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急性涙囊炎に対するアジスロマイシン点眼液を涙囊内に注入する治療法の結果

2025年7月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科42(7):919.923,2025c急性涙.炎に対するアジスロマイシン点眼液を涙.内に注入する治療法の結果久保勝文*1工藤孝志*2*1吹上眼科*2十和田市立中央病院眼科E.ectofAzithromycinOphthalmicSolution1%InjectionIntoTheLacrimalSacforAcuteDacryocystitisMasabumiKubo1)andTakashiKudo2)1)FukiageEyeClinic,2)DepartmentofOphthalmology,TowdaCityHospitalC吹上眼科にてアジスロマイシン(AZM)点眼液の涙.内注入で治療した,急性涙.炎の成績について報告する.急性涙.炎を認めた男性C1例女性C7例,全員片側の計C8例で,手術希望がないC7例,希望があるC1例だった.年齢は,38.95歳で平均年齢C74.9C±18.1歳.通水試験で鼻涙管閉塞症をC6例に認め,2例に認めなかった.上涙点より生食で涙.内洗浄後に,涙.内をCAZM点眼液に完全に置換する治療で,8例全員がC1.3日と短期間で消炎鎮痛した.観察期間中にC2例で涙.炎再発を認めず,2カ月後とC5カ月後にそれぞれC1例が再発した.消炎後に涙.鼻腔吻合術C3例,涙.摘出術C1例を行った.AZM点眼液の涙.組織への高い移行性と長期間の持続性により,急性涙.炎の治癒と再発予防が可能になったと考えた.手術以外の代替治療や,手術前の速やかな消炎治療方法としてCAZM点眼液を涙.内に注入する治療法は効果があると考えられた.CPurpose:Toreportthee.cacyofazithromycinophthalmicsolution1%(AZM)injectionintothelacrimalsac(LS)forCacutedacryocystitis(AD)C.CSubjectsandMethods:ThisCstudyCinvolvedC8CADpatients(1Cmale,C7females;meanage:74.9C±18.1years[range:38-95years])C.Ofthose,6hadnasolacrimalductobstruction,yet2hadnoobstruction.Inalltreatedeyes,afterwashingtheLSwithsalineviathesuperiorlacrimalpunctum,itwas.lledCwithCAZMCviaCinjection.CResults:InCallCcases,CimmediateCresolutionCofCpainCandCrapidCcontrolCofCinfectionComlurredpostinjection.In2casestherewasnorecurrence,yetrecurrencedidomlurin1caseat1-monthpostinjectionandin1caseat5-monthspostinjection.Afterimprovementofin.ammation,3casesunderwentdacryo-cystorhinostomyand1caseunderwentdacryocystectomy.Conclusion:InjectionofAZMatahighconcentrationintotheLSwasfoundtobeane.ectivealternativetherapyforAD,aswellasforrapidreductionofin.ammationpriortosurgery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C42(7):919.923,C2025〕Keywords:アジスロマイシン点眼液,急性涙.炎,涙.鼻腔吻合術,涙.摘出術,注入療法.azithromycinCoph-thalmicsolution,acutedacryocystitis,dacryocystorhinostomy,dacryocystectomy,injectiontherapy.はじめに急性涙.炎は涙道疾患のC2.4%にみられ,まれな疾患ではない1).急性涙.炎の増悪・寛解を繰り返し,涙.摘出術や涙.鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)を説得しても,手術を拒絶する老齢患者も多い.手術の有無にかかわらず速やかな消炎鎮痛も必要となるため1),急性涙.炎に対して点滴・内服および点眼を処方するが,薬剤耐性率が高くなっているためか2,3),改善までに長時間を要する場合も多い1.3).急を要する場合では,涙.穿刺や涙.切開で排膿する治療方法がとられる1,2,4).しかし,5%ほどで涙.皮膚瘻を形成し,事態が悪化することもある4).今回,アジスロマイシン(AZM)点眼液は涙.炎への適応病名をもち,組織への高い薬物移行性と5)長期の良好な薬物滞留性により6)涙.炎治療に有効であり,さらに涙.内に注〔別刷請求先〕久保勝文:〒031-0003青森県八戸市吹上C2-10-5吹上眼科Reprintrequests:MasabumiKubo,M.D.,PhD.,FukiageEyeClinic,2-10FukiageHachinohe031-0003,JAPANC0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(135)C919表1症例1~8のまとめNo.年齢性別(歳)初診時通水検査涙.炎治癒後の通水検査観察期間(月)結果培養結果備考C62女性鼻涙管閉塞通水良好C72カ月後再発CNeisseriasp.C92女性鼻涙管閉塞検査なしC5手術(涙.摘出術)発育を認めずC73女性通水良好通水良好C55カ月後再発CPseudomonaeaeruginosaIgG4:C527C↑(C11-121)涙道内視鏡検査で異常なしC75女性通水良好通水良好C4涙.炎治癒CCorynebacteriumsp.涙道内視鏡検査で異常なしC38女性鼻涙管閉塞検査なしC3手術(DCR)CAcinetobactersp.初診時より手術希望C83男性鼻涙管閉塞検査なしC2Stenotophomonas手術(DCR)CmaltophiliaC95女性鼻涙管閉塞検査なしC1涙.炎治癒CEnterobactraogenesC80女性鼻涙管閉塞検査なしC1手術(DCR)発育を認めずDCR:dacryocystorhinostomy.入すればより効果的であると考えて治療を行ったので結果を報告する.CI対象と方法2023年C8月.24年C3月末の期間で急性涙.炎の患者に対して生食で涙.内洗浄を行い,その後CAZM点眼液で涙.内に注入する治療を行った.10症例に行い,1例は治療後来院せず.1例は全身麻酔希望のため他院紹介.残りの急性涙.炎C8例について考察を行った.男性C1例,女性C7例で年齢はC38-95歳で平均年齢はC74.9C±18.1歳.全員片側で観察期間はC1.7カ月,平均C3.5C±2.1カ月.全例に涙.部に発赤・圧痛を認める急性涙.炎を認めた.初診時の通水検査ではC6例には鼻涙管閉塞症があり,2例は閉塞がなく通水があるのを確認した(表1).初診時はC7例に手術希望がなく,1例(症例5)が手術を希望した.細菌検査は,涙.内から注射筒で採取または通水検査時に逆流した膿汁をカルチャースワブプラス医科用捲綿糸(日本ベクトン・ディキンソン社製)にて採取し,全例ビー・エム・エル社で細菌培養検査を行った.全例で好気性細菌培養検査を行い,血液寒天培地,BTB寒天培地およびチョコレート培地で行った.AZM点眼液による処置は,点眼麻酔後にC2.5Cml注射筒にディスポーザルの曲の涙洗針(27CGC×25Cmm,エムエス)を装着して生食で十分に涙.内を洗浄後にCAZM点眼液を注射筒内に移し,指で涙.を触診し,十分な大きさになるまでAZM点眼液を涙.内に注入した.当院初診C2例,他施設からの紹介C6例で,基本的に前医の点眼内服を継続し,適宜AZM点眼液とクラリスロマイシンC200Cmg2回C5日分を追加処方し,1.3日後に来院を指示した.II結果8例全員がC1.3日で速やかに消炎し,2例は涙.炎が治癒して観察期間中に再発しなかった.2例はいったん涙.炎が治癒したが,2カ月後とC5カ月後にC1例ずつ再発した.消炎後に手術を希望したC3例と初診時から手術を希望していたC1症例の計C4症例に対してCDCR3例および涙.摘出術C1例を行い経過良好である(表1).初診時に鼻涙管閉塞のなかったC2例(症例C3,4)について,消炎した時点で涙道内視鏡検査を行ったが,軽い鼻涙管狭窄を認める以外に涙.内結石などの異常を認めなかった.培養結果は,細菌の発育を認めなかった症例がC2例.6例でCNeis-seriasp.,Pseudomonaeaeruginosa,Corynebacteriumsp.,CStenotophomonasmaltophilia,Enterobacteraerogenes,CAcinetobacterCsp.をそれぞれ検出した.細菌感受性試験は,AZM点眼液に対しては行わなかった(表1).以下にC3症例を提示する.[症例1]62歳,女性,近医で何度か涙.炎を治療し,鼻涙管閉塞を指摘されていたが,眼脂が強くなり当院を受診.初診時に涙.炎を認め,通水検査で通過性はなかった.AZM点眼液で治療後C1週間後に涙.炎は治癒し,通水検査でも通過良好でその後通院がなかった.しかし,2カ月後に涙.炎で再受診し,涙.炎を認め,通水検査で通過性を認めず,AZM点眼液を涙.内に注入後に来院がなかった.[症例2]92歳,女性.以前より何度か急性涙.炎を起こしていたが,今回腫れが引かないので当院へ紹介となる.初診時は図1のように涙.が大きく腫れて強い痛みを訴えた.涙.洗浄後にCAZM点眼液を涙.内注入し,翌日には消炎し痛みもなくなった(図2).後日,涙.摘出術に同意し手術を行い,経過良好である.図1症例2の初診時顔写真左眼急性涙.炎で大きく腫脹している.図3症例6の初診時顔写真右急性涙.炎で大きく腫脹している.[症例6]83歳,男性.近医で穿刺排膿の治療をしていたが,半年前から涙.部分の腫瘤が徐々に大きくなり,治療目的で当院に紹介となる(図3).ガチフロキサシンC5CmlおよびC0.1%フルオロメトロンC5Cmlを右眼にC4回点眼していた.初診時に右涙.部が大きく腫れ,痛みが強く,手術希望はなく,前医で行っていた涙.穿刺を希望した.涙.洗浄後にAZM点眼液を注入し,クラリスロマイシン錠C200Cmgの内服を追加した.3日後の来院時には消炎し,痛みも引いていた(図4).その後も増悪なく,2カ月C10日後には慢性涙.炎の状態となりCDCRを希望した.手術中もとくに出血がなく,術後も経過良好である.CIII考按涙.炎は,鼻涙管閉塞などの原因で起こる感染症疾患であ図2症例2のAZM点眼液を涙.内に入れた翌日涙.部の炎症は鎮静化し,痛みもほぼ消失した.図4AZM点眼液を涙.内に入れた3日後涙.部の炎症は鎮静化し,痛みもほぼ消失した.り,速やかに消炎ができなければ眼窩内に炎症が波及し,失明することもあるため,慎重に診察治療する必要がある1).涙.摘出術やCDCRなどの外科治療を行うことができれば,急速に治療できる疾患ではあるが1,2,4),抗菌薬の点眼や抗菌薬の内服・点滴では治癒までにC1.2週間やC10日を要すると報告されている1,2,4).今回はC7例と症例は少ないが,今までの経験以上に速やかに消炎・鎮痛が行えた.点滴を常備できない開業医や,紹介病院まで遠い医療施設において,常備しやすいCAZM点眼液の涙.内注入で抗菌剤の内服・点滴と同等に速やかに治療できるなら,患者および開業医にとって有用と考えられる.涙.炎の起炎菌は黄色ブドウ球菌,肺炎球菌,レンサ球菌が多く,鈴木らは,涙.内貯留液から分離された菌C64株のうち,グラム陽性菌はC44株,グラム陰性菌はC19株,真菌はC1株と報告している3).AZMは,ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,コリネバクテリウム属,インフルエンザ菌,アクネ菌に対する抗菌作用を示すが,感受性はフルオロキノロンには及ばない.しかし,組織内移行性と滞留性がよく,一度の点眼で長期に炎症を抑える効果が期待できる薬剤である7,8).今回は,検出された細菌でのCAZMへの感受性を行っていないので次回以降の検討が必要と考えた.また,AZMの内服・点滴では,涙.炎の適応病名がなく,AZMの静脈内投与はC2時間かけて点滴する必要がある.それに比較して,AZM点眼液では涙.炎の適応病名があり7),AZM涙.内注入は点滴に比較し短時間で終わり,医療側,患者側の負担も少ない.涙.内への薬物注入治療による涙.炎治療についての報告は,わが国では前田らと松見らによる軟膏注入したC2編があり,海外での報告は確認できなかった9,10).報告が少ない原因は,軟膏の粘性が高く注入自体が容易でないことが原因と思われる10).また,AZM点眼液の涙.注入についての報告は,わが国および海外で確認できなかった.軟膏の注入の効果については,わが国で前田らが慢性涙.炎に対して眼軟膏の種類を変えて注入したが,完全に分泌物は消失しなかったと報告している9).また,約C100例の慢性涙.炎の注入で全例有効だったが,2.3週間ごとの注入が必要で,注射器と洗浄針の固定が外れないよう注意が必要だったとしている.松見らは,DCR後のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(mechicillin-resistantCStaphylococcusaureus:MRSA)涙.炎に,ペリプラスト用の微量滴下セット(20ゲージ)を用い,6日連続で涙.内にバンコマイシン眼軟膏注入を行い,最終的に眼脂,結膜充血がなく排膿を認めない状態まで改善させた10).今回のCAZM点眼液は,通常の点眼液よりは粘性が高いが針が外れることもなく,27CGの洗浄針とC2.5Cmlのディスポーザルの注射器で,容易に涙.内に注入することができ,特別に用意する物品はなく,容易にC1回のCAZM涙.内注入で,頻回の軟膏注入と同等の治療効果が期待できると考えられた.再発までの期間は,前田らの報告ではC2.3週間であった9)のに比べて今回は症例が少ないが,2カ月とC5カ月と再発までの期間をより長期間維持できた.AZMが組織内に長く残留し,再発を長期間防止し,手術に同意しない高齢患者の涙.炎の消炎を長期間維持できる可能性が高いと考えた.涙.内に眼軟膏注入する療法の効果の機序として,軟膏の粘性が高いため,分泌物が洗い流され,軟膏が長期に滞留することや,局所濃度が高いことなどがあげられている9).AZM点眼液の注入でも同様の機序が考えられ,加えて閉鎖された涙.内に注入されるため,反復点眼のような効果で高濃度の薬剤が長期にわたり組織に滞留する6,11).さらに,AZMが炎症抑制作用をもつことが寄与していると思われた7,11).しかし,ブジーと軟膏注入療法を行ったC2年後に,下眼瞼に腫瘤を形成したという報告があり12),軟膏が皮下に迷入した結果と考えられており,AZM点眼液注入にも注意が必要であると考えた.急性涙.炎に対して涙.切開を積極的に行う治療法や,針で吸引する方法も報告されている13).今回は,全員涙点より涙.内に到達可能だった.症例や施設によっては積極的に涙.切開や穿刺を行い,直接創部より涙.内にCAZM点眼を注入することも可能であると考えた.AZM点眼液を創部から涙.内粘膜に作用させることにより,今回も同様の効果が得られるかは不明だが,症例があれば検討したいと考えた.当院初診時の涙.炎にもかかわらず通水検査で通水があり,涙.炎治癒後に涙道内視鏡検査を行ったが,軽度の鼻涙管狭窄以外の異常を認めなかった症例がC2例あった.症例C3はCIgG4関連疾患として観察中であり,IgG4関連疾患としての涙.から鼻涙管粘膜の一時的な浮腫が発生し,機能的な鼻涙管閉塞に至り,消炎できたあとは鼻涙管粘膜の浮腫がとれ,通過性が回復した可能性が高いと思われた14).症例C4では,涙.内結石がもともとあったが15),AZM点眼液注入時で涙.内結石が洗い流され,後日涙道内視鏡検査を行っても異常を認めなかった可能性や,症例C3と同様にCIgG4関連疾患の可能性もあるが,採血を行っていないのでそれ以上は不明だった.涙.炎に対してもCIgG4関連疾患の可能性を念頭におかなければならないと考えた.涙.炎の根治治療としてCDCRや涙.摘出術が確立しているが,患者の高齢化などにより手術に同意しない場合も増加すると考えられ,老齢患者では内服薬コンプライアンスが悪い場合も多い.手術前の速やかで効果的な消炎や手術の代替治療として,AZM点眼液の涙.内注入療法は,症例が少ないものの患者と医療側ともに利益がある治療法である.今後も症例を増やし,検討することが必要であろう.CIV結論AZM点眼の涙.内注入により,急性涙.炎の速やかな消炎・鎮痛をすることができた.一時的な代替治療および手術前の消炎・鎮痛が目的であれば,従来の点眼および点滴・内服治療と比較して同等かそれ以上の効果があり,導入の容易な治療である可能性がある.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)鎌尾知行:2.急性涙.炎.眼科62:1293-1298,C20202)CahillCKV,CBurnsJA:ManagementCofCacuteCdacryocysti-tisCinCAdult.COphthalmicCPlastCReconstrCSurgC9:38-41,C19933)鈴木亨,森田啓文,柳本孝子ほか:涙道手術では抗菌点眼薬は何を選択すべきか?.あたらしい眼科C17:385-389,C20004)AliMJ,JoshiSD,NaikMNetal:Clinicalpro.leandman-agementoutcomeofacutedacryocystitis:twodecadesofexperienceCinCaCtertiaryCeyeCcareCcenter.CSeminCOphthal-molC30:118-123,C20155)SakaiCT,CShinnoCK,CKurataCMCetal:PharmacokineticsCofCazithromycin,levo.oxacin.ando.oxacininrabbitextraoc-ularCtissuesCafterCophthalmicCadministration.COphthalmolCTherC8:511-517,C20196)AkpekCEK,CVittitowCJ,CVerhoevenCRSCetal:OcularCsur-facedistributionandpharmacokineticsofanovelophthal-mic1%azithromycinformulation.JOculPharmacolTherC25:433-439,C20097)井上幸次:アジスロマイシン点眼:薬剤耐性対策時代の新しい抗菌点眼薬.IOL&RSC34:151-156,C20208)松永敏幸:新規C15員環マクロライド系抗菌薬アジスロマイシン(ジスロマックC.)の薬理学的および薬物動態学的特性.日薬理誌117:343-349,C20019)前田清二,中村秀夫,佐藤直樹ほか:慢性涙.炎に対する軟膏注入の試み.臨眼48:622-623,C200410)松見文晶,三ツ井瑞季:涙.鼻腔吻合術後の難治性慢性涙.炎に対する涙.内抗菌眼軟膏注入療法.耳鼻臨床C112:C795-800,C201911)IkemotoCK,CKobayashiCS,CHaranosonoCYCetal:Contribu-tionCofCanti-in.ammatoryCandCanti-virulenceCe.ectsCofCazithromycinCinCtheCtreatmentCofCexperimentalCstaphylo-comlusaureuskeratitis.BMCOphthalmolC20:89,C202012)LiebW:Para.ngranulomCdesCunterlides.CKlinCMonblCAugenheilkdC190:125-126,C198713)GuptaCA,CSainiCP,CBothraCNCetal:Acutedacryocystitis:CchangingpracticepatternoverthelastthreedecadesatatertiaryCcareCsetup.CGrafesCArchCClinCExpCOphthalmolC262:1289-1293,C202414)BatraCR,CMudharCHS,CSandramouliS:ACuniqueCcaseCofCIgG4CsclerosingCDacryocystits.COphthalCPlastCReconstrCSurgC28:e70-e72,C201215)KuboCM,CSakurabaCT,CWadaR:ClinicopathoogocalCfea-turesCofCdacryolithiasisCinJapaneseCpatients:frequentCassociationwithinfectioninagedpatients.ISRNOphthal-molC2013:406153,C2013***

細菌性眼瞼炎に対するアジスロマイシン点眼液を用いた 治療プロトコールの検討─第一報:臨床経過の検討

2022年7月31日 日曜日

細菌性眼瞼炎に対するアジスロマイシン点眼液を用いた治療プロトコールの検討─第一報:臨床経過の検討子島良平*1井上智之*2加治優一*3鈴木崇*4服部貴明*5星最智*6戸所大輔*7江口洋*8井上幸次*9*1宮田眼科病院*2多根記念眼科病院*3松本眼科*4いしづち眼科*5服部クリニック*6堀切眼科*7群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座眼科学*8近畿大学医学部眼科学教室*9鳥取大学医学部視覚病態学CAnalysisofTreatmentProtocolsUsingAzithromycinEyeDropsforBacterialBlepharitis─FirstReport:StudyofClinicalCourseRyoheiNejima1),TomoyukiInoue2),YuichiKaji3),TakashiSuzuki4),TakaakiHattori5),SaichiHoshi6),DaisukeTodokoro7),HiroshiEguchi8)andYoshitsuguInoue9)1)MiyataEyeHospital,2)TaneMemorialEyeHospital,3)MatsumotoEyeClinic,4)IshizuchiEyeClinic,5)HattoriClinic,6)HorikiriEyeClinic,7)DepartmentofOphthalmology,GunmaUniversity,GraduateSchoolofMedicine,8)DepartmentofOphthalmology,KindaiUniversity,FacultyofMedicine,9)DivisionofOphthalmologyandVisualScience,FacultyofMedicine,TottoriUniversityC目的:細菌性眼瞼炎に対する抗菌薬の投与期間と症状推移,再発状況を評価し,細菌性眼瞼炎の治療プロトコールを検討する.方法:2019年C12月.2021年C3月に研究参加施設を受診し,細菌性眼瞼炎と診断され,治療目的でC1%アジスロマイシン点眼液を投与した患者のうち,14日間の点眼期間内にC1回以上受診した患者を対象とした.点眼後の転帰,点眼期間,再発率,症状スコア,治癒に影響を与える因子を検討した.結果:対象は46例46眼(男性10例,女性C36例),平均年齢はC72.2歳であった.治癒率はC41.3%,治癒・改善率はC93.5%,点眼期間はC11.3日,点眼終了C1カ月後の再発率はC6.5%であった.治癒に影響を与える因子は病型で,後部眼瞼炎が前部眼瞼炎よりも治癒しやすいとの結果が示された.結論:細菌性眼瞼炎の治療において,抗菌薬投与後は治療反応性を定期的に確認し,適切な時期に投与を終了することが重要である.CPurpose:ToCinvestigateCtreatmentCprotocolsCforCbacterialCblepharitis.CPatientsandMethods:AmongCtheCpatientsCdiagnosedCwithCbacterialCblepharitisCandCadministered1%CazithromycinCeyeCdropsCbetweenCDecemberC2019CandCMarchC2021,CweCtargetedC46CwhoCwereCseenCatCleastConceCduringCtheirC14-dayCtreatmentCperiod,CandCexaminedCtreatmentCoutcomesCpostCadministration,CdosageCperiod,CandCrecurrenceCrate,CandCconsideredCfactorsCa.ectingrecovery.Results:Inthe46patients,therecoveryratewas41.3%,andeitherrecoveryorimprovementwasnotedin91.5%.Themeandosageperiodwas11.3days,andtherecurrencerateat1monthaftercessationofdosageCwas6.5%.CDiseaseCtypeCwasCtheCfactorCthatCmostCsigni.cantlyCa.ectedCrecovery,Ci.e.,CpatientsCrecoveredCmoreeasilyfromposteriorblepharitisthananteriorblepharitis.Conclusion:Inthetreatmentofbacterialblephari-tis,afteradministeringantibacterialmedications,itisimportanttocheckpatientsatregularintervalsfortreatmentresponsivenessanddiscontinuetheadministrationattheappropriatetime.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(7):999.1004,C2022〕Keywords:細菌性眼瞼炎,治療プロトコール,転帰,再発,アジスロマイシン点眼液.bacterialCblepharitis,Ctreatmentprotocol,outcome,recurrence,azithromycineyedrops.C〔別刷請求先〕子島良平:〒885-0051宮崎県都城市蔵原町C6-3宮田眼科病院Reprintrequests:RyoheiNejima,M.D.,Ph.D.,MiyataEyeHospital,6-3Kuraharacho,Miyakonojo,Miyazaki885-0051,JAPANC0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(145)C999眼瞼炎は,眼瞼縁を中心に痒みや発赤などの炎症症状を呈し,一般的に慢性の経過をたどることが多い疾患であり,炎症の部位により解剖学的には前部眼瞼炎と後部眼瞼炎に分類される1,2).前部眼瞼炎では,ブドウ球菌などの感染や脂漏性疾患により睫毛根部周囲で炎症が生じ,後部眼瞼炎では,マイボーム腺機能不全(meibomianglandCdysfunction:MGD)を背景に,マイボーム腺開口部を中心に炎症が生じる2).原因は多因子である可能性が高く,細菌感染,皮膚炎,ニキビダニの存在など複数が組み合わさっていると推測されるが,治癒に至る治療法については確立されていない1,3).一般的に,眼瞼清拭や温罨法,抗菌薬の点眼・内服で治療が行われるが4.6),いったん症状が軽快しても再発することが多く,継続した管理が必要となる.現在,わが国の眼感染症の治療においては,フルオロキノロン系抗菌点眼薬の使用に偏っており,長期に使用されていることも少なくない.抗菌薬の長期使用は眼表面細菌に影響を与えることから7,8),眼瞼炎のような慢性疾患に漫然と長期に使用することは避けるべきであり,耐性菌を増やさず,かつ十分な治療効果を得られる管理法を模索する必要がある.そこで,細菌性眼瞼炎の治療プロトコールを検討するため,眼瞼組織への薬物移行が良好で9,10),使用期間がC14日間と上限のあるマクロライド系抗菌薬のC1%アジスロマイシン(AZM)点眼液を使用し,眼瞼炎に対する抗菌薬の投与期間と症状の推移,および眼瞼炎の再発状況について評価した.なお,細菌学的検討の結果は別報で報告する.CI対象および方法本研究は多施設共同前向き観察研究であり,宮田眼科病院の倫理委員会の承認を得て実施した(UMIN試験CID:UMIN000039106).ヘルシンキ宣言に基づき,十分なインフォームド・コンセントが文書にて得られた患者を対象とした.対象は,2019年C12月.2021年C3月に本研究参加施設を受診し,細菌性眼瞼炎と診断され,治療目的でC1%CAZM点眼液を投与された患者のうち,14日間の点眼期間内にC1回以上受診した患者とした.選択基準は,①C16歳以上,②初診時に「眼局所用抗菌薬の臨床評価方法に関するガイドライン」12)のスコア判定基準(表1)に基づき自覚症状・他覚的所見のスコア総計がC4点以上で,他覚的所見のうち眼瞼縁充血・眼瞼発赤のスコアがC1点以上,かつ自覚症状のいずれかのスコアがC1点以上の両方を満たす患者とした.除外基準は,①眼瞼炎以外の眼瞼疾患(眼瞼内反症,眼瞼腫瘍など)がある患者,②眼瞼炎以外の細菌性,真菌性,ウイルス性,アレルギー性などの外眼部炎症疾患(結膜炎や角膜炎など)がある患者,③重度の眼表面疾患を有する患者,④C2週間以内に抗菌薬・ステロイド薬・免疫抑制薬を局所または全身投与された患者のいずれかに該当する患者とした.担当医師は,初診時に,他覚的所見より主たる炎症を認める部位を判断し,眼瞼炎を前部眼瞼炎または後部眼瞼炎のいずれかに分類した.また,「マイボーム腺機能不全の定義と診断基準11)」を参考にCMGDの有無を判断した.1%CAZM点眼液は,最初のC2日間は1回C1滴,1日2回,その後は1日C1回C12日間の計14日間点眼することとし,途中で治癒と判定した場合にはその時点で点眼を終了した.眼瞼清拭,温罨法の実施は担当医師の判断に委ねた.初診時,点眼C7日後,14日後,点眼終了C1カ月後に,自覚症状および他覚的所見をスコア判定基準12)(表1)に基づき評価した.転帰は,7日後に「治癒」「治療継続」「治療変更」のC3段階,14日後に「治癒」「改善」「不変」「悪化」のC4段階で判定することとし,スコアの推移を指標に,最終的に担当医師が判定した(表2).点眼終了C1カ月後には再発状況を確認した.自覚症状・他覚的所見のスコア総計がC4点以上,または抗菌点眼薬による治療を再開する必要がある場合に再発と定義した.観察期間を通して副作用を収集した.評価項目は,治癒率(治癒と判定された割合),治癒・改善率(治癒および改善と判定された割合),点眼期間,自覚症状および他覚的所見の各スコアの推移,治癒に関連する背景因子,再発率とした.統計解析は利用可能なすべてのデータを用いて行い,スコアは初診時との比較を混合効果モデルで,背景因子の特定は単変量および多変量ロジスティック回帰分析にて解析した.CII結果対象はC46例C46眼であった.患者背景を表3に示す.眼瞼清拭,温罨法を観察期間中に実施した症例はなかった.初診時に,緑内障治療薬(3例),アレルギー性結膜疾患治療薬(4例),ドライアイ・角膜上皮障害治療薬(9例),その他点眼薬(2例)が併用されていた(重複あり).転帰判定の結果,全症例の点眼終了時における治癒率は41.3%(19/46例),治癒・改善率はC93.5%(43/46例)で(表4),点眼終了までの点眼期間(平均値C±標準偏差)はC11.3C±3.1日(6.14日)であった.1例でスコアは改善していたものの,患者希望(粘性のため点眼しづらい)により点眼C7日後にC1%CAZM点眼液の投与を中止した.点眼終了C1カ月後の再発率はC6.5%(3/46例)であった.自覚症状および他覚的所見のスコアは,すべての項目で,いずれの観察時点でも初診時から有意に減少した(図1).治癒に影響を与える因子は病型のみで,後部眼瞼炎が前部眼瞼炎よりも治癒しやすいという結果が得られた(オッズ比38.462,95%信頼区間C6.944-200.000,p<0.0001).病型別判定基準スコア自覚症状異物感C.±++++++なしCほとんどなしC時々ゴロゴロするCゴロゴロするが開瞼可能Cたえずゴロゴロして開瞼不可能C0C0.5123流涙C.±++++++なしCほとんどなしC涙で眼が潤むC涙が時々こぼれるC涙が頻繁にこぼれるC0C0.5123他覚的所見眼瞼縁充血・眼瞼発赤C.±++++++所見なしC所見ほとんどなしC眼瞼縁の軽度の充血を認めるが眼瞼皮膚の発赤がないC眼瞼縁の高度の充血を認めるが眼瞼皮膚の発赤がないC眼瞼縁の潰瘍又は眼瞼皮膚の発赤を認めるC0C0.5123睫毛部分の分泌物C.±++++++所見なしC所見ほとんどなしC数本の睫毛根部に分泌物を認めるC多数の睫毛根部に分泌物を認めるC分泌物により複数の睫毛が束状になっているC0C0.5123結膜充血C.±++++++所見なしC所見ほとんどなしC軽度又は部分的な充血を認めるC中等度の充血を認めるC高度の充血を認めるC0C0.5123表2点眼7日後,14日後の転帰判定転帰判定スコアの推移治癒自覚症状および他覚的所見のスコア総計が初診時のC1/4以下改善自覚症状および他覚的所見のスコア総計が初診時のC1/2以下不変改善,悪化のどちらとも判定できない悪化自覚症状および他覚的所見のスコア総計が初診時よりも悪化スコアの推移を指標に,最終的に担当医師が転帰を判定した.の点眼C14日後までの治癒率は,前部眼瞼炎でC11.1%(3/27CIII考按例),後部眼瞼炎でC84.2%(16/19例),治癒・改善率はそれぞれC88.9%(24/27例),100.0%(19/19例)であった.自現在,眼瞼炎を含む眼感染症の治療ではフルオロキノロン覚症状および他覚的所見のスコアは,すべての項目で,前部系抗菌点眼薬が使用されることがほとんどであるが,症状が眼瞼炎では点眼C14日後以降,後部眼瞼炎では点眼C7日後以軽度の場合には,抗菌薬を処方したまま再受診を促さず,漫降で初診時から有意に減少した(表5).然と点眼が継続されているケースを多く経験する.しかし,副作用はC5例(10.9%)でC6件認められ,べたつくがC2件,抗菌点眼薬の長期投与は眼表面の常在細菌に影響を及ぼすこ霧視,異物感,乾燥感,刺激感がそれぞれC1件であった.とがわかっており,点眼期間が長くなるほど,点眼中止後の性別男性10(C21.7%)女性36(C78.3%)年齢(歳)C72.2±11.3歳病型前部眼瞼炎27(C58.7%)後部眼瞼炎19(C41.3%)CMGDなし15(C32.6%)あり31(C67.4%)涙道疾患なし46(C100.0%)あり0(0C.0%)併用療法なし34(C73.9%)あり12(C26.1%)年齢は平均値±標準偏差表4全症例の転帰(n=46)治癒(治癒率)改善(改善率)不変悪化点眼C7日後C10(2C1.7%)C─C─C─C─点眼C14日後C9(1C9.6%)C24(5C2.2%)C2C0C─合計C19(4C1.3%)C24(5C2.2%)C2C093.5%─:判定せず,または算出せず.1例はC14日間の点眼期間中に点眼を中止した.改善例での点眼終了後の治療は,経過観察がC16例(69.2%),ドライアイ・角膜上皮障害治療薬を使用し経過観察がC7例(26.9%),抗菌点眼薬の変更がC1例(3.8%)であった.不変例C2例は経過観察であった.自覚症状スコアの推移他覚的所見スコアの推移合計スコアの推移8.07.06.05.04.03.02.01.00.02.01.82.01.81.61.61.41.41.21.00.80.61.21.00.8スコア0.60.40.40.20.00.20.0初診時点眼点眼点眼終了初診時点眼点眼点眼終了初診時点眼点眼点眼終了7日後14日後1カ月後7日後14日後1カ月後7日後14日後1カ月後図1自覚症状,他覚的所見の項目別スコアおよび合計スコア,総計スコアの推移すべての項目で,いずれの観察時点でも初診時から有意に減少した(p<0.001,混合効果モデル).値は推定値±95%信頼区間を示す.耐性菌の割合が高くなることが報告されている7,8).わが国用の適応を判断し,治療選択,使用量,使用期間などを明確ではC2016年に「薬剤耐性(CAMR)対策アクションプラン」に評価して,抗微生物薬が投与される患者のアウトカムを改が発表され,耐性菌の増加を防ぐための抗菌薬の適正使用が善し,有害事象を最小限にすることを主目的とする」との記求められている.C2019年に公表された「抗微生物薬適正使載である.眼科においても例外ではなく,まず病態を見きわ用の手引き」によると13),適正使用とは「主に抗微生物薬使めて適応を判断し,適切な抗菌薬を選択する,使用量の減少表5病型別の自覚症状および他覚的所見のスコア変化量病型項目初診時点眼C7日後点眼C14日後点眼終了C1カ月後推定値変化量*[95%信頼区間]p値変化量*[95%信頼区間]p値変化量*[95%信頼区間]p値前部自覚症状異物感C0.9[C0.7,C1.0]C.0.2[.0.4,C0.1]C0.1792C.0.5[.0.7,C.0.3]<.0001.0.4[.0.6,C.0.2]<.0001眼瞼炎流涙C0.8[C0.5,C1.0]C.0.3[.0.6,C0.1]C0.1353C.0.3[.0.6,C.0.1]C0.0137.0.3[.0.6,C0.0]C0.0371合計C1.6[C1.3,C1.9]C.0.5[.0.9,C0.0]C0.0555C.0.8[.1.1,C.0.5]<.0001.0.7[.1.0,C.0.4]<.0001他覚的所見眼瞼縁充血・発赤C1.5[C1.2,C1.7]C.0.3[.0.5,C0.0]C0.0437.0.4[.0.6,C.0.2]C0.0004.0.5[.0.7,C.0.3]<.0001睫毛部分の分泌物C1.9[C1.7,C2.1]C.0.8[.1.2,C.0.4]<.0001.1.0[.1.3,C.0.7]<.0001.1.1[.1.3,C.0.8]<.0001結膜充血C1.1[C0.9,C1.2]C.0.5[.0.8,C.0.3]C0.0001.0.5[.0.6,C.0.3]<.0001.0.5[.0.7,C.0.3]<.0001合計C4.5[C4.0,C4.9]C.1.8[.2.5,C.1.1]<.0001.1.7[.2.3,C.1.1]<.0001.2.0[.2.5,C.1.5]<.0001総計C6.1[C5.5,C6.7]C.2.3[.3.3,C.1.4]<.0001.2.5[.3.3,C.1.8]<.0001.2.7[.3.4,C.2.0]<.0001後部自覚症状異物感C1.0[C0.8,C1.2]C.0.7[.0.9,C.0.4]<.0001.0.7[.1.0,C.0.5]<.0001.0.8[.1.0,C.0.6]<.0001眼瞼炎流涙C1.6[C1.2,C1.9]C.1.0[.1.3,C.0.7]<.0001.1.2[.1.5,C.0.8]<.0001.1.4[.1.7,C.1.1]<.0001合計C2.6[C2.2,C2.9]C.1.6[.2.0,C.1.2]<.0001.1.9[.2.3,C.1.4]<.0001.2.2[.2.6,C.1.8]<.0001他覚的所見眼瞼縁充血・発赤C1.4[C1.2,C1.7]C.0.8[.1.1,C.0.6]<.0001.1.0[.1.3,C.0.8]<.0001.1.1[.1.4,C.0.9]<.0001睫毛部分の分泌物C1.2[C1.0,C1.5]C.0.9[.1.2,C.0.5]<.0001.0.9[.1.3,C.0.5]<.0001.1.0[.1.4,C.0.7]<.0001結膜充血C1.3[C1.1,C1.5]C.0.7[.0.9,C.0.4]<.0001.0.9[.1.2,C.0.7]<.0001.1.0[.1.2,C.0.8]<.0001合計C3.9[C3.4,C4.5]C.2.4[.3.0,C.1.8]<.0001.2.9[.3.6,C.2.2]<.0001.3.2[.3.8,C.2.6]<.0001総計C6.5[C5.8,C7.2]C.4.0[.4.8,C.3.2]<.0001.4.7[.5.7,C.3.8]<.0001.5.4[.6.2,C.4.6]<.0001*初診時からの変化量.太字はp<0.05.や使用期間の短縮の可能性を探る,などを実行しなければならない.細菌性眼瞼炎は,臨床でしばしば遭遇する慢性疾患でありながら,長期的な病態や治療について調査した報告は見当たらず,患者の状態を正確に把握しきれていない.治癒に至る治療法についてはいまだ確立されておらず1),一般的には眼瞼清拭や温罨法,抗菌薬の点眼や内服,ステロイドの点眼で治療が行われている.しかし,一旦軽快しても再発することがあり,漫然と抗菌点眼薬が使用されるケースも多い.そこで今回,眼瞼炎の病態を把握するとともに,投与期間が最長でもC14日間のC1%CAZM点眼液を使用し,抗菌点眼薬の使用期間をより短縮できるかどうか,また点眼終了後の再発状況を確認し,眼瞼炎の短期的な治療プロトコールを検討した.1%CAZM点眼液投与後の治癒率は,7日後でC21.7%,14日後でC19.6%であり(全体の治癒率C41.3%),治癒までの点眼期間をC14日間よりも短縮できる症例がある一方で,14日間の点眼でも治癒に至らない症例もあった.しかし,治癒に至らない症例のほとんどは改善しており(治癒・改善率:93.5%),自覚症状および他覚的所見のスコアも点眼前より低下していた.これらのことから,不必要な抗菌薬の投与を避けるためには,抗菌薬投与後はC7日目を目安に再度の受診を促し,治療に対する反応性を確認のうえ,点眼を終了するか継続するかの判断をすることが重要である.継続する場合には,1%CAZM点眼液はC14日間で投与を終了し,その後は,再発率もC6.5%と低いことから,終了時のスコアが十分低下している場合には,いったん経過観察としても差し支えないと思われる.また,症状が再燃する患者では追加投与を検討しても良いと考えられる.病型別に治癒に及ぼす影響を検討したところ,後部眼瞼炎は前部眼瞼炎よりも治癒しやすいという結果が得られた.14日目までの治癒率も,前部眼瞼炎がC11.1%,後部眼瞼炎がC84.2%と,後部眼瞼炎で高かった.後部眼瞼炎に効果が高い理由として,主成分であるCAZMの抗菌作用や抗炎症作用6,14),マイボーム腺上皮細胞への直接作用15)などさまざまな機序が関与したと推測される.日本人のCMGD関連後部眼瞼炎患者に対する効果を検討したCAritaらの報告6)でも,評価指標が異なるものの,14日間の点眼により,炎症所見である血管拡張のスコアは点眼前C1.9C±0.9からC0.4C±0.5と有意に改善しており(p<0.001),同様の結果が示されたといえる.一方,後部眼瞼炎に比べて前部眼瞼炎で治癒率が低かった理由として,起因菌が異なる可能性,点眼という投与方法の限界,つまりは睫毛根部への薬剤到達が十分ではない可能性などが考えられるが,詳細は不明であり,現時点においては症状の軽減に眼瞼清拭1)や眼軟膏の併用も検討してよいと考えられる.本研究の限界は,観察研究であり,また症例数が少ないことである.観察研究は実臨床に基づく結果を得られるが,医師の裁量にゆだねられる部分もあり,結果には偏りが生じる.症例数が多くなるほど偏りは解消されるが,本研究では症例数が少なかったため,病型間の症状の違いや薬物反応性の違いなどを特定することはできなかった.また,今回は1.5カ月という比較的短期の報告であり,慢性疾患である眼瞼炎の寛解から再発までの期間や,長期の管理法などは不明である.加えて,病型が治癒に影響を与えることも判明したため,今後は長期的な管理方法や,眼瞼清拭などとの併用治療など,病型別にさらなる検討が必要である.慢性的でしばしば再発する眼瞼炎では,長期にわたる管理が必要とされ,患者の治療への協力が不可欠である.患者には,1%CAZM点眼液を使用する場合には,粘性のある点眼液であることを投与前に十分に説明したうえで,眼瞼炎の薬物治療中には定期的に診察に訪れること,また,いったん症状が治まっても再発する可能性があり,いつもと違うと感じた場合には来院することを伝えておく必要がある.CIV結論細菌性眼瞼炎の治療において,抗菌薬投与後は治療反応性を定期的に確認し,適切な時期に投与を終了することが重要である.1%CAZM点眼液を治療に使用する場合,90%以上の症例ではC14日以内に治癒もしくは改善するため,治癒と判断した際には,または最長でもC14日間で投与を終了する.利益相反本研究は千寿製薬株式会社からの資金提供を受けて実施した.文献1)AmescuaG,AkpekEK,FaridMetal;AmericanAcade-myCofCOphthalmologyCPreferredCPracticeCPatternCCorneaCandCExternalCDiseasePanel:BlepharitisCPreferredCPrac-ticePatternR.OphthalmologyC126:56-93,C20192)EberhardtCM,CRammohanG:Blepharitis.[Internet],CStatPearlsPublishing,TreasureIsland(FL),2020Jul17.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK459305/3)P.ugfelderCSC,CKarpeckiCPM,CPerezVL:TreatmentCofblepharitis:recentCclinicalCtrials.COculCSurfC12:273-284,C20144)Yactayo-MirandaCY,CTaCCN,CHeCLCetal:ACprospectiveCstudyCdeterminingCtheCe.cacyCoftopical0.5%levo.oxacinonCbacterialC.oraCofCpatientsCwithCchronicCblepharocon-junctivitis.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC247:993-998,C20095)HaqueRM,TorkildsenGL,BrubakerKetal:Multicenteropen-labelCstudyCevaluatingCtheCe.cacyCofCazithromycinCophthalmicCsolution1%ConCtheCsignsCandCsymptomsCofCsubjectswithblepharitis.CorneaC29:871-877,C20106)AritaCR,CFukuokaS:E.cacyCofCazithromycinCeyedropsCforCindividualsCwithCmeibomianCglandCdysfunction-associ-atedCposteriorCblepharitis.CEyeCContactCLensC47:54-59,C20217)OnoCT,CNejimaCR,CIwasakiCTCetal:Long-termCe.ectsCofCcataractsurgerywithtopicallevo.oxacinonocularbacte-rial.ora.JCataractRefractSurgC43:1129-1134,C20178)NejimaR,ShimizuK,OnoTetal:E.ectoftheadminis-trationperiodofperioperativetopicallevo.oxacinonnor-malCconjunctivalCbacterialC.ora.CJCCataractCRefractCSurgC43:42-48,C20179)AkpekEK,VittitowJ,VerhoevenRS:Ocularsurfacedis-tributionandpharmacokineticsofanovelophthalmic1%azithromycinCformulation.CJCOculCPharmacolCTherC25:C433-439,C200910)SakaiCT,CShinnoCK,CKurataCMCetal:PharmacokineticsCofCazithromycin,levo.oxacin,ando.oxacininrabbitextraoc-ularCtissuesCafterCophthalmicCadministration.COphthalmolCTherC8:511-517,C201911)天野史郎,マイボーム腺機能不全ワーキンググループ:マイボーム腺機能不全の定義と診断基準.あたらしい眼科C27:627-631,C201012)厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課:眼局所用抗菌薬の臨床評価方法に関するガイドラインについて薬生薬審発0418第1号,平成31年4月18日13)厚生労働省健康局結核感染症課:抗微生物薬適正使用の手引き第二版.2019Chttps://www.mhlw.go.jp/content/C10900000/000573655.pdf14)LuchsJ:AzithromycinCinCDuraSiteCforCtheCtreatmentCofCblepharitis.ClinOphthalmolC4:681-688,C201015)LiuCY,CKamCWR,CDingJ:E.ectCofCazithromycinConClipidCaccumulationCinCimmortalizedChumanCmeibomianCglandCepithelialcells.JAMAOphthalmolC132:226-228,C2014***