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増殖糖尿病網膜症による血管新生緑内障に対する手術成績

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1(113)10170910-1810/08/\100/頁/JCLS18回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科25(7):10171021,2008cはじめに血管新生緑内障は眼内虚血を主体とする難治性疾患であり,その治療の基本は眼底最周辺部に至るまでの汎網膜光凝固の完成である.しかしながら,散瞳不良や高度の角膜浮腫の症例,硝子体出血を伴った症例など,必ずしもすべての症例に汎網膜光凝固が十分に施行できるわけではない.また,すでに隅角に周辺虹彩前癒着(PAS)を生じた症例では汎網膜光凝固を密に行っても眼圧コントロールが不良な症例も少なくない.従来より,そのような症例に対してはマイトマイシンC併用線維柱帯切除術やcyclophotocoagulationabexterno(臼井法),毛様体破壊術などさまざまな治療が試みられ,ある程度の治療効果をあげているが,いまだ眼球癆に至る例は少なくない14).最近では眼内光凝固を併用した硝子体手術による治療効果が報告されているが,重症の症例では十分な効果が得られないことも多い59).筆者らはこれまでに増殖糖尿病網膜症に伴った血管新生緑内障に対して,眼内光凝固を併用した硝子体手術と組み合わせて,線維柱帯切除術か網膜切除術もしくはその両者を併用する治療を行ってきた.今回,福岡大学病院眼科(以下,当科)における増殖糖尿病網膜症による血管新生緑内障に対する手術成績につい〔別刷請求先〕尾崎弘明:〒814-0180福岡市城南区七隈7-45-1福岡大学医学部眼科学教室Reprintrequests:HiroakiOzaki,M.D.,DepartmentofOphthalmology,FukuokaUniversity,SchoolofMedicine,7-45-1Nanakuma,Jyonan-ku,Fukuoka814-0180,JAPAN増殖糖尿病網膜症による血管新生緑内障に対する手術成績尾崎弘明*1ファンジェーン*1近藤寛之*1大島健司*2内尾英一*1*1福岡大学医学部眼科学教室*2村上華林堂病院眼科OutcomeofSurgicalTreatmentforDiabeticNeovascularGlaucomaHiroakiOzaki1),HuangJane1),HiroyukiKondo1),KenjiOshima2)andEiichiUchio1)1)DepartmentofOphthalmology,FukuokaUniversity,SchoolofMedicine,2)DepartmentofOphthalmology,MurakamikarindoHospital目的:増殖糖尿病網膜症(PDR)に伴った血管新生緑内障の手術成績について報告する.対象および方法:汎網膜光凝固が困難もしくは施行後も眼圧コントロールが不良であった血管新生緑内障のうち,術後1年以上経過観察のできた47例56眼.平均年齢は52.2歳,平均経過観察期間は3年2カ月.全例,初回手術として硝子体手術を行い,隅角が閉塞した症例には網膜切除術を併用,その後,必要に応じて線維柱帯切除術を行った.手術回数は平均2.3回であった.結果:術前平均眼圧は33.8±13.4mmHgで,最終受診時の平均眼圧は12.3±5.8mmHg.視力予後は改善が18眼(32.1%),不変が21眼(37.5%),悪化が17眼(30.4%).最終視力は0.7以上が10眼(17.9%),0.10.6が17眼(30.4%),0.010.09が11眼(19.6%),光覚指数弁が8眼(14.3%),光覚なしが10眼(17.9%)であった.結論:硝子体手術,線維柱帯切除術を組み合わせた治療にて隅角が閉塞している症例でも長期に視機能を保つことができた.Wereportthetreatmentoutcomeforneovascularglaucoma(NVG)associatedwithproliferativediabeticreti-nopathy(PDR)atFukuokaUniversityHospital.Selectedforthisstudywere56eyeswithNVG:averageagewas52.2years;averagefollowuptimewas38months.Allcasesunderwentvitrectomyasinitialsurgery.Thoseeyeswithuncontrollableintraocularpressureuponextensiveretinalphotocoagulation,trabeculectomyand/orvitrecto-mywerecandidatesforretinectomy.Therewereanaverageof2.3surgicalinterventions.Intraocularpressurewasreducedfrom33.8±13.4mmHgto12.3±5.8mmHg.Visualacuityof0.7orbetterwasachievedin10eyes(17.9%),0.10.6in18eyes(32.1%),0.010.09in11eyes(19.6%),ngercountingtolightperceptionin8eyes(14.3%),andnolightperceptionin10eyes(17.9%).Wehaveperformedvitrectomy,trabeculectomy,orcombinedretinec-tomyforNVGwithPDR.ThevisionwasalsopreservedinNVGpatientswithangleclosed.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(7):10171021,2008〕Keywords:血管新生緑内障,硝子体手術,線維柱帯切除術,網膜切除術,手術成績.neovascularglaucoma,vit-rectomy,trabeculectomy,retinectomy,surgicaloutcomes.———————————————————————-Page21018あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008(114)は有水晶体眼が39眼(69.6%),偽水晶体眼は7眼(12.5%),無水晶体眼は10眼(17.9%)であった.術前に増殖組織による牽引性網膜離を伴っていた症例は11眼(19.6%),硝子体出血は13眼(23.2%)に認められた.増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の術後に血管新生緑内障を発症した症例は9眼(16.2%)であった.初診時に汎網膜光凝固による治療が可能であった症例に対しては最周辺部に至るまで徹底的に行った.眼圧下降が得られなかった症例,角膜混濁や散瞳不良のために網膜光凝固が完成できなかった症例,硝子体出血や牽引性網膜離を伴った症例を今回の対象とした.当科における血管新生緑内障の各病期に対する手術治療の方針を表3に示す.隅角が閉塞していない1期と2期の症例に対しては水晶体切除および眼内光凝固を併用した硝子体手術を行った.有水晶体眼は全例に経毛様体扁平部水晶体切除術を施行した.偽水晶体眼では開放隅角(2期)であった3眼は眼内レンズを温存したが,閉塞隅角を生じていた3期の4眼は硝子体手術の際に眼内レンズを摘出した.硝子体手術時に施行した眼内光凝固数は平均約1,000発であった.術前検査で隅角が広範囲に閉塞していた3期の症例に対しては,水晶体切除(もしくは眼内レンズ摘出),眼内光凝固を併用した硝子体手術の際に網膜切除術を併用した1113).網膜切除の手技は既報に従って行った.範囲は網膜の下方および側方の2象限に2乳頭径の幅で施行した(図1).術中,切除予定の網膜の範囲に過剰のレーザー光凝固を行い,切除予定の網膜はソフトチップのバックフラッシュニードルにて軽くこすって除去した.その後,経過中に眼圧のコントロールが不良な症例にはマイトマイシンCを併用した線維柱帯切除術を随時行った.術前の眼圧を4群に分類し,視力予後との関連を検討して報告する.I対象および方法対象は2000年1月から2005年10月までに当科にて加療され,術後1年以上経過観察することができた増殖糖尿病網膜症に関連する血管新生緑内障47例56眼.男性31例,女性16例.年齢は2674歳(平均52.2歳),経過観察期間は1270カ月で平均37.9カ月であった.血管新生緑内障の病期分類は臼井による分類を用いた10).1期は新生血管が瞳孔縁と隅角に出現するが,眼圧は正常域.2期は新生血管が虹彩表面に広がり,隅角が線維血管膜に覆われ,眼圧が上昇.3期では線維血管膜の収縮に伴い虹彩前癒着を生じる.今回の対象の術前の病期分類では1期の症例が4眼(7.1%),2期が17眼(30.4%),3期が35眼(62.5%)であった(表1).3期の症例でPASindexが50%未満のものが17眼(30.4%),50%以上の症例が18眼(32.1%),そのうちの11眼(19.6%)がほぼ全周閉塞の状態であった.術前の水晶体の状態および眼底の背景を表2に示した.水晶体図1網膜切除術のシェーマ矢印で示す網膜切除の部位より眼内の水が脈絡膜側へ移行する.表1当科初診時の病期分類1期(開放隅角,眼圧正常)4眼(7.1%)2期(開放隅角,高眼圧)17眼(30.4%)3期(閉塞隅角)35眼(62.5%)PASindex50%未満17眼PASindex50%以上18眼(11眼はほぼ全周閉塞)表2術前の状況有水晶体眼39眼(69.6%)水晶体温存0眼経毛様体扁平部水晶体切除39眼偽水晶体眼7眼(12.5%)眼内レンズ温存3眼眼内レンズ摘出4眼無水晶体眼10眼(17.9%)網膜離11眼(19.6%)硝子体出血13眼(23.2%)硝子体術後眼9眼(16.1%)表3各病期に対する治療方針病期治療1期1)硝子体手術(水晶体切除を含む),汎網膜光凝固2期2)硝子体手術(水晶体切除を含む),汎網膜光凝固+線維柱帯切除手術3期3)硝子体手術(水晶体切除を含む),汎網膜光凝固,網膜切除術4)硝子体手術(水晶体切除を含む),汎網膜光凝固,網膜切除術+線維柱帯切除手術———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.7,20081019(115)った1期の4眼は全例最終視力が0.3以上と良好であった.術前高眼圧であった症例を2129mmHg(17眼),3039mmHg(17眼),40mmHg以上(18眼)3群に分類し,視力予後を検討した.その結果,3群間に有意差は認められず,術前眼圧のレベルと最終視力予後には相関はみられなかった(表6).また,各病期別の視力予後を検討した.1期は2期,3期に比較して有意に良好であった(p<0.05)が,2期および3期のPASindex50%未満の群とPASindex50%以上の群では3群間に視力予後に有意差は認められなかった(表7).4.手術と術後合併症手術回数は1回から6回で平均2.3回であった.表3に示す治療方針のうち,硝子体手術+汎網膜光凝固を行った症例が25眼(42.8%),硝子体手術+汎網膜光凝固に加え,後に線維柱帯切除術を施行したものが5眼(8.9%),進行した3た.また,各症例の病期,すなわち隅角の状態を分類し,最終視力予後との関連を検討した.2群間の統計学的検討にはFisher直接確率法を用いた.II結果1.術前眼圧と術後眼圧術前の眼圧は20mmHg以下が4眼(3.6%),2129mmHgが17眼(30.3%),3039mmHgが18眼(32.1%),40mmHg以上が17眼(30.3%)であった.平均眼圧は33.8±13.4mmHgであった.最終受診時の眼圧は全例21mmHg未満であり,平均眼圧は12.3±5.8mmHgであった.各病期別の術前眼圧と最終眼圧を表4に示す.術前眼圧は1期では平均15.3±1.5mmHg,2期は30.1±11.8mmHg,3期は37.9±12.6mmHgであり,病期が進行するに伴って統計学的に有意に高眼圧を呈していた(p<0.05).術後の最終眼圧は,1期では平均13.3±2.0mmHg,2期は12.6±5.8mmHg,3期は11.7±5.6mmHgとすべての病期において下降していた.2.術前視力と術後視力術前視力は0.7以上が1眼(1.8%),0.10.6が26眼(46.4%),0.010.09が16眼(28.6%),光覚弁指数弁が13眼(23.2%),光覚なしは0眼(0%)であった(表4).視力予後は2段階以上の改善が18眼(32.1%),不変が21眼(37.5%),2段階以上の悪化が17眼(30.4%)であった.最終視力は0.7以上が10眼(16.1%),0.10.6が17眼(30.4%),0.010.09が11眼(19.6%),光覚弁指数弁が8眼(14.3%),最終的に光覚なしに至ったものが10眼(17.9%)であった(表5).3.眼圧および各病期と視力予後術前眼圧と視力予後を表6に示した.術前眼圧が正常であ表4術前後の平均眼圧術前術後全症例33.8±13.4mmHg12.3±5.8mmHg病期1期15.3±1.5mmHg13.3±2.0mmHg2期30.1±11.8mmHg12.6±5.8mmHg3期37.9±12.6mmHg11.7±5.6mmHg表5術後視力成績視力術前術後0.7以上1眼(1.7%)10眼(17.9%)0.10.626眼(46.4%)17眼(30.4%)0.010.0916眼(28.6%)11眼(19.6%)光覚弁指数弁13眼(23.2%)8眼(14.3%)光覚なし0眼(0.0%)10眼(17.9%)表6術前眼圧と視力予後術後視力術前眼圧21mmHg未満(4眼)2129mmHg(17眼)3039mmHg(18眼)40mmHg以上(17眼)0.1以上4眼10眼9眼4眼光覚弁0.090眼3眼6眼10眼光覚なし0眼4眼3眼3眼表7各病期と視力予後術後視力1期(4眼)2期(17眼)3期(35眼)PASindex50%未満PASindex50%以上0.1以上4眼9眼9眼5眼光覚弁0.090眼5眼5眼9眼光覚なし0眼3眼3眼4眼表8術後合併症早期合併症晩期合併症フィブリン反応11眼(19.6%)高眼圧12眼(21.4%)前房出血10眼(17.9%)眼球癆10眼(17.9%)硝子体出血4眼(7.1%)膜形成8眼(14.3%)網膜離4眼(7.1%)———————————————————————-Page41020あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008(116)の視野への影響も防ぐようにしている.本手技はバイパスを持続させることが困難な若い年齢の症例や,強膜輪状締結術などの術後で結膜瘢痕の強い症例には良い適応と考えられる.しかしながら,硝子体手術に網膜切除術を併用した26眼のうち,8眼(30.7%)は術後の眼圧コントロールが不良であったため,後日,マイトマイシンCを併用した線維柱帯切除術を行った.また,初回手術として硝子体手術と汎網膜光凝固のみを行った30眼のなかでも5眼(16.7%)に線維柱帯切除術を施行した.二期的に線維柱帯切除術を行う場合は,硝子体手術と汎網膜光凝固により,虹彩の新生血管が消退し,瘢痕化しているために線維柱帯切除術の際の出血などの合併症を最小限に抑えることができる9,11).松村らは増殖糖尿病網膜症による血管新生緑内障において,術前の隅角検査でPASindexが25%未満であれば,術前に高眼圧であっても硝子体手術により眼圧コントロールが良好であり,PASindexが25%以上あれば眼圧コントロールが不良と報告している5).今回の筆者らの検討では,術前眼圧が正常であった1期の症例は予後良好であったが,高眼圧となった症例では術前眼圧と視力予後には相関は認められなかった.隅角閉塞を生じた3期の症例においても35眼中14眼(40%)が0.1以上の視力を得ることができ,2期の症例と比較して視力予後に差を認めなかった.また,術前の隅角のPASindexと視力予後の間にも明らかな相関は認められなかった.筆者らが検討した56眼ではPASindexが100%の症例も11眼あり,たとえ隅角が閉塞していても網膜切除術を併用することにより開放隅角の症例群とほぼ同様の成績を得ることにつながったと思われる.血管新生緑内障の治療成績は一般的に不良であり,硝子体手術に濾過手術を追加した場合は,5869%で眼圧コントロールされ,3850%で術後に0.1以上の視力が得られたと報告されている79).最近,向野らは増殖糖尿病網膜症に伴う血管新生緑内障39眼において硝子体手術と毛様体扁平部濾過手術または線維柱帯切除術を行い,平均4年4カ月の経過観察で34眼(87%)において視機能が維持でき,良好な長期成績が得られたと報告している18).症例の背景は異なるが,本報告でも平均3年2カ月の経過観察期間で最終的に56眼のうち46眼(82.1%)に視機能を維持することができ,ほぼ同様の成績であった.しかしながら,たとえ術後に眼圧が下降しても最終的に視機能が改善しない症例も少なくない.筆者らの症例では,10眼(17.9%)は術後に低眼圧となったが,最終的に前部硝子体線維血管増殖や再増殖ならびにhemophthalmosを生じて光覚なしとなった.糖尿病網膜症における血管新生は虚血網膜から放出される血管新生促進因子であるvascularendothelialgrowthfactor(VEGF)が中心的な原因物質であることが知られている2123).最近では,その阻害薬が加齢黄斑変性症や糖尿病黄斑浮腫な期の症例で硝子体手術+汎網膜光凝固の際,網膜切除術を施行したものが18眼(32.1%),さらに硝子体手術+汎網膜光凝固+網膜切除術の後,線維柱帯切除術を後日に追加して行ったものが8眼(14.3%)であった.硝子体手術から線維柱帯切除術を行うまでの期間は1カ月から36カ月までで,平均5.6カ月であった.術後合併症を表8に示す.早期合併症としては,フィブリン反応が11眼(19.6%)と最も多く,すべて一過性で消失した.他に前房出血が10眼(17.8%),硝子体出血が4眼(7.1%)に認められた.晩期の合併症としては高眼圧により線維柱帯切除術を施行したものが12眼(21.4%)であり,眼球癆が10眼(17.9%),膜形成が8眼(14.2%),網膜離が4眼(7.1%)であった.III考按血管新生緑内障の治療は汎網膜光凝固を徹底的に行うことにより,虚血網膜を改善させ,虹彩ルベオーシス消退させることが重要である.しかしながら,硝子体出血,牽引性網膜離,角膜混濁,散瞳不良のために汎網膜光凝固を完成させることができなかった症例に対しては積極的な硝子体手術適応があると考えられる.硝子体手術により,眼内液中に高濃度に貯留している血管新生促進因子を排出することができ,さらに増殖の基盤となる後部硝子体膜の除去ができるとともに,周辺部の硝子体の徹底的な郭清と最周辺部までの眼内光凝固を確実に行うことができる.しかし,隅角閉塞が生じた血管新生緑内障では緑内障手術を併用しなければ十分な眼圧下降を得られないことが多い5,1417).筆者らは表2に示すように,それぞれの症例の病期に応じて,硝子体手術と他の手術手技とを組み合わせた治療を行っている.隅角が高度に閉塞した3期の症例および活動性の高い虹彩血管新生が広範囲に認められた症例に対して,筆者らは硝子体手術の際に網膜切除を併用した.網膜切除術による眼圧下降の機序は,巨大裂孔の裂孔原性網膜離の際に著明な眼圧低下がみられるように,網膜切除部を通じて眼内の水が脈絡膜へと移行していくと考えられる.Negiらは過去に動物実験においてその機序を報告している19,20).Kirchhofらは難治性の緑内障に対して網膜切除術を9眼に施行し,後にその長期成績についても報告している21,22).その結果,種々の緑内障44眼に施行し,52%の眼圧下降成功率であった.血管新生緑内障は44眼中の12眼で,そのなかで2眼のみに眼圧コントロールと視機能の維持ができたと報告している.今回筆者らは26眼に網膜切除術を併用し,そのうち18眼では線維柱帯切除術を追加施行せずに最終的に15眼に視機能の維持と眼圧コントロールが得られた.Kirchhofらの方法に比べ,筆者らはより広範囲に網膜を切除していることが良好な成績につながったと考えられる.また,術前に視野を確認し,視野欠損の部分に相当する網膜を切除することで,術後———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.7,20081021(117)10)臼井正彦:血管新生緑内障.眼科診療プラクティス10:182-185,199411)大島健司:血管新生緑内障.眼科診療プラクティス88:104-109,200212)KirchhofB:Retinectomylowersintraocularpressureinotherwiseintractableglaucoma:preliminaryresults.Oph-thalmicSurg25:262-267,199413)JoussenAM,WalterP,Jonescu-CuypersCPetal:Retinectomyfortreatmentofintractableglaucoma:longtermresults.BrJOphthalmol87:1094-1102,200314)松山茂生,三嶋弘,野間英孝ほか:血管新生緑内障に対する硝子体手術併用毛様体扁平部濾過手術.眼科手術13:149-152,200015)木内良明,中江一人,杉本麗子ほか:血管新生緑内障を伴う増殖糖尿病網膜症に対する線維柱帯切除,硝子体同時手術.眼科手術13:75-79,200016)井上吐州,小沢忠彦,谷口重雄ほか:血管新生緑内障に対する硝子体手術と濾過手術の併用療法.眼臨95:1185-1187,200117)KonoT,ShigaS,TakesueYetal:Long-termresultsofparsplanavitrectomycombinedwithlteringsurgeryforneovascularglaucoma.OphthalmicSurgLasersImaging36:211-216,200518)向野利寛,武末佳子,山中時子ほか:増殖糖尿病網膜症に伴う血管新生緑内障の治療成績.臨眼61:1195-1198,200719)NegiA,MarmorMF:Mechanismsofsubretinaluidresorptioninthecateye.InvestOphthalmolVisSci27:1560-1563,198620)NegiA,MarmorMF:Theresorptionofsubretinaluidafterdiusedamagetotheretinalpigmentepithelium.InvestOphthalmolVisSci24:1475-1479,198321)OzakiH,HayashiH,VinoresSAetal:Intravitrealsus-tainedreleaseofVEGFcausesretinalneovascularizationinrabbitsandbreakdownoftheblood-retinalbarrierinrabbitsandprimates.ExpEyeRes64:505-517,199722)OzakiH,SeoMS,OzakiKetal:Blockadeofvascularendothelialgrowthfactorreceptorsignalingissucienttocompletelypreventretinalneovascularization.AmJPathol156:697-707,200023)浜中輝彦:血管新生緑内障の病態と病理.眼科手術15:439-446,200224)IlievME,DomigD,Wolf-SchnurrburschUetal:Intravit-realbevacizumab(Avastin)inthetreatmentofneovascu-larglaucoma.AmJOphthalmol142:1054-1556,2006どの眼科疾患に用いられ,さらに血管新生緑内障に対しても使用され,良好な成績が報告されている24).過去の多くの報告ならびに本報告が示すように,血管新生緑内障を汎網膜光凝固と手術療法で完全に失明を防ぐことは現状では不可能である.近い将来,これらの薬剤と手術療法を併用することにより治療成績をより向上させることができればと期待する.今回,増殖糖尿病網膜症に関連する血管新生緑内障に対する当科における治療成績を報告した.血管新生緑内障を併発した増殖糖尿病網膜症は,それぞれが複雑で,背景もさまざまであるためすべての条件を揃えることは困難である.筆者らの検討では隅角閉塞を起こした症例においても開放隅角の症例とほぼ同様の成績を得ることができた.病勢の進行の状態をよく理解し,病期に応じた積極的な治療を行うことで平均3年2カ月の経過観察期間で約8割の症例において視機能を維持することが可能であった.文献1)川瀬和秀:血管新生緑内障に対する濾過手術(線維柱帯切除術).眼科手術15:455-460,20022)浜野薫,豊口晶子,山本和則ほか:Cyclophotocoagula-tionabexterna.眼臨86:2381-2385,19923)BloomPA,TsaiJC,SharmaKetal:“Cyclodiode”.Trans-scleraldiodelasercyclophotocoagulationinthetreatmentofadvancedrefractoryglaucoma.Ophthalmolo-gy104:1508-1520,19974)NabiliS,KirknessCM:Trans-scleraldiodelasercyclo-photo-coagulationinthetreatmentofdiabeticneovascularglaucoma.Eye18:352-356,20045)松村美代,西澤稚子,小椋祐一郎ほか:虹彩隅角新生血管を伴う増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術.臨眼47:653-656,19936)水谷聡,荻野誠周:虹彩隅角ルベオーシスを伴う増殖糖尿病網膜症硝子体手術後の緑内障.眼科手術8:405-413,19957)松村哲,竹内忍,葛西浩ほか:血管新生緑内障を伴う増殖糖尿病網膜症の初回硝子体手術.眼紀48:643-647,19978)佐藤幸裕:増殖糖尿病網膜症の硝子体手術適応:最近の考え方.眼科手術11:307-312,19989)野田徹,秋山邦彦:血管新生緑内障に対する網膜硝子体手術.眼科手術15:447-454,2002***