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New TSAS を用いたドライアイスクリーニングの試み

2024年1月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科41(1):94.100,2024cNewTSASを用いたドライアイスクリーニングの試み荒木優斗*1田坂嘉孝*1,2山口昌彦*3篠崎友治*1細川寛子*1井上英紀*4坂根由梨*4白石敦*4高田英夫*5大橋裕一*1*1南松山病院眼科*2愛媛大学大学院医学系研究科視機能再生学講座*3愛媛県立中央病院眼科*4愛媛大学大学院医学系研究科眼科学講座*5株式会社トーメーコーポレーションCDryEyeScreeningUsingaNewTearStabilityAnalysisSystemYutoAraki1),YoshitakaTasaka1,2),MasahikoYamaguchi3),TomoharuShinozaki1),HirokoHosokawa1),HidenoriInoue4),YuriSakane4),AtsushiShiraishi4),HideoTakata5)andYuichiOhashi1)1)DepartmentofOphthalmology,Minami-MatsuyamaHospital,2)DepartmentofOphthalmologyandRegenerativeMedicine,EhimeUniversityGraduateSchoolofMedicine,3)DepartmentofOphthalmology,EhimePrefecturalCentralHospital,4)DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversityGraduateSchoolofMedicine,5)TomeyCorporationC目的:ビデオケラトグラフィーを用いた非侵襲的な涙液層安定性評価法の一つであるCtearCstabilityCanalysissystem(TSAS)に改良を加えたCNewTSASを用いてドライアイスクリーニングの有用性を検討した.対象および方法:南松山病院職員ボランティアC45名(男C14名,女C31名,34.6±10.9歳)に対してドライアイ症状の問診(DEQS),CNewTSASの非侵襲的CBUTにあたるCringBUT(RBUT,秒)測定(10秒持続開瞼)を行い,15分後にフルオレセインCBUT(FBUT,秒)を測定した.解析には右眼のCRBUTとCFBUTを用い,解析可能なC43名を対象とした.結果:2016年診断基準によるドライアイ確定例はC8名(18.6%)であった.ドライアイ群および正常群の各検査値は,それぞれCDEQSがC24.8±10.2,7.4±7.8(p=0.002),FBUT(秒)がC2.9±1.9,6.8±3.3(p=0.003),RBUT(秒)がC3.9±2.1,C7.6±3.2(p=0.004)で,いずれもC2群間に有意差を認めた.また,RBUT=0.58×FBUT+3.40(r=0.595)と良好な一次相関を示した.ドライアイ診断に対するCRBUTの感度:87.5%,特異度:68.6%(カットオフ値C5.0秒),receiverCoperatingcharacteristic曲線のCareaCunderCthecurveはC0.816であった.結論:NewTSASのCRBUTはCFBUTに対して良好な相関を示した.NewTSASによる非侵襲的涙液層安定性の評価は実臨床におけるドライアイのスクリーニングにおいて有用と考えられた.CPurpose:Toexaminethee.ectivenessofCthenewly-enhancedTearStabilityAnalysisSystem(NewTSAS),aCnoninvasivemethodusingCvideokeratographytoevaluatetear-.lm(TF)stability,fordryeye(DE)screening.Sub-jectsandMethods:Forty-.veparticipants(14Cmales,31females;meanage:34.6±10.9years)seenatCtheMina-mi-MatsuyamaCHospitalwereinterviewedaboutCDEsymptoms(DERelatedQualityofCLifeScore[DEQS]).Inallsubjects,RingCbreakuptime(BUT)(RBUT;seconds),whichCistheNewTSASnon-invasiveBUT(i.e.,10secondsofCsustainedeyelidopening),wasmeasured,and.uoresceinBUT(FBUT;seconds)wasmeasured15minuteslat-er.CRBUTCandCFBUTCdataCofCtheCrightCeyeCwasCusedCforCanalysis,CandC43CsubjectsCwhoCcouldCbeCanalyzedCwereCincluded.Results:UsingCthe2016JapanesediagnosticcriteriaCforCDE,8(18.6%)ofCthe43includedsubjectswerediagnosedas“de.nitiveDE”.IntheDECgroupandnormalcontrolgroup,themeanDEQSwas24.8±10.2CandC7.4C±7.8,respectively(p=0.002),CtheCmeanCFBUTCwasC2.9±1.9CandC6.8±3.3(p=0.003),Crespectively,CandCtheCmeanCRBUTCwasC3.9±2.1CandC7.6±3.2(p=0.004)respectively.CACsigni.cantCdi.erenceCinCFBUTCandCRBUTCwasCfoundCbetweenthetwogroups.Moreover,RBUT=0.58×FBUT+3.40(r=0.595),showingCaCgoodlinearCcorrelation.AtCanRBUTcuto.Cvalueof<5seconds,thesensitivityofCtheNewTSASwas87.5%Candthespeci.citywas68.6%CfordistinguishingCbetweenCtheCnormalCandCde.nitiveCDE.CTheCareaCunderCtheCreceiverCoperatingCcharacteristicCcurveCwas0.816.Conclusion:TheNewTSASRBUTdemonstratedaCgoodcorrelationwiththeFBUT.ThenoninvasiveassessmentCofCTFCstabilityusingCtheNewTSASwasfoundtobeusefulforCDECscreeningCinclinicalpractice.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)41(1):94.100,2024〕〔別刷請求先〕田坂嘉孝:〒790-8534愛媛県松山市朝生田町C1丁目C3-10南松山病院眼科Reprintrequests:YoshitakaTasaka,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,Minami-MatsuyamaHospital,1-3-10Asoda,Matsuyama,Ehime790-8534,JAPANC94(94)Keywords:ドライアイ,非侵襲的BUT,NewTSAS,ドライアイスクリーニング.dryeye,noninvasiveBUT,NewTSAS,dryeyescreening.Cはじめに涙液層破壊時間(tearC.lmCbreakuptime:BUT)は涙液安定性の評価に有用な指標であり,ドライアイのスクリーニングには必要不可欠な検査である.通常,フルオレセイン染色により判定されるが,涙液量の増加,測定値のばらつきなどの問題があり,涙液層の客観的な評価には非接触,低侵襲な検査法へとシフトしている.とくに,涙液層への投影像を利用した非侵襲的CBUT(noninvasiveBUT:NIBUT)測定については,筆者らの教室を含めていくつかの先駆的な試みが行われてきた1.3).近年,ビデオケラトグラフィーを用いたCNIBUTの測定機器は日本製,海外製のものを含めて複数が存在し,それぞれに臨床的な有用性が報告されている4.6).以前に筆者らが考案し,RT-7000(トーメーコーポレーション)に搭載されているCtearstabilityCanalysisCsystem(TSAS)もその一つで,ビデオケラトグラフィーを毎秒連続撮影することにより,非侵襲的に涙液安定性を定量評価するシステムである4).プラチド角膜形状解析装置の特徴である「涙液の影響を受けやすい」ことを逆利用し,投影されたマイヤーリング像の歪みやにじみを解析することでCringBUT(RBUT)を算出するが,「開瞼直後の眼表面の状態に影響されやすい」ことが診断精度面での大きな課題となっていた.今回,オートレフラクトメーターCMR-6000(トーメーコーポレーション)(図1)が,マルチファンクション仕様とし図1マルチファンクション・レフラクトメーターMR-6000(トーメーコーポレーション)てリニューアルし,ドライアイやアレルギー性結膜炎に関連した前眼部所見を多角的に検査できるようシステムアップを行った.特に,ドライアイ関連では,涙液メニスカスの観察,マイボグラフィー,そして新しいCTSASの三つの機能が追加されたが,その中で今回,解析方法を大幅に変更した新バージョンのCTSAS(NewTSAS)を用いて,実際の症例およびドライアイスクリーニングにおける有用性を検討したので報告する.CI対象および方法1.ドライアイスクリーニング試験2022年C6.7月に南松山病院職員の健常者ボランティア45名(男C14名,女C31名,34.6C±10.9歳)に対してドライアイ症状の問診(dryCeyeCrelatedCqualityCofClifescore:DEQS)7)を行ったのち,MR-6000にインストールされたCNewTSASにてC10秒間の持続開瞼にてCringBUT(RBUT,秒)を測定し,15分後にフルオレセインCBUT(FBUT,秒)を測定した.解析には右眼のCRBUTとCFBUTを用い,解析可能なC43名を対象とした.コンタクトレンズ装用者C13名については検査当日,朝からコンタクトレンズを非装用とした.DEQSはドライアイの症状や日常生活への影響に関する15項目のアンケートからなり,総合的なCQOL障害度がサマリースコア(0.100)として算出される.スコアが高いほど日常生活においてドライアイによる影響を受けていることになる.2016年版の日本のドライアイの定義と診断基準8),つまり,フルオレセインCBUTがC5秒以下で,ドライアイ症状を有する対象者をドライアイと確定診断した.自覚症状については,既報に準じてCDEQSサマリースコア(0.100)が15以上の場合を有症状とした9).ドライアイ群と正常群の比較検定はCt-testを用い,0.05未満を統計学的有意差とした.なお,本研究は国立大学法人愛媛大学臨床研究審査委員会の承認を得て実施された.C2.NewTSAS従来のCTSASは,オートレフ・トポグラファーCRT-7000(トーメーコーポレーション,2006年発売)に搭載され,すでに実臨床の場でドライアイの補助診断として用いられているが,今回の機種(NewTSAS)ではおもに以下のC2点に改良を加えている.①画像の情報量の増加従来のCTSASでは毎秒C1枚だけの撮影であったが,NewTSASでは毎秒C10枚の撮影を行ってフルオレセイン染色時従来のTSAS:0秒時とn秒時を比較NewTSAS:毎秒ごとの歪み量変化をグラフ化0秒1秒2秒10秒0秒1秒2秒10秒図2画像情報量の増加従来CTSASでは毎秒C1枚だけの撮影であったが,NewTSASでは毎秒C10枚の撮影を行っている.図3NewTSASの結果画面画面には投影マイヤーリングの状況が映し出され(左図),ブレークアップした部分が赤い点として表示される(右図).下部にリング変化量(赤線)のグラフが示される.緑線:開瞼状態,水色点線:閾値,黄線:RBUT測定に用いられる変化量部分.画面右にはCRBUTが表示され,5秒以下の場合,赤色表示になる.に得られるような連続した情報量に近似させ,さまざまな涙液ブレークアップパターンに対応できるように工夫している(図2).図3にCNewTSASの結果画面を示す.画面には投影マイヤーリングの状況が映し出され,ブレークアップした箇所が赤い点で示されている.ブレークアップ領域の経時的変化の状況は動画で観察することが可能である.その下部にリング変化量(赤線)のグラフが示される.緑線は開瞼状態,水色点線は閾値,黄線はCRBUT測定に用いられる変化量部分を表している.画面右にはCRBUTが表示され,5秒以下の場合,赤色表示になる.②オフセット処理機能の搭載さまざまなアーチファクトが原因で開瞼直後からリングに乱れが生じた場合,その乱れを最初にオフセットすることで,その後のリングの乱れをより正しく評価する機能である.事前に行った準備研究において,NewTSAS測定によって得られたブレークアップ変化量のグラフは図4に示すように,パターンCA(ブレークアップがみられない例:正常型),パターンCB(ブレークアップ面積が徐々に増加する例:標準ブレークアップ型),パターンCC(高度に点状表層角膜症(super.cialpunctatekeratopathy:SPK)が存在する例:SPK型),およびパターンCD(開瞼直後からブレークアップがみられる例:初期ブレーク型)の四つに大きく分けられることがわかった.このうちのパターンA,Bについては基本的にオフセット処理を行わずに解析可能であるが,パターンCについてはオフセット機能による調整が必要となる.具体的には,パターンCCの場合にはCSPKにより開瞼直後から変化量が過大評価されているため,オフセット機能が作動して基線を補正している.パターンCDではパターンCCと同様に開瞼直後画像の歪み量は大きいが,処理を行うと点線のように基線以下のマイナス表示になってしまうため,オフセット機能は作動しない.なお,オフセット処理のオンとオフは症例ごとに自動的に切りかえられるようになっている.実際の歪み量オフセット処理前処理後パターンAパターンBパターンCパターンD経過時間歪み量歪み量閾値図4NewTSASにおけるオフセット処理パターンCA:正常型(非ドライアイ型),パターンCB:標準ブレークアップ型,パターンCC:SPK型,パターンD:初期ブレークアップ型.症例を図5に示す.CII結果本研究では登録されたC45名から解析不能のC2名を除いた43名を最終対象とした.除外したC2名のうちC1名はCFBUT測定時にC3秒,もうC1名はCNewTSAS測定時に開瞼時間が4.1秒といずれもC5秒以上の連続開瞼ができなかった症例であり,器機の不備に伴うものではなかった.対象者のうち,2016年ドライアイ診断基準8)によるドライアイ確定例はC8名(18.6%)であり,正常群(35名)との間で検査値の比較検討を行った.ドライアイ群および正常群の各検査値は,それぞれ順に,DEQSがC24.8C±10.2,7.4C±7.8(p=0.002),FBUT(秒)がC2.9±1.9,6.8C±3.3(p=0.003),RBUT(秒)がC3.9C±2.1,7.6C±3.2(p=0.004)で,いずれもC2群間に統計学的な有意差を認めた(表1).RBUTとCFBUTとの間にはCRBUT=0.58×FBUT+3.40(r=0.595)と良好な一次相関が認められた(図6左).なお,RBUTとCFBUTが乖離した症例として,RBUTがC10秒であるがCFBUTがC5秒以下である症例がC4眼,逆にCRBUTがC5秒以下であるがCFBUTがC10秒である症例がC2眼存在した.ドライアイ診断に対するCRBUTの感度はC87.5%,特異度はC68.6%(カットオフ値C5.0秒)であった.ReceiverCoperatingcharacteristic曲線(ROC曲線)のCareaunderthecurve(AUC)はC0.816であった(図6右).ブレークアップパターンCA.Dの割合は,A:19眼(44.2%),B:16眼(37.2%),C:8眼(18.6%),D:0眼(0%)であった.CIII考按BUTとは開瞼から涙液層破壊が生じるまでの時間のことで,涙液層安定性を評価するうえで有用な指標である.その測定には通常フルオレセインを用いるCFBUTで評価されてきたが,簡便に測定できるという長所を持ち合わせる一方で,フルオレセインを使用することで眼表面の涙液量の増加による影響を受けるという欠点がある.その流れの中で,さまざまな角度からドライアイに関連した眼表面の異常を評価する検査法が普及し,しかも各検査が,単一機器の中で,低侵襲かつ定量的な方向で実施されるようになっている.そのトレンドはCBUTにおいても同様であり,近年検査法は非侵襲的なCNIBUTへと進化しつつある.従来のCTSASでは毎秒C1枚の画像しか撮影できず,眼表面の変化をリアルタイムに捉えているとは言い難かった.また,実臨床で用いた場合に開瞼後,長時間涙液層が安定している非ドライアイや,逆に開瞼後時間経過とともに加速度的に涙液層が不安定になる症例は正しく解析できる一方で,開瞼直後の状態が影響を受ける症例(開瞼不足,睫毛の映り込み,眼脂など),高度の角膜上皮障害を有する症例(高度SPKなど)では,解析が不正確になる場合があった.これら従来のCTSASの弱点を補うために,今回のCNewTSASでは大きく二つの改良を行っている.第一には情報量の増加と解析方法の改良である.従来のCTSASでは毎秒ごとにC1枚しか撮影できず,基準値(0秒)と各秒との差を変化量の加算ヒストグラムを用いて算出していたが,NewTSASではC1秒間にC10枚撮影することで情報量を増加させるとともに,毎秒算出される変化量をグラフ化する方式に変更した.また,情報量の増加により涙液層の状態をリアルタイムに捉えることができ,撮影したものを動画で見ることが可能になった.このことでCNewTSASはフルオレセイン染色時に得られる情報に近似できるようになった.第二はオフセット処理機能の搭載である.さまざまなアーチファクトが原因で開瞼直後からリングに乱れが生じた場合,その乱れを最初にオフセットすることで,その後のリンパターンARBUT:notbreakupパターンCSPKにより開瞼直後から変化量が過大評価されている図5NewTSAS実際の症例パターンCA:ブレークアップがみられない例(正常型).パターンCB:ブレークアップ面積が徐々に増加する例(標準ブレークアップ型).パターンCC:SPKが多くみられる例(SPK型).パターンCD:開瞼直後からブレークアップがみられる例(初期ブレークアップ型).A,Bは基本的にオフセット処理を行わずに解析可能である.CはCSPKにより開瞼直後から変化量が過大評価されているため,オフセット機能が作動している.Dは開瞼直後画像の歪み量は大きいが,オフセット処理を行うとマイナスになってしまう(点線)ため,オフセット機能は作動していない.グの乱れをより正しく評価することが可能になった.逆に,フはおよそ四つのパターンを示すことが推察された.すなわ涙液層破壊パターンの一つであるCspotbreak10)の症例では,ち,正常眼でみられるC10秒間閾値を超えないパターン(A:開瞼直後からの涙液層の不安定さによってリングが大幅に乱正常型),ドライアイ眼でよくみられる漸増パターン(CB:標れる.準備研究の段階において,CNewTSASの変化量グラ準ブレークアップ型),高度CSPKが存在するときにみられRBUT=0.58×FBUT+3.40(r=0.595)ROC曲線1210RBUT(秒)86420024681012Speci.cityFBUT(秒)図6FBUTとRBUTの相関とドライアイ診断に対するRBUTの感度・特異度RBUTとCFBUTとの間にはよい相関を認め,ROC曲線では感度:87.5%,特異度:68.6%(カットオフ値C5.0秒,AUC:0.816)であった.表1ドライアイ群と正常群におけるDEQS,FBUT,RBUTドライアイ群(n=8)正常群(n=35)p値CDEQSC24.8±10.2C7.4±7.8C0.002†FBUT(秒)C2.9±1.9C6.8±3.3C0.003†RBUT(秒)C3.9±2.1C7.6±3.2C0.004†t-test†:p<0.05ドライアイ確定例(2016年診断基準)はC8名(18.6%)であった.DEQS,FBUT,RBUTそれぞれにおいて両群間で有意差を認めた.る,初期から変化量が大きく,さらに経時的に漸増するパターン(C:SPK型),及び,SPKはみられないがCspotbreakなどのように開瞼直後の変化がもっとも大きくなるパターン(D:初期ブレーク型)である.今回のスクリーニング試験におけるそれぞれのパターンの発現割合をみてみると,A:19眼(44.2%),B:16眼(37.2%),C:8眼(18.6%),D:0眼(0%)であり,オフセット処理機能の有用性確認は,パターンCCのみにとどまった.なお,症例が得られなかったパターンCDについては,今後の検討に委ねたいと考える.本研究において,RBUTのカットオフ値をC2016年ドライアイ診断基準のCFBUTと同様であるC5秒とした場合,感度はC87.5%,特異度はC68.6%であった.RT-7000に搭載された従来のCTSASでカットオフ値を同じC5秒以下とした場合,感度はC77.8%,特異度はC70.0%4)であり,NewTSASは感度が上回り,特異度については,ほぼ同等となる結果であった.このことは,NewTSASが従来のCTSASと比較して,ドライアイスクリーニングにおける性能が向上したことを示唆している.CNewTSAS同様,NIBUTを測定する器機としてCKetato-graph5M(Oculus)5)やIDRA(SBMSistemi)6)がある.NewTSASについての解析方法は前述のとおりだが,これらの機器については解析方法の詳細は述べられていない.しかし,マイヤーリング像の初期の歪みやにじみを解析する点では同様である.ドライアイ診断基準は異なるが,Ketato-graph5Mでのドライアイ診断に対する感度はC84.1%,特異度はC75.6%(カットオフ値C2.65秒)5),IDRAでは感度C89%,特異度はC69%(カットオフ値C7.75秒)6),ROC曲線解析によるCAUCはCKetatograph5M:0.825,IDRA:0.841であり,今回得られたCNewTSASの数値は他機種のドライアイスクリーニング能力とは遜色ないものと考えられた.RBUTとCFBUTとの間にはCRBUT=0.58×FBUT+3.40(r=0.595)と良好な一次相関が認められたが,FBUTとRBUTが乖離した症例がいくつかみられた.横井によれば,FBUTは涙液層の菲薄化を,マイヤーリングの乱れを利用するCRBUTは油層を含めた涙液全層のブレークを反映しているため,RBUTを含めたCNIBUTはCFBUTよりも長くなるとされる11).したがって,FBUTではC1カ所でも小さなブレークが起こると,そのときの秒を測定値とするが,ブレークの範囲が狭いため,NewTSASではリング変化としてとらえきれず,RBUT=10秒という結果になったと考えられる.また,RBUTがCFBUTよりも短くなったC2眼では,FBUTはC10秒以上,明らかなブレークが見られなかったが,RBUTでは明らかに早期からリングの歪みが見られていた.今回,NewTSASでCRBUTを測定してからC15分間隔を開けてCFBUTを測定しているが,最初に持続開瞼してCRBUTを測定したことにより,過剰な涙液分泌が促され,FBUTの延長に影響を及ぼした可能性が考えられる.今回の研究はCNewTSASを用いたドライアイスクリーニングの有用性の評価を行うことが主目的であり,NewTSASの再現性については詳細に検討していない.続けて何回もの検査を行うことで涙液層に変化が生じる可能性もあるため,種々の条件設定のもとでの再現性試験を行うことで,CNewTSASのさらなる信頼性を検証することが必要と思われる.また,サンプルサイズも小さいため,スクリーニング検査におけるドライアイがC8眼にとどまっており,ROC曲線における感度と特異度を考慮すれば,今後より大きな対象を用いた研究を要すると思われる.CNewTSASでの動画がフルオレセインにおけるブレークアップパターン10)と連動できるようになれば,検査室におけるドライアイスクリーニングの検査を可能とし,ドライアイ診療に大きな変化をもたらすものと思われる.そのためにはさらに多くの情報量が必要になり,今後の機器の進化が期待される.結論として,NewTSASによる非侵襲的涙液層安定性の評価は,実臨床におけるドライアイのスクリーニングにおいて有用と考えられた.本論文の内容は角膜カンファランスC2023にて発表した.謝辞:本研究を行うにあたり,ご尽力いただきました,株式会社トーメーコーポレーションの山本聡氏に感謝申し上げます.利益相反白石敦カテゴリーF参天製薬高田英夫カテゴリーCE株式会社トーメーコーポレーション株式会社トーメーコーポレーションカテゴリーCP文献1)MengerCLS,CBronCAJ,CTongeCSRCetal:ACnon-invasiveCinstrumentforclinicalassessmentofthepre-cornealtear.lmstability.CurrEyeResC4:1-7,C19852)GotoT,ZhengX,KlyceSDetal:Anewmethodfortear.lmstabilityanalysisusingvideokeratography.AmJOph-thalmolC135:607-612,C20033)KojimaCT,CIshidaCR,CDogruCMCetal:ACnewCnoninvasiveCtearCstabilityCanalysisCsystemCforCtheCassessmentCofCdryCeyes.InvestOphthalmolVisSciC45:1369-1374,C20044)YamaguchiCM,CSakaneCY,CKamao,CTCetal:NoninvasiveCdryCeyeCassessmentCusingChigh-technologyCophthalmicCexaminationdevices.CorneaC35:S38-S48,C20165)HongJ,SunX,WeiAetal:Assessmentoftear.lmsta-bilityCinCdryCeyeCwithCaCnewlyCdevelopedCkeratograph.CCorneaC32:716-721,C20136)VigoL,PellegriniM,BernabeiFetal:Diagnosticperfor-manceCofCaCnovelCnoninvasiveCworkupCinCtheCsettingCofCdryeyedisease,JOphthalmol,C5804123,C20207)SakaneY,YamaguchiY,YokoiNetal:DevelopmentandvalidationCofCtheCdryCeye-RelatedCquality-of-lifeCscoreCquestionnaire.JAMAOphthalmolC131:1331-1338,C20138)島﨑潤,横井則彦ほか:ドライアイ研究会:日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版).あたらしい眼科C34:309-313,C20179)IshikawaCS,CTakeuchiCM,CKatoN:TheCcombinationCofCstripCmeniscometryCandCdryCeye-relatedCquality-of-lifeCscoreisusefulfordryeyescreeningduringhealthcheck-up.Medicine(Baltimore)97:12969,C201810)YokoiCN,CGeorgievCGA,CKatoCHCetal:Classi.cationCofC.uoresceinbreakupCpatterns:aCnovelCmethodCofCdi.e-rentialCdiagnosisCforCdryCeye.CAmCJCOphthalmolC180:C72-85,C201711)横井則彦:BUT検査.眼科検査ガイド第C3版,飯田知弘ら編集.文光堂,p342-346,C2022***