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Aktis トーリック眼内レンズの術後早期成績

2022年4月30日 土曜日

《原著》あたらしい眼科39(4):515.519,2022cAktisトーリック眼内レンズの術後早期成績岩崎留己蕪龍大川下晶大城莉香子竹下哲二上天草市立上天草総合病院眼科CEarlySurgicalOutcomesafterAktisToricIntraocularLensImplantationRumiIwasaki,RyotaKabura,HikariKawashita,RikakoOshiroandTetsujiTakeshitaCDepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospitalC目的:眼内レンズCAktisトーリック(モデル名CNS60YT)の術後早期成績を報告し,Vivinexトーリック(モデル名CXY1AT)のそれと比較する.対象および方法:2020年C2.12月に,NS60YT3.5を挿入したC18例C27眼(74.0C±5.8歳,平均C±標準偏差,以下同様)とCXY1AT3.7を挿入したC37例C59眼(73.8C±5.4歳)を対象とした.術後C3カ月までの裸眼・矯正視力,他覚・自覚球面度数,他覚・自覚円柱度数,術翌日の軸ずれを比較検討した.結果:NS60YT挿入後,1週間,1カ月,3カ月の裸眼・矯正視力,他覚・自覚球面度数,他覚・自覚円柱度数はいずれも術前に比較して改善していた.NS60YT群とCXY1AT群の間に統計学的有意差はなく,NS60YTは良好な乱視矯正効果をもつと思われた.術翌日の軸ずれはCNS60YT群では,5.3C±3.0°,XY1AT群ではC4.0C±3.1°でCNS60YT群のほうが有意に大きかった.結論:NS60YTは現在発売されているCXY1ATと同等の乱視矯正効果をもつと考えられる.CPurpose:ToCreportCtheCearlyCsurgicalCoutcomesCafterCAktisCtoricCintraocularlens(IOL)(NS60YT;Nidek)CimplantationCcomparedCwithCthatCofCtheCVivinexCtoricIOL(XY1AT;Hoya)C.CSubjectsandMethods:ThisCstudyCinvolvedC27CeyesCofC18cases[meanage:74.0C±5.8(meanC±standarddeviation)years]implantedCwithCtheNS60YT[3-5diopters(D)]andC59CeyesCofC37cases(73.8C±5.4years)implantedCwithCtheXY1AT(3-7D)CbetweenCFebruaryCandCDecemberC2020.CInCallCeyes,CweCcomparedCuncorrectedCandCcorrectedCvisualCacuity,Cobjec-tiveCandCsubjectiveCsphericalCpower,CobjectiveCandCsubjectiveCcylindricalCpowerCupCuntilC3-monthsCpostoperative,Candaxialmisalignmentat1-daypostoperative.Results:Nosigni.cantdi.erencewasfoundbetweentheNS60YTgroupCandCtheCXY1ATCgroup,CsuggestingCthatCtheCNS60YTChasCaCgoodCastigmatismCcorrectionCe.ect.CMeanCaxialCmisalignmentat1-daypostoperativewas5.3±3.0°CintheNS60YTgroupand4.0±3.1°CintheXY1ATgroup,thusshowingCthatCtheCmisalignmentCwasCsigni.cantlyCgreaterCinCtheCNS60YTCgroup.CConclusion:TheCNS60YTCwasCfoundtohavethesameastigmatism-correctinge.ectastheXY1AT.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(4):515.519,C2022〕Keywords:Aktis,トーリック,NS60YT,Vivinex,XY1AT.Aktis,toric,NS60YT,Vivinex,XY1AT.はじめに近年トーリック眼内レンズ(toricCintraocularlens:T-IOL)は,その種類が増え,複数の製品を有するメーカーも出てきた.Mohammadiら1)は白内障の患者C1,317人の2,156眼を分析し,73.7%がC1.50D以下の角膜乱視を有し,26.3%が1.50Dを超えるとしていて,1.5Dを超える角膜乱視がある場合にCT-IOLの使用を推奨している.一方,1D程度の弱度の乱視でも,裸眼遠方視力では単焦点CIOLよりも有意にCT-IOLのほうが良好である2)という報告もあり,上天草総合病院(以下,当院)ではCwebカリキュレーターでT-IOLの適応があると判断された正乱視の患者には積極的にCT-IOLを挿入している.T-IOLがC2008年にわが国でも承認されて以降,各レンズメーカーはさまざまな特徴をもつCT-IOLを製造販売するようになった.ニデックより発売予定であるCAktisトーリック(モデル名:NS60YT)は,同社では初となるCT-IOLであり,〔別刷請求先〕岩崎留己:〒866-0293熊本県上天草市龍ヶ岳町高戸C1419-19上天草市立上天草総合病院眼科Reprintrequests:RumiIwasaki,DepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospital,1419-19RyugatakemachiTakado,Kamiamakusa-shi,Kumamoto866-0293,JAPANC白内障手術におけるCT-IOL選択肢の幅が広がることになる.NS60YTはCNex-AcriシリーズのシングルピースCT-IOLである.両凸のレンズ形状で,レンズ前面には乱視度数が配置され,レンズ後面は非球面(C.0.15Cμm)構造となっていることから角膜球面収差が補正される.疎水性アクリル素材で,紫外線吸収能をもち,光学部周辺の乱視軸マークはC2個のドットがマーキングされている.球面度数は,評価時点で15.0D.27.0D(0.50Dステップ),乱視矯正度数は,評価時点でCT3がC1.50D(角膜面C1.05D),T4がC2.25D(角膜面C1.57D),T5がC3.00D(角膜面C2.08D)となっている.当院はCNS60YTを発売前に使用する機会を得たため,先行使用における早期成績を報告するとともにCVivinexトーリック(モデル名:XY1AT,HOYA)との臨床データを比較検討した.CI対象および方法1.対象2020年2.12月に,当院で白内障手術を行い,NS60YT3.5(以下,NS60YT群)を挿入したC18例C27眼(74.0C±5.8歳)およびCHOYAのCXY1AT3.7(以下,XY1AT群)を挿入したC37例C59眼(73.8C±5.4歳)を対象とした.翼状片や角膜疾患,眼底疾患など,角膜乱視や視力に影響のある疾患を有する患者は除外した.本研究は,当院の倫理審査委員会の承認(2021年C4月C15日,承認番号:2021-02)を得たのち,ヘルシンキ宣言3)に準拠して実施された.C2.術前検査眼軸長,角膜曲率半径,屈折値の測定を行った.眼軸長はエコースキャンUS-4000(ニデック)を用いた.角膜曲率半径,屈折値測定には角膜形状/屈折力解析装置COPD-ScanIII(ニデック)を用い,眼内レンズ度数決定にはCSRK-T式を用いた.目標屈折値は全例C0Dだった.レンズモデルおよび軸角度の決定にはそれぞれのメーカーがインターネット上に公開しているCwebcalculatorを使用した.その際に必要となる術後惹起乱視(以下,SIA)はC2.2Cmmの強角膜切開創からプリセットインジェクターCVivinexmultiSertでCXY1-SP(HOYA)を挿入したC30眼のデータからCDr.HillのCSurgicallyInducedCAstigmatismCalculatorを用いて計算し,0.30とした.C3.手術手術はすべて同一術者(竹下)が行った.前.切開は連続円形切.でレンズ前面をCcompletecoverできる大きさとした.上方のC2.2Cmm強角膜切開創から超音波乳化吸引を行った.NS60YT群ではレンズ挿入にCAktisトーリックディスポインジェクター(RI-1,RET社)と専用カートリッジを使用したが,そのままの切開幅では挿入できなかったため,切開創を2.5Cmmスリットナイフで切り広げたのちに挿入した.レンズ挿入後の切開幅をインシジョンゲージ(DuckworthC&Kent社)にて計測した.レンズ挿入時の粘弾性物質にはオペリード(千寿製薬)を用い,レンズ挿入後の除去時はCI/Aチップをレンズと後.の間に挿入して入念に除去した.切開創は無縫合で手術終了した.XY1AT群では切開創を広げることなく,VivinexmultiSertインジェクターで挿入した.手術中の軸合わせはパネル法4)を用い,視能訓練士が液晶保護パネル(以下,パネル)に引いた線にレンズの軸マークを合わせた.パネル法は画像撮影法の一種であり,まず術前に撮影した前眼部写真から虹彩色素斑や虹彩紋理を選んで,それと目標軸のなす角を計測しておく.術中は顕微鏡下の映像をモニターに映し出し,パネルをかぶせておく.スタッフがモニター上で虹彩色素斑や虹彩紋理を見つけ出して角度を計測しパネルの上に線を引く.術者は,レンズ挿入後にモニターを見ながらレンズの軸マークをパネルに引かれた線に合わせるというものである.全例が入院しての手術で,術後は手術室から車いすで病棟へ帰室,抗菌薬点滴が終了するまでベッド上安静とした.C4.視機能および眼科学的評価視力はC5Cm小数視力表でC1.2まで測定しClogMARに換算した.評価項目は術後C1週間,1カ月,3カ月の裸眼・矯正視力,他覚・自覚球面度数,他覚・自覚円柱度数,術前後の角膜乱視量,術翌日の軸ずれ,SIAとした.円柱度数はマイナスシリンダーフォームを用いて計測し,絶対値に変換した.また,乱視の分類の定義として,倒乱視(0.30°または151°.180°),直乱視(61°.120°),斜乱視(それ以外)とした.軸ずれは手術翌日に散瞳下にてCOPD-ScanIIIを用いて徹照像撮影を行い,レンズマークの軸角度を計測,挿入予定軸角度との差を算出し,絶対値で表した.SIAは術前と術後3カ月時の角膜乱視度数からベクトル解析(Alpins法5))にて算出した乱視量を用いた.C5.統計解析連続変数に対してCShapiro-Wilk検定にてデータの正規性を評価し,Welch’st検定を用いてC2群間比較を行った.すべての統計解析にはCRおよびCRコマンダーの機能を拡張した統計ソフトウェアであるCEZR(Ver.1.54)を使用した.統計学的有意水準をC5%未満(両側検定)とした.CII結果使用レンズおよび挿入軸を表1に示す.術前と術後C1週間,1カ月およびC3カ月の各項目の値を表2および図1~3に示す.術前の円柱度数は自覚も他覚もCXY1AT群のほうが大きかった.NS60YT群CT3.T5のC3モデルであったのに対し,XY1AT群はCT3.T7のC5モデルだったが,術前の角膜乱視には有意差がなかった.両群ともに術前に比較し表1使用レンズおよび挿入軸NS60YT(n=27)CXY1AT(n=59)合計使用レンズCT3CT4CT5CT6CT7C10C6C11C16C26C10C6C1C26C32C21C6C1乱視軸倒乱視C直乱視C斜乱視C19C5C3C57C2C0C7673て術後C1週間,1カ月,3カ月の裸眼および矯正視力,自覚および他覚円柱度数は有意に改善していた(p<0.001).術後C1カ月の矯正視力は,NS60YT群のほうがCXY1AT群より良好だった.術後C3カ月での角膜乱視は,XY1AT群のほうがCNS60YT群より大きかった.それ以外の項目についてはすべての観察期間で両群間に有意差はなかった.NS60YT群では挿入後の切開幅はC2.63C±0.07mmに広がっていた.惹起乱視については,術前と術後C3カ月の比較でNS60YT群では,0.54C±0.33,XY1AT群ではC0.52C±0.29で有意差がなかった(p=0.78).軸ずれは,予定軸と手術翌日でCNS60YT群では,5.3C±3.0°,XY1AT群ではC4.0C±3.1°でCNS60YT群のほうが有意に大きかった(p<0.05).CIII考按XY1ATは着色CT-IOLで,NS60YTとレンズ径や素材といった物理的性質,非球面構造による非点収差を軽減するような光学系など,類似した特徴をもつ.NS60YTも正式発売時にはCXY1AT同様,プリセットインジェクターに装.されて販売されるものと思われるが今回は既存の他社製汎用インジェクターを用いての挿入となった.先行発売されている他社製CT-IOLはいずれもC2.2mm以下の切開幅から挿入可能なインジェクターを用いて挿入される.webcalculatorでレンズモデルと挿入軸を決定する際にはCSIAが必要で,今回C0.30としたがこれはC2.2mm切開創からレンズ挿入した症例から得られた数値である.清水は切開幅がC2.5Cmm以下であればCSIAは無視してよいとしている6).今回倒乱視が多い症例に対し上方からの切開で,NS60YT挿入後の切開幅がC2.67mmに広がっていたことでCSIAが大きくなり,乱視矯正効果が減弱したのではないかと思われた.しかし,術前と術後C3カ月の比較でCSIAには差がなかった.また,自覚および他覚乱視も有意差がなかった.むしろ術前は差がなかった角膜乱視は術後C3カ月時点でCXY1AT群のほうが大きくなっていた.NS60YTの正式発売時に,より小さい切開創から挿入可能なインジェクターが採用されるのであれば表2術前・術後1週間,1カ月,3カ月の各項目の値術前1週間1カ月3カ月CNS60YTCXY1ATp値CNS60YTCXY1ATp値CNS60YTCXY1ATp値CNS60YTCXY1ATp値裸眼視力(logMAR)矯正視力(logMAR)自覚球面度数(D)C他覚球面度数(D)C自覚円柱度数(D)C他覚円柱度数(D)C角膜乱視度数(D)CSIA(D)C0.34±0.280.34±0.230.40C0.08(.─C1.22)C(.0.08C─C1.00)C0.08±0.260.06±0.160.46C0.08(.─C1.22)C(.0.08C─C1.00)C0.44±1.990.97±1.570.42C7.00(.─C3.00)C(.2.50C─C4.50)C0.18±2.140.73±1.790.30C7.31(.─C3.64)C(.5.91C─C4.22)C1.26±0.741.64±0.850.02*C(C0.00C─C3.00)C(C0.00C─C4.00)C1.18±0.721.55±0.680.01*C(C0.28C─C2.81)C(C0.30C─C3.27)C1.07±0.551.11±0.510.52C(C0.28C─C2.48)C(C0.24C─C2.95)C─C─C─C0.00±0.130.00±0.150.06C.0.08C─C0.40)C(C(.0.08C─C0.05)C.0.10±0.02.0.10±0.060.10C.0.08C─C0.52)C(C(.0.08C─C0.22)C0.00±0.200.10±0.370.42C.0.50C─C0.50)C(C(.1.00C─C0.75)C0.00±0.35.0.20±0.540.20C.0.51C─C0.88)C(C(.1.65C─C1.10)C0.10±0.250.50±3.000.36C(C0.00C─C1.00)C(C0.00C─C2.25)C0.60±0.430.70±0.870.63C(C0.03C─C1.54)C(.0.73C─C5.91)C0.96±0.591.15±0.720.25C(C0.11C─C2.46)C(C0.12C─C4.73)C─C─C─C0.00±0.100.05±0.130.18C.0.08C─C0.22)C(C(.0.08C─C0.00)C.0.08±0.02.0.05±0.050.02*C.0.08C─C0.40)C(C(.0.08C─C0.15)C.0.01±0.33.0.08±0.430.63C.0.50C─C1.00)C(C(.1.00C─C0.75)C0.32±0430.08±0.730.10C.0.43C─C1.10)C(C(.1.23C─C2.96)C0.32±0.400.31±0.530.58C(C0.00C─C1.00)C(C0.00C─C2.25)C0.76±0.430.87±0.790.87C(C0.00C─C1.46)C(C0.00C─C5.52)C1.00±0.601.22±0.700.17C(C0.18C─C2.52)C(C0.07C─C3.50)C─C─C─C0.00±0.100.04±0.13.0.08C─C0.22)C(C(.0.08C─C0.30)C0.44.0.07±0.04.0.06±0.06.0.08C─C0.10)C(C(.0.08C─C0.15)C0.86.0.03±0.270.12±0.60.0.50C─C0.50)C(C(.0.50C─C2.00)C0.640.23±0.380.09±0.93.0.41C─C1.09)C(C(.0.86C─C2.98)C0.050.21±0.470.44±0.770.59.1.00C─C1.00)C(C(C0.00C─C3.00)C0.54±0.440.69±0.450.59(C0.22C─C1.16)C(C0.08C─C2.01)C0.84±0.551.25±0.480.003(C0.00C─C2.47)C(C0.21C─C2.35)C0.54±0.330.52±0.290.782C(C0.08C─C1.51)C(C0.08C─C1.32)C0.201.501.000.500.030.040.050.100.00自覚球面度数(D)裸眼視力(logMAR)0.500.600.70a3.002.502.00矯正視力(logMAR)0.100.150.300.340.340.40NS60YT0.500.320.091.000.73他覚球面度数(D)0.97-0.010.120.440.000.230.010.180.00-0.05-0.50-0.03-0.08-0.12-0.50-1.00-1.00-1.50-1.50-2.00-2.00術前1週間1カ月3カ月-2.50術前1週間1カ月3カ月図2自覚球面度数(a)と他覚球面度数(b)の変化SIAをC0.30で計算しても他社製CT-IOLと同等の乱視矯正効果が得られると期待できる.NS60YTの支持部は光学部接線に対して垂直に出て直角に曲がり,長いのが特徴である.同社ではこれを「アンカーウィングループ」とよび,水晶体.との接触域を最大限に引き出すデザインで安定した中心固定をめざしたとしている.水晶体.赤道部との接触域が広いことで,.内回旋は少ないのではないかと期待されたが,少なくとも予定軸からの軸ずれについてはCXY1AT群よりも大きいという結果となった.XY1ATの支持部はシボ加工(前・後面),すり仕上げ(側面)されており,これが.内回旋を抑制している可能性がある7).乱視矯正効果は両群間に有意差がなかったが,今後は支持部の表面加工についても検討すべきかもしれない.NS60YTは発売時には球面度数はC1.0D.30.0D(28.0D以上はC1.0Dステップ)に拡張され,円柱加入度数もCT3.T5に加えC3.75D(角膜面C2.60D)加入のCT6,4.50D(角膜面C3.11D)加入のCT7が追加される予定である.より狭い切開創から挿入可能なプリセットインジェクターに収められれば,より多くの症例に適応できるようになり,他社製CT-IOLと遜色ない乱視矯正効果が期待できるレンズである.利益相反:利益相反公表基準に該当なしa3.00b2.502.50NS60YTXY1AT2.00NS60YTXY1AT2.00自覚円柱度数(D)他覚円柱度数(D)1.551.640.691.500.500.320.440.160.210.500.310.000.09-0.500.001.501.261.181.001.00術前1週間1カ月3カ月術前1週間1カ月3カ月図3自覚円柱度数(a)と他覚円柱度数(b)の変化文献1)MohammadiCM,CNaderanCM,CPahlevaniCRCetal:PrevaC-lenceCofCcornealCastigmatismCbeforeCcataractCsurgery.CIntCOphthalmolC36:807-817,C20162)StathamCM,CApelCA,CStephensenD:ComparisonCofCtheCAcrySofSA60sphericalintraocularlensandtheAcrySoftoricCSN60T3CintraocularClensCoutcomesCinCpatientsCwithClowamountsofcornealastigmatism.ClinExpOphthalmolC37:775-779,C20093)WorldCMedicalAssociation:WorldCMedicalCAssociationCDeclarationCofHelsinki:ethicalCprinciplesCforCmedicalCresearchCinvolvingChumanCsubjects.CJAMAC27:2191-2194,C20134)川下晶,蕪龍大,岩崎留己ほか:タブレット端末を用いたトーリック眼内レンズの軸合わせ.臨眼C75:335-338,C20215)AlpinsNA:ACnewCmethodCofCanalyzingCvectorsCforCchangeCinCastigmatism.CJCCataractCRefractCSurgC19:524-533,C19936)清水公也:角膜耳側切開白内障手術.眼科C37:323-330,C19957)竹下哲二,川下晶,安武真佑ほか:支持部の表面加工の異なるC2種類のトーリック眼内レンズの術後早期成績.眼科63:75-80,C2021***

低加入度数分節型トーリック眼内レンズの術後成績

2022年1月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科39(1):118.122,2022c低加入度数分節型トーリック眼内レンズの術後成績川下晶岩崎留己蕪龍大竹下哲二上天草市立上天草総合病院眼科CPostoperativeOutcomesoftheLow-Power-AddedToricIntraocularLensHikariKawashita,RumiIwasaki,RyotaKaburaandTetsujiTakeshitaCDepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospitalC目的:低加入度数分節型トーリック眼内レンズレンティスコンフォートトーリック(LS-313MF15T,参天製薬)の術後視機能を後向きに検討した.方法:21例C36眼(平均年齢:71.2±4.3歳)にCLS-313MF15Tを挿入し,術後C1週間,1カ月,3カ月の視機能と術翌日の軸ずれおよび.内回旋量を計測した.結果:術後C3カ月での裸眼視力はC1.15,遠方矯正下の中間視力はC70CcmでC0.93,50CcmでC0.85であった.中間用部を鼻側下方に挿入した群と耳側下方に挿入した群の間に有意差はなかった.軸ずれはC4.9±3.5°.内回旋量はC4.0±3.1°であった.重い中間用部が上方に回旋した群と下方に回旋した群の間に回旋量に有意差はなく,挿入軸の水平ラインからの角度と回旋量にも相関はなかった.結論:LS-313MF15Tは角膜乱視がある患者でも遠方も中間も良好な視力が得られ,挿入時に中間用部の向きや角度に特別な注意を払う必要のないトーリックCIOLであると思われた.CPurpose:Weretrospectivelyexaminedthepostoperativevisualfunctionoflow-power-addedsegmentaltoricintraocularlenses(T-IOLs).Subjectsandmethods:Thisstudyinvolved36eyesof21patients(meanage:71.2±4.3years)thatCunderwentCLentisCComfortCToricRIOL(LS-313MF15T;SantenPharmaceutical)implantation.CInallpatients,visualacuity(VA)at1-week,1-month,and3-monthspostoperative,andaxialmisalignmentandintra-capsularrotationonthedayaftersurgerywereexamined.Results:At3-monthspostoperative,themeanuncor-rectedVAwas1.15,andmeanintermediateVAunderfardistancecorrectionwas0.93at70Ccmand0.85at50Ccm.NoCstatisticallyCsigni.cantCdi.erenceCwasCobservedCbetweenCtheCgroupCinCwhichCtheCintermediateCsegmentCwasCinsertedbelowthenasalsideandthegroupinwhichitwasinsertedbelowthelateralside.Themeanaxialmis-alignmentwas4.9±3.5°,andmeanintracapsularrotationwas4.0±3.1°.Therewasnosigni.cantdi.erenceintheamountofrotationbetweenthegroupsinwhichtheheavysegmentwasrotatedupwardanddownward,andtherewasCnoCcorrelationCbetweenCtheCangleCofCtheCinsertionCaxisCfromCtheChorizontalClineCandCtheCamountCofCrotation.CConclusion:TheLS-313MF15TseemedtobeaT-IOLthatrequirednospecialattentiontotheorientationandangleCofCtheCintermediateCsegmentCduringCinsertion,CasCitCprovidedCgoodCVACinCbothCfarCandCintermediateCvision,Ceveninpatientswithcornealastigmatism.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(1):118.122,C2022〕Keywords:レンティス,分節型,トーリック,軸ずれ,回旋.lentis,segmented,toric,misalignment,rotation.はじめに一般的な眼内レンズ(intraocularlens:IOL)がC2本のループ状の支持部をもつのに対して,レンティスコンフォート(LS-313MF15,参天製薬)は,長方形のプレート形状をしている.対角線の長さはC11Cmmである.レンズ面積のC60%の遠用部と,それに1.5Dを加入したC40%の中間用部をもつ分節型のC2焦点CIOLである.同軸型の多焦点CIOLはハローやグレアとよばれる不快な光線現象を伴う傾向がある1)が,分節型CIOLではそれが少ないとされる1,2).角膜乱視を伴わない症例にCLS-313MF15を挿入した場合,遠方視力はもちろん中間視力も良好に得られると報告されている3,4).レンティスコンフォートトーリック(LS-313MF15T)は〔別刷請求先〕川下晶:〒866-0293熊本県上天草市龍ヶ岳町高戸C1419-19上天草市立上天草総合病院眼科Reprintrequests:HikariKawashita,DepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospital,1419-19RyugatakemachiTakado,Kamiamakusa-shi,Kumamoto866-0293,JAPANC118(118)LS-313MF15にトーリック成分を組み合わせたCIOLである.長方形の縦方向に円柱レンズの軸をもつ(図1).角膜乱視のある患者でも良好な中間視力が期待される.他のトーリックCIOL(以下,T-IOL)と同様,水晶体.内へ挿入後,レンズフックを使用してレンズを回転させ,IOLの軸を予定された角度に一致させる必要がある.製造元のCOculentis社のガイドラインでは,トーリック成分をもたないCLS-313MF15は中間用部が鼻側下方にくることが望ましいとされている.LS-313MF15Tは中間用部を水平より下方にくることが推奨されているため,乱視軸によっては中間用部が耳側下方に位置することもあり,レンズの向きが遠方および中間域の視機能に影響を及ぼす可能性も考えられる.また,T-IOLは術後C1時間以内に水晶体.内で回旋しやすい傾向がある5,6).乱視矯正効果は1°回旋するとC3%減弱するといわれている7).ループ状の支持部をもつCT-IOLの多くは全長がC13mmであるが,11mmと短い長方形のプレート状のCLS-313MF15Tはより回旋しやすい可能性がある.倒乱視の症例ではCLS-313MF15Tを横向きに挿入することになり,遠用部より加入のC1.50D分重い中間用部が重力によって下向きに回旋しやすいことも考えられる.LS-313MF15TのC3カ月間の術後短期成績と術後C1日での.内回旋の量および方向性について報告する.CI対象および方法1.対象上天草総合病院において,2020年C3.7月に白内障手術でCLS-313MF15Tを挿入した患者のうち,術中術後合併症がなく,IOLが水晶体.内固定されたC21例C36眼を対象とし,レトロスペクティブに検討した.白内障以外に視力に影響する眼疾患を有する患者は除外した.対象症例の平均年齢はC71.2±4.3歳(平均値C±標準偏差),男性C7例,女性C14例であった.本研究は,上天草総合病院の倫理審査委員会の承認(承認番号:2020-003)を得たのち,ヘルシンキ宣言に沿って実施された.C2.手術白内障手術はすべて同一の術者が行った.前.切開は連続円形切.で直径C5.8Cmm前後のレンズ前面をCcompletecoverできる大きさとし,2.2Cmm幅の上方強角膜切開から水晶体超音波乳化吸引術を行った.IOL挿入にはアキュジェクトユニフィットCLCJインジェクターと専用カートリッジ(いずれも参天製薬)を用いた.挿入時の粘弾性物質にはオペリード(千寿製薬)を用い,レンズ挿入後にCI/AチップでCIOLをタッピングする方法で十分に除去した.IOL乱視軸の軸合わせはパネル法8,9)を用いて行い,レンズの中間用部が水平ラインよりも下方となる向きに合わせた.全例が入院したうえでの手術であり,術後は車いすで帰棟し抗菌薬の点滴が終了図1レンティスコンフォートトーリック(LS.313MF15T)縦方向に軸マークが入れられている.するまでベッド上安静とした.C3.術前および術後検査角膜曲率半径は前眼部解析装置COPDscanIII(ニデック),眼軸長はCUS-4000エコースキャン(ニデック)で測定し,SRK/T式を用いてCIOLの球面度数を決定した.コントラスト感度測定にはCPelli-Robsonコントラストセンサティヴィティーチャートを用いた.乱視度数と挿入軸の決定には参天製薬のCWEBカリキュレーターを使用した.目標屈折値は全例0Dとし,術後惹起乱視はLS-313MF15挿入眼30例のデータをCDr.HillのCSurgicallyInducedAstigmatismCalcu-latorに入力して計算しC0.30とした.C4.視機能評価項目検討項目は,術後C1週間,1カ月,3カ月の遠方視力(裸眼,矯正),70cmおよびC50cmにおける中間視力(裸眼,遠方矯正下),他覚的球面度数,他覚的乱視度数,自覚的球面度数,自覚的乱視度数,術前と術後C1週間のコントラスト感度,術翌日の予定軸からの軸ずれ量と.内回旋量とした.また,IOLの中間用部を鼻側下方に挿入した群と耳側下方に挿入した群に分け,術後C1週間の遠方視力,中間視力,他覚的球面度数,他覚的乱視度数,自覚的球面度数,自覚的乱視度数,コントラスト感度について比較した.視力は小数視力表を用いC1.2まで測定し,logMARに換算した.自覚乱視度数はマイナスシリンダーを用いて計測し,絶対値に変換した.OPDscanIIIの測定設定は0.01Dステップだった.C5.予定軸からの軸ずれ量および.内回旋量の計測軸ずれ量は手術翌日に散瞳したのちCOPDCscanIIIを用いて徹照像撮影を行い,軸マークの角度を計測し,予定軸からの軸ずれを計算し絶対値で表した..内回旋量は筆者らが過去に報告した10)のと同一の手法を用いて測定した.すなわち,手術終了時のビデオ映像から静止画をC1枚保存する.虹abcd図2回旋量の計測方法表1術前から術後3カ月までの視機能術前術後1週間術後1カ月術後3カ月遠方視力(logMAR)裸眼C0.40±0.24C0.40±0.24**C0.00±0.11**C.0.06±0.04**矯正C0.07±0.13C0.07±0.13**C.0.06±0.05**C.0.07±0.03**70Ccm視力(logMAR)裸眼C0.06±0.13C0.03±0.11C0.03±0.10遠方矯正下C0.06±0.13C0.02±0.11C0.03±0.0950Ccm視力(logMAR)裸眼C0.12±0.14C0.13±0.13C0.08±0.12遠方矯正下C0.13±0.14C0.12±0.12C0.07±0.12自覚的球面度数(D)C0.83±1.88C**.0.14±0.34**.0.15±0.35**0.00±0.14自覚的乱視度数(D)C1.35±0.66C**0.05±0.20**0.10±0.26**0.04±0.14他覚的球面度数(D)C.0.30±1.80C**.0.96±0.49**.0.47±0.57**.0.49±0.38他覚的乱視度数(D)C0.93±0.33C**0.45±0.38**0.70±0.44**0.70±0.29コントラスト感度C1.36±0.17C*1.54±0.13*p<0.05,**p<0.01.彩色素や虹彩紋理などの目印をC2カ所見つけて線を引き,この線とレンズの乱視軸のなす角度をCAとする(図2a).手術翌日散瞳してからCOPDscanIIIを用いて前眼部撮影を行い,明所視像と徹照像の画像を保存する.これらは一度の撮影の表示方法が違うだけの画像であるので角度に変化がない.明所視像でビデオ映像からの画像と同じ目印を見つけて線を引く(図2b).この線を徹照像の画像に移動し,レンズの乱視軸(図2c)とのなす角をCBとする(図2d).AとCBの差の絶対値を術後C1日での.内回旋量とした.また,重い中間用部が下方に回りやすいと仮定すれば,てこの原理で挿入軸が水平に近いほど大きく回旋する可能性があると考え,水平ラインから挿入軸までの角度と回旋量の間に相関があるかどうかについて検討した.C6.統計学的処理統計解析には解析ソフトCEZRを用いた.Shapiro-Wilk検定にてデータの正規性を評価し,Mann-WhitneyU検定を用いて解析を行った.また,挿入軸の水平ラインからの角度と.内回旋量との相関については上方回旋をプラス,下方回旋をマイナスとしてCSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.有意水準は5%未満で有意差ありとした.CII結果術前の眼軸長はC23.31C±0.62Cmm,角膜乱視度数はC0.93C±0.33Dであった.挿入されたIOLの度数は+20.49±1.63Dだった.挿入予定軸がC0.30°またはC151.180°の場合を倒乱視,61.120°の場合を直乱視,それ以外を斜乱視とすると,倒乱視C28眼,直乱視C5眼,斜乱視C3眼であった.T1がC28枚,T2がC7枚,T3がC1枚だった.C1.視機能評価術前から術後C3カ月までの遠方および中間視力,他覚的球面度数および乱視度数,自覚的球面度数および乱視度数を表1に示す.術前と比較して,術後C1週間,1カ月,3カ月における遠方視力,他覚的球面度数および乱視度数,自覚的球面度数および乱視度数,コントラスト感度のすべてが有意に改善した.術後C3カ月の平均視力(logMAR)を小数視力に換算すると,遠方視力はC1.15(1.17),70Ccm中間視力は裸眼0.93,遠方矯正下C0.93,50Ccm中間視力は裸眼C0.83,遠方矯正下C0.85となった.表2中間用部を鼻側下方に挿入した群と耳側下方に挿入した群の比較中間用部挿入位置鼻側下方群(n=20)耳側下方群(n=14)p値遠方視力(logMAR)裸眼C矯正C.0.00±0.11C.0.05±0.05C0.01±0.11C.0.06±0.05Cp=0.86p=0.5670Ccm視力(logMAR)裸眼C遠方矯正下C0.04±0.12C0.02±0.10C0.10±0.15C0.11±0.15Cp=0.25p=0.0650Ccm視力(logMAR)裸眼C遠方矯正下C0.11±0.16C0.09±0.14C0.14±0.12C0.18±0.14Cp=0.54p=0.09自覚的球面度数(D)C自覚的乱視度数(D)C他覚的球面度数(D)C他覚的乱視度数(D)Cコントラスト感度C.0.15±0.36C.0.10±0.26C.0.98±.0.44C.0.54±0.47C1.53±0.16C.0.14±0.36C0.00±0.00C.0.99±0.56C.0.34±0.22C1.54±0.12Cp=0.96p=0.10p=0.98p=0.10p=0.792.中間用部挿入位置の鼻側下方群と耳側下方群の比較(°)IOLの中間用部を鼻側下方に挿入したC20眼と耳側下方に挿入したC14眼で,術後C1週間の遠方視力,中間視力,自覚的球面度数,自覚的乱視度数,他覚的球面度数,他覚的乱視度数,コントラスト感度に差があるか比較したが,すべての項目で有意差はなかった(表2).C3.軸ずれおよび.内回旋量術翌日の予定軸からの軸ずれ量はC4.9C±3.5°,手術終了時からの.内回旋量はC4.0C±3.1°であった..内回旋の方向については中間用部が上方に回ったものC8眼,下方に回ったもの24眼,回旋量C0°であったもの1眼,90°を跨いで回旋したものC2眼,挿入予定軸がC90°だったものC1眼だった..内回旋量は上方回旋群がC3.96C±2.74°,下方回旋群がC5.64C±2.89°で有意差はなかった(p=0.06).90°を跨いで回旋したC2眼と挿入予定軸がC90°だったC1眼を除いて,挿入軸の水平ラインからの角度と.内回旋量に相関はなかった(相関係数C0.26,Cp=0.14,図3).CIII考按Oshikaら11)はCLS-313MF15Tについて術後C6カ月の遠方視力はC1.0(1.25),70Ccm中間視力は裸眼C0.8,遠方矯正下もC0.8であったと報告している.筆者らの術後C3カ月視力も同様に良好な結果だった.また,同報告中,術後C6カ月での残余乱視は0.40D以下だったとしているが,筆者らの術後C3カ月の自覚的乱視度数はC0.04C±0.14D(36眼中C33眼が0.00D)と良好であり,LS-313MF15Tは高い乱視矯正能力をもつことが示された.Witら12)やCMcNeelyら13)は形状や加入度数は違うが分節構造であるCLentisMplusMF30について近用部を耳側上方(121)下方回旋↓0-5-10-150102030405060708090(°)水平ラインから予定軸までの角度図3水平ラインから挿入予定軸までの角度と.内回旋量の相関に挿入しても視機能に影響なかったと報告している.CLS-313MF15Tについて,筆者らの症例はC36眼中,倒乱視の症例がC29眼を占めており,横向きに挿入した症例が多かった.角膜乱視のない症例に非トーリックのCLS-313MF15を鉛直方向に挿入した過去の結果3,4)と比較して,同等に良好な遠方および中間視力が得られたことから,レンズの挿入の向きは視機能に影響を与えないと考えられる.さらにこれを鼻側下方群と耳側下方群に分けて術後C1週間の視機能をみると,70CcmおよびC50Ccm中間視力は鼻側下方群のほうがよい傾向にはあったが統計学的有意差はなかった.コントラスト感度を含めた他の項目についても有意差がなく,少なくとも中間用部を水平より下方に挿入する場合,挿入方向は気にする必要がないことがわかった..内回旋量について,筆者らはCLS-313MF15を鉛直方向に挿入した場合の術後1日の.内回旋量はC4.5°だったと報告あたらしい眼科Vol.39,No.1,2022C121↑上方回旋105した10).今回CLS-313MF15Tの.内回旋量は術後C1日でC4.0C±3.1°でそれに近い数字だった.倒乱視に対して横向きに入れた症例が多かったにもかかわらず,.内回旋量には大きな違いはなかった.Oculentis社は遠用部と中間用部の重量を公表していないが,中間用部は加入のC1.5D分だけ重いはずである.しかし,今回の症例では水平ラインからの挿入角度と回旋方向や回旋量の間に相関がなく,重い中間用部が下方に回りやすいという結果は得られなかった.Amigoら14)は水晶体.が縦長の楕円形をしているため,プレート型のレンズはレンズの長径が水晶体.の長径に合うように回旋するのではないかとしている.また,竹原ら15)もループを有するレンズを倒乱視症例に挿入すると,水晶体.の形状により反時計回りに回旋すると述べている.プレート型で対角線の長さがC11CmmのCLS-313MF15Tの場合,回旋に関与する力は重力より水晶体.の形状や大きさのほうが大きい可能性がある.今後角膜横径(whiteCtowhite)や角膜曲率半径との関係も調べていく必要がある.CLS-313MF15Tは光学部が分節型で外形がプレート型というこれまでのトーリックCIOLにない構造をしているが,乱視矯正能力と中間視力は良好であり,挿入の向きや角度についても特別な考慮の必要がない優れたトーリックCIOLであるといえる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)稲村幹夫:新しい眼内レンズ.臨眼C73:1473-1481,C20192)荒井宏幸:分節状屈折型多焦点眼内レンズ.あたらしい眼科C32:511-512,C20153)川下晶,蕪龍大,橋本真佑ほか:レンティスコンフォート挿入眼の術後1週間の中間視力に関与する因子.CIOL&RSC34:113-117,C20204)OshikaT,AraiH,FujitaYetal:One-yearclinicalevalu-ationofrotationallyasymmetricmultifocalintraocularlenswith+1.5dioptersnearaddition.SciRepC9:13117,C20195)InoueCY,CTakeharaCH,COshikaT:AxisCmisalignmentCofCtoricintraocularlens:PlacementerrorandpostoperativerotationCaxisCmisalignment.COphthalmologyC129:1424-1425,C20176)SchartmullerCD,CSchrie.CS,CSchwarzenbacherCLCetal:CTrueCrotationalCstabilityCofCaCsingle-pieceChydrophobicCintraocularlens.BrJOphthalmolC103:186-190,C20197)NovisC:AstigmatismCandCtoricCintraocularClenses.CCurrCOpinOphthalmolC11:47-50,C20008)小野晶嗣,蕪龍大,竹下哲二:パネル法を用いてトーリック眼内レンズの軸合わせを行った手術成績.日本視能訓練士協会誌C41:195-199,C20139)川下晶,蕪龍大,竹下哲二:タブレット端末を用いたトーリック眼内レンズの軸合わせ.臨眼C75:336-338,C202110)竹下哲二,川下晶,橋本真佑ほか:低加入度数分節型眼内レンズの.内回旋が視機能に及ぼす影響.あたらしい眼科C37:358-362,C202011)OshikaCT,CNegishiCK,CNodaCTCetal:ProspectiveCassess-mentCofCplate-hapticCrotationallyCasymmetricCmultifocalCtoricintraocularlenswithnearadditionof+1.5diopters.BMCOphthalmol20:454,C202012)WitCDW,CDiazCJ,CMooreCTCCetal:E.ectCofCpositionCofCnearadditioninanasymmetricrefractivemultifocalintra-ocularClensConCqualityCofCvision.CJCCataractCRefract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低加入度数分節型眼内レンズの囊内回旋が視機能に及ぼす影響

2020年3月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科37(3):358?362,2020?低加入度数分節型眼内レンズの?内回旋が視機能に及ぼす影響竹下哲二川下晶橋本真佑蕪龍大上天草市立上天草総合病院眼科TheIn?uenceoftheDegreeofRotationofanAsymmetricBifocalIntraocularLensonVisualFunctionafterSurgeryTetsujiTakeshita,HikariKawashita,MayuuHashimotoandRyotaKaburaDepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospitalはじめにレンティスコンフォート(以下,LS-313MF15,参天製薬)は光学部上方が遠用部,下方に+1.5Dを加入して中間用部とした低加入度数分節型眼内レンズである.ループを持たない,プレート型の形状をしている.添付文書には挿入方向を指定する記載はないが,同心円状ではなく分節型という特殊な形状のため挿入の角度によって視機能に差が出るのではないかという疑問がある.上天草総合病院眼科(以下,当科)では遠用部が上方,中間用部が下方となるように挿入しているが,手術翌日の診察時に鉛直方向に対してレンズが回旋している症例がよくみられる.レンズの回旋量によって視機能に差があるか,また挿入後にどの程度回旋したのかについてレトロスペクティブに検討した.I対象および方法1.対象2018年12月?2019年5月に当科で白内障手術を行い,片眼もしくは両眼にLS-313MF15を挿入した症例.トーリックレンズの適応がない,角膜乱視の少ない症例を適応とした.前眼部解析装置(OPD-ScanIII,NIDEK)の徹照像で〔別刷請求先〕竹下哲二:〒866-0293熊本県上天草市龍ヶ岳町高戸1419-19上天草市立上天草総合病院眼科Reprintrequests:TetsujiTakeshita,DepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospital,1419-19RyugatakemachiTakado,Kamiamakusa-shiKumamoto866-0293,JAPAN358(110)0910-1810/20/\100/頁/JCOPYレンズの長辺が確認できて線を引くことができたのは32例A39眼(70.3±4.9歳;平均±標準偏差,以下同様),右眼18眼,左眼21眼だった.角膜疾患や眼底疾患がある症例は除外した.2.手術手術は上方の強角膜を2.2mmスリットナイフで1面切開し,超音波乳化吸引を行ったのち,インジェクター(アキュ図1回旋量の計測方法ジェクトユニフィットWJ-60MII,参天製薬)を用いて眼内に挿入した.レンズフックを用いて4方向すべての角を?内に挿入したのち,遠用部が上方に来るよう角度を調整した.粘弾性物質にはオペリード(千寿製薬)を使用した.レンズ挿入後にI/Aチップを挿入し,光学部を左右にタッピングする方法で粘弾性物質を除去した.当科で使用しているI/Aチップでは光学部の裏側に挿入することができないためbehindthelens法1)での除去はできなかった.手術はすべて一人の術者が行った.手術の様子は顕微鏡に取り付けたビデオカメラを2)用いて撮影(解像度1,920×1,080)し,SDカードに保存した.3.鉛直方向からの回旋の計測手術翌日散瞳し,座位でOPD-ScanIIIを用いて前眼部を撮影,徹照像表示した画像と明所視像表示した画像をUSBメモリーに保存した.徹照像でレンズの長辺が写っているものを選び,パソコンソフトウェアPowerPoint(Microsoft社)に取り込み,画面上で長辺に沿って線を引き鉛直方向からなす角(A)をパソコンソフトウェア分度器で測りましょ(フリーウェア)で計測した(図1左).4.?内回旋量の計測手術終了時から1日でどの程度?内回旋するか計測した.手術時は仰臥位のため眼球は外方回旋しており,頭の傾きも座位のときとは異なっているため手術時とOPD-ScanIII撮影時で眼球回旋を補正する必要がある.既報3)をアレンジして補正を行い回旋量を計測した.まず先述のOPD-ScanIIIの明所視像をPowerPointの別スライドに取り込む.OPD-ScanIIIの徹照像と明所視像は同じ画像の表示方法が違うだけなので眼球回旋は同じである.徹照像に引いたレンズ長辺に沿った線をコピーして明所視像に張り付ける.Power-Pointでは線をコピーして移動しても角度は変化しない.つぎに色素斑や虹彩紋理などの目印を2カ所見つけ線を引く.この2本の線のなす角を測定しBとする(図1中).そして手術時のビデオより終了時点の映像を静止画として保存し,これをPowerPointの3スライド目に取り込みレンズの長辺に沿って線を引く.OPD-ScanIIIの明所視像で見つけた色素斑や虹彩紋理と同じ目印を見つけて線を引く.この2本の線のなす角を計測しCとする(図1右).BとCの差の絶対値を?内回旋量とした.PowerPointにOPD-ScanIIIの徹照像と明所視像,手術終了時の画像を別々のスライドに取り込む.徹照像でレンズの長辺に沿って線を引く.これと鉛直線のなす角(A)を測定する(左).レンズの長辺に沿って引いた線を明所視像にコピーして貼り付ける.色素斑や虹彩紋理などの目印を2カ所見つけ線を引き,2本の線のなす角をBとする(中).手術終了時の画像でレンズの長辺に沿って線を引く.OPD-ScanIIIの明所視像と同じ目印を見つけ線を引き,2本の線のなす角をCとする(右).BとCの差が術後1日の?内回旋量となる.5.視機能の評価術後1週間の遠方裸眼および矯正視力,他覚的および自覚的屈折値を測定した.遠方視力を完全矯正した状態で70cmおよび50cm視力を片眼ずつ測定した.これらの値と回旋量の間に相関があるか検討した.また,レンズが内方回旋した(中間用部が耳側下方)群と外方回旋した(中間用部が鼻側下方)群で差があるか検討した.6.統計学的処理鉛直方向からの回旋量と各項目との相関の検定にはSpearmanの順位相関(使用ソフトウェア:EasyR)を用いた.極端に回旋の大きい症例があったため,外れ値をSmirnovgrubbs検定(使用ソフトウェア:EasyR)で検出した.内方回旋群と外方回旋群間の検定にはWelchのt検定(使用ソフトウェア:MicrosoftExcel)を用いた.本研究は上天草総合病院倫理委員会の承認を得て実施した.II結果1.鉛直方向からの回旋量と視機能への影響手術翌日の鉛直方向からの回旋量は6.7±5.6°だった.内方回旋23眼,外方回旋13眼,回旋のなかったもの3眼だった.術後1週間での遠方視力は裸眼がlogMAR値0.07±0.22(小数視力換算0.86,以下同様),矯正が?0.06±0.06(1.13)だった.自覚的な球面度数は?0.24±0.42D,円柱度数は?0.17±0.35Dだった.OPD-ScanIIIを使用した他覚的な球面度数は?0.84±0.54D,円柱度数は?0.51±0.33Dだった.遠方視力を完全矯正した状態での片眼ずつの70cm視力は0.01±0.11(0.98),50cm視力は0.12±0.15(0.75)だった.これらの値とレンズの回旋との関係を図2~5に示す.いずれの項目も相関がなくレンズの回旋量は視機能に影0.90.80.70.60.50.40.30.20.10-0.10.250.20.150.10.050-0.05-0.205101520253035-0.105101520253035傾き(°)傾き(°)図2鉛直方向からのレンズの傾きと遠方視力の相関左:裸眼視力.p=0.487,r2=0.005.右:矯正視力.p=0.308,r=0.061.いずれも相関なし.0.250.20.150.10.050-0.05-0.1051015202530350.60.50.40.30.20.10-0.1-0.205101520253035傾き(°)傾き(°)図3鉛直方向からのレンズの傾きと中間視力の相関左:70cm視力.p=0.525,r2=0.072.右:50cm視力.p=0.532,r=0.008.いずれも相関なし.0-0.2-0.4-0.6-0.8-1-1.2-1.4-1.6051015202530350.50-0.5-1-1.5-205101520253035傾き(°)傾き(°)図4鉛直方向からのレンズの傾きと球面度数の相関左:自覚球面度数.p=0.640,r2=0.001.右:他覚球面度数.p=0.461,r=0.024.いずれも相関なし.響していなかった.内方に32°回旋していた症例があり外れ値と判定されたが,遠方視力1.0×IOL(n.c.),70cm視力0.6,50cm視力0.5と良好だった.手術翌日レンズが内方回旋した群と外方回旋した群の間には,裸眼・矯正視力,70cm・50cm視力,自覚・他覚球面度数,自覚・他覚円柱度数のいずれにおいても有意差はなかった(裸眼視力p=0.24,矯正視力p=0.55,70cm視力p=0.27,50cm視力p=0.75,自覚球面度数p=0.90,他覚球面度数p=0.76,自覚円柱度数p=0.24,他覚円柱度数p=0.28).2.手術後1日の?内回旋量症例中,OPD-ScanIIIの明所視像と手術終了時の映像の両方で目印2カ所を選定できたのは24例31眼だった.術後1日での?内回旋は4.5±3.7°(0?17°)だった.内方回旋したもの17眼,外方回旋したもの11眼,回旋のなかった0-0.2-0.4-0.6-0.8-1-1.2-1.4-1.6051015202530350-0.2-0.4-0.6-0.8-1-1.2-1.4-1.605101520253035傾き(°)傾き(°)図5鉛直方向からのレンズの傾きと円柱度数の相関左:自覚円柱度数.p=0.975,r2=0.001.右:他覚円柱度数.p=0.912,r=0.033.いずれも相関なし.もの3眼だった.III考察LS-313MF15の4.5°はこれらの報告に比べると大きい.また,Garzonら7)はLS-313MF15と同じ形状のLU-313(Oculentis)の術後1日での回旋は3.78°でAcrySofIQLS-313MF15は直径6mmの光学部の上方60%が遠用部,下方40%にはそれに1.5Dを加入して眼鏡面で+1.0D程度とし,中間部まで見えるようにしたレンズである.国内でこのような形状のレンズが保険適用となったのは初であり,使用成績報告がほとんどない.遠近両用眼鏡だと下方が近用部で瞳孔間距離もやや狭くなることから,LS-313MF15も中間用部を鼻側下方に向けて挿入したほうが見やすいのではないかというイメージがあり,製造元のOculentis社のガイドラインではその向きでの挿入を推奨している.しかしWitら4)やMcNeelyら5)は形状や加入度数は違うが分節型のLentisMplusMF30(Oculentis)について,近用部を鼻側下方へ挿入した群と耳側上方へ挿入した群で視機能には差がなかったとしている.そしてMcNeelyらは光視症を含む見え方の質は近用部を耳側上方に入れた群のほうがよかったとしている.今回LS-313MF15についても鉛直方向からの回旋と視機能には相関がなく,挿入時に回旋を気にする必要はないという結果となった.内方回旋群と外方回旋群の間にも有意差がなかった.内方に32°回旋していた症例でも視力は良好だった.今回,中間用部が上方にあった症例はなかったが,少なくとも中間用部が下方になる向きになるよう挿入した場合,レンズの回旋は視機能に影響しないと考えられた.レンズ挿入後の?内回旋についての報告は多数あるが,その多くはトーリック眼内レンズの軸が目標軸からどの程度ずれたかに言及したもので,手術終了時点から1日でレンズ自体がどの程度回旋したか調べたものは少ない.以前,筆者はループのあるデザインの1ピース眼内レンズW60(参天製薬)の術後1日の回旋量は1.52°だと報告した3).また,同様の手法で測定された報告として,Schartmullerら6)はXY1(HOYA)の術後1時間での回旋は1.5°だとしている.ToricIOL(Alcon)の0.96°より大きいとしている.しかし,この論文では時計回りを正の値,反時計回りを負の値として回旋量の平均値を求めており,時計回りと反時計回りに同等に回旋するレンズだと平均値は小さくなってしまうため単純比較はできない.とはいえ回旋の範囲がAcrySofIQToricIOLでは?5.00°から13.00°だったのに対しLU-313Tの回旋の範囲は?8.00°から18.00°だったということから,LU-313TのほうがAcrySofIQToricより回旋しやすい可能性はある.一方で古藪ら8)はZCT(JohnsonandJohnsonVision)における術後1日での回旋量は6.23°だったと報告している.LS-313MF15の全長は11mm,ZCTの全長は13mmであることを考えると必ずしも全長が短いほうが回旋しやすいということではない.また,Sethら9)はプレート型のAT-TORBI(CarlZeissMeditec)とAcrySofIQToricIOLは術後3カ月で回旋の程度に有意差がなかったとしており,レンズ形状が回旋に影響するとも言いがたい.LS-313MF15の?内回旋量は視機能に影響せず,術後1日での回旋量は他のレンズと比較して大きいとはいえなかった.文献1)松浦一貴,三好輝行,吉田博則ほか:水晶体?と眼内レンズは密着している.IOL&RS27:63-66,20132)竹下哲二:家庭用ハイビジョンカメラによる手術ビデオ撮影.あたらしい眼科26:1383-1385,20093)竹下哲二:1ピース非球面眼内レンズW60の挿入後?内回旋.眼科手術29:328-331,20164)WitDW,DiazJ,MooreTCetal:E?ectofpositionofnearadditioninanasymmetricrefractivemultifocalintra-ocularlensonqualityofvision.JCataractRefractSurg41:945-955,20155)McNeelyRN,PazoE,SpenceAetal:Comparisonofthevisualperformanceandqualityofvisionwithcombinedsymmetricalinferonasalnearadditionversusinferonasalandsuperotemporalplacementofrotationallyasymmetricrefractivemultifocalintraocularlenses.JCataractRefractSurg42:1721-1729,20166)SchartmullerD,Schrie?S,SchwarzenbacherLetal:Truerotationalstabilityofasingle-piecehydrophobicintraocularlens.BrJOphthalmol103:186-190,20197)GarzonN,PoyalesF,ZarateBetal:Evaluationofrota-tionandvisualoutcomesafterimplantationofmonofocalandmultifocaltoricintraocularlenses.JRefractSurg31:90-97,20158)古藪幸貴子,松島博之,向井公一郎ほか:トーリック眼内レンズの術後回旋評価.IOL&RS32:473-479,20189)SethS,BansalR,IchhpujaniPetal:Comparativeevalua-tionoftwotoricintraocularlensesforcorrectingastigma-tisminpatientsundergoingphacoemulsi?cation.IndianJOphthalmol66:1423-1428,2018◆**

パワーベクトル法を用いたトーリック有水晶体眼内レンズの術後長期安定性の評価

2013年9月30日 月曜日

《原著》あたらしい眼科30(9):1318.1322,2013cパワーベクトル法を用いたトーリック有水晶体眼内レンズの術後長期安定性の評価藤本可芳子本田恭子和田有子田中美和入江智美森山貴司フジモト眼科ToricPhakicIntraocularLensLong-TermStabilityEvaluationbyPowerVectorAnalysisKahokoFujimoto,KyokoHonda,YukoWada,MiwaTanaka,TomomiIrieandTakashiMoriyamaFujimotoEyeClinic目的:トーリック有水晶体眼内レンズ(TICL)挿入眼における乱視矯正効果の術後4年間の長期安定性を検討した.対象および方法:対象は,2006年5月から2009年1月までにTICLを挿入し,術後4年間の経過観察ができた11例22眼である(平均年齢:30.9±9.0歳).術後1,3,6カ月,1,2,3,4年後の自覚屈折値,視力,角膜乱視を検討した.乱視の安定性は,powervector解析における乱視成分のJ0とJ45の変化により評価した.結果:術後1カ月の平均視力は裸眼1.16(矯正1.42),術後4年で0.94(1.23),平均自覚屈折値(球面,円柱)は,術後1カ月で.0.20D,.0.13D,術後4年で.0.39D,.0.10Dであった.自覚屈折値のJ0とJ45成分は,術後1カ月で0.04±0.11Dおよび.0.02±0.11D,術後4年で0.02±0.14Dおよび0.01±0.04Dと術後4年間で有意な変動はみられなかった(p=0.16,0.24).結論:術後4年間でpowervector解析の乱視成分は安定していたことから,視力に影響するレンズの回転はなく,長期安定性が保たれることが示唆された.Purpose:Toassesslong-termstabilityinastigmatismcorrectionduring4yearsaftertoricphakicintraocularlens(TICL)implantation.SubjectsandMethod:Thisretrospectivestudycomprised22eyesof11patients(meanage:30.9±9.0years)whoreceivedTICLfromMay2006toJanuary2009andwerefollowedupfor4years.Manifestrefraction,visualacuityandcornealastigmatismwereevaluatedat1,3and6months,and1,2,3and4yearspostoperatively.StabilityinastigmatismcorrectionwasmeasuredbychangesinJ0andJ45componentsinpowervectoranalysis.Results:Meanvisualacuitywas1.16uncorrected(1.42best-corrected)at1monthand0.94(1.23)at4yearspostoperatively.Meanmanifestsphericalandcylindericalrefractiouswere.0.20D,.0.13Dat1monthand.0.39D,.0.10Dat4years.TheJ0andJ45ofmanifestrefractionsat1monthwere0.04±0.11Dand.0.02±0.11D,respectively;at4yearstheywere0.02±0.14Dand0.01±0.04D,withnosignificantchangethroughthe4years(p=0.16and0.24,respectively).Conclusion:Nochangeinastigmatismcomponentsofpowervectoranalysisforupto4yearspostoperativelydemonstratedlong-termstabilityafterTICLimplantation,withoutrotationinfluencingvisualacuity.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(9):1318.1322,2013〕Keywords:有水晶体眼内レンズ,トーリック,乱視,パワーベクトル解析.phakicintraocularlens,toric,astigmatism,powervectoranalysis.はじめにLaserinsitukeratomileusis(LASIK)による近視性乱視矯正では,矯正度数は高いほど,角膜切除量が多くなり術後高次収差が増加する1),コントラスト感度などの視機能が低下する,術後の屈折が戻り近視化する,などの問題があるため,中度から強度の近視を有する乱視矯正手術として,近年,トーリック有水晶体眼内レンズ(TICL)が注目されている2).わが国では,STAARSurgical社のトーリック有水晶体眼内レンズVisianICLTM(TICL)が使用可能であり,良好な有効性,安全性が報告されている3.5).術後3年間の検〔別刷請求先〕藤本可芳子:〒530-0041大阪市北区天神橋6-6-4フジモト眼科Reprintrequests:KahokoFujimoto,M.D.,FujimotoEyeClinic,6-6-4Tenjinbashi,Kita-ku,Osaka530-0041,JAPAN1318(118)0910-1810/13/\100/頁/JCOPY 討では,良好な裸眼視力が維持されている6).乱視矯正においては,眼内レンズ(IOL)の乱視軸の長期安定性が重要である.白内障手術で用いるトーリックIOLは,水晶体.内に固定されると術後長期にレンズの回転やずれは少ない7).一方,虹彩裏面の毛様溝に固定されるTICLでは,術後早期の軸ずれは2.7.4.8°と少ない8.10)が,長期の安定性に対する検討は少ない11).そこで,今回,TICLの術後4年間の乱視矯正効果の安定性をpowervector解析(PV解析)を用いて後ろ向きに評価した.I対象および方法対象は,2006年5月から2009年1月までにSTAARSurgical社のTICLを挿入し,術後4年の経過観察ができた11例22眼(男女比9:2),平均年齢は30.9±9.0歳(範囲:19.46歳)であった.全例,屈折矯正手術目的で当院に来院し,屈折異常以外に眼疾患はなかった.症例の選択基準は,18歳以上50歳未満,球面.8.0D以上,自覚乱視度数1.0D以上,角膜厚が十分でない,あるいは,円錐角膜の疑いなどでLASIKによる矯正が不適と考えられた症例であった.厚生労働省の承認前の症例に対しては,十分なインフォームド・コンセントを行い,同意を得たうえで手術を施行した.症例の術前背景は表1に示す.術前検査項目は,裸眼と矯正視力,散瞳時屈折値,角膜乱視,角膜形状解析,Scheimpflugカメラ解析,角膜内皮細胞密度,眼底検査であった.角膜乱視と角膜形状解析は,それぞれ,オートケラトメータ,OPDScan(NIDEK)で測定した.Scheimpflugカメラ解析は,Pentacam(Oculus)で行い,角膜後面から水晶体前面までの前房深度と,水平方向の角膜輪部横径(white-to-white)を求めた.TICLの長さは,角膜輪部横径の水平計測値に0.5mm加えた値を隅角間距離として決定した.TICLのモデル決定は,メーカー推奨を使用した.術前約1カ月前に,アルゴンレーザーとNd:YAGレーザーによる虹彩周辺切除を行い,術前3日から手術当日まで抗菌薬点眼を行った.術直前に,座位で角膜輪部6時に26ゲージ針を用いてピオクタニンで点状マーキングを行った.塩酸リドカイン4%の点眼麻酔と0.75%前房麻酔後,TICLの軸位置を角膜上にマーキングし,耳側から結膜強膜3mmの1面切開を行い,前房内に低分子量粘弾性物質を充.した.インジェクターを表1術前における症例背景平均±標準偏差範囲年齢(歳)角膜輪部横径(mm)前房深度(mm)眼軸長(mm)30.9±9.011.91±0.353.34±0.3028.03±2.7319.4611.2.12.72.77.3.8924.9.32.4(119)用いてTICLを内皮と水晶体に接触しないように虹彩下へ挿入した.虹彩下に入らない場合は,角膜12時または6時に作製した1mm切開部からICLTMマニピュレータまたはICLTMスパーテルを挿入し,レンズ支持部を虹彩下へ収納した.高分子量粘弾性物質を前房内に充.し,TICL下の低分子量粘弾性物質を圧出した後,Simcoe針またはI/A(irrigation/aspiration)で,前房内の粘弾性物質を除去した.手術直後に,細隙灯顕微鏡で軸ずれがないか確認し,前眼部を写真撮影した(図1).術後点眼は,白内障手術に準じて,1日3回抗菌薬,ステロイド薬,非ステロイド薬点眼を術後1カ月,抗菌薬,非ステロイド薬点眼を術後3カ月まで行った.術後検査項目は,視力(裸眼と矯正),自覚屈折値,角膜乱視,散瞳下の細隙灯顕微鏡検査,Scheimpflugカメラ解析,角膜内皮細胞密度で,術後1,3,6カ月,1,2,3,4年に行った.細隙灯顕微鏡検査では,TICLの軸位置と術直後に撮影した前眼部写真での位置とを比較し,10°以上のずれがないことを確認した.Scheimpflugカメラ解析は,Pentacam(Oculus)で測定した前眼部画像より,角膜後面とTICL前面間の距離を術後前房深度として計測した.術後4年間における,視力,自覚屈折値(球面と円柱),角膜乱視,角膜内皮細胞密度,術後前房深度の変化を検討した.自覚屈折値と角膜乱視に対しては,統計学的な処理が行えるpowervector(PV)解析12)を行った.球面度数がSD,円柱度数がCDで乱視軸がa°の屈折力に対するpowervector[M,J0,J45]の各成分は下式で定義される.M=S+C/2J0=(.C/2)cos(2a)J45=(.C/2)sin(2a)J0とJ45は,それぞれ乱視の直倒乱視,斜乱視成分に対応図1細隙灯顕微鏡による軸ずれの有無の確認TICL挿入後,細隙灯顕微鏡でマーキングされた位置とTICLの軸が一致することを確認(矢印).あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131319 する.直乱視ではJ0は正値に,倒乱視では負となる.PV解析は,他のベクトル解析と同様に倍角座標で評価しているため,乱視の軸を含めた経時的な変化を評価できる13).直乱視症例にTICLを挿入した場合,術後のJ0は矯正効果(正なら低矯正)を示し,J45は増加すると軸ずれがあると判断される.斜乱視症例では,術後のJ0とJ45は逆の指標となる.本検討では,乱視の経時的な変化を術後のJ0,J45の変動を調べ,検討した.水晶体乱視の加齢変化は10年で.0.01D(J0成分)程度と小さいと考えられる14)ため,筆者らは自覚乱視と角膜乱視の変動について検討を行った.術後1カ月から4年における変化に対して,裸眼および矯正視力はFriedman検定,自覚屈折値,角膜乱視と自覚乱視のJ0とJ45,内皮細胞密度,前房深度の変化は分散分析にて検定した.p<0.05を統計学的に有意差ありとした.結果は,平均±標準偏差で示す.II結果1.視力と自覚屈折値術後4年間の視力と自覚屈折値を表2に示す.術後1カ月の平均視力は,裸眼1.16,矯正1.42であった.術後4年の視力は,裸眼0.94,矯正1.23と矯正視力のみ有意差がみられた(p=0.049).白内障による視力低下例(1例2眼)を除外すると,有意な視力低下は認めなかった(p=0.18).自覚屈折値は,術後1カ月が球面.0.20±0.43Dおよび円柱.0.13±0.31D,術後4年が球面.0.39±0.54D,円柱.0.10±0.27Dと,球面度数は有意に近視化した(p<0.001)が,円柱度数は有意な変化はなかった(p=0.055).2.角膜乱視,角膜内皮細胞密度,術後前房深度角膜乱視は,術前1.93±0.72D(倒乱視1眼,直乱視19眼)から,術後1カ月2.25±0.82Dとなり,術後4年では2.02±0.76Dであった(表2).術後1カ月時の角膜惹起乱視は,0.27±0.19D直乱視化した.角膜内皮細胞密度は,術前2,824±359cell/mm2から,術後3カ月2,825±251cell/mm2,術後4年2,803±192cell/mm2と,4年間の減少率は0.8%で,有意な減少はみられなかった(p=0.68,分散分析).術後前房深度は,術後1カ月2.19±0.37mm,術後4年2.41±0.30mmと有意ではなかった(p=0.08,分散分析)が,多少の増加傾向があった.表2術後4年間における視力,自覚屈折値,内皮細胞密度,術後前房深度の変化術前術後1カ月術後3カ月術後6カ月術後1年術後2年術後3年術後4年裸眼視力logMAR(小数)1.56±0.38(0.01).0.06±0.20(1.16).0.05±0.16(1.12).0.06±0.20(1.15).0.04±0.21(1.10).0.05±0.15(1.12).0.01±0.22(1.02)0.02±0.26(0.94)矯正視力logMAR(小数).0.07±0.08(0.90).0.15±0.06(1.42).0.16±0.04(1.44).0.16±0.04(1.44).0.14±0.05(1.37).0.14±0.07(1.37).0.12±0.08(1.31).0.09±0.11(1.23)自覚球面度数(D).8.40±4.76.0.20±0.43.0.03±0.43.0.11±0.50.0.28±0.40.0.25±0.42.0.40±0.49.0.39±0.54自覚円柱度数(D).1.55±0.54.0.13±0.31.0.30±0.35.0.19±0.34.0.09±0.25.0.31±0.35.0.22±0.38.0.10±0.27角膜乱視(D)1.93±0.722.25±0.822.17±0.822.17±0.771.99±1.062.06±0.792.14±0.792.02±0.76内皮細胞密度(cell/mm2)2,824±3592,825±2512,683±1282,861±1,1142,800±2052,737±1472,803±192術後前房深度(mm)2.19±0.372.23±0.352.30±0.302.35±0.282.41±0.30●:J0成分:J45成分1.51.00.50.0-0.5パワーベクトルJ0,J45成分(D)●:J0成分:J45成分1.51.00.50.0-1.0-0.5パワーベクトルJ0,J45成分(D)Pre1M3M6M1Y2Y3Y4YPre1M3M6M1Y2Y3Y4Y図2自覚乱視に対するPV解析のJ0,J45成分の術後4年間図3角膜乱視に対するPV解析のJ0,J45成分の術後4年間の変化の変化1320あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013(120) 3.PV解析散瞳下の細隙灯顕微鏡観察において,TICLの10°以上の軸ずれはみられなかった.自覚屈折値のPV解析結果を図2に示す.J0成分は,術前0.59±0.49Dから術後1カ月に0.04±0.11Dに低下したが,術後1カ月から術後4年(0.02±0.14D)の間は有意な変化はなく,安定していた(p=0.16).J45成分は,術前.0.07±0.29D,術後1カ月.0.02±0.11Dで術後4年(0.01±0.04D)までの間には有意な変動はなかった(p=0.24).角膜乱視にPV解析を行った結果(図3),J0成分は,術後1カ月(1.04±0.45D)から術後4年(0.91±0.44D)まで有意な差がみられた(p=0.034,分散分析)が,その変化量は0.13Dと臨床的に無視できる程度であった.J45成分は,術後1カ月(.0.06±0.39D)から術後4年(.0.07±0.38D)まで安定していた(p=0.74).角膜乱視と自覚屈折値は,術後4年間において安定していたことから,TICLの乱視軸は術後安定していたと考えられた.III考按乱視矯正において,1°の乱視軸のずれは約3%の矯正効果低下となるため15),TICLの乱視軸と自覚乱視の軸が一致することは重要である.白内障術後のトーリックIOL挿入眼では,術後の乱視軸の評価は角膜乱視を基準に行われる7)が,TICL挿入眼では水晶体乱視も含めた自覚乱視で評価する.しかし,自覚乱視の検査精度は,矯正レンズの度数ステップで制限される.今までの報告では,自覚円柱度数で検討が行われており3.6),ベクトル解析を用いた検討は少ない10).Jaffe法などのベクトル解析は,術前後など2点間の乱視変化を評価する方法であるため,多点の観察期間に対する経年的な変化を評価するには適さない.PV解析は,ベクトル解析に基づいているだけでなく,各成分は加減算できるため,統計学的な解析にも適した方法である12,13).本検討では,PV解析によりTICLの乱視矯正の経年変化が評価され,直倒乱視,斜乱視成分で術後長期の安定性が確認された.術後早期におけるTICLの回転は,散瞳後のTICL写真9)OPDScanのinternalmap8),自覚と角膜乱視からの算出10)(,)などによって評価されている.これらの検討では,術後早期の回転は1.3°から4.8°程度と報告されている.本検討における,術後1,6カ月のJ0とJ45から乱視軸の変化を求めると,軸の変化は4.4°であり,今までの検討と同レベルであった.TICLは水平方向に挿入され,毛様体溝に固定される.毛様体間の距離は,解剖学的に縦長の形状であることが報告されている16,17).Biermannらによる35MHz超音波生体顕微鏡を用いた解析によると,近視眼の毛様体間距離は,水平方向の12.19±0.47mmに比べて,垂直方向は12.51±0.43mmと長い17).角膜の隅角間距離の前眼部OCT(光干渉断層計)(121)解析においても同様の結果が報告されている16).解剖学的にはTICLを垂直方向に固定するほうが長期安定性は良いと考えられる.しかし,水平方向の固定でも良好な安定性が得られた要因は,TICLはプレート形状であるため回転しにくいこと,vauldingによる伸展固定,Zinn小帯の粘稠性などが考えられた.TICL挿入眼における術後長期の視力は,裸眼と矯正で低下した.矯正視力の低下は,白内障の進行による視力低下1例2眼によるものであった.しかし,白内障症例以外でも有意ではないが低下傾向はみられ,加齢による軽度な白内障は発症した可能性が考えられた18).また,本来,強度近視であるため,緑内障19),網膜疾患の危険因子も考慮すべきである.球面度数の経年的な近視化に伴い,裸眼視力は低下した.加齢化により水晶体の屈折力が増加した3,20)ためであると考えられた.角膜乱視のJ0成分において,変化量は少なかったが,術後1カ月から4年で有意に減少した.角膜乱視は,加齢により倒乱視化する21)ため,その影響が考えられる.術後4年間でJ0成分が減少した症例は19眼(86.4%)で,術後長期において倒乱視化が起こっていると示唆された.術後長期における倒乱視化を考慮すると,TICLの円柱度数は,術直後には多少の直乱視が残るように設定すべきであると考えられた.文献1)OshikaT,MiyataK,TokunagaTetal:Higherorderwavefrontaberrationsofcorneaandmagnitudeofrefractivecorrectioninlaserinsitukeratomileusis.Ophthalmology109:1154-1158,20022)KamiyaK,ShimizuK,IgarashiAetal:Comparisoncollamertoricimplantablecontactlensimplantationandwavefront-guidedlaserinsitukeratomileusisforhighmyopicastigmatism.JCataractRefractSurg34:16871693,20083)KamiyaK,ShimizuK,AizawaDetal:One-yearfollow-upofposteriorchambertoricphakicintraocularlensimplantationformoderatetohighmyopicastigmatism.Ophthalmology117:2287-2294,20104)SanderDR,SchneiderD,MartinRetal:Toricimplantablecollamerlensformoderatetohighmyopicastigmatism.Ophthalmology114:54-61,20075)SchalhornS,TanzerD,SandersDRetal:RandomizedprospectivecomparisonofVisiantoricimplantablecollamerlensandconventionalphotorefractivekeratectomyformoderatetohighmyopicsatigmatism.JRefractSurg23:853-867,20076)松村一弘,小松真理,五十嵐章史ほか:後房型トーリック有水晶体眼内レンズ(TICL)の術後3年の成績.IOL&RS25:247-253,20117)HollandE,LaneS,HornJDetal:TheAcrySofToricあたらしい眼科Vol.30,No.9,20131321 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