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特別養護老人ホームに通所している高齢者の視覚関連Quality of Life

2020年6月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科37(6):763.767,2020c特別養護老人ホームに通所している高齢者の視覚関連QualityofLife多々良俊哉前田史篤生方北斗菊入昭金子弘阿部春樹新潟医療福祉大学医療技術学部視機能科学科CVision-RelatedQualityofLifeinElderlySubjectsinaSpecialElderlyNursingHomeShunyaTatara,FumiatsuMaeda,HokutoUbukata,AkiraKikuiri,HiroshiKanekoandHarukiAbeCNiigataUniversityofHealthandWelfareDepartmentofOrthopticsandVisualSciencesC特別養護老人ホームに通所している高齢者(平均年齢C±標準偏差C86.0C±5.3歳)を対象に,25-itemCNationalCEyeCInstituteCVisualCFunctionQuestionnaire(NEIVFQ-25)を用いて視覚に関連した健康関連CQOL尺度を測定し,視力との関係性について検討した.対象者の眼鏡常用率はC12.5%であった.本研究では矯正視力に加えて,眼鏡常用者は眼鏡視力,未常用者の場合は裸眼視力を測定し,それらを日常生活視力として評価した.日常生活視力は矯正視力と比較して,遠見でC0.23log(p<0.01),近見でC0.20log(p<0.01)低値であった.NEIVFQ-25の「遠見視力による行動」のスコアはC81.0,「近見視力による行動」では,74.0であり,それらはCworseeyeの日常生活視力と強く相関した(p<0.01).特別養護老人ホームに通所している高齢者には眼鏡非常用者が多かった.これらのことから高齢者は適切な屈折矯正がされていないため,日常生活のなかで行動制限が生じている可能性が示唆された.CInthisstudy,wemeasuredthehealth-relatedqualityoflife(QOL)levelusingthe25-itemNationalEyeInsti-tuteVisualFunctionQuestionnaire(NEIVFQ-25)amongelderlysubjects[meanage:86.0C±5.3(meanC±standarddeviation)years]inaspecialelderlynursinghome,andexaminedtherelationshipbetweenQOLandvisualacuity(VA)C.OfCtheCsubjectsCexamined,12.5%CworeCglassesCregularly.CInCadditionCtoCcorrectedCVA,CweCmeasuredCVACwithglassesornakedeyeasvisionindailylife(dailylifeVA)C.DailylifeVAwas0.23Clog(p<0.01)inthedistanceand0.20Clog(p<0.01)inCtheCnearCvisionCcomparedCwithCtheCcorrectedCVA.CTheCNEICVFQ-25scoreCwasC81.0forC“di.cultyCwithCdistance-visionCactivities”andC74.0for“di.cultyCwithCnear-visionCactivities”,andCmostCofCtheCexaminedCsubjectsCdidCnotCwearCglassesCwhileCatCtheCfacility.COurC.ndingsCsuggestCthatCseniorsCmayCnotChaveCappropriaterefractivecorrection,andthatbehavioralrestrictionsmayoccurintheirdailylives.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(6):763.767,C2020〕Keywords:NEIVFQ-25,QOL,視覚,高齢者,特別養護老人ホーム.NEICVFQ-25,QOL,visual,elderly,spe-cialelderlynursinghome.Cはじめに2018年におけるわが国の平均寿命1)は女性C87.3歳,男性81.3歳であり,65歳以上の人口が全人口のC28.1%を占める超高齢社会である.加齢による機能低下は身体のみならず視機能にも生じ,qualityCoflife(QOL)の低下をきたす2).西脇ら3)は眼科の患者を対象とした研究において,眼疾患によって生じた視機能低下がCQOLに及ぼす影響について検討している.しかし眼科に通院せず,具体的な医療の介入を受けていない高齢者を対象とした報告は少ない4,5).信頼性と妥当性が確認されたCQOL尺度にC25-itemNation-alCEyeCInstituteCVisualCFunctionQuestionnaire(NEIVFQ-25)6)がある.NEIVFQ-25は,51の質問項目があるCTheCNationalCEyeCInstituteCVisualCFunctionCQuestionnaireの短縮版であり,Suzukamoら7)がその日本語版を作成した.CNEIVFQ-25は見え方による身体的,精神的,そして社会的な生活上の制限の程度を測定する.12の領域(下位尺度)〔別刷請求先〕多々良俊哉:〒950-3198新潟県新潟市北区島見町C1398新潟医療福祉大学医療技術学部視機能科学科Reprintrequests:ShunyaTatara,NiigataUniversityofHealthandWelfareDepartmentofOrthopticsandVisualSciences,1398Shimami-cho,Kita-ku,Niigata-shi,Niigata950-3198,JAPANCから構成され,これらの領域は,眼疾患をもつ患者だけでなく,眼疾患をもたない人にも共通する内容で構成されている.したがって疾患別のCQOLが比較できるほか,疾患の有無にかかわらず利用することが可能である.本研究では特別養護老人ホームに通所している高齢者の視機能を評価し,NEIVFQ-25から求めた視覚に関連した健康関連CQOLとの関係性について検討した.CI対象および方法1.対象対象は特別養護老人ホームCAに通所している高齢者C40名で,その内訳は女性C36名,男性C4名であった.年齢はC70.96歳であり,平均年齢C±標準偏差はC86.0C±5.3歳であった.C2.方法a.NEIVFQ.25対象者に対し,NEIVFQ-25をC1対C1の面接方式で行った.検者C1名が各項目を読み上げ,対象者にC5段階の回答肢のなかから選択させた.NEIVFQ-25のデータ分析は「NEIVFQ-25日本語版(Ver1.4)使用上の注意」に従った.具体的には調査表の各項目にコード化された数値を再コード化のうえ,各項目をC0.100のスケールで得点化して下位尺度を算出した.検討した下位尺度はCSuzukamoら7)の使用法を参考に「全体的見え方」「近見視力による行動」「遠見視力による行動」「見え方による社会生活機能」「見え方による心の健康」「見え方による役割制限」「見え方による自立」のC7項目とした.スコア化についてはスコアC100を最高値としC0を最低値とした.回答が得られなかった項目については,平均代入法を用いて処理した.Cb.視力検査対象者には視機能検査として遠見および近見の視力検査を行い,得られた視力値はClogMAR値に換算した.なお,視力検査には視力表(半田屋商店)とひらかな万国近点検査表(半田屋商店)を用いた.室内照度はC270Clxであった.左右表1眼鏡の使用目的使用目的人数(常用者数)遠見3(1)近見5(1)遠見および近見10(2)中間距離および近見1(1)不明4(0)計C23(5)眼それぞれの完全屈折矯正下における矯正視力と日常生活における視力(以下,日常生活視力)を測定した.日常生活視力を求めるため,眼鏡常用者では眼鏡装用下の眼鏡視力を測定し,眼鏡を常用していない対象者の場合は裸眼視力を測った.また,左右眼の視力を比較し,視力良好であった眼をCbettereye,不良であった眼をCworseeyeと定義した.分析では矯正視力と日常生活視力について,左右眼およびCbettereye,worseeyeの視力値を比較した.Cc.統計解析遠見視力と近見視力,そして日常生活視力と矯正視力との比較をCWilcoxonの符号付き順位検定にて行った.遠見のCbettereye,worseeyeそれぞれの日常生活視力とNEIVFQ-25における下位尺度の「遠見視力による行動」の項目との相関を,Spearmanの順位相関係数を用いて求めた.同様に,近見のCbettereye,worseeyeそれぞれの日常生活視力とCNEIVFQ-25における下位尺度の「近見視力による行動」の項目との相関を,Spearmanの順位相関係数を用いて求めた.なお,統計処理において,小数視力C0.01未満であったC2眼は小数視力C0.01として扱った.すべての統計解析において,有意水準C5%未満を統計学的有意差ありとして判定した.本研究は新潟医療福祉大学倫理委員会の承認を得て実施した.CII結果1.眼鏡保有率と使用率眼鏡保有者はC40名中C23名(57%)であった.そのうち,眼鏡常用者はC5名であり全体のC12.5%であった.眼鏡の使用目的は表1のとおりであった.C2.視力矯正視力と日常生活視力(平均値C±標準偏差)を表2に示した.遠見視力よりも近見視力が低かった.日常生活視力は矯正視力と比較して,遠見でC0.23log(p<0.01),近見で0.20log(p<0.01)低値であった.C3.NEIVFQ.25の下位尺度スコアと日常生活視力との関係NEIVFQ-25の下位尺度スコア(平均値C±標準誤差)は「全体的見え方」66.3C±3.0,「近見視力による行動」73.9C±4.5,「遠見視力による行動」81.0C±3.6,「見え方による社会生活機能」83.1C±3.9,「見え方による心の健康」76.6C±4.3,「見え方による役割制限」78.8C±3.6,「見え方による自立」78.1C±4.1であり,対象者は「遠見視力による行動」よりも「近見視力による行動」に制限を感じていた(図1).「遠見視力による行動」「近見視力による行動」ともにCbet-tereyeに比べてCworseeyeの日常生活視力と相関が強かった(図2~5).表2対象者の視力値遠見近見p値矯正視力右眼C0.35±0.42C0.49±0.41Cp=0.01左眼C0.41±0.36C0.54±0.39p<0.01日常生活視力右眼C0.58±0.44C0.72±0.36Cp=0.02左眼C0.63±0.40C0.72±0.36Cp=0.06矯正視力CbettereyeC0.24±0.28C0.37±0.27p<0.01CworseeyeC0.51±0.44C0.67±0.45p<0.01日常生活視力CbettereyeC0.42±0.29C0.59±0.27p<0.01CworseeyeC0.80±0.44C0.85±0.40Cp=0.25C100100NEIVFQ-25「遠見視力による行動」908070605040302010NEIVFQ-25スコアGVNVDVSFMHRLDPNEIVFQ-25下位尺度図1NEIVFQ.25の下位尺度検討を行った下位尺度は「全体的見え方(generalvision:GV)」「近見視力による行動(nearvision:NV)」「遠見視力による行動(distancevision:DV)」「見え方による社会生活機能(socialfunction:SF)」「見え方による心の健康(mentalhealth:MH)」「見え方による役割制限(rolelimitations:RL)」「見え方による自立(dependency:DP)」のC7項目であった.バーは平均値を,エラーバーは標準誤差を示す.CIII考按1.眼鏡保有率と使用率本研究における眼鏡常用率はC12.5%であった.宮崎ら4)が特別養護老人ホームで行った調査では入所者の眼鏡常用率は20.0%であり,入所者は眼鏡の作製に対して「受診に手間がかかる」「介護者に依頼すると面倒なことを増やすだけ」といった意見があったと報告している.特別養護老人ホームの高齢者は眼科への受診が容易ではなく,眼鏡を作製しにくい状況にあると考えられる.また,河鍋8)はC40歳代に初診した患者の他覚的屈折度をC40年にわたって測定し,その屈折度の変化は球面度数+1.81D,円柱度数C.0.87Dであったと報告している.このことから本研究の対象群においても,経年的な屈折度の変化が生じていることが推測され,眼鏡を常用していない理由の一つとして眼と眼鏡の度数が合っていない可能性が考えられる.さらにCbettereyeの矯正視力がC0.24(121)02.01.51.00.50.0(0.01)(0.03)(0.1)(0.3)(1.0)bettereyeの日常生活視力(遠見)図2「遠見視力による行動」とbettereyeの日常生活視力縦軸はCNEIVFQ-25で測定した「遠見視力による行動のスコア」,横軸はCbettereyeの日常生活視力(遠見)をClogMARで示し,括弧内にその小数視力を表した.r=.0.293,p<0.01で弱い相関があった.C±0.28であったことから白内障などの影響が推測され,眼鏡を装用しても視力が改善しにくいことも眼鏡を常用しない要因としてあげられる.C2.視力値日常生活視力は遠見のCbettereyeで+0.42±0.29,近見のCbettereyeで+0.59±0.27であった.平均年齢C77.52C±5.33歳を対象とした林の調査9)においてCbettereyeの日常生活視力(小数視力)は遠見でC0.63(logMAR換算値C0.20),近見で0.44(logMAR換算値C0.36)であったと報告されている.視力はC45歳を境として眼疾患がない場合でも加齢とともに低下する傾向にあり,75歳以上では急激に低下する10)ため,対象群の年齢の違いが今回の差の理由だと推測される.C3.NEIVFQ.25の下位尺度スコアと日常生活視力との関係大鹿ら11)は白内障患者における手術前後のCNEICVFQ-25あたらしい眼科Vol.37,No.6,2020C765100100908080NEIVFQ-25「遠見視力による行動」NEIVFQ-25「近見視力による行動」707060504030201060504030201002.01.51.00.50.0(0.01)(0.03)(0.1)(0.3)(1.0)worseeyeの日常生活視力(遠見)図3「遠見視力による行動」とworseeyeの日常生活視力(遠見)縦軸はCNEIVFQ-25で測定した「遠見視力による行動のスコア」,横軸はCworseeyeの日常生活視力(遠見)をClogMARで示し,括弧内にその小数視力を表した.Cr=.0.495,p<0.01で相関があった.C10002.01.51.00.50.0(0.01)(0.03)(0.1)(0.3)(1.0)bettereyeの日常生活視力(近見)図4「近見視力による行動」とbettereyeの日常生活視力(近見)縦軸はCNEIVFQ-25で測定した「近見視力による行動のスコア」,横軸はCbettereyeの日常生活視力(近見)をClogMARで示し,括弧内にその小数視力を表した.Cr=.0.263,p=0.12であった.た結果,「遠見視力による行動」および「近見視力による行90807060504030201002.01.51.00.50.0(0.01)(0.03)(0.1)(0.3)(1.0)worseeyeの日常生活視力(近見)図5「近見視力による行動」とworseeyeの日常生NEIVFQ-25「近見視力による行動」動」のスコアは視力と相関した.大鹿ら11)の医療機関の研究において,その対象はClogMAR値C0.15以下の患者であった.本研究の対象は特別養護老人ホームの高齢者であり,そのClogMAR値は遠見でC2.0からC.0.08,近見でC2.0からC0.0と幅があった.そのためCQOLスコアについても一定の幅があり,両者の相関が得られやすかったと推測される.本研究の限界としては,調査対象が特別養護老人ホームAのC1施設のみであったことがあげられる.しかし,得られたデータは宮崎ら4)と同様の傾向を示しており,特別養護老人ホームを利用している高齢者の特徴を捉えていると考えられる.今後は多施設の調査を実施し,より詳細な特徴を明らかにしたい.本研究の眼鏡非常用者はC87.5%であり,視力低下と行動による制限には相関があった.視機能低下がわずかであって活視力(近見)縦軸はCNEIVFQ-25で測定した「近見視力による行動のスコア」,横軸はCworseeyeの日常生活視力(近見)をClogMARで示し,括弧内にその小数視力を表した.Cr=.0.686,p<0.01で相関があった.のスコア改善度は,手術前後それぞれのCbettereye,worseeyeの視力いずれとも相関しなかったことを報告している.本研究では特別養護老人ホームの高齢者の視機能とCNEIVFQ-25の各種の行動に関するスコアとの関係性を検討しも,QOLに与える影響は大きいとされている12).これらのことから高齢者は適切な屈折矯正がされていない,あるいは眼鏡を常用していないため,行動に制限が生じている可能性が示唆された.超高齢社会に向けて今後は高齢者に対する眼科受診の必要性について積極的な啓発活動を行うこと,さらには特別養護老人ホームへ眼科医療従事者が具体的に介入することについて検討が必要である.文献1)厚生労働省:平成C30年簡易生命表の概要2)田中清,田丸淳子:介護とCQOL.骨粗鬆症治療C3:44-49,C20043)西脇友紀,田中恵津子,小田浩一ほか:ロービジョン患者のCQualityCofLife(QOL)評価と潜在的ニーズ.眼紀C53:C527-531,C20024)宮崎茂雄,浜口奈弓,辻直美ほか:特別養護老人ホーム入所者の視活動に関する実態調査.眼臨C98:88-91,C20045)宮崎茂雄,青葉香奈,田畑舞:特別養護老人ホームにおける眼科的ケアについてのアンケート調査.眼臨C101:C578-581,C20076)MangioneCCM,CLeeCPP,CGutierrezCPRCetal:DevelopmentCofCtheC25-itemCNationalCEyeCInstituteCVisualCFunctionCQuestionnaire.ArchOphthalmolC119:1050-1058,C20017)SuzukamoCY,COshikaCT,CYuzawaCMCetal:PsychometricCpropertiesCofCtheC25-itemCNationalCEyeCInstituteCVisualCFunctionQuestionnaire(NEIVFQ-25)C,JapaneseCversion.CHealthQualLifeOutcomesC3:65,C20058)河鍋楠美:他覚的屈折度(等価球面度数)をC40年以上追えたC180眼の屈折度の変化.臨眼C69:1389-1393,C20159)林雅美:地域活動に参加している高齢者の視覚機能の実態と活動性との関連.老年社会科学C37:417-427,C201610)市川宏:老化と眼の機能.臨眼C35:9-26,C198111)大鹿哲郎,杉田元太郎,林研ほか:白内障手術による健康関連CqualityCoflifeの変化.日眼会誌C109:753-760,C200512)西永正典,池成基,上総百合ほか:老年症候群;わずかな視・聴覚機能低下が生活機能やCQOL低下に与える影響.日老医誌C48:302-304,C2007***

紫色光ブロック眼内レンズZCB00Vを用いた白内障手術の術後早期成績:視力,屈折度,QOLの検討

2015年6月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科32(6):898.903,2015c《原著》あたらしい眼科32(6):898.903,2015c898(134)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY〔別刷請求先〕岡義隆:〒820-0067福岡県飯塚市川津364-2岡眼科ビル1F岡眼科クリニックReprintrequests:YoshitakaOka,M.D.,OkaEyeClinic,1FOkaEyeClinicBldg.,364-2Kawazu,Iizuka,Fukuoka820-0067,JAPAN紫色光ブロック眼内レンズZCB00Vを用いた白内障手術の術後早期成績:視力,屈折度,QOLの検討岡義隆*1貞松良成*2*1岡眼科クリニック*2さだまつ眼科クリニックEarlyClinicalOutcomesofaVioletBlockingIntraocularLensZCB00VPostCataractSurgery:EvaluationofVisualAcuity,Refraction,andQualityofLifeYoshitakaOka1)andYoshinariSadamatsu2)1)OkaEyeClinic,2)SadamatsuEyeClinic目的:紫外線と紫色光をブロックし青色光を透過させる新しい着色眼内レンズ(IOL)であるテクニスオプティブルー(ZCB00V,エイエムオー・ジャパン)について,白内障手術後早期の視力,屈折度,QOL(qualityoflife)における臨床転帰を評価する.対象および方法:32人60眼(年齢73.1±6.0歳)を対象に,ZCB00Vを挿入する白内障手術を実施し,手術1カ月後に裸眼遠方視力,矯正遠方視力,自覚的屈折度,視覚に関連したQOLを評価する多施設前向き研究を行った.QOLの評価はNEIVFQ-25(the25-itemNationalEyeInstituteVisualFunctioningQuestion-naire)によるアンケート調査により行った.結果:術中合併症の発生はなかった.術前から手術1カ月後にかけ,裸眼遠方視力(logMAR値)は0.58±0.40から0.02±0.16,矯正遠方視力(logMAR値)は0.14±0.24から.0.06±0.06といずれも有意に改善した(ともにp<0.01).等価球面度数は.0.07±2.24Dから.0.39±0.46Dと推移したが,有意な変化ではなかった(p=0.21).手術1カ月後の片眼裸眼遠方視力(logMAR値)は,対象眼数の81.67%(49眼/60眼)で0.0以下,93.33%(56眼/60眼)で0.1以下,そして96.67%(58眼/60眼)で0.3以下であった.片眼矯正遠方視力(logMAR値)は,対象眼数の97.96%(48眼/49眼)で0.0以下,そして100%で0.3以下であった.手術1カ月後のQOLはNEIVFQ-25の12の下位尺度すべてで有意に改善した(いずれもp≦0.01).結論:ZCB00Vは白内障手術後早期の視機能改善において有効性と安全性を備えたIOLである.Purpose:ToevaluateearlyclinicaloutcomesoftheTECNISROptiBlue(ZCB00V;AbbottMedicalOptics,Inc.)intraocularlens(IOL),anew,yellow-tinted,violetlightblockingIOL,postcataractsurgery.Methods:Thestudycomprised60eyesof32patients(meanage:73.1±6.0years)fromtwoeyeclinicsthatunderwentcataractsurgerywithimplantationoftheTECNISROptiBlueIOL.Uncorrecteddistancevisualacuity(UDVA),correcteddistancevisualacuity(CDVA),manifestrefraction,andvision-relatedqualityoflifewereexaminedprospectivelyat1-monthpostoperative.Qualityoflifewasmeasuredwiththe25-itemNationalEyeInstituteVisualFunctioningQuestionnaire(NEIVFQ-25).Results:Nocomplicationsoccurredduringsurgery.ThemeanUDVA(logMAR)valueswere0.58±0.40and0.02±0.16atbeforesurgeryandat1-monthpostoperative,respectively,andthemeanCDVA(logMAR)valuesatthosesameevaluationtime-pointswere0.14±0.24and.0.06±0.06,respectively,thusshowingthatbothUDVAandCDVAweresignificantlyimprovedat1-monthpostoperative(p<0.05).Beforesur-geryandat1-monthpostoperative,themeansphericalequivalentvalueswere.0.07±2.24diopters(D)and.0.39±0.46D,respectively,thusshowingnosignificantchangebetweenbeforeandaftersurgery.At1-monthpost-operative,81.67%(49/60)oftheeyesachievedanUDVAof≦0.0,93.33%(56/60)achievedanUDVAof≦0.1,and96.67%(58/60)achievedanUDVAof≦0.3,and97.96%(48/49)oftheeyesachievedaCDVAof≦0.0and100%achievedaCDVAof≦0.3.TheNEIVFQ-25scoresweresignificantlyimprovedinallofthe12subscalesat1-monthpostoperative(p≦0.01).Conclusions:ThefindingsofthisstudyshowthesafetyandefficacyoftheTECNISROptiBluevioletblockingIOLwithrespecttoearlypostoperativevisualoutcomesfollowingcataractsur-gery. 〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(6):898.903,2015〕Keywords:眼内レンズ,青色光,裸眼遠方視力,矯正遠方視力,等価球面度数,NEIVFQ-25,QOL.intraocularlens,bluelight,uncorrecteddistancevisualacuity,correcteddistancevisualacuity,sphericalequivalent,NEIVFQ-25,QOL.はじめに白内障手術に使用される眼内レンズ(IOL)は1980年代後半以降,光毒性により網膜損傷を引き起こす紫外線(UV)の透過防止を目的として,レンズ材料成分にUV吸収能をもつ発色団を添加し,UVフィルター機能をもたせたIOLが一般的となっている1,2).これらのIOLでは当初,可視光の全波長領域を透過させる非着色タイプのIOLが普及した2).しかし,短波長可視光が網膜に及ぼす悪影響に関して,動物実験により青色光の光毒性が網膜傷害の原因となることが明らかにされた3).また,疫学的研究により,青色光への曝露が加齢黄斑変性の発症と関連する可能性が示された4).こうしたエビデンスの蓄積を背景に,青色光吸収能を有する発色団の添加によって,UVから青色光までの波長スペクトルに対するフィルター機能をもたせた着色タイプの青色光ブロックIOLが開発され5),近年臨床への普及が進んでいる.青色光ブロックIOLを従来の非着色IOLと比較した術後成績に関しては,視力,コントラスト感度,色覚といった視機能や視覚に関連したQOL(qualityoflife)について,両IOLで同等に良好であったという報告がある6,7).一方で,青色光ブロックIOL挿入眼では非着色IOL挿入眼と比較し,暗所視や薄明視における視機能が低下する可能性が指摘されている2).暗所視では,最大視感度の波長が明所視よりも短波長側にシフトするPurkinje現象により,視覚における青色光の重要度が増すと考えられる8).また,青色光ブロックIOL挿入による青色光遮断に伴い,概日リズム同調に必要な網膜神経節細胞での光受容が妨げられ,体内時計や睡眠に関連した問題を生じる可能性も指摘されている9).こうしたなか,青色光ブロックIOLの臨床的有用性の評価をめぐり,いまだ議論が続いているのが現状である10).2013年から使用可能となった新しい着色IOLのテクニスオプティブルー(ZCB00V,エイエムオー・ジャパン)では,従来の青色光吸収剤ではなく紫色光吸収剤が添加されており,UVから400.440nmの紫色光までの波長スペクトルに対するフィルター機能を備えている.440.500nmの青色光は暗所視下に最大視感度を示す波長の近傍であり,かつ概日リズム同調に必要とされる領域を含むが,ZCB00Vは,この青色光領域に対する分光透過率が従来の青色光ブロックIOLと比べて高い8).このためZCB00Vでは,従来の青色光ブロックIOLに対し指摘される上記のデメリットが改善される可能性がある.(135)本研究は,青色光透過性をもつ紫色光ブロックIOLであるZCB00Vの術後成績についての最初の臨床報告である.ZCB00Vを挿入する白内障手術を行い,手術1カ月後までの視力,屈折度,および視覚に関連したQOLの臨床経過を検討した.I対象および方法1.対象患者研究対象は,2施設の眼科専門クリニック(岡眼科クリニック,福岡;さだまつ眼科クリニック,埼玉)にて,1ピース非球面タイプの紫色光ブロックIOLであるZCB00Vを用いて白内障手術を施行した32人(男性11人,女性21人)60眼である.患者の選択基準はつぎのとおりとした:①年齢21歳以上,②術後の正視を希望,③必要となるIOLの度数が15.26D,④本研究への参加についてインフォームド・コンセントが実施されている,⑤本研究への参加意思があり,術後フォローアップスケジュールに従った受診が可能.また,除外基準をつぎのように定めた:①視力に影響する可能性のある薬剤を全身投与もしくは点眼投与により使用中,②視力もしくは本研究の検討結果に影響を及ぼす可能性がある疾患やその他の病的状態(急性,慢性を問わない)を有する,③術前もしくは術後の診察で水晶体.とZinn小帯の両方もしくはどちらか片方に異常所見があり,それを原因としたIOLの偏位によって術後の視力が影響を受ける可能性がある,④瞳孔の異常(瞳孔無反応,瞳孔強直,瞳孔形態異常,薄明視もしくは暗所視下で瞳孔径4mm以上に拡大しない),⑤散瞳点眼剤へのアレルギーを有する.本研究は各施設の倫理審査委員会による承認を受けており,1964年のヘルシンキ宣言において採択された臨床研究の倫理規範に従って実施された.2.術前・術後臨床評価項目術前臨床評価として,すべての対象患者につぎの項目の一般的な眼科検査を実施した:①裸眼遠方視力,②矯正遠方視力,③自覚的屈折度,④細隙灯顕微鏡検査,⑤生体計測(IOLマスター,カールツァイスメディテック),⑥眼底検査.また,視覚に関連したQOLについて,測定尺度として信頼性・妥当性が確立されているアンケート調査方法であるNEIVFQ-25(The25-itemNationalEyeInstituteVisualFunctionQuestionnaire)11)を用いて評価した.NEIVFQ25は25項目から構成され,全体的健康感や視覚,各種の活あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015899 動を行ううえで感じる困難さ,視力低下がもたらす影響をどの程度重大にとらえているかについて,患者への質問によって測定する.視覚に関連した各種の活動に対して感じる困難さについて,「(1)まったく難しくない」「(2)あまり難しくない」「(3)難しい」「(4)とても難しい」「(5)見えにくいのでするのをやめた」「(6)別の理由でするのをやめた/もともとしない」の回答により6段階に評価した(回答(6)は欠損データとして扱った).また,視力低下の影響によるさまざまな役割の制限について尋ねた13項目のうち,5項目については「(1)いつも」.「(5)まったくない」,8項目については「(1)まったくそのとおり」.「(5)ぜんぜんあてはまらない」の回答により,いずれも5段階に評価した.なおNEIVFQ-25は,患者が普段の状態で各種の活動を行うことができるかどうかを尋ねるものであり,患者は眼鏡の使用が許容されるものとして回答する.術後臨床評価として,手術翌日,1週間後,1カ月後の来院時につぎの検査を行った:①裸眼遠方視力,②矯正遠方視力,③自覚的屈折度,④細隙灯顕微鏡検査.また手術1カ月後にNEIVFQ-25を用いて再度,QOLを評価した.3.使用したIOLZCB00Vは,UV・紫色光吸収剤が添加された柔軟で折り畳み可能なアクリル素材からなる1ピース非球面IOLで,光学部直径6.0mm,全長13.0mmである.後.混濁予防のため,光学部はフロスト加工処理され,また後面全周に直角エッジデザインが施されている.紫色光吸収剤によって遮断されるおもな波長域は,網膜損傷を引き起こす可能性のある440nm未満の短波長域8)に限られている.暗所視下の良好な視機能や概日リズム同調のために必要となる440.500nmの青色光領域に対しては,ZCB00Vは従来の青色光ブロックIOLと比べて高い分光透過率を示す8).本レンズは,選択可能な全度数範囲+6.0.+30.0D(0.50D刻み)を通じて分光透過率曲線の形状がほぼ同一となるように設計されている.また,角膜の球面収差を補正することにより術後の眼球全体の球面収差をほぼ0とすることを目的として,レンズ後面は非球面形状となっている.メーカー推奨A定数は118.8である.4.手術手技手術は全例,熟練した術者が局所麻酔下で施行した.岡眼科クリニックでは耳側角膜2.4mm切開,さだまつ眼科クリニックでは耳側経結膜2.4mm切開を行い,CCC(continuouscurvilinearcapsulorhexis)による前.切開に続いて超音波水晶体乳化吸引術を行った後,IOL挿入器アンフォルダーRプラチナ1システム(エイエムオー・ジャパン)を使って水晶体.内にZCB00Vを挿入した.術後管理として全例にステロイド点眼薬投与を行った.5.統計解析統計解析ソフトウェアSPSSversion19.0(IBM)を使用して統計学的検討を行った.各評価項目における経時的変化をみるため,術前後の各評価時点間でWilcoxon順位和検定を用いて比較した.いずれの場合も統計学的有意水準はp<0.05とした.QOLについてのNEIVFQ-25による調査結果を解析するため,米国国立眼病研究所(NEI)の実施要綱に従い,全25項目を構成する12の下位尺度についてのスコア化を行った11).調査時に,視機能が良好なほど高スコアとする採点ルールに従って全25項目のスコア値を記録した後,各項目のスコア値をそれぞれ最低スコア値0.最高スコア値100のスケールに変換した.そして関連性のある項目のスコア値の平均値を求めることで,12の下位尺度のスコア値を算出した.II結果1.患者背景本研究はプロスペクティブな検討として実施され,参加した患者は男性11人(34.4%),女性21人(65.6%),年齢73.1±6.0歳(平均値±SD,範囲:64.83歳),対象とした60眼の内訳は右目29眼(48.3%),左目31眼(51.7%)であった.挿入されたIOLの度数は21.42±3.02D(平均値±SD,中央値:21.00D,範囲:12.50.27.00D)であった.23眼(38.3%)に眼疾患既往があり,23眼(38.3%)に眼底の異常所見がみられた.術前臨床評価時に検出された眼疾患や眼の病的状態は以下のとおりであった:加齢黄斑変性1眼(1.7%),動脈硬化性網膜症1眼(1.7%),糖尿病網膜症4眼(6.7%),緑内障10眼(16.7%),糖尿病網膜症を併存する緑内障2眼(3.3%),黄斑部網膜上膜を併存する緑内障1眼(1.7%),高血圧性網膜症3眼(5.0%),偽落屑緑内障1眼(1.7%).術中合併症の発生はなかった.2.視力と屈折度表1に視力と屈折度の術前.手術1カ月後における経時的推移を示す.片眼裸眼遠方視力(logMAR値,平均値±SD)は術前の0.58±0.40から手術1カ月後に0.02±0.16,片眼矯正遠方視力(logMAR値,平均値±SD)は術前の0.14±0.24から手術1カ月後に.0.06±0.06といずれも有意に改善していた(Wilcoxon順位和検定,いずれもp<0.01;図1).等価球面度数(平均値±SD)は術前の.0.07±2.24Dから手術1カ月後に.0.39±0.46Dと推移したが,有意な変化ではなかった(Wilcoxon順位和検定,p=0.21;図2).手術1カ月後の片眼裸眼遠方視力(logMAR値)が0.0以下であった眼数の割合は81.67%(49眼/60眼),0.1以下は93.33%(56眼/60眼),0.3以下は96.67%(58眼/60眼)であった(図3a).同様に手術1カ月後の片眼矯正遠方視力(logMAR値)が0.0以下,0.1以下の割合はともに97.96%(48(136) あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015901(137)眼/49眼)であり,0.3以下は100%であった(図3b).3.QOL表2にNEIVFQ-25で評価したQOLを術前と手術1カ月後で比較した結果を示す.手術1カ月後に12の下位尺度のすべてにおいてスコア値の有意な改善がみられた(Wilcox-on順位和検定,いずれもp≦0.01).III考察裸眼遠方視力(logMAR値)の平均値±SDは手術1カ月後に0.02±0.16(範囲:.0.08.1.00)まで改善した.この結果から,青色光を透過する紫色光ブロックIOLであるZCB00Vの挿入眼では,視力の良好な予後が期待できることが示された.表1術前後の片眼視力および屈折度の臨床経過術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後術前vs.手術1カ月後の比較†UDVA0.58(0.40)0.52(.0.08.1.70)0.08(0.16)0.00(.0.08.1.00)0.02(0.14)0.00(.0.08.0.82)0.02(0.16)0.00(.0.08.1.00)p<0.01CDVA0.14(0.24)0.10(.0.08.1.30).0.01(0.11).0.08(.0.08.0.52).0.06(0.05).0.08(.0.08.0.15).0.06(0.06).0.08(.0.08.0.22)p<0.01等価球面度数(D).0.07(2.24)+0.25(.6.00.+4.63).0.10(0.35)0.00(.0.75.+0.63).0.08(0.37)0.00(.1.00.+0.75).0.39(0.46).0.50(.2.50.0.00)p=0.21上段に平均値(標準偏差),下段に中央値(範囲)を示す.UDVA:裸眼遠方視力,CDVA:矯正遠方視力.いずれもlogMAR値.†:Wilcoxon順位和検定.図1フォローアップ期間中の片眼裸眼遠方視力と片眼矯正遠方視力の変化UDVA:裸眼遠方視力,CDVA:矯正遠方視力.いずれもlogMAR値(平均値±標準偏差).p値:Wilcoxon順位和検定.logMAR値-0.4-0.200.20.40.60.811.2術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後UDVACDVA0.58±0.400.02±0.16-0.06±0.060.14±0.24術前vs.手術1カ月後:p<0.01術前vs.手術1カ月後:p<0.01図2フォローアップ期間中の等価球面度数の変化平均値±標準偏差.p値:Wilcoxon順位和検定.等価球面度数(D)-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.0術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後-0.39±0.46術前vs.手術1カ月後:p=0.21-0.07±2.24図3フォローアップ期間を通じた片眼裸眼遠方視力(a)と片眼矯正遠方視力(b)の分布変化術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後眼数の割合logMAR値■0.0以下■0.1以下■0.3以下100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後眼数の割合100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%abあたらしい眼科Vol.32,No.6,2015901(137)眼/49眼)であり,0.3以下は100%であった(図3b).3.QOL表2にNEIVFQ-25で評価したQOLを術前と手術1カ月後で比較した結果を示す.手術1カ月後に12の下位尺度のすべてにおいてスコア値の有意な改善がみられた(Wilcox-on順位和検定,いずれもp≦0.01).III考察裸眼遠方視力(logMAR値)の平均値±SDは手術1カ月後に0.02±0.16(範囲:.0.08.1.00)まで改善した.この結果から,青色光を透過する紫色光ブロックIOLであるZCB00Vの挿入眼では,視力の良好な予後が期待できることが示された.表1術前後の片眼視力および屈折度の臨床経過術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後術前vs.手術1カ月後の比較†UDVA0.58(0.40)0.52(.0.08.1.70)0.08(0.16)0.00(.0.08.1.00)0.02(0.14)0.00(.0.08.0.82)0.02(0.16)0.00(.0.08.1.00)p<0.01CDVA0.14(0.24)0.10(.0.08.1.30).0.01(0.11).0.08(.0.08.0.52).0.06(0.05).0.08(.0.08.0.15).0.06(0.06).0.08(.0.08.0.22)p<0.01等価球面度数(D).0.07(2.24)+0.25(.6.00.+4.63).0.10(0.35)0.00(.0.75.+0.63).0.08(0.37)0.00(.1.00.+0.75).0.39(0.46).0.50(.2.50.0.00)p=0.21上段に平均値(標準偏差),下段に中央値(範囲)を示す.UDVA:裸眼遠方視力,CDVA:矯正遠方視力.いずれもlogMAR値.†:Wilcoxon順位和検定.図1フォローアップ期間中の片眼裸眼遠方視力と片眼矯正遠方視力の変化UDVA:裸眼遠方視力,CDVA:矯正遠方視力.いずれもlogMAR値(平均値±標準偏差).p値:Wilcoxon順位和検定.logMAR値-0.4-0.200.20.40.60.811.2術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後UDVACDVA0.58±0.400.02±0.16-0.06±0.060.14±0.24術前vs.手術1カ月後:p<0.01術前vs.手術1カ月後:p<0.01図2フォローアップ期間中の等価球面度数の変化平均値±標準偏差.p値:Wilcoxon順位和検定.等価球面度数(D)-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.0術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後-0.39±0.46術前vs.手術1カ月後:p=0.21-0.07±2.24図3フォローアップ期間を通じた片眼裸眼遠方視力(a)と片眼矯正遠方視力(b)の分布変化術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後眼数の割合logMAR値■0.0以下■0.1以下■0.3以下100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後眼数の割合100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%ab 表2NEI.VFQ25の12の下位尺度を用いて評価した術前後のQOL変化NEI-VFQ25下位尺度術前手術1カ月後p値†全体的健康感53.13(15.23)50.00(25.00.100.00)64.06(21.94)50.00(25.00.100.00)0.01全体的見え方55.63(17.40)60.00(20.00.80.00)91.25(10.08)100.00(80.00.100.00)<0.01目の痛み83.59(17.52)87.50(37.50.100.00)93.95(9.05)100.00(62.50.100.00)0.01近見視力による行動60.94(24.54)66.67(0.00.100.00)92.47(12.79)100.00(50.00.100.00)<0.01遠見視力による行動65.63(20.60)66.67(25.00.100.00)98.39(3.98)100.00(83.33.100.00)<0.01運転56.88(25.16)50.00(25.00.100.00)96.71(8.17)100.00(75.00.100.00)<0.01周辺視覚70.16(21.81)75.00(25.00.100.00)99.22(4.42)100.00(75.00.100.00)<0.01色覚87.10(12.70)75.00(75.00.100.00)100.00(0.00)100.00(100.00.100.00)<0.01見え方による社会生活機能82.81(17.32)87.50(25.00.100.00)100.00(0.00)100.00(100.00.100.00)<0.01見え方による自立75.78(24.99)75.00(25.00.100.00)99.46(2.99)100.00(83.33.100.00)<0.01見え方による心の健康69.73(23.12)68.75(25.00.100.00)100.00(0.00)100.00(100.00.100.00)<0.01見え方による役割制限76.56(24.75)81.25(25.00.100.00)99.19(2.67)100.00(87.50.100.00)<0.01上段に平均値(標準偏差),下段に中央値(範囲)を示す.†:Wilcoxon順位和検定(術前vs.手術1カ月後の比較).本研究で裸眼遠方視力と矯正遠方視力により評価したZCB00Vの視力予後は,従来タイプの着色IOLである青色光ブロックIOLについて過去に報告された予後評価の結果と同等であった12.15).加えて,非着色タイプの非球面IOLについて過去に報告された結果とも同等,もしくはそれらより良好な結果であった16,17).Baghiらは,TecnisZ9000(AbbottMedicalOpticsInc.USA)とAkreosAO(Bausch&LombInc.USA)の2種類の非球面非着色IOLで視力予後を比較し,各IOL挿入眼の手術3カ月後の裸眼視力(logMAR値)平均値がそれぞれ0.18,0.25であったと報告している16).これに対し,同じ2種類のIOLについてJohanssonらが行った比較検討では,手術10.12週後の裸眼視力(logMAR値)平均値についてTecnisZ9000で0.08,AkreosAOで0.11とより良好な結果が報告されている17).これらの既報の結果との比較から,ZCB00Vは非球面非着色IOLや青色光ブロックIOLと比べ,視力予後が同等,もしくはそれらより良好と考えられる.視力予後に加え,ZCB00Vの挿入が視覚に関連するQOLに及ぼす影響について,NEIVFQ-25を用いたアンケート調査により評価した.NEIVFQ-25は当初,各種の眼疾患に伴う視力低下がさまざまな日常行動に影響を及ぼすことにより,QOLにどう影響するかを測る目的で開発された11).その後の検証により,調査対象者の視力のレベルや健康状態によらず,信頼性・妥当性をもってQOLを評価可能な測定尺度として確立されている18).また近年は,調節型IOLや回折多焦点IOLといった各種のIOLを用いて白内障手術を施行した後のQOLの変化を評価する目的で,NEIVFQ-25が使用されている19,20).本研究では,NEIVFQ-25の12の下位尺度すべてで術後に有意な改善が認められ,そのなかでも平均値増加幅が比較的大きかった下位尺度が「運転」(術前ベースライン値:56.88,増加幅:39.8),「全体的見え方」(同:55.63,同:35.6),「遠見視力による行動」(同:65.63,同:32.8),「近見視力による行動」(同:60.94,同:31.5)であった.Espindleらは青色光ブロックIOLについて,白内障手術前後の視覚に関連したQOLの変化を,NEIVFQ25と同一の12の下位尺度をもち39項目から構成されるNEIVFQ-39を用いて調べた6).その結果,手術120.180日後に「全体的健康感」を除く11の下位尺度すべてでQOL(138) が有意に改善しており,平均値増加幅が比較的大きかった尺度は「運転」(術前ベースライン値:58.37,増加幅:31.17),「全体的見え方」(同:60.04,同:28.59),「近見視力による行動」(同:66.28,同:26.72)「遠見視力による行動」(同:68.89,同:26.17)と本研究の果と共通していた.本研究の観察期間は手術後1カ月間と短いため単純な比較はできないものの,青色光を透過する紫色光ブロックIOLであるZCB00Vは,青色光ブロックIOLと同様に術後の視覚に関連したQOLを改善させると考えられる.結論として,青色光を透過し紫色光.UVを遮断する紫色光ブロックIOLのZCB00Vは,白内障手術後早期の視機能改善において有効性と安全性を備えたIOLであり,従来タイプの青色光ブロックIOLと比較し,遜色ない臨床成績が期待できる.今後の検討課題に関しては,ZCB00Vでは,暗所視において重要度を増す青色光に対し高い分光透過率を示す8)ため,青色光ブロックIOLについて問題視されてきた暗所視でのコントラスト感度低下が起きにくいと予想される.したがって今後,ZCB00V挿入眼におけるコントラスト感度と色覚について検証することが必要と考えられる.また,ZCB00Vでは,患者の視機能低下につながる可能性があるグリスニングやsub-surfacenanoglistening(SSNG)が発生しにくい疎水性アクリル素材が用いられており21),本IOL挿入眼におけるグリスニングやSSNG発生についても検証が必要である.さらに,ZCB00Vの使用によって安定結(,)した長期予後が得られるかに関連して,IOLの.内安定,後.混濁(PCO)の検証も必須である.文献1)MainsterMA:Thespectra,classification,andrationaleofultraviolet-protectiveintraocularlenses.AmJOphthalmol102:727-732,19862)HendersonBA,GrimesKJ:Blue-blockingIOLs:acompletereviewoftheliterature.SurvOphthalmol55:284289,20103)GrimmC,WenzelA,WilliamsTetal:Rhodopsin-mediatedblue-lightdamagetotheratretina:effectofphotoreversalofbleaching.InvestOphthalmolVisSci42:497505,20014)TaylorHR,WestS,MunozBetal:Thelong-termeffectsofvisiblelightontheeye.ArchOphthalmol110:99-104,19925)DavisonJA,PatelAS:Lightnormalizingintraocularlenses.IntOphthalmolClin45:55-106,20056)EspindleD,CrawfordB,MaxwellAetal:Quality-of-lifeimprovementsincataractpatientswithbilateralbluelight-filteringintraocularlenses:clinicaltrial.JCataractRefractSurg31:1952-1959,20057)ZhuXF,ZouHD,YuYFetal:Comparisonofbluelight-filteringIOLsandUVlight-filteringIOLsforcataractsurgery:ameta-analysis.PLoSOne7:e33013,20128)MainsterMA:Violetandbluelightblockingintraocularlenses:photoprotectionversusphotoreception.BrJOphthalmol90:784-792,20069)TurnerPL,MainsterMA:Circadianphotoreception:ageingandtheeye’simportantroleinsystemichealth.BrJOphthalmol92:1439-1444,200810)YangH,AfshariNA:Theyellowintraocularlensandthenaturalageinglens.CurrOpinOphthalmol25:40-43,201411)StelmackJA,StelmackTR,MassotRW:Measuringlow-visionrehabilitationoutcomeswiththeNEIVFQ-25.InvestOphthalmolVisSci43:2859-2868,200212)Kara-JuniorN,EspindolaRF,GomesBAFetal:Effectsofbluelight-filteringintraocularlensesonthemacula,contrastsensitivity,andcolorvisionafteralong-termfollow-up.JCataractRefractSurg37:2115-2119,201113)LeibovitchI,LaiT,PorterNetal:Visualoutcomeswiththeyellowintraocularlens.ActaOphthalmolScand84:95-99,200614)MarshallJ,CionniRJ,DavisonJetal:Clinicalresultsoftheblue-lightfilteringAcrySofNaturalfoldableacrylicintraocularlens.JCataractRefractSurg31:2319-2323,200515)LandersJ,TanTH,YuenJetal:ComparisonofvisualfunctionfollowingimplantationofAcrysofNaturalintraocularlenseswithconventionalintraocularlenses.ClinExperimentOphthalmol35:152-159,200716)BaghiAR,JafarinasabMR,ZiaeiHetal:VisualOutcomesofTwoAsphericPCIOLs:TecnisZ9000versusAkreosAO.JOphthalmicVisRes3:32-36,200817)JohanssonB,SundelinS,Wikberg-MatssonAetal:VisualandopticalperformanceoftheAkreosAdaptAdvancedOpticsandTecnisZ9000intraocularlenses:Swedishmulticenterstudy.JCataractRefractSurg33:1565-1572,200718)HymanLG,KomaroffE,HeijlAetal:Treatmentandvision-relatedqualityoflifeintheearlymanifestglaucomatrial;fortheEarlyManifestGlaucomaTrialGroup.Ophthalmology112:1505-1513,200519)RamonML,PineroDP,Blanes-MompoFJetal:Clinicalandqualityoflifedatacorrelationwithasingle-opticaccommodatingintraocularlens.JOptom6:25-35,201320)AlioJL,Plaza-PucheAB,PineroDPetal:Opticalanalysis,readingperformance,andquality-of-lifeevaluationafterimplantationofadiffractivemultifocalintraocularlens.JCataractRefractSurg37:27-37,201121)ColinJ,PraudD,TouboulDetal:Incidenceofglisteningswiththelatestgenerationofyellow-tintedhydrophobicacrylicintraocularlenses.JCataractRefractSurg38:1140-1146,2012***(139)あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015903