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点眼容器の形状と色調が緑内障患者の使用性に与える影響

2018年2月28日 水曜日

《原著》あたらしい眼科35(2):258.262,2018c点眼容器の形状と色調が緑内障患者の使用性に与える影響鎌尾知行*1溝上志朗*2浪口孝治*1篠崎友治*3田坂嘉孝*2,3白石敦*1*1愛媛大学大学院医学系研究科眼科学講座*2愛媛大学大学院医学系研究科視機能再生学講座*3南松山病院眼科CIn.uenceofEyedropContainerPropertyandVisibilityonUsabilitybyPatientswithGlaucomaTomoyukiKamao1),ShiroMizoue2),KojiNamiguchi1),TomoharuShinozaki3),YoshitakaTasaka2,3)andAtsushiShiraishi1)1)DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversityGraduateSchoolofMedicine,2)DepartmentofOphthalmologyandRegenerativeMedicine,EhimeUniversityGraduateSchoolofMedicine,3)DepartmentofOphthalmology,Minami-MatsuyamaHospital目的:緑内障患者が点眼しやすい容器の形状と色調を調査する.対象および方法:対象は,南松山病院に通院中の緑内障患者C100例(男性C49例,女性C51例,平均年齢C64.6±13.5歳).「ルミガンR点眼液C0.03%」容器の旧型と新型で,キャップの大きさ,キャップの開閉操作のしやすさ,容器の持ちやすさ,容器の押しやすさ,1滴量の滴下のしやすさについての聞き取り比較調査を行った.つぎに,容器の色調が異なるC3種類の現行型の容器で白色ノズルの視認性を調査した.結果:キャップの大きさ,容器の持ちやすさ,容器の押しやすさ,1滴量の滴下のしやすさは新型の評価が高く(p<0.0001),総合的にも新型を好む者が多かった(p<0.0001).ノズルの視認性は,緑色,褐色,灰白色の容器の順に評価が高く,各群間に差を認めた(p<0.0001).結論:点眼容器の形状と色調は,ともに緑内障患者の使用性に影響する.CPurpose:Toinvestigatethein.uenceofeyedropcontainershapeandcolorcombinationonusabilityandvisi-bilityCinCglaucomaCpatients.CSubjectsandMethods:ThisCcaseCseriesCstudyCcomprisedC100CglaucomaCpatients(49malesCandC51Cfemales)atCMinami-MatsuyamaCHospitalCfromCDecemberC2015CtoCMarchC2016.CAllCpatientsCwereCscoredCasCtoCusabilityCofCconventionalCandCcurrentCtypeCLumiganRCeyedropCcontainersCviaCquestionnaires,CrankingCvisibilityamong3di.erentcolorcombinationsofeyedropnozzles.Results:Thecurrenttypewassigni.cantlybet-terastocapsizes,bottlehandling,bottlesqueezingandfeelingofdrippingonedropthantheconventionaltype(p<0.0001).Amongthethreecontainers,colorevaluationswerehighintheorderofgreen>brown>grayish-white(p<0.0001).Conclusion:OurCresultsCsuggestCthatCeyedropCcontainerCusabilityCandCvisibilityCareCa.ectedCbyCcon-tainershapeandcolorcombination.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(2):258.262,C2018〕Keywords:点眼容器,緑内障,使用性,視認性.eyedropcontainer,glaucoma,usability,visibility.Cはじめに点眼容器は形状や硬さ,キャップの大きさなどにより持ちやすさ,さしやすさ,開閉操作などの使用性が異なり1),患者は使用性に優れた点眼容器を支持することから2,3),点眼容器の使用性改善により点眼アドヒアランスの向上も期待できる.近年,プロスタグランジン関連薬の一つである「ルミガンR点眼液C0.03%」(以下,ルミガン)の容器が使用性の向上を目的として変更されたが4),実際に緑内障患者の使用性にどのような影響を与えたかに関してはまだ検討されていない.一方,視野障害を有する緑内障患者では,健常者に比べ点眼の際にノズル視認性に劣るため,眼表面への適切な滴下が困難であり5),より視認性の高いノズルを有する点眼容器が〔別刷請求先〕鎌尾知行:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院医学系研究科眼科学講座Reprintrequests:TomoyukiKamao,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,MedicineofSensoryFunction,EhimeUniversityGraduateSchoolofMedicine,Shitsukawa,Toon,Ehime791-0295,JAPAN258(98)望ましい.しかしながら,筆者らが調べた限りではこれまで点眼容器の色調の違いがノズルの視認性に与える影響に関する検討もされていない.そこで今回,緑内障性視野障害を有する緑内障患者を対象として,ルミガンの旧型と新型容器(図1a)の使用性に関するインタビュー調査を行った.同様に,ノズル先端と点眼容器の色コントラストが視認性に与える影響について,同一の白色のノズルを有しながら容器の色が異なる,褐色のルミガン新型容器,緑色の「アイファガンCR点眼液C0.1%」(以下,アイファガン)容器,および灰白色容器(以下,コントロール)(図1b)を用いて検討した.CI対象および方法対象はC2015年C12月.2016年C3月に南松山病院眼科を受診した緑内障患者のなかから本研究に同意が得られた満C20歳以上の男女で,片眼もしくは両眼に緑内障性視野障害を認める患者を選択した.なお,過去にルミガンと同形状の点眼容器の使用経験がある者,手指の運動障害により点眼操作が不可能な者は除外した.点眼容器の使用性の調査は,評価者が被験者に開封済みのルミガンの新旧容器を渡し,キャップや容器の把持,開閉操作,点眼操作をさせた後,キャップと容器の使用性に関する5項目について,既報1)に準じて評価させた(表1).最後に継続して使用したい点眼容器を選択させた.ノズルの視認性の調査は,キャップをはずしたルミガン新型,アイファガン,コントロールの三つの点眼容器を被験者に擬似点眼操作をさせ,対象眼に実際に点眼する距離まで容器を近づけたときのノズル先端の視認性を順位づけさせた.評価する容器の順番はアトランダムに割り付けた.対象眼はHumphrey自動視野計のCMD(meanCdeviation)の低値側とした.さらに視認性に関与する因子を調べるため,ノズルと各容器の色差およびコントラスト比を測定した.色差は,ノズルとそれぞれの容器のCL*a*b*表色系を分光測色計(コニカミノルタ製,CM-5)にて測定し,色差(CΔE*ab)を評価した6).コントラスト比は,ノズル(白)とそれぞれの容器(緑色,褐色,灰白色)の輝度を二次元輝度計(コニカミノルタ製CA-2500)にてC3回測定し,輝度の比の平均を算出した.統計解析にはCJMPCR11.2(SASCinstitute,CNorthCCarolina,USA)を用いた.使用性のC5項目はC1.5点で点数化し,各項目についてルミガン旧型と新型でCWilcoxon符号順位検定旧型新型253522142121211717(mm)2123正面側面正面側面a:ルミガンR点眼液C0.03%(ルミガン)旧型と新型容器のキャップと容器写真.新型はキャップが小型化,容器が大型化し,形状が円柱から扁平型に変更された.ルミガン新型アイファガンコントロールb:褐色容器ルミガン新型,緑色容器アイファガンCR点眼液C0.1%(アイファガン),灰白色容器(コントロール)のキャップをはずしノズル側より撮影した写真.図1調査に使用した点眼容器表1使用性のアンケート調査の設問と選択肢小さすぎやや小さいちょうどよいやや大きい大きすぎ1.キャップの大きさ(1点)(3点)(5点)(3点)(1点)開けやすいやや開けやすいふつうやや開けにくい開けにくい2.キャップの開閉操作のしやすさ(5点)(4点)(3点)(2点)(1点)持ちやすいやや持ちやすいふつうやや持ちにくい持ちにくい3.容器の持ちやすさ(5点)(4点)(3点)(2点)(1点)硬すぎやや硬いちょうどよいやや軟らかい軟らかすぎ4.容器の押しやすさ(1点)(3点)(5点)(3点)(1点)出すぎるやや出すぎるちょうどよいやや出にくい出にくい5.1滴量の滴下のしやすさ(1点)(3点)(5点)(3点)(1点)旧型容器がよい6.総合評価新型容器がよいキャップの大きさ,開閉操作のしやすさ,容器の持ちやすさ,押しやすさ,1滴量の滴下のしやすさのC5項目をルミガン新旧容器それぞれについて,5段階評価させた.最後に総合評価として継続して使用したいと考える点眼容器を選択させた.キャップの大きさ*Wilcoxon符号順位検定1滴量の*キャップの開閉操作*滴下のしやすさ容器の押しやすさ*容器の持ちやすさ*新型4.46±1.023.66±1.114.04±1.074.32±1.144.18±1.14p<0.0001p=0.0927p<0.0001p<0.0001p<0.0001図2使用性の平均スコア灰色五角形が旧型容器,黒線五角形が新型容器のC5項目それぞれの平均スコアのレーダーチャート.キャップの大きさ,容器の持ちやすさ,容器の押しやすさ,1滴量の滴下のしやすさは,有意に新型の評価が高かった(*p<0.0001,Wilcoxon符号順位検定)を行った.総合評価はC1変量のCc2検定で解析した.視認性はCSteel-Dwass法による多重比較を行った.有意水準は5%とした.本研究を実施するに際し,事前に愛媛大学医学部附属病院臨床研究審査委員会(1511007)の承認を得た.また,UMIN臨床試験登録に登録したうえで施行した(UMIN000020122).なお,本研究に使用したルミガン新旧型製品およびルミガン新型,アイファガン,コントロールの空き容器は千寿製薬より提供を受け,受託研究として行った.CII結果対象として選択されたのはC100例(男性C49例,女性C51例,平均C64.6C±13.5歳:34.88歳)だった.対象の緑内障罹病期間は平均C7.2C±5.2年:0.5.22年,使用緑内障点眼剤数は平均C1.3C±0.7剤(0.3剤),有水晶体眼C69眼,眼内レンズ挿入眼C31眼,近見視力は平均C0.32C±0.47(0.1.1.0),Hum-phrey自動視野計のCMD値は平均C.12.94±7.70CdB(C.32.07..0.76CdB)であった.白内障による視力低下を認めた症例はなかった.点眼容器の使用性は,キャップの大きさに関しては,ちょうどよいと答えたのは旧型がC39例(39.0%)に対して,新型がC76例(76.0%)であった.キャップの開閉操作のしやすさは,開けやすいと答えたのは旧型がC26例(26.0%)に対して,新型がC32例(32.0%)であった.容器の持ちやすさは,持ちやすいと答えたのは旧型がC13例(13.0%)に対して,新型が42例(42.0%)であった.容器の押しやすさは,ちょうどよいと答えたのは旧型がC19例(19.0%)に対して,新型がC71例(71.0%)であった.1滴量の滴下のしやすさはちょうどよいと答えたのは旧型がC32例(32.0%)に対して,新型が63例(63.0%)であった.キャップの大きさ,容器の持ちやすさ,容器の押しやすさ,1滴量の滴下のしやすさのC4項目については,新型が旧型より有意に使用性が高いという結果であった(Wilcoxon符号順位検定,p<0.0001).2容器それぞれで使用性の評価結果の平均スコアを算出したレーダーチャートを図2に示した.点眼容器の使用性と患者背景の関連を調べるため,使用性のスコアと年齢の相関を検討した.新型はキャップの開閉操作と年齢に正の,旧型はキャップの大きさ,容器の押しやすさ,1滴の落としやすさと年齢に負の相関を認めた(Spearmanの順位相関係数=0.2899,C.0.2068,C.0.3477,C.0.2876,p=0.0034,0.0390,0.0004,0.0037).一方,男女C2群で使用性を比較したが,スコアは有意差を認めなかった.また,継続して使用したいと考える点眼容器については,旧型を選んだのがC21名(21.0%)だったのに対して,新型を選択したのがC79名(79.0%)で,総合的に新型を好む者が多かった(Cc2検定,p<0.0001).つぎに,点眼容器の視認性は,1位に順位付けされたのがルミガン新型C19例(19.0%),アイファガンC69例(69.0%),コントロールC12例(12.0%)であった(図3).2位はルミガ■ルミガン新型■アイファガン■コントロール9080706050403020100例数1位2位3位図3視認性の順位1位はルミガン新型C19例,アイファガンC69例,コントロールC12例.2位はルミガン新型C73例,アイファガンC22例,コントロールC5例,3位はルミガン新型8例,アイファガンC9例,コントロールC83例であった.アイファガン,ルミガン新型,コントロールの順で有意に視認性が優れていた(Steel-Dwass法,p<0.0001).ン新型がC73例(73.0%),3位はコントロールがC83例(83.0%)ともっとも多く,視認性はアイファガン,ルミガン新型,コントロールの順で優れていた(Steel-Dwass法,p<0.0001).近見視力,中心窩閾値の中央値,0.4,34CdBを閾値としてC2群に分けて視認性を検討したが,同様の結果であり,視機能の良否にかかわらずアイファガンの視認性が優れていた.最後に,ノズルとルミガン新型,アイファガン,コントロールのC3つの点眼容器の色差(CΔE*ab)は,それぞれC15.4,21.2,7.1であった.コントラスト比は,それぞれC2.14C±0.09,2.10C±0.24,1.21C±0.06であった(表2).CIII考按ルミガンの新旧容器の使用性の比較では,新型容器のほうが,キャップの大きさ,容器の持ちやすさ,容器の押しやすさ,およびC1滴量の滴下のしやすさのC4項目で,旧型容器よりも優れていた.なお,今回の調査では,使用経験の有無によるバイアスを排除するため,過去に新旧容器の使用経験のない者を対象として選択している.新型容器の大きな改良点としては,容器が円柱型から把持部面積の大きい扁平型になり,キャップが小型化したことがあげられる.とくに,容器の持ちやすさやと押しやすさに関しては,過去の報告でも把持部に十分な高さをもつものや凹みを有しているものが優れるとされており1),今回の把持部面積の大きい扁平型の新型容器が高く評価された結果は矛盾しない.また,キャップの大きさ,容器の押しやすさ,1滴の落としやすさのスコアは,旧型容器では年齢と負の相関を認めたが,新型容器では相関を認めなかった.つまり旧型容器は高齢者ほど使用性が悪いと評価しているが,新型容器は改善されていることが示唆される.表2ノズル先端と容器の色差,コントラスト比色差Cルミガン新型15.4Cアイファガン21.2Cコントロール7.1コントラスト比C2.14±0.09C2.10±0.24C1.21±0.06C一方,キャップの開閉操作については新旧容器間で使用性に差がなかった.円柱型のキャップを有する旧型に対し,新型はC10角形に成形され,把持性を向上させるためにキャップ全体に縦方向のねじれをつけているが,その使用感に差はみられなかった.しかし,新型容器は年齢と使用性に正の相関を認めたため,高齢者においては高評価を得ている.新型容器は旧型容器よりもC1滴量の滴下のしやすさに優れていた.新型容器では,旧型よりも軽いスクイズ力でC1滴目が滴下可能で,2滴目の滴下に要するスクイズ力は旧型よりも大きくなるように設計されていることで4),1滴を点眼しやすく,連続で射出されにくい構造になっている.この容器の物性の改良点が,患者の使用感の向上に寄与したと推測される.今回の調査では約C8割の患者が旧型容器よりも新型容器を支持した.この結果は,形状と物性の両面からの改良が反映された結果と推測されるが,旧型容器を好む患者も約C2割存在した.この結果は,点眼容器の好みには,手指の大きさやスクイズ力の違いなどの身体的要因,あるいは過去にどのような点眼容器をどれくらいの期間使用してきたかなどの経験的要因など,さまざまな因子が影響する可能性が考えられる.白色のノズルの視認性については,もっとも優れていたのは点眼容器が緑色のアイファガンであり,褐色のルミガン新型容器と灰白色のコントロールと続いた.この結果は視機能に影響されなかった.分光測色計を用いた色差の評価でもアイファガン,ルミガン新型容器,コントロールの順番であり,ノズル先端と容器の形状はC3容器ともに同一であることから,ノズルと点眼容器の配色やコントラスト比が視認性に影響を与えたことが示唆された.緑内障患者では色覚やコントラスト感度が低下しているため7,8),ノズルの視認が困難な患者が多く,とくに緑内障点眼薬の容器の設計にあたっては,配色やコントラスト比に留意する必要性が示唆された.以上,今回の結果より,点眼容器の形状や物性の改良以外にも,ノズルと容器の色コントラストを改善することは,患者の使用性の向上と,アドヒアランスの向上につながる可能性が示された.本稿の要旨は第C27回日本緑内障学会にて発表した.文献1)兵頭涼子,溝上志朗,川﨑史朗ほか:高齢者が使いやすい緑内障点眼容器の検討.あたらしい眼科24:371-376,C20072)兵頭涼子,林康人,鎌尾知行ほか:プロスタグランジン点眼容器の使用性の比較.あたらしい眼科C27:1127-1132,C20103)兵頭涼子,林康人,溝上志朗ほか:押し圧力と滴下時間が点眼容器の使用性に与える影響.あたらしい眼科C28:C1050-1054,C20114)大塚忠史:点眼アドヒアランスの向上を指向した医療用点眼容器の開発.人間生活工学12:32-38,C20115)SleathCB,CBlalockCS,CCovertCDCetCal:TheCrelationshipCbetweenCglaucomaCmedicationCadherence,CeyeCdropCtech-nique,CandCvisualC.eldCdefectCseverity.COphthalmologyC118:2398-2402,C20116)小松原仁:色差式の開発動向.照明学会誌C76:496-499,C19927)BullCO:BemerkungenCuberCdenCFarbensinnCunterCver-schiedenenCphysiologischenCundCpathologischenCVerhalt-nissen.CAlbrechtCvonCGraefesCArchivCfurCOphthalmologieC29:71-116,C18838)CampbellCFW,CGreenCDG:OpticalCandCretinalCfactorsCa.ectingvisualresolution.JPhysiolC181:576-593,C1965***

押し圧力と滴下時間が点眼容器の使用性に与える影響

2011年7月31日 日曜日

1050(14あ6)たらしい眼科Vol.28,No.7,20110910-1810/11/\100/頁/JC(O0P0Y)《原著》あたらしい眼科28(7):1050?1054,2011c〔別刷請求先〕兵頭涼子:〒791-0952松山市朝生田町1-3-10南松山病院眼科Reprintrequests:RyokoHyodo,DepartmentofOphthalmology,MinamimatsuyamaHospital,1-3-10Asoda-cho,Matsuyama,Ehime791-0952,JAPAN押し圧力と滴下時間が点眼容器の使用性に与える影響兵頭涼子*1林康人*1,2,3溝上志朗*2,3宮田佳代子*1鎌尾知行*1吉川啓司*4大橋裕一*2*1南松山病院眼科*2愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻高次機能制御部門感覚機能医学講座視機能外科学*3愛媛大学視機能再生学(南松山病院)寄附講座*4吉川眼科クリニックEffectofSqueezingPressureandDroppingTimeonEyedropContainerUsabilityRyokoHyodo1),YasuhitoHayashi1,2,3),ShiroMizoue2,3),KayokoMiyata1),TomoyukiKamao1),KeijiYoshikawa4)andYuichiOhashi2)1)DepartmentofOphthalmology,MinamimatsuyamaHospital,2)DepartmentofOphthalmology,MedicineofSensoryFunction,3)DivisionofVisualFunctionRegeneration,EhimeUniversityGraduateSchoolofMedicine,4)YoshikawaEyeClinic目的:点眼容器から1滴を滴下する際の押し圧力と滴下時間を変化させたとき容器の使用性に与える影響を評価することにより,点眼容器の適切な押し圧力と滴下時間を決定する.方法:定圧(10N)で加圧したときの滴下時間が0.5秒未満,0.5?1.0秒,1.5?2.0秒,2.0?5.0秒となる4種類の点眼容器を準備した(容器A,容器B,容器C,容器D).点眼治療の経験がない健康有志者114名(男性60名,女性54名,平均年齢54.0±16.8歳)が各容器につき5回ずつ模擬点眼動作を行い,その際,拇指が点眼容器を押す押し圧力を触覚圧力センサーで測定した.点眼動作のあと,点眼容器の使用感に対するアンケート調査を行った.結果:圧力センサーにより算出された平均最大押し圧(容器A:1,242±308g/cm2,容器B:1,785±225g/cm2,容器C:967±270g/cm2,容器D:1,659±222g/cm2)と平均滴下時間(容器A:1.9±0.8秒,容器B:3.5±1.1秒,容器C:1.6±0.7秒,容器D:2.8±0.9秒)は各点眼容器により有意に異なった(対応のあるt検定,p<0.0001).アンケート調査では容器Cの使用感が最も良く,容器Bが最も評価が劣っていた(Wilcoxonの符号付順位検定,p<0.0001).使用性に影響を与える因子の検討では平均最大押し圧力の寄与(寄与率:0.2516)が最も大きかった(重回帰分析).平均最大押し圧力が500?1,500g/cm2で平均滴下時間が1?2秒の領域では94.8%が「使える」と回答したのに対し,平均最大押し圧力1,500g/cm2以上かつ平均滴下時間2秒以上では「使いたくない」が70.1%であった.結論:平均最大押し圧力と平均滴下時間は点眼容器の使用性に影響を与える.Purpose:Todeterminethesuitablepressureanddurationrequiredtosqueezeasingledropfromvariouseyedropcontainers,usabilitywasevaluatedwhensqueezingpressureandeyedrop-releasetimewerealtered.Methods:Wepreparedfoureyedropcontainersthatrequirelessthan0.5,0.5?1.0,1.5?2.0or2.0?5.0secondstosqueezeoutadropwithaforceof10N.ThesecontainerswererandomlydesignatedContainerA,ContainerB,ContainerCandContainerD.Healthyvolunteers(114individuals;60males,54females;averageage:54.0±16.8yrs),withnoexperienceofeyedroptherapysqueezed1dropfromeachcontainer5times.Weusedatactilepressuresensorforreal-timemeasurementofthumbpressureagainstaside-wallofthecontainersduringsqueezing.Afterhandlethecontainers,thevolunteersfilledoutaquestionnairerelatingtocontainerusability.Results:Judgingbypressuresensordatafromtheparticipants,theeyedropcontainersdiffersignificantly(pairedt-test,p<0.05)intermsofaveragemaximumpressure(ContainerC:967g/cm2,ContainerA:1,242g/cm2,ContainerD:1,659g/cm2,ContainerB:1,785g/cm2)andaverageeyedrop-releasetime(ContainerC:1.6sec,ContainerA:1.9sec,ContainerD:2.8sec,ContainerB:3.5sec).Judgingfromthequestionnairesresults,thebestcontainerwasContainerCandtheworstcontainerwasContainerB(Wilcoxonsigned-ranktest,p<0.0001).Onthebasisofthemultipleregressionanalysisresults,themosteffectivefactorinregardstousabilitywasaveragemaximumpressure(contributionratio:0.2516).Intheareaof500?1,500g/cm2pressurewithin1?2sec,94.8%ofvolunteersanswered“usable,”whereas70.1%answered“notusable”intheareaofover1,500g/cm2pressureand2sec.(147)あたらしい眼科Vol.28,No.7,20111051はじめに点眼容器の性状の違いは点眼の使用性に影響する.筆者らはそのなかでも,点眼容器の硬さやキャップの大きさが使用性に多大な影響を与えることを報告した1,2).今後とも,点眼薬は眼科治療において重要な地位を占めていくと予想されるが,治療の成否はアドヒアランスに大きく依存している.点眼治療のアドヒアランス向上のためには点眼しやすい容器であることが好ましい.そのためには,点眼容器の使用性の客観的な評価法の開発と数値目標の設定に基づいた優れた点眼容器の開発が必要であると考えられる.以前,筆者らの研究グループは点眼時に感じる容器の硬さを客観的に評価する方法として,点眼操作時の押し圧力変化を触覚センサーによりリアルタイムに測定する手法が有用であることを明らかにしている3).そこで本研究においては,一定の押し圧力において滴下時間の異なる4種類の標準容器を用い,使用性に影響を与える因子の解析を試みた.I対象および方法1.対象と臨床研究の審査今回の臨床研究を実施するに際し,事前に南松山病院臨床研究審査委員会(IRB)の承認を受けた.当院の職員または眼科通院中の患者のうち,点眼を常用せず,かつ,上肢に不自由を認めない健常人で,書面による説明と同意が得られた成人男女を対象とした.2.点眼容器の準備点眼容器のノズルの内径を変化させることにより,10Nの力で押したときの滴下時間がそれぞれ0.5秒未満,0.5?1.0秒,1.5?2.0秒,2.0?5.0秒になるように調整4)された4種類の点眼容器を参天製薬株式会社(大阪)より入手した(図1A?D).検者が点眼容器の性状が識別できないように,4種類の点眼容器は今回の研究には直接参加しない者(Y.O.)によりA,B,CおよびDの符号が付けられた.点眼容器の内容は注射用蒸留水(大塚蒸留水,大塚製薬工場,徳島)をノズル部分より吸引し,測定時に液量が容器の1/2?2/3になるように調整した.3.圧力計測システムPressureProfileSystems社(米国ロサンゼルス)製DigiTactsTactilePressureSensor(センシング圧力パッド直径10mm)(以下,触覚センサー)を用い,付属インターフェイスボード経由で,付属の専用解析ソフトをインストールしたデスクトップコンピュータ(Presario5000,Compaq,USA)のUSBポートに接続した3)(図1E,F).4.点眼容器押し圧力の計測被検者に本調査の趣旨を十分に説明したのち,4種類の点眼容器の検査順が均等になるように直接検査に参加しないK.Y.により作製されたラテン方格で決定した順に従い(無作為化),各点眼容器について以下の検査を行った.まず検者が点眼容器側面のディンプルの中央に触覚センサーを両面テConclusion:Averagemaximumpressureandaverageeyedrop-releasetimeaffecteyedropcontainerusability.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(7):1050?1054,2011〕Keywords:点眼容器,圧力センサー,使用性.eyedropbottle,pressuresensor,usability.図1点眼容器と押し圧力測定装置A:使用した点眼容器の写真.把持部分の側面にはディンプルが存在する.容器に1/2?2/3の蒸留水を吸引して使用した.B:点眼容器のノズル部分の設計図.ノズル部分の流出孔の直径(矢印)を変化させることで,滴下時間を調整するよう設計されている.C:ノズル部分の先端部の断面.D:滴下時間測定装置(ユニコン,石川県)で滴下時間測定を測定している様子.金属棒(直径10mm)を10Nで押し込み,赤外線センサーによって滴下液が容器から離れる瞬間を感知するようにできている.10N加圧時の滴下時間が0.5秒未満,0.5?1.0秒,1.5?2.0秒,2.0?5.0秒になるよう調節された4種類の点眼容器を準備した.E:押し圧力測定のパッドはディンプルの片方に両面テープで接着した.F:拇指側に押し圧力測定のパッドがくるように2指法で把持し,透明シャーレの上に模擬点眼を行った.1052あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(148)ープ(ナイスタック,ニチバン,東京)で装着し,ノズルが上に向いた状態で被検者の利き手の拇指が触覚センサーにあたるように検者の胸の高さで手渡した.つぎに被検者の利き手側の眼の上に設置した透明シャーレの上まで被検者の点眼容器を把持した手を移動させ,ノズルを真下に向けて,点眼容器の内容液を1滴滴下するように求めた.その後,ノズルを上に向けた後,点眼容器を胸の高さまで戻した.この操作を5回くり返した直後に,その点眼容器の使用感についてのアンケート調査(表1)を行った.5.データの解析点眼容器ごとの加圧開始から滴下までに要した時間の平均値(平均滴下時間)と,拇指にかかった最大押し圧力の平均値(平均最大押し圧力)を被検者ごとに算出した.点眼容器間の比較は対応のあるt検定を,使用感のアンケート調査にはWilcoxonの符号付順位検定を用いた.検定結果はp<0.05の場合,有意であると判定した.使用性へ影響を与える因子の検討には重回帰分析(ステップワイズ法)を使用した.統計的検討はJMPver.7.0.1(SAS,東京)を用いて行った.II結果1.被検者の年齢分布今回の研究に参加した被検者は26?87歳の114名(男性60名,女性54名,平均年齢54.0±16.8歳)でその年齢分布を図2に示す.2.押し圧力の解析4種類の点眼容器の平均滴下時間と平均最大押し圧力の結果を表2に示す.平均滴下時間は容器C(1.6±0.7秒),容器A(1.9±0.8秒),容器D(2.8±0.9秒),容器B(3.5±1.1秒)の順で延長し,すべての容器間で有意差がみられた(対応の30201020~2930~3940~4950~5960~6970~7980~人数年齢(歳)図2被検者の年齢分布表1点眼容器使用感のアンケート調査用紙期(容器記号)第1期()第2期()第3期()第4期()容器の使いよさa:使いたくないb:まあ使えるc:問題なく使える「a:使いたくない」場合の理由(重複選択可)滴下が速すぎる滴下が遅すぎる滴下にむらがある柔らかすぎる硬すぎる滴下に要する時間に関する要望a:速い方がよいb:よいc:遅い方がよい押し圧力に関する要望a:柔らかい方がよいb:よいc:硬い方がよい表24種類の点眼容器の平均滴下時間と平均最大押し圧力の結果容器A容器B容器C容器D平均滴下時間(sec)平均1.93.51.62.8最大4.96.54.95.4最小0.61.50.61.2標準偏差0.81.10.70.9平均最大押し圧力(g/cm2)平均1,2421,7859671,659最大2,0182,1901,6192,020最小5511,036336660標準偏差308225270222(149)あたらしい眼科Vol.28,No.7,20111053あるt検定,p<0.0001).平均最大押し圧力についても同様に容器C(967±270g/cm2),容器A(1,242±308g/cm2),容器D(1,659±222g/cm2),容器B(1,785±225g/cm2)の順で増加し,すべての容器間で有意差がみられた(対応のあるt検定,p<0.0001).3.使用感のアンケート結果4種類の使用感のアンケート調査の結果(表3),容器C,容器A,容器D,容器Bの順で「問題なく使える」が多く,「問題なく使える」,「まあ使える」「使いたくない(3つを纏めたもの)」の3項目でWilcoxonの符号付順位検定を行った結果,すべての容器間で有意差(p<0.05)を得た.個々の被検者における点眼容器ごとの平均最大押し圧力と平均滴下時間と使用感アンケート調査の結果を合わせたグラフを図3に示す.さらにこれら4種類の容器を合わせた結果を図4に示す.図4図3の4種類の点眼容器の平均最大押し圧力と平均滴下時間と使用感アンケート調査を合わせた結果使用感が「問題なく使える」が青色丸,「まあ使える」を黄色丸,「使いたくない」を赤色丸で表した.2,5002,0001,5001,0005000押し圧力(g/cm2)01234567滴下時間(sec)2,5002,0001,5001,0005000押し圧力(g/cm2)01234567滴下時間(sec)容器A2,5002,0001,5001,0005000押し圧力(g/cm2)01234567滴下時間(sec)容器C2,5002,0001,5001,000500001234567滴下時間(sec)容器D押し圧力(g/cm2)2,5002,0001,5001,0005000押し圧力(g/cm2)01234567滴下時間(sec)容器B図3各点眼容器の平均最大押し圧力と平均滴下時間と使用感アンケート調査の結果使用感が「問題なく使える」が青色丸,「まあ使える」を黄色丸,「使いたくない」を赤色丸で表した.表34種類の点眼容器の使用感アンケート調査の結果容器A容器B容器C容器D問題なく使える4616314まあ使える46163538使いたくない(遅すぎる・硬すぎる)1092259使いたくない(速すぎる・柔らかすぎる)92142使いたくない(むらがある)3101無回答0200合計1141141141141054あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(150)4.使用性へ影響を与える因子の検討目的変数を使用感,従属変数を性別,年齢,平均最大押し圧力,平均滴下時間として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.寄与率は平均最大押し圧力が最も大きく(0.2516),平均滴下時間(0.0487),年齢(0.0073)の順になった.III考按今回の検討を通じて,点眼容器から1滴を滴下するための押し圧力と滴下時間とが点眼容器の使用感を規定することが明らかとなった.眼科治療における点眼薬の重要性については言を待たないが,点眼治療のアドヒアランスを高めるうえで,点眼容器の使用感は,点眼回数や点眼時の刺激性とともに,最も重要な因子の一つと考えられる.今回の研究は二重盲検法を採用したため,検者が,どの点眼容器が10N加圧時に何秒必要であるかを知らない状態でデータ解析まで行った.また,検査順により被検者が先に検査した点眼容器により判断が変化する(たとえば,硬い点眼容器のあとに触った点眼容器は柔らかく感じるなど)バイアスを最小限にするため,検査順が平等になるように作製されたラテン方格を使用して無作為化を施した.キーオープンの結果,容器Cは0.5秒未満,容器Aは0.5?1.0秒,容器Dは1.5?2.0秒,容器Bは2.0?5.0秒であることがわかった.同じ点眼容器であっても平均最大押し圧力と平均滴下時間には被検者間で大きなばらつき(図3)があることがわかったが,平均すると(表2)予想どおり,容器C,容器A,容器D,容器Bの順で平均最大押し圧力は増加し,平均滴下時間が延長していることがわかる.先に,筆者らは,上市された8種類の緑内障点眼薬1滴を滴下するための平均最大押し圧力に,731g/cm2から3,544g/cm2までの大きなばらつきがあることを報告した3).さらに,アンケート調査1)においても,点眼薬間の使用感には大きなばらつきがあり,特に,押し圧力が3,544g/cm2であった点眼薬において患者が点眼を不快に感じているという結果を得た.一方,点眼薬使用感のアンケート調査によって評価の高かった点眼薬の場合,一人の被検者による測定で,平均最大押し圧力が1,000g/cm2付近,平均滴下時間が2秒付近であり,この付近の数値において最も使用感の良いものとおおむね予測できる.しかしながら,これらの結果は間接的であり,しかも,容器形状による使用感の差も加わるため,誤差が存在する可能性は否定できない.そこで今回の研究では,容器形状を一定にするなかで,ノズル部分の内径を変化させた容器を特別に準備し,多数のボランティアを用いて,平均最大押し圧力と平均滴下時間の計測と使用感のアンケート調査を行った.その結果,同じ容器形状であっても,個人により,平均最大押し圧力と平均滴下時間にばらつきが存在することが判明した.たとえば,平均最大押し圧力500?1,500g/cm2かつ平均滴下時間1?2秒の条件(図4の青枠で示した領域)において,「問題なく使える」60名(62.5%),「まあ使える」31名(32.3%),「使いたくない」5名(5.2%)となったことから,この領域に至適条件が存在すると考えられるが,一方で,平均最大押し圧力1,500g/cm2以上かつ平均滴下時間2秒以上(図4の赤枠で示した領域)では「問題なく使える」11名(6.2%),「まあ使える」42名(23.7%),「使いたくない」124名(70.1%)となり,この領域に入る点眼薬には改善が必要と考えられる.今回の検討に用いた容器は,ノズル開口部の径以外は同じ形状であり,内容液も蒸留水であったが,点眼薬の平均最大押し圧力と平均滴下時間に関係するパラメータは,薬液の粘性や容器本体の立体的形状,素材の硬さ,ノズル部分の形状など数多く存在するため,理想的な点眼容器の設計は決して単純なものではない.以前,緑内障点眼薬を調査したスタディでは,平均最大押し圧力500?1,500g/cm2かつ平均滴下時間1?2秒の範囲に入っている点眼薬は1種類しかなく3),多くの緑内障点眼薬に改善が望まれた.アドヒアランスを向上させ,点眼治療の効果を発揮させるうえで,点眼容器の設計についても十分に配慮する必要があると考える.文献1)兵頭涼子,溝上志朗,川﨑史朗ほか:高齢者が使いやすい緑内障点眼容器の検討.あたらしい眼科24:371-376,20072)兵頭涼子,林康人,鎌尾知行ほか:プロスタグランジン点眼容器の使用性の比較.あたらしい眼科27:1127-1132,20103)兵頭涼子,林康人,溝上志朗ほか:圧力センサーによる緑内障点眼剤の点眼のしやすさの評価.あたらしい眼科27:99-104,20104)YoshikawaK,YamadaH:Influenceofcontainerstructuresandcontentsolutionsondispensingtimeofophthalmicsolutions.ClinOphthalmol25:481-486,2010***