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LSFG-NAVITM を用いた視神経乳頭辺縁部組織血流の領域別評価

2010年9月30日 木曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(113)1279《第20回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科27(9):1279.1285,2010cはじめに眼循環障害と緑内障性視神経障害との関連を示唆する報告は比較的多く,視神経乳頭(乳頭)近傍の循環動態は緑内障の進行に関与する因子の一つと考えられている.しかし,その報告は傍証的で,血流障害と視神経障害との関連を直接的に証明した報告は少なく,その原因として眼底血流測定法が十分に確立されていないことがあると考えられる.今回の研究ではLSFG-NAVITM(ソフトケア,福岡)により乳頭辺縁部組織血流を測定した.LSFG-NAVITMはレーザースペックル法1)を応用した血流測定装置であり,2008〔別刷請求先〕柴田真帆:〒569-8686高槻市大学町2-7大阪医科大学眼科学教室Reprintrequests:MahoShibata,M.D.,DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,2-7Daigaku-machi,Takatsuki-shi,Osaka569-8686,JAPANLSFG-NAVITMを用いた視神経乳頭辺縁部組織血流の領域別評価柴田真帆*1杉山哲也*1小嶌祥太*1岡本兼児*2高橋則善*2池田恒彦*1*1大阪医科大学眼科学教室*2(有)ソフトケアSectoralAnalysisofOpticNerveHeadRimBloodFlowUsingLaserSpeckleFlowgraphyMahoShibata1),TetsuyaSugiyama1),ShotaKojima1),KenjiOkamoto2),NoriyoshiTakahashi2)andTsunehikoIkeda1)1)DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,2)SoftcareLtd.目的:視神経乳頭辺縁部の領域別組織血流を緑内障眼と正常眼で比較し,緑内障眼において視野障害の程度との関連を検討した.対象および方法:対象は広義の原発開放隅角緑内障31例54眼,preperimetricglaucoma13例18眼,正常対照21例39眼.レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)-NAVITMで測定した乳頭4分割のMBR(meanblurrate)値の変動係数を比較した.また乳頭8分割領域の血流比(相対的MBR)を比較し,緑内障群では病期別に比較した.緑内障群でHumphrey視野パターン偏差の上下比と血流の上下比との相関を検討した.結果:MBR値の変動係数はいずれも10%未満で,3群とも再現性が良好であった.乳頭8分割血流比ではpreperimetricglaucoma群でおもに下方の有意な低下を認めた.緑内障群では病期の進行に伴い上耳側から耳側でより低下した.緑内障群でパターン偏差上下比と血流の上下比に有意な相関を認めた.結論:LSFG-NAVITMによる視神経乳頭辺縁部組織血流の領域別評価は再現性が良好であり,緑内障眼での血流低下と視野障害の進行に関連性が示唆された.Purpose:Toinvestigatesectoralbloodflowintheopticnervehead(ONH)rimineyeswithprimaryopenangleglaucoma(POAG)andtoevaluatethecorrelationbetweenimpairedONHbloodflowandvisualfielddefect.SubjectsandMethods:In54eyesof31POAGpatients,18eyesof13preperimetricglaucomapatientsand39eyesof21normalsubjects,opticnerveheadbloodflowwasmeasuredusinglaserspeckleflowgraphy(LSFG)-NAVITM.Results:Meanblurrate(MBR)measurementsshowedgoodreproducibility,aseverycoefficientvariationwasbelow10%.Analysisof8divisionsofsectoralbloodflowoftheONHrimshowedtheMBRvaluesofthepreperimetricglaucomagrouptobesignificantlylowerintheinferiorregion,comparedtothenormalsubjects.InthePOAGgroup,theMBRvaluesdecreasedmoreinthetemporalrimasthestageprogressed.Therewassignificantcorrelationbetweentheratioofsuperiorsumagainstinferiorsumofpatterndeviations,andthatofMBRvalues.Conclusion:TheseresultssuggestarelationshipbetweenimpairedONHrimbloodflowandvisualfielddefectinPOAG.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(9):1279.1285,2010〕Keywords:レーザースペックルフローグラフィー,視神経乳頭血流,乳頭辺縁部,preperimetricglaucoma.laserspeckleflowgraphy,opticnerveheadbloodflow,rim,preperimetricglaucoma.1280あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010(114)年1月に医療機器認証を取得している.これまでレーザースペックルフローグラフィー(LSFG)による眼血流研究では,乳頭上の同一部位における経時的な血流変化を比較している.しかし,今回の筆者らの研究のように乳頭を分割して領域別に血流測定し,解析したものは過去に報告がない.今回は陥凹部を除いた乳頭辺縁部における組織血流を測定・解析し,視野異常のないpreperimetircglaucoma眼と正常眼とで比較し,緑内障眼においては病期別に比較した.さらに緑内障眼については血流低下と視野の感度低下との関連を検討した.I方法1.対象対象は大阪医科大学附属病院緑内障外来に通院中の患者で2009年5月から2009年7月までに外来受診した広義の原発開放隅角緑内障(POAG)31例54眼,preperimetricglaucoma13例18眼(いずれも連続症例)と,正常対照21例39眼である.POAG群は乳頭陥凹拡大や乳頭辺縁部の狭小化,神経線維層欠損など緑内障性視神経障害があり,隅角鏡検査で正常開放隅角であり,Humphrey自動視野計(Carl-ZeissMeditec,Dublin,CA)による視野検査(プログラム30-2SITAスタンダード)で以下の基準を連続する2回の検査で認めるものとした.(1)緑内障半視野テストで正常範囲外,もしくはパターン標準偏差でp<5%であること,もしくは(2)パターン偏差確率プロットでp<5%の点が,最も周辺でない検査点に3つ以上かたまって存在し,かつそのうち1点がp<1%であること.乳頭辺縁部の血流測定を目的とするため,乳頭辺縁部を認めないほど陥凹が拡大した末期緑内障は除外した.Preperimetricglaucoma群は乳頭辺縁部の狭小化や神経線維層欠損など緑内障性視神経障害を認めるが,Humphrey視野検査において上記の基準を満たさないものとした.またPOAG群,preperimetricglaucoma群ではLSFG-NAVITMによる血流測定日3カ月前から点眼や内服内容に変更のないものとした.正常対照群は,正常眼圧・正常開放隅角であり,精密眼底検査にて緑内障性視神経障害を認めないものを対象とした.POAG群についてはmeandeviation(MD)値による病期分類を用い,.6dB以上を初期,.6dBから.12dBを中期,.12dB以下を末期とした.本研究においてはすべての対象について,高血圧症・糖尿病を含む重篤な全身合併症の既往,年齢が40歳以下,矯正視力が0.5以下のもの,.7D以下の近視,+3D以上の遠視,軽度白内障以外の眼疾患の既往,白内障手術以外の眼内手術の既往,Humphrey視野検査において固視不良>20%,偽陰性>25%,偽陽性>33%のものを除外した.本研究はヘルシンキ宣言に基づいて行われ,本学倫理委員会の承認を得ており,すべての対象について本研究に関する目的と方法について十分な説明の後,文書で同意を得ている.2.血流測定と解析すべての対象において0.5%トロピカミド(ミドリンMR,参天製薬)で散瞳後に,同一検者がLSFG-NAVITMによる乳頭辺縁部組織血流を測定した.血流測定日はHumphrey視野検査日と同日,もしくは視野検査日から3カ月以内とした.今回使用したLSFG-NAVITMは毎秒30フレームの連続したスペックル画像を取り込むことができ,測定4秒間で連続した血流マップ120枚が得られ,そこから合成血流マップが作成される.得られた合成血流マップ上で,マウスカーソルを使って自由に解析領域を矩形や楕円形に描くことができ,血流解析する領域を指定するとmeanblurrate(MBR)値が表示される.MBR値はSBR(squareblurrate)値に比例する値であり2),SBR値はNB(normalblur)値に相関する値である3).NB値は元来,血流速度の指標であるが,表在血管を避けた部位では組織血流量をも反映すると報告されている4).本研究では血流解析部位として乳頭陥凹部を除いた辺縁部のみとしたため,LSFG解析ソフトversion3,プラグインLayerViewer(いずれもソフトケア)を用いて合成血流マップを作成し,まずその合成血流マップ上で乳頭周囲境界線に沿って楕円の血流解析領域を設定し,内部の乳頭分割数(4分割または8分割)を指定した(図1).つぎに血流解析から除外する乳頭陥凹部を合成血流マップ上でマウスカーソルを使って指定した.乳頭陥凹部はHeidelbergRetinaTomographII(HeidelbergEngineering,Heidelberg,Germany)の結果から同一検者が判定した.そのうえで乳頭陥凹部を除図1LSFG-NAVITMの血流マップ上の乳頭4分割表示(左眼)合成血流マップ上で乳頭周囲境界線に沿って楕円の血流解析領域を設定し,内部の乳頭分割数(4分割または8分割)を指定した.(115)あたらしい眼科Vol.27,No.9,20101281き4分割または8分割した辺縁部を血流解析し,組織血流に対応する領域別MBR値(TM)を得た(図2,3).解析時には,組織血流値を得るため解析領域の主要血管血流を除外して解析したが,岡本らの報告のように,プラグインLayerViewerでは指定した領域に対して閾値を定めることにより,血管領域と組織領域を区分することができる5).今回の研究では,すべての症例において閾値0.5として解析し,組織血流値を得た.図2,3に示すVM,TM,AMは,それぞれの領域内の血管領域平均血流値(VesselMean),血管部分を除いた組織領域平均血流値(TissueMean),および領域内全域の平均血流値(AllMean)を示している.VM,TM,AMの各値は,各領域内のMBR値の総和を各領域の面積で除した平均血流値である.図2LSFG-NAVITMの乳頭辺縁部4分割領域別解析表示(典型例)VM:血管領域平均血流値,TM:組織領域平均血流値,AM:領域内全域平均血流値,S:上方,T:耳側,I:下方,N:鼻側.図3LSFG-NAVITMの乳頭辺縁部8分割領域別解析表示(典型例)VM:血管領域平均血流値,TM:組織領域平均血流値,AM:領域内前領域平均血流値,Sn:上鼻側,St:上耳側,Ts:耳上側,Ti:耳下側,It:下耳側,In:下鼻側,Ni:鼻下側,Ns:鼻上側.1282あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010(116)3.評価方法まず,LSFG-NAVITMによる血流測定結果の再現性について評価するために,乳頭辺縁部を4分割(S:上方,T:耳側,I:下方,N:鼻側)して領域別にMBR値を算出し,3回測定した変動係数〔(標準偏差/平均値)×100〕(%)を算出して3群で比較検討した.つづいて乳頭辺縁部を8分割(Sn:上鼻側,St:上耳側,Ts:耳上側,Ti:耳下側,It:下耳側,In:下鼻側,Ni:鼻下側,Ns:鼻上側)して領域別にMBR値を算出し,鼻下側(Ni)に対する比を算出した.それをpreperimetricglaucoma群と正常対照群で比較検討した.さらにPOAG群においては下鼻側(In)に対する比をpreperimetricglaucoma群と病期別に比較検討した.つぎに乳頭血流変化と視野における感度閾値の低下との関連を調べた.POAG群においてHumphrey視野検査におけるパターン偏差値の合計の上下比と,乳頭辺縁部MBR値の合計の上下比との相関をみた.統計にはunpairedt-test,chi-squaretest,onewayanalysisofvariance(ANOVA),twowayANOVAを用い,ANOVAで群間に有意差がみられた場合はTukeyの多重比較,もしくはDunnettの多重比較を行った.なお,p値が0.05未満を統計学的に有意であるとした.乳頭血流変化と視野感度閾値の低下との関連についてはPearsonの相関係数を求め,有意性を検定した.II結果対象患者の内訳を表1に示した.POAG群,preperimetricglaucoma群,正常対照群の年齢,男女比に有意差はなかった(それぞれp=0.35,onewayANOVA,p=0.80,chisquaretest).正常対照群とpreperimetricglaucoma群の眼圧に有意差を認めなかった(p=0.37,unpairedt-test).正常対照群とPOAG群における初期,中期,末期群の眼圧に有意差を認めなかった(p=0.089,onewayANOVA).POAG群における初期,中期,末期群とpreperimetricglaucoma群の眼圧に有意差を認めなかった(p=0.41,onewayANOVA).POAG群における初期,中期,末期群とpreperimetricglaucoma群の緑内障点眼薬の内訳に有意差を認めなかった(p=0.052,chi-squaretest).LSFG-NAVITMによる乳頭辺縁部組織血流測定結果の再現性についての結果を図4に示した.乳頭を4分割したどの領域においても変動係数はほぼ10%未満であった.3群間(POAG:p=0.878,preperimetricglaucoma:p=0.416,正常対照:p=0.691,onewayANOVA),4分割した領域間(N:p=0.347,S:p=0.792,T:p=0.546,I:p=0.502,onewayANOVA)にも有意差を認めなかった.正常対照群とpreperimetricglaucoma群との乳頭辺縁部8分割組織血流のNiに対する比の比較結果を図5に示した.Preperimetricglaucoma群では正常対照群に比べてIt,In,Sn領域で有意に低い血流比を認めた(それぞれp<0.01,0.05,0.001,unpairedt-test).POAG群における病期別の乳頭辺縁部8分割組織血流のInに対する比の比較結果を図6に示した.病期の進行とともに血流比が低下する傾向があり,中期・末期緑内障群ではpreperimetricglaucoma群に比べて有意な血流比の低下を表1患者内訳と背景正常対照Preperimetricglaucoma原発開放隅角緑内障眼数391854年齢(歳)57.6±13.561.2±9.562.4±11.4性別(男/女)8/136/711/20病期初期中期末期(眼)26217眼圧(mmHg)13.9±1.6213.2±2.812.1±2.312.2±2.711.5±2.8MD値(dB).0.02±0.90.0.49±1.27.3.09±1.51.8.81±2.76.14.70±1.49緑内障点眼の内訳(眼)PG614124CAI0312b遮断薬4861a遮断薬0101ab遮断薬1232なし14651PG:プロスタグランジン製剤,CAI:炭酸脱水酵素阻害薬.(Mean±SD)(117)あたらしい眼科Vol.27,No.9,20101283認め(それぞれp<0.01,p<0.001,twowayANOVATukeytest),特にSt,Ts,Ti領域において,末期緑内障群ではpreperimetricglaucoma群に比べて有意な血流比の低下を認めた(それぞれp<0.01,p<0.01,p<0.05,onewayANOVADunnett’stest).乳頭辺縁部組織血流と視野における感度低下との関連をみた結果を図7に示した.POAG群において,パターン偏差の上下比と乳頭辺縁部MBR値の上下比に正の相関を認めた(r=0.289,p=0.03,Pearson’scorrelationcoefficient).III考按循環異常と緑内障の関連を示唆する報告は多く,特に正常眼圧緑内障で乳頭出血の頻度が高く6),視野進行に関与し7),乳頭周囲網脈絡膜萎縮が視野障害と関連している8)ことなど,乳頭循環障害が緑内障の進展に関与している可能性が考えられている.そのためこれまでにも,緑内障眼における視神経近傍の血流を測定する方法は多数報告されている.蛍光眼底造影法9),レーザードップラ法10,11),走査レーザー顕微鏡,超音波カラードップラ法12)などによる報告があるが,それぞれ全身副作用の可能性のあることや眼球運動に影響されること,微細な血管描出に問題があり同一部位反復測定が困難であることなどの問題点があった.今回の研究ではレーザースペックル法を用いたLSFG-NAVITMにより乳頭組織血流を測定した.LSFGでは乳頭,脈絡膜,網膜,虹彩などの末梢循環の測定が可能であり,その正確さや高い再現性からこれまでにもさまざまな眼血流研究に応用されてきた3).今回のLSFG-NAVITMによる乳頭辺縁部血流の測定結果においても,病期や乳頭測定部位にかかわらず比較的高い再現性が得られた.NST乳頭分割領域20151050変動係数(%)(Mean±SE)■:正常対照■:Preperimetricglaucoma■:POAGI図4変動係数N:鼻側,S:上方,T:耳側,I:下方,POAG:原発開放隅角緑内障(広義).NiNsSn1.210.80.60.40.20St乳頭分割領域MBR値(下鼻側に対する比)(Mean±SE):Preperimetricglaucoma:初期:中期:末期Ts*******TiItIn図6緑内障病期別の視神経乳頭辺縁・各部位における相対的血流(下鼻側に対する比)Sn:上鼻側,St:上耳側,Ts:耳上側,Ti:耳下側,It:下耳側,In:下鼻側,Ni:鼻下側,Ns:鼻上側,**:p<0.01,*:p<0.05vspreperimetricglaucoma,onewayANOVADunnett’stest.†***NiNsSnSt乳頭分割領域MBR値(鼻下側に対する比)TsTiItIn:正常対照:Preperimetricglaucoma1.4(Mean±SE)1.210.80.60.40.20図5Preperimetricglaucomaにおける視神経乳頭辺縁・各部位の相対的血流(鼻下側に対する比)Sn:上鼻側,St:上耳側,Ts:耳上側,Ti:耳下側,It:下耳側,In:下鼻側,Ni:鼻下側,Ns:鼻上側.*:p<0.01,†:p<0.05,**p<0.001,unpairedt-test.0510PDsuperior/inferiorSBRsuperior/inferior1520251.61.41.210.80.60.4図7乳頭辺縁部血流上下比とpatterndeviationの上下比の相関PD:patterndeviation.r=0.289,p=0.03,Pearson’scorrelationcoefficient.1284あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010(118)しかしLSFGで得られるSBR値は相対値であり,同一部位における経時的変化を比較することはできるが,異なる部位の血流を数値で直接比較したり,異なる個体間で数値を直接比較したりすることには無理があるとされており3),今回用いたMBR値も同様と考えられる.そのため今回の研究では得られた血流値を個体間で比較するために,分割した乳頭辺縁部の一領域に対する血流比として比較した.算出された血流比を実測値と同様に比較するために,実測血流値の平均が比較する病期・群間で最も差の少なくなる領域を血流比の基準となる一領域として選択した.緑内障性変化の進行において,自動視野計における視野障害出現よりも先に,乳頭や神経線維層の変化が起こるといわれている13).視野に異常のない症例であっても画像診断で乳頭や神経線維層に変化のあることは,過去にも報告が多い14,15).また,緑内障性乳頭変化は上方よりも下方乳頭辺縁部の欠損からが多いことが報告されている16).今回の筆者らの結果では,正常対照眼に比較してpreperimetricglaucoma群においておもに乳頭下方辺縁部の組織血流比が低下していた.視野障害の出現よりも前に乳頭循環障害が存在し,循環障害も乳頭の形態変化と同様に下方から起こる可能性が示唆された.Piltzら11)は視神経乳頭辺縁部に局所的狭小化などがなく,眼圧が高く視野障害のないPOAG疑いの症例にも耳側乳頭辺縁部の血流低下を認めることをレーザードップラ法で証明したが,彼らの報告は高眼圧症例であり,眼圧の関与が考えられる.今回の研究では正常対照群とpreperimetricglaucoma群との間に眼圧の有意差はなく,血流減少の一因に眼圧は関与していないと考えた.しかし今回のpreperimetricglaucomaの症例は,乳頭もしくは神経線維束に緑内障性変化を認めるものを対象としているため,緑内障性変化による乳頭辺縁部の構造変化がレーザースペックルによる測定結果に影響した可能性も否定できない.また,今回の検討では緑内障病期の進行とともに耳側血流比の減少がみられた.これは過去の報告にあるGrunwaldら10,17)のレーザードップラ法を用いた研究で緑内障眼に耳側血流の低下を認め,その視野障害が進行するほど乳頭血流が低下したとする報告と一致するものであり,乳頭組織血流低下と緑内障性視野障害の進行とに関連性のあることが示唆された.しかし上述のように緑内障性変化による乳頭辺縁部の構造変化がレーザースペックルによる測定結果に影響した可能性も否定できないと考えられる.筆者らは視野障害のあるPOAG群において,乳頭辺縁部組織血流と視野における感度低下との関連をみたが,得られた血流値を実測値として直接比較できないため,得られたMBR値の上下比を算出し,その結果,パターン偏差の上下比と乳頭辺縁部MBR値の上下比に正の相関を認めた.今回の上下比の検討では,POAG群における血流値の低下と視野感度閾値の低下に関連があるとはいえないが,LSFGによる血流値の上下比が閾値低下の上下比を反映している可能性があると考えられた.今回の対象においてpreperimetricglaucoma群とPOAG群で緑内障点眼の内訳には有意差を認めなかったが,preperimetricglaucoma群に緑内障点眼使用が少ない一方で,ほとんどのPOAG患者は緑内障点眼加療を受けているため,点眼が血流測定結果に影響した可能性は否定できない.しかし,点眼加療は血流測定日前3カ月間変更がなかったこと,POAG群とpreperimetricglaucoma群で眼圧に有意差がなかったことから,点眼と眼圧による影響は少ないと考えた.また,今回の研究では同一眼において求めた各領域の相対値の比較であることからも,点眼による血流変動の影響はほぼ相殺されていると考えた.今回の研究では血流低下と血圧の関与を検討していない.全身血圧と緑内障性視神経障害との関連については意見の分かれるところである18,19)が,持続する高血圧は微小血管の障害による乳頭循環への影響があると考え,高血圧治療薬が多種にわたるような重篤な症例は今回の研究から除外したため,全身性高血圧による影響は少ないと考えた.しかし,眼灌流圧の低下と緑内障の進行には有意な関連があること18,19),夜間の低血圧は乳頭血流を減少させ,特に正常眼圧緑内障では乳頭循環障害の原因とする報告20)があること,緑内障眼において高血圧治療はさらなる乳頭血流の低下を招く可能性のあることが報告17)されていることから,今回の対象には夜間低血圧や拡張期眼灌流圧低下のある症例も含まれると考えられ,結果に影響した可能性も否定できない.今回の解析方法では乳頭辺縁部の血流解析を目的とし,強度近視眼やそれによる小乳頭,乳頭辺縁部を認めないほど陥凹が拡大した末期緑内障を除外したため,乳頭形状や乳頭周囲網脈絡膜萎縮の乳頭辺縁部血流への関与を検討していない.しかし今後は傾斜乳頭や小乳頭,循環障害と緑内障進行に関係があるとの報告がある乳頭周囲網脈絡膜萎縮21)などの症例において乳頭血流測定部位や方法,緑内障病期との関連などさらなる研究が必要であると考えられる.今回の結果から,LSFG-NAVITMによる乳頭辺縁部組織血流測定は再現性が高く,乳頭辺縁部の血流低下が緑内障の原因と関係するものか,緑内障性視神経障害の結果によるものかは明らかではないが,乳頭血流障害は緑内障の病期とともに進行し,緑内障眼での血流低下と視野障害の進行に関連性のあることが示唆された.文献1)TamakiY,AraieM,KawamotoEetal:Noncontact,twodimensionalmeasurementofretinalmicrocirculationusinglaserspecklephenomenon.InvestOphthalmolVisSci35:あたらしい眼科Vol.27,No.9,201012853825-3834,19942)KonishiN,TokimotoY,KohraKetal:NewlaserspeckleflowgraphysystemusingCCDcamera.OpticalReview9:163-169,20023)SugiyamaT,AraieM,RivaCEetal:Useoflaserspeckleflowgraphyinocularbloodflowresearch.ActaOphthalmol,inpress4)SugiyamaT,UtsumiT,AzumaIetal:Measurementofopticnerveheadcirculation:comparisonoflaserspeckleandhydrogenclearancemethods.JpnJOphthalmol40:339-343,19965)岡本兼児,レーフントゥイ,高橋則善ほか:LaserSpeckleFlowgraphyによる網膜血管血流量解析.あたらしい眼科27:256-259,20106)KitazawaY,ShiratoS,YamamotoT:Opticdischemorrhageinlow-tensionglaucoma.Ophthalmology93:853-857,19867)DranceSM,FaircloughM,ButlerDMetal:Theimportanceofdischemorrhageintheprognosisofchronicopenangleglaucoma.ArchOphthalmol95:226-228,19778)RockwoodEJ,AndersonDR:Acquiredperipapillarychangesandprogressioninglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmol226:510-515,19889)SugiyamaT,SchwartzB,TakamotoTetal:Evaluationofthecirculationintheretina,peripapillarychoroidandopticdiskinnormaltensionglaucoma.OphthalmicRes32:79-86,200010)GrunwaldJE,PiltzJR,HariprasadSMetal:Opticnerveandchoroidalcirculationinglaucoma.InvestOphthalmolVisSci39:2329-2336,199811)PiltzJR,GrunwaldJE,HariprasadSMetal:Opticnervebloodflowisdiminishedineyesofprimaryopen-angleglaucomasuspects.AmJOphthalomol132:63-69,200112)ZeitzO,GalambosP,WagenfeldLetal:Glaucomaprogressionisassociatedwithdecreasedbloodflowvelocitiesintheshortposteriorciliaryartery.BrJOphthalmol90:1245-1248,200613)GardinerSK,JohnsonCA,CioffiGA:Evaluationofthestructure-functionrelationshipinglaucoma.InvestOphthalmolVisSci46:3712-3717,200514)ChoplinN,LundyD,DreherA:Differentiatingpatientswithglaucomafromglaucomasuspectsandnormalsubjectsbynervefiberlayerassessmentwithscanninglaserpolarimetry.Ophthalmology105:2068-2076,199815)Sanchez-CanoA,BaraibarB,PabloLEetal:Scanninglaserpolarimetrywithvariablecornealcompensationtodetectpreperimetricglaucomausinglogisticregressionanalysis.Ophthalmologica223:256-262,200916)JonasJB,FernandezMC,SturmerJ:Patternofglaucomatousneuroretinalrimloss.Ophthalmology100:63-68,199317)GrunwaldJE,PiltzJ,HariprasadSMetal:Opticnervebloodflowinglaucoma:effectofsystemichypertension.AmJOphthalmol127:516-522,199918)BonomiL,MarchiniG,MarrafaMetal:Vascularriskfactorsforprimaryopenangleglaucoma:theEgna-NeumarktStudy.Ophthalmology107:1287-1293,200019)LeskeMC,ConnellAM,WuSYetal:Riskfactorsforopenangleglaucoma.TheBarbadosEyeStudy.ArchOphthalmol113:918-924,199520)HayehSS,ZimmermanMB,PodlhajskiPetal:Nocturnalarterialhypotensionanditsroleinopticnerveandocularischemicdisorders.AmJOphthalmol117:603-624,199421)JonasJB,MartusP,BuddleWMetal:Smallneuroretinalrimandlargeparapapillaryatrophyaspredictivefactorsforprogressionofglaucomatousopticneuropathy.Ophthalmology109:1561-1567,2002(119)***