‘球結膜充血’ タグのついている投稿

0.002%オミデネパグイソプロピル点眼液(エイベリス)の 6 カ月の眼圧下降効果と安全性の検討

2022年1月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科39(1):105.111,2022c0.002%オミデネパグイソプロピル点眼液(エイベリス)の6カ月の眼圧下降効果と安全性の検討清水美穂*1池田陽子*2,3森和彦*2,3上野盛夫*3今泉寛子*1吉井健悟*4木下茂*5外園千恵*3*1市立札幌病院眼科*2御池眼科池田クリニック*3京都府立医科大学眼科学*4京都府立医科大学生命基礎数理学*5京都府立医科大学感覚器未来医療学Six-MonthEvaluationoftheSafetyandE.cacyof0.002%OmidenepagIsopropylfortheReductionofIntraocularPressureinPrimaryOpenAngleGlaucomaMihoShimizu1),YokoIkeda2,3)C,KazuhikoMori2,3)C,MorioUeno3),HirokoImaizumi1),KengoYoshii4),ShigeruKinoshita5)andChieSotozono3)1)DepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospital,2)Oike-IkedaEyeClinic,3)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,4)DepartmentofMathematicsandStatisticsinMedicalSciences,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,5)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineC0.002%オミデネパグイソプロピル点眼液(エイベリス)の眼圧下降効果と安全性について検討した.市立札幌病院と御池眼科池田クリニックでエイベリスを投与した広義原発開放隅角緑内障(POAG)患者C56例C56眼のうち新規/追加投与例を追加群,他剤からの切替え例を切替え群とし,投与前,1,3,6カ月後の眼圧と安全性を検討した.6カ月眼圧測定可能であった追加群C19例,切替え群C20例では,追加群で投与前,1,3,6カ月の全期間で有意に下降(p<0.001/<0.001/0.001)し,切替え群はC1カ月後のみ有意に下降(p=0.003)した.中心角膜厚は投与前と比較しC6カ月で有意に肥厚した.球結膜充血例はC14例で点眼継続,1例で中止,虹彩炎C3例と.胞様黄斑浮腫C1例は投与を中止した.CPurpose:ToCevaluateCtheCsafetyCandCe.cacyCofC6-monthComidenepagCisopropylCophthalmicCsolution0.002%(EYBELIS;SantenPharmaceutical)eye-dropinstillationforintraocularpressure(IOP)reductioninJapanesepri-maryopen-angleglaucoma(POAG)patients.Subjectsandmethods:Thisstudyinvolved56eyesof56JapanesePOAGpatientswhowerenewlyadministeredEYBELISforIOPreduction.Thepatientsweredividedintothefol-lowing2groups:.rstadministration/additionaldruggroup,andswitchinggroup.IOPatpre-treatmentandat1-,3-,and6-monthsposttreatmentinitiationandadverseeventswerecomparedbetweenthe2groups.Results:InbothCgroups,CIOPCsigni.cantlyCdecreasedCoverCtheCentireCperiodCinCtheCorderCofCpre-treatment,C1-,C3-,C6-monthsCposttreatmentinitiation,respectively,withsigni.cantIOPdecreaseonlyat1-monthpostinitiation.At6-monthspostCtreatmentCinitiation,CmeanCcentralCcornealCthicknessCwasCsigni.cantlyCincreased.CConclusion:EYBELISCwasCfoundsafeande.ectiveforIOPreduction,yetwasdiscontinuedin5ofthe56patientsduetocysticmacularede-ma,iritis,andconjunctivalhyperemia.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(1):105.111,C2022〕Keywords:オミデネパグイソプロピル,EP2,眼圧下降効果,中心角膜厚,球結膜充血.omidenepagisopropyl,EP2,IOPreductione.ect,centralcornealthickness,conjunctivalinjection.Cはじめに動薬として日本で開発され,緑内障,高眼圧症治療薬の製造オミデネパグイソプロピル(エイベリス,参天製薬)は,販売承認を取得した点眼液である1).その作用機序は,EP22018年C9月に世界で初めて,プロスタノイド受容体CEP2作受容体を介した平滑筋弛緩作用により,おもにぶどう膜強膜〔別刷請求先〕清水美穂:〒060-8604北海道札幌市中央区北C11条西C13丁目C1-1市立札幌病院眼科Reprintrequests:MihoShimizu,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospital,1-1,Nishi13-Chome,Kita11-Jo,Chuo-Ku,Sapporo,Hokkaido060-8604,JAPANC流出路から,さらには線維柱帯流出路からの房水排出促進作用により眼圧を下降させ,1日C1回点眼でラタノプロストに非劣性の優れた眼圧下降効果を有するとされている1,2).先に筆者らはC0.002%オミデネパグイソプロピル点眼液(エイベリス)の短期(1カ月)眼圧下降効果と安全性について報告した3).今回はC6カ月の眼圧下降効果と安全性についてレトロスペクティブに検討し報告する.CI対象および方法対象は,市立札幌病院と御池眼科池田クリニックに通院中の広義原発開放隅角緑内障(primaryCopenCangleCglauco-ma:POAG)患者のうちC2018年C12月.2020年C2月にエイベリスを処方した両眼有水晶体患者C56例(男性C11例,女性45例,平均年齢C64.4C±11.7歳)である.エイベリス新規投与を新規群,追加投与を追加群とし,両群合わせて新規投与群と設定,また,プロスタグランジン(prostaglandin:PG)関連薬やその他点眼薬からのC1対C1対応もしくは配合剤からの切替え投与した患者を切替え群とし,投与前,1,3,6カ月後の眼圧,中心角膜厚を測定した.眼圧測定については,エイベリス点眼前の複数回(1.3回)の平均眼圧値をベースライン眼圧として採用した.エイベリスの追加投与は,経過からより眼圧下降が必要と思われる患者に対し,1日C1回で眼圧下降効果が従来型のCPG関連薬と眼局所症状の副作用が出現しないエイベリスについて説明し,エイベリスを希望した患者に処方した.切替え例の場合,従来型のCPG関連薬の副作用である眼局所症状を辛く嫌だと感じている患者にエイベリス点眼について説明し,患者が希望した場合に処方した.片眼投与の場合はその投与眼を,両眼の場合は右眼のデータを選択した.投与前の眼圧下降薬については,合剤は2,内服はC1錠をC1として点眼数をスコア化した.病型別では,狭義CPOAG17例(男性C6例,女性C11例),正常眼圧緑内障(normalCtensionglaucoma:NTG)39例(男性C5例,女性34例)であった(表1a).眼圧解析は,6カ月以内に投与を中止したC13例,来院なしまたは転居のため投与打ち切りとしたC4例を除外した狭義CPOAG10例(男性C4例,女性C6例),NTG29例(男性C4例,女性C25例)で,安全性は全症例(56例)で検討した.眼圧は,各施設とも同一験者が圧平眼圧計で測定し,黄斑の評価は光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)を用いた.測定機器はCOCT,角膜厚の順に,御池眼科池田クリニック:RS-3000Advance(ニデック),EM-3000(トーメーコーポレーション),市立札幌病院:スペクトラリス(ハイデルベルグ社製),CEM-530(ニデック製)を使用した.眼底所見は,受診時には毎回診察し,またエイベリス投与前,投与後1,3,6カ月時点で必ず,および患者が視力低下などの訴えがあった場合にCOCTを実施し,黄斑部の精査確認を行った.眼圧の変化および角膜厚の変化が経過時間で差があるかについて,経過時間を固定効果とし,投与前(0),1,3,6カ月を符号化し,被験者はランダムな効果とする混合モデルにより分析した.また,経過時間を量的データとした混合モデルにより,眼圧および角膜厚の増加または減少の傾向性があるかの傾向性の検定を実施した.統計解析にはCTheCRsoftware(version4.0.3)を用い,有意水準は5%未満とした.なお,この研究はヘルシンキ宣言を基礎として厚生労働省の臨床研究に関する倫理指針に準拠し,市立札幌病院倫理審査委員会,京都府立医科大学倫理審査委員会による研究計画書の承認を得て実施した.症例データに関しては匿名化したのち,臨床にかかわらない共筆者が統計解析を行った.表1a対象の内訳全症例(男/女)56(C11/45)その内C⇒6カ月眼圧測定可能例(男/女)39(C8/31)年齢(歳)C64.4±11.7C60.3±12.3狭義CPOAG17(C6/11)10(C4/6)CNTG39(C5/34)29(C4/25)病型病型表1b6カ月眼圧測定可能例の内訳新規群(男/女)追加群(男/女)切替え群(男/女)17(C4/13)2(0C/2)20(C4/16)年齢(歳)C56.6±14.0C52.5C64.1±10.2狭義CPOAG3(3C/0)1(0C/1)6(1C/5)CNTG14(C1/13)1(0C/1)14(C3/11)POAG:開放隅角緑内障,NTG:正常眼圧緑内障.年齢は平均±標準偏差を示す.C106あたらしい眼科Vol.39,No.1,2022(106)表2新規投与群の投与前,1,3,6カ月後の眼圧変化期間眼圧(mmHg)p値*投与前C14.1±3.91カ月C11.9±3.1<0.0013カ月C11.7±3.1<0.0016カ月C12.0±2.40.001眼圧は平均±標準偏差を示す.*投与前との比較(混合モデルによる検定).表3a切替え群の内訳ならびに投与前1,3,6カ月後の眼圧変化症例数投与前切替え前眼圧1M後眼圧3M後眼圧6M後眼圧(男/女)(%)点眼数(mmHg)(mmHg)(mmHg)(mmHg)全体20(5/15)C2.0C13.3±3.2C11.8±1.6*C12.7±4.2C12.8±2.7C切替点眼PG11(2/9)C2.0C13.9±1.1C11.4±0.9*C11.6±1.4C11.6±1.5(55.0)Cb5(1/4)C1.0C14.2±5.0C10.5±2.1C13.2±4.3C13.0±1.7(25.0)2(1/1)CPG+b(10.0)C3.0C12.0C13.0C13.0C13.0Ca1刺激薬1(0/1)C1.0C18C18C17C18(5.9)Cab1(1/0)C1.0C11C11C10C10(5.0)PG:プロスタグランジン,Cb:b遮断薬,Cab:ab遮断薬.眼圧は平均C±標準偏差を示す.*p<0.05vs切替前眼圧(混合モデル).表3bPGからの切替え群の内訳ならびに投与前,1,3,6カ月後の眼圧変化PG関連薬内訳ビマトプロストラタノプロストタフルプロストトロボプラスト症例数(男/女)(%)6(0/6)(54.5)3(1/2)(27.3)1(0/1)(9.0)1(0/1)(9.0)投与前点眼数C1.6C2.5C3.0C1.0C切替前眼圧(mmHg)C13.5±2.1C12.3±2.1C19.0C11.0C1カ月後眼圧(mmHg)C12.1±2.0*C11.6±2.5C11.0C11.0C3カ月後眼圧(mmHg)C13.6±3.2C11.6±2.5C10.0C11.0C6カ月後眼圧(mmHg)C13.3±3.0C12.3±3.1C10.0C11.0C眼圧は平均±標準偏差を示す.*p<0.05vs切替前眼圧(混合モデル).II結果対象の背景は,表1に示すように,男女比はC1:3で女性が多く,平均年齢はC64.4C±11.7歳だった.そのうちC6カ月以内に投与を中止したC13例と,打ち切りとしたC4例を除外したC39例についての解析では,新規投与群C19例(うち新規17例,追加C2例),切替え群C20例であり,追加群(2例)についての前投薬は,1%ドルゾラミド塩酸塩,2%カルテオロール塩酸塩がそれぞれC1例ずつだった.切替え群の切替え前の点眼は,PG関連薬C11例(55.0%),b遮断薬C5例(25.0%),PG+b配合剤C2例(10.0%),ab遮断薬C1例(5.0%),Ca1刺激薬C1例(5.0%)であった(表3a).眼圧解析の結果であるが,新規投与群のエイベリス投与前ベースライン眼圧値はC14.1CmmHgであり,投与前に測定できた回数は1回C2例,2回5例,3回C12例,切替え投与群は,ベースライン眼圧値はC13.6CmmHg,投与前測定回数は1回C3例,2回C2例,3回C15例であった.新規投与群(新規+追加)の眼圧は,投与前,1,3,6カ月後の順に,14.1C±25.0p=0.00125.0p=0.159p<0.001p<0.071p<0.001p<0.00320.0眼圧(mmHg)眼圧(mmHg)15.010.05.00.00.0投与前136(カ月)投与前136(カ月)図1a追加(新規+追加)群での投与前/1/3/6カ月後の眼圧変化図1b切替え群での投与前/1/3/6カ月後の眼圧変化追加群では,全期間で有意な眼圧下降がみられた.切替え群では,投与C1カ月後のみ有意な眼圧下降がみられた.C25.0p=0.177p<0.001p=0.105p=0.004眼圧(mmHg)20.0p=0.019600p=0.001角膜厚(μm)550500n=56n=50n=49n=394500.0投与前136(カ月)p<0.001(傾向性の検定)400図2PG関連薬からの切替えでの投与前/1/3/6カ月後の眼圧変化PG関連薬からの切替えでは,投与C1カ月後のみ有意な眼圧下降がみられた.C3.9/11.9±3.1/11.7±3.1/12.0±2.4CmmHgと全期間において投与前と比べ有意に下降(p<0.001/<0.001/0.001)し(表2,図1a),切替え群は,投与前,1,3,6カ月後の順に,13.3C±3.2/11.8±1.6/12.7±4.2/12.8±2.7CmmHgとC1カ月後のみ有意に下降した(p=0.003/0.071/0.159)(表3a,図1b).切替え群はCPGからの切替えがC11例(55.0%)と最多(表3a)であり,投与前,1,3,6カ月後の順に,13.9C±1.1/11.4±0.9/11.6±1.4/11.6±1.5mmHgとC1カ月後のみ有意に下降した(p=0.019/0.105/0.117)(表3a,図2).エイベリスに切り替えた点眼の詳細は表3bのように,ピマトプロスト54.5%,ラタノプロストC27.3%,タフルプロストC9.0%,トラボプロストC9.0%であり,ビマトプロストでC1カ月後のみ有意な下降を示したが,最終的にはいずれもC6カ月後の眼圧下降に有意差がなかった(表3b).中心角膜厚は,各期間における投与中止/打ち切り症例を除外し,測定値は投与前/1/3/6カ月後の順に,524.0C±44.2/527.0±41.2/530.9±40.4/534.0±41.6Cμmと投与前と比較してすべての期間で有意に肥厚し(p<0.05),傾向検定では,投与前に比べC1,3,6カ月と有意な増加傾向を認めた(p<0.001).投与C6カ月後での平均変化量はC18.0C±14.8Cμm,最大変化量はC64.0μmであった(図3).C108あたらしい眼科Vol.39,No.1,2022投与前136(カ月)投与前523.9±44.2μm1カ月527.0±41.2μm3カ月530.9±40.4μm6カ月534.0±41.6μm平均変化量14.7±14.5μm最大変化量64.0μm図3全症例での投与前1/3/6カ月後の中心角膜厚の変化投与前と比較してどの期間においても角膜は有意に肥厚した.傾向検定において角膜厚は有意に増加した(p<0.001).副作用について(表4),6カ月投与継続できた症例では,球結膜充血C14例(25.0%),表層角膜炎C8例(14.3%),かゆみC2例(3.6%)であった.眼瞼色素沈着,上眼瞼溝深化の出現はなかった.6カ月時点までで投与中止した症例はC13例(23.2%)で,その内訳は,虹彩炎C3例(5.4%%),頭痛C2例(3.6%),かすみC2例(3.6%),球結膜充血C2例(3.6%),黄斑浮腫C1例(1.8%),眼痛C1例(1.8%),眼瞼炎C1例(1.8%),かゆみC1例(1.8%)であった.なおC4例(3.1%)を来院なしもしくは転居のため打ち切りとした.頭痛,球結膜充血,かすみ,眼痛,眼瞼炎,かゆみは投与中止で速やかに改善し,虹彩炎はエイベリス投与を中止しC0.1%フルオロメトロンC3回/日点眼でC2.3週後に改善した(表5).黄斑浮腫の症例について,本症例は基礎疾患として糖尿病を有していたがルミガンからの両眼切替え投与開始時点でのCHbA1cはC7.2%であり,開始時,投与C1カ月後の時点では糖尿病網膜症は認め(108)表4副作用A)投与継続(2C4例/C56例;4C2.8%)B)投与中止(1C3例/C56例;2C3.2%)中止までの期間(日)球結膜充血14例(2C5.0%)虹彩炎3例(5C.4%)C115表層角膜炎8例(1C4.3%)頭痛2例(3C.6%)C30かゆみ2例(3C.6%)かすみ2例(3C.6%)C22球結膜充血2例(3C.6%)C30眼痛1例(1C.8%)C124眼瞼炎1例(1C.8%)C30黄斑浮腫1例(1C.8%)C90かゆみ1例(1C.8%)C1524例(3C.1%)は来院なし/転居のため打ち切り.表5虹彩炎の経過(3例/56例)症例C1C2C3性別/年齢女C/61男C/67女C/66自覚症状球結膜充血球結膜充血球結膜充血他覚所見前房細胞前房細胞前房細胞角膜後面沈着物角膜後面沈着物角膜後面沈着物発現までの期間(日)C101C119C126治癒までの期間(日)C20C10C14炎症惹起疾患なしなしなし治療0.1%フルオロメトロン0.1%フルオロメトロン0.1%フルオロメトロン3回/日点眼3回/日点眼3回/日点眼表6黄斑浮腫の経過(1例/56例)視力右眼眼圧(mmHg)糖尿病網膜症CHbA1c(%)CUN(mg/dCl)CCr(mg/dCl)CeGFR(mCl/分/C1.73Cm2)浮腫出現前(1C.0)C20なしC7.2C13.8C0.9C66.9浮腫出現時(1C.0)C(投与C3カ月)18単純型(黄斑浮腫出現)C8.6C14.9C0.94C63.5投与中止STTA施行6カ月後(0C.8)C18単純型(黄斑浮腫軽減)C10.1C15.9C0.75C81.3STTA:トリアムシノロンアセトニドCTenon.下注射,UN:尿素窒素,Cr:クレアチニン,eGFR:糸球体濾過量.ず,OCTで黄斑部網膜を確認したが,浮腫は認めなかった.中止,トリアムシノロンアセトニドのCTenon.下注射後は,しかし,投与開始からC3カ月後の眼底検査時にわずかな網膜浮腫は改善傾向であるが白内障の進行がみられ,視力(0.8)出血,黄斑部に毛細血管瘤がみられる単純型糖尿病網膜症がと若干低下し経過観察中である(表6).出現しており,OCTにて黄斑浮腫を確認した.その時点でのCHbA1cはC8.6%と増悪が認められた.浮腫出現前,出現CIII考按時ともに右眼視力(1.0)で低下はなかった.エイベリス投与本調査の対象について,新規投与群,切替え群ともに圧倒的に女性が多く,切替えの内訳はCPG関連薬が半数以上であった.エイベリスは,PG関連薬の副作用である眼瞼色素沈着や上眼瞼溝深化が出現しない1)とされ,PGからの切替え投与で眼瞼色素沈着や上眼瞼溝深化が改善した報告がある3,4).そのため新規・切替え選択ともに整容面に影響しにくいエイベリスの選択を女性が多く行ったためと考える.第CIII相長期投与試験(RENGEstudy)4.6)では,エイベリスのC52週にわたる単独投与において,ベースライン眼圧(低眼圧群:18.71C±1.68mmHg,高眼圧群:24.06C±2.36mmHg)に比べ,低眼圧群ではC.3.66±0.34CmmHg,高眼圧群ではC.5.64±0.49CmmHgと安定した眼圧下降がみられ,その眼圧変化量はベースライン眼圧が高いほうがより多かったことを報告している.本調査では,追加群において,ベースライン眼圧C14.1C±4.0CmmHgから投与C1カ月後C11.9C±3.1CmmHgとC2.2CmmHgの下降,その後もC6カ月までのどの期間においても投与前比C2CmmHg程度の眼圧下降を保持できたが,既報4.6)よりも少ない変化量であった.本調査はCNTGが多く,ベースライン眼圧の低さが眼圧変化量の少なさに関係した可能性があるが,既報4.6)よりも眼圧変化量は低い値ではあるもののエイベリスのC6カ月にわたる安定した眼圧下降効果が示された結果と考える.一方,Inoue7)らはCNTGを対象としたエイベリス投与C54眼(新規C52,切替えC2眼)の眼圧下降率について,投与前のベースライン眼圧はC15.7C±2.6CmmHgで,その眼圧下降率は投与後C1.2カ月でC10.6C±12.8%,3.4カ月でC12.8C±12.0%と報告している.本調査の対象はCNTGが多く,Inoueら7)との比較のためCNTGかつ追加群のみ(新規C14,追加1)を抽出し同様に眼圧下降率を算出してみると,ベースライン眼圧はC14.0C±12.7CmmHgで,眼圧下降率は投与C1カ月でC14.5C±10.4%,3カ月でC12.2C±11.8%,6カ月でC5.6C±8.6%であった.Inoueら7)の報告と比べ本調査のほうがベースライン眼圧は低いが,その眼圧下降率はC1カ月ではやや高く,3カ月では同等であった.またAiharaら8)は日本人のCPOAG/高眼圧症患者におけるエイベリス投与C4週後にベースライン眼圧C23.8C±1.4CmmHgから24.9%下降したと報告している.この報告はCInoueら7)や本調査よりも眼圧下降率が大きく,ベースライン眼圧が高いことがこの結果に影響していると考えられた.本調査での切替え投与群においては,PG関連薬からの切替え投与でC1カ月後に有意な眼圧下降が得られ,それ以降C6カ月後まで有意差はなかったものの上昇なく眼圧を維持できた.この結果については,第CII相,第CIII相試験(AYAMEstudy)8,10,11)と同様に従来CPG関連薬に対して非劣性であることを示した結果と考える.本調査での安全性について,最多の副作用は球結膜充血(25.0%)で既報12.14)のC22.8%とほぼ同様の結果であったが,中止はC2例のみでありC96.4%で継続投与が可能であった.最新の市販後調査14)において投与継続で軽減したとする報告,Teraoら15)のエイベリス点眼後の充血はC120分後には改善するという報告など,点眼時間の工夫や投与開始前の十分な説明によって患者が自己中断や離脱することなく投与継続可能と考える.同様の調査14)では,3カ月の長期経過観察期間において副作用による中止はC71例/721例(9.8%),本調査ではC13例/56例(23.2%)にみられ,その原因(来院なしを除く)は虹彩炎C3例(5.4%)が最多で,既報のC0.3%14)に比して多い結果であった.このC3例については投与開始からC101.126日後と市販後調査よりやや遅く出現し,これらの自覚症状はC3例とも結膜充血であった.いずれも前房内の細胞数は軽度で全例に微細な角膜後面沈着物が出現していたため,エイベリス投与を中止し,0.1%フルオロメトロン点眼によりC10.20日で改善した.これらの症例では眼圧上昇など視機能への影響はなく,ぶどう膜炎の既往や糖尿病などの炎症を起こしやすい基礎疾患は認めなかった.エイベリスの炎症惹起メカニズムは明らかではなく,本調査で市販後調査に比べ虹彩炎が多かった理由も明確ではないが,既報での注意喚起14)から慎重に前房内の観察を行ったため,ごくわずかな変化も炎症所見としてとらえた可能性はある.しかしながら,炎症の既往のない症例や,球結膜充血の訴えのみの症例であっても,虹彩炎発症の可能性があることを常に念頭に置き,角膜後面沈着物の出現や炎症所見を見逃さないことが大切である.点眼処方に関係なく角膜後面の色素沈着やCguttataのような紛らわしい所見をもつ症例も存在するため,角膜後面沈着物の所見がもともと存在していたものかエイベリス処方後出現したのかを区別するために,エイベリス処方前に角膜内皮面の所見をよく観察し記載しておくことが望ましいと考える.今回の調査では.胞様黄斑浮腫がC1例に出現した.本症例は基礎疾患として糖尿病を有していたが,投与開始時点においてCHbA1c7.2%であり糖尿病網膜症は認めなかった.しかし,投与開始からC3カ月後の眼底検査時にわずかな網膜出血,黄斑部に毛細血管瘤がみられる単純型糖尿病網膜症が出現しており,OCTにて黄斑浮腫を確認した.その時点でのHbA1cはC8.6%と増悪が認められたことから,本症例は短期間の急激な血糖コントロール悪化による糖尿病網膜症出現に伴う黄斑浮腫である可能性が高いと考えた.とくに網膜血管病変をきたしやすい基礎疾患を有する患者への投与については,より注意深いCOCTでの経過観察を行い,万が一黄斑浮腫が出現した際には血液検査データの参照,全身状態の把握に努め,それがエイベリスによるものか基礎疾患の増悪のためかを区別する必要がある.今回の調査では中心角膜厚はエイベリス処方前と比べ全期間で肥厚し,6カ月時点での平均変化量はC14.7C±14.5Cμmであった.Suzukiらが報告したように,中心角膜厚がC10Cμm肥厚すると眼圧はC0.12CmmHg高く測定される16)ことを踏まえると,今回の検討での眼圧変化は平均変化量からの算出でC0.12×1.4=0.17mmHg,最大変量64μmの変化でも0.76CmmHg程度であり,臨床上問題となる眼圧変化ではないと考えられる.しかしながら,本検討においての中心角膜厚は投与開始からC6カ月の間,傾向性の検定で有意に増加傾向を認めている(p<0.001)ため,エイベリス投与継続により中心角膜厚の肥厚がさらに進むのか,どこかでプラトーに達するのか今後も経過観察を要する.今回の検討は後ろ向きの検討で,かつ症例数が少ないこと,症例の性別比に大きな差があること,対象年齢にばらつきが大きいこと,カルテベースであり点眼コンプライアンスなど未確認であることという限界はあるが,追加投与でC6カ月間眼圧下降効果があることが確認できた.また,安全性の面では従来の報告よりも虹彩炎が多いこと,臨床上の問題とはなってはいないが中心角膜厚の肥厚の進行が確認された.これらの要旨は,第C31回日本緑内障学会で発表した.文献1)相原一:EP2受容体作動薬.FrontiersofGlaucomaC57:C54-60,C20192)FuwaCM,CTorisCCB,CFanCSCetal:E.ectCofCaCnovelCselec-tiveEP2receptoragonist,omidenepagisopropyl,onaque-oushumordynamicsinlaser-inducedocularhypertensivemonkeys.JOculPharmacolTherC34:531-537,C20183)清水美穂,池田陽子,森和彦ほか:0.002%オミデネパグイソプロピル点眼液(エイベリス)の短期眼圧下降効果と安全性の検討.あたらしい眼科37:1008-1013,C20204)NakakuraS,TeraoE,FujisawaYetal:Changesinpros-taglandin-associatedCperiorbitalCsyndromeCafterCswitchCfromconventionalprostaglandinF2atreatmenttoomide-nepagCisopropylCinC11CconsecutiveCpatients.CJCGlaucomaC29:326-328,C20205)AiharaH,LuF,KawataHetal:Six-monthresultsfromtheCRENGEstudy:OmidenepagCisopropylClowersCIOPCinCsubjectsCwithCopen-angleCglaucomaCandCocularChyperten-sion.C36thCWorldCOphthalmologyCCongress,CBarcelona,C20186)AiharaCH,CLuCF,CKawataCHCetal:12-monthCe.cacyCandCsafetystudyofanovelselectiveEP2agonistomidenepagisopropylCinCOAGCandOHT:theCRENGECstudy.CAmeri-canAcademyofOphthalmologyannualmeeting,Chicago,20187)InoueCK,CInoueCJ,CKunimatsu-SanukiCSCetal:Short-termCe.cacyCandCsafetyCofComidenepagCisopropylCinCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucoma.CClinCOphthalmolC14:C2943-2949,C20208)AiharaCM,CLuCF,CKawataCHCetal:OmidenepagCisopropylCversusClatanoprostCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCandCocularhypertension:theCphaseC3CAYAMECstudy.CAmJOphthalmolC220:53-63,C20209)AiharaCM,CLuCF,CKawataCHCetal:PhaseC2,Crandomized,Cdose-.ndingCstudyCofComidenepagCisopropyl,CaCselectiveCEP2Cagonist,CinCpatientCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorocularhypertension.JGlaucomaC28:375-385,C201910)LuF,AiharaM,KawataHetal:APhase3trialcompar-ingComidenepagCisopropyl0.002%CwithClatanoprostC0.005%CinCprimaryCopen-angleCglaucomaCandCocularChyperten-sion:theAYAMEstudy.ARVO,Honolulu,201811)AiharaCM,CLuCF,CKawataCHCetal:TheCpivotal,CphaseC3CAYAMEstudy:OmidenepagCisopropyl0.002%CisCnon-inferiorCtoClatanoprost0.005%CinCreducingCintraocularCpressure.C36thCWorldCOphthalmologyCCongress,CBarcelona,C201812)参天製薬株式会社:エイベリス点眼液C0.002%特定使用成績調査中間集計結果.13)参天製薬株式会社:エイベリス点眼液C0.002%第C3回市販後安全性情報.201914)参天製薬株式会社:エイベリス点眼液C0.002%適正使用ガイド.202015)TeraoCE,CNakakuraCS,CFujisawaCYCetal:TimeCcourseCofCconjunctivalhyperemiainducedbyomidenepagisopropylophthalmicCsolution0.002%:aCpilot,CcomparativeCstudyCversusCripasudil0.4%.CBMJCOpenCOphthalmolC5:1-6,C202016)SuzukiCS,CSuzukiCY,CIwaseCACetal:CornealCthicknessCinCanophthalmologicallynormalJapanesepopulation.Ophtal-mologyC112:1327-1336,C2005***