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プロスタグランジン点眼薬に対する副作用出現あるいはノンレスポンダー症例のゲル化チモロール点眼薬への変更

2012年6月30日 土曜日

《第22回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科29(6):827.830,2012cプロスタグランジン点眼薬に対する副作用出現あるいはノンレスポンダー症例のゲル化チモロール点眼薬への変更井上賢治*1若倉雅登*1富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医学部眼科学第2講座EffectofSwitchingfromProstaglandinEyedropstoGel-formingTimololSolutioninProstaglandinNon-respondersorThosewithAdverseReactionsKenjiInoue1),MasatoWakakura1)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)2ndDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySchoolofMedicineプロスタグランジン(PG)点眼薬でノンレスポンダーや眼局所副作用が出現した症例をゲル化チモロール点眼薬へ変更した際の眼圧下降効果と副作用を検討した.PG点眼薬を単剤で使用し,ノンレスポンダーあるいは眼局所副作用のために継続困難であった原発開放隅角緑内障や高眼圧症患者21例21眼を対象とした.PG点眼薬を中止し,熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更した.変更時と変更1,3カ月後の眼圧を比較した.副作用出現例では副作用症状を調査した.眼圧は変更前後で変化なかった.ノンレスポンダー症例(8例)で10%以上の眼圧下降を変更1カ月後37.5%,3カ月後25.0%で示した.副作用出現例(13例)での副作用症状は全例で改善あるいは消失した.PG点眼薬によるノンレスポンダーや副作用出現症例を熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更することで,約30%の症例で眼圧下降が得られ,副作用が改善し,有用である.Weinvestigatedtheeffectandsafetyofthermosettinggeltimololsolution.Subjectscomprised21patients(21eyes)diagnosedwithprimaryopenangleglaucomaorocularhypertension,whowereusingprostaglandineyedropmonotherapyandwerenon-respondersorsufferedadversereactions.Prostaglandineyedropswerediscontinuedandthermosettinggeltimololsolutionwasinitiated.Comparisonofintraocularpressure(IOP)beforeandat1and3monthsafterswitchingrevealednodifferencesinIOPbetweenbeforeandaftertheswitch.Intheprostaglandinnon-responders(8cases),IOPdecreaseofover10%wasobservedin37.5%at1monthaftertheswitchandin25.0%at3months.Inthecasesthathadsufferedadversereactionstoprostaglandin(13cases),theadversereactionseitherimprovedordisappearedinall13cases.Inpatientstakingprostaglandineyedropswhowereeithernon-respondersorhadadversereactions,aftertheyswitchedfromprostaglandintothermosettinggeltimololsolution,IOPdecreasewasseeninabout30%andadversereactionsimproved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(6):827.830,2012〕Keywords:熱応答ゲル化チモロール点眼薬,プロスタグランジン点眼薬,ノンレスポンダー,眼局所副作用,変更.thermo-settinggeltimololsolution,prostaglandineyedrops,non-responder,adversereaction,switch.はじめに緑内障治療の最終目標は残存視野の維持である.そのために高いエビデンスが得られている唯一の治療が眼圧下降である1).眼圧下降のための第一選択は通常点眼薬治療である.そのなかでも強力な眼圧下降作用2)と全身性副作用の少なさと1日1回点眼の利便性からプロスタグランジン(PG)点眼薬が第一選択薬として用いられることが多い3).しかしPG点眼薬の問題点として,ノンレスポンダーの存在4.7)やPG点眼薬に特有の眼局所副作用(眼瞼色素沈着,虹彩色素沈着,睫毛延長,睫毛剛毛化,上眼瞼溝深化)の出現8.19)があげられる.PG点眼薬によるノンレスポンダーや眼局所副作用出現例では,PG点眼薬を中止し,他の点眼薬に変更せざるをえない8.12).その際に1日1回点眼の利便性を考慮するとゲル化チモロール点眼薬が最適であると考えられる.〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(105)827 今回,PG点眼薬によるノンレスポンダーや眼局所副作用出現例に対して,熱応答ゲル化チモロール点眼薬(リズモンRTG,わかもと製薬)に変更した際の眼圧下降効果と安全性を検討した.I対象および方法2010年3月から2011年4月の間に井上眼科病院に通院中の患者で,PG点眼薬(1日1回夜点眼)を単剤使用中で,ノンレスポンダーあるいは眼局所副作用が出現し,PG点眼薬が継続困難となった緑内障や高眼圧症の連続した患者21例21眼を対象とした.男性5例,女性16例,年齢66.0±10.1歳(平均値±標準偏差)であった.緑内障病型は正常眼圧緑内障14例,原発開放隅角緑内障6例,高眼圧症1例であった.ノンレスポンダー症例は8例,副作用出現症例は13例であった.前投薬(PG点眼薬)は,ノンレスポンダー症例ではトラボプロスト点眼薬3例(37.5%),タフルプロスト点眼薬3例(37.5%),ラタノプロスト点眼薬2例(25.0%),副作用出現症例ではビマトプロスト点眼薬7例(53.8%),トラボプロスト点眼薬4例(30.8%),タフルプロスト点眼薬1例(7.7%),防腐剤無添加ラタノプロスト点眼薬(ラタノプロストPF)1例(7.7%)であった.ノンレスポンダーの判定は,PG点眼薬を単剤で2カ月間以上使用し,眼圧下降率が10%未満の症例とした.副作用出現症例の副作用は表1に示す.副作用出現の判定は患者からの申し出とした.出現症例では午前6例,午後7例であった.ノンレスポンダー症例では眼圧測定時間別(午前と午後)に眼圧下降率を比較した.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認され,研究の趣旨と内容を患者に説明し,患者の同意を得た後に行った.II結果全症例(21例)での眼圧は変更時16.5±3.7mmHg,変更1カ月後15.6±3.2mmHg,変更3カ月後16.2±3.7mmHgで変更前後に有意差はなかった(図1).ノンレスポンダー症例(8例)での眼圧はベースライン(無治療時)18.3±2.7mmHg,PG点眼薬使用中18.2±2.9mmHg,変更時18.5±2.9mmHg,変更1カ月後17.3±3.6mmHg,変更3カ月後18.0±2.1mmHgですべての時点で有意差はなかった(図2).眼圧下降率は,変更1カ月後は10%以上が3例(37.5%)10%未満が5例(62.5%),変更3カ月後は10%以上が2例(,)(25.0%),10%未満が6例(75.0%)であった(図3).眼圧が10%以上上昇した症例はなかった.眼圧測定時間別に検討すると眼圧下降率は午前群1.4±12.2%,午後群1.7±11.6%で同等であった(p=0.9718).副作用出現症例(13例)での眼圧は変更時15.2±3.7mmHg,変更1カ月後14.5±2.5mmHg,変更3カ月後15.0±3.7mmHgで変更前後に有意差PG点眼薬を中止し,washout期間なしで熱応答ゲル化チ25.0(ANOVA).副作用出現例では副作用症状の経過を観察した.眼圧測定は症例ごとにほぼ同時刻に行った.眼圧測定時0.0NS変更時変更1カ月後変更3カ月後間はノンレスポンダー症例では午前3例,午後5例,副作用図1全症例での変更前後の眼圧(ANOVA,NS:notsignificant)表1副作用症例の内訳モロール点眼薬(1日1回朝点眼)に変更した.眼圧を変更眼圧(mmHg)20.0時と変更1,3カ月後にGoldmann圧平式眼圧計で測定し,15.0比較した(ANOVA:analysisofvariance).ノンレスポン10.0ダー症例では眼圧下降率を算出した.ノンレスポンダー症例と副作用出現症例に分けて変更前後の眼圧を比較した5.0ベースラインPG製剤使用熱応答ゲル化チモロールに変更25.020.015.010.05.00.0眼圧(mmHg)NS副作用前投薬上眼瞼溝深化5例ビマトプロスト点眼薬3例トラボプロスト点眼薬2例結膜充血3例ビマトプロスト点眼薬3例ビマトプロスト点眼薬1例眼瞼色素沈着3例トラボプロスト点眼薬1例タフルプロスト点眼薬1例眼痛1例ビマトプロスト点眼薬異物感1例ビマトプロスト点眼薬ベースPG使用時変更時変更変更ライン平均1カ月後3カ月後霧視1例ラタノプロスト点眼薬図2ノンレスポンダー症例での変更前後の眼圧(ANOVA,視力低下1例トラボプロスト点眼薬NS:notsignificant)828あたらしい眼科Vol.29,No.6,2012(106) 変更1カ月後変更3カ月後10%以上,3例,37.5%10%未満,5例,62.5%10%以上,2例,25.0%10%未満,6例,75.0%図3ノンレスポンダー症例での変更後の眼圧下降率はなかった.しかし,眼圧が10%以上上昇した症例が2例あり,これらの前投薬はトラボプロスト点眼薬であった.出現した副作用は変更後に13例全例で自覚的には改善あるいは消失した.他覚的評価が可能であった症例のうち結膜充血は消失,眼瞼色素沈着,上眼瞼溝深化は改善していた.視力低下は変更前後で矯正視力に変化はなかったが,自覚的には元に戻ったと感じていた.III考按PG点眼薬にはノンレスポンダーが存在し,ラタノプロスト点眼薬のノンレスポンダーの頻度は8%4),8.6.26.3%5),10%6),14.3.20.9%7)と報告されている.しかし,ノンレスポンダーの定義は各報告で異なり,outflowpressureが0以下5),眼圧下降率10%未満4,6,7)などとされている.PG点眼薬のノンレスポンダー症例に対しては点眼薬を変更する必要がある.PG点眼薬のノンレスポンダー症例に対してPG点眼薬を中止してb遮断点眼薬に変更した際の眼圧下降効果は,現在のところラタノプロスト点眼薬に対する症例の報告しかない8.10).中元ら8)は,ラタノプロスト点眼薬を8週間投与し,眼圧下降率が10%未満の正常眼圧緑内障7例7眼を2%カルテオロール点眼薬に変更し8週間投与した.眼圧はラタノプロスト点眼薬治療時14.7±2.2mmHgとカルテオロール点眼薬治療時15.4±3.2mmHgで変化なかった.7眼中2眼(29%)で眼圧が下降したが,無治療時に対する眼圧下降率は0.4±10.4%,眼圧下降率が10%以上となった症例は1眼(14.3%)であった.菅野ら9)は,ラタノプロスト点眼薬を投与し,1カ月後,2カ月後の眼圧下降率が10%未満の原発開放隅角緑内障あるいは正常眼圧緑内障10例をレボブノロール点眼薬に変更し3カ月間投与した.眼圧は変更1カ月後16.2±2.9mmHg,2カ月後15.8±3.2mmHg,3カ月後15.2±4.1mmHgで,無治療時(19.1±5.0mmHg)やラタノプロスト点眼2カ月後(19.2±4.2mmHg)に比べて有意に下降した.正常眼圧緑内障9例では,無治療時と比べて変更3カ月後に7例(77.8%)が眼圧下降率10%以上になった.一方,比嘉ら10)は,眼圧下降率には言及していない(107)が,ラタノプロスト点眼薬で眼圧下降効果が不十分であった2例を熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更したところ眼圧が下降したと報告した.今回はPG点眼薬のノンレスポンダー症例に対してPG点眼薬を中止して,熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更した.この際にPG点眼薬を中止して他のPG点眼薬に変更する方法も考えられる.熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更した理由として,他のPG点眼薬に対してもノンレスポンダーの可能性があること,1日1回点眼の利便性を有するからである.眼圧は変更前後で変化なかった.眼圧下降率が10%以上となった症例は,変更1カ月後37.5%,3カ月後25.0%で,カルテオロール点眼薬へ変更した報告8)よりは良好であったが,レボブノロール点眼薬9)へ変更した報告よりは不良であった.その理由として,過去の報告8.10)ではPG点眼薬のうちラタノプロスト点眼薬によるノンレスポンダー症例のみを対象としているために今回と結果が異なった可能性が考えられる.眼圧の評価として眼圧の日内変動あるいは点眼時間を考慮する必要がある.PG点眼薬は夜点眼のため午後群ではトラフ値に近い値,熱応答ゲル化チモロール点眼薬は朝点眼のため午前群ではピーク値に近い値であった可能性が考えられる.眼圧測定時間別に検討すると眼圧下降率は午前群と午後群で同等であった.眼圧の評価をより詳細に行うためには眼圧日内変動を測定しなければならないが,今回はそこまで行うことができなかった.眼瞼色素沈着,眼瞼部多毛,睫毛延長,睫毛剛毛化などの副作用が出現したためにラタノプロスト点眼薬を中止し,他の点眼薬へ変更したことで副作用が改善したと報告されている11,12).泉ら11)は,眼瞼色素沈着,眼瞼部多毛,睫毛延長,睫毛剛毛化が出現した21例35眼に対してラタノプロスト点眼薬を中止してウノプロストン点眼薬に変更し,6カ月間経過観察した.変更6カ月後の写真判定で眼瞼色素沈着は29%,眼瞼部多毛は43%,睫毛延長は44%,睫毛剛毛化は44%で改善した.自覚的には眼瞼色素沈着は71%,眼瞼部多毛は92%,睫毛延長は44%,睫毛剛毛化は44%で気にならなくなった.久我ら12)は,眼瞼色素沈着または眼瞼部多毛が出現した12例21眼に対してラタノプロスト点眼薬を中止してウノプロストン点眼薬に変更し,6カ月間以上経過観察した.写真判定で眼瞼色素沈着は68.4%,眼瞼部多毛は76.9%で改善した.自覚的には眼瞼色素沈着は90.9%,眼瞼部多毛は71.4%で改善した.今回のPG点眼薬で副作用が出現した13例では熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更したところ,全例で副作用が自覚的,他覚的に改善あるいは消失した.この結果から,熱応答ゲル化チモロール点眼薬はPG点眼薬よりも眼局所に対しての安全性が高いと考えられる.さらに同じPG点眼薬であるウノプロストン点眼薬に変更する11,12)よりも熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更するほうが副作用の観点からは有用である可能性が示唆される.あたらしい眼科Vol.29,No.6,2012829 しかし,副作用出現症例では熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更後に10%以上の眼圧上昇例が2例(前投薬トラボプロスト点眼薬)あり,それらの副作用は上眼瞼溝深化,視力低下各1例であった.上眼瞼溝深化に対してPG点眼薬を中止し,他のPG点眼薬,配合点眼薬へ変更,あるいはレーザー治療を行うことで上眼瞼溝深化が改善あるいは消失したと報告されている13.19).今回他のPG点眼薬へ変更する選択肢も考えたが,b遮断点眼薬へ変更することで副作用に対するPG点眼薬の影響をより少なくできると考えた.眼圧上昇のリスクを考えるとb遮断点眼薬よりも他のPG点眼薬へ変更したほうがよいかもしれない.副作用出現症例では熱応答ゲル化チモロール点眼薬へ変更した際に平均眼圧に変化はなかった.PG点眼薬のほうがb遮断点眼薬に比べて眼圧下降効果は強力2)であるが,この乖離の原因として今回の症例中に副作用が出現したためにアドヒアランスが低下した,あるいはPG点眼薬のノンレスポンダー症例が潜んでいた可能性が考えられる.今回PG点眼薬のノンレスポンダーや副作用出現症例を熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更したところ,ノンレスポンダー症例の約30%で眼圧が下降し,副作用は全例で自覚的に改善したが,約15%の症例で眼圧が10%以上上昇した.PG点眼薬のノンレスポンダーや副作用出現症例に対してPG点眼薬を中止して熱応答ゲル化チモロール点眼薬へ変更することはおおむね有用であるが,眼圧が上昇する症例もあり注意深い経過観察が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyGroup:Theeffectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentofnormal-tensionglaucoma.AmJOphthalmol126:498-505,19982)ChengJW,CaiJP,WeiRL:Meta-analysisofmedicalinterventionfornormaltensionglaucoma.Ophthalmology116:1243-1249,20093)井上賢治,塩川美菜子,増本美枝子ほか:多施設における緑内障患者の実態調査2009─薬物治療─.あたらしい眼科28:874-878,20114)木村英也,野崎実穂,小椋祐一郎ほか:未治療緑内障眼におけるラタノプロスト単剤投与による眼圧下降効果.臨眼57:700-704,20035)池田陽子,森和彦,石橋健ほか:ラタノプロストのNon-responderの検討.あたらしい眼科19:779-781,20026)SusannaRJr,GiampaniJJr,BorgesASetal:Adouble-masked,randomizedclinicaltrialcomparinglatanoprostwithunoprostoneinpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.Ophthalmology108:259-263,20017)井上賢治,泉雅子,若倉雅登ほか:ラタノプロストの無効率とその関連因子.臨眼59:553-557,20058)中元兼二,安田典子:正常眼圧緑内障のラタノプロスト・ノンレスポンダーにおけるカルテオロールの変更治療薬および併用治療薬としての有用性.臨眼64:61-65,20109)菅野誠,山下英俊:ラタノプロストのノンレスポンダーに対するレボブノロールの投与.臨眼60:1025-1028,200610)比嘉弘文,名城知子,上條由美ほか:チモロール熱応答型ゲル点眼液の眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科24:103-106,200711)泉雅子,井上賢治,若倉雅登ほか:ラタノプロストからウノプロストンへの変更による眼瞼と睫毛の変化.臨眼60:837-841,200612)久我紘子,宮内修,藤本尚也ほか:ラタノプロストの副作用発現例のウノプロストンへの切り換えにおける有効性と安全性.臨眼58:1187-1191,200413)AydinS,L..kl.gilL,Tek.enYKetal:Recoveryoforbitalfatpadprolapsusanddeepeningofthelidsulcusfromtopicalbimatoprosttherapy:2casereportsandreviewoftheliterature.CutanOculToxico29:212-216,201014)YamJCS,YuenNSY,ChanCWN:Bilateraldeepeningofupperlidsulcusfromtopicalbimatoprosttherapy.JOculPharmacolTher25:471-472,200915)JayaprakasamA,Ghazi-NouriS:Periorbitalfatatrophy-anunfamiliarsideeffectofprostaglandinanalogues.Orbit29:357-359,201016)FilippopoulosT,PaulaJS,TorunNetal:Periorbitalchangesassociatewithtopicalbimatoprost.OphthalPlastReconstrSurg24:302-307,200817)PeplinskiLS,SmithKA:Deepeningoflidsulcusfromtopicalbimatoprosttherapy.OptomVisSci81:574-577,200418)YangHK,ParkKH,KimTWetal:Deepeningofeyelidsuperiorsulcusduringtopicaltravoprosttreatment.JpnJOphthalmol53:176-179,200919)渡邊逸郎,圓尾浩久,渡邊一郎:トラボプロスト点眼によって上眼瞼陥凹をきたした1例.臨眼65:679-682,2011***830あたらしい眼科Vol.29,No.6,2012(108)

熱応答ゲル化チモロール点眼薬の角膜上皮および涙液への影響

2010年9月30日 木曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(93)1259《第20回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科27(9):1259.1262,2010cはじめに緑内障治療の第一選択は薬物療法である.b遮断薬は緑内障治療薬として昔から広く使用されている.しかしb遮断薬の長期使用により,角膜上皮バリア機能の低下1,2),角膜知覚の低下3),涙液分泌量の減少4,5),涙液安定性の低下4,5)など角膜上皮や涙液に及ぼす影響が報告されている.近年,患者のコンプライアンスや利便性の向上を目的に,b遮断薬の持続性製剤が市販されており,その1つである熱応答ゲル化チモロール点眼薬(リズモンRTG,以下TG)は,防腐剤の少なさやゲル基剤の特性から,角膜保護作用が高いといわれている.今回,水溶性チモロール点眼薬(チモプトールR,以下TM)あるいはイオン応答ゲル化チモロール点眼薬(チモプトールRXE,以下XE)からTGへ変更した際の角膜上皮や涙液への影響を検討した.〔別刷請求先〕増本美枝子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:MiekoMasumoto,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN熱応答ゲル化チモロール点眼薬の角膜上皮および涙液への影響増本美枝子*1井上賢治*1若倉雅登*1富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医学部眼科学第二講座EffectofThermo-SettingGelTimololSolutiononCornealEpitheliumandTearsMiekoMasumoto1),KenjiInoue1),MasatoWakakura1)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)2ndDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySchoolofMedicine熱応答ゲル化チモロール点眼薬が角膜上皮および涙液に及ぼす影響について検討した.水溶性チモロール点眼薬またはイオン応答ゲル化チモロール点眼薬を単剤またはラタノプロスト点眼薬と併用使用中の緑内障患者22例22眼を対象とした.水溶性チモロール点眼薬またはイオン応答ゲル化チモロール点眼薬を中止し,熱応答ゲル化チモロール点眼薬に変更した.変更前と変更1,2カ月後の眼圧,角膜上皮障害,涙液状態〔Schirmerテスト,涙液層破壊時間(BUT)〕を比較した.眼圧は変更前後で変化なかった.角膜上皮障害〔SPK(点状表層角膜症)スコア〕は変更前(3.2±0.6)に比べ変更1カ月後(3.2±0.6),2カ月後(1.3±1.2)には有意に改善していた.SchirmerテストとBUTは変更前後で変化なかった.熱応答ゲル化チモロール点眼薬は水溶性チモロール点眼薬やイオン応答ゲル化チモロール点眼薬と眼圧や涙液に及ぼす効果は同等で,角膜保護作用や防腐剤の濃度の点から熱応答ゲル化チモロール点眼薬のほうが優れていた.Weinvestigatedtheeffectsofthermo-settinggeltimololsolution(RysmonRTG:TG)oncornealepitheliumandtears.Subjectscomprised22glaucomapatientswhowerebeingtreatedwithtimololsolution(TimoptolR:TM)orgel-formingtimololsolution(TimoptolRXE:XE)aloneorincombinationwithlatanoprost.TMorXEwasswitchedtoTG.Intraocularpressure(IOP),superficialpunctatekeratopathy(SPK),Schirmer’stestandtearfilmbreak-uptime(BUT)werecomparedbeforeandat1and2monthsafterswitching.NosignificantchangeswereobservedinIOPafterswitching.TheSPKscorebeforeswitching(3.2±0.6)wassignificantlyimprovedatonemonthafterswitching(3.2±0.6)andattwomonthsafterswitching(1.3±1.2).Schirmer’stestandBUTresultsshowednodifferencesbetweenbeforeandafterswitching.TheeffectsonIOPandtearsweresimilarbetweenthermo-settinggeltimololsolutionandtimololsolutionorgel-formingtimololsolution.Cornealepitheliumprotectionwasstrongerandpreservativeconcentrationwaslowerinthermo-settinggeltimololsolution.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(9):1259.1262,2010〕Keywords:熱応答ゲル化チモロール点眼薬,角膜上皮,Schirmerテスト,涙液層破壊時間(BUT).thermosettinggeltimololsolution,cornealepithelium,Schirmer’stest,tearfilmbreak-uptime.1260あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010(94)I対象および方法2008年9月から2009年3月の間に井上眼科病院に通院中の患者で,TM(1日2回朝夜点眼)あるいはXE(1日1回朝点眼)を単剤,あるいはラタノプロスト点眼薬(キサラタンR,以下XA)(1日1回夜点眼)と併用使用中で,点状表層角膜症(superpunctuatekeratopathy:SPK)が出現した緑内障患者22例22眼を対象とした.男性4例,女性18例,年齢65.9±11.2歳(平均値±標準偏差)であった.緑内障病型は正常眼圧緑内障12例,原発開放隅角緑内障7例,原発閉塞隅角緑内障3例であった.TM(9例)またはXE(13例)をwashout期間なしでTGに変更した.使用中のXAは継続とした.眼圧を変更前と変更1,2カ月後にGoldmann圧平式眼圧計で測定し,比較した(対応のあるt検定).角膜上皮障害(SPK)をArea-Density分類6)を用いて,変更前と変更1,2カ月後で評価した.SPKの程度の判定はフルオレセインで角膜を染色後,眼圧測定前に行った.変更後にAreaまたはDensityのいずれかが改善したものを「改善」,変わらないものを「不変」,AreaまたはDensityのいずれかが悪化したものを「悪化」とした.さらにArea-Density分類のArea+DensityをSPKスコアとし,変更前と変更1,2カ月後を全例・TM群・XE群に分けて検討した(Wilcoxonsigned-ranktest).涙液状態をSchirmerテストと涙液層破壊時間(BUT)を用いて,変更前と変更1カ月後を全例・TM群・XE群に分けて検討した(対応のあるt検定).SchirmerテストとBUT測定はTM,XEあるいはTG点眼1時間後以降に行った.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認され,研究の趣旨と内容を患者に説明し,患者の同意を文書で得た後に行った.II結果患者背景を表1に示す.眼圧は変更前14.7±3.0mmHg,変更1カ月後14.3±3.3mmHg,変更2カ月後14.5±3.6mmHgで変更前後に有意差はなかった(図1).角膜上皮障害は,変更前はA1D1が1眼,A1D2が6眼,A2D1が7眼,A2D2が6眼,A3D1が1眼であった(図2).変更1カ月後はA0D0が6眼,A1D1が3眼,A1D2が2眼,A2D1が7眼,A2D2が2眼であった.変更前と比べて改善が13眼,不変が5眼,悪化が2眼であった.変更2カ月後はA0D0が9眼,A1D1が8眼,A1D2が1眼,A2D1が3眼であった.変更前と比べて改善が19眼,不変が2眼であった.SPKスコアは,全例では変更前(3.2±0.6)に比べ変更1カ月後(3.2±0.6),2カ月後(1.3±1.2)には有意に改善していた(p<0.05)(図3).XE群では変更1カ月後(2.5±1.4)は表1患者背景性別男性4女性18年齢65.9±11.2(歳)病型POAG7NTG12PACG3変更前点眼薬TM9XE13併用薬XA6POAG:原発開放隅角緑内障,NTG:正常眼圧緑内障,PACG:原発閉塞隅角緑内障,TM:チモプトールR,XE:チモプトールRXE,XA:キサラタンR.02468101214161820変更前1カ月後2カ月後眼圧(mmHg)NS図1変更前後の眼圧(ANOVA,NS:notsignificant)A0A1A2A3D0D1171D266D3623279183図2角膜上皮障害(Area-Density分類)数字:変更前,丸囲い数字:変更1カ月後,四角囲い数字:変更2カ月後.00.511.522.533.544.5*p<0.052カ月後1カ月後変更前2カ月後1カ月後変更前2カ月後1カ月後変更前全例XE群TM群SPKスコア*****図3角膜上皮障害のSPKスコア(95)あたらしい眼科Vol.27,No.9,20101261変更前(3.3±0.6)と同等であったが,変更2カ月後(1.8±1.2)は変更前(3.3±0.6)より有意に改善していた(p<0.05).TM群では変更前(3.1±0.6)に比べ変更1カ月後(1.4±1.4),変更2カ月後(0.7±1.0)に有意に改善していた(p<0.05).Schirmerテストは,全例では変更前は5.4±3.9mm,変更1カ月後は5.6±4.7mmで同等であった.XE群では変更前は3.1±2.5mm,変更1カ月後は4.7±3.1mmで同等であった.TM群では変更前は6.8±3.9mm,変更1カ月後は6.9±6.4mmで同等であった.BUTは,全例では変更前は6.0±1.9秒,変更1カ月後は6.8±2.6秒で同等であった.XE群では変更前は5.6±1.5秒,変更1カ月後は7.2±2.8秒で同等であった.TM群では変更前は6.3±2.1秒,変更1カ月後は6.4±2.5秒で同等であった.1例はTGへの変更直後に異物感が生じ点眼中止となった.他の1例は変更1カ月後には来院がなかった.III考按今回の検討では,TMまたはXEからTGへの変更により,Schirmerテスト,BUTは変化なかったが,角膜上皮障害はほとんどの症例で改善していた.過去にもTM,XE,TGの角膜や涙液に及ぼす影響が報告されている7,8).海平らはTMとTGを単剤で交互に使用した緑内障患者27名の涙液分泌量および涙液安定性について報告した7).彼らは涙液分泌量の指標としてSchirmerテストI法,涙液安定性の指標としてBUTを用いた.Schirmerテストの平均値はTM15.2±11.7mm,TG16.4±12.0mmで同等であった.5mm以下の異常値を示す割合はTM,TGともに22.2%であった.BUTの平均値はTM6.8±3.6秒,TG9.0±4.5秒で,TGがTMに比べ有意に延長していた.5秒以下の異常値を示す割合はTM46.3%,TG20.4%でTGのほうが良好であった.今回のSchirmerテストはTM群では変更前は6.8±3.9mm,変更1カ月後は6.9±6.4mmで同等であった.5mm以下の異常値を示した割合は変更前42.9%,変更1カ月後45.0%であった.BUTはTM群では変更前は6.3±2.1秒,変更1カ月後は6.4±2.5秒で同等であった.5秒以下の異常値を示した割合は変更前52.4%,変更1カ月後45.0%であった.海平らと今回の違いは,海平らは角結膜障害のある症例は対象外であったが,今回は角膜上皮障害を有する症例を対象とした.平均年齢も海平らの報告(60.6±9.9歳)に比べ今回(65.9±11.2歳)のほうが高齢であった.海平らはTMやTGの単剤投与例であったが,今回はTMやXEの単剤投与あるいはXAとの併用例とした.石岡らは健常成人ボランティア男性16名に無作為にXEあるいはTGを1カ月間投与し,投与前後に生体染色試験,BUT,Schirmerテスト,角膜上皮バリア機能検査を行った8).投与前後の比較で,生体染色試験,Schirmerテストでは有意差はなかったが,BUTはTGで投与前4.6±2.6秒が投与後7.5±3.4秒に延長したと報告した.しかし石岡らは,Schirmerテスト5mm未満の症例は除外している.また投与前のフルオレセインスコアも両群ともに平均0±0で,角膜上皮障害を有していなかった.今回と海平らや石岡らの報告を比較すると,今回はドライアイ研究会によるドライアイの診断基準9)1.自覚症状,2.涙液異常①SchirmerテストI法にて5mm以下,②BUT5秒以下(①,②のいずれかを満たすものを陽性とする),3.角結膜上皮障害①フルオレセイン染色スコア3点以上(9点満点),②ローズベンガル染色スコア3点以上(9点満点),③リサミングリーン染色スコア3点以上(9点満点)(①,②,③のいずれかを満たすものを陽性とする)のうち涙液異常に該当した症例が17例含まれており,そのためにSchirmerテストやBUTが元来低値で,TGへの変更によっても改善しなかった可能性が考えられる.ゲル化剤添加マレイン酸チモロール点眼薬にはTGとXEの2種類がある.TGは眼表面の熱に反応してゲル化する.また,基剤にメチルセルロースが添加されており,このメチルセルロースが角膜や結膜表面の保護作用を有すると報告されている10).一方,XEは涙液中のイオンにより角膜上でゲル化し,瞬目とともにゲルは細くなり涙点より排出される.このゲル化剤の違いが今回の角膜上皮障害の改善に寄与した一因と考えられる.また,点眼薬に含まれる防腐剤の影響も関与した可能性がある.防腐剤としてTMには塩化ベンザルコニウムが0.005%,XEには臭化ベンゾドデシウムが0.012%,TGには塩化ベンザルコニウムが0.001%含まれている.ラットを用いた点眼実験では0.01%塩化ベンザルコニウムと0.01%臭化ベンゾドデシウムの角結膜への影響は同等と報告されている11).TMまたはXEからTGへの変更により防腐剤の悪影響も軽減されたと考えられる.角膜上皮障害がTMまたはXEからTGへの変更により改善されたのはTGのゲル化剤のメチルセルロースの角結膜への保護作用,防腐剤の軽減,あるいは両者の影響と考えられる.今回,角膜上皮障害を有している症例においてTMまたはXEからTGへ変更したところ,眼圧,Schirmerテスト,BUTに変化はなく,角膜上皮障害はほとんどの症例で改善していた.TGはTMやXEに比べゲル化剤に含まれるメチルセルロースの角膜保護作用が強力で,防腐剤の濃度も低いため,角膜上皮障害を有している症例ではTGの使用を考慮してもよいと考えられる.文献1)新谷明子,横井則彦,松本康宏ほか:b遮断薬点眼の角膜上皮バリアー機能に対する影響.臨眼49:395-397,19952)俊野敦子,岡本茂樹,島村一郎ほか:プロスタグランディ1262あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010(96)ンF2aイソプロピルウノプロストン点眼薬による角膜上皮障害発症メカニズム.日眼会誌102:101-105,19983)WeissmanSS,AsbellPA:Effectsoftopicaltimolol(0.5%)andbetaxolol(0.5%)oncornealsensitivity.BrJOphthalmol74:409-412,19904)HerrerasJM,PastorJC,CalongeMetal:Ocularsurfacealterationafterlong-termtreatmentwithanantiglaucomatousdrug.Ophthalmology99:1082-1088,19925)大槻勝紀,横井則彦,森和彦ほか:b遮断剤の点眼が眼表面に及ぼす影響.日眼会誌105:149-154,20016)宮田和典,澤充,西田輝夫ほか:びまん性表層角膜炎の重症度の分類.臨眼48:183-188,19947)海平淳一,京本敏行:熱応答ゲル基剤チモロール点眼液(リズモンRTG)と従来型チモロール点眼液(チモプトールR)の涙液分泌量および涙液安定性の比較.あたらしい眼科20:1183-1185,20038)石岡みさき,八木幸子,島.潤ほか:2種類のゲル化剤添加チモロール点眼が眼表面に与える影響.あたらしい眼科25:399-402,20089)島.潤:2006年ドライアイ診断基準.あたらしい眼科24:181-184,200710)TodaI,ShinozakiN,TsubotaK:HydroxypropylmethylcelluloseforthetreatmentofseveredryeyeassociatedwithSjogren’ssyndrome.Cornea15:120-128,199611)BecquetF,GoldschildM,MoldovanMSetal:Histopathologicaleffectsoftopicalophthalmicpreservativesonratcorneoconjunctivalsurface.CurrEyeRes17:419-425,1998***