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手持ち眼圧計Icare®PRO の座位・仰臥位における眼圧精度と有用性

2015年7月31日 金曜日

《(00)1022(100)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《第25回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科32(7):1022.1026,2015cはじめに手持ち眼圧計の一つであり2005年10月に発売されたIcareR(IcareFinlandOy)(以下,Icare)は麻酔不要で簡便に眼圧を測定することが可能である.そのためノンコンタクトトノメータ(NCT)で測定が困難な小児や寝たきりの患者,また緑内障患者における仰臥位での測定に多く用いられ〔別刷請求先〕都村豊弘:〒761-1703香川県高松市香川町浅野1260高松市民病院附属香川診療所眼科Reprintrequests:ToyohiroTsumura,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,TakamatsuMunicipalHospitalKagawaClinic,1260Asano,Kagawa-cho,Takamatsu761-1703,JAPAN手持ち眼圧計IcareRPROの座位・仰臥位における眼圧精度と有用性都村豊弘高松市民病院附属香川診療所眼科ClinicalEvaluationoftheNewReboundTonometerIcarePROintheSittingandSupinePositionsToyohiroTsumuraDepartmentofOphthalmology,TakamatsuMunicipalHospitalKagawaClinic目的:手持ち眼圧計IcareRの改良版であるIcareRPROにつき,他の眼圧計と比較し精度や有用性について検討した.対象および方法:対象は2013年7.9月に当診療所を受診し,本研究について同意が得られた168例168眼(右眼).座位でノンコンタクトレンズトノメータ(NCT),Icare,IcarePRO,Goldmann眼圧計(GAT)の順番で測定.つぎに仰臥位で5分間安静後IcareRPROで測定,その後顔を横に向けIcareで測定し,得られた眼圧値を比較・検討した.結果:座位での平均眼圧値はNCT13.7±3.5mmHg,Icare14.2±3.9mmHg,IcarePRO13.6±3.1mmHg,GAT12.8±3.3mmHg.仰臥位での平均眼圧値はIcarePRO15.6±3.2mmHg,Icare16.0±3.1mmHgであった.座位・仰臥位を含めた相関係数は0.813.0.943と強い相関があった.仰臥位に伴う眼圧上昇平均値はIcare1.79±1.77mmHg,Icare-PRO2.04±1.58mmHgであった.結論:IcarePROはIcareに比べNCTやGATとの眼圧値差やばらつきが少なく再現性に優れ,座位・仰臥位においても強い相関があったことからIcareより有用な機器であることが示唆された.Purpose:Tocompareandevaluateintraocularpressure(IOP)measurmentsobtainedbyuseoftheIcarePROandIcarereboundtonometers(IcareFinlandOy,Vantaa,Finland),anon-contacttonometer(NCT),andaGoldma-nnapplanationtonometer(GAT)inthesittingposition,andtheIcarePROandIcareinthesupineposition.Sub-jectsandMethods:Thisstudyinvolved168righteyesof168patientsseenatmyclinicbetweenJulyandSep-tember2013.IOPmeasurementswereobtainedinthesittingpositionusingNCT,Icare,IcarePRO,andGAT.Inthesupineposition,IOPmeasurementsweretakenusingIcarePROandIcare.Themean±standarddeviationIOPmeasurementsofalltonometerswerethencompared.Statisticalagreementbetweenthetonometerswascalculatedusingat-test,correlationanalysis,andtheBland-Altmanmethod.Results:ThemeanIOPsobtainedinthesittingpositionbyNCT,Icare,IcarePRO,andGATwere13.7±3.5mmHg,14.2±3.9mmHg,13.6±3.1mmHg,and12.8±3.3mmHg,respectively.CorrelationanalysisofthesedataindicatedagoodcorrelationbetweenIOPreadingsobtainedbyuseofalltonometers(r=0.813.0.943).ThemeanIOPsobtainedinthesupinepositionbyIcarePROandIcarewere15.6±3.2mmHgand16.0±3.1mmHg,respectively.Conclusion:IOPmeasurementsobtainedbyuseoftheIcarePROshowgoodcorrelationandagreementwiththoseobtainedbyuseofIcare,NCT,andGATinthesittingpositionandIcareinthesupineposition.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(7):1022.1026,2015〕Keywords:眼圧,座位,仰臥位,アイケア,アイケアPRO.intraocularpressure,sittingposition,supineposi-tion,Icare,IcarePRO. あたらしい眼科Vol.32,No.7,20151023(101)るようになった.しかし,本機器での測定値はNCTやGoldmann眼圧計(GAT)に比べて高めに出やすい傾向があり,また仰臥位での測定では下に向けて測定できないため顔を横に向ける必要があった.そこで同社では改良版として,下に向けても測定が可能で,プローブも滅菌化されたIcareRPRO(以下,IcarePRO)を開発し2012年10月わが国でも発売開始した.そこでIcarePROに関してIcareならびに他の眼圧計と比較し眼圧精度や有用性について検討した.I対象および方法対象は2013年7.9月に当診療所を受診し,内眼手術の既往がなく,本研究について口頭で同意が得られた168例168眼である.測定眼はすべて右眼とした.内訳は男性66名,女性102名,平均年齢は72.8±9.9(15.94)歳であった.眼圧測定は以下の順序で行った.検者はNCTに関しては当診療所スタッフ2名で行い,それ以外は筆者1名がすべての症例の測定を行った.まず座位で①NCT(TOPCONCT-90A),②Icare,③IcarePRO,④GAT,つぎに仰臥位で5分間安静後⑤IcarePRO,その後顔を横に向けて⑥Icareで測定した.NCTでは測定を3回,Icare,IcarePROについては測定を6回行い,表示された眼圧値の平均を算出した.得られた眼圧値はt検定,相関,Bland-Altman分析を用いて比較・解析を行った.系統誤差に関しては本研究の誤差の許容範囲を「誤差の許容範囲(limitsofagreement:LOA)」と定義し2機種の差の平均(d),その値の標準偏差(SD),95%信頼区間の定義値(1.96)より95%LOAとしてd±1.96SDの式で算出することができる1).d±1.96SDの範囲が機種間の誤差として許容範囲内であるかどうかを検討した.さらに対象者を正常群122名(男性35名,女性87名,平均年齢73.5±8.5歳)と視野異常を認め点眼などの加療を行っている緑内障〔このなかに狭義の原発開放隅角緑内障(POAG)と正常眼圧緑内障(NTG)を含む〕群46名(男性31名,女性15名,平均年齢71.0±12.8歳)に分類した.そしてIcareとIcarePROで座位,仰臥位での測定値を基にt検定で解析し,仰臥位に伴う眼圧値の変化が正常者と緑内障患者で差異があるかどうかを検討した.統計処理に関して統計ソフトはMicrosoftOfficeExcelを使用しt検定の有意水準は5%未満とした.II結果測定機器ごとの結果を示す.座位における平均眼圧値はNCT13.7±3.5mmHg,Icare14.2±3.9mmHg,Icare-PRO13.6±3.1mmHg,GAT12.8±3.3mmHgであった.仰臥位における平均眼圧はIcarePRO15.6±3.2mmHg,Icare16.0±3.1mmHgであった.各機器間においてNCTとIcarePRO間を除いて有意差があった(対応のあるt検定:有意差ありの機器間のp値はすべてp<0.003,NCT-Icare-PRO間はp=0.390)(図1).次にIcare,IcarePROとNCT間,Icare,IcarePROとGAT間における相関関係の図を示す(図2,3).それぞれの機器間におけるPearsonの相関係数(.1<r<+1)はr=0.893.0.921となり強い相関を認めた.また,座位・仰臥位を含めた各測定機器間すべてにおけるPearsonの相関係数もr=0.813.0.943となり強い相関を認めた.座位におけるBland-Altman分析を行ったところ,Icare-NCT間の差は平均が0.58mmHgで95%LOAは.2.41.3.56mmHg,Icare-GAT間の差は平均が1.47mmHgで95%LOAは.1.99.4.93mmHgであった.それに対しIcare-PRO-NCT間の差は平均が.0.10mmHgで95%LOAは.3.06.2.86mmHg,IcarePRO-GAT間の差は平均が0.79mmHgで95%LOAが.1.99.3.58mmHgとなり,GATとの比較においてIcarePROのほうがIcareに比べてばらつきが少なく再現性に優れているという結果となった(図4,5).仰臥位に伴うIcare,IcarePROを用いた眼圧上昇度の分布をみると,上昇度が1.2mmHg台はIcarePROのほうが多いがそれ以上になるとIcareのほうが多い結果となった.逆に仰臥位になることで眼圧が低下した症例もIcareで11眼(6.5%),IcarePROで9眼(5.4%)あった(図6).両機種における眼圧上昇平均値はIcareが1.79±1.77mmHg,IcarePROが2.04±1.58mmHgとIcarePROが約2mmHg高値であったが有意差はなかった(p=0.171,t検定).さらに対象者を正常群と緑内障群に分けて解析したところ正常群における眼圧上昇度はIcareが1.7±1.7mmHg,IcarePROが2.0±1.5mmHgだったのに対し,緑内障群ではIcareが2.1±1.9mmHg,IcarePROが2.3±1.8mmHgであった.ただし正常群間,緑内障群間,同一機種間において眼圧上昇度における有意差はなかった(t検定p値:正常群間p=0.072,緑内障群間p=0.490,Icare間p=0.187,IcarePRO間p=図1各眼圧計における眼圧平均値の比較数値は眼圧平均値±標準偏差.0510152025NCTIcareIcarePROGATIcarePROIcare眼圧値(mmHg)座位仰臥位13.7±3.514.2±3.913.6±3.112.8±3.315.6±3.216.0±3.1あたらしい眼科Vol.32,No.7,20151023(101)るようになった.しかし,本機器での測定値はNCTやGoldmann眼圧計(GAT)に比べて高めに出やすい傾向があり,また仰臥位での測定では下に向けて測定できないため顔を横に向ける必要があった.そこで同社では改良版として,下に向けても測定が可能で,プローブも滅菌化されたIcareRPRO(以下,IcarePRO)を開発し2012年10月わが国でも発売開始した.そこでIcarePROに関してIcareならびに他の眼圧計と比較し眼圧精度や有用性について検討した.I対象および方法対象は2013年7.9月に当診療所を受診し,内眼手術の既往がなく,本研究について口頭で同意が得られた168例168眼である.測定眼はすべて右眼とした.内訳は男性66名,女性102名,平均年齢は72.8±9.9(15.94)歳であった.眼圧測定は以下の順序で行った.検者はNCTに関しては当診療所スタッフ2名で行い,それ以外は筆者1名がすべての症例の測定を行った.まず座位で①NCT(TOPCONCT-90A),②Icare,③IcarePRO,④GAT,つぎに仰臥位で5分間安静後⑤IcarePRO,その後顔を横に向けて⑥Icareで測定した.NCTでは測定を3回,Icare,IcarePROについては測定を6回行い,表示された眼圧値の平均を算出した.得られた眼圧値はt検定,相関,Bland-Altman分析を用いて比較・解析を行った.系統誤差に関しては本研究の誤差の許容範囲を「誤差の許容範囲(limitsofagreement:LOA)」と定義し2機種の差の平均(d),その値の標準偏差(SD),95%信頼区間の定義値(1.96)より95%LOAとしてd±1.96SDの式で算出することができる1).d±1.96SDの範囲が機種間の誤差として許容範囲内であるかどうかを検討した.さらに対象者を正常群122名(男性35名,女性87名,平均年齢73.5±8.5歳)と視野異常を認め点眼などの加療を行っている緑内障〔このなかに狭義の原発開放隅角緑内障(POAG)と正常眼圧緑内障(NTG)を含む〕群46名(男性31名,女性15名,平均年齢71.0±12.8歳)に分類した.そしてIcareとIcarePROで座位,仰臥位での測定値を基にt検定で解析し,仰臥位に伴う眼圧値の変化が正常者と緑内障患者で差異があるかどうかを検討した.統計処理に関して統計ソフトはMicrosoftOfficeExcelを使用しt検定の有意水準は5%未満とした.II結果測定機器ごとの結果を示す.座位における平均眼圧値はNCT13.7±3.5mmHg,Icare14.2±3.9mmHg,Icare-PRO13.6±3.1mmHg,GAT12.8±3.3mmHgであった.仰臥位における平均眼圧はIcarePRO15.6±3.2mmHg,Icare16.0±3.1mmHgであった.各機器間においてNCTとIcarePRO間を除いて有意差があった(対応のあるt検定:有意差ありの機器間のp値はすべてp<0.003,NCT-Icare-PRO間はp=0.390)(図1).次にIcare,IcarePROとNCT間,Icare,IcarePROとGAT間における相関関係の図を示す(図2,3).それぞれの機器間におけるPearsonの相関係数(.1<r<+1)はr=0.893.0.921となり強い相関を認めた.また,座位・仰臥位を含めた各測定機器間すべてにおけるPearsonの相関係数もr=0.813.0.943となり強い相関を認めた.座位におけるBland-Altman分析を行ったところ,Icare-NCT間の差は平均が0.58mmHgで95%LOAは.2.41.3.56mmHg,Icare-GAT間の差は平均が1.47mmHgで95%LOAは.1.99.4.93mmHgであった.それに対しIcare-PRO-NCT間の差は平均が.0.10mmHgで95%LOAは.3.06.2.86mmHg,IcarePRO-GAT間の差は平均が0.79mmHgで95%LOAが.1.99.3.58mmHgとなり,GATとの比較においてIcarePROのほうがIcareに比べてばらつきが少なく再現性に優れているという結果となった(図4,5).仰臥位に伴うIcare,IcarePROを用いた眼圧上昇度の分布をみると,上昇度が1.2mmHg台はIcarePROのほうが多いがそれ以上になるとIcareのほうが多い結果となった.逆に仰臥位になることで眼圧が低下した症例もIcareで11眼(6.5%),IcarePROで9眼(5.4%)あった(図6).両機種における眼圧上昇平均値はIcareが1.79±1.77mmHg,IcarePROが2.04±1.58mmHgとIcarePROが約2mmHg高値であったが有意差はなかった(p=0.171,t検定).さらに対象者を正常群と緑内障群に分けて解析したところ正常群における眼圧上昇度はIcareが1.7±1.7mmHg,IcarePROが2.0±1.5mmHgだったのに対し,緑内障群ではIcareが2.1±1.9mmHg,IcarePROが2.3±1.8mmHgであった.ただし正常群間,緑内障群間,同一機種間において眼圧上昇度における有意差はなかった(t検定p値:正常群間p=0.072,緑内障群間p=0.490,Icare間p=0.187,IcarePRO間p=図1各眼圧計における眼圧平均値の比較数値は眼圧平均値±標準偏差.0510152025NCTIcareIcarePROGATIcarePROIcare眼圧値(mmHg)座位仰臥位13.7±3.514.2±3.913.6±3.112.8±3.315.6±3.216.0±3.1 1024あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(102)0.241)(図7).III考按点眼麻酔が不要で下に向けて測定が可能な手持ち眼圧計としてIcarePROが国内では2012年7月に発売された.Icareと比べてIcarePROのその他の特徴としては,①表示画面の拡大,②1,000件以上の測定結果を保存でき画面に表示するだけでなくUSB経由でPCに転送可能,③測定プローブが図2Icare,IcarePROとNCTによる眼圧値の比較IcareおよびIcarePROとNCTによる眼圧測定値の散布図.実線は近似回帰直線.Icare:Y=1.03X+0.15,IcarePRO:0.81X+2.44.Pearsonの相関係数はIcare:0.921,IcarePRO:0.901.051015202530051015202530NCT(mmHg)Icare(mmHg)051015202530051015202530NCT(mmHg)IcarePRO(mmHg)図3Icare,IcarePROとGATによる眼圧値の比較IcareおよびIcarePROとGATによる眼圧測定値の散布図.実線は近似回帰直線.Icare:Y=1.06X+0.73,IcarePRO:0.86X+2.54.Pearsonの相関係数はIcare:0.893,IcarePRO:0.903.051015202530051015202530GAT(mmHg)Icare(mmHg)051015202530051015202530GAT(mmHg)IcarePRO(mmHg)図4Icare,IcarePROとNCTの眼圧値のBland.AltmanPlotによる比較実線は対象機種の差の平均値〔d(Icare):0.58mmHg,d(IcarePRO):.0.10mmHg〕,点線はLOA:d±1.96x標準偏差(SD)(Icare上限:3.56mmHg,下限:.2.41mmHg,IcarePRO上限:2.86mmHg,下限:.3.06mmHg).-5-4-3-2-1012345678051015202530IcareとNCTの眼圧平均値(mmHg)IcareとNCTの眼圧差(mmHg)-5-4-3-2-1012345678051015202530IcarePROとNCTの眼圧平均値(mmHg)IcarePROとNCTの眼圧差(mmHg)dd+1.96×SDd-1.96×SDdd+1.96×SDd-1.96×SD-5-4-3-2-1012345678051015202530IcareとGATの眼圧平均値(mmHg)IcareとGATの眼圧差(mmHg)-5-4-3-2-1012345678051015202530IcarePROとGATの眼圧平均値(mmHg)IcarePROとGATの眼圧差(mmHg)d+1.96×SDd-1.96×SDd+1.96×SDd-1.96×SDdd図5Icare,IcarePROとGATの眼圧値のBland.AltmanPlotによる比較実線は対象機種の差の平均値〔d(Icare):1.47mmHg,d(IcarePRO):0.79mmHg〕,点線はLOA:d±1.96x標準偏差(SD)(Icare上限:4.93mmHg,下限:.1.99mmHg,IcarePRO上限:3.58mmHg,下限:.1.99mmHg). (103)あたらしい眼科Vol.32,No.7,20151025滅菌済製品として提供されるなどがあげられる.ただし測定画面が大きくなった分,幅が32mmから46mmと拡大し重量も250gから275gと若干重くなっている.今回Icare-PROの眼圧測定値に関してIcareならびに他の眼圧計と比較し精度や有用性について検討した.IcarePROで測定した眼圧値の精度に関してはGATとの比較を中心に多くの報告がなされている.対象患者数や緑内障患者か否かの割合が論文ごとに異なるものの,IcarePROの平均眼圧値はGATと比べて差が.0.9.0.7mmHgの範囲で報告されている2.7).今回座位でIcare,IcarePROで得られた測定値をNCT,GATそれぞれと比較したところ,IcareはNCTより0.5mmHg,GATより1.4mmHg高かった.一方,IcarePROはGATより0.8mmHg高かったがNCTより0.1mmHg低く,測定機器間で唯一有意差もなかった.また,NCTやGATとのBland-Altman分析において,IcarePROはIcareに比べて測定値のばらつきはNCTでは変わりなかったが,GATとの比較ではIcarePROのほうが少なかった.GATの眼圧測定値がgoldstandardである8)という現状からすればIcarePROの測定値はGATに近づいたことになり,その結果測定精度はIcareより改善されていると思われた.仰臥位による眼圧上昇に関しては今までにも他の眼圧計による多数の報告例がある.Pneumatonometer(Reichert社)を用いたものでは座位と比べて3.9.4.2mmHg上昇したとの報告がある9,10).TonopenRXL,TonopenRAVIA(Reichert社)などを用いたものでは0.76.2.2mmHg上昇したとの報告がある6,9.12).また,本研究で用いたIcarePROで測定した仰臥位による眼圧上昇に関してもいくつかの報告例がある.これも対象患者において緑内障の有無などが異なるが,平均上昇値が.0.9.2.9mmHgであった6,7,9,13).報告例の大半では平均値は上昇しているものの,なかには0.9mmHg低下した報告例もある9).当診療所で調査した結果では座位と比べIcareで1.8mmHg,IcarePROで2.0mmHgの上昇を認め両機器間における有意差はなかった.この結果はIcarePROに関しては報告例の範囲内ではあった.また,対象者を正常群と緑内障群に分けて眼圧上昇度をみたところ,緑内障群のほうが若干高値であったがこれも有意差はなかった.過去の報告6,7,9,13)でも緑内障患者における上昇度が高い傾向があり,本研究もそれに沿った結果となった.仰臥位に伴う眼圧上昇は緑内障における眼圧の日内変動において重要なファクターである.Kiuchiらは正常眼圧緑内障患者において仰臥位眼圧および仰臥位眼圧上昇幅とMDslopeとの関係を調べたところ,有意な負の相関を認めたと報告している14).このことから,緑内障治療向上のためには仰臥位眼圧上昇幅も可能な限り小さくすることが必要であると思われる.本研究でもIcarePROによる測定で眼圧が7.4mmHg上昇した症例があった.仰臥位でIcareのように顔を横に向ける手間がなく簡便に測定できるIcarePROは,緑内障患者に対する治療方針決定において有用な機器であると思われた.このようにIcareの欠点を改善したIcarePROは眼圧測定精度などでIcareより優位であることが示された.そのため仰臥位での眼圧測定など,眼圧の日内変動を中心とした緑内障の治療方針の決定にこれまで以上に役立つことが考えられる.以上のことからIcarePROはIcareよりも有用であることが示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし【文献】1)BlandM,AltmanDG:Statisticalmethodsforassessingagreementbetweentwomethodsofclinicalmeasurement.Lanset1:307-310,19862)HladikovaE,PluhacekF,MaresovaK:ComparisonofmeasurementofintraocularpressurebyICAREPRORtonometerandGoldmannapplanationtonometer.Cesk0510152025303540割合(%)■Icare■IcarePRO-3.0~-2.1-2.0~-1.1-1.0~-0.10.0~0.91.0~1.92.0~2.93.0~3.94.0~4.95.0~5.96.0~6.97.0~7.9眼圧上昇度(mmHg)図6Icare,IcarePROによる仰臥位に伴う眼圧上昇度の分布0510152025Icare(N)IcarePRO(N)Icare(G)IcarePRO(G)眼圧値(mmHg)13.5±3.415.2±3.613.0±2.714.9±2.816.2±4.518.3±4.715.2±3.617.4±3.6■座位■仰臥位図7正常者と緑内障患者別における仰臥位に伴う眼圧上昇度の比較N:正常群,G:緑内障群.数値は眼圧平均値±標準偏差.0510152025303540割合(%)■Icare■IcarePRO-2.0~-1.10.0~0.92.0~2.94.0~4.96.0~6.9-3.0~-2.1-1.0~-0.11.0~1.93.0~3.95.0~5.97.0~7.9眼圧上昇度(mmHg)図6Icare,IcarePROによる仰臥位に伴う眼圧上昇度の分布滅菌済製品として提供されるなどがあげられる.ただし測定画面が大きくなった分,幅が32mmから46mmと拡大し重量も250gから275gと若干重くなっている.今回IcarePROの眼圧測定値に関してIcareならびに他の眼圧計と比較し精度や有用性について検討した.IcarePROで測定した眼圧値の精度に関してはGATとの比較を中心に多くの報告がなされている.対象患者数や緑内障患者か否かの割合が論文ごとに異なるものの,IcarePROの平均眼圧値はGATと比べて差が.0.9.0.7mmHgの範囲で報告されている2.7).今回座位でIcare,IcarePROで得られた測定値をNCT,GATそれぞれと比較したところ,IcareはNCTより0.5mmHg,GATより1.4mmHg高かった.一方,IcarePROはGATより0.8mmHg高かったがNCTより0.1mmHg低く,測定機器間で唯一有意差もなかった.また,NCTやGATとのBland-Altman分析において,IcarePROはIcareに比べて測定値のばらつきはNCTでは変わりなかったが,GATとの比較ではIcarePROのほうが少なかった.GATの眼圧測定値がgoldstandardである8)という現状からすればIcarePROの測定値はGATに近づいたことになり,その結果測定精度はIcareより改善されていると思われた.仰臥位による眼圧上昇に関しては今までにも他の眼圧計による多数の報告例がある.Pneumatonometer(Reichert社)を用いたものでは座位と比べて3.9.4.2mmHg上昇したとの報告がある9,10).TonopenRXL,TonopenRAVIA(Reichert社)などを用いたものでは0.76.2.2mmHg上昇したとの報告がある6,9.12).また,本研究で用いたIcarePROで測定した仰臥位による眼圧上昇に関してもいくつかの報告例がある.これも対象患者において緑内障の有無などが異なるが,平均上昇値が.0.9.2.9mmHgであった6,7,9,13).報告例の大半では平均値は上昇しているものの,なかには0.9mmHg低下した報告例もある9).当診療所で調査した結果では座位と比べIcareで1.8mmHg,IcarePROで2.0mmHgの上昇(103)0510152025Icare(N)IcarePRO(N)Icare(G)IcarePRO(G)眼圧値(mmHg)13.5±3.415.2±3.613.0±2.714.9±2.816.2±4.518.3±4.715.2±3.617.4±3.6■座位■仰臥位図7正常者と緑内障患者別における仰臥位に伴う眼圧上昇度の比較N:正常群,G:緑内障群.数値は眼圧平均値±標準偏差.を認め両機器間における有意差はなかった.この結果はIcarePROに関しては報告例の範囲内ではあった.また,対象者を正常群と緑内障群に分けて眼圧上昇度をみたところ,緑内障群のほうが若干高値であったがこれも有意差はなかった.過去の報告6,7,9,13)でも緑内障患者における上昇度が高い傾向があり,本研究もそれに沿った結果となった.仰臥位に伴う眼圧上昇は緑内障における眼圧の日内変動において重要なファクターである.Kiuchiらは正常眼圧緑内障患者において仰臥位眼圧および仰臥位眼圧上昇幅とMDslopeとの関係を調べたところ,有意な負の相関を認めたと報告している14).このことから,緑内障治療向上のためには仰臥位眼圧上昇幅も可能な限り小さくすることが必要であると思われる.本研究でもIcarePROによる測定で眼圧が7.4mmHg上昇した症例があった.仰臥位でIcareのように顔を横に向ける手間がなく簡便に測定できるIcarePROは,緑内障患者に対する治療方針決定において有用な機器であると思われた.このようにIcareの欠点を改善したIcarePROは眼圧測定精度などでIcareより優位であることが示された.そのため仰臥位での眼圧測定など,眼圧の日内変動を中心とした緑内障の治療方針の決定にこれまで以上に役立つことが考えられる.以上のことからIcarePROはIcareよりも有用であることが示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし【文献】1)BlandM,AltmanDG:Statisticalmethodsforassessingagreementbetweentwomethodsofclinicalmeasurement.Lanset1:307-310,19862)HladikovaE,PluhacekF,MaresovaK:ComparisonofmeasurementofintraocularpressurebyICAREPRORtonometerandGoldmannapplanationtonometer.Ceskあたらしい眼科Vol.32,No.7,20151025 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