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貯留囊胞が疑われた非典型的な結膜封入囊胞の症例

2023年1月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科40(1):122.124,2023c貯留.胞が疑われた非典型的な結膜封入.胞の症例南出みのり*1,2横井則彦*1外園千恵*1*1京都府立医科大学大学院視機能再生外科学*2京都市立病院眼科CAnAtypicalCaseofConjunctivalEpithelialInclusionCystSuspectedasRetentionCystMinoriMinamide1,2),NorihikoYokoi1)andChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)DepartmentofOphthalmology,KyotoCityHospitalC結膜封入.胞は,結膜上皮が結膜実質中に迷入,増殖し,上皮の杯細胞から分泌される粘液が貯留する疾患であり,結膜.胞の多くを占める.今回,貯留.胞様の所見を呈した非典型的な封入.胞の症例を経験した.患者はC46歳,女性.幼少期より右眼の結膜.胞を指摘され,経過観察されていたが,整容面での手術希望があり京都府立医科大学附属病院紹介となった.初診時,右眼鼻側の球結膜に上眼瞼結膜と連続する.胞病変を認めた.耳側の上眼瞼結膜に瘢痕があり,結膜炎の既往が疑われた.また,前眼部光干渉断層計で.胞内に高反射の内容物を認めた.本症例では,当初,.胞の存在部位や結膜炎の既往から貯留.胞が疑われたが,病理組織学的検査で結膜封入.胞と診断された.結膜.胞では,所見が非典型的な例も存在するため,術前に病歴や臨床所見から診断を予想するとともに,鑑別診断には病理組織学的検査が不可欠であると考えられた.CAconjunctivalepithelialinclusioncyst(CEIC)isadiseaseinwhichtheconjunctivalepitheliummigratesintotheCparenchymaCandCproliferates,CbeingCaccompaniedCbyCaCretentionCofCmucusCsecretedCbyCtheCgobletCcellsCofCtheCmigratedCepithelium.CHereinCweCreportCtheCcaseCofCaC46-year-oldCfemaleCwithCanCatypicalCCEICCinCherCrightCeyeCpresentingCwithCaCretentionCcyst-likeC.nding.CTheCpatientChadCbeenCawareCofCtheCcystCsinceCchildhood,CandCwasCreferredtoourclinicduetoherrequestofsurgeryforcosmeticreasons.Inthe.rstvisit,therewasaconjunctivalcystonthenasalbulbarconjunctivathatwascontiguouswiththeupperpalpebralconjunctiva,andascaronthetemporalupperpalpebralconjunctiva.Inthiscase,aretentioncystwassuspectedbasedonthelocationofthecystandthepatient’shistoryofconjunctivitis,yettheresultsofapathologicaldiagnosisrevealedthatshehadaCEIC.SinceCsomeCCEICCcasesCareCatypicalCinCtheirC.ndings,CaChistopathologicalCexaminationCisCessentialCforCaCdi.erentialCdiagnosis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(1):122.124,C2023〕Keywords:結膜封入.胞,貯留.胞,結膜.胞,前眼部光干渉断層計.conjunctivalepithelialinclusioncyst,re-tentioncyst,conjunctivalcyst,anteriorsegmentopticalcoherencetomography.Cはじめに結膜上皮細胞で被覆された腔内に液状内容物を有する.胞性病変を結膜.胞という.結膜.胞は,封入.胞,貯留.胞,リンパ.胞に分類され,その多くは封入.胞である.結膜.胞は特発性のものがほとんどであるが,手術,外傷,慢性炎症なども契機になる1).封入.胞は結膜上皮が実質中に迷入,増殖し,上皮の杯細胞から分泌される粘液が貯留したもの,貯留.胞は涙腺の導管の閉塞により,.胞状に拡張した導管内に涙液が貯留したもの,リンパ.胞は結膜リンパ管が拡張し.胞様の外観をとるものである.今回,貯留.胞様の所見を呈した非典型的な結膜封入.胞の症例を経験したので報告する.CI症例患者:46歳,女性.既往歴:幼少期より右眼の内眼角部に結膜.胞を指摘されていたが,「奥のほうまであるので手術はできない」といわれて経過観察されていた.現病歴:2021年C8月,整容面で手術を希望され,前医を受診し,手術加療目的に京都府立医科大学附属病院紹介とな〔別刷請求先〕南出みのり:〒602-8566京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学Reprintrequests:MinoriMinamide,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,465Kajii-cho,Kamigyo-ku,Kyoto602-8566,JAPANC122(122)0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(122)C1220910-1810/23/\100/頁/JCOPY図1初診時所見a:右眼の鼻側結膜に眼瞼結膜に連続する.胞(.)および耳側の上眼瞼結膜に瘢痕性変化を認める.Cb:前眼部COCTで.胞内に高反射の内容物を認める.図3切除された結膜.胞の病理組織所見.胞壁は杯細胞(.)を含む結膜様上皮である.※は.胞腔内を示す.(Hematoxylin-Eosin染色).図2術前MRI所見a:右眼の鼻側結膜表面にCT1強調画像で低信号の病変(.)を認める.Cb:右眼の鼻側結膜表面にCT2強調画像で高信号の病変(.)を認める.Cc:右眼の鼻側結膜表面に脂肪抑制で抑制されない病変(.)を認める.図4術後所見手術のC2カ月後,.胞の再発なく経過している.った.初診時所見:視力は右眼C0.6(1.2C×sph+1.75D),左眼C1.2(1.5C×sph+0.75D),眼圧は右眼C12mmHg,左眼C10mmHgであった.右眼の鼻側結膜に眼瞼結膜に連続する.胞および耳側の上眼瞼結膜に瘢痕所見を認めた(図1a).また,前眼部光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)CSS-1000CASIA(トーメーコーポレーション)で.胞内に高反射の内容物を認めた(図1b).全身検査所見:前医で結膜腫瘍が疑われたため,頭部MRIを撮像した.その結果,右眼の鼻側結膜表面にCT1強(123)あたらしい眼科Vol.40,No.1,2023C123調画像で低信号(図2a),T2強調画像で高信号(図2b),脂肪抑制で抑制されない病変(図2c)を認めた.臨床経過:手術で右眼の結膜.胞を切除する方針とした.まず,右眼の.胞性病変の内容液を注射器で吸引した.上眼瞼結膜の瘢痕の辺縁に沿って.胞を切除し,周囲の組織と癒着している部位を丁寧に.離したのち,結膜欠損部に羊膜移植を施行した.内容液の塗沫検査では炎症性残渣と一部に炎症細胞を認めた.病理組織学的検査(図3)で.胞壁は,杯細胞を含む結膜様上皮であり,結膜封入.胞と診断され,一部に腺管構造を含んでいた.手術C2カ月後まで再発なく経過している(図4).CII考按結膜封入.胞は結膜上皮が結膜の実質中に迷入して増殖し,上皮の杯細胞から分泌される粘液が.胞内に貯留する疾患であり,結膜病変のC6.10%,結膜.胞性病変のC80%を占めるとされる2).無症状の場合は経過観察でよいが,違和感がある場合や整容面で気になる場合は外科治療の対象となる.過去の報告では,60.70代の女性に好発し,特発性が多いが,手術や外傷に続発して発症する例もあると報告されている1).また,鼻側に好発し,これは杯細胞が鼻側に多く存在することや閉瞼時に鼻下側方向に眼瞼圧がかかることが理由と考えられている1).典型的な封入.胞は,球結膜に半透明のドーム状の隆起性病変として認められ,結膜下で.胞の可動性が確認できる1,3)..胞壁は数層の扁平,立方,あるいは円柱上皮からなり,炎症細胞の浸潤を認めるものもある.約半数の症例で,.胞上皮内にPAS(periodicCacidSchi.)染色陽性の杯細胞を認め,PAS染色陽性の粘液成分が.胞内を占める.前眼部COCTでは.胞壁の輪郭を同定することができ,.胞内は不整な顆粒状の高反射を認める.これは.胞内の結膜上皮が含有するケラチンや杯細胞から分泌されたムチンを反映したものと考えられている1)..胞を穿刺しても,被膜が残っている場合は数日で再発することがあるため,治療は被膜を残さずに全摘出することが望ましいとされる1).貯留.胞,リンパ.胞は周囲組織と癒着しており,切除が必要であるが,封入.胞はスプリング剪刀やC18CG針で開けた小切開創から低侵襲的に引きずり出すようにして摘出できることが多く3),術式を選択するうえで,術前の前眼部COCTによる画像診断が有用である.また,MRIのCT1強調画像では筋に対して,低信号または等信号を示し,T2強調画像では筋に対して著明な高信号を示す4).今回の症例で術前に疑われた貯留.胞は,涙腺の導管の閉塞により生じる.胞性病変である.涙腺は眼窩部と眼瞼部からなる主涙腺と,結膜下に存在する副涙腺に分類される.また,副涙腺には結膜円蓋部に存在するCKrause腺と瞼板と眼瞼結膜の間に存在するCWolfring腺のC2種類があり5),結膜下の副涙腺.胞の多くはCWolfring腺由来と考えられている.副涙腺.胞は平均発症年齢C39歳,上眼瞼発生がC73.9%と下眼瞼より多く6),外傷,感染,幼少期の強い結膜炎のあとに徐々に発症するという報告があり,慢性の炎症性結膜疾患に合併することが多いとされる6).本症例は,右眼の上眼瞼結膜に瘢痕形成を認め,幼少期の結膜炎の既往が推察された.病理組織学的に今回の症例は,封入.胞と診断されたが,封入.胞として非典型的な点は,幼少期に結膜炎に続発して発症したと考えられた点,.胞が貯留.胞(とくに副涙腺.胞)のように眼瞼結膜に連続して存在した点,前眼部COCTで.胞の輪郭を結膜下に追うことができなかった点,周囲の組織との癒着があり手術で一塊に摘出できず切除を要した点である.MRIについては過去の報告と同様の典型的な所見を呈した.しかし,慢性結膜炎の経過観察中に結膜封入.胞を生じたという症例報告もあり8),非常にまれではあるが結膜炎も封入.胞の原因となることがあるといえる.封入.胞と周囲の組織の癒着は穿刺の既往がある症例で有意に多いという報告があり1),術前に穿刺の既往を確認することは,癒着の存在を予想する一助となるかもしれない.結膜.胞のなかには,今回ように非典型的な例が存在すると考えられ,術前の病歴や観察所見から癒着の存在を予想するとともに,鑑別診断には慎重な臨床検査と病理組織学的検査が不可欠であると考えられた.文献1)山田桂子,横井則彦,加藤弘明ほか:結膜封入.胞の臨床的特徴と外科的治療についての検討.日眼会誌C188:652-657,C20142)ShieldsCL,DemirciH,KaratzaEetal:Clinicalsurveyof1,643CmelanocyticCandCnonmelanocyticCconjunctivalCtumors.OphthalmologyC111:1747-1754,C20043)寺尾伸宏,横井則彦,丸山和一ほか:前眼部光干渉計を用いた結膜封入.胞の観察と治療.あたらしい眼科C27:353-356,C20104)HoCVT,CRaoCVM,CFlandersCAECetal:PostsurgicalCcon-junctivalCepithelialCcysts.CAJNRCAmCJCNeuroradiolC15:C1181-1183,C19945)小幡博人:眼瞼の解剖一副涙腺.眼科45:925-929,C20036)WeatherheadRG:WolfringCdacryops.COphthalmologyC99:1575-1581,C19927)鈴木佳奈江,沖坂重邦,中神哲司:結膜貯留.胞形成における炎症細胞浸潤の関与.日眼会誌104:170-173,C20108)LeeCSW,CLeeCSC,CJinKH:ConjunctivalCinclusionCcystsCinClong-standingCchronicCvernalCkeratoconjunctivitis.CKoreanCJOphthalmolC21:251-254,C2007***(124)