIL-18activityisrelatedtocataractdevelopment.Inaddition,DLADdysfunctionandaccumulationofundigestedDNAwerenotobservedincataractdevelopmentinICR/frats.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(5):675680,2009〕Keywords:白内障,ICR/fラット,インターロイキン18,DNA分解酵素,未切断DNA.cataract,Iharacataractrat,interleukin18,DNaseII-likeacidDNase,undigestedDNA.———————————————————————-Page2676あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009(96)機構としては,紫外線などにより誘導される酸化的ストレスが水晶体上皮細胞に傷害を与えることで細胞内恒常性が破綻をきたし水晶体中カルシウムイオン(Ca2+)量の上昇を導くことが起因とされている3,4).さらに,この水晶体中Ca2+量上昇によりCa2+依存性蛋白分解酵素であるカルパインが活性化され,これによりクリスタリン蛋白質が分解・凝集され水晶体が白く混濁するという報告がなされている3,4).また,近年ではDNA分解酵素の欠乏が水晶体核部へのゲノムDNA残存をひき起こし,このゲノムDNA残存が水晶体混濁につながるといった機構が注目されている5).筆者らはこれまで急速に水晶体混濁がみられる遺伝性白内障動物UPLラットを用い,水晶体混濁以前に強力なインターフェロン-gの産生誘導,ナチュラルキラー細胞活性化,誘導型一酸化窒素合成酵素の誘導能などの生理活性を有することが知られているインターロイキン18(IL-18)が発現すること6)や,水晶体混濁時に核部でのゲノムDNA残存が認められることを明らかとしてきた7).このUPLラットは寿命,体重曲線,血液学的パラメータ,血液生理学的パラメータ,血糖値において正常ラットと変わらないことが確認されており,眼異常を除く生物学的特性はほぼ正常であることが明らかとなっている8).したがって,UPLラットは白内障発症機構の解明を行ううえできわめて適切なモデルであると考えられている.しかしながら,UPLラットの水晶体混濁は短期間で急速に認められることから,その水晶体混濁機構解明を目指した研究では有効だが,抗白内障薬の有効性における研究には不向きであり,ヒト加齢白内障のように水晶体混濁化がゆっくりと進行するモデル動物の開発が望ましいと考えられた.Iharacataractrat(ICR/fラット)は遺伝性白内障発症動物であり,その発症率は100%である9).これまでの研究から,生後75日頃から水晶体の混濁が徐々に進行し,生後90日頃には成熟白内障に達する9).また,水晶体混濁時のCa2+濃度は透明時のそれと比較し約10倍に上昇し,水晶体中カルパインの活性化およびクリスタリン蛋白質の分解・凝集も確認されている9).したがって,ICR/fラットは,抗白内障薬の有効性検討を行ううえで適切なモデルであると考えられた.本研究ではUPLラットと比較し徐々に水晶体混濁化が進行するICR/fラット白内障発症における,IL-18およびDNA分解酵素(DNaseII-likeacidDNase:DLAD)の関与ついて検討した.I対象および方法1.実験動物実験には名城大学から分与された2291日齢のICR/fラットを用いた.ICR/fラットはともに25℃に保たれた環境下で飼育し,飼料(飼育繁殖固形飼料CE-2,日本クレア)および水は自由に摂取させた.2.前眼部画像解析22,63および91日齢のICR/fラットの前眼部スリット像の撮影は,前眼部画像解析装置EAS-1000(ニデック社製)を用いて行った.3.遺伝子発現量の測定摘出した水晶体よりインビトロジェン社製Trizol試薬(1ml)を用いてAcidguanidium-phenol-chloroform法により全RNAを抽出し,RNAPCRkit(AWVVer2.1,タカラ社製)を用い1μgの全RNAからcDNAを合成した.合成したcDNAにGenBankTMからのデータベースより設計した各遺伝子特異的プライマーを加え,半定量および定量poly-merasechainreaction(PCR法)を行った.半定量PCR法表1定量RTPCR法における各種プライマー塩基配列PrimerSequence(5′-3′)GenBankAccessionNo.IL-18FORCGCAGTAATACGGAGCATAAATGACNM_019165REVGGTAGACATCCTTCCATCCTTCACIL-18RaFORAGCAGAAAGAGACGAGACACTAACXM_237088REVCTCCACCAGGCACCACATCIL-18RbFORGACCACAGGATTTAACCATTCAGCAJ550893REVAGCAGGACCTAGTGTTGATGATGIL-18BPFORTTGGTGGGTCCTGCTTCTATATGAF154569REVGGTCAGCGTTCCATTCAGTGCaspase-1FORTGAAGATGATGGCATTAAGAAGGCNM_012762REVCAAGTCACAAGACCAGGCATATTCDLADFORTTGCTCTTCGTTGCCCTGTCAF178974REVTCCTCTGCTGGTCCTTCTGGGAPDHFORACGGCACAGTCAAGGCTGAGANM_017008REVCGCTCCTGGAAGATGGTGAT———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009677(97)は以下のプライマーを用い30cycleにて行った.5′-TCAGATGTGTGCCAAGTCCAGTGCCTC-3′および5′-AATACAGGTCCAGCGAGCCTGAGAGTC-3′(DLAD,GenBankaccessionNo.AF178974);5′-GGTGCTGAGTATGTCGTGGAGTCTAC-3′および5′-CATGTAGGCCATGAGGTCCACCACC-3′(glyceraldehyde-3-phosophatedehydrogenase(GAPDH),GenBankaccessionNo.NM_017008).これにより得られたPCR生成物は1.5%アガロースゲルにて泳動後,エチジウムブロマイド照射によって撮影された.定量PCR法は,LightCycler(ロシュ社製)を用い遺伝子発現量の測定を行った.表1には今回使用した各種プライマー塩基配列を示した.本研究では各種遺伝子発現量はGAPDHに対する比から求めた.4.ウエスタンブロッティングICR/fラットの水晶体に生理食塩水200μlを加え氷中でホモジナイズした.水晶体ホモジネートは20分間氷中で超音波処理後,遠心分離(1,500rpm,10min,4℃)により上清を採取した.この上清に等量のLoadin緩衝液(12.5mmol/lTris-HCl,pH6.8,0.4%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS),2%グリセロール,1%2-メルカプトエタノール,0.004%ブロモフェノールブルー)を加え,3分間煮沸することで標品を作製した.この標品(10μg)を15%ポリアクリルアミドSDSゲルで100V,90min泳動することで分離し,SEMI-DRYTRANSFERCELL(BIO-RAD社製)を用い,蛋白質をポリビニルデンフッ化メンブラン(BIO-RAD社製)に転写した(20V,2.0A,50min).転写後,トリス緩衝液(20mMTris-HCl,500mMNaCl,pH7.5)で5分間洗浄し,さらにメンブランの非特異部位をブロッキングするため,3%低脂肪粉ミルク含有トリス緩衝液中に8時間浸した.ウエスタンブロッティングは2時間室温で15μg/lgoatanti-ratIL-18ポリクロナール抗体(プロメガ社製)で標識した.2次抗体には15μg/lanti-goatIgG(1:7000希釈,プロメガ社製)を用いて2時間室温で反応させた.その後,アルカリホスファターゼ(プロメガ社製)に対する基質10mlとともに15minインキュベートすることで発色させた.5.水晶体中ゲノムDNAの測定ICR/fラットから摘出した水晶体を皮質部と核部に分離後試料とした.ゲノムDNA抽出にはQuickPickTMgDNAkit(BIO-NOBILE社製)を用いた.DNA抽出後,サンプルを1.0%アガロースゲルに添加し,Mupid-21ミニゲル電気泳動槽(コスモバイオ)を用いて電気泳動(100V,40min)を行った.泳動後,エチジウムブロマイド溶液(0.5μg/ml)にて25min染色しdiethylpyrocarbonate(DEPC)水にて15min洗浄した.写真は泳動終了後ImageMaster-CLを用い,ゲルに紫外線を照射することで確認されるバンドを撮影した.II結果1.水晶体混濁に伴うICR/fラット水晶体中IL18遺伝子および蛋白発現量の変化図1にはEAS-1000によるICR/fラット水晶体の前眼部スリット像を示した.2263日齢のICR/fラット水晶体は透明であり混濁は認められなかったが,77日齢では水晶体の混濁の開始が認められ,91日齢のICR/fラット水晶体は成熟白内障であった.図2には22,63および91日齢のICR/fラット水晶体中IL-18の活性化関連遺伝子(IL-18,IL-18Ra,IL-18Rb,IL-18BPおよびcaspase-1)遺伝子発現量の変化について示した.IL-18Raはいずれの週齢においても変化はみられなかった.一方,水晶体混濁開始直前の63日齢および水晶体混濁時の91日齢では22日齢のICR/fラット水晶体と比較しIL-18,IL-18Rb,IL-18BPおよびcaspase-1の上昇がみられた.さらに,18kDaのIL-18蛋白も水晶体混濁直前の63日齢および成熟白内障時である91日齢でその発現上昇が認められた(図3).2.水晶体混濁に伴うICR/fラット水晶体中DLAD遺伝子およびゲノムDNAの変化図4に水晶体中DLAD遺伝子発現量を示した.22,63および91日齢のICR/fラットいずれにおいても水晶体中DLAD遺伝子発現量は一定であった.図5には22および91日齢ICR/fラット水晶体皮質部および核部におけるゲノムDNA残存性について示した.ICR/fラット水晶体皮質部では,日齢にかかわらず未切断DNAが高度に存在しており,核部では未切断ゲノムDNAは認められなかった.774963229135days図1ICR/fラットにおける水晶体前眼部スリット像———————————————————————-Page4678あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009(98)III考按前眼部画像解析装置EAS-1000は,動物を殺傷せずに経時的に水晶体混濁の測定が可能である.本研究でははじめに,この前眼部画像解析装置EAS-1000を用いICR/fラットの水晶体混濁発現時期について検討した.その結果,22および63日齢のICR/fラット水晶体は透明性を維持しており,混濁は認められなかったが,77日齢では混濁開始が認められ,91日齢のICR/fラット水晶体は成熟白内障であった.この結果から本研究では22日齢を透明な水晶体,63日齢を水晶体混濁直前の水晶体,そして91日齢を成熟白内障水晶体とし,ICR/fラット白内障発症へのIL-18およびDNA分解酵素の関与について検討した.IL-18の塩基配列から推測される蛋白質は分子量24kDのIL-18前駆体であることが知られている.この24kDの22day63day91day20kDa15kDa図3ICR/fラットにおける成熟型IL18蛋白発現量IL-18BPmRNACaspase-1mRNAIL-18RbmRNAIL-18RamRNAIL-18mRNA912263Age(days)9101234567891002468101214012345670123456780.50.51.01.52.02.53.03.5IL-18/GAPDH(×10-3)IL-18Ra/GAPDH(×10-5)IL-18Rb/GAPDH(×10-5)IL-18BP/GAPDH(×10-3)Caspase-1/GAPDH(×10-4)図2ICR/fラットにおけるIL18,IL18Ra,IL18Rb,IL18BPおよびcaspase1遺伝子発現量の変化(n=34)BAAge(days)400bp300bp0510152025226322day91day91DLAD/GAPDH(×10-2)図4ICR/fラットにおけるDLAD遺伝子発現量の変化A:半定量PCR法,B:定量PCR法.(n=34)10kb3kb22dayCorNuc91dayCorNuc図5ICR/fラット水晶体皮質部(Cor)および核部(Nuc)における未切断ゲノムDNA———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009679(99)IL-18前駆体は一般の分泌蛋白に存在するリーダーペプチドをもっておらず,生理活性も有していない.近年,この24kDaのIL-18前駆体がcaspase-1によるプロセッシングを受け,生理活性をもつ18kDaの分子(成熟型IL-18)になることが明らかとされた10).また,成熟型IL-18がIL-18レセプター(IL-18R)に作用することで,インターフェロン-g(IFN-g)誘導などの生理活性を発現することが明らかとされている.このIL-18RにはIL-18Ra鎖(IL-1Rrp)およびIL-18Rb鎖(AcPL)が存在し,IL-18Ra鎖とIL-18Rb鎖はヘテロ二量体のIL-18R複合体である.IL-18はIL-18Ra鎖に結合し,IL-18Rb鎖の作用活性を増強する10).特にIL-18Rb鎖はIL-1receptor-associatedkinase(IRAK)など,その後の生理活性作用増強と活性化に不可欠の物質として知られる10).そこで本研究では22,63および91日齢のICR/fラット水晶体におけるIL-18活性化関連遺伝子(IL-18,IL-18Ra,IL-18Rb,IL-18BPおよびcaspase-1)発現量の変化について示した.IL-18aはいずれの週齢においても変化はみられなかったが,水晶体混濁開始直前の63日齢および水晶体混濁時の91日齢では22日齢のICR/fラット水晶体と比較しIL-18,IL-18Rbおよびcaspase-1遺伝子発現量および成熟型IL-18蛋白発現量上昇がみられICR/fラット水晶体混濁にIL-18発現が関与することが強く示唆された.一方,IL-18の特異的内因性阻害薬であるIL-18bindingprotein(IL-18BP)11,12)も63および91日齢水晶体において上昇が認められた.Hurginらは,IFN-gの増加はIL-18BP発現を誘発することを明らかとしている13).したがって,ICR/fラット水晶体中IL-18BP発現量の増加は,IL-18の活性化を介したIFN-g過剰産生によりひき起こされるのではないかと示唆された.他の白内障発症要因として,水晶体の線維化不全が注目されている5).水晶体は,通常の組織にみられるように基底膜上に上皮細胞があるのではなく,水晶体が周囲を覆いその内側に上皮細胞が存在する.細胞分裂は増殖帯でのみ観察され,分化した細胞は新たに分化した細胞に押され水晶体中心部に移動する.この水晶体中心部で水晶体核を形成している線維細胞は核をもっておらず,線維細胞の脱核は細胞分化が起こり伸展した線維細胞からなる水晶体皮質が中心部へ移動する過程で起こるとされている.このように線維細胞の分化は細胞内小器官などの消失を伴うことが知られており,特に細胞核を含む細胞内小器官の消失は,水晶体に透明性をもたらす重要な変化であると考えられている.近年,DLADが水晶体線維化過程ゲノムDNAの消失を担っており,このDLADが欠損すると,本来除去されるはずのゲノムDNAが核部に残存し,水晶体が混濁する原因になると報告された5).そこで先のICR/fラットにおける水晶体混濁と水晶体中ゲノムDNA残存性について検討を行った.その結果,ICR/fラット水晶体皮質部では,日齢にかかわらず未切断DNAが高度に存在しており,核部では未切断ゲノムDNAは認められなかった.したがって,DNA分解酵素の低下や核部へのゲノムDNA残存はICR/fラット水晶体混濁には影響しないことが明らかとなった.IL-18産生はUPLラットおよびICR/fラットでともに認められたのに対し,DNA分解酵素の低下や核部へのゲノムDNA残存はUPLラットのみで認められ,ICR/fラット水晶体混濁には関与しなかったことから,UPLラット白内障にはICR/fラットと比較し,より複数の要因が関与し発症するものと示唆された.これらの結果は,UPLラットは多角的な視点による水晶体混濁機構解明を目指した研究に有効であり,ICR/fラット白内障はヒト加齢白内障と類似していることから,抗白内障薬の有効性における研究に適していると考えられた.これらIL-18活性発現と水晶体混濁の関連性を明確にするためにはさらなる研究が必要である.したがって,現在筆者らはIL-18阻害薬がICR/fラット水晶体混濁へ与える影響について検討しているところである.以上,本研究ではIL-18産生がICR/fラット水晶体混濁に関与する可能性を強く示唆した.また,ICR/fラットではDNA分解酵素の低下や核部へのゲノムDNA残存がないことを明らかとした.これらの報告は今後の抗白内障薬開発研究の確立に有用であるものと考える.文献1)HardingJJ:Cataract;biochemistry,epidemiologyandpharmacology.ChapmanandHall,London,19912)佐々木一之:白内障.医学と薬学33:1271-1277,19953)ShearerTR,DavidLL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