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ソフトコンタクトレンズ上から点眼可能な抗アレルギー剤(C3AL)の有効性および安全性の臨床的検討

2009年8月31日 月曜日

———————————————————————-Page1(137)11430910-1810/09/\100/頁/JCOPYあたらしい眼科26(8):11431152,2009c〔別刷請求先〕宮永嘉隆:〒134-0088東京都江戸川区西葛西5-4-9西葛西・井上眼科病院Reprintrequests:YoshitakaMiyanaga,M.D.,NishikasaiInoueEyeHospital,5-4-9Nishikasai,Edogawa-ku,Tokyo134-0088,JAPANソフトコンタクトレンズ上から点眼可能な抗アレルギー剤(C3AL)の有効性および安全性の臨床的検討宮永嘉隆*1,a村上晶*2中安清夫*3木村一弘*4勝海修*5佐野研二*6工藤昌之*7樋口裕彦*8糸井素純*9,b*1西葛西・井上眼科病院*2順天堂大学医学部附属順天堂医院眼科*3中安眼科クリニック*4井上眼科病院付属駿河台診療所*5西葛西井上眼科クリニック*6あすみが丘佐野眼科*7道玄坂糸井眼科医院*8ひぐち眼科*9糸井眼科医院(a:治験調整医師,b:医学専門家)ClinicalEvaluationofEcacyandSafetyofC3AL,anOphthalmicSolutionInstillablewithoutSoftContactLensRemovalYoshitakaMiyanaga1),AkiraMurakami2),KiyooNakayasu3),KazuhiroKimura4),OsamuKatsumi5),KenjiSano6),MasayukiKudo7),HirohikoHiguchi8)andMotozumiItoi9)1)NishikasaiInoueEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,JuntendoHospital,JuntendoUniversitySchoolofMedicine,3)NakayasuEyeClinic,4)SurugadaiClinic,InoueEyeHospital,5)NishikasaiInoueEyeClinic,6)AsumigaokaSanoEyeClinic,7)DogenzakaItoiEyeClinic,8)HiguchiEyeClinic,9)ItoiEyeClinicC3ALは防腐剤として塩化ベンザルコニウムを含まず,ソフトコンタクトレンズの上から点眼可能な「目のかゆみ」などの外眼部炎症症状に有効な一般用医薬品の点眼薬として開発された.今回,ソフトコンタクトレンズを使用しており,装用中に「目のかゆみ」などの外眼部炎症に起因する自覚症状を有する患者104例に,ソフトコンタクトレンズの上からC3ALを2週間投与し,自覚症状に対する有効性および安全性について検討した.その結果,C3ALの点眼による自覚症状の改善率は,「目のかゆみ」で87.3%,「目の疲れ」で78.2%,「目のかわき」で83.3%,「目のかすみ」で81.6%,「異物感」で85.7%であった.また,点眼薬の副作用は「上眼瞼の皮膚のただれ」1件(発現率1.0%)のみで,その他の副作用は一切認められなかった.以上より,C3ALは外眼部炎症に伴う自覚症状の改善に有効であり,ソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能な点眼薬であることが確認された.C3ALisanover-the-counter(OTC)ophthalmicsolutionforimprovingmildsymptomsofexternalocularinammation,suchaseyeitchiness,withouttheneedforsoftcontactlensremoval.TheecacyandsafetyofC3ALwereevaluatedin104patientswithmildexternalocularinammationwhousedsoftcontactlensesandnoticedsubjectivesymptomsofeyeitchinessetc.whilewearingthecontactlenses.C3ALwasadministeredfor2weeksinthepresenceofsoftcontactlenses.Improvementratesforvarioussymptomswere:eyeitchiness87.3%,eyefatigue78.2%,eyedryness83.3%,blurredvision81.6%andforeignbodysensation85.7%.Therewasonly1instanceofadversereaction:soreuppereyelid(incidence:1.0%).TheseresultssuggestthatC3ALiseectiveinimprovingmildsymptomsofexternalocularinammation,andissafeenoughtopermitinstillationwithoutsoftcontactlensremoval.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(8):11431152,2009〕Keywords:C3AL,ソフトコンタクトレンズの上からの点眼,外眼部炎症性疾患,アレルギー,安全性,一般用医薬品.C3AL,instillationwithoutremovingsoftcontactlenses,externalocularinammatorydisease,allergy,safety,over-the-counterdrug.———————————————————————-Page21144あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(138)はじめに近年,1日使い捨てソフトコンタクトレンズや頻回交換ソフトコンタクトレンズなどの登場により,ソフトコンタクトレンズ使用者が急増した.ソフトコンタクトレンズ使用者の多くは,軽度のドライアイや軽微な外眼部炎症に伴う自覚症状を伴っており,ソフトコンタクトレンズ上からの点眼薬を希望する人も少なくない.しかし,医療用医薬品・一般用医薬品を問わず,多くの点眼薬はソフトコンタクトレンズ上からの点眼は禁忌である.他覚所見が乏しいケースでは,ソフトコンタクトレンズの装用に伴う「目のかゆみ」,「目のかわき」,「目の疲れ」などの自覚症状に対して医薬品を処方するには,さまざまな制約があり,一般用医薬品の存在は必要不可欠である.一部,「目のかわき」や「目の疲れ」に対しては,ソフトコンタクトレンズ上からの点眼が可能な一般用医薬品の点眼薬(以下,「一般用点眼薬」とする)が存在するが,「目のかゆみ」に対しては,ソフトコンタクトレンズ上からの点眼が可能な一般用点眼薬はこれまで存在しなかった.ソフトコンタクトレンズ装用時に,「目のかゆみ」を生じた場合は,一般的にソフトコンタクトレンズをはずして点眼することが推奨されている2).しかし,レンズケアの問題や経済的な理由により,ソフトコンタクトレンズをはずさずに点眼薬を使用する人や,点眼薬を使用できないために目をこすってしまう人も少なくない.このような行為は,結果的に角結膜上皮を傷つけてしまい,症状を悪化させる可能性がある.また,ソフトコンタクトレンズをはずして点眼し,そのままレンズケアを行わないでレンズを再装用したためにトラブルにあう人も少なくない.このような状況のなか,「目のかゆみ」に対して有効なソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能な点眼薬が望まれていた.そこで,医療機関での眼科的治療に至らない軽度のアレルギー性結膜炎などの外眼部炎症性疾患に伴う,「目のかゆみ」などの症状に対して,コンタクトレンズの上から点眼可能な新しい一般用点眼薬C3ALが開発された.C3ALは有効成分としてグリチルリチン酸二カリウム0.125%および塩酸ピリドキシン0.010%を含有しており,防腐剤としてソフトコンタクトレンズ上からの点眼においても安全性が高いとされるソルビン酸カリウム3,4)を配合している.C3AL配合成分のソフトコンタクトレンズへの吸着および残存については,含水性ソフトコンタクトレンズのグループIIVより各1種類と非含水性ソフトコンタクトレンズ1種類の計5種類を選択して,C3ALへの浸漬による吸着実験と生理食塩水への浸漬による放出実験を行い,レンズへの配合成分の残存は認められないことを確認した.ソフトコンタクトレンズの形状,外観,ベースカーブ,直径,レンズ度数,含水率といった物性にも影響はなかった.本試験では,軽度の外眼部炎症性疾患を伴うソフトコンタクトレンズ使用者で,装用中に「目のかゆみ」,「目の疲れ」,「目のかわき」,「目のかすみ(目やにの多いときなど)」,「異物感」の自覚症状を有する患者を対象として,C3ALの自覚症状に対する有効性および安全性について検討した.I試験方法1.医療機関および試験期間本試験は表1に示した7医療機関で2005年5月より同年11月の間に実施された.なお,本試験は治験審査委員会で審査・承認された後,ヘルシンキ宣言の倫理の概念,薬事法第14条第3項および同法第80条の2に規定する基準,ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」を遵守して実施された.2.対象試験期間中に表1に示す医療機関に来院した軽度の外眼部炎症性疾患(アレルギー性結膜炎,慢性結膜炎,乾性角結膜炎など)の患者で,ソフトコンタクトレンズ(表2,グループIIV)をほぼ毎日,終日装用または連続装用しており,装用中に「目のかゆみ」,「目の疲れ」,「目のかわき」,「目のかすみ(目やにの多いときなど)」,「異物感」の自覚症状を有する15歳以上の患者を対象とした(ただし,「目のかゆみ」の自覚症状を有さない患者は対象から除外した).なお,ソフトコンタクトレンズは,ほぼ毎日,終日装用ま表1実施機関および担当医師実施機関担当医師西葛西井上眼科クリニック勝海修,山田はづき,久間木哲子順天堂大学医学部附属順天堂医院村上晶,土至田宏中安眼科クリニック中安清夫井上眼科病院付属駿河台診療所木村一弘あすみが丘佐野眼科佐野研二道玄坂糸井眼科医院工藤昌之ひぐち眼科樋口裕彦表2ソフトコンタクトレンズのFDA分類グループ分類基準I含水率が50%未満で非イオン性であるものII含水率が50%以上で非イオン性であるものIII含水率が50%未満でイオン性であるものIV含水率が50%以上でイオン性であるもの※原材料ポリマーの構成モノマーのうち,陰イオンを有するモノマーのモル%が1%以上であるものをイオン性,1%未満であるものを非イオン性とする.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091145(139)たは連続装用していることを採用基準とした.治験責任医師または治験分担医師は,試験開始前に試験内容について被験者に十分に説明を行い,自由意思による同意を文書により得た(被験者が未成年者の場合は本人と同様に代諾者から文書による同意を得た).3.試験薬C3ALは100ml中にグリチルリチン酸二カリウムを0.125gと塩酸ピリドキシンを0.010g含有する点眼薬である.4.投与方法ソフトコンタクトレンズの上から,C3ALを1回12滴,1日56回,2週間点眼させ,投与開始時,1週間後,2週間後に,自覚症状の問診および眼科的検査を行った(表3).被験者には試験開始前のコンタクトレンズの使用状況を確認し,レンズケアを変更しないように指導した.試験期間中は,すべての点眼薬(医療用,一般用を問わず),並びにステロイド剤,非ステロイド系消炎鎮痛剤,抗精神病剤,抗ヒスタミン剤,抗アレルギー剤,眼精疲労などの効能を有するビタミン剤およびATP(アデノシン三リン酸)製剤など,C3ALの評価に影響を及ぼすと考えられる薬剤(外皮用剤による局所投与は除く)の併用は禁止した.5.観察,検査項目a.患者背景性別,年齢,診断名,ソフトコンタクトレンズの使用経験年数,現在使用している(試験薬の投与期間中に装用する)ソフトコンタクトレンズの種類と使用経験年月日,装用状況を調査した.b.自覚症状目のかゆみ,目の疲れ,目のかわき,目のかすみ(目やにの多いときなど),異物感の5項目について,表4に示す基準で,なし(0),軽度(1),中等度(2),重度(3)の4段階で判定した.表3試験スケジュール項目投与開始時1週間後(7±2日後)2週間後(14±3日後)・中止時患者背景○──症状程度自覚症状目のかゆみ,目の疲れ,目のかわき,目のかすみ(目やにの多いときなど),異物感○○○他覚所見眼瞼結膜充血,眼瞼結膜浮腫,眼瞼結膜濾胞,上眼瞼結膜乳頭増殖,眼球結膜充血,眼球結膜浮腫,輪部充血,角膜上皮障害,角膜浮腫,角膜血管新生フィッティング検査○○○コンタクトレンズ矯正視力検査○─○コンタクトレンズの表面検査○○○有効性自覚症状別改善度─○○安全性有害事象(副作用)─○○概括安全度──○表4自覚症状およびその程度症状程度目安目のかゆみ3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)かゆくて我慢できないかゆい少しかゆいが我慢できるかゆくない目の疲れ3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)疲れて我慢できない疲れる少し疲れるが我慢できる疲れはない目のかわき3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)かわいて我慢できないかわく少しかわくが我慢できるかわかない目のかすみ(目やにの多いときなど)3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)多量にでて朝,瞼がくっついている眼脂が多くて拭う必要あり眼脂が粘つく感じほとんどない異物感3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)たえずゴロゴロして眼が開けられないゴロゴロするが努力すれば眼が開けられるときどきゴロゴロするない———————————————————————-Page41146あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(140)c.他覚所見眼瞼結膜充血,眼瞼結膜浮腫,眼瞼結膜濾胞,上眼瞼結膜乳頭増殖,眼球結膜充血,眼球結膜浮腫,輪部充血,角膜上皮障害,角膜浮腫,角膜血管新生の10項目について,表5の基準で判定した.なお,角膜上皮障害は原則としてフルオレセイン染色を行い観察した.d.コンタクトレンズ矯正視力検査使用したソフトコンタクトレンズによる矯正視力(コンタクトレンズ矯正視力)検査と追加矯正視力(コンタクトレンズ最高矯正視力)検査を実施した.e.フィッティング検査フィッティング検査は,細隙灯顕微鏡を用い,レンズフィッティング,安定位置および軸の回転(トーリックレンズのみ)について,それぞれ次の基準で評価した.フィッティング:Normal,Loose,Tight安定位置:中央,上方,下方,耳側方,鼻側方表5他覚所見およびその程度症状程度目安眼瞼結膜充血3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)眼瞼結膜全体(上・下)の発赤で,個々の血管が識別不能眼瞼結膜全体(上・下)に多数の血管拡張眼瞼の一部分に数本の血管拡張所見なし眼瞼結膜浮腫3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)上・下眼瞼結膜が水泡状に腫脹上・下眼瞼結膜が全体にびまん性に薄く腫脹する上・下眼瞼結膜にわずかに腫脹がある所見なし眼瞼結膜濾胞3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)下眼瞼全体(円蓋部も含む)に全面にある下眼瞼全体(円蓋部も含む)に10十数個程度認める下眼瞼結膜円蓋部に数個認める所見なし上眼瞼結膜乳頭増殖3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)瞼板部全面に直径0.61mmのものを認める瞼板部全面に直径0.30.5mmのものを認める瞼板部に一部,直径0.10.2mmのものを認める所見なし眼球結膜充血3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)全体の血管が拡張して白眼の存在がわかりにくい多数の血管拡張がある数本の血管拡張がある所見なし眼球結膜浮腫3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)結膜が膨隆し瞼裂外へ突出全体に薄くびまん性浮腫を認める一部分に浮腫を認める所見なし輪部充血3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)全体の血管が拡張している多数の血管拡張があるわずかに血管拡張がある所見なし角膜上皮障害3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)面状またはびらん点状多数で広範囲なもの(びまん性)点状少数で限局性のもの(スマイルマークパターンを含む)なし角膜浮腫3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)角膜全体の浮腫実質の浮腫(Descemet膜皺襞を含む)上皮の浮腫なし角膜血管新生3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)角膜輪部から2mm以上で多方向または実質内血管侵入角膜輪部から2mm以上角膜輪部から2mm未満なし———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091147(141)軸の回転※:回転なし,時計回りに()°回転,反時計回りに()°回転※:トーリックレンズの場合のみ実施f.コンタクトレンズの表面検査コンタクトレンズの表面検査は,細隙灯顕微鏡を用い,キズおよび汚れについてそれぞれ次の基準で評価した.キズ:0:なし(正常な取り扱いでも発生する最表面の微細なキズは,なしと評価する)1:軽度(局所的に観察される浅いキズ)2:中等度(広範囲に観察されるキズ)3:重度(装用上問題となるキズ)汚れ:0:なし1:軽度(局所的に観察される汚れ)2:中等度(広範囲に観察される汚れ)3:重度(装用上問題となる汚れ)6.評価項目a.有効性有効性の主要評価項目は自覚症状別改善度とし,1週間後,2週間後および中止時に評価を行った.投与開始時と比較した各症状の程度の推移は,次の判定基準に従い4段階で評価し,「軽減」と「消失」に該当する症例の割合を改善率として算出した.なお,有効性の評価は,投与開始前の自覚症状が左右眼で異なる場合は自覚症状の重いほうの眼を,同程度の場合は右眼をそれぞれ評価対象眼として行った.・消失:(3,2,1→0)・軽減:(3→2),(3,2→1)・不変:(3→3),(2→2),(1→1)・悪化:(0→1,2,3),(1→2,3),(2→3)(*症状の推移が(0→0)の場合,「開始日の症状なし」とした.)b.安全性安全性は,副作用の発現率により評価した.試験期間中に発現した有害事象について,「試験薬との関連性なし」,「試験薬との関連性不明」,「試験薬との関連性あるかもしれない」,「試験薬と明らかに関連性あり」の4段階で評価し,「関連性なし」と判断されたもの以外を副作用とした.試験終了時または中止時には,副作用内容を考慮して,概括安全度を「安全」,「ほぼ安全」,「やや問題あり」,「問題あり」,「非常に問題あり」の5段階で判定し,「安全」に該当する症例の割合を概括安全率として評価した.7.評価対象有効性については,1週間後(7±2日)または2週間後(14±3日後)のいずれかの来院日で自覚症状別改善度を評価された症例を対象とし,各症状の改善率とその95%信頼区間を算出した.安全性については,投与開始から2週間後(14±3日後)まで投薬された症例を対象とし(ただし,途中中止例・逸脱例についても,有害事象が発現した場合には安全性の評価対象に含めることとした),有害事象および副作用の発現率,概括安全率を算出した.II結果1.被験者の内訳本試験に組み入れられた総症例数は104例であり,全例にC3ALが投与された.このうち1例(2週間交換レンズ装用者)は,投与開始9日目に,洗浄の際にソフトコンタクトレンズを破損し,レンズの交換を行ったため,担当医師の指示により中止した.また,1例(1カ月交換ソフトコンタクトレンズ使用者)は,1週間後の来院日にレンズ洗浄時についたと考えられるキズがレンズに認められたことから,レンズを交換し,試験を継続したが,この症例は逸脱例として取り扱った.なお,これら2例は,1週間後の自覚症状別改善度のデータは得られたため,有効性については1週間後のみ採用とした(有効性評価対象症例数:1週間後104例,2週間後102例).安全性については,2週間後まで試験が継続表6患者背景背景因子症例数(%)性別男性23(22.1)女性81(77.9)年齢1519歳6(5.8)2029歳54(51.9)3039歳31(29.8)4049歳11(10.6)50歳2(1.9)平均値(最小値最大値)29.5(1656歳)診断名アレルギー性結膜炎86(82.7)慢性結膜炎4(3.9)乾性角結膜炎5(4.8)アレルギー性結膜炎,慢性結膜炎2(1.9)アレルギー性結膜炎,乾性角結膜炎7(6.7)ソフトコンタクトレンズの使用経験年数3カ月以上1年未満5(4.8)1年以上5年未満20(19.2)5年以上10年未満37(35.6)10年以上15年未満27(26.0)15年以上15(14.4)平均値(最小値最大値)8.5年(5カ月27年)———————————————————————-Page61148あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(142)されず,かつ2例ともに有害事象の発現が認められなかったため,評価対象から除外した(安全性評価対象症例数:102例).2.患者背景表6に患者背景,表7に試験期間中に使用したソフトコンタクトレンズの内訳を示した.対象者の年齢は1656歳であり,診断名は「アレルギー性結膜炎」が82.7%と最も多かった.試験に用いられたソフトコンタクトレンズの種類は,「頻回交換ソフトコンタクトレンズ」が67.3%と最も多かった.ソフトコンタクトレンズのFDA(米国食品医薬品局)分類でみると,グループ「I」,「II」,「IV」のレンズを使用していた.ソフトコンタクトレンズの装用状況では,「終日装用」が102例(98.1%)であり,「終日装用」における1日の平均装用時間は平均13.1時間であった.1週間の装用日数は,全例が週6日以上装用していた.なお,有効性の評価対象眼は,「右眼」が93例(89.4%)で,「左眼」が11例(10.6%)であった.3.有効性1週間後の自覚症状別の改善率は,それぞれ,「目のかゆみ」75.0%,「目の疲れ」66.1%,「目のかわき」68.6%,「目のかすみ(目やにの多いときなど)」70.3%,「異物感」85.7%であった(表8).また,2週間後の自覚症状別の改善率は,それぞれ,「目のかゆみ」87.3%,「目の疲れ」78.2%,「目のかわき」83.3%,「目のかすみ(目やにの多いときなど)」表7試験期間中に使用したソフトコンタクトレンズの内訳項目カテゴリー症例数(%)使用経験年数3カ月以上6カ月未満17(16.4)6カ月以上1年未満16(15.4)1年以上3年未満36(34.6)3年以上5年未満17(16.4)5年以上18(17.3)平均値(最小値最大値)2.4年(3カ月10年)種類使い捨て1日4(3.9)1週間2(1.9)その他0(0.0)(計)6(5.8)頻回・定期交換2週間70(67.3)1カ月23(22.1)3カ月0(0.0)その他0(0.0)(計)93(89.4)コンベンショナル(従来型)5(4.8)FDA分類I32(30.8)II28(26.9)III0(0.0)IV44(42.3)装用状況1日の平均装用時間終日装用10時間未満10(9.6)10時間15時間未満47(45.2)15時間24時間未満45(43.3)終日装用症例数102(98.1)平均値(最小値最大値)13.1(618時間)連続装用24時間2(1.9)1週間の装用日数5日以下0(0.0)6日8(7.7)7日96(92.3)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091149(143)81.6%,「異物感」85.7%であった(表9).2週間後の「目のかゆみ」について,患者背景因子別に評価したところ(表10),診断名「アレルギー性結膜炎」で改善率が89.3%(75/84例)であった.ソフトコンタクトレンズのグループ別の改善率は,「I」で87.5%(28/32例),「II」で88.9%(24/27例),「IV」で86.0%(37/43例)であった.4.安全性有害事象は,102例中14例(18件)に発現した(発現率:13.7%).頻度の高かった有害事象は眼瞼結膜充血(4件:3.9%)で,次いで目のかわき,目のかすみ,異物感,角膜上皮障害(各3件:2.9%),眼球結膜充血(1件:1.0%)であった.点眼時の刺激感の報告はなかった.これらの有害事象のうち,レンズケアの不足や,ソフトコンタクトレンズ装用による一時的な症状出現といった理由により,13例(17件)については試験薬との因果関係はないと最終的に判断された.有害事象のうち,副作用と判断されたものは,試験薬との因果関係が不明と判定された「上眼瞼の皮膚のただれ(両眼)」1件のみであり,副作用の発現率は1.0%(1/102例)であった.この副作用発現症例については,プレドニゾロン眼軟膏0.25%の外用塗布により,試験終了後も症状の悪化と軽快をくり返したが,左上眼瞼の症状は投与終了から約3週間後に,右上眼瞼の症状は投与終了から約5週間後に消失を確認した.この症例はアトピー性皮膚炎を合併しており,以前より同症状をくり返していた.概括安全度は,副作用が発現した1例で「やや問題あり」(副作用が発現し,副作用に対する処置を必要としたが,試験薬投与の継続が可能)と判定された以外は,全例(101/102例)で「安全」と判定され,概括安全率は99.0%であった.コンタクトレンズ視力検査については,試験薬投与前後において問題となる変化は認められず,フィッティング検査およびコンタクトレンズの表面検査についても,試験期間中に問題は認められなかった.他覚所見においても,試験期間中問題となる所見はみられなかった(表11).III考察従来,ソフトコンタクトレンズ装用中に自覚する「目のかゆみ」などの外眼部炎症症状に対して,点眼薬を使用する場合には,ソフトコンタクトレンズをはずしてから点眼する必要があった.今回開発されたC3ALは,ソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能である抗炎症成分配合の「目のかゆみ」に対応した初めての一般用点眼薬として開発された.そこで一般臨床試験を実施し,C3ALの「目のかゆみ」などの自覚症状に対する有効性と安全性について検討した.自覚症状をもつ軽度の外眼部炎症性疾患(アレルギー性結膜炎,慢性結膜炎,乾性角結膜炎など)の患者を対象に,ソフトコンタクトレンズの上から,1回12滴,1日56回,2週間C3ALを点眼した結果,自覚症状に対する改善率は「目のかゆみ」,「目のかわき」,「目のかすみ」および「異物感」の4つの自覚症状については80%以上であり,「目の疲れ」についても78.2%の改善率が得られた.C3ALの点眼による副作用は「上眼瞼の皮膚のただれ(両眼)」の1件のみで,発現率1.0%,概括安全率99.0%であ表8自覚症状別改善度(1週間後)自覚症状症例数消失軽減不変悪化改善率(%),(95%信頼区間)目のかゆみ10470826075.0(66.783.3)目の疲れ5633419066.1(53.778.5)目のかわき8655426168.6(58.878.4)目のかすみ(目やにの多いときなど)3726010170.3(55.585.0)異物感352825085.7(74.197.3)表9自覚症状別改善度(2週間後)自覚症状症例数消失軽減不変悪化改善率(%),(95%信頼区間)目のかゆみ10287213087.3(80.893.7)目の疲れ5541212078.2(67.389.1)目のかわき8466411383.3(75.491.3)目のかすみ(目やにの多いときなど)383105281.6(69.393.9)異物感352823285.7(74.197.3)———————————————————————-Page81150あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(144)った.コンタクトレンズに関する検査(コンタクトレンズ矯正視力検査,フィッティング検査,コンタクトレンズの表面検査)および他覚所見においても,C3ALの点眼による副作用はみられなかった.以上のことから,C3ALは「目のかゆみ」をはじめ,「目のかわき」などといった自覚症状に対して有効であり,ソフトコンタクトレンズの上から点眼しても表10「目のかゆみ」に対する背景因子別改善度(2週間後)項目症例数消失軽減不変悪化改善率(%),(95%信頼区間)性別男性231913087.0(73.2100.0)女性7968110087.3(80.094.7)年齢1519歳6402066.7(28.9100.0)2029歳534526088.7(80.197.2)3039歳312704087.1(75.398.9)4049歳10901090.0(71.4100.0)50歳22000100.0診断名アレルギー性結膜炎847419089.3(82.795.9)慢性結膜炎4301075.0乾性角結膜炎55000100.0アレルギー性結膜炎,慢性結膜炎22000100.0アレルギー性結膜炎,乾性角結膜炎7313057.1(20.593.8)ソフトコンタクトレンズの使用経験年数3カ月1年未満55000100.01年5年未満201415075.0(56.094.0)5年10年未満353113091.4(82.2100.0)10年15年未満272403088.9(77.0100.0)15年151302086.7(69.5100.0)使用経験年月数3カ月6カ月未満171502088.2(72.9100.0)6カ月1年未満141202085.7(67.4100.0)1年3年未満363204088.9(78.699.2)3年5年未満171412088.2(72.9100.0)5年181413083.3(66.1100.0)種類使い捨て1日4202050.01週間22000100.0頻回・定期交換2週間695928088.4(80.996.0)1カ月221903086.4(72.0100.0)コンベンショナル55000100.0FDA分類I322714087.5(76.099.0)II272403088.9(77.0100.0)IV433616086.0(75.796.4)1日の平均装用時間10時間未満99000100.010時間15時間未満463817084.8(74.495.2)15時間24時間未満453816086.7(76.796.6)24時間22000100.01週間の装用日数6日8512075.0(45.0100.0)7日9482111088.3(81.894.8)———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091151(145)安全な薬剤であることが確認された.ソフトコンタクトレンズの上から点眼薬を投与すると,点眼薬中の成分がレンズに吸着,蓄積し,レンズの変形や薬剤による角結膜への影響の可能性がある.しかし,医療用点眼薬の研究では,点眼薬の成分や防腐剤などの添加物のソフトコンタクトレンズへの吸着や蓄積性について,臨床上問題となることはないとの報告がある58).塩酸レボカバスチン点眼液9,10)では,頻回交換ソフトコンタクトレンズや1日使い捨てソフトコンタクトレンズについて試験を行い,コンタクトレンズの上から点眼しても安全であることが報告されている.このような医療用点眼薬とは異なり,一般用点眼薬では医師による指導や定期検査が行われないため,より安全性の高いものが望まれる.今回,一般用点眼薬として開発されたC3ALは,ソフトコンタクトレンズへの成分の吸着やレンズの物性への影響がないことに加え,臨床試験においてC3ALによる副作用はほとんど認められなかったことから,ソフトコンタクトレンズの上から点眼できる安全な薬剤であることが示された.一般に外眼部の炎症症状が軽度の場合には,一般用点眼薬による対処を行っている人が多いと考えられ,ソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能なC3ALは,「目表11他覚所見の推移他覚所見の程度0:なし1:軽度2:中等度3:重度眼瞼結膜充血投与開始時45(44.1)56(54.9)1(1.0)0(0.0)1週間後71(69.6)30(29.4)1(1.0)0(0.0)2週間後79(77.5)23(22.5)0(0.0)0(0.0)眼瞼結膜浮腫投与開始時72(70.6)28(27.5)2(2.0)0(0.0)1週間後89(87.3)13(12.7)0(0.0)0(0.0)2週間後95(93.1)7(6.9)0(0.0)0(0.0)眼瞼結膜濾胞投与開始時34(33.3)63(61.8)5(4.9)0(0.0)1週間後41(40.2)59(57.8)2(2.0)0(0.0)2週間後49(48.0)51(50.0)2(2.0)0(0.0)上眼瞼結膜乳頭増殖投与開始時73(71.6)27(26.5)2(2.0)0(0.0)1週間後76(74.5)25(24.5)1(1.0)0(0.0)2週間後78(76.5)23(22.5)1(1.0)0(0.0)眼球結膜充血投与開始時77(75.5)25(24.5)0(0.0)0(0.0)1週間後95(93.1)7(6.9)0(0.0)0(0.0)2週間後101(99.0)1(1.0)0(0.0)0(0.0)眼球結膜浮腫投与開始時87(85.3)15(14.7)0(0.0)0(0.0)1週間後102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)2週間後102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)輪部充血投与開始時96(94.1)6(5.9)0(0.0)0(0.0)1週間後99(97.1)3(2.9)0(0.0)0(0.0)2週間後100(98.0)2(2.0)0(0.0)0(0.0)角膜上皮障害投与開始時89(87.3)13(12.7)0(0.0)0(0.0)1週間後93(91.2)9(8.8)0(0.0)0(0.0)2週間後97(95.1)5(4.9)0(0.0)0(0.0)角膜浮腫投与開始時102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)1週間後102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)2週間後102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)角膜血管新生投与開始時97(95.1)5(4.9)0(0.0)0(0.0)1週間後98(96.1)4(3.9)0(0.0)0(0.0)2週間後98(96.1)4(3.9)0(0.0)0(0.0)———————————————————————-Page101152あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(146)のかゆみ」などの不快感を自覚する人にとって,有用なものであると考えられる.今後このようなソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能な一般用点眼薬の開発がいっそう望まれるが,一般用点眼薬については安全性を最重視すべきであり,症状が改善したら点眼をやめる,点眼薬を使い続けても症状が良くならない場合や,充血などが生じた場合などには,すぐに点眼薬の使用を中止し,眼科を受診するように指導を徹底するなどといった,一般消費者に対する啓蒙活動が必要不可欠であろう.文献1)高村悦子,雑賀寿和,藤島浩ほか:アレルギー性結膜炎とコンタクトレンズ.日コレ誌37:248-253,19952)水谷聡:コンタクトレンズとケア溶液,点眼薬─問題点とその対策─.日コレ誌37:35-39,19953)﨑元卓:治療用コンタクトレンズへの防腐剤の吸着.日コレ誌35:177-182,19934)水谷聡,伊藤康雄,白木美香ほか:コンタクトレンズと防腐剤の影響について(第1報)─取り込みと放出─.日コレ誌34:267-276,19925)百瀬隆行,伊藤延子:トラニラスト(リザベンR)点眼液による巨大乳頭結膜炎に対する効果とソフトコンタクトレンズへの吸着.あたらしい眼科18:1425-1428,20016)百瀬隆行,岩崎和佳子,安田勉:DisodiumCromogly-cate(インタールR)点眼によるソフトコンタクトレンズへの吸着について.眼臨81:1401-1404,19877)小玉裕司,北浦孝一:ソフトコンタクトレンズ装用上における点眼使用の安全性について.日コレ誌42:9-14,20008)小玉裕司:コンタクトレンズ装用上におけるアシタザノラスト水和物点眼液(ゼペリンR点眼液)の安全性.あたらしい眼科20:373-377,20039)小玉裕司:塩酸レボカバスチン点眼液(リボスチンR点眼液0.025%)の毎日交換ディスポーザブル・ソフトコンタクトレンズ(dailyDSCL)装用眼における角結膜に及ぼす影響.あたらしい眼科22:231-234,200510)渡邉潔:頻回交換ソフトコンタクトレンズ装用者にみられるアレルギー結膜炎に対する塩酸レボカバスチン点眼液の臨床効果.日コレ誌47:54-57,2005***