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デクスメデトミジンを用いた涙囊鼻腔吻合術

2019年1月31日 木曜日

《第6回日本涙道・涙液学会原著》あたらしい眼科36(1):107.110,2019cデクスメデトミジンを用いた涙.鼻腔吻合術植田芳樹舘奈保子橋本義弘朝比奈祐一芳村賀洋子真生会富山病院アイセンターCEndoscopicDacryocystorhinostomywithDexmedetomidineSedationYoshikiUeta,NaokoTachi,YoshihiroHashimoto,YuichiAsahinaandKayokoYoshimuraCShinseikaiToyamaHospitalEyeCenterC目的:涙.鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)におけるデクスメデトミジン(DEX)による静脈麻酔の安全性と有用性について検討する.方法:2014年C9月.2016年C9月に,DEXによる静脈麻酔を用いてCDCR鼻内法を施行したC21例C22側を対象とした.DEXは5.6Cμg/kg/時でC10分間初期負荷投与し,0.4Cμg/kg/時で維持投与した.局所への浸潤麻酔も併用した.手術中断例の有無,バイタルサイン,声かけへの応答,術中の疼痛をフェイススケールを用いC11段階で評価した.結果:手術を中断した症例はなく,声かけは全例応答可であった.3例でCSpOC2の低下,1例で血圧の低下を認めたが,維持量の減量により改善した.フェイススケールは平均C1.71(0.6)であった.結論:DEXを用いたCDCRは安全であり,局所麻酔も併用すれば疼痛コントロールも良好である.CPurpose:Toevaluatethesafetyande.ectivenessofendoscopicdacryocystorhinostomy(En-DCR)underlocalanesthesiawithdexmedetomidine(DEX)sedation.Method:22patientsunderwentEn-DCRunderlocalanesthesiawithDEX.DEXwasadministeredintravenouslyataloadingdoseof5.6Cμg/kg/hfor10minutesand0.4Cμg/kg/hsubsequently.Focalanesthesiawasalsoused.Vitalsigns,responsetocall,andintraoperativepainusingFacescalewereCnoted.CResult:TheCoperationCwasCsuccessfullyCperformedCinCallCpatients,CandCtheyCrespondedCtoCcall.CSpO2CwasCdecreasedCinC3patientsCandCbloodCpressureCwasCdecreasedCinC1patient.CTheCmeanCpainCscoreConCFaceCscaleCwas1.71(0.6)C.Conclusion:En-DCRwithDEXsedationisasafeandae.ectivepaincontrolprocedure.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C36(1):107.110,C2019〕Keywords:涙.鼻腔吻合術,デクスメデトミジン,鼻内法,局所麻酔,フェイススケール.Dacryocystorhinosto-my,dexmedetomidine,endoscopic,localanesthesia,facescale.Cはじめに涙.鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)は,おもに鼻涙管閉鎖症に対して,涙道再建目的で行われる手術である.近年,鼻内法が広まり治癒率も高い1,2).麻酔は,術中の疼痛や出血の管理のために全身麻酔で行う施設が多い.しかし全身麻酔では全身状態,入院期間,施設などに制約されることがあり,局所麻酔で行う施設もある3.6).局所麻酔では静脈麻酔薬を用いて行う場合もある.近年新しい静脈麻酔薬としてデクスメデトミジン(DEX)が発売された.DEXはCa2受容体作動薬であり,脳橋の青斑核のCa2A受容体に結合してCagonistとして作用し,鎮静作用を発現する7).また,脊髄に分布するCa2A受容体に作用し,鎮痛作用も発現する.鎮静は自然睡眠に類似し,呼吸抑制は弱いとされ,呼びかけで容易に覚醒し,意思疎通が可能といわれている.合併症として,血圧・心拍数低下,末梢血管の収縮による一過性血圧上昇などが報告されている.今回,DCRにおけるCDEXを用いた静脈麻酔の有用性と安全性を検討した.CI対象および方法2014年C9月.2016年C9月に当院で,DEXを用いて局所麻酔でDCRを施行した21例22側(男性2例2側,女性19例C20側,平均年齢C68.7C±11.0歳)を対象とした.全身麻酔か局所麻酔かは患者の希望により決定し,認知症症例と両側手術の症例は,原則,全身麻酔で施行した.DCR下鼻道法やCJonestube留置を行った症例は除外した.〔別刷請求先〕植田芳樹:〒939-0243富山県射水市下若C89-10真生会富山病院アイセンターReprintrequests:YoshikiUeta,ShinseikaiToyamaHospitalEyeCenter,89-10Shimowaka,Imizu,Toyama939-0243,JAPANC0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(107)C107表1結果表2痛みなし群とあり群の比較声かけ全例反応バイタルサインの異常CSpO2低下3例血圧低下1例あり1C1例記憶断片的8例なし2例フェイススケール平均1C.7C±1.910例は0痛みなし(10例)痛みあり(11例)63.5±12.3C73.1±8.02:80:12体重(kg)C51.4±7.9C47.3±8.537.1±7.3(26.45)C42.3C±12.7(23.67)記憶断片的5例3例あり3例8例表3疼痛の強かった症例性別年齢(歳)体重(kg)手術時間(分)フェイススケールバイタルサインその他症例C1CFC70C54.8C67C6CSpO2低下涙小管水平部閉塞合併症例2CFC65C53.8C56C5出血++症例3CFC83C31.8C34C4CSpO2低下症例4CF75C50C45C4C手術法は,全例,鼻内法で施行した.粘膜除去にはCXPSCRのトライカットブレードを使用,骨窓形成にはCXPSCRのダイアモンドDCRバーを使用した.15°ナイフで涙.を切開し,ショートタイプの涙管チューブをC1本留置,メロセルヘモックスガーゼCRまたはべスキチンガーゼCRをC1枚挿入して終了した.DEXはC200Cμg(2Cml)を生理食塩水C48Cmlで希釈し,総量50Cml(4Cμg/ml)としてシリンジポンプで経静脈投与を行った.5.6Cμg/kg/時でC10分間初期負荷投与し,その後C0.4Cμg/kg/時で維持投与した.維持量は必要に応じ増減した(痛みがあれば増量し,バイタルサインの変化があれば減量).直前の食事は絶食とした.術中は鼻カニューレでC2Clの酸素投与を行った.DEX以外の麻酔として,前投薬にペンタゾシンC15mg,ヒドロキシジン塩酸塩C25mgを筋注し,体重50Ckg未満の症例は,適宜減量した.また,滑車下神経麻酔,涙.下の骨膜,および鼻内の粘膜にC1%エピレナミン含有キシロカインで浸潤麻酔を施行した.評価方法は,手術中断例の有無,術中のバイタルサイン〔血圧,脈拍,経皮的動脈血酸素飽和度(SpOC2)〕の異常,呼びかけへの応答の有無,術翌日に術中の記憶の有無の問診と術中疼痛をフェイススケールを用いてC0.10のC11段階で評価した.診療録の参照に対して,当院の倫理委員会の承認を得た.CII結果結果を表1に示す.手術を中断した症例はなく,声かけは全例応答可であった.バイタルサインはC3例でCSpOC2の低下(89.95%),1例で血圧低下(70CmmHg)を認めたが,DEXの維持量の減量により改善した.術翌日の問診で,術中の記憶があった症例はC11例,断片的な記憶がC8例,術中の記憶がなかった症例はC2例であった.痛みの程度はフェイススケールで平均C1.7C±1.9(0.6)であった.10例はフェイススケールC0と回答した.術中の咽頭への流血,還流液が問題となる症例はなかった.フェイススケールがC0の痛みなし群と,フェイススケールがC1以上の痛みあり群に分けた比較では(表2),年齢,体重,手術時間に有意差を認めなかったが,バイタルサインの異常は痛みあり群のみで認めた.また,術中の記憶がない症例は痛みなし群のみであり,痛みあり群で記憶がある症例が多い傾向を認めた.フェイススケールC4以上の疼痛が強かったC4症例を表3に示す.フェイススケールがC5以上のC2症例は,手術時間が長い症例であった(症例C1は涙小管水平部閉塞の合併,症例C2は鼻出血のため).このC2症例はともに,術終盤で強い疼痛を訴えた.また,4症例中C2症例にCSpOC2の低下を認めた.CIII考察これまで,手術や処置における鎮静には,ミダゾラムやプロポフォールなどの静脈麻酔薬が使用されてきた.これらの薬剤は,効果発現時間が早く,血中半減期が短いが,短時間の無麻酔や局所麻酔で実施される処置や検査の鎮静には適応外となっている.また,呼吸抑制などのために,使用の際には呼吸,循環の監視が求められる.Ca2アドレナリン受容体作動薬であるCDEXも,以前は集中治療における人工呼吸中および人工呼吸器からの離脱後の鎮静に適応が限定されていたが,2013年C6月から局所麻酔108あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019(108)における手術や処置,検査における鎮静の適応が追加された.DEXは,低用量の使用時には血管拡張による低血圧と副交感神経優位による徐脈が発現し,高用量時は,血管平滑筋収縮による血管収縮を引き起こすといわれる.呼吸抑制が軽微であり,呼名や軽微な刺激で速やかに覚醒する意識下鎮静の鎮静レベルを容易に達成し,自発呼吸が温存されるという点は,安全に手術を遂行するうえでは望ましい.これまでCDEXを用いた手術の報告は多くあり,Hyoらは,両眼白内障手術患者C31例でCDEX,プロポフォール,アルフェンタニルを比較検討し,DEX群が患者の満足度に優れ,心血管系が安定していたと報告している8).また,Demir-aranらは,上部消化管内視鏡の鎮静で,DEX群のほうがミダゾラム群に比べ,検査中の嘔気・嘔吐が有意に少なく,内視鏡医の満足度が高く,合併症としては処置中のCSpOC2が92%まで低下したと報告している9).西澤らも,消化器内視鏡におけるCDEXとミダゾラムの比較のメタ解析において,ミダゾラムに比較してより有効であり,合併症リスクに有意差を認めなかったと報告している10).これらの結果からDEXは,プロポフォールやミダゾラムと比べ,合併症はほぼ同等,患者,術者の満足度は高い静脈麻酔薬であると考える.DCRに対してCDEXを用いた報告はないが,今回の検討において,SpOC2低下をC3例に,血圧低下をC1例に認めた.CSpO2の低下はフェイススケールがC6とC5の疼痛の強い症例にみられ,疼痛を抑えるためにCDEXを増量したことが影響したと思われるが,その後のCDEXの減量により,早期に改善が期待できる.また,翌日の問診で術中の記憶がない症例がC2例あった.それらの症例も術中の呼名に応答は可能であったが,フェイススケールはC0であり,鎮静が深すぎた可能性がある.DEXは健忘作用は弱いとされるが,鎮静が深いと健忘作用を呈することがあると考えられた.しかし,患者にとって手術は苦痛であり,記憶をなくしても満足度は高いと思われた.今回の手術はCXPSCRドリルシステムを用いており,骨削開時は灌流液が常に流れていたが,術中に灌流液を吐き出したり誤嚥する症例はなかった.DEXによる鎮静は自然睡眠に近いとされ,患者が灌流液を飲み込んでいるためと思われた.疼痛に関して,フェイススケールの平均はC1.7であった.CVisualanalogscaleを用いた検討で,網膜光凝固の疼痛は,従来の光凝固でC3.7.5.1,PASCALCRによるパターンレーザーでC1.4.3.3と報告されており11,12),DEXを用いたCDCRは網膜光凝固とほぼ同等の疼痛と考える.フェイススケールC0がC10例であり,約半数において,無痛で手術を行うことができた.疼痛のある症例,とくに疼痛の強かった症例は,涙小管水平部閉塞の合併や,鼻出血の止血に時間のかかった症例であり,術終盤の痛みが強かったことから,手術時間の延長により,浸潤麻酔の効果が減弱したと考える.したがって,DEXのみでの疼痛コントロールは困難で,適切な局所麻酔の併施が必須と考える.DCR鼻内法では,涙.を十分に展開することが重要であるが,上顎骨が厚い例では,骨削開の際に局所麻酔のみでは痛みも出やすい.しかし全症例,十分な骨窓を広げることができた.DEXの鎮痛作用は脊髄のCa2A受容体への作用によるといわれ,三叉神経支配の頭頸部手術で鎮痛作用を発現するか不明であるが,DEXの有用性は確認できた.本検討は,術前に麻酔の種類の希望を聞いたため,痛みに弱い症例は全身麻酔を選択したと思われること,より痛みに弱いと思われる男性がC2名であること,今後症例が増えるであろう認知症症例を除外していること,ミダゾラムや静脈麻酔薬なしとの比較を行っていないことから,さらなる検討が必要である.手術続行が困難と判断した場合はすみやかに,全身麻酔へ移行できるよう準備が必要と考える.その点から,全身麻酔の準備ができない施設での導入は慎重にすべきである.今回は一般に推奨される初期量,維持量で投与を開始し,術中の患者の疼痛の訴えと,バイタルサインの変化があったときのみ,DEXの量の増減を行った.鎮静が深すぎたと思われる症例もあり,鎮静スケールを用いればより適切な量を決めることができると考える.術中の疼痛は大きな問題であるが,全身麻酔に伴うリスク,手術枠や施設の限界,患者の全身状態などから,局所麻酔で行わなければならない場合がある.今回の検討から,DEXを使用したCDCRは適切な局所麻酔を併施すれば,安全で比較的疼痛も少ないと考える.CIV結論DEXを用いたCDCRは安全であり,局所麻酔の追加を適切に行えば疼痛コントロールは良好である.DEXの適切な量や,増加する認知症患者への対応は今後の検討を要する.文献1)WormaldPJ:PoweredCendscopicCdacryocystorhinostomy.CLaryngoscopeC112:69-72,C20022)孫裕権,大西貴子,中山智寛ほか:涙.鼻腔吻合術の手術適応と成績.臨眼C58:727-730,C20043)DresnerCSC,CKlussmanCKG,CMeyerCDRCetal:OutpatientCdacryocystorhinostomy.OphthalmicSurgC22:222-224,C19914)HowdenJ,mcCluskeyP,O’SullivanGetal:AssistedlocalanesthesiaCforCendoscopicCdacryocystorhinostomy.CClinCExperimentOphthalmolC35:256-261,C20075)CiftciF,PocanS,KaradayiKetal:LocalversusgeneralanesthesiaCforCexternalCdacryocystorhinostomyCinCyoungCpatients.OphthalmicPlastReconstrSurgC21:201-206,C20056)河本旭,嘉陽宗光,矢部比呂夫:涙.鼻腔吻合術を施行(109)あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019C109した高齢者C83例の手術成績.あたらしい眼科C23:917-921,C20067)稲垣喜三:局所麻酔時におけるデクスメデトミジン塩酸塩.循環制御C36:138-143,C20158)NaHS,SongIA,ParkHSetal:Dexmedetomidineise.ec-tiveCformonitoredanesthesiacareinoutpatientsundergo-ingCcataractCsurgery.CKoreanCJCAnesthesiolC61:453-459,C20119)DemiraranY,KorkutE,TamerAetal:ThecomparisonofCdexmedetomidineCandCmidazolamCusedCforCsedationCofCpatientsduringupperendoscopy:Aprospective,random-izedstudy.CanJGastroenterol27:25-29,C200710)西澤俊宏,鈴木秀和,相良誠二ほか:消化器内視鏡におけるデクスメデトミジンとミダゾラムの比較:メタ解析.日本消化器内視鏡学会雑誌57:2560-2568,C201511)須藤史子,志村雅彦,石塚哲也ほか:糖尿病網膜症における光凝固術.臨眼C65:693-698,C201112)西川薫里,野崎実穂,水谷武史ほか:PASCALstreamlineyellowの使用経験.眼科手術C26:649-652,C2013***110あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019(110)

アレルギー性結膜炎における自覚症状評価を目的としたFacial Imaging Scale(FISA)の検討

2016年2月29日 月曜日

《原著》あたらしい眼科33(2):301.308,2016cアレルギー性結膜炎における自覚症状評価を目的としたFacialImagingScale(FISA)の検討稲田紀子*1髙橋恭平*2石田成弘*2朝生浩*1庄司純*1*1日本大学医学部視覚科学系眼科学分野*2参天製薬株式会社研究開発本部育薬室DevelopmentofNovelFacialImagingScale(FISA)forAssessingSubjectiveSymptomsofPatientswithAllergicConjunctivitisNorikoInada1),KyoheiTakahashi2),NaruhiroIshida2),HiroshiAso1)andJunShoji1)1)DivisionofOphthalmology,DepartmentofVisualSciences,NihonUniversitySchoolofMedicine,2)GlobalResearch&DevelopmentDivision,JapanMedicalAffairs,SantenPharmaceutical,Co.,Ltd.目的:アレルギー性結膜疾患患者の自覚症状を評価するために新たに開発したフェイススケール(FISA)の有用性の評価.対象および方法:対象はアレルギー性結膜炎患者17例.方法は,エピナスチン点眼薬0.05%を投与した群(エピナスチン群)とクロモグリク酸ナトリウム2%点眼薬を投与した群(SCG群)とに分類し,点眼前から点眼開始後7日間の自覚症状の程度と種類について,FISAとverbalratingscale(VRS)とにより検討した.結果:アレルギー性結膜炎全例においてFISAを用いて評価した自覚症状の程度は,VRSを用いて評価した痒みの程度と有意に相関した(r=0.57;p<0.0001).エピナスチン群では,FISAによって評価した自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)が,点眼開始後2日目より有意に低下した(p<0.05).結論:FISAは,アレルギー性結膜炎患者の自覚症状および治療効果判定に有用な検査法であると考えられた.Purpose:Toevaluatetheefficacyofanovelfacialimagingscale(FISA)forassessingsubjectivesymptomsofpatientswithallergicconjunctivaldiseases.Methods:17patientswithallergicconjunctivitis(AC)wererandomlydividedintotwogroups.Eachgroupreceivedeither0.05%epinastinehydrochloride(epinastinegroup)or2%sodiumcromoglicate(SCG)(SCGgroup).Theintensityandvarietyofsymptomswereevaluateddailyfrombaseline(beforetreatment)today7usingFISAandverbalratingscale(VRS).Results:TheintensityofsubjectivesymptomsobtainedusingFISAwassignificantlycorrelatedwithocularitchingscorescalculatedusingtheVRS(r=0.57;p<0.0001)inallACpatients.Intheepinastinegroup,theintensityofFISAsubjectiveACsymptomscoresdecreasedsignificantlyafterdaytwocomparedtobaseline(p<0.05).Conclusion:FISAisausefultoolforevaluatingsubjectivesymptomsandtherapeuticefficacyinACpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(2):301.308,2016〕Keywords:アレルギー性結膜炎,フェイススケール,ヒスタミンH1受容体拮抗薬,クオリティーオブライフ,自覚症状.allergicconjunctivitis,facialimagescale,histamineH1receptorantagonist,qualityoflife,subjectivesymptoms.はじめにアレルギー性結膜炎は,即時型アレルギー反応を基本病態とする結膜の炎症性疾患である1).アレルギー性結膜炎の自覚症状は,眼掻痒感,異物感,充血,眼脂および流涙が代表的なものとされており2,3),他覚所見としては,結膜充血や結膜浮腫に加え,上眼瞼結膜に乳頭形成がみられることが特徴とされる4).アレルギー性結膜炎患者では,自覚症状の重症化によりqualityoflife(QOL)が低下することが問題視されており,自覚症状の程度を正確に診断して治療に反映させることは,アレルギー性結膜炎の治療目標を設定するうえで重要であると考えられる5,6).さらに,日々の診療においては,簡易な方法により医師や医療スタッフと患者とが自覚症〔別刷請求先〕稲田紀子:〒173-8610東京都板橋区大谷口上町30-1日本大学医学部視覚科学系眼科学分野Reprintrequests:NorikoInada,M.D.,DivisionofOphthalmology,DepartmentofVisualSciences,NihonUniversitySchoolofMedicine,30-1Oyaguchi-Kamicho,Itabashi-ku,Tokyo173-8610,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(141)301 状の程度を共有することができれば,アレルギー性結膜炎治療の質は確実に向上すると考えられる.自覚症状の評価法はこれまでにさまざまな方法が報告されており,代表的な評価法としてはvisualanalogscale(VAS),numericalratingscale(NRS),verbalratingscale(VRS),フェイススケールなどが報告されている7.10).フェイススケールは,症状の程度を言葉で表現する代わりに人間の表情の図で評価する方法である.Backerら8)は,痛みに関する代表的facescaleとしてWong-BackerFACESpainratingscaleを発表している.この方法は笑顔から泣顔までの6段階の表情で痛みの程度を評価する方法で,言葉の意味や検査方法を十分に理解しなくとも簡単に検査できる利点があり,他の痛みの評価スケールともよく相関するとされている8,9,11.13).一方,眼掻痒感はアレルギー性結膜炎の自覚症状の程度を評価するための代表的症状とされ,痒みの程度はVASなどにより定量的評価が試みられている6,14).アレルギー性結膜炎患者の自覚症状をより正確に評価するためには,眼掻痒感,充血,眼脂などを含めた自覚症状の総合的評価が必要であると考えられる.しかし,これまでの自覚症状の評価法に関しては,単独の症状を評価する方法としては優れているものの,複数の症状を評価する場合には,繰り返し同様の検査を行わなくてはならないという欠点もある.今回筆者らは,アレルギー性結膜炎の自覚症状の総合評価を行うためのフェイススケールとしてFacialImageScaleforallergicconjunctivaldiseases(FISA)を開発し,その臨床的有用性について検討した.また,抗アレルギー点眼薬によりアレルギー性結膜炎治療を行う際に,その治療効果判定におけるFISA使用の有用性について検討する目的で,メディエーター遊離抑制点眼薬であるクロモグリク酸ナトリウム(SCG)点眼薬またはヒスタミンH1受容体拮抗点眼薬であるエピナスチン点眼薬で治療を行ったアレルギー性結膜炎患者の自覚症状についても検討した.I対象および方法本研究は,日本大学医学部附属板橋病院臨床研究審査会の承認を受けて実施した.1.対象対象は,2013年1月.2014年6月に日本大学医学部附属板橋病院眼科または庄司眼科医院を受診した患者で,①アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン1)の診断基準に従って準確定診断した症例,②治療開始時に点眼薬治療が行われていない症例の2項目の診断基準を満たし,研究参加への同意が得られた患者とした.また,アレルギー性結膜炎以外の眼疾患を有する症例および治療中にコンタクトレンズ装用を中止できない症例は本研究から除外した.302あたらしい眼科Vol.33,No.2,2016対象症例は17例で,ランダム化割り付けによりSCG群7例[平均年齢:14.4±22.9(±標準偏差)歳,レンジ:7.30歳,性差1:6(男性:女性)]とエピナスチン群10例(32.1±22.9歳,レンジ:10.68歳,性差2:8)とに分類した.SCG群は,クロモグリク酸ナトリウム点眼薬(インタールR点眼液2%,サノフィ)1回1滴,1日4回点眼を7日間行い,エピナスチン群は,エピナスチン点眼薬(アレジオンR点眼液0.05%,参天製薬)1回1滴,1日4回点眼を7日間行った.2.FacialImageScaleforallergicconjunctivaldiseases(FISA)FISAは,日本大学医学部視覚科学系眼科学分野で開発したアレルギー性結膜疾患の自覚症状評価スケールである.FISAは症状の程度を総合評価するstep1と症状の種類を問うstep2との2段階で評価を行う方法である(図1).Step1は,自覚症状の総合評価を快適から不快までの5段階の表情で評価する方法で,結果は「自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)」として記録した.患者には,現在の自覚症状の程度に一致する表情を1つ選択させた.Step2は,快適または症状軽快(symptomA),眼掻痒感(symptomB),異物感(symptomC),充血(symptomD),流涙(symptomE),眼脂(symptomF)の6項目の自覚症状の有無を評価する方法である.患者には1日のなかで自覚した症状をすべてチェックさせ,複数回答は可とした.また,患者に対して各表情の説明は行わずに検査を施行した.3.Verbalratingscale(VRS)FISAを施行すると同時に,眼掻痒感をVRSで評価した.VRSは,「痒くない」(1点)「少し痒い」(2点),「痒い」(3点),「すごく痒い」(4点)とし(,)て評価し,「VRS眼掻痒感スコア」として記録した.4.他覚所見細隙灯顕微鏡による他覚所見は,5-5-5方式重症度観察スケールを用いて評価した15).5-5-5方式重症度観察スケールは,軽症所見(瞼結膜充血・球結膜充血・上眼瞼結膜乳頭増殖・下眼瞼結膜濾胞・涙液貯留)を各1点,中等症所見(眼瞼炎・ビロード状乳頭増殖・トランタス斑・球結膜浮腫・点状表層角膜炎)を各10点,重症所見(活動性巨大乳頭・輪部堤防状隆起・落屑状点状表層角膜炎・シールド潰瘍・下眼瞼乳頭増殖)を各100点で評価し,観察された他覚所見の合計点数を0.555点までの臨床スコアとして算出した.5-55方式重症度観察スケールの結果は,「他覚所見臨床スコア」として記録した.5.検討項目自覚症状は点眼開始日から点眼開始後7日目までの間,FISAおよびVRSを毎日記録して検討した.また,他覚所見は点眼開始日と点眼開始後7日目に5-5-5方式重症度観(142) Step1:総合評価12質問:今日の症状の程度を顔の表情で表すとどれですか.(1つ選択)345Step2:症状の種類質問:今日1日の間に自覚した症状を顔の表情で表すとどれですか.(複数選択可)ABCDEF図1FacialimagingScaleforallergicconjunctivaldiseases(FISA)FISAはアレルギー性結膜疾患患者が2種類の質問に対して,自身の現在の自覚症状に相当するフェイスを選択して回答する自覚症状検査である.FISAは,自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)とstep2:自覚症状の種類とに分かれており,2段階での評価を行う.察スケールを用いて検討した.2による個々の症状の出現頻度は,点眼開始日と点眼開始後検討項目は,①全回答におけるFISAstep2での「快適5日目をFisher直接確率により比較検討した.SCG群およな症状(symptomA)」の出現の有無で分類した2群間の自びエピナスチン群の他覚所見臨床スコアは,Wilcoxon’s覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)の比較,②全回答signedranktestで検討した.における自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)とFISAII結果step2の不快な症状(symptomB.symptomF)の合計数またはVRS眼掻痒感スコアとの関係,③SCG群とエピナスチ1.アレルギー性結膜炎におけるFISAによるン群における点眼開始日から点眼開始後7日目までの毎日の自覚症状総合スコアの評価VRS眼掻痒感スコアおよび自覚症状総合スコア(FISAstep対象症例17例におけるアレルギー性結膜炎の症状の程度1スコア)の検討,④SCG群およびエピナスチン群におけるを示す点眼前検査において,自覚症状総合スコア(FISA点眼開始日と点眼開始後7日目の他覚所見臨床スコアの比較step1スコア)は3.6±0.9点(平均±標準偏差)であった.である.また,FISAstep2での各症状の出現頻度は,SymptomA6.統計学的検討が4/17例(23.5%),SymptomBが6/17例(35.3%),快適な症状(symptomA)の有無で分類した自覚症状総合SymptomCが8/17例(47.1%),SymptomDが3/17例スコア(FISAstep1スコア)の比較は,Mann-Whitney(17.6%),SymptomEが3/17例(17.6%),SymptomFがU-testで検定した.また,自覚症状総合スコア(FISAstep2/17例(11.8%)であった.VRSスコアは,1.6±0.9点(平1スコア),VRS眼掻痒感スコアおよび他覚所見臨床スコア均±標準偏差)であった.との間の相関関係のスクリーニングとして,点眼前検査の検自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア),VRS眼掻痒査結果に対して偏相関検定を行った.さらに,すべての検査感スコアおよび他覚所見臨床スコアの間の相関関係のスクリ結果に対する自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)とーニングとして,点眼前検査の検査結果について偏相関検定FISAstep2の不快な症状の合計数との関係,および自覚症を施行した結果は,自覚症状総合スコア(FISAstep1スコ状総合スコア(FISAstep1スコア)とVRS眼掻痒感スコアア)とVRS眼掻痒感スコアとの間に有意な相関(p=0.026)との関係は,Spearmanrankcorrelationcoefficientで検討がみられたが,自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)した.SCG群とエピナスチン群における点眼開始日から点と他覚所見臨床スコアとの間(p=0.225)およびVRS眼掻痒眼開始後7日目までの毎日のVRS眼掻痒感スコアおよび自感スコアと他覚所見臨床スコアとの間(p=0.613)に有意な覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)は,Shirley-Wil相関はみられなかった.liamstestで検討した.エピナスチン群におけるFISAstep本研究では,期間中に17症例から116回(無回答3回)(143)あたらしい眼科Vol.33,No.2,2016303 12345***CFP群自覚症状総合スコア[FISAstep1,(点)]a123450123b不快な症状の総数[FISAStep2(face)]自覚症状総合スコア[FISAstep1(点)]123451234眼掻痒感スコア[VRS(点)]c自覚症状総合スコア[FISAStep1(点)]CFN群図2自覚症状総合スコアと自覚症状の種類またはverbalratingscale(VRS)との関係a:FISAstep2での快適(SymptomA)を含む回答群(comfortablefacepositive:CFP群)(n=33)は,快適(SymptomA)を含まない回答群(comfortablefacenegative:CFN群)(n=83)と比較して,自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)が有意に低値であった.***p<0.0001,Mann-WhitneyU-test.b:自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)は,FISAstep2により陽性であった自覚症状の種類の合計数と有意に相関した(r=0.49,p<0.0001,Spearmanrankcorrelationcoefficient).c:自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)は,VRS眼掻痒感スコアと有意に相関した(rcoefficient).のFISAおよびVRSの回答を得た.116の回答は,快適(SymptomA)を含む回答群(comfortablefacepositive:CFP群)(n=33)と快適(SymptomA)を含まない回答群(comfortablefacenegative:CFN群)(n=83)とに分類し,各群のFISAstep1スコアを比較した.CFP群の自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)2.5±0.8点(平均±標準偏差)は,CFN群の自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)3.4±0.9点と比較して有意に低値を示した(p<0.0001,Mann-WhitneyU-test)(図2a).さらに,FISAstep2におけるSymptomBからSymptomFまでの不快な症状の合計数は,自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)と有意な相関を示した(r=0.49;p<0.0001,Spearmanrankcorrelationcoefficient)(図2b).自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)とVRS眼掻痒感スコアも有意な相関を示した(r=0.57;p<0.0001,Spearmanrankcorrelationcoefficient)(図2c).2.FISAおよびVRSによる抗アレルギー点眼薬のアレルギー性結膜炎に対する治療評価VRS眼掻痒感スコアにおいて,エピナスチン群は点眼前と比較して点眼開始後5日目以降で痒みスコアが有意に低下した(p<0.05,Shirley-Williamstest)(図3).しかし,SCG304あたらしい眼科Vol.33,No.2,2016=0.57,p<0.0001,Spearmanrankcorrelation群では有意な痒みスコアの低下はみられなかった.自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)を用いた評価において,エピナスチン群は点眼前と比較して点眼開始後2日目以降でFISAstep1スコアが有意に低下した(p<0.05,Shirley-Williamstest)(図4).しかし,SCG群では有意な自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)の低下はみられなかった.7日間でみられたFISAstep2の症状出現パターンは,不快な症状を示すSymptomBからFだけのもの(図5,代表症例1)と不快な症状と快適な症状(SymptomA)とが混在するもの(図5,代表症例2)とに分かれた.そこで,VRS眼掻痒感スコアおよび自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)ともに有意に低下した点眼開始後5日目のエピナスチン群のFISAstep2の結果を,点眼前のFISAstep2の結果と比較検討したところ,快適な症状(SymptomA)の出現頻度は点眼前と比較して点眼開始後5日目で有意に上昇した(p<0.05,Fisher’sexacttest)(図6).5-5-5方式重症度観察スケールを用いた他覚所見臨床スコアにおいて,エピナスチン群では,点眼前と比較して点眼開始後7日目では臨床スコアが有意に低下した(p<0.05,Mann-WhitneyU-test)(図7a).また,SCG群での臨床スコアは,点眼前と比較して点眼開始後7日目では低下傾向を(144) 00.511.522.51日目(点眼前)2日目3日目4日目5日目6日目7日目:エピナスチン群:SCG群眼掻痒感スコアの比率***00.20.40.60.811.21.41.61.81日目(点眼前)2日目3日目4日目5日目6日目7日目******自覚症状総合スコアの比率:エピナスチン群:SCG群00.20.40.60.811.21.41.61.81日目(点眼前)2日目3日目4日目5日目6日目7日目******自覚症状総合スコアの比率:エピナスチン群:SCG群図3エピナスチン群およびSCG群におけるVRS眼掻痒感スコアの検討各観察日におけるVRS眼掻痒感スコアを,点眼前のVRS眼掻痒感スコアとの比で示した.エピナスチン群において,VRS眼掻痒感スコアは点眼開始後5日目以降で有意に低下した.*:p<0.05,Shirley-Williamstest.代表症例113歳・女子図4エピナスチン群およびSCG群における自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)の検討各観察日における自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)を,点眼前の自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)との比で示した.エピナスチン群において,自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)は点眼開始後2日目以降で有意に低下した.*:p<0.05,Shirley-Williamstest.代表症例228歳・女性図5FISAstep2の回答例代表症例1は13歳,女子.エピナスチン点眼治療後4日目のFISAstep2の回答を示した.代表症例2は28歳,女性.エピナスチン点眼治療後5日目のFISAstep2の回答を示した.回答は,快適(SymptomA)と不快な症状である眼掻痒感(SymptomB)と眼脂(SymptomF)がチェックされている.示したが,統計学的有意差はなかった(図7b).III考按今回筆者らは,アレルギー性結膜炎の自覚症状を数値化し半定量的に検討することを目的として,FISAを開発した.アレルギー性結膜炎患者では,眼掻痒感,異物感,充血,眼脂,流涙が代表的自覚症状であるとされているほか,眼乾燥感や眼疲労感の訴えもみられるとされ,これらの自覚症状によりQOLが低下すると考えられている2,3).したがって,アレルギー性結膜炎の自覚症状の変化を正確に診断し治療に反映させることは,アレルギー性結膜炎診療において重要なアプローチ方法であると考えられる.FISAを開発するにあたり,筆者らは以下の条件を満たす(145)臨床検査法であることを目標とした.目標とした条件は,①小児も含め,いずれの年代でも簡便に行える検査法であること,②自覚症状の総合評価が行えること,③出現している自覚症状の種類を把握できること,④アレルギー性結膜炎の自覚症状として比較的特異度の高い症状を検査することである.したがって,FISAは自覚症状の程度を評価するstep1と種類を評価するstep2とからなり,小児でも十分検査が可能になるように選択肢はすべてフェイススケールとした.今回検討した結果では,程度を評価する自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)はVRS眼掻痒感スコアとよく相関した.しかし,自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)はFISAstep2の自覚症状の種類の合計ともよく相関していることから,眼掻痒感は自覚症状の程度を評価することのあたらしい眼科Vol.33,No.2,2016305 *NDND*NDND(n=10)■:点眼前■:点眼開始後5日目7060出現率(%)50403020100SymptomASymptomBSymptomCSymptomDSymptomESymptomF図6FISAstep2における自覚症状の種類の出現頻度の変化エピナスチン群における自覚症状の種類の出現頻度を点眼前と点眼後5日目とで比較した.点眼開始後5日目では,快適(SymptomA)出現率が点眼前と比較して有意に上昇した.*:p<0.05,Fisher’sexacttest.,ND:notdetected.ab*NS301614他覚所見臨床スコア(点)他覚所見臨床スコア(点)2520151051210864200点眼前7日目点眼前7日目エピナスチン群SCG群図7他覚所見臨床スコアの検討5-5-5方式重症度観察スケールにより他覚所見を臨床スコア化した.エピナスチン群における他覚所見臨床スコアは,点眼開始前と比較して点眼開始後7日目で有意に低下した.*:p<0.05,NS:notsignificant,Wilcoxon’ssignedranktest.できる代表的な自覚症状ではあるものの,アレルギー性結膜炎の自覚症状は眼掻痒感以外の症状も加わった複合的な症状であると考えられた.また,アレルギー性結膜炎における自覚症状の総合的評価を行うための検査法として自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)は有用であると考えられた.日常診療における小児に対する自覚症状の評価として,「痒い」「痒くない」の2値変数が用いられることが多くみられる.しかしながら,2値変数での評価は必ずしも正確に自覚症状の程度を反映しているとはいえないと考えられる.本研究では対象者を成人に限定していないため,対象者のなかに多くの小児を含んでいるが,FISAの記録に関してはすべての症例で回答することができた.したがって,FISAは小児に対しても施行しやすい検査法であると同時に,自覚症状の程度がより詳細に検討できたと考えられた.306あたらしい眼科Vol.33,No.2,2016さらに,筆者らはFISAによる自覚症状の検討を抗アレルギー点眼薬によるアレルギー性結膜炎の治療効果判定に用い,その有用性について検討した.FISAstep1による自覚症状の検討では,エピナスチン群で点眼後2日目より有意に自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)の低下がみられたが,SCG群では有意な変化はみられなかった.これらの結果は,ヒスタミンH1受容体拮抗薬であるエピナスチン点眼薬は,比較的速やかにアレルギー性結膜炎の総合的な自覚症状を改善させる可能性を示していると考えられた.一方,メディエーター遊離抑制薬であるSCG群で7日間以内に自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)の改善がみられなかったことは,メディエーター遊離抑制点眼薬は効果発現までに2週間程度を要するとされていることに関連している可能性が考えられた.また,5-5-5方式重症度観察スケールを(146) 用いて検討した他覚所見臨床スコアにおいても,エピナスチン群は点眼前と比較して,点眼後7日目で有意に他覚所見臨床スコアが低下していたのに対して,SCG群では低下傾向を示したが有意な低下ではなかった.これらの他覚所見から得られた結果とFISAによる自覚症状から得られた結果とが類似した結果であったことは,FISAがアレルギー性結膜炎に対する薬物療法の効果を正確に評価していることを示すものであり,メディエーター遊離抑制点眼薬とヒスタミンH1受容体拮抗点眼薬と効果発現の相違を示すものでもあると考えられた.さらに過去の臨床研究では,アレルギー性結膜炎に対する治療薬にはSCG点眼薬よりもヒスタミンH1受容体拮抗点眼薬を推奨する結果が報告されている16.18).今回の結果および既報から,アレルギー性結膜炎の点眼薬治療に即効性の治療効果を期待する場合は,ヒスタミンH1受容体拮抗点眼薬は有用であると考えられた.一方,VRSによる眼掻痒感の検討では,エピナスチン群は点眼5日目以降にVRS眼掻痒感スコアの有意な低下がみられた.点眼誘発試験を用いたアレルギー性結膜炎に対する点眼治療に関する臨床研究では,エピナスチン点眼薬はプラセボと比較して眼掻痒感,結膜浮腫,流涙,充血に対する有効性が確認されている19).したがって,筆者らの結果はエピナスチン点眼薬の眼掻痒感に対する有効性を,FISAとVRSとを用いることによって日常臨床でも確認できることを示すことができたと考えられた.しかし,エピナスチン群において,自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)の結果とVRS眼掻痒感スコアとの間には,効果発現までの期間に乖離があった.これは,アレルギー性結膜炎において不快と感じる症状が眼掻痒感だけでないことを示しており,眼掻痒感以外の自覚症状に対してもエピナスチン点眼薬が有効であったために自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)がVRS眼掻痒感スコアよりも早期に低値を示すようになったと考えられた.また,自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)が1段階変化するレベルとVRS眼掻痒感スコアが1段階変化するレベルに差があったため,スコアが変化する日数に差が生じた可能性も考えられた.すなわち,ヒスタミンH1受容体拮抗点眼薬は,自覚症状に対する効果が十分に確認できるまで継続投与することが望ましいと考えられたが,その効果発現に関してはFISAを用いることにより正確に経過観察が可能になるものと考えられた.FISAstep2では,点眼前に行った検査により眼掻痒感(SymptomB)と異物感(SymptomC)がアレルギー性結膜炎で出現する頻度の高い自覚症状であることが示された.また,エピナスチン群において,FISAstep2で得られた点眼開始後5日目の自覚症状出現頻度を点眼前と比較したところ,異物感(SymptomC)と流涙(SymptomE)が低下していたが有意差はなかったのに対し,快適(SymptomA)は有(147)意に増加していた.さらに,対象症例全体で検討した結果では,快適(SymptomA)を含む回答群では快適(SymptomA)を含まない回答群と比較して自覚症状総合スコア(FISAstep1スコア)が有意に低値であった.代表症例2からわかるように,治療中のアレルギー性結膜炎症例のFISAstep2では,快適を示すフェイスと不快を示すフェイスが回答のなかに混在する.これらの結果から,自覚症状の種類から重症度や治療効果を判定する方法として,不快な症状の数や種類により判定することができると考えられるが,明確な重症度分類の作成は困難である.一方,自覚症状のなかに快適(SymptomA)が選択される場合には,自覚症状が軽症化したことを示す徴候と考えることができる.したがって,快適(SymptomA)の有無に注目して経過観察する方法は,治療効果を観察する場合に有用であると考えられた.今回の検討では,症例数や評価した点眼薬の種類が非常に限られていたが,今後は対象となるアレルギー性結膜疾患の病型や症例数を増やし,点眼薬の種類に副腎皮質ステロイド点眼薬や免疫抑制薬を加えた大規模研究により,アレルギー性結膜疾患全般における評価を検討する必要があると考えられた.筆者らの開発したFISAは,アレルギー性結膜炎患者の自覚症状の程度および治療効果判定を行う臨床検査法として有用であると考えられた.本研究は,日本大学医学部視覚科学系眼科学分野と参天製薬株式会社との共同研究による.稿を終えるにあたり,ご高閲を賜りました日本大学医学部視覚科学系眼科学分野湯澤美都子主任教授に深謝いたします.文献1)アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン作成委員会:特集:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版).日眼会誌114:829-870,20102)庄司純,内尾英一,海老原伸行ほか:アレルギー性結膜疾患診断における自覚症状,他覚所見および涙液総IgE検査キットの有用性の検討.日眼会誌116:485-493,20123)深川和己,藤島浩,福島敦樹ほか:アレルギー性結膜疾患特異的qualityoflife調査表の確立.日眼会誌116:494502,20124)LeonardiA:Allergyandallergicmediatorsintears.ExpEyeRes117:106-117,20135)VirchowJC,KayS,DemolyPetal:Impactofocularsymptomsonqualityoflife(QOL),workproductivityandresourceutilizationinallergicrhinitispatients―anobservational,crosssectionalstudyinfourcountriesinEurope.JMedEcon14:305-314,20116)BousquetPJ,DemolyP,DevillierPetal:Impactofallergicrhinitissymptomsonqualityoflifeinprimarycare.IntArchAllergyImmunol160:393-400,20137)ScottJ,HuskissonEC:Graphicrepresentationofpain.あたらしい眼科Vol.33,No.2,2016307 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