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2012年から2年間の久留米大学眼科における感染性角膜炎の報告

2020年2月29日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(2):220?222,2020c2012年から2年間の久留米大学眼科における感染性角膜炎の報告阿久根穂高佛坂扶美門田遊山下理佳山川良治吉田茂生久留米大学医学部眼科学講座InfectiousKeratitisPatientsSeenatKurumeUniversityHospitalBetween2012and2013HodakaAkune,FumiHotokezaka,YuMonden,RikaYamashita,RyojiYamakawaandShigeoYoshidaDepartmentofOpthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicineはじめに近年,優れた抗菌薬や抗真菌薬が使用されているにもかかわらず,いまだ感染性角膜炎の治療に難渋する例は多々認められる.起炎菌の動向が患者背景や年代といった要素によって異なることが原因の一つであり,これらの動向について調査することは治療において有用であると考える.2006年に報告された感染性角膜炎全国サーベイランス1()以下,サーベイランス)では,2003年における全国24施設の感染性角膜炎における起炎菌,分離菌,患者背景などについて報告している.久留米大学眼科(以下,当科)においても2000?2006年の6年間の感染性角膜炎について2010年に杉田らが報告を行った2()以下,前回の報告).サーベイランスで定義された起炎菌分類を用いて集計したところ,サーベイランスはグラム陽性球菌(以下,G(+)球菌)が42%,グラム陰性桿菌(以下,G(?)桿菌)が30%,その他14%,真菌・アメーバ14%であったのに対し,前回の報告ではその他32〔別刷請求先〕阿久根穂高:〒830-0011福岡県久留米市旭町67久留米大学医学部眼科学講座Reprintrequests:HodakaAkune,M.D.,DepartmentofOpthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicine,67thareaAsahimachi,Kurume-shi,Fukuoka830-0011,JAPAN220(106)0910-1810/20/\100/頁/JCOPY%,真菌・アメーバ31%,G(?)桿菌19%,G(+)球菌18%であり,前回の報告ではサーベイランスと比べ真菌の割合が高く,G(+)球菌の割合が低い結果であった.今回,2012年から2年間の当科における入院加療を要した感染性角膜炎についてレトロスペクティブに調査したので報告する.I対象および方法対象は2012年1月?2013年12月の2年間に当科で入院加療を要した感染性角膜炎の患者,97例101眼.男性47例49眼,女性50例52眼で,平均年齢は59.8±23.7歳(2?92歳)であった.今回,ウイルス性角膜炎は除外した.病巣部から直接顕微鏡検査(以下,検鏡)と培養検査(以下,培養)を行い,サーベイランスに準じ,起炎菌をG(+)球菌,G(?)桿菌,真菌・アメーバ,その他の4種類のカテゴリーに分類した.培養で検出された菌(以下,分離菌)と検鏡のみ陽性であった菌は起炎菌と定義し,その際に分離菌と検鏡が不一致の場合は分離菌を優先した.また,培養において複数の菌が分離された場合(以下,複数菌),複数菌が同一カテゴリーの場合はそのまま起炎菌とし(たとえば複数の菌がII結果検鏡は97例全例に施行しており,菌検出は48例で認められ検出率は50%であった.培養も97例全例に施行しており,菌検出は35例で認められ検出率は36%であった.表1に示すように,分離菌では細菌が35例中29例(83%)を占め,G(+)球菌が15例ともっとも多く,そのなかでもっとも多く検出された菌はStaphylococcusspp.9例,ついでStreptcoccusspp.6例,Corynebacteriumspp.6例の順に多く認めた.真菌は5例(14%)で糸状菌2例,酵母菌2例,不明真菌1例であった(表2).アカントアメーバは1例(3%)であった.検鏡および培養の結果から,97例中60例(62%)で起炎菌が分類された.その内訳はG(+)球菌が22例,G(?)桿菌が7例,真菌・アメーバが6例,その他が25例であった(図1).その他の内訳は,複数菌が14例,G(+)桿菌が10例,G(?)球菌が1例であった.年齢は,70代が23例(24%)ともっとも多く,年齢分布は一峰性であった(図2).真菌・アメーバは60代以上で認め,50代以下での検出はなかった.表2分類菌の内訳(真菌)すべてG(+)球菌ならばG(+)球菌と分類),違うカテゴリーの場合はその他とした.サーベイランスに従いグラム陰性球菌(以下G(?)球菌),グラム陽性桿菌(以下G(+)桿菌),嫌気性菌はその他に分類を行った.患者背景,前医の治療の有無についても検討した.・真菌:5/34例(15%)糸状菌:2例酵母菌:2例Aspergillussp.1例Candidaalbicans1例Fusariumoxysorum1例Candidaparapsilosislt1例不明真菌1例表1分離菌の内訳(細菌)全検出例:34/97例(35%)・細菌:29/34例(85%)グラム陽性球菌:15例グラム陰性球菌:3例Staphylococcusspp.9例Moraxellacatarrhalis3例Streptococcusspp.6例グラム陽性桿菌:9例グラム陰性桿菌:2例Corynebacteriumspp.6例Klebsiellapneumonia1例Propionibacteriumacnes3例Enterobactercloacae1例例)25201510500~9代10代20代30代40代50代60代70代80代90代CL装用(18例)外傷(16例)糖尿病(13例)アレルギー疾患(6例)図1起炎菌の内訳05101520■G(+)球菌■G(-)桿菌■真菌■その他■検出なし図2年齢別起炎菌■G(+)球菌■G(-)桿菌■真菌■その他■未検出(例図3患者背景別起炎菌(107)あたらしい眼科Vol.37,No.2,2020221患者背景では,コンタクトレンズ(contactlens:CL)装用がもっとも多く18例で,外傷が16例,糖尿病が13例,アレルギー疾患が6例の順で多く認めた(図3).CLの種類は,使い捨てソフトCL7例,頻回交換ソフトCL6例,定期交換型ソフトCL2例,従来型ソフトCL2例,ハードCL1例であった.このうちカラーCLは6例で,4例が20代であった.CL装用での起炎菌はその他5例,G(+)球菌3例,G(?)桿菌1例,アメーバ1例の順に認められた.前医の治療の有無について調査したところ,前医の治療があったのは97例中87例(90%)で,前医の治療がなかったのは10例のみであった.前医の治療があった例で起炎菌が検出されたのは52例で検出率は60%であり,前医の治療がなかった例では7例と70%で菌が検出されていたが,検出率に有意差はなかった(Fisher直接確率計算法).III考察検鏡の検出率は,今回の報告では50%であり,サーベイランスは記載なし,前回の報告では58%とやや低い結果であった.また,分離菌の検出率も今回の報告では36%であり,サーベイランスでは43%,前回の報告では41%と他の報告と比べてやや低い結果であった.竹澤らは,5年間の感染性角膜潰瘍をまとめ,前医による治療があった症例は67眼中45眼(67.2%)で培養陽性率は37.8%,前医による治療がなかった症例では培養陽性率は77.3%と高率であり有意差を認めている3).今回の報告では起炎菌の検出率は前医による治療があった例となかった例で有意差はなかったが,前医による治療があった例がサーベライランスでは39%,前回の報告では80%,今回の報告では90%と高率であったことから,前医での抗菌薬の使用により検鏡および培養の検出率が低くなった可能性もあると考えられた.分離菌は,今回の報告においてG(+)球菌がもっとも多く,そのなかでもStaphylococcusspp.が最多であったが,この傾向はサーベイランス,前回の報告と同様であった.年齢分布について,今回の報告では70代がもっとも多い一峰性であったが,サーベイランスおよび前回の報告では若年層と高齢層にピークを認める二峰性であり,若年層では20代にピークを認めている.20代のピークはCL装用者が多く分布することによると考えられているが,今回の報告においてCL装用者は10代が4例,20代が5例,30代6例と幅広い年代に分散していたため20代にピークがなかったと考えられた.患者背景については,今回CL装用がもっとも多く,ついで外傷の順であったことは,サーベイランスと同様であった.前回の報告は外傷がもっとも多くついで糖尿病であったため,患者背景は今回変化していた.また,前回の報告ではカラーCLの症例はなかったが今回の報告では18例中6例でカラーCLが認められており,CL装用が増えた要因の一つと考えられた.起炎菌は今回,その他がもっとも多く,前回の報告と同様であり,サーベイランスではG(+)球菌がもっとも多かった.前回の報告ではその他20例中13例が複数菌の検出であり,今回の報告でも24例中複数菌は14例と多かった.前回の報告では,起炎菌は,その他のつぎに真菌・アメーバが19例(アメーバは0例)と多かったが,今回,真菌・アメーバは6例(アメーバは1例)と大幅に減少していた.その代わりにG(+)球菌が22例と前回の報告11例に比べ大幅に増加していた.また,前回の報告と今回の報告を合わせても,アカントアメーバは1例であった.両報告の対象の間である2007?2009年の間に当科ではアカントアメーバ角膜炎9例11眼が加療しており4),この期間に偏っていた.このことは,全国調査でも同様の傾向であった5).今回,真菌が減少し,G(+)球菌が増加していたが,当院は農村が近く,前回の患者背景では草刈りを代表とする外傷が多かった.そのため真菌を多く認めたが,今回外傷が少なかったため真菌が減少していたと考えられた.アジア地域の感染性角膜炎の報告6)では細菌性が38.0%,真菌性が32.7%と真菌の割合が高く,患者背景は外傷が34.7%ともっとも多く,ついでCLは10.7%であった.このことからも外傷が多いと真菌の割合が高くなると考えられる.また,前回の報告の背景で,外傷眼で糖尿病もあった症例が10例あり,そのうち7例から真菌が検出されていた.一方,今回の報告では外傷眼で糖尿病もあった症例は1例のみであった.このことも真菌が少ない要因の一つと考えた.今回の報告で当科の感染性角膜炎は,過去の前回の報告と比べ起炎菌の内容が変化しサーベイランスに近づいていた.今回患者背景が変化したことにより,起炎菌も変化しわが国における動向に類似したと考えられた.文献1)感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス─分離菌・患者背景・治療の現状─.日眼会誌110:961-971,20062)杉田稔,門田遊,岩田健作ほか:感染性角膜炎の患者背景と起炎菌.臨眼64:225-229,20103)竹澤美貴子,小幡博人,中野佳希ほか:自治医科大学における過去5年間の感染角膜潰瘍の検討.眼紀56:494-497,20054)宮崎幸子,熊谷直樹,門田遊ほか:当院でのアカントアメーバ角膜炎の検討,眼臨紀5:633-638,20125)鳥山浩二,鈴木崇,大橋裕一:アカントアメーバ角膜炎発症者数全国調査.日眼会誌118:28-32,20146)KhorWB,PrajnaVN,GargPetal:AsiaCorneaSocietyInfectiousKeratitisStudy:AprospectivemulticenterstudyofinfectiouskeratitisinAsia.AmJOphthalmol195:167-170,2018222あたらしい眼科Vol.37,No.2,2020(108)