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感受性からみた年齢別眼科領域抗菌薬選択2018

2020年4月30日 木曜日

感受性からみた年齢別眼科領域抗菌薬選択2018加茂純子*1村松志保*2赤澤博美*2阿部水穂*2*1甲府共立病院眼科*2甲府共立病院細菌検査室CRecommendationofAntibioticsfortheEyebyAgeGroupin2018BasedonMicroorganismSensitivityJunkoKamo1),ShihoMuramatsu2),HiromiAkazawa2)andMizuhoAbe2)1)DepartmentofOphthalmology,KofuKyoritsuHospital,2)DepartmentofBacterialLaboratory,KofuKyoritsuHospitalC目的:今回筆者らは既存抗菌点眼と比べ,わが国で新しく発売予定の強粘性により薬剤の滞留性を高めたマクロライド系の抗菌点眼薬アジスロマイシン(AZM)が結膜炎の眼脂培養で得られた細菌への感受性を年代別に調べた.方法:当院で採用している抗菌薬のセフメノキシム(CMX),ジベカシン(DKB),クロラムフェニコール(CP),バンコマイシン(VCM),オフロキサシン(OFLX),レボフロキサシン(LVFX),トスフロキサシン(TFLX),ガチフロキサシン(GFLX),モキシフロキサシン(MFLX)に加え,AZMのディスクを用い感受性を調べた.対象:2016年C12月C1日.2018年C6月C30日に甲府共立病院,甲府共立診療所眼科外来に結膜炎,角膜炎で訪れた患者C246人(男C131,女115)から採取されたC630の菌,平均年齢はC53歳±38.歳(0.99歳).結果:1位CCorynebacterium,2位CCNS,3位CNS-MRS,4位Ca-Hemolytic-streptococcus,5位CStaphylococcusaureus.上位菌種にはCCMX,CP,VCMが強い.AZMに対する感受性がC80%以上なのはCS.aureus,Haemophilusin.uenzae,MoraxellaCsp.のみであった.AZMはCNS-MRSに対してはキノロン系よりは強いがCCMX,CP,VCMには劣る.CMXに対する感受性はCMRSA,Pseudo-monasaeruginosa以外の上位C14種の細菌は感受性C80%以上であった.MRSAに有効なのはCCPとCVCMであった.結論:AZMはCS.aureus,H.in.uenzae,MoraxellaCsp.にはC80%以上の有効性を示すが,既存の抗菌薬と比べてとくに高いわけではない.あくまでもCinvitroの結果であり,invivoでは粘弾性で結果は変わる可能性はある.CMXはMRSA,P.aeruginosa以外は感受性よく,結膜炎のファーストチョイスといえる.CPurpose:WeCinvestigatedCtheCsensitivityCofazithromycin(AZM)macrolideCantimicrobialCeyeCdrops,CwhichChaveanenhanceddrugretentionduetostrongviscosity,tobacteriaobtainedineyedischargeculturesofconjunc-tivitiscomparedwithexistingantimicrobialeyedrops.Methods:Thisstudyinvolved630bacteriasamplescollect-edfrom246patients[meanage:53years(range:0-99years)]whopresentedwithconjunctivitisandkeratitisattheDepartmentofOphthalmologyOutpatientClinicatKofuKyoritsufromDecember1,2016toJune30,2018.InadditiontotheantimicrobialagentsCMX,DKB,CP,VCM,OFLX,LVFX,TFLX,GFLX,andMFLX,whichhadbeenadoptedforuseinourhospital,thesensitivitywasexaminedwithadiskofAZM.Results:Themostcom-monlyCfoundCbacteriumCwasCCorynebacterium,CwithCtheCsecondCbeingCCNSCandCtheCthirdCbeingCNS-MRS;CMX,CCP,andVCMwerestrongagainstthefrequentlyoccurringbacteria.AZMwasstrongagainstStaphylococcusCaure-us,CHaemophilusCin.uenzae,andMoraxellaCsp.CForCCNS-MRS,CAZMCwasCstrongerCthanCquinolones,CbutCinferiorCtoCCMX,CP,andVCM.AZMwasweakagainstCPseudomonasaeruginosa.CConclusions:Althoughtheviscoelasticprop-ertiesofAZMmayhavealteredtheresults,CMXremainedthe.rst-choiceantimicrobialagentforconjunctivitis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(4):484.489,C2020〕Keywords:結膜炎,角膜炎,抗菌薬点眼,感受性率.conjunctivitis,keratitis,antibioticeyedrops,susceptibility.〔別刷請求先〕加茂純子:〒400-0034山梨県甲府市宝C1-9-1甲府共立病院眼科Reprintrequests:JunkoKamo,M.D.,KofuKyoritsuHospital,1-9-1Takara,Kofu,Yamanashi400-0034,JAPANC484(108)2019年に承認されたアジスロマイシン点眼1,2)はマクロライド系の抗菌点眼薬で,DuraSite,DuraSite21)による強粘性により薬剤の滞留性を高め,点眼回数の減少をはかっている.筆者らは,結膜炎の眼脂培養から出た菌について,薬剤感受性からみた眼科領域の抗菌薬選択をC2006年3),患者の年齢別にはC2007年4),2009年5)にも検討し,抗菌薬の感受性率の変化はC2014年6)にも検討している.今回筆者らはアジスロマイシンと既存のキノロン系,セフメノキシム,アミノグリコシド,クロラムフェニコールやバンコマイシンと比べて細菌への有効性を調べた.また,既報と患者の年齢別の検出菌,感受性率も比較も検討した.CI対象および方法前向きに結膜炎,角膜炎における起炎菌につき,下記C10種の薬剤についてディスクで感受性を調べ,年齢別に検討した.本研究は甲府共立病院倫理委員会から承認を得ている.市場に流通しているセフメノキシム(CMX),ジベカシン(DKB),クロラムフェニコール(CP),バンコマイシン(VCM),キノロン系C5種類〔オフロキサン(OFLX),レボフロキサシン(LVFX),トスフロキサシン(TFLX),ガチフロキサシ(GFLX),モキシフロキサシン(MFLX)〕,そしてアジスロマイシン(AZM)である.表1に略号と商品名,ジェネリックを示した.2016年C12月C1日.2018年6月C30日に甲府共立病院および診療所眼科外来に結膜炎,角膜炎で訪れた患者C246人(男131,女C115),平均年齢はC52.9C±38.1歳(0.99歳)から採取されたC630株の菌種を対象とした.角膜炎・結膜炎患者の眼脂を輸送用培地付き綿棒(シードスワブ)で採取した.その検体を甲府共立病院細菌検査室でヒツジ血液寒天培地,ドリガルスキー培地,ガム半流動培地でC48時間培養し,その後同定および薬剤感受性試験を行った.角膜炎・結膜炎患者の眼脂を輸送用培地付き綿棒(シードスワブ)で採取した.その検体を甲府共立病院細菌検査室でヒツジ血液寒天培地,ドリガルスキー培地,ガム半流動培地,ガム寒天培地,チョコレート寒天培地でC48時間培養し,その後同定およびCKBディスク(栄研化学)を用い薬剤感受性試験を行った.感受性はCS/(SC+I+R)×100%で計算した.S:Sensitive,I:Intermediate,R:Resistanceである.2006年とC2008年4,5)に行った研究と同様,全体とC1歳未満,1.15歳,16.64歳,65歳以上に分けて感受性率を検討した.CII結果表2に検出菌の割合を示す.全体の検出菌で一番多いのがC1.CorynebacteriumCsp.146株(23.2%)で,以下,2.コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negativeCStaphylococ-cus:CNS)でC111株(17.6%),3.CNS-MRS(methicillin-resistanceStaphylococcus)59株(9.4%),4.a-Hemolytic-Streptococcus(以下Ca-Hem-Streptococcus)59株(9.4%),5.Staphylococcusaureus(以下CS.aureus)43株(6.8%),6.CMethicillin-resistanceStaphylococcusaureus(MRSA)28株(4.4%),7.Haemophilusin.uenzae(以下CH.in.uenzae)30株(4.8%),8.Moraxellacatarrhalis(以下CM.catarrhalis)13株(2.1%),9.未同定グラム陽性球菌C12株(1.9%),10.CNeisseriaCsp.10株(1.6%),11.嫌気性グラム陰性菌C10株(1.6%),12.CMoraxellaCsp.8株(1.3%),13.B群Ca型CStrep-表1検討した薬剤の略号と一般名および代表的な薬品名とジェネリック(2019.7月現在)一般名おもな商品名ジェネリックCCMXセフメノキシム塩酸塩ベストロン点眼用C0.5%なしCCPクロラムフェニコールクロラムフェニコール点眼用C0.5%オフサロン点眼コリナコール点眼CVCMバンコマイシンバンコマイシン眼軟膏なしCDKB硫酸ジベカシンパニマイシン点なしCAZMアジスロマイシンアジマイマイシン点眼(2C019.6承認)COFLXオフロキサシンタリビッド点・軟膏点眼後発品:1C3種眼軟膏後発品:1種CLVFXレボフロキサシン水和物クラビッド点眼点眼C0.5%後発品:1C9種点眼C1.5%後発品:2C0種CTFLXトスフロキサシントスフロ点眼液C0.3%オゼックス点眼液CGFLXガチフロキサシン水和物ガチフロ点眼なしCMFLX塩酸モキシフロキサシンベガモックス点眼なし順位.菌種株数%C1.CorynebacteriumCspecies(sp.)C146C23.2C2.CoaglaseNegativeStaphylococci(CNS)C111C17.6C3.CNSmethicillinresistanceStaphylococci(MRS)C59C9.4C4.a-Hemolytic-Streptococcus(Ca-Hem-streptococcus)C59C9.4C5.Staphylococcusaureus(S.aureus)C43C6.8C6.S.CaureusCmethicillinCresistanceCStaphylococcusAureus(MRSA)C28C4.4C7.Haemophilusin.uenzae(H.in.uenzae)C30C4.8C8.Moraxellacatarrhalis(M.catarrhalis)C13C2.1C9.未同定グラム陽性球菌C12C1.910.CNeisseriaCspecies(sp.)C10C1.6C11.嫌気性グラム陽性球菌C10C1.6C12.CMoraxellaCsp.C8C1.313.CB群Cb型CStreptococcusC8C1.314.CPseudomonasaeruginosa(P.aeruginosa)C7C1.115.CHaemophilusparain.uenzae(H.parain.uenzae)C6C1.016.CG群Cb型CStreptococcusC5C0.8C17.ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌C6C1.0C順位.菌種株数%18.CStreptococcuspneumoniae(S.pneumoniae)C5C0.8C19.CPropiunibacteriumacnes(P.acnes)C5C0.8C20.グラム陽性球菌(微好気)C5C0.8C21.CYeastCsp.C5C0.8C22.CEnterococcusCsp.C3C0.5C23.CHemophilusparahaemolyticus(H.Cparahaemo-3C0.5lyticus)C24.Cnon-hemolyticstreptococcusC3C0.525.CStenotrophomonasmaltophilia(S.maltophilia)C3C0.526.CA群Cb型CStreptococcusC2C0.327.CCitrobacterkoseri(C.koseri)C2C0.328.CKlebsiellapneumoniae(K.pneumoniae)C2C0.329.CClostridiumperfringens(C.perfringens)C2C0.330.CStreptococcusmilleriCgroup(S.millerigrp)C2C0.3その他C27C4.3合計C630Ctococcus8株(1.3%),14.PseudomonasaeruginosaC7株(1.1%)と続く.表3は全年齢における上位菌種の感受性がC80%以上のものをグレー背景にした.以前からわかっていたようにMRSAにはCCPとCVCMのみが強く,CMXは多くの菌に感受性がある一方で第C4世代も含めてキノロン系は1,2,3位の菌に弱くなってきている.AZMはCS.Caureus,CH.Cin.uen-zae,未同定グラム陽性菌には強いものの,キノロンには劣る.以下年齢別に検出割合の高い菌を取りあげ,それらに有効な抗菌薬をみてみる.C1.0歳の細菌と感受性率(表4)全C126株のうちもっとも多く検出された細菌は上位からCNS36株,ついでCa溶血性連鎖球菌C26株,H.Cin.uenzae13株,Corynebacterium属12株,S.aureus7株,MRSA4株,NeisseriaCsp.4株,グラム陽性球菌(微好気)4株,M.catarrhalis3株,S.Cpneumoniae3株である.80%の感受性を示すものを有効と定義すれば,上位の菌に有効なのはCMXのみであった.VCM,CPはCMRSAがあるときのみ使う.C2.1~15歳の細菌と感受性率(表5)全C75株のうちもっとも多く検出された細菌はCH.Cin.uenzae16株,ついでCa溶血性連鎖球菌C12株,CNS10株,Coryne-bacterium6株,M.Ccatarrhalis6株,Neisseriasp.6株,CMoraxella5株,CNSMRS3株,S.aureus3株,MRS2株である.上位C5種類に関していえばCCMX,TFLX,GFLX,MLFXが有効である.VCMはCH.in.uenzaeに無効である.3.16~64歳の細菌と感受性率(表6)全C57株のうちもっとも多く検出された細菌はCCNS14株,ついでCCorynebacterium6株C,CNSMRS6株,嫌気性グラム陽性球菌C4株,EnterococcusCsp.2株であった.上位C5菌種にはCCMX,CP,VCMが有効である.キノロン系は残念ながらC80%未満となっている.C4.65歳以上の細菌と感受性率(表7)全C368株のうちもっとも多く検出された細菌はCCoryne-bacterium30.7株,CNS19.6株,CNS-MRS7.6株,S.aureus6.5株,MRSA6.3株.Ca溶血連鎖球菌C5.2%,B群Ca型CStreptococcus8株,嫌気性グラム陽性球菌C6株であった.1位のCCorynebacteriumに有効なのはCVCMのみであるが,軟膏はオーファンドラッグであり,MRSA存在下のみにしか使えない.4位まではCCMXが有効であるが,CPはC8位の嫌気性菌まで有効である.C5.結果まとめ高齢者では検出数でCCorynebacteriumがC1位となった.2008年の筆者らの施設にはなかったCCNS-MRSが台頭してきている.上位菌種にはCCMX,CP,VCMが強い.AZMが強いのは小児に多いCH.in.uenzae,S.aureus,未同定グラム陽性球菌,MoraxellaCsp.でCCNSMRSに対してはキノロン系よりは強いがCCMX,CP,VCMには劣る.AZMはCP.aeruginosaには弱い.キノロン系薬のなかでは第C4世代のキノロンであるCGFLXとCMFLXの有効性が落ちて他の世代とほとんど変わりなくなってきている4,5).CMXはCCory-nebacteriumにも強く,結膜炎のファーストチョイスにすることができる.CMXCCPCVCMCDKBCAZMCOFLXCLVFXCTFLXCGFLXCMFLXC薬剤菌種(株数)C1.Corynebacterium(146)C2.CNS(111)C3.CNSMRS(59)C4.a-Hem-streptococcus(59)C5.S.aureus(43)C6.MRSA(30)C7.H.in.uenzae(28)C8.M.catarrhalis(13)C9.未同定グラム陽性球菌(12)10.CNeisseriasp.(10)C11.嫌気性グラム陽性球菌(10)12.CMoraxellasp.(8)13.CB群Cb型CStreptococcus(8)14.CP.aeruginosa(7)グレイ背景はC80%以上の感受性.CNS:coagulaseCnegativeCStaphylococci,MRS:methicillinCresistanceStaphylococcusCspecies,MRSA:methicillinCresis-tanceStaphylococcusaureus,P.aeruginosa:Pseudomonasaeruginosa.表40歳における上位検出菌に対する感受性率(%)表51~15歳における上位検出菌に対する感受性率(%)表765歳以上における上位検出菌に対する感受性率(%)III考察アジスロマイシン点眼は小児も含め結膜炎の治療薬としてはファーストチョイスとはなりえない.しかし,上記研究はあくまでもCinvitroの結果であり,DuraSiteによる眼表面での滞留がよければ,薬剤感受性試験でCI,Rと判定された菌に対しても,効果があることもあるかもしれない.アジスロマイシン点眼の細菌に関する感受性の論文を調べると,Daveらによれば,フルオロキノロン系薬またはアジスロマイシンに繰り返しさらされる結膜性表皮ブドウ球菌は,急速に耐性を発現する.他の抗生物質に対する共耐性も観察したと報告している.Kimら10)によれば硝子体注射前にフルオロキノロン系薬に繰り返し曝露された眼から培養されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)は,旧世代(p=.002)および新世代(p<.01)のフルオロキノロン系薬に対する耐性率の有意な増加を示した.対照的に,アジスロマイシンに曝露された眼から分離されたCCNSは,マクロライド系薬に対する抵抗性の有意な増加(95%;p<.001)と,旧世代(p=.03)および新世代(p<.001)フルオロキノロン系薬に対する抵抗性の低下を示した.治療を受けた眼から分離されたCCNSの多剤耐性に有意な増加があり,分離株のC81.8%およびC67.5%がそれぞれ少なくともC3種(p=.01)および少なくともC5種(p=.009)の抗菌薬に耐性であったと述べている.筆者らの施設では抗菌薬を漫然と使うことはなく,結膜炎でもC1週間以上しても治らない場合には,細菌培養に従って,感受性のある点眼に変えている.硝子体注射後の抗菌薬はC1週間,白内障術後の抗菌薬点眼もC1カ月以内に終了しているにもかかわらず,2008年当時にはCCNSがトップだったものが,Corynebacterium種が一位となり,CNS-MRSが出てきている.これは世間の細菌全体が変化していることを示唆している.2008年の筆者らの論文5)と各年代の傾向を考察する.1歳未満について:上位C5菌種であるCCNS,Ca-Hem-streptococcus,H.in.uenzae,Corynebacterium,S.CaureusとC2008年当時と出てくる菌もそれほど変わらず,CMXがどの菌でも感受性がよい.MRSAがC2008年はC1例であったのに対して今回はC4例と若干多い.DKBとCAZMはC2位のCa-Hem-streptococcusに弱い.1位のCCNSはC2008年当時はどのキノロン系薬にもC70%の感受性を示していたが,軒並みC39%に落ちている.これは,抗菌薬に曝露されていない可能性の高いC0歳に起こるということは世間のフローラが変(112)わっているということになる.1.15歳について:H.in.uenzae,Ca-Hem-streptococcus,CNS,Corynebacterium,M.catarrhalisはC2008年から上位菌種であった.当時もCCMXはどの菌でも感受性がよかった.当時はCCNSMRSがなかったが,今回は出てきた.CMXや他のキノロン系薬はC67%,CP,VCM,DKBがC100%有効であるのに対しCAZMはC33%である.S.aureusに対してはAZMのC0%に対して,他の抗菌薬はC100%である.MRSAにはCP,VCM,DKBがC100%なのに対し,他の抗菌薬はC0%である.16.64歳について:2008年当時なかったCCNS-MRSがC3位である.これに有効なのはCCMX,CP,VCMである.この年代のCS.aureusにはCCMX,CP,VCM,DKBに加えてAZMも有効である.2008年当時キノロン系薬はC100%であったが,今回は軒並みC67%と下がっている.65歳以上:この年齢層はC2008年当時からCCorynebacteri-umがC1位であり,有効なのはCCMX,VCMであった.現在80%以上の感受性を示すのはCVCMだけである.続いてCP,CMXが有効であるが,キノロン系薬は総じてC3%と低い感受性となっている.2位のCCNSにはC2008年当時,CMX,VCM,CP,GFLX,MFLXがC80%超えていた.現在C80%超えるのはCCMX,CP,VCMにCDKBである.AZMがC75%と次点につくが,キノロン系薬は第C4世代も含めてC68.69%と感受性が落ちている.S.aureusに関してはCAZM以外C80%を保っている.MRSAに関しては以前と同様にCCPとCVCMのみが有効である.P.aergionosaに関してはCAZMとDKB,すべてのキノロンがC80%以上の感受性を保っている.総じていえば,CMXはCCorynebacteriumにも強く,結膜炎のファーストチョイスにすることができる.これにキノロン系薬かCDKBを加えればCMRSA以外のほぼすべての菌を網羅できる.漫然と一種類の抗菌薬を使い続けることなく,難治の場合には感受性を調べて適切な処方をすることが,抗菌薬の寿命を保つことになると考えられる.マイボーム腺の治療として,抗菌薬(とくにマクロライド系やテトラサイクリン系)の効果が期待できるとして,報告がある13).マクロライド系であるアジスロマイシンが直接,マイボーム腺の上皮細胞に作用し,脂の分泌を促進することもある11).また,眼瞼炎の治療薬として有効とのレビューもある12).むしろこの方面での効果を期待したい.文献1)OpitzCDL,CHarthanJS:ReviewCofCazithromycinCophthal-mic1%solution(AzaSiteCR)forCtheCtreatmentCofCocularCinfections.OphthalmolEyeDisC4:1-14,C20122)FriedlaenderMHandProtzkoE:Clinicaldevelopmentof1%azithromycininDuraSiteCR,atopicalazalideanti-infec-tiveforocularsurfacetherapy.ClinOphthalmolC1:3-10,C20073)加茂純子,山本ひろ子,松村志保ほか:病棟・外来の眼科領域細菌と感受性の動向2001.2005年.あたらしい眼科C23:219-224,C20064)加茂純子,喜瀬梢,鶴田真ほか:感受性からみた年代別の眼科領域抗菌剤選択C2006.臨眼C61:331-336,C20075)加茂純子,村松志保,赤澤博美らほか:感受性からみた年代別の眼科領域抗菌薬選択C2008.臨眼C63:1635-1640,C20096)加茂純子,荘子万可,村松志保ほか:細菌性結膜炎の眼脂培養によるC2008年からC2011年の抗菌薬の感受性率の変化.あたらしい眼科31:1037-1042,C20147)OlsonRJ:EncounteringCresistanceCinCtheCbattleCagainstCbacteria.ReviewofOphthalmology,p76-78,20078)DeramoCVA,CLaiCJC,CFasteningCDMCetal:AcuteCendo-phthalmitisineyestreatedprophylacticallywithgati.oxa-cinCandCmoxi.oxacin.CAmCJCOphthalmolC142:721-725,C20069)DaveCSB,CTomaCHS,CKimSJ:OphthalmicCantibioticCuseCandmultidrug-resistantCstaphylococcusCepidermidis:aCcontrolled,ClongitudinalCstudy.COphthalmologyC118:2035-2040,C201110)KimCSJ,CTomaHS:AntimicrobialCresistanceCandCophthal-micantibiotics:1-yearresultsofalongitudinalcontrolledstudyCofCpatientsCundergoingCintravitrealCinjections.CArchCOphthalmolC129:1180-1188,C201111)LiuCY,CKamCWR,CDingCJCetal:E.ectCofCazithromycinConClipidCaccumulationCinCimmortalizedChumanCmeibomianCglandCepithelialCcells.CJAMACOphthalmolC132:226-228,C201412)KagkelarisCKA,CMakriCOE,CGeorgakopoulosCCDCetal:AnCeyeCforazithromycin:reviewCofCtheCliterature.CTherCAdvCOphthalmol10,C2018C2515841418783622.CPublishedConline2018CJulC30.Cdoi:10.1177/251584141878362213)https://biosciencedbc.jp/dbsearch/Patent/page/ipdl2C_CJPP_an_2014190105.htmlC***

細菌性結膜炎の眼脂培養による2008年から2011年の抗菌薬の感受性率の変化

2014年7月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科31(7):1037.1042,2014c細菌性結膜炎の眼脂培養による2008年から2011年の抗菌薬の感受性率の変化加茂純子*1荘子万可*1村松志保*2赤澤博美*2阿部水穂*2山本ひろ子*2*1甲府共立病院眼科*2甲府共立病院細菌検査室ChangeinConjunctivitisBacteriaSusceptibilitiestoAntibioticsbetween2008and2011JunkoKamo1),MarkSoshi1),ShihoMuramatsu2),HirokoAkazawa2),MizuhoAbe2)andHirokoYamamoto2)1)DepartmentofOphthalmology,KofuKyoritsuHospital,2)MicrobiologylaboratoryofKofuKyoritsuHospital目的:2008年から4年間の結膜炎の眼脂培養から検出された菌と感受性変化を知る.対象および方法:2008年5月から2012年3月までに甲府共立病院,巨摩共立病院,甲府共立診療所に結膜炎で訪れた患者755人(男382,女385)から採取された延べ1,793の菌株で,平均年齢は63±34歳(0.102歳)であった.眼脂をトランススワブRで採取した.検体を院内細菌検査室で18時間培養し,同定,薬剤感受性検査を行った.感受性を調べた薬剤はテトラサイクリン(TC),ジベカシン(DKB),セフメノキシム(CMX),バンコマイシン(VCM),クロラムフェニコール(CP),オフロキサシン(OFLX),レボフロキサシン(LVFX),トスフロキサシン(TFLX),ガチフロキサシン(GFLX),モキシフロキサシン(MFLX)である.結果:上位5菌種はcoagulase-negativeStaphylococcus(CNS)27%,Corynebacterium27%,Staphylococcusaureus(S.aureus)7%,嫌気性グラム陰性球菌7%,methicillin-resistantStaphylococcusaureus(MRSA)5%であった.2008年度と2011年度を比較すると上位10種の菌種に対して感受性率の落ちた薬剤はCNSに対するCMXが98%から87%,第4世代のキノロンの90%が60%,Psuedomonasaeruginosa(P.aeruginosa)に対してCMXは例数は少ないものの,62.5%が0%,TFLXが100から20%,Streptococcuspneumoniae(S.pneumoniae)に対するTFLXが100から57.1%になった.MRSAに対してVCMは100%,CPは90%以上の感受性を保った.CMXはCNSとP.aeruginosaの感受性率は減ったものの,80%以上の感受性率を持つ菌種が8種あり,CPも同様高い感受性をもつ.逆にTCはCNS,methicillin-sensitiveStaphylococcusaureus(MSSA),MRSAに対して感受性率が増した.結論:2008年と2011年の間では,検出される菌に対する感受性は他のキノロンよりはよいが,第4世代キノロンで減少した.CMXはP.aeruginosa,MRSA以外の結膜炎の第一選択としてよい.P.aeruginosaに対してはDKB,LVFXの選択がよい.使われていないTCの感受性が増した.Purpose:Throughthisprospectivestudy,approvedbytheethicalcommitteeofKofuKyoritsuHospital,tolearnthechangesinincidenceandsusceptibilityofbacteriatakenandculturedfromconjunctivitisdischargeduring4years,startingApril2008.Subjectsandmethod:Subjectswere755individuals(male382,female385;agerange:0.102yrs;avg.age63±34yrs)whoconsultedKofuKyoritsuHospitalandrelatedclinicswhilesufferingfromconjunctivitis,andfromwhomsampledischargewasobtainedwithTransswabR.Aftersampleculturinginourbacteriallaboratoryfor18hours,bacteriawereidentifiedandtheirsusceptibilitiesstudied.Weused10discs:tetracycline(TC),dibekacin(DKB),cefmenoxime(CMX),vancomycin(VCM),chloramphenicol(CP),ofloxacin(OFLX),levofloxacin(LVFX),tosufloxacin(TFLX),gatifloxacin(GFLX)andmoxifloxacin(MFLX).Results:Commonlyidentifiedbacteriawerecoagulase-negativeStaphylococcus(CNS)27%,Corynebacterium27%,S.aureus7%,aerophobicgram-negativecocci7%,methicillin-resistantStaphylococcusaureus(MRSA)5%andsoon.Whenwecomparedsusceptibilitybetween2008and2011,theantibioticswhosesusceptibilityhaddecreasedsignificantlywere:CMXagainstCNSdecreasedfrom98%to87%,4thgenerationfluoroquinoloneagainstCNSfrom90%to60%,CMXagainstP.aeruginosafrom62.5%to0%,TFLX;from100to20%,andTFLXagainstS.pneumoniaefrom100to57.1%.AgainstMRSA,VCMkept100%andCPkepthigherthan90%susceptibility.AlthoughCMXlostsusceptibilitytoCNSandP.aeruginosa,itstillhadmorethan80%susceptibilitytothetop10bacteria.CP〔別刷請求先〕加茂純子:〒400-0034甲府市宝1-9-1甲府共立病院眼科Reprintrequests:JunkoKamo,DepartmentofOphthalmology,KofuKyoritsuHospital,1-9-1Takara,Kofu400-0034,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(111)1037 alsohasgoodsusceptibility.Incontrast,TCincreasedsusceptibilitytoCNS,MSSAandMRSA.Conclusion:Between2008and2011,thefourthgenerationfluoroquinolonelostsusceptibility,althoughitwasbetterthantheotherquinolones.CMXcanbethefirstchoiceforconjunctivitis,exceptwhencausedbyP.aeruginosaorMRSA.ForP.aeruginosa,DKBorLVFXcanbeselected.TC,whichisunavailableinJapan,increasedsusceptibility.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(7):1037.1042,2014〕Keywords:結膜炎,抗菌薬,感受性率.conjunctivitis,antibiotics,susceptibility.はじめに当院の細菌検査室では10種の薬剤の感受性を調べることができる.2005年3月にはテトラサイクリン(TC)眼軟膏が販売中止となり,ガチフロキサシン(GFLX)など第4世代の抗菌薬が市場に出始めた.そこで2005年から2006年の当院の結膜炎などから検出された菌への薬剤の感受性を10種の抗菌薬〔エリスロマイシン(EM),TC,ジベカシン(DKB),セフメノキシム(CMX),スルベニシリン(SBPC),バンコマイシン(VCM),クロラムフェニコール(CP),レボフロキサシン(LVFX),トスフロキサシン(TFLX)(GFLX)〕についてまとめた結果,結膜炎の治療の第一選択(,)としてCMXおよびGFLXがよいと示唆された1).2006年にはやはり第4世代のフルオロキノロン系薬剤(以下,キノロン)であるモキシフロキサシン(MFLX)が登場し,コリマイC(TC)眼軟膏が姿を消し,TCの入った軟膏が市場で入手不能となった.そこでGFLXとの比較のためにMFLXを加えて,2008年に当院における感受性率について年代別にまとめ,統計的に比較検討したが2),やはり,CMX,GFLXを第一選択にするのがよいと考えられた.日本眼感染症学会による眼科感染症起炎菌・薬剤感受性他施設調査(第2報)3)によれば,CMXが最も高度感受性があり,ついでキノロンであることを述べている.MFLXなどの第4世代のキノロンは2種類の細菌のDNA合成酵素を阻害するので,菌の耐性化はしにくいといわれている.これらは結膜に高濃度かつ長い時間停滞し,濃度依存性の殺菌作用を有することから,よいpharmacokinetic/pharmacodynamicsを示す4).はたしてこの4年間で変化がなかったのかどうかを知るのが本研究の目的である.I対象および方法前向きに結膜炎における起炎菌につき下記10種類の薬剤ディスクでの感受性を調べた.今回,2011年の結膜炎患者からの検出菌に対し,感受性試験を実施したので,2008年の結果と比較検討した.2006年度の検討からEMは耐性が多かったために排除し,その代りにMFLXを入れた以下の10種を検討した.すなわち,TC,DKB,CMX,VCM,CP,オフロキサシン(OFLX),LVFX,TFLX,GFLX,MFLXである.なお,本試験は甲府共立病院倫理委員会から承認を受けて実施した.対象は2008年5月から2012年3月までの期間に甲府共立病院,巨摩共立病院と甲府共診療所に結膜炎で訪れた患者755人(男382,女385人)から採取された延べ1,793の菌株で,患者の平均年齢は63±34歳(0.102歳)であった.このうち,2008年〔186人(男75,女111人),平均年齢56.5±40歳(0.100歳)〕,2011年〔209人(男107,女102人),平均年齢61.9±37歳(0.101歳)〕で背景の平均年齢には有意差はなかった(p=0.39).結膜炎患者の眼脂を輸送用培地つき綿棒(トランススワ表1感受性を調べた薬剤の一般名,おもな商品名,ジェネリック商品名略語一般名おもな商品名ジェネリック商品名TCテトラサイクリンテラマイシン(発売中止)なしCMXセフメノキシム塩酸塩ベストロン点眼用0.3%なしDKBジベカシン硫酸塩パニマイシン点眼液0.3%なしCPクロラムフェニコールクロラムフェニコール・コリスチンクロラムフェニコール点眼液0.5%コリマイC点(発売中止)なしコリナコール点眼液VCMバンコマイシン塩酸塩バンコマイシン眼軟膏1%なしOFLXオフロキサシンタリビッド点眼液0.3%・眼軟膏0.3%オフロキシン点眼液0.3%・眼軟膏0.3%LVFXレボフロキサシン水和物クラビット点眼液0.5%,1.5%レボフロキサシン点眼液0.5%多数TFLXトスフロキサシントシル酸塩オゼックス・トスフロ点眼液0.3%なしGFLXガチフロキサシン水和物ガチフロ点眼液0.3%なしMFLXモキシフロキサシン塩酸塩ベガモックス点眼液0.5%なし1038あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(112) ブR)で症状の強い結膜から擦過採取した.その検体を甲府共立病院細菌検査室で18時間培養し,その後同定および薬剤感受性検査を行った.感受性を調べた薬剤はTC,DKB,CMX,VCM,CP,OFLX,LVFX,TFLX,GFLX,MFLXの10種類である.それぞれの薬品の一般名,先発商品名およびジェネリック商品名を表1にまとめた.2008年と2011年の各菌株に関して,各種抗菌薬の感受性を比較し,標本比率の差の検定を行った.p=0.05未満を有意差ありとした.II結果図1は2008年と2011年の菌株の内訳を比較したものである.両年度とも1位Corynebacterium,2位のcoagulasenegativeStaphylococcus(CNS)の2菌株で50%以上を占め,3位a-hemStreptococcus,4位S.aureus,またはmethicillin-sensitiveStaphylococcusaureus(MSSA)そして5位methicillin-resistantStaphylococcusaureus(MRSA)が続く.6位.12位は変動があるが,標本数が少なく,大きな変化は少ないと考えられる.表2は2008年度での1位から10位の菌の抗菌薬への感受性率を,2011年と比較したものである.1位のCorynebacteriumは各世代キノロン系薬剤に対する感受性が低いが,4年間では有意差をもった感受性の低下は認められなかった.その他の抗菌薬に関しても有意差はなかった.2位のCNSに関しては,キノロン系薬剤以外のほうが感受性がよく,有意な感受性の変化が現れたのは,TCで上昇,CMXと第4世代キノロンに対して感受性の低下がみられた.しかし,第4世代はその他の世代のキノロン系薬剤に対して優位な感受性を保っていた.3位のMSSAに関しては,各抗菌薬への感受性は良好で,キノロン系薬剤への感受性も良好であった.4位のMRSAに対してのVCM,CPの抗菌力は4年間で保たれたが,キノロン系薬剤への感受性はほとんどなく,当初感受性があるといわれた第4世代キノロン系薬剤に対しても,有意差はなかったが低下傾向を示した.5位のa-hemStreptococcusはCMX,VCM,CPおよび,第4世代のキノロン系薬剤に感受性があるが,MFLXは2011に有意に感受性率が低下した.6位の嫌気性グラム陽性球菌はと考えられ,CMX,VCM,CPに感受性があった.7位の小児によくみられるHaemophilusinfluenzaeと8位のMoraxellacatarrhalisはVCMを除くすべての薬剤に感受性がある.9位のPseudomonasaeruginosa(P.aeruginosa)に関しては,CMXとTFLXへの感受性が有意に低下していた.キノロン系薬剤への感受性は低下傾向にあった.明らかに低下がないのはDKB1種類のみであった.10位のStreptococcuspneumoniae(S.pneumoniae)は,TFLXに対する(113)2008年検出菌(n=387):1.Corynebacterium5%■:その他10%24%■:発育なし■:12.K.oxytoca4%■:13.G群b型Streptococcus■:8.M.catarrhalis3%■:9.P.aeruginosa3%■:10.S.pneumoniae3%■:11.B群b型Streptococcus1%2%■:5.a.hemStreptococcus2%9%■:6.嫌気性グラム陽性菌3%29%■:7.Haemophilusinfluenzae■:2.CNS1%■■:3.MSSA1%:4.MRSA2011年検出菌(n=517):1.Corynebacterium3%■:その他6%27%■:同定せず■:11.S.pneumoniae7%■:12.P.aeruginosa3%■:9.Moraxellaspp.4%■:10.Neisseriaspp.■:8.M.catarrhalis2%■:5.a-hemStreptococcus2%28%■:6.嫌気性グラム陽性球菌3%■:7.Haemophilusinfluenzae■:2.CNS1%■■:3.MSSA1%11%2%:4.MRSA図12008年(上)と2011年(下)の検出菌株頻度順の内訳両年度とも1位Corynebacterium,2位のcoagulase-negativeStaphylococcus(CNS)の2菌株で50%以上を占め,3位a-hemstreptococcus,4位S.aureus,またはmethicillin-sensitiveStaphylococcusaureus(MSSA)そして5位methicillinresistantStaphylococcusaureus(MRSA)が続く.2008年の上位10菌種は2011年の上位12菌種に入る.感受性が有意に低下していたが,第4世代のキノロンに対する感受性は良好に保たれていた.CMX,VCMが最も有効であった.III考察筆者らの施設の4年前の結果と比較し,結膜炎患者から分離培養される菌株の構成に変化はなかった.以前からキノロン系薬剤の抗菌力の低下5,6)が指摘されているが,CNSを除き,今回の検定では明らかに有意差が証明されたものはごくわずかであった.CorynebacteriumはDNA合成酵素としてDNAジャイレースはもっているが,トポイソメラーゼIVはもっていないために耐性化しやすいことがわかっており,実際にキノロン系薬剤に対して高度に耐性化されていたが,2008年と2011年では有意な変化はなかった.2位のCNS,すなわち表皮ブドウ球菌は,第3世代以前のキノロン系薬剤はすでに感受性が低下していたが,第4世代のGFLX,MFLXが2008年時点で90%台であったものが,あたらしい眼科Vol.31,No.7,20141039 1040あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(114)(114)表22008年度と2011年度の上位細菌の各抗菌剤に対する感受性率薬剤年度1.Corynebacteriumspp.2.CNS3.MSSA4.MRSA5.a-Hem-Streptococcus6.嫌気性グラム陽性球菌7.Haemophilusinfluenzae8.M.catarrhalis9.P.aeraginosa10.S.pneumoniaeTC20082011958382256910010010001396*91**100*614991100100029DKB200820118480794556501001001001379769144293610010010029CMX20082011979897101001001001006310096**87100118391100100**0100VCM20082011981001001001001000001001009910010091100000100CP20082011588997909410010010006358901009489100100100071OFLX20082011334885108842100100881002851911166451001006071LVFX200820113655851094501001001001003152911171551001008071TFLX20082011234982107558100100100100154988116045100100**20*57GFLX20082011419288351005810010010010037**64911180551001006086MFLX2008201139918835100581001005010038**649111**77551001002086標本数2008200920102011108923420161291088105100352627715444126124302337622126614114033183511151757標本比率の差の検定を行い,p<0.05となった箇所には*,p<0.01となった箇所には**を付けた.80%以上の感受性率を示した箇所は網掛けした.薬剤は非キノロン系を上に5種類(TC,DKB,CMX,VCM,CP),下にキノロン系5種類(OFLX,LVFX,TFLX,GFLX,MFLX).表の下部には2008年から2011年の標本数を示した.グラム陽性菌は太字(CNS:Coagulase-negativeStapylococcus,MSSA:methicillin-sensitiveStaphylococcusaureus,MRSA:methicillin-resistantStaphylococcusaureus,Staphylococcuspneumonia),その他はグラム陰性菌(Corynebacteriumspp.,Haemophilusinfluenzae,Moraxellacatarrhalis,Pseudomonasaeruginosa) 2011年には64%と有意に低下していた.山田らの論文6)では2008年の時点で,感受性が低下している原因としてgyrA,gyrB,parC,そしてparEのQRDR(キノロン耐性決定領域)に変異がある株が出ていることが指摘されている.当院ではキノロン系薬剤の長期投与は控えているが,日本でのキノロン系薬剤の使用の増加に伴い,市中の菌の変異が考えられる.8位のMoraxellacatarrhalisもVCMを除くすべての薬剤に感受性がある.その他の全身領域の疾患で問題になることはほとんどなく,抗菌薬曝露が少ないことにより,耐性化がみられないと推測される.P.aeruginosaに対しては,キノロン系薬剤,現状最も効果が期待できるのはDKBである.第一選択として使われるCMXの効力が低下していることも明記すべきである.日本の市場から姿を消したTCに対する感受性は,いくつかの上位菌株で上昇した.このように使用されなくなった抗菌薬に対する感受性は,各菌株で回復していく可能性があると考えられる.逆にいまだ,米国ではクラミジアによる結膜炎などに使用しているTCの耐性化が報告されている7)表2をみると,起炎菌の推定できない結膜炎患者へのempiricな抗菌薬治療の際は,施設入所者,入院患者などP.aeruginosaの関与が推定される患者,MRSA保菌が証明されている患者を除けば,第一選択薬としてはCMX,次点にCPを使用するのが最も効果が期待できる.CPはMRSAに対する抗菌力を保持しており,可能な限り温存したいことを考えれば,第一選択としてはやはりCMXがよいと考えられた.MRSA保菌者の結膜炎に対しては,既報2,3)でも述べたが,今回もCPを第一選択とする.VCM眼軟膏はMRSAの検出をもって初めて使用することができ,薬剤が高価であるため,結果として耐性化が抑制されていると推測される.わが国における他の研究をみると,結膜炎に関しては,2004年からの5年間のCOI細菌性結膜炎検出菌スタディグループの研究では8),検出菌の1位がStaphylococcusepidermidis,2位がPropionibacteriumacnes,3位がStreptococcusspp.,そしてS.aureusと続くが,全菌種を合わせるとLVFX,CMXがよい感受性を示したと述べている.感染性角膜炎診療ガイドライン(第2版)9)によれば,角膜炎においてグラム陰性桿菌疑いではキノロン系+アミノグリコシド系,グラム陽性球菌疑いではキノロン系+セフェム系を推奨している.これはキノロン系薬剤のpostantibioticeffect(点眼後組織に長くとどまる現象)を期待しているからである.太根ら10)は高齢者の細菌性結膜炎における臨床分離菌と薬剤感受性を調べているが,筆者らの研究と同様MRSE,MRSAにはCP,VCMが有効で,キノロン系薬剤で初期治(115)療を受けていた症例では耐性化と混合感染がみられたことを指摘,さらにTCが有効と述べている.このように抗菌薬の選択については,どの研究も同様の選択をしている.一方,ヨーロッパでは結膜炎は一般的に1.2週間で自然治癒するので,抗菌薬を使わないこともあるが,病期を短縮する目的で使われる抗菌薬の第一選択はキノロン系薬剤ではなく,CPやフシジン酸(fusidicacid)である11).局所または全身にキノロン系薬剤が使われると,3カ月以内に耐性を示すS.aureusは29%だが,使っていないものは11%と有意な差がある12),とのヨーロッパの報告に対し,米国では,アジスロマイシンよりも第3,4世代のキノロン,GFLX,MFLXのほうが脈絡膜新生血管治療における細菌感染予防のための点眼において,S.aureusやCNSの耐性をつくりにくいことが報告されている13).しかし,19.60%のS.pneumoniae,85%のMRSAが耐性をもっている.第4世代,なかでもBesifloxacinは耐性が少ない14).以上のように,ヨーロッパではキノロンを第一選択とせず,米国ではむしろ第3,4世代と新しいキノロンを第一選択とするような論文が多い.今回の筆者らの研究で,耐性化しにくいといわれていた第4世代のキノロン系薬剤である,GFLX,MFLXの感受性の低下もあり,結膜炎に対する第一選択薬として多く使用されることが予想されるキノロン系抗菌薬の適正利用に留意する必要があると考えられた.本論文は第117回日本眼科学会(2013年4月東京)において発表した.文献1)加茂純子,喜瀬梢,鶴田真ほか:感受性からみた眼科領域の抗菌薬選択2006.臨眼61:331-336,20072)加茂純子,村松志保:感受性から見た眼科領域の抗菌薬選択2008.臨眼63:1635-1640,20093)秦野寛,井上幸次,大橋裕一ほか(眼感染症スタディグループ):前眼部・外眼部感染症起炎菌の薬剤感受性.日眼会誌11:814-824,20114)Benitez-Del-CastilloJ,VerbovenY,StromanDetal:Theroleoftopicalmoxifloxacin,anewantibacterialinEurope,inthetreatmentofbacterialconjunctivitis.ClinDrugInvestig31:543-557,20115)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,20106)YamadaM,YoshidaJ,HatouS:MutationsinthequinoloneresistancedeterminingregioninStaphylococcusepidermidisrecoveredfromconjunctivaandtheirassociationwithsusceptibilitytovariousfluoroquinolones.BrJOphthalmol92:848-851,2008あたらしい眼科Vol.31,No.7,20141041 7)AdebayoA,ParikhJG,McCormickSAetal:ShiftingtrendsininvitroantibioticsusceptibilitiesforcommonbacterialconjunctivalisolatesinthelastdecadeattheNewYorkEyeandEarInfirmary.GraefesArchClinExpOphthalmol249:111-119,20118)小早川信一郎,井上幸次,大橋裕一ほか:細菌性結膜炎における検出菌・薬剤感受性に関する5年間の動向調査(多施設共同研究).あたらしい眼科28:679-687,20119)日本眼感染症学会感染性角膜炎診療ガイドライン第2版作成委員会(井上幸次委員長):第3章感染性角膜炎の治療.日眼会誌117:491-496,201310)太根伸浩,北川清隆,勝本武志ほか:高齢者の細菌性結膜炎における臨床分離菌と薬剤感受性.臨眼67:991-996,201311)Bremond-GignacD,ChiambarettaF,MilazzoS:AEuropeanperspectiveontopicalophthalmicantibiotics:currentandevolvingoptions.OphthalmolEyeDis24:29-43,201112)FintelmannRE,HoskinsEN,LietmanTMetal:Topicalfluoroquinoloneuseasariskfactorforinvitrofluoroquinoloneresistanceinocularcultures.ArchOphthalmol129:399-402,201113)KimSJ,TomaHS:Ophthalmicantibioticsandantimicrobialresistancearandomized,controlledstudyofpatientsundergoingintravitrealinjections.Ophthalmology118:1358-1363,201114)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,2010***1042あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(116)