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見逃された眼内鉄片異物により,緑内障手術,網膜剝離手術を受けた1症例

2015年4月30日 木曜日

596あたらしい眼科Vol.5104,22,No.3(00)596(132)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科32(4):596.598,2015cはじめに眼内に飛入した鉄片異物は,鉄錆症や眼内炎を起こす可能性があり,発見されれば早急に摘出されるべきである.感染性眼内炎は失明に至る可能性があり,鉄錆症は,白内障,網膜色素変性,緑内障を起こし,予後不良である1).白内障手術,硝子体手術が進歩した現在では,視力良好の症例でも,視機能を低下させずに異物を摘出できる.しかし,眼内に異物があるにもかかわらず,自覚症状がなく長期間見逃された多くの報告がある2.7).また,白内障を発症し手術により発見されることや,網膜.離の治療のための硝子体手術中に発見されることもある8).鉄工所勤務中に鉄片が自覚なく眼内に飛入し,虹彩炎と緑内障を発症したが,見逃されたまま緑内障手術を受け,一度は安定したものの網膜.離を発症し,硝子体手術中に鉄片が発見された1症例を報告する.I症例患者:38歳,男性.〔別刷請求先〕田渕大策:〒470-1192愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98藤田保健衛生大学眼科学教室Reprintrequests:DaisakuTabuchi,M.D,,1-98Dengakugakubo,Kutsukake-chou,ToyoakeCity,Aichi470-1192,JAPAN見逃された眼内鉄片異物により,緑内障手術,網膜.離手術を受けた1症例田渕大策水口忠谷川篤宏堀口正之藤田保健衛生大学眼科学教室ACasethatRequiredSurgeryforGlaucomaandRetinalDetachmentDuetoanOverlookedIntraocularIronForeignBodyDaisakuTabuchi,TadashiMizuguchi,AtsuhiroTanikawaandMasayukiHoriguchiDepartmentofOphthalmology,FujitaHealthUniversitySchoolofMedicine左眼網膜.離のため38歳の男性が当院に紹介された.患者は11カ月前に左眼線維柱帯切開術を受けていた.視力は右眼(1.0),左眼(0.01)であり,眼圧は右眼19mmHg,左眼16mmHgであった.核白内障と裂孔原性網膜.離を左眼に認めた.白内障,硝子体同時手術を行ったところ,手術中に鉄片異物(1.6×0.6mm)が発見され,強膜創より除去された.網膜.離は再発したが,硝子体手術で復位した.患者は,線維柱帯切除術以前にフライス加工に従事しており,白内障,緑内障,網膜.離は,硝子体手術中に発見された鉄片異物により起きたものであると考えられた.患者が異物の自覚がなかったことが診断を困難にしたが,職歴を含めた予診に注意を払う必要があった.Wereportthecaseofa38-year-oldmalepatientwhowasreferredtoourhospitalduetoretinaldetachmentinhislefteye.Hehadundergonetrabeculotomyinthatsameeye11-monthspriortopresentation.Uponexamina-tion,hisvisualacuitywas1.0ODand0.01OS.Nuclearcataractandrhegmatogenousretinaldetachmentwereobservedinhislefteye,andcombinedphacoemulsification,intraocularlensimplantation,andvitrectomywassub-sequentlyperformed.Duringsurgery,anintraocularironforeignbody(1.6×0.6mminsize)wasfound,andremovedfromthescleralincision.Retinaldetachmentrecurred1-monthlaterandwasreattachedbyasecondvit-rectomy.Thepatienthadengagedinmillingbeforethetrabeculotomywasperformed,andweconcludedthattheironforeignbodythatwefoundcausedthecataract,glaucoma,andretinaldetachmentinhislefteye.Hisunaware-nessoftheforeignbodyinhislefteyemadethediagnosisdifficult,andaddedcareviaamedicalhistoryinterview,includinghisprofessionalexperience,wouldhaveprovedbeneficial.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(4):596.598,2015〕Keywords:眼内異物,緑内障,線維柱帯切開術,網膜.離,硝子体手術.intraocularironforeignbody,glauco-ma,trabeculotomy,retinaldetachment,vitrectomy.(00)596(132)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科32(4):596.598,2015cはじめに眼内に飛入した鉄片異物は,鉄錆症や眼内炎を起こす可能性があり,発見されれば早急に摘出されるべきである.感染性眼内炎は失明に至る可能性があり,鉄錆症は,白内障,網膜色素変性,緑内障を起こし,予後不良である1).白内障手術,硝子体手術が進歩した現在では,視力良好の症例でも,視機能を低下させずに異物を摘出できる.しかし,眼内に異物があるにもかかわらず,自覚症状がなく長期間見逃された多くの報告がある2.7).また,白内障を発症し手術により発見されることや,網膜.離の治療のための硝子体手術中に発見されることもある8).鉄工所勤務中に鉄片が自覚なく眼内に飛入し,虹彩炎と緑内障を発症したが,見逃されたまま緑内障手術を受け,一度は安定したものの網膜.離を発症し,硝子体手術中に鉄片が発見された1症例を報告する.I症例患者:38歳,男性.〔別刷請求先〕田渕大策:〒470-1192愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98藤田保健衛生大学眼科学教室Reprintrequests:DaisakuTabuchi,M.D,,1-98Dengakugakubo,Kutsukake-chou,ToyoakeCity,Aichi470-1192,JAPAN見逃された眼内鉄片異物により,緑内障手術,網膜.離手術を受けた1症例田渕大策水口忠谷川篤宏堀口正之藤田保健衛生大学眼科学教室ACasethatRequiredSurgeryforGlaucomaandRetinalDetachmentDuetoanOverlookedIntraocularIronForeignBodyDaisakuTabuchi,TadashiMizuguchi,AtsuhiroTanikawaandMasayukiHoriguchiDepartmentofOphthalmology,FujitaHealthUniversitySchoolofMedicine左眼網膜.離のため38歳の男性が当院に紹介された.患者は11カ月前に左眼線維柱帯切開術を受けていた.視力は右眼(1.0),左眼(0.01)であり,眼圧は右眼19mmHg,左眼16mmHgであった.核白内障と裂孔原性網膜.離を左眼に認めた.白内障,硝子体同時手術を行ったところ,手術中に鉄片異物(1.6×0.6mm)が発見され,強膜創より除去された.網膜.離は再発したが,硝子体手術で復位した.患者は,線維柱帯切除術以前にフライス加工に従事しており,白内障,緑内障,網膜.離は,硝子体手術中に発見された鉄片異物により起きたものであると考えられた.患者が異物の自覚がなかったことが診断を困難にしたが,職歴を含めた予診に注意を払う必要があった.Wereportthecaseofa38-year-oldmalepatientwhowasreferredtoourhospitalduetoretinaldetachmentinhislefteye.Hehadundergonetrabeculotomyinthatsameeye11-monthspriortopresentation.Uponexamina-tion,hisvisualacuitywas1.0ODand0.01OS.Nuclearcataractandrhegmatogenousretinaldetachmentwereobservedinhislefteye,andcombinedphacoemulsification,intraocularlensimplantation,andvitrectomywassub-sequentlyperformed.Duringsurgery,anintraocularironforeignbody(1.6×0.6mminsize)wasfound,andremovedfromthescleralincision.Retinaldetachmentrecurred1-monthlaterandwasreattachedbyasecondvit-rectomy.Thepatienthadengagedinmillingbeforethetrabeculotomywasperformed,andweconcludedthattheironforeignbodythatwefoundcausedthecataract,glaucoma,andretinaldetachmentinhislefteye.Hisunaware-nessoftheforeignbodyinhislefteyemadethediagnosisdifficult,andaddedcareviaamedicalhistoryinterview,includinghisprofessionalexperience,wouldhaveprovedbeneficial.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(4):596.598,2015〕Keywords:眼内異物,緑内障,線維柱帯切開術,網膜.離,硝子体手術.intraocularironforeignbody,glauco-ma,trabeculotomy,retinaldetachment,vitrectomy. 図1左眼初診時の前眼部写真核白内障を認める.現病歴:フライス加工に従事していたが,異物飛入などの自覚はなかった.2009年8月左眼の霧視のため前医を受診した.左眼に虹彩毛様体炎を認め,眼圧は40mmHgであった.眼圧がコントロールできないため,同年9月,左眼線維柱帯切開術が施行され,眼圧は正常化した.2010年5月突然の左眼視力低下のため近医受診し,左眼網膜.離を指摘され,同日当院へ紹介受診した.初診時所見:視力は右眼1.0(1.0×.0.25D(cyl.2.25DAx175°),左眼0.2(0.6×+0.50D(cyl.2.50DAx180°),眼圧は右眼19mmHg,左眼16mmHgで,左眼に核白内障(図1)と黄斑に及ぶ耳側裂孔原性網膜.離を認めた(図2).経過:2010年6月左眼に白内障硝子体同時手術を施行した.術中に耳側下方最周辺部の網膜上に被膜に被われない鉄片異物(1.6×0.6mm)を発見し,摘出した(図3).六フッ化硫黄(SF6)ガスを注入して手術終了した.1カ月後,再度網膜.離を起こしたため,硝子体手術を再施行した.術後,網膜は復位し,2年後左眼視力は0.2(0.6×+0.50D(cyl.2.50DAx180°)であり,再.離は認めていない.手術後の全視野刺激網膜電図(erectororetinogram:ERG)は正常であった.II考按眼内鉄片飛入の多くは鉄の加工などによる.フライス加工に従事していた本症例は眼内に異物が入った自覚はなかった.しかし,緑内障手術から硝子体手術まで仕事についておらず,異物は緑内障手術の前に侵入したものと考えられた.本症例左眼の白内障,緑内障,網膜.離はすべてフライス加工時に眼内に侵入した鉄片異物によると考えられた.しかし,本症例はまったく自覚症状がなく,前医も筆者らも鉄片を疑うことはなかった.前医では虹彩炎による眼圧上昇と診断され,緑内障手術が行われた.鉄片の位置は毛様体(133)図2左眼初診時の眼底写真黄斑に及ぶ網膜.離を認める.図3術中写真20G灌流ポートに隣接している金属片を認める.OFFISS40D前置レンズを使用している.扁平部であり,通常の眼底検査では発見が困難であったと考えられた.異物飛入の自覚や疑いを訴えて眼科を受診した場合には,コンピュータ断層撮影(computedtomography:CT)やX線写真撮影などが行われ,鉄片異物の診断は比較的容易である9).しかし,まったく異物の自覚症状がなく緑内障などの前眼部疾患で受診した場合には,異物の発見は著しく困難となると思われる.この症例での診断のヒントは職歴のみであった.この症例が網膜.離を発症しなければ,おそらく鉄片異物は発見できなかったと思われる.鉄片が長期間眼内に無症状で滞留した報告はわが国にも数多くあり,滞留期間は1.35年に及ぶ.Duke-Elderによれば,鉄片異物が眼内に存在したにもかかわらず鉄錆症とならない非典型症例には6つの経過がありうるという.1)鉄の含有量が少ないか,鉄片が組織で被われた場合には無症状であたらしい眼科Vol.32,No.4,2015597 ある.2)一度組織に被われ無症状で経過したものの,異物が移動したため著しい炎症を起こし,時に眼球摘出に至る.3)異物が移動していないにもかかわらず,著しい炎症を起こし前房蓄膿,眼球癆に至る.4)異物が自然排出される.5)鉄片異物が小さな場合には,自然吸収されることがある.6)交感性眼炎を起こすことがある10).本症例では,異物侵入より時間は経過しているものの,組織に被われない鉄片異物であり,すでに緑内障を発症していた.放置すればさらに大きな合併症を起こす可能性があった.網膜.離を起こし鉄片が摘出されたことは,この症例には不幸中の幸いであったといえる.1988年の岸本らの報告によれば,緑内障を発症した眼内鉄片異物症例の手術予後は不良であり,網膜.離の手術予後も芳しくないが1),本症例では前医の線維柱帯切開術で眼圧はよくコントロールされ,網膜.離も治癒している.2000年の大内らにより報告された鉄片異物による網膜.離の3症例も治癒している8).これは手術技術の進歩であると考えられる.III結語フライス加工時に眼内に鉄片が飛入したにもかかわらず見逃され,緑内障手術を受け,後に網膜.離を発症し,硝子体手術により異物が発見され摘出された1症例を報告した.今回の症例により,職歴を含めた予診の重要性を再認識した.文献1)岸本伸子,山岸和矢,大熊紘:見逃されていた眼内鉄片異物による眼球鉄症の7例.眼紀39:2004-2011,19882)佐々木勇二,松浦啓之,中西祥治ほか:長年月経過している眼内金属片異物の1例.臨眼82:2461-2464,19883)並木真理,竹内晴子,山本節:1年間放置された眼内異物の1例.眼臨82:2346-2349,19884)尾上和子,宮崎茂雄,尾上晋吾ほか:8年間無症状であった眼内鉄片異物の1例.眼紀45:467-470,19945)来栖昭博,藤原りつ子,長野千香子ほか:28年間無症状であった眼内鉄片異物の症例.臨眼51:1169-1172,19976)青木一浩,渡辺恵美子,河野眞一郎:長期滞留眼内鉄片異物の2例.眼臨94:939-941,20007)及川哲平,高橋嘉晴,河合憲司:受傷1年以上経過後に摘出した7mmの眼内鉄片異物の1例.臨眼63:1495-1497,20098)大内雅之,池田恒彦:硝子体手術中に眼内異物が発見された網膜.離の3例.あたらしい眼科17:1151-1154,20009)上野山典子:眼内異物.眼科MOOK,No5,p100-109,金原出版,197810)DukeElder:SystemofOphthalmology,14:477,HenryKimpton,1972***(134)

眼科手術時に発見された前房内睫毛迷入の1例

2012年12月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科29(12):1689.1691,2012c眼科手術時に発見された前房内睫毛迷入の1例岩田進高山圭播本幸三竹内大防衛医科大学校眼科学教室ACaseofIntraocularCiliaFoundduringOcularSurgerySusumuIwata,KeiTakayama,KozoHarimotoandMasaruTakeuchiDepartmentofOphthalmology,NationalDefenseMedicalCollege目的:自覚症状,眼外傷や眼科手術の既往がなく,眼科手術の際に発見された前房内睫毛迷入の1例を経験したので報告する.症例:59歳,男性,原因不明の左眼硝子体出血にて当科紹介となる.初診時,左眼の矯正視力0.01,眼圧16mmHgであった.既往として糖尿病網膜症および糖尿病性腎不全があったが,眼外傷や眼手術の既往はなかった.左眼に対する超音波乳化吸引術および硝子体切除術が予定され,球後麻酔後の手術開始時,11時の周辺角膜裏面に線状の前房内異物を認め,2時に作製した角膜創より鑷子にて摘出した.手術は予定どおり終了し,顕微鏡所見から前房内異物は軽度脱色を伴った睫毛と同定された.術中術後,前房内睫毛の迷入を示唆する創痕は認められず,睫毛による異物反応は術前よりみられなかった.術後炎症は速やかに消退し,術後1週間で左眼矯正視力は1.5に回復し,その後の経過も良好であった.結論:睫毛は創痕を残すことなく前房内に迷入する可能性が示唆された.Purpose:Toreportacaseofintraocularciliamigrationintotheanteriorchamberwithnohistoryofocularinjuryorsurgery.Casereport:A59-year-oldmalewasreferredtoourhospitalbecauseofvitreoushemorrhageinhislefteye.Visualacuityoftheeyewas0.01;ocularpressurewas16mmHg.Phacoemulsificationandvitrectomywereperformed.Afterretrobulbaranesthesia,anintraocularforeignbodywasobservedintheanteriorchamber.Theforeignbodywasextractedusingmicroforcepsandwasidentifiedasciliaviamicroscopy.Nowoundtraceswerenotidentifiedontheocularsurface.Intraocularinflammationwasnotobservedbeforetheoperation,andtheclinicalcoursewasfavorable.Conclusion:Itissuggestedthatciliamaymigrateintotheanteriorchamberwithoutawoundtraceremaining.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(12):1689.1691,2012〕Keywords:眼内異物,睫毛,前房内睫毛迷入.intraocularforeignbody,cilium,intraocularciliummigration.はじめに前房内異物として過去の報告では鉄などの金属異物やガラスなどが多く1),前房内に睫毛が迷入した症例の報告2.4)はあるがまれである.前房内異物の機序としては,角膜穿孔2)や眼球破裂などの外傷3,4)に伴うものや,白内障などの手術操作時5,6)に伴うものが多い.睫毛が眼内に迷入した際,硝子体内に到達したものは裂孔原性網膜.離の原因7)となり,前房内においては遅発性のぶどう膜炎8)や.胞3)を生じた報告があるが,長期間放置しても炎症反応をきたさず経過した症例9)や,自覚症状もなく50年以上も経過したと思われる症例10)も報告されている.今回,自覚症状,眼科手術や外傷の既往がなく,硝子体手術の際に発見された前房内睫毛迷入の1例を経験したので報告する.I症例59歳,男性.2週間前から左眼の視力低下を自覚し,近医受診.硝子体出血の診断にて当科紹介となる.初診時,矯正視力は右眼1.5,左眼0.01,眼圧は右眼15mmHg,左眼16mmHg,前眼部に外傷の既往や手術既往を疑わせる創口はみられなかった.中間透光体には軽度白内障を認めたが前房内に浸潤細胞はみられなかった.右眼眼底は糖尿病網膜症所見を呈し汎網膜光凝固施行後であった.左眼は硝子体出血のため眼底は透見不能であった.水晶体再建術および硝子体手術を予定した.球後麻酔後手術開始時に,11時の周辺角〔別刷請求先〕岩田進:〒359-8513所沢市並木3-2防衛医科大学校眼科学教室Reprintrequests:SusumuIwata,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NationalDefenseMedicalCollege,3-2Namiki,TokorozawaCity,Saitama359-8513,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(99)1689 図1術直前時の前眼部所見術施行直前に前房内に異物が浮遊しているのを認め(矢印),鑷子で除去した.異物は睫毛であった.図2術中眼底所見術中の眼底に網膜静脈分枝閉塞症の所見が認められたため,網膜静脈分枝閉塞症に伴う硝子体出血と診断した.膜裏面に線状の前房内異物が認められたため(図1),2時の角膜輪部に1mm幅の創口を作製し,マイクロ鑷子にて摘出した.その後,超音波乳化吸引術,硝子体手術を施行し,術中の眼底所見から硝子体出血の原因は糖尿病網膜症に合併した網膜静脈分枝閉塞症と考えられた(図2).異物が眼内に迷入した創痕は術中,術後確認できず,顕微鏡所見から異物は睫毛と判明した(図3A).睫毛は脱色され表皮層が部分的に欠損し,皮質の連続性が障害されていた(図3B).術前から左眼に前眼部炎症所見はなく,眼表面に創痕が認められなかったことから前房内迷入後,長期間経過していたことが予想された.1週間で左眼の矯正視力は1.5に回復し,その後の経過も良好であった.1690あたらしい眼科Vol.29,No.12,201225μmAB図3病理所見術中得られた検体は,脱色された睫毛であった(A).正常の睫毛と比較して,組織学的変化として部分的に表皮層が欠損し,皮質の連続的な細胞膜の損失が生じた.睫毛周囲の異物反応は認めなかった(B).II考按睫毛が前房内に迷入した報告はまれであり,機序として外傷性2.4)や手術操作に伴うもの5,6)が報告されているが,侵入経路が不明な報告も海外で1例11),わが国においてはアレルギー性結膜炎の患者で1例報告8)されている.本症例は,既往としてアレルギー性結膜炎はなく,.痒感を生じるような疾患の既往もなかった.よって,海外の報告と同じく,前房内への迷入原因,経路はまったく不明である.前房内異物により惹起される前眼部炎症に関しては,遅発性ぶどう膜炎を発症8)した症例や.胞を形成したとの報告3)もあるが,長期間無症状で経過し,最大50年以上経過10)していたと考えられた報告もある.今回の症例においても,迷入した時期は不明であるが,自覚症状はなく,炎症や.胞形成も認めなかった.硝子体出血による視力障害がなければ手術は施されず,(100) 放置されていたと考えられる.炎症のない眼の前房内に投与された抗原に対しては,細胞性免疫能および補体結合抗体の産生が抑制され,この特異な免疫反応は,前房関連免疫偏位(anteriorchamber-associatedimmunedeviation:ACAID)として知られている12).このような基礎医学研究の知見もあり,前房内異物に関しては炎症や自覚症状がなければ経過観察でよいとする意見がある.前房に迷入した睫毛は,時間経過とともに表皮層が部分的に欠損し,皮質の連続性が障害されるが,睫毛の構造自体に変化はないことが報告9)されている.今回の検体は,過去の報告と同様に,部分的に表皮層が欠損し,皮質細胞膜の連続性が障害されていた.眼表面に創痕がみられなかったことからも,前房内に迷入した期間は短期間ではなく長期間であったと考えられる.術前,前房内睫毛迷入が細隙灯顕微鏡検査にて観察されなかった原因としては,眼表面に異常がみられなかったこと,および座位での診察のため下方隅角に位置していたためと考えられる.術後に隅角検査を行ったが,特記すべき異常は認められなかった.本症例は,手術時の体位変換により発見されたが,このようなことから,創痕を残さず前眼部炎症をきたさない前房内異物は,自覚症状を呈することもないため,その大きさによっては細隙灯顕微鏡では観察されえない隅角に位置し,日常の眼科診療では見逃される可能性が示唆される.文献1)樋口暁子,喜多美穂里,有澤章子ほか:外傷性眼内異物の検討.眼臨96:60-62,20022)SnirM,KremerI:Eyelashcomplicationsintheanteriorchamber.AnnOphthalmol24:9-11,19923)KoseS,KayikciogluO,AkkinC:Coexistenceofintraoculareyelashesandanteriorchambercystafterpenetratingeyeinjury:acasepresentation.IntOphthalmol18:309311,19944)GopalL,BankerAS,SharmaTetal:Intraocularciliaassociatedwithperforatinginjury.IndianJOphthalmol48:33-36,20005)IslamN,DabbaghA:Inertintraoculareyelashforeignbodyfollowingphacoemulsificationcataractsurgery.ActaOphthalmolScand84:432-434,20066)RofailM,BrinerAM,LeeGA:Migratoryintraocularciliumfollowingphacoemulsification.ClinExperimentOphthalmol34:78-80,20067)TeoL,ChuahKL,TeoCHetal:Intraocularciliainretinaldetachment.AnnAcadMedShingapore40:477-479,20118)宮本直哉,舘奈保子,橋本義弘:前房内睫毛異物による眼内炎の1例.あたらしい眼科23:109-111,20069)HumayunM,delaCruzZ,MaguireAetal:Intraocularcilia.Reportofsixcasesof6weeks’to32years’duration.ArchOphthalmol111:1396-1401,199310)山上美情子,大島隆志,山上潔:50年以上経過していると思われる前房内睫毛異物の1例.眼紀41:2169-2174,199011)KertesPJ,Al-Ghamdi,AA,BrownsteinS:Anintraocularciliumofuncertainorigin.CanJOphthalmol39:279-281,200412)Stein-StreileinJ,StreileinJW:Anteriorchamberassociatedimmunedeviation(ACAID):regulation,biologicalrelevance,andimplicationsfortherapy.IntRevImmunol21:123-152,2002***(101)あたらしい眼科Vol.29,No.12,20121691

明らかな前眼部炎症を生じずに水晶体内に留まった眼内ステンレス片の1 例

2012年1月31日 火曜日

0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(131)131《原著》あたらしい眼科29(1):131?134,2012cはじめに穿孔性眼外傷により金属異物が眼内に飛入した場合,異物残存部位によっては視機能に重篤な影響を及ぼす合併症をもたらすため,早期診断,早期治療を行うことが重要である1).眼内異物は,網膜内,または二重穿孔により眼窩内に認められることが多く,視力予後は前房,水晶体,硝子体,網膜の順に悪くなる2).水晶体内に留まることはまれである3)が,水晶体内異物では角膜損傷部位は開放創となり,前房の消失,外傷性白内障を生じ,強い前眼部炎症とともに視力障害,充血,疼痛などの強い自覚症状を示す.異物飛入により水晶体物質が?外に脱出することにより惹起される水晶体起因性ぶどう膜炎,続発緑内障,感染を惹起することも少なくない.異物が小さく,高速で眼内に飛入した場合,組織損傷は少なく,受傷後の自覚症状も違和感程度で軽微であること〔別刷請求先〕高山圭:〒359-8513所沢市並木3-2防衛医科大学校眼科学教室Reprintrequests:KeiTakayama,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NationalDefenseMedicalCollege,3-2Namiki,TokorozawaCity,Saitama359-8513,JAPAN明らかな前眼部炎症を生じずに水晶体内に留まった眼内ステンレス片の1例高山圭佐藤智人桜井裕竹内大防衛医科大学校眼科学教室ACaseofIntralenticularForeignStainlessSteelBodywithoutApparentAnteriorInflammationKeiTakayama,TomohitoSato,YuuSakuraiandMasaruTakeuchiDepartmentofOphthalmology,NationalDefenseMedicalCollege目的:角膜刺入創は自己閉鎖し,明らかな前眼部炎症はなく,外傷性白内障もごく軽度であった水晶体内ステンレス片の1例を経験したので報告する.症例:58歳の男性.解体業の仕事中に右眼に違和感を自覚.2週間後に近医を受診したところ,外傷性角膜裂傷,水晶体内異物の診断にて当科紹介となる.右眼の矯正視力0.4,眼圧15mmHg,角膜に刺入痕があり水晶体内異物を認めたが,角膜創は自己閉鎖しており前房深度は正常,明らかな前眼部炎症はなく水晶体混濁はその周囲のみで後?破損は認めなかった.2×1×0.2mmの水晶体内異物を除去した後に超音波乳化吸引術を施行し,現在矯正視力1.0で経過良好である.異物はステンレスであった.結論:眼内異物がステンレスであり,角膜穿孔創が自然閉鎖している水晶体内異物の場合,前?損傷も軽度であれば異物に伴う眼内炎症も軽度であり,炎症が自然消退する可能性が示唆された.Purpose:Toreportacaseofintralenticularforeignbodywithoutapparentanteriorinflammation.Casereport:A58-year-oldmalefeltanoddsensationinhisrighteyeduringdemolitionwork.Twoweekslater,hevisitedourdepartmentwithadiagnosisoftraumaticcorneallacerationandintralenticularforeignbodyinhisrighteye.Best-correctedvisualacuity(BCVA)inhisrighteyewas20/50;intraocularpressurewas15mmHg.Thecornealwoundhadclosedspontaneously,andnoanteriorinflammationwasapparent.Althoughtheintralenticularforeignbodywasobservedintheeye,cataractformationwasconfined.Theforeignbody,2×1×0.2mminsize,wassurgicallyremovedandtheusualcataractsurgerywasperformed.PostoperativeBCVAwas20/20,andtheforeignbodywasfoundtobestainlesssteel.Conclusion:Ifaforeignbodyisstainlesssteelandthecornealwoundclosesspontaneously,theforeignbodycanoccasionallyremaininthelenswithoutsevereocularinflammation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(1):131?134,2012〕Keywords:水晶体内異物,外傷性白内障,ステンレス,眼内異物,外傷性角膜裂傷.intralenticularforeignbody,traumaticcataract,stainless,intraocularforeignbody,traumaticcorneallaceration.132あたらしい眼科Vol.29,No.1,2012(132)が多い4).長期間放置された後に白内障手術時や検診時などに発見された報告はあるが,外傷性白内障は通常外傷後急速に進行し,また,眼内異物の種類によっては重篤な視力障害につながる金属症が出現することがあるため,水晶体内異物でのこのような報告は少ない2,5?7).眼内異物については,76?90%が鉄片であり3,8),ステンレス片による水晶体内異物の報告は筆者らが検索した限り今まで認められない.今回,明らかな前眼部炎症を生じずに水晶体内に留まった眼内ステンレス片の1例を経験したので報告する.I症例患者は58歳の男性.平成23年5月10日,家屋の解体作業中,右眼に違和感が出現し,軽度の視力障害を自覚したが,疼痛もないため放置していた.しかし,症状の改善がみられないため5月19日に近医受診.右眼の角膜裂傷の診断にてレボフロキサシン点眼薬を処方されたが,5月27日の再診時,右眼水晶体内異物を指摘され当科紹介となった.右眼視力低下を主訴に同日初診となり,右眼視力0.4(矯正不能),右眼眼圧は15mmHgであり,家族歴・既往歴に特記すべきことはなかった.充血,流涙,眼痛などの症状はなく,細隙灯顕微鏡検査で右眼の結膜に発赤はみられず,角膜耳側瞳孔領に穿孔創が認められたが,創からの前房水の漏出はなく自己閉鎖していた.前房深度に左右差はなく,前房内に浸潤細胞はみられなかった(図1).水晶体前?下に金属異物が認められたが,異物は水晶体皮質下にあり,水晶体混濁は異物周囲のみで,全体的な水晶体混濁は左右同程度であっ図1初診時の右眼前眼部写真右眼の角膜瞳孔領のやや耳側に自己閉鎖された穿孔創が認められた(矢印).水晶体内の瞳孔領近くに金属異物が認められた.前房内に炎症細胞は認められず,水晶体後?に異常は認められなかった.異物は水晶体皮質下にあった.図2初診時の反対眼前眼部写真外傷眼と同程度の白内障を認め,左右差はなかった.図3初診時のCT写真水晶体内に異物を認めたが,それ以外の部位に異物を認めなかった.(133)あたらしい眼科Vol.29,No.1,2012133た(図2).眼底に特記すべき異常はみられず,CT(コンピュータ断層撮影)検査においてもその他眼球内,眼窩内に異物は認められなかった(図3).外傷性穿孔による眼内異物では感染や炎症,眼球鉄症が生じる可能性があるため早期手術が基本であるが,検眼鏡的に明らかな炎症所見がみられず,外傷性白内障も進行していなかったため,翌週の6月1日に入院,6月2日に右眼水晶体内異物除去,超音波乳化吸引術,眼内レンズ挿入術を施行した.手術は点眼麻酔下にて術創2.2mmの極小切開白内障手術に準じて施行した.粘弾性物質にて前房を形成後,前?創部をきっかけとしてcontinuouscurvilinearcapsulorrhexisを作製し,鑷子で水晶体内金属異物を手術創から摘出した.摘出物は大きさ2×1×0.2mm,重さ3.1g,比重7.8,磁石に付着しない金属片であり,ステンレス製の釘を使っていた部分の解体中に生じたとの患者の報告から,ステンレス片と断定した(図4).その後,通常の超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を施行し,手術終了時にデキサメタゾン0.3mlとトブラマイシン0.3mlの結膜下注射を行った.術中合併症はなく,術翌日からのモキシフロキサシン4回/日,0.1%ベタメタゾン4回/日,ブロムフェナクナトリウム水和物2回/日の点眼加療により術後炎症は速やかに消退した(図5).術後右眼の矯正視力1.0,眼圧12mmHgと良好であり,その後の異常も認められていない.II考按眼内異物は外来でしばしば遭遇する疾患であり,眼内異物の種類としては鉄片が76?90%と最多である3).眼内異物の侵入部位は角膜が63%,強膜が32%,強角膜が5%,眼内異物の存在部位では硝子体が50%,続いて網膜あるいは前房の順であり,水晶体内は9%3,8)とされる.穿孔性外傷による水晶体内異物では,視力低下や疼痛,充血などの自覚症状がみられ,角膜混濁や前房内炎症も強く,眼圧の変化を伴うことが多い1).その25%に後?破損を伴い9),水晶体損傷による外傷性白内障は急速に進行しやすく,さらなる視力低下をきたす.しかし,自覚症状がほとんどなく,本症例のように眼科を受診しても見落とされた眼内異物の報告もみられる5).白石ら7)は,①鉄片が小さく角膜損傷部位が瞳孔領中心から外れていること,②前?損傷がわずかで異物が水晶体中央部に留まり後?破損を伴わない,③経過内に合併症を生じない場合,眼内異物による症状は比較的少ないと述べている.また,水晶体自体が異物の毒性を防ぐためのnaturalbarrierとして働くことが知られており10),2mm以下の小さい異物であれば損傷部位周囲の残存水晶体上皮細胞が増殖し,コラーゲン線維などにより異物を被覆することが報告されている11,12).今回の症例では,①2×1×0.2mmと過去の報告と比較して同程度かやや大きめだが厚さが薄く,侵入部位が角膜中央からやや耳側で創が自己閉鎖していたこと,②前?損傷は小さく後?破損を伴っていなかったこと,③合併症を伴っていなかったことから,白石らの見解と矛盾はない.また,水晶体起因性ぶどう膜炎の発症に至らなかった理由としては,水晶体前?の破損がわずかであり混濁も異物周囲のみであったこと,水晶体皮質下に異物全体が存在したことから,上述の水晶体上皮細胞によるnaturalbarrierが生じていた可能性が考えられる.金属片が鉄や銅の場合,眼内に飛入すると眼球鉄症13)や眼球銅症14)といった金属症が出現する.眼球鉄症は眼内組織に広範囲に鉄が沈着し,白内障,緑内障,虹彩異色,瞳孔散大,色素上皮萎縮,網膜電図の振幅低下がみられる.眼球銅症は角膜や網膜に銅沈着,線維性の硝子体混濁をきたす.今回の症例のようなステンレス片による眼症の報告はなく,緑内障手術の際に用いられるex-pressdevice,裂孔原性網膜?離の手術資材であるretinaltackなどには眼組織への毒図4眼内異物摘出物は大きさ2×1×0.2mm,重さ3.1g,比重7.8,磁石に付着しない金属片であり,ステンレス製の釘を使っていた部分の解体中に生じたとの患者の報告から,ステンレス片と断定した.図5術後前眼部写真術後7日目.術後炎症は軽度であり矯正視力1.0,眼圧15mmHgと視力改善した.134あたらしい眼科Vol.29,No.1,2012(134)性が低いステンレスが使用されている15,16).今回の症例では,眼内異物がステンレスであったことから金属症を生じず,炎症反応が軽度であったと考えられる.III結論自覚症状に乏しく,明らかな検眼鏡的な前眼部炎症を生じなかった水晶体内異物の1例を経験した.眼内異物がステンレスであり,角膜穿孔創が自然閉鎖している水晶体内異物の場合,前?損傷も軽度であれば異物に伴う眼内炎症も軽度であり,炎症が自然消退する可能性が示唆された.文献1)谷内修:眼内異物.眼科診療プラクティス15,眼科救急ガイドブック,p228-231,文光堂,19952)来栖昭博,藤原りつ子,長野千香子ほか:28年間無症状であった眼内鉄片異物の症例.臨眼51:1169-1172,19973)樋口暁子,喜多美穂里,有澤章子ほか:外傷性眼内異物の検討.眼臨96:60-62,20024)下浦やよい,佐堀彰彦,井上正則:長期間無症状で経過した金属性異物の1例.臨眼85:56-59,19915)竹内侯雄,大黒浩,山崎仁志ほか:発見が遅れた水晶体鉄片異物の1例.眼科44:1379-1381,20026)松本行弘,馬場賢,筑田眞:5カ月以上経って発見された水晶体内鉄片異物の1例.眼臨紀1:1084-1089,20087)白石さや香,上山杏那,岡崎光彦ほか:20年間無症状で経過した水晶体内鉄片異物の1例.日眼会誌112:882-886,20088)ColemanDJ,LucasBC,RondeauMJetal:Managementofintraocularforeignbodies.Ophthalmology94:1647-1653,19879)GrewalSP,JainR,GuptaRetal:RoleofScheimpflugimagingintraumaticintralenticularforeignbodies.AmJOphthalmol142:675-676,200610)LeeW,ParkSY,ParkTKetal:Maturecataractandlens-inducedglaucomaassociatedwithanasymptomaticintralenticularforeignbody.JCataractRefractSurg33:550-552,200711)宇賀茂三,西本浩之:外傷に対する水晶体上皮細胞の反応.眼科手術3:227-235,199012)渡名喜勝,平岡俊彦:白色家兎水晶体上皮細胞の性状─形態学的変化とその影響(紡錘形細胞を中心として)─.日眼会誌100:192-200,199613)KurzGH,HenkindP:Siderosislentisproducedbyanintralenticularforeignbody.ArchOphthalmol73:200-201,196514)KurnF,MesterV,MorrisR:Intralenticularforeignbodies.OcularTrauma,p235-263,Thieme,NewYork,200215)FeoDF,BagnisA,BricolaGetal:Efficacyandsafetyofastealdrainagedeviceimplantedunderascleralflap.CanJOphthalmol44:57-62,200916)JaveyG,SchwartzSG,FlynnHWJretal:Lackoftoxicityofstainlesssteelretinaltacksduring21yearsoffollow-up.OphthalmicSurgLasersImaging40:75-76,2009***