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ガチフロキサシン点眼液(ガチフロ 邃「 点眼液 0.3%)の製造 販売後調査―特定使用成績調査(新生児に対する調査)―

2009年10月31日 土曜日

———————————————————————- Page 1(131)ツꀀ 14290910-1810/09/\100/頁/JCOPYツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ あたらしい眼科 26(10):1429 1434,2009cはじめにガチフロR点眼液 0.3%(以下,本剤という)は,2004 年 9月の発売時点において 1 歳以上の小児については,その有用性の評価を終えていた.しかしながら,本剤効能である『眼瞼炎,涙 炎,麦粒腫,結膜炎,瞼板腺炎,角膜炎(角膜潰瘍を含む)』のうち,特に急性細菌性結膜炎については免疫未熟な新生児,乳幼児に集中的にみられる疾患であり,眼科医療現場ではフルオロキノロン系抗菌点眼薬が「1 歳未満」の小児に対して汎用されていることから,「1 歳未満の小児」における本剤の安全性および有効性を評価することが急務であった.そこで筆者らは,1 歳未満の小児(細菌性外眼部感染症罹患児)に対する本剤の安全性および有効性の確認を目的として,2005 年 6 月から 2006 年 6 月に特定使用成績調査を実施した.その結果,乳児(生後 28 日以上 1 年未満)110 例および新生児(生後 27 日以下)3 例を収集し,全症例において副作用が認められなかったことを本誌において報告した1).しかしながら,当該調査においては,新生児症例数が計画未達であったことから,新たに新生児を対象とした特定使用成績調査を実施し,当該症例群に対する本剤使用実態下における成績を得たので,続報として報告する.なお,当該調査は,GPSP 省令(「医薬品の製造販売後の調〔別刷請求先〕丸田真一:〒541-0046 大阪市中央区平野町 2-5-8千寿製薬株式会社 開発本部 育薬企画室Reprint requests:Shinichi Maruta, Post-Marketing Surveillance Department, Senju Pharmaceutical Co., Ltd., 2-5-8 Hiranomachi, Chuo-ku, Osaka 541-0046, JAPANガチフロキサシン点眼液(ガチフロR点眼液 0.3%)の製造 販売後調査―特定使用成績調査(新生児に対する調査)―丸田真一*1末信敏秀*1羅錦營*2*1 千寿製薬株式会社 開発本部 育薬企画室*2 羅眼科Post-Marketing Surveillance of Gatiloxacin Ophthalmic Solution(GatiloR Ophthalmic Solution 0.3%)Use-Result Surveillance Speciied for NewbornsShinichi Maruta1), Toshihide Suenobu1) and Ra Kin Ei2)1)Post-Marketing Surveillance Department, Senju Pharmaceutical Co., Ltd., 2)Ra Eye Clinic「ガチフロR点眼液 0.3%」の新生児(27 日以下)に対する安全性および有効性を検討することを目的として,プロスペクティブな連続調査方式にて特定使用成績調査を実施した.その結果,安全性評価対象として 65 例を収集し,その内訳は,外眼部感染症(眼瞼炎,涙 炎および結膜炎)が 62 例,ならびに感染予防(効能外使用)が 3 例であったが,いずれの疾患においても副作用の発現は認められなかった.また,有効性の評価対象症例 61 例における医師判定による全般改善度(有効率)は 98.4%で,高い有効率を示した.以上の結果,本剤は新生児における細菌性外眼部感染症に対して有用な点眼薬であることが示唆された.To evaluate the safety and e cacy of GATIFLOR ophthalmic solution 0.3% for newborns(0 to 27 days), use-result surveillance speci ed that patient grouping employ a prospective and continuous survey method. In the safe-ty evaluation, which involved 65 infants(57 term-newborns and 8 of low birth weight)comprising 62 with exter-nalツꀀ ocularツꀀ infection(blepharitis,ツꀀ dacryocystitisツꀀ orツꀀ conjunctivitis)andツꀀ 3ツꀀ beingツꀀ treatedツꀀ forツꀀ prophylaxis.ツꀀ Noツꀀ adverse drugツꀀ reactionsツꀀ wereツꀀ observed.ツꀀ Inツꀀ theツꀀ e cacyツꀀ evaluation,ツꀀ whichツꀀ involvedツꀀ 61ツꀀ infants(56ツꀀ term-newbornsツꀀ andツꀀ 5ツꀀ of low birth weight), the e ective rate was 98.4% . These results suggest that GATIFLOR ophthalmic solution 0.3% is a useful medication for treating external bacterial infections of the eye in newborns.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)26(10):1429 1434, 2009〕Key words:ガチフロキサシン,ガチフロRツꀀ 0.3%点眼液,新生児,製造販売後調査,安全性,有効性.gati oxacin, GATIFLOR ophthalmic solution 0.3%, newborns, post-marketing surveillance, safety, e ectiveness.———————————————————————- Page 21430あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(132)査および試験の実施の基準に関する省令」平成 16 年 12 月20 日 付 厚 生 労 働 省 令 第 171 号)に 則 り,2007 年 5 月 2008 年 9 月に実施されたものである.I方法1. 調査対象本剤の効能・効果である細菌性外眼部感染症〔眼瞼炎,涙 炎,麦粒腫,結膜炎,瞼板腺炎,角膜炎(角膜潰瘍を含む)〕を目的として本剤が投与された新生児(生後 27 日以下)患者を対象とした.なお,調査の対象施設は,本剤が納入・採用され,依頼および契約が文書で交わせる施設のうち眼科を中心とする医療機関とした.2. 調査方法,登録方法対象症例を無作為に抽出するため,プロスペクティブな連続調査方式で実施した.すなわち,契約締結日以降に本剤投与が開始された症例を,投与開始順に漏れなく連続して仮登録し,そのうち再診があった症例について投与開始順に最終登録する方法とした.また,最終登録したすべての症例について,調査票を記載することとした.3. 本剤の投与方法,観察期間など承認された本剤の用法・用量である「通常,1 回 1 滴,1日 3 回点眼する」に則り投与することとした.本調査の観察期間は,担当医師が必要と判断した期間としたが,1 症例当たりの標準的な観察期間は 3 14 日とした.なお,本調査は使用実態下での調査であるため,前治療薬,併用薬,処置などについては特に規制しなかった.4. 調査項目調査項目は,患者背景〔性別,低出生体重児の別,使用理由,投与開始時の基礎疾患・合併症(眼合併症,肝機能障害,腎機能障害)など〕,本剤の使用状況,併用薬剤の使用状況,臨床経過(自覚症状,他覚的所見),有害事象,有効性評価(全般改善度)などとした.5. 安全性の判定本剤投与中あるいは投与後に発現した医学的に好ましくないすべての事象を有害事象とし,その発現の有無について調査した.有害事象「あり」の場合は,種類,発現日,重篤度,発現日以降の本剤の投与状況,有害事象に対する処置,転帰,本剤との因果関係などについて調査した.有害事象のうち,本剤との因果関係が否定できないものを副作用として取り扱った.6. 有効性(全般改善度)の判定有効性の評価は,本剤の投与開始後の臨床経過などにより担当医師が総合的に判断し,「改善」,「不変」,「悪化」,「判定不能」の 3 段階 4 区分で判定した.このうち,「改善」の症例を有効例,「不変」および「悪化」の症例を無効例とした.7. 症例の取り扱いおよび解析方法調査(登録)症例のうち,何らかの理由で調査を完了できなかった症例を脱落症例として取り扱うこととした.また,調査完了症例のうち,安全性あるいは有効性評価対象症例群について層別集計を行い,安全性評価については安全性評価対象の全例に占める副作用発現率を,有効性評価については有効性評価対象の全例に占める有効(改善)率を算出した.また,有効性評価においては,要因別に有意水準を両側 5%として,Kruskal-Wallis 検定(以下,H 検定)を実施した.II結果1. 症例構成症例構成を図 1 に示した.すなわち,240 例(24 施設)に関する契約を締結した結果,68 例(16 施設)が最終登録され,すべての調査を完了しえた.これら調査完了症例 68 例のうち,登録期間終了後に本剤投与が開始された 1 症例および調査対象外症例(生後 28 日以上経過した症例)を除外した結果,安全性評価対象症例として 65 例(16 施設)を,さらに,効能外症例 3 例および有効性判定不能症例 1 例を除外した結果,有効性評価対象症例として 61 例(16 施設)を収集しえた.2. 安全性評価対象症例の患者背景および副作用発現率安全性評価対象症例 65 例において副作用は認められなか契約症例数240例(24施設)登録症例68例(16施設)登録期間外症例1例(1施設)調査完了症例68例(16施設)調査対象外症例2例(1施設)安全性評価除外症例3例(2施設)安全性評価対象症例65例(16施設)有効性評価除外症例4例(2施設)効能外症例3例(1施設)有効性判定不能症例1例(1施設)有効性評価対象症例61例(16施設)図 1症例構成———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091431(133)った(表 1).患者背景は,男児 45 例(69.2%),女児 20 例(30.8%)であった.年齢(日齢)は,生後 1 27 日齢(平均±SD:13.4±8.18 日)であった.また,使用理由では,「涙 炎」8 例(12.3%),「結膜炎」50 例(76.9%),さらに,「眼瞼炎+結膜炎」などの「使用理由複数例」4 例(6.2%),「効能外症例(眼感染症予防)」3 例(4.6%)であった.投与開始時において肝機能障害および腎機能障害の基礎疾患・合併例は認められず,眼部における基礎疾患・合併症を有する症例は 11 例(16.9%)であり,うち,4 例が先天性鼻涙管閉塞,1 例が先天性鼻涙管狭窄であった.1 日投与回数(平均)は,用法・用量に定められた 1 日 3 回が 48 例(73.9%),投与期間 14 日以上の症例は 27 例(41.5%)であった.また,9 例において施行された併用処置はすべて涙 洗浄などの涙道に対する処置であった(表 2).さらに,7 例において初診時に細菌検査が施行(施行率:10.8%)され,coagulase-negative staphylococci(CNS)5 株(結膜炎 4 例および涙 炎 1 例)を表 1患者背景等要因別副作用発現状況要因区分安全性評価対象症例数副作用発現症例数副作用発現症例率性別男児4500.00%女児2000.00%年齢(日齢)7 日未満1800.00%7 日以上 14 日未満1000.00%14 日以上 21 日未満2300.00%21 日以上 27 日以下1400.00%使用理由別涙 炎800.00%結膜炎5000.00%眼瞼炎+結膜炎100.00%涙 炎+結膜炎300.00%効能外使用(眼感染症予防例)300.00%合併症眼合併症あり1100.00%なし5400.00%肝(機能)障害あり00─なし5400.00%不明1100.00%腎(機能)障害あり00─なし5400.00%不明1100.00%1 日投与回数別(平均)3 回未満600.00%3回4800.00%3 回超1100.00%投与期間別*1 日以上 3 日未満6500.00%3 日以上 7 日未満6500.00%7 日以上 14 日未満5000.00%14 日以上2700.00%併用薬剤の有無別あり800.00%なし5700.00%併用療法の有無別あり900.00%なし5600.00%合計6500.00%*:累積症例数.———————————————————————- Page 41432あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(134)はじめとして計 10 株が分離同定された(表 3).また,安全性評価対象 65 例においては,正期産新生児のほか,低出生体重児に該当する症例が 8 例認められた(表4).すなわち,出生時体重による区分2)において,超低出生体重児(出生時体重:1,000 g未満)4 例,その他の低出生体重児(出生時体重:1,000 2,500 g未満)4 例が認められた.このうち,超低出生体重児の全例が未熟児網膜症を合併しており,うち 3 例については眼底検査時の感染予防を目的に隔日(4 日間隔)にて 4 5 回,残り 1 例は生後 22 日目から結膜炎に対して本剤が投与されていた.3. 有効性評価対象症例の患者背景および有効率効能外症例 3 例(いずれも超低出生体重児の感染予防目的)および有効性判定不能症例 1 例(併用処置により改善したため,本剤効果判定不能)を除外した結果,有効性評価対象症例は 61 例であり,有効性判定は「改善」60 例,「不変」1例,「悪化」0 例であったことから,有効率は 98.4%(60 例/ 61 例)であった(表 5).「不変」と判定された 1 例は結膜炎(正期産新生児)に対して本剤が 12 日間投与された結果,すべての症状が消失したが,本剤投与 5 日目から併用した塩酸セフメノシキム点眼液が奏効し,本剤単独では「不変」であると評価された症例であった.また,本症例が要因別集計の「罹病期間」および「併用薬剤の有無」において,母数の少ない因子に層別された結果,有意差が認められた.III考察一般的に,新生児は免疫機能が未熟であり3)涙液分泌量が少ない4)など,眼感染症に易感染性の素因を有する.このことから,眼感染症の予防を目的として,古くは硝酸銀水溶液による Crede 法が普及したが,薬剤毒性などの理由から敬遠され,0.5%ツꀀ erythromycin,1%ツꀀ tetracycline 軟膏や povi-done-iodine が出生後における眼感染症予防に使用されるようになった5).新生児は出生後ただちに周辺環境に存在する常在菌に曝され,NICU(新生児集中管理室)においてさえ 5%の新生児に細菌性結膜炎が発症する.また,その発症リスクは出生時体重に大きく依存し,超低出生体重児(出生時体重 1,000 g未表 2涙道部に対する処置併用療法診断名(使用理由)症例数涙 指圧涙 炎23涙 炎+結膜炎1涙管ブジー涙 炎22涙 洗浄+涙 指圧涙 炎11涙 洗浄+涙管ブジー涙 炎11涙 洗浄+涙 指圧+ 涙管ブジー涙 炎22計9表 3初診時検出菌(7例)No.使用理由菌名1結膜炎Staphylococcus aureus+ Acinetobacter baumannii2Coagulase-negative staphylococci(CNS)3CNS4CNS+a-Streptococcus5MRCNS+Haemophilus in uenzae6涙 炎CNS7結膜炎+涙 炎Lactobacillus sp.表 4低出生体重児8例の概要No.出生児区分2)使用理由合併症使用期間(日)1超低出生体重児感染予防・未熟児網膜症・晩期循環不全隔日 4 回(4 日間隔)2結膜炎・未熟児網膜症・呼吸窮迫症候群223感染予防・未熟児網膜症・呼吸窮迫症候群・動脈管開存症隔日 5 回(4 日間隔)4感染予防・未熟児網膜症・晩期循環不全隔日 5 回(4 日間隔)5その他の低出生体重児涙 炎+結膜炎先天性鼻涙管閉塞366結膜炎─97結膜炎臍炎158結膜炎─12超低出生体重児:出生時体重 1,000 g未満.その他の低出生体重児:出生時体重 1,000 2,500 g未満.———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091433(135)表 5患者背景等要因別有効性評価要因区分症例数症例数有効率検定結果(H 検定)改善不変悪化性別男児454500100.0%d.f.=1p0=0.0935 n.s.女児16151093.8%年齢(日齢)7 日未満181800100.0%d.f.=3p0=0.6209 n.s.7 日以上 14 日未満101000100.0%14 日以上 21 日未満22211095.5%21 日以上 27 日以下111100100.0%入院・外来別入院8800100.0%d.f.=2p0=0.8958 n.s.外来50491098.0%入院・外来3300100.0%使用理由別涙 炎7700100.0%d.f.=3p0=0.9743 n.s.結膜炎50491098.0%眼瞼炎+結膜炎1100100.0%涙 炎+結膜炎3300100.0%投与前重症度別軽度404000100.0%d.f.=1p0=0.1675 n.s.中等度21201095.2%重症0000─罹病期間3 日未満292900100.0%d.f.=3p0=0.0059***3 日以上 7 日未満121200100.0%7 日以上 14 日未満431075.0%14 日以上9900100.0%不明7700100.0%合併症眼合併症あり7700100.0%d.f.=1p0=0.7188 n.s.なし54531098.1%肝(機能)障害あり0000─検定になじまないなし505000100.0%不明11101090.9%腎(機能)障害あり0000─検定になじまないなし505000100.0%不明11101090.9%1 日投与回数別(平均)3 回未満3300100.0%d.f.=2p0=0.8616 n.s.3回47461097.9%3 回超111100100.0%投与期間別1 日以上 3 日未満0000─d.f.=4p0=0.7994 n.s.3 日以上 7 日未満121200100.0%7 日以上 14 日未満23221095.7%14 日以上 21 日未満151500100.0%21 日以上 28 日未満2200100.0%28 日以上9900100.0%併用薬剤の有無別あり431075.0%d.f.=1p0=0.0002***なし575700100.0%併用療法の有無別あり8800100.0%d.f.=4p0=0.6976 n.s.なし53521098.1%合計61601098.4%n.s.:not signi cant,d.f.:degree of freedom.***:p0=<0.05.注:「不明」は検定に含めない.———————————————————————- Page 61434あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(136)満)では,正期産新生児(同体重 2,500 g以上)に比して 7.9倍高い6).本調査においては,眼底検査時の眼感染症予防を目的として 3 例の超低出生体重児に本剤が隔日投与(4 日間隔)されたが,投与期間中における眼感染症の発現ならびに副作用は認められなかった.さらに,超低出生体重児 1 例を含めた低出生体重児 5 例の眼感染症に対して,本剤が 9 36日間投与されたが,副作用は認められなかった.また,新生児における眼感染症は結膜炎が大半を占め,本調査においても 76.9%(50/65 例)が結膜炎であった.既報において,結膜炎罹患の新生児結膜 からの分離菌としてはCNS の分離頻度が最も高く6,7),これは出生直後の正常結膜 からは vaginalツꀀ delivery あるいは cesareanツꀀ section を問わず CNS の分離頻度が高い8,9)ことに起因するものと考えられる.本調査においても,一部の症例に関する結果ではあるが,結膜炎罹患の 5 眼のうち 4 眼(80.0%)から CNS〔4 株,うち MRCNS(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)1 株〕が分離された.一方,新生児結膜 の細菌叢は,入院日数に大きく影響され,入院日数が 2 日を超えた場合,MRSE(メチシリン耐性表皮ブドウ球菌)あるいは MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)保菌率が 3 4 倍上昇する7).また,大山ら10)は,入院あるいは外来の新生児(結膜炎罹患児)から分離されたStaphylococcusツꀀ aureusツꀀ 10 株のうち 8 株が MRSA であったことを報告し,さらに中村ら11)は同じく新生児結膜 由来の Haemophilusツꀀ in uenzae をはじめとする主要検出菌に薬剤耐性株の存在を認めている.本調査においても,MRCNS検出症例(出生 15 日後に結膜炎に罹患)が認められており,新生児における細菌性結膜炎であっても,薬剤耐性を有する起炎菌である可能性を考慮し抗菌薬を選択する必要がある.また,本調査では収集されていないが,vaginalツꀀ delivery においては Chlamydia trachomatis による結膜炎にも注意が必要である.このように,新生児眼感染症における起炎菌は多岐にわたるため,幅広い抗菌スペクトルを有する抗菌薬の必要性が高いものの,全身投与による療法については,たとえ小児を含めた年長者における良好な臨床成績を有する抗菌薬であっても,新生児における生理学的,薬理学的特性から,年長者における成績を外挿することはきわめて困難である12).このような観点から,新生児眼感染症に対する薬物療法は点眼薬が中心であり,フルオロキノロン系抗菌点眼薬については成人と同様の用法・用量にて新生児に対する第一選択薬として使用されるようになって久しい.筆者らは,2007 年に新生児を含めた 1 歳未満の小児眼感染症 113 例(新生児 3 例,乳児 110 例)に対する本剤投与成績において,副作用発現症例が認められなかったことを報告するなかで,新生児に対する症例集積を追加する必要性,ならびに新生児期を対象としたフルオロキノロン系抗菌点眼薬の臨床成績に関する報告がきわめて少ないことを述べた1).そこで,今回筆者らは,正期産新生児 57 例および低出生体重児 8 例に対する投与成績を追加収集し,副作用発現症例を認めなかった.以上の結果,ガチフロR点眼液 0.3%は,注意深い観察が必要であることはいうまでもないが,新生児を含めた小児における細菌性外眼部感染症治療の一助になることが期待される.謝辞:稿を終えるにあたり,本調査にご協力賜り,貴重なデータをご提供いただきました多数の先生方に,この場をお借りし心より厚く御礼申しあげます.文献 1) 丸田真一,末信敏秀,羅錦營:ガチフロキサシン点眼液(ガチフロR 0.3%点眼液)の製造販売後調査─特定使用成績調査(新生児および乳児に対する調査).あたらしい眼科 24:975-980, 2007 2) 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