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正常眼圧緑内障におけるプロスタグランジン関連薬単剤からカルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液への切り替えにおける眼圧下降効果と安全性の検討

2020年8月31日 月曜日

《第30回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科37(8):980.984,2020c正常眼圧緑内障におけるプロスタグランジン関連薬単剤からカルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液への切り替えにおける眼圧下降効果と安全性の検討多田香織*1池田陽子*2,3上野盛夫*2森和彦*2木下茂*4外園千恵*2*1京都中部総合医療センター眼科*2京都府立医科大学眼科学教室*3御池眼科池田クリニック*4京都府立医科大学感覚器未来医療学CShort-termSafetyandE.cacyofSwitchingfromMonotherapyProstaglandinAnaloguestoMikelunaCombinationOphthalmicSolutioninJapaneseNormal-tensionGlaucomaPatientsKaoriTada1),YokoIkeda2,3),MorioUeno2),KazuhikoMori2),ShigeruKinoshita4)andChieSotozono2)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoChubuMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,3)Oike-IkedaEyeClinic,4)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineC正常眼圧緑内障患者におけるプロスタグランジン(PG)関連薬からカルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液(ミケルナ,大塚製薬)への切り替え効果と安全性を検討した.PG関連薬単剤で加療中の正常眼圧緑内障患者C33例C33眼を対象に,点眼切り替え前,切り替え後C1カ月とC3カ月における眼圧および副作用を検討した.点眼液切り替え後C1カ月とC3カ月の眼圧はそれぞれC11.0±2.6CmmHgおよびC11.3±2.7CmmHgであり,切り替え前のC12.0±2.2CmmHgと比較していずれも有意に下降した(p<0.05).血圧は点眼液切り替え後C1カ月,脈拍はC1カ月後とC3カ月後時点で有意な低下(p<0.05)を認めたが,経過観察期間において眼局所,全身副作用で点眼中止に至る症例はなかった.以上より,カルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液は正常眼圧緑内障患者の治療強化に有効であり,副作用の少ない点眼液であることが確認された.CPurpose:ToCinvestigateCtheCsafetyCandCe.cacyCofCMikelunaCCombinationCOphthalmicSolution(OtsukaCPhar-maceuticalCo.),CaClong-acting2%CcarteololChydrochlorideCandClatanoprost.xed-combination(CLFC)eye-dropCmedication,CinCJapaneseCnormalCtensionglaucoma(NTG)patientsCinCtheCclinicalCsetting.CMethods:ThisCstudyCinvolvedC33CeyesCofC33CNTGCpatientsCwhoCswitchedCfromCtopicalCprostaglandinCanaloguesCmonotherapyCtoCCLFCeyedrops.Intraocularpressure(IOP),bloodpressure,andheartratewasmeasuredbeforetheinitiation(baseline)Candat1-and3-monthspostadministration,andassociatedadverseeventswereinvestigated.Results:MeanIOPatCbaselineCandCatC1-andC3-monthsCpost-administrationCwasC12±2.2CmmHg,C11±2.6CmmHg,CandC11.3±2.7CmmHg,respectively[signi.cantIOPreduction(p<0.05)].Bloodpressuredecreasedsigni.cantlyafter1month(p<0.05)CandCheartCrateCafterC1CandC3months(p<0.05)withoutCsubjectiveCsympotoms.CNoneCofCtheCpatientsCdiscontinuedCuseCdueCtoCadverseCdrugCreaction.CConclusion:CLFCCeyeCdropsCwereCfoundCe.ectiveCforCstrengtheningCtheCIOPCloweringe.ectwithasafeandwell-toleratedpro.leinNTGpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(8):980.984,C2020〕Keywords:カルテオロール,ラタノプロスト,配合点眼液,正常眼圧緑内障,眼圧.carteololhydrochloride,latanoprost,.xed-combination,normaltensionglaucoma(NTG),intraocularpressure(IOP).C〔別刷請求先〕多田香織:〒629-0197京都府南丹市八木町八木上野C25京都中部総合医療センター眼科Reprintrequests:KaoriTada,DepartmentofOphthalmology,KyotoChubuMedicalCenter,25Yagiueno,Yagi,Nantan,Kyoto629-0197JAPANC980(80)はじめに2017年C1月に世界に先駆けて日本で販売されたカルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液(ミケルナ配合点眼液,大塚製薬.以下,CLFC)は,プロスタグランジン(PG)関連薬のラタノプロスト点眼液とC1日C1回のCb遮断薬であるカルテオロール塩酸塩C2%を配合した抗緑内障点眼液である.1日C1回製剤同士の組み合わせは世界初であり,かつCb遮断薬としてカルテオロール塩酸塩を含有していることから,眼圧下降効果に加え,眼底血流改善作用や内因性交感神経刺激作用(intrinsicsympathomimeticCactivity:ISA)も期待される.また,防腐剤としてベンザルコニウム塩酸塩(BAC)を含まず,角膜への障害が軽減される可能性がある.点眼液販売開始からC1年以上が経過したが,CLFCの眼圧下降効果に関する報告は調べる限りまだ少ない1,2).今回は緑内障病型を正常眼圧緑内障に限定し,PG関連薬単剤からCLFCへの切り替えにおける眼圧下降効果と安全性について検討したので報告する.CI対象および方法京都府立医科大学および御池眼科池田クリニックに通院中の正常眼圧緑内障患者のうち,PG関連薬単剤からCCLFCに切り替え,治療強化を行ったC33例C33眼〔男性C7例,女性26例,平均年齢C62.9C±13.8歳(平均値C±標準偏差)(39.90歳)〕を対象とし,レトロスペクティブに評価を行った.本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り,京都府立医科大学病院の倫理委員会の承諾を得て実施した.切り替え前,切り替え後C1,3カ月の眼圧をCGoldmann圧平眼圧計で測定し,眼圧下降効果を検討した.なおCCLFCの両眼処方例では右眼を対象とし,眼圧に影響を及ぼす可能性のある他剤と同時に開始した症例は除外した.緑内障病期を,静的視野検査では初期:meandeviation(MD)値≧C.6CdB,中期:C.6CdB>MD値≧C.12CdB,後期:C.12CdB>MD値,Goldmann動的視野検査では初期:I,II,中期:III,後期:IV,Vと定義し,対象の視野障害の程度を評価した.安全性については,切り替え前後の眼表面障害の程度,血圧と脈拍で評価を行った.眼表面障害の程度の評価はC33例中,前眼部写真での記録があるC29例(男性C5例,女性C24例,平均年齢C62.5C±13.2歳)を対象に行った.評価にはCrichtonら3)の用いた分類を使用し,結膜充血スコア:0=none(normal),0.5=trace(trace.ush,reddishpink),1=moderate(brightCredcolor),3=sever(deep,CbrightCdif-fuseredness),点状表層角膜症(super.cialCpunctaCkera-topathy:SPK)スコア:0=none(no.ndings),0.5=trace(1.5puncta),1=mild(6.20puncta),3=sever(tooCmanypunctatocount)とした.また従来,来院患者には院内の自動血圧計(健太郎CHBP-9020,OMRON,もしくはハートステイションCSMPV-5500,日本電工)を用いた安静時の収縮期/拡張期血圧,脈拍の測定を指示しており,点眼切り替え前後での測定値の変動を検討し安全性の評価を行った.統計学的検討は対応のあるCt検定を用いた.CII結果対象の内訳を表1に示す.切り替え前平均眼圧はC12.0C±2.2CmmHgと低値であった.対象の視野障害の程度について,33例中,静的視野検査で経過観察されていたC31例のCMD値の平均は.5.0±3.8CdB(C.0.4.C.12.7CdB)であり,Gold-mann動的視野検査で経過観察されていた残りC2例の湖崎分類はCIIbとCIVであった.対象の緑内障病期は初期:22例(66.7%),中期:8例(24.2%),後期:3例(9.1%)であった.切り替え前の眼表面障害の程度については,33例中,前眼部写真での記録があるC29例において結膜充血スコア:C0.4±0.2(0.0.5),SPKスコア:0.4C±0.6(0.2)であった(表2).血圧は収縮期がC119.2C±16.8CmmHg,拡張期がC70.9C±12.1CmmHg,脈拍はC81.1C±17.1/分であった(表1).切り替え前の使用薬剤の内訳はC33例中C32例がラタノプロスト点眼液(内C5例は防腐剤が添加されていないラタノプロスト表1点眼切り替え前の対象の内訳n年齢眼圧緑内障病期(%)血圧(mmHg)脈拍(/分)(男:女)(歳)(mmHg)初期中期後期収縮期拡張期33(7:26)C62.9±13.8C12±2.2C66.7C24.2C9.1C119.2±16.8C70.9±12.1C81.1±17.1C表2点眼切り替え前後の眼表面障害の変化n(男:女)年齢(歳)結膜充血スコアSPKスコア切り替え前切り替え後1カ月切り替え後3カ月切り替え前切り替え後1カ月切り替え後3カ月29(5:24)C62.5±13.2C0.4±0.2C0.5±0.1C0.5±0.1C0.4±0.6C0.4±0.6C0.3±0.516*******:p<0.05NS:有意差なし***NS12.0mmHg11.0mmHg11.3mmHg***:p<0.05NS:有意差なし:収縮期血圧:拡張期血圧:脈拍NS眼圧(mmHg)140切り替え前切り替え後切り替え後1カ月3カ月40図1眼圧の推移点眼切り替え後C1カ月,3カ月いずれの時点でも有意な眼圧下降が確認された.PF点眼液),1例がビマトプロスト点眼液からの切り替えであった.CLFCへ切り替え後C1,3カ月の眼圧はそれぞれC11.0±2.6CmmHgおよびC11.3C±2.69CmmHgであり,切り替え前のC12.0C±2.2CmmHgと比較し有意に下降した(p<0.05)(図1).検討したC29例の眼表面障害の程度について,切り替え後C1カ月とC3カ月の結膜充血スコアは変動なく両時点ともC0.5C±0.1(0.0.5)であり,切り替え前と有意差はみられなかった.SPKスコアは切り替え後1,3カ月でそれぞれC0.4C±0.6(0.2),0.3C±0.5(0.2)であり,切り替え前と切り替え後C1,3カ月,また切り替え後C1カ月とC3カ月で有意差はみられなかった(表2).33例すべての症例で切り替えC3カ月目以降も点眼継続可能であった.また,切り替え前,切り替え後C1,3カ月における収縮期血圧はそれぞれC119.2C±16.8,114.6C±14.1,116.9C±15.0CmmHg,拡張期血圧はC70.9C±12.1,67.5C±11.3,69.3C±13.7CmmHg,脈拍はC81.1C±17.1,C75.0±12.1,73.1C±10.3/分であった.血圧は収縮期,拡張期ともに切り替え前と切り替え後C1カ月では有意差を認めたが(p<0.05),切り替え前と切り替え後C3カ月では有意差を認めなかった.脈拍は切り替え前に対し,切り替え後C1,3カ月ともに有意差をもって下降した(p<0.05).切り替え後C1カ月とC3カ月の値に有意差はなかった(図2).CIII考察今回の検討の結果,PG製剤単剤からの切り替えC33例中,32例がラタノプロスト点眼液からの切り替えであり,残りのC1例はビマトプロスト点眼液からの切り替え例であった.ラタノプロスト点眼液からの切り替えC32例で検討しても点眼切り替え前後の平均眼圧はほぼ変わりなく,点眼切り替え前,切り替え後1,3カ月の眼圧はそれぞれC12C±2.2CmmHg,C11±2.6CmmHg,11.3C±2.70CmmHgであった.Yamamotoら20201000切り替え前切り替え後切り替え後1カ月3カ月図2収縮期/拡張期血圧と脈拍の推移血圧は収縮期,拡張期ともに切り替え前と切り替え後C1カ月では有意差をもって下降したが,処方時と切り替え後C3カ月では有意差を認めなかった.脈拍は処方時に対し切り替え後C1カ月,3カ月ともに有意差をもって下降した.切り替え後C1カ月とC3カ月の間には有意差を認めなかった.は,CLFCの第CIII相臨床試験において,原発開放隅角緑内障(広義)および高眼圧症の患者C118例を対象にC4週間のラタノプロスト点眼液単剤投与期間の後CCLFCに切り替えを行ったところ,8週間後の朝点眼前眼圧はC20.1CmmHgから17.2CmmHgまでC2.9CmmHg下降したと報告されている4).このうち正常眼圧緑内障患者はC9例含まれておりC8週間で3.7CmmHgの下降を認めたと報告されているが,エントリー基準がC18CmmHg以上に設定されており,筆者らの検討よりベースライン眼圧が高値であり,それゆえに眼圧下降幅も大きかった可能性がある.また,今回の筆者らの検討においてビマトプロスト点眼液からの切り替え例がC1例含まれていた.ビマトプロスト点眼液はラタノプロスト点眼液など従来のCPG製剤と異なり,プロスタマイド受容体に作用することで強力な眼圧下降効果を持つCPG製剤である5).ビマトプロスト点眼液とラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合剤の眼圧下降効果を比較した過去の報告はいくつかあり,その効果を同等とするもの6)やビマトプロスト点眼液より配合剤のほうが優れているとするものもある7).今回のC1例では,ビマトプロスト点眼液からの切り替え前,切り替え後C1,3カ月の眼圧はC14CmmHg,12CmmHg,11CmmHgであり,CLFCへ切り替えたことによりC20%以上の眼圧下降が得られた.PG製剤単剤からCPG/Cb配合剤への変更におけるメリットは,点眼本数,点眼回数を増やさずに治療強化でき,アドヒ120100血圧(mmHg)脈拍(/分)8060アランスの維持もしくは点眼切り替えによるアドヒアランスの向上が期待できる点である.また,配合剤では,点眼同士の間隔が不十分でC1剤目の点眼液がC2剤目にCwashoutされて効果が薄れてしまうという心配もない.これまで,国内で臨床使用可能となっているCPG/Cb配合剤の眼圧下降効果はいずれも,それぞれの併用群と比較して非劣性が示されている8,9)が,一方で配合剤のほうが劣っていたという報告もある10.12).これまでのCPG/Cb配合剤に配合されているCb遮断薬はすべてC1日C2回点眼のチモロールであり,配合剤として1日C1回点眼となるとC1日当たりの投与量が減ってしまう.そのためもともとコンプライアンスが良好である患者においては,併用療法より配合剤治療のほうが眼圧下降効果が劣ってしまう可能性がある.今回使用したCCLFCではC1日C1回点眼のカルテオロールが配合されており,1日C1回の製剤同士を配合した点眼液は世界で初めてである.単剤からの治療強化においても併用療法からの変更においても安定した眼圧下降効果が期待できるとされている.CLFCは配合剤として,眼圧コントロール不十分な正常眼圧緑内障患者の治療強化に有用である可能性が示された.安全性において,まずCPG関連薬単剤からの切り替えによりラタノプロストにCb遮断薬としてカルテオロール塩酸塩の成分が追加されるため角膜障害性の増悪が懸念された.検討したC29例すべての症例で眼表面に関する副作用の悪化を認めず,全対象において切り替えC3カ月目以降も点眼継続可能であった.CLFCは防腐剤としてCBACを含まない製剤である.そのうえ,併用療法に比べ点眼回数減少に伴う防腐剤曝露機会の減少という配合剤のメリットも生かされ,CLFCはドライアイなどの眼表面疾患のある患者の治療強化にも有用と考える.また,カルテオロールは内因性交感神経刺激作用(intrinsicsympathomimeticactivity:ISA)をもつ非選択的Cb遮断薬で,チモロールに比べて循環器系や呼吸機能に及ぼす影響が小さいことが報告されている13).今回,点眼切り替え前,切り替え後の収縮期/拡張期血圧,脈拍を測定しその変動を検討した.血圧は収縮期,拡張期ともに切り替え前と切り替え後C1カ月では有意差をもって低下した.切り替え前と切り替え後C3カ月では有意差を認めなかった.脈拍は切り替え前に対し,切り替え後1,3カ月ともに有意差をもって低下した.切り替え後C1カ月とC3カ月の間には有意差はなかった.Yamamotoらの報告4)でもラタノプロスト点眼液からの切り替え後C2カ月で血圧および脈拍の低下(下降幅:収縮期/拡張期血圧はC1.2/1.1CmmHg,脈拍はC1.8/分)を認めており,筆者らのC1カ月での下降幅(それぞれC4.9/3.4CmmHg,脈拍はC6.3/分)はCYamamotoらの報告より大きい値であった.今回検討した対象においては,これらのことが原因で体調不良をきたし点眼中止に至る症例はなく,最高齢の患者はC90歳であったが安全に使用できた.しかし,今回のようにCPG関連薬単剤からCPG/Cb配合剤への切り替えにおいては,常にCb遮断薬の全身性副作用の可能性を念頭におき,切り替え時には十分な問診を行い,切り替え後にも体調の変化がないかなどの確認が必要と考える.今回の検討における限界としては点眼時刻,各種パラメータ測定時刻,観察シーズンを対象間で統一できていないことがあげられ,季節変動や日内変動が影響している可能性がある.また今回はC3カ月という短期の報告であるため,今後はさらに長期にわたり評価を行っていく必要がある.CIV結論CLFCは正常眼圧緑内障患者の治療強化において有意な眼圧下降が得られる副作用の少ない点眼液であることが確認された.利益相反:木下茂:参天製薬【F】【P】,千寿製薬【F】【P】,大塚製薬【F】【P】,興和【F】【P】外園千恵:参天製薬【F】【P】森和彦:【P】池田陽子:【P】上野盛夫:【P】多田香織:【R】-II大塚製薬文献1)中牟田爽史ら:ラタノプロスト点眼液からラタノプロスト/カルテオロール塩酸塩配合点眼薬への変更.臨眼C73:729-735,C20192)良田浩氣,安樂礼子,石田恭子ほか:カルテオロール塩酸塩/ラタノプロスト配合点眼薬の眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科36:1083-1086,C20193)CrichtonAC,VoldS,WilliamsJMetal:Oclarsurfacetol-erabilityCofCprostaglandinCanalogsCandCprostamidesCinCpatientswithglaucomaorocularhypertension.AdvTherC30:260-270,C20134)YamamotoCT,CIkegamiCT,CIshikawaCYCetal:RandomizedCcontrolled,CphaseC3CtrialsCofCcarteolol/latanoprostC.xedCcombinationinprimaryopen-angleglaucomaorhyperten-sion.AmJOphthalmolC171:35-46,C20165)SharifCNA,CWilliamsCGW,CKellyCR:BimatoprostCandCitsCfreeCacidCareCprostaglandinCFPCreceptorCagonists.CEurJPharmacolC432:211-213,C20016)RossettiL,KarabatsasCH,TopouzisFetal:ComparisonofCtheCe.ectsCofCbimatoprostCandC.xedCcombinationCofClatanoprostCandCtimololConCcircadianCintraocularCpressure.COphthalmologyC114:2244-2251,C20077)FacioAC,ReisAS,VidalKSetal:Acomparisonofbima-toprost0.03%versusthe.xed-combinationoflatanoprost0.005%CandCtimolol0.5%CinCadultCpatientsCwithCelevatedCintraocularpressure:anCeight-week,Crandomaized,Copen-labeltrial.JOculPharmacolTherC25:447-451,C20098)IgarashiR,ToganoT,SakaueYetal:E.ectonintraocu-larpressureofswitchingfromlatanoprostandtravoprostmonotherapytotimolol.xedcombinationsinpatientswithnormal-tensionCglaucoma.CJCOphthalmolC2014:720385,C20149)桑山泰明,DE-111共同試験グループ:0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたオープンラベルによる長期投与試験.あたらしい眼科32:133-143,C201510)DiestelhorstM,LarssonL-I,EuropeanLatanoprostFixedCombinationCStudyGroup:AC12-weekCstudyCcomparingCtheC.xedCcombinationCofClatanoprostCandCtimololCwithCtheCconcomitantCuseCofCtheCindividualCcomponantsCinCpatientsCwithCopenCangleCglaucomaCandCocularChypertension.CBrJOphthalmolC88:199-203,C200411)SchumanJS,KatzGJ,LewisRAetal:E.cacyandsafetyofC.xedCcombinationCofCtravoprost0.004%/timolol0.5%CophthalmicCsolutionConceCdailyCforCopen-angleCglaucomaCandocularhypertension.AmJOphthalmolC140:242-250,C200512)WebersCA,BeckersHJ,ZeegersMPetal:TheintraocuC-larpressure-loweringe.ectofprostaglandinanalogscom-binedwithtopicalb-blockertherapy:asystematicreviewandmeta-analysis.OphthalmologyC117:2067-2074,C201013)NetlandPA,WeissHS,StewartWCetal:Cardiovasculare.ectsoftopicalcarteololhydrochlorideandtimololmale-ateinpatientswithocularhypertensionandprimaryopen-angleglaucoma.AmJOphthalmolC123:465-477,C1997***

カルテオロール塩酸塩2%/ラタノプロスト0.005%配合 点眼液(OPC-1085EL点眼液)の薬物動態と安全性

2016年9月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科33(9):1369?1375,2016cカルテオロール塩酸塩2%/ラタノプロスト0.005%配合点眼液(OPC-1085EL点眼液)の薬物動態と安全性山本哲也*1小山紀之*2佐藤明香*2二宮美千代*3石川裕二*3菊地覚*4*1岐阜大学大学院医学系研究科眼科学*2大塚製薬株式会社徳島研究所*3大塚製薬株式会社新薬開発本部*4大塚製薬株式会社メディカル・アフェアーズ部PharmacokineticsandSafetyofCarteololHydrochloride2%/Latanoprost0.005%CombinationOphthalmicSolution(OPC-1085ELOphthalmicSolution)TetsuyaYamamoto1),NoriyukiKoyama2),AsukaSato2),MichiyoNinomiya3),YujiIshikawa3)andSatoruKikuchi4)1)DepartmentofOphthalmology,GifuUniversityGraduateSchoolofMedicine,2)TokushimaResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,3)DepartmentofClinicalDevelopment,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,4)DepartmentofMedicalAffairs,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.カルテオロール塩酸塩2%とラタノプロスト0.005%を有効成分とするOPC-1085EL点眼液(OPC)の薬物動態および安全性を検討するため,健康成人を対象に,OPC,カルテオロール塩酸塩持続性点眼液2%,ラタノプロスト点眼液0.005%の1日1回,7日間反復点眼による薬物動態試験を実施した.また,有色ウサギを用い,OPC単回点眼後の眼内薬物動態を検討した.OPC点眼後の各有効成分(カルテオロールおよびラタノプロスト遊離酸)のヒト血漿中薬物動態は単剤投与時と明確な違いはなく,OPC点眼後の各有効成分のウサギ房水および虹彩・毛様体における曝露は単剤投与時を下回ることはなかった.ヒトにおけるOPCの副作用は結膜充血であり,血圧や脈拍への影響は認められなかった.OPCの各有効成分について,配合化による薬物動態への影響はなく,安全性プロファイルは忍容できるものであった.ToexaminethepharmacokineticsandsafetyofOPC-1085ELcombinationophthalmicsolution(OPC)containingcarteololhydrochloride2%andlatanoprost0.005%asactiveingredients,apharmacokineticstudywasconductedinhealthyadultsinwhomOPC,carteololhydrochloridelong-actingophthalmicsolution2%orlatanoprost0.005%eyedropswasinstilledoncedailyfor7days.Additionally,intraocularpharmacokineticswereinvestigatedinpigmentedrabbitsafterasingleinstillationofOPC.HumanplasmapharmacokineticsofactiveingredientsafterOPCinstillationshowednonoticeabledifferencefromeachofthesingle-agentpharmacokinetics.Theexposureofrabbitaqueoushumorandiris-ciliarybodytoactiveingredientsafterOPCinstillationwasnotlowerthaneachsingle-agentexposure.AdversereactionstoOPCinhumansconsistedonlyofconjunctivalhyperemia.Noeffectonbloodpressureorpulseratewasobserved.OPCformulationdidnotaffectthepharmacokineticsoftheindividualingredients;OPCmanifestedatolerablesafetyprofile.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(9):1369?1375,2016〕Keywords:OPC-1085EL,カルテオロール,ラタノプロスト,配合点眼液,薬物動態.OPC-1085EL,carteolol,latanoprost,combinationophthalmicsolution,pharmacokinetics.はじめに緑内障治療の目的は患者の視機能維持であり,適切な眼圧下降治療が必要である1).現状では第一選択薬として,ぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進するプロスタグランジン(prostaglandin:PG)関連薬や房水産生を抑制するb遮断薬を用い,効果不十分の場合は両者の併用療法を行うことが多い.併用療法は,洗い流し効果を防ぐために十分な間隔をあけて各薬剤を点眼しなければならないなど利便性が悪く,アドヒアランス低下の問題が生じる.また,点眼回数の増加に伴い,点眼液に含有される保存剤への曝露も増加するため,角結膜上皮障害の発症も懸念される2).これらの問題を改善するために,有効成分を組み合わせた配合剤が開発されている.わが国で販売されている配合剤は,いずれも非選択性b遮断薬のチモロールを含有しているため,副作用などでチモロールを使用できない患者は,配合剤による利便性向上の恩恵を受けることはできない.一方,カルテオロールは内因性交感神経刺激様作用(intrinsicsympathomimeticactivity:ISA)を持つ非選択性b遮断薬3)で,チモロールに比べて循環器系や呼吸機能に及ぼす影響4,5),眼刺激性や血中脂質への影響6,7)が小さいことが報告されている.さらにカルテオロールでは,眼底血流増加作用も認められている8).カルテオロールを有効成分とするミケランRLA点眼液1%・2%(大塚製薬株式会社)は,アルギン酸を添加することでカルテオロールの眼圧下降作用を持続化した1日1回点眼製剤であり,単剤ならびに併用療法の使用実績が十分にある9,10).OPC-1085EL点眼液(以下,OPC)は,大塚製薬株式会社が開発したカルテオロール塩酸塩2%とラタノプロスト0.005%を有効成分とする1日1回点眼の配合剤である.カルテオロールの眼圧下降作用の持続化剤としてアルギン酸を含有し,保存剤としてベンザルコニウム塩化物(BAC)を含有しない配合剤である.配合剤の製剤化において,物性の異なる2つの有効成分を同時に溶解し,長期間安定な製剤にすることは容易でなく,添加剤やpHならびに保存剤を工夫する必要があるが,これらは有効成分の薬物動態に影響を及ぼすことが知られている11,12).このため,配合剤の有効性・安全性プロファイルは,併用療法と同等にならない可能性がある.今回,健康成人およびウサギを対象に,OPCの各有効成分について配合化による薬物動態への影響を検討し,有効性および安全性に及ぼす影響を考察した.I健康成人を対象とした臨床薬物動態試験本治験は,2014年4?5月に,医療法人平心会大阪治験病院にて同治験審査委員会の承認(StudyNo:910PC)を得たうえで,治験実施計画書,医薬品の臨床試験の実施の基準および関連法令を遵守し,三上洋治験責任医師のもとで実施した.眼科検査は,眼科医の治験分担医師が実施した.1.対象および方法a.対象治験参加の文書同意が得られ,20歳以上45歳以下で,bodymassindexが18.5以上25.0未満の健康成人男性30例を対象とした.おもな除外基準は,眼疾患の合併がある者,眼圧が22mmHg以上の者,または眼圧が10mmHg未満の者,矯正視力が1.0未満の者,収縮期血圧が140mmHg以上,拡張期血圧が90mmHg以上,または低血圧の臨床症状がみられる者,脈拍数が100回/分以上または40回/分以下の者,心疾患を合併している者または既往歴のある者,スクリーニング検査で標準12誘導心電図に異常がみられる者,過去に心電図異常を指摘されたことがある者,カルテオロール点眼液の禁忌または慎重投与に該当する者,ラタノプロスト点眼液の禁忌または慎重投与に該当する者とした.b.治験薬被験薬としてOPC,対照薬としてカルテオロール塩酸塩持続性点眼液2%(大塚製薬株式会社,以下MLA)およびラタノプロスト点眼液0.005%(ファイザー株式会社,以下LAT)を用いた.c.治験方法本治験は,単施設,実薬対照,無作為化試験として,入院下で実施した.1日目の点眼前に規定検査を実施し,適格性の確認された被験者30例を割付表に従ってOPC,MLA,LATのいずれかの群に1:1:1の割合で無作為に割り付けた.割付表は,治験依頼者である大塚製薬株式会社がSAS(SASInstituteInc.)を用いて作成した.治験薬は,両眼に1回1滴,1日1回朝に,1日目から7日間反復点眼した.薬物濃度測定のため,投与期間中にヘパリンナトリウム処理したシリンジで採血し,遠心分離して血漿を得た.8日目の検査終了後,被験者を退院させた.治験薬投与開始2週間前から8日目の検査終了時まで,治験薬以外の薬剤の使用は禁止した.眼科検査を実施する治験分担医師に対しては盲検とした.治験実施期間における安全性の評価項目は,有害事象,身体所見,眼科的自覚症状,体温,血圧,脈拍数,標準12誘導心電図,視力検査,眼瞼・細隙灯顕微鏡検査,眼底検査,臨床検査および眼圧測定とした.d.血漿中薬物濃度の測定血漿中カルテオロールおよびラタノプロストの活性本体であるラタノプロスト遊離酸の濃度測定は,株式会社住化分析センターにてバリデートされた高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(LC-MS/MS)を用いた内部標準法により行った.カルテオロールおよび内標準物質(d5体)は,有機溶媒で血漿より液-液抽出し,10mmol/L酢酸アンモニウム溶液/0.2%ギ酸:メタノール/0.2%ギ酸(85:15,v/v)の移動相およびShim-packXR-ODSカラム(株式会社島津製作所)により分離させた後,MS/MSに導入し,エレクトロスプレーイオン化(ESI)法により生成したカルテオロールおよび内標準物質それぞれのフラグメントイオン(m/z293→m/z202およびm/z298→m/z207)をMRMポジティブイオンモードにて分析した.LC-MS/MS分析機器はAPI4000(ABSciexPte.Ltd.)を使用した.ラタノプロスト遊離酸および内標準物質(d4体)は,OasisMAX(WatersCorp.)で血漿より固相抽出し,0.1%ギ酸/水およびメタノールの2つの移動相によるステップワイズグラジエントおよびXSelectCSHFluoro-Phenyl(WatersCorp.)とShim-packXR-ODSII(株式会社島津製作所)との連結カラムを用い分離させた後,メタノール/40%メチルアミン溶液(100:0.1,v/v)と混合させMS/MSに導入し,ESI法により生成したラタノプロスト遊離酸および内標準物質それぞれのフラグメントイオン(m/z422.3→m/z337.3およびm/z426.4→m/z341.0)をMRMポジティブイオンモードにて分析した.LC-MS/MS分析機器はAPI5000(ABSciexPte.Ltd.)を使用した.カルテオロールおよびラタノプロスト遊離酸の定量下限は,それぞれ0.02ng/mlおよび10pg/mlであった.e.解析方法薬物動態解析対象は,血漿中薬物濃度が測定された被験者とした.カルテオロールおよびラタノプロスト遊離酸の血漿中濃度および薬物動態パラメータとしてCmax(最高血漿中濃度),AUC(血漿中濃度-時間曲線下面積),tmax(最高血漿中濃度到達時間),t1/2,z(最終相の血漿中消失半減期)の記述統計量を算出した.薬物動態パラメータは,薬物動態解析ソフトウェアPhoenixWinNonlinEnterprise6.3(PharsightCorp)を用いたノンコンパートメント解析により,被験者ごとに求めた.安全性解析対象は,治験薬の点眼を1回以上受けたすべての被験者とした.有害事象の発現例数,発現割合および発現件数を求めた.バイタルサインについては,各時点における記述統計量を求めた.その他の安全性評価項目については,治験期間を通しての数値の変動や異常の有無を検討した.安全性の解析には,解析ソフトSAS9.2(SASInstituteInc.)を用いた.2.結果a.被験者の内訳同意取得例54例のうち,30例が無作為割付された.治験薬投与開始後の中止例はなかった.被験者背景(年齢,身長,体重など)は各群同様であった.b.薬物動態7日目のOPC群およびMLA群の血漿中カルテオロール濃度は,点眼後15?30分にピークに達した後,減少した.OPC群の血漿中カルテオロール濃度の平均値は,MLA群に比べてやや低く推移し(図1a),カルテオロールのCmaxおよびAUC24hは,MLA群に比べてOPC群でやや低値を示した(表1a)が,明確な違いはみられなかった.血漿中ラタノプロスト遊離酸濃度は,OPC群,LAT群ともに,ほぼ同様の値で推移し,点眼後10分にピークに達した後,減少した(図1b).両群とも,ラタノプロスト遊離酸は,7日目の最終点眼後24時間時点では,血漿中に検出されなかった.薬物動態パラメータは両群で違いはなかった(表1b).なお,1日目および7日目のすべての採血時期を通じて,血漿中ラタノプロスト遊離酸濃度が定量下限未満の被験者が,両群で各1例認められた.c.安全性副作用の発現例数および件数は,OPC群で6例10件,MLA群で4例4件,LAT群で8例15件であった.3群とも結膜充血がもっとも多かった(発現例数はそれぞれ6例,3例および8例).LAT群では角膜障害が3例に認められた.いずれも軽度であり,無処置で回復した.脈拍数,収縮期血圧,拡張期血圧の推移は,3群とも試験期間を通じて大きな変動は認められず(図2),関連する有害事象の報告もなかった.臨床検査,心電図検査,視力検査および眼底検査に関して,臨床的に問題となる変化または異常所見はいずれの群でも認められなかった.II有色ウサギを用いた非臨床薬物動態試験本試験では,「大塚製薬株式会社動物実験に関する指針」を遵守した.1.材料および方法a.投与および検体の採取・調製・測定15?20週齢の雄性有色ウサギ(Kbl:Dutch,北山ラベス株式会社)を用い,両眼にOPC,MLAまたはLATを25μL/眼単回点眼した.ウサギ(各サンプリングポイントにつき2羽,6時間後のみ3羽)は,点眼0.5,1,2,4および6時間後に過麻酔により安楽死させ,両眼の房水,結膜,虹彩・毛様体および角膜を採取した.採取した房水はメタノール/生理食塩水/ギ酸混合液(50:50:1)で希釈した.結膜,虹彩・毛様体および角膜は,メタノール/生理食塩水/ギ酸混合液(50:50:1)を添加後,ホモジナイズした.各試料はアセトニトリルで除蛋白し,遠心上清をLC-MS/MS法で分析した(詳細はヒトの方法に準じた).カルテオロールの定量下限は,房水10ng/ml,その他の組織40ng/g,ラタノプロスト遊離酸の定量下限は,房水1ng/ml,その他の組織4ng/gであった.b.薬物動態解析薬物動態パラメータは,PhoenixWinNonlinver6.3(ノンコンパートメントモデル,PharsightCorp)を用いて算出した.2.結果OPC群の房水および虹彩・毛様体中のカルテオロール濃度は,点眼後1?2時間後にCmaxに達し,その後減少した(図3).カルテオロールのCmaxおよびAUCtは,MLA群と比較して約2倍高く(表2a),虹彩・毛様体ではtmaxがMLA群よりも早かった(図3).OPC群の房水および虹彩・毛様体中のラタノプロスト遊離酸濃度は,点眼後0.5?1時間後にCmaxに達し,その後減少した(図4).ラタノプロスト遊離酸のCmaxおよびAUCtは,OPC群とLAT群で明確な差は認められなかった(表2b).なお,角膜および結膜内のカルテオロールおよびラタノプロスト遊離酸は,OPC群と各単剤群で同様の濃度推移であった(表2a,b).III考按点眼液に含まれる有効成分の薬物動態は有効性と安全性に密接に関与するため,その評価は重要である.また,点眼液中には添加剤やpHなど,薬物動態に影響を与える因子が種々存在するため,製剤として総合的に薬物動態を評価することが有用である.本研究では健康成人を対象に,OPC点眼後のカルテオロールとラタノプロストの薬物動態を検討し,配合化の影響を考察した.OPC点眼後のカルテオロールとラタノプロスト遊離酸のヒト血漿中薬物動態は,MLAおよびLAT点眼時と比較して明確な差は認められなかった.カルテオロールはb遮断薬であるため,血漿中薬物動態は徐脈などの全身性の副作用の発現に影響を与える因子となりうるが,OPC点眼後のカルテオロールの血漿中濃度はMLA群を上回ることはなかった.実際,OPC点眼後の脈拍および血圧は,MLA群やLAT群と同様で変化はなく,配合化による全身性の安全性に及ぼす影響は少ないと考えられた.PG関連薬のラタノプロストは,結膜充血などの眼局所に特徴的な副作用をもつ.眼内のラタノプロストの薬物動態はOPCの眼局所の副作用プロファイルに影響するが,ウサギにおいてOPC点眼後のラタノプロスト遊離酸の眼内の薬物動態はLAT群と同様であった.OPCにはカルテオロールの眼圧下降作用の持続化剤としてアルギン酸が含まれており,そのおもな機序は負イオンであるアルギン酸と正イオンであるカルテオロールのイオン的相互作用である13).このため,ヒトにおいてもアルギン酸は(正イオンでない)ラタノプロストおよびその遊離酸の薬物動態に影響を与える可能性は低いと考えられる.実際,OPC群でも結膜充血は発現したが,その発現割合はLAT群に比べて増加することはなかった.これらをあわせて考えると,OPCの眼局所の副作用プロファイルはLATと同様であると推察された.一方,OPC点眼後のカルテオロールのウサギ眼内移行はMLA群と比べて高い傾向がみられた.この原因は未解明であるが,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)がカルテオロールの角膜透過性を亢進させる報告14)があり,OPCの添加剤として含まれるEDTAナトリウムがカルテオロールの角膜透過性を高めた可能性も考えられる.しかし,カルテオロールは眼局所に特徴的な副作用はなく,ヒトにおいてOPC点眼後の副作用はMLA群に比べて増加しておらず,安全性への影響は小さいと推察された.有効成分の眼内移行は有効性に影響を与えるが,OPC点眼後,カルテオロールおよびラタノプロストとも,それぞれMLAおよびLAT点眼時と比較して曝露量を下回ることはなかったことから,両有効成分の眼圧下降作用が減弱することなく,OPCの有効性が発揮されると考察された.今回の対象は健康成人であるため,有効性の評価はできなかったが,原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたOPCの第III相試験(AmJOphthalmol掲載準備中)で,MLAとLATの併用療法と同程度の眼圧下降作用が確認されており(AmJOphthalmol掲載準備中),これを裏付ける結果と考えられた.また,両単剤に保存剤として含まれるBACは幅広い抗菌スペクトルを有し,強力な抗菌活性を示す一方で,細胞障害性を有する.OPCはBACを含まないことから,単剤あるいは併用療法に比べてさらなる角結膜上皮の安全性の向上が期待される.以上のように,OPCの各有効成分について配合化による薬物動態への影響はみられず,副作用は軽度の充血のみで,安全性は忍容できるものであった.OPCは多剤併用療法を必要とする患者の利便性やアドヒアランスの向上に貢献できる配合剤であり,チモロールを含有した配合剤のみが利用可能な現状を変え,配合剤治療の新たな有用な選択肢となることが期待される.利益相反:本臨床試験は大塚製薬株式会社の資金提供により実施された.非臨床試験は大塚製薬株式会社により実施された.筆者の小山紀之,佐藤明香,二宮美千代,石川裕二,菊地覚は大塚製薬株式会社の社員である.筆者の山本哲也は医学専門家である.謝辞:本稿の作成にあたり,学術的助言をいただいた大塚製薬株式会社メディカル・アフェアーズ部中島康治氏,大塚製薬株式会社新薬開発本部中道典宏氏,松木一浩氏,藤原智子氏に御礼申し上げます.文献1)緑内障診療ガイドライン(第3版).日眼会誌116:3-46,20122)BaudouinC:Detrimentaleffectofpreservativesineyedrops:implicationsforthetreatmentofglaucoma.ActaOphthalmol86:716-726,20083)ZimmermanTJ:Topicalophthalmicbetablockers:acomparativereview.JOculPharmacol9:373-384,19934)KitazawaY:Multicenterdouble-blindcomparisonofcarteololandtimololinprimaryopen-angleglaucomaandocularhypertension.AdvTher10:95-131,19935)佐野靖之,村上新也,工藤宏一郎ほか:気管支喘息患者に及ぼすb-遮断点眼薬の影響─CarteololとTimololとの比較─.現代医療16:1259-1263,19846)ScovilleB,MuellerB,WhiteBGetal:Adouble-maskedcomparisonofcarteololandtimololinocularhypertension.AmJOphthalmol105:150-154,19887)YamamotoT,KitazawaY,NomaAetal:Theeffectsoftheb-adrenergic-blockingagents,timololandcarteolol,onplasmalipidsandlipoproteinsinJapaneseglaucomapatients.JGlaucoma5:252-257,19968)TamakiY,AraieM,TomitaKetal:Effectoftopicalbeta-blockersontissuebloodflowinthehumanopticnervehead.CurrEyeRes16:1102-1110,19979)井上賢治,塩川美菜子,若倉雅登ほか:持続型カルテオロール点眼薬のラタノプロスト点眼薬への追加効果.眼臨紀3:14-17,201010)内田英哉,鵜木一彦,山林茂樹ほか:カルテオロール塩酸塩持続性点眼液とラタノプロスト点眼液の併用療法とラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液の眼圧下降効果および安全性の比較.あたらしい眼科32:425-428,201511)NakamuraT,YamadaM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ドルゾラミド・チモロール配合点眼液とブリンゾラミド・チモロール配合点眼液の切り替え効果

2015年6月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科32(6):883.888,2015cドルゾラミド・チモロール配合点眼液とブリンゾラミド・チモロール配合点眼液の切り替え効果永山幹夫*1永山順子*1本池庸一*1馬場哲也*2*1永山眼科クリニック*2白井病院EffectsofSwitchingofBrinzolamide/TimololFixedCombinationsversusDorzolamide/TimololFixedCombinationsMikioNagayama1),JunkoNagayama1),YoichiMotoike1)andTetsuyaBaba2)1)NagayamaEyeClinic,2)ShiraiEyeHospital目的:ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬(以下,コソプト)をブリンゾラミド/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬(以下,アゾルガ)に変更した際の眼圧変化と患者評価について検討する.対象および方法:コソプト点眼を2カ月以上継続している緑内障および高眼圧症患者48例48眼を対象とした.アゾルガに切り替え2カ月後,再度コソプトに切り替え2カ月経過をみた.切り替え後2週間の時点で患者アンケートを行い,点眼による刺激感,異物感,充血の自覚スコア,およびどちらがより好ましいかとその理由を調査した.結果:眼圧はベースライン15.8±2.8mmHg,アゾルガ切り替え2カ月後15.8±2.9mmHg,コソプト再開2カ月後15.7±3.3mmHgで,すべての時点で差はなかった.自覚スコアの平均値はアゾルガが刺激感0.15,異物感0.30,充血0.20,コソプトではそれぞれ0.75,0.10,0.25であり,コソプトの刺激感が有意に高かった(p<0.01).「どちらがより好ましいか」に対する回答はアゾルガ切り替え時点では「アゾルガがよい」が14例29.1%,「コソプトがよい」が13例27.1%,「どちらでもよい」が21例43.8%であったのに対し,コソプト再開時点(アゾルガ切り替え2カ月後)ではそれぞれ5例10.4%,28例58.3%,15例31.3%で,おもに霧視・粘稠感がない点,点眼操作がしやすい点から「コソプトがよい」とするものが有意に増加した(p<0.01).結論:アゾルガとコソプトの眼圧下降効果は同等であった.コソプトはアゾルガより刺激感が強く,アゾルガの使用感に対する不満は点眼期間が長くなると強くなった.Purpose:Toexaminethechangesinintraocularpressure(IOP)andpatientself-assessmentaftertheswitchfromdorzolamide/timololfixedcombination(DTFC)tobrinzolamide/timololfixedcombination(BTFC).SubjectsandMethods:Thisstudyinvolved48eyesof48patientswithglaucomatouseyesandocularhypertensionwhocontinuouslyunderwentDTFCtreatmentfor2monthsormore.TheirtreatmentwasthenswitchedfromDTFCtoBTFC.AfterBTFCwasinstilledfor2months,itwasswitchedagaintoDTFC,andthepatientswerethenfollowedupfor2months.Twoweeksaftereachswitch,thepatientswereaskedtocompleteaquestionnairetoobtainsubjectivescoresforirritation,foreignbodysensation,andhyperemiapostinstillation,aswellastoanswerthequestion“Whicheyedropwasmorepreferable?”andexplaintheirreasonsforthepreference.Results:MeanIOPwas15.8±2.8mmHgatbaseline,15.8±2.9mmHgat2monthsafterswitchingtoBTFC,and15.7±3.3mmHgat2monthsafterresuminginstillationofDTFC;nodifferencewasobservedatallmeasurementtime-points.ThemeansubjectivescoreswithBTFCwere0.15forirritation,0.30forforeignbodysensation,and0.20forhyperemia,whereasthosewithDTFCwere0.75,0.10,and0.25,respectively.ThescoreforirritationpostinstillationofDTFCwassignificantlyhigherthanthatofBTFC(p<0.01).Asfortheresponsestothequestion“Whicheyedropismorepreferable?”,postswitchingtoBTFC,14patients(29.1%)preferredBTFC,13patients(27.1%)preferredDTFC,and21patients(43.8%)reportednopreferencebetweenthetwoeyedrops.AfterresuminginstillationofDTFC(at2-monthspostswitchingtoBTFC),5patients(10.4%)preferredBTFC,28patients(58.3%)preferredDTFC,and15patients(31.3%)reportednopreference.ThenumberofpatientswhopreferredDTFCsignificantlyincreasedprimarilyduetoitnotcausingblurredvision/sensationofviscousfluidanditseaseofinstillation(p<0.01).Conclusions:BTFCandDTFCwerecomparableintheireffectonthereductionofIOP.AlthoughDTFC〔別刷請求先〕永山幹夫:〒714-0086岡山県笠岡市五番町3-2永山眼科クリニックReprintrequests:MikioNagayama,M.D.,NagayamaEyeClinic,3-2Goban-cho,Kasaoka-shi,Okayama,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(119)883 causedmoresevereirritationthanBTFC,ittendedtobepreferredforcontinuoususeduetoeaseofinstillation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(6):883.888,2015〕Keywords:緑内障,配合点眼液,ブリンゾラミド,ドルゾラミド,チモロールマレイン酸塩.glaucoma,fixedcombination,brinzolamide,dorzolamide,timolol.はじめに緑内障患者の多くは年余にわたる点眼治療の継続が必要であり,そのうちの少なくとも半数は複数剤の点眼が必要となる1).その場合,それぞれの投与間隔を一定時間空ける必要があること,決められた投与の時間,回数を守ること,多くの点眼瓶を管理しなければならないことなどの問題が生じるため,治療のアドヒアランスが単剤投与に比べ大きく低下することが知られている2).近年相次いで国内での発売が開始された配合点眼薬は,点眼回数を減少させることでアドヒアランス向上とともに,治療効果や患者のQOL(qualityoflife)を改善させることが期待される.プロスタグランジン製剤とb遮断薬の配合点眼液は日本ではすでに2010年に発売され,臨床の場での使用経験が蓄積されてきている.炭酸脱水酵素阻害薬とb遮断薬の配合点眼液については,2010年6月にドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬(コソプトR配合点眼液,以下,コソプト)が発売された.さらに2013年11月にブリンゾラミド/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬(アゾルガR配合懸濁性点眼液,以下,アゾルガ)が新たに発売となった.両薬剤は海外での報告と同様に日本人に対しても,チモロール単剤療法よりも眼圧下降効果が強く3),単剤併用と同様の効果があり4,5),長期治療にも有効である6,7)ことが報告されている.本研究ではこれら2剤の眼圧下降作用,副作用の違いが日本人において実際にどうであるか,臨床の場で比較検証する2M以上2M2Mベースラインコソプトアゾルガコソプト眼圧測定第1回アンケート第2回アンケート図1プロトコール継続しているコソプトはウォッシュアウト期間を設けずに直接アゾルガに切り替えた(ベースライン).その後アゾルガを2カ月継続した後,再度コソプトに切り替え,2カ月間経過観察を行った.眼圧値はベースライン時,アゾルガ切り替え後2カ月,コソプト再開後2カ月で比較した.884あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015目的で,コソプトからアゾルガへ切り替えを行い,眼圧と被検者の点眼時の自覚症状の変化を調査した.なお,いわゆる「切り替え効果」の影響を避けるため,アゾルガ切り替え後に再度コソプトへの切り替えを行い,クロスオーバー試験に近い形で経過をみるデザインとした.I対象および方法対象は当院で加療中の成人開放隅角緑内障および高眼圧症で,コソプトを2カ月以上継続投与されている患者のうち,以下の条件を満たすものである.内眼手術後4カ月以内でないこと,活動性のぶどう膜炎を有さないこと,ステロイド点眼を使用していないこと.b遮断薬および炭酸脱水酵素阻害薬投与の禁忌事項に該当しないこと.重篤な腎障害を有さないこと.妊娠中および授乳中でないこと.被検者には研究の目的,内容について書面を用いて説明を行い,同意を得られたもののみをエントリーした.継続しているコソプトはウォッシュアウト期間を設けずにアゾルガに切り替え,この時点をベースラインとした.なお,切り替えの際には全例に処方前に点眼方法の注意として点眼瓶の底を押さえて滴下すること,点眼後に数分間涙.部を圧迫し眼瞼に付着した点眼液をウエットティッシュで拭くこと,点眼後数分間霧視を生じることを説明した.その後アゾルガを2カ月継続した後,再度コソプトに切り替え,2カ自覚症状について伺います(│をつけて下さい)項目症状の程度白目の部分が赤い(充血)目がゴロゴロして異物感がある点眼時しみる全くない全くない全くない我慢できないくらい赤い最高にゴロゴロしている最高に痛い図2自覚症状のアンケート充血,異物感,刺激感の3点について「全くない」を0,「非常に強い」を4として自覚がどのくらいの数値になるか被検者が直線上にマークを記入する方法でカウントした.(120) 月間経過観察を行った.眼圧はGoldmann圧平式眼圧計で2回連続測定し,その平均値を用いた.眼圧値はベースライン時,アゾルガ切り替え後2カ月,コソプト再開後2カ月で比較した(図1).また,それぞれの薬剤への切り替え後2週間の時点で使用感について患者アンケートを行った(図2).内容は「点眼による刺激感,異物感,充血の自覚のスコア」と「どちらがより好ましいと感じるか」と「好ましいと思った理由」である.自覚スコアについては「まったくない」を0,「非常に強い」を4として被検者の自覚がどのくらいの数値になるか直線上にマークして記入する方法でカウントした.理由については自由回答形式で複数回答可とした.アンケートの被検者への聞き取りはコメディカルが行った.併用眼圧下降薬については調査期間中変更しないこととした.両眼が対象となる条件を満たす症例についてはベースライン時の眼圧値のより高い1眼を選択し,両眼の眼圧値が同一の場合には右眼を選択した.55例55眼が試験にエントリーされ,経過中7例が脱落した.最終的に解析の対象となったのは48例48眼.内訳は男性28例,女性20例,年齢は31.88歳(70.0±12.5歳)であった.脱落した内容はアゾルガ切り替えの際に生じた副作用が原因のものが4例,コソプト再開時の副作用が原因のものが1例,併用薬のアレルギーによるものが2例であった.対象の緑内障病型の内訳は原発開放隅角緑内障36例,正常眼圧緑内障6例,落屑緑内障5例,高眼圧症1例であった.II結果眼圧はベースライン15.8±2.8mmHg,アゾルガ切り替え2カ月後15.8±2.9mmHg,コソプト再開2カ月後15.7±p<0.010.200.300.150.250.100.750.000.100.200.300.400.500.600.700.80充血異物感刺激感■:アゾルガ:コソプトNSNS3.3mmHgですべての時点で差はなかった(対応のあるt検定)(図3).アンケートによる自覚スコアの平均値はアゾルガが刺激感0.15,異物感0.30,充血0.20,コソプトではそれぞれ0.75,0.10,0.25であり,コソプトの刺激感が有意に高かった(Wilcoxonの符号付き順位和検定p<0.01)(図4).「どちらがより好ましいか」に対する回答はアゾルガ切り替え時点では「アゾルガがよい」が14例29.1%,「コソプトがよい」が13例27.1%,「どちらでもよい」が21例43.8%であったのに対し,コソプト再開時点ではそれぞれ5例10.4%,28例58.3%,15例31.3%とコソプトをよいとするものが増加していた(c2検定p<0.01)(図5).その理由としては,アゾルガがよいと答えたものでは「しNS0510152025ベースライン1M(アゾルガ)2M(アゾルガ)1M(コソプト)2M(コソプト)NS眼圧(mmHg)図3眼圧経過ベースライン15.8±2.8mmHg,アゾルガ切り替え2カ月後15.8±2.9mmHg,コソプト再開2カ月後15.7±3.3mmHgですべての時点で差はなかった(対応のあるt検定).どちらでもアゾルガがどちらでもアゾルガが28%30%42%よいよい10%56%34%よいよいコソプトがコソプトがよいよい第1回アンケート第2回アンケート図5アンケート結果1「どちらがより好ましいと感じるか」アゾルガ切り替え時(第1回アンケート)では「アゾルガがよ図4自覚スコアい」が14例,「コソプトがよい」が13例,「どちらでもよい」充血,異物感は両者で差はなかった.コソプトは刺激感がアゾが21例であったのに対し,コソプト再開時(第2回アンケールガよりも有意に高かった(Wilcoxonの符号付き順位和検定ト)ではそれぞれ5例,28例,15例とコソプトをよいとするp<0.01).ものが有意に増加していた(c2検定p<0.01).(121)あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015885 アゾルガがよい理由(n=5)さし心地がよい,14しみない点眼液が出やすい0246人数(名)コソプトがよい理由(n=28)粘稠感がない霧視がない眼瞼が白くならない点眼液が出やすい振る必要がない刺激感がない異物感がない人数(名)図6アンケート結果2「好ましいと思った理由」(第2回アンケート結果,複数回答あり)「アゾルガをよい」としたものの理由では「しみないから」がもっとも多かった.「コソプトをよい」としたものの理由では「粘稠感がないから」「霧視が少ないから」「眼瞼が白くならないから」などアゾルガが懸濁液であることからくると思われる問題を不満としたものが多かった.また,「振らなくてよいから」といった点眼のしやすさについての理由も多くみられた.みないから」がもっとも多かった.一方コソプトがよいと答えたものでは,「粘稠感がないから」が14例,「霧視が少ないから」が8例,「眼瞼が白くならないから」が5例で,アゾルガが懸濁液であることからくる問題を不満としたものが多かった.また,「振らなくてよいから」といった点眼のしやすさについての理由もみられた(図6).III考按海外の研究でアゾルガの眼圧下降はコソプトと比較して非劣性であることがすでに報告されている8,9).しかし,海外で用いられるコソプトに含有されるドルゾラミドの濃度は2%であり,わが国で使用されているコソプトに含有される1%ドルゾラミドと同一ではないため,眼圧下降効果も異なっている可能性がある.今回の試験では,全期間を通じて眼圧の有意な変化はみられず,わが国でもアゾルガはコソプトと同等の眼圧下降効果を有しているものと考えられた.ただし,今回の対象はベースライン時の平均眼圧が15.8mmHgとやや低く,切り替えによる効果の差が出にくい状態であったと思われる.また,今回は点眼から眼圧測定までの時間は症例によって統一されていなかった.効果の差をより詳細にみるためには点眼時間を一定にして眼圧の日内変動を計測するプロトコールでの試験を行うことがより望ましいと思われ886あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015113578140246810121416る.点眼の使用感についての過去の報告ではコソプトは刺激感が問題となるとされている9.11).今回の試験でも,やはりコソプトは点眼時の「刺激感」のスコアがアゾルガよりも有意に高い結果となった.これはコソプトのpHは5.5.5.812)と涙液よりもやや酸性であるが,アゾルガのpHは6.7.7.713)と中性寄りであるためであると思われる.一方,アゾルガは点眼時の霧視が問題になるとされている10,11).今回,直接の評価項目に「霧視」がなかったが,自由回答形式で「コソプトをよい」とした理由に「霧視がないこと」をあげているものが多くみられた.「どちらがより好ましいか」に対する回答については,興味深いことにアゾルガに切り替えた時点でのアンケートで「アゾルガが好ましい」と答えた14例のうち,2カ月点眼を継続した時点でも「アゾルガが好ましい」と答えたものはわずか1例に減少した.それに対して最初のアンケートで「コソプトが好ましい」と答えた13例は2カ月後も全例が同様に「コソプトが好ましい」と答えていた.過去の報告をみるとVoldら14),Rossiら15)はさし心地に対する患者評価をスコア化し比較した結果,アゾルガの満足度が有意に高かったとしている.しかし,これらの報告では評価の対象項目に「霧視」が含まれておらず,アゾルガの副作用に対する評価が十分でない可能性がある.Lanzlら16)はコソプトからアゾルガに切り替えた2,937名のうち「アゾルガがよい」としたものは82%,「コソプトがよい」としたものは8.8%であったと報告している.この報告では切り替え理由の過半数が「コソプトに対するintoleranceのため」であった.今回の検討での対象はコソプト点眼を2カ月以上継続可能であった症例に限定されていた.そのため,もともとコソプトの刺激感に耐えられなかった症例は含まれておらず,Lanzlらの報告とは対象となった症例の背景に違いがあると考えられる.またMundorfら11),およびAnaら17)は2日間両者を比較し,刺激感が少ないことからアゾルガがより好まれたと報告している.筆者らの報告はアゾルガ点眼を2カ月間継続した後に最終調査を行っており,観察期間が異なっている.以上,多くの報告でアゾルガがより好まれるとされており,今回とは食い違う結果となっている.この理由については第1に,上記のようなスタディデザインの違いがあげられる.第2に,過去の報告の対象にはアジア人種はほとんど含まれていないが,点眼に対する感受性は人種間で異なるため,これが結果の差に関与している可能性がある.第3に,アゾルガの点眼瓶はコソプトに比べてやや堅く,アゾルガは点眼液の粘稠性が高いため,滴下に若干力を要する.「コソプトを好ましい」とした理由に点眼操作のしやすさについてのコメントも多くみられたことから,点眼瓶の違いも結果に影響した可能性がある.(122) アゾルガの評価が2カ月間で大きく変化した理由として,点眼開始当初はいわゆる切り替え効果で患者本人のモチベーションが高く,霧視がそれほど問題とされなかった可能性があげられる.コソプトの刺激感は点眼を継続することにより慣れ,あまり問題とならなくなるといわれている18)がアゾルガの粘稠性,霧視の自覚は軽減せず,長期的には逆により意識されるようになる印象を受けた.実際に,切り替えてから4.26週までの期間で調査を行った報告では両者の使用感に差はなかった10)とされている.ブリンゾラミド点眼後の霧視の副作用については閉瞼のうえ涙.部の圧迫を行うこと,ウエットティッシュによる眼瞼の拭き取りを行うことによって軽減されることが報告されている19).今回試験開始の際に全例に書面を渡したうえ,アゾルガ点眼後に生じる霧視と眼瞼が白くなる点について説明を行い,涙.部圧迫,拭き取りについて十分に指導を行った.にもかかわらず2カ月後には多くの症例で霧視に対する不満が生じていた.このなかには指導内容を忘れているケースもあり,自覚症状,不満の聞き取りとともに定期的に点眼指導を行ったほうがよいと思われた.今回の検討で,コソプト点眼を継続している症例に対してアゾルガへの切り替えを行った場合,長期の使用感において不満が生じる可能性があることがわかった.ただし,コソプトの刺激感が気になるという症例にアゾルガが明確に支持されたケースも存在した.自覚症状については個人による感受性の違いが大きく関与するため,各薬剤処方の前に副作用の可能性について説明を十分行い,患者の希望と薬剤の特性を考慮したうえで選択を行うのがよいと思われる.本稿の要旨は第25回日本緑内障学会にて発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)KassMA,HeuerDK,HigginbothamEJetal:Theocularhypertensiontreatmentstudy:arandomizedtrialdeterminesthattopicalocularhypotensivemedicationdelaysorpreventstheonsetofprimaryopen-angleglaucoma.ArchOphthalmol120:701-713,20022)DjafariF,LeskMR,Harasymowycz,PJetal:Determinantsofadherencetoglaucomamedicaltherapyinalong-termpatientpopulation.JGlaucoma18:238-243,20093)YoshikawaK,KozakiJ,MaedaH:Efficacyandsafetyofbrinzolamide/timololfixedcombinationcomparedwithtimololinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:389-399,20144)NagayamaM,NakajimaT,OnoJ:Safetyandefficacyof(123)afixedversusunfixedbrinzolamide/timololcombinationinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:219-228,20145)北澤克明,新家眞,MK-0507A研究会:緑内障および高眼圧症患者を対象とした1%ドルゾラミド塩酸塩/0.5%チモロールマレイン酸塩の配合点眼液(MK-0507A)の第III相二重盲検比較試験.日眼会誌6:495-507,20116)NakajimaM,IwasakiN,AdachiM:PhaseIIIsafetyandefficacystudyoflong-termbrinzolamide/timololfixedcombinationinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:149-156,20147)磯辺美保,小泉一馬,辻智弘ほか:ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩配合剤コソプト配合点眼液の特定使用成績調査.新薬と臨牀1:37-69,20148)SezginAB.,GuneyE,BozkurtKTetal:Thesafetyandefficacyofbrinzolamide1%/timolol0.5%fixedcombinationversusdorzolamide2%/timolol0.5%inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.JOculPharmacolTher29:882-886,20139)ManniG,DenisP,ChewPetal:Thesafetyandefficacyofbrinzolamide1%/timolol0.5%fixedcombinationversusdorzolamide2%/timolol0.5%inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.JGlaucoma4:293-300,200910)GrahamAA,MathewR,SimonL:PatientperspectiveswhenswitchingfromCosoptR(dorzolamide-timolol)toAzargaTM(brinzolamide-timolol)forglaucomarequiringmultipledrugtherapy.ClinOphthalmol6:2059-2062,201211)MundorfTK,RauchmanSH,WilliamsRDetal:ApatientpreferencecomparisonofAzargaTM(brinzolamide/timololfixedcombination)vsCosoptR(dorzolamide/timololfixedcombination)inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol3:623-628,200812)コソプトR配合点眼液インタビューフォーム.201313)アゾルガR配合懸濁性点眼液医薬品インタビューフォーム.201314)VoldSD,EvansRM,StewartRHetal:Aone-weekcomfortstudyofBID-dosedbrinzolamide1%/timolol0.5%ophthalmicsuspensionfixedcombinationcomparedtoBID-doseddorzolamide2%/timolol0.5%ophthalmicsolutioninpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.JOculPharmacolTher24:601-605,200815)RossiGC,TinelliC,PasinettiGMetal:Signsandsymptomsofocularsurfacestatusinglaucomapatientsswitchedfromtimolol0.5%tobrinzolamide1%/timolol0.5%fixedcombination:a6-monthefficacyandtolerability,multicenter,open-labelprospectivestudy.ExpertOpinPharmacother12:685-690,201116)LanzlI,RaberT:Efficacyandtolerabilityofthefixedcombinationofbrinzolamide1%andtimolol0.5%indailypractice.ClinOphthalmol5:291-298,201117)AnaS,JuanS,EmilioRSJetal:Preferenceforafixedcombinationofbrinzolamide/timololversusdorzolamide/timololamongpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol7:357-362,2013あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015887 18)StewartWC,DayDG,StewartJAetal:Short-termocu-19)亀井裕子,山田はづき,吉原文ほか:1%ブリンゾラミドlartolerabilityofdorzolamide2%andbrinzolamide1%点眼液点眼後の霧視に影響する要因.あたらしい眼科7:vsplaceboinprimaryopen-angleglaucomaandocular1007-1012,2012hypertensionsubjects.Eye9:905-910,2004***888あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015(124)

0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたオープンラベルによる長期投与試験

2015年1月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科32(1):133.143,2015c0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたオープンラベルによる長期投与試験桑山泰明*:DE-111共同試験グループ*福島アイクリニックALong-term,Open-labelStudyofFixedCombinationTafluprost0.0015%/Timolol0.5%(DE-111)inPatientswithOpen-angleGlaucomaorOcularHypertensionYasuakiKuwayama1):DE-111CollaborativeTrialGroup1)FukushimaEyeClinic目的:0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の52週間投与時の有効性と安全性を検討する.対象:2剤以下の治療,または無治療で両眼の眼圧13mmHg以上の開放隅角緑内障および高眼圧症患者136例を対象とした.デザイン:オープンラベルによる多施設共同試験とした.方法:導入期は0.0015%タフルプロスト単剤,0.5%チモロール単剤,または両剤の併用に無作為に割り付け,4週間点眼した.治療期はDE-111点眼液を52週間点眼した.結果:治療期間を通じて治療期0週に比べ.1.3±2.2..1.8±2.3mmHgと安定した眼圧下降作用を示し,治療期終了時の眼圧は.1.7±2.4mmHgと有意に低下した.副作用発現率は44.1%であり,その多くは軽度であった.結論:本剤の長期投与における安定した眼圧下降作用および安全性が確認された.Purpose:Theaimofthisstudywastoevaluatetheefficacyandsafetyofthefixedcombinationophthalmicsolutionof0.0015%tafluprost/0.5%timolol(DE-111),administeredfor52weeks.Subjects:Involvedwere136patientswithopen-angleglaucomaandocularhypertension,whoseintraocularpressure(IOP)inbotheyeswasnotlessthan13mmHgundertreatmentwithtwoorfewerdrugs,orwithouttreatment.Design:Open-label,multicenterstudy.Method:Patientswererandomlyassignedtothetafluprost,timololorconcomitantgroup,theinitialdrugbeinginstilledfor4weeks,followedbyDE-111for52weeks,asatreatmentperiod.Result:IOPreductionfrombaselinewasstableintherangeof.1.3±2.2mmHgto.1.8±2.3mmHgthroughoutthetreatmentperiod,andwassignificantlyloweredby.1.7±2.4mmHgattheendoftreatment.Adversedrugreactionswereobservedin44.1%;mostofsuchcasesweremild.Conclusion:DE-111showedastableandexcellentIOP-loweringeffect,andwassafeinlong-termtreatment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(1):133.143,2015〕Keywords:緑内障,配合点眼液,タフルプロスト,チモロール,DE-111.glaucoma,fixedcombination,tafluprost,timolol,DE-111.はじめに緑内障治療の目的は,患者の視機能を維持することであるが,唯一エビデンスが得られている治療法は眼圧を下降させることである.通常,緑内障治療の第一選択となるのは薬物治療であり,まず単剤から治療が開始される.しかし,単剤治療ですべての患者に対して十分な眼圧が達成できない場合もあり,2剤以上の薬剤が併用されている患者は少なくない1,2).併用治療では,薬剤数と点眼回数が増加するため,負担を感じる患者は多い.実際に,2000年に実施された緑内障患者へのアンケート調査3)でも,理想の点眼薬としては「少ない点眼回数でよいこと」が最上位に挙げられている.また,慢性疾患である緑内障は明確な自覚症状のない患者や〔別刷請求先〕桑山泰明:〒553-0003大阪市福島区福島5-6-16福島アイクリニックReprintrequests:YasuakiKuwayama,M.D.,FukushimaEyeClinic,5-6-16Fukushima,Fukushima-ku,Osaka553-0003,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(133)133 高齢者の患者も多く,多剤併用療法が必要な患者において複数の点眼液を規定どおりに点眼し続けることは容易ではない.規定どおりの点眼回数や推奨される点眼間隔が守られていなければ期待した眼圧下降効果が得られず,視野障害の進行を十分抑制できないため,良好なアドヒアランスが得られやすい薬剤を選択することが重要である.配合点眼液は薬剤数および1日の点眼回数を減らし,患者の利便性,アドヒアランスおよびQOL(qualityoflife)を改善しうる.このことから,近年国内では,緑内障の治療薬として配合点眼液が次々と販売され臨床使用されるようになった.『緑内障診療ガイドライン』(第3版)4)では「原則として配合点眼液は多剤併用時のアドヒアランス向上が主目的であり,第一選択薬ではない」と配合点眼液が位置づけされており,「原則的に初回から配合点眼液を使用することなく,単剤併用により副作用の有無や眼圧下降効果を評価することが望ましい」と述べられている.このことから,臨床現場では治療効果が不十分な単剤あるいは多剤併用からの切り替えで配合点眼液が使用されることが原則となっている.また,慢性疾患である緑内障の治療において,視神経障害の進行を阻止しうる眼圧を長期間にわたり維持していくことが重要であることから,長期間の投与で安定した眼圧下降作用および忍容性を有することが配合点眼液にとって必要である.DE-111点眼液は,有効成分としてタフルプロストを0.0015%,チモロール0.5%相当量のチモロールマレイン酸塩を含有する1日1回点眼の配合点眼液であり,両点眼液の併用治療に比べて患者の利便性,アドヒアランスおよびQOLを改善し,緑内障の治療効果を高めることが期待される.今回,開放隅角緑内障または高眼圧症患者を対象に,0.0015%タフルプロスト点眼液,0.5%チモロール点眼液,または0.0015%タフルプロスト点眼液および0.5%チモロール点眼液の併用からDE-111点眼液へ切り替えた際の52週間投与における安全性および眼圧下降効果を,オープンラベルによる多施設共同試験により検討したので,その結果を報告する.なお,本試験はヘルシンキ宣言に基づく原則に従い,薬事法第14条第3項および第80条の2ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」を遵守し実施された.また,試験登録はClinicalTrials.gov(IdentifiedNo.NCT01343082)に行った.I対象および方法1.実施医療機関および試験責任医師本臨床試験は全国11医療機関において各医療機関の試験責任医師のもとに実施された(表1).試験責任医師は,被験者選定および同意の取得,実施計画書に沿った試験の実施,データ収集の役割を担った.試験の実施に先立ち,各医療機関の臨床試験審査委員会において試験の倫理的および科学的妥当性が審査され,承認を得た.表1DE-111共同試験グループ試験実施医療機関一覧(順不同)医療機関名試験責任医師名医療法人大宮はまだ眼科濱田直紀医療法人社団秀光会かわばた眼科川端秀仁医療法人社団平和会葛西眼科医院村瀬洋子医療法人頼母会ごうど眼科神戸孝医療法人栗山会飯田病院眼科浅井裕子医療法人社団富士青陵会なかじま眼科中島徹尾上眼科医院尾上晋吾杉浦眼科杉浦寅男たはら眼科田原恭治医療法人永山眼科クリニック永山幹夫医療法人社団越智眼科越智利行,朝比奈恵美表2おもな選択基準および除外基準1)おもな選択基準(1)20歳以上(2)性別:不問(3)入院・外来の別:外来(4)両眼の眼圧が2剤(配合剤1剤は2剤に数える)以下の治療,または無治療で13mmHg以上,34mmHg以下2)おもな除外基準(1)以下の①.③のいずれかに該当する〔①気管支喘息,またはその既往を有する,②気管支痙攣,重篤な慢性閉塞性肺疾患を有する,③心不全,洞性徐脈,房室ブロック(II,III度),心原性ショックを有する〕(2)角膜屈折矯正手術の既往を有する(3)導入期開始前90日以内に前眼部または内眼の手術〔緑内障手術(レーザー線維柱帯形成術,濾過手術,線維柱帯切開術など)を含む〕の既往を有する(4)試験期間中にコンタクトレンズの装用を必要とする(5)安全性上不適格と判断される合併症または臨床検査値異常を有する(6)試験責任医師・試験分担医師が本試験の対象として不適当と判断した134あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(134) 同意取得0週登録/割付登録0週登録/割付登録導入期4週間治療期52週間タフルプロストDE-111併用(タフルプロスト+チモロール)チモロールオープン無作為化,オープン【導入期】導入期タフルプロスト群:0.0015%タフルプロスト点眼液1回1滴,1日1回(朝),両眼点眼導入期チモロール群:0.5%チモロール点眼液1回1滴,1日2回(朝,夜),両眼点眼導入期併用群:0.0015%タフルプロスト点眼液1回1滴,1日1回(朝),両眼点眼0.5%チモロール点眼液1回1滴,1日2回(朝,夜),両眼点眼【治療期】DE-111:DE-111点眼液1回1滴,1日1回(朝),両眼点眼図1試験デザイン2.目的DE-111点眼液の長期投与(52週間)における眼圧下降効果および安全性を検討することを目的とした.3.対象対象は両眼が原発開放隅角緑内障(広義)(原発開放隅角緑内障または正常眼圧緑内障),落屑緑内障,色素緑内障または高眼圧症と診断され,両眼の眼圧が2剤(配合剤1剤は2剤に数える)以下の治療,または無治療で13mmHg以上,34mmHg以下であり,選択基準を満たし除外基準に抵触しない患者とした.なお,表2におもな選択基準および除外基準を示した.試験開始前に,すべての被験者に対して試験の内容および予想される副作用などを十分に説明し,理解を得たうえで,文書による同意を取得した.4.方法a.試験デザイン・投与方法本試験はオープンラベルによる多施設共同試験として実施した.今回の試験では,臨床の使用状況と同じになるよう,治療期の前に導入期を設けた.被験者から文書による同意取得後,選択基準に適合し,除外基準に抵触しない被験者に導入期点眼液を無作為に割り付けた.導入期点眼液は0.0015%タフルプロスト点眼液(導入期タフルプロスト群),0.5%チモロール点眼液(導入期チモロール群),または0.0015%タフルプロスト点眼液および0.5%チモロール点眼液の併用(導入期併用群)のいずれかとし,導入期開始前の治療状況に関係なく各群1:1:1となるよう無作為に割り付けた.このとき,タフルプロストは1日1回朝両眼に,チモロールは(135)1日2回朝夜両眼に点眼した.なお,前治療薬の影響を消失させ,導入期点眼液の効果が一定となる期間として,導入期を4週間と設定した.治療期0週当日朝は導入期点眼液を点眼せず来院し眼圧を測定したのちに,治療期開始登録を行って,52週間の治療期に移行した.治療期にはDE-111点眼液を1日1回朝両眼に点眼した.試験デザインを図1に示した.なお,点眼はいずれも1回1滴とするよう指導した.b.試験薬剤被験薬であるDE-111点眼液は,1ml中にタフルプロストを0.015mgおよびチモロールを5mg含有する無色澄明の水性点眼液である.なお,導入期点眼液の割付は,試験薬割付責任者が置換ブロック法・封筒法による無作為化(ブロックサイズ3,割付割合1:1:1)により行い,キーコードは全例の治療期開始が確認されるまで封入し試験薬割付責任者が保管した.c.症例数日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)E1ガイドライン「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間」(1995年)を参考として52週点眼例を100例以上とし,中止率を考慮して目標症例数を126例と設定した.5.検査・観察項目試験期間中は検査・観察を表3のとおり行った.あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015135 表3検査・観察スケジュール導入期治療期.4週0週4,8,12,16,20,24週28週32,36,40,44,48週52週/中止時文書同意●被験者背景●点眼遵守状況●●●●●血圧・脈拍数測定●●●●●●細隙灯顕微鏡検査●●●●●●眼圧測定(9.10時)●(午前中)●●●●●隅角検査●視力検査●●●視野検査●●●眼底検査●●●臨床検査(血液・尿・尿中hCG)●●●前眼部写真撮影●有害事象●a.被験者背景性別,生年月日,合併症(眼および眼以外),既往歴などの被験者背景は,試験薬投与開始前に調査確認した.b.試験薬の点眼状況治療期以降の来院ごとに,前回の来院直後からの点眼遵守状況について問診で確認した.c.各種検査・測定血圧・脈拍数測定,細隙灯顕微鏡検査,眼圧測定,隅角検査,視力検査,視野検査,眼底検査,臨床検査(血液・尿)および前眼部写真撮影を表3のスケジュールで実施した.眼圧測定は,導入期開始時,治療期0週,および治療期4週ごとに,または中止時にGoldmann圧平眼圧計にて測定した.眼圧測定時刻は,導入期開始時は午前中,治療期0.52週は朝点眼前の午前9.10時とした.中止時の眼圧測定時刻は規定しなかった.なお,細隙灯顕微鏡検査における角膜フルオレセイン染色スコアは,評価基準0:フルオレセインで染色されない,1:限局的に点状のフルオレセイン染色が認められる,2:限局的に密なまたはびまん性の点状のフルオレセイン染色が認められる,3:びまん性に密な点状のフルオレセイン染色が認められる,とした.d.有害事象試験期間中に発現・悪化したすべての好ましくない,または意図しない疾病,またはその徴候を収集した.6.併用禁止薬および併用禁止療法試験期間を通じて,緑内障または高眼圧症に対する治療136あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015薬,すべてのb遮断薬,副腎皮質ステロイド薬および他の臨床試験薬の投与を禁止した.また,試験期間中の,眼科レーザー手術,コンタクトレンズの装用などを禁止した.7.評価方法a.有効性の評価評価項目は,試験薬投与前後の朝点眼前の眼圧測定時(9.10時)の眼圧変化量とした.b.安全性の評価有害事象,臨床検査,血圧・脈拍数および眼科的検査をもとに安全性を評価した.8.解析方法a.有効性解析対象有効性は,被験薬を少なくとも1回点眼し,治療期の朝点眼前の眼圧測定値が1回でも得られた被験者(有効性解析対象集団)を対象とした.有効性評価眼は,治療期0週(朝点眼前)の眼圧の高いほうの眼(左右が同値の場合は右眼)とした.b.安全性解析対象安全性は,被験薬を少なくとも1回点眼し,安全性に関する何らかの情報が得られている被験者(安全性解析対象集団)を対象とした.c.データの取り扱い規定来院日の許容範囲内に複数の検査値がある場合,検査当日朝の点眼遵守状況がより良好な検査値を採用した.なお,中止の来院時で得られた検査値は,中止時データとして採用した.(136) 文書同意を得た被験者:162例無作為割付された被験者:148例無作為割付されなかった被験者:14例試験開始後に不適格が判明:11例その他:3例導入期タフルプロスト群:51例導入期チモロール群:49例導入期併用群:48例導入期点眼液が投薬された被験者:147例導入期タフルプロスト群:51例導入期チモロール群:48例導入期併用群:48例導入期点眼液未投与例:1例導入期タフルプロスト群:0例導入期チモロール群:1例導入期併用群:0例治療期に組み入れられた被験者:136例導入期中止例:11例導入期タフルプロスト群:48例導入期チモロール群:45例導入期併用群:43例導入期タフルプロスト群:3例導入期チモロール群:3例導入期併用群:5例DE-111点眼液が投薬された被験者136例DE-111点眼液未投与例:0例試験を完了した被検者:110例治療期中止例:26例文書同意を得た被験者:162例無作為割付された被験者:148例無作為割付されなかった被験者:14例試験開始後に不適格が判明:11例その他:3例導入期タフルプロスト群:51例導入期チモロール群:49例導入期併用群:48例導入期点眼液が投薬された被験者:147例導入期タフルプロスト群:51例導入期チモロール群:48例導入期併用群:48例導入期点眼液未投与例:1例導入期タフルプロスト群:0例導入期チモロール群:1例導入期併用群:0例治療期に組み入れられた被験者:136例導入期中止例:11例導入期タフルプロスト群:48例導入期チモロール群:45例導入期併用群:43例導入期タフルプロスト群:3例導入期チモロール群:3例導入期併用群:5例DE-111点眼液が投薬された被験者136例DE-111点眼液未投与例:0例試験を完了した被検者:110例治療期中止例:26例図2被験者の内訳d.解析方法有効性の評価の解析は,治療期0週からの変化量の平均,標準偏差を示し,対応のあるt検定を行った.安全性の解析のうち,有害事象については,発現例数と発現率を集計した.また,臨床検査値については,各検査項目別の異常変動の発現例数と発現率を集計し,連続量データについては,対応のあるt検定を,順序尺度データに関しては符号検定を行った.血圧・脈拍数については対応のあるt検定を行った.眼科的検査(細隙灯顕微鏡検査,視力検査)については符号検定を行った.検定の有意水準は両側5%とし,区間推定の信頼係数は両側95%とした.解析ソフトはSASversion9.2(株式会社SASインスティチュートジャパン)を用いた.なお,解析は参天製薬株式会社が実施した.II結果1.被験者の構成被験者の内訳を図2に示した.文書同意を得た被験者は162例で,導入期点眼液が無作為化割り付けされた被験者は148例,そのうち,導入期点眼液が投薬された症例は147例,導入期で中止となった症例が11例であった.この後,治療期に組入れられた症例は136例,治療期中に26例が治験を中止し,110例が試験を完了した.治療期に組み入れられた136例を有効性解析対象集団および安全性解析対象集団とした.被験者背景を表4に示した.(137)合併症では高血圧症の合併率が最も高くタフルプロスト群39.6%(19/48例),チモロール群57.8%(26/45例),併用群46.5%(20/43例)であった.眼合併症を有していた症例はタフルプロスト群47.9%(23/48例),チモロール群55.6%(25/45例),併用群51.2%(22/43例)であり,最も多かった合併症は白内障であった.各群の合併症の種類および合併率に特徴的な相違は認められなかった.2.有効性導入期.4週の眼圧平均値は17.8mmHg,治療期0週の眼圧平均値は16.7mmHgで有意に下降していた.治療期では,さらに眼圧下降がみられ,その眼圧下降は治療期0週と比較してすべての測定時点において有意であった.各測定時点の眼圧変化量の平均は,.1.3mmHg(p<0.001)..1.8mmHg(p<0.001)で推移しており,52週間眼圧下降効果の減弱はなかった(表5,図3).病型別でみると,治療期終了時での眼圧変化量の平均は,原発開放隅角緑内障(狭義).1.6mmHg(治療期0週:17.2mmHg),正常眼圧緑内障.1.5mmHg(治療期0週:15.2mmHg),高眼圧症.1.9mmHg(治療期0週:17.6mmHg)といずれの病型においても有意な眼圧下降(p<0.001)を示し,病型による差はなかった(表6).導入期点眼液別に比較すると,導入期タフルプロスト群では,導入期.4週から治療期0週に.1.3mmHg(p=0.002)の有意な眼圧下降を示し,DE-111点眼液に切り替えた治療期4週には治療期0週と比較して.1.7mmHg(p<0.001)と,さらに有意な眼圧下降を示した.治療期52週.2.2あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015137 表4治療期に組み入れられた被験者背景項目分類導入期タフルプロスト群導入期チモロール群導入期併用群全体例数484543136病型原発開放隅角緑内障(狭義)17(35.4)16(35.6)15(34.9)48(35.3)正常眼圧緑内障16(33.3)16(35.6)16(37.2)48(35.3)落屑緑内障0(0.0)2(4.4)0(0.0)2(1.5)色素緑内障0(0.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)高眼圧症15(31.3)11(24.4)12(27.9)38(27.9)性別男22(45.8)15(33.3)18(41.9)55(40.4)女26(54.2)30(66.7)25(58.1)81(59.6)年齢65歳未満24(50.0)22(48.9)16(37.2)62(45.6)65歳以上24(50.0)23(51.1)27(62.8)74(54.4)最小.最大28.8225.8337.8525.85平均値±標準偏差62.5±12.763.7±12.166.0±11.064.0±12.0緑内障前治療薬なし9(18.8)5(11.1)6(14.0)20(14.7)あり39(81.3)40(88.9)37(86.0)116(85.3)合併症なし8(16.7)4(8.9)4(9.3)16(11.8)あり40(83.3)41(91.1)39(90.7)120(88.2)導入期の隅角(Shaffer分類)349(18.8)39(81.3)8(17.8)37(82.2)12(27.9)31(72.1)29(21.3)107(78.7)導入期の緑内障性の視野異常なしあり21(43.8)27(56.3)17(37.8)28(62.2)22(51.2)21(48.8)60(44.1)76(55.9)導入期の緑内障性の眼底異常なしあり15(31.3)33(68.8)11(24.4)34(75.6)13(30.2)30(69.8)39(28.7)97(71.3)導入期開始時の眼圧最小.最大14.0.30.013.0.23.013.0.27.013.0.30.0平均値±標準偏差18.3±3.417.2±2.917.8±3.317.8±3.2導入期終了時の眼圧最小.最大13.0.24.511.0.24.010.0.24.010.0.24.5平均値±標準偏差17.0±2.417.1±2.715.8±3.016.7±2.7例数(%).mmHg(p<0.001)と眼圧下降効果は維持された.導入期チモロール群では,導入期.4週から治療期0週に.0.1mmHgの眼圧下降を示した.DE-111点眼液に切り替えた治療期4週には治療期0週と比較して.2.1mmHg(p<0.001)と,さらに有意な眼圧下降を示し,治療期52週.2.7mmHg(p<0.001)とその効果は維持された.導入期併用群では,導入期.4週から治療期0週に.2.0mmHg(p<0.001)の有意な眼圧下降を示した.DE-111点眼液に切り替えた後の治療期4週には治療期0週と比較して.0.4mmHgと有意な変動はなく,治療期52週も.0.4mmHgとその効果は維持された(図4,5).3.安全性a.有害事象および副作用治療期全体の有害事象の発現率は72.8%(99/136例)で138あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015あり,そのうち,DE-111点眼液との因果関係が否定できない有害事象(副作用)は44.1%(60/136例)であった(表7).DE-111点眼液の副作用により試験中止に至った被験者は,全身性皮疹を発現した1例および頭痛を発現した1例であり,いずれも投与中止後に回復した.また,重篤な副作用の発現はなかった.おもな副作用は,睫毛の成長(24.3%,33/136例),結膜充血(9.6%,13/136例),点状角膜炎(8.1%,11/136例),および眼瞼色素沈着(6.6%,9/136例)であった(表8).副作用の重症度は,中等度と判断された全身性皮疹(0.7%,1/136例)を除き,すべて軽度であった.また,全身性皮疹(0.7%,1/136例),頭痛(0.7%,1/136例)および多毛症(2.2%,3/136例)を除き,すべて眼障害であった.副作用の初回発現時期は,治療期開始後0.29日:17例,30.59(138) 日:11例,60.89日:8例,90.119日:7例,120.149日:4例,その後329日まで30日ごとに1.3例で推移し,330日以降に新たな発現は認められず,投与期間が長くなっても発現頻度が高まることはなかった.また,おもな副作用別に発現時期をみると,睫毛の成長は30.59日:6例,60.89日:4例,90.119日:5例に,眼瞼色素沈着は60.89日:5例に,結膜充血は0.29日:6例に発現頻度が高かった.点状角膜炎は治験期間中30日ごとに0.2例で推移した.年齢別の有害事象発現率は,65歳未満で72.6%(45/62例),65歳以上で73.0%(54/74例)であった.そのうち副作用は,65歳未満で45.2%(28/62例),65歳以上で43.2%(32/74例)であり,65歳未満と65歳以上に差異は認められなかった.個別事象では65歳未満,65歳以上ともに睫毛の成長(65歳未満:27.4%,17/62例,65歳以上:21.6%,16/74例)が最も多く認められ,眼瞼色素沈着(65歳未満:6.5%,4/62例,65歳以上:6.8%,5/74例)も共通して認められた.その他,結膜充血(65歳未満:14.5%,9/62例,65歳以上:5.4%,4/74例)は65歳未満で多く,点状角膜炎(65歳未満:3.2%,2/62例,65歳以上:12.2%,9/74例)は65歳以上で多い傾向であったが,いずれの事象もすべて軽度であった.導入期点眼液群別にみると,導入期とDE-111点眼液に切り替えた際の治療期4週時点までの副作用発現率を比較すると,導入期タフルプロスト群で導入期6.3%(3/48例)治療期4週8.3%(4/48例),導入期チモロール群で導入期(,)2.2%(1/45例),治療期4週20.0%(9/45例),導入期併用群で導入期7.0%(3/43例),治療期4週14.0%(6/43例)2422201816141210-4048121620週週週週週週週眼圧(mmHg)であり(表9),導入期チモロール群で治療期4週時点までの副作用発現率が最も高かった.b.臨床検査臨床検査の各項目平均値では,治療期28週に赤血球数,ヘモグロビン量,ヘマトクリット値,血小板数,Al-P,アルブミン,総コレステロール,K,Clが,治療期52週に尿酸,Al-P,アルブミン,K,Clが投与前に比し有意な変動を示したが,これらの変動に関連する副作用は認められなか表5眼圧実測値および眼圧変化値の推移DE-111群時期実測値(mmHg)変化値(mmHg)p値.4週17.8±3.2(136)0週16.7±2.7(136).1.1±2.8*(136)<0.0014週15.2±3.0(136).1.4±2.3(136)<0.0018週15.2±2.9(131).1.5±2.2(131)<0.00112週15.2±3.0(126).1.4±2.1(126)<0.00116週15.1±2.9(120).1.4±2.3(120)<0.00120週15.0±2.5(118).1.4±2.2(118)<0.00124週14.9±2.7(116).1.5±2.2(116)<0.00128週15.1±2.9(115).1.3±2.2(115)<0.00132週15.1±2.6(114).1.3±2.2(114)<0.00136週15.0±2.8(113).1.5±2.3(113)<0.00140週14.7±2.7(113).1.7±2.2(113)<0.00144週14.8±2.6(112).1.7±2.3(112)<0.00148週14.7±2.8(110).1.8±2.3(110)<0.00152週14.7±2.5(111).1.8±2.2(111)<0.001治療期終了時15.0±2.8(136).1.7±2.4(136)<0.001平均値±標準偏差,()内は例数,p値:対応のあるt検定,*:0週は.4週からの変化値.**************************##:DE-1112428323640444852週週週週週週週週図3眼圧実測値の推移##p<0.001(対応のあるt検定,.4週との比較).**p<0.001(対応のあるt検定,0週との比較).平均値±標準偏差.(139)あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015139 表6眼圧実測値および0週からの変化値の推移(病型別)原発開放隅角緑内障(狭義)正常眼圧緑内障高眼圧症落屑緑内障時期実測値(mmHg)変化値(mmHg)p値実測値(mmHg)変化値(mmHg)p値実測値(mmHg)変化値(mmHg)p値実測値(mmHg)変化値(mmHg).4週17.6±3.1(48)15.8±1.8(48)20.4±3.0(38)20.0±1.4(2)0週17.2±2.7(48)15.2±2.0(48)17.6±2.9(38)19.5±0.7(2)4週16.1±3.1(48).1.1±2.4(48)0.00313.6±2.2(48).1.7±2.2(48)<0.00116.1±3.1(38).1.4±2.3(38)<0.00116.0±0.0(2).3.5(2)8週16.1±2.9(46).1.3±2.3(46)0.00113.7±2.2(46).1.5±2.1(46)<0.00116.0±2.9(37).1.6±2.3(37)<0.00116.5±2.1(2).3.0(2)12週15.9±3.0(44).1.4±2.2(44)<0.00113.8±2.1(46).1.4±2.0(46)<0.00116.2±3.5(34).1.0±2.2(34)0.00915.3±2.5(2).4.3(2)16週15.8±2.9(40).1.4±2.5(40)0.00113.8±2.2(46).1.4±2.2(46)<0.00115.8±3.3(32).1.2±2.1(32)0.00216.5±0.7(2).3.0(2)20週15.8±2.9(40).1.3±2.4(40)0.00114.0±2.1(46).1.2±2.2(46)<0.00115.4±2.0(30).1.5±2.1(30)<0.00116.8±0.4(2).2.8(2)24週15.8±2.8(40).1.4±2.3(40)0.00113.9±2.5(44).1.4±2.2(44)<0.00115.4±2.6(30).1.6±2.0(30)<0.00115.0±1.4(2).4.5(2)28週16.0±3.0(39).1.2±2.5(39)0.00513.7±2.6(44).1.6±2.3(44)<0.00115.8±2.5(30).1.1±2.0(30)0.00417.3±1.8(2).2.3(2)32週15.9±2.8(39).1.2±2.7(39)0.00713.8±2.3(43).1.5±2.2(43)<0.00115.7±2.2(30).1.2±1.6(30)<0.00117.5±0.7(2).2.0(2)36週15.9±2.6(38).1.3±1.9(38)<0.00113.5±2.6(43).1.8±2.5(43)<0.00115.8±2.8(30).1.1±2.4(30)0.01415.5±0.0(2).4.0(2)40週15.7±2.3(38).1.6±2.1(38)<0.00113.5±2.5(43).1.8±2.5(43)<0.00115.1±2.6(30).1.8±2.2(30)<0.00118.0±0.0(2).1.5(2)44週15.8±2.3(37).1.5±2.1(37)<0.00113.4±2.3(43).1.9±2.5(43)<0.00115.1±2.4(30).1.8±2.3(30)<0.00119.8±3.2(2)0.3(2)48週15.6±2.4(36).1.7±2.2(36)<0.00113.3±2.7(42).2.1±2.6(42)<0.00115.5±2.5(30).1.5±2.0(30)<0.00118.8±2.5(2).0.8(2)52週15.5±2.2(37).1.8±2.3(37)<0.00113.5±2.4(42).1.9±2.4(42)<0.00115.1±2.3(30).1.9±2.0(30)<0.00117.5±0.7(2).2.0(2)治療期終了時15.7±2.5(48).1.6±2.3(48)<0.00113.7±2.4(48).1.5±2.6(48)<0.00115.6±3.0(38).1.9±2.2(38)<0.00117.5±0.7(2).2.0(2)平均値±標準偏差,()内は例数,p値:対応のあるt検定.眼圧(mmHg)2422201816141210-40481216202428323640444852****************************************************###:導入期タフルプロスト群:導入期チモロール群:導入期併用群週週週週週週週週週週週週週週週図4導入期薬剤別の眼圧実測値の推移#p<0.01,##p<0.001(対応のあるt検定,.4週との比較).**p<0.001(対応のあるt検定,0週との比較).平均値±標準偏差.140あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(140) 眼圧(mmHg)76543210-1-2-3-4-5-6-70481216202428323640444852:導入期タフルプロスト群********************************:導入期チモロール群:導入期併用群********************週週週週週週週週週週週週週週図50週からの眼圧変化量の推移**p<0.001(対応のあるt検定,0週との比較).平均値±標準偏差.表7有害事象と副作用の発現例数および発現率安全性解析対象集団例数136導入期有害事象発現例数(%)14(10.3)副作用発現例数(%)7(5.1)治療期有害事象発現例数(%)99(72.8)副作用発現例数(%)60(44.1)表9導入期点眼液別の副作用の発現例数および発現率(導入期と治療期4週までの比較)導入期タフル導入期チモ導入期プロスト群ロール群併用群安全性解析対象集団例数484543導入期(4週間)副作用発現例数(%)3(6.3)1(2.2)3(7.0)治療期4週まで副作用発現例数(%)4(8.3)9(20.0)6(14.0)った.また,薬剤との因果関係が否定できないとされた臨床検査値の異常変動は1.5%(2/136例,項目:白血球数,尿ウロビリノーゲン)に認められたが,点眼を継続しても尿ウロビリノーゲンは試験中に,白血球数は終了後に試験開始時と同程度に回復した.c.血圧・脈拍数血圧の平均値は,収縮期血圧の治療期0週からの有意な上昇が8週(変化量の平均値±標準偏差:2.36±12.27mmHg,p=0.030),20週(2.63±14.17mmHg,p=0.046),28週(3.42±15.05mmHg,p=0.016)に認められた.拡張期血圧の治療期0週からの有意な上昇が8週(変化量の平均値±標表8治療期副作用一覧安全性解析対象集団例数136副作用発現例数(%)60(44.1)眼障害眼瞼色素沈着9(6.6)眼瞼炎1(0.7)結膜沈着物1(0.7)結膜出血2(1.5)アレルギー性結膜炎2(1.5)眼乾燥4(2.9)眼刺激4(2.9)くぼんだ眼1(0.7)涙液分泌低下1(0.7)眼充血1(0.7)点状角膜炎11(8.1)睫毛乱生2(1.5)睫毛の成長33(24.3)眼の異物感2(1.5)結膜充血13(9.6)眼瞼そう痒症1(0.7)眼そう痒症1(0.7)眼障害以外頭痛1(0.7)多毛症3(2.2)全身性皮疹1(0.7)準偏差:2.09±7.78mmHg,p=0.003),12週(1.43±7.61mmHg,p=0.037)に,治療期0週からの有意な下降が48週(.1.80±8.42mmHg,p=0.026),52週(.1.65±8.07mmHg,p=0.035)に認められた.ただし,その変化量は臨床上問題ない程度であった.脈拍数の平均値は,いずれの観察時点においても治療期0週からの有意な上昇を認めたが,その変化量は1.8.4.4拍/(141)あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015141 分と臨床上問題ない程度であった.導入期点眼液群別に検討したところ,収縮期血圧および拡張期血圧は,どの群でも治療期0週に比較して治療期4週時点で有意な変動は認めなかった.脈拍数の平均値は,導入期チモロール群または導入期併用群において治療期0週から治療期4週に有意な上昇を認めたが,その変化量は臨床上問題ない程度であった.なお,以上の血圧,脈拍数の変動に関連する副作用はなかった.d.眼科的検査(細隙灯顕微鏡検査,視力検査,視野検査)細隙灯顕微鏡検査所見の角膜フルオレセイン染色スコアは,治療期0週と比較した有意なスコアの上昇が治療期16週の左眼,20週の右眼,24週の左眼,28週の左眼,40週の左眼,44週の両眼に認められた.その他の項目に有意なスコアの変動は認められなかった.視力検査では,導入期.4週と比較して治療期の28週右眼についてのみ視力低下が25例,変動なしが95例,改善が12例と低下例が有意に多かった.しかし,治療期52週では両眼とも有意な差は認められなかった.また,視力低下を伴う有害事象として,網脈絡膜萎縮が1例(0.7%),後.部混濁が2例(1.5%)に認められたものの,DE-111点眼液との因果関係は否定された.視野検査では,緑内障性視野異常の有無に有意な変動は認められなかった.Humphrey視野計を用いた視野感度の平均偏差値は,導入期.4週と比較した有意な感度低下が治療期28週の両眼に認められたが,治療期52週では認められなかった.Octopus視野計を用いた視野感度の平均欠損値はいずれの測定時点でも有意な変動は認められなかった.また,視野の感度低下を伴う有害事象として,後.部混濁が1例(0.7%)に認められたものの,DE-111点眼液との因果関係は否定された.III考察近年国内では,プロスタグランジン(PG)関連薬とb遮断薬,あるいはb遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬を配合した配合点眼液が次々に発売され,臨床で使用されている.DE-111点眼液もPG関連薬であるタフルプロストとb遮断薬であるチモロールを含有する配合点眼液である.これらの配合点眼液は第一選択薬としてではなく,治療効果が不十分な単剤あるいは多剤併用からの切り替えで使用されることが原則である.このことから,本試験では,単剤あるいは多剤併用から配合点眼液へ切り替えた場合の有効性および安全性を確認するため,導入期としてタフルプロスト,チモロールまたはそれらの併用を4週間投与した後,治療期としてDE-111点眼液に切り替え52週間投与する試験デザインとした.142あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015DE-111は,治療期のすべての測定時点において,治療期0週と比較して眼圧変化量が有意に下降し,その効果は治療期52週まで減弱を認めなかった.また,日本での有病率が高い正常眼圧緑内障5)を含む緑内障病型別において眼圧下降作用に差異は認めず,安定した眼圧下降作用を示すことが確認された.導入期点眼液別にみると,導入期タフルプロスト群と導入期チモロール群では,治療期0週と比較して有意な眼圧下降が治療期4週に得られ,その後52週まで眼圧下降効果の減弱は認めなかった.導入期併用群では,治療期0週と比較して眼圧値に有意な変動はなく,治療期52週まで安定した眼圧推移を示した.このことから,DE-111点眼液は治療強化のために単剤治療から切り替えた場合はさらなる眼圧下降効果が期待でき,利便性やアドヒアランスの改善のために併用治療から切り替えた場合は併用治療時と同程度の眼圧下降効果が期待できる臨床的に有用な配合点眼液と考えられる.安全性については,試験期間を通じて,重篤な副作用はみられなかった.おもな副作用は睫毛の成長(24.3%,33/136例),結膜充血(9.6%,13/136例),点状角膜炎(8.1%,11/136例)および眼瞼色素沈着(6.6%,9/136例)であった.発現時期は,睫毛の成長は投与1.4カ月後に,眼瞼色素沈着は投与2.3カ月後に,結膜充血は投与1カ月後に多く認められ,点状角膜炎は治験期間中を通じて認められた.副作用の多くは眼障害であり,すべて軽度であった.これらは,PG関連薬の副作用として知られていることから6.8),DE-111点眼液の有効成分の一つであるタフルプロストに由来していると考えられた.各導入期点眼液群からDE-111点眼液に切り替えた際の副作用発現率を治療期4週時点までと比較すると,導入期チモロール群からの切り替えで最も高かった.導入期チモロール群からDE-111点眼液に切り替えて発現した副作用の内訳は結膜充血が3件のほか,眼瞼色素沈着,点状角膜炎,睫毛の成長,眼の異物感,眼瞼そう痒症,全身性皮疹が各1件であった.これらの多くはPG関連薬に特徴的な副作用であることから,DE-111点眼液の有効成分の一つであるタフルプロストが要因と考えられた.年齢別の比較では,65歳未満と65歳以上に副作用の発現頻度の差異は認められなかった.個別事象における副作用では結膜充血は65歳未満で,点状角膜炎は65歳以上で多く認められたが,睫毛の成長,眼瞼色素沈着などでは年齢の影響は認めなかった.また,臨床検査値,眼科的検査(細隙灯顕微鏡検査所見,視力および視野),血圧,脈拍数についても,特に安全性上問題となるものは認められなかった.これまで,わが国において発売されているPG関連薬とb遮断薬の配合点眼液としては,ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液(ザラカムR配合点眼液)とトラボ(142) プロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液(デュオトラバR配合点眼液)があり,日本人緑内障患者を対象とした臨床試験について数報の論文報告がある9.12).このうち,12カ月間の長期投与試験として,正常眼圧緑内障を含む原発開放隅角緑内障患者を対象とし0.005%ラタノプロスト点眼液と0.5%チモロール点眼液の併用治療を3カ月以上行った後に,washout期間を設けずにザラカムR配合点眼液に切り替え,12カ月間投与した報告12)では,配合点眼液による治療開始時の眼圧平均値は15.2mmHgであり,12カ月間点眼後の眼圧平均値は15.1mmHgであった.本試験では,併用群の治療期0週の眼圧平均値は15.8mmHg,治療期終了時の眼圧平均値は15.4mmHgであり,同様の結果であった.また,ザラカムR配合点眼液12カ月間投与では,眼圧下降不十分あるいは副作用により19.1%(31/162例)が試験中に中止していた.一方,今回の試験では併用からDE-111点眼液に切り替え後に,眼圧下降不十分あるいは有害事象による中止は11.6%(5/43例)であった.以上,日本での有病率が高い正常眼圧緑内障を含む開放隅角緑内障および高眼圧症患者において,DE-111点眼液は,52週間にわたり良好かつ安定した眼圧下降を示し,長期点眼時の安全性についても,問題ないことが確認された.このことから,DE-111点眼液は,長期にわたる緑内障治療において有用性の高い配合点眼液である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)井上賢治,塩川美菜子,増本美枝子ほか:多施設による緑内障患者の実態調査2009年度版─薬物治療─.あたらしい眼科28:874-878,20112)石澤聡子,近藤雄司,山本哲也:一大附属病院における緑内障治療薬選択の実態調査.臨眼69:1679-1684,20063)生島徹,森和彦,石橋健ほか:アンケート調査による緑内障患者のコンプライアンスと背景因子との関連性の検討.日眼会誌110:497-503,20064)緑内障診療ガイドライン(第3版).日眼会誌116:3-46,20125)鈴木康之,山本哲也,新家眞ほか:日本緑内障学会多治見疫学調査(多治見スタディ)総括報告.日眼会誌112:1039-1058,20086)相原一:プロスタグランジン関連薬.あたらしい眼科29:443-450,20127)InoueK,ShiokawaM,HigaRetal:Adverseperiocularreactionstofivetypesofprostaglandinanalogs.Eye(Lond)26:1465-1472,20128)YoshinoT,FukuchiT,ToganoTetal:Eyelidandeyelashchangesduetoprostaglandinanalogtherapyinunilateraltreatmentcases.JpnJOphthalmol57:172-178,20139)KashiwagiK:Efficacyandsafetyofswitchingtotravoprost/timololfixed-combinationtherapyfromlatanoprostmonotherapy.JpnJOphthalmol56:339-345,201210)InoueK,FujimotoT,HigaRetal:Efficacyandsafetyofaswitchtolatanoprost0.005%+timololmaleate0.5%fixedcombinationeyedropsfromlatanoprost0.005%monotherapy.ClinOphthalmol6:771-775,201211)InoueK,SetogawaA,HigaRetal:Ocularhypotensiveeffectandsafetyoftravoprost0.004%/timololmaleate0.5%fixedcombinationafterchangeoftreatmentregimenfromb-blockersandprostaglandinanalogs.ClinOphthalmol6:231-235,201212)InoueK,OkayamaR,HigaRetal:Assessmentofocularhypotensiveeffectandsafety12monthsafterchangingfromanunfixedcombinationtoalatanoprost0.005%+timololmaleate0.5%fixedcombination.ClinOphthalmol6:607-612,2012***(143)あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015143

ラタノプロスト・チモロール配合点眼液からトラボプロスト・チモロール配合点眼液への切り替え効果

2014年6月30日 月曜日

《第24回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科31(6):913.916,2014cラタノプロスト・チモロール配合点眼液からトラボプロスト・チモロール配合点眼液への切り替え効果永山幹夫永山順子永山眼科クリニックEffectsofSwitchingfromLatanoprost/TimololFixedCombinationtoTravoprost/TimololFixedCombinationMikioNagayamaandJunkoNagayamaNagayamaEyeClinic目的:ラタノプロスト・チモロール配合点眼液(LTFC)をトラボプロスト・チモロール配合点眼液(TTFC)に変更した際の眼圧下降効果と患者評価について検討した.対象および方法:LTFCを投与中の(広義)原発開放隅角緑内障患者34名34眼を対象とした.TTFCに変更し,切り替え前,4週後,8週後の平均眼圧を比較した(t検定).対象を点眼後から眼圧測定までの時間が15時間未満の群と15時間以上の群で分けた場合についても調べた.さらに患者アンケートを行い,どちらの使用感がより好ましいかを調査した.結果:2名が副作用で脱落した.眼圧は切り替え前,4週,8週の時点でそれぞれ15.9±3.0mmHg,15.6±2.6mmHg,15.2±3.5mmHgで8週の時点で有意に下降した.点眼後測定まで15時間未満の群では同様の時点で16.4±1.8mmHg,16.1±1.9mmHg,15.9±3.1mmHg,15時間以上の群では15.3±4.1mmHg,15.0±3.3mmHg,14.3±3.8mmHgであり,15時間以上の群では8週の時点で有意に下降していた.患者評価ではどちらでもよいが20名(63%),TTFCを好ましいが9名(28%),LTFCを好ましいが3名(9%)であった.結論:TTFCは点眼後眼圧測定までの時間が長い場合,LTFCに勝る眼圧下降効果を有する可能性がある.また使用感でもより好まれる傾向がある.Purpose:Toevaluateeffectsonintraocularpressure(IOP)andpatientimpressionsafterswitchingfromlatanoprost/timololfixedcombination(LTFC)totravoprost/timololfixedcombination(TTFC).SubjectsandMethods:In34primaryopen-angleglaucomapatientswhoweretreatedwithLTFCformorethan2months,medicationwaschangedtoTTFCandmeanIOPwascomparedattimeofchangeandat4and8weeksafterthechange(t-test).Thesubjectsweredividedinto2subgroupsaccordingtowhethertheintervalfrominstillationuntilmeasurementwasmoreorlessthan15hours.Wesurveyedthepatientsandinvestigatedwhichregimenwaspreferred,basedonusability.Results:Twosubjectswereexcludedduetosideeffects.IOPwas15.9±3.0mmHgattimeofchange,15.6±2.6mmHgat4weeks,and15.2±3.5mmHgat8weeks.RespectiveIOPsinthesubgroupwithinterval<15hourswere16.4±1.8mmHg,16.1±1.9mmHgand15.9±3.1mmHg.CorrespondingIOPsofthesubgroup≧15hourswere15.3±4.1mmHg,15.0±3.3mmHgand14.3±3.8mmHg,showingsignificantdecreaseat8weeks.Astopatientevaluations,responseratesfor“eitherregimenisok”,“TTFCispreferable”and“LTFCispreferable”were20persons(63%),9persons(28%)and3persons(9%)respectively.Conclusion:TTFCmayhavelonger-lastingresidualeffectsthanLTFC.TTFCtendedtobepreferredforsuperiorusability.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(6):913.916,2014〕Keywords:緑内障,配合点眼液,ラタノプロスト,トラボプロスト,チモロールマレイン酸塩.glaucoma,fixedcombination,latanoprost,travoprost,timolol.〔別刷請求先〕永山幹夫:〒714-0086岡山県笠岡市五番町3-2永山眼科クリニックReprintrequests:MikioNagayama,NagayamaEyeClinic,3-2Goban-cho,Kasaoka-shi,Okayama714-0086,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(139)913 はじめに点眼治療における患者のアドヒアランスは医師が期待しているよりも実際はかなり低いことが報告されている.Djafariらは緑内障治療に用いられる点眼薬が1剤から2剤に変更した場合,アドヒアランス不良となる患者の割合が19%から39%へと増加したことを報告した1).またRobinらは同様に点眼薬が1剤から2剤に増加するとアドヒアランス不良の症例が3.3%から36.7%へ大きく増加したことを報告した2).点眼薬の本数や点眼回数を増加させることは患者の治療に対するアドヒアランスへの大きなリスクとなる.一方で緑内障治療を開始した患者の50.75%は単剤治療では不十分となり,複数剤の点眼が必要になるといわれている3).そのため緑内障治療において眼圧を十分に低下させる目的を達成するために,治療におけるアドヒアランスをいかに高めるかが大きな問題となる.2010年から日本でも使用可能となった配合点眼液は,点眼回数を増加させることなく眼圧下降効果を高めることが可能となることから,アドヒアランスを向上させることが期待され,わが国でも急速に普及しつつある.それに伴ってプロスタグランジン薬(PG)とb遮断薬の併用療法において配合剤を用いる場合,ラタノプロスト・チモロールマレイン酸配合点眼液(LTFC)とトラボプロスト・チモロールマレイン酸配合点眼液(TTFC)のどちらを選択すればよいか,臨床の場で選択に迷う機会も増加している.本論文では両者の違いを明確にする目的でLTFC点眼からTTFC点眼への切り替え試験を行い,眼圧の変化をみた.さらに患者アンケートを用いてそれぞれの点眼の使用感について,どちらがより好まれるかを調査した.I対象および方法当院で通院加療中の成人広義原発開放隅角緑内障患者でLTFC点眼を2カ月以上継続している者を対象とした.両眼に投与を行う場合はベースライン時の眼圧がより高い片眼を,左右の眼圧が同一の場合は右眼を選択した.すべての被検者に本研究の目的,意義,方法についての説明を行い,了解を得たのは34名であった.試験を開始した34名のうち,1名がTTFCへの切り替え後2週で接触性皮膚炎を生じたため中止となった.また1名が切り替え後2週で充血の訴えがあったため中止となった.そのため8週間TTFC点眼を継続し,最終的に解析が行われたのは32名32眼となった.解析が行われた対象の内訳は男性20名,女性12名,年齢は45.90歳(平均年齢64.7±12.0歳)であった.TTFCへの切り替え以前のLTFC点眼中に眼圧を1週間以上間隔を開けて2回測定し,これをベースライン眼圧とした.LTFC点眼を中止,TTFC点眼に切り替えた後ウォッシュアウト期間を設けず,眼圧を4週後,8週後に測定した.眼圧測定914あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014はGoldmann圧平式眼圧計を用いた.ベースライン時点での点眼測定の時刻を確認し,被検者に以後の点眼時間,来院時間をできるだけ変えないよう依頼した.さらに点眼後時間が長期に経過した時点で両者の効果がどうなるかを調べた.PGは点眼12時間後に効果がpeakになり24時間後でtroughとなるとされている4).Peakとなる点眼後12時間の時点よりもある程度時間が経過した時点として今回は15時間を基準として,対象を点眼から眼圧測定までの時間間隔が15時間未満の群(15時間未満群)と15時間以上の群(15時間以上群)の2つのサブグループに分類し,それぞれの眼圧経過を解析した.統計的解析には対応のあるt検定を用いた.また8週目の時点で被検者自身にアンケート形式で「総合的にどちらの点眼薬がより好ましいか」について尋ねた.回答は「デュオトラバがよい」,「ザラカムがよい」,「どちらでもよい」の3つの項目から1つのみをチェックして選択させる形式とした.また「その理由」についても自由回答書式で尋ねた.II結果眼圧はベースライン,4週,8週の時点でそれぞれ15.9±3.0mmHg(平均眼圧±標準偏差),15.6±2.6mmHg,15.2±3.5mmHgであった(図1).8週の時点でのみベースラインに比べて有意な下降を認めた(p<0.05).点眼から眼圧測定までの経過時間によってサブグループに分けて検討した結果は,15時間未満群(n=14)ではベースライン,4週,8週の時点でそれぞれ16.4±1.8mmHg,16.1±1.9mmHg,15.9±3.1mmHg,15時間以上群(n=18)では15.3±4.1mmHg,15.0±3.3mmHg,14.3±3.8mmHgであり,15時間以上群で8週の時点で有意に下降していた(p<0.05)(図2).患者評価アンケートでは「TTFCをより好ましい」とした者が9名(28%),「LTFCをより好ましいとした者」が3名(9%)「どちらでもよい」とした者が20名(63%)であった(図3).(,)評価の理由として「TTFCを好ましい」としたもののうち7名(78%)が「TTFCのほうが刺激感が少ないこと」をあげていた.一方,「LTFCを好ましい」としたもののうち2名(67%)が「充血が少ないこと」をあげていた.III考按今回の検討ではTTFCへの切り替え後,8週の時点においてLTFCを点眼していた時点(ベースライン時)の眼圧よりも平均眼圧の差で0.71mmHgの有意な下降が認められた.点眼後から眼圧測定までの経過時間の差によるサブグループに分けた検討においては,15時間未満群では眼圧はベースライン時と比べて有意な下降を得られなかったのに対して,15時間以上群では8週目にベースライン時と比べて有意な(140) 208週後**p<0.05201919181817171616*p<0.0515時間未満群15時間以上群*眼圧(mmHg)眼圧(mmHg)1515141413131212111110切り替え前4週後10切り替え前4週後8週後経過期間経過期間図1眼圧値の変化(全症例)図2眼圧値の変化(点眼後測定までの時間別)デュオトラバRがよい28%9%63%どちらでもしみないから7名患者に対してLTFC点眼時をベースラインとしてTTFCも調子がよい1名ザラカムはかすむ1名しくはGanfortR(ビマトプラスト・チモロールマレイン酸配合点眼液)へのクロスオーバー切り替え比較試験を行った7).ザラカムRがよい平均眼圧はベースラインの16.5mmHgから有意に低下し充血が少ない2名しみるが楽1名TTFCでは15.4mmHg,GanfortRで14.7mmHgとなったとしている.一方でRigolletらはLTFC,TTFC,GanfortR図3患者アンケート結果:「どちらがより好ましいか?」下降を認めた.しかもその差は平均1.05mmHgと全症例での差に比べてやや大きくなっていた.したがって今回の結果は,点眼後長時間経過した群において,TTFCがLTFCよりも眼圧下降作用が強力であったために,全体でも有意な差を生じたものと考えられる.切り替え後4週では有意差がなく8週後で認められた理由については,今回の試験では両者の眼圧下降作用の差がそれほど大きなものではなかったこと,LTFCからの切り替えにウォッシュアウト期間を設けていなかったため,4週の時点では若干ではあるがLTFCの影響が残存していた可能性があることがあげられる.また推測であるが点眼変更後の薬剤の使用に被検者が慣れ,薬剤が安定して作用を発揮するまでに時間を要することも影響しているのではないかと思われる.TTFCとLTFCとの効果の比較についてはすでに両点眼薬が長期に使用されている海外を中心に報告が散見される.Topouzisらは原発開放隅角緑内障と高眼圧症408例に対して12カ月観察を行い,TTFCはLTFCより平均0.3.1.0mmHg低い値を示し,TTFCが点眼後24時間前後での眼圧下降作用がLTFCより勝っているとしている5).Denisらは原発開放隅角緑内障と高眼圧症316例について後ろ向き横断的研究を行い,TTFCを点眼している群がLTFCを点眼している群よりも眼圧が1.9mmHg低値であったと報告している6).またDenisらもTopuzisらと同様に点眼後24時間以上経過した時点での眼圧下降効果はTTFCのほうが強力であると述べている.Marcoらは2010年に89例のOAG(141)の眼圧下降効果を12カ月観察した結果,ベースラインからの下降値はそれぞれ.9.02mmHg,.6.61mmHg,.8.56mmHgであり,TTFCよりもLTFC,GanfortRのほうが効果が強かったと述べている8).日本人に対するLTFCからTTFCへの切り替え比較試験では添田らが12例23眼に対して6カ月間比較試験を行い,眼圧が14.9±3.6mmHgから12.3±1.8mmHgと有意に減少し,角膜上皮障害の改善をみたと報告している9).また林らは21例41眼に対して3カ月比較を行い,眼圧が16.2±4.8mmHgから14.0±3.4mmHgと有意に下降し,点眼の際に生じる自覚症状も改善したと述べている10).海外から,トラボプロストはラタノプロストと比較してpeak後の効果の持続時間が長いとの報告があり11,12),チモロールマレイン酸との配合点眼液においても,その影響は同様にみられるようである5,6,13).Rigolletらの報告は点眼後10時間前後のpeakの時点で眼圧測定を行うような試験デザインであったため,LTFCの眼圧下降が大きくなった可能性があるのではないかと思われる8).わが国での報告では両点眼液について効果持続に関する検証はなされていないが,今回の結果から,海外の報告と同様にTTFCがLTFCよりも長時間眼圧下降作用が持続することが日本人においてもいえ,そのことが結果に影響したのではないかと考える.今回8週後の平均眼圧値の差は全体では0.71mmHgと比較的小さい値であり,点眼が変更されることによって被検者のモチベーションが上がるために生じる,いわゆる切り替え効果の影響は無視できないものと思われる.したがって,今回の試験のみでLTFCよりもTTFCの眼圧下降が勝っていると結論づけるのは早計であり,今後クロスオーバー試験をあたらしい眼科Vol.31,No.6,2014915 取り入れたデザインでのさらに長期間に及ぶ多数例の検討が必要であると考える.また,点眼から測定までの時間の検討も後ろ向きに行われたものであり,より高いエビデンスを有する結果を得るためには前向き試験による検討が必要である.TTFCの副作用として点眼アレルギーと思われる症例を1例経験した.この症例はLTFCを使用していた際は接触性皮膚炎の発症は認められておらず副作用発現後再度LTFC点眼を行ったところ発症が認められなかったことからトラボプロスト,もしくは添加物に対するアレルギーが原因であったと思われる.最初にPG単剤の治療を行っている際に効果不十分と考えた場合,可能であれば他のPG剤へのスイッチングを行って作用とともにアレルギーなどの副作用の有無を確認しておくことがPG単剤から配合剤に変更する際にも副作用発現の問題を減らすことができる点で安全と考えられる.アンケートによる点眼の患者評価ではどちらでもよいが63%で最も多かった.理由をみると「使用感にかかわらずより効果の高いほうを使用したい」との本来の目的を重視した意見が多く,過半数の患者では使用感は選択の決定的な要素とはなっていなかった.一方TTFCを好ましいとした者も3割弱存在していた.その多くはLTFCの刺激感がいやであると回答しており,刺激感は個人差が大きいものの一部の患者では強く意識され敬遠されるようである.こういった使用感の問題は医師側に知らされることなくアドヒアランスの低下や治療中断,転医という結果につながる場合もあるため,点眼薬選択の際に留意し,処方を行う前に副作用について説明をしておくこと,その後の受診の際に意識して患者がどう感じたか問いかけをしていくことが大切であると思われる.IV結論TTFCは切り替え後もLTFCとほぼ同等の眼圧下降作用を維持した.日本人においてもTTFCは点眼後,時間が経過した時点での眼圧下降効果がLTFCに比べ優れる可能性がある.使用感についてはTTFCが刺激感が少ない点からLTFCより好まれる傾向があった.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)DjafariF,LeskMR,HarasymowyczPJetal:Determinantsofadherencetoglaucomamedicaltherapyinalong-termpatientpopulation.JGlaucoma18:238-243,20092)RobinAL,NovakGD,CovertDWetal:Adherenceinglaucoma:objectivemeasurementsofonce-dailyandadjunctivemedicationuse.AmJOphthalmol144:533540,20073)KassMA,HeuerDK,HigginbothamEJetal:Theocularhypertensiontreatmentstudyarandomizedtrialdeterminesthattopicalocularhypotensivemedicationdelaysorpreventstheonsetofprimaryopen-angleglaucoma.ArchOphthalmol120:701-713,20024)vanderValkR,WebersCA,SchoutenJSetal:Intraocularpressure-loweringeffectsofallcommonlyusedglaucomadrugs:ameta-analysisofrandomizedclinicaltrials.Ophthalmol112:1177-1185,20055)TopouzisF,MelamedS,Danesh-MeyerHetal:A1yearstudytocomparetheefficacyandsafetyofonce-dailytravoprost0.004%/timolol0.5%toonce-dailylatanoprost0.005%/timolol0.5%inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.EurJOphthalmol17:183-190,20076)DenisP,LafumaA,JeanbatVetal:Intraocularpressurecontrolwithlatanoprost/timololandtravoprost/timololfixedcombinations:aretrospective,multicentre,cross-sectionalstudy.ClinDrugInvestig28:767-776,20087)CentofantiM,OddoneF,GandolfiSetal:ComparisonofTravoprostandBimatoprostplustimololfixedcombinationsinopen-angleglaucomapatientspreviouslytreatedwithlatanoprostplustimololfixedcombination.AmJOphthalmol150:575-580,20108)RigolletJPK,OndateguiJA,PastoAetal:Randomizedtrialcomparingthreefixedcombinationsofprostaglandins/prostamidewithtimololmaleate.ClinOphthalmol5:187-191,20119)添田尚一,宮永嘉隆,佐野英子ほか:ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液からトラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液への切替え.あたらしい眼科30:861-864,201310)林泰博,檀之上和彦:ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼からトラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼への切り替えによる眼圧下降効果.臨眼66:865-869,201211)YanDB,BattistaRA,HaidichABetal:Comparisonofmorningversuseveningdosingand24-hpost-doseefficacyoftravoprostcomparedwithlatanoprostinpatientswithopen-angleglaucoma.CurrMedResOpin24:30233027,200812)KonstasAG,KozobolisVP,KatsimprisIEetal:Efficacyandsafetyoflatanoprostversustravoprostinexfoliativeglaucomapatients.Ophthalmology114:653-657,200713)KonstasAG,MikropoulosDG,EmbeslidisATetal:24-hintraocularpressurecontrolwithevening-dosedtravoprost/timolol,comparedwithlatanoprost/timolol,fixedcombinationsinexfoliativeglaucoma.Eye24:1606-1613,2010916あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014(142)

0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした0.5%チモロール点眼液との第III相二重盲検比較試験

2013年12月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科30(12):1773.1781,2013c0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE111点眼液)の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした0.5%チモロール点眼液との第III相二重盲検比較試験桑山泰明*:DE-111共同試験グループ*福島アイクリニックPhaseIIIDouble-MaskedStudyofFixedCombinationTafluprost0.0015%/Timolol0.5%(DE-111)versusTimolol0.5%OphthalmicSolutioninPrimaryOpen-AngleGlaucomaandOcularHypertensionYasuakiKuwayama1):DE-111CollaborativeTrialGroup1)FukushimaEyeClinic0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111)の有効性と安全性を検討するため,原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者166例を対象に,チモロールを対照とした多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施した.チモロール4週間点眼後の眼圧が20mmHg以上の被験者をDE-111群またはチモロール群に割り付け,治療期として4週間点眼した.治療期終了時の平均日中眼圧は治療期0週に比べ,DE-111群で3.2±2.1mmHg下降し,チモロール群の1.7±2.1mmHg下降と比較して統計学的に有意に大きかった.副作用発現率はDE-111群19.5%,チモロール群3.6%と,両群間に有意差を認めたが,DE-111群で発現した副作用の多くは軽度で忍容性に問題はなかった.DE-111点眼液は,緑内障治療における多剤併用療法の選択肢として,有用性の高い配合点眼液である.Theaimofthisstudywastocomparetheefficacyandsafetyofthefixedcombinationophthalmicsolutionoftafluprost0.0015%/timolol0.5%(DE-111)tothatoftimolol0.5%in166patientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhypertension,inarandomized,double-masked,parallel-groupandmulticenterstudy.PatientswithIOP≧20mmHgaftertimololinstillationfor4weekswererandomlyassignedtoeithertheDE-111ortimololgroup,withthedruginstilledfor4weeks.Attheendoftreatment,meandiurnalintraocularpressurereductionfrombaselinewas3.2±2.1mmHgintheDE-111groupand1.7±2.1mmHginthetimololgroup,withstatisticallysignificantdifferencebetweenthegroups.Atotalof19.5%ofthepatientswithDE-111and3.6%ofthosewithintimololreportedadversedrugreactions,butDE-111wastolerable,asmostoftheadversedrugreactionswithitweremild.TheseresultsindicatethatDE-111isclinicallyusefulinmultidrugtherapyforglaucoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(12):1773.1781,2013〕Keywords:緑内障,配合点眼液,タフルプロスト,チモロール,DE-111.glaucoma,fixedcombination,tafluprost,timolol,DE-111.はじめにDE-111点眼液は,有効成分としてタフルプロストを0.0015%,チモロール0.5%相当量のチモロールマレイン酸塩を含有する配合点眼液である.タフルプロストは参天製薬株式会社および旭硝子株式会社で創製されたプロスタグランジン(PG)F2a誘導体で,ぶどう膜強膜流出路からの房水流出促進による眼圧下降効果が報告されている1.3).b遮断薬であるチモロールは,房水産生を抑制することによって眼圧下降効果が得られる薬剤である4,5).DE-111点眼液は,これら作用機序の異なる2成分を配合することにより各単剤より〔別刷請求先〕桑山泰明:〒553-0003大阪市福島区福島5-6-16ラグザ大阪サウスオフィス4F福島アイクリニックReprintrequests:YasuakiKuwayama,M.D.,FukushimaEyeClinic,4FLaxaOsakaSouthOffice,5-6-16Fukushima,Fukushimaku,Osaka553-0003,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(125)1773 も強い眼圧下降効果が期待されるのみならず,点眼回数が減ることにより患者の利便性やアドヒアランスさらにはQOLを改善し,緑内障の治療効果を高めることが期待される.現在,わが国において発売されているPG関連薬とb遮断薬の配合点眼液としては,ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液(ザラカムR配合点眼液)とトラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液(デュオトラバR配合点眼液)がある.しかしながら,これら配合点眼液に関して,その有効性や安全性をチモロール単剤と二重盲検比較試験で検討した論文報告は,海外にはあるものの6.12)国内にはない.今回,DE-111点眼液の第III相試験として,原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者を対象に,DE-111点眼液とDE-111点眼液の有効成分の一つである0.5%チモロール点眼液との多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施したので,その結果を報告する.なお,本試験はヘルシンキ宣言に基づく原則に従い,薬事法第14条第3項および第80条の2並びに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」を遵守し実施された.I対象および方法1.実施医療機関および試験責任医師本臨床試験は全国16医療機関において各医療機関の試験責任医師のもとに実施された(表1).試験の実施に先立ち,各医療機関の臨床試験審査委員会において試験の倫理的および科学的妥当性が審査され,承認を得た.治験責任医師は,被験者選定および同意の取得,実施計画書に沿った試験の実施,データ収集の役割を担った.2.目的DE-111点眼液の0.5%チモロール点眼液に対する優越性を検証することを目的とした.3.対象対象は両眼が原発開放隅角緑内障または高眼圧症と診断され,0.5%チモロール点眼液点眼下で少なくとも片眼の眼圧が20mmHg以上であり,選択基準を満たし除外基準に抵触しない患者とした.なお,表2におもな選択基準および除外基準を示した.試験開始前に,すべての被験者に対して試験の内容および予想される副作用などを十分に説明し,理解を得たうえで,文書による同意を取得した.4.方法a.試験デザイン・投与方法本試験はDE-111第III相臨床試験であり,多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験として実施した.被験者から文書による同意取得後,緑内障前治療薬の影響を洗い流し,0.5%チモロール点眼液の効果が一定となる期間として,導入期を4週間と設定した.導入期には0.5%チ1774あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013表1DE-111共同試験グループ試験実施医療機関一覧(順不同)医療機関名試験責任医師名医療法人社団山田眼科大谷地裕明渡辺眼科医院渡邉広己財団法人湯浅報恩会寿泉堂綜合病院眼科神田尚孝医療法人社団済安堂お茶の水・井上眼科クリニック井上賢治医療法人社団瞳好会京王八王子松本眼科松本純医療法人社団済安堂西葛西・井上眼科病院宮永嘉隆医療法人社団ひいらぎ会若葉台眼科佐藤功むらまつ眼科医院村松知幸医療法人社団シー・オー・アイいしだ眼科石田玲子医療法人豊潤会松浦眼科眼科松浦雅子野村眼科野村亮二医療法人庸倫会スズキ眼科服部博之宇部興産株式会社中央病院眼科湧田真紀子医療法人杏水会右田眼科右田雅義医療法人明和会宮田眼科病院宮田和典医療法人仁志会西眼科病院藤井誠一郎表2おもな選択基準および除外基準1)おもな選択基準(1)20歳以上(2)性別:不問(3)入院・外来の別:外来(4)導入期終了日(9時30分±30分)の少なくともいずれか一方の眼圧が20mmHg以上,両眼とも34mmHg以下2)おもな除外基準(1)以下①.③のいずれかに該当する〔①気管支喘息,またはその既往を有する,②気管支痙攣,重篤な慢性閉塞性肺疾患を有する,③心不全,洞性徐脈,房室ブロック(II,III度),心原性ショックを有する〕(2)角膜屈折矯正手術の既往を有する(3)緑内障手術(レーザー線維柱帯形成術,濾過手術,線維柱帯切開術など)の既往を有する(4)試験期間中にコンタクトレンズの装用を必要とする(5)安全性上不適格と判断される合併症または臨床検査値異常を有する(6)試験責任医師・試験分担医師が本試験の対象として不適当と判断モロール点眼液を1日2回朝夜両眼に治療期0週まで点眼した.治療期0週当日朝は0.5%チモロール点眼液を点眼せず来院し,点眼前の眼圧が20mmHg以上の被験者を対象として症例登録を行い,4週間の治療期に移行した.治療期では被験者はDE-111群またはチモロール群に1対1に無作為に割り付けられた.DE-111群は,DE-111点眼液を1日1回朝両眼点眼およびプラセボ点眼液を1日2回朝夜両眼点眼した.チモロール群は,0.5%チモロール点眼液を1日2回朝夜両眼点眼およびプラセボ点眼液を1日1回朝両眼点眼した.試験デザインを図1に示した.なお,点眼はいずれも1(126) 回1滴とするよう指導した.b.試験薬剤被験薬であるDE-111点眼液は,1ml中にタフルプロストを0.015mgおよびチモロールを5mg含有する無色澄明の水性点眼液である.DE-111群にはチモロール型容器のプラセボ点眼液(1日2回朝夜両眼点眼),チモロール群には同意取得登録/割付け:1日2回(朝,夜)両眼点眼:1日2回(朝,夜)両眼点眼(チモロール型容器)DE-111点眼液:1日1回(朝)両眼点眼【導入期】・0.5%チモロール点眼液【治療期】・DE-111群プラセボ点眼液導入期4週間治療期4週間チモロール点眼液0.5%DE-111群二重盲検チモロール群・チモロール群0.5%チモロール点眼液:1日2回(朝,夜)両眼点眼プラセボ点眼液:1日1回(朝)両眼点眼(DE-111型容器)図1試験デザインDE-111型容器のプラセボ点眼液(1日1回朝両眼点眼)をそれぞれ併用するダブルダミー法を用いて盲検性を確保した.試験薬の識別不能性は試験薬割付責任者が確認した.試験薬の割付は,試験薬割付責任者が置換ブロック法による無作為化により行い,キーコードは開鍵時まで封入し試験薬割付責任者が保管した.c.症例数DE-111群とチモロール群の眼圧変化量の差を2.0mmHg,標準偏差を4.0mmHg,有意水準を5%,t検定を用いた検出力を80%としたとき,1群の必要例数は64例である.脱落例を考慮し,目標症例数を1群70例と設定した.5.検査・観察項目試験期間中は検査・観察を表3のとおり行った.a.被験者背景性別,生年月日,合併症(眼および眼以外),既往歴などの被験者背景は,試験薬投与開始前に調査確認した.b.試験薬の点眼状況治療期0週以降は来院ごとに,前回の来院直後からの点眼遵守状況について問診で確認した.c.各種検査・測定血圧・脈拍数測定,細隙灯顕微鏡検査,視力検査,眼圧測定,隅角検査,視野検査,眼底検査および臨床検査(血液・尿)を表3のスケジュールで実施した.眼圧測定は,導入期開始時,治療期0週,2週および4週または中止時の眼圧をGoldmann圧平眼圧計にて測定した.眼圧測定時刻は,導入表3検査・観察スケジュール観察項目導入期治療期中止時導入期開始時(-4週)0週2週4週文書同意●被験者背景●点眼遵守状況●●●●血圧・脈拍数測定●●●●●細隙灯顕微鏡検査●●●●●視力検査●●●眼圧測定午前中(12時まで)●●9時30分±30分●●●点眼2時間後±30分●●点眼8時間後±30分●●隅角検査●視野検査●眼底検査●●●臨床検査(血液・尿)●●●有害事象●(127)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131775 期開始時は午前中,治療期0週および4週は朝点眼前の午前9.10時,朝点眼2時間後±30分および朝点眼8時間後±30分,治療期2週は朝点眼前の午前9.10時とした.中止時の眼圧測定時刻は規定しなかった.d.有害事象試験期間中に発現・悪化したすべての好ましくない,または意図しない疾病,またはその徴候を収集した.6.併用禁止薬および併用禁止療法試験期間を通じて,人工涙液,白内障治療薬およびビタミンB12製剤を除くすべての眼局所投与製剤,経口および静注投与の眼圧下降剤,すべてのb遮断薬,副腎皮質ステロイド薬および他の臨床試験薬の投与を禁止した.また,試験期間中の,眼科レーザー手術,コンタクトレンズの装用などを禁止した.7.評価方法a.有効性の評価有効性評価眼は,治療期0週(朝点眼前)の眼圧の高いほうの眼(左右が同値の場合は右眼)とした.主要評価項目は,治療期終了時(治療期4週または中止時)における治療期0週からの平均日中眼圧の変化量とした.なお平均日中眼圧は,朝点眼前,点眼2時間後および点眼8時間後の眼圧平均値と定義した.また副次評価項目は,各測定時点における治療期0週からの眼圧変化量および眼圧変化率とした.b.安全性の評価有害事象,臨床検査,血圧・脈拍数および眼科的検査をもとに安全性を評価した.8.解析方法a.有効性解析対象有効性は,最大の解析対象集団(FullAnalysisSet:FAS集団)を対象として検討した.また,試験実施計画書に適合した解析対象集団(PerProtocolSet:PPS集団)についても解析し,FAS集団との相違について考察した.b.安全性解析対象安全性は,被験薬または対照薬を少なくとも1回点眼し,安全性に関する何らかの情報が得られているすべての被験者(安全性解析対象集団)を対象とした.c.データの取り扱い検査・観察時期が許容範囲から外れた場合,検査前日の点眼をしていない場合,検査当日の朝の点眼を眼圧測定の前に行った場合,および治療期0週以降の眼圧測定時刻が許容範囲から外れた場合は,当該検査日の眼圧データをPPS集団から除外した.d.解析方法主要評価および副次評価の解析には,投与群別に対応のあるt検定を行った.群間比較には,投与群を要因,0週の眼1776あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013圧値を共変量とした共分散分析を用いた.眼圧下降率20%の症例割合はFisherの直接法により群間比較を行った.安全性の解析のうち,有害事象については,発現例数と発現率を集計し,全体の発現率についてFisherの直接法を用いて群間の比較を行った.また,臨床検査値については,各検査項目別の異常変動の発現例数と発現率を集計し,連続量データについては,対応のあるt検定を,順序尺度データに関しては符号検定を行った.血圧・脈拍数については対応のあるt検定を行った.眼科的検査(細隙灯顕微鏡検査,視力検査)については符号検定を行った.検定の有意水準は両側5%とし,区間推定の信頼係数は両側95%とした.解析ソフトはSASversion9.2(株式会社SASインスティチュートジャパン)を用いた.なお,本論文は参天製薬株式会社が行った解析データを基に筆者が執筆した.II結果1.被験者の構成被験者の内訳を図2に示した.文書同意を得て試験に組入れられた被験者は203例で,導入期が開始された被験者は188例,治療期が開始された被験者は166例であり,無作為にDE-111群82例,チモロール群84例に割り付けられた.治療期中に8例が試験を中止し(DE-111群5例,チモロール群3例),158例が試験を完了した(DE-111群77例,チモロール群81例).無作為化された166例(DE-111群82例,チモロール群84例)を安全性解析対象集団およびFAS集団とした.さらに,併用禁止薬使用などにより眼圧値が不採用となった12例を除く154例(DE-111群74例,チモロール群80例)をPPS集団とした.FAS集団における被験者背景を表4に示した.緑内障前治療薬の有無についてのみ群間に偏りが認められた(Fisherの直接法:p=0.050).2.有効性FAS集団における平均日中眼圧変化量の推移および群間比較を図3と表5に示した.治療期0週の平均日中眼圧は,DE-111群20.8±2.1mmHg,チモロール群20.7±2.1mmHgであり,治療期終了時(治療期4週または中止時)には,DE-111群17.5±2.7mmHg,チモロール群19.0±3.3mmHgであった.主要評価である治療期終了時(治療期4週または中止時)における治療期0週からの平均日中眼圧の変化量(平均値±標準偏差)は,DE-111群.3.2±2.1mmHg,チモロール群.1.7±2.1mmHgであり,両群ともに0週に比較して有意な眼圧下降を示した(p<0.001).また,変化量の群間差(DE-111群.チモロール群,平均値±標準誤差)は.1.5±(128) 文書同意を得た被験者:203例導入期の試験薬が投薬された被験者:188例導入期の試験薬未投与例:15例試験開始後に不適格が判明:13例試験継続の拒否:2例無作為割付された被験者:166例導入期中止例:22例DE-111群:82例チモロール群:84例有害事象発現:4例眼圧>34mmHg:1例試験開始後に不適格が判明:17例治療期の試験薬が投薬された被験者:166例DE-111群:82例チモロール群:84例試験を完了した症例:158例治療期に中止した被験者:8例DE-111群:77例チモロール群:81例有害事象発現:5例(DE-111群)試験開始後に不適格が判明:1例(チモロール群)転院,転居,多忙:2例(チモロール群)文書同意を得た被験者:203例導入期の試験薬が投薬された被験者:188例導入期の試験薬未投与例:15例試験開始後に不適格が判明:13例試験継続の拒否:2例無作為割付された被験者:166例導入期中止例:22例DE-111群:82例チモロール群:84例有害事象発現:4例眼圧>34mmHg:1例試験開始後に不適格が判明:17例治療期の試験薬が投薬された被験者:166例DE-111群:82例チモロール群:84例試験を完了した症例:158例治療期に中止した被験者:8例DE-111群:77例チモロール群:81例有害事象発現:5例(DE-111群)試験開始後に不適格が判明:1例(チモロール群)転院,転居,多忙:2例(チモロール群)図2被験者の内訳表4被験者背景項目分類DE-111群チモロール群合計例数8284166診断名原発開放隅角緑内障高眼圧症36(43.9)46(56.1)37(44.0)47(56.0)73(44.0)93(56.0)性別男38(46.3)38(45.2)76(45.8)女44(53.7)46(54.8)90(54.2)年齢65歳未満46(56.1)35(41.7)81(48.8)65歳以上36(43.9)49(58.3)85(51.2)最小.最大24.8126.7924.81平均値±標準偏差61.6±11.463.1±12.462.4±11.9緑内障前治療薬なし21(25.6)11(13.1)32(19.3)あり61(74.4)73(86.9)134(80.7)合併症なし9(11.0)9(10.7)18(10.8)あり73(89.0)75(89.3)148(89.2)導入期の隅角331(37.8)31(36.9)62(37.3)(Shaffer分類)451(62.2)53(63.1)104(62.7)導入期の緑内障性の異常なし56(68.3)53(63.1)109(65.7)視野異常異常あり26(31.7)31(36.9)57(34.3)導入期の緑内障性の異常なし50(61.0)47(56.0)97(58.4)眼底異常異常あり32(39.0)37(44.0)69(41.6)導入期終了時の最小.最大17.3.28.718.0.30.717.3.30.7平均眼圧(mmHg)平均値±標準偏差20.8±2.120.7±2.120.7±2.1導入期終了時の最小.最大20.0.28.020.0.29.020.0.29.0トラフ眼圧(mmHg)平均値±標準偏差21.7±1.821.6±1.721.6±1.8例数(%).(129)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131777 0.3mmHgであり,DE-111群の眼圧下降はチモロール群と比較して有意に大きかった(p<0.001).副次評価である治療期2週(朝点眼前),4週(朝点眼前,点眼2時間後,点眼8時間後)の各測定時刻における眼圧実1眼圧変化量(mmHg)測値の推移および群間比較を図4と表6に示した.DE-111群とチモロール群の群間比較では,DE-111はすべての測定時刻においてチモロール群と比較して有意な眼圧下降を示した(p<0.01).被験者背景において,緑内障前治療薬の有無について群間に偏りがみられたため,緑内障前治療薬の有無別に各群の平均日中眼圧値を比較したが,全体での結果と差異は認められなかった.PPS集団を対象とした解析でもFAS集団の有効性と相違のない結果が得られた.治療期終了時(治療期4週または中止時)において治療期0週からの平均日中眼圧の眼圧下降率が20%以上であった症例の割合は,DE-111群が32.9%であり,チモロール群の7.1%より有意に多かった(p<0.001)(図5).3.安全性a.有害事象および副作用安全性解析対象集団は,DE-111群82例,チモロール群0-1-2**-3:DE-111群:チモロール群-5-4-60週治療期終了時図3平均日中眼圧変化量(平均値±標準偏差)0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.表5平均日中眼圧DE-111群チモロール群DE-111群.チモロール群平均日中眼圧(mmHg)変化量(mmHg)平均日中眼圧(mmHg)変化量(mmHg)群間比較(mmHg)時期Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SE95%信頼区間p値0週20.8±2.1(82)──20.7±2.1(84)─────治療期終了時17.5±2.7(82).3.2±2.1(82)<0.00119.0±3.3(84).1.7±2.1(84)<0.001.1.5±0.3.2.2..0.9<0.001Mean±SD:平均値±標準偏差,p値:対応のあるt検定.Mean±SE:平均値±標準誤差,0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.眼圧(mmHg)2423222120191817161514:DE-111群:チモロール群********0週0週0週2週4週4週4週点眼前点眼2時間後点眼8時間後点眼前点眼前点眼2時間後点眼8時間後図4眼圧実測値(平均値±標準偏差)0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.**:p<0.01.1778あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(130) 表6眼圧実測値DE-111群チモロール群DE-111群.チモロール群眼圧(mmHg)治療期0週からの変化量(mmHg)眼圧(mmHg)治療期0週からの変化量(mmHg)群間比較(mmHg)時期Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SE95%信頼区間p値0週朝点眼前21.7±1.8(82)──21.6±1.7(84)─────0週点眼2時間後20.4±2.5(82)──20.6±2.6(84)─────0週点眼8時間後20.0±2.8(82)──19.8±2.7(84)─────2週18.0±2.3(82).3.7±2.2(82)<0.00119.3±3.5(84).2.2±2.6(84)<0.001.1.4±0.4.2.2..0.7<0.0014週朝点眼前17.6±2.7(79).4.1±2.2(79)<0.00119.3±3.2(83).2.3±2.3(83)<0.001.1.8±0.4.2.6..1.1<0.0014週点眼2時間後17.5±3.2(77).3.0±2.5(77)<0.00118.7±3.6(82).1.9±2.4(82)<0.001.1.0±0.4.1.8..0.30.0094週点眼8時間後17.3±3.1(77).2.7±2.9(77)<0.00118.8±3.5(81).1.0±2.5(81)<0.001.1.7±0.4.2.5..0.8<0.001Mean±SD:平均値±標準偏差,p値:対応のあるt検定.Mean±SE:平均値±標準誤差,0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.403020100図5治療期終了時に眼圧下降率20%以上であった症例の割合84例の計166例であった.治療期中に発現した有害事象と副作用の発現例数および発現率を表7に,副作用一覧を表8に示した.有害事象は,DE-111群で25.6%(21/82例),チモロール群で14.3%(12/84例)であり,そのうち,試験薬との因果関係が否定できない副作用は,DE-111群で19.5%(16/82例),チモロール群で3.6%(3/84例)であった.有害事象の発現率は群間に差は認められなかったものの,副作用の発現率はDE-111群がチモロール群と比較して有意に高かった(有害事象:p=0.081,副作用:p=0.001).DE-111群のおもな副作用は,結膜充血(6.1%,5/82例)および眼充血(7.3%,6/82例)であった.チモロール群の(131)症例割合(%)32.9%(27/82)7.1%(6/84)DE-111群チモロール群副作用は,結膜出血(1.2%,1/84例),眼充血(1.2%,1/84例)および角膜障害(1.2%,1/84例)であった.両群ともに副作用はすべて眼障害で,重症度はDE-111群において中等度と判断された虹彩炎(1.2%,1/82例)を除きすべて軽度であり,いずれも試験中あるいは試験終了後に軽快または回復した.DE-111群の副作用により試験中止に至った被験者は,虹彩炎を発現した1例,眼充血,眼刺激および眼瞼浮腫を発現した1例,眼充血を発現した1例,結膜充血および眼瞼紅斑を発現した1例の計4/82例(4.9%)であり,いずれも試験薬の投与中止後に回復した.b.臨床検査DE-111群で単球および尿糖(定性)が,チモロール群で好酸球,リンパ球,総蛋白およびアルブミンが,投与前に比し有意な変動を示したが,これらの変動に関連する有害事象は認められなかった.また,薬剤との因果関係が否定できない臨床検査値の異常変動は認められなかった.c.血圧・脈拍数収縮期血圧,拡張期血圧について,DE-111群は0週と比較して有意な変動は認められなかった.チモロール群は,収縮期血圧について,0週と比較して有意な低下が4週(平均値±標準偏差,.2.45±11.10mmHg,p=0.048)に認められた.脈拍数について,DE-111群で0週と比較して有意な上昇が2週(平均値±標準偏差,5.5±7.8拍/分,p<0.001)および4週(4.6±8.1拍/分,p<0.001)に認められた.チモあたらしい眼科Vol.30,No.12,20131779 表7治療期にみられた有害事象と副作用の発現例数および発現率DE-111群チモロール群検定(Fisherの直接法)安全性解析対象集団例数8284─有害事象発現例数(%)21(25.6)12(14.3)p=0.081副作用発現例数(%)16(19.5)3(3.6)p=0.001表8副作用一覧DE-111群チモロール群安全性解析対象集団例数8284副作用発現例数(%)16(19.5)3(3.6)結膜出血─1(1.2)眼瞼紅斑1(1.2)─眼刺激2(2.4)─眼瞼浮腫1(1.2)─虹彩炎1(1.2)─角膜炎1(1.2)─眼充血6(7.3)1(1.2)点状角膜炎2(2.4)─結膜充血5(6.1)─眼そう痒症1(1.2)─角膜障害1(1.2)1(1.2)例数(%).ロール群では,0週と比較して有意な変動は認められなかった.これらの変動は,臨床的に問題となるものではなく,関連する有害事象は認められなかった.d.眼科的検査(細隙灯顕微鏡検査,視力検査)細隙灯顕微鏡検査所見の結膜充血スコア(両眼)について,DE-111群で0週と比較して有意なスコアの上昇が2週(右眼:p=0.031,左眼:p=0.008)に認められたが,その他の項目に有意なスコアの変動は認められなかった.チモロール群では,有意なスコアの変動は認められなかった.視力検査について,両群ともに有意な変動は認められなかった.III考察緑内障では,眼圧下降治療が唯一確実な治療法であり,通常薬物療法が第一選択となる.薬物療法では,まず単剤治療で効果を確認し,効果不十分な場合に多剤併用療法が行われるが,単剤で治療されていた患者は48.4%との報告13)もあるように,多剤併用療法が必要な患者も少なくない.多剤併用療法の問題点は,点眼回数の多さからくるアドヒアランス低下や,先に点眼した薬剤が後に点眼した薬剤によって眼表面から洗い流されることによる薬剤効果の減弱などが挙げられるが,このような懸念を解消しうる薬剤として配合点眼液がある.近年国内では,PG関連薬とb遮断薬や,b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬を配合した点眼液が次々と発売され臨1780あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013床で使用されている.このような現状をふまえ,日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン(第3版)14)においては,『多剤併用療法の際には配合点眼液の使用により患者のアドヒアランスやQOLの向上も考慮すべきである』と,配合点眼液の意義について述べている.本試験は,タフルプロスト・チモロールマレイン酸塩を含有するDE-111点眼液を,その配合成分の一つである0.5%チモロール点眼液と比較した国内二重盲検比較試験である.なお,DE-111点眼液をタフルプロスト単剤またはタフルプロストとチモロールの併用と比較した国内二重盲検比較試験については,すでに報告した15).主要評価である平均日中眼圧の治療期0週と比較した治療期終了時(治療期4週または中止時)での変化量は,DE-111群でチモロール群と比較して有意に大きかった.また,各測定時刻の眼圧値をみても,DE-111群の治療期4週の眼圧実測値は,朝点眼前(トラフ眼圧値)で17.6mmHg,点眼2時間後で17.5mmHg,点眼8時間後で17.3mmHgと大きな日内変動はなく,眼圧がトラフを含め1日中コントロール可能であることが確認された.さらに,眼圧下降率が20%以上であった症例の割合は,DE-111群が32.9%であり,チモロール群の7.1%を有意に上回った.これらのことから,0.5%チモロール点眼液の単剤治療で効果不十分な患者がDE-111点眼液に切り替えることで,眼圧を良好にコントロールできる可能性が示された.PG関連薬・b遮断薬の配合点眼液とチモロール点眼液を比較した国内二重盲検比較試験の論文報告はないが,海外では,ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液(ザラカムR配合点眼液)で5報6.10),トラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液(デュオトラバR配合点眼液)で2報11,12)の計7報の報告がある.これらのうち,今回のDE-111点眼液の試験と同様に,導入期に0.5%チモロール点眼液(1日2回)を使用した試験は,ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液に関する2報があった6,7).これらの試験の治療期0週時の平均日中眼圧は21.6±3.8mmHg,もう1報では23.1±3.8mmHgであり,治療期終了時の平均日中眼圧はそれぞれ19.0±3.5mmHg,19.9±3.4mmHgであった.今回のDE-111点眼液の試験では,治療期0週時の平均日中眼圧は20.8±2.1mmHgとこれらの報告と比較してベースライン眼圧が低かったにもかかわらず,(132) 治療期終了時の平均日中眼圧は17.5±2.7mmHgと,大きな眼圧下降を示した.このことから,DE-111点眼液は眼圧が低い患者でも良好な眼圧下降効果を示すことが期待される.安全性については,試験期間を通じて重篤な副作用はみられなかった.DE-111群の副作用発現率はチモロール群と比較して有意に高かったものの,副作用はすべて眼局所性であり,おもなものは結膜充血(6.1%)および眼充血(7.3%)であった.タフルプロスト(タプロスR点眼液0.0015%)の第III相比較試験2)で高頻度に発現した副作用は,結膜充血(16.4%),眼充血(10.9%),眼掻痒症(9.1%)および眼刺激(7.3%)であったことから,本試験で高頻度に認められた副作用はDE-111点眼液の有効成分であるタフルプロスト由来であると考えられたが,これらの副作用はすべて軽度であり,発現率もタフルプロスト単剤の安全性プロファイルを超えるものではなかった.よって,配合による各単剤の副作用増悪の懸念はないと考えられた.以上より,原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者において,DE-111点眼液は,0.5%チモロール点眼液と比較して,優れた眼圧下降を示し,安全性についても問題ないことが確認された.さらに,DE-111点眼液は患者の利便性,アドヒアランスおよびQOLの改善が期待できるので,緑内障治療における多剤併用療法の選択肢として有用性の高い配合点眼液である.利益相反:井上賢治:(カテゴリーI:参天製薬)文献1)TakagiY,NakajimaT,ShimazakiAetal:PharmacologicalcharacteristicsofAFP-168(tafluprost),anewprostanoidFPreceptoragonist,asanocularhypotensivedrug.ExpEyeRes78:767-776,20042)桑山泰明,米虫節夫:0.0015%DE-085(タフルプロスト)の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした0.005%ラタノプロストとの第III相検証的試験.あたらしい眼科25:1595-1602,20083)桑山泰明,米虫節夫,タフルプロスト共同試験グループ:正常眼圧緑内障を対象とした0.0015%タフルプロストの眼圧下降効果に関するプラセボを対照とした多施設共同無作為化二重盲検第III相臨床試験.日眼会誌114:436-443,20104)新家真,高瀬正弥:交感神経作動薬及びb受容体遮断剤の人眼房水動態に及ぼす作用.日眼会誌84:1436-1446,19805)三島済一,東郁郎,相沢芙束ほか:Pilocarpineにより眼圧調整されている高眼圧症および原発開放隅角緑内障患者に対するtimololの臨床評価.臨床評価8:789-820,19806)PfeifferN:Acomparisonofthefixedcombinationoflatanoprostandtimololwithitsindividualcomponents.GraefesArchClinExpOphthalmol240:893-899,20027)HigginbothamEJ,FeldmanR,StilesMetal:Latanoprostandtimololcombinationtherapyvsmonotherapy.ArchOphthalmol120:915-922,20028)DiestelhorstM,AlmegardB:Comparisonoftwofixedcombinationsoflatanoprostandtimololinopen-angleglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmol236:577581,19989)PalmbergP,KimEE,KwokKKetal:A12-week,randomized,double-maskedstudyoffixedcombinationlatanoprost/timololversuslatanoprostortimololmonotherapy.EurJOphthalmol20:708-718,201010)HigginbothamEJ,OlanderKW,KimEEetal:Fixedcombinationoflatanoprostandtimololvsindividualcomponentsforprimaryopen-angleglaucomaorocularhypertension.ArchOphthalmol128:165-172,201011)BarnebeyHS,Orengo-NaniaS,FlowersBEetal:Thesafetyandefficacyoftravoprost0.004%/timolol0.5%fixedcombinationophthalmicsolution.AmJOphthalmol140:1-7,200512)SchumanJS,KatzGJ,LewisRAetal:Efficacyandsafetyofafixedcombinationoftravoprost0.004%/timolol0.5%ophthalmicsolutiononcedailyforopen-angleglaucomaorocularhypertension.AmJOphthalmol140:242-250,200513)井上賢治,塩川美菜子,増本美枝子ほか:多施設による緑内障患者の実態調査2009年度版─薬物治療─.あたらしい眼科28:874-878,201114)緑内障診療ガイドライン(第3版).日眼会誌116:3-46,201215)桑山泰明,DE-111共同試験グループ:0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたタフルプロスト点眼液0.0015%およびタフルプロスト点眼液0.0015%/チモロール0.5%点眼液併用との第III相二重盲検比較試験.あたらしい眼科30:1185-1194,2013***(133)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131781

0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたタフルプロスト点眼液0.0015%およびタフルプロスト点眼液0.0015%/チモロール0.5%点眼液併用との第III相二重盲検比較試験

2013年8月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科30(8):1185.1194,2013c0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE111点眼液)の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたタフルプロスト点眼液0.0015%およびタフルプロスト点眼液0.0015%/チモロール0.5%点眼液併用との第III相二重盲検比較試験桑山泰明*:DE-111共同試験グループ*福島アイクリニックPhaseIIIDouble-MaskedStudyofFixedCombinationTafluprost0.0015%/Timolol0.5%(DE-111)VersusTafluprost0.0015%AloneorGivenConcomitantlywithTimolol0.5%inPrimaryOpenAngleGlaucomaandOcularHypertensionYasuakiKuwayama1):DE-111CollaborativeTrialGroup1)FukushimaEyeClinic0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111)の有効性と安全性を検討するため,原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者488例を対象に,タフルプロスト単剤またはタフルプロストとチモロールの併用を対照とした多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施した.タフルプロスト4週間点眼後の眼圧が18mmHg以上の被験者を,DE-111群,タフルプロスト群,併用群に割り付け,治療期として4週間点眼した.治療期終了時の平均日中眼圧は治療期0週に比べ,DE-111群で2.6±1.8mmHg,タフルプロスト群で0.9±1.7mmHg,併用群で2.2±1.8mmHg下降し,タフルプロストに対する優越性,併用に対する非劣性が検証された.副作用発現率は,群間に有意差は認められなかった.DE-111点眼液は緑内障治療における多剤併用療法の選択肢として,有用性の高い配合点眼液である.Theaimofthisstudywastocomparetheefficacyandsafetyofthefixedcombinationophthalmicsolutionoftafluprost0.0015%/timolol0.5%(DE-111)tothatoftafluprost0.0015%ophthalmicsolution(tafluprost)ortafluprost0.0015%andtimolol0.5%ophthalmicsolutiongivenconcomitantly(concomitant)in488patientswithprimaryopenangleglaucoma(POAG)orocularhypertension(OH),inarandomized,double-masked,parallel-groupandmulticenterstudy.Patientswithintraocularpressure(IOP)≧18mmHgaftertafluprostinstillationfor4weekswererandomlyassignedtoeithertheDE-111,tafluprostorconcomitantgroup,withthedruginstilledfor4weeks.Attheendoftreatment,meandiurnalIOPreductionfrombaselinewas2.6±1.8mmHgintheDE-111group,0.9±1.7mmHginthetafluprostgroupand2.2±1.8mmHgintheconcomitantgroup,DE-111beingsuperiortotafluprostandnotinferiortoconcomitant.Nointergroupdifferenceswereseeninadversedrugreactionincidencerates.TheseresultsindicatethatDE-111isclinicallyusefulinmultidrugtherapyforglaucoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(8):1185.1194,2013〕Keywords:緑内障,配合点眼液,タフルプロスト,チモロール,多剤併用,DE-111.glaucoma,fixedcombination,tafluprost,timolol,concomitant,DE-111.〔別刷請求先〕桑山泰明:〒553-0003大阪市福島区福島5-6-16ラグザ大阪サウスオフィス4F福島アイクリニックReprintrequests:YasuakiKuwayama,M.D.,FukushimaEyeClinic,4FLaxaOsakaSouthOffice,5-6-16Fukushima,Fukushimaku,Osaka553-0003,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(141)1185 はじめに緑内障に対する現在唯一確実な治療法は眼圧下降であり,通常薬物治療が第一選択となる.薬物治療では良好なアドヒアランスを維持することが治療の成否を左右する.しかし,単剤による眼圧コントロールが不十分なため多剤併用療法が必要な患者が少なからず存在しており,アドヒアランスを良好に維持することが困難な場合も多い.このようななか,近年いくつかの配合点眼液が開発されており,緑内障診療ガイドライン1)では,『多剤併用療法の際には配合点眼薬の使用により,患者のアドヒアランスやQOLの向上も考慮すべきである』と,配合点眼液の意義について述べている.DE-111点眼液は,プロスタグランジン(PG)関連薬のタフルプロストとb遮断薬のチモロールを含有する1日1回点眼の配合点眼液であり,両点眼液の併用治療に比べて患者の利便性,アドヒアランスおよびqualityoflife(QOL)を改善し,緑内障の治療効果を高めることが期待される.一方で,PG関連薬とb遮断薬の配合点眼液は,両薬剤の併用治療と比較するとb遮断薬の点眼回数が1日2回から1日1回に減るため,眼圧下降効果が弱い可能性が危惧される.しかし,これまで国内では,PG関連薬とb遮断薬の配合点眼液についてはPG関連薬単剤治療を対照とした比較試験が第III相臨床試験として行われてきたが,PG関連薬とb遮断薬の併用治療を対照とした二重盲検比較試験は行われていなかった.今回,DE-111点眼液の第III相試験として,原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者を対象に,DE-111点眼液の有効成分の一つであるタフルプロスト点眼液0.0015%単剤投与との比較のみならず,タフルプロスト点眼液0.0015%とチモロール点眼液0.5%の併用との比較を目的とした多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施したので,その結果を報告する.なお,本試験はヘルシンキ宣言に基づく原則に従い,薬事法第14条第3項および第80条の2ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」を遵守し実施された.I対象および方法1.実施医療機関および試験責任医師本臨床試験は全国58医療機関において各医療機関の試験責任医師のもとに実施された(表1).試験の実施に先立ち,各医療機関の臨床試験審査委員会において試験の倫理的および科学的妥当性が審査され,承認を得た.2.目的DE-111点眼液のタフルプロスト点眼液に対する優越性,タフルプロスト点眼液とチモロール点眼液0.5%の併用に対する非劣性を検証することを目的とした.3.対象対象は両眼が原発開放隅角緑内障または高眼圧症と診断され,タフルプロスト点眼液点眼下で少なくとも片眼の眼圧が18mmHg以上であり,選択基準を満たし除外基準に抵触しない患者とした.なお,表2におもな選択基準および除外基準を示した.試験開始前に,すべての被験者に対して試験の内容および予想される副作用などを十分に説明し,理解を得たうえで,文書による同意を取得した.4.方法a.試験デザイン・投与方法本試験は多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験として実施した.被験者から文書による同意取得後,緑内障前治療薬の影響を消失させタフルプロスト点眼液の効果が一定となる期間として,導入期を4週間と設定した.導入期にはタフルプロスト点眼液を1日1回朝両眼に治療期0週まで点眼した.治療期0週当日朝はタフルプロスト点眼液を点眼せず来院し,点眼前の眼圧が18mmHg以上の被験者を対象として症例登録を行い,4週間の治療期に移行した.治療期では被験者はDE-111群,タフルプロスト群,併用群に1対1対1に無作為に割り付けられた.DE-111群はDE-111点眼液を1日1回朝両眼点眼およびプラセボ点眼液を1日2回朝夜両眼点眼,タフルプロスト群はタフルプロスト点眼液を1日1回朝両眼点眼およびプラセボ点眼液を1日2回朝夜両眼点眼,併用群はタフルプロスト点眼液を1日1回朝両眼点眼,およびチモロール点眼液0.5%を1日2回朝夜両眼点眼した.試験デザインを図1に示した.なお,点眼はいずれも1回1滴とするよう指導した.b.試験薬剤被験薬であるDE-111点眼液は,1ml中にタフルプロストを0.015mgおよびチモロールを5mg含有する無色澄明の水性点眼液である.DE-111点眼液とタフルプロスト点眼液,そしてチモロール点眼液0.5%とプラセボ点眼液はそれぞれ同一の容器を使用し,盲検性を確保した.試験薬の識別不能性は試験薬割付責任者が確認した.試験薬の割付は,試験薬割付責任者が置換ブロック法による無作為化により行い,キーコードは開鍵時まで封入し試験薬割付責任者が保管した.5.検査・観察項目試験期間中は検査・観察を表3のとおり行った.a.被験者背景性別,生年月日,合併症(眼および眼以外),既往歴などの被験者背景は,試験薬投与開始前に調査・確認した.b.試験薬の点眼状況治療期以降の来院ごとに,前回の来院直後からの点眼遵守状況について問診で確認した.1186あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013(142) 表1DE-111共同試験グループ試験実施医療機関一覧(順不同)医療機関名試験責任医師名医療機関名試験責任医師名医療法人大谷地共立眼科医療法人社団慈眼会環状通り眼科さど眼科医療法人社団さくら有鄰堂板橋眼科医院眼科君塚医院ののやま眼科医療法人社団いとう眼科医療法人秀緑会高山眼科緑町医院春日部市立病院医療法人社団豊栄会さだまつ眼科クリニック医療法人社団秀光会かわばた眼科医療法人社団仁香会しすい眼科医院丹羽眼科財団法人厚生年金事業振興団東京厚生年金病院日本赤十字社医療センター吉川眼科クリニック医療法人社団聖愛会中込眼科医療法人社団みすまるのさと会アイ・ローズクリニック医療法人社団善春会若葉眼科病院医療法人社団高友会立川通クリニック道玄坂加藤眼科成城クリニック大橋眼科クリニック医療法人社団高瀬会たかせ眼科平町クリニック医療法人社団慶緑会あまきクリニック医療法人松鵠会みたに眼科クリニック医療法人社団湯田医院きくな湯田眼科医療法人社団律心会辻眼科クリニック戸塚駅前鈴木眼科特定医療法人丸山会丸子中央総合病院曽根聡秋葉純佐渡一成板橋隆三君塚佳宏野々山智仁伊藤睦子高山秀男水木健二貞松良成川端秀仁呉輔仁丹羽康雄藤野雄次郎濱中輝彦吉川啓司中込豊安達京吉野啓髙橋義徳加藤卓次松崎栄島﨑美奈子高瀬正郎小林幸三谷貴一郎湯田兼次辻一夫鈴木高佳野原雅彦国立大学法人岐阜大学医学部附属病院川瀬和秀医療法人社団秀浩会花崎眼科医院花﨑秀敏医療法人社団優あい会小野眼科クリニック小野純治医療法人社団緑泉会南波眼科南波久斌吉村眼科内科医院吉村弦医療法人安間眼科安間正子医療法人大雄会大雄会クリニック伊藤康雄医療法人高橋眼科髙橋研一独立行政法人労働者健康福祉機構淺野俊哉中部労災病院医療法人湖崎会湖崎眼科湖崎淳医療法人創正会イワサキ眼科医院岩崎直樹尾上眼科医院尾上晋吾杉浦眼科杉浦寅男医療法人岩下眼科岩下憲四郎医療法人菅澤眼科医院菅澤啓二地方独立行政法人神戸市民病院機構栗本康夫神戸市立医療センター中央市民病院長田眼科肱黒和子医療法人眼科康誠会井上眼科井上康広島県厚生農業協同組合連合会廣島総合病院二井宏紀山口県厚生農業協同組合連合会小郡第一総合病院榎美穂医療法人広田眼科広田篤林眼科病院林研新井眼科医院新井三樹医療法人蔵田眼科クリニック蔵田善規医療法人しらお眼科医院白尾真日本赤十字社長崎原爆病院脇山はるみ医療法人出田会出田眼科病院川崎勉健康保険組合連合会大阪中央病院井上由美子表2おもな選択基準および除外基準1)おもな選択基準(1)20歳以上(2)性別:不問(3)入院・外来の別:外来(4)導入期終了日(9時30分±30分)の少なくとも片眼の眼圧が18mmHg以上,両眼とも34mmHg以下2)おもな除外基準(1)以下の①.③のいずれかに該当する〔①気管支喘息,またはその既往を有する,②気管支痙攣,重篤な慢性閉塞性肺疾患を有する,③心不全,洞性徐脈,房室ブロック(II,III度),心原性ショックを有する〕(2)角膜屈折矯正手術の既往を有する(3)緑内障手術(レーザー線維柱帯形成術,濾過手術,線維柱帯切開術など)の既往を有する(4)試験期間中にコンタクトレンズの装用を必要とする(5)安全性上不適格と判断される合併症または臨床検査値異常を有する(6)試験責任医師・試験分担医師が本試験の対象として不適当と判断する同意取得導入期登録/割付け治療期4週間4週間二重盲検DE-111群タフルプロスト点眼液タフルプロスト群併用群【導入期】・タフルプロスト点眼液:1日1回(朝)両眼点眼【治療期】・DE-111群プラセボ点眼液:1日2回(朝,夜)両眼点眼DE-111点眼液:1日1回(朝)両眼点眼・タフルプロスト群プラセボ点眼液:1日2回(朝,夜)両眼点眼タフルプロスト点眼液:1日1回(朝)両眼点眼・併用群チモロール点眼液0.5%:1日2回(朝,夜)両眼点眼タフルプロスト点眼液:1日1回(朝)両眼点眼図1試験デザイン(143)あたらしい眼科Vol.30,No.8,20131187 表3検査・観察スケジュール観察項目導入期治療期中止時導入期開始時(.4週)0週2週4週文書同意●被験者背景●点眼遵守状況●●●●血圧・脈拍数測定●●●●●細隙灯顕微鏡検査●●●●●視力検査●●●眼圧測定午前中(12時まで)●●9時30分±30分●●●点眼2時間後±30分●●点眼8時間後±30分●●隅角検査●視野検査●眼底検査●●●臨床検査(血液・尿)●●●有害事象●c.各種検査・測定血圧・脈拍数測定,細隙灯顕微鏡検査,視力検査,眼圧測定,隅角検査,視野検査,眼底検査および臨床検査(血液・尿)を表3のスケジュールで実施した.眼圧測定は,導入期開始時,治療期0週,2週および4週または中止時の眼圧をGoldmann圧平眼圧計にて測定した.眼圧測定時刻は,導入期開始時では午前中,治療期0週および4週では朝点眼前の午前9.10時,朝点眼2時間後±30分および朝点眼8時間後±30分,治療期2週では朝点眼前の午前9.10時とした.中止時の眼圧測定時刻は規定しなかった.d.有害事象試験期間中に発現・悪化したすべての好ましくない,または意図しない疾病,またはその徴候を収集した.6.併用禁止薬および併用禁止療法試験期間を通じて,人工涙液,白内障治療剤およびビタミンB12製剤を除くすべての眼局所投与製剤,経口および静注投与の眼圧下降剤,すべてのb遮断薬,副腎皮質ステロイド薬および他の臨床試験薬の投与を禁止した.また,試験期間中の,眼科レーザー手術,コンタクトレンズの装用などを禁止した.7.評価方法a.有効性の評価有効性評価眼は,治療期0週(朝点眼前)の眼圧の高いほうの眼(左右が同値の場合は右眼)とした.主要評価項目は,治療期終了時(治療期4週または中止時)における治療期0週からの平均日中眼圧の変化量とした.なお,平均日中眼圧は,朝点眼前,点眼2時間後および点眼8時間後の平均値と定義した.また,副次評価項目は,各測定時点における治療期0週からの眼圧変化量および眼圧変化率とした.b.安全性の評価有害事象,臨床検査,血圧・脈拍数および眼科的検査をもとに安全性を評価した.8.解析方法a.有効性解析対象有効性は,最大の解析対象集団(FullAnalysisSet:FAS集団)を対象として検討した.また,試験実施計画書に適合した解析対象集団(PerProtocolSet:PPS集団)についても解析し,FAS集団との相違について考察した.b.安全性解析対象安全性は,被験薬または対照薬を少なくとも1回点眼し,安全性に関する何らかの情報が得られている被験者(安全性解析対象集団)を対象とした.c.データの取り扱い検査・観察時期が許容範囲から外れた場合,検査前日の点眼をしていない場合,検査当日の朝の点眼を眼圧測定の前に行った場合,および治療期0週以降の眼圧測定時刻が許容範囲から外れた場合は,当該検査日の眼圧データをPPS集団から除外した.1188あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013(144) d.解析方法主要評価および副次評価の解析には,投与群別に対応のあるt検定を行った.群間比較には,投与群を要因,0週の眼圧値を共変量とした共分散分析を用いた.眼圧下降率20%の症例割合についてはFisherの直接法により群間比較を行った.安全性の解析のうち,有害事象については,発現例数と発現率を集計し,全体の発現率についてFisherの直接法を用いて群間の比較を行った.また,臨床検査値については,各検査項目別の異常変動の発現例数と発現率を集計し,連続量データについては,対応のあるt検定を,順序尺度データに関しては符号検定を行った.血圧・脈拍数については対応のあるt検定を行った.眼科的検査(細隙灯顕微鏡検査,視力検査)については符号検定を行った.検定の有意水準は両側5%とし,区間推定の信頼係数は両側95%とした.解析ソフトはSASversion9.2(株式会社SASインスティチュートジャパン)を用いた.II結果1.被験者の構成被験者の内訳を図2に示した.文書同意を得て試験に組入れられた被験者は574例で,導入期が開始された被験者は558例,治療期が開始された被験者は489例であり,無作為にDE-111群161例,タフルプロスト群164例,併用群164例に割り付けられた.治療期中に5例が試験を中止し(DE-111群2例,タフルプロスト群2例,併用群1例),484例が試験を完了した(DE-111群159例,タフルプロスト群162例,併用群163例).無作為化された症例のうち,治療期用試験薬が投与されなかった1例を除く488例(DE-111群161例,タフルプロスト群164例,併用群163例)を安全性解析対象集団とした.さらに,ベースライン眼圧(治療期0週)が得られなかった1例を除く487例(DE-111群161例,タフルプロスト群163例,併用群163例)をFAS集団に,併用禁止薬使用などにより眼圧値が不採用となった13例を除く474例(DE111群156例,タフルプロスト群159例,併用群159例)をPPS集団とした.FAS集団における被験者背景を表4に示した.いずれの背景因子についても,群間に偏りはみられなかった.2.有効性FAS集団における平均日中眼圧や,その変化量の推移を図3と表5に,平均日中眼圧変化量の群間比較を表6に示した.治療期0週の平均日中眼圧は,DE-111群で19.6±2.0mmHg,タフルプロスト群で19.2±2.1mmHg,併用群で19.3±2.2mmHgであり,治療期終了時(4週または中止時)には,DE-111群で17.0±2.4mmHg,タフルプロスト群で18.3±2.8mmHg,併用群で17.1±2.5mmHgであった.文書同意を得た被験者:574例導入期の試験薬が投薬された被験者:558例無作為割付された被験者:489例DE-111群:161例タフルプロスト群:164例併用群:164例治療期の試験薬が投薬された被験者:488例DE-111群:161例タフルプロスト群:164例併用群:163例試験を完了した被験者:484例DE-111群:159例タフルプロスト群:162例併用群:163例導入期の試験薬未投与例:16例試験開始後に不適格が判明:10例試験継続の拒否:6例導入期中止例:69例有害事象発現:13例試験開始後に不適格が判明:51例転院,転居,多忙:5例治療期の試験薬未投与例:1例併用群:1例治療期に中止した被験者:4例有害事象発現:1例(DE-111群)通院が不可能:1例(DE-111群)転院,転居,多忙:1例(タフルプロスト群)試験開始後に不適格が判明:1例(タフルプロスト群)図2被験者の内訳(145)あたらしい眼科Vol.30,No.8,20131189 表4被験者背景項目分類DE-111群タフルプロスト群併用群合計例数161163163487診断名原発開放隅角緑内障高眼圧症90(55.9)71(44.1)84(51.5)79(48.5)73(44.8)90(55.2)247(50.7)240(49.3)男85(52.8)68(41.7)82(50.3)235(48.3)性別女76(47.2)95(58.3)81(49.7)252(51.7)年齢平均値±標準偏差最小.最大65歳未満65歳以上61.6±11.626.8592(57.1)69(42.9)63.0±12.623.8581(49.7)82(50.3)60.6±13.623.8487(53.4)76(46.6)61.7±12.723.85260(53.4)227(46.6)緑内障前治療薬なしあり28(17.4)133(82.6)27(16.6)136(83.4)31(19.0)132(81.0)86(17.7)401(82.3)合併症なしあり17(10.6)144(89.4)18(11.0)145(89.0)21(12.9)142(87.1)56(11.5)431(88.5)導入期の隅角(Shaffer分類)3437(23.0)124(77.0)46(28.2)117(71.8)40(24.5)123(75.5)123(25.3)364(74.7)導入期の緑内障性視野異常異常なし異常あり89(55.3)72(44.7)94(57.7)69(42.3)101(62.0)62(38.0)284(58.3)203(41.7)導入期の緑内障性眼底異常異常なし異常あり71(44.1)90(55.9)74(45.4)89(54.6)88(54.0)75(46.0)233(47.8)254(52.2)導入期終了時の平均日中眼圧(mmHg)平均値±標準偏差最小.最大19.6±2.016.0.27.319.2±2.115.0.27.319.3±2.215.3.30.319.4±2.115.0.30.3導入期終了時のトラフ眼圧(mmHg)平均値±標準偏差最小.最大20.1±1.918.0.29.019.8±1.918.0.27.019.9±2.118.0.32.019.9±2.018.0.32.0例数(%).10-1-2-3眼圧変化量(mmHg)**NS**-4-50週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.**:p<0.001,NS:有意差なし(p>0.05).主要評価である治療期終了時(4週または中止時)における治療期0週からの平均日中眼圧の変化量(平均値±標準偏差)は,DE-111群で.2.6±1.8mmHg,タフルプロスト群で.0.9±1.7mmHg,併用群で.2.2±1.8mmHgであり,いずれの群も0週からの有意な眼圧下降を示した(p<0.001).また,DE-111群とタフルプロスト群の平均日中眼圧変化量の群間差(DE-111群.タフルプロスト群)は.1.7±0.21190あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013:DE-111群:タフルプロスト群:併用群0週治療期終了時図3平均日中眼圧変化量(平均値±標準偏差)mmHgであり,DE-111群はタフルプロスト群と比較して有意な眼圧下降を示した(p<0.001).DE-111群と併用群の平均日中眼圧変化量の群間差(DE-111群.併用群)は.0.3±0.2mmHg,95%信頼区間は.0.7.0.1mmHgであり,上限は事前に設定した非劣性マージン1.5mmHgを超えなかったことから,DE-111群の併用群に対する非劣性が証明された.副次評価である治療期2週(朝点眼前),4週(朝点眼前,点眼2時間後,点眼8時間後)の各測定時点における治療期0週からの眼圧変化量(平均値±標準偏差)は表7と図4に示した.DE-111群とタフルプロスト群の群間比較では,DE111群はすべての測定時点において有意な眼圧下降を示した(p<0.001).DE-111群と併用群の群間比較では,DE-111群は治療期4週朝点眼前を含め,すべての測定時点において劣らない眼圧下降を示した(表8).なお,PPS集団を対象とした解析でもFAS集団の有効性と相違のない結果が得られた.治療期終了時(4週または中止時)の治療期0週に対する平均日中眼圧の眼圧下降率が20%以上であった症例の割合は,DE-111群で19.9%,併用群で13.5%,タフルプロスト群で5.5%(図5)とDE-111群が最も大きく,タフルプロス(146) 表5平均日中眼圧とその変化量時期DE-111群タフルプロスト群併用群平均日中眼圧(mmHg)変化量(mmHg)平均日中眼圧(mmHg)変化量(mmHg)平均日中眼圧(mmHg)変化量(mmHg)Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値0週19.6±2.0(161)..19.2±2.1(163)..19.3±2.2(163)..治療期終了時17.0±2.4(161).2.6±1.8(161)<0.00118.3±2.8(163).0.9±1.7(163)<0.00117.1±2.5(163).2.2±1.8(163)<0.001Mean±SD:平均値±標準偏差,p値:対応のあるt検定.表6平均日中眼圧変化量の群間比較DE-111群.タフルプロスト群(mmHg)DE-111群.併用群(mmHg)Mean±SE95%信頼区間p値Mean±SE95%信頼区間p値.1.7±0.2.2.1..1.3<0.001.0.3±0.2.0.7.0.10.098Mean±SE:平均値±標準誤差,0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.表7眼圧実測値の推移および変化量時期DE-111群タフルプロスト群併用群眼圧(mmHg)治療期0週からの変化量(mmHg)眼圧(mmHg)治療期0週からの変化量(mmHg)眼圧(mmHg)治療期0週からの変化量(mmHg)Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値0週朝点眼前20.1±1.9(161)..19.8±1.9(163)..19.9±2.1(163)..0週点眼2時間後19.8±2.4(161)..19.3±2.5(163)..19.3±2.4(163)..0週点眼8時間後18.9±2.4(161)..18.5±2.6(163)..18.6±2.7(163)..2週朝点眼前17.4±2.4(160).2.7±2.0(160)<0.00118.3±2.7(163).1.5±1.9(163)<0.00117.3±2.8(163).2.7±2.3(163)<0.0014週朝点眼前17.0±2.4(160).3.1±2.2(160)<0.00118.5±2.9(163).1.3±2.0(163)<0.00117.2±2.6(163).2.7±2.2(163)<0.0014週点眼2時間後17.0±2.5(160).2.8±2.1(160)<0.00118.4±3.1(162).0.9±2.1(162)<0.00117.0±2.6(163).2.4±2.1(163)<0.0014週点眼8時間後17.0±2.9(159).1.9±2.3(159)<0.00118.1±3.1(162).0.4±2.2(162)0.01417.0±3.0(163).1.6±2.2(163)<0.001Mean±SD:平均値±標準偏差,p値:対応のあるt検定.ト群と比較して有意であった(p<0.001).併用群との間には有意差はなかった.3.安全性a.有害事象および副作用安全性解析対象集団は,DE-111群161例,タフルプロスト群164例,併用群163例の計488例であった.治療期中に発現した有害事象と副作用の発現例数および発(147)現率を表9に,副作用一覧を表10に示した.有害事象は,DE-111群で23.0%(37/161例),タフルプロスト群で19.5%(32/164例),併用群で12.3%(20/163例)であった.そのうち,試験薬との因果関係が否定できない副作用は,DE-111群で10.6%(17/161例),タフルプロスト群で7.9%(13/164例),併用群で8.6%(14/163例)であった.有害事象の発現率は群間に有意差が認められたが,副作用の発あたらしい眼科Vol.30,No.8,20131191 2322212019181716151413時間後0時間後時間後4時間後**************:DE-111群:タフルプロスト群:併用群図4眼圧実測値(平均値±標準偏差)0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.DE-111群とタフルプロスト群との比較:いずれもp<0.001(**).併用群とタフルプロスト群との比較:いずれもp<0.001(**).DE-111群と併用群との比較:いずれも有意差なし(p>0.05).症例割合(%)眼圧(mmHg)**表8眼圧実測値変化量の群間比較時期DE-111群.タフルプロスト群(mmHg)DE-111群.併用群(mmHg)Mean±SE95%信頼区間p値Mean±SE95%信頼区間p値2週朝点眼前.1.2±0.2.1.6..0.7<0.0010.0±0.2.0.4.0.50.9054週朝点眼前.1.7±0.2.2.2..1.3<0.001.0.3±0.2.0.8.0.10.1474週点眼2時間後.1.7±0.2.2.2..1.3<0.001.0.3±0.2.0.7.0.10.1864週点眼8時間後.1.4±0.2.1.8..0.9<0.001.0.2±0.2.0.7.0.30.384Mean±SE:平均値±標準誤差,0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.3020100DE-111群タフル併用群プロスト群19.9%(32/161)5.5%(9/163)13.5%(22/163)図5治療期終了時に眼圧下降率20%以上であった症例の割合1192あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013現率は群間に有意差は認められなかった(有害事象:p=0.035,副作用:p=0.707).DE-111群のおもな副作用は,点状角膜炎(3.7%,6/161例)および結膜充血(3.1%,5/161例),タフルプロスト群のおもな副作用は,点状角膜炎(2.4%,4/164例)および結膜充血(2.4%,4/164例),併用群のおもな副作用は点状角膜炎(3.1%,5/163例)および結膜充血(1.8%,3/163例)と,共通の副作用が認められ,発現頻度に大きな差はなかった.いずれの群においても,副作用はすべて眼障害で重症度は軽度であり,試験中あるいは試験終了後に軽快または回復した.DE-111群の副作用により試験中止に至った被験者は,点状角膜炎を発現した1例(0.6%)で,軽度であり,試験薬の投与中止後に回復した.b.臨床検査DE-111群で総ビリルビン,総蛋白およびアルブミンが,(148) 表9治療期にみられた有害事象と副作用の発現例数および発現率DE-111群タフルプロスト群併用群検定(Fisherの直接法)例数161164163有害事象発現例数(%)37(23.0)32(19.5)20(12.3)p=0.035副作用発現例数(%)17(10.6)13(7.9)14(8.6)p=0.707表10副作用一覧DE-111群タフルプロスト群併用群例数161164163副作用発現例数(%)17(10.6)13(7.9)14(8.6)眼精疲労1(0.6)──眼瞼色素沈着──1(0.6)眼瞼炎──1(0.6)結膜炎─1(0.6)─眼瞼紅斑1(0.6)──眼刺激2(1.2)1(0.6)1(0.6)眼痛1(0.6)──眼充血2(1.2)─2(1.2)羞明──1(0.6)点状角膜炎6(3.7)4(2.4)5(3.1)霧視─1(0.6)─睫毛の成長──1(0.6)眼の異物感─1(0.6)─結膜充血5(3.1)4(2.4)3(1.8)眼瞼.痒症──1(0.6)眼.痒症1(0.6)1(0.6)2(1.2)例数(%).タフルプロスト群で血小板が,併用群で好酸球,総蛋白およびアルブミンが,投与前に比し有意な変動を示したが,これらの変動に関連する有害事象は認められなかった.また,薬剤との因果関係が否定できないとされた臨床検査値の異常変動は,DE-111群で0.6%(1/161例,項目:尿糖)に認められたが,試験終了後に基準値内へ回復した.c.血圧・脈拍数収縮期血圧,拡張期血圧について,0週と比較して有意な変動はいずれの群においても認められなかった.脈拍数について,0週と比較して有意な下降がDE-111群で2週(平均値±標準偏差,.2.0±7.5拍/分,p=0.001)および4週(.1.3±7.9拍/分,p=0.034)に,併用群で2週(.5.3±7.6拍/分,p<0.001)および4週(.5.3±8.6拍/分,p<0.001)に認められた.タフルプロスト群では,0週と比較して有意な変動は認められなかった.これらの脈拍数の変動は,臨床的に問題となるものではなかった.また,関連する有害事象は認められなかった.d.眼科的検査(細隙灯顕微鏡検査,視力検査)細隙灯顕微鏡検査所見について,0週と比較して有意なス(149)コアの上昇がDE-111群で4週の角膜フルオレセイン染色スコア(左眼:p=0.012)に認められたが,その他の項目に有意なスコアの変動は認められなかった.タフルプロスト群と併用群では,有意なスコアの変動は認められなかった.また,本スコアの変動について,関連する有害事象は認められたものの,すべて軽度であった.視力検査について,いずれの群でも有意な変動は認められなかった.III考察現在,わが国において発売されているPG関連薬とb遮断薬の配合点眼剤には,ラタノプロストとチモロールマレイン酸塩の配合点眼液(ザラカムR配合点眼液),およびトラボプロストとチモロールマレイン酸塩の配合点眼液(デュオトラバR配合点眼液)がある.これらの点眼液についてPG関連薬単剤を対照とした臨床試験は,国内外で実施されており配合点眼剤の優越性が検証されている2.6)が,PG関連薬とb遮断薬の併用治療を対照とした臨床試験(二重盲検群間比較試験)は国内に報告がない.海外では併用治療を対照とした臨床試験の報告があり,非劣性が検証された報告7)もあるが,一部の測定時点で非劣性が検証されなかったり,配合点眼液の眼圧下降効果が併用治療を有意に下回ったとの報告8.10)もある.今回,DE-111点眼液のタフルプロスト点眼液単剤投与に対する優越性と,タフルプロスト点眼液およびチモロール点眼液0.5%(1日2回点眼)の併用治療との非劣性を同一試験で検証した.本試験では,主要評価である治療期終了時(4週または中止時)における治療期0週からの平均日中眼圧変化量において,DE-111群はタフルプロスト群と比較して有意な眼圧下降を示した.また,併用群と比較して劣らない眼圧下降を示し,PG関連薬とb遮断薬の併用治療に対する配合点眼液の非劣性が,国内で初めて検証された.各眼圧測定時刻について比較しても,朝点眼前(トラフ値),点眼2時間後および点眼8時間後のすべての眼圧測定時刻において,DE-111群は併用群と比較して劣らない眼圧下降を示した.DE-111点眼液は,PG関連薬とb遮断薬の併用治療に比べるとb遮断薬の点眼回数が1日2回から1日1回に減るが,DE-111点眼液によって眼圧が1日中コントロール可能であることが確認された.チモロールはpHなあたらしい眼科Vol.30,No.8,20131193 どさまざまな条件により眼内移行が変化することが知られており11),配合点眼液の製剤設計の違いが効果の持続性に影響する可能性が考えられる.また,眼圧下降達成率で比較して20%以上の眼圧下降が得られた症例の割合は,DE-111群で19.9%,併用群で13.5%,タフルプロスト群で5.5%と,DE-111群が最も大きく,タフルプロスト群と比較して有意差が認められた.安全性について,有害事象は,DE-111群で23.0%(37/161例),タフルプロスト群で19.5%(32/164例),併用群で12.3%(20/163例)に認められ,群間に有意差が認められたものの,DE-111群では鼻咽頭炎(3.7%,6/161例)などの試験薬との因果関係が否定されたものが多く,副作用発現率では群間に差はなかった.いずれの群においても副作用はすべて眼局所のもので,かつ軽度で,試験中あるいは試験終了後に軽快または回復した.また,いずれの群でも,重篤な副作用はみられなかった.DE-111群のおもな副作用は,点状角膜炎(3.7%,6/161例),結膜充血(3.1%,5/161例)であるが,これらの副作用はタフルプロスト点眼液および0.5%チモロール点眼液の副作用情報において既知のものであり,各単剤の安全性プロファイルを超えるものではなかった.よって,配合による副作用増大の懸念はないと考えられた.以上の結果から,PG関連薬単剤で眼圧下降効果が不十分な場合に,DE-111点眼液に変更することで,薬剤数および点眼回数を増やすことなく治療効果の増大が期待できる.また,すでにPG関連薬とb遮断薬を併用している場合には,DE-111点眼液に変更することで併用治療に劣らない治療効果が維持できるだけでなく,薬剤数および点眼回数が減ることで,アドヒアランス不良の患者ではより優れた治療効果が期待できる.以上,DE-111点眼液は緑内障治療において有用性の高い配合点眼液である.利益相反:広田篤(カテゴリーI:参天製薬)文献1)緑内障診療ガイドライン(第3版):日眼会誌116:3-46,20122)北澤克明,KP2035共同試験グループ:原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたラタノプロスト・チモロール配合剤(KP2035)の第III相二重盲検比較試験.臨眼63:807-815,20093)清野歩,佐々木英之,山田啓二:緑内障・高眼圧症治療剤トラボプロスト/チモロールマレイン酸塩配合点眼液「デュオトラバR配合点眼液」.眼薬理25:22-26,20114)PfeifferN:Acomparisonofthefixedcombinationoflatanoprostandtimololwithitsindividualcomponents.GraefesArchClinExpOphthalmol240:893-899,20025)HigginbothamEJ,FeldmanR,StilesMetal:Latanoprostandtimololcombinationtherapyvsmonotherapy.ArchOphthalmol120:915-922,20026)DiestelhorstM,AlmegardB:Comparisonoftwofixedcombinationsoflatanoprostandtimololinopen-angleglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmol236:577581,19987)DiestelhorstM,LarssonL-I,forTheEuropeanLatanoprostFixedCombinationStudyGroup:A12-week,randomized,double-masked,multicenterstudyofthefixedcombinationoflatanoprostandtimololintheeveningversustheindividualcomponents.Ophthalmology113:70-76,20068)DiestelhorstM,LarssonL-I,forTheEuropeanLatanoprostFixedCombinationStudyGroup:A12weekstudycomparingthefixedcombinationoflatanoprostandtimololwiththeconcomitantuseoftheindividualcomponentsinpatientswithopenangleglaucomaandocularhypertension.BrJOphthalmol88:199-203,20049)SchumanJS,KatzGJ,LewisRAetal:Efficacyandsafetyoffixedcombinationoftravoprost0.004%/timolol0.5%ophthalmicsolutiononcedailyforopen-angleglaucomaorocularhypertension.AmJOphthalmol140:242-250,200510)HughesBA,BacharachJ,CravenERetal:Athree-month,multicenter,double-maskedstudyofthesafetyandefficacyoftravoprost0.004%/timolol0.5%ophthalmicsolutioncomparedtotravoprost0.004%ophthalmicsolutionandtimolol0.5%dosedconcomitantlyinsubjectswithopenangleglaucomaorocularhypertension.JGlaucoma14:392-399,200511)KyyronenK,UrttiA:EffectsofepinephrinepretreatmentandsolutionpHonocularandsystemicabsorptionofocularlyappliedtimololinrabbits.JPharmSci79:688-691,1990***1194あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013(150)

緑内障治療用の配合点眼液の1日薬剤費用評価

2012年10月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科29(10):1405.1409,2012c緑内障治療用の配合点眼液の1日薬剤費用評価冨田隆志*1櫻下弘志*1池田博昭*1塚本秀利*2木平健治*1*1広島大学病院薬剤部*2高山眼科EconomicConsiderationsRegardingtheNewFixed-CombinationOphthalmicSolutionsforTreatingGlaucomaTakashiTomita1),HiroshiSakurashita1),HiroakiIkeda1),HidetoshiTsukamoto2)andKenjiKihira1)1)DepartmentofPharmaceuticalServices,HiroshimaUniversityHospital,2)TakayamaEyeClinic新たに上市された緑内障用配合点眼液について,後発品を含む単味製剤を併用した場合と比較した薬剤経済性を評価した.評価対象は,ザラカムR,デュオトラバR,コソプトRと,これらを構成する成分の単味製剤(キサラタンR,ラタノプロスト後発品,トラバタンズR,チモプトールR0.5%,チモロールマレイン酸塩0.5%後発品,トルソプトR1%)のうち,入手可能であった22銘柄とし,各製剤の薬価,および総滴下数・1日使用回数・薬価から算出した理論上の1日薬剤費用を比較した.配合剤は先発品の単味製剤併用と比較すると安価で,後発品単味製剤併用と比較すると高価であったが,1日薬剤費用では後発品単味製剤を使用しても配合剤より高価になる組み合わせも認められた.1日薬剤費用の比較は,配合剤の評価においても必要と考えられる.Thecostsofthenewlyapprovedfixed-combinationophthalmicsolutionsfortreatingglaucomawereinvestigatedandcomparedwithuseoftheirseparatecomponents,includinginnovatorandgenericproductformulations.XalacomR,DuotravaRandCosoptR,asfixedcombinations,andtheiravailableseparatecomponentformulationswerestudied.Thepriceperbottleandthetheoreticalactualdailycostwerecalculatedonthebasisoftotaldropcountperbottle,standarddailydosageandofficialpriceofeachproduct.Thepriceperbottleandthedailycostoffixed-combinationproductswerelowerthanthoseofseparateformulationcombinationswhenusinginnovatorproducts,andconsiderablyhigherwhenusinggenericproducts.However,evaluationonthebasisofactualdailycostrevealedthatcertaincombinationsusinggenericproductsweremoreexpensivethanfixed-combinationproductformulations.Actualdailycostmayalsobehelpfulineconomicalevaluationoffixed-combinationophthalmicsolutions.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(10):1405.1409,2012〕Keywords:薬剤費,緑内障,配合点眼液,先発医薬品,後発医薬品.medicationcosts,glaucoma,fixed-combinationophthalmicsolution,innovatorproduct,genericproduct.はじめに医療用配合剤の承認申請の要件として,2005年に「患者の利便性の向上に明らかに資するもの」(医薬審査発第0331009号医薬食品局審査管理課長通知)が追加されて以降,内服薬を中心に多くの配合剤が発売された.点眼液の配合剤は2010年4月からザラカムR(ファイザー),2010年6月からデュオトラバR(日本アルコン),コソプトR(MSD)の3銘柄が上市されている(それぞれラタノプロスト0.005%,トラボプロスト0.004%,ドルゾラミド塩酸塩1%とチモロールマレイン酸塩0.5%の配合剤).筆者らは,点眼液の1滴容量は,容器を含む種々の要因で銘柄間に差が存在するため,点眼液の薬剤費用を比較する際は1瓶当たりの薬価基準(以下,薬価)を比較することに加え,点眼液1瓶を実際に使用できる期間(以下,点眼可能期間)から算出した薬剤費用の比較を行うことで,より適切に薬剤経済性が比較できることをこれまでに報告した1.4).今回,新たに上市された配合剤の薬剤経済性を明らかにする目的で,配合成分の単味製剤(先発医薬品:以下先発品,〔別刷請求先〕池田博昭:〒734-8551広島市南区霞1-2-3広島大学病院薬剤部Reprintrequests:HiroakiIkeda,DepartmentofPharmaceuticalServices,HiroshimaUniversityHospital,1-2-3Kasumi,Minami-ku,Hiroshima734-8551,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(89)1405 および後発医薬品:以下後発品を含む)を併用点眼した場合の経済性を,1瓶当たりの薬価および実際の点眼可能期間を考慮した1日薬剤費用(以下,1日薬剤費用)で比較した.I方法対象は,ザラカムR,デュオトラバR,コソプトRの3種の配合剤,およびこれら配合剤を構成する単味製剤(キサラタンR,ラタノプロスト後発品,トラバタンズR,チモプトールR0.5%,チモロールマレイン酸塩0.5%後発品,トルソプトR1%)のうち,入手可能であった22銘柄とした.1.1瓶の薬価調査対象とした点眼液の多くは,1日1回点眼の製剤は1瓶容量2.5mL,1日2回点眼の製剤は1瓶容量5mLであることから,1瓶当たりの薬価を比較に用いた.なお,トルソプトRは1日3回点眼で1瓶容量5mLであるため,比較には1.5瓶分の薬価を用いた.薬価は,小数点以下を四捨五入して比較した.2.1日薬剤費用a.ザラカムR,デュオトラバR,コソプトRについて既報1.4)と同様に室温(23℃)で専任者1名により1滴ずつ加圧滴下し,1瓶当たりの総滴数を計測した.計測は1名の計測者により同一ロット3瓶について行い,その平均値の小数点以下を切り捨てた滴下数と,添付文書記載の用法で両眼1回1滴点眼した場合の1日点眼滴数と2012年4月1日改訂薬価から,理論上の1日薬剤費用を算出した.b.その他の点眼液キサラタンR,ラタノプロスト後発品,トラバタンズR,トルソプトR1%,チモプトールR0.5%,チモロールマレイン酸塩0.5%後発品の1日薬剤費用は,筆者らの既報の滴下数1.4)を2012年4月1日改訂薬価に基づいて再計算した.II結果1.1瓶の薬価表1に対象とした配合剤および単味製剤の1瓶容量,1日表1対象とした点眼薬の1瓶容量,薬価および点眼回数製品名1瓶容量(mL)1瓶薬価(円)点眼回数(片眼)配合剤先発品ザラカムR配合点眼液2.53,243.001デュオトラバR配合点眼液2.53,386.251コソプトR配合点眼液5.03,340.002ラタノプロスト先発品キサラタンR点眼液0.005%2.51,923.251後発品ラタノプロストPF点眼液0.005%「日点」ラタノプロスト点眼液0.005%「AA」,「アメル」,「ケミファ」,「センジュ」,「ニットー」2.51,427.001同「NS」,「TOA」,「ニッテン」2.51,364.751同「NP」,「TYK」,「イセイ」,「科研」,「コーワ」,「トーワ」,「わかもと」2.51,280.001同「キッセイ」,「タカタ」,「マイラン」2.51,191.751同「CH」,「KRM」,「TS」,「サワイ」2.51,094.001同「三和」,「日医工」2.5936.001トラボプロスト先発品トラバタンズR点眼液0.004%2.52,449.001ドルゾラミド先発品トルソプトR点眼液1%5.01,445.50*3チモロール先発品チモプトールR点眼液0.5%5.01,760.502チモプトールRXE点眼液0.5%2.51,877.501リズモンRTG点眼液0.5%2.51,839.751後発品チモレートR点眼液0.5%,チモレートRPF点眼液0.5%,リズモンR点眼液0.5%5.0583.502チモロール点眼液0.5%「テイカ」,チモロール点眼液T0.5%5.0532.002チアブートR点眼液0.5%,ファルチモR点眼液0.55.0348.002*:トルソプトR点眼液は1日3回点眼で1瓶容量5mLであるため,以後の比較では1.5瓶分の薬価を用いている.1406あたらしい眼科Vol.29,No.10,2012(90) 点眼回数,1瓶薬価を示し,配合剤を構成する単味製剤の組み合わせの薬価の分布を図1に示した.a.ザラカムRについて(表1)ザラカムR1瓶の薬価は3,243円で,単味製剤先発品の合計薬価3,684円(キサラタンR1瓶1,923円とチモプトールR0.5%1瓶1,761円)より441円安価であったが,最も安価な単味製剤後発品併用の合計薬価1,284円(ラタノプロスト・三和または日医工1瓶936円とチアブートRまたはファルチモR1瓶348円)より1,954円高価であった.ザラカムRに対する単味製剤併用の薬価比は0.40.1.14であった.それぞれの単味製剤の先発品と後発品の1瓶の最大薬価差はチモロールが1,530円,ラタノプロストが987円であり,後発品を使用することによって生じる薬価差はチモロールで:配合剤:先発品+先発品:先発品+チモロール後発品:ラタノプロスト後発品+先発品:後発品+後発品A4,500影響が大きかった.一方,後発品の銘柄間の1瓶薬価の差は,チモロールが236円,ラタノプロストが491円であり,後発品の銘柄選択の影響はラタノプロストで大きかった.b.デュオトラバRについて(表1)デュオトラバR1瓶の薬価は3,386円で,単味製剤先発品の合計薬価4,210円(トラバタンズR1瓶2,449円,チモプトールR0.5%1瓶1,761円)より824円安価であったが,トラバタンズRとチモプトールR0.5%の最も安価な後発品(チアブートRまたはファルチモR1瓶348円)併用の合計薬価2,797円より589円高価であった.デュオトラバRに対する単味製剤併用の薬価比は0.83.1.24であった.c.コソプトRについて(表1)コソプトR1瓶の薬価は3,340円で,単味製剤先発品の合計薬価3,929円(トルソプトR1.5瓶2,168円,チモプトールR0.5%1瓶1,761円)より589円安価であったが,トルソプトRにチモプトールR0.5%の最も安価な後発品(チアブートRまたはファルチモR1瓶348円)併用の合計薬価2,516円より824円高価であった.コソプトRに対する単味製剤併用の薬価比は0.75.1.18であった.1瓶薬価(円)B4,0002.1日薬剤費用3,500今回,新たに計測した配合剤の1日薬剤費用を表2に,筆3,000者らの既報値から現在の薬価を用いて再算出した単味製剤の2,5001日薬剤費用を表3に示した.図1に配合剤を構成する単味2,0001,500製剤の組み合わせの1日薬剤費用の分布を示した.1,000a.ザラカムRについて500ザラカムRの1日薬剤費用は72.1円で,単味製剤先発品0の合計88.3円(キサラタンR42.3円,チモプトールR0.5%1801日薬剤費用(円)160140120100806040200ザラカムRデュオトラバRコソプトR図1配合剤と単味製剤併用の1瓶薬価および1日薬剤費46.0円)より16.2円安価であったが,最も安価な単味製剤後発品併用の合計30.7円(ラタノプロスト・三和または日医工20.8円,チアブートR9.9円)より41.4円高価であった.ザラカムRに対する単味製剤併用の1日薬剤費用比は0.43.1.22であり,単味製剤をいずれも後発品で併用した場合はどの組み合わせでもザラカムRよりも安価であった.b.デュオトラバRについてデュオトラバRの1日薬剤費用は67.7円で,単味製剤先発品の合計93.6円(トラバタンズR47.6円,チモプトールR用の比較0.5%46.0円)より25.9円安価であった.トラバタンズRとA:1瓶薬価.B:1日薬剤費用について,横線で配合剤チモプトールR0.5%の最も安価な後発品(チアブートR9.9の費用を示し,縦線で単味製剤併用時の費用の分布(最大値から最小値)を示した.円)の合計57.5円より10.2円高価であった.デュオトラバR表2配合点眼薬の点眼可能期間を考慮した1日薬剤費用製品名1瓶薬価(円)点眼回数(片眼)滴下可能数1滴薬剤費用(円)1日薬剤費用(両眼)(円)ザラカムR配合点眼液デュオトラバR配合点眼液コソプトR配合点眼液3,2433,3863,34011290.7±2.1100.7±3.1123±1.736.033.927.272.167.7108.6(91)あたらしい眼科Vol.29,No.10,20121407 表3単味製剤の点眼可能期間を考慮した1日薬剤費用製品名1日薬剤費用(円)キサラタンR点眼液0.005%42.31)ラタノプロスト点眼液0.005%「アメル」41.41)ラタノプロスト点眼液0.005%「TOA」40.11)ラタノプロスト点眼液0.005%「AA」38.61)ラタノプロスト点眼液0.005%「ニットー」38.61)ラタノプロストPF点眼液0.005%「日点」38.11)ラタノプロスト点眼液0.005%「ニッテン」37.91)ラタノプロスト点眼液0.005%「トーワ」36.61)ラタノプロスト点眼液0.005%「科研」35.61)ラタノプロスト点眼液0.005%「ケミファ」31.71)ラタノプロスト点眼液0.005%「センジュ」31.41)ラタノプロスト点眼液0.005%「KRM」30.41)ラタノプロスト点眼液0.005%「NP」30.11)ラタノプロスト点眼液0.005%「サワイ」29.21)ラタノプロスト点眼液0.005%「NS」28.71)ラタノプロスト点眼液0.005%「タカタ」26.81)ラタノプロスト点眼液0.005%「わかもと」26.11)ラタノプロスト点眼液0.005%「コーワ」25.91)ラタノプロスト点眼液0.005%「マイラン」24.81)ラタノプロスト点眼液0.005%「キッセイ」24.61)ラタノプロスト点眼液0.005%「TS」22.81)ラタノプロスト点眼液0.005%「三和」20.81)ラタノプロスト点眼液0.005%「日医工」20.81)トラバタンズR点眼液0.004%49.52)トルソプトR点眼液1%78.13)リズモンRTG点眼液0.5%94.34)チモプトールRXE点眼液0.5%49.44)チモプトールR点眼液0.5%46.04)チモレートR点眼液0.5%21.24)リズモンR点眼液0.5%18.14)チモロール点眼液0.5%「テイカ」17.04)チモロール点眼液T0.5%16.84)ファルチモR点眼液0.512.14)チアブートR点眼液0.5%9.94)に対する単味製剤併用の1日薬剤費用比は0.85.1.38であった.c.コソプトRについてコソプトRの1日薬剤費用は108.6円,単味製剤先発品の合計124.1円(トルソプトR78.1円,チモプトールR0.5%46.0円)より15.5円安価であった.トルソプトRとチモプトールR0.5%の最も安価な後発品(チアブートR9.9円)の合計87.9円より20.7円高価であった.コソプトRに対する単味製剤併用の1日薬剤費用比は0.81.1.14であった.III考察配合剤を使用する利点として,点眼回数の減少とそれに伴う点眼間隔に要する時間の減少などの患者の利便性向上によ1408あたらしい眼科Vol.29,No.10,2012るアドヒアランスの改善の他,複数回点眼時に直前に点眼した薬剤が洗い流されてしまうリスクも少ないことなどがある.また,配合剤では,点眼液に含まれる添加剤の角膜上皮への曝露量を最小限にできることから,副作用の軽減などの治療上の改善も考えられる5).緑内障患者は長期にわたり点眼液を使用するため,点眼液の薬剤費用がアドヒアランスに影響を及ぼすという報告もある6,7).点眼液を選択するうえでは治療効果のみならず,その経済性も考慮することが望まれる.配合剤使用の薬剤費用への影響は,点眼回数の違いや後発品の存在のため複雑である.今回検討対象とした配合剤の1日点眼回数は,配合した単味製剤の少ないほうに統一されている.ザラカムR,デュオトラバRではチモロールの点眼回数が1日2回から1回に,コソプトRではドルゾラミドの点眼回数が1日3回から2回に減ることになる.しかしながら,ザラカムR,コソプトRについては,単味製剤をそれぞれの用法で併用した場合と比較した眼圧降下作用の非劣性が臨床試験で示されている(ザラカムR配合点眼液承認審査報告書およびコソプトR配合点眼液承認審査報告書,医薬品医療機器総合機構).デュオトラバRについても,チモロールの点眼回数についてはザラカムRと同様であることから,本検討では薬剤費用だけを評価した.点眼液の薬剤費用を評価する手段としては,1瓶薬価を比較することが簡便である.配合剤の1瓶薬価は,単味製剤先発品併用の合計より割安であったが,チモロールの後発品を用いた併用では,いずれの組み合わせでも配合剤の薬剤費用が割高となった.配合剤の新収載時の薬価は,単味製剤の合計金額(後発品が発売されている品目については,最も安価な銘柄の薬価を使用)の8割,あるいは単味製剤いずれかの薬価の高い価格と改められている.しかし,今回検討の対象とした3種の配合剤の薬価収載時には外用剤はこのルールから除外されており,先発品の薬価の単純な合計額となっている.配合剤の1日点眼回数が単味製剤使用時よりも少なく設定されているという用法の違いから,先発品使用時を考えると配合点眼薬は単剤併用よりも安価になるが,その程度は軽微である.単味製剤にはすでに後発品も上市されている場合があり,後発品を組み合わせて使用することを考えると,配合剤の薬価が割高となった.一方,点眼液の滴下容量は,薬剤の種類のみでなく,点眼容器の形状,添加物濃度などの影響を受けるため,点眼液の経済性比較を行う際には,1滴容量を加味した1日薬剤費用の評価が必要である.1日薬剤費用での比較においても,先発品を使用すると単味製剤併用よりも配合剤が安価になり,後発品を使用すると単味製剤併用が配合剤よりも安価になる傾向は変わらなかった.しかし,単味製剤併用において,後(92) 発品を用いても配合剤の薬剤費用を上回る組み合わせも存在しており(デュオトラバR67.7円に対し,トラバタンズRとチモレートRの併用が70.7円,など),後発品間の1日薬剤費用の違いが薬価の違いよりも大きいこと,ラタノプロスト製剤は,後発品のなかに1日薬剤費用が先発品とほとんど変わらないものも存在していることなどの影響が認められた.今回の検討では,1日薬剤費用の考慮により,配合剤の経済性を実際に即した形で評価できた.容器や添加物の違いも,使用性や忍容性にも影響しうるため,薬剤選択のうえで重要な要素である.しかし,1日薬剤費用による経済性の比較は,配合剤の評価においても必要と考えられる.本論文の要旨は第22回日本緑内障学会(2011)で発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)櫻下弘志,冨田隆志,池田博昭ほか:ラタノプロスト点眼液の先発医薬品と後発医薬品における1日あたりの薬剤費の比較.臨眼65:1079-1082,20112)冨田隆志,櫻下弘志,池田博昭ほか:プロスタグランジン関連薬の滴下可能期間と1日薬剤費の比較.あたらしい眼科28:1179-1181,20113)冨田隆志,池田博昭,塚本秀利ほか:緑内障点眼薬の1滴用量と1日薬剤費用.臨眼60:817-820,20064)冨田隆志,池田博昭,櫻下弘志ほか:b遮断薬点眼薬の先発医薬品と後発医薬品における1日あたりの薬剤費の比較.臨眼63:717-720,20095)山崎仁志,宮川靖博,目時友美ほか:トラボプロスト点眼液の点状表層角膜症に対する影響.あたらしい眼科27:1123-1126,20106)FriedmanDS,HahnSR,GelbLetal:Doctor-patientcommunication,health-relatedbeliefs,andadherenceinglaucomaresultsfromtheGlaucomaAdherenceandPersistencyStudy.Ophthalmology115:1320-1327,20087)TsaiJC:Acomprehensiveperspectiveonpatientadherencetotopicalglaucomatherapy.Ophthalmology116:S30-S36,2009***(93)あたらしい眼科Vol.29,No.10,20121409

ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩への切り替え 3日後に発症した脳梗塞の1例

2011年12月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科28(12):1753.1757,2011cラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩への切り替え3日後に発症した脳梗塞の1例西野和明*1八巻稔明*2吉田富士子*1新田朱里*1齋藤三恵子*1齋藤一宇*1*1医療法人社団ひとみ会回明堂眼科・歯科*2KKR札幌医療センター脳神経外科OccurrenceofCerebralInfarctiononDay3afterSwitchfromMorningTimololtoEveningFixedCombinationofLatanoprostandTimololKazuakiNishino1),ToshiakiYamaki2),FujikoYoshida1),AkariNitta1),MiekoSaito1)andKazuuchiSaito1)1)KaimeidohOphthalmic&DentalClinic,2)KKRSapporoMedicalCenter,DivisionofNeurosurgery目的:緑内障点眼薬のアドヒアランスの向上を目的として,近年配合点眼液の使用が増加してきた.一方,チモロールマレイン酸塩が配合されているため高齢者に対する心肺機能や脳血管障害など重大な副作用に注意する必要がある.今回筆者らは多剤併用療法から配合点眼液ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩(FCLT)に切り替えた3日後,脳梗塞が発症した症例を経験したので報告する.症例:78歳,男性.原発開放隅角緑内障(POAG)の診断にて1998年1月から点眼治療を行ってきたが,右眼の視野は湖崎分類IV期,左眼はVb期で末期のPOAGである.点眼治療はラタノプロスト,チモロールマレイン酸塩持続性製剤(朝1回),ドルゾラミド塩酸塩の併用療法で,眼圧は右眼17mmHg,左眼16mmHg.患者は末期のPOAGであるにもかかわらず,点眼遵守不良であったため,2010年5月14日からFCLT(夜1回)とドルゾラミド塩酸塩の併用にしたところ,5月19日「一昨日からの急激な視力低下」を主訴として再診.変更前の視力は右眼(0.8),左眼(手動弁)であったが,変更後は右眼(0.1),左眼(光覚弁)と低下し,眼圧は右眼18mmHg,左眼20mmHgと上昇していた.めまい,ふらつき,吐気,右手の脱力感もみられたため脳神経外科を受診させたところ両側後頭葉の脳梗塞と診断された.結論:本症は約10年もの間,チモロールマレイン酸塩持続性製剤(朝1回)を併用していたにもかかわらず副作用がなく,FCLT(夜1回)に切り替えた3日後に脳梗塞が発症していることから,FCLTの副作用である可能性を否定できない.FCLTの夜点眼が要因の一つである可能性がある.Purpose:Toreportacaseofcerebralinfarctionthatoccurredonday3afterswitchingfromtimololinthemorningtoafixedcombinationoflatanoprostandtimololintheevening.Case:Thepatient,a78-year-oldmale,hadbeentreatedatKaimeidohOphthalmicClinicsinceJanuary1998forprimaryopen-angleglaucoma.Eyedropmedicationsweretimolol,dorzolamideandlatanoprost.intraocularpressure(IOP)was17mmHgrighteye,16mmHglefteye.Despitetheadvancedstageglaucoma,adherencewaspoor.Themedicationplanwasthenswitchedtoafixedcombinationoflatanoprostandtimololintheevening,withdorzolamide.Onday3aftertheswitch,thepatientsufferedsuddenvisionloss.Bestcorrectedvisualacuityoftherighteyedecreasedfrom0.8to0.1.IOProseto18mmHgrighteyeand20mmHglefteye.Thepatientexperienceddizziness,faintness,nauseaandlossofmusclepowerinhisrightarm;hewassenttoNeurosurgeryClinicforfurtherexamination.Thediagnosiswascerebralinfarction.Conclusion:Thecauseofcerebralinfarctionwasundeniablyassociatedwiththeswitchfrommorningtimololtoeveningfixedcombinationoflatanoprostandtimolol.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(12):1753.1757,2011〕Keywords:ラタノプロスト,チモロールマレイン酸塩,配合点眼液,ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩,脳梗塞.timolol,latanoprost,fixedcombinationoflatanoprostandtimolol,cerebralinfarction.〔別刷請求先〕西野和明:〒062-0020札幌市豊平区月寒中央通10-4-1医療法人社団ひとみ会回明堂眼科・歯科Reprintrequests:KazuakiNishino,M.D.,KaimeidohOphthalmic&DentalClinic,10-4-1Tsukisamuchu-o-dori,Toyohira-ku,Sapporo062-0020,JAPAN0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(91)1753 bbはじめに緑内障点眼薬のアドヒアランスの向上を目的として,近年配合点眼液の使用が増加してきた.一方,チモロールマレイン酸塩が配合されているため高齢者に対する心肺機能や脳血管障害など重大な副作用に注意する必要がある.今回筆者らはアドヒアランスの向上を目的として,チモロールマレイン酸塩持続性製剤(朝1回)を含むプロスタグランジン関連薬,炭酸脱水酵素阻害薬の多剤併用療法から,配合点眼液ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩(FCLT)の夜1回点眼と炭酸脱水酵素阻害薬の多剤併用に切り替えた直後,脳梗塞が発症した症例を経験したので報告する.I症例患者:78歳,男性(脳梗塞発症時年齢).主訴:視力低下,めまい,ふらつき(脳梗塞発症時).眼科既往歴:2000年4月19日,回明堂眼科・歯科(以下,当院)にて左眼白内障手術,4月25日,右眼白内障手術.全身既往歴:1997年,大腸癌の手術.その後は転移などの異常はみられない.その他にも身長161.5cm,体重55kg,血圧110/65,脈拍80/分と目立った問題はない.家族歴:特記すべきことなし.現病歴:総合病院眼科にて緑内障の診断で点眼治療を受けていたが,1998年1月8日,近医である当院を初診.精査の結果,原発開放隅角緑内障(POAG)と診断した.初診時視力は右眼0.04(0.5×.5.25D(cyl.0.5DAx95°),左眼0.06(0.3×.3.75D(cyl.1.0DAx90°).眼圧は前医のチモロールマレイン酸塩とイソプロピルウノプロストンの併用で右眼17mmHg,左眼20mmHg.前房は深く,隅角は開放している.中間透光体には中等度の白内障がみられた.眼底検査では視神経乳頭の陥凹が深く,C/D(陥凹乳頭比)はほぼ1.0でかなり進行した緑内障と考えられた.Humphreya図2Goldmann視野検査(2007年3月28日:脳梗塞発症26カ月前)右眼,湖崎分類IV期.当日左眼の検査を実施していないが,後日湖崎分類Vb期へと進行したことを確認した.視野計(30-2)では,MD(平均偏差)値が右眼.14.54dB,左眼.26.59dBとかなり進行していた.当初から進行したPOAGであったため,b遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬,プロスタグランジン関連薬などを複数組み合わせる多剤併用の点眼治療を選択.2001年11月30日からは多剤併用点眼の治療内容をチモロールマレイン酸塩持続性製剤(朝1回)ラタノプロスト,ドルゾラミド塩酸塩の併用療法に固定.眼(,)圧は両眼ともほぼ16mmHgから18mmHgまでで推移した.緑内障の進行を抑制するため,さらなる眼圧下降を期待し手術を検討したが,患者が手術を希望しなかったことや,アドヒアランスも不良であったことなどから視野は徐々に悪化.最近数年間で右眼は湖崎分類IIIb期からIV期へ,左眼はIV期からVb期へと進行した(図1a,b,図2).同時期の眼底検査でも緑内障末期の視神経乳頭を確認することができる図1Goldmann視野検査(2006年3月27日:脳梗塞発症38カ月前)a:左眼,湖崎分類IV期,b:右眼,湖崎分類IIIb期.1754あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011(92) abab図3視神経乳頭所見(2008年12月24日:脳梗塞発症15カ月前)a:右眼視神経.陥凹は深く,laminacribrosaが透見しうる.乳頭耳側の辺縁はかなり薄く,C/Dはほぼ1.0である.b:左眼視神経.右眼とほぼ同等であるが,相対的に右眼より色調が蒼白化している.(図3a,b).アドヒアランス不良の改善を目的として,2010年5月14日からFCLT(夜1回)とドルゾラミド塩酸塩の併用に切り替えた.経過:5月19日「一昨日から急激に視力が低下した」ことを主訴として再診.変更前の矯正視力は右眼(0.8),左眼(手動弁)であったが,変更後は右眼(0.1),左眼(光覚弁)と低下し,眼圧は右眼18mmHg,左眼20mmHgと上昇していた.患者がこの視力低下などはFCLTへの切り替えが原因ではないかと考えたことや,本人の希望もあり,点眼計画をFCLTへの切り替え前と同じチモロールマレイン酸塩図4頭部MRI(磁気共鳴画像)所見(2010年5月21日:脳梗塞発症4日後)T2強調画像で,両側後頭葉に広範囲に脳梗塞を認める.ab図5Goldmann視野検査(2010年7月12日:脳梗塞発症2カ月後)a:左眼,湖崎分類Vb期,b:右眼,湖崎分類IV期.(93)あたらしい眼科Vol.28,No.12,20111755 持続性製剤(朝1回),ラタノプロスト,ドルゾラミド塩酸塩の併用療法に戻した.また,患者が眼科的な所見以外にめまい,ふらつき,吐気,右手の脱力感も自覚していたため,脳神経外科を受診させたところ両側後頭葉の脳梗塞と診断された(図4).脳神経外科では急性期の治療はせず,リハビリテーション中心の治療を行った.リハビリテーション中,徐脈(36回/分),頻脈(136回/分)のくり返しが発症,それが数日続き,失神もみられた.しかしながら循環器内科による精査でも異常はみられなかった.6月9日,右眼の矯正視力は(0.2)まで回復した.7月14日,Goldmann視野検査では3年前と大きな変化はみられなかった(図5a,b).今後チモロールマレイン酸塩持続性製剤(朝1回)に関しては,より心肺への影響が少なく,かつ内因性交感神経刺激様作用を有するカルテオロール塩酸塩に変更していく予定である.II考按1983年米国のFDA(FoodandDrugAdministration)とAAO(AmericanAcademyofOphthalmology)が中心になってまとめた,チモロールマレイン酸塩の副作用に関する全国登録(NationalRegistry)によれば1),1,472人の副作用が登録され,心臓血管系だけでも300人に副作用が認められた.その内訳は徐脈71人,不整脈36人,低血圧25人,CVA(cerebrovascularaccident)28人,その他140人で,そのなかに心不全,狭心症,心筋梗塞,脳梗塞が含まれる.ちなみにその当時の点眼は朝夕の2回であったと思われる.また,オーストラリアで3,654人の住民を対象としたBlueMountainsEyeStudyによれば,9年間の間に死亡した住民は873人で,そのうち312人は心臓血管系の疾患で死亡している.そのなかで緑内障と診断されていた患者の心臓血管系の疾患による死亡率は14.6%で,緑内障ではない患者8.4%に比べ高かったと報告している2).その理由としてチモロールマレイン酸塩の点眼をあげている.わが国においても北澤らがチモロールマレイン酸塩持続性製剤(朝1回)の治験で,有害事象にあげられた「心房細動」「左足愁訴(脳梗塞)」に関して,本剤との関連が不明ながら,主薬のb遮断作用に基づく循環器系障害が関与した可能性を否定できないと述べている3).別の治験においてもチモロールマレイン酸塩の点眼グループで脳出血の患者が1例確認されている4).一方,チモロールマレイン酸塩の点眼後の血中濃度は体位や運動などの負荷などにより若干の差はあるものの,徐脈をひき起こすことは間違いないという.しかし,血圧や脳卒中には関係しなかったと述べている5).ただし,この報告は25人の緑内障あるいは高眼圧症を対象とした規模の小さい研究であり,同様の複数の研究結果の集積が必要と思われる.本症における脳梗塞が点眼計画の変更との因果関係につい1756あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011て検討するようになったきっかけは,FCLTへ切り替えてからわずか3日後に発症しており,患者がFCLTの使用が原因ではないかと感じたということからである.もちろんこの脳梗塞の原因は眼科の点眼とは関係がなく,偶然起こったと考えることもできる.患者は13年前に大腸癌の手術を受けた以外には大きな既往歴もなく,職場の健康診断でも常に血液データ,血圧などに異常はなかったという.しかも大腸癌の手術後に転移などの異常は指摘されていない.飲酒,喫煙歴がなく,家族歴にも心臓血管系の患者がなく,脳梗塞の発症要因が少ない患者であったと考えられる.本症ではアドヒアランスの改善を目的として,チモロールマレイン酸塩持続性製剤(朝1回),ラタノプロスト,ドルゾラミド塩酸塩の多剤併用療法を,より簡単なFCLTとドルゾラミド塩酸塩の多剤併用療法に切り替えた.この切り替えにより,唯一変更になった点は,チモロールマレイン酸塩持続性製剤の朝1回点眼が,FCLTに含まれるチモロールマレイン酸塩の夜1回点眼になったということである.チモロールマレイン酸塩は点眼後,その80%が涙道の粘膜から血管中に吸収される.その薬理学的作用により脳内血流が低下しさまざまな脳症状,つまり意識障害,軽度の頭痛,失神,見当識障害をひき起こすことが知られている6).仮にその脳血流量の低下の危険性が朝点眼より夜点眼のほうが高いとすれば,夜点眼が本症の脳梗塞の要因の一つになった可能性がある.もちろん本症だけでは証拠は不十分で,今後も同様の症例の集積が必要である.本症は偶然にも軽い脳梗塞で,患者が直接眼科を再診したため,点眼薬と脳梗塞の因果関係を検討するきっかけになった.もし脳梗塞が重篤で脳神経外科で直接治療を受けていたとしたら,チモロールマレイン酸塩と脳梗塞の因果関係は検討されなかったかもしれない.この10年間の緑内障点眼薬の主流はプロスタグランジン関連薬であり,すっかりチモロールマレイン酸塩などのb遮断薬にとって代わっている.ところが昨年からは日本においても配合点眼薬が3種類発売され,そのいずれにもチモロールマレイン酸塩が配合されており,再びチモロールマレイン酸塩の使用頻度が期せずして増加することになった.今のところFCLTに関するヨーロッパの複数多施設による長期の安全性に関する研究では大きな問題は報告されていない7).ちなみに分析した974例中,副作用のため中止になったのは133例で,そのうち重症な全身副作用と考えられた13例中3例のみがFCLTとの因果関係があると判定された.その内訳は頭痛,失神,徐脈などで,脳梗塞は含まれていなかった.チモロールマレイン酸塩は前述のごとく1),心臓血管系に対する重大な副作用を起こすことが知られており,それを含む配合点眼薬の使用に際しては,患者の健康状態を十分に把握し,慎重に投与する必要がある.その意味で本症は,チモロールマレイン酸塩の全身(94) への副作用を改めて理解するうえで重要と思われる.本症のみからチモロールマレイン酸塩の点眼は朝方と夕方のいずれの時間帯が安全かを述べることはできないが,今後どの時間帯に点眼するのが安全かを考えるうえでも,貴重な症例と思われ報告した.本論文の要旨は第158回北海道眼科集談会(札幌)で口演した.文献1)ZimmermanTJ,BaumannJD,HetheringtonJ:Sideeffectsoftimolol.SurvOphthalmol28:243-249,19832)LeeAJ,WangJJ,KifleyAetal:Open-angleglaucomaandcardiovascularmortality:theBlueMountainsEyeStudy.Ophthalmology113:1069-1076,20063)北澤克明,塚原重雄,東郁郎ほか:原発開放隅角緑内障および高眼圧症に対するWP-934点眼液の第Ⅱ相試験─8週間および長期投与試験─.臨床医薬12:2663-2682,19964)北澤克明,東郁郎,三島弘ほか:塩酸ベタキソロール点眼液の心肺機能への影響に関する検討─緑内障または高眼圧症を対象としたマレイン酸チモロール点眼液との無作為化比較試験─.あたらしい眼科19:1379-1389,20025)NieminenT,UusitaloH,TurjanmaaVetal:Associationbetweenlowplasmalevelsofophthalmictimololandhaemodynamicsinglaucomapatients.EurJClinPharmacol61:369-374,20056)VanBuskirkEM,FraunfelderFT:Timololandglaucoma.ArchOphthalmol99:696,19817)AlmA,GrundenJW,KwokKK:Five-year,multicentersafetystudyoffixed-combinationlatanoprost/timolol(Xalacom)foropen-angleglaucomaandocularhypertension.JGlaucoma20:215-222,2011***(95)あたらしい眼科Vol.28,No.12,20111757