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健康成人を対象としたビルベリー/松樹皮抽出物配合食品摂取 による眼圧への影響の検討

2022年2月28日 月曜日

《原著》あたらしい眼科39(2):251.257,2022c健康成人を対象としたビルベリー/松樹皮抽出物配合食品摂取による眼圧への影響の検討髙木泰孝*1島田久生*2沖上裕美*3庄司信行*4*1参天製薬株式会社日本事業開発統括部日本メディカルアフェアーズグループ*2参天製薬株式会社研究開発本部臨床開発統括部臨床開発グループ*3参天製薬株式会社研究開発本部製剤技術統括部*4北里大学医学部眼科学COcularHypotensiveE.ectofaSupplementContainingBilberryandMaritimePineBarkCombinationExtractsinJapaneseHealthyVolunteersYasutakaTakagi1)CHisaoShimada2)CHiromiOkigami3)andNobuyukiShoji4),,1)JapanMedicalA.airsGroup,JapanBusinessDivision,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)ClinicalDevelopmentGroup,ResearchandDevelopmentDivision,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,3)PharmaceuticalTechnologyDevelopmentDivision,ResearchandDevelopmentDivision,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,4)DepartmentofOphthalmology,FacultyofMedicine,KitasatoUniversityCビルベリー/松樹皮抽出物配合食品(被験食品)の眼圧に対する影響を検討するため,眼圧C20CmmHg以上の健康成人において,無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を実施した.被験者C47名に被験食品とプラセボ食品を無作為に割付し,1日C1回C1粒C12週間摂取させた.眼圧は来院時のC9.11時に非接触型眼圧計で測定した.被験食品群,プラセボ群の両群で,無作為化後の全測定時点において摂取前に比べ統計学的に有意な眼圧下降が認められた.前値で補正した眼圧変化値は,4週後のみ両群間に統計学的な有意差がみられ,被験食品群で大きかった.被験食品と因果関係なしと判断された有害事象がC1件(下痢/胃腸障害)に認められた.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は忍容性もよく眼圧下降が認められた.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は,眼圧を下降させることで眼の健康維持に貢献する可能性が示唆された.CPurpose:ToCevaluateCtheCe.ectsCofCaCsupplementCcontainingCtheCcombinationCofCbilberryCandCmaritimeCpineCbarkCextractsConCintraocularpressure(IOP)C,CaCrandomized,Cdouble-blind,Cplacebo-controlled,CparallelCstudyCwasCconductedinJapanesehealthyvolunteerswhoseIOPwasover20CmmHg.Methods:Thisstudyinvolved47eligi-blevolunteersubjectswhowererandomlyselectedtoundergoextract-supplementtesting(testgroup)orplacebocontrol(controlgroup)onceCdailyCforC12weeks(1Cgraineach)C.CAtCeachCvisit,CIOPCwasCmeasuredCbyCnon-contactCtonometeratbetween9-o’clockAMto11-o’clockAM.Results:Inboththetestandcontrolgroup,theIOPwassigni.cantlyCdecreasedCfromCthatCatCbaselineCatCallCmeasuringCpointsCafterCrandomization.CIOPCchangesCfromCbase-lineadjustedbybaselineIOPwassigni.cantlydi.erentbetweenthetwogroupsonlyat4weeks,andwasgreaterintestgroup.Therewerenoadversereactionswithnocausalrelationtothetestgroup.Conclusion:Thesupple-mentcontainingextractsofbilberryandmaritimepinebarkcombinationiswell-toleratedandhasanocularhypo-tensivee.ect.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(2):251.257,C2022〕Keywords:ビルベリー抽出物,松樹皮抽出物,サプリメント,眼圧,健康成人.bilberryextract,barkofthemaritimepineextract,supplement,intraocularpressure,healthyvolunteer.Cはじめに生活できる年齢をさす「健康寿命」は,2016年時点で男性日本人の平均寿命は年々伸びており,2018年では男性は72.14歳,女性は74.79歳(2016年の平均寿命は男性81.25歳,女性はC87.32歳となっている1).一方,自立して80.98歳,女性C87.14歳)となっており,平均寿命とは男性〔別刷請求先〕髙木泰孝:〒530-8552大阪府大阪市北区大深町C4-20参天製薬株式会社日本事業開発統括部日本メディカルアフェアーズReprintrequests:YasutakaTakagi,Ph.D.,JapanMedicalA.airsGroup,MedicalA.airs,JapanBusinessDivision.SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,4-20Ofukacho,Kitaku,Osaka,Osaka530-8552,JAPANCでC8年,女性でC11年以上と大きな開きがある2).「健康寿命」を伸ばすため,加齢に伴う種々の身体機能の低下を抑制するアンチエイジングのセルフケアに対する関心が高まり,セルフケアの方法の一つとしてサプリメントが位置づけられてきている.また,アンチエイジングのセルフケアとしてだけではなく,疾患に対する治療を受けつつ,その治療をサポートし,治療効果を高めるために,サプリメントを用いるという考え方も受け入れられつつある.加齢により眼も同様に機能低下が進行する(眼精疲労,老視など).また,加齢性の眼疾患(白内障,緑内障,加齢黄斑変性など)も知られている.眼の機能低下に対しては,現在,ブルーベリーアントシアニン,ゼアキサンチン,アスタキサンチンが視力回復やピント調節のために,ルテインがブルーライトからの保護や加齢黄斑変性の予防に機能性表示食品として用いられている.一方,眼疾患に対しては,海外での大規模臨床試験の結果,治療に組み込まれているサプリメントが存在する疾患領域(加齢黄斑変性)と,緑内障のようにサプリメントのエビデンスが不足していることで明確に推奨されず,また機能性表示食品として製品が存在しない疾患領域が存在する.今回使用するアントシアニンC36%以上で規格化されたビルベリー抽出物食品(Mirtoselect)とプロシアニジンC70C±5%で規格化された松樹皮抽出物食品(Pycnogenol,HorphagResearch社,スイス)の配合食品ミルトジェノール(Indena社,イタリア)は,1日C2回(1日C2粒)摂取により眼圧下降が得られること3),1日C1回3)あるいはC1日C2回4)の摂取によりラタノプロストの眼圧下降に対し上乗せ効果があるとともに網膜中心動脈の収縮期血流を増加させること5,6)が報告されている.この配合食品の主成分である松樹皮抽出物のピクノジェノールは,網膜血流を改善させること7)や神経分化モデル細胞であるCPC12細胞での細胞死を抑制することが報告されている8).一方,ビルベリー抽出物の含有成分は,ビルベリーの産地や収穫時期により大きく異なり,市販されているビルベリー抽出物の成分・含量が大きく異なることが知られており9),また,摂取前眼圧が日本人の平均眼圧より高いことから,海外で確認されているビルベリー/松樹皮抽出物配合食品による眼圧下降効果4,5)がそのまま日本人でも示されるかどうかは不明である.そこで,眼圧がC20CmmHg以上の高眼圧症や緑内障とは診断されていない日本人健康成人を対象に,無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験でビルベリー/松樹皮抽出物配合食品ミルトジェノールの眼圧下降を検討した.I対象および方法1.対象対象はC20歳以上C74歳以下の男女で,おもな除外基準は,緑内障性の視神経乳頭障害が認められる者,眼圧ならびに眼圧測定に影響する疾患(炎症性疾患,角膜疾患など)を有する者,眼圧に影響する薬剤(ステロイド,眼圧下降薬,ED治療薬,向精神薬)の過去C4週間以内の使用歴がある者,抗酸化を標榜するサプリメント(松樹皮抽出物,ビルベリー,カシス,ルテイン,アスタキサンチン,ビタミンCE)の継続的な摂取習慣のある者とした.この条件を満たす志願者のなかから,試験責任医師が試験参加妥当と判断し,摂取前(Visit-2)において少なくとも片眼の眼圧値がC20CmmHg以上の者C40名を対象とした.本研究は,「ある程度の高眼圧状態を有し,眼圧下降に関して無治療の健康成人」というきわめて限定的な対象者を被験者としたため,探索的であり,被験食品とプラセボ食品の群間の有意差検出を目的とした例数設計は実施せず,根拠となる既報もないことから,実施可能性を考慮し必要例数を設定した.なお,本研究は「ヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則)」「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」およびその他関連規制や試験研究所を遵守し実施し,試験実施医療機関の治験審査委員会で承認された同意説明文書での説明後,文書による同意を得て行われた.C2.被験薬品被験食品はアントシアニンC36%以上で規格化されたビルベリー抽出物食品(Mirtoselect)90CmgとプロシアニジンC70C±5%で規格化された松樹皮抽出物食品(Pycnogenol)40Cmgを含む配合食品C1粒である.ビルベリー抽出物,松樹皮抽出物を含まないプラセボ食品を対照とした.C3.試験方法試験スケジュールを図1に示す.本研究は,無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験で,被験者はビルベリー/松樹皮抽出物配合食品(被験食品群)あるいはプラセボ食品(プラセボ群)のC12週摂取に無作為に割付られた.なお,被験食品は,1粒をC1日量として設定した.割付は,割付責任者が行い,識別不能性を確認したのち,試験食品対応表ならびにエマージェンシーキーを作製し,厳封のまま開鍵まで割付責任者が保管した.被験者は事前検査(Visit-1),摂取前(Visit-2),摂取4,8,12週後(それぞれCVisit-3,Visit-4,Visit-5)に来院し,眼圧検査は全来院時に,血圧,脈拍,血液検査,尿検査はCVisit-1およびCVisit-5に,被験者背景,眼科検査(細隙灯顕微鏡検査,眼底検査)はCVitit-1に施行した.眼圧は,非接触型眼圧計を用いて,各来院時のC9時.11時の間に測定した.なお,眼圧の評価眼は,摂取前検査時(Visit-2)で眼圧の高いほうの眼とし,両眼の眼圧が同じVisit-1事前検査Visit-3Visit-4Visit-5Visit-2摂取前(Visit-2)への登録割付→摂取前摂取4週後摂取8週後摂取12週後本試験への選抜被験者の割付/試験食品の配布場合は右眼を評価眼とした.被験食品の摂取状況および有害事象調査には被験者日誌を用いた.C4.評価方法・統計解析統計解析は,SASCsoftwareCVer9.4(SASCinstituteCInc.,USA)またはCSPSSCStatisticsCVerC19Cforwindows(日本IBM)を用いた.有効性の主要評価項目は,12週時点における摂取前眼圧からの変化値および変化率とした.副次的評価項目は,4週,8週時点における摂取前眼圧からの変化値および変化率,12週までの「眼圧変化値・時間曲線下面積」,12週時点の眼圧が「2CmmHg以上」「3CmmHg以上」「10%以上」「15%以上」低下した人数とした.摂取前からの変化値および変化率については,群間比較および摂取前後の比較を行った.「眼圧変化値C.時間曲線下面積(CΔCAUC0-12w)」は,台形法を用いて,摂取前からの眼圧変化値の時間曲線下面積を算出し,群間比較を行った.なお,作用機序の考察や副次効果の説明の観点から,相関関係の解析や層別解析などさまざま統計解析を行えるものとした.眼圧値および摂取前からの眼圧変化値の経時比較には対応のあるCt検定を,群間比較には対応のないCt検定を,前値で補正した眼圧変化値の群間比較には共分散分析を使用し,有意水準は5%とした.安全性の主要評価項目は,副作用の集計(発現件数,発現率(副作用発現例数/解析対象例数))とし,副次的評価項目は,有害事象の発現件数,発現率(有害事象発現例数/解析対象例数),生理学検査ならびに生化学検査の異常変動の有無とした.安全性項目の経時比較に対応のあるCt検定,群間比較に対応のないCt検定を使用し,有意水準はC5%とした.有害事象は,責任医師が被験食品との因果関係を「なし」「多分なし」「多分あり」「あり」のC4段階に判定し,「多分あり」「あり」と判定された有害事象を副作用とした10).判定基準の詳細は以下のとおりである.「なし」:時間的に明白な関係がほとんどないと考えられる場合,他の要因(合併症,併用薬,併用食品など)の可能性が明確に考えられる場合.「多分関連なし」:否定しきれないが,時間的な関係が明確でないか,他の要因(合併症,併用薬,併用食品など)の可能性が大きいと考えられる場合.「多分関連あり」:時間的に明白な関係があり,そのうえ他の要因(合併症,併用薬,併用食品など)の関与がほぼ除外される場合.「関連あり」:時間的に明白な関係があり,そのうえ他の要因(合併症,併用薬,併用食品など)の関与が明確に除外される場合.なお,所定の試験スケジュールや内容をすべて終了した被験者のうち,試験食品の摂取率がC80%以下の場合や,検査結果やデータの信頼性に大きな問題が生じた場合は該当被験者を解析対象から除外することとした.CII結果1.被験者背景試験期間はC2017年C1.6月で,被験食品群C23例(男性C13例,女性C10例,平均年齢C53.6C±11.4歳),プラセボ群C24例(男性C10例,女性C14例,平均年齢C49.0C±10.2歳)が試験に組み入れられ,全例が試験を完了した.被験者背景(年齢,性別)は,群間に差がなかった.被験者日誌で確認された試験期間中の摂取状況は,1回摂取忘れがC2例,2回摂取忘れがC1例であり,摂取率は全例でC95%以上であった.また,検査結果やデータの信頼性に大きな問題が生じた被験者はなく,有効性のCPPS解析は全例を解析対象とした.安全性解析(FAS解析)は,割付け後のデータがない者を除くとしていたため,全被験者C47例を解析対象とした.C2.眼圧摂取前眼圧には,両群に有意な差は認められなかった(p=0.578,対応のないCt検定).被験食品群の眼圧は,摂取前のC21.90C±0.38CmmHgから,4週後C19.96C±0.48CmmHg,8週後C20.23C±0.34CmmHg,12週後C19.83C±0.51CmmHgといずれも摂取前に比べ統計学的に有意(p<0.001,対応あるCt検定)に低下し,プラセボ群の眼圧は,摂取前のC22.18C±0.32mmHgから,4週後C21.16C±0.38mmHg,8週後C20.74C±0.43CmmHg,12週後C20.53C±0.44CmmHgといずれも投与前に比べ統計学的に有意(p<0.001,対応あるCt検定)に低下した.摂取前からの眼圧変化値は,被験食品群およびプラセボ群ともいずれの測定点でも負の値となり,統計学的に有意(p<0.01,対応あるCt検定)であった(図2).被験食品群の眼圧変化幅は,いずれの測定点でもプラセボ食品群の眼圧変化幅より大きかったが,群間に統計学的に有意な差は認められなかった(t検定).摂取前からの眼圧変化値について前値補正(共分散分析)を行ったところ,摂取C4週後では被験食品群がプラセボ群に比して統計学的に有意な(p=0.0410)低値を示すことが確認された(表1)が,摂取C8週およびC12週では群間に統計学的に有意な差は認められなかった.被験食品群の眼圧変化率は,4週後C.8.8±1.8%,8週後C.7.2±1.8%,12週後でC.9.3±2.2%であったが,群間差は認められなかった(対応あるCt検定).摂取C12週までの眼圧値・時間曲線下面積は,プラセボ群眼圧変化値(mmhg)1.00プラセボ食品(n=24)被験食品(n=23)0.00**-1.00**#****平均値±標準誤差-2.00******:p<0.001(vs摂取前,対応のあるt検定)#:p<0.05(vsプラセボ食品,共分散分析)-3.00摂取前4週後8週後12週後図2眼圧変化値の推移眼圧は,被験食品あるいはプラセボ食品の摂取前,摂取後C4週,8週およびC12週後に非接触型眼圧計を用いて測定した.のC253.01C±4.28mmHg・weekに対し,被験食品群ではC244.23±4.14CmmHg・weekであり,眼圧変化値・時間曲線下面積は,プラセボ群のC.18.57±3.44CmmHg・weekに対し,被験食品群では.13.13±2.76mmHg・weekであった.12週時の眼圧が「2CmmHg以上低下」「3CmmHg以上低下」「10%以上低下」「15%以上低下」した人数は,被験食品群23例中それぞれC9例,8例,9例,6例であり,プラセボ群24例中それぞれ,12例,7例,10例,3例であった.摂取前眼圧と摂取C12週後眼圧の散布図から得られた回帰直線は,評価眼ではCy=0.5873x+6.964(RC2=0.1946)で,非評価眼ではCy=0.3362x+11.935(RC2=0.0578)であった(図3).C3.安全性有害事象は被験食品群のC23例中C7例(30.4%)8件(34.8%),プラセボ群のC24例中C6例(25.0%)6件(25.0%)に認められ,被験食品群の有害事象は眼障害C2件(8.7%),感染症C4件(17.4%),胃腸障害C2件(8.7%),プラセボ群の有害事象は感染症C5件(20.8%),迷路障害C1件(4.2%)であった.摂取食品との因果関係が「あり」「たぶんあり」とされた副作用は認められず,重篤な有害事象も認められなかった.摂取食品との因果関係が完全には否定できない有害事象(「たぶんなし」)としては下痢がC1件発生した.下痢の程度は軽度,症状はC2日間継続したが,被験食品摂取を継続し無処置で回復した.被験食品群では摂取前に比べ,拡張期血圧,体重,平均赤血球容積(MCV),平均赤血球血色素量(MCH),平均赤血球血色素濃度(MCHC),g-グルタミルトランスペプチダーゼが有意に減少し,グルコヘモグロビン(HbA1c)が有意に増加した(表2).プラセボ群では摂取前に比べ,血圧(拡張期,収縮期),脈拍,MCV,MCH,MCHC,総コレステロール,低比重リポプロテイン(LDL)コレステロールが有意に減少し,HbA1cが有意に増加した(表2).CIII考按本研究では,眼圧C20CmmHg以上の日本人健康成人において,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品摂取により,摂取前表1眼圧変化値の推移被験食品群(n=23)p値1)プラセボ群(n=24)p値1)p値2)摂取C4週後C.1.94±0.38C0.0000C.1.02±0.26C0.0007C0.0410摂取C8週後C.1.67±0.41C0.0006C.1.44±0.35C0.0004C0.4659摂取C12週後C.2.07±0.48C0.0003C.1.65±0.36C0.0002C0.3833(平均値±標準誤差)1)Vs摂取前,対応のあるCt検定.2)ベースライン眼圧値を共変量とした共分散分析.眼圧は,被験食品あるいはプラセボ食品の摂取前,摂取後C4週,8週およびC12週後に非接触型眼圧計を用いて測定した.表2変動が認められた臨床検査値一覧被験食品群プラセボ群摂取前摂取後C12週摂取前摂取後C12週収縮期血圧(mmHg)C124.2±3.5C120.7±3.41)C124.2±3.5C120.7±3.41)拡張期血圧(mmHg)C81.3±3.0C79.9±2.8C76.3±2.7C74.0±2.71)脈拍(回/分)C68.0±2.5C67.1±2.4C71.8±2.2C68.8±2.31)体重(kg)C3.12±1.99C62.93±2.00C55.42±2.122)C55.23±2.112)平均赤血球容積(fL)C91.30±1.01C91.73±1.021)C91.05±0.82C91.55±0.781)平均赤血球血色素量(pg)C30.50±0.42C30.15±0.411)C30.38±0.29C30.10±0.271)平均赤血球血色素濃度(%)C33.40±0.19C32.84±0.161)C33.38±0.14C32.90±0.131)Cg-グルタミルトランスペプチダーゼ(U/L)C43.8±7.9C37.9±7.61)C28.0±5.8C26.1±5.2グルコヘモグロビン(%)C5.59±0.11C5.75±0.111)C5.48±0.11C5.64±0.121)総コレステロール(mg/dL)C223.5±7.1C217.5±6.9C213.5±6.3C204.3±6.21)低比重リポプロテインC132.0±5.1C131.3±5.1C118.0±6.4C113.8±6.32)(平均値±標準誤差)1)Vs摂取前,対応のあるCt検定.2)Vs被験食品群摂取C12週後,t検定.と比較して眼圧を低下させることが明らかとなった.眼圧下降幅はC4週後のみ両群間に統計学的な有意差がみられ,被験食品群で大きかった.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の眼圧下降に関する海外の報告は,緑内障あるいは高眼圧症の患者を対象としたものであり,健康成人での眼圧下降の報告はない.本報告は,健康成人におけるビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の眼圧下降の初めての報告となる.本研究はエビデンスレベルの高い無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験であり,本研究にて健康食品による眼圧下降が健康成人で示せたことは意義があると考える.本研究では,プラセボ群の眼圧が摂取前に比べ有意に下降していた.プラセボによる変動は一般にプラセボ効果と知られており,今回のプラセボ群での変動(1.6CmmHg)はプラセボ効果の範囲内と考えられる.今回は,対象が眼圧測定経験の少ない健常人であること,健常人としては眼圧が高めであったことが,プラセボ効果が大きくなった可能性があると考える.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の摂取により,いずれの測定点でも摂取前に比べ有意に眼圧が下降し,その下降は10%未満であった.また,プラセボ群との比較ではC1測定点でのみ有意差が認められ,その眼圧下降幅はいずれの測定点でもプラセボ食品群より大きく,すべてC1CmmHg以上であった.これらのことから,眼圧下降作用のプラセボに対する優越性や実薬対照との非劣性で承認される眼圧下降薬と比べると,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の眼圧下降は,継続しているものの弱いことが推定される.したがって,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は,眼圧は下降させるものの緑内障の治療には不十分であり,あくまで眼圧が高めの人の眼圧を下げることにより眼の健康維持に役立つサプリメントとして認知されるものと考える.一方,点眼以外で眼圧が下降する食品であるため,点眼を忘れがちな患者や点眼操作がうまくできていない可能性がある患者など,点眼治療のみではコンプライアンス不良が疑われる患者などで,点眼薬の眼圧下降を補助するような使い方もあるかもしれない.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の成分であるピクノジェノールまたはその代謝物が一酸化窒素(NO)産生を促進すること11,12),一酸化窒素が主経路からの房水流出を促進すること3)が報告されている.したがって,一酸化窒素が主経路による房水流出を促進させることにより,眼圧が下降する可能性が示唆されているが,詳細は不明である.本研究では,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の眼圧下降作用が摂取前眼圧に依存するかを検討するため作成した摂取前眼圧と摂取後眼圧から得られた回帰直線から,評価眼,非評価はともに摂取前眼圧値が高いほど被験物質の摂取後の眼圧下降効果が強いことが示され,摂取前眼圧がC18CmmHg以下など比較的眼圧が低い場合は眼圧下降が得られにくい可能性が示唆されている(図3).このため,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は,眼圧が高めの健康成人が眼の健康維持のためセルフケアとして摂取すると眼圧下降効果が得られる可能性が考えられる.一方,緑内障患者では全身の抗酸化能が低下しているとの報告もあり13),ビルベリーや松樹皮エキスの抗酸化作用により全身の抗酸化能を改善させ,緑内障の病態の改善を期待できるかもしれない.また,海外では,眼圧下降薬のラタノプロストやドルゾラミドを使用している高眼圧症患者の摂取において,眼圧下降が報告されている5,14).よって,緑内障の治療を受けている患者で,薬剤による眼圧摂取後眼圧(mmHg)摂取後眼圧(mmHg)2826242220181616182022242628摂取前眼圧(mmHg)2826242220181616182022242628b:非評価眼y=0.3362x+11.935r2=0.0578摂取前眼圧(mmHg)図3摂取前眼圧および摂取後眼圧の分布評価眼(Ca),非評価眼(Cb)(それぞれC23眼)の摂取前と摂取C12週後の眼圧実測値から作成.下降をサポートするための摂取も一つのオプションとなるかもしれない.今後の研究により,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品を摂取すべき対象や摂取が望ましい疾患などが明らかになっていくことを期待する.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品のC12週の摂取では,副作用は認められなかった.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は購入者が自分の意思で摂取するものであるが,軽微な副作用が起こりうることを購入者には知らせておく必要があると思われる.本研究には,被験食品の眼圧下降作用を検出するための例数設計がされておらず,被験食品の摂取時間および摂取後の眼圧測定までの時間を規定していないという制限がある.眼圧下降作用の詳細については,さらなる研究が必要と考える.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の日本人における眼圧の下降が確認されたものの,その下降幅は緑内障治療薬に比べ弱いため,緑内障治療薬の代替えとしてではなく,眼圧上昇を防ぐ可能性のある眼の健康維持を目的とする健康補助食品として使用されることが推奨されると考えられる.CIV結論ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品のC12週摂取により,日本人健康成人において摂取前に比べ有意に眼圧が下降した.ビルベリー抽出物/松樹皮抽出物配合食品は,忍容性もよく,眼圧を下降させることで眼の健康維持に貢献する可能性が示唆された.利益相反本臨床試験は,参天製薬株式会社の資金提供により実施された.筆者の髙木泰孝,島田久生,沖上裕美は参天製薬株式会社の社員である.筆者の庄司信行は,参天製薬のアドバイザーである.謝辞:本稿の作成にあたり,試験実施を担当いただいた医療法人社団信濃会信濃坂クリニック院長(試験担当医師)武士仁彦先生,スタッフの皆様,一連のモニタリング業務を担当していただいた株式会社CTESホールディングス臨床研究事業本部臨床試験管理部管理室の早川優子氏,統計解析計画を監修いただいた関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科講師の竹田竜嗣博士に深く感謝いたします.本試験に関与した参天製薬の社員に感謝いたします.文献1)厚生労働省:平成C30年簡易生命表の概況(政府の統計令和元年C7月C30日).https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/Chw/life/life18/dl/life18-15.pdf2)厚生労働省:健康寿命のあり方に関する有識者研究会,「健康寿命のあり方に関する有識者研究会報告書」(2019年C3月).Chttps://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000495323.Cpdf3)SteigerwaltCJrCRD,CBelcaroCG,CMorazzoniCPCetal:E.ectsCofMirtogenolonocularblood.owandintraocularhyper-tensionCinCasymptomaticCsubjects.CMolCVisC14:1288-1292,C20084)SteigerwaltCJrCRD,CBelcaroCG,CMorazzoniCPCetal:Mirto-genolpotentiateslatanoprostinloweringintraocularpres-sureCandCimprovesCocularCbloodC.owCinCasymptomaticCsubjects.ClinOphthalmol,C2010:471-476,C20105)SteigerwaltR,BelcaroG,CesaroneMRetal:OcularandretrobulbarCbloodC.owCinCocularChypertensivesCtreatedCwithCtopicalCtimolol,CbetaxololCandCcarteolol.CJCOculCPhar-macolTherC25:537-540,C20096)GaoCB,CChangCC,CZhouCJCetal:PycnogenolCprotectsCagainstCrotenone-inducedCneurotoxicityCinCPC12CcellsCthroughregulatingNF-kB-iNOSsignalingpathway.DNACellBiolC34:643-649,C20157)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:ComparisonCofCglaucomatousCprogressionCbetweenCuntreatedCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucomaCandCpatientsCwithCtherapeuticallyCreducedCintraocularCpres-sures.AmJOphthalmolC126:498-505,C19988)KayserCOCandCWarzechaH:PharmaceuticalCbiotechnolo-gy:DrugCdiscoveryCandCclinicalCapplications.CJohnCWileyC&Sons,Inc.,NJ,USA,20129)関澤春仁,野上紀恵,河野圭助:ベリー類のアントシアニン含量の比較.東北農業研究60:225-226,C200710)吉富克則,古川裕之,宮本謙一:臨床試験において収集される有害事象情報の実態調査.臨床薬理39:99-104,C200811)NishiokaCK,CHidakaCT,CNakamuraCSCetal:Pycnogenol,CFrenchCmaritimeCpineCbarkCextract,CaugmentsCendotheli-um-dependentCvasodilationCinChumans.CHypertensionCResC30:775-780,C200712)UhlenhutCK,CHoggerP:FacilitatedCcellularCuptakeCandCsuppressionofinduciblenitricoxidesynthasebyametab-oliteCofCmaritimeCpineCbarkextract(Pycnogenol)C.CFreeCRadicBiolMedC53:305-313,C201213)TanitoCM,CKaidzuCS,CTakaiCYCetal:StatusCofCsystemicCoxidativeCstressesCinCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaandpseudoexfoliationsyndrome.PLoSOneC7:Ce49680,C201214)GizziC,Torno-RodriguezP,BelcaroGetal:MirtogenolRCsupplementationCinCassociationCwithCdorzolamide-timololCorClatanoprostCimprovesCtheCretinalCmicrocirculationCinCasymptomaticCpatientsCwithCincreasedCocularCpressure.CEurRevMedPharmacolSciC21:4720-4725,C2017***

調節安静位における調節微動の変化を指標とした0.01%イブジラスト点眼液の眼疲労に対する有効性の評価

2020年8月31日 月曜日

調節安静位における調節微動の変化を指標とした0.01%イブジラスト点眼液の眼疲労に対する有効性の評価有馬武志仲野裕一郎高橋浩日本医科大学眼科学教室ProofofConceptTrialof0.01%IbudilastOphthalmicSolutionforEyeFatigueinHealthyAdultsTakeshiArima,YuuichirouNakanoandHiroshiTakahashiCDepartmentofOphthalmology,CNipponMedicalSchoolC目的:イブジラスト点眼液の眼疲労に対する有効性を明らかにするために,健康成人に対し携帯用テレビゲームによる調節負荷を加えて,一時的に眼疲労を生じさせたときの調節微動の推移を比較検討した.対象および方法:健康成人C10名を対象として,携帯用テレビゲームによる負荷後にC0.01%イブジラスト点眼液もしくは人工涙液をC1回点眼した.他覚所見は負荷前の調節安静の視標位置を基準にした調節微動出現頻度の数値を,自覚症状はCvisualCanaloguescale(VAS)を用いて,負荷前,負荷後,安静後の推移を比較した.結果:自覚症状は,両薬剤とも負荷後から安静後にかけて有意に改善した.また,0.01%イブジラスト点眼液は,人工涙液と比較して,負荷後から安静後まで調節安静位における調節微動を有意に減少させた.結論:0.01%イブジラスト点眼液は眼疲労に対する治療薬としての可能性が示唆された.CPurpose:Inordertoclarifythee.ectivenessof0.01%ibudilastophthalmicsolutiononeyefatigue,weevalu-atedCtheCchangesCofCtheCaccommodativeCmicro.uctuationCinChealthyCadultsCwhenCplayingCaCportableCvideoCgame.CMethods:ThisCstudyCinvolvedC10ChealthyCadultsCwhoCwereCadministered0.01%CibudilastCophthalmicCsolutionCorCarti.cialCtearsCatCtheCendCofCplayingCaCportableCvideoCgame.CPrimarily,CtheCchangesCofCtheCaccommodativeCmicro.uctuationintherestingstatewereevaluated,andthenanalyzedincorrelationwiththechangesofthevisu-alanaloguescale(VAS)values.Results:TheVASvaluesweresigni.cantlyimprovedafteradministrationinbothdrugCgroups.CInCaddition,CcomparedCwithCarti.cialCtears,0.01%CibudilastCophthalmicCsolutionCsigni.cantlyCreducedCtheCaccommodativeCmicro.uctuationCinCtheCrestingCstateCfromCtheCendCofCplayingCtheCportableCvideoCgameCtoCtheCendofthetest.Conclusion:Our.ndingssuggestthat0.01%ibudilastophthalmicsolutionmaybeausefultreat-mentoptionforeyefatigue.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(8):1027.1034,C2020〕Keywords:健康成人,イブジラスト,眼精疲労,HFC.healthyadult,ibudilast,asthenopia,HFC.はじめに眼の疲労には,休息によっても容易に回復しない病的な疲労である「眼精疲労」と,休息によって回復し翌日まで残存しない生理的な疲労である「眼疲労」がある1).眼精疲労の発症要因としては,外環境要因,視器要因および内環境要因・心的要因の三つに分類2)されており,このC3要因のバランスが崩れたときに眼精疲労が発症するとされている3).つまり,健康な状態においてCVDT(visualCdisplayterminal)作業によって生じる一時的な眼の疲れは「眼疲労」であり,一方恒常的なCVDT作業による近業作業の繰り返しに加え,たとえば,仕事による心的ストレスが加わるなどで,休息によっても疲れが回復しないような状態が「眼精疲労」であるといえる.このような眼疲労に関する評価については,調節安静位に〔別刷請求先〕有馬武志:〒113-8603東京都文京区千駄木C1-1-5日本医科大学眼科学教室Reprintrequests:TakeshiArima,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,NipponMedicalSchool,1-1-5,Sendagi,Bunkyo-ku,Tokyo113-8603,JAPANCおける眼疲労度に関する報告が散見される4.7).これは,被験者の調節努力の介入が少なく,再現性が期待でき,わずかな調節機能変化を他覚的に定量評価できる可能性に基づく8).しかしながら,これらの報告で用いられた測定方法では,測定環境の違いで結果が左右されるなど,安定した計測ができないという問題があった9).一方,近年,オートレフケラトメータを用いて毛様体筋の揺らぎ(調節微動)を測定し,その高周波成分の発現頻度(highCfrequencyCcompo-nent:HFC)の解析を可能としたソフトウエアCAA-2(ニデック)が登場したことで,測定環境に左右されることなく,眼疲労度を客観的に評価できる可能性が示唆されている9).このようななか,國重ら10)は,HFC値による眼精疲労の他覚的評価の可能性を示したが,自覚症状との相関には検討の余地を残した.また,梶田ら11)は,病的な眼精疲労を呈しない集団におけるC1日のCVDT作業前後のCHFC値と自覚症状推移の相関について検討しているが,やはり明確な相関は得られておらず,眼疲労の自覚症状と他覚的指標による総合的な評価には課題を残した.一方,同報告においては,眼疲労評価の新しいパラメータとしてCHFCmin値(VDT作業開始前の視標距離C2Cm.50Ccm間における最小CHFC値の視標位置を基準としたCHFC値)の有用性が提唱された.眼精疲労に対する治療アプローチとして,1967年にC0.02%シアノコバラミン(ビタミンCBC12)点眼液が調節性眼精疲労における調節微動の改善薬として承認されている.また,0.02%シアノコバラミン点眼液で改善が認められない強い自覚症状を訴える患者に対しては,調節緊張(毛様体筋の異常緊張)を緩和する目的で,0.4%トロピカミド点眼液やC1%シクロペントラート塩酸塩点眼液などが使用されているが,調節麻痺や散瞳を生じるため,その適用は限定的である.一方,2000年にアレルギー性結膜炎治療薬として発売されたイブジラスト点眼液(ケタス点眼液C0.01%)の有効成分であるイブジラストは,散瞳・縮瞳作用を示すことなく,毛様体筋の異常緊張に対する弛緩作用を示すことが報告12)され,調節性眼精疲労に対する新たな治療選択肢となる可能性が示された.臨床的には,眼精疲労を自覚する患者へのイブジラスト点眼液C1日C4回点眼により,HFC67cmおよびHFC1Cmの有意な低下が認められた10).一方,同報告では,眼精疲労がさまざまな環境因子の影響を受けることなどから,評価の限界に触れている.今回筆者らは,健康成人に対し調節負荷を加え,一時的に眼疲労を生じさせた際の調節安静位における調節微動の推移を測定し,イブジラスト点眼液の調節性眼疲労に対する有効性について検討したので報告する.CI対象および方法本研究は,2017年C11月.2018年C2月末に,文書により研究への参加に同意が得られ,①C20歳以上C30歳未満である,②本研究に影響を与える既往歴や合併症〔ドライアイ(BUT5秒未満),アレルギーを含む眼炎症,感染症,緑内障,糖尿病〕を有しない,③被験薬に対するアレルギーを有しない,④妊娠中,授乳中あるいは妊娠の可能性がない,⑤眼科手術既往歴がない,⑥角膜上皮障害を認めない,⑦視標に対して調節ができる,⑧負荷後のCHFC1がC50以上または負荷後にCHFC1が上昇した,⑨調節性眼精疲労を効能に有する市販薬を含めた点眼薬を使用せず,また機能性食品(アスタキサンチンなど)を摂取していない,⑩遠視でない(負荷前の等価球面度数にて判定),以上のC10項目をすべて満たす者を対象とした.本研究は,無作為化二重遮閉比較試験として実施した.すなわち,被験薬であるイブジラスト点眼液もしくは人工涙液マイティア点眼液(以下,人工涙液)を無作為に割付し,外観からは識別不能である小箱に封入・封緘した.研究方法は図1に示したとおりであり,来院時検査として,性別,矯正視力,屈折値,乱視度数,角膜所見,BUT検査を行った.安静はC20分とし,負荷のためのゲーム時間はC30分とした.負荷作業は,遠方完全矯正屈折値にC.0.75Dを負荷した過矯正レンズが装着された眼鏡を装用し,眼から30Ccmの位置に固定できるようにゲーム機に紐をつけて研究対象者の首にかけ,落ち物ゲームを行った.なお,ゲーム機はニンテンドウC3DS(任天堂)を用いた.負荷前検査,負荷後検査,安静①後検査,安静②後検査では,調節微動,屈折値および調節応答量を測定した.なお,被験薬は負荷後検査の後に,主治医以外の医師が両眼にC1回1滴点眼し,負荷後検査でCHFC1が高値を示した眼を評価対象眼とした.屈折値は,測定された等価球面値に乱視度のC1/2を加算した値を用い,調節応答量はCrangeCofaccommodationの値とした.なお,測定には乱視矯正付きオートレフケラトメータCARK560A(ニデック)を使用し,負荷前検査値と各検査時の被験薬内の数値を比較した.調節微動は,調節機能測定解析ソフトCAA-2(ニデック)がインストールされたパーソナルコンピュータに接続されたARK560Aにて測定した.HFCは,オートレフケラトメータで得られた屈折度を基準に,視標位置+0.5.C.3.0Dを0.5D間隔でC8段階にステップ状に切り換えて,各ステップにおける視標を注視した際に生じる調節応答波形を計測したものである13).計測された値は,AA-2により解析され,各測定位置におけるCHFC,0.C.0.75Dまでの調節状態におけるCHFCの平均値であるCHFC1,C.1.C.3Dまでの調節状態におけるCHFCの平均値であるCHFC2,HFCの総平均,およびCrangeCofaccommodationなどがCFk-mapとともに表示される(図2).また,通常,視標の最遠点からの近方移動によ図1研究スケジュール図2Fk.mapと測定値りCHFCはいったん上昇し,極大値を示した後にわずかに減少し,調節安静位付近で極小値を示す9).この極小値がもたらす屈折度と雲霧状態における屈折値の平均が近似した値を呈することから,HFCの極小値は調節安静位におけるCHFCであることが示唆されている8).以上のことから,本研究においては,調節微動測定にて視標位置C2Cm.50Ccm間における最小CHFC値を示した視標位置を調節安静位とし,負荷前の調節安静位でのCHFC値をCHFCmin(たとえば,負荷前検査において視標距離C2Cmで最小CHFC値を示した場合,視標位置C2CmのCHFC値をCHFCmin値とする)として,評価指標とした.自覚症状は,症状がない状態をC0(左端),症状が一番強い状態をC10(右端)と規定したC100Cmmの長さの線分上に被験者自身が縦線をマークするCVAS(visualCanaloguescale)を用いた.各検査時にはそれまでに記載したマークを被験者自身が確認したうえでマークすることとし,左端からマークまでの距離(mm)を自覚症状のスコア値とした.他覚所見(HFCmin)と自覚症状(VAS)の相関検討には,負荷後と安静①,安静②後の変化量を用いた.有害事象は,被験者の訴えがあった際に主治医が確認することとした.なお,本研究は日本医科大学病院薬物治験審査委員会の承認後,UniversityCHospitalCMedicalCInformationCNetwork(https://center.umin.ac.jp)に登録のうえ,実施した(UMIN000029611).また,本研究の実施にあたり千寿製薬の資金提供を受けた.CII統.計.解.析被験薬間の比較はCWelchのCt検定,被験薬内の比較はCpairedt検定を行い,HFCmin値とCVASの変化量はCPeasonの相関を検討した.なお,有意水準は両側C0.05とし,統計解析にはCSASCstatisticalsoftware(versionC9.4CforCWin-dows,SASInstituteInc.)を使用した.C本研究は,参加者C23名のうち,負荷後にCHFC1値がC50未満または上昇しなかった症例(5例),初診時にCBUTがC5秒未満であった症例(2例),6D以上の強度近視(3例),他覚所見で調節緊張を疑われた症例(3例)を除外したC10症例を対象とした.対象者の背景は表1に示すとおりで,イブジラスト点眼液群C4例(すべて男性),人工涙液群C6例(男性C3例,女性C3例)の計C10例であった.来院時における矯正視表1被験者背景イブジラスト人工涙液負荷前負荷後安静①後安静②後イブジラスト点眼液群人工涙液群症例数C4C6性別男性C4C3女性C0C3矯正視力(logMAR)C.0.08±0.00C.0.08±0.00屈折値C.2.66±2.08C.3.42±1.46乱視度数C0.56±0.80C0.83±0.83角膜所見CA0D0C3C1CA1D1C1C5BUT検査C5.0±0.0C5.2±0.4C0.00-1.00-2.00屈折値(D)-2.76-2.91-2.83-3.00-3.48-3.42-3.49-3.52-4.00-5.00-6.00図3屈折値の推移と比較イブジラスト人工涙液3.00HFCminの変化量の比較においては,負荷後と安静①後C2.50との変化量(イブジラスト点眼液群:C.3.96±3.76,人工涙2.152.012.072.012.07*1.592.10*1.98調節応答量(D)液群:7.10C±5.33)ならびに負荷後と安静②後との変化量(イブジラスト点眼液群:C.5.26±5.93,人工涙液群:4.61C±5.22)において,イブジラスト点眼液群は,人工涙液群と比2.001.501.00較して有意に減少した(p=0.005,0.036)(図6).0.500.00負荷前負荷後安静①後安静②後*:p<0.05図4調節応答量の推移と比較ARK560Aで測定されたCrangeofaccommodationの値.力,屈折値,乱視度数,BUT値に被験群間で有意な差はなく,角膜所見においても角膜上皮障害が重症である症例はなかった.なお,本研究の参加者は,全員が日本医科大学医学部在学中のC5年生であった.屈折値は,来院時から安静②後まで両群ともに有意な変化はみられなかった(図3).一方,調節応答量は,イブジラスト点眼液群では負荷前から安静②後までの間に有意な変化はみられなかったが,人工涙液群では負荷前と比較して負荷後に有意に調節力が低下(負荷前:2.07C±0.40D,負荷後:1.59C±0.52D,p=0.036)し,安静②後にかけて有意に調節力は回復した(安静②後:1.98C±0.57D,p=0.014)(図4).HFCminの推移は図5に示すとおりで,全症例においては,負荷前と比較して安静①後に有意に上昇した(負荷前:C49.23±4.36,安静①後:54.62C±5.93,p=0.016).また,人工涙液群においては,負荷前と比較して安静①後および安静②後(負荷前:49.33C±5.62,安静①後:57.04C±6.61,安静②後:54.55C±8.46,p=0.024,0.039),負荷後と比較して安静①後に有意に上昇した(負荷後:49.94C±5.48,Cp=0.022).VASの全症例における推移は,負荷前:19.1C±18.7,負荷後:45.8C±17.8,安静①後:22.8C±19.1,安静②後:12.0C±11.8であり,負荷前から負荷後に有意に上昇し(p<0.001),その後安静②後にかけて有意にスコア値が減少した(負荷後Cvs安静①後,安静②後ともにp<0.01,安静①後Cvs安静②後:p=0.023)(図7a).また,被験群間のCVASの推移は,イブジラスト点眼液群においては,負荷前:21.8C±20.1,負荷後:54.5C±19.0,安静①後:26.8C±22.3,安静②後:14.0C±13.5(図7b),人工涙液群では,負荷前:17.3C±19.4,負荷後:40.0C±15.8,安静①後:20.2C±18.4,安静②:C10.7±11.7であり(図7c),負荷前から負荷後に有意に数値が上昇(イブジラスト点眼液群:p=0.021,人工涙液群:p=0.013)し,負荷後から安静①後(イブジラスト点眼液群:Cp=0.018,人工涙液群:p<0.001),安静②後(イブジラスト点眼液群:p=0.024,人工涙液群:p<0.001)にかけて有意に減少したが,負荷後から安静②後までのCVASの変化量の比較においては,両群間に有意な差を認めなかった(図8).3D画像視聴により近点が延長される報告がある14)ため,本研究においても負荷による調節安静位の延長や短縮といった調節安静位の移動について検討した.負荷前と比較して負荷後の調節安静位が近方に移動した症例を近視化症例,遠方に移動した症例を遠視化症例,移動しなかった症例を変化なし症例と定義したところ,表2に示したとおり,近視化症例はC3例(イブジラスト点眼液群:2例,人工涙液群:1例),遠視化症例はC2例(すべてイブジラスト点眼液群),変化なa:全症例b:イブジラストc:人工涙液707060605050調節微動(HFCmin)54.9450.9949.094049.68302010調節微動(HFCmin)49.9454.554049.3330**20*100負荷前負荷後安静①後安静②後0負荷前負荷後安静①後安静②後負荷前負荷後安静①後安静②後*:p<0.05図5HFCminの推移イブジラスト■人工涙液151050-5-10-15安静①後-負荷後安静②後-負荷後*:p<0.05図6HFCminの変化量の比較a:全症例b:イブジラストc:人工涙液100**100**100**調節微動(HFCmin)の変化量21.854.5*26.814.09090スコア値(mm)4030208070605040302080706050403020100負荷前負荷後安静①後安静②後負荷前負荷後安静①後安静②後負荷前負荷後安静①後安静②後*:p<0.05図7VASの推移し症例はC5例(すべて人工涙液群)であった.イブジラスト静①後以降に調節安静位が近方もしくは遠方に移動したが,点眼液群で近視化したC2症例は,安静①後以降,調節安静位1症例は負荷前から安静②後を通して調節安静位は移動しなが負荷前と同じ位置に戻った.人工涙液群では,5症例で安かった.イブジラスト■人工涙液0.0-10.0安静①後-負荷後安静②後-負荷後スコア変化量(mm)-20.0-30.0-40.0-50.0-60.0-70.0*:p<0.05図8VASの変化量の推移表2各検査時における調節安静位被験薬症例負荷前負荷後安静①後安静②後イブジラスト点眼液C1C2C3C4C2CmC1CmC1CmC2CmC1CmC2CmC2CmC1CmC2CmC67CcmC1CmC2CmC2CmC2CmC67CcmC2Cm人工涙液C1C2C3C4C5C6C2CmC1CmC2CmC2CmC2CmC2CmC2CmC67CcmC2CmC2CmC2CmC2CmC1CmC1CmC1CmC1CmC2CmC1CmC1CmC2CmC1CmC1CmC2CmC67Ccm調節安静位:各検査時の庁瀬微動測定時において,2Cm.50Ccm間の最小CHFCを記録した指標位置.a:近視化(n=3)b:遠視化(n=2)c:変化なし(n=5)80707047.6156.8251.8255.1049.0148.44*57.43**52.4950.6854.5251.8051.1370605040302010調節微動(HFCmin)調節微動(HFCmin)調節微動(HFCmin)6050403020106050403020100負荷前負荷後安静①後安静②後0負荷前負荷後安静①後安静②後負荷前負荷後安静①後安静②後*:p<0.05図9調節安静位の変化とHFCminの推移a:近視化(調節安静位が負荷前と比較して負荷終了時に近方へ移行した症例)Cb:遠視化(調節安静位が負荷前と比較して負荷終了時に遠方へ移動した症例)Cc:変化なし(調節安静位が負荷前と比較して負荷終了時に変化しなかった症例)図9に示したとおり,調節安静位の移動別のCHFCminは,安静①後:51.82C±2.78,安静②後:55.10C±6.54,変化なし近視化症例では,負荷前:50.68C±1.11,負荷後:54.52C±症例では,負荷前:49.01C±6.22,負荷後:48.44C±4.55,安4.83,安静①後:51.80C±2.87,安静②後:51.13C±12.31,遠静①後:57.43C±7.31,安静②後:52.49C±7.59であり,変化視化症例では,負荷前:47.61C±1.52,負荷後:56.82C±0.77,なし症例において負荷前と安静①後および安静②後,負荷後8080*57.720.727.37.0**19.637.6*17.811.0スコア値(mm)スコア値(mm)706050706050101000負荷前負荷後安静①後安息②後負荷前負荷後安静①後安静②後負荷前負荷後安静①後安静②後*:p<0.05図10調節安静位の変化とVASの推移a:近視化(調節安静位が負荷前と比較して負荷終了時に近方へ移行した症例)Cb:遠視化(調節安静位が負荷前と比較して負荷終了時に遠方へ移動した症例)Cc:変化なし(調節安静位が負荷前と比較して負荷終了時に変化しなかった症例)と安静①後に有意に上昇した(それぞれCp=0.041,0.016,C00.003).-10調節安静位の移動別のCVASの推移は図10に示したとお-20りであり,近視化症例では負荷前:20.7C±25.4,負荷後:ΔVAS(mm)57.7±10.7,安静①後:27.3C±19.4,安静②後:7.0C±1.7(図10a),遠視化症例では,負荷前:15.5C±9.2,負荷後:48.5±27.6,安静①後:28.5C±27.6,安静②後:22.0C±17.0(図-30-4010b),変化なし症例では,負荷前:19.6C±20.7,負荷後:-5037.6±16.4,安静①後:17.8C±19.5,安静②後:11.0C±13.1(図10c)であり,近視化症例および変化なし症例において,負荷前と比較して負荷後には有意に上昇し(p=0.049,0.017),近視化症例における負荷後と安静②後,変化なし症例の負荷後と安静①後および安静②後とで有意に減少した(それぞれCp=0.017,<0.001,<0.001).HFCminとCVASの相関は図11に示すとおり,負荷後と安静②後との変化量において有意な相関を認めた(r=0.653,p=0.041).なお,本研究において有害事象の発現は認められなかった.CIV考按イブジラスト点眼液群において,負荷後から安静①後および安静②後のCHFCminの変化量は,人工涙液群と比較して有意に減少したことから,イブジラスト点眼液による調節微動の軽減効果が示唆された.イブジラスト点眼液群のCHFCminは,負荷後に最高値を示し,以降安静②後にかけて減少した.イブジラストは,ホスホジエステラーゼ(PDE)を阻害15)し,環状アデノシン・1リン酸(cyclicCadenosinmonophosphate:cAMP)の活性を維持することで毛様体筋を弛緩させる12)と考えられている.また,ウサギへのイブジラスト点眼液単回投与試験で-60r=0.653p=0.041-70-15.00-10.00-5.000.005.0010.0015.00ΔHFCmin図11ΔVASとΔHFCminの相関(負荷後と安静②後の変化量)は,10分後に虹彩・毛様体への移行濃度がC881Cng/gと最高濃度を示し,以降は漸減し,30分後でC358Cng/g,60分後で106Cng/gであった16).PDEに対するイブジラストのC50%阻害濃度(ICC50)の値はC110Cng/mlである12)ことから,その効力は約C60分間持続すると考えられる.負荷後から安静②後までの時間が約C40分であったことから,イブジラスト点眼液が虹彩・毛様体筋に直接作用することによりCPDEを阻害し,毛様体筋弛緩作用を発現した結果,調節微動を軽減したものと考えられた.一方,人工涙液群は,負荷前に比べ負荷後にはCHFCminの変化がなかったが,そのときC6例中C5例で調節安静位の変化もなかった.その後,安静①後ではC6例中C4例,安静②後ではC6例中C5例で調節安静に変化が生じており,HFCminも上昇していることから,何らかの理由により調節安静位の変化が遅れたため,眼疲労の出現時期が遅れたものと推察された.しかし,点眼や安静によってもCHFCminを減少させることができなかったことから,人工涙液の点眼による角膜表面の安定化だけでは毛様体筋に対する影響がないことが示唆された.調節安静位の遠視化については,3D画像の視聴により調節と輻湊の不一致が生じ,調節努力により近点が延長したという報告14)や,間欠性外斜位患者では輻湊や調節により多くの負荷が生じるという報告17)があることから,本研究においてもこれらの要因によってCHFCminが上昇したものと推察される.また,近視化した症例では,疲労のために調節安静位が近方へ移動した結果,毛様体筋における神経支配が副交感神経有意になり,毛様体筋が収縮し,HFCminが上昇したと考えられた.しかしながら,調節安静位が移動しなかった症例の説明については今後の課題である.HFCminとCVASとの間では,負荷後と安静②後との変化量において相関が認められたことから,HFCminは自覚症状を反映するのに有用であることが示唆された.なお,屈折値については両被験薬群と負荷前から安静②後まで変化を示さなかった.また,人工涙液群において,調節応答が負荷後に有意に低下したが,6例中C5例で調節安静位の変化がなかったことや負荷前に比べ負荷後のCHFCminの変化がなかったことから,臨床的に影響を及ぼす変化でないと思われた.以上のことから,両被験薬投与による屈折値や調節応答量に影響はなかったと考えられた.以上,イブジラスト点眼液は,調節性眼精疲労に対して有用な薬剤であると考えられるが,本研究での症例数が少なかったこと,調節安静位が移動しない要因を明確にできなかったことなどの課題が認められたことから,さらなる検証が必要である.文献1)不二門尚:眼精疲労に対する新しい対処法.あたらしい眼科27:763-769,C20102)鈴村昭弘:主訴からする眼精疲労の診断.眼精疲労(三島済一編),眼科CMOOK23,p.1-9,金原出版,19853)梶田雅義:眼精疲労に対する眼鏡処方.あたらしい眼科C19:149-154,C20024)三輪隆:調節安静位は眼の安静位か.視覚の科学C16:C114-119,C19955)三輪隆,所敬:調節安静位と屈折度の関係.日眼会誌93:727-732,C19896)MiwaCT,CTokoroT:AsthenopiaCandCtheCdarkCfocusCofCaccommodation.OptomVisSciC71:377-380,C19947)中村葉,中島伸子,小室青ほか:調節安静位の調節変動量測定における負荷調節レフCARK-1sの有用性について.視覚の科学37:93-97,C20168)梶田雅義:調節応答と微動.眼科40:169-177,C19989)梶田雅義,伊藤由美子,佐藤浩之ほか:調節微動による調節安静位の検出.日眼会誌C101:413-416,C199710)國重智之,高橋永幸,吉野健一ほか:0.01%イブジラスト点眼液とC0.02%シアノコバラミン点眼液の調節性眼精疲労に対する有効性と安全性の比較.あたらしい眼科C36:C1462-1470,C201911)梶田雅義,末信敏秀,高橋仁也ほか:調節安静位における調節微動の変化を指標としたCVDT作業による眼の疲労度の評価.あたらしい眼科37:363-369,C202012)井坂光良:イブジラスのウサギ摘出毛様体平滑筋におけるカルバコール誘発収縮に対する作用.医学と薬学C60:733-734,C200813)梶田雅義:調節機能測定ソフトウェアCAA-2の臨床応用.あたらしい眼科33:467-476,C201614)難波哲子,小林泰子,田淵昭雄ほか:3D映像視聴による視機能と眼精疲労の検討.眼臨紀6:10-16,C201315)GibsonCLC,CHastingsCSF,CMcPheeCICetal:TheCinhibitoryCpro.leCofCIbudilastCagainstCtheChumanCphosphodiesteraseCenzymeCfamily.CEurCJCPhamacolC24:538(1-3):39-42,C200616)小室正勝,堀田恵,堀弥ほか:イブジラスト点眼液の体内動態(I).あたらしい眼科12:1445-1448,C199517)藤井千晶,岸本典子,大月洋:間欠性外斜視におけるプリズムアダプテーション前後の調節微動高周波成分出現頻度.日視能訓練士協誌41:77-82,C2012

調節安静位における調節微動の変化を指標としたVDT作業による眼の疲労度の評価

2020年3月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科37(3):363?369,2020?調節安静位における調節微動の変化を指標としたVDT作業による眼の疲労度の評価梶田雅義*1末信敏秀*2高橋仁也*3新屋敷文子*4山崎奈緒子*4稲垣恵子*5戸田麻衣子*6*1梶田眼科*2千寿製薬株式会社*3株式会社Inary*4大阪府済生会中津病院*5大阪医科大学*6所属なしEvaluationofEyeFatiguewithVDTWorkUsingtheChangeofCiliaryAccommodativeMicro?uctuationinRestingStateofAccommodationMasayoshiKajita1),ToshihideSuenobu2),YoshinariTakahashi3),FumikoShinyashiki4),NaokoYamasaki4),KeikoInagaki5)andMaikoToda6)1)KajitaEyeClinic,2)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd,3)InaryCo.,Ltd,4)OsakaSaiseikaiNakatsuHospital,5)OsakaMedicalCollegeHospital,6)Noa?liationはじめに眼疲労は,休息によって回復し,翌日まで残存しない生理的な疲労であるが,眼精疲労は,休息によって回復しない病的な疲労である1).近年の情報技術の発展に伴う近業の繰り返しは,眼の調節機能への負荷(毛様体筋への負荷)となり,生理的な疲労の蓄積を病的な疲労へと推移させていると推察される.また,眼精疲労にはドライアイ2)や眼位3)に起因するものがあることや,眼精疲労による屈折変化には近視化するだけでなく遠視化する症例があることが報告されるなど4?7),病因や病態は多様である.〔別刷請求先〕梶田雅義:〒108-0023東京都港区芝浦3-6-3梶田眼科Reprintrequests:MasayoshiKajita,M.D.,Ph.D.,KajitaEyeClinic,3-6-3Shibaura,Minato-ku,Tokyo108-0023,JAPAN図1検査スケジュール眼の疲労度については,調節安静位における評価が多数報告されている8?11).調節安静位は概念的には遠点と近点の間にあり8),調節刺激の低下した状態における屈折度であることから12),調節安静位における評価は被験者の調節努力の介入が少ないため,再現性が期待でき,わずかな調節機能変化を他覚的に定量評価できる可能性がある,と推察されている13).しかしながら,これまでの研究の多くは,調節安静位を明所下(empty?eld)や暗視野下(darkfocus)における調節無刺激状態の屈折度として評価しており,臨床に汎用するためには検査室の照明の問題や,固視目標が存在しないために目標捜査運動が生じるといった問題があり,安定した計測ができないという弱点があった14).眼の疲労度に対する他覚的検査については,Campbellら15)が赤外線オプトメータを用いて毛様体の調節振動における約2Hzの周波数成分の存在を明らかにして以来,その解析方法に関する研究16,17)がなされてきた.近年においては,オートレフケラトメータを用いて毛様体の揺らぎ(調節微動)を測定し,その高周波成分の出現頻度(highfrequencycomponent:HFC)の解析を可能とするソフトウエアが登場したことで,測定環境に配慮を要することなく,客観的に眼の疲労度を評価できる可能性が示唆されている14,18).HFC値は,オートレフケラトメータで得られた屈折度を基準に,視標位置+0.5??3.0Dを0.5D間隔で8段階にステップ状に切り換えて,各ステップを注視した際に生じる調節応答波形を計測したものである18).通常,HFC値は最遠点からの視標の近方移動によりいったん上昇し,極大値を示した後にわずかに減少し,調節安静位付近で極小値を示す14).この極小値がもたらす屈折度と雲霧状態における屈折度の平均が近似した値を呈することから,極小HFC値は調節安静位におけるHFC値であることが示唆されている13).そこで,今回筆者らは健康成人の1日のvisualdisplayterminal(VDT)作業により生じる自覚症状および調節安静位におけるHFC値の推移について検討したので報告する.図2Fk?mapI対象および方法本研究は,2017年7月?2017年9月末に,文書により研究への参加に同意し,①屈折度?6Dを超えない,②遠視でない,③老視対策(老眼鏡または遠近両用メガネの使用,VDT作業時に常にメガネをはずすなど)をしていない,④LASIKの既往がない,⑤強度の乱視の自覚がない,⑥多焦点眼内レンズを挿入していない者を対象に実施した.研究方法は,図1に示すとおり,検査実施前に背景因子調査①(年齢,性別,VDT作業年数,眼合併症)を行い,検査当日の朝(9時?10時)に自覚症状および他覚所見検査,夕方(17時?18時)に背景因子調査②〔当日のVDT作業時間,コンタクトレンズ装用の有無,使用コンタクトレンズの種類,点眼剤の使用有無(使用薬剤名,点眼回数)〕について調査したのち,再度,自覚症状および他覚所見検査を行った.なお,他覚所見検査は優位眼にて実施し,コンタクトレンズ装用者は検査時のみコンタクトレンズをはずして検査を実施した.他覚所見検査は,オートレフケラトメータARK560Aおよび調節微動解析ソフトAA2(ニデック)にて等価球面値(屈折度),乱視度数,調節応答量および調節微動(HFC値)を測定した.なお,調節微動測定にて視標位置2m?50cm間における最小HFC値を極小値とし,本研究における調節安静位のHFC値とした.HFC値は,調節微動解析ソフトAA2によりオートレフケラトメータで測定された調節応答波形をFourier変換し,周波数スペクトルを対数に変換したのち,1.0?2.3Hz帯で積分して算出され19),図2のとおりFk-map上に表示される.Fk-mapのX軸は視標位置,Y軸は調節反応量を示し,一つの視標位置に対して11本のバー(11回の測定結果)がある.各バーの印字色がHFC値を示し,極度に高い値70を赤色,低い値50を緑色とし,これらを最大,最小値としてその間を直線的にグラデーション色にして示している18).なお,Fk-mapのX軸上に表示された数値は,それぞれの視標位置におけるHFC値の平均値である.本研究では,IT眼症の指標とされているHFC67cm値,HFC1値(0??0.75Dの調節状態におけるHFC値の平均),HFC値の総平均値(HFCA値),および朝の測定時における調節安静位の視標位置でのHFC値〔HFCmin値:たとえば,朝の測定時に視標位置1m(2m?50cmの間)で最小HFC値を示した場合,視標位置1mにおける朝と夕方のHFC値をそれぞれのHFCmin値とする.したがって,HFCmin値の視標位置は被験者ごとに異なる〕の朝夕の測定値を比較した.また,屈折度と調節応答量についても朝夕の測定値を比較した.眼疲労の自覚症状は,症状がない状態を0(左端),症状が一番強い状態を10(右端)と規定した100mmの長さの線分上に被験者自身が縦線をマークするvisualanaloguescale(VAS)を用いた.夕方の検査時には朝に記載したマークを被験者自身が確認したうえでマークすることとし,左端からマークまでの長さを自覚症状のスコア値とした.また,他覚所見(屈折度,調節応答量および各HFC値)と自覚症状(VAS)の朝夕の変化値の相関を検討した.さらに,夕方の調節安静位が近方あるいは遠方に移動した症例を,それぞれ,近視化あるいは遠視化症例,また移動の認められなかった症例を変化なし症例とし,症例群別に他覚所見と自覚症状の朝夕の変化値の相関について検討した.本研究は,成守会クリニック治験審査委員会の承認後,UniversityhospitalMedicalInformationNetwork(https://center.umin.ac.jp)に登録(UMIN000028164)のうえ,実施した.II統計解析屈折度,調節応答量,HFC値(HFC67cm値,HFC1値,HFCA値,HFCmin値)およびVASの朝夕の変化についてはpairedt-test,HFC値と当日のVDT作業時間,屈折度,調節応答量およびVASの朝夕の変化量の相関はPeasonの相関にて評価した.なお,有意水準は両側0.05とし,統計解析にはSASstatisticalsoftware(version9.4forWin-dows,SASInstituteInc.,Cary,NC)を使用した.III結果1.背景本研究における対象者67例の背景は,表1に示したとおり,男性43例,女性24例,平均年齢36.6±7.5歳,VDT表1対象者の背景対象症例数男性女性43人24人合計67人平均年齢36.6±7.5歳VDT作業年数11.8±6.8年当日のVDT作業時間5.1±1.8時間眼合併症1例コンタクトレンズ装着ハードソフト5例13例合計18例点眼剤使用午前・午後午前のみ午後のみ3例2例5例合計10例朝夕の平均測定間隔7時間58分±5分作業年数11.8±6.8年,当日のVDT作業時間5.1±1.8時間であった.また,1例が麦粒腫を合併していた.コンタクトレンズ使用者は18例(ハードコンタクトレンズ:5例,ソフトコンタクトレンズ:13例),点眼剤の使用は10例(午前,午後とも使用3例,午前のみ使用2例,午後のみ使用5例)であり,朝と夕の検査間隔は平均7時間58分±5分であった.2.屈折度,乱視度数および調節応答量の推移朝および夕方の屈折度は,それぞれ?3.47±2.49Dおよび?3.51±2.50Dであり,朝夕に有意な変化はなかった(p=0.287)(図3).乱視度数は,それぞれ?0.66±0.48および?0.64±0.48であり明視域に影響を与えるほどの乱視はなく,朝夕に有意な差はなかった(p=0.336)(図4).また,調節応答量においても,1.65±0.49Dおよび1.60±0.58Dであり,朝夕に有意な変化はなかった(p=0.195)(図5).3.HFC値とVAS値の推移朝夕の各HFC値は,それぞれ,HFC67cm値では53.43±6.41および52.23±6.95(p=0.082),HFC1値では49.18±5.17および49.40±4.88(p=0.626),HFCA値では,52.55±5.32および52.32±5.36(p=0.517)であり,朝夕に有意な変化はなかった(図6).一方,HFCmin値では45.36±6.34および48.18±6.42(p<0.01)であり,夕方の測定時に有意に上昇した.朝夕の調節安静位の移動(HFCminを示す指標位置の移動)については,近視化症例(夕方に調節安静位が近方に移動した症例)22例,遠視化症例(夕方に調節安静位が遠方に移動した症例)16例および変化なし症例(調節安静位が移動しなかった症例)29例であった.このうち,近視化および朝夕0.00-1.00-2.00-3.00-4.00-5.00-6.00-7.00図3屈折度の推移朝夕0.00-0.20-0.40-0.60-0.80-1.00-1.20図4乱視度数の推移屈折度:乱視矯正付きオートレフケラトメータARK560Aにて測定され,Fk-mapに表示される等価球面値.2.502.001.501.000.500.00朝夕図5調節応答量の推移■朝夕706050403020100HFC67cm値HFC1値HFCA値HFCmin値**:p<0.01調節応答量:乱視矯正付きオートレフケラトメータARK560Aにて測定され,Fk-mapに表示されるrangeofaccom-modationの数値.図6HFC値の推移a:近視化(n=22)b:遠視化(n=16)c:変化なし(n=29)■朝夕■朝夕**7060706050605040504040303030202020101010■朝夕0HFC67cm値HFC1値HFCA値HFCmin値0HFC67cm値HFC1値HFCA値HFCmin値図7調節安静位の変化とHFC値の推移0HFC67cm値HFC1値HFCA値HFCmin値*:p<0.05**:p<0.01a:近視化:夕方に調節安静位が近方に移動した症例.b:遠視化;夕方に調節安静位が遠方に移動した症例.c:変化なし:調節安静位が移動しなかった症例.表2自覚症状の推移朝(mm)夕(mm)pvalue全症例18.5±13.540.6±16.8<0.01**近視化19.0±12.340.1±15.4<0.01**調節安静位の移動遠視化17.2±13.240.9±21.6<0.01**変化なし18.7±14.840.8±15.4<0.01****:p<0.01当日のVDTΔ屈折度Δ調節ΔVAS当日のVDTΔ屈折度Δ調節ΔVAS当日のVDTΔ屈折度なしΔ調節ΔVASr=相関係数*:p<0.05**:p<0.01遠視化症例における朝夕のHFCmin値は,それぞれ,近視化症例で44.68±6.51および49.96±5.71(p<0.01),遠視化症例で45.65±7.28および50.06±6.72(p<0.01)であり,夕方に有意な上昇を認めた(図7a,b).一方,変化なし症例では,いずれのHFC値も朝夕の数値に有意な変化を認めなかった(図7c).表2に示したとおり,調節安静位の移動にかかわらず,夕方のVAS値は有意に上昇した(p<0.01).4.各ΔHFC値と当日のVDT作業時間,Δ屈折度,Δ調節応答量およびΔVASとの相関各HFC値と当日のVDT作業時間および,屈折度,調節応答量,VASの朝夕の変化量(Δ値)との相関は表3に示したとおり,Δ屈折度とΔHFC67cm,ΔHFC1,ΔHFCAおよびΔHFCmin値との間で弱い負の相関が認められ,夕方にHFC値が減少すれば屈折度が遠視化し,増加すれば近視化する結果となった.また,Δ調節応答量とΔHFC67cmとの間にも弱い正の相関が認められた.調節安静位の移動(近視化,遠視化,変化なし)別でのΔHFC値と当日のVDT作業時間,Δ屈折度,Δ調節応答量およびΔVASとの相関は,表4に示したとおり,変化なし症例において,Δ屈折度とΔHFC67cm,ΔHFC1,ΔHFCAおよびΔHFCmin値との間に負の相関があり,Δ調節応答量とΔHFC67cmおよびΔHFCmin値との間に正の相関が認められた.また,近視化した症例においてΔHFCA値とΔVASとの間に正の相関が認められた.なお,ΔHFC値とVDT作業時間との間は,調節安静位の移動にかかわらず,相関関係が認められなかった.IV考察本研究において,HFCmin値は朝夕の変化が有意であったが,HFC67cm,HFC1およびHFCA値の朝夕の変化に有意差はなかった.これは,調節安静位の移動(近視化および遠視化)で層別した場合においても同様であった.一方,自覚症状のスコア値は調節安静位の移動に関係なく夕方の測定時に有意に上昇した.正常眼におけるHFC値は,雲霧状態から?3Dの視標距離の間でおおむね45?60で推移し,調節応答量の変化が少なく18),遠方調節と近方調節のバランスが調節安静位でうまく釣り合っているとされている12,20).本研究におけるHFC値についても,同等の範囲にあり,朝夕に有意な変化は認められなかった.また,屈折度および調節応答量においても有意な変化は認められず,各HFC値と屈折度の変化値に弱いながら相関を認めたことから,遠方調節と近方調節のバランスが調節安静位で釣り合っており,1日を通してVDT作業を行っても正常の調節作用が維持できていると考えられた.以上のことから,本研究の対象者は,少なくとも病的な調節性眼精疲労には罹患していない集団であったと考えられた.ただし,このような集団においても,日常業務による眼調節への負荷が生じているものと推察され,調節安静位の移動に基づく近視化あるいは遠視化症例では,夕方のHFCmin値が有意に上昇していた.すなわち,HFCmin値の変化は,生理的な眼疲労の程度を反映していることが示唆された.正常な眼調節における遠方視においては,毛様体筋が弛緩するため,HFC値は減少するものと考えられる.しかしながら本研究においては,調節安静位が遠視化した症例においてもHFCmin値の有意な上昇が認められた.眼疲労により遠視化する背景因子としては,短時間の3D映像視聴による調節と輻湊の不一致により調節近点が延長するという報告5,7)や,間欠性外斜位患者では輻湊や調節により多くの負荷が生じるとする報告6)がある.本研究においては眼位検査や輻湊検査を実施していないため,これらの背景因子を有する対象者の存在については明らかではないが,このような要因による調節努力が働いた結果,HFCminが有意に上昇した可能性が示唆された.なお,高度の遠視では,調節を働かせても常に明視することができず,調節することをあきらめてしまう症例が存在する21).したがって,本研究における遠視化症例の遠視化の程度は軽微なものであったと考えられる.以上のように,本研究の結果から,各HFCパラメータのうちHFCmin値の変化は,軽微な初期段階の眼疲労を含め,その疲労度を鋭敏に反映している可能性が示唆され,生理的な疲労である眼疲労の程度を評価できるパラメータ候補であると考えられた.したがって,眼精疲労に至るまでの早期診断や治療にも有用であると推察された.さらに,HFCmin値は病的な眼精疲労患者においても有用なパラメータ候補であると考えられるが,さらなる検討が必要である.なお,本研究の限界として,眼位や輻湊検査を実施していなかったため,眼の疲労による調節安静位の移動が起こる明確な原因の判明には至らなかったこと,HFC値とVAS値の間には一部では相関が認められたものの,VASのばらつきが大きく,調査方法を含めたさらなる検討が必要であること,HFC値と当日のVDT作業時間との間に相関が認められなかったことから,眼疲労を起こす要因には,1日のVDT作業の累積時間の長短のみならず,連続性(休憩の有無)や作業内容などの影響も考慮する必要が示唆されたが,その要因について究明することができなかったこと,があげられる.また,本研究は眼精疲労を自覚していない者を対象にしているため,眼精疲労患者におけるHFCmin値がどのように推移するのか,屈折度や調節応答量がどう関係するのかは不明なため,引き続き検討したい.文献1)不二門尚:眼精疲労に対する新しい対処法.あたらしい眼科27:763-769,20102)五十嵐勉,大塚千明,矢口智恵美ほか:シアノコバラミンの処方例におけるドライアイ頻度.眼紀50:601-603,19993)藤井千晶,岸本典子,大月洋:間欠性外斜視におけるプリズムアダプテーション前後の調節微動高周波成分出現頻度.日本視能訓練士協会誌41:77-82,20124)西信元嗣:屈折・調節の基礎と臨床.日眼会誌98:1201-1212,19945)難波哲子,小林泰子,田淵昭雄ほか:3D映像視聴による視機能と眼精疲労の検討.眼臨紀6:10-16,20136)川守田拓志,魚里博,中山奈々美ほか:正常眼における調節微動高周波成分と屈折異常,眼優位性の関係.臨眼60:497-500,20067)伊比健児:テクノストレス眼症と眼調節.日職災医誌50:121-125,20038)三輪隆:調節安静位は眼の安静位か.視覚の科学16:114-119,19959)三輪隆,所敬:調節安静位と屈折度の関係.日眼会誌93:727-732,198910)MiwaT,TokoroT:Asthenopiaandthedarkfocusofaccommodation.OptomVisSci,71:377-380,199411)中村葉,中島伸子,小室青ほか:調節安静位の調節変動量測定における負荷調節レフARK-1sの有用性について.視覚の科学37:93-97,201612)梶田雅義:身体と眼の疲れ.あたらしい眼科27:303-308,201013)梶田雅義:調節応答と微動.眼科40:169-177,199814)梶田雅義,伊藤由美子,佐藤浩之ほか:調節微動による調節安静位の検出.日眼会誌101:413-416,199715)CampbellFW,RobsonJG,WestheimerG:Fluctuationsofaccommodationundersteadyviewingconditions.JPhysiol145:579-594,195916)WinnB,PughJR,GilmartinBetal:Thefrequencychar-acteristicsofaccommodativemicro?uctuationsforcentralandperipheralzonesofthehumancrystallinelens.VisionRes30:1093-1099,199017)CharmanWN,HeronG:Fluctuationsinaccommodation:areview.OphthalPhysiolOpt8:153-164,198818)梶田雅義:調節機能測定ソフトウェアAA-2の臨床応用.あたらしい眼科33:467-476,201619)鈴木説子,梶田雅義,加藤桂一郎:調節微動の高周波成分による調節機能の評価.視覚の科学22:93-97,200120)木下茂:屈折・調節の基礎と臨床.日眼会誌98:1256-1268,199421)佐々本研二:調節力の変化.あたらしい眼科18:1239-1243,2001◆**