2020年11月 のアーカイブ

眼内レンズ:白内障手術の術中OCT

2020年11月30日 月曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋小島隆司408.白内障手術の術中OCT慶應義塾大学医学部眼科学教室,中京眼科術中COCTは,眼科顕微鏡手術では得られない断面の情報を術者に提供可能である.白内障手術においても,後.と眼内レンズの位置関係,前部硝子体,角膜と舞い上がる核片の位置関係,切開創の閉鎖状態などが把握可能である.手術のアシストだけでなく,教育や手術手技そのものを再評価することにも有用である.●はじめに眼科手術は,手術顕微鏡で立体視して行うが,眼球組織は透明組織が多いため,立体的な把握は各組織の形状把握から行っていることが多い.たとえば角膜は非常に透明性の高い組織であるが,術者はその全体を立体的に見ているわけではなく,これまでの経験,角膜径,虹彩との位置関係から,角膜内皮面がどの位置にあるかを把握しているにすぎない.近年開発され臨床応用されている術中光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)は,リアルタイムに術中の眼球組織の断層像を術者に示すことが可能である.また,術中COCTはCheadsCupsurgeryとの相性がよいことも特徴である.術中OCTがなくても白内障手術はもちろん可能であるが,筆者が導入して使用してみたところ,白内障手術を再評価するという観点で非常に有用性を感じたため,今回まとめて報告する.C●白内障手術中の後.と眼内レンズの評価後発白内障の予防には,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)と後.の接着が重要であり,その際にCIOLのCsharpedge形状が重要であることはCNishiらの精力的な研究によって明らかになっている1).手術直後に術中COCTを用いてCIOLと後.の位置関係を調べた既報2)によると,後.とCIOL中心部が接触していない症例が87.1%,IOLエッジと後.が接触していない症例がC42.5%と,多くの症例が手術直後は後.とCIOLが接触していないことがわかる.筆者らは手術後に眼圧を調整する際に,術中COCTで観察を行った(図1).その結果,眼圧を高くすると水晶体.が膨らみCIOLとの接触がなくなり,眼圧を下げると水晶体.と接触することが確認できた.現在,多くのCIOLがCsharpedge形状であるが,後発白内障はある程度の割合で発生している.後.とIOLの接触は術後経過とともに形成されるため,手術後早期から確実に接触するようなCIOLデザインが必要か(89)もしれない.C●前部硝子体の評価前部硝子体は,水晶体後面にCWieger’sligamentで接着しており,加齢とともにこの部分が.離する場合がある.術中COCTでは,この部分の観察が可能となり,水晶体のさらに後ろの部分に線状の構造物として認識できる(図2).前部硝子体.離や前部硝子体膜の破損は,白内障手術中の房水が硝子体腔へ流入しやすくなり,後.の不安定化やCinfusionCmisdirectionsyndromeのリスクとなる.現在の術中COCTでは詳細な観察はむずかしいが,今後解像度や撮影深度に改善があれば,そのようなリスクを予測可能になるかもしれない.C●超音波乳化吸引術中の前房内の評価筆者は超音波乳化吸引術(phacoemulsi.cationCandaspiration:PEA)中は,水晶体に顕微鏡の焦点を合わせているため,舞い上がる核片が前房内でどのような位置にあるかを十分に把握しきれていないことを,術中OCTを使用して再認識した.術中COCTの焦点を角膜内皮面側に合わせてCPEAを行うと,自分が思ったより核片が角膜内皮面に近い位置に来ている場合が確認された(図3).実際に手術する際は,PEAを行いながら術中COCTを確認することは難しいため,将来自動で核片を認識してアラートを出せるようなシステムが構築できれば,白内障手術はより安全になると思われる.C●角膜切開創の評価角膜切開創の確実な閉鎖は,術後感染予防,惹起乱視のコントロールのために重要である3).通常の手術時は,上方から確認するのみであるため切開創がどのような形状になっているのか把握することは困難である.術中OCTを用いると切開創に貯留した水まで観察が可能である(図4).また,筆者は自己閉鎖を得るためにCS字状に断面を切開するようにしているが,それができていあたらしい眼科Vol.37,No.11,2020C14210910-1810/20/\100/頁/JCOPY図1眼圧の調整前後でのIOLと後.の位置関係の変化眼圧が高い状態ではほとんどCIOLと後.は接触していないが,眼圧が下がると.はCIOLに接触するようになる.図3術中OCTで確認できる水晶体核片手術顕微鏡では少し前房に上がってきた感覚はあったが,術中OCTで確認すると,ほとんど角膜内皮に当たる寸前であった.るかどうかも確認できる.切開トンネル長もあとでビデオから測定も可能で,手術教育にも有用と思われる.文献1)NishiCO,CNishiK:PreventingCposteriorCcapsuleCopaci.ca-tionCbyCcreatingCaCdiscontinuousCsharpCbendCinCtheCcap-図2術中OCTで確認された前部硝子体膜sule.JCataractRefractSurgC25:521-526,C19992)LytvynchukCLM,CGlittenbergCCG,CFalkner-RadlerCCICetal:EvaluationCofCintraocularClensCpositionCduringCphacoemulsi.cationCusingCintraoperativeCspectral-domainCopticalCcoherenceCtomography.CJCCataractCRefractCSurgC42:694-702,C20163)WallinT,ParkerJ,JinYetal:Cohortstudyof27casesofCendophthalmitisCatCaCsingleCinstitution.CJCCataractCRefractSurgC31:735-741,C2005

コンタクトレンズ:ハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識 フルオレセインパターンによる判定(1)

2020年11月30日 月曜日

・・提供コンタクトレンズセミナー今だからハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識小玉裕司小玉眼科医院6.フルオレセインパターンによる判定(1)■はじめに前回までのセミナーで述べた内容に沿ってハードコンタクトレンズ(HCL)のサイズ,ベースカーブ(basecurve:BC)を選定したあとは,トライアルレンズを装用させて,そのフィッティングをフルオレセインパターンによって判定する.フルオレセインパターンとは,レンズとレンズの間隙に貯留する涙液を染色することによって生じるレンズ中央部と周辺部のフルオレセイン濃度の様相をいう.フルオレセインパターン判定というと,このフルオレセイン濃度の様相によるチェックのみととらえられがちであるが,それと同時にレンズの動きと静止位置,ベベル幅,エッジの浮き上がりなどもチェックしなければならない.■レンズの動きと静止位置瞬目によるレンズの動きはさまざまである.いくつかのパターンを図1に示す.瞬目によって上方に引き上げられたレンズが,上眼瞼の影響を離れてゆっくり下方に下がってきて中央に静止する緩徐下降型が望ましい動きであり,このようなパターンを示すときがもっとも装用感もよい.このような動き方を「スムース」とよぶ.側方蛇行型や急速落下型は,BCがフラット過ぎたりベベル幅・エッジの浮き上がりが大きすぎたりした場合に生じ「ルーズ」とよばれる.ただし,ベベル幅・エッジの浮き上がりが小さすぎ,角膜への機械的刺激による流涙で急速落下型を示すこともあるので注意を要する.時間の経過により,このような場合は下方微動型を示すことになる.上方微動型,下方微動型,中央微動型はいずれも「タイト」とよばれる.上方微動型は上眼瞼のレンズを引き上げる力が強すぎて生じる場合が多い.フロント周辺部が薄いレンズに変えるか,プラスキャリアカーブを施したレンズを採用する.下方微動型は上眼瞼のレンズを引き上げる力がたりないか,前述したようにレンズのベベル・エッジデザインの不一致によって生じる.前者ではマイナスキャリアカーブを施したレンズを採用するか,修正が可能なレンズであればあらかじめM-Z加工を施してもらう(図2).後者ではベベル幅・エッジの浮き上がりが適度なレンズに変更する.■角膜曲率半径とHCLのBCとの関係角膜曲率半径とHCLのBCとの関係を表す用語として「パラレル」「フラット」「スティープ」がある.角膜曲率半径とBCが平行関係にある場合を「パラレル」(図3),角膜曲率半径のほうがBCよりも小さい場合を「フ1.緩徐下降型2.側方蛇行型3.急速落下型4.上方微動型5.下方微動型6.中央微動型図1瞬目によるHCLの動きのシェーマ(87)あたらしい眼科Vol.37,No.11,202014190910-1810/20/\100/頁/JCOPY図2M.Z加工a:レンズの最周辺部に溝が見える.b:模式図.HCL周辺部のフロント側に溝をつける.その溝に溜まる涙液による表面張力を利用して,上眼瞼によるレンズの引き上げ効果を増大させる.図3パラレル角膜曲率半径とHCLのBCが平行関係となり,全体が均一に染まる.図4フラット角膜曲率半径がBCよりも小さい場合,中央部が薄くて周辺部が濃く染まる.図5スティープ角膜曲率半径がBCよりも大きい場合,中央部が濃くて周辺部が薄く染まる.ラット」(図4),角膜曲率半径のほうがBCより大きい涙液が均一に,フラットでは中央部が薄くて周辺部が濃場合を「スティープ」(図5)とよぶ.く,スティープでは中央部が濃くて周辺部が薄く染ま角膜とHCLの間隙に貯留した涙液がフルオレセインる.によって染色されているので,パラレルではHCL下の

写真:角膜に侵入した結膜内に形成された封入嚢胞が疑われる病変

2020年11月30日 月曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦438.角膜に侵入した結膜内に形成された千森瑛子京都府立医科大学大学院封入.胞が疑われる病変医学研究科視覚機能再生外科学京都山城総合医療センター横井則彦京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図2図1のシェーマ①血管侵入および.胞性病変を伴う侵入結膜図1初診時前眼部所見角膜鼻側に侵入した結膜を認め,その内部に多房性の.胞性病変を認める.図3フルオレセイン染色下での前眼部所見(ブルーフリーフィルターを用いた観察).胞性病変の結膜表面に,瞬目摩擦によって生じたと考えられる点状表層上皮障害を認めた.図4前眼部光干渉断層計所見角膜に接する部位に,明瞭に輪郭を明瞭に追うことができる一塊の.胞性病変が観察され,その内腔は顆粒状の高反射を示す.結膜封入.胞に特徴的な所見である.(85)あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020C14170910-1810/20/\100/頁/JCOPY症例は42歳の女性.近医を受診した際に左眼の隆起性病変を指摘され,当科を紹介受診した.初診時の細隙灯顕微鏡検査で,左眼の角膜鼻側に結膜侵入を認め,その直下に多房性の.胞性病変を認めた(図1,2)..胞性病変の表面の結膜上皮には,フルオレセイン染色で,瞬目摩擦によって生じたと考えられる点状の表層上皮障害を認めた(図3).前眼部光干渉断層計(ante-riorCsegmentCopticalCcoherencetomography:AS-OCT)にて角膜に接する部位に明瞭に輪郭を追うことができる一塊の.胞性病変が観察され,その内腔は顆粒状の高反射を示し(図4),結膜封入.胞に特徴的な所見1)であった.受診の時点ではとくに自覚症状を認めなかったため,経過観察となった.結膜.胞は封入.胞,リンパ.胞,貯留.胞に分類され,なかでも封入.胞の頻度が高い.封入.胞は,一般に球結膜にみられる半透明でドーム状の隆起性病変であり,発症契機として外傷や手術後があげられているが,原因の明らかでない特発性のものも多い2)..胞壁は平滑で薄く,病理組織学的には結膜上皮に由来すると考えられる非角化上皮から構成され,PAS(periodicCacidSchi.)染色で陽性を示す杯細胞が含まれ,内容物としてはケラチンおよびムチンを含むことが報告されている3).発症部位は球結膜の鼻側に多いとされるが4),今回の症例では角膜の鼻側に侵入した結膜内に存在した.確定診断は病理組織学的に行われるが,非侵襲的な鑑別診断法としてCAS-OCTが有用で,リンパ.胞では.胞内は低反射であるのに対して,封入.胞では.胞内に顆粒状の高反射がみられ,しばしば.胞壁の輪郭を追うことができる1).結膜.胞は一般に,症状がなければ経過観察でよいが,異物感や流涙などの症状がある場合は治療の対象となり,点眼治療を試みても効果がない場合,あるいは整容上の問題を訴える場合は外科治療の対象となる..胞を穿刺し内容物を排出する結膜.胞穿刺は,外来で簡便に行うことができるが,被膜が残存していると数日で再発するという報告があり5),再発すると周辺組織との癒着のため摘出しにくくなる可能性があるため,最初から被膜を残さないように全摘出することが推奨されている4).また,封入.胞では周辺組織との癒着がなければ.胞を一塊として摘出しやすいが,リンパ.胞や貯留.胞では一塊に摘出することは困難であり,外科治療の方法が異なるためその鑑別は重要である.今回の症例では,.胞が角膜上に存在しており,一般的な結膜.胞とは異なる病変とも考えられたが,特徴的なCAS-OCT所見から結膜封入.胞がもっとも疑われ,今後,外科治療が必要となった場合でも,術式を選択するうえで参考になると考えられた.文献1)寺尾信彦,横井則彦,丸山和一ほか:前眼部光干渉断層計を用いた結膜封入.胞の観察と治療.あたらしい眼科C27:C353-356,C20102)横井則彦:結膜リンパ拡張症と結膜.胞.あたらしい眼科C33:1607-1608,C20163)GrossniklausCHE,CGreenCWR,CLuckenbachCMCetal:Con-junctivalClesionsCinadults:ACclinicalCandChistopathologicCreview.CCorneaC6:78-116,C19874)山田桂子,横井則彦,加藤弘明ほか:結膜封入.胞の臨床的特徴と外科的治療についての検討.日眼会誌C118:652-657,C20145)ChanCRY,CPongCJC,CYuenCHKCetal:UseCofCsodiumChyal-uronateandindocyaninegreenforconjunctivalcystexci-sion.CJpnJOphtalmol53:270-271,C2009

治療用としてのソフトコンタクトレンズの選択

2020年11月30日 月曜日

治療用としてのソフトコンタクトレンズの選択SelectionofSoftContactLensesforTherapeuticUsage土至田宏*はじめにコンタクトレンズ(contactlens:CL)の装用の主目的は視機能改善であり,今回の特集で触れられている多くの特殊CCLの装用目的も同様である.しかし,多岐にわたるCCLの適応の中には,少数ながら視機能改善目的ではないものもある.医学的理由での最たるものが治療用としてのCCL装用である.歴史をひもとくと,まだ視機能改善目的のCCLなどが存在しなかったC1583年に,瞼球癒着を防止するために前眼部を形どった形状のリード板を角膜上に装用するアイデアがすでに存在しており,1857年には義眼レンズにとって代わっていることから,CLの元祖は治療目的であったともいえる1).今では治療を目的とした装用は治療目的装用やメディカルユースなどとよばれるが,その期待されるおもな効果は,バンテージ効果による眼表面の保護,涙液の保持や蒸発抑制,角膜バリア機能の補.,摩擦軽減などである2,3)(表1).現在,日本国内で入手可能な治療用CCLは,円錐角膜用のハードコンタクトレンズ(hardCcontactlens:HCL)や輪部支持型CHCLを除くとソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)のみであり,銘柄も限定される.その少ない選択肢の中からの選択法と実際について解説する.CIわが国における治療用CLの系譜現在,普及しているCCLの基礎となったのは,1951表1治療用としてのCL装用の目的年に日系米国人のCWesleyが開発したCpolymethyl-methacrylate(PMMA)素材のCSpericonlensで,これが現在に至るCHCLの始まりであった.HCLはその後,酸素透過性CHCLに置きかわり,1970年代にはCSCLも登場,1990年代には使い捨てCSCLが出現し,2005年以降はシリコーンハイドロゲルレンズと共存しているというのが,通常の視力矯正用CCLの流れである.治療用CLもこの流れとともにある.特殊なCHCLを除けばSCLが主で,角膜保護や疼痛軽減などが主目的であるため,連続装用が原則となる.治療用の従来型CSCL,1週間使い捨てCSCL,通常のクリアレンズのC1週間使い捨てCSCLの代用を経て,治療用としての承認も受けたシリコーンハイドロゲルレンズへと至っている.CII現在入手可能な治療用SCL上記の流れのなかで,すでに終売となってしまったも*HiroshiToshida:順天堂大学医学部附属静岡病院眼科〔別刷請求先〕土至田宏:〒410-2295静岡県伊豆の国市長岡C1129順天堂大学医学部附属静岡病院眼科C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(79)C1411のも多く,かつて主流の時代もあった治療用の従来型SCLはすでにない.1週間使い捨てCSCLのうち登場から終売までがわずか数年であったものもある.治療用として承認されたCSCLのうち,現在流通しているのは以下のC2種である.C1.メダリストプラス(治療用)(ボシュロム)ボシュロム社はCpolymaconのメダリストプラス・シリーズの一つとして,度数のないプラノレンズを治療C1週間連続装用CSCLとして発売している.使い捨てレンズは通常,1箱に複数枚セットされているのに対し,このレンズはC1枚単位で用意されており,必要な時に必要なだけ処方できるよう配慮されている.C2.エアオプティクスExアクア(日本アルコン)わが国初のシリコーンハイドロゲルレンズであった2005年登場のClotra.lconB製「OC2オプティクス(旧チバビジョン)」は,現在は「エアオプティクスCExアクア」(日本アルコン)に引き継がれている.当初は通常の視力補正用としての承認のみであったが,OC2オプティクス時代のC2011年C11月に使用目的・効果として「角膜疾患眼の視力補正能も付帯する治療用」が追加承認されたことは,わが国における治療用CSCLの新たな時代の幕開けともいってよいくらいに,われわれの眼科診療に大きな恩恵をもたらした.つまり,①酸素透過性の高いシリコーンハイドロゲル素材であること,②ベースカーブがC8.4CmmとC8.6CmmのC2種類が用意されていること,③恐らくメーカーとしては利益に結び付きにくいであろう治療用CCLが登場と終売を繰り返してきた中で,通常のクリアレンズと同じものを治療用として追加承認を得ることで,安定した供給が見込め,当面の間は流通が継続するであろうこと,以上の点から大きな期待が寄せられた.添付文書には,その原理として「創傷部位が保護されることで,疼痛が軽減されて修復・治癒が促進される.また,前房の穿孔部位を封鎖することで,前房形成や前房水漏出防止に寄与する」との記載があり,また警告の項には「治療用として試用する場合は,眼科医の管理のもとで適切に使用してください」と追記されている.余談であるが,筆者は上記の治療用としての追加承認前に倫理委員会承認下で臨床研究を行い,その安全性と有効性を確認,対象症例中に重大な問題点は認めなかったという成果も追加承認に貢献した作業の一つであったものと思われ,個人的にも愛着のあるレンズである.しいてデメリットをあげるとすれば,シリコーンハイドロゲル素材ゆえに硬いことによる若干の使いにくさや,後述する合併症発生の可能性などである.CIII治療用CL処方の実際1.1週間使い捨てSCL使い捨てレンズは従来型CSCLに比べて価格も抑えられ,枚数も多く入手可能であることから,治療用のもの以外にも度数の低いものが頻繁に「代用」された時代があった.筆者らは既報4)で,1週間連続装用CSCLの装用期間を厳密に管理することでC10年の調査期間中に重篤な眼合併症を認めなかったことを報告している.しかし,現在も残るC1銘柄はC1カーブのみであるため,フィッティング状態が好ましくない場合は他の製品に変更しなければならない.近年は次に示すような,より酸素透過性の高いシリコーンハイドロゲル素材のレンズが治療用としても追加承認されたことで,おもな処方はそちらにシフトしている.C2.シリコーンハイドロゲルレンズ「エアオプティクスCExアクア」は,その髙酸素透過性,安全性からおそらく治療用CSCLとして現在誰もが第一選択として思い浮かぶレンズといっても過言ではなかろう.筆者は実際に,角膜移植術後,帯状角膜変性に対する治療的角膜切除術後,遷延性角膜上皮欠損,角膜穿孔など,多岐にわたる角膜疾患を対象に治療用として用いている.経験的にはまずベースカーブC840Cmmのものを選択することが多く,フィッティング状態が不良の場合には860Cmmに処方交換している.このレンズに限らず,角膜形状異常眼や眼瞼異常を伴う症例などでは既報5)のごとくレンズ脱落が多い.合併症としては,筆者らはシリコーンハイドロゲル素材の硬さに起因すると思われる非典型的マイクロシスト1412あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020(80)図1シリコーンハイドロゲルレンズ装用中にみられた図2シリコーンハイドロゲルレンズの治療用としての非典型的マイクロシスト装用中にみられた非典型的ムチンボール通常のムチンボールと比べて巨大である.~~図3重度のびまん性点状表層角膜症の初診時所見(右眼)角膜全体に蛍光色素染色を認めた.視力=0.08(0.15C×sph+3.00D(cyl-2.00DCAx80°)図5図3と同一症例の治療用としてシリコーンハイドロゲルレンズ装用後の蛍光色素染色像角膜の蛍光色素染色は改善し,下方の一部に限局するのみとなった.図4図3と同一症例のシリコーンハイドロゲルレンズ装用中の前眼部所見角膜下方に楕円形の上皮下混濁を認めたが,それ以外は透明性を維持している.視力=(0.8C×CL)図6犬用バンデージコンタクトレンズ「わんタクト」(シード社)のパッケージ表2犬の角膜保護用コンタクトレンズ「わんタクト」の使用目的と効果図7猫用バンデージコンタクトレンズ「にゃんタクト」(シード社)のパッケージ図8犬用バンデージコンタクトレンズ「わんタクト」(シード社)のブリスターパック

ピギーバックレンズシステムに使用する使い捨てソフトコンタクトレンズの選択

2020年11月30日 月曜日

ピギーバックレンズシステムに使用する使い捨てソフトコンタクトレンズの選択ChoiceofDisposableSoftContactLensesforPiggybackLensSystemUse佐野研二*藤田博紀**はじめに本稿で述べるピギーバックレンズシステム(piggy-backlenssystem:PBLS)とは,一般的に円錐角膜(図1)を初めとする角膜形状異常眼に対して,ソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)の上からハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)を処方する手法である(図2).HCL単独装用時に繰り返す角膜上皮障害や痛みによって,レンズが装用できない状態,すなわち,角膜形状異常眼におけるHCL不耐症が適応となる(図3).文献的にはSCLが登場して間もない1973年にBaldone1)がこれについて初めて記載している.その後,角膜上皮障害眼にSCLは禁忌であったことや,当時の低含水SCLが角膜形状異常眼にフィットしにくいこと,またSCLが十分な表面張力が得られず重ねたHCLがよく脱落し,取扱いも煩雑なことなどから普及に至らなかった2,3).こうしたPBLSの弱点を一気に解決してくれたのが使い捨てSCL(disposableSCL:DSCL)の登場である.清潔でフリーサイズ的な高分子デザインを受けたフレキシビリティに富む高含水レンズは,円錐角膜によくフィットし,当時,東京医科歯科大学で円錐角膜外来の担当であった筆者らは,ただちにDSCLをPBLSのキャリアーレンズ(HCLの下に敷くSCL)として導入し,良好な結果を得てきた4~7).ここではPBLSに使用するキャリアーレンズ,すなわちDSCLの選択の方法について解説する.IDSCLをPBLSに応用することのメリットDSCLはモールド製法やスピンキャスト製法といったSCLの大量生産技術を背景に登場した.このDSCLをHCLによって傷ついた円錐角膜上皮表面に装用させることで,下記のようないくつかのメリットがもたらされる.まず,使い捨てを前提に設計されたDSCLは安価で清潔なバンデージレンズとしての効果が期待でき,角膜上皮障害眼にも比較的抵抗なく使用できる.そして,DSCLはフリーサイズ的に高分子デザインが施されているため,その高いフレキシビリティから角膜形状異常眼にもよくフィットする.さらに,高含水または高親水性表面のDSCLは短期使用を前提としており,その期間内であればHCLが脱落しないだけの表面張力を保つことができる.DSCLの先駆けとなったジョンソン・エンド・ジョンソン社の「アキュビュー」シリーズの材料であるeta.lconAは,主材料が,2-ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体であり,イオン性で中性域での負の帯電による反発によりフレキシビリティと含水率を高め,さまざまな角膜形状へのフィッティングを容易にした画期的な材料であるが,これは同時に円錐角膜のような角膜形状異常眼に対してもフィットする可能性が高い材料だともいえる.DSCL材料は,シリコーンハイドロゲルなどの高酸素*KenjiSano:あすみが丘佐野眼科**HirokiFujita:藤田眼科〔別刷請求先〕佐野研二:〒267-0066千葉市緑区あすみが丘1-1-8あすみが丘佐野眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(71)1403図1円錐角膜図2ピギーバックレンズシステム非炎症性の角膜形状異常疾患である.良好な視力補正には清潔でやわらかい使い捨てSCLの上にHCLを装用させ硬質材料のコンタクトレンズが必須となるが,その角膜形て,HCLによる円錐角膜への機械的ストレスを軽減させ状からオキュラーサーフェスの角結膜上皮障害を起こしやる方法である.すい.--図3円錐角膜における角膜上皮障害円錐角膜の視力補正にHCLは必須であるが,処方を変えてみても,レンズのメカニカルストレスによって起きた傷(角膜上皮障害)による痛みで,HCL不耐症となるケースはある.図4各種SCL材料と弾性率eta.lconAは,主材料がC2-ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体であり,イオン性で中性域での帯電による反発によりフレキシビリティと含水率を稼ぎ,さまざまな角膜形状へのフィッティングを容易にした画期的な材料であるが,これは同時に円錐角膜のような角膜形状異常眼に対してもフィットする可能性が高い材料だともいえる.DSCL材料は,シリコーンハイドロゲルなどの高酸素透過性材料の登場により高性能化が図られてきたが,弾性率の低さでは,いまだにCeta.lconAを超えるCSCL用高分子材料はない.(文献C8より引用)-=(分)35NS30(p=0.370)NS25NS(p=0.526)2013.3±6.615n=611.1±5.2n=51050涙液交換半減期DSCLPLSPLS(HCL8.5)(HCL9.0)図5DSCL単独装用時とPBLS装用時の涙液交換半減期DSCL単独装用時と比べて,直径C8.5CmmとC9.0CmmのCHCLを上から載せた場合の角膜上の涙液交換率に有意差がないことがわかる.表1PBLS装用前後の円錐角膜内皮No観察期間(年)装用前装用後平均細胞面積(CμmC2)CV値平均細胞面積(CμmC2)CV値C1C1C428±145C2C1C371±111C3C1C354±156C4C1C383±164C5C2C333±130C6C2C314±95C7C2C384±123C8C2C353±129C33C348±133C38C29C360±132C36C44C401±156C38C42C424±208C49C39C364±114C31C30C276±138C49C32C338±139C41C36C346±132C381年以上可能であった円錐角膜において,角膜中央部における内皮の平均細胞密度と平均変動係数(CV値)に有意な変化は認めなかった.図6刻々と変わる見かけ上の円錐角膜形状左から右に向かって,装用期間とともにマイヤーリング像が変化している.図7コニコイド曲線円錐角膜の断面形状を最小二乗法により,コニコイド曲線へ近似させると,Q値(非球面値)とCR値(中心部の角膜曲率)が得られる.ここでCQ値は離心率の二乗にマイナスをつけたものと一致する.C0-1-2-3-4withoutDSCLQ値withDSCL7006005004003002001000.HCL単独.装用(1年間)図8HCL単独装用時とPBLS装用時における角膜形状変化縦軸CIndexKは,円錐角膜断面形状をコニコイド曲線に近似したときの離心率の二乗を,近似した曲線の角膜中央部の曲率で割り,10C3をかけたもの.PBLS装用C1年間の変化量は,少なくともCHCL単独装用時のそれに匹敵する.C8.58.07.57.06.56.05.55.04.5withoutDSCLwithDSCLR値IndexK.ピギーバック.レンズ装用(1年間)図9円錐角膜にDSCLを載せた前後の表面形状変化円錐角膜C9眼にCeta.lconA製のワンデーアキュビューモイスト(-0.50D)を載せた上から角膜形状変化をみたものであるが,Q値は球面に近づきCR値は大きくなっている.図10弾性率の高いDSCLは円錐角膜形状にフィットしにくいレンズのフレキシビリティが低いレンズでは,このように初めから円錐角膜形状にフィットせず,周辺部が浮いてしまうので除外したほうがよい.-

強度乱視眼へのハードコンタクトレンズの選択

2020年11月30日 月曜日

強度乱視眼へのハードコンタクトレンズの選択SelectionofMulticurveRigidGas-PermeableHardContactLensesforEyeswithHighAstigmatism岩本菜奈子*柳井亮二*はじめに乱視はかすみ目や視力低下の原因となったり,頭痛や不定愁訴を引き起こしたりするため,乱視の程度に合わせて適切に矯正する必要がある.軽度から中等度の乱視は眼鏡やトーリックソフトコンタクトレンズ(softcon-tactlens:SCL),ハードコンタクトレンズ(hardcon-tactlens:HCL)で矯正できる.しかし,角膜形状の異常を伴う強度乱視例ではHCLが適している.本稿では,強度乱視の原因と程度に合わせたHCLの選択方法について,症例を提示しながら概説する.I乱視の原因と矯正方法乱視は,眼の経線方向によって屈折力が異なることにより,外界の1点から出た光が眼内で1点に結像しない状態を表す.屈折力が強い強主経線が垂直方向の直乱視,強主経線が水平方向の倒乱視,強主経線が斜め(0°または90°以外)の斜乱視に分類され,円柱レンズで矯正可能な例は正乱視となる.乱視は角膜の形状異常や水晶体の曲率により生じ,正乱視では眼鏡やトーリックSCLによる矯正が可能である(表1).乱視の原因は,1)円錐水晶体や白内障,水晶体亜脱臼などの水晶体由来,2)特発性および円錐角膜やペルーシド角膜変性症などによる拡張性角膜疾患,角膜に対する外傷や手術後の角膜由来の場合がある(表2).水晶体由来の場合は,眼鏡やトーリックSCLによる矯正が困難な例では水晶体再建術が必要となる.角膜由来の強度乱視の場合は角膜形状に異常があることが多く,マイヤーリング像の不整がみられたり,角膜形状解析では非対称成分や高次収差成分の増加がみられたりする(図1).角膜形状装置がない場合には,ピンホールやHCL表1乱視の矯正方法と適応矯正方法程度適応長所短所水晶体乱視不正乱視の視力補正眼鏡軽度角膜乱視長時間の装用が可能は困難トーリックSCL軽度.中等度水晶体乱視>角膜乱視装用感使い捨ても選択可能瞬目による軸ずれCLHCL軽度.強度角膜乱視>水晶体乱視不正乱視,強度乱視にも矯正効果あり水晶体乱視の矯正効果が弱いHCL装用困難術後管理が必要手術角膜移植な円錐角膜疾患の治療術後の不正乱視*NanakoIwamoto&*RyojiYanai:山口大学大学院医学系研究科眼科学〔別刷請求先〕岩本菜奈子:〒755-8505山口県宇部市小串1-1-1山口大学大学院医学系研究科眼科学0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(61)1393表2不正乱視を引き起こす疾患原発性・角膜実質の菲薄化円錐角膜ペルーシド角膜辺縁変性後部円錐角膜球状角膜・角膜径の異常巨大角膜小角膜続発性・角膜瘢痕角膜外傷後手術後角膜移植術後屈折矯正手術後白内障術後・周辺部角膜変性・翼状片円錐水晶体白内障水晶体亜脱臼図1角膜由来の強度乱視例深層層状角膜移植後.非対称成分の増加と高次収差を認める.780820直乱視aツインベルⅡオプティカルゾーンbツインベルⅡベベルトーリックcツインベルレーザービジョンコレクション図3角膜形状異常に対応できる特殊な形状のHCLa:ツインベルII(TB-II)は中央部のオプティカルゾーンの周辺に第1中間カーブ(IC1),第2中間カーブ(IC2),周辺カーブ(PC)がデザインされている.b:ツインベルIIベベルトーリックはオプティカルゾーンのデザインはTB-IIと同じだが,第1,第2中間カーブおよび周辺カーブのベベル部分のみが弱主経線方向と強主経線方向でトーリックになっている.c:ツインベルレーザービジョンコレクションは基本的なデザインはTB-IIと同様だが,第1中間カーブの曲率半径をBCより小さくすることで,レンズのサグを深くなるデザインである.図4角膜穿孔および外傷性白内障に対する角膜縫合術+超音波乳化吸引術後(9歳,男児,右眼)角膜縫合()の部位は,フォトケラトスコープではマイヤーリング像のゆがみ,不整を認める().球面HCL(マイルドCII,サンコンタクトレンズ,BC8.00Cmm,サイズC8.8Cmm,溝[MZ]加工)を処方した.レンズのセンタリングは良好で,角膜中央部のアライメントも適切である.(文献C8より許可を得て転載)図5角膜ヘルペス後の角膜白斑に対する全層角膜移植術後(32歳,男性)フォトケラトスコープでは角膜中央部のマイヤーリング像は正円が保たれているが,縫合部より周辺ではマイヤーリング像は乱れている().ツインベルCII(BC8.60mm,サイズC10.0mm)を処方した.角膜中央部,周辺部ともに安定したフィッティングが得られている.角膜の凹凸の動きに合わせて涙液貯留がみられ,瞬目によって良好な涙液交換を認めた.図6円錐角膜に合併した感染性角膜潰瘍の瘢痕治癒後(73歳,男性,左眼)角膜中央部は突出しているが,瘢痕治癒部は平坦化し,角膜の混濁も残存している.フォトケラトスコープではマイヤーリング像は角膜中央部で狭く,周辺部で広く楕円を呈している.さらに,瘢痕治癒部にマイヤーリング像の乱れを認める().ツインベルCIIベベルトーリック(ベースカーブC7.20mm,サイズ9.3Cmm)を処方した.レンズのセンタリングは良好で,ベベル幅は適切に保たれている.図7円錐角膜に対する全層角膜移植後(49歳,男性)フォトケラトスコープでは角膜中央部の形状は保たれているが,縫合部より周辺は急峻な形状がみられ,マイヤーリング像は乱れている().ツインベルレーザービジョンコレクション(BC8.60mm,サイズ10mm)を処方した.レンズのセンタリングは良好で,角膜周辺部のレンズの浮き上がりもみられない.表3角膜乱視に対するHCLの選択例角膜形状CHCLデザイン適応特徴球面軽度の角膜正乱視乱視が強くなるとセンタリングが不安定になり,見え方が不安定になる正常トーリック中等度の角膜正乱視センタリング,見え方は安定しやすい乱視が強くなると装用感が悪くなるCBT中等度の角膜正乱視センタリング,見え方は安定しやすい球面軽度.中等度の不正乱視センタリングが困難となりやすいC異常LASIK後角膜外傷後角膜移植後円錐角膜TB-II角膜周辺部と角膜中央部形状差が軽度である症例によい適応球面CHCLとは異なるフィッティングパターンであるセンタリングが改善するCBT角膜周辺部の高度乱視ベベル部の涙液が安定し,装用感が改善するCペルーシド周辺部角膜変性LVCオブレート形状の楕円形状角膜中央部がフラットで,周辺部に比べが突出している形状センタリングが改善する

ハイドロゲルコンタクトレンズかシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズか

2020年11月30日 月曜日

ハイドロゲルコンタクトレンズかシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズかHydrogelSoftContactLensorSiliconeHydrogelContactLens?樋口裕彦*はじめに1998年に世界で初めて登場したシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(siliconehydrogelcontactlens:SHCL)は,疎水性・高酸素透過性のシリコーンポリマーと含水ポリマーであるハイドロゲル(hydro-gel)を,透明性を損なわないようにミクロの単位で混合した素材を用いたソフトコンタクトレンズ(softcon-tactlens:SCL)である.日本では2004年に1カ月交換タイプのSHCLの発売が開始され,その後2007年には2週間交換タイプと1週間連続装用タイプ,2010年には1日使い捨てタイプの発売が開始された.近年SCL処方のうちSHCLの占める割合は世界(図1)でも日本(図2)でも増加傾向にある1).当院での処方内容を調べてみると,2013年には1日使い捨てタイプのなかでSHCLの占める割合は13%であったが2019年には40%まで増加している.また,2週間交換タイプでは,2013年の時点でSHCLの占める割合はすでに87%であり,2019年にはほとんどすべての処方が,SHCLによって占められている(図3).ISHCLの長所と短所従来型の素材であるハイドロゲルコンタクトレンズ(hydrogelcontactlens:HyCL)では,ポリマー部分のガス透過性が低く,酸素透過性はポリマーに含有された水分を通して得られていた.したがって含水率が高いほど酸素透過係数(Dk値)は上昇するものの,その上限は水の酸素透過係数である80×10-11(cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)を超えることは不可能であった.しかも一般的には含水率が高いレンズは乾燥の影響を受けやすいことが多く,酸素透過性のよさと乾燥に伴う装用感の悪化の防止を両立することがむずかしかった.SHCLはシリコーンポリマー自体が非常に高いガス透過性を有するため,HyCLとは逆に含水率が低いほど酸素透過係数は上昇し,乾燥の影響も受けにくくなる.高酸素透過性と,一般的にではあるが乾燥感の少なさが期待できるところがSHCLの最大の長所である.このほか,蛋白質汚れが付着しにくい2)こと,形状保持性がよいことなどがSHCLの長所といわれている.一方でSHCLの短所もいくつか知られてきている.高い酸素透過性を求めて含水率を低くすると,レンズ素材のモデュラス(弾性率)が上がる傾向がある.すなわち硬くなる傾向があり,硬さに由来するといわれている装用感の悪化やムチンボールの発生,角膜上方周辺部の弧状角膜上皮障害であるsuperiorepithelialarcuatelesions(SEALs),コンタクトレンズ関連乳頭結膜炎(contactlensrelatedpapillaryconjunctivitis:CLPC)などが起こりやすくなる3).このほか,レンズの種類によってはアカントアメーバや細菌が付着しやすい4,5)こと,ケア用品との相性により角膜ステイニングとよばれる現象が発生する6,7)こと,化粧品など脂質が沈着しやすいことなどがSHCLの短所といわれている.*HirohikoHiguchi:ひぐち眼科〔別刷請求先〕樋口裕彦:〒180-0004東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-3ダイヤガイビル4Fひぐち眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(49)1381(%)10080604020020152016201720182019■シリコーンハイドロゲル■ハイドロゲル図1世界における素材別のSCL処方割合の推移シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズの割合が徐々に増加している.(文献1より引用)■Siliconehydrogel■Hydrogel1日使い捨てSCL2週間交換SCL2013年2019年図3ひぐち眼科における素材別SCL処方割合2013年には1日使い捨てタイプのなかでシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの占める割合は13%であったが2019年には40%まで増加している.また,2週間交換タイプでは,2013年の時点でシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの占める割合はすでに87%であり,2019年にはほとんどすべての処方がシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズによって占められている.(%)1008060402005657514947444349505320152016201720182019(年)■シリコーンハイドロゲル■ハイドロゲル図2日本における素材別のSCL処方割合の推移日本でもシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズの割合が徐々に増加している.(文献1より引用)表1おもな1日使い捨て球面シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズメーカーレンズ名BC(mm)Dia(mm)含水率(%)Dk値*1球面度数(D)Alconデイリーズトータルワン8.5/8.814.133140-0.50.-6.00(0.25)-6.50.-12.00(0.50)CooperVisionマイデイ8.414.25480+6.00.-5.50(0.50),+5.00.+0.25(0.25)-0.25.-6.00(0.25),-6.50.-12.00(0.50)J&Jワンデーアキュビューオアシス8.5/9.014.338103+5.00.+0.50(0.25)(BC9.0のみ)-0.50.-6.00(0.25),-6.50.-12.00(0.50)ワンデーアキュビュートゥルーアイ8.5/9.014.246100+5.00.+0.50(0.25)(BC9.0のみ)-0.50.-6.00(0.25),-6.50.-12.00(0.50)B&Lアクアロックスワンデー8.514.246114+5.00.-6.00(0.25)-6.50.-12.00(0.50)Menicon1DAYメニコンプレミオ8.414.25664-0.25.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)Aireエアロフィットワンデー8.714.14558.5-0.50.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)球面度数の制作範囲は+6.00Dから-12.00Dまで幅広く用意されている.*1:Dk値:×10-11(cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)---表2おもな1日使い捨て球面ハイドロゲルコンタクトレンズメーカーレンズ名BC(mm)Dia(mm)含水率(%)Dk値*1球面度数(D)Alconデイリーズアクアコンフォートプラス8.714.06926-0.50.-6.00(0.25)-6.50.-15.00(0.50)デイリーズアクア8.613.86926-0.50.-6.00(0.25)-6.50.-15.00(0.50)Cooperプロクリアワンデー8.714.26020.5-0.25.-6.00(0.25)-6.50.-12.00(0.50)VisionワンデーバイオメディックスEV8.614.25519.7-0.25.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)J&Jワンデーアキュビューモイスト8.5/9.014.25828+5.00.+0.50(0.25)(BC9.0のみ)-0.50.-6.00(0.25),-6.50.-12.00(0.50)B&Lバイオトゥルーワンデー8.614.27842+6.00.+0.25(0.25)-0.25.-6.50(0.25),-7.00.-9.00(0.50)メダリストワンデープラス8.614.25922+5.00.+0.25(0.25)-0.25.-6.50(0.25),-7.00.-9.00(0.50)SEED1dayPureうるおいプラス8.814.25830+8.00.+5.50(0.50),+5.00.+0.50(0.25)-0.50.-6.00(0.25),-6.50.-16.00(0.50)1dayFineUVplus8.714.03812-0.25.-6.00(0.25)-6.50.-12.00(0.50)MeniconMagic8.614.25719.4-0.50.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)メニコン1DAY8.614.25519.7-0.25.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)球面度数の制作範囲は最大で遠視側は+8.00D,近視側は-16.00Dまで用意されている.*1:Dk値:×10-11(cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)--表3おもな1日使い捨てトーリックレンズ1日使い捨てシリコーンハイドロゲルトーリックレンズメーカーレンズ名BC(mm)Dia(mm)含水率(%)Dk値*1デザイン球面度数(D)円柱度数(D)軸度CooperVisionマイデイトーリック8.614.55480プリズムバラスト±0.00.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)-0.75,-1.25-1.75,-2.2510°,20°,90°160°,170°,180°J&Jワンデーアキュビューオアシス乱視用8.514.338103ダブルスラブオフ+4.00.-6.00(0.25)-6.50.-9.00(0.50)-0.75,-1.25-1.75,-2.25*290°,180°Menicon1DAYメニコンプレミオトーリック8.414.25664ハイブリッド-0.25.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)-0.75,-1.25-1.7590°,180°*3おもな1日使い捨てハイドロゲルトーリックレンズメーカーレンズ名BC(mm)Dia(mm)含水率(%)Dk値*1デザイン球面度数(D)円柱度数(D)軸度Alconデイリーズアクアコンフォートプラストーリック8.814.46926ダブルスラブオフ+4.00.-6.00(0.25)-6.50.-8.00(0.50)-0.75,-1.25-1.7520°,90°160°,180°CooperVisionワンデーバイオメディックストーリック8.714.55519.7プリズムバラスト±0.00.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)-0.75,-1.25-1.7520°,90°160°,180°*2J&Jワンデーアキュビューモイスト乱視用8.514.55828ダブルスラブオフ+4.00.-6.00(0.25)-6.50.-9.00(0.50)-0.75,-1.25-1.75,-2.25*210°,20°,60°,80°,90°,100°,120°,160°,170°,180°*2B&Lバイオトゥルーワンデートーリック8.414.57842プリズムバラスト±0.00.-6.00(0.25)-6.50.-9.00(0.50)-0.75,-1.25-1.75,-2.2520°,90°160°,180°メダリストワンデープラス<乱視用>8.614.25922プリズムバラスト±0.00.-6.00(0.25)-6.50.-9.00(0.50)-0.75,-1.25-1.7590°,180°SEED1dayPureうるおいプラス乱視用8.814.25830プリズムバラスト+2.00.-6.00(0.25)-6.50.10.00(0.50)-0.75,-1.25-1.75*220°,90°160°,180°MeniconMagicトーリック8.614.25719.4上部スラブオフプリズムバラスト±0.00.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)-0.75,-1.25-1.7590°,180°*31DAYメニコントーリック8.714.55519.7プリズムバラスト±0.00.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)-0.75,-1.25-1.7590°,180°*31日使い捨てシリコーンハイドロゲルトーリックレンズは3種類のレンズから選択が可能である.球面度数の制作範囲も+4.00Dから-10.00Dまで用意されており,円柱度数も0.75Dから-2.25Dまで用意されている.ごく一部の軸度を除けば1日使い捨てハイドロゲルトーリックレンズに比べても選択肢に遜色はない.*1:Dk値:×10-11(cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)*2:球面度数による*3:円柱素数による表4おもな1日使い捨て多焦点レンズ1日使い捨てシリコーンハイドロゲル多焦点レンズメーカーレンズ名BC(mm)Dia(mm)含水率(%)Dk値*1中心部球面度数(D)加入度数(D)Alconデイリーズトータルワンマルチフォーカル8.514.133140近用+5.00.-10.00(0.25)LO(+1.25),MED(+2.00),HI(+2.50)おもな1日使い捨てハイドロゲル多焦点レンズメーカーレンズ名BC(mm)Dia(mm)含水率(%)Dk値*1中心部球面度数(D)加入度数(D)Alconデイリーズアクアコンフォートプラスマルチフォーカル8.714.06926近用+5.00.-10.00(0.25)LO(+1.25),MED(+2.00),HI(+2.50)CooperVisionプロクリアワンデーマルチフォーカル8.714.26020.5近用+5.00.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)+1.50J&Jワンデーアキュビューモイストマルチフォーカル8.414.35828近用+5.00.-9.00(0.25)LO(+0.75.+1.25),MED(+1.50.+1.75),HI(+2.00.+2.50)B&Lバイオトゥルーワンデーマルチフォーカル8.614.27842近用+5.00.-6.50(0.25)-7.00.-9.00(0.50)Low(+1.50),High(+2.25)SEED1dayPureマルチステージ8.814.25830遠用+5.00.-10.00(0.25)[A]+0.75,[B]+1.501dayPureEDOF8.414.25830遠用+5.00.-12.00(0.25)Low,Middle,HighMenicon1DAYメニコンマルチフォーカル8.714.26020.5近用+5.00.-6.00(0.25)-6.50.-10.00(0.50)+1.50筆者の知る限り1日使い捨てシリコーンハイドロゲル多焦点レンズはアルコン社の「デイリーズトータルワンマルチフォーカル」しか存在しない.*1:Dk値:×10-11(cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)表5おもな2週間交換球面レンズおもな2週間交換球面シリコーンハイドロゲルレンズメーカーレンズ名CBC(mm)CDia(mm)含水率(%)Dk値*C1球面度数(D)CAlconエアオプティクスプラスハイドログライドC8.6C14.2C33C110+5.00.+0.25(C0.25)-0.25.-8.00(C0.25),-8.50.-12.00(C0.50)CCooperCVisionバイオフィニティーバイオフィニティーCXRC8.6C14.0C48C128+15.00.+6.50(C0.50),+6.00.+0.25(C0.25)-0.25.-6.00(C0.25),-6.50.C20.00(C0.50)CアキュビューオアシスC8.4/8.8C14.0C38C103+5.00.+0.50(C0.25),-0.50.-6.00(C0.25),-6.50.-12.00(C0.50)J&Jアキュビューオアシストランジションズスマート調光C8.4/8.8C14.0C38C103+5.00.+0.50(C0.25),±0.00-0.50.-6.00(C0.25),-6.50.-12.00(C0.50)CアクアロックスC8.5*C3C/C8.7C14.2C46C114+3.00.+0.25(C0.25)-0.25.-6.00(C0.25),-6.50.-12.00(C0.50)B&LメダリストフレッシュフィットコンフォートモイストC8.6C14.0C36C91+3.00.+0.25(C0.25)-0.25.-6.00(C0.25),-6.50.-12.00(C0.50)CMenicon2WEEKメニコンプレミオC8.3/8.6C14.0C40C129+5.00.+0.25(C0.25)*C2-0.25.-6.00(C0.25),-6.50.-13.00(C0.50)おもな2週間交換球面ハイドロゲルレンズメーカーレンズ名CBC(mm)CDia(mm)含水率(%)Dk値*C1球面度数(D)CJ&J2ウィークアキュビューC8.3/8.7C14.0C58C28+5.00.+0.50(C0.25)-0.50.-6.00(C0.25),-6.50.-12.00(C0.50)CメダリストCIIC8.6C14.2C59C22-0.25.-6.50(C0.25),-7.00.-9.00(C0.50)B&LメダリストプラスC8.4/8.7/C9.0C14.0C38.6C9-0.50.-5.00(C0.25),-5.50.-9.00(C0.50)CSEED2weekPureうるおいプラスC8.6C13.8/C14.2C58C30+10.00.+5.50(C0.50),+5.00.+0.50(C0.25),±0.00-0.50.-6.00(C0.25),-6.50.-16.00(C0.50),-17.00.-24.00(C1.00)C2weekFineUVplusC8.7C14.0C38C12-0.25.-6.00(C0.25),-6.50.-12.00(C0.50)大手メーカーでは製品をハイドロゲルレンズよりもシリコーンハイドロゲルレンズにシフトしてきているところが多く,球面度数の制作範囲もシリコーンハイドロゲルレンズのほうが幅広い.*1:Dk値:C×10-11(cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)*2:BCによる*3:2021年C7月販売終了予定*1ドロゲルレンズのB&L社の「メダリスト66トーリック」のみである.球面レンズ同様,大手メーカーではハイドロゲルレンズよりもシリコーンハイドロゲルレンズのほうが選択肢が多い.ただし,円柱度数-2.75Dの用意があるのは,ハイC112:Dk値:C10(cm/sec)・(mlO/mlmmHg)-××2*2:球面度数による*3:円柱素数による軸度100°,C160°,C170°,C180°C,°10C02°,08°09°,,90°,C180°*C3C90°,C180°*C2,*C3円柱度数(D)-1.75,-2.25,-2.75C-0.75,-1.25-1.75-0.75,-1.25-1.75-0.75,-1.25球面度数(D)-5.00.-9.00(C0.50)±0.00.-5.00(C0.25)-6.50.-8.00(C0.50)±0.00.-6.00(C0.25)-6.50.-9.00(C0.50)±0.00.-6.00(C0.25)デザインバラストCプリズムバラストCプリズムラブオフCダブルスDk値*C1323012含水率665838C(mm)(mm)(%)Dia14.514.214.2CBC8.58.68.6Cレンズ名メダリストC66トーリックC2weekPureうるおいプラス乱視用C2weekFineUVplusTORICCメーカーB&LSEEDSEEDおもな2週間交換ハイドロゲルトーリックレンズ軸度160°,C180°*C2C20°,C90°160°,C170°,C180°*C2C10°,C20°,C90°120°,C160°,C170°,C180°*C2C,°10C02°,06°09°,,100°,C160°,C170°,C180°C10°,C20°,C80°,C90°,90°,C180°*C3円柱度数(D)-1.75,-2.25-0.75,-1.25-1.75,-2.25*C2-0.75,-1.25-1.75,-2.25*C2C-0.75,-1.25-1.75,-2.25-0.75,-1.25-1.75-0.75,-1.25球面度数(D)-6.50.-10.00(C0.50)+6.00.-6.00(C0.25)-6.50.-10.00(C0.50)+5.00.-6.00(C0.25)-6.50.-9.00(C0.50)±0.00.-6.00(C0.25)-6.50.-9.00(C0.50)±0.00.-6.00(C0.25)-6.50.-10.00(C0.50)±0.00.-6.00(C0.25)デザインリッドハイブバラストプリズムラブオフCダブルスバラストCプリズムリッドCハイブDk値*C111012810391129含水率3348383640CDia(mm)(mm)(%)14.514.514.514.514.0CBC8.78.78.68.98.6Cレンズ名エアオプティクス乱視用バイオフィニティトーリックアキュビューオアシス乱視用コンフォートモイスト<乱視用>メダリストフレッシュフイットトーリック2WEEKメニコンプレミオメーカーAlconVisionCooperJ&JB&LMenicon表6おもな2週間交換トーリックレンズおもな2週間交換シリコーンハイドロゲルトーリックレンズ表7おもな2週間交換多焦点(トーリック)レンズおもな2週間交換シリコーンハイドロゲル多焦点レンズメーカーレンズ名CBC(mm)CDia(mm)含水率(%)Dk値*C1中心部球面度数(D)加入度数(D)CエアオプティクスプラスLO(+1.00),Alconハイドログライド8.6C14.2C33C110近用+5.00.-10.00(C0.25)MED(+2.00),マルチフォーカルCHI(+2.50)CCooperCVisionバイオフィニティーマルチフォーカルC8.6C14.0C48C128遠用+6.00.-6.00(C0.25)-6.50.-10.00(C0.50)+1.00,+1.50,+2.00,+2.50CB&Lメダリストフレッシュフィットコンフォートモイスト<遠近両用>C8.6C14.0C36C91近用+5.00.+4.50(C0.50),+4.00.-7.00(C0.25),-7.50.-10.00(C0.50)Low(.+1.50),High(.+2.50)CMenicon2WEEKメニコンプレミオ遠近両用C8.6C14.2C40C129近用+5.00.-6.00(C0.25)-6.50.-13.00(C0.50)+1.00,+2.002週間交換シリコーンハイドロゲル多焦点トーリックレンズメーカーレンズ名CBC(mm)CDia(mm)含水率(%)Dk値*C1中心部球面度数(D)加入度数(D)円柱度数(D)軸度CMenicon2WEEKメニコンプレミオ遠近両用トーリックC8.6C14.2C40C129近用C±0.00.-6.00(C0.25)-6.50.-10.00(C0.50)+1.00-0.75,-1.2590°,C180°おもな2週間交換ハイドロゲル多焦点レンズメーカーレンズ名CBC(mm)CDia(mm)含水率(%)Dk値*C1中心部球面度数(D)加入度数(D)CB&LメダリストマルチフォーカルC8.7/9.0C14.5C38.6C9近用+5.00.+4.00(C0.50)+4.00.-7.00(C0.25)Low(.+1.50),High(.+2.50)CSEED2weekPureマルチステージC8.6C14.2C58C30遠用+5.00.+0.50(C0.25),C±0.00,-0.50.-6.00(C0.25),-6.50.-10.00(C0.50)Atype(+0.75),Btype(+1.50)このカテゴリーでも,球面度数の制作範囲はシリコーンハイドロゲルレンズのほうが上回っており,加入度数に関しては同等である.*1:Dk値:C×10-11(cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)図40.4MPaと高含水HyCL並みの低いモデュラスをもつ1日使い捨てSHCL装用者にみられたCLPC通常,SHCL装用により発症するCCLPCは瞼縁に近い中央部に乳頭増殖が起きるが,本レンズで起きたCCLPCはどちらかというと円蓋部に近い中央部に乳頭増殖を生じている.

円錐角膜に対する各種多段カーブハードコンタクトレンズの選択

2020年11月30日 月曜日

円錐角膜に対する各種多段カーブハードコンタクトレンズの選択TipsforSelectingMulticurveRigidGas-PermeableContactLensesforKeratoconus糸井素啓*はじめに円錐角膜は角膜実質の菲薄化と角膜の前方突出をきたし,角膜不正乱視を生じる進行性の疾患である.きわめて初期の症例を除き,円錐角膜眼はメガネやソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)での視力矯正が困難であり,ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)のよい適応とされている1~3).HCLには,球面,非球面,多段カーブ,周辺部トーリック,逆形状レンズなどさまざまなデザインがある.円錐角膜眼に対しては,国内外で多くの多段カーブが処方されているおり,円錐角膜眼=多段カーブレンズという考えの先生も少なくないと思われる.しかし,円錐角膜眼に対するHCL処方割合をデザイン別に比較した報告では,施設ごとに異なるが,実は全体の3~9割を球面レンズが占めている.すなわち,多段カーブは非常に有用なHCLではあるが,すべての円錐角膜眼に万能なレンズとはいいがたい,著効する症例を見きわめたうえで処方する必要がある.本稿では,多段カーブレンズの特徴を解説し,多段カーブレンズを選択する秘訣を示す.I多段カーブHCLのレンズデザイン円錐角膜眼は,「角膜中央が突出し,周辺部に向かって徐々に扁平化する」という特徴的な角膜形状をもつ.多段階カーブHCLのデザインは,原則的に円錐角膜眼の角膜形状を模しており,光学部に相当するベースカーブ(basecurve:BC)が小さく,周辺に行くに従ってBCが大きくなるように設計されている.このレンズ中央部と周辺部のBCの差を実現するために,光学径を比較的小さく設定し,周辺部に複数の異なる球面カーブをもつデザインとなっている(図1).この周辺部の複数のカーブから,多段カーブレンズとよばれている.現在,日本では複数のメーカーから色々な多段カーブHCLが販売されている(表1).しかし,多段カーブHCLといっても,レンズの種類ごとに光学径や周辺部デザインが異なる.そのため,同一眼であっても多段カーブHCLの種類ごとに,適切なBCを選択する必要がある.II多段カーブHCLのメリットとデメリット多段カーブHCLは,レンズ中央部と周辺部のBCが大きく異なるため,中等度から強度の円錐角膜に対しても角膜形状に合わせて処方することが可能である.その結果,球面HCLが装用困難な中等度以上の症例でも,良好な装用感・安定感が得やすいというメリットがある.また,角膜形状に合わせて処方することで,HCL後面による角膜頂点部の上皮障害や,レンズエッジによる角膜周辺部の上皮障害を軽減することが可能となる.一方,多段カーブHCLは,光学径がやや小さいため,センタリングが不良になれば,瞳孔領をレンズの光学域が覆えず,球面HCLに比較して矯正視力で劣り,複視・羞明などを生じやすいというデメリットがある.とくに球面HCLとの矯正視力の差に関しては,少数視力に差が出る症例もあるが,見えにくさを強く自覚するが*MotohiroItoi:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕糸井素啓:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(43)1375表1多段カーブHCLベベル周辺カーブ2図1多段カーブレンズのデザイン光学径を小さく設定し,周辺部に複数の異なる球面カーブをもつ.メーカーレンズ名サンコンタクトレンズMカーブタイプエイコーハードアフェックスKCドクターズEX-GタイプKCシードKCレンズメニコンZE-1メニコンRoseK2RoseK2NCレインボーオプチカル研究所ハイサンソa多段カーブデザイン図2周辺部が平坦な円錐角膜眼の前眼部OCT像(角膜前面のaxialpowermap)角膜周辺部は,屈折力が小さいことを表す寒色系で示されている.図4突出部位と瞳孔領が離れている円錐角膜眼の前眼部OCT像(角膜前面のinstantaneousmap)下方の角膜中間中変部が高屈折力を示しており,突出部位が比較的中心から離れている.図3最重症の円錐角膜眼の前眼部OCT像(角膜前面のaxialpowermap)角膜中央部から周辺部にかけて,広範囲の角膜突出を認めている.図5角膜頂点に上皮障害を有する症例のフルオレセイン染色図広範囲に点状表層角膜症を認めている.図6ピギーバックレンズシステム図7多段カーブレンズによるapical.touchハードコンタクトレンズ下にソフトコンタクトレンズを装用し角膜上方および中央部の2点がレンズと接触している.ている.図8多段カーブレンズによるapical.clearance図9多段カーブレンズによるthree.point.touch角膜中間周辺部がレンズと接触しており,角膜中央部には涙液角膜中間周辺部と角膜中央がレンズと接触しており,中間周辺が貯留している.部に涙液の貯留がみられる.る場合は,BCを0.1mm程度小さくし,HCL下の涙液交換が保たれていることに注意しつつ,apical-clear-anceに近づけることで,上皮障害の改善が得られることがある.最初のトライアルレンズのBCの選択の際には,すでに球面HCLを装用している場合,そのフルオレセイン染色パターンに問題がなければ,球面HCLのBCを参考にする.エムカーブ(サンコンタクトレンズ)であれば,球面レンズより0.6~0.9mm程度小さいBCを,RoseK2(メニコン)であれば,1.5~1.8mm程度小さいBCを選択する.HCLを装用していない,あるいは使用しているHCLを持参していない場合は,筆者はエムカーブであれば6.80mm,RoseK2であれば5.80mmからスタートすることが多い.いずれの方法においても最初のトライアルレンズはあくまでも目安であり,以後のフルオレセインパターンの評価によるtrialanderrorがもっとも重要である.V各種多段カーブHCLの選択上述のように多段カーブレンズは,レンズの種類ごとにデザインが異なるため,使い分けることが可能である.実際に,筆者はMカーブタイプ(サンコンタクトレンズ)と,RoseK2(NCを含む)(メニコン)の2種類のレンズを使用している.この2種類のレンズについて,それぞれに適した症例を紹介したい.Mカーブタイプと,RoseK2は,いずれもレンズ素材に複数の選択肢があり,レンズの制作範囲が広く,ベベル部分の形状を指定できるという特徴をもち,非常に有用な多段カーブレンズである.しかし,両者のデザインを比較した場合,Mカーブタイプは光学径が比較的広く,HCL下の涙液層は薄くなりやすく,RoseK2(NC)は光学径が比較的狭く,HCL下の涙液層は厚くなりやすいという違いがある.その結果,Mカーブタイプは,広い光学径によりHCLが偏位しても良好な視力を保ちやすく,涙液層が薄いため,よりクリアな視力が得やすいというメリットをもつ.そのため,HCLがズレやすい症例や視力の訴えが強い症例には積極的に処方を試みている.一方,Rosek2(NC)では,HCL下に分厚い涙液層を保つことが可能なため,角膜とHCLの摩擦を最小限に抑えることが可能というメリットをもつ.そのため,角膜上皮障害を有する症例や,角膜頂点とHCL接触による不快感が強い症例に勧めることが多い.しかし,上記の比較については,あくまでも私見であり,適切なフィッティングを得た場合の比較であることには留意願いたい.VI多段カーブレンズの注意点筆者はHCLの洗浄について,原則的にこすり洗いを行うよう患者に指導している.これは,HCLに付着したさまざまな種類の汚れに対して,物理的な洗浄がもっとも効果的と考えているからである.しかし,多段カーブレンズはBCが小さく,こすり洗いがしにくいため,球面HCLに比較して内面の汚れがやや落ちにくいというデメリットがある.そのため,多段カーブレンズを処方する際には,洗いにくい形状であることを説明したうえで,とくにHCL内面を意識した洗浄を行うように指導している.とくに酸素透過性が高い素材からなるHCLの場合は,汚れやすく,また洗浄の際に力を加えすぎると変形しやすいので,より注意を要する.おわりに多段カーブHCLは,球面HCLでは対応困難な症例に対しても良好な視力と装用感を提供できる有用なHCLである.万能なレンズではないため,レンズデザインを理解したうえで著効する症例を見きわめる必要があるが,うまく処方することができれば患者のqualityofvisionを大きく改善することができる.本稿が円錐角膜眼への多段カーブレンズ処方の一助になれば幸いである.文献1)GomesJA,TanD,RapuanoCJetal:Globalconsensusonkeratoconusandectaticdiseases.Cornea34:359-369,20152)ZadnikK,BarrJT,EdringtonTBetal:Baselinefindingsinthecollaborativelongitudinalevaluationofkeratoconusstudy.IOVS39:2537-2546,19983)須田秩史,松田司,真鍋礼三ほか:円錐角膜に対するハードコンタクトレンズ装用の適応について.日コレ誌24:88-94,1982(47)あたらしい眼科Vol.37,No.11,20201379

乱視用ソフトコンタクトレンズ-プリズムバラストタイプかダブルスラブオフタイプか

2020年11月30日 月曜日

乱視用ソフトコンタクトレンズ─プリズムバラストタイプかダブルスラブオフタイプかToricSoftContactLensesforAstigmatism─PrismBallastorDoubleSlab-O.Type?山岸景子*東原尚代**はじめに2019年の全世界における乱視用ソフトコンタクトレンズ(toricsoftcontactlens:トーリックSCL)処方率の平均は28%と報告されている1).とくに欧米ではトーリックSCLの処方率が30%を超える国があるのに対し,日本の処方率は17%に留まっている(図1).その背景として,海外はオプトメトリストがCL処方の業務を担うのに対し,日本は眼科医が視能訓練士とともにCLを処方するという制度の違いがあげられるだろう.さらに,トーリックSCLはその選択や軸ズレした場合の対応に経験を要することが,処方率が低くなる一因と推察される.また,弱度乱視眼においては球面SCLで矯正視力(1.0)があれば乱視矯正の必要はないとか,球面SCLより装用感が劣るとか,高価なトーリックSCLは患者に勧めにくいなどの先入観も,トーリックSCLが積極的に処方されない理由ではなかろうか.近年,相次いで発売されたトーリックSCLは性能が飛躍的に向上して軸の安定性が高くなり,大変に処方しやすくなった.本稿ではトーリックSCLによる乱視矯正の必要性と,プリズムバラストとダブルスラブオフのデザインの違い,最新のトーリックSCL事情について解説する.I正視と乱視眼の見え方正視は眼に入ってくる光が黄斑部中心窩に焦点を結ぶため,乱視視標をクリアに見ることができる(図2).一方,直乱視は,縦方向の光が水平方向の前焦線に,水平方向の光が後焦線になる結果,縦方向の線は濃く比較的鮮明に見え,水平方向の線は薄くてボケる.直乱視とは対照的に,倒乱視では水平方向の光が縦方向の前焦線となり,垂直方向の光が水平方向の後焦線となる.乱視視標の見え方のイメージでは,水平方向の線が濃くて比較的ハッキリし,垂直方向の線が薄くてボケる.いずれも正視と比較して不快な見え方となる.II球面SCLとトーリックSCLによる乱視矯正の違い乱視眼に球面SCLを処方する場合,前焦線と後焦線の中間地点(最小錯乱円)が網膜上にくるとダブリや歪みがもっとも少なくなる(図3).これが等価球面度数になるが,正視より見え方の質は低くなる.トーリックSCLはレンズの光学部の前面または後面に円柱レンズの役割を果たすトーリック面が設置されているため,二つの経線方向の光を網膜上の1点に収束させることができ,すべての経線方向が鮮明に見える.弱度乱視眼患者に球面SCLとトーリックSCLを装用させたところ,トーリックSCLで有意に矯正視力が高く,自覚的な見え方も良好だったという報告や2),乱視を有するVDT(visualdisplayterminal)作業者にトーリックSCLを処方すると不快感が減少した3)との報告があり,弱度乱視においてもトーリックSCLによる積極的な矯正が求められる.*KeikoYamagishi:かしはら山岸眼科クリニック**HisayoHigashihara:ひがしはら内科眼科クリニック〔別刷請求先〕山岸景子:〒634-0803奈良県橿原市上品寺町523かしはら山岸眼科クリニック0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(35)1367日本アメリカイギリスカナダフランスオランダ0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%■その他■近視抑制■カラーCL■球面■乱視■多焦点図1各国におけるタイプ別SCL処方率日本は欧米に比べて,球面SCL処方率が高いのに対して,トーリックSCLと多焦点SCLの処方率が低い.(文献1より改変引用)図2正視と乱視眼の見え方正視および乱視眼における垂直方向の光線(前焦線,水色)と水平方向の光線(後焦線,橙色)の網膜結像のイメージを示す.正視と比較して乱視眼では乱視視標がボケてみえる.最小錯乱円乱視視標の見え方のイメージ最小錯乱円正視図3乱視を球面SCLで矯正したときの見え方乱視を球面SCLで矯正する場合,前焦線と後焦線の中間(最小錯乱円)が網膜上にくるように合わせることになるが,正視と比較するとクリアな見え方は得られない.-表1乱視の人によくある症状□細かい字が見分けにくい(例:数字の3,6,8など)□パソコンの文字がぶれてみえる□ピントを合わせようとしてよく目を細めてしまう□夜,月が二つに見えたり光がにじんだりする□眼が疲れやすいab図4トーリックSCLのデザインa:プリズムバラストデザイン,b:ダブルスラブオフデザイン.厚みが厚い部分を赤色で,薄い部分を水色で示す.(クーパービジョンより提供)表2日本で処方できる代表的なトーリックSCL素材商品名メーカーデザイン最高円柱度数軸度CシードC1dayPureうるおいプラス乱視用ワンデーアキュビューモイスト乱視用シードジョンソン・エンド・ジョンソンプリズムバラストダブルスラブオフ-1.75C-2.25C20°C90°C160°C180°10°C20°C60°C80°C90°C100°C120°C160°C170°C180°デイリーズアクアコンフォートプラストーリックアルコンダブルスラブオフ-1.75C20°C90°C160°C180°1日使い捨てハイドロゲルメダリストワンデープラス乱視用バイオトゥルーワンデートーリックワンデーアクエアトーリックワンデーバイオメディックストーリック1DAYメニコントーリックボシュロムボシュロムクーパービジョンクーパービジョンメニコンプリズムバラストプリズムバラストプリズムバラストプリズムバラストプリズムバラスト-1.75C-2.25C-1.75C-1.75C-1.75C90°C180°20°C90°C160°C180°20°C90°C160°C180°20°C90°C160°C180°90°C180°1DAYMagicトーリックメニコンハイブリッド-1.75C90°C180°シリコーン1DAYメニコンプレミオトーリックメニコンハイブリッド-1.75C90°C180°ハイドロゲルマイデイトーリッククーパービジョンプリズムバラスト-2.25C10°C20°C90°C160°C170°C180°CハイドロゲルシードC2weekPureうるおいプラス乱視用メダリストC66トーリックシードボシュロムプリズムバラストプリズムバラスト-2.25C-2.75C20°C90°C160°C180°10°C20°C80°C90°C100°C160°C170°C180°2週間交換シリコーンハイドロゲルアキュビューオアシス乱視用エアオプティクス乱視用メダリストフレッシュフィットコンフォートモイスト乱視用バイオフィニティトーリックジョンソン・エンド・ジョンソンアルコンボシュロムクーパービジョンダブルスラブオフプリズムバラストプリズムバラストプリズムバラスト-2.25C-2.25C-2.25C-2.25C10°C20°C60°C80°C90°C100°C120°C160°C170°C180°20°C90°C160°C180°10°C20°C80°C90°C100°C160°C170°C180°10°C20°C90°C160°C170°C180°2WEEKメニコンプレミオトーリックメニコンハイブリッド-1.75C90°C180°2WEEKメニコンCReiトーリックメニコンダブルスラブオフ-0.75C180°C図5スイカの種理論濡れたスイカの種を指でつまんで力を加えると,種の厚みのあるほうが前方へ押し出される.この理論を応用し,トーリックSCLの周辺下方に厚みをつけ,瞬目時の眼瞼の力でレンズの厚み部分が押し出される形で軸を安定させている.(シードより提供)上下非対称ダブルスラブオフコンタクトレンズの厚みがやや薄い部分.左右部バラストコンタクトレンズの厚みがほぼ均一で,やや厚い部分.ガイドマーク下方部にガイドマークが施されています.本製品は,上下非対称のデザインですので,装着時にガイドマークを確認し,正しい方向でコンタクトレンズの装用を行う事で,最適なレンズ性能を発揮します.図6トーリックSCLのハイブリッドデザイン上下にやや薄い場所を作ることで装用感を改善し軸を安定させ,下方の厚みを厚くせずプリズムバラスト部をC4時C8時方向に設けている.(2WEEKメニコンプレミオトーリック:メニコンHPより引用)表3各種トーリックSCLデザインと軸安定の関係直乱視C倒乱視C斜乱視C×△眼瞼高が小さいC△C三白眼C○C吊り目や垂れ目C○C装用感を重視C△C○片眼のみ乱視用C△C○----度数選択早見表※この表は各眼鏡度数におけるトーリックコンタクトレンズのトライアルの目安を示したものです(頂点間距離は12mmを想定)。トライアルの上、見え方を確認し、最終度数を決定してください。一部、製品の製作度数範囲に含まれていない部分があります。図7トーリックSCLのトライアル度数選択の早見表縦軸は球面度数,横軸は乱視度数を示す.自覚的屈折検査を参考にしながら簡単にファーストトライアルCSCL度数を決定できる.(クーパービジョン提供)①正(時計回り)にレンズが回転して安定した場合⇒回転した角度を眼の乱視軸に加える②反時計回りにレンズが回転して安定した場合⇒回転した角度を眼の乱視軸から引く図8正加反減の法則梶田雅義先生(梶田眼科)は,軸補正を間違うと成果が半減するという意味合いで,正加反減を「成果半減」で覚えるよう提唱されている.

各種超低加入ソフトコンタクトレンズの選択-ハードかソフトか,対象患者は?

2020年11月30日 月曜日

各種超低加入ソフトコンタクトレンズの選択─ハードかソフトか,対象患者は?SelectionofUltra-LowAdditionContactLenses:HardorSoftType?─WhoAreTheTargetPatients?東原尚代*山岸景子**はじめに近年,デジタルデバイスが急速に普及し眼精疲労を訴える人が増えている.平成20年の厚生労働省の調査によると,VDT(visualdisplayterminal)作業に従事する労働者のうち身体的な疲労や症状をもつ割合は68.9%,そのうち眼の疲れや痛みを訴える割合が90.8%であった1).眼精疲労は眼の病的な疲労であり,休息しても容易に回復しないのが特徴で,患者は大きな苦痛を抱える.さらにスマートフォン(スマホ)の普及が低年齢化するに伴い,あらゆる世代においてデジタルデバイスによる視覚への影響が懸念される.本稿では,デジタルデバイスによる眼精疲労発症の背景と,超低加入度数のコンタクトレンズ(contactlens:CL)の適応と選択について考えてみる.I眼精疲労とは鈴村は眼精疲労の発症要因を外環境要因,内環境要因・心的要因,視器要因の三つに分類し,眼精疲労を三者のバランスの崩れとして説明した2).外環境要因はVDT作業,冷暖房などによる刺激をさし,内環境要因・心的要因は,人間関係や仕事へのプレッシャーなどさまざまなストレスをさす.視器要因は屈折や輻湊,眼位などの眼科的異常をさし,とくにデジタルデバイス使用時の眼精疲労には視器要因が大きくかかわわる.IIなぜデジタルデバイスで眼精疲労が起こるのか1.調節反応の酷使近見視をするときは毛様体筋が縮み,Zinn小帯がゆるんで水晶体が厚くなり屈折力を増す.パソコンではディスプレイとの視距離が約50cmと長く,視角も大きい.また,ディスプレイとキーボード,紙媒体の3点間を視線移動させるため,調節反応と調節解除を繰り返す.一方,スマホの視距離は約30cmと短い.視角が小さいために視線移動は少なくなるが,同じ視距離で画面を見続けてしまうために調節反応への負担はパソコン使用時より大きくなる.2.輻湊反応の持続近くのものを見るとき,焦点を合わせるために両眼の内直筋が収縮し,眼球は内転する.そのときの外眼筋への刺激によって瞳孔は小さくなる(輻湊反応).デジタルデバイスを長時間見る状況は,瞳孔括約筋と毛様体への負担が大きくなるとともに,輻湊眼位を持続させるために内眼筋あるいは外眼筋の作業量が増加して筋肉性の疲労が生じる.3.ドライアイUchinoらはオフィスワーカーを対象にした調査でドライアイ有病率が女性で75%,男性で60%と報告し*HisayoHigashihara:ひがしはら内科眼科クリニック**KeikoYamagishi:かしはら山岸眼科クリニック〔別刷請求先〕東原尚代:〒621-0861京都府亀岡市北町57-13ひがしはら内科眼科クリニック0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(27)1359表1レンズ選択の基準超低加入度SCL超低加入度・低加入度HCL使用経験から考えた適応CL未経験者◎△.×HCL経験者〇◎SCL経験者◎△.×特徴長所装用感がよい乱視矯正できる短所乱視矯正できない慣れるまで時間がかかる-表2代表的な超低加入度SCLのスペック2週間交換1日使い捨て商品名2WEEKメニコンCDUOバイオフィニティアクティブプライムワンデースマートフォーカスシードC1dayPureうるおいプラスCFLEX製造元メニコンクーパービジョンアイレCSEEDFDA分類グループCIIグループCIグループCIVグループCIV物性Dk値C34C128C28C30含水率72%48%58%58%製作範囲CBCC8.6.mmC8.6.mmC8.8.mmC8.8.mm度数-0.25D.-6.00D(0C.25Dステップ)-6.50D.-10.0D(0C.50Dステップ)5.00D.-6.00D(0C.25Dステップ)-6.50D.-10.0D(0C.50Dステップ)1.00D.-7.00D(0C.25Dステップ)5.00D.-10.0D(0C.25Dステップ)-10.50D.-12.0D(0C.50ステップ)直径C14.5CmmC14.0CmmC14.2CmmC14.2Cmm加入度数C0.50DC0.25DC0.50DC0.50Dその他ガイドマーク入りシリコーンハイドロゲル素材レギュラーパック(3C0枚)ミニパック(5枚),UVカット機能UVカット機能,3C2枚入り光学イメージ図株式会社メニコンより提供クーパービジョン・ジャパン株式会社より提供株式会社アイレCHPより転載シード株式会社より提供パッケージ外観株式会社メニコンより提供クーパービジョン・ジャパン株式会社より提供シード株式会社より提供各製品のスペック,特性をまとめた.(文献C7より引用)図1症例1の調節力検査結果(NIDEKTONOREFIIIにて計測)右眼は調節力がC5.71Dの調節力があるが(Ca),左眼はC0.24Dまで調節力は低下している(Cb).=-=--=-=---=---=-=-=-=-=-コンタクトレンズ装用中の自覚症状など,以下の質問にお答えください.各項目に回答または○をご記入ください.質問1:パソコンやスマートフォンはC1日何時間くらい使いますか?()時間くらい質問2:パソコンやスマートフォンの使用時,目の疲れはありますか?なし・あり(ありの場合,1日の何時くらいが多いですか?)(時頃)質問3:パソコンやスマートフォンの使用時,目の乾きはありますか?なし・あり(ありの場合,1日の何時くらいが多いですか?)(時頃)質問4:パソコンやスマートフォンの使用時,目のかすみはありますか?なし・あり(ありの場合,1日の何時くらいが多いですか?)(時頃)図2スマホ使用と眼の疲れに着目したCL問診表の一例2.503c/d12c/d18c/d空間周波数図3単焦点SCLと超低加入度SCL装用時のコントラスト感度の比較ひがしはら内科眼科クリニックで「シードC1dayPureうるおいプラスCFLEX」を処方したC8例〔平均年齢C27.6歳(15.41歳),男性C2例/女性C6例〕についてコントラスト感度を計測.CPD-6以上では細かくなる指標の認識ができるかの評価になるが,両群でコントラスト感度に有意差を認めなかった.=-=-コントラスト感度(対数)21.5=10.5表3超低加入度・低加入度HCLの概要超低加入度低加入度商品名サンコンマイルドCiアシストタイププレリーナCIIシードマルチフォーカルCOC2ノア製造元サンコンタクトレンズCSEEDCSEED物性Dk値*C95.1C156C156製作範囲CBC7.00.C8.50Cmm7.00.C8.60Cmm7.00.C8.60Cmm度数+5.0D.-20.0D(0C.25Dステップ)C±0.0D.-15.00D(0C.25Dステップ)C±0.0D.-15.00D(0C.25Dステップ)直径C8.8/9.0/9.2/9.4.mmC9.0/9.3/9.6.mmC9.0/9.3/9.6.mm加入度数C0.50DC1.00DC1.00Dその他中央の遠用ゾーンを広く設計周辺フロントベベルを薄く設計やわらかい素材中心部に遠くを見るゾーンを広く確保し,周辺部に向かって中間.近くを見るゾーンを配置光学イメージ図株式会社サンコンタクトレンズ社より提供シード株式会社CHPより転載シード株式会社CHPより転載*:×10-11(cm2/sec)・[mLO2/(mL・mmHg)]C9080706050403020100******VASスコア(点)■低加入度HCL■従来型遠近両用HCL図4従来型遠近両用HCLと超低加入度型HCLの比較縦軸のCVASスコア(visualCanalogscore)はC100点に近いほど自覚がよいことを示す.(文献C12より引用)夜間羞明眼の疲れ乾燥感近くの見え方遠くの見え方くもり装用感良を訴えて受診するC40歳以上のCHCL装用患者を診る機会は少なくないが,老視年齢になった患者にも単焦点HCLを処方し続けている現状がうかがわれる.表3に示すように,超低加入度CHCLの光学デザインの特徴は,中心部の遠用ゾーンが広く設計されており,安定した遠方の見え方が期待できる.筆者らはC2016年コンタクトレンズ学会総会において,老視患者(平均年齢C47.7歳)を対象として超低加入度CHCLと従来型の遠近両用CHCLの成績を比較したところ,超低加入度CHCLは従来型遠近両用CHCLに比べて遠くの見え方,くもり,夜間羞明の項目で有意に自覚症状が良好で,近くの見え方も従来型遠近両用CHCLと遜色ないことを報告した(図4).また,HCLのドロップアウト率も超低加入度で有意に低く,処方成功率も高い可能性が示唆された12).また,2017年のコンタクトレンズ学会総会において,症例数はC4例と少ないものの,単焦点CHCLから超低加入度CHCLに変更した際に見え方に慣れるまでC2週間.1カ月間を要したのに対し,超低加入度CHCLから従来型遠近両用CHCLに変更したときには全例で初日から見え方に慣れたことを報告した.超低加入度CHCLは初期老視だけでなく,老視年齢に達した患者にも有効で,かつ,老視がさらに進んだ場合に加入度の高い遠近両用CHCLへスムーズな移行を助けるツールとなる可能性がある.CX超低加入度SCLの応用(小児における近視進行抑制)デジタルデバイスの普及に伴い,世界で近視の人口が増えている13).とくにアジア人ではその傾向が顕著であり,アジア各国では国をあげて近視進行抑制に取り組んでいる.そのなかで,近年,さまざまなタイプの多焦点SCLにおいて近視進行抑制効果が確認されるようになってきた.Sankaridurgら14)は,レンズ光学部の中心3Cmm領域が通常の遠方矯正度数で,周辺にかけて徐々に加入度数が増し,最周辺部では+2.00Dまで加入された多焦点CSCLを使用して,7.14歳の中国人学童を対象としたC12カ月のトライアルを行ったところ,単焦点眼鏡の対照群よりも近視進行がC34%抑制され,眼軸長伸長もC33%抑制されたと報告した.+2.0D加入の多焦点CSCLでの近視進行抑制の研究が多い中,Fujikadoら15)は超低加入度の多焦点CSCL「メニコンCDUO」を用いて,10.16歳の日本人学童C34例において近視進行抑制効果を検討し,+0.50Dの低加入でもC47%の眼軸長伸長抑制効果を報告した.低加入度ゆえに高次収差の増加を抑えられるため,QOVを損ねないのがメリットと考えられるが,超低加入度CSCLがどのように小児の近視抑制に働くのか,今後さらなる検証が待たれる.おわりに超低加入度CCLはデジタルデバイスが普及した現代にはかかせないツールとなっている.眼精疲労や老視患者だけでなく,一見,自覚症状が強くない近業に従事する青年期にもよい適応があるため,眼科医が低加入度CCLの利点を理解して患者に適切な処方の選択肢を提供することが大切である.文献1)厚生労働省:平成C20年技術革新と労働に関する実態調査.VDT作業における身体的な疲労や症状をもつ労働者の割合2)鈴村昭弘:主訴からする眼精疲労の診断.眼科CMOOK,CNoC23,眼精疲労(鈴村昭弘編),p1-9,金原出版,19853)UchinoCM,CYokoiCN,CUchinoCYCetal:PrevalenceCofCdryCeyeCdiseaseCandCitsCriskCfactorsCinCvisualCdisplayCterminalusers:theCOsakaCstudy.CAmJOphthalmolC156:759-766,C20134)PortelloCJK,CRosen.eldCM,CChuCA:BlinkCrate,CincompleteCblinksCandCcomputerCvisionCsyndrome.COptomVisSci90:C482-487,C20135)ChuCCA,CRoawn.eldCM,CPortelloJK:Blinkpatterns:CreadingCfromCaCcomputerCscreenCversusChardCcopy.COptomVisSciC91:297-302,C20146)GowrisankaranCS,CSheedyCJE,CHayesJR:EyelidCsquintCresponseCtoCasthenopia-inducingCconditions.COptomVisSci84:611-619,C20077)東原尚代,山岸景子:デジタルデバイス時代.眼精疲労とコンタクトレンズ.あたらしい眼科C36:1237-1242,C20198)木下茂,不二門尚,東原尚代:眼精疲労に関するC2003年度全国アンケート調査報告.日本の眼科C75:1319-1336,C20049)梶田雅義,山崎愛,入道香澄ほか:調節緊張を緩和する新デザインコンタクトレンズの評価.日コレ誌C54:27-30,C201210)塩谷浩:遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方テクニック.あたらしい眼科C30:1363-1368,C201311)MorganCPB,CWoodsCCA,CTranoudisCIGCetal:International(33)あたらしい眼科Vol.C37,No.C11,2020C1365