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薬物粒子径変更に伴うブリンゾラミド懸濁性点眼液の眼内薬物移行性評価

2015年4月30日 木曜日

《第34回日本眼薬理学会原著》あたらしい眼科32(4):545.549,2015c薬物粒子径変更に伴うブリンゾラミド懸濁性点眼液の眼内薬物移行性評価長井紀章*1真野裕*1松平有加*1山岡咲絵*1吉岡千晶*1伊藤吉將*1岡本紀夫*2下村嘉一*2*1近畿大学薬学部製剤学研究室*2近畿大学医学部眼科学教室NanosizingoftheParticleinBrinzolamideOphthalmicSuspensionEnhancesItsIntraocularPenetrationNoriakiNagai1),YuMano1),YukaMatsuhira1),SakieYamaoka1),ChiakiYoshioka1),YoshimasaIto1)Okamoto2)andYoshikazuShimomura2),Norio1)FacultyofPharmacy,KinkiUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,KinkiUniversitySchoolofMedicine本研究では,市販緑内障治療薬である炭酸脱水酵素阻害薬ブリンゾラミド(BLZ)懸濁性点眼液の薬物粒子径変更に伴う眼内薬物移行性について検討を行った.市販BLZ懸濁性点眼液(エイゾプトR)の薬物粒子微細化には,ビーズミルによる水中破砕法を用いた.市販BLZ懸濁性点眼液の平均粒子径は7.05±0.416μmであったが,ビーズミル法を用いることで,平均粒子径0.423±0.221μmまで微細化でき,ナノオーダーの粒子径を有するBLZ分散液が調製できた(Milled-BLZ分散液).これらMilled-BLZ分散液の眼内薬物移行性について評価したところ,薬物粒子径をナノオーダーにしたことで主薬の角膜透過性および薬物網膜到達量が有意に向上した.以上,微細化によりBLZ懸濁性点眼液の眼内薬物移行性が高まることが明らかとなった.本研究は,点眼用懸濁液の製剤設計およびバイオアベイラビリティー向上につながるものと考えられる.Inthisstudy,weinvestigatedtheeffectofparticlesizeinbrinzolamide(BLZ)ophthalmicsuspensionontheintraocularpenetrationofthedrug.AsuspensioncontainingBLZnanoparticles(BLZNPssuspension;particlesize:0.423±0.221μm)waspreparedbyuseofthebeadmillmethod.Next,theBLZNPssuspensionandanon-milledBLZsuspension(particlesize:7.05±0.416μm),respectively,wereinstilledinrateyes,andintraocularpenetrationofthedrugwasthenanalyzed.ThecornealpenetrationofBLZfromtheBLZNPssuspensionwasfoundtobesignificantlyhigherthanthatinthenon-milledBLZsuspension.Inaddition,theamountofBLZintheretinasofeyesinstilledwiththeBLZNPssuspensionwasapproximately2-foldhigherthanthatintheretinasofeyesinstilledwiththenon-milledBLZsuspension.TheseresultssuggestthatthenanosizingoftheparticleinBLZophthalmicsuspensionenhancestheintraocularpenetrationofthedrug,andthatanoculardrugdeliverysystemusingnanoparticlesmayexpandtheirusagefortherapyinthefieldofophthalmology.Thefindingsofthisstudyprovideimportantinformationthatshouldproveusefulfordesigningfurtherstudiestodevelopanti-glaucomadrugs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(4):545.549,2015〕Keywords:ブリンゾラミド,粒子径,ビーズミル,薬物眼内移行性,エイゾプトR.brinzolamide,particlesize,beadmill,drugintraocularpenetration,AzoptRophthalmicsuspension.はじめにであり,現在臨床現場ではb遮断薬,プロスタグランジン緑内障は,眼圧上昇により視神経・網膜が圧迫され,その製剤,炭酸脱水酵素阻害薬,選択的交感神経a1遮断薬,a,結果視神経障害がみられる眼疾患であり,先進国において失b受容体遮断薬,副交感神経作動薬など,異なる作用機序を明の第一要因である.この緑内障治療の第一選択は薬物療法有する緑内障治療薬の単剤または併用使用が行われている.〔別刷請求先〕伊藤吉將:〒577-8502東大阪市小若江3-4-1近畿大学薬学部製剤学研究室Reprintrequests:YoshimasaIto,Ph.D.,FacultyofPharmacy,KinkiUniversity,3-4-1Kowakae,Higashi-Osaka,Osaka577-8502,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(81)545 これら緑内障治療薬の一つである炭酸脱水酵素阻害薬の眼圧下降機序は,毛様体無色素上皮細胞においてH2O+CO2.H2CO3.H++HCO3.の反応を触媒している炭酸脱水酵素(carbonicanhydraseII)の働きを阻害し,HCO3.の生成を抑制することにより,Na+の能動輸送機構を抑え,その結果房水産生が抑制されるというものである.さらに,点眼により網膜や脈絡膜へ薬物が移行した際には,網膜のMuller細胞や網膜色素上皮細胞,脈絡膜毛細血管に存在する炭酸脱水酵素を阻害し網膜血流が増加するなど,眼圧下降作用のほかに眼循環に好影響を与える可能性が示唆されている1.3).一方,炭酸脱水酵素阻害薬点眼により網膜血流を高めるためには,血管拡張をきたすほどの十分な薬物濃度を網膜へ供給する必要があり1.5),現場では炭酸脱水酵素阻害薬の眼内移行性を高めることが期待されている.点眼薬の眼内移行性を高める方法として,粘稠化剤により薬物の結膜.内滞留性を向上させる手法が知られている.しかし,粘稠化剤により滞留性を高めただけでは網膜などの眼後部への到達はわずかである.一方,筆者らは近年“医薬品ナノ結晶点眼製剤”を提案し,点眼液中の薬物粒子サイズをナノオーダーにすることで角膜透過性や結膜からの体内移行性が飛躍期に上昇することを見出し報告している6).したがって,懸濁点眼薬の薬物粒子径をナノオーダーにすることでバイオアベイラビリティ向上が期待される.本研究では,市販緑内障治療薬である炭酸脱水酵素阻害薬ブリンゾラミド(BLZ)懸濁性点眼液の薬物粒子径変更に伴う眼内薬物移行性について検討を行った.I対象および方法1.実験動物実験には日本白色種雄性ウサギ(2.3kg)および雄性Wistarラット(7週齢)を用いた.これら実験動物は25℃に保たれた環境下で飼育し,飼料(飼育繁殖固形飼料CE-2,CR-3,日本クレア)および水は自由に摂取させた.また,動物実験は近畿大学実験動物規定に従い行った.2.ビーズミル法によるブリンゾラミド懸濁液破砕処理市販緑内障治療薬BLZ懸濁性点眼液1%(エイゾプトR懸濁性点眼液1%,日本アルコン)の薬物粒子微細化は,直径0.1mmのジルコニアビーズおよびBeadSmash12(和研薬社製)を用いた水中破砕法(ビーズミル法)にて行い,BeadSmash12による破砕条件は冷却下(4℃)5,500rpmにて30sec×20回とした6).得られた分散液中BLZ濃度は0.91%であり(ビーズやチューブへの吸着率9%),分散液中のBLZ濃度を生理食塩水にて0.8%に調製したものを本研究ではMilled-BLZ分散液とした.また,BLZ懸濁性点眼液を生理食塩水にて0.8%に調製したものをBLZ分散液として用いた.薬物粒子径の測定はナノ粒子径分布測定装置SALD-546あたらしい眼科Vol.32,No.4,20157100(島津製作所)にて行い,平均値および標準偏差は内蔵の解析ソフトで算出した(屈折率1.95.0.05i).3.HPLC法によるBLZの定量試料40μlに,氷冷した0.1μg/mlp-オキシ安息香酸メチル(内標準物質,MeOHにて溶解)80μlを加え,この液をクロマトディスク4A(0.45μm,クラボウ)で濾過後高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に注入した.HPLC装置はLC-20AT(島津製作所)を使用した.カラムは,InertsilRODS-3(3μm2.1×50mm,ジーエルサイエンス)を用い,室温にて移動相(リン酸カリウム/アセトニトリル,80/20)で平衡化した.移動相の流速は0.25ml/minとし,255nmの紫外部吸収を測定した.4.Invitroウサギ角膜薬物透過実験実験にはメタアクリル樹脂製角膜透過セルを使用した6).日本白色種雄性ウサギをペントバルビタール(東京化成工業社製)過剰投与により安楽死後,眼球を摘出し,生理食塩水で洗浄した.角膜は,眼球後部の視神経の部位よりハサミを入れ,強膜部位を1.2mm残し切り取った.この角膜を角膜透過セルに装着し,リザーバー側(房水側)にリザーバー液としてHEPES(+Glc)緩衝液(10mMHEPES,136.2mMNaCl,5.3mMKCl,1.0mMK2HPO4,1.7mMCaCl2・2H2O,5.5mMGlucose,pH7.4)を3.0ml注加した.ドナー側(涙液側)にはBLZあるいはMilled-BLZ分散液を3.0ml注加した.角膜透過セルは,恒温槽中で35oCに保った.BLZ透過量は,リザーバー液を経時的に50μlずつ採取し,上記HPLC法により測定した.得られたデータは,次式に従い,非線形最小二乗法コンピュータプログラムMULTIを用いて当てはめ計算を行い,速度論的パラメータの算出を行った.t=d26D(1)JC=Km・D・CBLZ=KpCBLZd(2)Qt=Jc・A・(t.t)(3)ここで,JcはBLZの透過速度,Kmは角膜/製剤の分配係数,Dは角膜内での拡散係数,tlagはラグタイム,dは角膜の厚さ(平均0.0625cm),Aは用いた角膜の有効角膜面積(0.78cm2),Qはt時間にリザーバー側に透過した積算薬物量,CBLZはBLZ分散液中のBLZ濃度である.JCおよびtは(3)式に当てはめ算出した.角膜透過係数KpはJc/CBLZから算出した6).5.Invivoウサギ眼内薬物移行実験日本白色種雄性ウサギに,耳静脈よりペントバルビタール(0.6ml/kg)を投与し全身麻酔した.麻酔後,眼球に局所麻酔薬0.4%ベノキシール液を点眼し,マイクロシリンジで(82) ファイコンチューブ(0.5-1.0,冨士システムズ)と連結した29ゲージ注射針を角膜近傍の強膜部分より前眼房に挿入することによりカニューレを装着した.その後,片眼にBLZまたはMilled-BLZ分散液40μlを点眼し,定めた時間間隔でカニューレより房水を5μlずつ採取し,房水中BLZ濃度を上記HPLC法により測定した(図1).また,得られたデータから台形法を用い房水中BLZ濃度-時間曲線下面積(areaundertheBLZconcentration-timecurve:AUC)を算出した6).6.網膜中薬物到達量の測定BLZまたはMilled-BLZ分散液をWistarラットに点眼し,点眼1時間後にペントバルビタール(東京化成工業)を過剰投与することで安楽死させた.その後,眼球を摘出し,網膜を回収した.網膜中BLZ量は上記HPLC法にて測定した.7.統計解析データは,平均値±標準誤差(SE)として表した.各々の実験値の解析にはStudentのt-testを用い,p値が0.05以下を有意差ありとした.II結果1.ビーズミル処理に伴う市販BLZ懸濁液の薬物粒子径変化図2はBLZおよびMilled-BLZの粒度分布曲線を示す.BLZ分散液の平均粒子径は7.09±0.413μmであり,市販BLZ懸濁性点眼液1%の平均粒子径と比較し差はみられなかった(7.05±0.416μm,平均値±標準偏差).一方,MilledBLZ分散液の平均粒子径は0.423±0.221μmと,ナノオーダーまでBLZの粒子を微細化することが可能であった.2.BLZ懸濁液中薬物粒子径の違いが眼内薬物移行性に与える影響図3はBLZおよびMilled-BLZ分散液のinvitroウサギ角膜透過性を,表1は図3中のデータから算出した速度論的パラメータを示す.両分散液ともに実験開始1時間後から薬物図1Invivoウサギ眼内薬物移行実験操作写真Cumulativedistribution(%)Cumulativedistribution(%)8015601040520000.010.050.10.5151050100500Particlediameter(μm)10020100A:BLZsuspensions20Frequency(%)Frequency(%)80B:Milled-BLZsuspensions15601040520000.010.050.10.5151050100500Particlediameter(μm)図2BLZおよびMilled.BLZ分散液における粒度分布薬物粒子径はナノ粒子径分布測定装置SALD-7100にて測定した.実線は相対粒子量の頻度を,点線は相対粒子量の積算を示す.(83)あたらしい眼科Vol.32,No.4,2015547 の角膜透過が認められたが,粒子径の違いによる差はみられなかった.図4はBLZおよびMilled-BLZ分散液のinvivoウサギ角膜透過性について示す.Invitroウサギ角膜透過実験の結果と異なり,Milled-BLZ分散液処理群のラグタイム(t)は,BLZ処理群のそれより低かった.また,MilledBLZ分散液処理群のAUCは,BLZ処理群のそれの2倍高値であった(AUC,BLZ71±12,Milled-BLZ分散液142±4,μM・min,平均値±SE,n=6).図5にはBLZおよびMilledBLZ分散液点眼後の網膜中薬物含量を示す.Milled-BLZ分散液点眼1時間後の網膜中BLZ濃度は,BLZ分散液点眼後0120BLZconcentration(μM)80160100401406020:BLZsuspensions:Milled-BLZsuspensions0123456のそれと比較し有意に高かった.III考按炭酸脱水酵素阻害薬の点眼は眼圧降下作用だけでなく,網膜血流の改善効果が期待できる.本研究では,炭酸脱水酵素阻害薬であるBLZ懸濁性点眼液を用い,薬物粒子径変更に伴う眼内薬物移行性改善効果について検討を行った.まず初めに,ビーズミル法を用い市販BLZ懸濁性点眼液の薬物粒子微細化を試みた(図2).その結果,平均粒子径7.05±0.416μmであった市販BLZ懸濁性点眼液を,平均粒子径0.423±0.221μmとナノオーダーまで微細化することに成功した.一方,BLZ分散液中薬物濃度を測定したところ,破砕処理過程で使用したチューブやジルコニアビーズへの薬物の付着により,破砕処理前には1%であったBLZが破砕処理後には0.91%と減少が認められた.このため,本研究では生理食塩水にて0.8%に濃度調製した市販BLZ懸濁性点眼液(BLZ分散液)およびビーズミル法にて破砕後のBLZ懸濁液(Milled-BLZ分散液,0.8%)を比較検討に用いた.Invitroウサギ角膜透過実験にて,BLZおよびMilledBLZ分散液の角膜透過性を検討したところ,両分散液間で差はみられなかった(図3および表1).これらinvitroウサTime(h)図3BLZおよびMilled.BLZ分散液におけるinvitroギ角膜透過実験はドナー側(涙液側)にBLZあるいは角膜透過性(ウサギ)Milled-BLZ分散液を用いており,薬物の溶解を促進する因平均値±標準誤差,n=6羽6眼,n.s.(notsignificant).子である涙液がなく,角膜表面において薬物の供給が十分に表1Invitroウサギ角膜透過法におけるBLZおよびMilled.BLZ点眼液の速度論的パラメータJc(nmol/cm2/h)Kp(×10.4cm/h)Kmt(min)D(×10.5cm2/h)BLZ1.41±0.270.77±0.140.45±0.0960.7±1.01.07±0.02Milled-BLZ1.52±0.110.83±0.060.52±0.0765.1±5.71.02±0.08速度論的パラメータは式(1).(3)を用いて算出した.平均値±標準誤差,n=6.040103040506070BLZconcentration(μM)26351:BLZsuspensions:Milled-BLZsuspensions******BLZconcentration(nmol/g)*1612840BLZMilled-BLZsuspensionssuspensions20Time(min)図5BLZおよびMilled.BLZ分散液における薬物図4BLZおよびMilled.BLZ分散液におけるinvivo網膜移行性(ラット)角膜透過性(ウサギ)網膜は薬物点眼1時間後に回収した.平均値±標準誤平均値±標準誤差,n=6羽6眼,*p<0.05,vs.BLZsus-差,n=6羽6眼,*p<0.05,vs.BLZsuspensionspensions(Student’st-test).(Student’st-test).548あたらしい眼科Vol.32,No.4,2015(84) 満たされている条件下での薬物透過性を評価する方法である.したがって,本結果から瞬目などにより涙液代謝がみられない系では,粒子径の違いによる薬物の透過性に差はみられないことが明らかとなった.また,両分散液ともに角膜表面で溶解したBLZが角膜内部へ取り込まれ眼内へ移行することが示唆された.一方,これらinvitroウサギ角膜透過実験の結果と異なり,invivoウサギ角膜透過性実験では,Milled-BLZ分散液処理群のラグタイム(t)は,BLZ処理群のそれより低く,Milled-BLZ分散液処理群のAUCは,BLZ処理群のそれの2倍高値であった(図4).さらに,Milled-BLZ分散液点眼1時間後の網膜中BLZ濃度は,BLZ分散液点眼後のそれと比較し有意に高かった(図5).一般に,粒子径が小さいほど比表面積が高まり,薬物の溶解速度が高まることが知られている.本結果においても薬物粒子径の小さいMilled-BLZ分散液中のBLZ結晶はBLZ分散液中の結晶と比較し,点眼後涙液により速やかに溶解されるものと考えられる.これら角膜表面での溶解速度の向上は角膜内への薬物供給量の増加につながり,その結果Milled-BLZ分散液点眼時のtの短縮や眼房水および網膜への薬物到達濃度の増加がみられるものと示唆された.BLZ懸濁性点眼液と網膜血流改善に関してはこれまで多くの報告がなされている.Barnesら1)は家兎に7日間連続してBLZを点眼した際,視神経乳頭部血流が約10%増加したと報告している.また,ヒトに関する報告では,正常眼圧緑内障患者を対象とし,BLZを2週間連続点眼することで,網膜中心動脈で最低流速の上昇,末梢血管抵抗の低下がみられることを江見ら2)が示している.さらに,前田ら3)は,BLZは緑内障眼において,神経乳頭辺縁部および傍乳頭網膜組織血流を増加させることを報告している.一方,BLZ点眼後においても網膜血流改善がみられないとの報告もされており4,5),これら異なる結果の仮説として,BLZ点眼後の組織内CO2濃度が血管拡張をきたすレベルに達するかどうかが一つのキーとして考えられている.このように,BLZによる眼圧と網膜循環血流を同時標的とした治療には,十分な薬物量を網膜まで到達させることが必要である.本研究では,市販BLZ懸濁性点眼液の薬物粒子径を変更することで網膜への薬物到達濃度が増加することを明らかとした.これら粒子径を中心とした処方変更は今後の緑内障治療にきわめて有用であると考えられる.一方,市販点眼製剤を用いた今回の系では計20回ものビーズミル破砕処理が必要であり,より効率的な調製法の確立は今後の薬物への応用において重要な課題である.しかし,筆者らはすでにより破砕に適した添加物(デキストリンやセルロース系化合物など)を選択することで効果的かつ効率的な薬物破砕が可能であることを見出し報告している6).したがって,今後これらの添加物を用い,ナノオーダーの薬剤生成法の改良を試みる予定である.以上,本研究ではビーズミル法を用い市販BLZ懸濁性点眼液の薬物微細化を行うことにより,主薬の角膜透過性および薬物網膜到達量が向上すること見出した.本研究は,点眼用懸濁液の製剤設計およびバイオアベイラビリティ向上につながるものと考えられる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)BarnesGE,LiB,DeanTetal:Increasedopticnerveheadbloodflowafter1weekoftwicedailytopicalbrinzolamidetreatmentinDutch-beltedrabbits.SurvOphthalmol44:S131-140,20002)江見和雄:正常眼圧緑内障におけるブリンゾラミドの眼血流に対する効果.あたらしい眼科21:535-538,20043)前田祥恵,今野伸介,清水美穂ほか:緑内障眼における1%ブリンゾラミド点眼の視神経乳頭および傍乳頭網膜血流に及ぼす影響.あたらしい眼科22:529-532,20054)前田祥恵,今野伸介,大塚賢二:ブリンゾラミド1回点眼の正常人傍乳頭網膜循環に及ぼす影響.あたらしい眼科21:271-274,20045)SampaolesiJ,TosiJ,DarchukVetal:Antiglaucomatousdrugseffectsonopticnerveheadflow:design,baselineandpreliminaryreport.IntOphthalmol23:359-367,20016)NagaiN,ItoY,OkamotoNetal:Ananoparticleformulationreducesthecornealtoxicityofindomethacineyedropsandenhancesitscornealpermeability.Toxicology319:53-62,2014***(85)あたらしい眼科Vol.32,No.4,2015549