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非特異的な経過により自然閉鎖した黄斑円孔の2 症例

2022年10月31日 月曜日

非特異的な経過により自然閉鎖した黄斑円孔の2症例坂井博明山本聡一郎江内田寛佐賀大学医学部眼科学講座CTwoCasesofSpontaneousAtypicalIdiopathicMacularHoleClosureHiroakiSakai,SoichiroYamamotoandHiroshiEnaidaCDepartmentofOphthalmology,SagaUniversityFacultyofMedicineC目的:後部硝子体.離を認めないまま,硝子体牽引力や方向が変化した影響で自然閉鎖したと考えられた黄斑円孔のC2症例を報告する.症例1:50歳,女性.近医より左眼黄斑円孔の加療目的で紹介受診した.左眼にCStage2の円孔を認めた.硝子体牽引の方向が変化したことで後部硝子体.離が起こらないまま円孔は閉鎖し,.胞が拡大し,分層円孔様に変化した可能性が考えられた.症例2:73歳,女性.右眼眼球癆の経過観察中,左眼にCStage1Bの黄斑円孔を生じた.耳側の硝子体牽引力が変化したことで後部硝子体.離が起こらないまま円孔は閉鎖し,.胞が拡大し,分層円孔様に変化した可能性が考えられた.結論:硝子体接着部の網膜の形態変化から硝子体牽引力や方向が変化したことで円孔が閉鎖した可能性が考えられた.黄斑円孔は後部硝子体.離が起きていない場合でも非特異的な自然閉鎖が得られることがあるため,症例によっては慎重な経過観察も選択肢となりうる.CPurpose:ToCreportCtwoCcasesCofCidiopathicCmacularhole(MH)inCwhichCtheCholeCspontaneouslyCclosedCwithCnoposteriorvitreousdetachment,yethadchangesofvitreoustractionvectorandpower.Case1:A50-year-oldfemalepresentedwithmetamorphopsiainherlefteyeafterbeingdiagnosedwithMHatalocalclinicandsubse-quentlyCreferredCtoCourChospitalCforCtreatment.CAtCinitialCpresentation,CopticalCcoherencetomography(OCT)Crevealedapartial-thickness(Stage2)MHinherlefteye,whichsubsequentlyspontaneouslyclosedandbecamealamellar-likeCholeCwithCnoCposteriorCvitreousCdetachment.CCase2:AC73-year-oldCfemaleCpresentedCwithCphthisisCbulbiinherrighteye.Afollow-upOCTexaminationrevealedafoveal-detachment(Stage1B)MHinherlefteye,whichCsubsequentlyCspontaneouslyCclosedCandCbecameCaClamellar-likeCholeCwithCnoCposteriorCvitreousCdetachment.CConclusion:MorphologicalchangesoftheretinaandvitreousbodyadhesioninourtwocasessuggestchangesofvitreoustractionvectorandpowercausedspontaneousMHclosure.Insuchcases,carefulfollow-upisoneoption,asspontaneousMHclosurecansometimesoccurwithoutposteriorvitreousdetachment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(10):1412.1416,C2022〕Keywords:黄斑円孔,自然閉鎖,硝子体牽引,後部硝子体.離.macularhole,spontaneousclosure,vitreoretinaltraction,posteriorvitreousdetachment.Cはじめに黄斑円孔は自然閉鎖を認めることがあり,特発性黄斑円孔の自然閉鎖率はCGassの分類のCStage1ではC50%,StageC2以上ではC4.11.5%程度とされており,Stage3,4ではC20例ほどの報告に留まっている1.4).自然閉鎖の機序として後部硝子体.離,円孔底でのグリア細胞の増殖,Muller細胞による架橋,黄斑上膜による収縮があげられる5.8).Stage1,2の黄斑円孔は後部硝子体.離後に自然閉鎖することが多く,黄斑円孔の自然閉鎖は一般に硝子体牽引の解除による1,5).今回,後部硝子体.離を認めないまま硝子体牽引力や方向が変化した影響で自然閉鎖し,分層円孔様に変化したと考えられた特発性黄斑円孔のC2症例を経験したため報告する.CI症例[症例1]50歳,女性.左眼の歪視を主訴に近医眼科を受診し,左眼黄斑円孔,右眼硝子体黄斑牽引症候群を認め,精査加療目的で佐賀大学医〔別刷請求先〕坂井博明:〒849-8501佐賀市鍋島C5-1-1佐賀大学医学部眼科学講座Reprintrequests:HiroakiSakai,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SagaUniversityFacultyofMedicine,5-1-1Nabeshima,Saga849-8501,JAPANC1412(120)3カ月後10カ月後図1症例1のOCT,enfaceOCT所見OCTの後部硝子体膜を矢頭(△)で示す.Ca,b:Stage2の全層円孔.Cc:黄斑円孔周囲の.胞(*)と中央の.胞の間に.胞壁がある.Cd:円孔周囲に同心円状の複数の.胞を形成している.Ce,f:ELM・ONLの架橋を認めた.Cg:硝子体付着部の網膜の形態(円孔弁の角度)が変化している.Ch:中央にC1個の.胞を認める.Ci,j:円孔は自然閉鎖.網膜.胞内腔が拡大し分層円孔様に変化している.Ck:円孔弁の角度がさらに変化している.l:中央の.胞が拡大している.学部附属病院(以下,当院)を紹介受診した.初診時,矯正視力は右眼(1.2C×sph.12.0D(cyl.1.0DAx40°),左眼(0.5C×sph.9.0D(cyl.1.0DAx180°)で左眼にStage2の全層円孔を認めた(図1a~c).円孔径は最短径でC184Cμm,円孔底でC351Cμm,光学的眼軸長測定にて左眼の眼軸長は27.37Cmmであった.光干渉断層計(opticcoherencetomog-raphy:OCT)RS-3000Advance2(ニデック)の網膜内層レベルのCenface画像で網膜内に同心円状に広がる複数の.胞を認めた(図1d).なおCenface画像の網膜内層の基準面は内網状層(innerplexiformClayer:IPL)と内顆粒層(innernuclearlayer:INL)の境界面であり,enface画像を構築したスラブ幅はC42Cμmである.後部硝子体.離による円孔の自然閉鎖を期待し,まずは経過観察とした.3カ月後,外境界膜(externallimitingmembrane:ELM)・外顆粒層(outernuclearlayer:ONL)の架橋を認め,左眼矯正視力はC0.7に改善がみられた(図1e~g).EnCfaceOCTで同心円状に広がる複数の.胞は中央に一つの.胞へと変化を認めた(図1h).10カ月後,後部硝子体.離およびCMullerCcellCconeC(MCC)の分離は認めないまま円孔は自然閉鎖し,左眼矯正視力はC0.9まで改善を認めた(図1i~k).OCTでは網膜.胞内腔が拡大し分層円孔様に変化を認めた(図1j,k).EnfaceOCTでは円孔周囲に同心円状に複数の.胞を形成していたが,.胞が融合し中央に一つの.胞となり,その形態の変化を認めた(図1l).[症例2]73歳,女性.前医で右眼黄斑円孔に対し,右眼硝子体手術・白内障手術を施行後に右眼内炎をきたし,複数回の手術が施行され,右眼は眼球癆となっていた.当院へはセカンドオピニオン目的で受診となった.初診時,右眼視力は手動弁(矯正不能),左眼矯正視力は(1.2C×sph+0.5D)であった.右眼眼球癆の経過観察中に,左眼矯正視力C0.5と低下を認め,左眼にCStage1Bの黄斑円孔を生じた(図2a~c).円孔径は最短径でC351Cμm,円孔底でC643Cμm,光学的眼軸長測定装置にて左眼の眼軸長はC21.52Cmmであった.EnCfaceOCTで網膜内に同心円状に広がる複数の.胞を認めた(図2d).右眼が黄斑円孔手術後に眼球癆となった経緯もあり,左眼の黄斑円1カ月後5カ月後図2症例2のOCT,enfaceOCT所見OCTの後部硝子体膜を矢頭(.)で示す.Ca~c:Stage1Bの外層円孔.Cd:円孔周囲に同心円状の複数の.胞を形成している.Ce,f:ELM・ONLの架橋を認めた.Cg:耳側の硝子体付着部に.胞(☆)を形成.鼻側の.胞は吸収された.Ch:耳側にC1個の.胞を認める.Ci,j:円孔は自然閉鎖.網膜.胞内腔が拡大し分層円孔様に変化している.k:.胞前壁が裂けている.l:中央.耳側に.胞を形成している.孔の積極的な手術希望がなく,まずは経過観察とした.1カ月後,ELM・ONLが架橋し,左眼矯正視力はC0.6に改善がみられた(図2e~g).enCfaceOCTで同心円状に広がる複数の.胞は耳側に一つの.胞へと変化を認めた(図2h).5カ月後,後部硝子体.離およびCMCCの分離は認めないまま円孔は自然閉鎖し,左眼矯正視力はC0.7まで改善を認めた(図2i).OCTでは網膜.胞内腔が拡大し分層円孔様に変化を認めた(図2j,k).EnfaceOCTでは円孔周囲に同心円状の.胞を形成していたが,自然閉鎖に伴い中央.耳側に一つの.胞となり,その形態の変化を認めた(図2l).CII考按後部硝子体.離を認めないまま円孔が自然閉鎖した機序について検討した.流体力学モデルでは,黄斑や視神経乳頭以外の後部硝子体.離が進行すると,黄斑への硝子体牽引による張力は増加すると考えられている9).そのため黄斑の後部硝子体.離が起こらないまま経過した場合,張力の観点では円孔の自然閉鎖は起こりにくくなる.しかし,2症例で自然閉鎖が起こった要因を考察すると,硝子体の牽引力や方向が変化したことで円孔が自然閉鎖した可能性が考えられた.硝子体牽引の方向と黄斑円孔の関係について,黄斑円孔では健常眼や黄斑上膜眼と比して硝子体と視神経乳頭の接着が観察されることが多く,遠心性の硝子体牽引が黄斑円孔の形成に影響を与えている可能性が考えられている10).しかし,黄斑円孔の閉鎖に硝子体牽引方向の変化が影響したとの報告は見られない.円孔形成時の硝子体牽引については,サッケード運動時の後部硝子体ポケット内の液化した硝子体の移動や硝子体皮質の収縮などの機序により牽引がかかると考えられており,硝子体の牽引力・方向には後部硝子体ポケットの形態も影響している11,12).今回のように円孔の形成後も黄斑の後部硝子体.離が起きないまま経過した場合,これらの因子が硝子体牽引の変化を起こし,円孔の閉鎖にも影響する可能性が考えられた.円孔が自然閉鎖した機序を考察する.なお,後述する垂直方向の牽引とは網膜に対して垂直な方向を,水平方向とは網膜接線方向をさす.症例C1では硝子体付着部の網膜の形態(円孔弁の角度)が変化したことから,硝子体牽引のベクトルのうち垂直方向成分が減少し,水平方向成分が増加した可能性が考えられた(図3).abc図3症例1のOCT所見円孔弁に近似した直線を緑の直線で示す.RPEおよびCRPEに平行な直線をともに黄色の直線で示す.円孔弁の角度は円孔弁に近似した直線とCRPEに平行な直線がなす赤の円弧で示す角度をさす.円孔弁の角度から推測される硝子体牽引のベクトルをC.で示す.Ca:初診時OCTの拡大図.Cb:3カ月後COCTの拡大図.円孔弁の角度の変化から硝子体牽引のベクトルのうち垂直方向成分が減少し,水平方向成分が増加した可能性が考えられた.Cc:10カ月後COCTの拡大図.円孔弁の角度から硝子体牽引のベクトルのうち,水平方向成分がさらに増加した可能性が考えられた.ここで円孔弁の角度とは,円孔弁に近似した直線と網膜色素上皮(retinalpigmentCepithelium)に平行な直線がなす角度をさす(図3).経時的に円孔弁の角度が変化しており,円孔弁の角度の変化から硝子体牽引のベクトルが変化した可能性を考えた.なお,図に示した牽引のベクトルは円孔弁の角度から推測したものである.ベクトルが変化した過程に関して,まず円孔が形成された際に,それまで網膜にかかっていた垂直方向の牽引が弱まり,垂直方向成分のベクトルが減少した.さらに円孔弁の形態の変化から,垂直方向への牽引のベクトルが経時的に水平方向のベクトルに変化した可能性が考えられる(図3).以上により,硝子体牽引の垂直方向成分のベクトルが減少したことで網膜外層に伝わる垂直方向の牽引も弱まり,ELM・ONLの架橋が生じ(図1c,g),その後網膜外層が閉鎖した(図1k).また,水平方向へ硝子体牽引の方向が変化したことで網膜内層に伝わる牽引力も変化し,円孔周囲の.胞と中央の.胞間の.胞壁に張力がかかり,.胞壁が裂け,.胞同士が融合し,分層円孔様になったと考えられた(図1c,g).硝子体の牽引方向が変化した要因として,硝子体の収縮や後部硝子体の液化による後部硝子体ポケットの形態変化などが考えられる.症例C2はCOCT,enfaceOCTで示すように,黄斑の耳側に.胞が形成されていることから,耳側へ強い牽引がかかった可能性が推測された(図2c,d,g,h).円孔の形成過程で黄斑に.胞が形成された場合,硝子体による垂直方向への牽引は減弱する.本症例では,耳側へ強い牽引がかかったことにより耳側に.胞が形成された.それにより網膜内層に対する垂直方向への牽引が弱まったことで鼻側の.胞が吸収されたと考えられる(図2c,g).さらに網膜外層に伝わる垂直方向の牽引も弱まったことにより,ELM・ONLの架橋を生じ,その後網膜外層の閉鎖が起こったと考えられた.耳側に強い牽引がかかった要因として,症例C1と同様に硝子体の収縮や後部硝子体ポケットの形態変化,後部硝子体.離が耳側優位に起こった可能性などが考えられる.今回は網膜内層レベルのCenCfaceOCTに関しても検討を行った.EnCfaceOCTで円孔周囲に観察される.胞は,硝子体の牽引によって細胞間質圧が低下し,血管内の漿液が流入して形成される可能性が考えられている13).それと関連して黄斑の.胞は滲出性と牽引性でCenCfaceOCTでの形態が異なっており,滲出性の.胞が花弁状の比較的不規則な形態を呈するのに対し,牽引性の.胞は同心円状に形成され,同心円状の.胞は牽引による影響が考えられている14).2症例のCenCfaceOCTで観察された.胞形態の変化は,硝子体牽引の方向が関連していると考えられる.まず症例C1では垂直方向の硝子体牽引がかかることによってCZ-shapeのCMuller細胞の配列と一致した同心円状の.胞が形成された.その後,牽引が水平方向へ変化したことで,.胞壁が裂け,.胞同士が融合して中央に一つの.胞へ変化したと考えられた(図1d,h,i).症例C2では同心円状の.胞が形成されていたが,垂直方向の牽引が弱まったことで同心円状の複数の.胞は吸収され,耳側方向への牽引が強まったことで耳側優位に一つの.胞が形成されたと考えられる(図2d,h,i).今回のC2症例のようにCOCTとCenfaceOCTを照らし合わせることで,硝子体牽引の変化が類推できる可能性があり,黄斑円孔の経過観察においてCenCfaceOCTが有用であると考えられる.硝子体接着部の網膜の形態変化から硝子体牽引力や方向が変化した影響で黄斑円孔が自然閉鎖した可能性が考えられた.黄斑円孔は後部硝子体.離が起きていない場合でも,非特異的な自然閉鎖が得られることがあるため,患者によっては慎重な経過観察も選択肢となりうる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)GassJD:IdiopathicCsenileCmacularChole.CItsCearlyCstagesCandpathogenesis.ArchOphthalmolC106:629-639,C19882)FreemanCWR,CAzenCSP,CKimCJWCetal:VitrectomyCforCthetreatmentoffull-thicknessstage3or4macularholes.ResultsCofCaCmulticenteredCrandomizedCclinicalCtrial.CTheCVitrectomyCforCTreatmentCofCMacularCHoleCStudyCGroup.CArchOphthalmolC115:11-21,C19973)EzraCE,CGregorZJ:SurgeryCforCidiopathicCfull-thicknessCmacularhole:two-yearCresultsCofCaCrandomizedCclinicalCtrialCcomparingCnaturalChistory,Cvitrectomy,CandCvitrecto-myCplusCautologousserum:Moor.eldsCMacularCHoleCStudyCGroupCRAeportCno.C1.CArchCOphthalmolC122:224-236,C20044)LiangX,LiuW:Characteristicsandriskfactorsforspon-taneousclosureofidiopathicfull-thicknessmacularhole.JOphthalmol:e4793764,C20195)PrivatE,TadayoniR,GaucherDetal:ResidualdefectintheCfovealCphotoreceptorClayerCdetectedCbyCopticalCcoher-encetomographyineyeswithspontaneouslyclosedmacu-larholes.AmJOphthalmolC143:814-819,C20076)MilaniP,SeidenariP,CarmassiLetal:Spontaneousreso-lutionCofCaCfullCthicknessCidiopathicCmacularhole:fundusCauto.uorescenceCandCOCTCimaging.CGraefesCArchCClinCExpOphthalmolC245:1229-1231,C20077)Garcia-PousM,Udaondo-MireteP,Amselem-GomezLetal:SpontaneousresolutionofidiopathicmacularholetypeIV:opticalCcoherenceCtomographyCfollow-up.CArchCSocCEspOftalmolC81:229-232,C20068)LewisH,CowanGM,StraatsmaBR:Apparentdisappear-anceofamacularholeassociatedwithdevelopmentofanepiretinalCmembrane.CAmCJCOphthalmolC102:172-175,C19869)DiMicheleF,TatoneA,RomanoMRetal:AmechanicalmodelofposteriorvitreousdetachmentandgenerationofvitreoretinalCtractions.CBiomechCModelCMechanobiolC19:C2627-2641,C202010)SebagCJ,CWangCMY,CNguyenCDCetal:VitreopapillaryCadhesionCinCmacularCdiseases.CTransCAmCOphthalmolCSocC107:35-44,C200911)MoriCK,CKannoCJ,CGehlbachCPLCetal:MontageCimagesCofCspectral-domainCopticalCcoherenceCtomographyCinCeyesCwithidiopathicmacularholes.OphthalmologyC119:2600-2608,C201212)SpaideRF:Measurementoftheposteriorprecorticalvit-reousCpocketCinCfellowCeyesCwithCposteriorCvitreousCdetachmentandmacularholes.RetinaC23:481-485,C200313)MatetCA,CSavastanoCMC,CRispoliCMCetal:EnCfaceCopticalCcoherenceCtomographyCofCfovealCmicrostructureCinCfull-thicknessmacularhole:amodeltostudyperifovealMul-lercells.AmJOphthalmolC159:1142-1151,C201514)GovettoCA,CSarrafCD,CHubschmanCJPCetal:DistinctiveCmechanismsCandCpatternsCofCexudativeCversusCtractionalCintraretinalcystoidspacesasseenwithmultimodalimag-ing.AmJOphthalmolC212:43-56,C2020***

自然閉鎖した外傷性黄斑円孔が再発した1症例

2013年9月30日 月曜日

《原著》あたらしい眼科30(9):1327.1329,2013c自然閉鎖した外傷性黄斑円孔が再発した1症例佐本大輔谷川篤宏中村彰水口忠堀口正之藤田保健衛生大学医学部眼科学教室ACaseofLate-RecurringSpontaneouslyClosedTraumaticMacularHoleDaisukeSamoto,AtsuhiroTanikawa,AkiraNakamura,TadashiMizuguchiandMasayukiHoriguchiDepartmentofOphthalmology,FujitaHealthUniversitySchoolofMedicine症例は,22歳,男性であり,作業中に左眼を受傷し,眼底異常を指摘され紹介受診した.視力は右眼1.2,左眼0.08(矯正不能)であり,左眼眼底には網膜下出血,黄斑円孔を認めた.12週後には黄斑円孔の自然閉鎖を認め,視力は0.6まで改善した.54週後には収縮した黄斑上膜と黄斑円孔の再発がみられ,視力は0.2まで低下した.12週後硝子体手術を施行し,円孔の閉鎖が得られた.視力は0.6に回復した.自然閉鎖した外傷性黄斑円孔は再発の可能性があるが,手術が有効である.A22-year-oldmalewasreferredtoourhospitalbecauseoftraumaticmacularholecausedbylefteyecontusionwhileworking.Visualacuitywas1.2intherighteyeand0.08inthelefteye,thelattershowingsubretinalhemorrhageandamacularhole.By12monthslater,themacularholehadspontaneouslyclosedandvisualacuitywas0.6.However,54weekslater,wefoundepimacularmembraneandareopenedmacularhole.After12weeks,vitrectomywasperformedandtheholewasclosed;theacuityrecoveredto0.6.Spontaneouslyclosedtraumaticmacularholemayreopen,butcanbeclosedbyvitrectomy.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(9):1327.1329,2013〕Keywords:外傷性黄斑円孔,自然閉鎖,再発,硝子体手術,黄斑上膜.traumaticmacularhole,spontaneousclosure,reopening,vitrectomy,epimacularmembrane.はじめに外傷性黄斑円孔のなかでも鈍的外傷による黄斑円孔は自然閉鎖することが多く,3カ月経過観察して自然閉鎖しないものが手術の適応とされる1.4).一度自然に閉鎖した円孔が再び開くことはきわめてまれと考えられるが,現在まで2症例の報告がある5,6).筆者らも鈍的外傷により発生した黄斑円孔が自然閉鎖し,その後再発し,手術により閉鎖した症例を経験したので報告する.I症例患者:22歳,男性.初診:2011年6月17日.現病歴:作業中に電動サンダーにて左眼を受傷.前医にて前房出血と高眼圧を認めたが経過観察にて軽快した.その後,眼底異常を認めたため当院を紹介受診した.既往歴:特記事項なし.初診時所見:視力は右眼1.2,左眼0.08(矯正不能),眼圧は右眼13mmHg,左眼11mmHgであった.眼底には網膜下出血,黄斑円孔を認めた.眼底写真とOCT(光干渉断層計)像を図1a,bに示した.経過:初診から2週後,5週後,12週後のOCT所見を図2に示した.2011年9月9日(12週後)には網膜下出血は吸収され,中心部網膜外層の菲薄化と視細胞内節外節接合部の反射の低下を認めるものの,黄斑円孔は自然閉鎖している.視力は0.6(矯正不能)まで改善した.初診から66週後(自然閉鎖より54週後),2012年9月19日には,収縮した黄斑上膜と黄斑円孔の再発がみられた(図3a,b).視力は0.2(矯正不能)まで低下している.2012年11月6日,右眼に硝子体手術を施行した.硝子体.離はなく,人工的に.離を作製した.黄斑上膜を.離した後,内境界膜を.離し,20%SF6(六フッ化硫黄)でガスタンポナーデを行った.手術より3週後には黄斑円孔の閉鎖が認められ(図4a,b),視力は0.6〔別刷請求先〕堀口正之:〒470-1192愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98藤田保健衛生大学医学部眼科学教室Reprintrequests:MasayukiHoriguchi,M.D.,DepartmentofOphthalmology,FujitaHealthUniversitySchoolofMedicine,1-98Dengakugakubo,Kutsukake-cho,ToyoakeCity,Aichi470-1192,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(127)1327 《初診時》《2週後》《5週後》《12週後》《初診時》《2週後》《5週後》《12週後》図1初診時の眼底写真(a)およびOCT所見(b)網膜下出血と黄斑円孔がみられる.視力は0.08であった.図2初診から2週後,5週後,12週後のOCT所見12週後には黄斑円孔は閉鎖し,網膜下出血も消失した.視力は0.6である.図3初診より44週後の眼底写真(a)およびOCT所見(b)黄斑上膜と黄斑円孔の再発を認めた.視力は0.2に低下した.(矯正不能)まで改善した.その後に再発はなく,視力も維持されている.II考按外傷性黄斑円孔の発生に関しては,種々の説が考えられている.打撃による眼球の変形や衝撃により,黄斑部網膜に裂隙を生じるという説,外傷後の黄斑部の.胞様変化によると1328あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013いう説,外傷後の急激な硝子体.離によるという説がある3,4).今回の症例では硝子体は.離しておらず,また.胞様変化も認められなかったので,黄斑円孔は眼球の変形により発生した可能性が高い.変形による裂隙は変形がなくなれば,自然に閉鎖しても不思議ではないと考える.外傷性黄斑円孔発症のもう一つの可能性は,網膜下出血である.脈絡膜破裂により黄斑下出血が発生し,それにより黄斑円孔となる(128) 図4手術より3週後の眼底写真(a)およびOCT所見(b)黄斑円孔は閉鎖している.視力は0.6に回復した.可能性があるという7).筆者らは黄斑下出血に伴う外傷性黄斑円孔を観察したことはないが,網膜血管瘤などによる黄斑出血では,黄斑前出血と黄斑下出血が同時に存在し,それらが黄斑円孔でつながっていることがある.しかし,今回の症例の網膜下出血は黄斑下にはなく,円孔の原因とは考えにくい.再発の原因は,今回の症例では黄斑上膜である.黄斑上膜が収縮し網膜の牽引となり閉鎖した黄斑円孔を再発させたと考えられる.Kamedaらの症例5)には黄斑上膜は認められず,.胞様変化もなかった.再発の原因は不明である.山本らの症例6)では黄斑上膜が認められた.自然閉鎖から再発までの時間は,今回の症例では54週,Kamedaらの症例では約2年,山本らの症例では約1年であった.自然閉鎖した外傷性黄斑円孔の再発はまれではあるが,本症例も含めた3症例はすべて自然閉鎖から1年以上経過してから再発しており,長期の経過観察が必要である.今回の症例を含めた3例中2例が黄斑上膜を伴っており,黄斑上膜が観察された場合には特に注意を要すると思われた.文献1)KusakaS,FujikadoT,IkedaTetal:Spontaneousdisappearanceoftraumaticmacularholesinyoungpatients.AmJOphthalmol123:837-839,19972)AmariF,OginoN,MatsumuraMetal:Vitreoussurgeryfortraumaticmacularholes.Retina19:410-413,19993)佐久間俊朗,田中稔,葉田野宣子ほか:外傷性黄斑円孔の治療方針について.眼科手術15:249-255,20024)長嶺紀良,友寄絵厘子,目取真興道ほか:外傷性黄斑円孔に対する硝子体手術成績.あたらしい眼科24:1121-1124,20075)KamedaT,TsujikawaA,OtaniAetal:Latereopeningofspontaneouslyclosedtraumaticmacularhole.RetinalCases&BriefReport1:246-248,20076)山本裕樹,佐伯忠賜朗,鷲尾紀彰ほか:外傷性黄斑円孔が自然閉鎖した後に再発がみられた1例.あたらしい眼科29:1291-1393,20127)GassJDM(ed):Post-traumaticmacularholeandfoveolarpit.StereoscopicAtlasofMacularDiseases.4thEdition,p744,Mosby,StLous,1997***(129)あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131329

外傷性黄斑円孔が自然閉鎖した後に再発がみられた1例

2012年9月30日 日曜日

《原著》あたらしい眼科29(9):1291.1293,2012c外傷性黄斑円孔が自然閉鎖した後に再発がみられた1例山本裕樹*1,2佐伯忠賜朗*1鷲尾紀章*1土田展生*1幸田富士子*1*1公立昭和病院眼科*2お茶の水・井上眼科クリニックLateReopeningofSpontaneouslyClosedTraumaticMacularHoleHirokiYamamoto1,2),TadashiroSaeki1),NoriakiWashio1),NobuoTsuchida1)andFujikoKoda1)1)DepartmentofOphthalmology,ShowaGeneralHospital,2)OchanomizuInouyeEyeClinic症例は13歳,男性で,軟式野球ボールが右眼に当たり受傷した.初診時の視力は右眼(0.3),左眼1.2(矯正不能),右眼眼底に黄斑円孔,および軽度の硝子体出血,網脈絡膜萎縮を認めた.受傷約1カ月後に円孔は自然閉鎖した.しかし受傷後約1年で黄斑円孔の再発を認めた.しばらくしても自然閉鎖が得られず,円孔の拡大および視力低下をきたしたため,硝子体手術を施行した.術後円孔は閉鎖した.自然閉鎖した外傷性黄斑円孔の再発はまれであるが,閉鎖後も再発の可能性があることに留意すべきである.また,再発した外傷性黄斑円孔に対し硝子体手術は有用であった.A13-year-oldmalewasstruckintherighteyebyarubberball.Best-correctedvisualacuitywas0.3rightand1.2left.Fundusexaminationdisclosedmacularhole,slightvitreoushemorrhage,andchorioretinalatrophy.Onemonthlater,themacularholeclosedspontaneously.Aboutoneyearafterthetrauma,themacularholereopenedanddidnotspontaneouslyclose,butenlarged.Vitrectomywasperformed.Themacularholeclosedafterthesurgery.Whilemacularholereopeningmightbeararecomplication,ophthalmologistsshouldbeawareofitspossibleoccurrenceaslatecomplicationofaspontaneouslyclosedtraumaticmacularhole.Vitrectomywasaneffectivetreatmentforreopeningofaspontaneouslyclosedtraumaticmacularhole.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(9):1291.1293,2012〕Keywords:外傷性黄斑円孔,自然閉鎖,再発,黄斑前膜,硝子体手術.traumaticmacularhole,spontaneousclosure,reopening,epiretinalmembrane,vitrectomy.はじめに鈍的外傷に続発する外傷性黄斑円孔は,自然閉鎖が早期より認められることが多い.受傷後約3カ月の経過観察のあとに,閉鎖しない場合は硝子体手術が有効であると報告されている1.5).一旦自然閉鎖したのち再発した外傷性黄斑円孔は,非常にまれな合併症6)である.今回,自然閉鎖したのち再発した外傷性黄斑円孔を経験し,硝子体手術により閉鎖し良好な結果を得られたので報告する.I症例患者:13歳,男性.初診:2008年9月24日.主訴:右眼視力低下.現病歴:2008年9月15日軟式ボールが右眼に当たり,その後視力低下を自覚して近医を受診し,公立昭和病院眼科を紹介された.既往歴・家族歴:特記すべき事項なし.初診時所見:視力は右眼0.1(0.3),左眼は1.2(矯正不能),眼圧は右眼18mmHg,左眼は14mmHg,右眼は軽度散瞳状態であった.眼底に軽度の硝子体出血,視神経乳頭の発赤,網脈絡膜萎縮,約0.2乳頭径大の黄斑円孔を認めた(図1).経過:受診から約1カ月後の10月22日に黄斑円孔は自然閉鎖し(図2),矯正視力も(0.5)に改善した.その後も脈絡膜萎縮は残るものの,円孔は閉鎖していた.受傷から約8カ月後の2009年5月27日に矯正視力(0.8)であった(図3).2009年9月9日の再診時,黄斑円孔の再発,黄斑前膜を認めた(図4).しかし,矯正視力が(0.9)で比較的良好で,自覚症状もなかったため,経過観察とした.2009年11月25日受診時には矯正視力が(0.4)に低下し,円孔の拡大を〔別刷請求先〕山本裕樹:〒187-8510東京都小平市天神町2-450公立昭和病院眼科Reprintrequests:HirokiYamamoto,M.D.,DepartmentofOphthalmology,ShowaGeneralHospital,2-450Tenjin-cho,KodairaCity,Tokyo187-8510,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(115)1291 図42009年9月9日のOCT写真黄斑円孔の再発を認め,網膜萎縮部に収縮した黄斑前膜を認める.図1a2008年9月24日の眼底写真軽度の硝子体出血,黄斑鼻側に網脈絡膜萎縮,視神経乳頭の発赤,約0.2乳頭径大の黄斑円孔を認める.図1b2008年9月24日の光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)写真全層の黄斑円孔を認める.図5a2009年11月25日の眼底写真1/3乳頭径の黄斑円孔の再発を認める.図5b2010年11月25日のOCT写真図4と比較し黄斑円孔の拡大を認める.図22008年10月22日のOCT写真黄斑円孔は閉鎖しているが,網膜の萎縮を認める.図62010年12月24日のOCT写真黄斑円孔は閉鎖し,黄斑上膜は認めない.図32009年5月27日のOCT写真黄斑円孔は閉鎖しており,網膜の萎縮がみられる.1292あたらしい眼科Vol.29,No.9,2012(116) 図72010年7月21日の眼底写真黄斑円孔は閉鎖している.認めた(図5).2009年12月10日,右経毛様体扁平部硝子体切除術〔人工的後部硝子体.離作製+内境界膜.離+20%SF6(六フッ化硫黄)ガスタンポナーデ併用〕を施行した.術後に黄斑円孔は閉鎖し(図6),矯正視力は(0.3)であった.その後も再発なく経過している(図7).II考察鈍的外傷に続発する外傷性黄斑円孔は,自然閉鎖が早期より認められることがある.円孔が閉鎖しない場合には,硝子体手術が有効であるといわれている1.5).自然閉鎖したのち再発するのはまれである6).特発性黄斑円孔の場合,再発の原因は,黄斑円孔手術後の黄斑前膜によるもの,白内障手術施行後の黄斑浮腫によるものとの報告がある7,8).本症例では受傷1カ月後に自然閉鎖し,約1年後,黄斑円孔の再発を認めた.再発の原因としては網脈絡膜萎縮側の黄斑前膜の収縮により黄斑部に水平方向の牽引がかかり,閉鎖した円孔の再発を惹起したことが考えられる.再発時,自覚症状もなく矯正視力も変化ないため,再び自然閉鎖を期待して経過観察したが,円孔の拡大および視力低下を認め,収縮した黄斑前膜に変化がないため自然閉鎖は期待できないと考え,硝子体手術を施行した.外傷性黄斑円孔の再発はまれであるが,その原因として黄斑前膜が関与して再発する可能性が今回考えられた.自然閉鎖後も経過観察が必要だと思われる.また,再発した症例に対して硝子体手術は有効であった.文献1)MitamuraY,SaitoW,IshidaMetal:Spontaneousclosureoftraumaticmacularhole.Retina21:385-389,20012)徐麗,新城ゆかり,蟹江佳穂子ほか:外傷性黄斑円孔の治療.眼紀53:287-289,20023)長嶺紀良,友寄絵厘子,目取真興道ほか:外傷性黄斑円孔に対する硝子体手術成績.あたらしい眼科24:1121-1124,20074)土田展生,西山功一,戸張幾生:外傷性黄斑円孔に対し内境界膜.離が有効であった2症例.臨眼54:961-964,20005)佐久間俊郎,田中稔,葉田野宜子ほか:外傷性黄斑円孔の治療方針について.眼科手術15:249-255,20026)KamedaT,TsujikawaA,OtaniAetal:Latereopeningofspontaneouslyclosedtraumaticmacularhole.RetinalCases&BriefReports1:246-248,20077)PaquesM,MassinP,SantiagoP:Latereopeningofsuccessfullytreatedmacularholes.BrJOphthalmol81:658662,19978)PaquesM,MassinP,BlainPetal:Long-termincidenceofreopeningofmacularhole.Ophthalmology107:760766,2000***(117)あたらしい眼科Vol.29,No.9,20121293