‘ヒト水晶体上皮細胞’ タグのついている投稿

インターフェロン-γおよびリポ多糖による併用刺激処理したヒト水晶体上皮細胞株SRA 01/04における過剰産生一酸化窒素の細胞膜Ca2+-ATPase遺伝子発現に対する影響

2009年5月31日 日曜日

———————————————————————-Page1(129)7090910-1810/09/\100/頁/JCLSあたらしい眼科26(5):709713,2009c〔別刷請求先〕伊藤吉將:〒577-8502東大阪市小若江3-4-1近畿大学薬学部製剤学研究室Reprintrequests:YoshimasaIto,Ph.D.,SchoolofPharmacy,KindaiUniversity,3-4-1Kowakae,Higashi-Osaka,Osaka577-8502,JAPANインターフェロン-gおよびリポ多糖による併用刺激処理したヒト水晶体上皮細胞株SRA01/04における過剰産生一酸化窒素の細胞膜Ca2+-ATPase遺伝子発現に対する影響長井紀章*1伊藤吉將*1,2臼井茂之*3平野和行*3*1近畿大学薬学部製剤学研究室*2同薬学総合研究所*3岐阜薬科大学薬剤学研究室EectofEnhancedNitricOxideProductiononPlasmaMembraneCa2+-ATPaseExpressioninHumanLensEpithelialCellLineSRA01/04TreatedwithCombinationofInterferon-gandLipopolysaccharideNoriakiNagai1),YoshimasaIto1,2),ShigeyukiUsui3)andKazuyukiHirano3)1)SchoolofPharmacy,2)PharmaceutialResearchandTechnologyInstitute,KindaiUniversity,3)LaboratoryofPharmaceutics,GifuPharmaceuticalUniversity本研究はヒト水晶体上皮由来細胞株SRA01/04(HLE細胞)を用いインターフェロン-g(IFN-g)およびリポ多糖(LPS)併用刺激により誘導される誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)が細胞膜Ca2+-ATPase(PMCA)遺伝子発現に与える影響について検討を行った.HLE細胞では4種類のPMCAアイソフォーム(PMCA1,2,3および4)のうちPMCA1および4のみの発現が確認された.iNOS遺伝子発現を介した過剰な一酸化窒素(NO)産生がみられるIFN-g1,000IU/ml)およびLPS(100ng/ml)の併用処理を行ったところ処理時間に従ってPMCA1および4両遺伝子発現量が増加し,この増加は処理後6時間以降18時間まで未処理群と比較し顕著に上昇した.これらIFN-g,LPS併用刺激によるPMCA1および4両遺伝子発現量の上昇はiNOSの選択的阻害薬であるアミノグアニジン(250μM)を添加することで有意に抑制された.さらに,PMCA1および4両遺伝子発現量の上昇はNO産生量と高い相関関係を示した.以上の結果からHLE細胞においてiNOS誘導を介したNOの過剰産生はPMCA1および4両遺伝子発現量増加をひき起こすことを明らかとした.WeinvestigatedthechangesinplasmamembraneCa2+-ATPase(PMCA)mRNAexpressioninhumanlensepithelialcelllineSRA01/04(HLEcell)followingtreatmentwithinterferon-gamma(INF-g,1,000IU/ml)andlipopolysaccharide(LPS,100ng/ml),whichinduceinduciblenitricoxidesynthase(iNOS)expression.PMCAhasseveralisoforms(PMCA1-4);PMCA1and4mRNAwereexpressedintheHLEcell.PMCA1and4mRNAexpressionlevelsintheHLEcellwereincreasedwithdurationofincubationwithINF-gandLPS.Furthermore,aminoguanidine,aselectiveinhibitorofiNOS,attenuatedtheincreaseinexpressionofPMCA1and4mRNA.AcloserelationshipwasobservedbetweenPMCA1and4mRNAexpressionandNOproduction.Inconclusion,thepresentstudydemonstratedthatexcessiveproductionofNObyiNOSmaycauseincreasedPMCA1and4mRNAexpressionintheHLEcell.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(5):709713,2009〕Keywords:ヒト水晶体上皮細胞,細胞膜Ca2+-ATPase,一酸化窒素,白内障,アミノグアニジン.humanlensepithelialcell,plasmamembraneCa2+-ATPase,nitricoxide,cataract,aminoguanidine.———————————————————————-Page2710あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009(130)はじめに白内障とは水晶体が白く混濁するすべての現象をいい,現在日本において最も多いのが加齢白内障である1).この加齢白内障のおもな発症機構として,紫外線などにより誘導される酸化的ストレスが水晶体上皮細胞に傷害を与えることで細胞内恒常性が破綻をきたし水晶体Ca2+量上昇をひき起こす2,3).この水晶体中Ca2+上昇はCa2+依存性蛋白分解酵素であるカルパインを活性化し,これにより,クリスタリン蛋白質が分解・凝集され水晶体が白く混濁するという報告がなされている2,3).このように,水晶体混濁には水晶体中Ca2+量の変化が大きな役割を果たしていると考えられる.筆者らは遺伝性白内障モデル動物を用いたこれまでの研究で,この水晶体中Ca2+量上昇に誘導型一酸化窒素(iNOS)由来一酸化窒素(NO)の過剰産生が関与することを明らかとした4).したがって,過剰なNO産生は水晶体上皮細胞においてCa2+制御機構の崩壊をひき起こすことが示唆された.これら水晶体Ca2+量の調節には,細胞内のATP(アデノシン三リン酸)を駆動力とし細胞内から細胞外へとCa2+を汲み出す細胞膜Ca2+-ATPase(PMCA)が知られているため5),このPMCAの障害が水晶体Ca2+量の上昇に関与することが予想された.しかしこれらの予想に反し,ヒト水晶体上皮細胞において水晶体Ca2+量上昇の要因とされる過剰な一酸化窒素産生はCa2+-ATPase活性の増加をひき起こした6).iNOSの選択的阻害薬であるアミノグアニジン(AG)の投与により,このCa2+-ATPase活性の増加は強く抑制された7,8).したがって,ヒト水晶体における詳細なNOと水晶体中Ca2+制御機構の関わりを明らかとすることは,白内障発症機構解明を進めていくうえできわめて重要であると考えられた.ヒト白内障発症機構解明に関する研究を進めていくうえで培養細胞の使用は有効である.しかし,ヒトからの正常水晶体上皮細胞は入手することが非常に困難であり,個々間でばらつきがみられる.一方,HLE細胞はヒト由来であり,世代によるばらつきが少ないため基礎研究において使用されている.筆者らも,これまでの研究で水晶体上皮の基礎研究に有効であることを報告している6).そこで今回,ヒト水晶体上皮由来細胞株SRA01/04(HLE細胞)9)におけるPMCAアイソフォームの存在を確認するとともに,iNOS誘導能が知られるインターフェロン-g(IFN-g)およびリポ多糖(LPS)併用刺激がHLE細胞中PMCA遺伝子発現へ与える影響について検討を行った.I対象および方法1.HLE細胞培養および薬物処理実験HLE細胞は10%ウシ胎児血清を含むDMEM(Dulbecco変法Eagle培地)(GIBCO社製,東京,日本)を用い37oC,5%CO2条件下で80%コンフルエンスになるまで培養した.薬物処理実験では80%コンフルエンス状態のHLE細胞にIFN-g(終濃度1,000IU/ml,PeproTech社製,ロンドン,UK)を添加し1時間インキュベーションを行った.その後,LPS(終濃度100ng/ml,シグマ・ケミカル社製,東京,日本)を添加し,それぞれ618時間インキュベーションを行った後,細胞を回収した.AG(終濃度250μM,ナカライテスク社製,京都,日本)処理はLPS添加12時間後にそれぞれを添加し,その6時間後に細胞の回収を行った.2.PMCA遺伝子発現量の測定0,6,12,18時間IFN-gおよびLPSにて併用処理したHLE細胞をスクレイパーにて回収を行った.この回収したHLE細胞をRNeasyminkit(QIAGEN社製,東京,日本)を用いてtotalRNAを抽出し,oligodTプライマー(宝酒造社製,京都,日本)と逆転写酵素(宝酒造社製,京都,日本)を用い1μgのtotalRNAからcDNAを合成した4).合成したcDNAに各遺伝子特異的プライマーを加え,TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造社製,京都,日本)を用いpoly-merasechainreaction(PCR)反応を行った.PCR条件はdenaturation(94oC,30s),annealing(62oC,30s),exten-sion(72oC,45s)で30または35cycle行い,プライマーは以下のものを用いた.5¢-ACTGAGTCTCTCTTGCTTCGGAAAC-3¢および5¢-ACGAAATGCATTCACCACTCG-3¢(PMCA1),5¢-ACAGTGGTACAGGCCTATGTCG-3¢および5¢-CGAGCCGTGTTGATATTGTCG-3¢(PMCA2),5¢-CACACTGGTCAAAGGGATTATCG-3¢および5¢-AGAGCTGCATCATGACGAACG-3¢(PMCA3),5¢-GTTCTCCATCATCCGAAACGG-3¢および5¢-CAAGCATCCAAGTGCCGTACTAG-3¢(PMCA4),5¢-CATCACCATCTTCCAGGAGCGAGA-3¢および5¢-CCACCACCCTGTTGCTGTAGCCA-3¢(glyceraldehydes-3-phosophatedehydroge-nase:GAPDH).PCR増幅産物はアガロースゲル電気泳動を行いエチジウムブロマイドにより染色し,写真撮影を行った.得られた結果はハウスキーピング遺伝子であるGAPDHに対する比として表した.3.NO産生量の測定0,6,12,18時間IFN-gおよびLPSにて併用処理したHLE細胞の培地をNO測定に用いた.回収した培地にエイコム社製マイクロダイアリシスプローブ(A-1-20-05,5mmlength)を浸し,酸化窒素分析システムENA-20(エイコム社製,京都,日本)にて水晶体中NO量を測定した.本研究でのNO産生量は,NO2とNO3の総和として表した.4.総蛋白質量の測定回収した細胞の総蛋白質量はBradfordの方法10)に従いBio-RadProteinAssayKit(Bio-RadLaboratories社製,CA,USA)を用いて測定した.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009711(131)5.細胞内Ca2+含量の測定未処理およびIFN-gおよびLPSにて併用処理したHLE細胞を,冷Ca2+,Mg2+-freebuer(NaCl145mM,KCl5mM,NaHCO35mM,4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazine-ethanesulfonicacid(HEPES)15mM,Tris8mM,EDTA0.5mM,pH7.4,290mOsm)にて洗浄し,スクレイパーにて細胞の回収を行った.回収した細胞に等張緩衝液(mannitol10mM,HEPES5.75mM,Trisbase6.25mM,pH7.4)を添加しホモジナイズ後,遠心分離(1,500rpm,10min)により上清を採取した.この得られた上清を用い細胞内Ca2+量の測定を行った.細胞内Ca2+含量の測定にはカルシウムE-テストワコー(Wako社製,大阪,日本)を用い,総蛋白質量当たりの量として表した.II結果1.HLE細胞におけるPMCAアイソフォームの発現図1にはPCR法を用い,HLE細胞におけるPMCAアイソフォーム(PMCA1,2,3および4)遺伝子発現について示した.HLE細胞において4種類のPMCAアイソフォーム(PMCA14)のうちPMCA1および4が強く発現していることが確認されたが,PMCA2および3遺伝子発現は認められなかった.2.HLE細胞へのIFNg,LPS併用刺激がCa2+制御機構へ及ぼす影響図2にはHLE細胞へのIFN-g,LPS併用処理がPMCA1および4遺伝子発現へ与える影響について示した.iNOS遺12345図1HLE細胞におけるPMCA遺伝子発現1:PMCA1,2:PMCA2,3:PMCA3,4:PMCA4,5:マーカー.0.00.21.01.20.40.60.8PMCA1/GAPDH0.00.21.01.20.40.60.8PMCA4/GAPDH*p0.005,vs.Controln=4~5*p<0.005,vs.Controln=4~5Control18hr6hr12hrTreatmentwithIFN-g(1,000IU)andLPS(100ng/m?)Control18hr6hr12hrTreatmentwithIFN-g(1,000IU)andLPS(100ng/m?)PMCA4PMCA1***図2HLE細胞へのIFNg,LPS併用刺激によるPMCA遺伝子発現量の経時的変化Control0.00.21.01.20.40.60.8PMCA1/GAPDH0.00.21.01.20.40.60.8PMCA4/GAPDH*p<0.005,vs.Control**p<0.005,vs.TreatmentwithIFN-gandLPSn=4~5*p<0.005,vs.Control**p<0.005,vs.TreatmentwithIFN-gandLPSn=4~5******IFN-g(1,000IU)LPS(100ng/m?)IFN-g(1,000IU)LPS(100ng/m?)AG(250?M)ControlIFN-g(1,000IU)LPS(100ng/m?)IFN-g(1,000IU)LPS(100ng/m?)AG(250?M)図318時間IFNg,LPS併用刺激によるPMCA遺伝子発現量の変化とAGによる影響———————————————————————-Page4712あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009(132)伝子発現およびNOの誘導がみられるIFN-g,LPS併用処理することでPMCA1および4両遺伝子発現量の増加が認められ,PMCA1では処理後18時間で,PMCA4では処理後12時間以降18時間まで未処理群と比較し有意に上昇した.このIFN-g,LPS併用刺激によるPMCA1および4両遺伝子発現量および細胞内Ca2+含量の上昇は選択的iNOS阻害薬であるAGを添加することで有意に抑制された(図3).さらに,IFN-g,LPS併用処理によるNO産生量とPMCA1および4遺伝子発現量には高い相関関係が認められた(図4).III考按水晶体混濁には水晶体中Ca2+量の変化が大きな役割を果たしていることが考えられる.筆者らはこれまで遺伝性白内障モデルUPLラットにおいて,iNOS由来の過剰なNO産生がこの水晶体中Ca2+量上昇に関与することを明らかとした4).さらに選択的iNOS阻害薬として知られるAGを遺伝性白内障モデルラットへ経口投与することで水晶体中Ca2+量の上昇および混濁化を強く抑制することも報告した7,8).また,白内障患者では正常人と比較し水晶体中NO量の増加が報告されており11),ヒトにおいてもNO産生量は水晶体中Ca2+量と密接に関わることが示唆された.しかしながら,水晶体中Ca2+量調整に重要なPMCA発現とNOの関係については未だ明らかとされていない.そこで今回,ヒト水晶体上皮細胞であるHLE細胞9)を用い,iNOS誘導がPMCAへ与える影響について検討を行った.PMCAには複数のアイソフォームが存在し,臓器によりその発現が異なることが報告されている5,12).本研究では始めに,HLE細胞中のPMCAアイソフォーム(PMCA14)遺伝子発現に関する検討を行った.HLE細胞では4種類のPMCAアイソフォーム(PMCA14)のうちPMCA2および3遺伝子発現は認められず,PMCA1および4のみが強く発現していることが確認された.そこでつぎにiNOS由来NO過剰産生がこれらPMCA1および4遺伝子発現量へ与える影響について検討を行った.iNOS遺伝子発現を誘導する生理活性物質はIFN-g,IL(インターロイキン)-1,TNF(腫瘍壊死因子),LPSなど数多く知られている13).これまでの報告から,iNOS遺伝子発現にはinterferon-gammaactivat-edsite(GAS)やnuclearfactorkappaBが関与し,これらはIFN-gおよびLPS刺激によって活性化することが知られている14,15).筆者らもすでに12時間以上IFN-gおよびLPSにより併用刺激を行ったHLE細胞にて,iNOS遺伝子発現およびNO産生が有意に上昇することを明らかとし報告している6).そこで本研究では,iNOS由来NO産生誘導にIFN-g,LPS併用処理を用いた.このNO産生の誘導がみられるIFN-g,LPS併用処理により,PMCA1および4両遺伝子発現量の増加が認められた.Bartlettらは水晶体中へのCa2+流入量増加はCa2+-ATPaseの増加をひき起こすことを報告している16).本研究においても,PMCA遺伝子発現量の有意な上昇がみられた12時間IFN-g,LPS併用処理時に,細胞内Ca2+含量の上昇が認められた(未処理群;1.83±0.34,12時間IFN-g,LPS併用処理群;6.94±1.52μmol/mgpro-tein,n=6).したがって,これらIFN-g,LPS併用刺激によるPMCA遺伝子発現誘導にはCa2+流入量増加が関与するものと示唆された.さらに,IFN-g,LPS併用刺激によるPMCA1および4両遺伝子発現量の上昇は選択的iNOS阻害薬AGをiNOSおよびNOの上昇が開始する12時間の時点で添加することで抑制され,PMCA遺伝子発現とNO産生量間で高い相関関係が認められた.これらの結果から,ヒト水晶体上皮細胞内でiNOS由来のNO過剰産生時にはPMCA1および4遺伝子発現の誘導が起こり,細胞内Ca2+量の制御が行われるものと示唆された.以上の結果はヒト培養細胞を用いたinvitro実験系のものであるが,筆者らは遺伝性白内障UPLラットにおいても39日齢において急速なNO上昇に伴った水晶体混濁を認めており,同時にPMCA遺伝子発現上昇という現象を報告しており,実際の生体内においてもこれらの作用機構により水晶体中Ca2+制御が行われるものと十分考えられる.一方,このラットにおいて長期にわたるiNOS由来の過剰なNO産生は,ミトコンドリアの電子伝達系終末にあたるチトクロムcオキシダーゼ活性低下によるATP産生低下をひき起こし,PMCA機能不全が起0.00.20.40.60.81.01.2PMCA1/GAPDHPMCA4/GAPDH0.00.20.40.60.81.01.2y=0.2478x+0.3513r=0.97430.00.51.01.52.02.53.0y=0.3853x+0.117r=0.9701NOrelease(nmol/106cells)0.00.51.01.52.02.53.0NOrelease(nmol/106cells):Control:6hr:12hr:18hr:Control:6hr:12hr:18hr図40,6,12,18時間IFNg,LPS併用刺激時におけるPMCA遺伝子発現量とNO量の関係———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009713(133)こることも明らかとしてきた4).したがって,初期の過剰なNOによるCa2+上昇はPMCA1および4遺伝子により制御されるが,長期にわたるNO過剰産生は細胞内ATPの枯渇を招きPMCA機能停止により最終的にはCa2+上昇をひき起こすことが示唆された.現在,筆者らはiNOS由来NOによるヒト水晶体上皮細胞でのCa2+恒常性破綻をより明確にするため,HLE細胞へのIFN-g,LPS併用処理時間増加がチトクロムcオキシダーゼへ与える影響について解析を行っているところである.以上,本研究ではHLE細胞において4種のPMCAのうち,PMCA1および4が発現していることを明らかとした.また,iNOS誘導能を有するIFN-g,LPS併用刺激がPMCA1および4両遺伝子発現量増加をひき起こすことを明らかとし,このPMCA遺伝子発現量上昇が急速なNO過剰産生を介したCa2+恒常性破綻の結果として誘導される可能性を示唆した.このように,白内障発症以前の段階で関与する因子がヒト水晶体へ与える影響を明確にしていくことは,白内障発症機構解明を進めていくうえできわめて重要であると考える.文献1)HardingJJ:Cataract;biochemistry,epidemiologyandpharmacology.ChapmanandHall,London,19912)ShearerTR,DavidLL,AndersonRSetal:Reviewofsel-enitecataract.CurrEyeRes11:357-369,19923)SpectorA:Oxidativestress-inducedcataract:mecha-nismofaction.FASEBJ9:1173-1182,19954)NagaiN,ItoY:AdverseeectsofexcessivenitricoxideoncytochromecoxidaseinlensesofhereditarycataractUPLrats.Toxicology242:7-15,20075)CarafoliE:TheCa2+pumpoftheplasmamembrane.JBiolChem267:2115-2118,19926)NagaiN,LiuY,FukuhataTetal:Inhibitorsofinduciblenitricoxidesynthasepreventdamagetohumanlensepi-thelialcellsinducedbyinterferon-gammaandlipopolysac-charide.BiolPharmBull29:2077-2081,20067)InomataM,HayashiM,ShumiyaSetal:InvolvementofinduciblenitricoxidesynthaseincataractformationinShumiyacataractrat(SCR).CurrEyeRes23:307-311,20018)NabekuraT,KoizumiY,NakaoMetal:DelayofcataractdevelopmentinhereditarycataractUPLratsbydisul-ramandaminoguanidine.ExpEyeRes76:169-174,20039)IbarakiN,ChenSC,LinLRetal:Humanlensepithelialcellline.ExpEyeRes67:577-585,199810)BradfordMM:Arapidandsensitivemethodforthequantitationofmicrogramquantitiesofproteinutilizingtheprincipleofprotein-dyebinding.AnalBiochem72:248-254,197611)OrnekK,KarelF,BuyukbingolZ:Maynitricoxidemole-culehavearoleinthepathogenesisofhumancataractExpEyeRes76:23-27,200312)KeetonTP,BurkSE,ShullGE:Alternativesplicingofexonsencodingthecalmodulin-bindingdomainsandCterminiofplasmamembraneCa(2+)-ATPaseisoforms1,2,3,and4.JBiolChem268:2740-2748,199313)平田結喜:血管系におけるNO合成酵素とその制御.実験医学13:917-922,199514)LowensteinCJ,AlleyEW,RavalPetal:Macrophagenitricoxidesynthasegene:twoupstreamregionsmedi-ateinductionbyinterferongammaandlipopolysaccharide.ProcNatlAcadSciUSA.90:9730-9734,199315)XieQW,WhisnantR,NathanC:Promoterofthemousegeneencodingcalcium-independentnitricoxidesynthaseconfersinducibilitybyinterferongammaandbacteriallipopolysaccharide.JExpMed177:1779-1784,199316)BartlettRK,BieberUrbauerRJ,AnbanandamAetal:OxidationofMet144andMet145incalmodulinblockscalmodulindependentactivationoftheplasmamembraneCa-ATPase.Biochemistry42:3231-3238,2003***