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緑内障実臨床におけるアイベータとアイラミドの有用性・ 安全性・認容性について

2023年7月31日 月曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(7):939.945,2023c緑内障実臨床におけるアイベータとアイラミドの有用性・安全性・認容性について新田耕治*1堂本美雪*1佐々木允*1杉山和久*2*1福井県済生会病院眼科*2金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学教室CTheSafety,E.cacy,andAcceptabilityofAIBETAandAILAMIDECombinationOphthalmicSuspensionforGlaucomainReal-WorldClinicalPracticeKojiNitta1),MiyukiDomoto1),MakotoSasaki1)andKazuhisaSugiyama2)1)DepartmentofOphthalmology,Fukui-kenSaiseikaiHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KanazawaUniversityGraduateSchoolofMedicalScienceC目的:アイベータ(ブリモニジン酒石酸塩・チモロールマレイン酸塩配合点眼薬)およびアイラミド(ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド配合点眼薬)の実臨床における有用性・安全性・認容性を比較検討すること.対象および方法:2020年C1月.2022年C5月に福井県済生会病院でアイベータあるいはアイラミドを開始した患者を対象とし,6カ月後までの眼圧,眼圧下降率と有害事象の頻度,アンケート調査による点眼のさし心地などについて検討した.結果:アイベータ群(96例C96眼)は,プロスタノイドCFP受容体作動薬(以下,FP)に追加した症例がもっとも多く,一方,アイラミド群(91例C91眼)はCFPあるいはプロスタノイドCEP2受容体選択性作動薬にアイラミドを追加した症例がもっとも多かった.使用後眼圧値は,両群とも開始前よりすべての時点で有意に下降した.眼圧値の両群比較では,6カ月後でアイベータ群では有意に低値であった.眼圧下降率は,アイベータ群ではC6カ月後C19.4%,アイラミド群は6カ月後C14.5%であった.追加成分別の眼圧下降率は,2成分追加ではアイベータ群C20.1%,アイラミド群C17.5%であった.点眼のさし心地,点眼後の刺激感,結膜充血,点眼後の見え方への影響などに関しては,アイベータ群のほうが認容性は良好であった.結論:実臨床における有用性は両者で同等であり,安全性・認容性の点ではアイベータ群のほうが良好であった.CPurpose:ToCevaluateCtheCsafety,Ce.cacy,CandCacceptabilityCofCAIBETACandCAILAMIDECCombinationCOph-thalmicSuspension(Senju)eyedropsforthetreatmentofglaucoma.Subjectsandmethods:ThisstudyinvolvedglaucomapatientsinwhomtreatmentwithAIBETAorAILAMIDEwasinitiatedbetweenJanuary2020andMay2022.CInCallCpatients,CweCexaminedCintraocularpressure(IOP)C,CfrequencyCofCadverseCevents,CandCcomfortCofCusingCtheeyedropsbyquestionnaire.Results:IntheAIBETAgroup(96eyeof96cases)C,themajorityofpatientswereadditionallyprescribedprostanoidFPreceptoragonists(FP)C.IntheAILAMIDEgroup(91eyesof91cases),themajorityCofCpatientsCwereCadditionallyCprescribedCFPCorCaCselectiveCprostanoidCEP2CreceptorCagonist.CAtCallCtimeCpointsCafterCtheCstartCofCtherapy,CIOPCsigni.cantlyCdecreasedCinCtheCbothCgroups.CAtC6CmonthsCafterCtheCstartCofCtherapy,IOPwassigni.cantlylowerintheAIBETAgroupthanAILAMIDEgroup.At6monthsafterthestartoftherapy,theIOPreductionratewas19.4%intheAIBETAgroupand14.5%intheAILAMIDEgroup.TheIOPreductionrateinpatientswhoreceivedtwoadditionalcomponentwas20.1%intheAIBETAgroupand17.5%intheCAILAMIDECgroup.CPatientCacceptabilityCwasCbetterCinCtheCAIBETACgroupCthanCinCtheCAILAMIDECgroupCinCtermsofcomfortandirritationoftheeyedrops.Conclusions:Thee.cacyinclinicalpracticewassimilarforbothgroups,yetthesafetyandacceptabilitywerebetterintheAIBETAgroup.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(7):939.945,C2023〕Keywords:アイベータ,アイラミド,処方パターン,眼圧下降効果,認容性.Aibeta,Ailamide,prescriptionpat-terns,intraocularpressureloweringe.ect,acceptability.C〔別刷請求先〕新田耕治:〒918-8503福井市和田中町舟橋C7-1福井県済生会病院眼科Reprintrequests:KojiNitta,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,Fukui-kenSaiseikaiHospital,7-1WadanakamachiFunabashi,Fukui-city,Fukui918-8503,JAPANCアイベータ配合点眼液(以下,アイベータ)がC2019年C12月に,0.1%ブリモニジン酒石酸塩とC0.1%ブリンゾラミドを配合したアイラミド配合点眼(以下,アイラミド)がC2020年C6月に上市された.緑内障患者を長期間管理する場合,眼圧下降効果の面で治療を強化する場合もあれば,点眼による有害事象のために治療方針を見直すこともある.また,濾過手術などの観血的手術を施行し一時的に眼圧下降効果を認めても,患者によってはその後眼圧が上昇し治療強化のために点眼再開を考慮しなければならないこともある.今回筆者らは,アイベータおよびアイラミドが実臨床においてどのような処方パターンで使用され,どの程度の眼圧下降効果が得られるかなど薬剤の有用性について評価した.また,アイベータおよびアイラミドの有害事象の頻度など,安全性と点眼の使用感などの認容性についてもあわせて比較検討した.CI対象および方法本研究は,診療録から調査した後ろ向き研究である.ヘルシンキ宣言に従い,福井県済生会病院倫理委員会での承認を得て実施された.対象は,2020年C1月.2022年C5月に福井県済生会病院を受診した緑内障患者のうち,主治医が治療強化を必要と判断しアイベータあるいはアイラミドが開始された患者を対象とした.本検討に際して対象とした選択基準は,つぎのとおりである.1)治療強化時の眼圧がC21CmmHg以下の患者.2)直近1年以内にレーザー治療を含む緑内障手術の既往のない患者.3)緑内障治療薬による有害事象(prostaglandin-associ-atedperiorbitopathy:PAPなどによる)が原因で点眼を継続できなくなった切り替え患者.除外基準は,つぎのとおりである.1)治療強化時の眼圧がC22CmmHg以上の患者.2)角膜や網膜疾患を有する患者(表1).評価項目は,アイベータあるいはアイラミドを開始してC1カ月後,3カ月後,6カ月後の眼圧値,眼圧下降率とした.また,アイベータあるいはアイラミドを開始後にさらに治療を強化した場合や有害事象によりアイベータあるいはアイラミドを継続できなかった場合を死亡と定義し,両群の生存率や中止した原因についても検討した.なお,中止症例に関しては,点眼を継続できた期間の眼圧データに関しては解析対象とした.また,両群の有害事象の頻度も比較検討した.認容性に関しては,患者にアンケート調査を施行した(調査症例の患者に対して別途行った)(表2).質問内容は,CQ1.点眼の点し心地はどうですか?CQ2.点眼後にしみるなどの刺激感がありますか?CQ3.点眼後に充血しますか?CQ4.点眼後にかゆみや腫れがありますか?CQ5.点眼後に霞むなど見にくくなることがありますか?のC5問とし,アイベータあるいはアイラミドを使用している患者に尋ねた.SD法(5段階での評価尺度:1点が一番悪い結果)により各質問に該当する点数を患者自身が〇で囲み,両群の点数を評価した.経時変化の統計解析には,点眼開始前の値を基準としたDunnett検定を行った.両群の比較にはunpaired-t検定を行った.生存解析にはCKaplan-Meier法による生命表解析を行った.統計解析には,SPSSを使用し,統計的有意水準は5%とした.データの表示は平均値±標準偏差とした.CII結果解析対象は,アイベータ群C96例C96眼(男C50例,女C46例),アイラミド群C91例C91眼(男C43例,女C48例)である.臨床的背景は表3のとおりである.アイラミド群はアイベータ群と比較して,緑内障は進行している症例群で緑内障点眼成分数も有意に多かった.開始前の眼圧に両群で有意差は認めなかった.今回,アイベータあるいはアイラミドを使用された処方パターンは表4,5のとおりである.アイベータ群では,プロスタノイドCFP受容体作動薬(以下,FP)に追加(45眼)がもっとも多く,ついで,以前の緑内障レーザー治療あるいは手術を機に点眼をすべて中止し術後の経過に応じて点眼治療を再開する際にCPAPによる顔貌の変化を気にするためにアイベータを開始したパターンが18眼あった.一方,アイラミド群はCFPあるいはプロスタノイドCFP2受容体選択的作動薬(以下,EP2)に追加(25眼)がもっとも多く,ついでCFPもしくはCEP2とCb遮断薬を併用あるいはCFP/Cb配合薬を使用した状態にアイラミド追加(23眼)が多かった.使用後眼圧値は,アイベータ群ではC1カ月後C12.0CmmHg,3カ月後C11.6CmmHg,6カ月後C11.6CmmHgで開始前よりすべての時点で有意に下降した(p<0.0001).アイラミド群でもC1カ月後C12.7mmHg,3カ月後C12.4mmHg,6カ月後12.5CmmHgで開始前よりすべての時点で有意に下降した(p<0.0001).また,眼圧値の両群比較では,6カ月後でアイベータ群では有意に低値であった(p=0.0450)(図1).眼圧下降率は,アイベータ群ではC1カ月後C19.8%,3カ月後C20.8%,6カ月後C19.4%で,アイラミド群はC1カ月後C14.8%,3カ月後C15.6%,6カ月後C14.5%で,3カ月後の眼圧下降率に有意差を認めた(p=0.0400).追加成分別の眼圧下降率は,1成分追加ではアイベータ群C14.7%,アイラミド群C9.7%であった.2成分追加ではアイベータ群C20.1%,アイラミド群17.5%であった.両群には有意差を認めなかったが,1成分表1選択基準と除外基準【選択基準】1)治療強化時の眼圧がC21CmmHg以下の患者2)直近C1年以内にレーザー治療を含む緑内障手術の既往のない患者3)緑内障治療薬による有害事象が原因で点眼を継続できなくなった患者(PAP:Prostaglandin-associatedperiorbitopathyなどによる)【除外基準】1)治療強化時の眼圧がC22CmmHg以上の患者2)角膜や網膜疾患を有する患者表2認容性に関するアンケート項目Q1.点眼の点し心地はどうですか?CQ2.点眼後にしみるなどの刺激感がありますか?CQ3.点眼後に充血しますか?CQ4.点眼後にかゆみや腫れがありますか?CQ5.点眼後に霞むなど見にくくなることがありますか?表3臨床的背景アイベータ群(n=96)アイラミド群(n=91)p値開始後経過観察期間C11.9±9.7カ月(3.C31カ月)C13.6±4.3カ月(3.C25カ月)C0.1861開始前眼圧C14.8±3.2CmmHg(8.C21mmHg)C15.1±3.2CmmHg(9.C21mmHg)C0.5909年齢C70.5±10.4歳(C27.C90歳)C66.6±13.2歳(C39.C91歳)C0.0098HFA30-2MD値C.7.9±8.7CdB(C2.09.C.35.0dB)C.12.07±9.2CdB(C1.63.C.32.49CdB)C0.0015開始直前の薬剤成分数C0.90±1.1C1.93±1.0<C0.0001病型CNTG65眼52眼C0.0158CPOAG18眼22眼CPE4眼12眼CSOAG3眼5眼CPACG6眼0眼NTG:正常眼圧緑内障,POAG:原発開放隅角緑内障,PE:偽落屑,SOAG:続発開放隅角緑内障,PACG:原発閉塞隅角緑内障.追加でもC2成分追加でもアイベータ群のほうが平均眼圧下降率は良好であった.アイベータあるいはアイラミドを開始してから,さらに治療を強化した場合や有害事象によりアイベータあるいはアイラミドを継続できなかった場合を死亡と定義し,両群の生存率も検討した結果,12カ月生存率は,アイベータ群C78.9%,アイラミド群C70.3%であった(図2).治療強化したのは,アイベータ群C10眼(10.4%),アイラミド群C5眼(5.5%),有害事象により休薬したのは,アイベータ群C9眼(9.4%),アイラミド群C26眼(28.6%)であった.休薬した理由は,霧視や羞明などの視力障害が理由だったのは,アイベータ群C2眼(2.1%),アイラミド群C4眼(4.4%),アレルギー性結膜炎が理由だったのは,アイベータ群C4眼(4.2%),アイラミド群C17眼(18.7%),眼瞼炎が理由だったのは,アイベータ群C2眼(2.1%),アイラミド群C5眼(5.5%)であった(表6).点眼による有害事象の頻度は表7のとおりである.霧視や羞明などの視力障害を認めたのは,アイベータ群C2眼(2.1%),アイラミド群C9眼(9.9%)であり,アイラミド群で有意に高率であった(p=0.0233).アレルギー性結膜炎は,アイベータ群C5眼(5.2%),アイラミド群C22眼(24.2%)であり,アイラミド群で有意に高率であった(p=0.0002).眼瞼炎を認めたのは,アイベータ群C4眼(4.2%),アイラミド群6眼(6.6%)で両群に差はなかった.それぞれの点眼の認容性を評価するために点眼後の使用感に関するアンケートを施行した.協力を得られたのはアイベータ群C57例(平均年齢C73.8歳),アイラミド群C66例(平均年齢C67.9歳)であった.点眼のさし心地は,アイベータ群C4.05±0.79点,アイラミド群C3.53C±1.26点で,アイベータ群は有意にさし心地良好であった(p=0.011).しみるなど点眼後の刺激感に関しては,アイベータ群C4.32C±0.86点,アイラミド群C3.86C±1.30点とアイベータ群が有意に刺激感を感じなかった(p=0.033).結膜充血に関しては,アイベ表4アイベータの処方パターン変更前変更後眼数変更理由成分数に変化なし7眼CEP2+bアイベータC2アドヒアランスを重視(2C→C1本)CCAI/bアイベータC2アドヒアランスを重視(使用感)CFP/bアイベータC1PAPの改善目的CFP+CAI/bFP+アイベータC1アドヒアランスを重視(使用感)CEP2+CAI/bEP2+アイベータC1アドヒアランスを重視(使用感)bアイベータC7治療強化CFP+bFP+アイベータC4治療強化C1成分追加FP+a2CEP2+アイベータC3治療強化C18眼Ca2アイベータC2治療強化CFPアイベータC1PAPの改善目的イオンチャネルアイベータC1治療強化FPCFP+アイベータC45治療強化2成分追加71眼CTLE後C※アイベータC12治療強化処方なし※アイベータC8PAPなどの副作用を危惧iStent後C※アイベータC4治療強化SLT後C※アイベータC2治療強化※以前の緑内障レーザー治療あるいは手術を機に点眼をすべて中止し,術後の経過に応じて点眼治療を再開する際に,プロスタグランジンによる副作用を危惧した症例,または緑内障進行の状況によりアイベータを開始した症例.FP:プロスタノイドCFP受容体作動薬,EP2:プロスタノイドCEP2受容体選択性作動薬,Cb:b遮断薬,CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,a2:a2受容体作動薬,PAP:プロスタグランジン関連眼窩周囲症.表5アイラミドの処方パターン変更前変更後眼数変更理由成分数に変化なし4眼CFP+bアイラミドC2角膜上皮障害・BAC濃度を考慮4ボトルを整理CFP/b+アイラミドC1アドヒアランスを重視(4C→C2本)3ボトルを整理CFP/b+アイラミドC1アドヒアランスを重視(3C→C2本)a2アイラミドC13治療強化CCAIアイラミドC9治療強化C1成分追加EP2アイラミドC4治療強化C32眼CROCKアイラミドC3治療強化イオンチャネルアイラミドC2治療強化CFP+アイベータCFP/b+アイラミドC1治療強化FP/bFP/b+アイラミドC19治療強化CFPCFP+アイラミドC17治療強化C2成分追加55眼CEP2CEP2+アイラミドC8治療強化CFP+bFP+b+アイラミドC4治療強化CFP+ROCKCFP+ROCK+アイラミドC3治療強化CFP/b+a1+ROCKCFP/b+a1+ROCK+アイラミドC2治療強化CFP+b+ROCKCFP+b+ROCK+アイラミドC2治療強化FP:プロスタノイドCFP受容体作動薬,EP2:プロスタノイドCEP2受容体選択的作動薬,Cb:b遮断薬,CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,a1:a1受容体遮断薬,Ca2:a2受容体作動薬,ROCK:Rhoキナーゼ阻害薬,BAC:塩化ベンザルコニウム.C942あたらしい眼科Vol.40,No.7,2023(94)15.1アイベータアイラミド10012.712.412.515*80**眼圧(mmHg)1014.8****12.011.611.6累積生存率(%)6040開始前13620観察期間(月)*:p<0.050図1両群の眼圧推移アイベータ群もアイラミド群も開始前よりすべての地点で有意に036912151821242730眼圧が下降した.眼圧値の両群比較では,C6カ月後でアイベータ観察期間(月)群では有意に低値であった.C図2両群の生命表解析点眼を開始してからさらに治療を強化した場合や有害事象により点眼を継続できなかった場合を死亡と定義し両群の生存率も検討した結果,12カ月生存率は,アイベータ群C78.9%,アイラミド群C70.3%であった.表6生命表解析における死亡理由の内訳アイベータ(n=96眼)アイラミド(n=91眼)p値治療強化(内服・点眼・レーザー・手術)10眼(C11.5%)5眼(5C.5%)C0.2155副作用により点眼が継続できず休薬9眼(9C.4%)26眼(C28.6%)C0.0008休薬理由視力障害(霧視や羞明)2眼(2C.1%)4眼(4C.4%)C0.3698アレルギー性結膜炎4眼(4C.2%)17眼(C18.7%)C0.0017眼瞼炎2眼(2C.1%)5眼(5C.5%)C0.2193味覚障害1眼(1C.0%)C0.3290表7点眼による有害事象の頻度アイベータ(n=96眼)アイラミド(n=91眼)p値視力障害(霧視や羞明)2眼(2C.1%)9眼(9C.9%)C0.0233アレルギー性結膜炎5眼(5C.2%)22眼(C24.2%)C0.0002眼瞼炎4眼(4C.2%)6眼(6C.6%)C0.4610刺激感(しみるやチクチク)5眼(5C.2%)4眼(4C.4%)C0.7952流涙1眼(1C.0%)1眼(1C.1%)C0.9697味覚障害1眼(1C.0%)C0.3290後頭部痛1眼(1C.1%)C0.3031Cータ群C4.61C±1.17点,アイラミド群C4.02C±1.38点とアイベータ群が有意に結膜充血を感じなかった(p=0.005).掻痒感や眼瞼腫脹感に関しては,アイベータ群C4.43C±1.39点,アイラミド群C4.03C±1.12点と両群に差を認めなかった.点眼後の見え方への影響については,アイベータ群C4.30C±1.05点,アイラミド群C3.20C±1.34点とアイラミド群が有意に不良であった(p<0.001).5問のアンケートを通じて,総じてアイベータ群のほうがアイラミド群より認容性は良好であった(図3).CIII考察当院におけるアイベータおよびアイラミドの実臨床における使用実態を後ろ向きに検討した.眼圧値および眼圧下降率については,アイベータ群のほうがC6カ月後の眼圧値が有意に低値で,3カ月後の眼圧下降率が有意に高率であった.原発開放隅角緑内障または高眼圧症に対する第一選択薬の眼圧下降効果の報告では,チモロールは平均C3.7CmmHgの眼圧下降が期待できるとし,一方,ブリンゾラミドは平均2.42CmmHgの眼圧下降が期待できると報告されている1).このことより,チモロールとブリンゾラミドの眼圧下降作用の違いが,アイラミドと比較してアイベータのほうの眼圧下降効果が強かった原因であった可能性がある.また,アイラミド群ではC2成分追加症例がC60.4%(55/91)に対し,アイベータ群ではC2成分追加症例がC74.0%(71/96)と有意差はなさし心地刺激感結膜充血掻痒感や眼瞼腫脹視力障害(霧視など)■アイベータ■アイラミド図3両点眼の認容性に関する患者でのアンケート調査結果5問のアンケートを通じて,総じてアイベータ群のほうがアイラミド群より認容性は良好であった.いものの高率(p=0.0611)であった影響も考えられる.アイベータおよびアイラミドの処方変更前と変更後の状況をみてみると,アイベータ群では,FPから追加されるパターンと緑内障レーザー治療あるいは手術を施行してC1年以上経過して治療強化が要する際に開始されるパターンが多かった.一方,アイラミド群は,FPもしくはCEP2に追加されるパターンと,FPもしくはCEP2とCb遮断薬の併用あるいはCFP/b遮断薬配合剤を使用中に追加されるパターンが多かった.両群に共通するCFPもしくはCEP2に追加されるパターンが多かった理由は,緑内障点眼治療の第一選択としては,FPもしくはCEP2による点眼治療が推奨されており,FPもしくはCEP2点眼による治療を施行しているにもかかわらず眼圧が目標眼圧に達成されていない,あるいは,緑内障の進行を認め,2成分を追加することがその時点での最良の治療を判断した症例が多かったことに起因すると考えられた.安全性においては,各群の有害事象の頻度は,アイベータ群18眼/96眼(18.8%),アイラミド群C43眼/91眼(47.3%)であった.いずれも軽微で重篤な有害事象はなかった.なかでも,ブリモニジン特有のアレルギー性結膜炎の発現率については,アイベータ群C5眼(5.2%),アイラミド群C22眼(24.2%)であり,アイベータ群のほうがアレルギー結膜炎の発現頻度が低率であった.海外の報告では,ブリモニジンC0.2%とブリモニジンC0.2%/チモロールC0.5%配合剤のCrandom-izedtrial(12カ月)において,アレルギー性結膜炎の発現頻度が配合剤のほうが低率であったとの結果が報告されている2).また,ブリモニジンC0.2%とブリモニジンC0.2%/チモロールC0.5%配合剤における眼アレルギーについて研究した報告では,ブリモニジンC0.2%でC17.6%,ブリモニジンC0.2%/チモロールC0.5%配合剤でC8.8%であり,配合剤のほうが発現頻度は低率であったことが示されている3).これについては,Cb遮断薬の作用によると推察されている.1)チモロールがブリモニジンによるアレルギー反応を抑制する可能性がある4).2)チモロールのわずかな血管収縮作用が炎症の兆候や症状を軽減する可能性がある5.8).3)アドレナリン作動薬は細胞間隙を広げ,アレルゲンになりうる薬物の上皮下組織への到達を増加させるが,チモロールはこれを抑制しアレルギーを減少させる可能性がある9,10).以上のことから,ブリモニジンによるアレルギー反応が,チモロールとの配合効果により頻度が減少し,アイベータ群とアイラミド群でアレルギー性結膜炎の頻度に差が生じた可能性がある.両群の開始後経過観察期間に差はなかったが,それぞれの点眼を開始する前にすでにブリモニジンを点眼していた症例が,アイベータ群でC5眼に対し,アイラミド群でC14眼とアイラミド群で有意に高率(p=0.0283)であったことも影響した可能性がある.認容性に関して検討したところ,アイベータ群のほうが良好であった.アイベータのCpHはC6.9.7.3,アイラミドのpHはC6.3.6.8であり,涙液のCpH7.4に近いほど不快感や刺激感が生じにくいと考え,pHの違いがさし心地の結果に影響したと思われた.また,アイラミドでは一過性の霧視などの視力障害が出現する頻度が高率であった.これは,アイベータは澄明な水性点眼11),アイラミドは白色の懸濁性点眼12)と性状の違いが影響した可能性がある.本研究の問題点は短期間の後ろ向き観察研究であることである.長期的には両点眼の有用性・安全性・認容性に関する評価が変わる可能性がある.また,アイラミド群は緑内障が進行した症例が多いため,両群の臨床的背景が異なることも本研究の限界である.なるべく臨床背景を揃えるために両点眼開始直前の眼圧をC21CmmHg以下の症例に限定して解析した.直近C1年以内にレーザー治療を含む緑内障手術の既往がある症例は除外したが,1年以上前に緑内障手術を施行されている症例は含まれているため,今回の結果に手術の影響が含まれている可能性がある.実臨床において濾過手術を施行したにもかかわらず手術の効果が減衰する場合もある.その場合は点眼を再開することになるため,今回はなるべくreal-worldの治療成績を評価するために手術症例をすべて除外するのではなく,直近C1年以内に緑内障手術の既往がある症例を除外して解析した.CIV結論本研究において,アイベータ群とアイラミド群の有効性・安全性・認容性を比較した結果,有用性は両群で同等で,安全性・認容性はいずれもアイベータ群のほうが良好であった.緑内障患者は長期にわたり点眼を継続する必要があるため,眼圧下降効果のみならず安全性や認容性も考慮に入れて薬剤を選択する必要がある.緑内障治療にはさまざまな選択肢があり,FP/Cb遮断薬配合剤に追加加療する場合やCb遮断薬が使用できない患者には,アイラミドが処方パターンとしては有用であると思われた.いずれにしても両ブリモニジン配合剤は,患者個々の状況に応じた緑内障治療の選択肢となりうる薬剤と考えられた.文献1)LiCT,CLindsleyCK,CRouseCBCetal:ComparativeCe.e-ctivenessof.rst-linemedicationsforprimaryopen-angleglaucoma:Asystematicreviewandnetworkmeta-analy-sis.OphthalmologyC123:129-140,C20162)SherwoodMB,CravenER,ChouCetal:Twice-daily0.2%brimonidine0.5%CtimololC.xed-combinationCtherapyCvsCmonotherapywithtimololorbrimonidineinpatientswithglaucomaCorCocularhypertension:aC12-monthCrandom-izedtrial.ArchOphthalmolC124:1230-1238,C20063)MotolkoMA:ComparisonCofCallergyCratesCinCglaucomaCpatientsCreceivingCbrimonidine0.2%CmonotherapyCversusC.xed-combinationCbrimonidine0.2%-timolol0.5%Cthera-py.CurrMedResOpinC24:2663-2667,C20084)OsborneSA,MontgomeryDM,MorrisDetal:Alphaganallergymayincreasethepropensityformultipleeye-dropallergy.Eye(Lond)C19:129-137,C20055)VanCBuskirkCEM,CBaconCDR,CFahrenbachWH:CiliaryCvasoconstrictionaftertopicaladrenergicdrugs.AmJOph-thalmolC109:511-517,C19906)RosenfeldCE,CBarequetCD,CRabinaCGCetal:E.ectCofCbrimo-nidineCtartrateConCbasophilCactivationCinCglaucomaCpatients.CIntJOphthalmolC13:509-512,C20207)LeeCAJ,CMcCluskeyP:FixedCcombinationCofCtopicalCbri-monidine0.2%andtimolol0.5%forglaucomaanduncon-trolledintraocularpressure.ClinOphthalmolC2:545-555,C20088)YehCPH,CChengCYC,CShieCSSCetal:BrimonidineCrelatedCacutefollicularconjunctivitis:Onsettimeandclinicalpre-sentations,CaClong-termCfollowup.Medicine(Baltimore)C100:e26724,C20219)ButlerP,MannschreckM,LinSetal:ClinicalexperiencewithCtheClongtermCuseCof1%Capraclonidine.CIncidenceCofCallergicreactions.ArchOphthalmolC113:293-296,C199510)AlvaradoJA:ReducedCocularCallergyCwithC.xed-combination0.2%CbrimonidineC.0.5%Ctimolol.CArchCOph-thalmolC125:717,C200711)アイベータ配合点眼液添付文書,千寿製薬株式会社,2020年C12月改訂(第C2版)12)アイラミド配合懸濁性点眼液添付文書,千寿製薬株式会社,2021年9月改訂(第2版)***

ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の処方パターンと 短期効果

2022年2月28日 月曜日

《原著》あたらしい眼科39(2):226.229,2022cブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の処方パターンと短期効果井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CExaminationofthePrescriptionsandShort-TermE.cacyofBrinzolamide/BrimonidineFixedCombinationEyeDropsforGlaucomaKenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BBFC)処方症例の特徴と短期効果を後向きに調査する.対象および方法:2020年C6.9月にCBBFCが新規に処方されたC138例の患者背景と処方パターンを調査した.変更症例では変更前後の眼圧を比較した.結果:原発開放隅角緑内障C85例,正常眼圧緑内障C35例,その他C18例だった.眼圧はC15.3±5.0CmmHg,使用薬剤数はC3.6±1.3剤だった.BBFC変更C121例,追加C4例,変更追加C13例だった.変更薬剤はブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬C62例,ブリンゾラミド点眼薬C29例などだった.眼圧はブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更症例では変更前C14.2±3.0CmmHgと変更後C14.9±4.4CmmHgで同等だった.中止例はC14例(10.1%)で眼圧上昇C5例,掻痒感C3例などだった.結論:BBFC処方は同成分同士,含有薬剤からの変更が多かった.眼圧は同成分同士の変更では変化なく,安全性も良好だった.CPurpose:ToCinvestigateCpatientCcharacteristicsCandCshort-termCe.cacyCofCbrinzolamide/brimonidineC.xedcombination(BBFC)eyeCdropsCforCglaucoma.CSubjectsandmethods:ThisCretrospectiveCstudyCinvolvedC138patientsnewlyprescribedwithBBFCinwhomintraocularpressure(IOP)beforeandafterswitchingwereinvesti-gatedandcompared.Results:Inthe138patients,thediagnosiswasprimaryopen-angleglaucomain85,normal-tensionglaucomain35,andotherin18.ThemeanIOPvaluewas15.3±5.0CmmHg,andthemeannumberofmedi-cationsCusedCwasC3.6±1.3.CPrescriptionCpatternsCwereswitching(121patients),adding(4patients),CandCadding/switching(13patients).CInCtheCswitchingCgroup,C62CpatientsCswitchedCfromCbrinzolamide+brimonidineCandC29CpatientsCswitchedCfromCbrinzolamideCalone.CInCtheCpatientsCwhoCswitchedCfromCbrinzolamide+brimonidine,CnoCsigni.cantCdi.erenceCofCmeanCIOPCwasCobservedCbetweenCpreCandpostCswitching(i.e.,C14.2±3.0CandC14.9±4.4CmmHg,Crespectively).CPostCadministration,C14patients(10.1%)wereCdiscontinued.CConclusions:BBFCCwasCusedasswitchingfromallorpartofthesameingredients.Therewasnosigni.cantdi.erenceinIOPpostswitch-ingbetweenthesameingredients,andthesafetywassatisfactory.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(2):226.229,C2022〕Keywords:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,処方パターン,眼圧,安全性,変更.brimonidine/brinzol-amide.xedcombination,prescriptionspattern,intraocularpressure,safety,switching.Cはじめに低下が問題となる2).そこでアドヒアランス向上のために配緑内障点眼薬治療においてはアドヒアランス維持,向上が合点眼薬が開発された.わが国ではC2010年にラタノプロス重要である.アドヒアランス低下は緑内障性視野障害の進行ト/チモロール配合点眼薬が使用可能になり,2019年C12月に関与している1).また,多剤併用治療ではアドヒアランスまでにC7種類が上市された.このC7種類の配合点眼薬の特徴〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC226(94)は,すべての配合点眼薬にCb遮断点眼薬が配合されていることである.Cb遮断点眼薬の眼圧下降効果は強力である3).しかし,循環器系や呼吸器系の全身性副作用が出現することがあり,コントロール不十分な心不全,洞性徐脈,房室ブロック(II・III度),心原性ショックのある患者,重篤な慢性閉塞性肺疾患のある患者では使用禁忌である.そのためCb遮断点眼薬を配合しない配合点眼薬の開発が望まれていた.2020年C6月にブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬を配合したブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(アイラミド)が使用可能となり,日本で実施された治験において良好な眼圧下降効果と高い安全性が報告された4,5).しかし,臨床現場でどのような患者にブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が使用されているかを調査した報告は過去にない.そこで今回,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に投与された患者について,その処方パターン,短期的な眼圧下降効果と安全性を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2020年C6.9月に井上眼科病院に通院中でブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(1日C2回朝夜点眼)が新規に投与された緑内障あるいは高眼圧症患者C138例C138眼(男性70例,女性C68例)を対象とした.平均年齢はC68.2C±10.5歳(平均C±標準偏差)(33.87歳)であった.緑内障病型は原発開放隅角緑内障C85例,正常眼圧緑内障C35例,続発緑内障14例(ぶどう膜炎C7例,落屑緑内障C6例,血管新生緑内障C1例),原発閉塞隅角緑内障C1例であった.投与前眼圧は投与時の眼圧,投与後眼圧は投与後初めての来院時,2.3C±0.9カ月後,1.4カ月後に測定した.投与前眼圧はC15.3C±5.0mmHg,8.43CmmHgであった.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に投与された症例を,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が追加投与された症例(追加群),前投薬を中止してブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が投与された症例(変更群),複数の薬が変更,追加となった症例(変更追加群)に分けた.変更群では変更した点眼薬を調査した.変更群ではブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬,ブリモニジン点眼薬,ブリンゾラミド点眼薬から変更した症例についてはおのおの投与前後の眼圧を比較した.投与後の副作用と中止症例を調査した.配合点眼薬は薬剤数C2剤として解析した.診療録から後ろ向きに調査を行った.片眼該当症例は罹患眼,両眼該当症例は投与前眼圧が高いほうの眼を対象とした.変更前後の眼圧の比較には対応のあるCt検定を用いた.有意水準はCp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.図1変更症例の変更前薬剤II結果全症例のうち追加群はC4例(2.9%),変更群はC121例(87.7%),変更追加群はC13例(9.4%)であった.追加群は正常眼圧緑内障C2例,原発開放隅角緑内障C1例,続発緑内障(血管新生緑内障)1例であった.追加前眼圧はC19.5C±9.7CmmHg(14.34CmmHg),追加後眼圧はC13.3C±4.7CmmHg(9.20CmmHg)で,眼圧は追加前後で同等であった(p=0.100).使用薬剤はなしがC3例,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬がC1例であった.副作用出現症例と中止症例はなかった.変更追加群は原発開放隅角緑内障C9例,正常眼圧緑内障C2例,続発緑内障(ぶどう膜炎)2例であった.変更追加前眼圧はC20.5C±9.6CmmHg(10.43CmmHg),変更追加後眼圧はC15.0C±3.7CmmHg(10.20CmmHg)で,眼圧は変更追加前後で同等であった(p=0.051).使用薬剤数はC3.0C±1.8剤であった.変更追加後の副作用はC1例(眼刺激)で出現した.中止症例は眼圧下降不十分C1例,眼刺激C1例,眼圧が下降したため追加C1カ月以内に中止C1例であった.変更群の変更した点眼薬の内訳はブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬C62例(51.2%)(以下,A群),ブリンゾラミド点眼薬C29例(24.0%)(以下,B群),ブリモニジン点眼薬C14例(11.6%)(以下,C群),その他C16例(13.2%)(以下,その他群)であった(図1).各群の変更前の平均薬剤数は,A群C4.3C±0.8剤,B群C3.1C±0.8剤,C群C2.8C±0.9剤,その他群C3.5C±1.1剤であった.平均使用点眼薬(ボトル)数は変更前CA群C3.7C±0.7本,B群C2.5C±0.7本,C群C2.4C±0.8本,変更後CA群C2.7C±0.7本,B群C2.5C±0.7本,C群C2.4C±0.8本であった.1日の平均点眼回数は,変更前CA群C6.2C±1.2回,B群C3.8C±1.2回,C群C4.0C±1.4回,変更後CA群C4.2C±0.7回,B群C3.8C±1.2回,C群C4.0C±1.4回であった.薬剤変更理由は,A群はアドヒアランス向上,B群,C群は眼圧下降不十分であった.その他群の変更理由は,視野障害進行C8例,眼圧下降不十分C4例,アドヒアランス向上C3例,副作用発現A群(ブリモニジン点眼薬+B群(ブリンゾラミド点眼薬からの変更)30ブリンゾラミド点眼薬からの変更)**p<0.00013025252015105201510500C群(ブリモニジン点眼薬からの変更)NS30変更前変更後変更前変更後眼圧(mmHg)16.12514.420151050変更前変更後図2変更症例の眼圧変化(*p<0.05,対応のあるCt検定)(不整脈)1例であった.眼圧はCA群では変更前C14.2C±3.0mmHg,変更後C14.9C±4.4CmmHgで,変更前後で同等であった(p=0.119)(図2).B群では変更前C15.0C±3.6CmmHg,変更後C12.6C±2.8CmmHgで,変更後に有意に下降した(p<0.0001).C群では変更前C16.1±5.6CmmHg,変更後C14.4C±4.3CmmHgで,変更前後で同等であった(p=0.150).投与後に副作用はC11例(8.0%)で出現した.その内訳は変更追加群では眼刺激C1例,変更群ではCA群で掻痒感C2例,視力低下C1例,結膜充血C1例,掻痒感+結膜充血C1例,B群で掻痒感C2例,掻痒感+眼瞼発赤C1例,めまいC1例,C群で眼刺激C1例であった.中止症例はC14例(10.1%)であった.その内訳は変更追加群で眼圧下降C1例,眼刺激C1例,眼圧下降不十分C1例,変更群ではCA群で眼圧上昇C3例,視力低下1例,掻痒感C1例,B群で掻痒感C1例,掻痒感+眼瞼発赤C1例,めまいC1例,C群で眼刺激C1例,眼圧上昇C1例,その他群で眼圧上昇C1例であった.CIII考按ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に投与された症例を検討したが,さまざまな処方パターンがみられた.ブリモニジン/チモロール配合点眼薬の処方パターンの報告6)では,変更群がC93.7%を占めていた.変更群の変更した点眼薬の内訳は,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬+ブリモニジン点眼薬からブリモニジン/チモロール配合点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬への変更C53.4%,Cb遮断点眼薬18.3%,ブリモニジン点眼薬C8.3%などであった.ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターンの報告7)では,変更群がC85.1%を占めていた.変更群の変更した点眼薬の内訳は,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬C43.4%,Cb遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬C34.9%,Cb遮断点眼薬16.9%,炭酸脱水酵素阻害点眼薬C4.2%などであった.同成分同士の変更がブリモニジン/チモロール配合点眼薬C53.3%,ブリンゾラミド点眼薬/チモロール配合点眼薬C78.3%と多く,今回(51.2%)もほぼ同様の結果であった.今回のブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更(A群)では眼圧は変更前後で同等だった.海外で行われたブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬とブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬併用の比較試験において眼圧下降は同等であった8).ただし海外のブリモニジン点眼薬の濃度はC0.2%で,日本のC0.1%製剤とは異なる.A群では平均使用薬剤数はC1剤,1日の平均点眼回数はC2.0回減少したので患者の点眼の負担は減少したと考えられる.一方,今回のブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更(B群)では眼圧は変更後に有意に下降し,眼圧下降幅はC1.7C±4.2mmHg,眼圧下降率はC7.6C±20.2%であった.日本で行われた治験では,ブリンゾラミド点眼薬からの変更では眼圧は変更C4週間後に有意に下降し,ピーク時の眼圧下降幅はC3.7C±2.1CmmHg,眼圧下降率はC18.1±10.3%であった4).今回のブリモニジン点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更(C群)では眼圧は変更前後で同等だった.日本で行われた治験ではブリモニジン点眼薬からの変更では眼圧は変更C4週間後に有意に下降し,ピーク時の眼圧下降幅はC2.9C±2.0CmmHg,眼圧下降率はC14.8C±10.3%であった5).今回の調査では日本で行われた治験5)より眼圧下降は不良であったが,変更前の使用薬剤数がC2.8C±0.9剤と多剤併用であったためと考えられる.また日本で行われた治験においても眼圧下降幅はブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更した薬剤としてブリンゾラミド点眼薬症例(3.7C±2.1CmmHg)のほうがブリモニジン点眼薬症例(2.9C±2.0CmmHg)よりも大きかった.つまりブリモニジン点眼薬のほうがブリンゾラミド点眼薬よりも眼圧下降効果が強い可能性がある.メタアナリシスにおいても眼圧下降のピーク値はブリモニジン点眼薬(6.1CmmHg)はブリンゾラミド点眼薬(4.4mmHg)より強力であった9).今回変更後に副作用はC11例(8.0%)で出現した.その内訳は掻痒感C4例,眼刺激C2例,視力低下C1例,結膜充血C1例,めまいC1例,掻痒感+結膜充血C1例,掻痒感+眼瞼発赤1例であった.日本で行われたブリンゾラミド点眼薬からの変更の治験では副作用はC8.8%に出現した4).その内訳は霧眼C8.2%,点状角膜炎C2.7%,結膜充血C0.5%,眼脂C0.5%,眼の異物感C0.5%,眼刺激C0.5%,眼瞼炎C0.5%,眼乾燥C0.5%,硝子体浮遊物C0.5%などであった.日本で行われたブリモニジン点眼薬からの変更の治験では副作用はC12.9%に出現した5).その内訳は霧視C6.7%,眼刺激C2.8%,結膜充血C1.1%,眼の異常感C1.1%,結膜炎C1.1%,アレルギー性結膜炎0.6%,結膜浮腫C0.6%,眼脂C0.6%,点状角膜炎C0.6%などであった.副作用に関して今回調査と治験4,5)の結果を比較すると今回調査では掻痒感が多かったが,それ以外はほぼ同等だった.中止症例は今回はC10.1%であったが,治験では有害事象による中止症例はなかった4,5).今回,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に処方された患者を調査した.ブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更がもっとも多く,ブリンゾラミド点眼薬,ブリモニジン点眼薬からの変更が続いた.ブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬からの変更とブリモニジン点眼薬からの変更では投与後に眼圧に変化はなく,ブリンゾラミド点眼薬からの変更では投与後に眼圧は有意に下降した.副作用はC8.0%に出現したが,重篤ではなかった.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬は短期的には良好な眼圧下降効果と高い安全性を示した.今後は長期的な経過観察による検討が必要である.文献1)ChenPP:BlindnessCinCpatientsCwithCtreatedCopen-angleCglaucoma.OphthalmologyC110:726-733,C20032)DjafariCF,CLeskCMR,CHayasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)LiCT,CLindsleyCK,CRouseCBCetal:ComparativeCe.ective-nessCofC.rst-lineCmedicationsCforCprimaryCopen-angleglaucoma:Asystematicreviewandnetworkmeta-analy-sis.OphthalmologyC123:129-140,C20164)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科C37:1299-1308,C20205)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第CIII相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験.あたらしい眼科C37:1289-1298,C20206)小森涼子,井上賢治,國松志保ほか:ブリモニジン/チモロール配合点眼薬の処方パターンと短期的効果.臨眼C75:C521-526,C20217)井上賢治,藤本隆志,石田恭子ほか:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターン.あたらしい眼科C32:C1218-1222,C20158)Gandol.CSA,CLimCJ,CSanseauCACCetal:RandomizedCtrialCofbrinzolamide/brimonidineversusbrinzolamideplusbri-monidineforopen-angleglaucomaorocularhypertension.AdvTherC31:1213-1227,C20149)VanderValkR,WebersCA,SchoutenJSetal:Intraocu-larpressure-loweringe.ectsofallcommonlyusedglauco-madrugs:aCmeta-analysisCofCrandomizedCclinicalCtrials.COphthalmologyC112:1177-1185,C2005***