‘エピナスチン塩酸塩’ タグのついている投稿

アレルギー性結膜炎患者を対象とした0.05%エピナスチン点眼液のオープンラベル長期投与試験成績

2014年1月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科31(1):97.104,2014cアレルギー性結膜炎患者を対象とした0.05%エピナスチン点眼液のオープンラベル長期投与試験成績中川やよい*1大橋裕一*2高村悦子*3藤島浩*4*1医療法人中川医院*2愛媛大学大学院医学系研究科高次機能統御感覚機能医学視機能外科学*3東京女子医科大学医学部医学科眼科*4鶴見大学歯学部附属病院眼科SafetyandEfficacyofLong-TermTreatmentwith0.05%EpinastineOphthalmicSolutionforAllergicConjunctivitisYayoiNakagawa1),YuichiOhashi2),EtsukoTakamura3)andHiroshiFujishima4)1)NakagawaClinic,2)DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversitySchoolofMedicine,3)DepartmentofOphthalmology,TokyoWomen’sMedicalUniversity,SchoolofMedicine,4)DepartmentofOphthalmology,TsurumiUniversitySchoolofDentalMedicine0.05%エピナスチン塩酸塩点眼液(DE-114点眼液)の長期投与時の安全性と有効性を検討するため,アレルギー性結膜炎患者130例を対象としたオープンラベルによる多施設共同試験を実施した.被験薬は1回1滴,1日4回,8週間点眼とした.安全性について,副作用は,眼刺激(1.5%),眼の異物感(0.8%)および羞明(0.8%)が認められた.これらはすべて軽度であり,無処置で速やかに消失した.有効性について,眼掻痒感を含むすべての自覚症状スコアは,点眼開始1週間後より有意な減少を認め,点眼期間の経過に伴いスコアは減少した.他覚所見スコアの多くは,点眼開始1週間後より有意な減少を認め,点眼期間の経過に伴いスコアは減少した.以上より,DE-114点眼液のアレルギー性結膜炎患者に対する長期投与における安全性および有効性が示唆された.Thepurposeofthisstudywastoevaluatethesafetyandefficacyof0.05%epinastinehydrochlorideophthalmicsolution(DE-114)inalong-term,open-label,multicenterstudyincluding130allergicconjunctivitispatients.DE-114wasinstilledonedropatatime,QIDfor8weeks.Thefollowingadversedrugreactionsoccurred:eyeirritation(1.5%),foreignbodysensation(0.8%)andphotophobia(0.8%).Allweremildinseverityandresolvedquicklywithouttreatment.Allsubjectivesymptomscores,includingocularitching,decreasedsignificantlystartingfrom1weekpost-initiationandcontinuedtodecreasethroughoutthestudyperiod.Likewise,mostoftheobjectivesignscoresdecreasedsignificantlystartingfrom1weekpost-initiationandcontinuedtodecreasethroughoutthestudyperiod.TheaboveresultsverifythesafetyandefficacyofDE-114asalong-termtreatmentdrugforallergicconjunctivitis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(1):97.104,2014〕Keywords:アレルギー性結膜炎,点眼液,エピナスチン塩酸塩,長期投与試験,DE-114.allergicconjunctivitis,ophthalmicsolution,epinastinehydrochloride,long-termstudy,DE-114.はじめにアレルギー性結膜炎は,感作された個体の眼結膜に抗原が接触することにより誘発される「I型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患で,何らかの自他覚症状を伴い,結膜に増殖性変化の見られないアレルギー性結膜疾患」と定義・分類されている1).その発症機序として,肥満細胞に抗原が結合した結果起こる脱顆粒により結膜局所に遊出した炎症性のケミカルメディエーターが三叉神経第一枝のC繊維を刺激することで眼掻痒感を引き起こして,さらに毛細血管の拡張や透過性亢進などを誘発し,結膜充血などの結膜炎症状を引き起こすことが知られている1).エピナスチン塩酸塩は,ヒスタミンH1受容体に対して強く結合し,ヒスタミンH1受容〔別刷請求先〕中川やよい:〒535-0002大阪市旭区大宮2-17-23医療法人中川医院Reprintrequests:YayoiNakagawa,M.D.,NakagawaClinic,2-17-23Omiya,Asahi-ku,Osaka535-0002,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(97)97 体拮抗作用を発揮するとともに,ヒスタミンやロイコトリエンなどのメディエーター遊離抑制作用も併せて示すことにより,従来の抗アレルギー点眼液に比してアレルギー性結膜炎に対する強い治療効果を発揮すると考えられている2.5).アレルギー性結膜炎は通年性アレルギー性結膜炎と季節性アレルギー性結膜炎に分類される.特に,日本ではスギ花粉の飛散時期に季節性アレルギー性結膜炎を発症し,強い眼のかゆみや充血を訴える患者が多く,毎年同じ時期に日常生活が大きく妨げられることが,社会問題化している1).スギ花粉の季節性アレルギー性結膜炎の治療では,花粉の飛散期間中の点眼治療が主体であり,また,通年性アレルギー性結膜炎では点眼治療がさらに長期にわたることから点眼薬の安全性と有効性の確保はきわめて重要である.そこで本試験では,アレルギー性結膜炎患者を対象として0.05%エピナスチン塩酸塩点眼液(DE-114点眼液)の長期投与による安全性および有効性を検討したので,その結果を報告する.I対象および方法1.実施医療機関および試験責任医師本臨床試験は3医療機関において各医療機関の試験責任医師のもとに実施された(表1).試験の実施に先立ち,各医療機関の臨床試験審査委員会において試験の倫理的および科学的妥当性が審査され,承認を得た.なお,本試験はヘルシン表1試験実施医療機関一覧(順不同)医療機関名試験責任医師名医療法人社団信濃会左門町クリニック平岡利彦医療法人平心会大阪治験病院安藤誠医療法人平心会ToCROMクリニック松田英樹キ宣言に基づく原則に従い,薬事法第14条第3項および第80条の2ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」を遵守し実施された.2.対象対象は季節性または通年性アレルギー性結膜炎と診断され,選択基準および除外基準を満たす患者とした.なお,表2におもな選択基準および除外基準を示した.試験開始前に,すべての被験者に対して試験の内容および予想される副作用などを十分に説明し,理解を得たうえで,文書による同意を取得した.3.方法a.試験デザイン・投与方法本試験は多施設共同オープンラベル試験として実施した.被験者から文書による同意取得後,DE-114点眼液を1回1滴,1日4回,8週間点眼した.b.被験薬被験薬であるDE-114点眼液は,1ml中にエピナスチン塩酸塩を0.5mg含有する無色澄明の水性点眼液である.4.検査・観察項目試験期間中は検査・観察を表3のとおり行った.5.併用禁止薬および併用禁止療法試験期間を通じて,すべての眼局所投与製剤,他の被験薬およびエピナスチン塩酸塩は投与経路を問わず禁止した.また,試験期間中の併用療法に関しては,免疫療法,コンタクトレンズの装用,眼洗浄など薬効評価に影響を及ぼすと考えられる療法を禁止した.6.評価方法a.安全性の評価有害事象および副作用,臨床検査,眼科的検査をもとに安全性を評価した.表2おもな選択基準および除外基準1)おもな選択基準(1)同意取得時に12歳以上で自覚症状を明確に表現できる被験者とし,性別は不問〔未成年(20歳未満)の場合,その代諾者(家族などで被験者の最善の利益を図り得る人)からも同意を得る〕(2)同意取得時にアレルギー性結膜疾患に特有な臨床症状がある(3)治療期開始時に来院前3日間(来院日を含む)に認められた眼掻痒感の平均が両眼ともに中等度(スコア値:++)以上,かつ,治療期開始時に両眼ともに眼掻痒感が中等度(スコア値:++)以上認められる(4)治療期開始時に治療期開始前2年以内の検査で,I型アレルギー検査陽性であることが確認できる(問診での確認は不可)2)おもな除外基準(1)外眼部もしくは前眼部の炎症性眼疾患(春季カタル,アトピー性角結膜炎,眼瞼炎など)またはドライアイを合併している(2)アレルギー性結膜炎以外の治療を必要とする眼疾患を有する(3)少なくとも片眼の矯正視力0.1未満(4)治療期開始前90日以内に内眼手術(レーザー治療を含む)の既往を有する(5)涙点の閉塞を目的とした治療(涙点プラグ挿入術,外科的涙点閉鎖術など)を治療期開始前30日以内まで継続していた(6)治療期開始前7日以内に副腎皮質ステロイド,抗アレルギー薬,ヒスタミンH1受容体拮抗薬,非ステロイド抗炎症薬,免疫抑制薬および血管収縮薬の眼局所投与製剤(点眼薬,眼軟膏,結膜下注射剤など)を使用したことがある(7)アレルギー性鼻炎などで減感作療法もしくは変調療法を行っている(8)試験期間中にコンタクトレンズの装用を必要とする98あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014(98) 表3おもな検査・観察項目観察項目*来院1来院2来院3来院4来院5来院6中止時0日7日(4.10日)14日(11.21日)28日(22.35日)42日(36.49日)56日(50.63日)文書同意の取得●被験者背景●I型アレルギー検査●IgE抗体測定●自覚症状●●●●●●●他覚所見●●●●●●●細隙灯顕微鏡検査●●●●●●●眼圧測定,眼底検査,視力検査●●●臨床検査●●●症例登録●点眼遵守状況●●●●●●有害事象●●*:日本アレルギー性結膜疾患標準QOL調査票については,試験途中に検査・観察項目に追加した.表4自覚症状判定基準眼掻痒感+++++++++++++.我慢できない程度.日常作業が妨げられるようなかゆみ持続的にかゆみがあり,眼をこすりたい.ただし,日常作業は妨げられていない持続的にかゆみがある時々かゆみがあるなし眼脂++++++.多量に出て朝,瞼がくっついている眼脂が多くて拭う必要あり眼脂が粘つく感じほとんどない流涙++++++.涙があふれてほほに流れる涙が出てときどき拭う必要あり涙っぽい涙は出ない異物感++++++.たえずゴロゴロして眼が開けられないゴロゴロするが努力すれば眼が開けられるときどきゴロゴロするないb.有効性の評価1)有効性評価眼有効性評価眼は,被験薬点眼開始前のアレルギー性結膜炎症状のうち眼掻痒感スコアの高いほうの眼(左右が同値の場合は右眼)とした.2)自覚症状評価項目は,自覚症状(眼掻痒感,眼脂,流涙,異物感)の変化量の推移とした.なお自覚症状は,来院ごとに,問診にて来院前3日間(来院日を含む)に認められた自覚症状の平均を確認し,表4に示す基準で判定した.3)他覚所見評価項目は,眼瞼結膜(充血,腫脹,濾胞,巨大乳頭,乳頭),眼球結膜(充血,浮腫),輪部(Trantas斑,腫脹),角膜上皮障害の変化量の推移とした.なお他覚所見は,来院ごとに,他覚所見の程度を表5に示すアレルギー性結膜疾患診療ガイドライン1)の判定基準に基づき,細隙灯顕微鏡を用いて判定した.4)QOL(追加評価項目)試験開始前と試験終了時の日常生活の支障度および総括的状態について,スギ花粉飛散期の季節性アレルギー性結膜炎(99)あたらしい眼科Vol.31,No.1,201499 表5アレルギー性結膜疾患の臨床評価基準眼瞼結膜充血++++++.個々の血管の識別不能多数の血管拡張数本の血管拡張所見なし腫脹++++++.びまん性の混濁を伴う腫脹びまん性の薄い腫脹わずかな腫脹所見なし濾胞++++++.20個以上10.19個1.9個所見なし巨大乳頭++++++.上眼瞼結膜の1/2以上の範囲で乳頭が隆起上眼瞼結膜の1/2未満の範囲で乳頭が隆起乳頭は平坦化所見なし乳頭++++++.直径0.6mm以上直径0.3.0.5mm直径0.1.0.2mm所見なし眼球結膜充血++++++.全体の血管拡張多数の血管拡張数本の血管拡張所見なし浮腫++++++.胞状腫脹びまん性の薄い腫脹部分的腫脹所見なし輪部Trantas斑++++++.9個以上5.8個1.4個所見なし腫脹++++++.範囲が2/3周以上範囲が1/3周以上2/3周未満1/3周未満所見なし角膜上皮障害++++++.シールド潰瘍(楯型潰瘍)または上皮びらん落屑様点状表層角膜炎点状表層角膜炎所見なし患者を対象に,試験開始時に設定した評価項目に追加して検討した.なおQOL(qualityoflife)の項目は,日本眼科アレルギー研究会による「日本アレルギー性結膜疾患標準QOL調査票(Japaneseallergicconjunctivaldiseasequality-oflifequestionnaire:JACQLQ)ver.16)」を用い,被験者が記載した.7.解析方法a.安全性解析対象安全性の解析は,被験薬を少なくとも1回点眼し,安全性100あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014に関する何らかの情報が得られている被験者を安全性解析対象集団とした.b.有効性解析対象有効性の解析は,最大の解析対象集団(FullAnalysisSet:FAS)を有効性の検討に使用し,点眼前後の比較には対応のあるt検定を用いた.検定の有意水準は両側5%とし,区間推定の信頼係数は両側95%とした.解析ソフトはSASversion9.2(株式会社SASインスティチュートジャパン)を用いた.(100) また,自覚症状(眼掻痒感),他覚所見(眼瞼結膜充血,眼球結膜充血)について,アレルギー性結膜炎の病型別(季節性,通年性)に示した.なお,自覚症状,他覚所見において,治療期開始日(0日)以降がすべて症状なし「─」の被験者は,当該検査項目の解析から除外した.II結果1.被験者の構成被験者の内訳を図1に示した.文書同意を得て試験に組入れられた被験者および被験薬が点眼された被験者は130例であった.被験薬点眼開始後6例が試験を中止し,124例が試験を完了した.安全性解析対象集団における被験者背景を表6に示した.2.安全性a.有害事象および副作用治療期中には有害事象が130例中22例に認められ,そのうち被験薬との因果関係が否定できない副作用は3例であった.治療期に認められた副作用を表7に示した.副作用は,眼の異物感(0.8%,1/130例),眼刺激(1.5%,2/130例)および羞明(0.8%,1/130例)であった.これらの副作用はすべて眼障害で,重症度は軽度であり,点眼継続中に無処置で速やかに消失した.また,副作用はすべて被験薬点眼開始表6被験者背景21日後までに発現し,長期投与により発現率が上昇することはなく,被験薬投与期間が経過するにつれて発現頻度が上昇する遅発性の副作用も認められなかった.b.臨床検査臨床検査値の異常変動〔ALT(alanineaminotransferase)上昇,g-GTP(g-glutamyl-transpeptidase)上昇,白血球数上昇,リンパ球減少,好酸球上昇〕は,いずれの異常変動も被験薬との因果関係なしと判断された.c.眼科検査細隙灯顕微鏡検査,眼圧測定,視力検査および眼底検査は,被験薬点眼前後で医学的に問題となる変動は認められな図1被験者の内訳組入れられた被験者:130例被験薬が投与された被験者:130例試験を完了した被験者:124例中止した被験者:6例中止理由有害事象不適格例転院,転居,多忙などにより通院不可能:1例:3例:2例例数安全性解析対象集団130病型季節性77(59.2)通年性53(40.8)性別男61(46.9)女69(53.1)年齢(歳)最小.最大平均±標準偏差12.7040.2±13.0年齢区分(未成年者/成年者)未成年者(.19)成年者(20.)11(8.5)119(91.5)年齢区分(非高齢者/高齢者)非高齢者(.64)高齢者(65.)124(95.4)6(4.6)血清抗原特異的IgE抗体スギ陰性陽性12(9.2)118(90.8)血清抗原特異的IgE抗体ハウスダスト2陰性陽性78(60.0)52(40.0)血清抗原特異的IgE抗体ヤケヒョウダニ陰性陽性77(59.2)53(40.8)治療期開始日(0日)の眼掻痒感++++++++++++最小.最大平均±標準偏差28(21.5)96(73.8)6(4.6)2.42.8±0.5例数(%).(101)あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014101 表7治療期に認められた副作用安全性解析対象集団:130例合計累積発現時期(日)0.2122.3536.4950.発現率*眼障害眼の異物感1(0.8)───1(0.8)眼刺激2(1.5)───2(1.6)羞明1(0.8)───1(0.8)合計(件)4───4*:試験薬投与開始日=0日目例数〔Kaplan-Meierの累積発現率(%)〕事象名:MedDRA/Jver14.1かった.3.有効性a.自覚症状自覚症状スコアの推移を図2に示した.眼掻痒感は,点眼開始1週間後の来院2以降,有意なスコアの減少を認め,点眼期間の経過に伴いスコアは減少した(p<0.001).また,他の自覚症状の眼脂,流涙および異物感についても,点眼開始1週間後の来院2以降,有意なスコアの減少を認め,点眼期間の経過に伴いスコアは減少した(p<0.05).眼掻痒感について,アレルギー性結膜炎の病型別スコアの経時的推移を表8に示した.季節性,通年性のいずれの集団においても,点眼開始1週間後の来院2以降,有意なスコアの減少を認め,点眼期間の経過に伴いスコアは減少した.b.他覚所見他覚所見スコアの推移を図3,4に示した.眼瞼および眼球結膜充血は,点眼開始1週間後の来院2以降,有意なスコアの減少を認め,点眼期間の経過に伴いスコアは減少した(p<0.001).また,他の他覚所見スコアについても,点眼期間の経過に伴いスコアは減少した.眼瞼結膜腫脹,眼瞼結膜乳頭および眼球結膜浮腫は,点眼開始1週間後の来院2以降,有意なスコアの減少を認めた(p<0.01).眼瞼結膜濾胞は,点眼開始2週間後の来院3以降,有意なスコアの減少を認めた(p<0.005).輪部腫脹は点眼開始4週間後の来院4以降,有意なスコアの減少を認めた(p<0.01).なお,角膜上皮障害,眼瞼結膜巨大乳頭および輪部Trantas斑については,解析対象例数が10例以下となり,有効性の検討が困難であるため平均および標準誤差を算出しなかった.眼瞼および眼球結膜充血について,アレルギー性結膜炎の病型別スコアの経時的推移を表9に示した.季節性,通年性のいずれの集団においても,点眼開始1週間後の来院2以降,有意なスコアの減少を認め,点眼期間の経過に伴いスコアは減少した.c.QOL(追加評価項目)点眼前後の日常生活の支障度の合計スコアおよび総括的状102あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014スコア経過日数(日)2842560714****************************************************3.02.52.01.51.00.50:眼掻痒感:眼脂:流涙:異物感平均±標準誤差*:p<0.05,**:p<0.01,***:p<0.001対応のあるt検定(点眼開始時との比較)n=(130)(130)(126)(125)(125)(124)●(115)(115)(111)(110)(110)(109)○(116)(116)(112)(111)(111)(110)□(116)(116)(112)(111)(111)(110)×図2自覚症状スコアの推移(眼掻痒感,眼脂,流涙,異物感)表8病型別の眼掻痒感スコアの経時推移(FAS)アレルギー性結膜炎平均±標準誤差対応のある病型別(例数)t検定のp値季節性来院1(0日)2.8±0.1(77)─来院2(7日)2.5±0.1(77)<0.001来院3(14日)2.3±0.1(74)<0.001来院4(28日)1.6±0.1(73)<0.001来院5(42日)1.1±0.1(73)<0.001来院6(56日)0.5±0.1(73)<0.001通年性来院1(0日)2.8±0.1(53)─来院2(7日)1.8±0.1(53)<0.001来院3(14日)1.4±0.1(52)<0.001来院4(28日)1.3±0.1(52)<0.001来院5(42日)1.2±0.1(52)<0.001来院6(56日)0.9±0.1(51)<0.001態スコアについて,試験開始前と試験終了時のスコア(平均±標準誤差)を比較した結果,日常生活の支障度の合計スコアは試験開始前18.9±1.7から試験終了時5.7±1.2に,総括的状態スコアは試験開始前2.3±0.1から試験終了時0.8±0.1となり,それぞれ有意なスコアの減少を認めた(p<0.001).III考察アレルギー性結膜炎の治療は,安全性と有効性の面から抗アレルギー点眼薬が第一選択薬となっている1).特に,日本の多くの地域においては,毎年3月,4月にスギ花粉の大量飛散がみられることから,約2カ月間にわたる継続使用時の安全性を確保することは重要である.また,スギ花粉のみでなく複数の花粉抗原に感作されている場合や,通年性アレル(102) :眼瞼結膜充血:眼瞼結膜腫脹2.01.81.61.41.21.00.80.60.40.2******************************:眼瞼結膜濾胞:眼瞼結膜乳頭平均±標準誤差************************スコア28425607141.41.21.00.80.60.40.20:眼球結膜充血:眼球結膜腫脹:輪部膨張平均±標準誤差*************************************スコア00714284256経過日数(日)*:p<0.05,**:p<0.01,***:p<0.001経過日数(日)対応のあるt検定(点眼開始時との比較)*:p<0.05,**:p<0.01,***:p<0.001n=(130)(130)(126)(125)(124)(124)●対応のあるt検定(点眼開始時との比較)(114)(114)(110)(109)(108)(108)○n=(127)(127)(123)(122)(121)(121)●(103)(103)(99)(98)(97)(97)□(87)(87)(84)(84)(83)(83)○(100)(100)(97)(96)(95)(95)×(28)(28)(28)(28)(28)(28)□図3他覚所見スコアの推移図4他覚所見スコアの推移(眼瞼結膜充血,眼瞼結膜腫脹,眼瞼結膜濾胞,眼瞼結膜乳頭)(眼球結膜充血,眼球結膜浮腫,輪部腫脹)表9病型別の眼瞼および眼球結膜充血スコアの経時推移(FAS)眼瞼結膜充血眼球結膜充血アレルギー性結膜炎病型別平均±標準誤差対応のある平均±標準誤差対応のある(例数)t検定のp値(例数)t検定のp値季節性来院1(0日)1.8±0.1(77)─1.2±0.0(74)─来院2(7日)1.6±0.1(77)0.0010.8±0.1(74)<0.001来院3(14日)1.6±0.1(74)0.0110.9±0.1(71)<0.001来院4(28日)1.3±0.1(73)<0.0010.6±0.1(70)<0.001来院5(42日)1.1±0.1(73)<0.0010.4±0.1(70)<0.001来院6(56日)0.8±0.1(73)<0.0010.3±0.1(70)<0.001通年性来院1(0日)1.8±0.1(53)─1.2±0.1(53)─来院2(7日)1.5±0.1(53)<0.0010.8±0.1(53)<0.001来院3(14日)1.4±0.1(52)<0.0010.8±0.1(52)0.001来院4(28日)1.2±0.1(52)<0.0010.6±0.1(52)<0.001来院5(42日)1.0±0.1(51)<0.0010.6±0.1(51)<0.001来院6(56日)0.9±0.1(51)<0.0010.5±0.1(51)<0.001期間を通した症状なし例を除く.ギー性結膜炎ではさらに長期間の継続使用が必要となり,安全性確保の重要性はいうまでもない.有効性の検討においては,アレルギー性結膜炎の最も代表的な症状の眼掻痒感に加え,異物感,充血,眼脂,流涙を伴うことが多く,これらの症状を改善させ,低下したQOLの向上を図ることが重要であることを深川らの調査7)および筆者らの報告8)で明らかにしている.すなわち,低下したQOLの向上を図るには,継続使用時の抗アレルギー点眼薬による副作用が少ないこと,また,アレルギー性結膜炎の症状を改善することが必須となる.DE-114点眼液はエピナスチン塩酸塩を有効成分とする抗アレルギー点眼薬であり,諸外国では1日2回点眼による安全性および有効性が報告されている9.11).日本では,2回もしくは4回点眼を想定した開発が進められていたため,本試験では,想定される最大用法として1日4回点眼を設定し,日本人のアレルギー性結膜炎患者を対象に,DE-114点眼液の長期投与(8週間)による安全性および有効性を検討した.点眼期間については,季節性の場合には臨床で使用される期間は8週間程度であると想定し,8週間とした.まず,DE-114点眼液の安全性であるが,認められた副作(103)あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014103 用は,眼の異物感,眼刺激および羞明であった.また,副作用はすべて被験薬点眼開始21日後までに発現しており,長期投与により発現率が上昇することはなく,被験薬投与期間が経過するにつれて発現頻度が上昇する遅発性の副作用も認められなかった.これらの副作用の重症度はすべて軽度であり,点眼継続中に消失したことから,DE-114点眼液の長期投与における安全性および忍容性に問題はないと考えられた.つぎに,DE-114点眼液の有効性であるが,眼掻痒感,眼脂,流涙および異物感のすべての自覚症状ならびに結膜充血を含む多くの他覚所見は,点眼開始1週間後の来院2より有意なスコアの減少を認め,点眼期間の経過に伴いスコアは減少した.すなわち,アレルギー性結膜炎に対する有効性は,長期投与において持続し減弱しないこと,QOLの改善が期待できる点眼薬であることが示された.また,本試験では,日本眼科アレルギー研究会により開発されたアレルギー性結膜疾患の標準QOL調査票(JACQLQ)による評価も行った.その結果,試験開始前と試験終了時の変化量について,日常生活の支障度の合計スコアおよび総括的状態スコアは,有意なスコアの減少を認めた.すなわち,DE-114点眼液の有するヒスタミンH1受容体拮抗作用とメディエーター遊離抑制作用により,眼掻痒感や充血などの症状を改善させ,QOLの向上が示されたと考える.以上より,DE-114点眼液は,アレルギー性結膜炎の症状を改善することで,低下したQOLを向上させる点眼薬であり,長期投与における安全性についても問題なく,有用性が高いことが示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン作成委員会:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版).日眼会誌114:829-870,20102)FugnerA,BechtelWD,KuhnFJetal:Invitroandinvivostudiesofthenon-sedatingantihistamineepinastine.Arzneimittel-Forschung/DrugResearch38:1446-1453,19883)TasakaK,AkagiM,IzushiKetal:Antiallergiceffectofepinastine:theelucidationofthemechanism.Pharmacometrics39:365-373,19904)MatsushitaN,AritakeK,TakadaAetal:PharmacologicalstudiesonthenovelantiallergicdrugHQL-79:II.Elucidationofmechanismsforantiallergicandantiasthmaticeffects.JpnJPharmacol78:11-22,19985)KameiC,MioM,KitazumiKetal:Antiallergiceffectofepinastine(WAL801CL)onimmediatehypersensitivityreactions:(II)Antagonisticeffectofepinastineonchemicalmediators,mainlyantihistaminicandanti-PAFeffects.ImmunopharmacolImmunotoxicol14:207-218,19926)深川和己,藤島浩,福島敦樹ほか:アレルギー性結膜疾患特異的qualityoflife調査票の確立.日眼会誌116:494502,20127)深川和己:アレルギー性結膜疾患患者に対する治療実態および治療ニーズ調査─人口構成比に基づくインターネット全国調査─.アレルギー・免疫15:1554-1565,20088)中川やよい,内尾英一,岡本茂樹ほか:アレルギー性結膜炎患者の求める診断・治療ニーズについて─インターネット患者アンケート全国調査2009年度報告─.新薬と臨牀58:2086-2098,20099)WhitcupSM,BradfordR,LueJetal:Efficacyandtolerabilityofophthalmicepinastine:arandomized,double-masked,parallel-group,active-andvehicle-controlledenvironmentaltrialinpatientswithseasonalallergicconjunctivitis.ClinTher26:29-34,200410)FigusM,FogagnoloP,LazzeriSetal:Treatmentofallergicconjunctivitis:resultsofa1-month,single-maskedrandomizedstudy.EurJOphthalmol20:811818,201011)BorazanM,KaralezliA,AkovaYAetal:EfficacyofolopatadineHCI0.1%,ketotifenfumarate0.025%,epinastineHCI0.05%,emedastine0.05%andfluorometholoneacetate0.1%ophthalmicsolutionsforseasonalallergicconjunctivitis:aplacebo-controlledenvironmentaltrial.ActaOphthalmol87:549-554,2009***104あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014(104)