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緑内障における視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚および,黄斑部網膜内層厚と視野障害との相関

2014年3月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科31(3):437.442,2014c緑内障における視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚および,黄斑部網膜内層厚と視野障害との相関山口晋太朗武田裕行金成真由嘉山尚幸上野聰樹川崎市立多摩病院眼科CorrelationsamongVisualFieldLossandThicknessofCircumpapillaryRetinalNerveFiberLayerandofInnerMacularLayerinGlaucomaShintaroYamaguchi,HiroyukiTakeda,MayuKanari,NaoyukiKayamaandSatokiUenoDepartmentofOphthalmology,KawasakiMunicipalTamaHospital目的:視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚(cRNFLT),黄斑部網膜神経節細胞層と内網状層の厚さ(GCIPLT)と,緑内障性視野障害との相関の報告.対象および方法:広義の原発開放隅角緑内障67例107眼を対象とした.スペクトラルドメイン光干渉断層計を用い,網膜厚の測定を行った.視野検査はHumphrey視野計を用い,MD(meandeviation)値とPSD(patternstandarddeviation)値で視野障害を評価した.結果:cRNFLTはMD値(r=0.690)およびPSD値(r=.0.627),GCIPLTはMD値(r=0.610)およびPSD値(r=.0.576)と相関があった.緑内障のMD値による病期分類で,初期群のGCIPLTの下方セクターが,MD値およびPSD値ともに上方よりも強い相関を示した.結論:cRNFLTと同様にGCIPLTは視野障害と相関した.特に初期緑内障の診断において,GCIPLTが有用な指標となる可能性が示唆された.Purpose:Toreportcorrelationsamongvisualfieldloss,thicknessofcircumpapillaryretinalnervefiberlayer(cRNFLT)andofganglioncell-innerplexiformlayer(GCIPLT)ineyeswithglaucoma.Method:Thisstudyinvolved107eyesof67patientswithprimaryopen-angleglaucoma.Retinalthicknesswasmeasuredbyspectraldomainopticalcoherencetomography.Visualfieldwasevaluatedbymeandeviation(MD)andpatternstandarddeviation(PSD)ofHumphreyautomatedperimeter.Results:cRNFLTandGCIPLTcorrelatedwithMD(r=0.690,r=0.610)andPSD(r=.0.627,r=.0.576),respectively.CorrelationbetweenGCIPLTandMD,PSDintheinferiorfunduswashigherthaninthesuperiorfundusintheearlystageofglaucoma.Conclusion:GCIPLTcorrelatedwithvisualfielddefectaswellasdidcRNFLT.GCIPLTmaybeusefulinthedetectionofglaucoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(3):437.442,2014〕Keywords:視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚,黄斑部網膜内層厚,視野障害.thicknessofcircumpapillaryretinalnervefiberlayer,thicknessofinnermacularlayer,visualfieldloss.はじめに緑内障の本態は,進行性網膜神経節細胞死による網膜神経線維層(retinalnervefiberlayer:RNFL)の菲薄化や視神経乳頭陥凹拡大などの構造的異常と,それに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatousopticneuropathy:GON)である1).スペクトラルドメイン光干渉断層計(spectraldomainopticalcoherencetomograph:SD-OCT)がわが国でも導入され,従来の視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚(circumpapillaryretinalnervefiberlayerthickness:cRNFLT)の測定に加え,黄斑部網膜神経線維層厚(macularetinalnervefiberlayerthickness:mRNFLT)の測定や,網膜神経節細胞層(retinalganglioncelllayer:GCL)に関連した層を含む内境界膜から内網状層外縁の神経節細胞複合体厚(ganglioncellcomplexthickness:GCCT)の測定が可能となり,緑内障の診断や進行判定の評価に利用されている2,3).さら〔別刷請求先〕山口晋太朗:〒214-8525川崎市多摩区宿河原1-30-37川崎市立多摩病院眼科Reprintrequests:ShintaroYamaguchi,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KawasakiMunicipalTamaHospital,1-30-37Syukugawara,Kawasaki214-8525,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(133)437 図1CirrusOCT画像(OpticDiscCube200×200,MacularCube200×200)の実際例(症例は73歳,男性,NTG)に近年,黄斑部の網膜神経節細胞層と内網状層(ganglioncell-innerplexiformlayerthickness:GCIPLT)の測定も可能となり,緑内障の極早期検出や進行判定の向上が期待されている.今回筆者らはSD-OCTの一つであるCirrusTMHD-OCTR(以下,CirrusOCT)(CarlZeissMeditec社)を用いて,その最新プログラムにある神経節細胞解析(ganglioncellanalysis:GCA)により計測されたGCIPLTが早期緑内障診断の一助となりうるかを判断するために,cRNFLTと比較し視野障害との相関について検討した.I対象および方法川崎市立多摩病院倫理委員会の承認を受け,2012年9月から緑内障患者の診療録,視野検査結果とOCT検査結果を検討した.対象は,当院通院中の広義原発開放隅角緑内障患者67例107眼(男性34例52眼,女性33例55眼),平均年齢63.8±14.5歳である.矯正視力0.9以下,.6D以下の強度近視眼,他の視神経・網膜疾患のあるものは対象から除外した.OCTにおける検討では,CirrusOCTのOpticDiscCube200×200で計測されたcRNFLT値とMaculaCube200×200で計測されたGCIPLT値を用いた(図1).cRNFLT値は,視神経乳頭を中心とした直径3.45mmのサークルにお438あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014ける網膜神経線維層厚である.今回CirrusOCTにより自動解析されたAverageRNFLThickness(以下,平均cRN-FLT)と,RNFLClockHoursのなかから緑内障早期の変化がみられると考えられる耳側7セクターのcRNFLT値(以下,R.Sect.1.R.Sect.7)を用いた(図2).GCIPLT値は中心窩4.0mm×4.8mmの楕円状内における網膜神経節細胞層厚と内網状層厚である.こちらもCirrusOCTにより自動解析されたAverageGCL+IPLThickness(以下,平均GCIPLT)と,中心窩4.0mm×4.8mmの楕円を上下6セクターに区分したGCIPLT値(以下,G.Sect.1.G.Sect.6)を検討項目とした(図3).視野はOCT施行前後1カ月以内に,Humphrey自動視野計(Humphreyfieldanalyzer:HFA)(CarlZeissMeditec社)の,中心30-2SITAstandardで測定した.固視不良,偽陽性,偽陰性すべてが20%未満の良好な結果のみを採用した.視野の解析パラメータとしてMD(meandeviation)値,およびPSD(patternstandarddeviation)値を用いた.緑内障病期をMD値をもとに,Anderson-Patellaの基準から初期群(MD>.6dB)43例57眼(男性22例29眼,女性21例28眼,平均年齢61.5±15.2歳),中・後期群(MD≦.6dB)36例50眼(男性17例23眼,女性19例27眼,平均年齢68.7±11.8歳)に分類した.MD値の分布は,全症例で.30.01.0.05dB(平均.8.36±7.66dB),初期群で.5.64.(134) R.Sect.1:鼻側G.Sect.1:67.5±12.6G.Sect.6:67.6±11.7G.Sect.2:69.9±13.1G.Sect.3:66.1±12.1G.Sect.5:G.Sect.4:62.0±10.562.2±11.6耳側78.1±23R.Sect.2:85.2±27R.Sect.3:61.4±17R.Sect.4:50.6±12耳側鼻側54.4±15R.Sect.5:R.Sect.6:75.4±34R.Sect.7:76.4±27.0図2cRNFLT値の各セクター(R.Sect.1.R.Sect.7)と全症例における平均値(μm)(右眼RNFLClockHoursの模式図)0.05dB(平均.2.49±1.67dB),中・後期群で.30.01..6.08dB(平均.15.05±6.17dB).またPSD値の分布は,全症例で1.73.17.55dB(平均8.11±4.76dB),初期群で1.73.10.96dB(平均4.51±2.64dB),中・後期群で5.14.17.55dB(平均12.20±2.96dB)であった.OCTでセクターごとに測定したcRNFLT値あるいはGCIPLT値が視野指標であるMD値あるいはPSD値と相関関係にあるかを,各病期群において比較検討した.統計学的検討は,Spearman順位相関係数を用い,危険率5%未満を統計学的に有意とした.II結果cRNFLT値とMD値との相関を図4.6および表1に示す.平均cRNFLT値はMD値と,全症例(r=0.690,p<0.001),初期群(r=0.503,p<0.001),中・後期群(r=0.515,p<0.001)のいずれの群においても相関を示した.測定地点別cRNFLT値に関しては,全症例ではすべての測定地点で相関を示した.初期群ではR.Sect.4を除く測定地点で相関を示した.しかし中・後期群で相関を認めたのはR.Sect.2とR.Sect.3のみであった.cRNFLT値とPSD値との相関を図7,表1に示す.平均cRNFLT値は,全症例(r=.0.627,p<0.001),初期群(r=.0.550,p<0.001)で負の相関を示した.測定地点別cRNFLT値とPSD値の相関は,全症例と初期群ではすべての測定地点で負の相関を示した.中・後期群ではR.Sect.5,R.Sect.6の2地点で負の相関を示した.GCIPLT値とMD値との相関を図8.10および表2に示す.平均GCIPLT値は,全症例(r=0.610,p<0.001),初期群(r=0.379,p=0.005),中・後期群(r=0.436,p=0.002)のいずれの対象でも相関を示した.測定地点別GCIPLT値は,全症例ですべての測定地点で相関を示した.初期群ではG.Sect.1とG.Sect.2を除く測定地点で相関を示した.中・後(135)図3GCIPLT値の各セクター(G.Sect.1.G.Sect.6)と全症例における平均値(μm)(右眼中心窩4.0mm×4.8mmの楕円を上下6セクターに区分した模式図)期群ではG.Sect.1,G.Sect.5,G.Sect.6の3地点で相関を示した.GCIPLT値とPSD値の相関を図11,表2に示す.平均GCIPLT値は,全症例(r=.0.576,p<0.001)と初期群(r=.0.443,p=0.008)で負の相関を示し,中・後期群(r=.0.294,p=0.044)とやや負の相関を示した.測定地点別GCIPLT値は,全症例ではすべての測定地点で負の相関を示した.初期群ではG.Sect.1とG.Sect.2を除く測定地点で負の相関を示した.中・後期群ではG.Sect.2とG.Sect.3を除く測定地点で負の相関を示した.III考按SD-OCTを用いることで,cRNFLTと視野障害の相関が報告されており,病期が進行するに従いMD値とcRNFLTの相関が強くなるとされている.ところが視神経乳頭から3.4mmのサークル内におけるcRNFLTは,欠点として傍乳頭網脈絡膜萎縮(PPA),傾斜乳頭,乳頭の大きさなどの影響から,緑内障早期におけるcRNFLT耳側方向の変化を捉えにくいことが懸念される.今回筆者らは,CirrusOCTの最新プログラムにあるGCAから得られたGCIPLT値が,緑内障検出に有用かを検討するために,cRNFLT値の結果と比較し,視野障害との相関を検討した.全症例において,平均cRNFLT値および耳側各セクターのcRNFLT値はMD値と相関し,PSD値とも負の相関を認めた.またcRNFLTの結果と同様に平均GCIPLT値および各セクターのGCIPLT値もMD値と相関し,PSD値とは負の相関を示した.初期群では,平均cRNFLT値およびR.Sect.4を除く耳側各セクターのcRNFLT値と,平均GCIPLT値およびG.Sect.1とG.Sect.2を除く各セクターのGCIPLT値がMD値と相関した.一方,初期群におけるPSD値は,G.Sect.1とG.Sect.2を除くすべてのパラメータで負の相関を示した.こあたらしい眼科Vol.31,No.3,2014439 MD値(dB)MD値(dB)MD値(dB)50-5-10-15-20-25-30-35020406080100120y=0.3586x-35.7512:実測値:予測値-6-5-4-3-2-101020406080100120:実測値:予測値y=0.066x-7.4435MD値(dB)平均cRNFLT値(μm)平均cRNFLT値(μm)図4全症例の平均cRNFLT値とMD値図5初期群の平均cRNFLT値とMD値0-5-10-15-20-25-30:実測値:予測値020406080100y=0.276x-31.6208:実測値:予測値02468101214161820y=-0.2245+23.3734PSD値(dB)020406080100120-35平均cRNFLT値(μm)平均cRNFLT値(μm)図6中・後期群の平均cRNFLT値とMD値図7全症例の平均cRNFLT値とPSD値表1測定地点別cRNFLT値とMD値,PSD値との相関R.Sect.1R.Sect.2R.Sect.3R.Sect.4R.Sect.5R.Sect.6R.Sect.7MD値との相関全症例r0.4740.6880.5630.3300.5050.5740.625p値<0.001<0.001<0.0010.001<0.001<0.001<0.001初期r0.3570.3970.3960.2260.3070.3970.358p値0.0080.0030.0030.0900.0220.0030.007中・後期r0.2210.4850.5110.1500.1010.0610.149p値0.1220.001<0.0010.2930.4780.6700.297PSD値との相関全症例r-0.502-0.577-0.511-0.369-0.558-0.624-0.610p値<0.001<0.001<0.001<0.001<0.001<0.001<0.001初期r-0.457-0.334-0.432-0.348-0.375-0.426-0.494p値0.0010.0120.0010.0090.0050.001<0.001中・後期r.0.202.0.094.0.188.0.151-0.334-0.3220.055p値0.1580.5110.1880.2900.0190.0240.700こで特筆すべき点として,GCIPLTの下方セクターが初期群のMD値,PSD値ともに,上方セクターよりも強い相関を示したことである.MD値とG.Sect.3(r=0.421),G.Sect.4(r=0.408),G.Sect.5(r=0.363)で相関し,PSD値とG.Sect.3(r=.0.306),G.Sect.4(r=.0.350),G.Sect.5(r=.0.379)で負の相関を示した.これまでのGCCTを用いた検討で,上方GCCTよりも下方GCCTのほうが,視野障害とより相関を示したとの報告があり4),また日本人の緑内障におけるRNFLの欠損は,下耳側より始まることが多く,そのため下方GCCTが視野障害と相関したとの報告もある5).今回筆者440あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014(136) :実測値:予測値-35-30-25-20-15-10-505020406080100y=0.4427x-37.5581MD値(dB):実測値:予測値-35-30-25-20-15-10-505020406080100y=0.4427x-37.5581MD値(dB)PSD値(dB)MD値(dB)10-1-2-3-4-5-6:実測値:予測値020406080100y=0.0738x-7.6783平均GCIPLT値(μm)平均GCIPLT値(μm)図8全症例の平均GCIPLT値とMD値図9初期群の平均GCIPLT値とMD値:実測値:予測値-35-30-25-20-15-10-50020406080100y=0.2562x-30.6639MD値(dB)20181614121086420:実測値:予測値y=-0.2971x+27.6962020406080100平均GCIPLT値(μm)平均GCIPLT値(μm)図10中・後期群の平均GCIPLT値とMD値図11全症例の平均GCIPLT値とPSD値表2測定地点別GCIPLT値とMD値,PSD値との相関G.Sect.1G.Sect.2G.Sect.3G.Sect.4G.Sect.5G.Sect.6MD値との相関全症例r0.4630.3900.4950.5000.6140.637p値<0.001<0.001<0.001<0.001<0.001<0.001初期r0.2530.2380.4210.4080.3630.313p値0.0590.0750.0020.0020.0070.019中・後期r0.4110.2510.1870.0730.4170.638p値0.0040.0790.1910.6110.003<0.001PSD値との相関全症例r-0.451-0.342-0.444-0.524-0.615-0.587p値<0.001<0.001<0.001<0.001<0.001<0.001初期r.0.251.0.185-0.306-0.350-0.379-0.360p値0.0600.1660.0220.0090.0050.007中・後期r-0.319.0.131.0.101-0.290-0.419-0.290p値0.0250.3600.4810.0430.0030.043らの検討においてもGCCTを用いた報告と同様の結果が得られ,GCIPLT値の計測は初期緑内障の検出に有用である可能性が示唆された.中・後期群のMD値は,平均cRNFLT値と平均GCIPLT値と相関を示したものの,セクター別のcRNFLT値やGCIPLT値とは相関がない部位が散見された.これはMD値がその視野の平均的な視野欠損を示す値であり,視野障害が進行するにつれ,セクター別のcRNFLTやGCIPLTの局所的な欠損に対応する視野変化を鋭敏に捉えることが困難であるためだと考える.よって病期が進行した中・後期群で(137)あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014441 は,さまざまな視野障害と局所的なcRNFLTやGCIPLTの欠損が混在することで,相関しにくかったのではないかと推察した.また中・後期群のPSD値との比較では,耳側各セクターのcRNFLT値とセクター別のGCIPLT値では,相関しないか,わずかな相関を数カ所認めるのみであった.これはPSD値が局所の視野沈下を示すものであり,病期が進むにつれて症例ごとにばらつきがでるからだと推察した.以上よりCirrusOCTで得られたGCIPLT値は,cRNFLT値と同様に視野障害と相関することがわかった.緑内障検出においてcRNFLTとGCCTは同等および相補的であり,さらにcRNFLT値のみで緑内障の視野障害検出率は78%だったが,GCCT値のデータを加えることで87%に上昇したとの報告がある6).GCCTに含まれるRNFLは正常でのバリエーションが多く,RNFLを含むとGCL本来の厚みの均質性が得られにくいとされている.それに対しGCIPLTはRNFLを含まないため,正常眼においてデータが均質で対称性が高いとされている.また今回用いたCirrusOCTでは,黄斑部4.0×4.8mmサークル内におけるGCAを計測している.これはGCLの50%以上が中心窩より1.0.4.5mmの位置に分布しており,この部位をカバーすることで微細なGCLの欠損を捉えることが可能である.そのためcRNFLT値に加えGCIPLT値を用いることは,GCCTよりも緑内障の検出率をさらに高める可能性があることが推察できる.さらにGCCT同様にGCIPLTも乳頭黄斑線維束と弓状神経線維の一部を含んだ黄斑部周囲の限定された範囲の値であり,緑内障患者のQOV(qualityofvision)に重要な固視点付近の解析が可能である.今回の結果からcRNFLTと同様にGCIPLTは視野と相関し,特に初期の緑内障との相関が示されるため,緑内障の検出に有用なパラメータの一つであることが示唆された.しかしGCAは歴史が浅く,正常眼データベースが不十分であることや,周辺視野の変化を捉えにくいことが懸念される.今後筆者らは病期別の検討に加え,視神経乳頭形態,近視性変化とを考慮したより幅広い解析を多数の症例で行い,さらなる早期緑内障の鋭敏な検出が可能となるようデータの蓄積に努めたいと考えている.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障ガイドライン(第3版).日眼会誌116:3-46,20122)小暮俊介,小暮朗子,堀貞夫:スペクトラルドメイン光干渉断層計による黄斑部および視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚と視野障害の相関.臨眼64:1741-1746,20103)山下力,春石和子,田淵昭雄ほか:緑内障眼の黄斑部および視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚,黄斑部網膜神経節細胞複合体厚と視野障害との関係.臨眼66:679-684,20124)KimNR,LeeES,SeongGJetal:Structure-functionrelationshipanddiagnosticvalueofmacularganglioncellcomplexmeasurementusingFourierdomainOCTinglaucoma.InvestOphthalmolVisSci51:4646-4651,20105)KanamoriA,NakamuraM,EscanoMFetal:Evaluationoftheglaucomatousdamageonretinalnervefiberlayerthicknessmeasuredbyopticalcoherencetomography.AmJOphthalmol135:513-520,20036)TanO,ChopraV,LuATetal:DetectionofmacularganglioncelllossinglaucomabyFourierdomainopticalcoherencetomography.Ophthalmology116:2305-2314,20097)SungKR,SunJH,NaJHetal:Progressiondetectioncapabilityofmacularthicknessinadvancedglaucomatouseyes.Ophthalmology119:308-313,20128)MwanzaJC,DurbinMK,BudenzDLetal:Gangliondiagnosticaccuracyofganglioncell-innerplexiformlayerthickness:comparisonwithnervefiberlayerandopticnervehead.Ophthalmology119:1151-1158,2012***442あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014(138)