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ブナゾシン塩酸塩点眼液(デタントールR 0.01%点眼液)使用成績調査における安全性および有効性の検討

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1(123)4050910-1810/09/\100/頁/JCLSあたらしい眼科26(3):405412,2009cはじめに現在,緑内障の薬物治療においては,b遮断薬やプロスタグランジン(prostaglandin:PG)関連薬が第一選択薬として用いられているが,単剤では十分な眼圧下降が得られず,多剤併用を要する症例も少なくない.また,長期にわたる治療では副作用などの問題で薬剤の変更を余儀なくされる場合もある.そのため,緑内障治療には複数の作用機序の異なる治療薬から患者の状態に応じて選択できることが望ましい.デタントールR0.01%点眼液(以下,「本剤」と略す)は参天製薬株式会社が開発し,2001年9月に発売した緑内障・高眼圧症治療点眼薬である.本剤は,ブナゾシン塩酸塩を有効成分とし,選択的交感神経a1受容体遮断作用を有する唯〔別刷請求先〕樋口直子:〒533-8651大阪市東淀川区下新庄3-9-19参天製薬株式会社市販後調査グループReprintrequests:NaokoHiguchi,PMSGroup,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,3-9-19Shimoshinjo,Higashiyodogawa-ku,Osaka533-8651,JAPANブナゾシン塩酸塩点眼液(デタントールR0.01%点眼液)使用成績調査における安全性および有効性の検討樋口直子*1宮本悦代*1神田佳子*1岡本紳二*1橋本公子*1國廣英一*1石田智恵美*2柳井知子*2福本充*2*1参天製薬株式会社市販後調査グループ*2参天製薬株式会社安全性管理室SafetyandEcacyofBunazosinHydrochlorideOphthalmicSolution(DetantolR0.01%OphthalmicSolution)inaPost-marketingObservationalStudyNaokoHiguchi1),EtsuyoMiyamoto1),YoshikoKanda1),ShinjiOkamoto1),MasakoHashimoto1),EiichiKunihiro1),ChiemiIshida2),TomokoYanai2)andMitsuruFukumoto2)1)PMSGroup,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)Drug&DeviceSafetyInformationManagementOce,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.ブナゾシン塩酸塩点眼液(デタントールR0.01%点眼液)の市販後の使用実態下における安全性および有効性を検討するため,ブナゾシン塩酸塩点眼液が新たに投与された緑内障および高眼圧症患者を対象とし,中央登録方式による前向きな使用成績調査を実施した.852施設より6,740例を収集した.副作用発現症例率は4.11%(254/6,178)で,おもな副作用は眼充血(結膜充血を含む)107件などの眼障害が233例(3.77%)279件であった.眼圧は,平均観察期間76.5日で,投与開始時19.2±5.8mmHgに対して2.7±5.0mmHgの有意な下降を示した(p<0.001).ブナゾシン塩酸塩点眼液は市販後の使用実態下においてもその安全性および有効性が確認され,緑内障および高眼圧症治療の第二選択薬として有用な薬剤であると考えられた.Toclarifythesafetyandecacyofbunazosinhydrochlorideophthalmicsolution(DetantolR0.01%ophthalmicsolution)inareal-worldsetting,weprospectivelyperformedthispost-marketingobservationalstudyonpatientswithglaucomaorocularhypertensionwhowereadministeredbunazosinhydrochlorideforthersttime.Atotalof6,740caseswerecollectedfrom852medicalinstitutions.Theincidenceofadversedrugreactions(ADR)was4.11%(254/6,178).AstomajorADR,279eyedisorderswerenotedin233patients(3.77%)includedhyperaemia(1.73%).Meanintraocularpressurewassignicantlydecreasedby2.7±5.0mmHgatamean76.5daysafteradminis-tration,ascomparedto19.2±5.8mmHgbeforeadministration(p<0.001).Thisstudyshowsbunazosinhydrochlo-rideophthalmicsolutiontobesafeandeectiveasasecond-linedrugforthetreatmentofglaucomaorocularhypertension,inareal-worldsetting.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(3):405412,2009〕Keywords:ブナゾシン塩酸塩点眼液,使用成績調査,安全性,有効性.bunazosinhydrochlorideophthalmicsolution,post-marketingobservationalstudy,safety,ecacy.———————————————————————-Page2406あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(124)一の緑内障治療薬で,ブドウ膜強膜流出路からの房水流出を促進することで眼圧を下降させる13).本剤は他の緑内障治療薬で効果不十分な場合,または副作用などにより他の緑内障治療薬の使用が継続できない場合に使用される第二選択薬であり,おもに併用あるいは他の緑内障治療薬から切り替えて使用されるが,このような使用状況における開発時のデータは限られている4,5).今回,承認後6年間の再審査期間中に,本剤の市販後の使用実態下における安全性および有効性に関する情報収集を目的とした使用成績調査を実施した.その結果を基に,使用状況による影響も含め,本剤の安全性および有効性につき検討したので報告する.I対象および方法1.調査方法本調査は「医薬品の市販後調査の基準に関する省令(GPMSP)」および「医療用医薬品の使用成績調査等の実施方法に関するガイドライン」に従い,目標症例数を6,000例,調査期間を2001年9月2004年8月で実施した.調査対象は,本調査の契約を締結した医療機関にて本剤が新たに投与された症例とし,中央登録方式にて実施した.すなわち,医療機関との契約締結日以降,本剤を投与開始した症例について投与開始から2週間以内に症例登録し,登録症例について標準4週間の観察期間終了後,調査票に記入することとした.調査項目は,患者背景,緑内障治療歴,本剤の投与状況,併用薬剤,眼圧などの臨床経過,有害事象とした.2.安全性の検討本剤の投与中または投与後に発現した医学的に好ましくないすべての事象を有害事象とし,有害事象のうち本剤との因果関係が否定できないものを副作用とした.収集症例のうち,登録の不備および初診以降来院がなく有害事象の有無を確認できなかった症例を除いた集団を安全性解析対象とし,副作用の種類,重篤度,発現率などを検討した.また,安全性に影響を及ぼす要因を探索するため,要因別の副作用発現率を検討した.さらに,本剤と併用される可能性の高いb遮断点眼薬やPG関連点眼薬では角膜障害の副作用が知られているため68),角膜障害の発現状況について検討した.なお,副作用用語はMedDRA/J(MedicalDictionaryforReg-ulatoryActivities/Japaneseedition:ICH国際医薬用語集日本語版)のVer.8.1を用いて集計した.3.有効性の検討有効性の指標には眼圧変化値(最終観察時眼圧値投与開始時眼圧値)を用いた.安全性解析対象症例のうち,効能・効果外使用および眼圧変化値評価不能症例を除いた集団を有効性解析対象とし,眼圧の推移を検討した.有効性評価対象眼は,本剤投与眼のうち,投与開始時眼圧値の高いほうの眼を,同じ場合には右眼とした.有効性に影響を及ぼす要因を探索するため,要因別,使用状況別の眼圧の推移を検討した.なお,眼圧および眼圧下降度は平均±標準偏差mmHgで示した.4.統計解析手法要因別の副作用発現率の検討にはc2検定を,眼圧の推移には対応のあるt検定を使用し,また,投与開始時眼圧値と眼圧変化値との関連性を検討するため,ピアソン(Pearson)の積率相関係数と回帰係数を求めた.有意水準は両側5%とした.II結果1.症例構成(図1)852施設より6,740例の調査票を収集した.このうち,登録の不備および初診以降来院なしの症例562例を除く6,178例を安全性解析対象症例とした.また,安全性解析対象症例より効能・効果外使用および眼圧変化値評価不能の症例727例を除いた5,451例を有効性解析対象症例とした.2.安全性a.副作用発現状況(表1)安全性解析対象症例6,178例における副作用発現率は4.11%(254/6,178)で,承認時までの臨床試験における副作用発現率3.30%(17/515)と比較して有意差は認められなかった(p=0.435,c2検定).おもな副作用の種類は,眼障害233例(3.77%)279件で,内訳は,眼充血(結膜充血を含む)107件,眼刺激および霧視が各16件,角膜炎15件,角膜びらんおよび眼の異物感が各14件,眼そう痒症および眼瞼炎が各12件,眼痛および点状角膜炎が各10件などであった.重篤な副作用は脳梗塞1件であった.本症例は85歳,女性で,本剤投与開始後1カ月以内に脳梗塞を発症し,本剤投与継続中に軽快した.b.要因別副作用発現状況(表2)検討した要因のうち,性別,年齢別,医薬品副作用歴有無別,緑内障薬物治療歴有無別および本剤1日平均投与回数別安全性解析対象除外症例562例安全性解析対象症例6,178例有効性解析対象除外症例727例有効性解析対象症例5,451例調査票収集症例6,740例図1症例構成———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009407(125)の副作用発現率に有意差が認められた.性別では女性,年齢別では65歳未満の非高齢者,医薬品副作用歴有無別では副作用歴「有」,緑内障薬物治療歴有無別では治療歴「有」で副作用発現率が高かったが,要因ごとの層別における副作用の種類に差は認められなかった.本剤1日平均投与回数別では,1日2回投与の症例が99.2%(6,129/6,178)を占めていたが,1日2回未満の副作用発現率が最も高く,投与回数の多い層で副作用が多いわけではなかった.緑内障治療点眼薬の併用が安全性に及ぼす影響を検討したところ,併用の有無で副作用発現率に有意差は認められず,表1副作用発現状況一覧表承認時迄の状況使用成績調査計安全性解析対象症例数5156,1786,693副作用発現症例数17254271副作用発現件数27308335副作用発現症例率3.30%4.11%4.05%副作用の種類承認時迄の状況使用成績調査計副作用種類別発現症例(件数)率(%)精神障害1(0.02)1(0.01)不眠症1(0.02)1(0.01)神経系障害2(0.39)11(0.18)13(0.19)異臭感頭痛頭皮異常感覚脳梗塞浮動性めまい2(0.39)1(0.02)7(0.11)1(0.02)1(0.02)1(0.02)1(0.01)9(0.13)1(0.01)1(0.01)1(0.01)眼障害16(3.11)233(3.77)249(3.72)アレルギー性眼瞼炎アレルギー性結膜炎ブドウ膜炎角膜びらん角膜炎角膜障害角膜上皮欠損角膜浸潤乾性角結膜炎眼そう痒症眼の異物感眼の違和感眼の乾燥感眼圧迫感眼乾燥眼刺激眼充血(結膜充血を含む)眼精疲労眼痛眼部不快感眼瞼そう痒症眼瞼炎眼瞼下垂眼瞼紅斑眼瞼湿疹眼瞼皮膚炎1(0.19)1(0.19)1(0.19)4(0.78)4(0.73)11(2.14)1(0.19)1(0.02)5(0.08)1(0.02)14(0.23)15(0.24)2(0.03)2(0.03)1(0.02)1(0.02)12(0.19)14(0.23)3(0.05)3(0.05)1(0.02)1(0.02)16(0.26)107(1.78)1(0.02)10(0.16)1(0.02)2(0.03)12(0.19)2(0.03)1(0.02)1(0.02)8(0.13)1(0.01)6(0.09)1(0.01)14(0.21)16(0.24)2(0.03)2(0.03)1(0.01)1(0.01)13(0.19)18(0.27)3(0.04)3(0.04)1(0.01)1(0.01)20(0.30)118(1.76)2(0.03)10(0.15)1(0.01)2(0.03)12(0.18)2(0.03)1(0.01)1(0.01)8(0.12)副作用の種類承認時迄の状況使用成績調査計副作用種類別発現症例(件数)率(%)眼障害(つづき)眼瞼浮腫強膜炎結膜炎結膜出血結膜乳頭状増殖結膜浮腫結膜濾胞点状角膜炎虹彩毛様体炎霧視網膜静脈閉塞流涙増加涙液分泌低下1(0.19)1(0.19)2(0.03)1(0.02)1(0.02)2(0.03)1(0.02)1(0.02)1(0.02)10(0.16)2(0.03)16(0.26)1(0.02)3(0.05)1(0.02)2(0.03)1(0.01)1(0.01)2(0.03)1(0.01)1(0.01)2(0.03)10(0.15)2(0.03)17(0.25)1(0.01)3(0.04)1(0.01)心臓障害4(0.06)4(0.06)動悸4(0.06)4(0.06)血管障害2(0.03)2(0.03)高血圧潮紅1(0.02)1(0.02)1(0.01)1(0.01)呼吸器,胸郭および縦隔障害1(0.02)1(0.01)喘息1(0.02)1(0.01)胃腸障害2(0.03)2(0.03)悪心2(0.03)2(0.03)全身障害および投与局所様態2(0.03)2(0.03)気分不良浮遊感1(0.02)1(0.02)1(0.01)1(0.01)臨床検査6(0.10)6(0.09)眼圧上昇血圧上昇血圧低下4(0.06)1(0.02)1(0.02)4(0.06)1(0.01)1(0.01)———————————————————————-Page4408あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(126)発現率を高めるような種類の併用薬もなかった.また,併用薬剤数別の検討で発現率に有意差が認められたが,薬剤数が多いほど発現率が高いという傾向はなかった.c.角膜障害発現状況(表3)角膜障害の発現率は0.71%(44/6,178)であった.内訳は,角膜炎15件,角膜びらん14件,点状角膜炎10件などで,重篤なものはなかった.緑内障治療点眼薬の併用が角膜障害表2要因別副作用発現状況一覧表要因症例数副作用発現症例数副作用発現症例率(%)検定安全性解析対象症例6,1782544.11性男性女性2,6023,576831713.194.78p=0.002年齢平均:67.7歳65歳未満65歳以上2,0314,147991554.873.74p=0.041使用理由緑内障高眼圧症その他複数疾患5,461634127122724034.163.7904.23p=0.869合併症無有不明・未記載1,5124,5181485619353.704.273.38p=0.375医薬品副作用歴無有不明・未記載4,87791238916367243.347.356.17p<0.001緑内障薬物治療歴無有不明・未記載1,5864,555374620712.904.542.70p=0.006本剤1日平均投与回数平均:2.0回2回未満2回2回超256,129244250016.004.080p=0.007緑内障治療併用点眼薬無有不明・未記載1,9974,181378217214.114.112.70p=1.000薬剤種類プロスタグランジン関連点眼薬無有3,2992,8791231313.734.55p=0.119b遮断点眼薬無有4,0012,177188664.703.03p=0.002ab遮断点眼薬無有5,787391242124.183.07p=0.347交感神経作動点眼薬無有6,1255325134.105.66p=0.824副交感神経作動点眼薬無有6,04613224954.123.79p=1.000炭酸脱水酵素阻害点眼薬無有5,532646237174.282.63p=0.058薬剤数無1剤2剤3剤4剤5剤1,9972,5111,24838536182118467014.114.703.691.820100p<0.001検定手法:c2検定(不明・未記載を除く).———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009409(127)発現に及ぼす影響を検討したところ,併用の有無および併用薬剤数別で発現率に有意差は認められず,発現率を高めるような種類の併用薬もなかった.3.有効性a.眼圧の推移有効性解析対象症例5,451例における眼圧変化値は2.7±5.0mmHgで,投与開始時の19.2±5.8mmHgから最終観察時(平均観察期間76.5日)の16.5±5.0mmHgへ有意な下降を示した(p<0.001).また,投与開始時眼圧値と眼圧変化値には相関が認められ(r2=0.340,p<0.001,y=0.494x+6.802),投与開始時眼圧値が高いほど眼圧変化値は大きかった(図2).b.要因別使用状況別の眼圧の推移(表4)性別,使用理由別,投与開始時眼圧値別,緑内障薬物治療歴有無別でそれぞれ眼圧の推移を検討した.眼圧変化値は,各要因とも投与開始時眼圧値に相応した差は認められるものの,いずれの層も有意な下降を示した.使用状況別として,他の緑内障治療薬から切り替えて本剤を使用した場合,すでに使用されている緑内障治療薬に本剤を追加投与した場合,および少なくとも最終観察時に他の緑内障治療薬を併用していた場合についてそれぞれ検討した.他剤から切り替えて本剤を使用した症例は14.0%(763/5,451)であり,前治療薬の種類は,PG関連点眼薬(切り替え症例の45.5%),b遮断点眼薬(38.8%)が多かった.眼圧変化値は,切り替え例全体で1.0±4.9mmHg,前治療薬の種類別で0.92.8mmHgで,いずれも有意な下降を示した.他剤への追加併用で本剤を使用した症例は44.1%(2,404/5,451)であり,被併用薬剤の種類は,PG関連点眼薬(追加併用症例の67.5%),b遮断点眼薬(53.2%)が多かった.眼圧変化値は,追加併用症例全体で2.7±4.0mmHg,被併用20-15-10-505100510152025303540投与開始時眼圧値(mmHg)眼圧変化値(mmHg)r=-0.583y=-0.494x+6.802r2=0.340p<0.001図2投与開始時眼圧値と眼圧変化値の散布図表3角膜障害発現状況要因症例数角膜障害発現検定症例数症例率(%)安全性解析対象症例6,178440.71併用薬剤数無1剤2剤3剤4剤5剤1,9972,5111,2483853611316132000.650.641.040.5200p=0.748併用薬剤種類プロスタグランジン関連点眼薬無有3,2992,87918260.550.90p=0.130b遮断点眼薬無有4,0012,17731130.770.60p=0.525ab遮断点眼薬無有5,7873914130.710.77p=1.000交感神経作動点眼薬無有6,125534310.701.89p=0.841副交感神経作動点眼薬無有6,0461324400.730p=0.645炭酸脱水酵素阻害点眼薬無有5,5326464040.720.62p=0.960検定手法:c2検定.———————————————————————-Page6410あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(128)薬剤の種類別で2.53.5mmHgと,いずれも有意な下降を示した.他の緑内障治療薬を最終観察時に併用していた症例は67.4%(3,675/5,451)であった.内訳は,1剤併用2,252例(併用症例の61.3%),2剤併用1,095例(29.8%),3剤併用299例(8.1%)で,4剤以上の併用も29例あった.投与開始時眼圧値は,併用症例が19.8±6.0mmHg,非併用症例(本剤単剤治療症例)が18.0±5.3mmHgと併用症例のほうが高く,また,併用薬剤数が多いほど高かった.投与開始時眼圧値に相応した眼圧変化値の差は認められたものの,併用薬の有無あるいは併用薬剤数にかかわらず眼圧は有意な下降を示した.III考按現在,臨床に供されているおもな緑内障治療薬の種類には,房水産生抑制作用を有するb遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬(carbonicanhydraseinhibitor:CAI),房水流出促進作用を有するPG関連薬,房水産生抑制と房水流出促進作用を併せもつab遮断薬があり,a1遮断薬である本剤は房水流出促進系の薬剤に分類される.このうち,緑内障治療の第一選択薬はb遮断薬,PG関連薬およびab遮断薬であり,CAIおよびa1遮断薬は第二選択薬に位置付けられる.第二選択薬の多くは緑内障治療の2剤目,3剤目として使われるため,他剤併用時の安全性および有効性の検討が必要だが,表4要因別使用状況別の眼圧推移要因症例数眼圧値眼圧変化値(mmHg)検定投与開始時(mmHg)最終観察時(mmHg)有効性解析対象症例5,45119.2±5.816.5±5.02.7±5.0p<0.001性男性女性2,3063,14520.0±6.418.7±5.417.0±5.316.2±4.82.9±5.52.5±4.5p<0.001p<0.001使用理由緑内障高眼圧症4,84660518.8±5.922.6±4.016.2±5.118.8±3.72.6±5.03.8±4.7p<0.001p<0.001投与開始時眼圧値15mmHg未満15mmHg以上20mmHg未満20mmHg以上25mmHg未満25mmHg以上1,1001,8861,73872712.3±1.717.0±1.421.7±1.429.4±6.212.0±2.715.4±3.018.6±3.821.1±7.20.3±2.41.6±2.93.1±3.78.2±8.8p<0.001p<0.001p<0.001p<0.001緑内障薬物治療歴無有不明・未記載1,3904,0342720.0±7.018.9±5.319.2±9.115.8±4.516.8±5.115.0±4.34.2±6.02.2±4.44.2±7.3p<0.001p<0.001p=0.006他剤からの切替無有4,68876319.5±5.917.5±5.316.5±4.916.4±5.53.0±4.91.0±4.9p<0.001p<0.001前治療薬種類(重複集計)プロスタグランジン関連点眼薬b遮断点眼薬ab遮断点眼薬炭酸脱水酵素阻害点眼薬3472961354517.2±5.417.7±5.117.5±5.419.6±6.316.3±4.916.4±5.716.1±4.916.8±6.40.9±4.91.3±5.11.4±4.22.8±8.1p<0.001p<0.001p<0.001p=0.027他剤への追加併用無有3,0472,40419.1±6.319.3±5.216.4±5.116.6±4.92.7±5.62.7±4.0p<0.001p<0.001被併用薬剤種類(重複集計)プロスタグランジン関連点眼薬b遮断点眼薬ab遮断点眼薬炭酸脱水酵素阻害点眼薬1,6221,27823132219.3±5.119.8±5.219.0±4.821.8±6.816.6±4.817.1±5.116.5±4.618.3±6.22.7±4.12.7±4.22.5±3.53.5±5.2p<0.001p<0.001p<0.001p<0.001緑内障治療併用点眼薬無有1,7763,67518.0±5.319.8±6.015.8±4.716.9±5.12.2±4.32.9±5.2p<0.001p<0.001薬剤数1剤2剤3剤4剤5剤2,2521,09529928119.0±5.320.6±6.622.4±7.024.5±5.147.016.2±4.517.8±5.718.3±5.919.4±7.120.02.8±4.62.9±5.94.1±6.25.1±8.727.0p<0.001p<0.001p<0.001p=0.004平均±標準偏差.検定手法:対応のあるt検定(投与開始時との比較).———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009411開発時に把握できる事項は限られる.したがって,市販後の使用実態下において,種々の使用状況における安全性および有効性を検討し,適正使用情報として提供することが重要と考える.本調査では,使用状況別に十分検討できるよう,目標症例数6,000例にて実施し,その結果,全国852施設より6,740例の調査票を収集した.安全性は6,178例において検討し,副作用は254例(4.11%)308件に認められた.1990年以降に上市された他の緑内障治療点眼薬,ベタキソロール塩酸塩,ニプラジロール,イソプロピルウノプロストンおよびラタノプロストの市販後の調査における副作用発現率はそれぞれ10.17%(ベトプティックR添付文書),8.07%(ハイパジールRコーワ添付文書),13.70%(レスキュラRインタビューフォーム),25.5%(キサラタンR添付文書)であり,調査時期や調査方法の違いを考慮する必要はあるものの,本剤の副作用発現率はこれらの薬剤と比べ高いものではなかった.おもな副作用の種類は眼障害で,233例(3.77%)に認められた.このうち,最も高頻度であったのは眼充血(結膜充血を含む)で,発現率は1.73%であったが,重篤なものはなかった.眼充血は,本剤のa1遮断作用により,眼局所の末梢血管が拡張して起こるものと考えられた.全身性の副作用に関しては,b遮断点眼薬で全身性の副作用が問題とされていること9),また,本剤の有効成分ブナゾシン塩酸塩の内服薬は高血圧治療薬として使用され,起立性低血圧,動悸などの副作用が知られていることから,循環器系副作用の発現状況を検討した.本調査における循環器系副作用は,動悸4件,高血圧,潮紅,血圧上昇および血圧低下が各1件であり,いずれも非重篤であった.安全性に影響を及ぼす要因の検討で,性別,年齢別,医薬品副作用歴有無別などで副作用発現率に有意差が認められたが,各層別の副作用の種類に差はなく,安全性に影響を与える患者集団は見当たらなかった.また,他の緑内障治療薬の併用についても,本剤の安全性に影響を及ぼすような薬剤はなく,併用薬剤数と副作用発現率との間にも一定の傾向は認められなかった.b遮断点眼薬やPG関連点眼薬では角膜障害の副作用が知られており68),これらの併用時には発現頻度が高まるとの報告もあることから6),角膜障害の発現状況を検討した.本調査において,角膜炎,角膜びらんなどの角膜障害の発現率は0.71%であった.前述の4種類の緑内障治療薬では,市販後の調査において,ベタキソロール塩酸塩で角膜びらん,角膜炎などの角膜障害が1.50%,ニプラジロールで表層角膜炎が1.17%,イソプロピルウノプロストンで角膜びらん,角膜炎などの角膜症状が5.49%,およびラタノプロストで点状表層角膜炎が4.8%,角膜びらんが2.5%認められている.副作用用語の集計方法,調査方法などに違いはあるものの,本剤の角膜障害発現率はこれらの薬剤と比べ高いものではなかった.また,緑内障治療薬の併用の有無,薬剤数および種類と角膜障害発現との関連を検討したが,併用による影響は認められなかった.有効性は5,451例において検討した.本剤投与後に眼圧は平均2.7mmHg下降し,投与開始時眼圧値が高いほど眼圧の下降は大きかった.有効性に影響を及ぼす要因として,性別,使用理由別などの要因別に眼圧の推移を検討したところ,いずれの層も有意な眼圧の下降を示した.各層別で眼圧下降度にやや差が認められたものの,いずれも投与開始時眼圧値に相応したものと推察された.使用状況別では,他の緑内障治療薬から切り替えて本剤を使用した症例は14.0%で,眼圧は切り替え後に平均1.0mmHg下降した.また,他の緑内障治療薬への追加併用で本剤を使用した症例は44.1%で,眼圧は本剤追加後に平均2.7mmHg下降した.なお,被併用薬剤の種類により眼圧の下降は2.53.5mmHgとやや差が認められた.併用効果が最も小さかったものはab遮断薬で,投与開始時眼圧値は19.0mmHgであった.一方,最も大きかったものはCAIで,投与開始時眼圧値は21.8mmHgであった.これより,眼圧変化値の差は投与開始時眼圧値に相応したもので,本剤の追加併用効果は被併用薬剤の種類には関連しないと考えられた.以上の調査結果より,デタントールR0.01%点眼液は,市販後の使用実態下においても安全性および有効性が確認され,他の緑内障治療薬と併用した場合にも,その種類にかかわらず安全性に問題点を認めず,明らかな眼圧下降を示したことから,緑内障・高眼圧症治療の第二選択薬として有用な薬剤であると考えられた.謝辞:稿を終えるにあたり,本調査にご協力賜り,貴重なデータをご提供いただきました多数の先生方に厚く御礼申し上げます.文献1)NishimuraK,KuwayamaY,MatsugiTetal:SelectivesuppressionbyBunazosinofalpha-adrenergicagonistevokedelevationofintraocularpressureinsympathecto-mizedrabbiteyes.InvestOphthalmolVisSci34:1761-1766,19932)景山正明,西村和夫,松木雄ほか:家兎における塩酸ブナゾシン点眼液の眼圧下降作用機序.眼紀46:1066-1070,19953)西村和夫,白沢栄一,木下満紀子ほか:a1遮断点眼剤Bunazosinのウサギおよびネコにおける眼圧下降作用.日眼会誌95:746-751,19914)土坂寿行,金恵媛,石綿丈嗣ほか:塩酸ブナゾシン(DE-(129)———————————————————————-Page8412あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009070)点眼液,b遮断剤からの切り替え試験.眼臨88:1562-1568,19945)東郁郎,北澤克明,塚原重雄ほか:原発開放隅角緑内障および高眼圧症に対する塩酸ブナゾシン点眼液とマレイン酸チモロール点眼液の併用効果の検討─塩酸ジピベフリン点眼液との比較─.あたらしい眼科19:261-266,20026)高橋奈美子,籏福みどり,西村朋子ほか:抗緑内障点眼薬の単剤あるいは2剤併用の長期投与による角膜障害の出現頻度.臨眼53:1199-1203,19997)橘信彦,木村泰朗,石井るみ子ほか:イソプロピルウノプロストン(レスキュラ)点眼液によると思われる角膜上皮障害.あたらしい眼科13:1097-1101,19968)田聖花,中島正之,植木麻理ほか:ラタノプロストによると考えられる角膜上皮障害.臨眼55:1995-1999,20019)福地健郎:緑内障の治療─緑内障の薬物治療,緑内障治療薬・交感神経阻害剤b遮断薬.眼科44:1458-1463,2002(130)***