‘併用治療’ タグのついている投稿

ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験

2012年5月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科29(5):679.686,2012cブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験新家眞*1山崎芳夫*2杉山和久*3桑山泰明*4谷原秀信*5*1公立学校共済組合関東中央病院*2日本大学医学部視覚科学系眼科学分野*3金沢大学大学院医学系研究科脳医科学専攻脳病態医学講座視覚科学*4福島アイクリニック*5熊本大学大学院生命科学研究部視機能病態学分野Long-termSafetyandEfficacyofBrimonidineOphthalmicSolutioninPatientwithPrimaryOpenAngleGlaucomaorOcularHypertensionMakotoAraie1),YoshioYamazaki2),KazuhisaSugiyama3),YasuakiKuwayama4)andHidenobuTanihara5)1)KantoCentralHospital.TheMutualAidAssociationofPublicSchoolTeachers,2)DivisionofOphthalmology,DepartmentofVisualSciences,NihonUniversitySchoolofMedicine,3)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,KanazawaUniversityGraduateSchoolofMedicalScience,4)FukushimaEyeClinic,5)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,KumamotoUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とし,0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液の単剤またはプロスタグランジン(PG)関連薬との併用により52週間投与した際の眼圧下降効果と安全性および忍容性を検討した.眼圧に対しては長期投与による減弱はなく,単剤治療によりトラフで4mmHg以上,ピークで5mmHg前後の安定した効果を示した.また,PG関連薬で目標眼圧の維持が困難な症例に対しても本剤の併用による追加効果が得られ,平均眼圧変化値で3mmHg前後の有意な眼圧下降効果が長期にわたり維持されることが確認できた.副作用としてはアレルギー性結膜炎の発現頻度が高かったものの全身への影響は少なく,重篤な副作用としてPG併用治療の1例に回転性めまいが発現したが,投与中止後に症状は回復した.臨床検査,血圧・脈拍や眼科学的検査では臨床的に問題となる変動は認められず,本剤の長期投与における忍容性が確認できた.Weevaluatedtheintraocularpressure(IOP)-loweringefficacyandsafetyoftopical0.1%brimonidinetartratemonotherapyandacombinationof0.1%brimonidineandprostaglandin(PG)analoguesinpatientswithprimaryopenangleglaucomaorocularhypertension,overaperiodof52weeks.TheIOP-loweringeffectwasnotattenuatedthroughoutthelong-termadministrationperiod;brimonidinemonotherapyreducedtheIOPattroughandpeakby≧4mmHgand5mmHg,respectively.ThecombinationofbrimonidineandPGanaloguesmaintainedthe3mmHgIOPreductioninpatientswhohadbeenonPGmonotherapy;thisconfirmedtheadditiveeffectofbrimonidineandPG.Themostfrequentadversedrugreactionwasallergicconjunctivitis;however,brimonidinehadlimitedsystemiceffects.Aseriousadversereactionofvertigowasreportedinapatientreceivingcombinationbrimonidine-PGtherapy,thevertigoresolvedafterstudydrugdiscontinuation.Noclinicallysignificantchangeswereobservedinlaboratorytests,bloodpressure,pulseandophthalmologicalexamination;wethusconfirmedthelong-termtolerabilityofbrimonidine.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(5):679.686,2012〕Keywords:ブリモニジン,長期安全性,緑内障,プロスタグランジン,併用治療.brimonidine,long-termsafety,glaucoma,prostaglandin,concomitantuse.はじめにブタイプに対する選択性が高い選択的a2アドレナリン受容ブリモニジン(図1)はa1アドレナリン受容体よりもa2体作動薬である.そのため本薬は,レーザー照射による一過アドレナリン受容体に高い親和性を示し,なかでもa2Aサ性の眼圧上昇を対象とした類薬のアプラクロニジン塩酸塩〔別刷請求先〕新家眞:〒158-8531東京都世田谷区上用賀6-25-1公立学校共済組合関東中央病院Reprintrequests:MakotoAraie,M.D.,Ph.D.,KantoCentralHospital.TheMutualAidAssociationofPublicSchoolTeachers,6-25-1Kamiyoga,Setagaya-ku,Tokyo158-8531,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(99)679 NHOHNH・HO2CCO2HNNNHHOHBr図1ブリモニジン酒石酸塩の構造式(p-アミノクロニジン)のような,a1アドレナリン受容体を介した散瞳や眼瞼後退が起こることはない1).米国アラガン社は本薬の眼圧下降作用に着目し,1996年に保存剤として塩化ベンザルコニウム(BAK)を含有した0.2%製剤の緑内障治療薬ALPHAGANR点眼液の承認を取得した後,保存剤をこれまでのBAKから細胞毒性の少ない亜塩素酸ナトリウム(PURITER)に変更した0.15%製剤ALPHAGANRPの承認を2001年に,さらにはpHなどの製剤的な検討によりブリモニジン濃度を0.1%に下げた製剤の承認を2005年に取得するなど,全身および眼局所に対する安全性と忍容性に配慮した製剤改良を加えており,現在欧米をはじめとする84の国と地域で承認・販売されている.国内においては,米国で承認されたPURITER含有0.15%製剤の処方をベースに原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした二重盲検法による探索試験を実施し,0.1%製剤がプラセボに対して有意な眼圧下降を示すと同時に0.15%製剤と同等の臨床効果を示したことから,0.1%濃度を至適濃度として採択した.この0.1%製剤による第III相臨床試験では,チモロールを対照とした比較試験およびプロスタグランジン(PG)関連薬併用下でのプラセボとの比較試験により本剤の臨床的な位置付けと眼圧下降作用が検討されている.さらに,チモロールを対照とした臨床薬理試験では,高齢者の呼吸器系および循環器系に対する本剤の忍容性が検討されている.海外ではPURITER含有0.1%製剤の12カ月間点眼時の安全性は確認されているものの2),国内臨床試験の投与期間は4週間であることから,わが国においても長期点眼における安全性の検討が必要であると考え今回,原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象に,PURITER含有0.1%ブリモニジンの単剤(単剤群)およびPG関連薬で目標眼圧の維持が困難な症例に対する併用(PG併用群)による52週間の長期投与試験を実施し,本剤の有効性と安全性および忍容性を検討したので報告する.I方法1.治験実施期間および実施医療機関本治験は,試験開始に先立ちすべての実施医療機関の治験審査委員会で審議を受け,承認を得たうえで医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)に関する省令などの関連規制法規を遵守し,2007年7月から2009年4月の間に表1に示す24680あたらしい眼科Vol.29,No.5,2012表1実施医療機関および治験責任医師実施医療機関治験責任医師山田眼科大谷地裕明慈眼会東光眼科秋葉真理子ふじた眼科クリニック藤田南都也大宮はまだ眼科濱田直紀まつお眼科クリニック松尾寛明醫会上野眼科医院木村泰朗済安堂お茶の水・井上眼科クリニック井上賢治みすまるのさと会アイ・ローズクリニック安達京善春会若葉眼科病院吉野啓蒔田眼科クリニック杉田美由紀むらまつ眼科医院村松知幸安間眼科安野雅恵,安間正子こうさか眼科高坂昌志北川眼科医院北川厚子創正会イワサキ眼科医院岩崎直樹尾上眼科医院尾上晋吾杉浦眼科杉浦寅男長田眼科肱黒和子ひかり会木村眼科内科病院木村亘松井医仁会大島眼科病院田中敏博かとう眼科医院加藤整明和会宮田眼科病院宮田和典陽幸会うのき眼科鵜木一彦湖崎会湖崎眼科湖崎淳施設で実施した.2.対象試験参加に先立ち文書による同意が得られ,原発開放隅角緑内障(POAG)または高眼圧症(OH)と診断された満20歳以上の男女の外来患者で,表2の採用基準に該当する患者を対象とした.3.治験薬および投与方法1mL中にブリモニジン酒石酸塩1.0mgおよび保存剤として亜塩素酸ナトリウム(PURITER)を含むブリモニジン点眼剤を1日2回(朝・夜),両眼に1滴ずつ52週間点眼した.PG併用群におけるPG関連薬の点眼時刻は,本試験参加前と同じ時間帯として治療を継続した.なお,ブリモニジンと同一時間帯にPG関連薬を点眼する場合は,ブリモニジン点眼後にPG関連薬を点眼した.4.Washout試験参加前に緑内障治療薬の前治療を受けていた被験者に対し,交感神経遮断薬,PG関連薬は4週間以上,副交感神経作動薬,炭酸脱水酵素阻害薬および交感神経作動薬は2週間以上,その他の緑内障治療薬は1週間以上のwashout期間を設けた.なお,PG併用群では,前治療のPG関連薬はwashoutせず,他剤とPG関連薬を併用していた場合は他剤のみをwashoutした.(100) 表2被験者の採用および除外基準おもな採用基準:単剤群1)両眼とも矯正視力が0.5以上2)両眼とも眼圧値が31.0mmHg以下3)原発開放隅角緑内障は,有効性評価対象眼の眼圧値が18.0mmHg以上4)高眼圧症は,有効性評価対象眼の眼圧値が22.0mmHg以上PG併用群1)両眼とも矯正視力が0.5以上2)両眼ともPG関連薬による治療期間が180日以上3)両眼ともPG関連薬併用下での眼圧値が31.0mmHg以下かつ有効性評価対象眼の眼圧値が16.0mmHg以上おもな除外基準:1)緑内障,高眼圧症以外の活動性の眼科疾患を有する者2)治験期間中に病状が進行する恐れのある網膜疾患を有する者3)肝障害,腎障害,うつ病,Laynaud病,閉塞性血栓血管炎,起立性低血圧,脳血管不全,冠血管不全,重篤な心血管系疾患などの循環不全を有する者4)a2刺激薬に重大な副作用の既往のある者5)a刺激薬,a遮断薬,b刺激薬,b遮断薬,モノアミン酸化酵素阻害薬,アドレナリン増強作用を有する抗うつ薬,副腎皮質ステロイド薬の使用が必要な者6)高度の視野障害がある者7)コンタクトレンズの装用が必要な者8)圧平眼圧計による正確な眼圧の測定に支障をきたすと思われる角膜異常のある者9)内眼手術(緑内障に対するレーザー療法を含む),角膜屈折矯正手術,濾過手術および線維柱帯切開術の既往を有する者10)その他,治験責任医師または治験分担医師が本治験に適切でないと判断した者表3治験スケジュール時期項目スクリーニング投与開始4週間以内投与開始4週8週12週16,20週24週28週32,36,40,44週48週52週測定ポイント(時間)─702227022270222702背景因子調査●視力検査●t●●角膜・結膜・眼瞼所見shou●●◎○●●◎○●●●◎○●●眼圧検査●Wa○●●●◎○●●●◎○●●●◎○●●眼底検査●●●視野検査●●●血圧・脈拍数○●●●◎○●●●◎○●●●◎○●●臨床検査●●●有害事象●:単剤群およびPG併用群共通.◎:単剤群のみ.○:単剤群の7時間測定症例およびPG併用群のみ(単剤群の7時間値は同意が得られた患者のみ測定した).5.検査・観察項目た.角膜所見の判定基準はAD分類3)を用い,結膜・眼瞼所検査および観察項目と試験スケジュールを表3に示す.見(結膜充血,結膜浮腫,眼瞼紅斑,眼瞼浮腫,結膜濾胞)眼圧はGoldmann圧平眼圧計で朝の点眼前を0時間値とは4または5段階に程度分類し,結膜充血および結膜濾胞はして8:30.10:30の間に,点眼後は2時間値および7時標準写真を用いて判断した.眼底所見は検眼鏡などを用いて間値の測定を行った.なお,7時間値の測定は同意を得られ緑内障性異常の有無および陥凹/乳頭径比(C/D比)の垂直た被験者のみとした.視力検査は遠見視力表を用い,角膜・径を記録した.視野検査にはHumphrey視野計または結膜・眼瞼所見は無散瞳下で細隙灯顕微鏡を用いて観察しOctopus視野計を用いた.血圧・脈拍数は5分間安静後,座(101)あたらしい眼科Vol.29,No.5,2012681 位の状態で測定した.臨床検査は血液学的検査および血液生化学的検査を三菱化学メディエンス(株)で実施した.当該治験薬との因果関係の有無にかかわらず,治験薬を点眼した被験者に生じたすべての好ましくないまたは意図しない,疾病あるいはその徴候を有害事象として扱い,治験薬との因果関係が否定できない有害事象を副作用とした.6.併用薬および併用処置試験期間中は表2の除外基準に抵触する薬剤および処置の併用は禁止した.7.評価方法および統計手法有効性の評価は,PerProtocolSet(PPS:治験実施計画書に適合した解析対象集団)を主たる解析対象集団とした.主要評価項目は,治験薬投与前の眼圧に対する治験薬投与後の各観察日の平均眼圧変化値(0時間値と2時間値の平均値)とした.副次評価項目は,投与後の各観察日の平均眼圧値および平均眼圧変化率(0時間値と2時間値の平均値),投与後の各観察日の各測定時間の眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率(0時間値,2時間値,7時間値)とした.主要評価項目および副次評価項目の各観察日における要約統計量を算出し,投与後の推移を検討した.眼圧値は投与前後の推移について1標本t検定による群内比較を行った.有意水準は両側5%とし,解析ソフトはSASforWindowsRelease9.1.3Foundation(SASInstituteInc.)を用いた.安全性の評価は,試験期間中に一度でも薬剤の投与を受けた被験者を対象とし,有害事象,副作用,視力,角膜・結膜・眼瞼所見,眼底,視野,臨床検査,血圧および脈拍数を評価した.血圧および脈拍数は1標本t検定を用い,有意水3025201510眼圧値(mmHg)準両側5%で群内比較を行った.視力,角膜・結膜・眼瞼所見,視野,眼底および臨床検査は薬剤投与前後の推移を比較した.なお,バイタルサインあるいは臨床検査値の異常変動の定義としては,担当医が臨床上問題となる測定値あるいは検査値の変動と解釈した場合を指し,必ずしも基準範囲内から範囲外への変動・逸脱のみを指すものではないこととした.副作用については,発現した症状および所見ごとに発現率を算出した.II結果1.対象治験薬を投与した症例は単剤群98例(このうち47例が7表4被験者背景(PPS)項目単剤PG併用性別男4022女4224年齢(歳).64473065.3516平均59.060.9緑内障診断名(有効性評価対象眼)原発開放隅角緑内障(広義)4833高眼圧症3413眼局所の合併症無229有6037眼局所以外の合併症無196有6340012285204812162024283236404448520824480122852(週):単剤:PG併用*****************************************0時間2時間7時間0,2時間平均(症例数)単剤8277746282793977757839747268697034624138383382777462PG併用464541344646─454444─4137393936─344646433746454134図2眼圧値の推移*p<0.05(投与前後の比較,1標本t検定).0,2時間平均は0時間値と2時間値の平均値を示す.682あたらしい眼科Vol.29,No.5,2012(102) 時間値測定),PG併用群59例で,これらの症例はすべて安全性解析対象とした.PPS採用症例は単剤群82例(このうち41例が7時間値測定),PG併用群46例であった.PPSの被験者背景を表4に示す.2.有効性眼圧値の推移を図2に,眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率の推移を表5に示す.主要評価項目の12週間後,28週間後,52週間後の平均眼圧変化値は,単剤群で投与開始前の眼圧22.0mmHgに対し.4.8mmHg,.4.7mmHg,.4.8mmHg,PG併用群は18.7mmHgに対し.3.1mmHg,.3.3mmHg,.2.7mmHgと,いずれも有意な下降が維持されていた.副次評価項目の平均眼圧値および平均眼圧変化率,各測定時点の眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率も主要評価と同様,単剤群およびPG併用群ともに投与開始前と比較して有意な下降を示した.3.安全性本試験で発現した有害事象は,単剤群68例(69.4%)194件,PG併用群44例(74.6%)127件で,このうち副作用は単剤群38例(38.8%)80件,PG併用群31例(52.5%)54件であった.おもな副作用は表6に示すようにアレルギー性結膜炎,眼瞼炎,点状角膜炎および結膜充血であった.これらの副作用のなかで,発現頻度の高かったアレルギー性結膜炎の要約を表7に示す.症状の程度は軽度または中等度で重篤なものはなかった.発症した32例のうち中止例は13例(単剤群7例,PG併用群6例),また14例(各群7例)は本剤投与開始時にアレルギー性結膜炎,アレルギー性鼻炎または花粉症の症状,所見を有していた.発症時期としては投与4週間後より散発し,投与13週.24週間後にピークを示した.その他の遅発性に発現した副作用としては,眼瞼炎,結膜充血および点状角膜炎が投与9週.52週間後にかけて散発的表5眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率の推移観察日眼圧値(mmHg)眼圧変化値(mmHg)眼圧変化率(%)単剤PG併用単剤PG併用単剤PG併用0時間値と2時間値の平均値投与開始日22.0±2.718.7±2.0────12週間後17.2±2.7*15.5±2.6*.4.8±2.5.3.1±2.1.21.6±10.4.16.7±10.928週間後17.4±2.7*15.3±2.1*.4.7±2.8.3.3±1.9.20.7±11.3.17.6±10.152週間後16.8±2.8*15.9±2.3*.4.8±2.7.2.7±1.7.22.0±12.3.14.3±8.50時間値投与開始日22.5±2.719.0±1.8────12週間後18.3±2.8*16.2±2.8*.4.2±2.6.2.8±2.2.18.5±10.9.14.8±11.928週間後18.5±3.0*16.2±2.4*.4.2±3.1.2.7±2.1.17.9±12.3.14.4±11.252週間後17.9±3.2*16.7±2.7*.4.5±2.9.2.1±1.9.19.7±13.2.11.4±9.42時間値投与開始日21.4±3.218.4±2.4────4週間後17.3±2.6*15.5±2.6*.4.2±2.6.2.9±1.9.19.1±10.8.15.5±10.48週間後17.1±2.6*─.4.8±3.1─.21.5±11.5─12週間後16.0±2.7*14.9±2.6*.5.4±3.0.3.5±2.5.24.3±12.5.18.5±12.116週間後16.6±2.9*15.1±3.0*.4.9±3.3.3.3±2.4.21.8±14.0.17.8±12.620週間後16.5±2.9*14.9±2.6*.5.0±3.0.3.3±2.4.22.6±13.3.17.7±12.524週間後16.6±2.9*─.5.2±3.1─.23.4±11.7─28週間後16.4±2.6*14.4±2.1*.5.2±3.1.3.9±2.4.23.3±13.0.20.6±12.132週間後16.5±2.7*15.3±2.6*.5.1±2.9.2.9±2.8.22.8±12.0.15.2±16.636週間後16.0±2.9*15.3±2.7*.5.3±2.7.3.0±2.4.24.5±12.1.16.1±14.140週間後16.2±3.3*15.2±2.7*.5.1±3.0.3.1±2.5.23.4±14.7.16.3±14.044週間後16.1±3.1*14.9±2.5*.4.8±3.0.3.2±2.4.22.4±14.1.17.2±13.048週間後16.6±4.6*─.4.9±4.0─.22.8±17.0─52週間後15.7±2.7*15.2±2.2*.5.2±3.0.3.2±2.1.24.0±14.4.16.9±11.17時間値投与開始日20.9±2.418.1±2.3────8週間後16.9±2.4*16.0±2.5*.4.0±2.6.2.1±2.1.18.7±11.6.11.3±11.024週間後17.0±2.4*15.3±2.3*.3.9±2.4.2.7±2.2.18.1±10.9.14.7±11.048週間後16.8±2.8*15.9±2.1*.4.0±2.0.2.0±1.9.19.2±10.4.10.6±10.3平均値±標準偏差,*p<0.05(投与前後の比較,1標本t検定).(103)あたらしい眼科Vol.29,No.5,2012683 表6副作用一覧治療群単剤PG併用安全性解析対象例数9859【MedDRA(Ver.10.0)PT】例数(%)件数例数(%)件数全体38(38.8)8031(52.5)54眼局所アレルギー性結膜炎18(18.4)2214(23.7)15眼瞼炎9(9.2)159(15.3)12点状角膜炎7(7.1)123(5.1)7結膜充血7(7.1)85(8.5)5結膜炎3(3.1)33(5.1)4霧視2(2.0)200アレルギー性眼瞼炎2(2.0)200結膜濾胞2(2.0)200結膜出血1(1.0)100眼乾燥1(1.0)11(1.7)1眼そう痒症1(1.0)100流涙増加1(1.0)200瞼板腺炎001(1.7)1眼の異常感001(1.7)1眼の異物感1(1.0)100眼刺激1(1.0)100眼瞼浮腫1(1.0)100眼以外接触性皮膚炎3(3.1)41(1.7)1頭痛002(3.4)2貧血001(1.7)1回転性めまい001(1.7)1皮膚乳頭腫001(1.7)1浮動性めまい1(1.0)11(1.7)1傾眠001(1.7)1丘疹1(1.0)100に発現した.副作用により治験薬の投与を中止した症例は30例(単剤群16例,PG併用群14例)で,アレルギー性結膜炎,眼瞼炎および結膜充血が主たる事象であったものの,治験薬投与中止後に,いずれも症状の消失あるいは寛解を確認した.重篤な副作用としてはPG併用群で1例,回転性めまいが発現したが,薬物療法により症状の回復を認めた.角膜・結膜・眼瞼所見,視力検査,視野検査および眼底検査に臨床上問題となる変動はなかった.また,臨床検査で治験薬との因果関係が否定されなかった異常変動として,単剤群で血中ビリルビン増加・抱合ビリルビン増加が1例2件,PG併用群でヘモグロビン減少・赤血球数減少が1例2件,血中ブドウ糖増加・血中トリグリセリド増加・血中尿酸増加が1例3件にみられたが,これらの事象はいずれも治療の対象となるものはなく,追跡調査により基準範囲内への回復または臨床的に問題とならないことが確認された.バイタルサインへの影響として血圧に対しては,単剤群およびPG併用群ともに収縮期血圧および拡張期血圧の統計学的に有意な低下が散見されたが,臨床的に問題となる血圧低684あたらしい眼科Vol.29,No.5,2012表7アレルギー性結膜炎発症例の要約単剤PG併用計安全性解析対象例数9859157アレルギー性結膜炎発現例数181432継続11819中止7613アレルギー疾患の合併*7714発現日.4週101.8週112.12週303.24週8513.36週235.48週257.52週101*:アレルギー性結膜炎,アレルギー性鼻炎,花粉症.下を示した症例はなかった.脈拍数に対しては,単剤群の52週間後の0時間を除いて有意な低下はなかった.なお,単剤群の1例に有害事象として心拍数の増加が発現したが,治験薬との因果関係は否定された.III考察ブリモニジンの単剤投与12週後,28週後および52週後のいずれの時点でも,平均眼圧変化値として4.7mmHg以上,平均眼圧変化率で20%以上の眼圧下降を確認することができた.緑内障治療において目標眼圧を設定する際に,眼圧変化率で20%以上の眼圧下降が一つの基準と考えられることから4),臨床的にも単剤投与で意義のある眼圧下降効果を示すことができたと考える.また,12週後,28週後および52週後のいずれのトラフでも4mmHg以上の眼圧下降を示し,長期投与に際しても眼圧下降効果が減弱することなく,初期の眼圧下降効果を維持することが確認できた.さらに点眼7時間後までの日内眼圧下降効果の検討でも投与開始日に比べ統計学的に有意な眼圧下降を示し,1日を通じて安定した眼圧下降効果を有していた.バイタルサインに対しては血圧を低下させる傾向がみられたものの臨床上問題となるような変動もなく,脈拍数に及ぼす影響もみられなかったことから,呼吸器系や循環器系にリスクを抱えb遮断薬の投与が躊躇される症例や,PG関連薬の特異的な局所副作用が気になる症例に対しても,本剤の適応があると考えられた.また,PG関連薬による目標眼圧の維持が困難な症例に対して本剤は,PG関連薬との併用によりさらに眼圧変化値として3mmHgの追加効果を52週にわたって維持しており,その臨床的な意義は高いと考える.長期投与における安全性の面では,本試験で比較的頻度の高かった副作用はアレルギー性結膜炎であり,眼瞼炎などと同様に長期投与により発現頻度が高くなる傾向を示しアレルギーの関与が疑われた.アレルギー性結膜炎の副作用を発症(104) した32例中14例は本剤点眼前からアレルギーに起因する結膜炎や鼻炎,花粉症を合併しており,1年間の長期投与のなかでスギを含む花粉症の好発期にかかったことも要因の一つと考えられる.類薬のアドレナリンa2受容体作動薬であるアプラクロニジンやエピネフリンは長期投与により本剤より高頻度に重篤な局所アレルギーをひき起こすことが知られており,その主たるメカニズムは化合物のヒドロキノン様構造が酸化されて生じた中間体が生体成分のチオール基と共有結合しハプテン化されるためと考えられている5).しかし,ブリモニジンはヒドロキノン様構造を持たず,実際にアプラクロニジンに対してアレルギー反応を示す患者にブリモニジンを投与しても交差反応は報告されていない6.8).また,本剤はアプラクロニジンと同様にイミダゾリン環を有するが,イミダゾリン環がアレルギーを誘発したとの報告はなく,本剤の局所アレルギー発症機序は明らかではない.一方,本剤の単剤群とPG併用群のアレルギー性結膜炎の発症頻度や投与中止に至った症例の頻度に差はなく,本剤とPG関連薬との併用によりアレルギー反応が増加したり重症化に向かうものではなかった.アレルギー性結膜炎の副作用を発症した症例の半数以上は1年間の継続投与が可能であったが,長期投与に際しては留意すべき事象と考える.一方,本剤の製剤的な特徴として,含有している保存剤の違いがあげられる.緑内障治療薬に限らず点眼薬には,基本的に保存剤が含まれており,なかでもBAKはその安定性と防腐効力から多くの点眼薬で汎用されている.しかし,BAKは眼表面に対する細胞毒性を有し,その障害性はBAKの濃度と点眼回数に依存するため,長期投与や多剤併用を余儀なくされている緑内障患者に対するBAKの曝露量が問題となっている9).ブリモニジンの保存剤は安定なオキシクロロ複合体の亜塩素酸ナトリウム(PURITER)である.亜塩素酸ナトリウムは細菌に取り込まれ,細菌の細胞壁の構成成分であるムラミン酸やタイコ酸などの酸性物質により二酸化塩素に変換され,そこから発生する二酸化塩素ラジカルが細菌の蛋白質や脂質を酸化,変性させて殺菌的に作用する10).一方,水溶液中の亜塩素酸ナトリウムも酸性条件下になれば二酸化塩素を生成するものの11),本剤は製剤設計によりpHが安定な中性領域に維持されているため二酸化塩素はほとんど生成されない.また,亜塩素酸ナトリウムは点眼されると涙液成分と反応し,Na+,Cl.,酸素や水などの涙液成分に分解されることから10),きわめて安全性の高い保存剤と考えられる.PURITERは哺乳類の細胞に対する毒性が低く12),培養ウサギ角膜上皮細胞およびヒト結膜上皮細胞を用いた細胞毒性の評価13)や点眼によるウサギ角膜および結膜へ障害性の検討により14),BAKよりも角結膜に与える影響が少ないことが示されている.保存剤が既存のBAKからPURITERに変更されたことで,角結膜に対する細胞毒性の軽減や他剤との併用によるBAKの曝露量の増加も回避することができるため,多剤併用を必要とする症例に対しても投与しやすい製剤といえる.保存剤以外の緑内障治療薬のリスクとして,ラタノプロスト15,16),チモロールなどのb遮断薬17),ジピベフリン18)などによる黄斑浮腫が報告されている.特に,エピネフリンを無水晶体眼の患者に長期連用した場合のアドレナリン黄斑症は以前から知られており,エピネフリン投与による内因性プロスタグランジンの上昇19)やアデニル酸シクラーゼの活性化とcyclicAMP(環状アデノシン一リン酸)の上昇20)に伴う血液網膜柵(BRB)の破綻による黄斑浮腫の発現が報告されている21).今回の長期投与試験にも白内障術後の症例が単剤群に12例,PG併用群に6例含まれていたが,本剤に起因すると考えられる網膜浮腫あるいは黄斑浮腫に関連する副作用はなかった.逆に,ブリモニジンはcyclicAMP産生を抑制すること,糖尿病モデルにおいて黄斑浮腫誘発の主要因子であるVEGF(血管内皮増殖因子)の上昇およびBRBの破綻を阻害することが報告されており22),むしろ黄斑浮腫に対しては抑制的に作用する可能性が示唆されている.本剤の特異的な副作用として眼局所のアレルギーがあげられるものの,発現例の半数以上では継続投与が可能であり,また角結膜所見などの眼科学的検査および臨床検査から,臨床的使用における本剤の忍容性を確認することができた.バイタルサインについてはブリモニジンの点眼による血圧低下は,神経性循環調節中枢である延髄網様体の腹外側部あるいは孤束核の血管運動中枢のa2A受容体を介した血管拡張作用,あるいは交感神経中枢である脳幹外側網様核のイミダゾリン受容体を介した作用と考えられる.心血管系疾患や起立性低血圧のある患者の症状を悪化させる可能性はあるものの,今回の検討においては臨床的には忍容できる範囲の変動と考えられた.一方で,点眼によってもa2作動薬の全身投与時と同様のめまいや傾眠が現れる可能性もあり,危険を伴う作業に従事する場合には留意すべきと考える.緑内障は進行性の非可逆的な疾患であり,自覚症状のないままに視機能障害が徐々に進行するsilentdiseaseとして位置づけられる4).現在,緑内障に対する唯一,エビデンスのある治療法は眼圧を下降させることであるが,最終的目標は網膜神経節細胞死や視神経軸索障害の進行抑制による視機能の維持管理といっても過言ではない.ブリモニジンはラット網膜神経節細胞モデルで緑内障視神経障害の本態である網膜神経節細胞死を抑制し23),さらに正常眼圧緑内障を対象とした臨床試験においてチモロールよりも視野障害の進行を有意に抑制することが示されている24).本剤は眼圧下降作用のみならず神経保護作用の可能性を併せ持つ長期投与の可能な緑内障治療薬として,緑内障および高眼圧症患者における新たな選択肢の提供につながると考える.(105)あたらしい眼科Vol.29,No.5,2012685 謝辞:本臨床研究にご参加いただきました諸施設諸先生方に深謝いたします.文献1)CantorLB:Theevolvingpharmacotherapeuticprofileofbrimonidine,ana2-adrenergicagonist,afterfouryearsofcontinuoususe.ExpertOpinPharmacother1:815-834,20002)CantorLB,SafyanE,LiuCCetal:Brimonidine-purite0.1%versusbrimonidine-purite0.15%twicedailyinglaucomaorocularhypertension:a12-monthrandomizedtrial.CurrMedResOpin24:2035-2043,20083)宮田和典,澤充,西田輝夫ほか:びまん性表層角膜炎の重症度の分類.臨眼48:183-188,19944)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第3版.日眼会誌116:3-46,20125)ThompsonCD,MacdonaldTL,GarstMEetal:Mechanismsofadrenergicagonistinducedallergybioactivationandantigenformation.ExpEyeRes64:767-773,19976)WilliamsGC,Orengo-NaniaS,GrossRL:Incidenceofbrimonidineallergyinpatientspreviouslyallergictoapraclonidine.JGlaucoma9:235-238,20007)ShinDH,GloverBK,ChaSCetal:Long-termbrimonidinetherapyinglaucomapatientswithapraclonidineallergy.AmJOphthalmol127:511-515,19998)GordonRN,LiebmannJM,GreenfieldDSetal:Lackofcross-reactiveallergicresponsetobrimonidineinpatientswithknownapraclonidineallergy.Eye(Lond)12:697700,19989)澤口昭一:抗緑内障点眼薬による眼障害.あたらしい眼科25:431-436,200810)NoeckerR:Effectsofcommonophthalmicpreservativesonocularhealth.AdvTher18:205-215,200111)AokiT,FujieK:FormationofchlorinedioxidefromchloritebyUVirradiation.ChemistryExpress7:609-612,199212)KatzLJ:Twelve-monthevaluationofbrimonidine-puriteversusbrimonidineinpatientswithglaucomaorocularhypertension.JGlaucoma11:119-126,200213)IngramPR,PittAR,WilsonCGetal:AcomparisonoftheeffectsofocularpreservativesonmammalianandmicrobialATPandglutathionelevels.FreeRadicRes38:739-750,200414)NoeckerRJ,HerrygersLA,AnwaruddinR:Cornealandconjunctivalchangescausedbycommonlyusedglaucomamedications.Cornea23:490-496,200415)CallananD,FellmanRL,SavageJA:Latanoprost-associatedcystoidmacularedema.AmJOphthalmol126:134135,199816)AyyalaRS,CruzDA,MargoCEetal:Cystoidmacularedemaassociatedwithlatanoprostinaphakicandpseudophakiceyes.AmJOphthalmol126:602-604,199817)山下秀明,小林誉典,板垣隆ほか:b-遮断剤の長期点眼による眼底障害.臨眼38:621-626,198418)MehelasTJ,KollaritsCR,MartinWG:CystoidMacularedemapresumablyinducedbydipivefrinhydrochloride(Propine).AmJOphthalmol94:682,198219)MiyakeK,ShirasawaE,HikitoMetal:SynthesisofprostaglandinEinrabbiteyeswithtopicallyappliedepinephrine.InvestOphthalmolVisSci29:332-334,198820)NeufeldAH,JampolLM,SearsML:Cyclic-AMPintheaqueoushumor:theeffectsofadrenergicagents.ExpEyeRes14:242-250,197221)SenHA,CanpochiaroPA:Stimulationofcyclicadenosinemonophosphateaccumulationcausesbreakdownoftheblood-retinalbarrier.InvestOphthalmolVisSci32:20062010,199122)KusariJ,ZhouSX,PadilloEetal:InhibitionofvitreoretinalVRGFelevationandblood-retinalbarrierbreakdowninstreptozotocin-induceddiabeticratsbybrimonidine.InvestOphthalmolVisSci51:1044-1051,201023)LeeKY,NakayamaM,AiharaMetal:Brimonidineisneuroprotectiveagainstglutamate-inducedneurotoxicity,oxidativestress,andhypoxiainpurifiedratretinalganglioncells.MolVis16:246-251,201024)KrupinT,LiebmannJM,GreenfieldDSetal;Low-PressureGlaucomaStudyGroup:Arandomizedtrialofbrimonidineversustimololinpreservingvisualfunction:resultsfromtheLow-PressureGlaucomaTreatmentStudy.AmJOphthalmol151:671-681,2011***686あたらしい眼科Vol.29,No.5,2012(106)