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わが国のアカントアメーバ角膜炎関連分離株の分子疫学多施設調査(中間報告)

2012年3月31日 土曜日

《第48回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科29(3):397.402,2012cわが国のアカントアメーバ角膜炎関連分離株の分子疫学多施設調査(中間報告)井上幸次*1大橋裕一*2江口洋*3杉原紀子*4近間泰一郎*5外園千恵*6下村嘉一*7八木田健司*8野崎智義*8*1鳥取大学医学部視覚病態学*2愛媛大学大学院医学系研究科視機能外科学分野*3徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部眼科学分野*4東京女子医科大学東医療センター眼科*5広島大学大学院医歯薬学総合研究科視覚病態学*6京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学*7近畿大学医学部眼科学教室*8国立感染症研究所寄生動物部MulticenterMolecularEpidemiologicalStudyofClinicalIsolatesRelatedwithAcanthamoebaKeratitis(InterimReport)YoshitsuguInoue1),YuichiOhashi2),HiroshiEguchi3),NorikoTakaoka-Sugihara4),Tai-ichiroChikama5),ChieSotozono6),YoshikazuShimomura7),KenjiYagita8)andTomoyoshiNozaki8)1)DivisionofOphthalmologyandVisualScience,FacultyofMedicine,TottoriUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,EhimeUniversity,3)DepartmentofOphthalmology,InstituteofHealthBiosciences,TheUniversityofTokushimaGraduateSchool,4)DepartmentofOphthalmology,TokyoWomen’sMedicalUniversityMedicalCenterEast,5)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,HiroshimaUniversityGraduateSchoolofBiomedicalSciences,6)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,7)DepartmentofOphthalmology,KinkiUniversityFacultyofMedicine,8)DepartmentofParasitology,NationalInstituteofInfectiousDiseases目的:角膜炎に関連したアカントアメーバのDNA分子を多施設疫学研究として解析する.方法:全国6施設で,アカントアメーバ角膜炎に関連して分離されたアメーバ株をクローニング後,18SribosomalRNA遺伝子のシークエンス解析を行った.そして,BLAST(basiclocalalignmentsearchtool)検索による既存アメーバとの相同性を調べ,Tタイピングによる分類を行った.本研究は現在も継続中であるが,最初の2年間の結果を中間報告としてまとめた.結果:43株〔角膜擦過物27株,保存液15株,MPS(multi-purposesolution)ボトル内液1株〕中42株がT4に分類され,角膜由来の1株のみT11に分類された.角膜分離株のシークエンスタイプは15種類に分かれたが,すべて既知のものと一致した.保存液分離株のタイプは10種類に分かれ,角膜分離株と比較できた9株中6株は角膜分離株と一致した.結論:最近のアカントアメーバ角膜炎のわが国での増加は,新たなシークエンスタイプのアメーバの出現によるものではなく,既存の株による感染の増加である.Objective:ToanalyzeAcanthamoebaDNAmolecule’srelationshiptokeratitis,inamulticenterepidemiologicalstudy.Method:Acanthamoebakeratitis-relatedisolatesfrom6instituteswerecloned,andsequencesofthe18SribosomalRNAgenewereanalyzed.HomologybetweenthemandknownsequenceswasthenexaminedusingBLAST(basiclocalalignmentsearchtool),andtheywereclassifiedbyTtyping.Thisresearchisstillongoing;theresultsofthefirsttwoyearshavebeenanalyzedasaninterimreport.Results:Of43isolates,including27isolatesfromthecornea,15fromlenscasesand1fromanMPS(multi-purposesolution)bottle,42isolateswereclassifiedasT4;only1wasclassifiedasT11.Sequenceswereclassifiedinto15types;nonewereuniquegenotypes.Sequencesofisolatesfromlenscaseswereclassifiedinto10types;ofthe9isolateswithwhichcornealisolateshadalsobeenobtained,thesequencesof6wereidenticalwiththesequencesofthecornealisolates.Conclusion:TheseresultsindicatethattherecentincreaseofAcanthamoebakeratitisincidenceinJapanisnotduetotheemergenceofnovelamoebicgenotypes,buttoincreasedincidenceofinfectionbyknowngenotypes.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(3):397.402,2012〕〔別刷請求先〕井上幸次:〒683-8504米子市西町36-1鳥取大学医学部視覚病態学Reprintrequests:YoshitsuguInoue,M.D.,Ph.D.,DivisionofOphthalmologyandVisualScience,FacultyofMedicine,TottoriUniversity,36-1Nishi-cho,Yonago683-8504,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(109)397 Keywords:アカントアメーバ角膜炎,分子疫学,Tタイピング,18SribosomalRNA,多施設共同研究.Acanthamoebakeratitis,molecularepidemiology,Ttyping,18SribosomalRNA,multicenterstudy.はじめにアカントアメーバは土壌・水中をはじめ自然界に広く生息する原虫であり,水道水からも検出される.アカントアメーバにより角膜炎を発症することは1974年にはじめて報告された1)が,本来は外傷に伴う非常にまれな感染症であった.しかし,その後コンタクトレンズ(CL)装用に伴う感染として認められるようになり,わが国では1988年に石橋らがはじめて報告した2).当初はそれでもまれな疾患であったが,CL保存に水道水を用いることのできたソフィーナRでの感染が多いことが注目されるようになり,その後しだいに報告が増加し,特に2006年頃からは急速に増えて,従来報告のなかった北海道や東北でも症例が報告されるようになった.2007年4月.2009年3月にかけて行われたコンタクトレンズ関連角膜感染症の全国調査3)でも,入院を必要としたCL関連角膜感染症の2大起炎菌として緑膿菌とともに浮かび上がった.その多くが,multi-purposesolution(MPS)をケア用品として使用している頻回交換型のCLユーザーであり,MPSのアカントアメーバに対する効果が低いことが検証されるとともに,CLユーザーの最大の合併症として,その診断・治療や予防対策の重要性が高まっている.このような状況のなかで,わが国のアカントアメーバ角膜炎(AK)の原因となっているアメーバの感染源・感染経路,アメーバ感染の地域差や年次動向,アメーバ株と臨床所見・治療への反応性・予後との関係を疫学的に調べる必要性が生じてきた.アカントアメーバを疫学的に分類・比較するにあたって,形態学的に分類することはもちろん重要だが,培養条件によって,形態を変化させるアカントアメーバの場合,限界があり,現在は,アカントアメーバのDNAを利用して分子遺伝学的に分類,同定することが主流となっている.アカントアメーバの遺伝子型別の方法としてはTタイピングが用いられている.これは1996年Gastらにより提唱され,18SribosomalRNA(18SrRNA)をコードしているDNAを用いて行われる4).この方法では2つのシークエンスを全長比較して相同性が5%以上違う場合,別々のTタイプと分類される.現在15のタイプがあり,1つのTタイプには多種類のシークエンスが含まれる.これまでT1-T6,T10-T12のアメーバが角膜炎あるいはアメーバ性脳炎より検出されている.タイピングは特定の集団と疾患との関連を調べるうえできわめて有用である.今回,筆者らは先に述べたコンタクトレンズ関連角膜感染症調査研究班の施設を中心に多施設からのアカントアメーバ株を国立感染症研究所寄生動物部に集積し,Tタイピングに398あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012よる解析を行った.この研究は厚生労働省の新興・再興感染症研究事業の一環として行われており,現在も参加施設を増やして継続中であるが,本報告では最初の2年の結果を中間報告としてまとめる.I対象および方法1.対象対象は,全国の6施設(鳥取大学,愛媛大学,徳島大学,東京女子医科大学東医療センター,山口大学,京都府立医科大学)の眼科に2009年4月.2010年12月の間に受診したAK患者の角膜擦過物,CLケース(保存液),MPSボトル,使用環境(洗い場)から分離されたアカントアメーバ株および,これらの施設で過去に分離され,保存されていた株を対象とした.本研究については,各施設の倫理委員会にかけて了承を得,過去に分離された株も含めて,本研究に使用することを患者本人あるいは代諾者に文書で承諾を得た.角膜擦過物から27株,CLケース(保存液)から15株,MPSボトルから1株,計43株が対象である.2.アカントアメーバの培養と無菌クローン化アカントアメーバは大腸菌を塗布した1.5%non-nutrientagar(NN培地)上で25℃にて分離,培養した.これをキャピラリーピペットによる釣り上げ法(micro-manipulation法)にて単離し,さらに大腸菌寒天培地上でクローン培養した5).無菌化の手順としては,クローン化したアカントアメーバのシストを1mlの0.1N塩酸溶液中で,37℃にて一晩処理を行った後,500×g,5分間遠心分離を行ってシストを沈殿させた.その後,塩酸を除去して滅菌蒸留水に浮遊させ,同じ条件で再度遠心を行った.滅菌蒸留水を除去し,得られたシストを100単位/mLのペニシリン(明治製菓)と,100μg/mLのストレプトマイシン(明治製菓)を添加し,PYGC培地(10g/LProteosepeptone,5g/LNaCl,10g/LYeastextract,10g/LGlucose,0.95g/LL-Cysteine,10mMNa2HPO4,5mMKH2PO4)で培養した5).3.DNA解析遺伝子抽出キットQIAampRDNAMiniKit〔(株)キアゲン〕を使用して,添付のプロトコールに従ってDNAを抽出した.抽出したアメーバDNAを,GeneAmpRPCR(polymerasechainreaction)system2400により,アメーバ特異プライマーであるJDP1-JDP2を用い,18SrRNA遺伝子の高可変領域の一つであるDF3(diagnosticfragment3)を含む約(110) 400塩基対を既報の温度条件で増幅した6).PCRにて増幅された産物の塩基配列を蛍光シークエンサー(ABIPRISMR310GeneticAnalyzer)を用いて,シークエンス用プライマー892Cにより解析した6).4.ホモロジー検索このようにして得られた塩基配列をBLAST(basiclocalalignmentsearchtool)を用いてGenBank,EMBL(EuropeanMolecularBiologyLaboratory),DDBJ(DNADataBankofJapan)に登録された株と照合した.データベースに登録された株で,対象株と相同性の最も高いものを検索し,データベース登録名,対象株と登録株との相同性,登録株の分離元を調べた.5.系統樹作製対象株とデータベースに登録されているTタイピング(T1.T15)の代表的な株を用いて,解析用プログラムとしてClustalWを用いて系統樹を作製した.II結果1.角膜分離27株ホモロジー検索の結果角膜分離27株のTタイピングの結果では1株のみがT11であったが,他はT4であった(96.3%).T4に属する26株のうち22株は角膜炎より分離されている既知の配列と一致し,それ以外の4株は角膜炎分離株では認められないもののやはり既知の配列と一致した(表1).ホモロジー検索の結果をもとに,系統樹を描く(図1)とT4の中で特定の遺伝的集団を形成せず,遺伝的には多様性を認め15種類に分かれた.そのうち,複数株,複数地域に検出されるシークエンスのタイプとして,ATCC30461EyestrainやATCC50497Rowdonstrainなどと相同性を認めるものが存在した(図2).2.CLケース(保存液)由来株・MPSボトル由来株と角膜分離株の関係(表2)保存液分離株15株のシークエンスはすべてT4であったが,10種類のシークエンスタイプに分かれた.このタイプでは,患者の角膜分離株とともに分離された9組中6組は一致したが,3組では一致しなかった.MPSボトル由来の1株についてはその患者の角膜分離株およびCLケース(保存液)由来株の3者のシークエンスタイプが一致した.表1アカントアメーバ角膜炎患者の角膜擦過物由来株の18SrRNA遺伝子タイピング由来試料IDTtypeBLASTで相同性の高かった(99-100%)株の配列左記配列の分離試料角膜1-1-1T4ATCC50497Acanthamoebasp.RowdonstrainKeratatis角膜1-2-1T4ATCC50497Acanthamoebasp.RowdonstrainKeratatis角膜1-3-1T4Acanthamoebasp.S2.JDPSoil角膜1-5-1T4ATCC30461A.polyphagaEyestrainKeratatis角膜1-6-1T4ATCC50497Acanthamoebasp.RowdonstrainKeratatis角膜1-7-1T4Acanthamoebasp.KA/E10Keratatis角膜1-8-1T4Acanthamoebasp.KA/E6Keratatis角膜1-9-1T4Acanthamoebasp.VazalduaKeratatis角膜3-1-1T4Acanthamoebasp.CDC#V390Brain,Skin角膜3-2-1T4ATCC30461A.polyphagaEyestrainKeratatis角膜3-3-1T4ATCC50370A.castellaniiMastrainKeratatis角膜3-4-1T4ATCC50374A.castellaniiCastellaniYeastculture角膜3-7-1T4ATCC50370A.castellaniiMastrainKeratatis角膜4-1-1T4Acanthamoebasp.CDC#V390Brain,Skin角膜4-3-1T4ATCC50497Acanthamoebasp.RowdonstrainKeratatis角膜4-4-1T4ATCC30461A.polyphagaEyestrainKeratatis角膜4-5-1T4A.castellaniiCDC#V042Keratatis角膜6-2-1T4ATCC30461A.polyphagaEyestrainKeratatis角膜6-5-1T4ATCC30461A.polyphagaEyestrainKeratatis角膜7-1-1T11A.hatchetti4REKeratatis角膜7-2-1T4Acanthamoebasp.KA/E24Keratatis角膜7-3-1T4Acanthamoebasp.KA/E6Keratatis角膜7-4-1T4Acanthamoebasp.UIC1060voucherKeratatis角膜7-5-1T4Acanthamoebasp.CDC#V014Keratatis角膜9-1-1T4Acanthamoebasp.CDC#V062Keratatis角膜9-2-1T4AcanthamoebacastellaniiCDC#V042Keratatis角膜9-3-1T4Acanthamoebasp.KA/E6Keratatis(111)あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012399 111121161431131321151621651451921441311331T4U07414351191171911181731931751721741341T3U07412711T11AF019068T1U07400T13AF132134T15AF262365T5U94741T2U07411T6AF019063T10AF019067T12AF019070T14AF333609T7AF019064T8AF019065T9AF019066BalamuthiamandrillarisV039図1角膜分離27株の系統関係26株はT4に含まれ,1株のみT11であった.111121161431131321151621651451921441311331T4U07414351191171911181731931751721741341T3U07412711T11AF019068T1U07400T13AF132134T15AF262365T5U94741T2U07411T6AF019063T10AF019067T12AF019070T14AF333609T7AF019064T8AF019065T9AF019066BalamuthiamandrillarisV039図1角膜分離27株の系統関係26株はT4に含まれ,1株のみT11であった.T4T110.1表2アカントアメーバ角膜炎患者のレンズケース(保存液)・MPSボトル・使用環境(洗い場)由来株の18SrRNA遺伝子タイピングと角膜由来株との一致性BLASTで相同性の左記配列の角膜分離株と試料試料IDTtype高かった(99-100%)株の配列分離試料の一致性保存液1-3-2T4AcanthamoebaspS2.JDPSoil一致保存液1-4-2T4Acanthamoebasp.S15Keratatis不明保存液1-5-2T4ATCC30461A.polyphagaEyestrainKeratatis一致保存液1-6-2T4ATCC50497Acanthamoebasp.RowdonstrainKeratatis一致保存液1-7-2T4Acanthamoebasp.KA/E10Keratatis一致保存液3-1-2T4Acanthamoebasp.KA/E6Keratatis不一致保存液3-2-2T4Acanthamoebasp.CDC#V390Keratatis不一致保存液3-5-2T4Acanthamoebasp.KA/E6Keratatis一致保存液4-2-2T4Acanthamoebasp.CDC#V390Brain,Skin不明保存液6-1-3T4Acanthamoebasp.CDC#V062Keratatis?不明保存液6-2-2T4ATCC30461A.polyphagaEyestrainKeratatis一致*保存液6-5-2T4Acanthamoebasp.CDC#V014Keratatis不一致保存液6-10-2T4ATCC30461A.polyphagaEyestrainKeratatis不明保存液6-11-2T4Acanthamoebasp.KA/E10Keratatis不明保存液9-4-1T4Acanthamoebasp.CDC#V042Keratatis不明MPS6-2-3T4ATCC30461A.polyphagaEyestrainKeratatis一致**角膜とレンズケース(保存液)とケア用品の3者で一致.400あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(112) ATCC30461EyestrainOthers19%34%ATCC50497RowdonstrainATCC5037015%Mastrain7%KA/E611%CDC#V3907%図2シークエンスタイプの検出頻度多くのタイプが認められたが,Eyestrain次いでRowdonstrainが多かった.III考按AKの原因となったアメーバのTタイピングについてはすでに各国から報告がなされており,わが国でも高岡らの報告がある5)が,今回のように多施設で広く日本の株を集めて行われたスタディははじめてである.今回の報告では1株を除いてすべてをT4が占めており,これは過去の多くの報告と一致している.たとえば,Ledeeら7)は米国フロリダ州のAK患者のサンプル37株のうち36株がT4,1株のみT5であったと報告している.一方,Yeraら8)はフランスのアカントアメーバ分離株37株のうち,AK患者由来の10株はすべてT4であったとしている.ただし,それ以外のCL使用者のCL,保存液でも79%がT4であるとしており,臨床的に重要なT4はもともと環境中に最も多く認められるグループである(半数以上)ことには留意が必要であり9),より多くの環境に適応しうる能力をもっていると考えられ,そのため保存液中で生存しやすく,さらにはアカントアメーバにとって決して住みやすいとは言いがたい角膜でも生存しうるのではないかと推察される.今回のスタディでは1株のみT11が認められたが,T11が角膜炎を発症するという報告は過去にもすでにあり10),本研究のこの症例(試料ID7-1-1)が特に他の症例と比較して臨床所見に特徴があるとか,難治であるとかいうことはなかった(データ示さず).また,今回のスタディには1例,非CL装用者の症例が含まれており(試料ID1-2-1),感染経路は不明で1カ月ほどの間に急速に進行して穿孔し,治療的角膜移植を要したが,この症例も分類上はT4で,しかも今回2番目に多いサブタイプであるRowdonstrainに含まれていた(データ示さず).インドではCLと関係ないAK患者が多いが,分離株はやはりT4であることが報告されており11),CLとT4との間に特別の結びつきがあるわけではないようである.T4の中のサブタイプで,Eyestrainの患者5名は愛媛・(113)CDC#V0427%徳島・岡山・静岡と瀬戸内および太平洋側に分布しており,Rowdonstrainの4名は鳥取・京都の患者で,日本海側であった(データ示さず).これが地域差を示すものか,偶然のものかは個々のグループの株数が少ないため,結論できないが,興味深い傾向であり,株数を増やして解析を続け,明らかにしていきたい.感染症の分子サーベイランスの効能として,高病原性株や薬剤抵抗株の発生監視やアウトブレーク時の迅速な要因解明と感染拡大の阻止があり,AKでもこれが一つの重要な目的となる.たとえば,米国シカゴ周辺で上水道の消毒の方法が変更になったことに伴って生じたと推測されるAKのアウトブレーク(2003.2005年)の株を解析した報告があり12),87%がT4,13%がT3であったが,アカントアメーバ角膜炎からの分離株として報告されたことのない新たなシークエンスタイプの株は見つからなかったとしている.また,Zhangら13)は中国北部のAK患者からのアカントアメーバは26株中25株はT4,1株はT3だったが,18株(69.2%)はユニーク・シークエンスだったとしている.今回,わが国のAKの増加を受けて,解析を行ったが,新たなシークエンスタイプは見つからず,特定のシークエンスタイプへの集積も認められなかった.本報告で,角膜とCLケース(保存液)の株を比較できた9例のうち,6例はシークエンスタイプが一致しており,これは十分予想されることであったが,3例においては不一致であった.これをどう考えるかであるが,一つはCLケース(保存液)に複数の株が汚染しており,そのうちの一つが角膜に感染を起こし,別の一つが保存液から分離された可能性である.もう一つの可能性として,不一致例では,角膜感染株はCL保存液でなく,CLを使用している洗い場などの環境由来と考えることもできる.Bootonら14)は香港のAK患者の角膜擦過物と家の水道水から分離された株は一致しなかったとしている.今回の筆者らの検討では使用環境(洗い場)由来株が1株しかなく,かつその症例では角膜から分離ができていないため,本報告からは除外した.今後,環境由来株も増やして,角膜由来株との一致性について検討していきたい.本研究では,アカントアメーバ分子疫学を行うにあたって,アメーバ株のクローン化と無菌化を行ったが,このように,分離株を保存し,研究資源として活用していくうえでも分子疫学は有用である.今回の分子疫学により,国内AKの起因アメーバのほとんどはT4タイプであったが,特定のシークエンスのタイプには収束せず,近年のわが国のAK増加は,新たな高病原性タイプあるいは株の出現ではなく,以前から環境中に生息していたT4中の多くのシークエンスタイプのアメーバの感染リスクが増加したものであると考えられた.いくつかのシあたらしい眼科Vol.29,No.3,2012401 ークエンスタイプの異なるアメーバが角膜より高頻度で検出されたが,アメーバ自体の生物学的特性の関与か,地域性(環境,温度など)の違いなのかは不明である.アカントアメーバについては病原因子の解析が十分ではなく,細胞表面への付着に関与するマンノース結合性蛋白や蛋白分解酵素の関与がいわれている15,16)ものの,Tタイピングがそのような性質や病原性と関連するかどうかもまだよくわかっていない.今後は,参加施設数を増やしてアメーバ株をさらに集積し,使用環境からの分離株も増やして分子疫学を継続・拡大し,感染経路,地域差や温暖化による影響などについて検討するとともに,アメーバ株に対する薬剤感受性試験を行い,臨床所見とも比較することによって,臨床病型や治療経過との関連についても検討を加えていく予定である.本研究は厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症研究事業「顧みられない病気に関する研究」「顧みられない寄生虫病の効果的監視法の確立と感染機構の解明に関する研究」の分担研究として行われた.以下のコンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査委員会委員の先生方に多くの有益なご助言をいただきました.ここに深謝致します.石橋康久(東鷲宮病院眼科),植田喜一(ウエダ眼科),稲葉昌丸(稲葉眼科),宇野敏彦(愛媛大学),田川義継(北海道大学),福田昌彦(近畿大学).(敬称略)文献1)NagintonJ,WatsonPG,PlayfairTJetal:Amoebicinfectionoftheeye.Lancet2:1537-1540,19742)石橋康久,松本雄二郎,渡辺亮子ほか:Acanthamoebakeratitisの1例─臨床像,病原体検査法および治療についての検討─.日眼会誌92:963-972,19883)宇野敏彦,福田昌彦,大橋裕一ほか:重症コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査.日眼会誌115:107-115,20114)GastRJ,LedeeDR,FuerstPAetal:SubgenussystematicsofAcanthamoeba:fournuclear18SrDNAsequencetypes.JEukaryotMicrobiol43:498-504,19965)高岡紀子,八木田健司,山上聡ほか:当院で得られたアカントアメーバの遺伝学的分類.眼科52:1811-1817,20106)SchroederJM,BootonGC,HayJetal:Useofsubgenic18SribosomalDNAPCRandsequencingforgenusandgenotypeidentificationofAcanthamoebaefromhumanswithkeratitisandfromsewagesludge.JClinMicrobiol39:1903-1911,20017)LedeeDR,IovienoA,MillerNetal:MolecularIdentificationofT4andT5genotypesinisolatesfromAcanthamoebakeratitispatients.JClinMicrobiol47:1458-1462,20098)YeraH,ZamfirO,BourcierTetal:ThegenotypiccharacterisationofAcanthamoebaisolatesfromhumanocularsamples.BrJOphthalmol92:1139-1141,20089)BootonGC,VisvesvaraGS,ByersTJetal:IdentificationanddistributionofAcanthamoebaspeciesgenotypesassociatedwithnonkeratitisinfections.JClinMicrobiol43:1689-1693,200510)Lorenzo-MoralesJ,Morcillo-LaizR,Lopez-VelezRetal:AcanthamoebakeratitisduetogenotypeT11inarigidgaspermeablecontactlenswearerinSpain.ContactLensAnteriorEye34:83-86,201111)SharmaS,PasrichaG,DasDetal:Acanthamoebakeratitisinnon-contactlenswearersinIndia.DNAtyping-basedvalidationandasimpledetectionassay.ArchOphthalmol122:1430-1434,200412)BootonGC,JoslinCE,ShoffMetal:GenotypicidentificationofAcanthamoebasp.isolatesassociatedwithanoutbreakofAcanthamoebakeratitis.Cornea28:673-676,200913)ZhangY,SunX,WangZetal:Identificationof18SribosomalDNAgenotypeofAcanthamoebafrompatientswithkeratititsinNorthChina.InvestOphthalmolVisSci45:1904-1907,200414)BootonGC,KellyDJ,ChuY-Wetal:18SribosomalDNAtypingandtrackingofAcanthamoebaspeciesisolatesfromcornealscrapespecimens,contactlenses,lenscases,andhomewatersuppliesofAcanthamoebakeratitispatientsinHongKong.JClinMicrobiol40:1621-1625,200215)CaoZ,JeffersonDM,PanjwaniN:Roleofcarbohydrate-mediatedadherenceincytopathogenicmechanismsofAcanthamoeba.JBiolChem273:15838-15845,199816)HurtM,NiederkornJ,Alizadeb,H:EffectsofmannoseonAcanthamoebacastellaniiproliferationandcytolyticabilitytocornealepithelialcells.InvestOphthalmolVisSci44:3424-3431,2003***402あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(114)

細菌性結膜炎における検出菌・薬剤感受性に関する5年間の動向調査(多施設共同研究)

2011年5月31日 火曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(77)679《第47回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科28(5):679.687,2011c細菌性結膜炎における検出菌・薬剤感受性に関する5年間の動向調査(多施設共同研究)小早川信一郎*1井上幸次*2大橋裕一*3下村嘉一*4臼井正彦*5COI細菌性結膜炎検出菌スタディグループ*1東邦大学医療センター大森病院眼科*2鳥取大学医学部視覚病態学*3愛媛大学大学院医学系研究科視機能外科学*4近畿大学医学部眼科学教室*5東京医科大学Five-YearTrendSurveyinJapan(MulticenterStudy)ofBacterialConjunctivitisIsolatesandTheirDrugSensitivityShinichiroKobayakawa1),YoshitsuguInoue2),YuichiOhashi3),YoshikazuShimomura4),MasahikoUsui5)andCore-NetworkofOcularInfectionStudyGroupofIsolatefromBacterialConjunctivitisinJapan1)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOmoriMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,FacultyofMedicine,TottoriUniversity,3)DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversitySchoolofMedicine,4)DepartmentofOphthalmology,KinkiUniversityFacultyofMeidicine,5)TokyoMedicalUniversityわが国における細菌性結膜炎の検出菌と薬剤感受性の現状を把握するため,2004年11月から2009年12月までの5年間,全国27施設を受診し,その臨床所見から細菌性結膜炎と診断された症例615例を対象に,結膜から検体を採取後,阪大微生物病研究会に送付して培養を行い,症例背景(年齢,地域,受診施設など),検出菌種,薬剤感受性についてその経年変化を検討した.症例背景では,調査年による大きな差はみられず,年齢においては高齢者が多数を占めた(65歳以上45.9%).全被験者615例より検体採取が可能であり,1,156株の細菌が検出された.検出菌の内訳は,Staphylococcusepidermidis19.3%,Propionibacteriumacnes14.4%,Streptococcusspp.13.0%,Staphylococcusaureus10.8%などで,調査期間を通じてグラム陽性菌が約60%,グラム陰性菌が約20.25%,嫌気性菌が約15.20%検出され,地域にかかわらず同様の傾向を示した.薬剤感受性は累積発育阻止率曲線で比較した場合,全菌種を合わせるとレボフロキサシン(LVFX)と塩酸セフメノキシム(CMX)の感受性が高かった.菌種別のLVFXに対する薬剤感受性では,S.aureus(MSSA〔メチシリン感受性黄色ブドウ球菌〕)とP.acnesは高い感受性を示したが,Corynebacteriumspp.に対する感受性は低かった.薬剤感受性は5年間を通じて大きな変化を認めなかった.ToinvestigatethecurrenttendencyinJapanregardingbacterialconjunctivitiscasesandthedrugsensitivityoftheisolatedbacteria,conjunctivalswabsweretakenfrompatientswithsuspectedbacterialconjunctivitisat27institutionsnationwidebetweenNovember2004andDecember2009.TheswabbedsamplesweresenttotheResearchInstituteofMicrobialDiseasesatOsakaUniversity,whereweinvestigatedpatientbackground(e.g.,age,area,institution),isolatedbacterialstrainsanddrugsensitivityduringthatperiod.Therewerenosignificantchangesinbackgroundthroughoutthesurveyperiod.Agedpatientsaccountedforalargeportionofthecases(45.9%ofthepatientswereover65yearsold).Swabswerecollectedfrom615patients,and1,156bacterialstrainswerecollected.Ofthosestrains,19.3%wereStaphylococcusepidermidis,14.4%werePropionibacteriumacnes,13.0%wereStreptococcusspp.and10.8%wereStaphylococcusaureus.Ofthestrainsfoundduringthesurveyperiod,approximately60%weregram-positive,20-25%weregram-negativeand15-20%wereanaerobic,regardlessofarea.Whendrugsensitivitywascomparedusingcumulativegrowthinhibitioncurves,thosestrainsshowedhighsensitivitytolevofloxacin(LVFX)andcefmenoxime(CMX),overall.S.aureus(MSSA〔methicillinsensitiveStaphylococcusaureus〕)andP.acnesshowedhighsensitivitytoLVFX;however,Corynebacteriumspp.showedlowsensitivity.Therewerenosignificantchangesindrugsensitivitythroughoutthe5-yearperiod.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(5):679.687,2011〕〔別刷請求先〕小早川信一郎:〒143-8541東京都大田区大森西7-5-23東邦大学医療センター大森病院眼科Reprintrequests:ShinichiroKobayakawa,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOmoriMedicalCenter,7-5-23Omori-Nishi,Ota-ku,Tokyo143-8541,JAPAN680あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(78)はじめに細菌性結膜炎に対する抗菌薬の選択・投与方法は,起炎菌を検出したうえでその細菌に最も感受性のある薬剤を選択することである.しかし日常臨床では,患者の苦痛の早期軽減や社会生活への影響を考慮して,起炎菌の検出を待たずに治療を行う場合がほとんどであり,起炎菌の同定を行う前に汎用されている抗菌点眼薬を処方するのが現状である.一方,細菌の抗菌薬感受性には経年変化が認められること,近年メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの耐性菌による感染症の拡大に伴い,耐性菌対策が必須であることから,日常臨床における抗菌薬選択の重要性は高く,細菌性結膜炎の起炎菌の動向を把握しておくことは意義あることと思われる.そこで,筆者らCore-NetworkofOcularInfection(COI)のメンバーは,多施設における細菌性結膜炎の検出菌の動向と薬剤感受性の現状を把握し,今後の抗菌薬投与の指標となる有益な情報を得るために,新たな共同研究組織であるCOI細菌性結膜炎検出菌スタディグループを組織した.そして,2004年11月より2009年までの5年間,全国27施設を受診し,その臨床所見から細菌性結膜炎と診断された症例615例を対象に,結膜から検体を採取して同一施設で培養を実施し,症例背景(年齢,地域,受診施設),検出菌種,薬剤感受性について検討を行った.初年度の結果についてはすでに報告した1)が,今回,5年間の予定調査期間を終了したので,その結果を報告する.I対象および方法対象は,全国の約27施設(大橋眼科[北海道],くろさき眼科[新潟県],栃尾郷病院[新潟県],阿部眼科[秋田県],東京医科大学[東京都],東京医科大学八王子医療センター[東京都],東邦大学[東京都],とだ眼科[埼玉県],鹿嶋眼科クリニック[茨城県],いずみ記念病院[東京都],上沼田クリニック[東京都],ルミネはたの眼科[神奈川県],稲田登戸病院[神奈川県],いこま眼科医院[石川県],バプテスト眼科クリニック[京都府],大橋眼科[大阪府],岡本眼科クリニック[愛媛県],愛媛大学[愛媛県],鷹の子病院[愛媛県],町田病院[高知県],魚谷眼科医院[鳥取県],大分県立病院[大分県],新別府病院[大分県],NTT西日本九州病院[熊本県],熊本赤十字病院[熊本県],熊本大学[熊本県],中頭病院[沖縄県].ただし,研究参加年数が4年以下の施設も含む.)を,初年度(第1回:2004年11月,第2回:2005年2月,第3回:2005年5月,第4回:2005年8月),2年度(第5回:2006年2月,第6回:2006年11月),3年度(第7回:2007年11月),4年度(第8回:2008年11月,第9回:2009年2月),5年度(第10回:2009年11月.12月)の各調査期間に受診し,その臨床所見から細菌性結膜炎と診断された患者である.症例総数は615例(男性266例,女性344例,不明5例)で,年齢は生後0~99歳(平均年齢52.2歳)で,年齢不明を除き50.2%(309名)が60歳以上であった(図1).また,7.2%(44例)がコンタクトレンズ(CL)を装用していた.患者から同意を得た後,症状の重いほうの片眼の結膜を擦過して採取した検体を,輸送用培地「AMIESCARBON」を用いて阪大微生物病研究会(阪大微研)に送付し,好気・嫌気培養を行い,細菌の分離・同定を行った.そして,検出菌,地域別の検出菌,施設別の検出菌,年齢別の検出菌,季節別の検出菌,CL装用の有無による検出菌のそれぞれの内訳を検討した.また,検出菌に対して日本化学療法学会の標準法により,レボフロキサシン(LVFX),ミクロノマイシン(MCR),エリスロマイシン(EM),クロラムフェニコール(CP),スルベニシリンナトリウム(SBPC),塩酸セフメノキシム(CMX)の6剤の最小発育阻止濃度(MIC)を測定し,その結果を累積発育阻止率曲線で表した.なお,調査期間中,MCRの製造中止に伴い,4年度からはトブラマイシン(TOB)に変更した.さらに,今回の研究では,結膜炎以外の外眼部疾患を有する症例および参加施設の受診以前に抗菌薬が投与されていた症例は除外した.II結果1.細菌分離率全症例615例のなかで細菌が分離されたのは587例(細菌陽性率95.4%)であり,男性263例,女性319例で,年齢は生後0~99歳(平均年齢52.2歳)であった.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(5):000.000,2011〕Keywords:多施設共同研究,細菌性結膜炎,検出菌,薬剤感受性.multicenterstudy,bacterialconjunctivitis,bacterialisolates,drugsensitivity.20~29歳40~49歳10~19歳1390~99歳17不明141歳未満274230~39歳533360~69歳911~9歳80~89歳618070~79歳12150~59歳63図1症例の年齢分布(期間合計)(79)あたらしい眼科Vol.28,No.5,20116812.検出菌の種類と頻度細菌が分離された587例から1,156株の細菌が検出された(1症例当たり1~8株).初年度から5年度までのすべての検出菌のうち最も多かったのは,Staphylococcusepidermidis(S.epidermidis)223株(19.3%),ついでPropionibacteriumacnes(P.acnes)166株(14.4%),Streptococcusspp.150株(13.0%),Staphylococcusaureus(S.aureus)125株(10.8%),Corynebacteriumspp.122株(10.6%),Haemophilusinfluenzae53株(4.6%),Moraxellaspp.40株(3.5%)であった(図2).S.aureus125株中,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)が99株,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が26株であった.嫌気性菌は178株で,そのうちの169株がPropionibacteriumspp.であった.グラム陽性菌が全体の63.6%を占めていた.経年変化では,初年度は,検体総数が429株でS.epidermidisが102株(23.7%)と最も高頻度に検出され,ついでS.aureus66株(15.4%),Streptococcusspp.59株(13.8%),P.acnes40株(9.3%)の順であった.2年度から5年度まではP.acnesが最も多く,次いでS.epidermidisの順であったが,5年間を通して大きな傾向の変化は認められなかった(図3).グラム染色別の検出菌の内訳・経年変化については,初年度,グラム陽性球菌が59.2%(254株)と最多であったが,2年度50.2%(87株),3年度47.9%(82株),4年度45.1%(84株),5年度42.6%(84株)と,初年度から5年度まで検出菌の約50%はグラム陽性球菌で占められていた(図4).グラム陽性球菌は5年間を通して最も多く検出されていたものの,経年的には検出比率が減少した.3.地域別の検出菌内訳・経年変化(グラム染色別)地域別(北海道・東北,関東,中部,関西,中国・四国,九州・沖縄)検出菌の内訳・経年変化は,グラム陽性球菌が地域・年度を問わず高頻度であった.初年度は,関西地域でグラム陰性菌が少なく,関西・関東で嫌気性菌の比率がやや高かった.しかし,2年度以降は地域間で参加施設の偏り(施設数,施設のタイプ)が生じたために,地域によってはばらつきがみられたものの,全体的な検出菌の頻度については,経年的,地域的に大きな差は認められなかった(図5).4.施設別の検出菌内訳・経年変化(グラム染色別)全症例615例の施設別内訳は,大学病院57例,総合病院127例,眼科クリニック431例であった.施設別の検出菌内訳・経年変化は,5年間を通じ,眼科クリニック,総合病院ではグラム陽性球菌の割合が突出していた.大学病院では,検体数が少ないため,各検出菌の頻度に大きなばらつきがみられ,一定の傾向を得ることはできなかった(図6).5.年齢別の検出菌内訳・経年変化(グラム染色別)全症例615例中の年齢別内訳をみると,65歳以上は282例(45.9%)であり,細菌性結膜炎の半数を高齢者が占めた.各年代(14歳以下,15~64歳,65歳以上)における検出菌の内訳・経年変化をみると,各年代を通じてグラム陽性球菌が最も高頻度であり,5年間を通してその傾向は変わらなかったものの,15歳以上の年代ではグラム陽性球菌の割合が経年的に減少しており,特に3年度以降ではその検出比率は半数を切っていた(図7).0%20%40%60%80%100%5年度4年度3年度2年度初年度3729271021110121650341216941113142822202134201820301091413186105102278441733182517662839302940052122859■:Staphylococcusepidermidis■:MSSA■:MRSA■:その他のStaphylococcusspp.■:Streptococcusspp.■:Corynebacteriumspp.■:その他の好気性グラム陽性菌■:Haemophilusinfluenzae■:Moraxellaspp.■:その他の好気性グラム陰性菌■:Propionibacteriumacnes■:その他の嫌気性菌図3検出菌の経年変化(主要菌種別)MSSA9%その他の好気性グラム陰性菌14%その他の嫌気性菌1%MRSA2%その他の好気性グラム陽性菌6%Staphylococcusepidermidis19%その他のStaphylococcusspp.4%Streptococcusspp.13%Propionibacteriumacnes14%Moraxellaspp.3%Haemophilusinfluenzae5%Corynebacteriumspp.10%図2検出菌の種類(期間合計)0%20%40%60%80%100%5年度4年度3年度2年度初年度84848287254392223253546363431962844323044■:好気性グラム陽性球菌■:好気性グラム陽性桿菌■:好気性グラム陰性菌■:嫌気性菌図4検出菌の内訳・経年変化(グラム染色別)682あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(80)6.季節別の検出菌内訳・経年変化初年度に季節を4回に分けて行った調査では,2月にグラム陽性桿菌が少なく,嫌気性菌が多かった.冬期に多いとされるHaemophilusinfluenzaeであるが,11月に6株,2月に6株,5月に6株,8月に4株検出されており,季節による大きな変化はみられなかった.なお,こうした初年度の結果1)を受け,2年度以降では季節別の比較は行わなかった(図8).7.CL装用の有無との関連性CLは88.5%が装用しておらず,装用者は7.2%にとどまった.CL装用の有無でグラム陽性菌と陰性菌の比率に大きな差はなかったが,CL装用者にグラム陽性桿菌が少なく,嫌気性菌が多い傾向を認めた(図9).8.薬剤感受性結膜炎由来臨床分類株である全検出菌1,156株(全菌種:初年度429株,2年度173株,3年度171株,4年度186株,5年度197株)に対するLVFX,MCR,TOB,EM,CP,SBPC,CMXの抗菌力を,累積発育阻止率曲線で示した(図10).全体としてのMIC80,MIC90はLVFX,CMXがその他の薬剤と比べて低い値となっており,結膜炎の主要な起炎菌に対する高い感受性が認められた.全検出菌に対する各薬剤の抗菌力の経年変化を,累積発育0%20%40%60%80%100%■:好気性グラム陽性球菌■:好気性グラム陽性桿菌■:好気性グラム陰性菌■:嫌気性菌5年度4年度3年度2年度初年度5年度4年度3年度2年度初年度5年度4年度3年度2年度初年度5年度4年度3年度2年度初年度5年度4年度3年度2年度初年度5年度4年度3年度2年度初年度九州・沖縄中国・四国関西中部関東北海道・東北51311631148112860117819542091024347231414627242892914315924881032510833106237139740362111472111030755789349145104017121494134341435795372513834622842148181176図5地域別検出菌の内訳・経年変化(グラム染色別)0%20%40%60%80%100%5年度4年度3年度2年度初年度5年度4年度3年度2年度初年度5年度4年度3年度2年度初年度65歳以上15~64歳14歳以下26411513216262025932832194729402110125247761810541932016198521276827131391517121213012132316628392244■:好気性グラム陽性球菌■:好気性グラム陽性桿菌■:好気性グラム陰性菌■:嫌気性菌図7年齢別の内訳・経年変化(グラム染色別)0%20%40%60%80%100%■:好気性グラム陽性球菌■:好気性グラム陽性桿菌■:好気性グラム陰性菌■:嫌気性菌5年度4年度3年度2年度初年度5年度4年度3年度2年度初年度5年度4年度3年度2年度初年度眼科クリニック総合病院大学病院78645867144612161986148124371816182114561100213383432284952234020072337232324435510044210図6施設別(眼科クリニック,総合病院,大学病院)検出菌の内訳・経年変化0%20%40%60%80%100%2004年11月2005年2月2005年5月2005年11月6942529115811130151239562211■:好気性グラム陽性球菌■:好気性グラム陽性桿菌■:好気性グラム陰性菌■:嫌気性菌図8季節別の検出菌内訳・経年変化(グラム染色別)(81)あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011683阻止率曲線で示した(図11~17).LVFXは5年間の調査期間で大きな変化はなく,累積発育阻止率曲線はほぼ同じパターンを描いた(図11).MIC80,MIC90は低値を示しており,全検出菌に対する高い感受性が認められた.MCR(初年度~4年度)およびTOB(4~5年度)は5年間の調査期間で大きな変化はなく,累積発育阻止率曲線はほぼ同じパターンを描いた(図12~13).EM,CP,SBPCについても5年間の調査期間で大きな変化はなく,累積発育阻止率曲線はほぼ同じパターンであった(図14.16).CMXは5年間の調査期間で大きな変化はなく,累積発育阻止率曲線はほぼ同じパターンを描いた(図17).MIC80,MIC90は低値を示しており,全検出菌に対する高い感受性が認められた.つぎに,細菌性結膜炎に対して最も広く使用されているLVFXの主要検出菌に対する抗菌力について,累積発育阻止率曲線で示した(図18~22).S.epidermidis221株(初年度100株,2年度27株,3年度29株,4年度37株,5年度28株)では,年度間にて多少の変動は認められるものの,LVFXはS.epidermidisに対する高い感受性を5年間を通して維持していた(図18).P.acnes166株(初年度40株,2年度29株,3年度30株,4年度39株,5年度28株)およびS.aureus(MSSA)101株(初年度50株,2年度16株,3年度12株,4年度10株,0%20%40%60%80%100%なしあり■:好気性グラム陽性球菌■:好気性グラム陽性桿菌■:好気性グラム陰性菌■:嫌気性菌5年度4年度3年度2年度5年度4年度3年度2年度初年度初年度79807383227235416372217253300400443429298611027274127303613406図9CL装用の有無による検出菌内訳・経年変化(グラム染色別)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml):LVFX:EM:SBPC:TOB:MCR:CP:CMX累積発育阻止率RangeMIC80MIC90LVFX≦0.06~128<28MCR≦0.06~128<32128TOB≦0.06~128<64128EM≦0.06~128<128128<CP≦0.06~128816SBPC≦0.06~128<1632CMX≦0.06~128<28図10全検出菌1,156株に対する全薬剤の累積発育阻止率曲線100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度LVFX:2年度LVFX:3年度LVFX:4年度LVFX:5年度LVFXRangeMIC80MIC90初年度≦0.06~128<482年度≦0.06~128<283年度≦0.06~128<124年度≦0.06~128<285年度≦0.06~128<416図11全検出菌1,156株に対するLVFXの累積発育阻止率曲線(全菌種:初年度429株,2年度173株,3年度171株,4年度186株,5年度197株)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度MCR:2年度MCR:3年度MCR:4年度MCRRangeMIC80MIC90初年度≦0.06~128<321282年度≦0.06~128<32643年度≦0.06~128<16644年度≦0.06~128<32128<図12全検出菌959株に対するMCRの累積発育阻止率曲線(全菌種:初年度429株,2年度173株,3年度171株,4年度186株)684あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(82)5年度11株)では,5年間を通して左に強くシフトした同様の曲線を描いており,P.acnesおよびMSSAに対するLVFXのきわめて高い感受性が示された(図19,20).Streptococcusspp.150株(初年度59株,2年度21株,3年度20株,4年度22株,5年度28株)は,曲線が左にシフトしており,Streptococcusspp.に対するLVFXの高い感受性が示された(図21).Corynebacteriumspp.118株(初年度30株,2年度20株,3年度18株,4年度20株,5年度30株)では,LVFXの感受性は低かったものの5年間の変化はほとんど認められず,LVFXに対する耐性化は進行していないと考えられた(図22).III考按細菌性結膜炎は,眼感染症のなかで最も高頻度に発症する疾患であるが,日常診療で結膜炎症例の起炎菌を確定することは困難である.今回のスタディは5年間にわたる全国多施設による細菌性結膜炎の細菌の検出状況と薬剤感受性の検討であり,2007年の本スタディグループの報告1)に引き続き,細菌性結膜炎の現状把握と今後の適切な治療薬選択につながる臨床上有用な情報と考えられる.眼感染症における多施設100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:4年度TOB:5年度TOBRangeMIC80MIC904年度≦0.06~128<128128<5年度≦0.06~128<3264図13全検出菌383株に対するTOBの累積発育阻止率曲線(全菌種:4年度186株,5年度197株)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度EM:2年度EM:3年度EM:4年度EM:5年度EMRangeMIC80MIC90初年度≦0.06~128<128<128<2年度≦0.06~128<1281283年度≦0.06~128<641284年度≦0.06~128<128<128<5年度≦0.06~128<64128図14全検出菌1,156株に対するEMの累積発育阻止率曲線(全菌種:初年度429株,2年度173株,3年度171株,4年度186株,5年度197株)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度CP:2年度CP:3年度CP:4年度CP:5年度CPRangeMIC80MIC90初年度0.25~64882年度0.25~128883年度≦0.06~1288164年度≦0.06~1288325年度≦0.06~128832図15全検出菌1,156株に対するCPの累積発育阻止率曲線(全菌種:初年度429株,2年度173株,3年度171株,4年度186株,5年度197株)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度SBPC:2年度SBPC:3年度SBPC:4年度SBPC:5年度SBPCRangeMIC80MIC90初年度≦0.06~128<16642年度≦0.06~128<8163年度≦0.06~128<161284年度≦0.06~128<16325年度≦0.06~128<1632図16全検出菌1,156株に対するSBPCの累積発育阻止率曲線(全菌種:初年度429株,2年度173株,3年度171株,4年度186株,5年度197株)(83)あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011685スタディとしては,眼感染症学会による感染性角膜炎サーベイランス2,3)があり,感染性角膜炎診療ガイドライン4)の礎となった.本スタディは同一の全国多施設において5年間細菌性結膜炎の動向を観察した結果であり,意義深いものと考えられる.まず5年間にわたる細菌性結膜炎の細菌の検出状況についてであるが,起炎菌の累積頻度は,S.epidermidis(19.3%),P.acnes(14.5%),Streptococcusspp(.13.0%),S.aureus(10.8%),Corynebacteriumspp(.10.5%),Haemophilusinfluenzae(4.6%),Moraxellaspp.(2.7%)であり,S.aureusではMSSAが79%,MRSAが21%であった.西澤らは検出菌データの多いものから順に,S.epidermidis,S.aureus,Streptococcusspp.,Propionibacteriumspp.,Corynebacteriumspp.,Haemophilusinfluenzaeとレビューしている1,5~10)が,本スタディとほぼ同様の結果を示しており,わが国における細菌性結膜炎の検出菌はこれら7菌種が4分の3を占めているものと推測される.また,細菌性結膜炎は世代により検出菌と臨床経過が異なり,小児ではHaemophilus100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度CMX:2年度CMX:3年度CMX:4年度CMX:5年度CMXRangeMIC80MIC90初年度≦0.06~128<2162年度≦0.06~128<483年度≦0.06~128<2164年度≦0.06~128<145年度≦0.06~128<216図17全検出菌1,156株に対するCMXの累積発育阻止率曲線(全菌種:初年度429株,2年度173株,3年度171株,4年度186株,5年度197株)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度:2年度:3年度:4年度:5年度RangeMIC80MIC90初年度0.13~40.50.52年度0.25~80.50.53年度≦0.06~20.50.54年度≦0.06~20.50.55年度≦0.06~10.50.5図19P.acnes166株に対するLVFXの累積発育阻止率曲線(初年度40株,2年度29株,3年度30株,4年度39株,5年度28株)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度:2年度:3年度:4年度:5年度RangeMIC80MIC90初年度0.13~128<482年度0.13~8883年度0.13~128<444年度0.13~128485年度0.13~128<832図18S.epidermidis221株に対するLVFXの累積発育阻止率曲線(初年度100株,2年度27株,3年度29株,4年度37株,5年度28株)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度:2年度:3年度:4年度:5年度RangeMIC80MIC90初年度≦0.06~128<0.5162年度0.13~160.583年度≦0.06~0.250.250.254年度0.13~0.50.50.55年度0.13~128<0.52図20S.aureus(MSSA)99株に対するLVFXの累積発育阻止率曲線(初年度50株,2年度16株,3年度12株,4年度10株,5年度11株)686あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(84)influenzaeや,S.pneumoniaeが多く,高齢者ではS.aureusやCorynebacteriumspp.が多いとされる5).本スタディでも,14歳以下では初年度にグラム陰性菌が32%を占め,その約半数がHaemophilusinfluenzaeであったが,その後経年的にグラム陰性菌の割合は減少した.また,各年代を通じてグラム陽性球菌が最も高頻度であり,5年間を通してその傾向はかわらなかったものの,15歳以上の年代ではグラム陽性球菌の割合が経年的に減少していた.つぎに検出菌における地域差については,経年変化や地域別に一定の傾向はみられなかった.施設別では,眼科クリニック,総合病院ではグラム陽性球菌の割合が多く,大学病院では嫌気性菌が多いものの,各検出菌の頻度に大きなばらつきがみられ,一定の傾向はなかった.CL装用の有無については,88.5%が装用しておらず,装用者は7.2%にとどまり,CL装用の有無でグラム陽性菌と陰性菌の比率に大きな差はなかった.以上より,2007年の報告と同様,今日の細菌性結膜炎の主要検出菌は,S.epidermidis,S.aureus,Streptococcusspp.,Corynebacteriumspp.,Haemophilusspp.と推察された.全検出菌に対する薬剤感受性(MIC80,MIC90)は,LVFX,CMXがその他の薬剤と比べて低い値となっており,結膜炎の主要な起炎菌に対する高い感受性が認められた.また,この5年間の調査期間中に,細菌性結膜炎の主要検出菌に対する薬剤感受性に大きな変化がみられなかったことから,急速な菌の変化,耐性化の進行は生じていないと考えられた.本来,細菌性結膜炎に対する抗菌薬の選択,投与方法は,起炎菌を検出したうえで検出された細菌に対する最も抗菌力の強い薬剤を選択し使用することに尽きるが,日常臨床では,患者苦痛の軽減,qualityoflife(QOL)低下の防止,感染拡大の阻止,病態の遷延化・難治化の阻止を治療の要点とし,起炎菌の検出を待たずに早期治療開始の必要性が迫られる.これらの事情を考慮すると,広域の抗菌スペクトルを示し,他の抗菌点眼薬と比較して高い感受性から,細菌性結膜炎の日常診療においてLVFX,CMXを第一選択としてよいと思われる.以上のように,今回の5年間にわたる調査により,細菌性結膜炎の検出菌の急速な変化や耐性化は進行していないことが明らかとなったが,初年度の報告の考按で示したごとく,多剤耐性菌の出現や菌交代現象の要因としてあげられている抗菌薬の過剰投与や広域スペクトルを有する薬剤の濫用の弊害を常に念頭に置き,上記のような広域抗菌点眼薬の投与は必要最低限にとどめるべきであると考える.COI細菌性結膜炎検出菌スタディグループ(50音順)注記:所属が眼科の場合は部門を省略,所属は調査参加当時のもの青木功喜(大橋眼科/札幌),浅利誠志(大阪大学医学部附属病院感染制御部),阿部達也(くろさき眼科),阿部徹(阿部眼科),有賀俊英(札幌社会保険総合病院),生駒尚秀(いこま眼科医院),稲森由美子(横浜市立大学),井上幸次(鳥取大学),魚谷純(魚谷眼科医院),薄井紀夫(総合新川橋病院),臼井正彦(東京医科大学),内尾英一(福岡大学),宇野敏彦(愛媛大学),卜部公章(町田病院),大橋勉(大橋眼科/札幌),大.秀行(大橋眼科/大阪),大橋裕一(愛媛大学),岡本茂樹(岡本眼科クリニック),奥村直毅(京都府立医科大学),亀井里実(バプテスト眼科クリニック),亀井裕子(東京女子医科大学東医療センター),川崎尚美(岡本眼科100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度:2年度:3年度:4年度:5年度RangeMIC80MIC90初年度≦0.06~128442年度0.5~64223年度0.5~2114年度0.5~2225年度0.5~6412図21Streptococcusspp.150株に対するLVFXの累積発育阻止率曲線(初年度59株,2年度21株,3年度20株,4年度22株,5年度28株)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%≦0.060.130.250.51248163264128128<MIC(μg/ml)累積発育阻止率:初年度:3年度:5年度:2年度:4年度RangeMIC80MIC90初年度0.13~128<641282年度≦0.06~128<32643年度≦0.06~128<32644年度≦0.06~128<641285年度≦0.06~128<64128図22Corynebacteriumspp.118株に対するLVFXの累積発育阻止率曲線(初年度30株,2年度20株,3年度18株,4年度20株,5年度30株)(85)あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011687クリニック),岸本里栄子(大橋眼科/札幌),北川和子(金沢医科大学),木村格(岡本眼科クリニック),久志雅和(中頭病院),小鹿聡美(東京医科大学),小嶋健太郎(京都府立医科大学),古城美奈(バプテスト眼科クリニック),小早川信一郎(東邦大学医療センター大森病院),坂本雅子(阪大微生物病研究会),渋谷翠(東京医科大学),島袋あゆみ(琉球大学),下村嘉一(近畿大学),白石敦(愛媛大学),鈴木崇(愛媛大学),外園千恵(京都府立医科大学),瀧田忠介(大分県立病院),田中康一郎(鹿嶋眼科クリニック),田中裕子(愛媛大学),中井義典(バプテスト眼科クリニック),中川尚(徳島診療所),中村行宏(NTT西日本九州病院),西崎暁子(バプテスト眼科クリニック),橋田正継(町田病院),橋本直子(岡本眼科クリニック),秦野寛(ルミネはたの眼科),原祐子(愛媛大学),檜垣史郎(近畿大学),東原尚代(京都府立医科大学),平野澄江(岡本眼科クリニック),福田正道(金沢医科大学),松本光希(NTT西日本九州病院),松本治恵(松本眼科),箕田宏(とだ眼科),宮嶋聖也(熊本赤十字病院),宮本仁志(愛媛大学医学部附属病院診療支援部),山口昌彦(愛媛大学),山崎哲哉(町田病院),横井克俊(東京医科大学)文献1)松本治恵,井上幸次,大橋裕一ほか:多施設共同による細菌性結膜炎における検出菌動向調査.あたらしい眼科24:647-654,20072)感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス.日眼会誌110:961-972,20063)砂田淳子,上田安希子,井上幸次ほか:感染性角膜炎全国サーベイランス分離菌における薬剤感受性と市販点眼薬のpostantibioticeffectの比較.日眼会誌110:973-983,20064)井上幸次,大橋裕一,浅利誠志ほか:感染性角膜炎診療ガイドライン作成委員会:感染性角膜炎診療ガイドライン.日眼会誌111:769-809,20075)西澤きよみ,秦野寛:わが国の細菌性結膜炎の起炎菌は?あたらしい眼科26(臨増):65-68,20096)宮尾益也,本山まり子,坂上富士男ほか:新潟大学眼感染症クリニックでの10年間の検出菌.臨眼45:969-973,19917)松井法子,松井孝治,尾上聡ほか:細菌性結膜炎の検出菌についての検討.臨眼59:559-563,20058)堀武志,秦野寛:急性細菌性結膜炎の疫学.あたらしい眼科6:81-84,19899)西原勝,井上慎三,松村香代子:細菌性結膜炎における検出菌の年齢分布.あたらしい眼科7:1039-1042,199010)秋葉真理子,秋葉純:乳幼児細菌性結膜炎の検出菌と薬剤感受性の検討.あたらしい眼科18:929-931,2001***