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LASIK 術後長期経過し外傷性フラップ偏位を認めた1 例

2026年1月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(1):93.98,2026cLASIK術後長期経過し外傷性フラップ偏位を認めた1例下河邉有利恵門田遊佐々木研輔佛坂扶美吉田茂生久留米大学医学部眼科学講座CLate-OnsetTraumaticFlapDislocationafterLaserInSituKeratomileusisYurieShimokobe,YuMonden,KensukeSasaki,HumiHotokezakaandShigeoYoshidaCDepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicineC目的:Laserinsitukeratomileusis(LASIK)の術後合併症の一つとして,角膜フラップ偏位をきたすことがある.LASIK術後長期経過し,頭部外傷時に角膜フラップ偏位を生じたC1例を経験したので報告する.症例:59歳,男性.10年前に久留米大学病院にて両眼CLASIKを施行.鍬で右前額部を打撲,右眼視力低下をきたしC2日後近医を受診し,当院に紹介となった.受診時に右眼視力C0.5(0.8),角膜フラップの偏位と皺襞を認め,翌日角膜フラップ下洗浄と整復術を施行した.10-0ナイロン糸にて皺襞が進展するまで単結節縫合を行い,全周C12針にて整復した.術後早期に段階的に抜糸を行い,術後C3カ月で右眼視力C1.5(n.c.)に改善した.結論:LASIK後長期経過していても,外傷によるフラップ偏位は生じることがあり,注意を要すると考えられた.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofCtraumaticC.apCdislocationClongCafterClaserCinCsitukeratomileusis(LASIK)sur-gery.CCase:AC59-year-oldCmanCwhoCunderwentCLASIKCsurgeryC10CyearsCagoCpresentedCwithCdecreasedCvisionCafterbeinghitwithahoeinhisrightforehead.Thevisualacuity(VA)inhisrighteyewas0.5(0.8)C,andcorneal.apCdislocationCandCfoldCwereCobserved.CTheC.apCwasCsurgicallyCrepositionedCwithC12CinterruptedC10-0CnylonCsuturesandstretched.Thestitcheswereremovedgraduallyearlyaftersurgery,andtheVAimprovedto1.5(n.c.)C3monthsafterthesurgery.Conclusion:EvenlongafterLASIKsurgery,.apdislocationmayoccurduetotrau-ma,butgoodVAcanbyachievedwithsurgery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(1):93.98,2026〕Keywords:レーシック,外傷,フラップ偏位,フラップ皺襞,フラップ整復術.LASIK,trauma,.apdislocation,.apfold,repositioningofthe.ap.CはじめにLaserCinCsitukeratomileusis(LASIK)は角膜屈折矯正手術の一つで,疼痛が少なく外来手術で施行可能であり,術後の裸眼視力が比較的早期に回復することから広く施行されている.LASIK術後合併症としては角膜上皮迷入(epithelialingrowth),層間角膜炎(di.useClamellarkeratitis:DLK),感染,角膜拡張症などがあげられ,角膜フラップ偏位もその一つであるが頻度は少ない1).角膜フラップ偏位はCLASIK手術後C24時間以内が多く,目をこする,目を圧迫するなどによって起こるといわれ,長期経過した例では外傷によるものが報告されている2.9).角膜フラップ偏位により起こる所見には,角膜フラップ皺襞(fold),微細な皺襞(wrinckle),微細線条(microstriae)があり,合併症としてDLK,epithe-lialingrowth,感染があげられる.今回,LASIK術後長期経過した例で頭部外傷時に角膜フラップ偏位を生じたC1例を経験したので報告する.CI症例患者:59歳,男性.主訴:右眼視力低下.現病歴:X年,両眼近視性乱視に対して久留米大学病院(以下,当院)にて両眼のCLASIK手術を受けた.マイクロケラトームはCMoria社のCM2,エキシマレーザーはアルコン社のCLADARVisionC4000を使用し,手術は問題なく終了し,その後定期的に当院へ通院していた.X+10年,農作業中に鍬が右前額部に強く当たり,右眼の視力低下を訴え受傷C2〔別刷請求先〕門田遊:〒830-0011福岡県久留米市旭町C67久留米大学医学部眼科学講座Reprintrequests:YuMonden,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicine,67Asahi-machi,Kurume,Fukuoka830-0011,JAPANC図1右眼受傷直後の前眼部写真と角膜形状解析a:散瞳後に撮影した徹照法による前眼部写真,角膜フラップに縦走するCfoldを認めた(.).b:フルオレセイン染色による前眼部写真,フラップ縁にはフルオレセインが貯留している(.).c:前眼部OCT・SS-1000AxialPower(Ketatometric).角膜不正乱視を認めた.日後に近医眼科を受診,角膜フラップ異常を認めたため当院へ紹介となった.既往歴:X年両眼正常眼圧緑内障.X年(LASIK術前)視力:右眼C0.05(1.5C×sph.8.5D(cylC.0.75DAx180°),左眼0.06(1.5C×sph.7.0D(cyl.0.75Ax10°).CX+9年時視力:右眼C0.9(1.5C×sph+1.0D),左眼C0.9(1.5C×sph+1.0D)CX+10年時(受傷直後)所見:視力は右眼C0.5(0.8C×sph+0.75D),左眼C1.2(2.0C×sph+1.0D),眼圧は右眼C7mmHg,左眼C8CmmHgであった.右眼は角膜フラップがやや耳側へ偏位し,角膜フラップに縦走するCfoldを認めた(図1a).また,フルオレセイン染色では,フラップ縁にフルオレセインが貯留していた(図1b).前眼部COCTCSS-1000CAxialCPower(Ketatometric)にて,角膜の不正乱視を認めた(図1c).以上より,頭部鈍的外傷によりCLASIKフラップの偏位が生じたものと判断し,同日入院,翌日緊急手術を施行した.手術法:手術は局所麻酔下で行った.ライトガイドでフラップの偏位,foldを確認し,フラップ縁にマーキングを施行.フラップ縁の角膜上皮をマイクロスパーテルにて.離し,フラップ下に眼内灌流液を注入してフラップの洗浄を十分に行い,整復を試みた.徐々にフラップの伸展は得られたが,フラップ皺襞が残存するために皺襞が伸展する方向に10-0ナイロン糸で縫合し,最終的にC12針角膜縫合を行った.手術所要時間はC1時間であり,手術は問題なく終了した.経過:手術翌日よりレボフロキサシン点眼液C1.5%C1日C4回,ベタメタゾン点眼液C0.1%C1日C4回,トロピカミド・フェニレフリン点眼液C1日C1回点眼を開始した.また,広範囲に角膜びらんを認めたため,久留米大学倫理委員会の承認を得てC20%自己血清点眼液C1日C4回点眼を開始し,治療用ソフトコンタクトレンズ(contactlens:CL)を装用した.術翌日は角膜形状解析にて直乱視を強く認めたが,皺襞は認めなかった(図2a,b).術後C6日,角膜上皮が再生され半抜糸を施行した.半抜糸翌日の角膜形状解析では倒乱視を認め(図2c,d),右眼視力はC0.4(n.c.)であった.術後C8日に全抜糸し,術後C13日の角膜形状解析で角膜乱視はほぼ消失し(図2e,f),右眼視力はC1.2(n.c.)であった.自己血清点眼およびトロピカミド・フェニレフリン点眼は術後C14日で中止し,同日退院となった.退院後にレボフロキサシン点眼,ベタメタゾン点眼は漸減し術後C2カ月で中止とした.術後C3カ月,右眼視力はC1.5(n.c.).フラップ縁,角膜縫合部にやや角膜混濁を認めたが,フラップは整復されていた.鼻側はややフルオレセインの貯留を認めたが,foldは認めなかった(図3a,b).角膜形状解析では角膜乱視の改善を認めた(図3c).術後C2年,右眼視力はC1.2(n.c.).フラップ縁,角膜縫合部の角膜混濁は軽減し,epithelialingrowthも認めなかった.鼻側はわずかにフルオレセインの貯留を認めた(図3c,d).角膜形状解析では角膜乱視の改善を認めた(図3e).CII考按わが国では,2000年に厚生省(現厚生労働省)からエキシマレーザーが承認されて以来,LASIKは多いときには年間約C45万件が施行された.LASIK手術施行から長期間が経過するにつれて,さまざまな長期合併症が報告されるようになったが,欧米に比較して日本ではCLASIK手術施行数が少ないこともあり,国内での報告は少ないのが現状である.今回筆者らは,LASIK手術からC10年が経過し頭部外傷によるフラップ偏位をきたしたC1例を経験した.Schmackらは,LASIKフラップの周辺部の創部は正常な角膜実質のC28.1%の接着力であり,フラップ中央はそのC1/10のC2.4%であると報告しており10),Khourirらが「the.apneverheals」と図2右眼フラップ整復後の前眼部写真と角膜形状解析a:術翌日の前眼部写真.フラップの皺襞は伸展していた.Cb:術翌日の前眼部COCT〔SS-1000CAxialPower(Ketatometric),以下同様〕.直乱視を認めた.c:術後C7日の前眼部写真.半抜糸翌日フラップの皺襞は認めなかった.Cd:術後C7日の前眼部COCT.倒乱視を認めた.Ce:術後C13日の前眼部写真,全抜糸後C5日.Cf:術後C13日の前眼部OCT.倒乱視はほぼ消失している.表現しているように3),長期経過しても外傷によるフラップを要した症例の報告を表1にまとめた2.9).最長C24年が報偏位は起こりうると考えられる.2010年以降にCLASIK術告されており,さらに年数の長い報告も今後されていくと考後C10年以上が経過し,外傷によりフラップ偏位をきたし,えられる.受傷機転は,Shihらの交通事故で詳細不明な症fold,wrinckleやCmicrostriaeなどの異常を生じ,外科治療例を除き,全例で眼部に直接受傷していた(表1).本症例で図3右眼術後3カ月と2年の前眼部写真と角膜形状解析a,b:スクレラルスキャッタリング法による前眼部写真.Ca:術後C3カ月.角膜縫合部にやや角膜混濁を認めるが,フラップは整復されている.b:術後C2年:角膜縫合部の角膜混濁は軽減し,epithelialingrowthも認めなかった.Cc,d:フルオレセイン染色による前眼部写真.Cc:術後C3カ月.鼻側はややフルオレセインの貯留を認めた.d:術後C2年.鼻側はわずかにフルオレセインの貯留を認めた.Ce,f:前眼部COCT・SS-1000AxialPower(Ketatometric).e:術後C3カ月:角膜不正乱視の改善を認める.Cf:術後C2年:角膜不正乱視の改善を認める.は,本人は鍬で右前額部を受傷し,右眼は受傷していないとから,本症例は前額部の衝撃が強く,その痛みで右眼にも鍬訴えており,診察上も外眼部や前眼部には明らかな外傷は認の一部が当たっていたことに気づいてない可能性が考えられめられなかった.しかし,フラップ偏位をきたしていることた.フラップ偏位による角膜フラップのCfoldやCwrinckle,表1LASIK術後10年以上経過し外傷でフラップの異常により外科治療を要した症例の報告著者報告年(年)年齢(歳)性別LASIKから受傷までの期間受傷機転受傷から整復までの期間おもな所見整復方法整復前視力整復後視力CHolt2)C2012C59女14年尖っていない木片5週Cfold,macrostriae,ingrowth洗浄,SCLC0.71.0(C1.2)CKhoueir3)C2013C35男10年棒5時間フラップ反転洗浄,SCLC0.01C0.8CTaneri4)C2019C49男10年紙飛行機1日Cfold洗浄,SCLC0.32C1.0CTing5)2例C2019C58男14年U字型の金属5週Cfold,ingrowth洗浄0.02(C0.025)C1.0C67男10年小枝4カ月Cfold,ingrowth洗浄C0.40.8(C1.0)CChamg6)C2020C42男10年小枝6日感染による浸潤,Cingrowth洗浄,SCLC0.2C1.0CShih7)5例C2021C34女11年交通事故42時間個別の記載なし洗浄,縫合,CSCL0.77(logMAR)0.30(logMAR)C38女10年指3時間個別の記載なし洗浄,縫合,CSCL0.30(logMAR)0.00(logMAR)C43女10年ペン5時間個別の記載なし洗浄,縫合,CSCL0.77(logMAR)0.05(logMAR)C43女10年下敷き8時間個別の記載なし洗浄,SCL0.70(logMAR)0.00(logMAR)C35男10年机の角4時間個別の記載なし洗浄,縫合,CSCL0.15(logMAR)0.05(logMAR)CCarranza-Casas8)C2022C59男16年犬にひっかかれた3時間Cfold洗浄,SCL指数弁C0.8CZhang9)C2024C59男24年トウモロコシの茎6カ月Cwrinklestriarions,ingrowth層間掻爬,洗浄,SCLC0.5C0.5当院C2025C59男10年鍬(右前額部)3日後Cfold洗浄,縫合,CSCL0.5(C0.8)1.5(nc)microstriaeは瞳孔領にかかると不正乱視を引き起こし視力低下の原因となりうるため,foldやCwrinckle,microstriaeを整復する必要がある.角膜縫合を行った症例は当院を含め5例であった(表1).フラップ下洗浄のみでフラップの伸展が得られない場合,角膜縫合を追加し整復することでCfoldの伸展が得られると考えられる.本症例においては,foldが消失するまで角膜縫合を追加したこと,さらに可能な限り早期に段階的に抜糸することで縫合糸による角膜乱視が軽減し,視力が改善したと考えられた.本症例と同様(表1とは別)に,過去にCLASIK後C7年でフラップ偏位を生じた例にフラップ縫合をC9針行い,術後早期に段階的に抜糸が行われ,視力C1.0を得た報告もあった11).本症例ではCepithelialingrowthは認められなかった.フラップ偏位に伴うCepithe-lialingrowthの場合,フラップが偏位したことにより角膜上皮細胞がフラップ縁から迷入することで発症するため,受傷からフラップ整復までの時間が長い場合に起こりやすい傾向にあると考えられる.Fernandez-Barrientosらは,受傷から整復までの時間が長いほどCepithelialCingrowthになりやすいと報告している1).EpithelialCingrowthがフラップ辺縁のみで進行が止まっている場合は慎重な経過観察でよいが,Cepithelialingrowthが瞳孔領にかかった場合や角膜融解に至った場合には視機能に大きな影響が出るため,フラップ下洗浄やデブリードマンなどの手術介入が必要となる.本症例では受傷からフラップ整復までC3日と比較的早期に整復できたこと,術中にフラップ内を十分洗浄したことでCepithelialingrowthを防ぐことができた可能性がある.また,フラップ整復後にはCepithelialCingrowthやCDLKなどの合併症を防ぐため,フラップ側とベッド側の接着を良好にしておく必要があると考える.角膜間の接着を良好にする方法として,フラップ整復術の際に眼内灌流液を蒸留水でC2倍希釈し意図的に角膜フラップに浮腫を起こす報告もあった12).本症例では角膜縫合と治療用CCL装用により角膜の接着が良好となり,術後にCepithelialCingrowthやCDLKなどの発症がなかったと考えられた.CIII結論今回CLASIK術後C10年という長期経過後,外傷によりフラップ偏位が生じた症例を経験した.LASIK術後長期経過していても,外傷によるフラップ偏位は生じることがあり,注意が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)Fernandez-BarrientosCY,COrtega-UsobiagaCJ,CBeltran-SanzCJCetal:E.cacyCandCsafetyCofCsurgicallyCmanagedClatetraumaticLASIK.apdisplacementsinastudyof66cases.JRefractSurgC38:270-276,C20222)HoltCDG,CSikderCS,CMi.inMD:SurgicalCmanagementCofCtraumaticCLASIKC.apCdislocationCwithCmacrostriaeCandCepithelialCingrowthC14CyearsCpostoperatively.CJCCataractCRefractSurgC38:357-361,C20123)KhoueirZ,HaddadNM,SaadAetal:Traumatic.apdis-locationC10CyearsCafterCLASIK.CcaseCreportCandCliteratureCreview.JFrOphtalmolC36:82-86,C20134)TaneriS,RostA,KieslerSetal:Traumatic.apdisloca-tionbypaperairplane10yearsafterLASIK.AmJOph-thalmolCaseRepC15:100514,C20195)TingCDSJ,CDanjouxJP:Late-onsetCtraumaticCdislocationCoflaserinsitukeratomileusiscorneal.aps:acaseserieswithCmanyCclinicalClessons.CIntCOphthalmolC39:1397C-1403,C20196)ChangCYC,CLeeYC:TraumaticClaserCinCsituCkeratomileu-sis.apdislocationwithepithelialingrowth,propionibacte-riumacnesinfection,anddi.uselamellarkeratitis:acasereport.Medicine(Baltimore)C99:e19257,C20207)ShihCLY,CPengCKL,CChenJL:TraumaticCdisplacementCofClaserCinCsituCkeratomileusis.aps:anCintegratedCclinicalCcasepresentation.BMCOphthalmolC21:177,C20218)Carranza-CasasCM,CAnaya-BarraganCF,CCedilloCGCetal:CManagementCofClateCtraumaticCLASIKC.apCdislocationCrelatedCtoCdogCscratchC16CyearsCpostoperatively.CAmJOphthalmolCaseRepC25:101270,C20229)ZhangX,WangH,GaoXetal:Late-onsettraumaticcor-neal.apdislocationandsecondaryepithelialingrowth24yearsCafterCLASIK.CAmCJCOphthalmolCCaseCRepC36:C102180,C202410)CSchmackCI,CDawsonCDG,CMcCareyBE:CohesiveCtensileCstrengthCofChumanCLASIKCwoundsCwithChistologic,Cultra-structural,CandCclinicalCcorrelations.CJCRefractCSurgC21:C433-445,C200511)MoshirfarCM,CAndersonCE,CTaylorCNCetal:ManagementCofCaCtraumaticC.apCdislocationCsevenCyearsCafterCLASIK.CCaseRepOphthalmolMedC2011:514780,C201112)UrseaCR,CFengMT:TraumaticC.apCstriaeC6CyearsCafterLASIK:casereportandliteraturereview.JRefractSurgC26:899-905,C2010***