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超広角走査レーザー検眼鏡による滲出型加齢黄斑変性の周辺部眼底自発蛍光の観察

2016年8月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科33(8):1231?1235,2016c超広角走査レーザー検眼鏡による滲出型加齢黄斑変性の周辺部眼底自発蛍光の観察西脇晶子加藤亜紀長谷川典生臼井英晶安川力吉田宗徳小椋祐一郎名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学PeripheralFundusAutofluorescenceOnUltra-widefieldScanningLaserOphthalmoscopeinEyeswithNeovascularAge-relatedMacularDegenerationAkikoNishiwaki,AkiKato,NorioHasegawa,HideakiUsui,TsutomuYasukawa,MunenoriYoshidaandYuichiroOguraDepartmentofOphthalmologyandVisualScience,NagoyaCityUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences目的:眼底自発蛍光(fundusautofluorescence:FAF)は加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)前駆病変や萎縮型AMDの評価に有用である.従来は撮影困難であった周辺部FAFを超広角走査レーザー検眼鏡で撮影し,滲出型AMDの周辺部FAFを観察した.対象および方法:滲出型AMD群31眼,対照群30眼を対象とし,超広角走査レーザー検眼鏡を用いて眼底画像を撮影した.異常周辺部FAFの有無,またその異常所見を顆粒状過蛍光,斑紋状低蛍光,貨幣状低蛍光の3型に分類し評価した.結果:滲出型AMD群では87.1%に周辺部FAFの異常が認められた.一方,対照群では16.7%に異常を認め,滲出型AMD群と比較し有意に少なかった.異常FAF所見分類では滲出型AMD群において斑紋状をもっとも多く認めた.結論:滲出型AMD群では周辺部FAF異常が高頻度に認められた.Purpose:Tocharacterizeperipheralfundusautofluorescence(FAF)abnormalitiesobservedwithneovascularage-relatedmaculardegeneration(AMD).Methods:Ultra-widefieldfundusimagingwasperformedtoobtain200-degreeFAFandcolorimages.AllimagesweregradedregardingpresenceandtypeofperipheralFAFabnormalities.AlterationsinperipheralFAFwereclassifiedinto4phenotypicpatterns:normal,granularincreased,mottleddecreasedandnummulardecreased.Wide-fieldFAFimageswereobtainedfrom31eyeswithneovascularAMDand30eyeswithcataractandnoAMD.Results:InneovascularAMDpatients,peripheralFAFabnormalitieswereevidentin27eyes(87.1%),withseveraldistinctFAFpatternsidentified:granularincreased(12.9%),mottleddecreased(74.2%)andnummulardecreased(6.5%).Incontrast,only5eyes(16.7%)withcataractandnoAMDhadabnormalFAF,significantlyfewerthaneyeswithneovascularAMD.Conclusions:SeveraldistinctpatternsofperipheralFAFabnormalitieswereobservedinpatientswithneovascularAMD.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(8):1231?1235,2016〕Keywords:加齢黄斑変性,眼底自発蛍光,超広角走査レーザー検眼鏡.age-relatedmaculardegenerarion,fundusautofluorescence,ultra-widefieldfundusimaging.はじめに眼底自発蛍光(fundusautofluorescence:FAF)はおもに網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)内に加齢性に蓄積するリポフスチンに由来する.リポフスチン由来の背景蛍光に加えて,加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)前駆病変やRPEの機能低下に伴い異常な過蛍光を呈し,逆に,RPEが萎縮すると低蛍光を呈するようになる.RPEの状態を非侵襲的に観察できるFAFは,AMDの診断や病態の評価に有用である1).超広角走査レーザー検眼鏡Optos200Tx(Optos社,Dunfermline,Scotland,UK)は,網膜の80%以上の領域を短時間で撮影が可能な機器である.従来のFAF撮影機器では周辺部の撮影は困難であったため,病変の評価,検討は眼底後極部に限定されていたが,Optos200Txを用いて,AMDにおいても正常人との比較や周辺部の異常FAFとAMDの病型との関連などが検討されてきている2?5).しかし,アジア人における周辺部FAFを検討した報告は少ない4).今回は,Optos200Txを用いて日本人における滲出型AMDの周辺部FAF異常について検討した.I方法名古屋市立大学病院網膜外来に2012年10月以降受診した滲出型AMD21例の連続症例31眼(男性19例,女性2例,年齢:75±6.3歳:平均値±標準偏差)を対象とし,滲出型AMD群とした.滲出型AMD群は治療歴の有無,方法については不問とした.同時期に一般再来を受診した検眼鏡的に後極部および周辺部に眼底疾患を認めない患者18例30眼(男性10例,女性8例,平均年齢:72±7.4歳)を対照群とした.滲出型AMD群,対照群ともに,後極部および周辺部網膜所見の評価に影響を与える可能性がある症例(眼外傷,網膜血管疾患,糖尿病網膜症,近視性網脈絡膜萎縮,中心性漿液性脈絡網膜症,視神経症,網脈絡膜炎,周辺網膜のレーザー治療,網膜硝子体疾患の治療がある患者は除外した.両群に対して散瞳後,Optos200Txを用いて広角FAFを撮影した.カラー広角眼底画像も撮影した.中心窩を中心とした30°の範囲より外側を「周辺部眼底」とし,周辺部異常FAFは,背景蛍光と比較して,過蛍光もしくは低蛍光を認めた場合を異常とした.周辺部異常FAF所見はTanらの報告3)に準じて顆粒状過蛍光(granularincreasedFAF),斑紋状低蛍光(mottleddecreasedFAF),貨幣状低蛍光(nummulardecreasedFAF)の3型に分類した(図1~3).各群における周辺部異常FAF所見の有無,そのパターンを検討した.画像の評価は眼科医2名が独立して行い,判定が一致した場合に確定とした.判定が異なる場合には第3の判定者が評価し,どちらかの評価者と一致した場合に確定とした.3名の評価が異なる場合には除外とした.画像が不鮮明で判定が困難なものも除外した.II結果周辺部異常FAFは,滲出型AMD群31眼中27眼(87.1%),対照群では30眼中5眼(16.7%)にみられ,滲出型AMD群で有意に出現率が高かった(p<0.01)(表1).異常所見のパターンの発現では斑紋状低蛍光が74.2%ともっとも多く,顆粒状過蛍光が12.9%,貨幣状低蛍光が6.5%ともっとも少なかった.対照群では貨幣状低蛍光は認めなかった(表2).周辺部異常FAFのパターン混在は,滲出型AMD群で3眼にみられた.対照群には混在眼はみられなかった.滲出型AMD群のうち,斑紋状と顆粒状の混在を2眼,斑紋状と貨幣状の混在を1眼に認めた.III考按AMDは先進諸国における成人の主要な失明原因であり,わが国でも近年,増加傾向にある重大な疾患である.滲出型AMDに対しては血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)の働きを抑える抗VEGF薬の硝子体内注射と光線力学的療法により一定の治療効果が得られるようになったが,長期間にわたり頻回の治療を必要とすることも多く,中心窩に及ぶ地図状萎縮や線維性瘢痕などにより視力低下に至る場合もある.FAFは非侵襲的に撮影が可能で,加齢や疾患の初期変化の指標となりうる検査である.FAFでおもに蛍光を発しているのはRPE内に加齢性に蓄積するリポフスチンであり,リポフスチン蓄積が過剰になってくると,RPEの機能障害をきたす.また,ドルーゼンなどの沈着物が発生するようになる.RPE内のリポフスチンの過剰蓄積あるいは,細胞の膨化や重層化,RPE下への自発蛍光物質の貯留などがFAFにおける異常過蛍光所見の原因となる.一方,さらに進行した病態ではRPEの変性・萎縮が進行し,リポフスチンそのものが失われるため,萎縮したRPEの部分はFAFで低蛍光を示すようになる6?8).FAFの所見やドルーゼンなどのAMD前駆所見の検討により,AMDの病態解明,発症や予後,早期治療のための有益な情報が得られる可能性がある.AMDにおける後極部FAFの異常所見については従来から多数報告されている.萎縮型AMDにおいて,特有のパターンでは経時的に地図状萎縮が拡大しやすいとの報告があるほか1),自発蛍光の異常所見は病変進行の予測に有用である可能性が示唆されている5,6).最近になって超広角走査レーザー検眼鏡Optos200Txを利用した周辺部FAFの撮影が容易になり,AMDと周辺部FAFとの関連が研究され,すでにいくつかの報告がある.Reznicekら2)は加齢による過蛍光の傾向についてFAFの増強率は周辺部のほうが後極部よりも高いことを示した.また,AMD群では非AMD群に比べ周辺部FAFが有意に増強しかつ不整となったこと,抗VEGF治療を受けたAMD群と未治療AMD群では周辺部FAFに有意な差がなかったことを示し,周辺部FAFが後極部FAFと同様にAMDの診断と経過観察に有用である可能性を示唆した.また,Witmerら5)も,正常対照群とAMDおよび黄斑部ドルーゼンと診断された症例群について周辺部FAFを検討し,周辺部FAF異常は正常対照群と比較しAMD群で有意に多く認めたとしている.Tanら3)は周辺部FAF異常を検討し,滲出性AMD86%,非滲出性AMD72.8%,正常眼18.4%と,滲出性AMDと比較して頻度が高かったと述べている.また,周辺部FAF異常の危険因子としてAMDであること(滲出性>非滲出性),加齢,女性であることを示した.同報告では,周辺部FAF異常は,顆粒状過蛍光,斑紋状低蛍光,貨幣状低蛍光の3パターンに分類され,それぞれの内訳は,顆粒状過蛍光46.2%,斑紋状低蛍光34.0%,貨幣状低蛍光18.1%であったと述べている.また,顆粒状過蛍光パターンはドルーゼンと,斑紋状低蛍光パターンは網膜周辺の脱色素と関連していたとしている.今回の筆者らの検討でも周辺部FAFの異常所見は滲出型AMD眼において高率に認められ,Tanらの報告に従ってFAF異常を分類したところ,異常所見のパターンは斑紋状低蛍光がもっとも多く,ついで顆粒状過蛍光がみられ,貨幣状低蛍光はもっとも少ない頻度であった(表1,2).Tanらの報告のうち,滲出型AMDに限定し比較すると,周辺部FAFの異常所見出現率はTanらは86%,本研究では87%であり,ほぼ同じという結果となった.欧米人同様日本人においても滲出型AMD患者ではきわめて高い割合で周辺FAF異常がみられることが明らかになったと考えられるが,後述のように各異常パターン群の出現頻度は相違があり,その原因に関しての今後の研究を必要とする.筆者らの研究を含む複数の研究でAMD患者において周辺部FAF異常の発生頻度が高いことから,周辺部FAF異常が存在する場合には黄斑部のRPEにも類似の変化が進行している可能性があり,黄斑変性の発症につながっているのかもしれない.一方,周辺部FAF異常のパターン別の割合をみると,本研究と欧米の結果とは多少違いがある(表2).滲出型AMDを検討した本研究ではとくに斑紋状低蛍光の割合が高かった.斑紋状低蛍光は周辺部RPEの色素異常と相関しておりRPEが何らかのストレスを受けていることを示唆する所見ではないかと推測される.今回はAMDの病型別の分類を検討に加えていないが,わが国においては滲出型AMDのうち特殊病型であるポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)が半数近くを占める9?11).PCVにおいては後極部に特徴的な低蛍光と患眼および僚眼において周辺部に広範な低蛍光領域が散在していることが報告されており12),AMDの病型の違いが人種間の周辺部FAFパターンの出現頻度の違いに関係しているのかもしれない.本研究の問題点として,症例数が少ないこと,滲出型AMDの症例のほとんどがすでに何らかの治療を受けている患者であったこと,経時変化をみていないため病状の時系列が不明であることなどがあげられる.本研究により日本人患者においても滲出型AMD患者において周辺部FAF異常の頻度が高いことが示された.今後,検討する症例数を増やし,経時的な変化を評価することで,異常FAF所見と病態との関連が解明され,AMDの発症予測や予後予測につながる可能性があると考えられる.文献1)BindewaldA,BirdAC,DandekarSSetal:Classificationoffundusautofluorescencepatternsinearlyage-relatedmaculardisease.InvestOphthalmolVisSci46:3309-3314,20052)ReznicekL,WasfyT,StumpfCetal:Peripheralfundusautofluorescenceisincreasedinage-relatedmaculardegeneration.InvestOphthalmolVisSci53:2193-2198,20123)TanCS,HeussenF,SaddaSR:Peripheralautofluorescenceandclinicalfindingsinneovascularandnon-neovascularage-relatedmaculardegeneration.Ophthalmology120:1271-1277,20134)NomuraY,TakahashiH,TanXetal:Widespreadchoroidalthickeningandabnormalmidperipheralfundusautofluorescencecharacterizeexudativeage-relatedmaculardegenerationwithchoroidalvascularhyperpermeability.ClinOphthalmol9:297-304,20155)WitmerMT,KozbialA,DanielSetal:Peripheralautofluorescencefindingsinage-relatedmaculardegeneration.ActaOphthalmol90:e428-433,20126)HolzFG,Bindewald-WittichA,FleckensteinMetal:Progressionofgeographicatrophyandimpactoffundusautofluorescencepatternsinage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol143:463-472,20077)Schmitz-ValckenbergS,Bindewald-WittichA,Dolar-SzczasnyJetal:CorrelationbetweentheareaofincreasedautofluorescencesurroundinggeographicatrophyanddiseaseprogressioninpatientswithAMD.InvestOphthalmolVisSci53:2648-2654,20068)EinbockW,MoessnerA,SchnurrbuschUEetal:Changesinfundusautofluorescenceinpatientswithage-relatedmaculopathy.Correlationtovisualfunction:aprospectivestudy.GraefesArchClinExpOphthalmol243:300-305,20059)MoriK,Horie-InoueK,GehlbachPLetal:Phenotypeandgenotypecharacteristicsofage-relatedmaculardegenerationinaJapanesepopulation.Ophthalmology117:928-938,201010)NakataI,YamashiroK,YamadaRetal:AssociationbetweentheSERPING1geneandage-relatedmaculardegenerationandpolypoidalchoroidalvasculopathyinJapanese.PLoSOne6:e19108,201111)MarukoI,IidaT,SaitoMetal:Clinicalcharacteristicsofexudativeage-relatedmaculardegenerationinJapanesepatients.AmJOphthalmol144:15-22,200712)YamagishiT,KoizumiH,YamazakiTetal:Fundusautofluorescenceinpolypoidalchoroidalvasculopathy.Ophthalmology119:1650-1657,2012〔別刷請求先〕西脇晶子:〒467-8601愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学Reprintrequests:AkikoNishiwaki,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,NagoyaCityUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences,1Kawasumi,Mizuho-cho,Mizuho-ku,Nagoya,Aichi467-8601,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY図1顆粒状過蛍光パターンの代表症例(76歳,女性):左眼滲出型AMDa:FAF写真.周辺部に散在する小型の顆粒状過蛍光領域(?)を認めた.b:眼底写真.FAFでの顆粒状過蛍光領域はドルーゼン(?)に一致して認められた図2斑紋状低蛍光パターンの代表症例(85歳,男性):左眼滲出型AMDa:FAF写真.鼻側周辺部にまだらな斑紋状の低蛍光領域(?)を認めた.b:眼底写真.FAFでの斑紋状低蛍光領域はRPE萎縮部(?)に一致して認められた.図3貨幣状低蛍光パターンの代表症例(77歳,男性):左眼滲出型AMDa:FAF写真.耳側周辺部に中程度の大きさ,不連続の均一な状の低蛍光領域(?)を認めた.b:眼底写真.FAFでの貨幣状低蛍光領域はRPE萎縮部(?)に一致して認められた.(151)あたらしい眼科Vol.33,No.8,20161233表1周辺部異常FAFの発現率表2周辺部異常FAFパターン出現頻度1234あたらしい眼科Vol.33,No.8,2016(152)(153)あたらしい眼科Vol.33,No.8,20161235

経過観察で症状改善した網膜色素上皮腺腫の1 例

2010年4月30日 金曜日

———————————————————————-Page1554あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(00)554(138)0910-1810/10/\100/頁/JCOPYあたらしい眼科27(4):554557,2010cはじめに網膜色素上皮腺腫は網膜色素上皮(RPE)原発の色素性良性腫瘍である.網膜色素上皮に原発する腫瘍はまれであり,1972年にFrontら1)が報告して以来,網膜色素上皮原発の網膜色素上皮腺腫はアジアからの報告はほとんどなく,わが国では2006年に中村ら2)が日本眼科学会で報告した1例のみであった.まれな腫瘍であるが,色素性腫瘍であるため,脈絡膜悪性黒色腫と黒色細胞腫との鑑別を要する.その他の鑑別として,網膜色素上皮過誤腫,転移性脈絡膜腫瘍,炎症,外傷,レーザー,手術などにより網膜色素上皮の反応性過形成などがあげられる.今回筆者らは,外傷や眼疾患の既往のない健常人の黄斑部に網膜色素上皮腺腫が生じた1例を経験し,従来の画像検査に加え,眼底自発蛍光所見を観察したので報告する.I症例20歳の中国人男性.3カ月前からの左眼視力低下と中心暗点を主訴に当科を初診した.外傷歴,眼科および内科既往歴,生肉を食する習慣など特記すべき事項はなかった.初診〔別刷請求先〕野地裕樹:〒960-1295福島市光が丘1番地福島県立医科大学医学部眼科学講座Reprintrequests:HirokiNoji,M.D.,DepartmentofOphthalmology,FukushimaMedicalUniversitySchoolofMedicine,1Hikarigaoka,Fukushima-shi960-1295,JAPAN経過観察で症状改善した網膜色素上皮腺腫の1例野地裕樹古田実石龍鉄樹飯田知弘福島県立医科大学医学部眼科学講座ACaseofRetinalPigmentEpitheliumAdenomaImprovedinVisualAcuitywithObservationHirokiNoji,MinoruFuruta,TetsujuSekiryuandTomohiroIidaDepartmentofOphthalmology,FukushimaMedicalUniversitySchoolofMedicine網膜色素上皮腺腫は,周辺部網膜に好発するまれな色素性良性腫瘍であり,脈絡膜悪性黒色腫との鑑別を要する.今回,黄斑部に網膜流入血管を伴う色素性腫瘤を伴った症例を経験した.症例は20歳,中国人男性,3カ月前からの左眼視力低下を主訴に受診.矯正視力0.2であった.左眼黄斑部耳側に4乳頭径大の褐色の腫瘤を認めた.腫瘤は網膜表面に浸潤し,硝子体内に色素性細胞が散在していた.腫瘤周囲には滲出性網膜離と網膜皺襞,硝子体の牽引がみられた.フルオレセイン蛍光眼底造影で,拡張した網膜血管が腫瘤に流入しており,腫瘤は造影早期に低蛍光と後期組織染を示した.超音波所見からも網膜原性の色素性腫瘤で,腫瘤への網膜流入血管,滲出性網膜離という特徴的な所見から網膜色素上皮腺腫と診断した.腫瘤は青色眼底自発蛍光で低蛍光,赤外眼底自発蛍光では過蛍光を示した.1年6カ月間経過観察し,滲出の減少により視力は0.5に改善した.Wereportacaseoftheretinalpigmentepithelium(RPE)adenoma.Thepatient,a20-year-oldChinesemale,hadexperienceddecreasedvisualacuityofthelefteyefor3months.Oninitialpresentation,hisleftvisualacuitywas0.2;fundusexaminationrevealedapigmentedmasswithretinalfeedervesselsandexudativeretinaldetach-mentinthetemporalmacula.Fluoresceinangiographydiscloseddilatedretinalfeedervesselsandearlyhypo-uorescenceofthemassinarterialphase,withlatestaininganddyeleakage.Short-wavelengthautouorescencerevealedhypouorescence,andinfra-redautouorescenceshowedhyperuorescenceofthemass,suggestingoflackofnormalRPEmetabolismwiththemelaninpigment.TheseimagingswerecharacteristicofRPEadenoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(4):554557,2010〕Keywords:網膜色素上皮腺腫,脈絡膜悪性黒色腫,眼底自発蛍光,アジア人.retinalpigmentepitheliumadeno-ma,malignantmelanoma,fundusautouorescence,Asian.———————————————————————-Page2あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010555(139)時左眼矯正視力は(0.2),左眼黄斑部耳側に色素性腫瘤とその周囲に滲出性網膜離と網膜皺襞,硝子体が癒着し牽引を形成していた(図1a).フルオレセイン蛍光眼底造影では拡張した網膜血管が腫瘤に流入しており,腫瘤は造影早期に低蛍光と後期組織染を示した(図1b).インドシアニングリーン蛍光眼底造影では造影早期から一貫して腫瘤は低蛍光であった(図1c).超音波断層検査では高反射腫瘤と脈絡膜は分離可能で,網膜起源の腫瘍が考えられた(図1d).光干渉断層計では高反射の腫瘤と硝子体内に大小多数の高反射塊がみられ,周囲には網膜離がみられた(図1e,f).青色光による眼底自発蛍光では腫瘤は低蛍光を示した(図1g).赤外光による眼底自発蛍光では腫瘤と色素に一致する過蛍光を示した(図1h).血液,生化学検査では特に異常はなく,ツベルクリン反応は陰性であった.陽電子放射断層撮影(posittronemissiontomogra-phy:PET)でも特に異常はなかった.僚眼には異常はなかった.以上の検査所見から,網膜色素上皮腺腫と臨床的に診断し,定期経過観察を行った.1年6カ月後には滲出性変化は減少し,視力は(0.5)へと改善した(図2).II考按本症例は,黄斑耳側に網膜流入血管を伴った網膜原性の色図1初診時眼底画像所見a:眼底写真.色素性腫瘤とその周囲に漿液性網膜離と網膜の牽引および硝子体中の色素細胞散布.b:フルオレセイン蛍光眼底造影検査(造影中期).病巣中心部は低蛍光,周囲の網膜血管から腫瘤への流入血管,周辺部網膜血管から漏出.c:インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(造影中期).腫瘤は低蛍光で組織染なし.d:超音波断層検査.高反射腫瘤と脈絡膜は分離可能.e:光干渉断層計.高反射の腫瘤と硝子体内の高反射粒.f:光干渉断層計.腫瘤周囲に網膜離.g:眼底自発蛍光.腫瘤は低蛍光.h:眼底自発蛍光.腫瘤は過蛍光,色素塊も過蛍光.adghefbc———————————————————————-Page3556あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(140)素性腫瘤で,滲出性網膜離を伴っていた.この特徴的所見から,網膜色素上皮腺腫と診断した.網膜色素上皮腺腫の症例報告は海外からのものを含め少数である.Shieldsら3)の報告では,13症例の年齢は2878歳と幅広く,発生部位は周辺部,中間周辺部,視神経乳頭近傍,黄斑部とさまざまである.眼底周辺部が約半数で最も多く,視神経乳頭近傍や黄斑部には少ない.視力は光覚なしから1.0に保たれているものまで幅広い.黄斑部に発生したものは視力不良だが,周辺部に発生したものでも滲出性網膜離や増殖性病変のために指数弁になることもあり,発生部位と視力との関連は低い.治療は腫瘍が小さい場合は経過観察されているものが多いが,大きくなると眼球摘出,経強膜的腫瘍切除術,小線源放射線治療が施行されることもある.基本的には腫瘍の増大は緩徐とされており,急速な増大を認めた場合は腺癌との鑑別を要する.脈絡膜悪性黒色腫との鑑別が重要で,Shieldsら4)の報告によると,悪性黒色腫として紹介された1,739例中13例(約1%)が網膜色素上皮腺腫であり,まれな疾患であるが誤診率が高いといえる.鑑別点として最も参考になる臨床所見は網膜色素上皮腺腫では腫瘍の急峻な隆起,網膜流入血管,滲出性離の存在である3).黒色細胞腫は視神経乳頭に好発するが,まれに脈絡膜にも発生する.14%に滲出性網膜離を伴うことが報告されている4)が,増大した例でなければ網膜栄養血管を伴わないことで,網膜色素上皮腺腫とは異なる.本症例の場合,超音波断層検査で脈絡膜と腫瘤が明瞭に分離されており,脈絡膜悪性黒色腫との鑑別は可能であった.鑑別を要する腫瘍との特徴的な鑑別点を表1に示す.近年,眼底自発蛍光は非侵襲的な検査として臨床応用されている.青色光による眼底自発蛍光でRPE中に多く含まれるリポフスチンの発する蛍光物質が過蛍光を示し,RPEや網膜外層の生理活性や機能評価に有用であること5),赤外光による眼底自発蛍光ではメラニンが過蛍光を示すことが報告されている6).本症例では青色眼底自発蛍光で腫瘤と周囲の網膜離部分に一致した低蛍光を示した.赤外眼底自発蛍光では過蛍光を示した.正常RPEでは青色眼底自発蛍光,赤外眼底自発蛍光ともに自発蛍光の増強がみられることから,病変部のRPEは機能異常をきたしていると考えられる.腫瘤にメラニンが存在すること,および硝子体中に散布された色素塊もメラニンが主成分であり過蛍光を示したと考えられた.脈絡膜悪性黒色腫の青色眼底自発蛍光所見は,随伴するオレンジ色素やドルーゼンで過蛍光,RPE離や網膜下液領域では弱い過蛍光を示すことが報告されている7).本症例では,腫瘍自体だけでなく,網膜離の範囲にも過蛍光を認めず,脈絡膜悪性黒色腫との有用な鑑別点になりうると考えられた.また,脈絡膜悪性黒色腫の赤外眼底自発蛍光での報告は検索した範囲ではみられなかった.本症例では発生部位は黄斑耳側で,観察した1年6カ月間に腫瘍の増大はなく,滲出性網膜離の減少に伴い視力は0.5へと改善した.アジア人で報告が少ない網膜色素上皮腺腫の1例を経験し,おもに眼底画像検査の結果について報告した.近年注目されている眼底自発蛍光検査は網膜色素上皮腺腫が小さいうちから特徴的所見を示すと考えられ,今後症例を蓄積し,検表1網膜色素上皮腺腫とその他の腫瘍の特徴網膜色素上皮腺腫脈絡膜悪性黒色腫網膜色素上皮過誤腫脈絡膜転移性腫瘍好発年齢2080歳60歳代2045歳原発巣による(男性は肺,女性は乳房が多い)形態黒色急峻な隆起茶褐-黒色ドーム状隆起マッシュルーム状隆起Orangepigment黒色隆起は小さい境界不明瞭灰白色扁平-ドーム状隆起栄養血管網膜血管脈絡膜血管網膜血管脈絡膜血管網膜離の併発滲出性離漿液性離なし漿液性離図2初診時から1年6カ月後の眼底所見腫瘤径は変化なく,腫瘤周囲の滲出性変化は減少.———————————————————————-Page4あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010557(141)討する必要がある.文献1)FrontRL,ZimmermanLE,FineBS:Adenomaofthereti-nalpigmentepithelium.AmJOphthalmol73:544-554,19722)中村宗平,末田順,疋田直文ほか:網膜色素上皮腺腫の診断がついた一例.日眼会誌110(臨増):222,20063)ShieldsJA,MashayekhiA,SeongRAetal:Pseudomela-nomasoftheposterioruvealtract.Retina25:767-771,20054)ShieldsJA,ShieldsCL,GunduzKetal:Neoplasmasoftheretinalpigmentepithelium.ArchOphthalmol117:601-607,19995)SekiryuT,IidaT,MarukoIetal:Clinicalapplicationofautouorescencedensitometorywithascanninglaserophthalmoscope.InvestOphthalmolVisSci50:994-3002,20096)KeilbauerCN,DeloriFC:Near-infraredautouorescenceimagingoffundus:visualizationofocularmelanin.InvestOphthalmolVisSci47:3556-3564,20067)ShieldsCL,BianciottoC,PirondiniCetal:Autouores-cenceofchoroidalmelanomain51cases.BrJOphthalmol92:617-622,2008***