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眼科看護師におけるメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の鼻腔保菌

2012年3月31日 土曜日

《第48回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科29(3):403.406,2012c眼科看護師におけるメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の鼻腔保菌田中寛*1星最智*2卜部公章*1*1町田病院*2藤枝市立総合病院眼科NasalCarriageofMethicillin-ResistantCoagulase-NegativeStaphylococciinOphthalmicNursesHiroshiTanaka1),SaichiHoshi2)andKimiakiUrabe1)1)MachidaHospital,2)DepartmentofOphthalmology,FujiedaMunicipalGeneralHospital眼科看護師における鼻腔内メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MR-CNS)の保菌率と保菌リスク因子を調査した.看護師30名の培養陽性率は96.7%であり,内訳はメチシリン感受性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌17株,MR-CNS9株,コネバクテリウム属6株,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌2株,a溶血性レンサ球菌1株であった.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は検出されなかった.家庭内乳幼児がいない場合はMR-CNSの鼻腔保菌率が13.0%であるのに対し,家庭内乳幼児がいる場合は85.7%と有意に保菌率が上昇した(p<0.001).医療従事者において,家庭内乳幼児の存在はMR-CNSの保菌リスクとなりうる.Themethicillin-resistantcoagulase-negativestaphylococci(MR-CNS)nasalcarriagerateandriskfactorsinophthalmicnurseswereinvestigated.Ofthe30culturestaken,29(96.7%)hadpositivebacterialgrowth:methicillin-susceptiblecoagulase-negativestaphylococci,17(48.6%);MR-CNS,9(25.7%);Corynebacteriumspecies,6(17.1%);methicillin-susceptibleStaphylococcusaureus,2(5.7%);alpha-haemolyticstreptococci,1(2.9%).Methicillin-resistantStaphylococcusaureuswasnotisolated.TheMR-CNSnasalcarriagerateinnurseswhohadchildren(85.7%)wassignificantlyhigherthaninthosewhodidnot(13.0%)(p<0.001).MedicalworkerswhohavechildrenaremorelikelytobeMR-CNScarriers.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(3):403.406,2012〕Keywords:メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,鼻腔保菌,眼科,看護師,小児.methicillin-resistantcoagulase-negativestaphylococci,nasalcarriage,ophthalmology,nurse,child.はじめに内眼手術後の細菌性眼内炎は,視力予後に影響しうる重大な合併症である.白内障術後眼内炎の起炎菌では,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negativestaphylococci:CNS),黄色ブドウ球菌,腸球菌やレンサ球菌属をはじめとしたグラム陽性球菌が85%1)を占めることが報告されている.これらグラム陽性球菌のなかでもCNSの検出率は46.3.70%1,2)と最も高い.さらに,メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(methicillin-resistantcoagulase-negativestaphylococci:MR-CNS)はフルオロキノロン系を含む多くの抗菌薬に耐性であること3,4),症例によっては重症化するものもあること5)から,臨床上重視すべき微生物の一つである.健常結膜.におけるMR-CNSの検出率は11.8.24.8%と報告によって異なる4,6,7).このことはMR-CNSの保菌を促進させるような背景因子が存在することを示唆している.筆者らが行ったMR-CNSの結膜.保菌リスクの調査では,ステロイド内服,他科手術歴と眼科通院歴が保菌率を増加させるリスク因子であり,リスクがない場合の保菌率は7.8%であるが,リスクが増えるにつれて保菌率が33.3%にまで上昇することを報告している8).さらに,白内障術前患者のMR-CNS保菌率は結膜.より鼻腔のほうが有意に高く,〔別刷請求先〕田中寛:〒780-0935高知市旭町1丁目104番地町田病院Reprintrequests:HiroshiTanaka,M.D.,MachidaHospital,1-104Asahimachi,Kochi-shi,Kochi780-0935,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(115)403 MR-CNSの鼻腔保菌者では非保菌者に比べて結膜.のa溶血性レンサ球菌,1a溶血性レンサ球菌,1コリネバクテリウム属,6MSSA,2MS-CNS,17MR-CNS,9MR-CNS保菌率が有意に高くなることも報告した9).MR-CNSの感染経路と鼻腔保菌の重要性を考慮すると,医療従事者におけるMR-CNS鼻腔保菌率の上昇により,術前患者の鼻腔や結膜.への感染リスクが高まる可能性が考えられる.したがって,医療従事者のMR-CNS保菌率を把握することは,感染対策活動を評価するうえでの指標の一つになると考えられる.今回鼻腔保菌調査を行った理由は,前年に術後眼内炎を経験したことがきっかけとなっており,原因調査の一つとして職員のMRSAを含めた薬剤耐性菌の保菌率を把握する必要があると考えたからである.そのなかで,眼科医療従事者におけるMR-CNS保菌のリスク因子につい図1眼科看護師における鼻腔検出菌の構成て若干の知見が得られたので報告する.I対象および方法対象は眼科専門病院である町田病院(以下,当院)に勤務する看護師30名である.平均年齢は33.7±6.0歳,性別は数字は株数を示す.MS-CNS:メチシリン感受性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,MR-CNS:メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,MSSA:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌.全員女性である.看護配置の内訳は外来10名,手術室7名,10085.7%13.0%p<0.001病棟13名である.3カ月以内にステロイド内服および抗菌80薬点眼・内服の既往はなかった.当院には倫理委員会が設置保菌率(%)60されていないため,感染対策委員会が主体となって職員への説明と同意を得たうえで2010年5月に培養検査を実施した.検体採取方法は,滅菌生理食塩水で湿らせた培養用滅菌スワ4020ブを用いて右鼻前庭を擦過し,輸送培地に接種した後にデルタバイオメディカル社に輸送して菌種同定を依頼した.培養はヒツジ血液/チョコレート分画培地,BTB乳糖加寒天培地0乳幼児ありn=7乳幼児なしn=23図2家庭内乳幼児の有無とMR.CNS鼻腔保菌率nは人数を示す.(bromothymolbluelactateagar)を用いて好気培養を35℃で3日間行った.ブドウ球菌属のメチシリン耐性の有無はClinicalandLaboratoryStandardsInstituteの基準(M100-S19)に従ってセフォキシチンのディスク法で判定した.培養結果をもとに,年齢と家庭内乳幼児の存在が鼻腔MR-CNS保菌率に影響するかどうかを検討した.統計学的解析はMann-WhitneyのU検定またはFisherの直接確率検定を用い,有意水準は5%とした.II結果鼻腔の培養陽性率は96.7%であり,35株の細菌が検出された.内訳はMS-CNSが17株,MR-CNSが9株,コリネバクテリウム属が6株,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌が2株,a溶血性レンサ球菌が1株であった.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistantStaphylococcusaureus:MRSA)は検出されなかった(図1).鼻腔MR-CNS陽性者は9名であり,平均年齢は34.1±8.0歳であった.鼻腔MR-CNS陰性者は21名であり,平均年齢は36.9±4.9歳であった.鼻腔MR-CNS陽性群と陰性群で年齢を比較したところ有意差を認めなかった(p=0.227,404あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012Mann-WhitneyのU検定).家庭内乳幼児が存在するのは7名であった.MR-CNSの鼻腔保菌は,家庭内乳幼児が存在しない群では23名中3名(13.0%)であるのに対し,家庭内乳幼児が存在する群では7名中6名(85.7%)であり有意に保菌率が高かった(p<0.001,Fisherの直接確率検定)(図2).III考按細菌性眼内炎は白内障術後の合併症として頻度は高くないものの,重篤な合併症の一つである.わが国で行われた白内障術後眼内炎の起炎菌調査では,CNSが全体の46.3%と最も多かった1).さらに忍足らは,白内障術後眼内炎ではMR-CNSが主要な起炎菌であると報告している10).CNSによる術後眼内炎は一般的に予後が良好といわれているが,メチシリン耐性菌はメチシリン感受性菌に比べてキノロン耐性化率がはるかに高いこと3,4)などから,MR-CNSの場合は治療に難渋する可能性も考えられる.(116) 鼻腔と結膜.のMR-CNS保菌の関連については筆者らが過去に報告しており,白内障術前患者では鼻腔MR-CNS保菌率は結膜.よりも有意に高く,鼻腔MR-CNS保菌者では結膜.のMR-CNS保菌率も有意に高かった9).したがって,眼科感染予防の観点からは鼻腔のMR-CNS保菌も無視できない因子と考えられる.当院看護師全体のMR-CNS鼻腔保菌率は30.0%であった.医療従事者におけるMR-CNSの鼻腔保菌率に関する報告は少なく,わが国では仲宗根らが看護師50名中13名(26.0%)において鼻腔にMR-CNSを保菌していたと報告している11).筆者らの結果は仲宗根らの報告に近似しており,当院看護師におけるMR-CNS保菌率は特に高いわけではないと判断した.MR-CNSには注意すべき結膜.の保菌リスクが存在する.筆者らが行った調査ではステロイド内服,他科での手術歴や眼科通院歴を重要な保菌リスク因子としてあげている.すなわち,宿主の易感染性と医療関連感染が問題となる.今回の検討では対象者全員が易感染性となる全身疾患やステロイド内服などのリスク因子を保有しておらず,さらに年齢についても有意差を認めなかった.また,興味深かったことは,看護師のMR-CNS鼻腔保菌と家庭内乳幼児との関連である.家庭内乳幼児がいない看護師のMR-CNS保菌率は13.0%であったのに対し,家庭内乳幼児がいる看護師では85.7%と有意に高い保菌率であった.これまでにTengkuらは1,285人の集団保育児の鼻腔培養を行い,390人(30.3%)からMR-CNSが検出されたと報告している12).さらに,小森らによる非医療従事者を対象とした鼻腔内ブドウ球菌保菌調査では,就学前の小児のメチシリン耐性ブドウ球菌の保菌率は70.0%と高く,家族内のメチシリン耐性菌伝播の要因の一つに小児の存在をあげている13).一般的に乳幼児は成人とは異なり,鼻咽頭にインフルエンザ菌や肺炎球菌などの病原菌を高率に保菌していることが知られている14).これは宿主の免疫能が未熟であるために病原菌をうまく排除できないためと考えられる.MR-CNSに関してもインフルエンザ菌や肺炎球菌などと同様,いったん乳幼児に感染すると容易に排除できないため,結果として保菌率が高くなる可能性が考えられる.一般的にMR-CNSなどの薬剤耐性菌は医療関連感染で重要な細菌であるため,医療従事者間,医療従事者と患者間という医療施設内での感染経路に注目しがちである.しかしながら,医療従事者から家庭内乳幼児に薬剤耐性菌が伝播し,さらに集団保育児の中で菌が蔓延すると,薬剤耐性菌のリザーバーが形成されて,今度は小児から家族内成人への感染リスクが高まることにも留意すべきである.今回の調査では,看護師からMRSAは検出されなかった.被検者数を考慮してもMRSA保菌率は3.3%未満であり,5.1.11.3%程度とする過去の報告15.17)よりも低い値である(117)ため,当院の感染対策は良好に機能していると考えられた.しかしながら,看護師の配置別に検討すると,手術場にMR-CNS保菌者が集中的に配置されていた.薬剤耐性菌を保菌している人の割合,すなわち保菌圧(colonizationpressure)が高まると,非保菌者の感染リスクが高まることが報告18,19)されており,MR-CNSでも同様のことが考えられる.医療施設内での感染リスクを減らすためには看護配置に注意する必要があると考えられた.結論としては,今回の調査ではMRSAの鼻腔保菌者は認めなかった.家庭内乳幼児の存在はMR-CNS鼻腔保菌のリスクとなるため,保菌圧を下げるために看護配置を工夫するなどの配慮が必要であると考えられた.文献1)薄井紀夫,宇野敏彦,大木孝太郎ほか:白内障に関連する術後眼内炎全国症例調査.眼科手術19:73-79,20062)EndophthalmitisVitrectomyStudyGroup:ResultsoftheEndophthalmitisVitrectomyStudy.Arandomizedtrialofimmediatevitrectomyandofintravenousantibioticsforthetreatmentofpostoperativebacterialendophthalmitis.ArchOphthalmol113:1479-1496,19953)HoriY,NakazawaT,MaedaNetal:Susceptibilitycomparisonsofnormalpreoperativeconjunctivalbacteriatofluoroquinolones.JCataractRefractSurg35:475-479,20094)星最智:正常結膜.から分離されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌におけるフルオロキノロン耐性の多様性.あたらしい眼科27:512.517,20105)OrmerodLD,BeckerLE,CruiseRJetal:Endophthalmitiscausedbythecoagulase-negativestaphylococci.2.Factorsinfluencingpresentationaftercataractsurgery.Ophthalmology100:724-729,19936)大..秀行,福田昌彦,大鳥利文ほか:高齢者1,000眼の結膜.内常在菌.あたらしい眼科15:105-108,19987)森永将弘,須藤史子,屋宜友子ほか:白内障手術術前患者の結膜.細菌叢と薬剤感受性の検討.眼科手術22:385388,20098)星最智,卜部公章:白内障術前患者における結膜.常在細菌の保菌リスク因子.あたらしい眼科28:1313-1319,20119)星最智,大塚斎史,山本恭三ほか:結膜.と鼻前庭の常在細菌の比較.あたらしい眼科28:1613-1617,201110)忍足和浩,平形明人,岡田アナベルあやめほか:白内障術後感染性眼内炎の硝子体手術成績.日眼会誌107:590596,200311)仲宗根洋子,名渡山智子:看護師の手掌および鼻腔における薬剤耐性菌の検出頻度.沖縄県立看護大学紀要9:39-43,200812)JamaluddinTZ,Kuwahara-AraiK,HisataKetal:Extremegeneticdiversityofmethicillin-resistantStaphylococcusepidermidisdisseminatedamonghealthyJapanesechildren.JClinMicrobio46:3778-3783,200813)小森由美子:市中におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の鼻あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012405 腔内保菌者に関する調査.環境汚染誌20:164-170,200514)KonnoM,BabaS,MikawaHetal:Studyofupperrespiratorytractbacterialflora:firstreport.Variationsinupperrespiratorytractbacterialflorainpatientswithacuteupperrespiratorytractinfectionandhealthysubjectsandvariationsbysubjectage.JInfectChemother12:83-96,200615)酒井道子,阿波順子,那須郁子ほか:一施設全職員を対象としたMRSA検出部位と職種間の相違についてDNA解析を用いた検討.ICUとCCU29:905-909,200516)垣花シゲ,植村恵美子,岩永正明:病棟看護婦の鼻腔内細菌叢について.環境感染13:234-237,199817)北澤耕司,外園千恵,稗田牧ほか:眼科医療従事者におけるMRSA保菌の検討.あたらしい眼科28:689-692,201118)MerrerJ,SantoliF,ApperedeVecchiCetal:“Colonizationpressure”andriskofacquisitionofmethicillin-resistantStaphylococcusaureusinamedicalintensivecareunit.InfectControlHospEpidemiol21:718-723,200019)BontenMJ,SlaughterS,AmbergenAWetal:Theroleof“colonizationpressure”inthespreadofvancomycinresistantenterococci:animportantinfectioncontrolvariable.ArchInternMed158:1127-1132,1998***406あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(118)

小児頭蓋内疾患患者に対する動的視野測定の可能性

2009年6月30日 火曜日

———————————————————————-Page1848あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009(00)848(124)0910-1810/09/\100/頁/JCLSあたらしい眼科26(6):848852,2009cはじめに視野測定は動的視野測定,静的視野測定ともに自覚的な検査法であり,被検者の理解力や集中力などの影響をうける.さらに小児においては検査への協力やコミュニケーションが得られにくいため,1回の検査で信頼性のある視野検査結果を得ることは困難であることが予想される.しかし一方で,頭蓋内疾患により視覚領や視路に障害が生じている場合には,視野測定は原疾患の病態把握や治療前後での評価に重要な情報をもたらしてくれる.そこで今回,筆者らは視野障害が疑われる小児の頭蓋内疾患患者に対して動的視野測定がどの程度可能であるかを検討してみたので報告する.I対象および方法対象は2007年4月から2008年3月の間に奈良県立医科大学附属病院小児科発達外来より視野障害が疑われるため当科に視機能評価の依頼があった10歳までの小児頭蓋内疾患患者で,視力検査が施行できた症例とした.動的視野検査はすべて一人の視能訓練士によって行われた.それぞれの患者〔別刷請求先〕湯川英一:〒634-8521橿原市四条町840奈良県立医科大学眼科学教室Reprintrequests:EiichiYukawa,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NaraMedicalUniversity,840Shijo-cho,Kashihara-shi,Nara634-8521,JAPAN小児頭蓋内疾患患者に対する動的視野測定の可能性池田仁英湯川英一宮崎大介松浦豊明原嘉昭奈良県立医科大学眼科学教室UtilityofKineticPerimetryinChildrenwithIntracranialDiseasesHitoeIkeda,EiichiYukawa,DaisukeMiyazaki,ToyoakiMatsuuraandYoshiakiHaraDepartmentofOphthalmology,NaraMedicalUniversity視野障害が疑われる小児の頭蓋内疾患患者に対して動的視野測定がどの程度可能であるかを検討してみた.対象は2007年4月から2008年3月の間に奈良県立医科大学附属病院小児科発達外来より視野障害が疑われるため,眼科に精査依頼があった10歳までの頭蓋内疾患患者10例で,年齢4歳2カ月9歳10カ月,平均年齢6歳10カ月である.動的視野検査は1回の検査で信頼のある結果が得られない場合には固視状態や検査に対する理解力などを考慮し,3回目までは少なくとも1カ月以内ごとに再検査を行った.その後は症例に合わせて6カ月以内で適宜再検査とした.その結果,10例中9例で信頼のある視野測定結果が得られ,検査回数は14回,平均2.3回であった.小児頭蓋内疾患患者でも検査をくり返すことで短期間のうちに信頼のある視野検査結果が得られた.今後,われわれは小児科医や脳神経外科医との協力下に視野測定に最大限の努力を払うべきである.Weevaluatedtheutilityofkineticperimetryinchildrenwithintracranialdiseasesandsuspectedvisualelddefects.Subjectscomprised10childrenwithintracranialdiseaseswhorangedinagefrom4years,2monthsto9years,10months(meanage:6years,10months).TheyhadbeenreferredfromtheDepartmentofPediatrics,NaraMedicalUniversity,betweenApril2007andMarch2008,forsuspectedvisualdysfunction.Ifkineticperime-tryresultswerenotreliableontherstexamination,weconductedperimetryagainwithinatleast1month,using3consecutiveexaminations,consideringeyexationandthechildren’sunderstandingoftheexaminations.Wethenconductedre-examinationuntilreliabledatawereobtainedwithin6months.For9of10children,reliableresultswereobtainedforkineticperimetry.Theexaminationswereperformedfrom1to4times,themeanbeing2.3times.Wewereabletoobtainreliableperimetryforonlyashortperiod,thoughweexaminedrepeatedly.Weshouldthereforeputourbesteortsintoobtainingreliablekineticperimetrydatainchildren,inclosecollaborationwithpediatriciansandbrainsurgeons.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(6):848852,2009〕Keywords:動的視野検査,小児,頭蓋内疾患,動的視野計.kineticperimetry,children,intracranialdisease,kineticperimeter.———————————————————————-Page2あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009849(125)で視野検査ごとにシートを作成し,検査時間,固視状態(固視の可否,持続性),検査に対する応答(検査に対する理解力,視標の追従,再現性,Mariotte盲点の検出),検査に対する集中力や意欲,機嫌,検査環境の評価を行った.1回の検査で信頼のある結果が得られなかった場合には固視状態や検査に対する理解力,積極性などを考慮しながら,視野検査が3回目までは少なくとも1カ月以内ごとに再検査を行った.その後は症例に合わせて6カ月以内で適宜再検査とした.なお,動的視野検査は応答の再現性やMariotte盲点の検出を指標にしたうえで,V/4,I/4,I/3,I/2のイソプターで,中心暗点が疑われる症例ではさらにI/1までのイソプターで従来の視野検査法にて信頼性のある結果が得られた時点をもって動的視野検査が可能と判断した.今回の研究に関しては患者の両親に視野検査の重要性を理解してもらい,書面にてインフォームド・コンセントを得た.II結果小児科発達外来より依頼があった10例の結果を表1に示す.年齢は4歳2カ月から9歳10カ月,平均年齢は6歳10カ月であり,すべての症例で矯正視力検査が可能であった.動的視野検査は10例中9例で信頼のある視野検査結果が得られた.視野検査回数は1回から4回であり,平均2.3回施行された.十分な視野検査が施行できなかった1例は中等度の精神発達遅滞を伴っており,3回の視野検査を試みるも検査に対する理解が得られなかった.代表例として正常視野と考えられた4歳8カ月,女児(症例7)の測定結果を図1に,左同名半盲が認められた5歳6カ月,男児(症例4)の測定結果を図2に示す.症例7では1回目の検査では片眼で固視移動点による視野測定法1)と中心から周辺に向かって視標を動かし,見えなくなった時点でボタンを押す方法でしか検査が行えなかったが,検査3回目(初回より約1カ月後)には両眼で従来の視野検査法で信頼性のある動的視野検査結果を得た.また,症例4でも1回目の検査ではやはり固視移動点による視野測定法と中心から周辺に向かって視標を動かし,見えなくなった時点でボタンを押す方法でしか検査が行えなかったが,検査4回目(初回より約3カ月後)には両眼で従来の視野検査法で信頼性のある動的視野検査結果を得た.III考按これまでに正常小児の視野検査においては,年齢の増加に伴い網膜各部位で視野閾値が低下することで年齢的変化を認めるとする報告24)や,年齢による有意な変化はみられないとする報告5)がみられる.今回は半盲や暗点は異常と判定する一方で,各イソプターについては極端な狭窄がみられない場合には異常なしと判定した.また,これまでに小児固有の視野反応として暗点,比較暗点の検出において求心法と遠心法では結果が異なる場合があること,固視が良好であるにもかかわらずMariotte盲点が検出されない場合があること6),さらには小児の視野検査の注意点として親との同室による不安感の除去,検査時間と集中力の持続状態の把握,固視状態の確認,視標の呈示方法などが報告されている1,7,8)ことから,筆者らはこれらの項目を検査ごとに再評価し,次回の検査時の助けとした.そして今回は成人と同様の測定法で視野検査が完遂できたときをもって視野検査可能と判断したが,症例によっては検査を行っていく過程で固視移動点による視野測定法1)や中心から周辺に向かって視標を動かし,見えなくなった時点でボタンを押す方法も取り入れた.特に中心から周辺部に向かって視標を動かし視標消失域を測定する方法は被検者が最初から視標が見えている安心感からか固視が安定しやすいうえ,検者側からは固視ずれが生じた際にはすぐに注意を促しやすく,視野検査に慣れていくうえで有効な方法であると思われた.一方,固視移動法については今回,成人と同様に従来の検査法で施行することを最終目標としており,この方法に慣れてしまうことで固視の安定性がより得られにくいことが懸念表1動的視野検査を行った小児例症例年齢性別疾患名矯正視力検査回数視野結果備考123456789106歳11カ月5歳7カ月8歳1カ月5歳6カ月8歳3カ月9歳10カ月4歳8カ月4歳2カ月6歳1カ月9歳4カ月男女女男男女女女女女新生児脳梗塞神経線維腫,視神経膠腫疑い左側頭葉腫瘍多発性脳梗塞右くも膜胞術後左後頭葉腫瘍術後脳室周囲白質軟化症脳室周囲白質軟化症脳室周囲白質軟化症脳室周囲白質軟化症右眼1.2,左眼1.2右眼1.0,左眼1.0右眼1.2,左眼1.0右眼1.2,左眼1.2右眼1.2,左眼1.2右眼1.0,左眼1.2右眼1.2,左眼1.2右眼1.0,左眼1.0右眼0.8,左眼1.0右眼1.2,左眼1.21114123433異常認めず異常認めず右同名半盲左同名半盲左同名半盲右1/2半盲異常認めず異常認めず異常認めず測定不能5歳11カ月時には測定不能軽度精神遅滞軽度精神遅滞中等度精神遅滞———————————————————————-Page3850あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009(126)abc左眼右眼図14歳8カ月,女児(症例7)の動的視野検査結果a.検査1回目:右眼で固視移動点による視野測定法と中心から周辺に向かって視標を動かし,見えなくなった時点でボタンを押す方法により検査を行った.左眼は集中力が続かず断念した.b.検査2回目:両眼で中心から周辺に向かって視標を動かし,見えなくなった時点でボタンを押す方法と周辺から中心に向かって視標を動かし,見えた時点でボタンを押す方法を組み合わせることによりそのずれを確認しながらV/4I/2イソプターでの測定が行えたが,Mariotte盲点の検出が不安定であった.c.検査3回目:両眼で従来の視野検査とほぼ同様の方法でV/4I/2イソプターで応答の再現性を確認し,Mariotte盲点の安定した検出がみられた.図25歳6カ月,男児(症例4)の動的視野検査結果a.検査1回目:両眼で固視移動点による視野測定法と中心から周辺に向かって視標を動かし,見えなくなった時点でボタンを押す方法により視野検査を行った.右眼の鼻上側で特に応答が不安定であった.b.検査2回目:両眼で中心から周辺に向かって視標を動かし,見えなくなった時点でボタンを押す方法と周辺から中心に向かって視標を動かし,見えた時点でボタンを押す方法を組み合わせることによりそのずれを確認しながらV/4I/2イソプターでの測定がかろうじて行えたが,固視の状態が非常に不安定であった.c.検査3回目:両眼で中心から周辺に向かって視標を動かし,見えなくなった時点でボタンを押す方法と周辺から中心に向かって視標を動かし,見えた時点でボタンを押す方法を組み合わせることによりそのずれを確認しながらV/4I/2イソプターでの測定を行えたが,固視の状態が不安定であった.d.検査4回目:両眼で従来の視野検査とほぼ同様の方法でV/4I/2イソプターで応答の再現性を確認し,Mariotte盲点の安定した検出がみられた.———————————————————————-Page4あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009851(127)abcd左眼右眼図25歳6カ月,男児(症例4)の動的視野検査結果(図説明はp.850参照)———————————————————————-Page5852あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009(128)されたため,必要最小限にとどめるようにした.また,4歳の2症例(症例7と症例8)では顔が小さいため,あご台と額部の間隔が広く検査が困難であったため,あご台にパッドを敷くことで対応した.症例10は3回の視野検査を行ったが検査を重ねても改善がみられず,固視移動点による方法も困難であった症例であり,精神遅滞による理解力不足が原因と考えられた.症例5においては5歳11カ月時に一度動的視野検査が試みられているが,理解力不足とのことで測定不能と判断されていた.しかしその2年4カ月後の今回では1回の検査で信頼のある視野検査結果が得られており,以前より数回にわたり視野検査を施行していればより早い時期から視野障害をとらえていた可能性があると思われた.今回の結果では10例中9例で最終的に視標を周辺から中心に向かって動かし,視標出現域を測定する従来の視野検査と同様な方法で検査を行うことができたが,この大きな理由の一つとして被検者の病院に対する慣れがあると思われた.すなわち今回の症例はすべて何らかの頭蓋内疾患を有しており,以前よりさまざまな治療や検査を経験してきている.このようなことが視野検査に対しても積極的に取り組もうとする姿勢にあらわれたり,ひいては検査に対する順応が早いものと思われた.実際,視野検査をゲーム感覚でとらえ,次回の検査を楽しみにしてくれる患者もみられた.そして今回行った視野検査は平均2.3回であり,比較的短期間で信頼性のある視野検査結果が得られた.このことは頭蓋内疾患に対する術後だけではなく,術前においても眼科医に3カ月程度の時間が与えられれば,十分に視野評価が行える可能性があることを示している.そのためには今後,小児科医や脳神経外科医に理解を得たうえで,われわれは視野検査に最大の努力を払うべきであると考えられた.文献1)山本節:小児の視野検査.あたらしい眼科19:1297-1301,20022)LakowskiR,AspinallPA:Staticperimetryinyoungchil-dren.VisionRes9:305-312,19693)普天間稔:小児の視野集団検診について.日眼会誌77:719-730,19734)廖富士子:ゴールドマン視野計による小児の動的および静的視野.日眼会誌77:1270-1277,19735)野村耕治:小児の視野測定.眼科プラクティス15,視野(根木昭編),p309-311,文光堂,20076)友永正昭:小児の量的視野について.日眼会誌78:482-491,19747)原澤佳代子:小児の視野検査.あたらしい眼科3:1659-1670,19868)可児一孝,貫名香枝:視野検査の実際.臨眼44:1537-1541,1990***

流行性耳下腺炎後に発症した小児両側性球後視神経炎の1例

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page1(147)???0910-181008\100頁JCLS《原著》あたらしい眼科25(4):569~572,2008?はじめに視神経炎が小児に発症することは比較的まれであるが,そのなかでも乳頭浮腫を伴う場合がほとんどで,球後視神経炎を呈するケースは非常に少ない1~4).流行性耳下腺炎は,ムンプスウイルスの耳下腺への感染により,有痛性の耳下腺腫脹や発熱をひき起こす疾患で,ときに角結膜炎やぶどう膜炎などの眼合併症をひき起こすといわれている5,6).今回,流行性耳下腺炎発症早期に球後視神経炎を発症した1症例を経験し,その臨床経過などに若干の知見が得られたので報告する.I症例患者:9歳,男児.主訴:両眼視力低下.既往歴:クローン病.現病歴:平成17年6月3日より,耳下腺の腫脹,40℃以上の発熱を自覚し,近医小児科受診.流行性耳下腺炎の診断にて加療したところ,数日で症状が軽快した.しかし,6月20日頃より両眼の視力低下を自覚するようになり,7月2日に近くの眼科を受診したところ両眼の視神経炎を疑われ,7月4日に西条中央病院眼科を受診した.〔別刷請求先〕三好知子:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院医学系研究科視機能外科学分野Reprintrequests:????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????-??????????????-???????????流行性耳下腺炎後に発症した小児両側性球後視神経炎の1例三好知子鈴木崇高岡明彦大橋裕一愛媛大学大学院医学系研究科視機能外科学分野BilateralRetrobulbarOpticNeuritisAssociatedwithMumpsInfectionina9-Year-OldMaleTomokoMiyoshi,TakashiSuzuki,AkihikoTakaokaandYuichiOhashi????????????????????????????????????????????????????????????????罹患後に発症した両側球後視神経炎の1例を報告した.症例は9歳,男児で,流行性耳下腺炎に罹患後2週間目に両眼の視力低下を自覚した.初診時,矯正視力は右眼0.09,左眼0.06で,両眼の対光反応の遅延と右眼のrelativea?erentpupillarydefectを認めたが,視神経乳頭など眼底に異常はなかった.流行性耳下腺炎ウイルスによる球後視神経炎と診断し,副腎皮質ステロイド薬の全身投与を開始したところ,治療後1カ月目より徐々に回復傾向を示し,3カ月の時点で両眼ともに矯正視力1.0まで回復した.流行性耳下腺炎に伴って発症した球後視神経炎は,視力回復が緩徐である可能性がある.Wereportthecaseofa9-year-oldmalewhocomplainedofvisualdisturbanceinbotheyestwoweeksaftermumpsinfection.Oninitialexamination,hisbest-correctedvisualacuitywas0.09ODand0.06OS.Thepupillaryreactioninbotheyeswassluggish,accompaniedbyrelativea?erentpupillarydefectinrighteyeinswinging?ashlighttest.Ophthalmoscopicexaminationsdemonstratednormalappearanceoftheopticdisc.Onthebasisofadiag-nosisofretrobulbaropticneuritiscausedbymumpsvirus,weinitiatedsystemicadministrationofcorticosteroids,whichwasfollowedwithinonemonthbygradualimprovementofvisualacuityinbotheyes.Best-correctedvisualacuityreturnedto1.0atthreemonthsaftertreatment.Inaretrobulbaropticneuritispatientwithmumpsinfec-tion,therestorationofgoodvisualacuitycantakealongtime.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(4):569~572,2008〕Keywords:小児,球後視神経炎,流行性耳下腺炎.child,retrobulbaropticneuritis,mumps.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(148)れなかった.血液検査では,ムンプスウイルスIg(免疫グロブリン)M抗体(EIA)40.4mg/d?(正常:0.80mg/d?以下),IgG抗体(EIA)13.48mg/d?(正常:2.0mg/d?以下)と上昇していた.髄液検査では,細胞数は29/3視野(正常:0~10/3mm3),蛋白質は10mg/d?(正常:15~40mg/d?),糖は60mg/d?(正常:50~80mg/d?)であり,ムンプスウイルスIgM抗体(EIA)11.14mg/d?(正常:0.80mg/d?以下),IgG抗体(EIA)3.1mg/d?(正常:2.0mg/d?以下)であった.髄液中のオリゴクローナルバンドは検出されなかった.神経学的検査において麻痺・感覚障害などは認めなかった.検査所見を表1に示す.経過:血清および髄液中のムンプスウイルス抗体価の上昇より,ムンプスウイルスによる球後視神経炎と診断し,入院翌日の7月5日より,副腎皮質ステロイド薬(以下,ステロイドと略す)パルス療法を1クール(ソルメドロール?30mg/体重kg/日を3日間)行い,その後7月8日よりプレドニン?25mg内服にて5日間経過観察した.しかし,右眼0.1,左眼0.06と矯正視力は改善しなかったため,再度ステロイドパルス療法を施行した.2クール目終了後の7月15日より,プレドニン?15mg内服にて経過観察したところ,2週後の7月29日には矯正視力が右眼0.2,左眼0.15と若初診時所見:視力は右眼0.09(矯正不能),左眼0.05(0.06×-0.25D?cyl-1.00DAx170?).眼圧は両眼とも15mmHgであった.対光反応は両眼とも遅延し,swinging?ashlighttestで,右眼にrelativea?erentpupillarydefect(RAPD)を認めた.前眼部,中間透光体に異常は認めず,眼底においても,視神経乳頭の発赤・腫脹,網膜血管の拡張・蛇行などの異常は観察されなかった(図1).中心フリッカー値(CFF)は右眼18Hz,左眼10Hzと両眼とも低下しており,パネルD-15を用いた色覚検査においても第1色覚異常を認めた.視野検査は患児の協力が得られず,施行できなかった.以上の所見より,両眼の球後視神経炎を疑い,即日入院となった.全身検索:頭部磁気共鳴画像(MRI)T2強調画像にて,橋部背側に斑状のhighintensityと前頭葉の皮質下白質にわずかなhighintensityを認めたが,脳室周辺の病変を観察さ表1初診時全身検査〔血液検査〕ムンプスウイルスIgM抗体(EIA):40.4mg/d?↑(陰性:0.80未満)ムンプスウイルスIgG抗体(EIA):13.48mg/d?↑(陰性:2.0未満)〔髄液検査〕細胞数:29/3mm3(正常:0~10/3mm3)蛋白質:10mg/d?(正常:15~40mg/d?)糖:60mg/d?(正常:50~80mg/d?)ムンプスウイルスIgM抗体(EIA):11.14mg/d?↑(陰性:0.80未満)ムンプスウイルスIgG抗体(EIA):3.1mg/d?↑(陰性:2.0未満)オリゴクローナルバンド:陰性〔頭部MRI〕T2強調画像にて,橋部背側に斑状のhighinten-sity前頭葉の皮質下白質にわずかなhighintensityを認めた.〔神経学的所見〕麻痺・感覚障害は認めず.図1初診時眼底写真視神経乳頭の発赤・腫脹や網膜血管の怒張・拡大は認めない.視力1.04030201000.5CFF(Hz)0.017/57/87/127/157/217/298/189/811/10ソルメドロール?点滴ブレドニン?内服30mg/kg/日治療———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???(149)化症は否定的であると考えられた.本症例では,ムンプスウイルス感染に伴う炎症が視神経に波及し,球後視神経炎をひき起こしたのではないかと推察されるが,本症例が今後,多発性硬化症を発症する可能性も完全に否定はできないため,慎重に経過観察していく必要がある.ウイルス感染に続発することが多いこともあって,一般に,小児の視神経炎の治療にはステロイドの投与が有効である.本症例においても,ステロイドパルス療法を2クール行い,以後は維持量の長期内服で経過観察したが,本症例のステロイドに対する反応性は緩慢であり,視力は治療開始後3週間目からようやく改善し始め,完全回復までに約3カ月を要した.井上ら7)の報告では,ステロイドの反応性が良好であったが,駒井ら8),Khubchandaniら9)の報告においては,本症例と同様,視力回復までに3カ月以上を要している.Khubchandaniら9)は,ステロイド治療を行わなかった3例中2例において完全な視力回復が得られず,ステロイド治療を行った3例中1例の片眼のみに視力低下を認めたという.症例数は少ないが,この成績よりステロイド投与は本疾患の治療に基本的に有効であるといえよう.症例によっては,視力回復の速度が緩徐であることを念頭に置き,注意深く経過観察していく必要がある.わが国では,ムンプスワクチンは予防接種法に定められた勧奨接種に含まれていないため,ムンプスウイルスによる流行性耳下腺炎を発症する患児も少なくないと思われる.ムンプスウイルスが関与した小児の視神経炎の報告は少なく,筆者らが調べた限りでは,視神経乳頭炎がわが国で2例,海外で5例,球後視神経炎は海外の3例のみである7~10).表2にまとめを示す.症例のなかには,視力が回復していない症例も散見される.特に球後視神経炎は診断がむずかしく,治療が遅れることも予測されるため,流行性耳下腺炎後に視力低下を示した症例では,球後視神経炎を念頭に注意深く観察し,本疾患が疑われる場合は,早期のステロイド療法の開始が重要であると思われる.干の向上が認められたため,ステロイド内服を図2に示すように継続,漸減した.その後,徐々に改善傾向を示し,9月8日には矯正視力が右眼0.8,左眼0.9,CFFは右眼40Hz,左眼38Hzまで回復したため,ステロイド内服を漸減中止した.11月10日には矯正視力が右眼1.0,左眼0.9まで回復し,現在も経過観察中であるがその後再発は認めていない.臨床経過を図2に示す.II考察小児の視神経炎は比較的まれであり,成人の視神経炎とは異なる臨床的特徴を有している.すなわち,一般に両眼性で,視神経乳頭の発赤・腫脹や網膜血管の怒張・拡大など視神経乳頭炎の病像を示すことが多く,球後視神経炎を呈することはきわめて少ない1~4).したがって,本症例のように球後視神経炎で発症した場合,眼底所見のみで判断することは困難なため,視力検査,CFF,対光反応などを参考に診断を進めていくが,視力検査やCFF,視野測定などの自覚的検査で協力を得られない場合,唯一の他覚所見である対光反応の診断的価値はきわめて高い.本症例は,幸い両眼発症で,患児が視力低下を早期に訴えたため,視神経障害を疑い慎重に検査を進めることができたが,対光反応は,やはり診断の大きなよりどころとなった.小児の視神経炎にはウイルス感染が関与していることが多く1~4),発症前に発熱などの感冒症状や脳炎・髄膜炎などが先行する場合が多い.本症例においても,発症の2週間前に先行する急性耳下腺炎がみられた.当科初診時(急性耳下腺炎発症後2週間目)の検査で,髄液中の細胞数は軽度増加し,ムンプスウイルスのIgM抗体価の上昇もみられた点から,明らかな神経学的異常は認めなかったものの,非症候性のウイルス性髄膜炎を生じていた可能性は十分にある.MRIのT2強調画像では,多発性硬化症に特徴的な所見は観察されず,また,髄液中に蛋白質増加はなく,オリゴクローナルバンドも陰性であり,現時点においては,多発性硬表2流行性耳下腺炎後に発症した視神経炎の報告のまとめ年齢(歳)性別罹患眼発症時視力乳頭所見治療視力経過文献11107155741067女性男性女性男性男性女性女性男性男性女性左両両右両両両両右両光覚(+)光覚(-)手動弁(0.1)正常光覚(-)———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(150)5)佐野友紀,阿部達也,笹川智幸ほか:流行性耳下腺炎に併発した角膜内皮炎の1例.臨眼58:441-444,20046)中川裕子,徳島邦子,中川尚:眼圧上昇を伴う重篤な角膜ブドウ膜炎を呈したムンプス角膜炎の1例.眼紀54:429-432,20037)井上結香子,西崎雅也,野村耕治ほか:ムンプス感染症を契機に発症した小児視神経症の1例.臨眼101:1184-1188,20078)駒井好子,渡辺敏明,吉村弦ほか:流行性耳下腺炎後に見られた小児視神経炎の1例.眼紀39:140-144,19889)KhubchandaniR,RaneT,AgarwalPetal:Bilateralneu-roretinitisassociatedwithmumps.???????????59:1633-1636,200210)GnananayagamEJ,AgarwalI,PeterJetal:Bilateralret-robulbarneuritisassociatedwithmumps.??????????????????25:67-68,2005また,ムンプスウイルスは,涙腺炎,角膜炎(特に角膜内皮炎),虹彩炎,結膜炎,強膜炎などの多彩な眼合併症をひき起こすことが知られている5,6,9).ムンプスウイルス感染を発症した患児については,視神経炎をはじめとする上記の眼合併症に注意しながら,眼科医,小児科医が連携をとりながら診療していくべきである.文献1)KennedyC,CarrollFD:Opticneuritisinchildren.???????????????63:747-755,19602)大塚賢二:小児の視神経炎.眼科38:275-279,19963)中尾雄三,大本達也,下村嘉一:小児視神経炎について.眼紀34