‘レーザー切糸’ タグのついている投稿

円蓋部基底トラベクレクトミー術後におけるレーザー切糸術のタイミングと眼圧

2010年5月31日 月曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(123)695《原著》あたらしい眼科27(5):695.698,2010cはじめに保存的療法では十分な眼圧下降が得られない緑内障症例に対する観血的治療の一つとしてトラベクレクトミー(trabeculectomy:TLE)が選択されるが,TLEの術後早期合併症1,2)として術後の低眼圧,浅前房に伴う脈絡膜.離,低眼圧黄斑症などがある.近年,これらの合併症を防止する目的で,強膜弁をタイトに縫合し適当な時期に縫合糸をレーザーで切糸することにより眼圧調整を行う方法が広く用いられている4.7).また,TLEの際の結膜弁作製方法も従来の輪部基底から円蓋部基底へと変化してきているため,レーザー切糸の順序やタイミングもそれに合わせて変化してきていると思われる.今回,京都府立医科大学附属病院(以下,当施設)で行った円蓋部基底トラベクレクトミー術後のレーザー切糸術(lasersuturelysis:LSL)のタイミングと眼圧経過について調査し,LSLの有効性を左右する要因の有無についても検討した.〔別刷請求先〕南泰明:〒602-0841京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学Reprintrequests:YasuakiMinami,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,465Kajii-cho,Hirokouji-agaru,Kawaramachi-dori,Kamigyo-ku,Kyoto602-0841,JAPAN円蓋部基底トラベクレクトミー術後におけるレーザー切糸術のタイミングと眼圧南泰明池田陽子森和彦成瀬繁太今井浩二郎小林ルミ木村健一木下茂京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学EvaluationofLaserSuturelysisafterFornix-basedTrabeculectomyYasuakiMinami,YokoIkeda,KazuhikoMori,ShigetaNaruse,KojiroImai,LumiKobayashi,KenichiKimuraandShigeruKinoshitaDepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine京都府立医科大学附属病院において2007年1月からの6カ月間に円蓋部基底トラベクレクトミー(trabeculectomy:TLE)を施行した50例60眼(男性27例33眼,女性23例27眼,平均年齢65.9±14.5歳)を対象とし,術後早期に施行されたレーザー切糸術(lasersuturelysis:LSL)のタイミングと眼圧変化ならびにLSLの有効性を左右する要因についてレトロスペクティブに検討した.LSLは39眼(65%)で施行しており,平均施行回数は1.4±1.2回,眼圧下降値と下降率はそれぞれ,初回1.5±6.5mmHg,3.0±33.8%,2回目(30眼)7.6±8.2mmHg,31.1±37.7%(うち2眼は転院などで2回目のLSL後眼圧が不明のため28眼での値),3回目(10眼)6.1±12.8mmHg,20.0±29.1%であった.年齢,性別,術式,糖尿病の有無はLSLのタイミングや回数には影響を与えなかった.Weevaluatedtheintraocularpressure(IOP)-reductioneffectsof,andclinicalfactorsassociatedwith,lasersuturelysis(LSL)intheearlypostoperativephaseoffornix-basedtrabeculectomy(f-TLE).Subjectscomprised50glaucomapatients(60eyes,meanage65.9±14.5yrs.)whounderwentf-TLEatKyotoPrefecturalUniversityofMedicinefromJanuarytoJuly2007.LSLwasperformedin39eyes(65.0%);secondandthirdLSLwereperformedin30eyes(50.0%)and10eyes(16.7%),respectively.IOPreductionratesforfirst,secondandthirdLSLwere3.0±33.8%,31.1±37.7%,and20.0±29.1%,respectively.LSLwasperformedameanof1.4±1.2times.Asclinicalfactors,age,gender,surgerytype(TLEwithorwithoutcataractoperation),anddiabetesmellituswerenotsignificantlyassociatedwiththeIOPreductionrateornumberofLSLprocedures.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(5):695.698,2010〕Keywords:レーザー切糸,トラベクレクトミー,緑内障,強膜弁.trabeculectomy,lasersuturelysis,glaucoma,scleralflap.696あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010(124)I対象および方法対象は2007年1月1日から6月30日までの6カ月間に当施設においてマイトマイシンC(MMC)併用円蓋部基底トラベクレクトミーを施行された50例60眼(男性27例33眼,女性23例27眼,平均年齢65.9±14.5歳)である.術式は全例とも耳上側もしくは鼻上側の結膜輪部切開,3×3mmの二重強膜弁を1層目は強膜の1/2層,2層目は強膜の4/5層を目処に作製し,内方弁ごと線維柱帯を切除,周辺虹彩切除後,10-0ナイロン糸で5針縫合した(縫合糸の位置を図1に示す).結膜縫合は2本のテンションをかけた輪部端々縫合,子午線切開部位の強膜結膜端々縫合,輪部の水平マットレス縫合を行った.術後の強膜弁縫合糸のLSLは,アルゴンレーザーでBlumenthalレンズを用い,50μm,0.2秒,100mWの条件で行った.濾過胞形状,目標眼圧と眼圧経過,眼球マッサージ時の反応から術者が必要と判断した時点で,図1に示す順に行った.術後早期(3週間以内)に行ったLSLに関して,切糸時期,LSL前後の眼圧変化,合併症の有無についてレトロスペクティブに検討した.また,術後早期における眼圧コントロール状態に対するLSLの効果をみるために,15mmHg未満とそれ以上のそれぞれ2群に分けて検討した.なお,術後早期の眼圧は複数回測定したものの平均から算出(平均術後72.9±43.6日)し,両群間で初回LSLまでの日数と総LSL回数の有意差を調べた.なお,統計学的検討は条件に応じて,Spearman順位検定,Mann-WhitneyU検定,Studentt検定,Kruskal-Wallis検定を用いて行った.II結果緑内障病型の内訳は原発緑内障(閉塞隅角緑内障5例5眼を含む)が35例43眼,続発緑内障が13例14眼,発達緑内障が2例3眼であった.術式の内訳は白内障同時手術が23例29眼,TLE単独手術が27例31眼であった.全60眼中39眼(65%)に少なくとも1回以上のLSLが施行され,そのうち2回以上のLSLを要したものは30眼(初回LSL施行群のうち77%)であり,さらに3回目のLSLを要したものは10眼(2回目LSL施行群のうち33%)であった.全症例の平均LSLの施行回数は1.4±1.2回であった.初回LSLは術後5.2±4.1日に施行され,眼圧下降値は1.5±6.5mmHg(施行前21.4±9.5mmHg:8.50mmHg,施行後19.9±9.9mmHg:8.56mmHg),眼圧下降率は3.0±33.8%であった.2回目LSLは術後平均10.3±7.8日で施行され,眼圧下降値は7.6±8.2mmHg(施行前23.3±10.0mmHg:14.62mmHg,施行後16.1±11.1mmHg:3.57mmHg),眼圧下降率は31.1±37.7%,3回目LSLは術後9.7±2.8日で施行され,眼圧下降値は6.1±12.8mmHg(施行前17.4±8.3mmHg:10.57mmHg,施行後13.2±8.1mmHg:8.32mmHg),眼圧下降率は20.0±29.1%であった(図2).各回のLSLによる眼圧下降率の比較では,2回目のLSLの眼圧下降率が最大であった.LSL後に過剰濾過から低眼圧をきたした症LSLの順番数字の順に切糸①②③④⑤①②④③⑤図1強膜弁縫合とLSLの順序LSLを施行する際には,できるだけ後方への房水流出を促すため,図の数字の順に切糸を行っている.全TLE60眼LSL未施行群21眼35%術後平均:5.2±4.1日眼圧下降値:1.5±6.5mmHg眼圧下降率:3.0±33.8%合併症:なし23%術後平均:10.3±7.8日眼圧下降値:7.6±8.2mmHg眼圧下降率:31.1±37.7%合併症:なし67%平均総LSL回数1.4±1.2回術後平均:9.7±2.8日眼圧下降値:6.1±12.8mmHg眼圧下降率:20.0±29.1%合併症:なし初回LSL施行群39眼総LSL回数1回群10眼総LSL回数2回群19眼2回目LSL施行群30眼3回目LSL施行群10眼65%77%33%図2全症例におけるLSL施行の流れ(125)あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010697例はなく,LSLに伴う合併症はみられなかった.つぎにLSL施行回数に影響を与えた要因に関する結果を表1に示す.初回LSLの施行時期ならびに総LSL回数に関しては年齢,性別,術式,緑内障病型,術者,糖尿病の有無,眼軸の違いといった要因によっては有意な差はみられなかった.また,初回LSLが早期に施行されても最終的なLSL回数が少ないわけではなかった.術後早期における眼圧コントロール状態に対するLSLの効果の検討では,15mmHg未満とそれ以上のいずれにおいても,初回LSLまでの日数と総LSL回数において有意差を認めなかった(表2).III考按TLE術後のLSLに関してはこれまでにも多数の報告がある5,8.10)が,その内容については必ずしも一致しているとはいえない.Ralliらの報告ではPOAG(原発開放隅角緑内障)に対する初回TLE(MMC使用)全146眼中95眼(65.1%)にLSLが必要であったとしており8),Morinelliらは手術から初回LSLまでの期間が2日から65日(平均17.9±14.9日)であったとしている9).一方,Fontanaらは偽水晶体眼の開放隅角緑内障を対象としたTLE(MMC使用)術後において89眼中30眼(33.7%)に10),MelamedらはTLE術後30眼の22眼(73.3%)にLSLを要し,眼圧下降値は6.6±7.0mmHgであったと報告している5).今回の結果では65%の症例にLSLを要した.従来の報告においてもLSLを要した症例の割合に大きく差があることから,LSLの要否に関しては結膜切開部位,結膜縫合法,強膜弁の形状や縫合糸数,縫合強度などの術式の微妙な差が影響している可能性が高いと考えられた.すなわち,実際には医療施設ごとにトラベクレクトミーの術式に異なる点があることから,LSLの要否ならびに成績にも差が生じているものと思われる.TLEの術式としては結膜の切開部位の差から輪部基底結膜弁と円蓋部基底結膜弁の2法に大別される.輪部基底結膜弁では強膜弁より離れた円蓋部結膜を切開するため房水漏出の危険性は少ない.一方,当施設で採用している円蓋部基底結膜弁では強膜弁近傍の輪部において結膜切開を行うため,術後早期に眼球マッサージやLSLを行うと輪部結膜縫合部からの房水漏出の危険性が高い.当施設ではハの字型のタイ表2術後早期における眼圧コントロール状態に対するLSLの効果の検討15mmHg未満群15mmHg以上群p値初回LSLまでの日数(日)4.7±1.9(n=24)7.3±4.3(n=9)0.17LSL総回数(回)1.3±1.0(n=37)1.9±0.8(n=10)0.09(Mann-Whitney検定順位補正後)表1LSLの時期・回数と各種要因との関連性初回LSLまでの日数LSL総回数年齢相関なしp=0.18(Spearman順位検定順位補正後)相関なしp=0.79(Spearman順位検定順位補正後)性別男性(22眼):4.5±2.9日女性(17眼):6.1±5.4日有意差なしp=0.24(Mann-Whitney検定順位補正後)男性(33眼):1.4±1.2回女性(27眼):1.4±1.2回有意差なしp=0.98(Studentt検定)白内障同時手術の有無同時(21眼):4.6±2.0日単独(18眼):5.9±5.6日有意差なしp=0.82(Mann-Whitney検定順位補正後)施行(29眼):1.5±1.1回単独(31眼):1.2±1.3回有意差なしp=0.35(Studentt検定)白内障手術同時/既/未施行同時(21眼):4.6±2.0日既施行(12眼):6.2±6.5日未施行(6眼):5.3±3.4日有意差なしp=0.98(Kruskal-Wallis検定順位補正後)同時(29眼):1.5±1.1回既施行(18眼):1.5±1.3回未施行(13眼):0.9±1.1回有意差なしp=0.22(一元配置分散分析法)緑内障病型原発(28眼):5.4±4.5日続発(9眼):4.1±2.2日有意差なしp=0.43(Studentt検定)原発(43眼):1.4±1.2回続発(14眼):1.2±1.3回有意差なしp=0.51(Studentt検定)術者術者A(32眼):4.9±2.3日術者B(3眼):11.0±13.0日術者C(4眼):3.3±1.0日有意差なしp=0.25(Kruskal-Wallis検定順位補正後)術者A(46眼):1.4±1.2回術者B(10眼):0.7±1.2回術者C(4眼):2.3±1.0回有意差なしp=0.06(Kruskal-Wallis検定)糖尿病有無あり(8眼):4.4±1.6日なし(31眼):5.4±4.5日有意差なしp=0.74(Mann-Whitney検定順位補正後)あり(13眼):1.5±1.6回なし(47眼):1.3±1.1回有意差なしp=0.57(Studentt検定)眼軸長相関なしp=0.41(Spearman順位検定順位補正後)相関なしp=0.46(Spearman順位検定順位補正後)初回LSLまでの日数初回LSLまでのTLE術後日数(LSL施行39眼):5.2±4.1日相関なしp=0.12(Spearman順位検定順位補正後)698あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010(126)トな結膜輪部端々縫合と水平マットレス縫合を置くことで房水漏出を抑制しており,輪部基底結膜弁の際と同様,術後早期から眼球マッサージやLSLを行うことが可能となっている.さらに強膜弁の形状もLSLのタイミングや切糸順序に影響を及ぼす要因である.当施設では二重強膜弁の内層弁ごと線維柱帯を切除することで,トンネルを作製し後方への房水流出を促す方法を採用している.すなわち,結膜切開方法や強膜弁の種類,さらに房水の流出方向の違いにより,LSLを行う際の強膜弁縫合糸の切糸順序が異なっており,輪部に沿った方向に房水を流す輪部基底結膜弁では図1の④や⑤の糸をまず切るのに対して,より後方へ房水を流すことを意図した二重強膜弁併用円蓋部基底結膜弁では図1の①から⑤の順に切糸を行っている.当施設での初回LSLは従来の報告と比べて比較的早期に施行している傾向にあったが,これは術後の低眼圧による合併症を予防する目的で強膜創を強めに縫合し,早期にLSLを施行することで眼圧コントロールを行っていく方針を取っていることによるものと思われた.今回,TLE施行例の6割以上の症例において平均術後5日程度で初回LSLが施行されたことから,当施設で用いている術式ではTLE術後には早期から常にLSLの必要性を意識しながら経過観察を行うべきであると思われた.一方,術者間,白内障同時手術の有無などの術式間,患者側要因によってLSLの時期や回数に一定の傾向が認められなかった.また,術後早期の眼圧コントロール状態の良好群と不良群の間には,LSLの時期や回数に差が認められなかった.すなわちLSLのタイミングや切糸数については,あらかじめ予想できるような定型的なパターンが存在するわけではなく,各症例の濾過胞形状や眼圧経過に応じた緻密な術後管理が重要であることがわかった.IV結論LSL後には重篤な合併症なく眼圧下降させることができたことから,TLE術後管理としてLSLは安全に眼圧をコントロールしてゆくための有効な手段と考えられた.LSLのタイミングや切糸数については症例に応じた緻密な術後経過観察のもとに行う必要がある.文献1)ShiratoS,KitazawaY,MishimaS:Acriticalanalysisofthetrabeculectomyresultsbyaprospectivefollow-updesign.JpnJOphthalmol26:468-480,19822)YamashitaH,EguchiS,YamamotoTetal:Trabeculectomy:aprospectivestudyofcomplicationsandresultsoflong-termfollow-up.JpnJOphthalmol29:250-262,19853)SavageJA,CondonGP,LytleRAetal:Lasersuturelysisaftertrabeculectomy.Ophthalmology95:1631-1638,19884)PappaKS,DerickRJ,WeberPAetal:LateargonlasersuturelysisaftermitomycinCtrabeculectomy.Ophthalmology100:1268-1271,19935)MelamedS,AshkenaziI,GlovinskiJetal:Tightscleralflaptrabeculectomywithpostoperativelasersuturelysis.AmJOphthalmol109:303-309,19906)FukuchiT,UedaJ,YaoedaKetal:TheoutcomeofmitomycinCtrabeculectomyandlasersuturelysisdependsonpostoperativemanagement.JpnJOphthalmology50:455-459,20067)KapetanskyFM:Lasersuturelysisaftertrabeculectomy.JGlaucoma12:316-320,20038)RalliM,Nouri-MahdaviK,CaprioliJ:OutcomesoflasersuturelysisafterinitialtrabeculectomywithadjunctivemitomycinC.JGlaucoma15:60-67,20069)MorinelliEN,SidotiPA,HeuerDKetal:LasersuturelysisaftermitomycinCtrabeculectomy.Ophthalmology103:306-314,199610)FontanaH,Nouri-MahdaviK,CaprioliJ:TrabeculectomywithmitomycinCinpseudophakicpatientswithopenangleglaucoma:outcomesandriskfactorsforfailure.AmJOphthalmol141:652-659,2006***

線維柱帯切除術におけるAdjustable Suturesとレーザー切糸術との比較

2008年10月31日 金曜日

———————————————————————-Page1(105)14330910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(10):14331438,2008c〔別刷請求先〕小林博:〒802-8555北九州市小倉北区貴船町1-1小倉記念病院眼科Reprintrequests:HiroshiKobayashi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KokuraMemorialHospital,1-1Kifune-machi,Kitakyusyu802-8555,JAPAN線維柱帯切除術におけるAdjustableSuturesとレーザー切糸術との比較小林博*1小林かおり*2*1小倉記念病院眼科*2倉敷中央病院眼科ComparisonofIntraocularPressure-loweringEfectofAdjustableSuturesandLaserSutureLysisinTrabeculectomyHiroshiKobayashi1)andKaoriKobayashi2)1)DepartmentofOphthalmology,KokuraMemorialHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KurashikiCentralHospital目的:強膜縫合に対してadjustablesuturesおよび従来のレーザー切糸術を用いた線維柱帯切除術の降圧効果を比較検討した.方法:対象は線維柱帯切除術を施行し,6カ月以上経過観察を行った40名である.20名に対してはadjustablesuturesを用い,20名に対してはレーザー切糸術を使用した.Adjustablesuturesは,Khawらが報告した方法を用い,強膜弁の両隅を10-0ナイロン糸で3-1-1で縫合した後,3辺を1本ずつのナイロン糸で4-0-0で仮縫合した.術後,仮縫合を結膜上から鑷子で緩めて眼圧を調節した.レーザー切糸群は強膜弁を7本のナイロン糸で縫合し,術後眼圧はレーザー切糸で調整した.結果:ベースライン眼圧は,adjustablesuture群が28.1±2.9mmHg,レーザー切糸群が27.6±3.0mmHgであり,両群間に有意差はなかった.手術1カ月後,3カ月後および6カ月後の眼圧はadjustablesuture群が11.2±2.0mmHg,11.8±2.0mmHg,11.9±2.4mmHg,レーザー切糸群が10.5±2.0mmHg,11.7±2.9mmHg,13.0±3.3mmHgであり,術後のいずれの時期においても,両群とも術前に比較して有意に下降していた(すべての時期においてp<0.0001).手術1カ月後,3カ月後および6カ月後の眼圧の変化は,adjustablesuture群が16.9±3.3mmHg(59.9±7.9%),16.3±3.2mmHg(57.7±7.7%),16.2±3.8mmHg(57.1±9.6%),レーザー切糸群が17.1±5.5mmHg(61.4±9.0%),16.0±4.3mmHg(57.3±11.5%),14.7±4.5mmHg(52.6±12.8%)であり,術後のいずれの時期においても,adjustablesuture群は眼圧下降が大きかったが両群間に有意差はなかった.Adjustablesuture群では仮縫合を緩める操作あるいはレーザー切糸術後に浅前房をきたした症例はなかったが,レーザー切糸術群では4名がみられた.結語:眼圧下降作用は,adjustablesuture群はレーザー切糸術群と同等であった.Adjustablesuturesは,仮縫合を緩める操作あるいはレーザー切糸術後に低眼圧および浅前房をきたすことが減少させる可能性があると考えられた.Tocomparetheintraocularpressure-loweringeectandsafetyofadjustablesuturesandlasersuturelysisintrabeculectomy,weconductedaprospectiveclinicalstudycomprising40patientswithopen-angleglaucomahav-ingintraocularpressuregreaterthanorequalto22mmHg.Ofthesepatients,20underwenttrabeculectomyusingadjustablesuturesand20underwenttrabeculectomyusingconventionalsuturesandlasersuturelysis.AdjustablesutureswereimplementedasreportedbyKhawetal.Meanbaselineintraocularpressurewas28.1±2.9mmHgintheadjustablesuturegroupand27.6±3.0mmHginthelasersuturelysisgroup.Meanpostoperativeintraocularpressurewas11.2±2.0mmHg,11.8±2.0mmHgand11.9±2.4mmHgintheadjustablesuturegroupand10.5±2.0mmHg,11.7±2.9mmHgand13.0±3.3mmHginthelasersuturelysisgroupat1,3and6months,respective-ly;therewasnosignicantdierencebetweenthetwogroupsatanyvisit.Shallowanteriorchamberwasfoundinnopatientintheadjustablesuturegroupandin4patientsinthelasersuturelysisgroupafterlooseningoftheadjustablesuturesorlasersuturelysis.Therewasnosignicantdierenceinhypotensiveeectbetweentheadjustablesuturegroupandthelasersuturelysisgroup.Theuseofadjustablesuturesmayreducetheincidence———————————————————————-Page21434あたらしい眼科Vol.25,No.10,2008(106)はじめに薬物治療で制御できない緑内障に対しては,一般的に線維柱帯切除術が行われている.しかし,線維柱帯切除術の合併症としては,術後早期での低眼圧,浅前房,脈絡膜離,前房出血,術後晩期での白内障の進行および濾過胞に由来する眼内炎が知られており,その頻度は決して低くない14).術後早期の合併症の多くは過剰な濾過に起因しているために,術中,強膜弁をしっかりと縫合し,術後に眼圧を調節するためにレーザーで切糸することが行われる5)が,Khawらが線維柱帯切除術において術中に仮縫合しておいた10-0ナイロン糸を,術後に鑷子などで緩められるadjustablesutures法を報告しており6),筆者らも良好な成績を報告している7).今回,線維柱帯切除術において,adjustablesutures法と従来の縫合してレーザー切糸で眼圧を調節する方法を比較検討した.I対象および方法対象は,薬物治療にかかわらず眼圧が22mmHg以上の開放隅角緑内障40名40眼である.全例とも緑内障手術を含めた内眼手術の既往がない症例である.閉塞隅角緑内障,外傷性緑内障,ぶどう膜炎による緑内障,血管新生緑内障および高血圧,糖尿病などの全身性合併症は除外した.6カ月間において,眼圧の変化について観察した.対象患者に対してすべて,Humphrey視野検査,隅角鏡検査,共焦点レーザートモグラフを含む眼科的検査を施行した.患者を登録後,封筒法によって無作為に2群に分け,1群は強膜縫合にadjustablesuturesを用い(adjustablesuture群),もう1群は従来の縫合を使用した(レーザー切糸群).経過観察開始後の眼圧はベースライン眼圧測定時±1時間に測定した.ベースライン眼圧は,経過観察前2週間ごとに3回眼圧を測定し,その平均値とした.眼圧はGoldmann圧平眼圧計で3回測定し,その平均値を統計処理には用いた.安全性は,術中および術後の合併症の頻度によって評価した.低眼圧は,術後に眼圧が4mmHg以下に下降した場合と定義した.浅前房はTeehasaeneeとRitchの報告に拠ったが,術後,仮縫合を緩めた場合あるいはレーザー切糸の場合,処置後の前房深度が処置前に比較して30%以上減少した場合は処置後前房深度減少とした.前房出血は,術後に前房の下方に細隙灯顕微鏡で出血が確認できた場合とした.高眼圧は,術翌日の眼圧が術前に比較して3mmHg以上上昇した場合とした.1.手術手技(図1)12時部位の球結膜をできるだけ輪部に沿って8mm切開して,円蓋部基底の結膜弁を作製した.外方強膜弁を作製する部位を露出し,マイトマイシンC0.04%を強膜に塗布した後,250mlBSS(平衡食塩液)を用いて洗浄した.輪部を基底として,大きさが4×4mm,厚さは強膜全層の1/3の方形の外方強膜弁を作製した.その内側に,大きさが3×1.5mmで,強膜床が50100μmになるように内方弁を作製した.さらに,Schlemm管外壁を開放し,角膜側に離した後に幅2mmのDescemet膜を露出した.内方弁を切除した後に,離したDescemet膜の中央に0.5×0.5mmの切開を加えた.その後,虹彩切除を施行した.強膜外方弁は以下のように縫合した.1)Adjustablesuture群:外方弁の両隅を10-0ナイロン糸を用いて3-1-1で縫合した.外強膜弁の3辺の中央を10-0ナイロン糸を4回の仮縫合でしっかりと縫合した.2)レーザー切糸群:外方弁を57本の10-0ナイロン糸を縫合に用いて3-1-1で縫合した.その後,両群とも結膜を10-0ナイロン糸35糸で,結膜の両切断端をピーンと張るように伸ばして角膜縁に縫合するwingstretch法を用いて縫合した.2.術後管理手術後,すべての緑内障薬を中止し,デキサメタゾン0.1%およびレボフロキサシン0.1%を3回/日,1カ月間点眼させた.術後眼圧下降あるいは濾過胞形成が不十分な場合,以下のように調整した(図2).1)Adujustablesuture群:仮縫合を無鉤鑷子あるいは綿棒を用いて結膜上から緩めた.それで十分に眼圧が下降しない場合,両隅の10-0ナイロン糸をレーザーで切断した.2)レーザー切糸群:レーザーを用いて10-0ナイロン糸を切断した.中止例は,(1)連続して2回の検査で,眼圧が21mmHg以上であった場合,(2)予定された診察を受けなかった場合とした.脱落・中止症例では,脱落・中止直前の診察時の眼圧を最終診察時の眼圧とした.3.統計解析標本の大きさは,標準偏差3mmHg,危険率5%として,少なくとも3mmHgの眼圧の差異を90%の検出力で検出でofshallowanteriorchamberandhypotonyafterlooseningofadjustablesuturesorlasersuturelysis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(10):14331438,2008〕Keywords:線維柱帯切除術,adjustablesuture,レーザー切糸.trabeculectomy,adjustablesuture,lasersuturelysis.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.10,20081435(107)きる症例数とした.連続変数の比較には,両側Studentt-検定を用いた.分割表での比較には,c2検定,Fisher検定を用いた.生命表での生死判定に関しては,2回連続して21mmHg以上であるときは「死亡」とした.II結果表1に,患者の背景をまとめた.平均年齢は,adjustablesuture群が69.9±9.0歳,レーザー切糸群が69.7±7.9歳であり,年齢,性,視力,視野,視神経乳頭陥凹において両群BCDE強膜弁縫合虹彩切除Descemet膜に小孔Adjustablesuture群外方弁作製内方弁作製Descemet膜?離4mm4mm1.5mm2.5mm2mm円蓋部結膜切開マイトマイシンC3分間塗布BSSで洗浄結膜縫合Wingstretchレーザー切糸群AF図1手術術式A:12時部位の球結膜をできるだけ輪部に沿って8mm切開して,円蓋部基底の結膜弁を作製した.外方強膜弁を作製する部位を露出し,マイトマイシンC0.04%を強膜に塗布した後,250mlBSSを用いて洗浄した.輪部を基底として,大きさが4×4mm,厚さは強膜全層の1/3の方形の外方強膜弁を作製した.B:その内側に,大きさが3×1.5mmで,強膜床が50100μmになるように内方弁を作製した.C:さらに,Schlemm管外壁を開放し,角膜側に離した後に幅2mmのDescemet膜を露出した.D:内方弁を切除した後に,離したDescemet膜の中央に0.5×0.5mmの切開を加えた.E:その後,虹彩切除を施行した.F:強膜外方弁は以下のように縫合した.Adjustablesuture群では外方弁の両隅を10-0ナイロン糸を用いて3-1-1で縫合した.外強膜弁の3辺の中央を10-0ナイロン糸を4回の仮縫合でしっかりと縫合した.レーザー切糸群では外方弁を57本の10-0ナイロン糸を縫合に用いて3-1-1で縫合した.その後,両群とも結膜を10-0ナイロン糸35糸で,結膜の両切断端をピーンと張るように伸ばして角膜縁に縫合するwingstretch法を用いて縫合した.A.Adjustablesuture群B.レーザー切糸群鑷子レーザーレーザー図2術後処置A:術後眼圧下降あるいは濾過胞形成が不十分な場合,adujustablesuture群では仮縫合を無鉤鑷子あるいは綿棒を用いて結膜上から緩めた.それで十分に眼圧が下降しない場合,両隅の10-0ナイロン糸をレーザーで切断した.B:レーザー切糸群ではレーザーを用いて10-0ナイロン糸を切断した.———————————————————————-Page41436あたらしい眼科Vol.25,No.10,2008(108)間に有意差はなかった.1.眼圧の変化ベースライン眼圧は,adjustablesuture群が28.1±2.9mmHg,レーザー切糸群が27.6±3.0mmHgであり,両群間に有意差はなかった.手術1カ月後,3カ月後および6カ月後の眼圧はadjustablesuture群が11.2±2.0mmHg,11.8±2.0mmHg,11.9±2.4mmHg,レーザー切糸群が10.5±2.0mmHg,11.7±2.9mmHg,13.0±3.3mmHgであり,術後のいずれの時期においても,両群とも術前に比較して有意に下降していた(すべての時期においてp<0.0001)(図3).手術1カ月後,3カ月後および6カ月後の眼圧の変化は,adjustablesuture群が16.9±3.3mmHg(59.9±7.9%),16.3±3.2mmHg(57.7±7.7%),16.2±3.8mmHg(57.1±9.6%),レーザー切糸群が17.1±5.5mmHg(61.4±9.0%),16.0±4.3mmHg(57.3±11.5%),14.7±4.5mmHg(52.6±12.8%)であり,手術3カ月後のいずれの時期においても,adjustablesuture群がレーザー切糸群に比較して大きかったが両群間に有意差はなかった(図4).手術6カ月後において,無治療で眼圧が20mmHg以下である症例数は,adjustablesuture群が19名(95%),レーザー切糸群が19名(95%)であり,両群に差はなかった(図4,表2).無治療で眼圧が16mmHg以下である症例数は,図4生命表における無治療での20mmHg以下(A)および16mmHg以下(B)の生存確率生命表での生死判定に関しては,2回連続して21mmHg以上であるときは「死亡」とした.:Adjustablesuture群:Lasersuturelysis群期間(月)確率1.00.80.60.40.20.0012345期間(月)1.00.80.60.40.20.001234566A.眼圧20mmHgB.眼圧16mmHg表1患者の背景Adjustablesuture群レーザー切糸群患者数20名20名男性女性9(45%)11(55%)10(50%)10(50%)年齢69.9±9.0歳(4784歳)69.7±7.9歳(5382歳)視力0.889(0.31.0)0.827(0.81.0)LogMAR視力0.051±0.1320.082±0.222Humphrey視野測定(Meandeviation)15.67±6.46dB(5.6726.33dB)15.95±5.57dB(4.8827.48dB)陥凹面積/乳頭面積比0.613±0.178(0.348to0.842)0.621±0.185(0.358to0.882)眼圧28.1±2.9mmHg(2332mmHg)27.6±3.0mmHg(2334mmHg)図3眼圧の変化A:眼圧の推移,B:眼圧変化値の推移,C:眼圧変化率の推移B眼圧変化値(mmHg)0-5-10-15-20-25期間(月)0123456C眼圧変化率(%)100-10-20-30-40-50-60-70-80期間(月)0123456A眼圧(mmHg)3530252015105期間(月)0123456:Adjustablesuture群:Lasersuturelysis群———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.10,20081437(109)adjustablesuture群が19名(90%),レーザー切糸群が17名(85%)であり,adjustablesuture群が良好であったが有意差はなかった(図4).2.術後処置および合併症術後処置としては,adjustablesuture群の11名(55%)は仮縫合を緩めたが,それで不十分であったので4名(20%)は両隅のナイロン糸をレーザーで切断した.レーザー切糸群は13名(65%)がレーザーで10-0ナイロン糸を切断した(表3).その後,レーザー切糸群では前房深度が有意に減少したのに対して,adjustablesuture群では認められなかった(p=0.0350).各群とも,1名(5%)にニードリング濾過胞形成術を施行した(表3).術中合併症は,両群ともみられなかった.術後合併症として,低眼圧および浅前房がadjustablesuture群で1名(5%),レーザー切糸群で2名(10%)に認められたが,いずれの合併症でも両群間に有意差はなかった(表4).III考按強膜弁の縫合にadjustablesutureを用いた線維柱帯切除術は,従来のレーザー切糸を使用した線維柱帯切除術とほぼ同様な眼圧下降効果が得られた.低眼圧および浅前房の発症頻度が5%であり,過剰な濾過による合併症が従来のレーザー切糸を用いた線維柱帯切除術と有意差はなかった.従来,術後早期の眼圧調整には,レーザー切糸術や鑷子などで糸を抜くreleasablesuturesで行われてきた5,8).その問題点として,糸を切ったり抜いたりするとその糸が弁を抑えられなくなり,その処置直後に浅前房あるいは低眼圧をきたす危険性があった.それに対して,adjustablesuturesでは糸を緩めることで糸が弁を抑える加減を調整でき,浅前房を起こしにくいことが特徴である.今回の研究では,adjust-ablesuturesを緩めた場合あるいはレーザー切糸後に30%以上前房深度減少が,adjustablesutureを用いた症例ではみられなかったのに対して,レーザー切糸群では4名に認められた.また,レーザー切糸術では,切糸の本数で眼圧を調整するために7本かけていたのに,糸が弁を抑える力を調整できるためにかける糸の本数を減少させることができるようになった.レーザー切糸術では,低熱量のレーザーとはいえ,結膜,Tenon,強膜に熱傷が起こり,炎症が起こることは否めない.それによって,‘ringofsteel’などの結膜瘢痕化が生じる可能性があると考えられ,adjustablesutureではレーザーによる熱作用を減らすことができると思われた.元来,Khawの報告では10-0ナイロン糸を緩める際には,特殊な鑷子が用いられていた5)が,基本的はに無鉤鑷子であればよく,綿棒でも代用できた.眼球マッサージでも糸を緩めることができるので,マッサージしながら糸を緩めて眼圧を調整することも可能であった.術中手技も簡単であり,今後,レーザー切糸術の代用になるものと考えられた.本研究の第一の問題点は,単盲検試験であるために,バイアスの可能性が高く信頼性が低いことである.第二の問題点は,症例数が少ないことである.そのため,手術3カ月以降のいずれの時期でも,adjustablesutureを用いた線維柱帯切除術群は,レーザー切糸群に比較して眼圧下降は大きかっ表2術前および6カ月後の眼圧,薬剤数の変化と成功率Adjustablesuture群レーザー切糸群p値患者数20名20名─術前眼圧28.1±2.9(2334)27.6±3.0(2334)─薬剤数3.3±0.6(24)3.2±0.7(24)─6カ月後眼圧12.6±2.7(818)12.6±4.3(824)─薬剤数0.05±0.22(01)0.15±0.67(03)─無投薬で≦20mmHg19(95%)19(95%)─投薬(+/)で≦20mmHg20(100%)19(95%)─無投薬で≦16mmHg19(95%)17(85%)─表4合併症の頻度Adjustablesuture群(20名)レーザー切糸群(20名)p値低眼圧1(5%)2(10%)─浅前房1(5%)2(10%)─脈絡膜離1(5%)1(5%)─高眼圧2(10%)2(10%)─前房出血0(0%)1(5%)─虹彩前癒着0(0%)0(0%)─虹彩後癒着0(0%)0(0%)─濾過胞の平坦化0(0%)1(5%)─白内障0(0%)0(0%)─濾過胞炎/眼内炎0(0%)0(0%)─表3術後処置Adjustablesuture群レーザー切糸群眼数20眼20眼Adjustablesutureを緩める11(55%)─レーザー切糸4(20%)12(60%)Adjustablesuture調整あるいはレーザー切糸後の前房深度減少0(0%)4(20%)ニードリング1(5%)1(5%)5-フルオロウラシル注射0(0%)0(0%)———————————————————————-Page61438あたらしい眼科Vol.25,No.10,2008(110)たが,有意差がなかった.さらに症例数を増加して検定力を上げる必要があると思われた.また,安全性に関しても,合併症の頻度の比較が困難であり,稀有な合併症の検出もむずかしいと思われた.今回,adjustablesutureを用いた線維柱帯切除術の降圧作用は,従来報告されているレーザー切糸術を使用した線維柱帯切除術の成績に比較して同様であり,合併症に関しては術後眼圧を下降させる処置後の前房深度の安定性が良好であった.さらに症例数を増加させて検討する必要があると考えられた.文献1)LehmannOJ,BunceC,MathesonMMetal:Riskfactorsfordevelopmentofpost-trabeculectomyendophthalmitis.BrJOphthalmol84:1349-1353,20002)PoulsenEJ,AllinghamRR:Characteristicsandriskfac-torsofinfectionsafterglaucomalteringsurgery.JGlau-coma9:438-443,20003)DeBryPW,PerkinsTW,HeatleyGetal:Incidenceoflate-onsetbleb-relatedcomplicationsfollowingtrabeculec-tomywithmitomycin.ArchOphthalmol120:297-300,20024)RothmanRF,Liebmann,RitchR:Low-dose5-uoroura-ciltrabeculectomyasinitialsurgeryinuncomplicatedglaucoma:long-termfollow-up.Ophthalmology107:1184-1190,20005)SavegeJA,CondonGP,LytleRAetal:Lasersuturelysisaftertrabeculectomy.Ophthalmology95:1631-1638,19886)KhawPT:Improvementintrabeculectomyandtech-niquesofantimetabolitesusetopreventscarring.Pro-ceedingof3rdInternationalCongressonGlaucomaSur-gery,Toronto,Canada,20067)小林博,小林かおり:AdjustableSuturesの線維柱帯切除術への応用.あたらしい眼科25:1301-1305,20088)StarkWJ,GoyalRK:Combinedphacoemulsication,intra-ocularlensimplantation,andtrabeculectomywithreleasablesutures.ProceedingofCurrentConceptinOph-thalmology,Baltimore,USA,2000***

Adjustable Suturesの線維柱帯切除術への応用

2008年9月30日 火曜日

———————————————————————-Page1(113)13010910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(9):13011305,2008c〔別刷請求先〕小林博:〒802-8555北九州市小倉北区貴船町1-1小倉記念病院眼科Reprintrequests:HiroshiKobayashi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KokuraMemorialHospital,1-1Kifune-machi,Kitakyusyu802-8555,JAPANAdjustableSuturesの線維柱帯切除術への応用小林博*1小林かおり*2*1小倉記念病院眼科*2倉敷中央病院眼科ApplicationofAdjustableSuturestoTrabeculectomyHiroshiKobayashi1)andKaoriKobayashi2)1)DepartmentofOphthalmology,KokuraMemorialHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KurashikiCentralHospital目的:Adjustablesuturesを用いた線維柱帯切除術の降圧効果および安全性を検討した.方法:対象はadjustablesuturesを用いた線維柱帯切除術を施行し,12カ月以上経過観察を行った30眼である.Adjustablesuturesは,Khawらが報告した方法を用いた.強膜弁の縫合は,強膜弁の両隅を10-0ナイロン糸で3-1-1で縫合した後,3辺を1本ずつのナイロン糸で4-0-0で仮縫合した.術後,仮縫合を結膜上から鑷子で緩めて眼圧を調節した.結果:経過観察期間は1218カ月(平均14.3±2.8カ月)であり,ベースライン眼圧は,27.9±3.0mmHgであった.手術3カ月後,6カ月,12カ月後および最終診察時の眼圧は11.6±2.1mmHg,12.1±2.4mmHg,12.3±2.3mmHg,12.6±1.4mmHgであり,いずれの時期においても術前に比較して有意に下降していた(p<0.0001).眼圧の変化は,手術3カ月後,6カ月後,12カ月後では16.3±3.6mmHg(58.1±8.5%),15.8±3.9mmHg,(56.3±9.6%),15.6±3.8mmHg(55.4±12.0%),15.5±3.4mmHg(54.6±7.4%)であり,眼圧変化値および眼圧変化率は術前に比較して有意に下降していた(p<0.0001).合併症としては,低眼圧1名(3%),脈絡膜離1名(3%)が認められたが,adjustablesuturesを緩める操作あるいはレーザー切糸術後に浅前房をきたした症例はなかった.結語:Adjustablesuturesを用いた眼圧下降作用は,従来の手術と同等であり,特殊な機械が不要であり簡便であった.Adjustablesuturesを使用することによって,レーザー切糸術後に起こる低眼圧および浅前房を減少させる可能性があると考えられた.Tostudytheintraocularpressure-loweringeectandsafetyoftrabeculectomyusingadjustablesutures,weconductedaprospectiveclinicalstudyof30open-angleglaucomapatientshavingintraocularpressuregreaterthanorequalto22mmHg.AdjustablesutureswereusedasreportedbyKhawetal.Meanfollow-upperiodwas14.3±2.8months;meanbaselineintraocularpressurewas27.9±3.0mmHg.Meanpostoperativeintraocularpres-surewas11.6±2.1mmHg,12.1±2.4mmHg,12.3±2.3mmHgand12.6±1.4mmHgat3,6,12monthsandnalvisit.Intraocularpressuredecreasedsignicantlycomparedwithpreoperativepressureatallvisits(p<0.0001).Meanintraocularpressurechangewas16.3±3.6mmHg(58.1±8.5%),15.8±3.9mmHg(56.3±9.6%),15.6±3.8mmHg(55.4±12.0%)and15.5±3.4mmHg(54.6±7.4%)at3,6,12monthsandnalvisit(p<0.0001).Com-plicationsincludedhypotensionandchoroidaldetachmentinonecase(3%).Noinstancesofshallowanteriorcham-berorhypotonywerefoundafterlooseningofadjustablesuturesorlasersuturelysis.Thehypotensiveeectoftrabeculectomywithadjustablesutureswassimilartothatofprevioustechniques.Thistechniquemayreducetheincidenceofshallowanteriorchamberandhypotonyafterthelooseningofadjustablesuturesorlasersuturelysis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(9):13011305,2008〕Keywords:線維柱帯切除術,adjustablesutures,レーザー切糸.trabeculectomy,adjustablesutures,lasersuturelysis.———————————————————————-Page21302あたらしい眼科Vol.25,No.9,2008(114)はじめに薬物治療で制御できない緑内障に対しては,一般的に線維柱帯切除術が行われている.しかし,線維柱帯切除術の合併症としては,術後早期での低眼圧,浅前房,脈絡膜離,前房出血,術後晩期での白内障の進行および濾過胞に由来する眼内炎が知られており,その頻度は決して低くない14).術後早期の合併症の多くは過剰な濾過に起因しているために,術中,強膜弁をしっかりと縫合し,術後に眼圧を調節するためにレーザーで切糸することが行われている5).今回,術中に仮縫合しておいた10-0ナイロン糸を,術後に鑷子などで緩められるadjustablesutures6)を線維柱帯切除術に用いたので検討した.I対象および方法対象は,薬物治療にかかわらず眼圧が22mmHg以上の開放隅角緑内障30名30眼である.閉塞隅角緑内障,外傷性緑内障,ぶどう膜炎による緑内障,血管新生緑内障および高血圧,糖尿病などの全身性合併症は除外した.12カ月間において,眼圧,自覚症状および他覚所見について観察した.対象患者に対してすべて,Humphrey視野検査,隅角鏡検査,共焦点レーザートモグラフを含む眼科的検査を施行した.経過観察開始後の眼圧はベースライン時±1時間に測定した.ベースライン眼圧は,経過観察前2週間ごとに3回眼圧を測定し,その平均値とした.眼圧はGoldmann圧平眼圧計で3回測定し,その平均値を統計処理には用いた.安全性は,術中および術後の合併症の頻度によって評価した.低眼圧は,術後に眼圧が4mmHg以下に下降した場合と定義した.前房出血は,術後に前房の下方に細隙灯顕微鏡で出血が確認できた場合とした.高眼圧は,術翌日の眼圧が術前に比較して3mmHg以上上昇した場合とした.1.手術手技(図1)12時部位の球結膜をできるだけ輪部に沿って8mm切開して,円蓋部基底の結膜弁を作製した.外方強膜弁を作製する部位を露出し,マイトマイシンC0.04%を3分間,強膜に塗布した後,250mlBSS(平衡食塩液)を用いて洗浄した.輪部を基底として,大きさが4×4mm,厚さは強膜全層の1/3の方形の外方強膜弁を作製した.その内側に,大きさが3×1.5mmで,強膜床が50100μmになるように内方弁を作製した.さらに,Schlemm管外壁を開放し,角膜側に離した後に幅2mmのDescemet膜を露出した.内方弁を切除した後に,離したDescemet膜の中央に1mmの切開を加え,虹彩切除を施行した.外方弁を耳上端と鼻上端を10-0ナイロン糸で3-1-1で縫合した.外強膜弁の側辺と上辺の中央を4回廻した仮縫合でしっかりと縫合した.結膜を円蓋部基底の結膜弁を作製マイトマイシンCを塗布した後,BSSにて洗浄10-0ナイロン糸を用いてwingstretchで結膜を縫合内方弁を切除後に,離Descemet膜の中央に1mmの切開ABCDEF虹彩切除Schlemm管外壁を開放し,幅2mmのDescemet膜を露出4×4mmの外方強膜弁を作製2.5×1.5mmの内方弁を作製4mm4mm2.5mm2mm外方弁を10-0ナイロン糸で2つの3-1-1縫合と3つの仮縫合を用いて閉じた1.5mm図1手術手技A:12時部位の球結膜をできるだけ輪部に沿って8mm切開して,円蓋部基底の結膜弁を作製した.外方強膜弁を作製する部位を露出し,マイトマイシンC0.04%を3分間,強膜に塗布した後,250mlBSSを用いて洗浄した.輪部を基底として,大きさが4×4mm,厚さは強膜全層の1/3の方形の外方強膜弁を作製した.B:その内側に,大きさが2.5×1.5mmで,強膜床が50100μmになるように内方弁を作製した.C:さらに,Schlemm管外壁を開放し,角膜側に離した後に幅2mmのDescemet膜を露出した.D:内方弁を切除した後に,離したDescemet膜の中央に1mmの切開を加えた.E:その後,虹彩切除を施行した.F:外方弁を10-0ナイロン糸で2つの3-1-1縫合と3つの仮縫合を用いて閉じた.結膜を10-0ナイロン糸で37糸で縫合した.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.9,20081303(115)10-0ナイロン糸で37糸で縫合した.2.術後管理手術後,すべての緑内障薬を中止し,デキサメタゾン0.1%およびレボフロキサシン0.1%を3回/日,1カ月間点眼させた.目標眼圧まで下降しない場合,仮縫合を無鉤鑷子あるいは綿棒を用いて結膜上から緩めた.それで十分に眼圧が下降しない場合,強膜弁の両隅の10-0ナイロン糸をアルゴンレーザーで切断した(図2).3.中止例中止例は,(1)5-フルオウラシル結膜下注射および外科的追加処置を施行した場合,(2)連続して2回の検査で,眼圧が21mmHg以上であった場合,(3)予定された診察を受けなかった場合とした.脱落・中止症例では,脱落・中止直前の診察時の眼圧を最終診察時の眼圧とした.4.統計解析連続変数の比較には,両側Studentt-検定を用いた.分割表での比較には,c2検定,Fisher検定を用いた.II結果表1に,患者の背景をまとめた.経過観察期間は1218カ月(平均14.3±2.8カ月)であった.平均年齢は70.8±8.4歳であり,男性15名(50%),女性15名(50%)であった.1.眼圧の変化ベースライン眼圧は,27.9±3.0mmHgであり,手術3カ月後,6カ月後,12カ月後および最終診察時の眼圧は11.6±2.1mmHg,12.1±2.4mmHg,12.3±2.3mmHg,12.6±1.4mmHgであり,いずれの時期においても術前に比較して有意に下降していた(p<0.0001)(図3).眼圧の変化は,手術3カ月後,6カ月後,12カ月後では16.3±3.6mmHg(58.1±8.5%),15.8±3.9mmHg(56.3±9.6%),15.6±3.8mmHg(55.4±12.0%),15.5±3.4mmHgA.B.C.眼圧下降が不十分な場合仮縫合を結膜上から鑷子で緩めるアルゴンレーザーで切断レーザー鑷子図2術後処置A,B:眼圧下降あるいは濾過胞形成が不十分な場合は,鑷子で結膜上から仮縫合を緩める.C:それでも不十分な場合は,両隅の10-0ナイロン糸をレーザーで切断した.ABC期間(月)期間(月)期間(月)眼圧(mmHg)眼圧変化値(mmHg)眼圧変化率(%)-80-60-40-202005101520253035-25-20-15-10-505036912036912036912図3眼圧の変化A:眼圧の推移,B:眼圧変化値の推移,C:眼圧変化率の推移.表1患者の背景患者数30名男性女性15名(50%)15名(50%)年齢70.8±8.4歳(4283歳)視力0.361(0.021.0)Humphrey視野測定(Meandeviation)16.14±6.76dB(4.8829.35dB)陥凹面積/乳頭面積比0.648±0.170(0.3960.888)眼圧27.9±3.0mmHg(2334mmHg)経過観察期14.3±2.8カ月(1218カ月)表2術前および最終診察時の眼圧の比較術前眼圧27.9±3.0mmHg(2334mmHg)薬剤数3.3±0.8(24)最終診察時眼圧12.4±2.7(817)薬剤数0.07±0.25(01)無投薬で≦20mmHg29(97%)投薬(+/)で≦20mmHg30(100%)無投薬で≦16mmHg27(90%)———————————————————————-Page41304あたらしい眼科Vol.25,No.9,2008(116)(54.6±7.4%)であった(p<0.0001)(図3).手術12カ月後において,無治療で眼圧が20mmHg以下である症例数は29名(97%)であり,無治療で眼圧が16mmHg以下である症例数は27名(90%)であった(表2,図4).2.術後処置と合併症Adjustablesuturesを鑷子あるいは綿棒で緩める操作は16名(53%)に対して施行し,レーザー切糸術は5名(17%),ニードリングは1名(3%)に施行した.5-フルオロウラシル注射は行っていない.術後合併症として,低眼圧1名(3%),脈絡膜離1名(3%)が認められたが,これは術直後からみられたものであり,adjustablesuturesを緩める操作あるいはレーザー切糸術後に浅前房をきたした症例はなかった(表3).III考按強膜弁の縫合にadjustablesutureを用いた線維柱帯切除術は,従来のレーザー切糸を使用した線維柱帯切除術とほぼ同様な眼圧下降効果が得られた7,8).そのうえ,低眼圧および脈絡膜離の発症頻度が3%であり,過剰な濾過による合併症が従来のレーザー切糸を用いた線維柱帯切除術の報告に比較して有意に低いことがあげられる9,10).従来,術後早期の眼圧調整には,レーザー切糸術6)や鑷子などで糸を抜くreleasablesutures11)で行われてきたが,糸を切ったり抜いたりするとその糸が弁を抑える力がなくなり,その処置直後に浅前房あるいは低眼圧をきたす危険性があったのに対して,adjustablesuturesでは糸を緩めることで糸が弁を抑える加減を調整でき,浅前房を起こしにくいことが特徴である.そのため,レーザー切糸術では,切る糸の本数で眼圧を調整するために7本かけていたのに,糸が弁を抑える力を調整できるためにかける糸の本数を減少させることができるようになった.レーザー切糸術では,低熱量のレーザーとはいえ,結膜,Tenon,強膜に熱傷が起こり,炎症が起こることは否めない.それによって,‘ringofsteel’などの結膜瘢痕化が生じる可能性があると考えられ,adjustablesutureではレーザーによる熱作用を減らすことができると思われた12).元来,Khawらが報告した際には10-0ナイロン糸を緩める際には,特殊な鑷子が用いられていたが,基本的はに無鉤鑷子であればよく,綿棒でも代用できた6).眼球マッサージでも糸を緩めることができるので,マッサージしながら糸を緩めて眼圧を調整することも可能であった.術中手技も簡単であり,今後,レーザー切糸術の代用になるものと考えられた.今回,adjustablesutureを用いた線維柱帯切除術の降圧作用は,報告されているレーザー切糸術を使用した線維柱帯切除術の成績に比較して同様であり,合併症に関しては低眼圧が低率であった.さらにadjustablesutureとレーザー切糸術を直接比較する必要があると考えられた.文献1)LehmannOJ,BunceC,MathesonMMetal:Riskfactorsfordevelopmentofpost-trabeculectomyendophthalmitis.BrJOphthalmol84:1349-1353,20002)PoulsenEJ,AllinghamRR:Characteristicsandriskfac-torsofinfectionsafterglaucomalteringsurgery.JGlau-coma9:438-443,20003)DeBryPW,PerkinsTW,HeatleyGetal:Incidenceoflate-onsetbleb-relatedcomplicationsfollowingtrabeculec-tomywithmitomycin.ArchOphthalmol120:297-300,20024)RothmanRF,Liebmann,RitchR:Low-dose5-uorouraciltrabeculectomyasinitialsurgeryinuncomplicatedglauco-ma:long-termfollow-up.Ophthalmology107:1184-1190,20005)SavegeJA,CondonGP,LytleRAetal:Lasersuturelysisaftertrabeculectomy.Ophthalmology95:1631-1638,19886)KhawPT:Improvementintrabeculectomyandtech-niquesofantimetabolitesusetopreventscarring.Pro-ceedingof3rdInternationalCongressonGlaucomaSur-gery,2006,Toronto,Canada7)原岳,白土城照,宮田典夫ほか:マイトマイシンCを用いた初回線維柱帯切除術.日眼会誌99:1283-1287,表3合併症の頻度低眼圧1(3%)浅前房0(0%)脈絡膜離1(3%)高眼圧3(10%)前房出血0(0%)虹彩前癒着0(0%)虹彩後癒着0(0%)濾過胞の平坦化1(3%)白内障0(0%)濾過胞炎/眼内炎0(0%)A.B.期間(月)期間(月)眼圧≦20mmHg眼圧≦16mmHg確率00.20.40.60.8103691200.20.40.60.81036912図4無治療での20mmHg以下(A)および16mmHg以下(B)の確率———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.9,20081305(117)19958)堀暢英,山本哲也,北澤克明:マイトマイシンC併用トラベクレクトミーの長期成績─眼圧コントロールと視機能─.眼科手術12:15-19,19999)KapetanskyFM:Lasersuturelysisaftertrabeculectomy.JGlaucoma12:316-320,200310)RalliM,Nouri-MahdaviK,CaprioliJ:OutcomesoflasersuturelysisafterinitialtrabeculectomywithadjunctivemitomycinC.JGlaucoma15:60-67,200611)StarkWJ,GoyalRK:Combinedphacoemulsication,intra-ocularlensimplantation,andtrabeculectomywithreleasablesutures.ProceedingofCurrentConceptinOph-thalmology,9-11/12/2000,Baltimore,Maryland12)L’EsperanceFA:Theocularhistopathologiceectofkryptonandargonlaserradiation.AmJOphthalmol68:263-273,1969***