‘硝子体出血’ タグのついている投稿

白血病治療が硝子体手術予後に影響したと考えられる 増殖糖尿病網膜症の1 例

2022年4月30日 土曜日

《第26回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科39(4):491.495,2022c白血病治療が硝子体手術予後に影響したと考えられる増殖糖尿病網膜症の1例延藤綾香*1,2小林崇俊*2河本良輔*2大須賀翔*2佐藤孝樹*2喜田照代*2池田恒彦*3*1北摂総合病院眼科*2大阪医科薬科大学眼科学教室*3大阪回生病院眼科CACaseofProliferativeDiabeticRetinopathyinwhichLeukemiaTreatmentPossiblyA.ectedthePrognosisofVitrectomyAyakaNobuto1,2)C,TakatoshiKobayashi2),RyosukeKomoto2),SyoOsuka2),TakakiSato2),TeruyoKida2)andTsunehikoIkeda3)1)DepartmentofOphthalmology,HokusetsuGeneralHospital,2)DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalandPharmaceuticalUniversity,3)DepartmentofOphthalmology,OsakaKaiseiHospitalC目的:白血病を合併した糖尿病網膜症は増悪しやすいことが報告されている.今回,白血病治療が硝子体手術予後に影響したと考えられる増殖糖尿病網膜症(proliferativediabeticretinopathy:PDR)のC1例を経験したので報告する.症例:47歳,男性.左眼視力低下で初診.左眼は虹彩炎と硝子体出血で眼底透見不良.右眼はCPDRによる眼底出血と線維血管性増殖膜,Roth斑を認めた.内科で糖尿病,慢性骨髄性白血病(chronicmyeloidleukemia:CML)と診断された.左眼は牽引性網膜.離を認め,化学療法開始後早期のCCML寛解前に経毛様体扁平部硝子体切除(parsCplanavitrectomy:PPV)を施行した.術中増殖膜と出血の処理に苦慮し,術後に再出血を認めたため再手術を施行したが前眼球癆となった.右眼は汎網膜光凝固術を施行し,CMLの寛解後,硝子体出血と牽引性網膜.離に対しCPPVを施行した.術後経過は良好で矯正視力はC0.7に改善した.結論:CMLを合併したCPDRに対するCPPV施行の際は,CMLに対する内科的治療による全身状態改善のうえで手術を施行したほうが良好な手術成績が期待できる可能性がある.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofCproliferativeCdiabeticretinopathy(PDR)inCwhichCleukemiaCtreatmentCpossiblyCa.ectedtheprognosisofvitrectomy.CaseReport:A47-year-oldmalepresentedwiththeprimarycomplaintofvisuallossinhislefteye.Uponexamination,hislefteyehadiritisinwhichthefunduswasnotvisibleduetovitre-oushemorrhage.Hisrighteyehadretinalhemorrhage,.brovascularmembrane,andRothspots.Hewasdiagnosedwithdiabetesandchronicmyeloidleukemia(CML)C.Parsplanavitrectomy(PPV)wasperformedpreCMLremis-sionCdueCtoCtractionalCretinaldetachment(TRD)inChisCleftCeye.CDueCtoCintraoperativeCdi.cultyCinCtreatingCtheC.brovascularmembraneandhemorrhage,postoperativere-bleedingoccurred,soreoperationwasperformed.How-ever,CphthisisCbulbiCoccurred.CPPVCwasCperformedCinChisCrightCeyeCafterCpanretinalCphotocoagulationCandCCMLCremissionCdueCtoCvitreousChemorrhageCandCTRD,CandCtheCvisualCacuityCultimatelyCrecoveredCtoC0.7CpostCsurgery.CConclusion:InCPDRCcasesCcomplicatedCwithCCML,CitCmayCbeCpossibleCtoCobtainCbetterCsurgicalCoutcomesCifCPPVCsurgeryisperformedpostCMLremission.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(4):491.495,C2022〕Keywords:慢性骨髄性白血病,増殖糖尿病網膜症,寛解,硝子体手術,硝子体出血.chronicmyeloidleukemia,proliferativediabeticretinopathy,remission,vitrectomy,vitreoushemorrhage.C〔別刷請求先〕延藤綾香:〒569-8686大阪府高槻市大学町C2-7大阪医科薬科大学眼科学教室Reprintrequests:AyakaNobuto,DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalandPharmaceuticalUniversity,2-7Daigaku-machi,Takatsuki-City,Osaka569-8686,JAPANCはじめに糖尿病と白血病はともに網膜出血や軟性白斑,漿液性網膜.離などの眼病変を生じる疾患であり,それぞれの眼病変に関する報告は多数みられる1).しかし,糖尿病網膜症(dia-beticretinopathy:DR)に白血病を合併した増殖糖尿病網膜症(proliferativeCdiabeticretinopathy:PDR)に関しての報告は少なく,内科的治療と硝子体手術の関係や,手術後の視力予後についてはあまり明らかになっていない.今回筆者らは,白血病治療の状況が硝子体手術の予後に影響したと考えられるCPDRのC1例を経験したので報告する.CI症例患者:47歳,男性.初診:2016年C4月.主訴:両眼のかすみ,左眼視力低下.既往歴:2型糖尿病(未加療),慢性骨髄性白血病(chronicmyeloidleukemia:CML),橋本病,高尿酸血症.家族歴:特記すべきことなし.現病歴:2014年の会社検診で高血糖を指摘されていたものの放置していた.2016年C3月下旬に両眼のかすみと左眼視力低下を自覚し,近医を受診したところ,左眼硝子体出血と右眼の散在性の網膜内出血,Roth斑様所見を認めた.典型的なCDRの所見ではなかったため内科受診を指示され,4月上旬に大阪医科薬科大学附属病院(以下,当院)血液内科での採血でCCMLが疑われ,HbA1c11.7%とコントロール不良のC2型糖尿病も認めた.4月中旬の近医眼科再診時に左眼視力が指数弁まで低下しており,左眼眼圧C38CmmHgと高値で血管新生緑内障を認めたため,4月下旬に当院眼科(以下,当科)紹介受診した.初診時採血結果:白血球数C156.4C×103/μl,赤血球数C454C×104/μl,ヘモグロビン量C11.9Cg/dl,血小板数C470C×103/μl,白血球分画は芽球C2.0%,前骨髄球C1.0%,骨髄球C26.5%,後骨髄球C3.5%,桿状核好中球C32.5%,分葉核好中球17.0%,単球C0.5%,好酸球C2.5%,好塩基球C9.5%,リンパ球C5.0%であり,白血球の著明な増多と幼若化,血小板の増加を認めた.また,HbA1c11.7%と高値でクレアチニン0.75Cmg/dl,血中尿素窒素C9Cmg/dl,eGFR91Cml/min/1.73Cm2と腎機能障害は認めなかった.初診時眼所見:視力はCVD=0.06(0.2C×sph.7.00D(cylC.1.00DAx180°),VS=30Ccm/m.m(n.c.)で,眼圧は右眼15CmmHg,左眼C33CmmHgであった.前眼部は右眼に軽度白内障を認め,左眼は軽度白内障に加えて虹彩炎,虹彩新生血管を認めた(図1).眼底はCDRには非典型的なCRoth斑を伴う散在性の眼底出血を認め,左眼は硝子体出血により透見不良であったが,増殖性変化を認めた(図2).また,術前超音波検査CBモードでは,左眼に後部硝子体腔の出血と下方に扁平な牽引性網膜.離を疑う像を認め(図3),術前蛍光造影(fluoresceinangiography:FA)では,左眼は硝子体出血のため撮影できなかったが,右眼は上鼻側・下鼻側を中心に新生血管を認め,網膜全体に無灌流領域も認めた(図4).経過:翌日に血液内科でCCMLの確定診断となり,内科治療が開始された.当科初診時は白血病のコントロールは不良であったため,まず左眼の血管新生緑内障に対して抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬治療施行予定としたが,本人の費用負担困難のため消炎目的にステロイド結膜下注射を施行した.徐々に消炎し眼圧下降も認めたが,左眼硝子体出血は残存していたため,5月に経毛様体扁平部硝子体切除術(parsplanaCvitrectomy:PPV)および白内障手術を施行した.術中は増殖膜の範囲が広く,とくに鼻側は癒着が強固で,双手法での膜処理中に多数の医原性裂孔を生じた.また,術中の出血が易凝血性でその処理にも苦慮した.術中網膜.離が胞状に拡大したため,液体パーフルオロカーボンで網膜を伸展し,人工的後部硝子体.離作製および増殖膜処理を続行したが,赤道部から周辺側は硝子体が残存した.気圧伸展網膜復位術後に裂孔周囲と後極を除く網膜全体に汎網膜光凝固を施行し,最後にシリコーンオイルタンポナーデを行い,手術を終了した.術後は眼圧上昇を認め,計C4回の前房穿刺を施行したが,眼圧コントロール不良であり,大量の前房出血もきたしていたため,6月にC2度目の左眼CPPVを施行した.まず前房洗浄とシリコーンオイル抜去を行い,眼内レンズは下方に脱臼していたため摘出した.眼底は網膜前面に厚い黄色調の凝血塊を広範囲に認めたが,癒着が強固であったため双手法でも完全に除去することは困難であり,周辺部の人工的後部硝子体.離作製も不完全なまま,最後にシリコーンオイルを再注入し手術を終了した.しかし,その後もシリコーンオイル下で出血が持続し,前房出血と角膜染血症のため眼底透見不能となった.3回目の手術も考慮したが,患者がこれ以上の手術治療を希望しなかったため,経過観察とした.その後左眼は前眼球癆の状態となった.右眼は計C3回の網膜光凝固術を施行(合計C1,000発照射)し経過をみていたが,7月に硝子体出血を認めた.内科治療に関してはC7月時点でCCMLは寛解となり,糖尿病もCHbA1c5.7%とコントロール良好となっていた.血液検査結果は白血球数C5.64C×103/μl,赤血球数C474C×104/μl,ヘモグロビン量C12.3Cg/dl,血小板数C191C×103/μl,白血球分画は芽球0%,前骨髄球C0%,骨髄球C0%,後骨髄球C0%,桿状核好中球C0%,分葉核好中球C67.5%,単球C8.0%,好酸球C0.5%,好塩基球C0.5%,リンパ球C23.5%であり,左眼初回手術時よりも改善していた.右眼硝子体出血は改善を認めなかったため,PPVを施行した.左眼同様に線維血管性増殖膜を広範囲に認め,左眼同様鼻側を中心に後部硝子体は未.離かつ癒図1初診時前眼部写真a:右眼.軽度白内障を認める.明らかな炎症初見は認めない.Cb:左眼.軽度白内障,虹彩炎を認める.Cc:左眼虹彩.虹彩新生血管を認める.Cab図2初診時眼底写真a:右眼.糖尿病網膜症には非典型的なCRoth斑を伴う散在性の眼底出血(△)を認める.Cb:左眼.硝子体出血により透見不良であるが,増殖性変化を認める.図3左眼術前超音波検査Bモード硝子体出血,網膜.離を疑う像を認める.図4右眼術前蛍光造影写真上鼻側・下鼻側を中心に新生血管を認め,網膜全体に無灌流領域を認める.b図5右眼術後画像a:眼底写真.汎網膜光凝固術を施行し,再出血は認めなかった.Cb,c:網膜光干渉断層写真.術後経過良好であり,矯正視力はC0.7まで改善した.着が強固であったため,双手法で慎重に膜処理を行った.術中の出血は左眼のように易凝血性ではなく,比較的処理しやすく,術中医原性裂孔も形成しなかった.人工的後部硝子体.離作製は周辺部までほぼ完遂でき,汎網膜光凝固を追加し,タンポナーデなしで手術を終了した.その後の経過も良好で,右眼矯正視力はC0.7に改善した(図5).II考按白血病における眼病変は,白血病細胞の直接浸潤によるもの,貧血,血小板減少,白血球増多などの造血障害によるもの,中枢神経白血病に二次的に生じるもの,に大別される.白血病細胞の直接浸潤による眼病変としては,網膜浸潤による大小さまざまな網膜腫瘤2)や,脈絡膜への浸潤による二次的な網膜色素上皮障害の結果生じた漿液性網膜.離3,4)や,血管周囲への浸潤による静脈周囲の白鞘化5)などがみられることがある.そのほか造血障害により網膜出血,Roth斑,軟性白斑,網膜血管の拡張・蛇行,毛細血管瘤,新生血管,網膜静脈閉塞症,硝子体出血などが2,3,6)生じることがあり,中枢神経白血病により二次的に乳頭浮腫や視神経萎縮などの視神経症が生じることもある5).また,前眼部病変としては,結膜充血や虹彩実質の菲薄化,虹彩異色,虹彩腫脹,偽前房蓄膿など多彩な病変をきたすことがある7).治療は内科的な白血病治療が主体であり,眼病変は全身状態と相関することも多いことから,治療や再発の指標となることが多いとされている8).DRと白血病の合併に関しては,DRに白血病が合併した場合,網膜症が増悪しやすいことが報告されている1,9.11).ChawlaらはCCMLを合併したC6例を報告し,3例は糖尿病発症時にCCMLの診断がついていたが,3例はCPDRの診断後にCCMLが判明したとしている.そして,6例C12眼ともにCPDRに進行し,うちC4眼が血管新生緑内障を併発し予後不良であったとしている1).Figueiredoらは糖尿病とCCMLを合併したC55歳,男性が,良好な血糖コントロールにもかかわらず,中等度の非CPDRから急速に両眼のCPDRおよび血管新生緑内障に進行したと報告している9).Melbergらはインスリン依存性の糖尿病をC9年間患っていたC16歳,女性が,急性リンパ性白血病を併発した後,6カ月という短期間に重度のCPDRへと進行し,失明に至ったと報告している10).網膜症増悪の原因としては,糖尿病,白血病ともに微小血管障害を生じるため,合併した場合に血管閉塞が増悪し,さらに貧血による組織の低酸素状態が関連すると考えられている.したがって,糖尿病の血糖コントロールに見合わないDRの急速な進行を認めた場合には,採血などによる全身精査を行い,白血病を伴う場合には,内科・眼科双方からの迅速かつ積極的な治療介入が視力の維持に重要となる.今回の症例では,コントロール不良の糖尿病に加えてCMLを合併し,明らかな貧血は認めなかったものの,PDR,白血病性網膜症の双方により重症の増殖性変化が生じたと考えられた.左眼は化学療法開始後早期のCCML寛解前に二度のCPPVを施行したが,増殖性変化が強く,術中の医原性裂孔形成や出血の処理に苦慮した結果,複数回の再手術を要し,最終的に前眼球癆となった.一方,右眼は眼底透見可能であったため,PPV前に汎網膜光凝固術を施行することができ,さらにCCMLと糖尿病の内科的コントロールを行った後に硝子体手術を行い,術後矯正視力がC0.7まで改善した.Raynorらはコントロール不良の糖尿病に加えて,CMLを合併したC61歳,男性が,わずかC1年の間に単純網膜症からCPDRへと急激に進行したが,光凝固治療に加えて,白血病に対する化学療法が,全身状態の改善とともに網膜症の進行抑制にも奏効した可能性を報告している11).これらのことより,初診時の網膜症重症度の左右差や,右眼では術前に汎網膜光凝固術を施行できたことも視力予後が良好となった一因と考えられる.CMLを合併したCPDRに対して硝子体手術を施行する際には,内科的治療により血液検査所見および全身状態を改善させたうえで手術を施行したほうが,良好な手術成績が期待できる可能性が示唆された.文献1)ChawlaCR,CKumarCS,CKumawatCDCetal:ChronicCmyeloidCleukaemiaacceleratesproliferativeretinopathyinpatientswithCco-existentdiabetes:ACriskCfactorCnotCtoCbeCignored.EurJOphthalmolC31:226-233,C20192)原雄将,嘉村由美,及川亜希ほか:両眼視力低下を契機に診断された小児慢性骨髄性白血病のC1例.日眼会誌C114:459-463,C20103)渡辺美江,西岡木綿子,川野庸一ほか:漿液性網膜.離を初発症状とした急性骨髄性白血病のC1例.あたらしい眼科C14:1567-1570,C19974)KincaidCMC,CGreenWR:OcularCandCorbitalCinvolvementCinleukemia.SurvOphthalmolC27:211-232,C19835)柳英愛,高橋明宏,加藤和男ほか:慢性骨髄性白血病に伴う網膜症のC1例.眼臨82:735-757,C19886)大越貴志子,草野良明,山口達夫ほか:血液疾患における眼底所見について.臨眼43:239-243,C19907)若山美紀,稲富勉:白血病細胞による虹彩浸潤病巣.あたらしい眼科22:337-338,C20058)木村和博,園田康平:内科医のための眼科の知識.日本臨床内科医会会誌26:242-245,C20119)FigueiredoCLM,CRothwellCRT,CMeiraD:ChronicCmyeloidCleukemiaCdiagnosedCinCaCpatientCwithCuncontrolledCprolif-erativeCdiabeticCretinopathy.CRetinCCasesCBriefCRepC9:C210-213,C201510)MelbergCNS,CGrandCMG,CRupD:TheCimpactCofCacuteClymphocyticCleukemiaConCdiabeticCretinopathy.CJCPediatrCHematolOncolC17:81-84,C199511)RaynorCMK,CCloverCA,CLu.AJ:LeukaemiaCmanifestingCasCuncontrollableCproliferativeCretinopathyCinCaCdiabetic.Eye(Lond)C14:400-401,C2000***

関西医大附属病院におけるEales病の臨床像の検討

2017年6月30日 金曜日

《第50回日本眼炎症学会原著》あたらしい眼科34(6):868.873,2017c関西医大附属病院におけるEales病の臨床像の検討加賀郁子山田晴彦中道悠太星野健髙橋寛二関西医科大学眼科学講座ClinicalFeaturesofRecentCasesofEales’DiseaseIkukoKaga,HaruhikoYamada,YutaNakamichi,TakeshiHoshinoandKanjiTakahashiDepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversity目的:両眼網膜静脈周囲炎を伴い再発性硝子体出血をきたすEales病について,当院での臨床像を検討した.方法:2007.2015年に当院を受診し,1年以上経過を追うことのできた6例11眼(男性5例,女性1例)の治療内容と経過を,診療録から後ろ向きに検討した.結果:初診時平均年齢は40歳,平均経過観察期間は53カ月であった.両眼性5例,片眼性1例で,両眼性の1例で初診時に血管新生緑内障(NVG)を認めた.全例にフルオレセイン蛍光眼底造影を行い,網膜周辺部の無灌流領域(NPA)に光凝固を施行した.7眼に硝子体手術を施行し,初診時NVGを認めた1例2眼でNPAの拡大から黄斑変性に至り低視力を生じたが,それ以外の症例では治療により病状は安定した.平均logMAR視力は初診0.36から最終0.89と有意差はなかった(p=0.34).結論:Eales病は適切な時期に十分な光凝固あるいは硝子体手術を施行することで,比較的良好な視力が維持できる.進行性にNPAの拡大を呈する症例は,NVGのほか,黄斑部まで拡大進行したNPAによる網膜変性も呈し,予後不良となると考えられた.WeretrospectivelyanalyzedthecharacteristicsofpatientswithEales’disease,using11eyesof6Eales’patientswhohadconsultedKansaiMedicalUniversityduring2007to2015.Patientmeanagewas40years;thediseasewasbilateralin5patientsandunilateralin1.Allpatientsunderwentfundus.uoresceinangiography;laserphotocoagulationwasappliedinthenon-perfusionareatopreventthedevelopmentofnewvessels.Parspla-navitrectomywasperformedin7eyesandyieldedfairvisualoutcome,exceptin2eyesof1patientthatdevel-opedextensiveischemiainvolvingthemacula.Therewasnosigni.cantdi.erenceinmeanvisualacuitybetweenbaseline(0.36)andlastvisit(0.89)(p=0.3369).Adequatephotocoagulationand/orvitrectomyattheappropriatetimeprovidessatisfactoryvisualresultsinEales’disease.Progressionofneovascularglaucomaisthoughttobeamostimportantfactorinpoorprognosis,whichcanresultinmacularischemiaandbringpoorvisualacuity.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(6):868.873,2017〕Keywords:Eales病,光凝固,硝子体出血,硝子体手術,血管新生緑内障.Eales’disease,photocoagulation,vit-reoushemorrhage,vitrectomy,neovascularglaucoma.はじめにEales病は,特発性の周辺部網膜静脈周囲炎から網膜無灌流領域(nonperfusionarea:NPA)が形成され再発性網膜硝子体出血をきたす疾患として,1880年にEalesによって報告された.Eales病の病因に関しては,近年でも結核菌の関与を示唆する報告があり1.3),現在においてその疾患名称の使用については議論がある.若年性再発性硝子体出血とも表現されるが,いまだ確定的な診断基準がないため,本疾患の診断は網膜静脈周囲炎を起こしうる他疾患を除外したうえで成立する.治療としては,虚血網膜に対するレーザー光凝固や抗結核薬の投与の報告1,4)のほか,再発性硝子体出血に対しては硝子体手術が施行され,その視力予後は一般的に良好とされている4.7).しかし,牽引性網膜.離や血管新生緑内障(neovascularglaucoma:NVG)を併発し,予後不良な症例の報告も散見される8,9).今回,関西医大附属病院(以下,当院)にて最近8年間に〔別刷請求先〕加賀郁子:〒573-1191大阪府枚方市新町2-3-1関西医科大学眼科学講座Reprintrequests:IkukoKaga,M.D.,DepartmentofOpthalmology,KansaiMedicalUniversity,2-3-1ShinmachiHirakata573-1191,JAPAN868(110)表1全症例の詳細症例年齢性別病変初発症状*病期初診/最終初診視力STTA**/内服手術加療観察期間(月)最終視力178男R飛蚊,視力低下2b/3b0.01+/.PC,PEA+IOL+PPV67.00.03L視力低下2b/2b0.03+/.PC,PEA+IOL67.00.6246男R無症状3a/3b1.2+/+PC,PEA+IOL+PPV89.50.02L飛蚊,視力低下2b/4b1.5+/+PC,cryoPEA+IOL+PPV+SO89.520cmCF347男R飛蚊,視力低下2a/3b2+/.PC,PPV23.11447女R視力低下2b/4a0.4+/.PC,PPV2回(t-RD)99.40.6L飛蚊3b/4a1./.PC,PPV99.41.2521女R無症状2b/2b1.2./.PC16.01.2L視力低下3b/3b1./.PC,PPV16.01632男R無症状2b/2b1.5./.PC23.61.5L視力低下2b/2b0.2./.PC23.60.2PC:レーザー光凝固,PEA+IOL:超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入,PPV:硝子体手術,SO:シリコーンオイル注入術,cryo:網膜冷凍凝固術,t-RD:牽引性網膜.離,CF:指数弁.*病期分類は表2を用いた.**STTA:ステロイドTenon.下注射.Eales病と診断され,1年以上経過を追うことのできた症例につき,その臨床像を検討した.なお,最近では結核菌感染に付随するぶどう膜炎に対しては結核性ぶどう膜炎の呼称を使用することが多くなっているが1),本研究においては全身的に結核を生じ続発性にぶどう膜炎を生じた症例は除外したため,旧知のEales病としての名称を使用した.I対象2007.2015年に当院を受診し,眼所見および全身検査から他疾患を除外し,Eales病と診断できた症例のうち,1年以上経過を追うことのできた症例について,診療録から後ろ向きに検討した.症例は6例11眼(男性5例,女性1例)で,両眼性の症例が5例,片眼性の症例が1例であった.平均年齢は39.7±19.3歳(15.73歳).平均経過観察期間は53.1±36.9カ月(16.99カ月)であった.全症例の詳細を表1に示す.II結果1.初診時所見初診時の自覚症状は視力低下が7眼(63.6%),飛蚊症が4眼(36.4%)にみられたが,無症状も3眼(27.3%)あった.初診時眼底所見では網膜血管の白線化が全例にみられた.硝子体出血を3眼(27.3%)に認め,そのうち1眼(9.1%)では網膜前に線維血管組織の増殖を認めた.フルオレセイン蛍光眼底造影(.uoresceinangiography:FA)を行ったところ,血管壁からの血管外漏出や血管壁の組織染などの静脈炎所見,および網膜周辺部の無灌流領域(non-perfusionarea:NPA)を全例で認めた.網膜新生血管は3眼(27.3%),seafan様のloop状血管増殖は2眼(18.2%)にみられた.2.治.療.内.容ツベルクリン反応を施行できた症例のうち2例でツベルクリン反応強陽性を認めた(表1,症例4,6).この症例については呼吸器内科へ紹介し,クオンティフェロンで全身の顕性結核感染がないことを確認したが,抗結核薬による治療の要否について検討してもらったところ,全身に結核の活動性病巣はないため抗結核薬の投与は行われなかった.NPAに対しては全例でレーザー光凝固が施行され,そのうち4眼はレーザー光凝固のみで病態は安定した.血管炎および血管炎に伴う黄斑浮腫を生じた6眼(54.5%)で,デポ・メドロールRTenon.下注射を行った(表1,症例1.4).また,経過中に増殖性変化を呈した1例でステロイドの全身投与(プレドニゾロン30mgより漸減)を併用した(表1,症例2).最終的に硝子体手術を施行した症例は5例7眼で,手術の理由として遷延する硝子体出血が5眼(45.5%),経過中病状が進行し牽引性網膜.離をきたした症例が2眼(18.2%)で,牽引性網膜.離を認めた1眼でシリコーンオイル注入を要した(表1,症例2左眼).全症例の平均手術回数は1.7回で,5例5眼で再手術を要した.再手術の理由として,術後の白内障進行に伴う超音波乳化吸引術と眼内レンズ挿入(phacoemulsi.cationandaspiration+intraocularlensimplantation:PEA+IOL)を行ったもの2眼(18.2%),術後再出血,術後の牽引性網膜.離の非復位,シリコーンオイ44図1全症例の視力変化ほとんどの症例で初診時と最終受診時で視力の変化はなかったが,症例2の2眼で最終受診時に0.02と指数弁と著しい視力低下きたした.ル抜去の目的で硝子体手術を行ったものが各1眼であった.3.視.力.経.過全症例の初診時と最終受診時の視力変化を図1に示す.ほとんどの症例で視力は維持されたが,3眼で著しい視力低下をきたした.このうち2眼は同一症例の両眼で(表1,症例2),治療途中までの経過は教室の舘野らが報告した10)が,その後に通院の自己中断により虚血性変化の著しい進行を認め,最終視力は光覚弁,指数弁まで低下した症例であった.全症例での平均logMAR視力は初診時0.36,最終診察時0.89で有意差はなかった(pairedt-test:p=0.3369).以下にとくに予後が不良であった症例を提示する.III症例〔症例1〕72歳,男性(表1,症例1).初診:2010年5月25日.主訴:両眼視力低下.家族歴:特記事項なし.既往歴:糖尿病(投薬加療中),ラクナ梗塞,高血圧,高脂血症.現病歴:2010年5月20日に右眼飛蚊症,視力低下を自覚.2日後に両眼に同症状を認めたため前医を受診し,精査目的で紹介となった.初診時所見:視力は右眼0.01(n.c.),左眼0.03(n.c.).眼圧は右眼14mmHg,左眼15mmHgであった.前眼部は両眼に炎症細胞(2+)を認めたが,虹彩新生血管はなかった.両眼に豚脂様角膜後面沈着物(2+)とDescemet膜皺襞(+)を認めた.両眼ともに成熟白内障のため眼底は不明瞭にしか観察できなかったが,周辺網膜に出血を認めた.経過:前房内炎症が強く,また高齢であったことより,当初はEales病以外のぶどう膜炎を考え,血液生化学検査を施行したうえで,前眼部炎症を抑える目的で両眼にデキサメサゾン結膜下注射を施行した.採血結果では貧血と糖尿病を認めたが,その他の生化学検査の異常値はみられず,CRPや赤沈など炎症反応も陰性で,自己免疫疾患も否定された.ステロイドの局所治療により前眼部炎症は軽減したが,成熟白内障により眼底の詳細な観察ができず,FAを行っても撮影不能であったため,デポメドロールRのTenon.下注射を術前に行い十分な消炎を行ったうえで,同年8月に両眼PEA+IOLを施行した.術後,両眼の眼底が観察できるようになると,周辺部網膜に静脈白線化と出血を認めた.右眼では視神経が萎縮し乳頭陥凹も皿状に拡大して蒼白となっており,当院での経過中に眼圧高値は認めなかったため,既存の緑内障による視神経障害の合併が示唆された.FAでは両眼周辺部網膜にNPAを認めたが,網膜新生血管や増殖膜の形成は認めなかった.全身検査にて血管閉塞をきたす全身性疾患を認めず,FAでは糖尿病網膜症でみられる微小血管瘤を認めなかったことからEales病と診断し,両眼のNPAに対しレーザー光凝固術を施行した.2011年5月より右眼に繰り返す硝子体出血を認めFAで再評価をしたところ,十分な光凝固を施行したにもかかわらず後極へのNPAの拡大を認めたため,さらに光凝固を追加した.その後も右眼に硝子体出血を繰り返すため2012年8月に右眼硝子体手術を施行した.術後,右眼白線化血管を広範囲に認めたが黄斑部虚血は認めず,視神経は蒼白萎縮となっていたため術後視力は0.03にとどまった.〔症例2〕40歳,男性(表1,症例2).初診:2008年7月17日.主訴:左眼霧視.家族歴,既往歴:特記事項なし.現病歴:2008年6月頃より左眼の霧視を自覚したが自然に軽快したために放置していた.同年7月中旬から左眼霧視および充血と眼痛を自覚し近医眼科を受診したところ,左眼の前房出血を指摘され,精査目的で当院紹介受診となった.初診時所見:視力は右眼0.9(1.2×sph.0.75D),左眼0.2(1.5×sph.1.0D(cyl.1.5DAx80°),眼圧は右眼10mmHg,左眼30mmHgであった.右眼は前眼部,中間透光体に異常を認めなかったが,左眼前房内に細胞(2+)を認めた.左眼虹彩と隅角に新生血管を認めたが周辺虹彩前癒着は生じておらず,水晶体は両眼とも透明であった.眼底は両眼とも眼底周辺部の網膜静脈の白鞘化がみられ,視神経乳頭近傍の動静脈交差部の網膜に限局性の浮腫と硬性白斑を認めた(図2).FAを行ったところ,両眼ともに広範囲なNPAと網膜血管吻合を認め,右眼には健常部とNPA部の境界に網膜新生血管を認めた(図3,4).経過:NPAに伴う網膜虚血が原因と考えられるNVGを右眼左眼図2初診時カラー眼底写真(症例2)両眼ともに後極の静脈拡張と乳頭近傍に硬性白斑を認め,左眼でとくに顕著であった.図3初診時FA(症例2右眼)周辺部に広範な網膜血管の閉塞,無血管領域を認め,境界部には血管吻合と網膜新生血管を認めた.図4初診時FA(症例2左眼)左眼は右眼よりも広範囲な無血管領域を認め,明瞭な血管吻合もみられたが,網膜新生血管は認めなかった.発症していたため,血液検査,ツベルクリン反応のほか,内科に依頼し全身検索を行ったが,循環器,呼吸器,血液系には異常は認めず,自己免疫疾患や膠原病も否定された.左眼はNVGを伴ったEales病と診断し,両眼のNPAに汎網膜光凝固を開始した.左眼眼圧上昇に対しては緑内障点眼および炭酸脱水酵素阻害薬の内服による治療を行ったが,眼圧下降は図れず,隅角新生血管が消失しなかった.広範囲な網膜周辺部の虚血を改善する目的で2008年11月19日に左眼網膜冷凍凝固術を施行した.術後左眼隅角血管は退縮し,点眼での眼圧コントロールが可能となった.2009年3月に左眼に続発性網膜上膜の形成を認め,左眼視力は0.7に低下した.その後,患者の受診が途絶えたが,2010年5月に両眼視力低下を主訴に再来した.再診時には両眼ともに網膜静脈炎の再燃を認めていた.矯正視力は右眼0.6,左眼0.05まで低下しており,左眼は虹彩新生血管の再燃と周辺虹彩前癒着の増加により23mmHgと眼圧再上昇を認めた.デポ・メドロールRTenon.下注射およびステロイド内服(プレドニゾロン30mg)による消炎とレーザー光凝固術の追加を行ったが,経過中に左眼は硝子体出血をきたしたため,同年11月にPEA+IOL併用硝子体手術+シリコーンオイル注入を行った.術中所見で左眼の網膜血管はほぼ全域で白線化しており,術後左眼の矯正視力は0.06と改善はみられなかった.その後再度受診が途絶え,2013年右眼の硝子体出血による視力低下を主訴に再来した.右眼は硝子体炎および硝子体出血を繰り返していたようで,再診時には視力は0.1を下回っていた.左眼はIOL後方に厚い増殖膜形成を認めていたが病態は鎮静化していたため,2013年8月にシリコーンオイル抜去術を行ったが,左眼視神経は蒼白となっており,術後視力は指数弁であった.その後右眼の繰り返す硝子体出血と併発白内障の進行により眼底透見が不能となったため,2015年7月にPEA+IOL併用硝子体手術を行ったが,黄斑部虚血により最終受診時の右眼矯正視力は0.02となった.IV考按Eales病は若年者にみられる網膜静脈周囲炎を伴う再発性硝子体出血をきたす疾患である.その病因については,結核菌およびその菌蛋白に対するアレルギー性反応という説が有力とされているが1.3),本疾患は先進国における報告が少なく,多数症例の報告は公衆衛生がやや不良とされるアジア地域からの報告が多いため4,5),いまだ病因は確定的ではない.本疾患の診断において,ツベルクリン皮内反応は他のぶどう膜炎の補助診断としても簡便に行える検査であり,本研究では3例(50%)でツベルクリン皮内反応を確認した.そのうち2例が強陽性,1例は陰性の結果であった.わが国ではBCG接種が義務づけられていた時期もあるため,検査結果のみで結核感染を証明するには不十分である.今回のツベルクリン反応強陽性を示した2症例については,呼吸器内科にて画像診断やクオンティフェロンを施行し,結果的には活動性のある眼外結核病巣は否定されたため,抗結核薬の投与は保険診療ガイドラインに則して行われなかった.近年,Eales病は結核関連ぶどう膜炎の一症状としてとらえられ1),レーザー光凝固による局所治療のほかに,炎症に対するステロイド治療,および結核菌に対する抗菌治療の三者併用療法が試みられるようになっている1,4).当院では,従来積極的な抗結核療法は行っていないが,今後,本疾患を疑った場合には眼外病巣がなくても抗結核薬の投与を検討していく必要があると考えられた.本疾患の長期経過については,これまでの報告では8割の症例で何らかの侵襲的治療を要するが,6割で視力は維持され予後は比較的良好とされる.今回の検討ではレーザー光凝固のみで病態が安定した症例が4眼(36.4%),硝子体手術を要したが経過が良好であった症例が4眼(36.4%)であり,7割を超える症例で治療による病態の安定を認めた.しかし,本疾患の予後については,早期にレーザー光凝固を施行すれば永続的に鎮静化する症例もある一方で,遷延する硝子体出血や増殖性変化により視力低下をきたし硝子体手術を要する症例もある.また,硝子体手術の術後成績も症例によってさまざまであり,NVGの合併例は頻度が0.9.1.7%と低いがその予後はきわめて不良とされ8),術前の牽引性網膜.離合併例は,治療を行っても3%が失明に至る予後不良因子とされている8,9).本研究でも3眼(27.2%)では複数回の治療にもかかわらず視力が不良であった.1眼は治療前から認めた視神経萎縮,1例2眼は術前からのNVGおよび進行性の網膜灌流障害による黄斑虚血のため,いずれも極度の視力低下をきたしたものであった.症例2については拡大するNPAに対し十分なレーザー光凝固の施行を行い,炎症に対してはステロイドの局所投与と,全身投与を行ったにもかかわらず不良な視力にとどまった.この症例に関しては,虹彩および隅角に新生血管をきたす著しい眼虚血状態であったにもかかわらず,通院の自己中断で悪化する病態に対し治療できなかった時期があったことも,予後不良の一因と考えられる.SaxenaらはEales病について,網膜出血を伴う静脈周囲炎を認めるstage1,NPAや網膜新生血管を認めるstage2,線維血管増殖や硝子体出血を認めるstage3,牽引性網膜.離およびNVGを認めるstage4の4型に病期を分類している(表28)).そのなかでstage4の症例と黄斑部を含んだ病変の進行を予後不良因子にあげている.報告のなかで,初期には黄斑病変を認めず,速やかに治療を開始した症例でも,2.71%で最終的に黄斑虚血に至ったとしており,本研究の症例2も同様の経過をたどったものと考えられた.症例2の経過のように,本疾患が若年者にみられることや,硝子体出血が自然に寛解して自覚症状が一時的に改善することもあるため,就労などの都合で定期受診から脱落することがある.しかし,再診時には病状が進行しており,治療時期を逸することもあるため,早期治療のタイミングを逃さないことと,定期的通院の必要性を強く患者に指導することも重要と考えら表2Eales病の病期分類stage特徴stage1aPeriphlebitisofsmallcalibervesselswithsuper.cialretinalhemorrhagesstage1bPeriphlebitisoflargecalibervesselswithsuper.cialretinalhemorrhagesstage2aPeripheralcapillarynon-perfusionstage2bNeovascularizationelsewhere/neovascularizationofthediscstage3aFibrovascularproliferationstage3bVitreoushemorrhagestage4aTraction/combinedrhegmatogenousdetachmentstage4bRubeosisiridis,neovascularglaucoma,complicatedcataract,andopticatorophy(文献8より引用)れた.海外では,本疾患に硝子体出血を併発した症例に対し,抗VEGF薬の硝子体注射の報告がある11,12).抗VEGF薬の治療の有無を無作為に割り付けた結果,抗VEGF薬注射の有無で術後視力予後には差はなく,むしろ抗VEGF薬注射群の30%に牽引性網膜.離をきたし,視力予後が不良であったと報告している11).わが国ではEales病に対する抗VEGF薬は適用外使用であり,今のところ治療成績の報告はみられないが,症例2の治療抵抗性の閉塞性血管炎により黄斑部まで冒されるような症例においては,増殖組織が生じる前のタイミングでレーザー光凝固の補助治療として,消炎および血管新生抑制の効果を期待して,試験的に抗VEGF療法を施行してみても良いのではないかと考えられた.わが国において結核は,昨今,再興感染症として注意が必要な疾患であり,若年患者での再発を繰り返す硝子体出血や血管炎を呈する眼疾患として,結核との関連が示唆されるEales病についても念頭に置いて全身検索を行う必要があると考えられた.また,適切な時期に十分な網膜光凝固あるいは硝子体手術を行うことで比較的良好な視力が維持できるが,黄斑部にまで進行する炎症性虚血をきたす予後不良例もあるため,必要に応じて治療法の検討を要すると考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)BiswasJ,RaviRK,NaryanasamyAetal:Eales’disease─currentconceptsindiagnosisandmanagement.JOph-thalmicIn.ammInfect3:11,20132)BiswasJ,ThereseL,MadhavanH:UseofpolymerasechainreactionindetectionofMycobacteriumtuberculosiscomplexDNAfromvitreoussampleofEales’disease.BrJOphthalmol83:994,19993)MadhavanH,ThereseKL,GunishaPetal:PolymerasechainreactionfordetectionofMycobacteriumtuberculo-sisinepiretinalmembraneinEales’disease.InvestOph-thalmolVisSci41:822-825,20004)El-AsrarAMA,Al-KharashiSA:Fullpanretinalphoto-coagulationandearlyvitrectomyimproveprognosisofretinalvasculitisassociatedwithtuberculoproteinhyper-sensitivity(Eales’disease).BrJOphthalmol86:1248-1251,20025)DehghanMH,AhmadiehH,SoheilianMetal:Therapeu-tice.ectsoflaserphotocoagulationand/orvitrectomyinEales’disease.EurJOphthalmol15:379-383,20056)ShuklaD,KanungoS,PrasadNMetal:Surgicalout-comesforvitrectomyinEales’disease.Eye22:900-904,20087)DasT,PathengayA,HussainNetal:Eales’disease:diagnosisandmanagement.Eye24:472-482,20108)SaxenaS,KumarD:Newclassi.cationsystem-basedvisualoutcomeinEales’disease.IndianJOphthalmol55:267-269,20079)AtmacaLS,BatiogluF,SonmezPA:Along-termfollow-upofEales’disease.OculImmunolIn.amm10:213-221,200210)舘野寛子,城信雄,山田晴彦ほか:血管新生緑内障を合併したEales病の一例.臨眼64:1511-1515,201011)PatwardhanSD,AzadR,ShahBMetal:Roleofintravit-realbevacizumabinEales’diseasewithdensevitreoushemorrhage:aprospectiverandomizedcontrolstudy.Retina31:866-870,201112)ChananaB,AzadRV,PatwardhanS:RoleofintravitrealbevacizumabinnthemanagementofEales’diseas.IntOphthalmol30:57-61,2010***

網膜動脈分枝閉塞症を続発したIntrapapillary Hemorrhage with Adjacent Peripapillary Subretinal Hemorrhage(IHAPSH)の1例

2016年11月30日 水曜日

《原著》あたらしい眼科33(11):1662?1665,2016c網膜動脈分枝閉塞症を続発したIntrapapillaryHemorrhagewithAdjacentPeripapillarySubretinalHemorrhage(IHAPSH)の1例佐藤茂内堀裕昭林仁堺市立総合医療センターアイセンターACaseofBranchRetinalArteryOcclusioninIntrapapillaryHemorrhagewithAdjacentPeripapillarySubretinalHemorrhageShigeruSato,HiroakiUchihoriandHitoshiHayashiDepartmentofOphthalmology,SakaiCityMedicalCenterIntrapapillaryhemorrhagewithadjacentperipapillarysubretinalhemorrhageの経過中に網膜動脈分枝閉塞症を生じた症例を経験したので報告する.症例は42歳,女性.主訴は右眼飛蚊症.初診時,矯正視力は両眼とも1.2,眼圧は右眼15mmHg,左眼17mmHgであった.右眼には軽度の硝子体出血および視神経乳頭鼻上側の乳頭部出血,視神経乳頭辺縁部鼻上側に網膜下出血を認めた.網膜動静脈の拡張や蛇行は認めなかった.無投薬で経過を観察したが,初診より5日後,視神経乳頭鼻側に小さな網膜動脈分枝閉塞症(BRAO)を認めた.全身検査を行ったが,有意な所見を認めなかった.初診より5日後からアスピリン100mg/日内服を開始したところ,出血は徐々に吸収され,飛蚊症は消失し,視力も保たれた.約7カ月の経過観察中に再出血や新たなBRAOの発症は認めなかった.Wereportthecaseofa42-year-oldfemalewhosufferedintrapapillaryhemorrhagewithadjacentperipapillarysubretinalhemorrhageanddevelopedanadjacentperipapillarybranchretinalarteryocclusioninherrighteye.Hermaincomplaintwasfloatersintherighteye.Ourinitialexaminationrevealedcorrectedvisualacuityof1.2inbotheyes,andintraocularpressureof15mmHgand17mmHgintherightandlefteyes,respectively.Ophthalmoscopicexaminationdisclosedmildvitreoushemorrhage,nasalintrapapillaryhemorrhageandadjacentperipapillarysubretinalhemorrhageinherrighteye.Fivedayslater,wefoundanadjacentperipapillarybranchretinalarteryocclusionintherighteye,andinitiatedprescriptionoforalaspirin(100mg/day).Thehemorrhagegraduallydisappearedandthefloatersfadedaswell.Visualacuitywasmaintained.Therehasbeennorecurrencethusfar.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(11):1662?1665,2016〕Keywords:視神経乳頭周囲に網膜下出血を伴う乳頭部出血,網膜動脈分枝閉塞症,硝子体出血,網膜下出血,近視.intrapapillaryhemorrhagewithadjacentperipapillarysubretinalhemorrhage(IHAPSH),branchretinalarteryocclusion(BRAO),vitreoushemorrhage,subretinalhemorrhage,myopia.はじめに若年者に片眼性視神経乳頭部出血をきたす疾患として,視神経乳頭血管炎1),虚血性視神経症2),視神経乳頭部ドルーゼン3),後部硝子体?離に伴う乳頭部出血4,5),Leber特発性星芒状視神経網膜炎2,6,7),視神経乳頭部細動脈瘤8),視神経乳頭周囲に網膜下出血を伴う乳頭部出血(intrapapillaryhemorrhagewithadjacentperipapillarysubretinalhemorrhage:IHAPSH)2)などが報告されている.このなかで,IHAPSHは片眼性の視神経乳頭部出血に加え視神経乳頭部周囲網膜下出血を伴う症候群で,その原因としてさまざまな機序が考察されているものの,現在のところ詳細は不明である.硝子体出血を合併することもあり,飛蚊症の訴えにて受診され発見されることもある.出血は自然吸収傾向にあり,視力予後も良好で再発は少ないとされている2).今回,IHAPSHの経過観察中,視神経乳頭出血部位に近接した網膜動脈分枝閉塞症(branchretinalarteryocclusion:BRAO)を生じた症例を経験したので報告する.I症例患者:42歳,女性.主訴:右眼飛蚊症.既往歴:特記すべきものなし.現病歴:2015年2月より右眼の飛蚊症を自覚.近医受診したところ視神経乳頭部出血を指摘された.精査目的にて紹介となり,2日後に当科初診となった.初診時所見:視力は右眼0.05(1.2×sph?4.5D(cyl?0.5DAx60°),左眼0.1(1.2×sph?2.5D(cyl?0.5DAx150°).眼圧は右眼15mmHg,左眼17mmHgであった.右眼には軽度の硝子体出血および視神経乳頭鼻上側の乳頭部出血,その辺縁部に網膜下出血を認めた.網膜血管動静脈の拡張や蛇行は認めず,黄斑周囲の星芒状白斑も認めなかった(図1a).右眼前眼部は特記すべき所見を認めなかった.また,左眼には特記すべき所見を認めなかった.矯正視力良好であり,自覚症状も軽度であったため,投薬は行わず経過観察をすることとした.経過:初診より5日後再診したところ,飛蚊症が少し濃くなった印象があるとのことであった.検眼鏡的には,硝子体出血はかなり吸収されており,網膜下出血の増悪は認めないものの,若干の乳頭部出血の増加および視神経乳頭鼻側に小さなBRAOを認めた(図1b).同日施行したフルオレセイン蛍光眼底造影検査(fluoresceinangiography:FA)では,BRAO部を走行する動脈は動脈相早期ですでに充盈が始まっており,他の動脈に比して充盈遅延は認めなかった(図1c).また,網膜炎を疑うびまん性蛍光漏出や,網膜血管からのシダ状蛍光漏出,無血管領域,新生血管を認めなかった.視神経乳頭部は出血によるブロックと考える低蛍光を示したが,後期でも乳頭浮腫,血管腫や新生血管を疑う過蛍光は確認できなかった(図1d).OCTでは,視神経乳頭出血に一致した乳頭辺縁部の肥厚および網膜下出血と考える網膜下高反射像を認めた.また,硝子体出血と考えられる高反射も認めた.BRAO部では網膜内層の高反射を認めたが,視神経乳頭への硝子体牽引は明らかではなかった(図2a~d).本症例は中等度近視であり,3D解析を行ったところ傾斜乳頭の像を示した(図2e).中心フリッカー値は両眼ともに41Hzであった.全身検査では,心電図は正常範囲内で,心房細動は認めなかった.頸部エコーでは,両側頸動脈にプラークや狭窄を認めなかった.血液学的検査では,凝固能,抗核抗体やb2マイクログロブリン抗体を含めて有意な所見を認めなかった.本人と相談のうえ,アスピリン100mg/日内服を開始した.その後,出血は徐々に吸収され,飛蚊症の自覚も消失した.初診から約2カ月後にいったん受診が途絶えた.それに伴い,アスピリン内服も自己中断となった.初診から5カ月半後に再診されたところ,出血は完全に吸収されており,表在性視神経乳頭ドルーゼンを認めなかった(図3a).視力は維持されていたが,自動視野計では,右眼Mariotte盲点の耳側への拡大を認めた.初診から6カ月後のFAでは,ブロックは消失し,視神経乳頭部に浮腫,血管腫や新生血管を疑う過蛍光は認めなかった(図3b).BRAO領域は検眼鏡や造影検査を含め,通常の検査では確認が困難であったが,FA後のマルチカラー眼底撮影では,短波長(488nm)と中間波長(518nm)レーザー撮影において,BRAOの領域に一致して,明らかな色調変化が認められた(図3c,d).II考按今回筆者らは,IHAPSHの経過中にBRAOを続発したと考えられる症例を経験した.IHAPSHは,2004年にKokameらが10眼の臨床報告を行い提唱した症候群名である2).それ以前には,1975年のCibisらの報告4)に続き,わが国でも1981年以降に同様の所見を示す症例が相ついで報告され,1989年には廣辻らが10眼の臨床報告を行い,近視性乳頭出血との名称を提唱している5).Kokameらは,この症候群の特徴として①視神経乳頭部からの出血,②近視眼の傾斜乳頭で頻度が上昇する,③視神経乳頭の上方もしくは鼻側に出血することが多い,④急性発症で視力予後良好である,⑤同一眼に再発を認めないとの5つの特徴をあげているが,それ以外にも⑥出血は自然消退する,⑦神経や網膜に明らかなダメージを残さない,⑧アジア系に多くそれ以外の人種では稀,⑨女性に多い,⑩平均発症年齢は47歳などと述べている2).本症例は上記特徴に合致しており,IHAPSHであると考えた.BRAOについては,一般に塞栓源の検索が重要であるが,本症例では塞栓源は特定できなかった.また,特記すべき既往症はなく,発症年齢が比較的若く,血液検査でも凝固系や抗リン脂質抗体症候群を疑う異常所見を認めなかった.さらにIHAPSHの推定発症から1カ月以内に病変の直近に発症している.以上から本症例のBRAOはIHAPSHに続発したと考えた.IHAPSHと鑑別すべき疾患として,視神経乳頭血管炎1),虚血性視神経症2),視神経乳頭部ドルーゼン3),視神経乳頭部細動脈瘤8)を考慮した.まず,視神経乳頭血管炎であるが,全身疾患を伴わない若年性の網膜中心静脈閉塞症が高齢者の病態とは異なるとの考え方から,さまざまな名称でよばれてきた臨床概念である1).本症例では網膜血管の拡張・蛇行を認めず,視神経乳頭部の腫脹は軽度で,出血を認める上方?鼻側に限局しており,耳側?下方の視神経乳頭の腫脹は認めない(図1a~d,2a~e).FAでは網膜血管からのシダ状蛍光漏出など網膜中心静脈閉塞症に共通する所見を認めなかった.また,FAの後期像で視神経乳頭からの著明な蛍光漏出は認めなかった(図1d).以上のことから視神経乳頭血管炎は除外されると考える.虚血性視神経症では,視神経乳頭は急性期に閉塞部の蒼白浮腫と非閉塞部の発赤浮腫を認め,水平半盲などの閉塞部に一致した永続する視野障害を認めることが多い.本症例では,BRAOに伴うMariotte盲点の拡大を認めるのみで,視神経乳頭部出血に一致した視野障害を認めなかった.また,出血の吸収後の視神経乳頭に蒼白化を認めなかったことから除外した(図3a).視神経乳頭部ドルーゼンについては,出血吸収後に検眼鏡的には表在性の視神経乳頭ドルーゼンを認めなかった(図3a).しかし,超音波Bモード,CTなどを行っていないため,深部に潜在するドルーゼンは完全に否定できなかった.視神経乳頭部細動脈瘤は視神経乳頭部出血やBRAOを生じることがある8).しかし,本症例では視神経乳頭部血管瘤は検出されなかった(図3a,b).IHAPSHの原因は未解明であるが,その病因として近視に伴う脈絡膜乳頭境界部での解剖学的脆弱性5),後部硝子体?離に伴う視神経乳頭部牽引4),Valsalva手技による破綻性出血9)やLeber特発性星芒状視神経網膜炎などが考えられている2,6,7).今回の症例では,中等度近視で傾斜乳頭であるものの,OCTにおいて後部硝子体?離に伴う視神経乳頭部牽引は認めなかった(図2a~d).そのため,本症例に関して,硝子体牽引は病因の可能性としては低いと考えた.Valsalva手技による視神経乳頭部の破綻性出血については,発症直前のエピソードに関して積極的には問診を行ったわけではないものの,とくに申告はなく,また後日BRAOが続発したことを説明できない.Leber特発性星芒状視神経網膜炎は,黄斑部に星芒状白斑を伴う視神経網膜炎であるが,ネコひっかき病を含めたさまざまな原因で起こるとされており,IHAPSHに似た所見を示すことがあると報告されている6,7).ネコひっかき病はグラム陰性菌のBartonellahenselae感染が原因であると報告されているが,近年このBartonellahenselae感染とBRAOの関連が指摘されている10).Bartonellahenselaeは血管内皮に侵入する傾向がある11)ので,血管内皮のダメージの結果としての血管閉塞や血管増殖が想定されている12).本症例では,Bartonellahenselae感染の血液学的検索や猫の接触歴や飼育歴の聴取を行っていなかった.今後,IHAPSHとBartonellahenselae感染の関連については検討の価値があると考える.BRAO発症半年後,検眼鏡やFAではBRAO部を同定することが困難であった(図3a,b)しかし,OCTでは,網膜の限局性菲薄化が認められ,FA後のマルチカラー眼底撮影では短波長(488nm)と中間波長(518nm)レーザーにて撮像した画像では,はっきりと閉塞部を同定することができた(図3c,d).マルチカラー眼底撮影は陳旧性BRAOの閉塞領域を同定するのに有用である可能性がある.最後に,IHAPSHは自然軽快し,予後良好と報告されているが,BRAOを続発する可能性があるので,発症早期はBRAOの続発に注意すべきと考えられた.文献1)FongAC,SchatzH:Centralretinalveinocclusioninyoungadults.SurvOphthalmol37:393-417,19932)KokameGT,YamamotoI,KishiSetal:Intrapapillaryhemorrhagewithadjacentperipapillarysubretinalhemorrhage.Ophthalmology111:926-930,20043)LeeKM,HwangJM,WooSJ:Hemorrhagiccomplicationsofopticnerveheaddrusenonspectraldomainopticalcoherencetomography.Retina34:1142-1148,20144)CibisGW,WatzkeRC,ChuaJ.:Retinalhemorrhagesinposteriorvitreousdetachment.AmJOphthalmol80:1043-1046,19755)廣辻徳彦,布出優子,中倉博延ほか:近視性乳頭出血.眼紀40:2787-2794,19896)KokameGT:Intrapapillary,peripapillaryandvitreoushemorrhage[letter].Ophthalmology102:1003-1004,19957)CassonRJ,O’DayJ,CromptonJL:Leber’sidiopathicstellateneuroretinitis:differentialdiagnosisandapproachtomanagement.AustNZJOphthalmol27:65-69,19998)MitamuraY,MiyanoN,SuzukiYetal:Branchretinalarteryocclusionassociatedwithruptureofretinalarteriolarmacroaneurysmontheopticdisc.JpnJOphthalmol49:428-429,20059)里見あづさ,大原むつ:Valsalva手技が誘因と思われる若年者乳頭出血の1例.眼臨90:981-983,199610)Eiger-MoscovichM,AmerR,OrayMetal:RetinalarteryocclusionduetoBartonellahenselaeinfection:acaseseries.ActaOphthalmol94:e367-e370,201611)KirbyJE:InvitromodelofBartonellahenselae-inducedangiogenesis.InfectImmun72:7315-7317,200412)PinnaA,PugliaE,DoreS:Unusualretinalmanifestationsofcatscratchdisease.IntOphthalmol31:125-128,2011〔別刷請求先〕佐藤茂:〒593-8304大阪府堺市西区家原寺町1-1-1堺市立総合医療センターアイセンターReprintrequests:ShigeruSatoM.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,SakaiCityMedicalCenter,1-1-1Ebaraji-cho,Nishi-ku,Sakai,Osaka593-8304,JAPAN1662(124)0910-1810/16/\100/頁/JCOPY図1眼底写真およびFAa:初診時右眼眼底写真.視神経乳頭鼻上側に出血,網膜下出血,浮腫を認める.網膜血管の拡張は認めない.b:初診から5日後.視神経乳頭部出血の軽度増加と視神経乳頭鼻側にBRAOを認める.c:FA早期像.BRAO部の動脈の充盈を認める.d:FA後期像.網膜血管からの蛍光漏出や視神経乳頭部の著明な過蛍光を認めない.(125)あたらしい眼科Vol.33,No.11,20161663図2OCT像a,b:OCTの網膜下出血部のスキャン位置と断層像.b:出血部に一致した網膜肥厚と網膜下出血と思われる反射を認める.硝子体には出血と思われる点状高反射を認めるが,明らかな後部硝子体?離を認めない.c,d:OCTのBRAO部のスキャン位置と断層像.d:網膜内層に高反射像を認める.e:右視神経乳頭部のOCTによる3D再構成像.傾斜乳頭を認める図3眼底写真とマルチカラー眼底写真a:初診から5カ月半後の右眼眼底写真.出血は吸収され,血管瘤や表在性の視神経乳頭部ドルーゼンを認めない.BRAO部は同定できない.b:初診から6カ月後のFA後期像.視神経乳頭部に異常所見を認めない.BRAO部は同定できない.c,d:FA後のマルチカラー眼底撮影(c=488nm,d=518nm)BRAO部が同定可能.1664あたらしい眼科Vol.33,No.11,2016(126)(127)あたらしい眼科Vol.33,No.11,20161665

未治療の糖尿病患者に発症し,網膜剝離に至ったサイトメガロウイルス網膜炎の1例

2014年5月31日 土曜日

《第47回日本眼炎症学会原著》あたらしい眼科31(5):742.746,2014c未治療の糖尿病患者に発症し,網膜.離に至ったサイトメガロウイルス網膜炎の1例藤井朋子*1小林崇俊*1高井七重*1丸山耕一*1,2多田玲*1,3竹田清子*1庄田裕美*1池田恒彦*1*1大阪医科大学眼科学教室*2川添丸山眼科*3多田眼科ACaseofCytomegalovirusRetinitiswithRetinalDetachmentAnUntreatedDiabeticPatientTomokoFujii1),TakatoshiKobayashi1),NanaeTakai1),KouichiMaruyama1,2),ReiTada1,3),SayakoTakeda1),HiromiShouda1)andTsunehikoIkeda1)1)DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,2)KawazoeMaruyamaEyeClinic,3)TadaEyeClinic目的:未治療の糖尿病患者にサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎が発症し,網膜.離に至った1例を報告する.症例:45歳,男性.右眼の霧視を主訴に近医受診.その後,精査加療目的にて大阪医科大学附属病院眼科を受診した.初診時,矯正視力は右眼(1.0),左眼(1.2).右眼に前房内炎症を認め,網膜出血と網膜動脈の白鞘化,上耳側の網膜周辺部に顆粒状白色病変を認めた.糖尿病はあるものの,CD4陽性Tリンパ球は473/μlと免疫能は正常と考えられた.前房水からCMV-DNAが検出され,ガンシクロビルの点滴静注を開始.しかし,硝子体出血を生じ,網膜.離に至った.硝子体手術を施行して網膜は復位し,現在矯正視力は(1.0)である.結論:健常人におけるCMV網膜炎の発症がまれに報告されており,糖尿病を基礎疾患に持つ症例の報告も散見される.本症例のように重篤な症例もあり,十分な治療と経過観察が必要である.Purpose:Wedescribeararecaseofcytomegalovirus(CMV)retinitisinanuntreateddiabeticpatient.CaseReport:A45-year-oldmalewasreferredtoourhospitalafterpresentingatanothereyeclinicwithcomplaintofblurredvisioninhisrighteye.Initialexaminationshowedbest-correctedvisualacuity(BCVA)of1.0ODand1.2OS.Slit-lampexaminationdisclosedaqueouscellsinhisrighteye;funduscopicexaminationrevealedretinalhemorrhage,retinalarterysheathingandgranularwhiteretinallesionattheinferotemporalmid-peripheryinhisrighteye.Hehaddiabetesmellitus,butweevaluatedhimasanalmostsystemicallyhealthyindividual,becausehisCD4-positivelymphocytecountwas473/μl.AfterpolymerasechainreactionanalysisofanaqueoustaprevealedCMV-DNA,hewastreatedwithganciclovir,butvitreoushemorrhageandretinaldetachmentoccurred.Aftervitreoussurgery,hisBCVAwas1.0OD.Conclusion:SomehealthyadultswithCMVretinitishavediabetesmellitus;carefulobservationandtreatmentarenecessaryinespeciallyseverecases.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(5):742.746,2014〕Keywords:サイトメガロウイルス網膜炎,ガンシクロビル,硝子体出血,網膜.離.cytomegalovirusretinitis,ganciclovir,vitreoushemorrhage,retinaldetachment.はじめにサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)はbヘルペスウイルスの一種で,感染すると生涯,潜伏感染状態となり,日本人では成人までに95%以上が既感染になるといわれている1).CMVは,後天性免疫不全症候群(acquiredimmunodeficiencysyndrome:AIDS),あるいは悪性腫瘍,臓器移植後などの,高度の免疫不全状態になると,ウイルスの再活性化が生じ種々の臓器に感染症を発症する.今回,筆者らは,未治療の糖尿病以外に背景因子のない患者がCMV網膜炎を発症し,硝子体出血を生じたのちに,急速に網膜.〔別刷請求先〕藤井朋子:〒569-8686大阪府高槻市大学町2-7大阪医科大学眼科学教室Reprintrequests:TomokoFujii,M.D.,DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,2-7Daigaku-cho,Takatsuki-shi,Osaka569-8686,JAPAN742742742あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(116)(00)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY 離に至った1例を経験したので報告する.I症例患者:45歳,男性.主訴:右眼の霧視.既往歴:糖尿病(未治療).家族歴:特記すべきことなし.現病歴:平成24年8月,右眼の霧視を主訴に近医眼科を受診.自覚症状が悪化し,9月に他院眼科を受診して網膜血管炎を指摘され,9月14日精査加療目的にて大阪医科大学附属病院(以下,当院)眼科を紹介受診した.初診時所見:視力は右眼1.0(矯正不能),左眼0.8(1.2×cyl.0.75DAx80°),眼圧は右眼15mmHg,左眼13mmHgであった.右眼前眼部には微細な角膜後面沈着物と前房内に1+の炎症細胞がみられた.右眼眼底に網膜血管に沿った網膜出血と,網膜動脈の一部白鞘化,さらに上耳側の網膜周辺部に顆粒状の白色病変を認めたが,硝子体混濁はほとんどなかった(図1).左眼は前眼部,眼底ともに明らかな病変はなかった.フルオレセイン蛍光眼底造影(fluoresceneangiography:FA)検査では,血管炎による充盈遅延と蛍光漏出を認めた(図2).FA撮影途中に顔面,体幹に発疹が出現したためただちに撮影を中断し,以降はFA検査の実施は危険性が高いと考えて見合わせた.血液検査所見:赤血球461×104/μl,白血球8,630/μl,血小板297×103/μl,ヘモグロビン15.1g/dl,CRP(C-reactiveprotein)0.19mg/dl,血沈8mm/hrと正常.生化学的検査,肝機能,腎機能異常なし.血糖値146mg/dl.ヘモグロビンA1C(HbA1C)9.5%(NGSP).ACE(アンジオテンシン変換酵素)6.9U/l(基準値8.3.21.4),CMVIgM抗体0.41(基準値0.80未満),CMVIgG抗体5.9(基準値2.0未満)であった.ツベルクリン反応は12mm×16mm.CMVpp65抗原(C7HRP)は陰性,HIV(humanimmunodeficiencyvirus)抗体陰性,CD4陽性Tリンパ球は473/μl(基準値300/μl以上)であった.経過:前眼部,眼底所見からウイルス性網膜炎を疑い,9月16日に右眼の前房水を採取し,ウイルスDNAを調べるためにpolymerasechainreaction(PCR)検査に提出した.広範囲の網膜血管炎と上耳側の顆粒状白色病変から,当初は急性網膜壊死の可能性が高いと考え,9月17日より入院にてアシクロビルの点滴静注とステロイド薬の内服を開始した.しかし,9月21日に上耳側の白色病変が拡大.同日に前房水のPCR検査の結果が判明し,CMV-DNAが検出された.同時に検査した単純ヘルペスウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルスのDNAは検出されなかった.ただちにステロイド薬の内服を中止し,ガンシクロビル(GCV)の点滴静注を700mg/dayより開始した.9月28日,上耳側の白色病変は縮小しつつあったが,視神経乳頭上に出血と,下方周辺部に硝子体出血を認めた(図3).検眼鏡的に明らかな新生血管がなかったため,そのまま様子をみることにし,上耳側の白色病変が徐々に縮小してきたため,10月13日にGCVの投与量を半分に減量した(350mg/day).その後10月26日に上耳側の白色病変がほぼ消失したため,GCVを中止してバルガンシクロビルの内服(900mg/day)に変更,10月29日に退院となった.なお,糖尿病については入院中に当院の糖尿病内科を受診し,治療が開始された.退院後,11月2日の再診時には上耳側の白色病変は消失しており,硝子体出血は薄く残存するものの右眼の矯正視力は(1.0)であった.ところが11月14日に再度硝子体出血が生じ,経過とともに徐々に増悪し,次第に眼底の透見が困難となった.平成25年1月23日,超音波Bモード検査にて図1初診時右眼眼底写真網膜血管に沿った網膜出血と,網膜動脈の一部白鞘化,上耳側の網膜周辺部に顆粒状の白色病変を認める.図2当科初診時の右眼FA写真(造影開始4分25秒)血管炎による充盈遅延と蛍光漏出を認める.(117)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014743 図3硝子体出血発症時の右眼眼底写真上耳側の白色顆粒状病変は縮小しつつあったが,視神経乳頭上に出血と,下方周辺部に硝子体出血を認めた.図5右眼の術後眼底写真網膜は復位している.網膜.離を疑う所見を認めたため,1月29日に入院のうえ,経毛様体扁平部水晶体切除術および硝子体切除術を施行した.術中,硝子体出血を除去するとその下に丈の低い網膜.離を認め,上耳側の顆粒状白色病変であった箇所に壊死性の網膜裂孔を確認した.また視神経乳頭の周囲から鼻側にかけて線維血管性増殖膜を認め,硝子体鑷子で.離除去した(図4).その後,気圧伸展網膜復位術,裂孔周囲へのレーザー光凝固を行い,周辺部輪状締結術を併用のうえ20%SF6(六フッ化硫黄)によるガスタンポナーデを施行し,手術は終了した.744あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014図4硝子体手術の術中写真硝子体鑷子で線維血管増殖膜を切除している.術後,網膜は復位し,炎症の再燃もなく良好に経過したため,4月26日に眼内レンズ二次挿入術を施行した.平成25年7月現在,右眼の矯正視力は(1.0)となっている(図5).II考按CMV網膜炎は通常,免疫抑制状態の患者に起こる疾患であり,今回のように糖尿病以外に背景因子のない患者に生じた報告はまれである.本症例では,片眼の眼底に動脈炎が主体の網膜血管炎と,特徴的な白色顆粒状の網膜病変がみられたこと,前房水のPCR検査からCMV-DNAが検出されたこと,GCV投与により網膜病変が縮小したこと,などからCMV網膜炎と診断した.また,本症例においては,未治療の糖尿病を認めたものの,免疫能の指標であるCD4陽性Tリンパ球数の著明な低下はなく,その他に明らかな免疫抑制状態をきたす全身疾患や感染症もなく,免疫能は正常であると考えた.免疫能正常者に生じたとするCMV網膜炎の過去の報告では,基礎疾患のない症例も散見されるが2.5),糖尿病を基礎疾患に持つ症例が複数報告されており5.7),糖尿病は危険因子の一つであると考える.既報では糖尿病の指標であるHbA1Cが5%台から9%台のものまでさまざまであるが,一般的に糖尿病は易感染性ということは以前から広く知られている.川上8)によれば,高血糖は多核白血球の貪食能や殺菌能を抑制し,細胞性免疫を抑制すると述べられており,また,きわめてまれな感染症とされる気腫性胆.炎やムコール症など,糖尿病に特有の感染症の存在も指摘されている.したがって,糖尿病患者における原因不明のぶどう膜炎を診察する場合,たとえ免疫能が正常であったとしても,CMV網膜炎も重要な鑑別診断の一つとして考慮すべきではないかと考える.さらに,Radwanらは,免疫能正常者に生じた(118) CMV網膜炎の海外の報告をまとめ,12例中6例に糖尿病をには,未治療の糖尿病に罹患していたという点以外にも,何併発していること,4例に網膜静脈閉塞症を併発しているこか別の要因があったのではないかと考えている.確かにと,免疫能正常者に発症したCMV感染症の約3分の1の患CD4陽性Tリンパ球数は,経過中に低下することなく一貫者に血栓症が見つかったこと,などの特徴から,糖尿病だけして正常範囲内であったが,CD4陽性Tリンパ球数はいくではなく,高血圧や易凝血性も危険因子であると述べていつかの免疫能の指標のなかの一つであって14),筆者らが行っる5).本症例では,高血圧や易凝血性は認めていないが,た検査では測定できていない免疫能の低下が,CMV網膜炎CMV感染と動脈硬化の関連は以前から報告されており9),の罹患当初に存在したのかもしれない.そのため,本症例の今後注意していく必要がある.ようにIRUとも考えられる病態が生じ,45歳という比較的つぎに,本症例が硝子体出血を繰り返し生じた原因につい若年で眼内の増殖機転が旺盛であったことも相まって,硝子ては,術中に視神経乳頭付近に線維血管性増殖膜を認めた所体出血や網膜.離に至ったのではないかと推測している.実見から,視神経乳頭付近に生じた新生血管が原因となった可際,Bogieら10)の報告のなかにも,AIDSを併発した症例で能性が高いと考えている.CMV網膜炎に硝子体出血を生じIRUと考えられる経過をたどった1例があり,アーケードた過去の報告では,本症例のように硝子体手術を施行した症血管の下方に新生血管を生じている.例も散見される.二宮ら2)とBogieら10)は,視神経乳頭上新最後に,本症例は初診時のFA撮影の途中に発疹を生じた生血管を含む増殖膜が原因となった硝子体出血に対し,硝子ことから,今後再検査をするとアレルギー反応が生じる危険体手術を施行した症例を報告している.両者とも,術前と術性が高いと考え,その後はFA撮影を行っておらず,無血管中にレーザー光凝固を行うも,再手術を要しているが,二宮野の詳細を把握できていない状況にある.そのため,今後再らは,新生血管は消退したとしてレーザー光凝固の有用性を増殖を生じる可能性が十分にあり,慎重な経過観察が必要で述べており,Bogieらは血管閉塞の背景としてHIVによるあるとともに,再増殖の際は橋本ら11)のようにレーザー光微小血管障害の関与を示唆している.また,橋本らは,血友凝固を含めた対応を検討する必要があると考えている.病を伴うHIV感染を基礎疾患とするCMV網膜炎の1例について報告し,片眼が新生血管からの硝子体出血によって予後不良となるも,僚眼ではレーザー光凝固を行うことによっ利益相反:利益相反公表基準に該当なして新生血管を減少させ,経過中に硝子体出血を予防できたと述べている11).筆者らの症例では無血管野の範囲が不明であ文献り,術後の炎症も懸念されたことから,硝子体手術の術中に1)安岡彰:サイトメガロウィルス感染症.化学療法の領域は,裂孔周囲以外にレーザー光凝固は施行しなかった.26:1997-1999,2010他に,特に海外では,GCVの毛様体扁平部へのインプラ2)二宮久子,小林康彦,田中稔ほか:健康な青年にみられント挿入症例に硝子体出血が生じたとする報告もあるが12),たサイトメガロウィルス網膜炎の1例.あたらしい眼科現在はわが国では同様の治療はほとんど行われていない.さ10:2101-2104,19933)北善幸,藤野雄次郎,石田政弘ほか:健常人に発症したらに硝子体出血の別の機序として,GCV投与の副作用で血著明な高眼圧と前眼部炎症を伴ったサイトメガロウイルス小板減少となり,その結果硝子体出血が生じたとする報告も網膜炎の1例.あたらしい眼科22:845-849,2005あるが13),今回,GCVに伴う骨髄抑制などの副作用は生じ4)菅原道孝,本田明子,井上賢治ほか:免疫正常者に発症しなかった.たサイトメガロウイルス網膜炎の1例.あたらしい眼科28:702-705,2011一方,本症例のように,十分にGCVを投与しているにも5)RadwanA,MetzingerJL,HinkleDMetal:Cytomegaloかかわらず,網膜炎が徐々に増悪した経過となった背景にvirusretinitisinimmunocompetentpatients:casereportsは,菅原ら4)や吉永ら6)の報告に指摘があるように,免疫回andliteraturereview.OculImmunolInflamm21:324復ぶどう膜炎(immunnerecoveryuveitis:IRU)のような328,20136)吉永和歌子,水島由佳,あべ松徳子ほか:免疫正常者に発反応が生じた可能性があるのではないかと考えている.IRU症したサイトメガロウイルス網膜炎.日眼会誌112:684はHIVに罹患後AIDSを発症した患者が,HAART(highly687,2008activeantiretroviraltherapy)療法によって免疫能が回復す7)TakayamaK,OgawaM,MochizukiMetal:Cytomegaloることに伴い炎症が惹起される,ということが本来の発症様virusretinitisinapatientwithproliferativediabetesretinopathy.OculImmunolInflamm21:225-226,2013式であり,本症例は該当しないのかもしれない.しかし,今8)川上正舒:糖尿病と感染症.化学療法の領域28:1518回のように健康であった成人男性が,CMV網膜炎を発症し1523,2012たことに加え,十分量のGCVを投与しているにもかかわら9)HendrixMG,SalimansMM,vanBovenCPetal:Highず徐々に増悪する,というきわめてまれな経過を辿った背景prevalenceoflatentlypresentcytomegalovirusinarterial(119)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014745 wallsofpatientssufferingfromgradeIIIatherosclerosis.AmJPathol136:23-28,199010)BogieGJ,NandaSK:Neovascularizationassociatedwithcytomegalovirusretinitis.Retina21:85-87,200111)橋本知余美,松浦豊明,湯川英一ほか:ガンシクロビルとレーザー光凝固を併用して有効であったサイトメガロウイルス網膜炎.臨眼50:581-583,199612)SrivastavaSK,MartinDF,MellowSDetal:Pathlogicalfindingsineyeswiththeganciclovirimplant.Ophthalmology112:780-786,200513)RobinsonMR,TeitelbaumC,Taylor-FindlayC:Thrombocytopeniaandvitreoushemorrhagecomplicatingganciclovirtreatment.AmJOphthalmol107:560-561,198914)板東浩:免疫機能・生活習慣.アンチ・エイジング医学2:48-54,2006***746あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(120)