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Prism Adaptation Test により術量決定を行った内斜視の術後成績

2013年3月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科30(3):419.422,2013cPrismAdaptationTestにより術量決定を行った内斜視の術後成績加藤浩晃*1,2稗田牧*2中井義典*2中村葉*2木下茂*2*1バプテスト眼科クリニック*2京都府立医科大学大学院医学研究科視機能再生外科学PreoperativePrismAdaptationinPatientswithEsotropiaHiroakiKato1,2),OsamuHieda2),YoshinoriNakai2),YouNakamura2)andShigeruKinoshita2)1)BaptistEyeClinic,2)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine目的:外来診療時のみでPrismAdaptationTest(PAT)を行った内斜視手術の術後成績をレトロスペクティブに検討する.対象および方法:対象は京都府立医科大学附属病院において2003年から2010年までに共同性内斜視で10プリズム(Δ)以内の正位を目標としてPATにて術量を決定して手術を施行した症例で,術後1カ月以上経過観察が可能であった47例(男性18例,女性29例),年齢4.75歳(平均19.9±22.8歳)である.完全矯正下でPATを施行し,正位を目標に水平筋移動量を1mm当たり3Δで手術を行った.術後成績,術後斜視角が10Δ以内を手術成功と定義したときの手術成功率,術後の斜視角の推移,眼位矯正効果を検討した.結果:遠方眼位は30.6±11.4ΔからPATにて33.7±10.7Δに有意に増加した(p<0.01).PATを行った際の手術成功率は術後1年で72%,術後2年で71%であり,PATをしなかったと仮定した場合の成功率が術後1年で53%,術後2年で52%であることと比較すると,PATによる術量定量は良好な成績をもたらした.術後の斜視角は術後1カ月から2年の観察期間中で安定しており,明らかな戻りは認めず,眼位矯正量としても約3Δ当たり1mmという算定方法で安定した成績を示した.結論:内斜視に対する手術では,術前にPATで術量決定を行ったほうが良好な術後成績が得られた.Purpose:ToretrospectivelyexaminethepostoperativeresultsofesotropiasurgeryperformedafteradministratingthePrismAdaptationTest(PAT)onlyduringtheperiodofambulatorycare.SubjectsandMethods:Thisstudyinvolved47patients(18malesand29females;agerange:4.75years;meanage:19.9±22.8years)whoshowedstableesodeviationwith10prismsorlessbyPAT.Foreachpatient,PATwasadministeredunderfullcorrectionandsurgerywasperformedonthelateralrectusmuscleand/ormedialrectusmuscleat3prismsper1mm,forthepurposeofright-eyerepositioning.Theprocedure’spostoperativesuccessrate(definedaspostoperativeangleofstrabismusoflessthan10prisms),thepostoperativeangleofstrabismusandtheeffectivenessofthesurgicalcorrectionofeyepositionwereexamined.Results:At1and2yearspostoperatively,thesuccessrateofthesurgicalprocedurewithPATperformedwas72%and71%,respectively,ascomparedwith53%and52%,respectively,withoutPATperformed.ThepreoperativeadministrationofPATthereforeyieldedgoodresults.Ineachpatient,thepostoperativeangleofstrabismusremainedstableduringthe2-yearfollow-upobservationperiod.Inaddition,thepositionofeachpatient’seyewassurgicallycorrectedandstabilizedviathecalculationmethodof3prismsper1mmofcorrection.Conclusions:Forpatientsundergoingesotropiasurgery,betterpostoperativeresultsareobtainedthroughthepreoperativeadministrationofPAT.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(3):419.422,2013〕Keywords:プリズムアダプテーションテスト,PAT,内斜視,内斜視手術,斜視角.PrismAdaptationTest,PAT,esotropia,esotropiasurgery,angleofstrabismus.〔別刷請求先〕加藤浩晃:〒606-8287京都市左京区北白川上池田町12バプテスト眼科クリニックReprintrequests:HiroakiKato,M.D.,BaptistEyeClinic,12Kamiikeda-cho,Kitashirakawa,Sakyo-ku,Kyoto606-8287,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(133)419 はじめに内斜視は眼位の定量に輻湊の影響が入りやすく,眼位の正確な定量が困難なため,斜視手術の精度が外斜視より不安定とされている.このためプリズムアダプテーションテスト(PrismAdaptationTest:PAT)を施行して手術成績を上げる試みが従来から検討されてきた1,2).PrismAdaptationStudyResearchGroupは,内斜視手術におけるPATの有用性を無作為化臨床比較試験で評価している.PATを行って0.10プリズム(Δ)に斜視角が安定して融像がある症例に対して最大斜視角を基準に手術を行った群(最大斜視角群)と,顕性斜視角を基準に手術を行った群(顕性斜視角群)の手術成績を比較すると,術後斜視角度が10Δ以内となった割合は最大斜視角群では89%に対し,顕性斜視角群では79%であり,PATにより検出された斜視角を基準に手術を行ったほうが過矯正になる割合は少なく,統計的有意差はないが安定した成績が得られる3)というものであった.その後同様の結果4.7)が報告されているが,わが国でも大月らがPATを行った内斜視手術の術後1年の手術成績として,プリズム中和時の度数を基準に手術を行った群とプリズム中和前の斜視角を基準に手術を行った群を比較すると,術後斜視角度が10Δ以内を手術成功と定義した場合,手術成功率はそれぞれ84%,78%であり,プリズム中和時の度数を基準に手術を行った群のほうでより良好な成績が得られたことを報告している8).これらの報告ではPATを入院のうえで術前5.7日間においてプリズムレンズを装用させて行っているが,現在では眼科手術に際し,入院して検査を行えないことも多い.そこで,今回筆者らは,入院ではなく外来診察時にPATを行い,内斜視手術における術前定量としての外来のみでのPATの有用性を検討したので報告する.I対象および方法1.対象の選択2003年4月から2010年12月までに京都府立医科大学附属病院眼科で,内斜視に対して手術を行った106例のうち,共同性内斜視であり外来のみでPATを行い,10Δ以内の正位を目標として術量を決定し手術を施行した症例で,術後1カ月以上経過観察が可能であった47例を対象とした.内訳は男性18例,女性29例,年齢は4.75歳(平均19.9±22.8歳)であった.2.屈折検査7歳以下の小児の場合は,0.5%アトロピン点眼を両眼に1日2回,1週間行い,それ以外は1%シクロペントレート点眼で調節麻痺をして屈折検査を行った.屈折異常があれば完全矯正の眼鏡を装用させた.420あたらしい眼科Vol.30,No.3,20133.斜視角の計測遠見は5m離れた距離に設置した点光源を,近見は30cm地点に置いた目標物を視標にAlternateprismcovertest(APCT)で斜視角を計測した.両眼視機能検査では遠見・近見ともに可能な限り融像の有無を判定した.融像の確認は遠見ならびに近見において視標が1つに見えるかどうかで確認を行った.4.PATによる斜視角測定法プリズムレンズ(フレネル膜プリズム検眼セット4000・5000:中央産業株式会社)を使用して検査を行った.両眼の視力差がなければプリズムジオプトリーを等分にしたプリズムレンズを両眼に装用し,両眼に視力差があれば,視力の良いほうに強めのプリズムジオプトリーのプリズムレンズを装用させた.30分後にAPCTを行い,融像を確認して斜視角が0.10Δ以内におさまり融像の確認ができればその斜視角で決定とした.一方,10Δ以上の内斜視もしくは外斜視が生じる場合は,再度プリズムレンズの変更を行い斜視角が10Δ以内に収まるようにプリズムジオプトリーを増減して斜視角を決定した.これを,決定した斜視角が同等の場合は2回で変動する場合は3回以上,検査日を変えて,外来のみで施行した.5.手術方法,手術定量輪部結膜切開もしくは放射状結膜切開で外眼筋を露出し,筋の付着部から内直筋後転術,外直筋切除術もしくは両方を施行した.後転術・切除術はともに筋を7-0ナイロン糸で強膜に3カ所縫合固定し,結膜は9-0シルク糸で縫合した.定量としては,斜視角3Δ当たり1mmとして計算した.6.検討項目,手術成績の判定PAT前後の斜視角の変化,術後の眼位変化,術後の斜視角の推移,眼位矯正量について検討を行った.術後の眼位に関しては,APCTにて10Δ以上の外斜視,10Δ以内の外斜視,正位,10Δ以内の内斜視,10Δ以上の内斜視の5つのカテゴリーに分類した場合のそれぞれの成績に加えて,術後10Δ以内に眼位が収まっている状態を手術成功と定義した場合の術後1年・2年における手術成功率を検討した.また,PATをしなかったと仮定した場合の術後眼位を『PATを施行した場合の術後斜視角+PATでの増加斜視角』と定義して,この場合の手術成功率も検討した.術後の斜視角の推移については術後1カ月,3カ月,6カ月,1年,1年半,2年において検討を行った.眼位矯正量に関しては,術前斜視角.残存斜視角を手術での矯正斜視角と考え,この矯正斜視角を筋移動量で除したものを眼位矯正量と定義し,術後1カ月,3カ月,6カ月,1年,1年半,2年の観察期間においてそれぞれ検討した.(134) II結果1.PAT前後の斜視角の変化遠見ではPAT前30.6±11.4ΔからPAT後で33.6±10.7Δと有意な増加がみられた(p<0.01).近見でもPAT前30.4±12.7ΔからPAT後に34.9±12.7Δと有意な増加がみられた(p<0.01)(図1).10Δ以上斜視角度が増加した症例は26.7%であった.2.術後成績術後の眼位は10Δ以上の外斜視,10Δ以内の外斜視,正位,10Δ以内の内斜視,10Δ以上の内斜視の5つのカテゴリーで分類すると,術後1年ではそれぞれ1例(3%),2例(6%),7例(22%),14例(44%),8例(25%)であり,術後2年ではそれぞれ1例(5%),1例(5%),5例(24%),9例(43%),5例(24%)であった.手術成功率は術後1年で72%(23/32例),術後2年では71%(15/21例)であった.PATをせずに手術を行った場合の術後眼位は,10Δ以上の外斜視,10Δ以内の外斜視,正位,10Δ以内の内斜視,10Δ以上の内斜視と分けると,術後1年ではそれぞれ1例(3%),2例(6%),2例(6%),13例(41%),14例(44%),術後2年では1例(5%),1例(5%),4例(19%),6例(29%),9例(43%)であり,PATを施行せずに手術を行った場合の眼位矯正成功率は,術後1年で53%(17/32例),術後2年で52%(11/21例)であった(表1).手術成功の割合は今回の結果では,PATをした症例のほうが高かった.3.術後の斜視角の推移術後の斜視角を術前,術後1カ月,3カ月,6カ月,1年,1年半,2年としたところ,遠見はそれぞれ33.6±10.7Δ,4.8±9.2Δ,4.8±7.0Δ,4.1±6.0Δ,6.0±6.8Δ,5.4±7.1Δ,5.8±6.8Δであり,近見はそれぞれ34.9±12.7Δ,6.3±6.5Δ,(PD)(PD)*6050403020100*6050403020100PAT前PAT後PAT前PAT後遠見*p<0.01近見図1PAT前後の斜視角の変化PAT前後で遠見・近見ともに斜視角の有意な増加がみられる.表1術後成績眼位PAT施行PATなし術後1年(n=32)術後2年(n=21)術後1年(n=32)術後2年(n=21)外斜視(≧10Δ)1(3%)1(5%)1(3%)1(5%)外斜視(1≪10Δ)2(6%)1(5%)2(6%)52%1(5%)4(19%)6(29%)正位72%7(22%)71%5(24%)53%2(6%)内斜視(1≪10Δ)14(44%)9(43%)13(41%)内斜視(≧10Δ)8(25%)5(24%)14(44%)9(43%)手術成功率はPATをしたほうが術後1年で72%,術後2年では71%であり,PATをしなかったほうの成功率(術後1年53%,術後2年52%)よりも高い.(PD/mm)(PD)7:遠見6:近見543210Pre1M3M6M1Y1.5Y2Y1M3M6M1Y1.5Y2Y(n=41)(n=38)(n=32)(n=26)(n=21)(n=41)(n=38)(n=32)(n=26)(n=21)図2術後の斜視角の推移図3眼位矯正量術後の斜視角は術後1カ月.2年の観察期間中で安定しており,眼位矯正量は術後1カ月,3カ月,6カ月,1年,1年半,2年明らかな戻りは認めなかった.において約3mm程度で大きな変動はなかった.6050403020100-10:遠見:近見(135)あたらしい眼科Vol.30,No.3,2013421 5.8±7.7Δ,6.3±7.6Δ,5.9±8.1Δ,5.8±9.3Δ,4.3±8.7Δと,いずれも術前に比べて術後1カ月の時点で有意に斜視角が減少していた(p<0.01).また,術後1カ月から2年の観察期間中で眼位は安定しており,明らかな戻りは認めなかった(図2).4.眼位矯正量(Δ.mm)術後1カ月,3カ月,6カ月,1年,1年半,2年における眼位矯正量は,遠見でそれぞれ3.1±0.9Δ/mm,3.1±0.9Δ/mm,3.3±0.8Δ/mm,3.2±1.1Δ/mm,3.1±1.1Δ/mm,3.3±1.2Δ/mmであり,近見ではそれぞれ3.1±0.9Δ/mm,3.2±0.9Δ/mm,3.2±0.9Δ/mm,3.3±1.0Δ/mm,3.3±1.2Δ/mm,3.5±1.1Δ/mmであった(図3).統計学的に有意な変化は認められなかった.III考按今回,内斜視手術の術量決定に際して,入院ではなく外来診察時のみでPATを行い,その手術成績を検討した.PATの前後においては,遠見で平均約3Δ,近見で約4.5Δの有意な斜視角の増加が認められた.PATにより術量を決定した場合の手術成功率は術後1年で72%,術後2年で71%であり,PATをせずに手術を行った場合は成功率が術後1年で53%,術後2年で52%であることと比較すると良好な成績であった.また,術後の斜視角は術後1カ月から2年における観察期間中で眼位は安定しており,明らかな戻りも認めず眼位矯正量としても約3Δ/mmで安定していた.今回の報告が既報と大きく違う点は,PATを入院のうえ5.7日かけてプリズムレンズ装用をさせて行っているのではなく,外来時に30分程度のPATを行い,10Δ以内におさまる斜視角において術量を決定している点であり,既報よりもPATが簡便だということである.この簡便なPATであっても顕性斜視角のみで内斜視手術を行う場合に比べて良好な手術成績が認められた.PATを行わず顕性斜視角で内斜視手術をする場合は最大融像幅における斜視角を検出できていないため,術後に低矯正になる可能性が高いと考えられる.また,既報のPrismAdaptationStudyResearchGroupや大月らの報告では,術後斜視角度が10Δ以内となった割合はそれぞれPAT群では89%,84%であったのに対して,PATを行わず顕性斜視角にて手術を行った群ではそれぞれ79%,78%であり,それぞれの成績が今回の筆者らの報告よりも良好であった.これは,筆者らの術前の融像の確認に原因があるのではないかと考えている.大月らはPATをした際にBagolini線条レンズを装用して融像の確認を行っていたが,筆者らは複視の自覚による融像の確認は行ったが,全例でBagolini線条レンズを使っての網膜対応の確認までは行っておらず,厳密には融像のない症例が混じっていた可能性が考えられる.プリズム中和に対して融像反応を示さない症例は手術成功率が低い2)とされており,Bagolini線条レンズを装用して網膜対応の確認を行っていなかったためこのような手術成功率が低い症例が混じり,PAT施行群ならびにPATを行わなかった群それぞれの手術成績が低下したと考えられる.少数例だがBagolini線条レンズ検査で融像が確認できた症例では良好な術後成績が得られていた.内斜視手術では術後の低矯正を防ぎ術後成績を向上させるためにも,術前のPATによる術量の決定が有効であると考えられた.今回の報告では術後経過も良好で術後の眼位も安定しているが,経過観察期間としては2年程度であり,さらに今後長期にわたる経過観察が必要である.文献1)ScottWE,ThalackerJA:Preoperativeprismadaptationinacquiredesotropia.Ophthalmologica189:49-53,19842)大月洋,中山緑子,岡山英樹ほか:手術を前提としたプリズム視能矯正.日眼会誌90:1707-1713,19863)PrismAdaptationStudyResearchGroup:Efficacyofprismadaptationinthesurgicalmanagementofacquiredesotropia.ArchOphthalmol108:1248-1256,19904)BurkeJP,ScottWE,StewartSA:Pre-operativeprismadaptationinacquiredestropia.BrOrthoptJ51:41-44,19905)RepkaMX,ConnettJE,ScottWE:Theone-yearsurgicaloutcomeafterprismadaptationforthemanagementofacquiredesotropia.Ophthalmology103:922-928,19966)HwangJM,MinBM,ParkSCetal:Arandomizedcomparisonofprismadaptationandaugmentedsurgeryinthesurgicalmanagementofesotropiaassociatedwithhypermetropia:one-yearsurgicaloutcomes.JAAPOS5:31-34,20017)Veronneau-TroutmanS:Prismadaptationtest(PAT)inthesurgicalmanagementofacquiredesotropia.ArchOphthalmol109:765-766,19918)大月洋,長谷部聡,田所康徳ほか:後天性内斜視に対するプリズム中和の評価.日眼会誌96:910-915,1992***422あたらしい眼科Vol.30,No.3,2013(136)