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眼窩に生じた節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型の2症例

2014年3月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科31(3):459.463,2014c眼窩に生じた節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型の2症例濱岡祥子*1高比良雅之*1杉森尚美*2中野愛*3杉山和久*1*1金沢大学附属病院眼科*2金沢大学附属病院血液内科*3福井県済生会病院眼科TwoCasesofExtranodalNK/T-CellLymphoma,NasalTypeintheOrbitShokoHamaoka1),MasayukiTakahira1),NaomiSugimori2),AiNakano3)andKazuhisaSugiyama1)1)DepartmentofOphthalmology,KanazawaUniversityGraduateSchoolofMedicalScience,2)DepartmentofClinicalLaboratoryScience,KanazawaUniversityGraduateSchoolofMedicalScience,3)DepartmentofOphthalmology,Fukui-kenSaiseikaiHospital眼窩病変が初発症状であった節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型の2症例を報告する.症例は69歳と46歳の女性で,両者ともに右眼眼瞼皮下の腫瘍がみられ,眼瞼下垂を伴い,生検にて節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型と診断された.69歳,女性の病期はIAEであり,DeVIC化学療法と放射線外照射にて原発巣は縮小した.しかし骨髄浸潤をきたし,初診時から約5カ月後に死亡した.46歳,女性には,乳癌と脳転移の既往があった.診断時リンパ腫の病期はIIEであり,DeVIC療法と放射線外照射で一旦は改善した.しかし,間もなく後腹膜などへ多発転移し,初診より5カ月後に死亡した.本症の生命予後は概して不良であり,局所限局期の速やかな病理診断と放射線化学療法の導入が重要である.癌の既往がある症例に眼窩腫瘤をみる場合には,重複癌としての本症の可能性も考慮すべきである.WereporttwocasesofextranodalNK/T-celllymphoma,nasaltype,whichdevelopedintheorbitalregion.Thepatients,69-and46-year-oldfemales,presentedwithunilateralblepharoptosisoriginatingfromorbitaltumor,pathologicallydiagnosedasextranodalNK/T-celllymphoma,nasaltype.The69-year-oldpatient,withstagingofIAE,underwentchemotherapyandirradiation.However,bone-marrowinvasionwasdetected;shediedwithatotalclinicalcourseof5months.The46-year-oldpatienthadahistoryofbreastcancer.WithaclinicalstagingofIIEforthelymphoma,sheunderwentchemotherapyandirradiation.However,multiplemetastasesdevelopedbeforelong,andshedied5monthsafterthediagnosisofthislymphoma.Sincetheprognosisofthislymphomaisessentiallypoor,immediatediagnosisandtherapyinitiationisessential.Whenorbitalmetastasisissuspectedinapatientwithotherprimarycancer,extranodalNK/T-celllymphoma,nasaltype,asmultipleprimarycancer,shouldalsobeconsidered.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(3):459.463,2014〕Keywords:節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型,リンパ腫,眼窩腫瘍,Epstein-Barrウィルス,重複癌.extranodalNK/T-celllymphomanasaltype,lymphoma,orbitaltumor,Epstein-Barrvirus,multipleprimarycancer.はじめに眼窩に生じる腫瘤病変のうち,リンパ増殖性疾患,すなわちリンパ腫(すべて悪性腫瘍)と,良性である反応性リンパ過形成,偽腫瘍とよばれる病態の占める頻度は高い1).日本では,眼窩腫瘍とその類縁疾患におけるリンパ増殖性疾患が占める頻度は,409症例のうち43%1),1,334症例のうち38%2),213症例のうち49%3)などと報告されている.眼窩に発症するリンパ腫のうち最も頻度の高いものはMALTリンパ腫(extranodalmarginalzonelymphomaofmucosa-associatedlymphoid-tissuetype)であり1),ついで,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuselargeBcelllymphoma:DLBCL),濾胞性リンパ腫(follicularlymphoma)などが挙げられる.他のリンパ腫は稀であるが,近年,眼窩に原発する節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型の報告が散見される4).節外性NK/Tリンパ腫は,一般に病期が進むと予後は不良であり5.7),速やかな診断と治療への導入が必要である.筆者らは近年,眼窩病変が初発であった節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型の2症例を経験したので報告する.なお,本〔別刷請求先〕濱岡祥子:〒920-8641金沢市宝町13-1金沢大学附属病院眼科Reprintrequests:ShokoHamaoka,DepartmentofOphthalmology,KanazawaUniversityHospital,13-1Takara-machi,Kanazawashi920-8641,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(155)459 研究は金沢大学臨床試験審査委員会の承認を得ている.I症例〔症例1〕69歳,女性.主訴:右眼瞼下垂,腫脹.既往歴・家族歴:特記すべきことなし.現病歴:3カ月ほどで急速に進行した右眼瞼腫脹と高眼圧症にて,紹介により2010年11月に金沢大学附属病院を受診した.当院初診時所見:視力は右眼0.5(矯正不能),左眼1.2(矯正不能).眼圧は右眼42mmHg,左眼15mmHg.前眼部,中間透光体,眼底には特記所見はなかった.右上眼瞼には著しい腫脹がみられた(図1a,b).CT検査を施行したところ右眼の眼球結膜から眼球前方成分に高吸収な腫瘤影あり,前後の腫瘤間に遊離気体も認め,眼球結膜と眼瞼結膜主体の腫瘤と考えられ,リンパ腫が疑われた.前医でのMRI(磁気共鳴画像)では右眼球周囲に腫瘤を認め,特に眼球前方の腫瘤がT2強調画像で高信号を示し,内直筋,外直筋,涙腺にも浸潤の可能性が疑われ,ここでもリンパ腫が疑われた(図1c).当院初診日に生検を行い,高眼圧の管理目的で同日に入院となった.血液化学的検査では特記すべき異常はなく,体幹部CTならびにガリウムシンチグラフィーでは,右眼窩病変以外の病変はみられなかった.病理所見と診断:HE染色では中型から大型の核形不整を示す異型細胞集団がみられ,核分裂像が散見された.濾胞形成は明らかではなかった(図1d,e).免疫染色では,CD3,図1症例1(69歳,女性)の臨床所見a:初診時には右眼瞼の著しい腫脹と眼瞼下垂がみられた.b:初診時,結膜下にも腫瘍がみられた.c:MRI(T1強調画像)にて,右眼球周囲に腫瘤がみられ,内直筋,外直筋,涙腺への浸潤が疑われた.d:生検検体のHE染色弱拡大像.中型から大型の核形不整を示す異型細胞集団がみられた.濾胞形成は明らかではなかった.スケールバーは500μm.e:HE染色強拡大像.核分裂像が散見された.スケールバーは100μm.f:CD56免疫染色では陰性であった.スケールバーは100μm.g:EBV-encodedRNA(insituハイブリダイゼーション法)は陽性であった.スケールバーは100μm.460あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014(156) 表1節外性NK/Tリンパ腫(鼻型)の診断上重要な病理組織学的所見病理組織所見腫瘍細胞は中-大型でびまん性に浸潤.凝固壊死を伴い,異型の強い.細胞が血管中心性・破壊性に増殖している症例が多い.表面マーカーNK細胞性:細胞質CD3陽性,細胞表面CD3陰性,CD56陽性.T細胞性:細胞質CD3陽性,細胞表面CD3陽性,CD56陰性.NK/T細胞性:細胞傷害性分子(perforin,granzymeB,TIA-1)陽性.EBER(insituハイブリダイゼーション)腫瘍細胞に陽性.CD43,TIA-1,TCR-b,granzymeBは陽性であった.一方,CD5,CD10,CD20,CD23,CD79a,bcl-6,MUM1,CD56,CD30,ALKは陰性であった.Insituハイブリダイゼーション法によるEpstein-Barrvirus-encodedRNA(EBER-ISH)が陽性で,MIB-1indexは50%以上の高い増殖活性を示した.免疫グロブリン遊離L鎖のk/l比(insituハイブリダイゼーション)はほぼ1であった.CD20,CD79aが陰性であることからB細胞系リンパ腫は否定的で,CD3とgranzymeBが陽性であることから,T細胞性あるいはNK細胞性リンパ腫が考えられた.さらにEBER-ISHが陽性,CD56が陰性であること(図1f)から,T細胞由来の節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型と診断された.上記の諸検査と合わせ,節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型,ステージIAEと診断された(表1,2).臨床経過:生検後も高眼圧症や視力低下がみられたので,病理確定診断に先立ち,ただちにステロイドの点滴(dexamethasone,40mg/日)を開始した.その3日後,組織型分類は不明であるが悪性度の高いリンパ腫と病理診断された時点で,ただちにCHOP(cyclophosphamide,doxorubicin,vincristine,prednisolone)療法を開始した.CHOP療法直後は,一旦,眼瞼皮下腫瘤は縮小したが,ただちに再増殖がみられた.最終的に,節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型の病理診断が得られ,その標準的治療とされるDeVIC(carboplatin,etoposide,ifosfamide,dexamethasone)療法と放射線外照射との併用療法を行った.それらにより眼窩部病変は縮小したが,初診時から約4カ月後に骨髄浸潤がみられた.放射線照射を45Gyで中止し,化学療法をSMILE(dexamethasone,methotrexate,ifosfamide,L-asparaginase,etoposide)療法に変更した.しかし,やがて全身状態の悪化から化学療法を全量投与できず,初診時から約5カ月後に死亡した.〔症例2〕46歳,女性.主訴:右眼瞼下垂,腫脹.既往歴:当科初診時の約3年前に乳癌の手術を受けた.その約1年後に乳癌転移性脳腫瘍にて摘出手術を受け,術後に化学療法(doxifluridine,cyclophosphamide)と全脳照射(30Gy)が行われた.家族歴:特記すべきことなし.(157)表2AnnArbor分類病期病変部位I期1カ所のリンパ節領域または節外性部位に腫れがあるII期2カ所以上の腫れがあるが,その範囲が横隔膜より上,または下だけIII期横隔膜の上下の両方に腫れがあるIV期1つ以上のリンパ節外臓器(肝臓や骨髄など)に悪性リンパ腫の細胞が浸潤しているAnnArbor分類の付加事項A全身症状(発熱,寝汗,6カ月以内の10%以上の体重減少)がないB全身症状(発熱,寝汗,6カ月以内の10%以上の体重減少)E限局した節外病変があるS脾臓への浸潤があるH肝臓への浸潤があるM骨髄への浸潤があるP肺への浸潤があるO骨皮質への浸潤がある現病歴:初診時の1カ月前から右眼瞼腫脹がみられ,近医眼科で抗生剤内服と点眼とを処方されたが改善しなかった.眼瞼腫脹は増悪し,発熱がみられ,前医で眼窩蜂窩織炎の疑いで抗生剤の点滴,引き続いてステロイド(dexamethasone8mg/日)の点滴を行うも反応に乏しく,2011年5月に当院に紹介された.当院初診時所見:視力は右眼1.2(矯正不能),左眼1.2(矯正不能).眼圧は右眼24mmHg,左眼9mmHg.右上眼瞼の著しい腫脹がみられたが(図2a),前眼部,中間透光体,眼底には異常所見はなかった.頭部CTならびにMRIでは,右眼瞼皮下腫瘤,涙腺腫大がみられ(図2b),左上顎洞から篩骨,蝶形骨道に粘膜肥厚と液体貯留がみられた.FDGPETでは右上眼瞼腫脹に一致して集積がみられたが腫脹部のびまん性の集積で,SUV(standardizeduptakevalue)値は4.4で後期像でも増加しておらず,炎症としても妥当と考えられた.体幹部のCTでは,両肺野の多発結節性病変,右あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014461 図2症例2(46歳,女性)の臨床所見a:初診時には右眼瞼の著しい腫脹と眼瞼下垂がみられた.b:生検前のMRI(T1強調画像)では右涙腺腫大,眼瞼皮下に腫瘍がみられた.c:生検検体のHE染色強拡大像.細胞浸潤に変性や壊死を伴い,大型の異型細胞がみられた.スケールバーは100μm.d:CD56免疫染色では陽性であった.スケールバーは100μm.e:EBV-encodedRNA(insituハイブリダイゼーション法)は陽性であった.前頭葉の乳癌脳転移の術後性変化がみられた.既往や臨床経過から乳癌の眼窩転移を強く疑い,2011年6月に右上眼瞼皮下の腫瘍生検を施行した.病理所見と診断:脂肪組織に炎症細胞の浸潤がみられ,変性・壊死が加わり,少数の大型の異型細胞がみられた(図2c).免疫染色では,脂肪組織に浸潤する細胞は上皮系マーカーであるCKAE1/AE3,CAM5.2,EMAが陰性で,乳癌の転移は否定的であった.CD3,CD56(図2d),granzymeBは陽性であり,一方,CD20は陰性で,CD19,CD79aなどに陽性のB細胞系の細胞はほとんどみられなかった.EBER-ISHは陽性であった(図2e).以上より,CD3とgranzymeBが陽性であり,さらにCD56とEBER-ISHが陰性であることから,NK細胞由来の節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型と診断された.また,画像などの諸検査からステージIIEと診断された(表1,2).臨床経過:診断確定後は,紹介元の前医にて治療が行われた.診断直後より放射線外照射+DeVIC療法が施行され,陽子線治療(24Gy)も追加された.当院初診から約2カ月目には,右眼瞼腫大改善,左鼻腔の腫瘤縮小がみられたが,3カ月後に,肝,両腎,左後腹膜へのリンパ腫進展が指摘され,全身播種と診断され,SMILE療法が開始された.SMILE療法開始後,増悪していた右眼瞼腫脹は改善し,画像検査では眼瞼,副鼻腔病変,両肺野多発結節,肝臓,腎臓の腫瘤の縮小がみられ,全身の腫瘍は改善傾向であった.しかし,初診から5カ月目に,急激な肝障害,腎障害,播種性血管内凝固をきたし死亡した.II考按WHOによる血液リンパ系腫瘍の分類ではNK細胞由来の腫瘍は3つに大別され,その一つが節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型である.節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型の免疫形質の多くはNK細胞型であるが,一部でT細胞型であることから6),WHO分類ではNK/T細胞リンパ腫と呼称されている.わが国では全リンパ腫の約3%を占めるが5),その発症頻度には人種差があり,アジアや中南米に多く,欧米では稀とされる5).節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型は,鼻腔から喉咽頭に好発し,その他,皮膚,リンパ節,脾,肝,肺などにも発症する4).本症例2では副鼻腔が原発巣が眼窩に波及したものと推察されるが,症例1では眼窩以外に病変はみられず眼窩原発と考えられた.NK/T細胞リンパ腫,鼻型の生命予後は概して不良であり,平均5年生存率は37.50%との報告がある5,7).病期が進行すると難治であるため,局所限局期の速やかな放射線化学療法が重要とされる.古くは限局期において放射線単独療法が行われたが,その5年生存率は40%程度にとどまるため8),放射線化学療法が推奨されるようになった.当初は462あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014(158) CHOP療法などのanthracyclineを含みetoposideを含まない化学療法がおもに選択されてきたが,その奏効率は低く,難治性の節外性NK/Tリンパ腫では10%程度であった.そこで,近年ではMDR非関連薬剤と,EBV関連血球貪食症候群のkeydrugであるetoposideを組み合わせた化学療法,DeVIC9)が標準的な治療とされている.進行期や再発・難治の節外性NK/Tリンパ腫に対してL-asparaginaseの効果を支持する報告もあり,最近ではそれを含むSMILE療法の効果が期待されている10).本報の症例1では,画像所見からは病変は眼窩に限局していたが,初発症状からおよそ3カ月で高度の眼瞼下垂をきたした.眼窩,眼瞼部に発症するリンパ腫のうち最も高頻度のMALTリンパ腫であれば,3カ月間でここまで高度の眼瞼下垂をきたすことは少ないと考えられた.したがって,もしリンパ腫であれば,より悪性度の高いDLBCLなどを疑い,初診日にただちに生検を行った.その結果,最終的に,より悪性度の高い,しかし稀な節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型との診断に至り,速やかにそれに応じた化学療法(DeVIC療法)に導入することができた.しかしながら,その治療中に骨髄転移が発覚し,化学療法がSMILE療法へ変更されるも,初診から約5カ月後に死亡した.症例2では,生検前には,その病歴から乳癌の転移が最も疑われた.初回手術を行った乳癌4,520例のうち眼窩への転移はわずか2例(0.04%)とする報告にあるように11)乳癌の眼窩転移は稀とされるが,転移性眼窩腫瘍のなかでの原発部位としては乳癌が最も多いと報告されている12).また,乳癌や胃癌などの硬癌の眼窩転移では眼球はむしろ陥凹することが多いとされる.その理由としては,びまん性に浸潤した線維化の強い癌では,腫瘍内の線維芽細胞が収縮することにより眼球が眼窩後方へ牽引されるためといわれている13).乳癌の転移では,やはり本症例のような高度の眼瞼腫脹,眼瞼下垂は生じにくいのかもしれない.一般に,癌の眼窩転移は稀であるので,他臓器の癌の経過中に眼窩腫瘤病変をみた際には,重複癌の可能性も念頭におく必要がある.重複癌は近年わが国でも増加傾向にあり,その原因として,検診や治療法の発展により一次癌治療後の長期生存が得られるようになったこと,初発癌の放射線治療や抗癌剤の影響による二次癌の発生,高齢化などが考えられている14).乳癌患者における二次癌としての悪性リンパ腫発症については,化学療法がその発症リスクを引き上げている可能性も指摘されている15).症例2では,生検によりNK/T細胞リンパ腫の診断に至ったが,もし既往から乳癌の眼窩内転移と判断し,生検を行わずに放射線治療を開始していた場合には,NK/T細胞リンパ腫としての治療が遅れたことになる.本症例を鑑み,乳癌や肺癌などの加療中に眼窩病変をみた際には,病理診断を積極(159)的に考慮すべきであると考えられた.以上,眼窩に生じた節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型の2症例を提示した.近年の癌治療の進歩により,本症が二次癌として今後増加する可能性も考えられる,眼窩における腫瘍病変の鑑別診断の一つとして念頭におくべきである.文献1)後藤浩:眼腫瘍の疾患別頻度.見た目が大事!(後藤浩編).眼腫瘍.眼科プラクティス24:2-9,20082)ShikishimaK,KawaiK,KitaharaK:PathologicalevaluationoforbitaltumoursinJapan:analysisofalargecaseseriesand1379casesreportedintheJapaneseliterature.ClinExpOphthalmol34:239-244,20063)OhtsukaK,HashimotoM,SuzukiY:Areviewof244orbitaltumorsinJapanesepatientsduringa21-yearperiod:originsandlocations.JpnJOphthalmol49:49-55,20054)KuwabaraH,TsujiM,YoshiiYetal:Nasal-typeNK/Tcelllymphomaoftheorbitwithdistantmetastases.HumPathol34:290-292,20035)OshimiK:Progressinunderstandingandmanagingnaturalkiller-cellmalignancies.BrJHaematol139:532-544,20076)LiangR:AdvancesinthemanagementandmonitoringofextranodalNK/T-celllymphoma,nasaltype.BrJHaematol147:13-21,20097)Al-HakeemDA,FedeleS,CarlosRetal:ExtranodalNK/T-celllymphoma,nasaltype.OralOncol43:4-14,20078)KoomWS,ChungEJ,YangWIetal:AngiocentricT-cellandNK/T-celllymphomas:radiotherapeuticviewpoints.IntJRadiatOncolBiolPhys59:1127-1137,20049)YamaguchiM:CurrentandfuturemanagementofNK/T-celllymphomabasedonclinicaltrials.IntJHematol96:562-571,201210)YamaguchiM,KwongYL,KimWSetal:PhaseIIstudyofSMILEchemotherapyfornewlydiagnosedstageIV,relapsed,orrefractoryextranodalnaturalkiller(NK)/T-celllymphoma,nasaltype:theNK-CellTumorStudyGroupstudy.JClinicOncol29:4410-4416,201111)金子明博:遠隔転移巣の重点的治療.乳癌の臨床9:31-36,199412)ShieldsJA,ShieldsCL,ScartozziRetal:Surveyof1264patientswithorbitaltumorsandsimulatinglesions.Ophthalmology111:997-1008,200413)後藤浩:眼窩転移.眼科42:167-174,200014)伊藤啓二朗,野河孝允,温泉川真由ほか:乳癌術後の長期生存中に発見された4重複癌の1例.日本産婦人科学会中国四国合同地方部会雑誌51:164-169,200315)TanakaH,TsukumaH,KoyamaHetal:SecondPrimaryCancersFollowingBreastCancerintheJapanesefemalepopulation.JpnJcancerRes92:1-8,2001あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014463