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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の強い影響を 受けたと考えられた7 症例

2022年3月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科39(3):358.362,2022c新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の強い影響を受けたと考えられた7症例福岡秀記上野盛夫永田健児渡辺彰英森和彦外園千恵京都府立医科大学眼科学教室CSevenCasesinwhichHealthwasSigni.cantlyImpactedbytheCoronavirusDisease2019(COVID-19)PandemicHidekiFukuoka,MorioUeno,KenjiNagata,AkihideWatanabe,KazuhikoMoriandChieSotozonoCDepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineC緒言:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,2020年C4月C16日全都道府県が緊急事態宣言の対象となった.2020年C4.7月末のC4カ月間に,感染を恐れるがゆえの受診控えによる病状の進行,および著しい影響を受けた症例を報告する.症例:表層角膜移植術を必要とした両眼自己免疫性角膜穿孔(83歳,女性,兵庫県),両眼アカントアメーバ角膜炎(32歳,男性,滋賀県),両眼細菌性角膜炎による瘢痕治癒(92歳,女性,奈良県),右眼慢性閉塞隅角緑内障による失明(71歳,男性,京都府),両眼開放隅角緑内障による失明と視野狭窄(69歳,男性,京都府),右眼ぶどう膜炎続発緑内障による失明(82歳,女性,滋賀県),眼窩内容除去に至った左眼瞼脂腺癌(72歳,男性,兵庫県).結論:居住都道府県外への高齢の通院患者においては,COVID-19流行時の診療にとくに注意を要すると考えられた.不調時の眼科受診の啓発,病病連携・病診連携による近医眼科でのチェックが重要であると考えられた.CPurpose:OnApril16,2020,anationwide“StateofEmergency”wasdeclaredinJapaninresponsetoCorona-virusCDisease2019(COVID-19).CHereinCweCreportC7CelderlyCcasesCinCwhichCtheCpatient’sChealthCwasCsigni.cantlyCimpactedbytheCOVID-19pandemic.CaseReports:Thisstudyinvolved7elderlypatients(i.e.,an83-year-oldfemalewithbilateralcornealperforationduetoautoimmunedisease,a32-year-oldmalewithbilateralacanthamoe-bakeratitis,a92-year-oldfemalewithbilateralbacterialcornealinfection,a71-year-oldmalewithchronicangle-closureglaucoma,a69-year-oldmalewithbilateralprimaryopen-angleglaucoma,an82-year-oldfemalewithsec-ondaryCglaucomaCdueCtoCuveitis,CandCaC72-year-oldCmaleCwithCadvancedCeyelidCsebaceouscarcinoma)seenCatCtheCDepartmentCofCOphthalmology,CofCKyotoCPrefecturalCUniversityCofCMedicineCoverCtheC4-monthCperiodCfromCAprilCthroughJuly2020.In5ofthe7cases,thepatientpresentedfromanoutsideprefecture.Thehealthinall7caseswasCsigni.cantlyCimpactedCbyCtheCCOVID-19Cpandemic.CConclusion:StrictCattentionCshouldCbeCpaidCtoCelderlyCpatientswithoculardisorders,anditisvitalthatallpatients,especiallythosewhopresentfromanoutsideprefec-ture,CbeCinformedCofCtheCimportanceCofCundergoingCregularCfollow-upCexaminationsCatCtheirClocalChospitalsCorCeyeCclinics.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(3):358.362,C2022〕Keywords:新型コロナウイルス感染症,新型コロナウイルス,緊急事態宣言,受診遅れ,眼の悪化.COVID-19,CSARS-CoV-2,stateofemergency,delayedmedicalcheckup,worseningeyedisease.CはじめにCoV-2)によって引き起こされ,わが国においてはC2020年2019年C12月に中国で発生したとされる新型コロナウイル1月C28日に指定感染症として定められた1).その後世界でス感染症(COVID-19)は,新型コロナウイルス(SARS-COVID-19患者は激増し,世界保健機関(WorldCHealthC〔別刷請求先〕福岡秀記:〒606-8566京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学眼科学教室Reprintrequests:HidekiFukuoka,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,465Kajii-cho,Kyoto-city,Kyoto606-8566,JAPANC358(96)Organization:WHO)は,3月C11日パンデミック(世界的な流行)と発表した2).それ以降も日本国内を含む全世界で爆発的に感染拡大し,4月C7日には埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,大阪府,兵庫県および福岡県のC7都道府県に緊急事態宣言が出された.4月C16日全都道府県が緊急事態宣言の対象となり,京都府は特定警戒都道府県に位置づけられた3).その後徐々にCCOVID-19患者は減少し京都においてはC5月C21日に緊急事態宣言が解除された3).京都府立医科大学附属病院(以下,当院)は,京都府内唯一の第一種感染症指定医療機関としてCCOVID-19患者治療に最前線で取り組んでいる施設である.緊急事態宣言が出たあとは,COVID-19患者の対応を最優先とし,急を要さない一般手術の休止や入院患者の制限を行った.また,患者側からは,院内感染への警戒から定期的な受診を控えるなどの「受診控え」といえる状況がC3月よりみられはじめ,緊急事態宣言解除後も継続している.このため,なかには定期的な受診を控えたことによる明らかな眼の病状の悪化や,病状が進行してから初診受診した患者が散見される.今回,2020年C4.7月末までのC4カ月間に当院眼科を受診した患者のなかで,院内感染を恐れるがゆえの受診控えにより症状が悪化した症例および著しい影響を被ったと考えられる症例を報告する.CI症例〔症例1〕83歳,女性.2型糖尿病の治療中である.前医にてC4月初旬より両眼瞳孔領下方の角膜潰瘍に対しステロイド点眼と内服治療を行うも両眼の角膜が穿孔し前房消失した.なんらかの自己免疫疾患が角膜潰瘍の原因と考えられ,内科的な精査と治療強化の必要があった.4月下旬に前医にてCSARS-CoV-2の院内感染が発生し,新規患者の受け入れが停止された.当該施設は角膜移植などが可能で角膜穿孔に対処できる施設であったにもかかわらず精査を断念し,当院紹介となった.4月下旬当院初診時に両眼矯正視力は(0.04)であり,角膜瞳孔領下方の角膜穿孔を認め前房は浅くCSeidel試験は陽性であったため(図1a),治療用ソフトコンタクトレンズ(softCcontactlens:SCL)を装用とした.緊急入院による精査によりANCA(antineutrophilcytoplasmicantibody)関連血管炎症候群がもっとも疑われ,ステロイドC40Cmg/日全身投与に加えリツキシマブ点滴治療も行った.初診時の結膜.培養よりCCandidaalbicansが検出されたため,抗真菌治療を追加した.角膜上皮は徐々に進展しCSeidel試験陰性となった.結膜.培養の陰性化を確認し,5月中旬に全身麻酔下での両眼表層角膜移植術を行った.移植後の経過良好であり,前医でのCSARS-CoV-2の院内感染が収束し受け入れ体制が整ったため,退院し,前医での経過観察となった.7月末の時点で角膜所見は安定しており,右眼矯正視力(0.3),左眼矯正視力(0.2)と良好である.〔症例2〕32歳,男性.C2weekSCLの装用歴がある.3月中旬より両眼の見えにくさと,痛みが出現した.近医にて抗菌薬点眼の処方を受けるも悪化し,3月下旬に地元の総合病院に紹介された.SCL保存液の培養では緑膿菌とセラチアを検出し,細菌性角膜炎の診断のもとにモフロキサシン,セフメノキシム,トブラマイシンの点眼による治療が行われた.いったんは改善したように思われたが再度悪化傾向を認めたとのことで,4月上旬に当院紹介となった.当院初診時矯正視力は両眼とも手動弁と低下しており,前房蓄膿を伴う角膜中央部の細胞浸潤を認めた(図1b).所見と治療経過よりアカントアメーバ角膜炎(Acanthamoebakeratitis:AK)を疑い角膜擦過組織の染色を行った.ファンギフローラ染色にて多数の円形のシストを検出し,PCR検査にてアカントアメーバに特異的なCDNAを検出したためCAKと診断した.クロルヘキシジン点眼,ミコナゾール点眼,ピマリシン眼軟膏による治療を開始した.両眼手動弁という低視力に加え,綿密な治療が必要なため入院治療を勧めた.しかし,その頃CCOVID-19患者に対応するため入院患者数の制限と,新型コロナウイルスの持ち込みを防ぐ観点から家族を含めた面会の禁止が行われていた.AK治療には長期の入院が必要で,患者は,4人の子どもと長期の面会が不可能となることが予想された.そのため,両眼視力低下があるものの片道約C2時間の外来通院にて治療を開始した.徐々に角膜透明性を回復し,1年経過した2021年C4月時点では右眼矯正視力(0.9),左眼矯正視力(0.7)までに回復している.〔症例3〕92歳,女性.両眼レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症に対し左眼CDes-cemet膜角膜内皮移植(DescemetCmembraneCendothelialkeratoplasty:DMEK)術後である.2019年末時点で右眼矯正視力(0.4),左眼矯正視力(0.1)であった.両眼の眼脂と視力低下を自覚するも,SARS-CoV-2の感染を恐れ眼科を受診することができなかった.地元眼科受診後,ただちに紹介受診となった.初診時,両眼の角膜上皮欠損と輪部に沿って感染巣と浸潤を認めたため,細菌性角膜感染症と診断した(図1c).両眼矯正視力手動弁であった.角膜擦過物の培養検査では右眼CStreptococcusCpneumoniaeとCCoagulaseCnega-tivestaphylococci,左眼CStaphylococcusaureusを検出し,緊急入院し薬剤感受性を考慮し,1.5%レボフロキサシン点眼両眼C4回,セフメノキシム点眼両眼C2時間ごと,タリビット眼軟膏眠前で治療を開始した.徐々に上皮化を得て瘢痕治癒に至り,入院C3週間で退院,退院時の矯正視力は右眼が光覚弁,左眼が指数弁である.〔症例4〕71歳,男性.4月中旬にC10日前からの視力低下を自覚して近医受診,右眼緑内障発作とのことで当院に紹介受診した.当院初診時,右眼矯正視力光覚弁,右眼眼圧はC55CmmHgであった.著明な角膜浮腫と浅前房,中等度散大固定した瞳孔を認め原発閉塞隅角緑内障と診断し(図1d),D-マンニトール点滴に加えピロカルピンの点眼にて発作の解除を確認した.翌日の診察にて再発作を認め,右眼レーザー虹彩切開術およびレーザー隅角形成術を行い,翌日右眼矯正視力光覚弁を維持し眼圧はC14CmmHgと安定したため,右眼白内障手術と隅角癒着解離術をC5月上旬に予定した.しかし,者は新型コロナウイルスの院内感染を危惧し受診を中断されC7月中旬に受診された.受診時右眼眼圧C30CmmHgと再上昇し慢性閉塞隅角緑内障に進展しており,光覚なしの状態まで悪化が認められた.1週間後,右眼隅角癒着解離術,線維柱帯切開術および水晶体再建術,2週間後には左眼水晶体再建術を行い,最終矯正視力は右眼光覚なし,左眼(0.5),眼圧コントロールは良好である.〔症例5〕69歳,男性.眼科受診歴はない.4月下旬から眼が重たいなど軽い症状があったが,新型コロナウイルスの院内感染を恐れ病院を受診できなかった.6月下旬近医を受診し両眼眼圧C40CmmHg以上とのことで同日当院に紹介受診となった.当院初診時,両眼とも開放隅角,右眼は上方C2カ所の周辺虹彩前癒着があるのみで左眼に癒着はなく,右眼眼圧C70CmmHg,左眼眼圧40CmmHgであった.右眼矯正視力はすでに光覚なし,左眼矯正視力(0.4)であった(図1e).D-マニトール点滴にて眼圧下降した時点で視機能の残存している左眼のCGoldmann視野検査を実施したところ,湖崎分類CVaと残存視野はほとんどない状態であった.最終的な診断は,両眼開放隅角緑内障,右眼絶対緑内障であった.初診時,血圧C270/151mmHg(収縮期/拡張期)と無治療のCIII度高血圧があったため,内科での治療と,高眼圧に対しビマトプロスト点眼,ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩点眼,リパスジル点眼に加えアセタゾラミドC500Cmg/日の治療を行い眼圧は両眼C10CmmHgまで低下し,現在経過観察中である.〔症例6〕82歳,女性.右眼ぶどう膜炎,右眼続発緑内障にて当院に通院されていた.他院にてC2017年C7月に右眼硝子体混濁に対し右眼硝子体手術を施行されている.当院においては右眼網膜.離に対しC2018年C1月に右眼硝子体手術を施行されている.2018年末の段階で,Goldmann視野検査は湖崎分類CIV期であった(図1f).近年はベタメタゾン点眼,ブリモニジン点眼,ドルゾラミド塩酸塩,とチモロールマレイン酸塩の合剤点眼にて眼圧も安定し定期フォローとなっていた.新型コロナウイルスの院内感染を恐れC3月初旬の予約をC2回延期され,6月末に来院された.右眼眼圧はC28CmmHgと上昇し,光覚なく,すでに絶対緑内障の状態であった.疼痛も自制内で積極的な加療を希望されず,近医にて経過観察中である.左眼は,黄斑前膜,軽度白内障を認めるのみで矯正視力(1.2)である.〔症例7〕72歳,男性.2018年他院より左眼の原因不明の遷延性角膜上皮欠損で紹介受診された.瞼球癒着もあり眼類天疱瘡が疑われたが,右眼にとくに異常所見を認めず,2018年,2019年と組織生検を施行するも悪性の細胞所見を検出しなかった.その後,徐々に結膜.短縮が進行したためC2019年C5月に左眼の角膜上皮形成術+羊膜移植+水晶体再建術を施行した.術後しばらくは経過良好であったが,徐々に再度結膜.短縮が進行するも上皮欠損はない状態であった.4月の受診を延期されC6月末に来院された.疼痛なく左上眼瞼が急速に腫脹し,増大した腫瘍から脂腺癌が疑われた(図1g).眼形成外来で生検し,脂腺癌の病理所見を得たためC7月に左眼瞼皮膚悪性腫瘍切除および左眼窩内容除去術を施行した.現在左頸部リンパ節転移のためリンパ節郭清および頸部リンパ節郭清を施行し,抗悪性腫瘍剤(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)投与中である.以上のC7症例のうち京都府内在住がC2例(29%),京都府外在住がC5例(71%)であった.影響を受けた疾患の内訳は角膜分野C3例C6眼,緑内障分野3例4眼,眼形成分野C1例C1眼であった(表1).CII考按今回,緊急事態宣言発令前後より眼が不調であるものの,COVID-19の院内感染を恐れるがゆえに大幅に遅れて受診したため悪化した症例と,COVID-19の流行による緊急事態宣言の影響を著しく被った当科の症例について収集した.収集できたのは,4月C7日にC7都道府県,4月C16日に全都道府県に出された緊急事態宣言がC5月C21日に解除されたことで,6月以降,新型コロナウイルスの感染を恐れ受診を控えていた患者が徐々に来院されたことが大きい.最新の社会保険診療報酬支払い基金データからのレセプト件数から推察された眼科の患者数は,緊急事態宣言が出されたC4月においては前年比C65.7%,5月においてはC67.6%と顕著に減少していることがわかる.また,全診療科において特定警戒都道府県ではC73.5%,その他の都道府県ではC83.6%と減少幅が大きいことも判明しており,特定警戒都道府県においてはとくに病院の受診が控えられていたことが推察される4).COVID-19は収束がみえず流行しており,今もなお受診を控えている患者はいるのかもしれない.実際に当院における眼科外来患者数の推移は,2020年C3.7月で前年比平均73.1%,そのなかでもC4月においてはC65%,5月はC57.4%と顕著な減少が確認された.また眼科入院患者数においてもe-3図1症例画像一覧a:症例C1.自己免疫性疾患による両眼角膜穿孔(-1:右眼,-2:左眼).瞳孔領下方の穿孔により前房は両眼ほぼ消失,左眼は一部虹彩が嵌頓脱出している.Cb:症例C2.両眼アカントアメーバ角膜炎(-1:右眼,-2:左眼).円形の浸潤とともに角膜中央部の角膜後面プラークと前房蓄膿を認める.Cc:症例C3.両眼細菌性角膜感染症(-1:右眼,-2:左眼).両眼の多量の眼脂,角膜上皮欠損と輪部に沿って感染巣と浸潤を認めた.右眼水疱性角膜症,左眼CDescemet膜角膜内皮移植術(DMEK)の既往がある.Cd:症例4.右眼慢性閉塞隅角緑内障による失明(-1:右眼原発閉塞隅角緑内障解除直後,-2:右眼慢性閉塞隅角緑内障).初診時,急激な眼圧上昇により充血,浅前房とともに高度な核白内障を認める.予定再診を中断後には慢性閉塞隅角緑内障に移行していた.眼圧C30CmmHgと眼圧上昇しているが充血はほぼなく,絶対緑内障となっていた.Ce:症例C5.両眼解放隅角緑内障による失明(-1:右眼,-2:左眼,-3:左眼CGoldmann視野).両眼解放隅角,中等度核白内障を認める.右眼は中等度散瞳状態で絶対緑内障,左眼は湖﨑分類Vaと末期の緑内障の状態であった.(右眼眼圧70CmmHg,左眼眼圧C40CmmHg).f:症例6.右眼ぶどう膜炎続発緑内障による失明(-1:右眼前眼部写真,-2:右眼広角眼底写真).予定再診中断後の来院時には充血なく,すでに視神経は蒼白の状態であった.眼圧C28CmmHgで光覚なく絶対緑内障となっていた.Cg:症例C7.左眼瞼脂腺癌.後に眼窩内容除去術を行った(-1:左眼).予定再診中断後の来院時には上眼瞼の腫瘤を形成しており,疼痛なく易出血性であった.のちに眼窩内容除去施行し,病理検査ではCsebaceouscarcinomaと判明した.表1各症例のまとめ症例年齢(歳)性別居住地患眼疾患名転帰分野C1C83女性兵庫県両眼角膜穿孔穿孔閉鎖・転院角膜C2C32男性滋賀県両眼アカントアメーバ角膜炎軽快(治療中)角膜C3C92女性奈良県両眼細菌性結膜炎瘢痕治癒角膜C4C71男性京都府右眼慢性閉塞隅角緑内障失明緑内障C5C69男性京都府両眼開放隅角緑内障失明・末期緑内障緑内障C6C82女性滋賀県右眼ぶどう膜炎続発緑内障失明ぶどう膜炎・緑内障C7C72男性兵庫県左眼眼瞼脂腺癌眼窩内容除去眼瞼皮膚悪性腫瘍切除眼形成患者数の前年との比較(%)10090807060504030201003月4月5月6月7月(2020年)外来患者入院患者図2当院における外来患者数,入院患者数の前年比の推移外来患者,入院患者ともC2020年C5月がもっとも減少幅が大きかったことがわかる.2020年C3.7月で前年比平均C57.8%,とくにC5月はC35.3%とほぼC1/3となり外来患者数以上に減少していることがわかる.原因としてCCOVID-19患者の対応を最優先とし,急を要さない一般手術の休止やCCOVID-19患者対応に伴う一般病棟の看護師の減少により入院患者の制限を行ったためと考えられる(図2).今回得られた症例では,居住都道府県外を越えた通院が71%と多かった.緊急事態宣言発令下では,不要不急の居住都道府県外への移動自粛要請があり,公共交通機関を利用した移動による新型コロナウイルス感染を恐れたことなどが,府外からの患者において受診が遅れた,または延期した理由として考えられた.両眼性の角膜疾患(3例C6眼)がもっとも多い疾患であった.両眼性の角膜疾患では,両眼の視力低下により受診などの移動がむずかしくなること,角膜専門の医療施設が数多くないことなどが複合的に関連したと考えられた.緑内障が,2番目に多い眼疾患であった.3眼(75%)は,受診時点ですでに光覚のない絶対緑内障の状態となっていた.原因として新型コロナウイルスの感染を恐れ受診を控えていたのに加え,慢性に眼圧が上昇することで急激な眼の痛みや頭痛などの症状を伴わず亜急性に進行し,受診の機会を失ったのではないか5)と推察した.残りC1例は眼瞼の脂腺癌であり眼形成分野であった.この症例も痛みを伴わず腫瘍の増大が緩除であったことで,再診を延期され受診の機会を失ったと考えられた.一方,網膜.離や加齢黄斑変性などの網膜疾患の症例はなかった.今回の検討では,居住都道府県外から受診する患者については,とくに注意を要すると考えられた.また,慢性に眼圧上昇を生じることによる絶対緑内障により視機能を失った症例も多くみられた.クラスター発生などでやむをえず病院が閉鎖した際には,患者が悪影響を受けないよう他病院との綿密な連携も必要である.今なお収束のみえないCCOVID-19が流行している間,不調時の眼科受診の啓発,病病連携・病診連携による近医眼科でのチェックがとくに重要であると考えられた.文献1)厚生労働省Chttps://www.mhlw.go.jp/content/10900000/C000589747.pdf2)WorldChealthorganizationChomepage:https://www.who.Cint/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/Cevents-as-they-happen3)内閣官房ホームページChttps://corona.go.jp/news/news_C20200421_70.html4)社会保険診療報酬支払基金Chttps://www.ssk.or.jp/tokeijoho/Cgeppo/geppo_r02.html5)KhawCPT,CShahCP,CElkingtonAR:GlaucomaC─C1:Diag-nosis.BMJC328:97-99,C2004***