屈折矯正手術:オルソケラトロジー概論

監修=木下茂●連載246大橋裕一坪田一男246.オルソケラトロジー概論四倉絵里沙鳥居秀成慶應義塾大学医学部眼科学教室オルソケラトロジーは,特殊デザインのコンタクトレンズ装用により角膜中央部を平坦化することで近視などの屈折異常を矯正するもので,小児においては近視進行抑制効果も期待できる.しかし,10年以上の長期予後については不明であり,患者や保護者に正しいレンズ装用と適切な管理,定期的な診察の必要性を指導することが重要である.C●はじめにオルソケラトロジーとは,特殊デザインの酸素透過性ハードコンタクトレンズ(contactlens:CL)の装用により角膜形状を変化させ,近視などの屈折異常を治療する方法である.2009年に日本で最初のオルソケラトロジーレンズであるメニコンオルソCK(メニコン)が医療機器として承認され,その後マイエメラルド(テクノピア,2010年),ブレスオーコレクト(ユニバーサルビュー,2012年),アイメディオルソケー(アイメディ,2016年)が加わり,現在国内で承認されているレンズはC4種類である.C●適応ガイドラインもC2009年に第C1版が策定されたが,その後レンズの効果と安全性を再評価し,2016年に第C2版が策定された.オルソケラトロジーによる屈折矯正は,屈折値が安定している近視,乱視の屈折異常が対象となる.適応とする屈折異常は,近視度数は原則として-4.0Dまで,乱視度数は-1.5D以下としている.旧版では年齢について,患者本人の十分な判断と同意を求めることが可能で,親権者の関与を必要としないという主旨からC20歳以上としていたが,第C2版ではC20歳以上を原則としつつも,20歳未満は慎重処方と改訂された.医学的な条件としては,眼疾患を有していない健常眼でかつ①角結膜に顕著なフルオレセイン染色がなく,CSchirmerI法試験にてC5分間でC5Cmm以上であること,②角膜内皮細胞密度がC2,000個/mmC2以上であることを求めている.C●レンズ形状オルソケラトロジーレンズは,リバースジオメトリーレンズという特殊な形状で,中央が周辺部よりも平坦にデザインされている.レンズによる屈折矯正は,角膜上(91)皮細胞層の厚さと形状を変化させ,角膜中央部を平坦化することによってなされる.角膜中央に接する光学系部分はベースカーブとよばれ,涙液を介した圧力によって角膜中央部を平坦化させる(図1).ベースカーブからリバースカーブとよばれるスティープにデザインされた部分が幅C1Cmmで続いており,この部分に涙液が貯留する.次に続くフィッティング(アライメント)カーブはレンズのセンタリングを担っており,フルオレセイン染色では暗く写る.その周辺にあるのがペリフェラルカーブであり,エッジリフトの部分にあたり,フルオレセイン染色ではレンズを縁どるように明るく写る(図2).適正なフィッティングが得られれば,角膜形状解析にてbull’seyepatternを呈する(図3).C●小児の近視進行抑制効果オルソケラトロジーには近視矯正のほかに,小児における近視進行抑制効果も報告されている.2018年のメタアナリシスでは,オルソケラトロジーによりC2年間で40%の眼軸長伸長が抑制されたと報告されており1),2020年のレビューではオルソケラトロジーによる眼軸長伸長抑制効果が報告されている2).日本においてもオルソケラトロジーのC10年間継続症例にて,安全性と近視進行抑制効果についてソフトCCL装用者との比較を行った結果,オルソケラトロジーの長期にわたる近視進行抑制効果と,ソフトCCLと比し点状表層角膜炎や結膜炎などの有害事象の頻度に有意差を認めず,その安全性が確認された3).最近では,partialreductionという方法で一部近視が残っても強度近視症例に対し,中等度近視と同等の近視進行抑制効果が得られたこと4)や,不同視症例のより近視の強い眼において,片眼と比較し眼軸長伸長が有意に抑制されたこと5)が報告されている.C●角膜感染症の予防と対処法しかし,オルソケラトロジーにも留意しなければならあたらしい眼科Vol.37,No.11,2020C14230910-1810/20/\100/頁/JCOPY正面図断面図ベリフェラルカーブ図1オルソケラトロジーの構造フィッティングカーブ角膜中央に接する光学系部分はベースリバースカーブカーブとよばれ,ベースカーブから外側にリバースカーブ,フィッティング直径前面光学部中心厚後面光学部(アライメント)カーブ,ペリフェラベースカーブルカーブと続く.(株式会社シードのホームページよりフロントカーブエッジ厚転載)図2適切なオルソケラトロジー装用時のスリット写真リバースカーブに涙液が貯留するためフルオレセイン染色では明るく写り(),その周辺のフィッティング(アライメント)カーブは暗く写る.レンズを縁どるように明るく写る部分はペリフェラルカーブである().ない点があり,最たるものは角膜感染症である.オルソケラトロジーによる角膜感染症は以前から報告されており,緑膿菌やアカントアメーバによるものが多いが,これらの病原菌はハード,ソフトCCLにおける角膜感染症でも知られている.ただし,オルソケラトロジーレンズは夜間就寝時に装用するものであり,閉瞼による角膜の低酸素状態が続き,レンズ下涙液交換が行われないため,角膜感染症のリスクにはとくに注意する必要がある.患者と,小児の場合は保護者にも正しいレンズケア方法,定期検査の必要性,保護者の管理の重要性を説明し理解を得る必要がある.C●おわりにこのように,オルソケラトロジーは屈折異常に対する有効な矯正手段の一つであり,小児においては近視進行抑制効果も期待できる.しかし,10年以上の長期予後については不明であり,正常な角膜に変化を与えることC1424あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020図3適切なオルソケラトロジー装用後の角膜形状解析適正なフィッティングが得られれば,角膜形状解析にてbull’seyepatternを呈する.から慎重に適応例を選択しなければならない.正しいレンズ装用と適切な管理,定期的な診察が必要不可欠であり,処方する医師は責任をもって患者や保護者を指導する必要がある.文献1)CooperJ,TkatchenkoAV:Areviewofcurrentconceptsoftheetiologyandtreatmentofmyopia.EyeContactLensC44:231-247,C20182)WallineJJ,LindsleyKB,VedulaSSetal:Interventionstoslowprogressionofmyopiainchildren.CochraneDatabaseSystRevC1:CD004916,C20203)HiraokaCT,CSekineCY,COkamotoCFCetal:SafetyCandCe.cacyCfollowingC10-yearsCofCovernightCorthokeratologyCforCmyopiaCcontrol.COphthalmicCPhysiolCOptC38:281-289,C20184)LyuCT,CWangCL,CZhouCLCetal:RegimenCstudyCofChighCmyopia-partialCreductionCorthokeratology.CEyeCContactCLensC46:141-146,C20205)LuCW,CJinW:ClinicalCobservationsCofCtheCe.ectCofCortho-keratologyCinCchildrenCwithCmyopicCanisometropia.CContCLensAnteriorEyeC43:222-225,C2020(92)

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