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非感染性ぶどう膜炎に対するアダリムマブの治療効果と安全性

2019年9月30日 月曜日

《原著》あたらしい眼科36(9):1198.1203,2019c非感染性ぶどう膜炎に対するアダリムマブの治療効果と安全性青木崇倫*1,2永田健児*1関山有紀*1中野由起子*1中井浩子*1,3外園千恵*1*1京都府立医科大学眼科学教室*2京都府立医科大学附属北部医療センター病院*3京都市立病院CE.cacyandSafetyofAdalimumabfortheTreatmentofRefractoryNoninfectiousUveitisTakanoriAoki1,2),KenjiNagata1),YukiSekiyama1),YukikoNakano1),HirokoNakai1,3)andChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)DepartmentofOphthalmology,NorthMedicalCenter,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,3)KyotoCityHospitalC目的:アダリムマブ(ADA)を導入した非感染性ぶどう膜炎の有効性と安全性の検討.対象および方法:京都府立医科大学附属病院でC2018年C6月までにCADAを導入したぶどう膜炎患者(男性C7例,女性C3例)を対象に,臨床像,ADA導入前後の治療内容,治療効果,副作用を検討した.結果:症例の平均年齢C48.2歳(10.75歳),平均観察期間19.4カ月,臨床診断はCBehcet病(BD)7例,Vogt-小柳-原田病(VKH)3例であった.導入理由はインフリキシマブ(IFX)から変更がC6例,免疫抑制薬の副作用がC1例,ステロイド・免疫抑制薬で難治がC3例であった.BDの眼炎症の発作頻度はCADA導入前の平均発作回数C4.8回/年で,導入後はC1.4回/年に減少した.VKHでは,ADA導入前の平均ステロイド量C9.8Cmgから,最終時C7.2Cmgに漸減できた.ADA導入後にCVKH再燃を認め,ステロイドを増量した例がC1例あった.また,BDのうち,1例が注射時反応,1例が効果不十分でCADA中断となった.結論:BDではCADAはCIFXと同等以上の効果が期待でき,VKHの再燃例では,ADA追加のみでは効果不十分でステロイドの増量が必要な場合があった.CPurpose:Toevaluatethee.cacyandsafetyofadalimumab(ADA)ineyeswithrefractorynoninfectiousuve-itis.PatientsandMethods:Thisretrospectivecaseseriesstudyinvolved10refractoryuveitispatients(7males,3females;meanage:48.2years)treatedCwithCADACatCKyotoCPrefecturalCUniversityCofCMedicineCuntilCJuneC2018,Cwithameanfollow-upperiodof19.4months.Results:DiagnosesincludedBehcet’sdisease(BD:7patients)andVogt-Koyanagi-Haradadisease(VKH:3patients);reasonsCforCadministrationCwereCswitchingCfromCin.iximab(IFX)toADA(n=6),Cimmunosuppressantside-e.ects(n=1),CandCinsu.cientCe.ectCofCbothCsteroidCandCimmuno-suppressant(n=3).ADAreducedthefrequencyofocularattacksinBDfrom4.8/yearto1.4/year,andoral-ste-roidCamountCinCVHKCfromC9.8CmgCtoC7.2Cmg.CTwoCBDCpatientsCdiscontinuedCADACdueCtoCallergyCandCinsu.cientCe.ect.Conclusions:InBD,ADAwasprobablyofequivalentorgreatere.ectthanIFX.InVKH,ADAalonewasofinsu.ciente.ect.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)36(9):1198.1203,C2019〕Keywords:アダリムマブ,ベーチェット病,Vogt-小柳-原田病,インフリキシマブ,ぶどう膜炎.adalimumab,CBehcet’sdisease,Vogt-Koyanagi-Haradadisease,in.iximab,uveitis.Cはじめに非感染性ぶどう膜炎に対する治療は,局所・全身ステロイドが中心であり,難治例には免疫抑制薬のシクロスポリン(cyclosporine:CsA)が使用可能である.2007年C1月よりベーチェット病(Behcet’sdisease:BD)に対して,生物学的製剤である腫瘍壊死因子(tumorCnecrosisCfactorCa:CTNFa)阻害薬のインフリキシマブ(in.iximab:IFX)が保険適用となり,既存治療に抵抗を示す難治性CBDの有効性が示された1).さらにC2016年C9月には非感染性ぶどう膜炎に対して,完全ヒト型CTNFa阻害薬であるアダリムマブ(adali-〔別刷請求先〕青木崇倫:〒629-2261京都府与謝郡与謝野町男山C481京都府立医科大学附属北部医療センター病院Reprintrequests:TakanoriAoki,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NorthMedicalCenter,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,YosagunYosanochoOtokoyama481,Kyoto629-2261,JAPANC1198(96)mumab:ADA)が保険適用となった.ステロイドや免疫抑制薬で抵抗を示す症例,さまざまな副作用で継続できない症例などの難治性非感染性ぶどう膜炎に対して,ADAの使用が可能になった.また,BDでもCIFXの使用できない症例やIFXの効果が減弱(二次無効)する症例などに対してCADAへの変更が可能となり,治療の選択肢が増えた.ADAは皮下注射のため,自宅での自己注射により病院拘束時間が短いことも有用な点である.これらのCIFXやCADAの眼科分野での生物学的製剤の認可により,難治性ぶどう膜炎に対して治療の選択肢が広がったが,新たな治療薬として実臨床での適応症例や,使用方法,効果,安全性の検討が必要である.そこで,京都府立医科大学附属病院(以下,当院)で経験したCADAの使用症例とその効果や安全性について検討した.CI対象および方法当院で,ADA導入した難治性ぶどう膜炎患者C10例(男性7例,女性C3例,導入時平均年C48.2C±19.6歳)を対象とし,ADAの有効性,安全性について,京都府立医科大学医学倫理審査委員会の承認を得てレトロスペクティブに検討した.ADA導入後の平均観察期間はC19.4C±18.5カ月(4.53カ月)であった.原疾患の診断はCBDがC7例C14眼,Vogt-小柳-原田病(Vogt-Koyanagi-Haradadisease:VKH)がC3例C6眼であった.BDは厚生労働省CBD診断基準2)に基づき,完全型,不全型および特殊型CBDの確定診断を行った.VKHでは国際CVKH病診断基準3)に基づき,確定診断を行った.ADAは添付文書の記載に従って(腸管CBD:初回C160Cmg投与,初回投与からC2週間後C80Cmg,その後はC2週間隔C40mg投与,難治性ぶどう膜炎:初回C80Cmg投与,初回投与からC1週間後C40Cmg,その後はC2週間隔C40Cmg投与,小児:初回C40Cmg投与,初回投与よりC2間間隔C40Cmg投与)投与した.また,ADAの導入にあたり当院膠原病・リウマチアPSL)投与量(ADA導入前の最小CPSL量,最終観察時CPSL量)を調べた.治療の効果判定は有効,無効・中断,経過観察中にC3分類し,有効は眼所見の改善や薬剤の減量ができた症例で,無効・中断は眼所見の改善が認められなかった症例や治療継続困難となった症例,経過観察中はCADA導入開始後C6カ月以内の症例とした.また,統計方法はすべてCStu-dentのCt検定を用い,p<0.05を有意差ありとして比較を行った.CII結果全症例の年齢,性別,ADA導入理由,観察期間を表1に示した.ADA導入理由はCBDではCIFXからの変更がC6例(2例:IFXの投与時反応で中断例,2例:IFXの二次無効例,1例:IFXでコントロール困難例,1例:IFXの中断後再燃例),免疫抑制薬の副作用で継続困難な症例がC1例であった.BDは完全型BDが2例,不全型BDが3例,特殊型BDが2例(腸管CBD併発C2例)であった.小児の不全型CBD1例は,脊椎関節炎を併発しており,両疾患に対してCADAを導入した.特殊型CBD2例のうちC1例は腸管CBDの治療目的にCADA導入し,1例はぶどう膜炎の治療目的にCADAを導入した.VKHのCADA導入理由はすべて,ステロイドおよび免疫抑制薬でコントロール困難な症例であった.最良矯正視力は,ADA導入前平均視力はClogMARC0.27±0.46であったが,ADA導入後の最終平均視力ClogMAR0.26C±0.47となり,導入前後で有意差を認めなかった(p=0.93)(図1).疾患別の効果について,BDの症例は表2に,VKHの症例は表3にそれぞれまとめた.中断・無効を除いた症例でのCBDの発作頻度は,ADA導レルギー科,小児科または消化器内科(腸管CBD症例)との連携の下で行った.全症例において,ADA導入理由と,ADA導入前後の最良矯正視力,併用薬剤,効果判定,全身副作用の有無に関して調査した.また,BDではCADA導入前後の眼炎症発作回数,眼炎症発作の重症度について調べた.重症度に関しては,ADA導入前後の眼炎症発作のなかでもっとも重症であった眼炎症発作について,発作部位を前眼部炎症,硝子体混ADA導入後の最良矯正視力濁,網膜病変に分けて評価し,網膜病変は血管炎,.胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME),硝子体出血(vitre-oushemorrhage:VH)を調べた.また,蕪城らによって報告されたスコア法(Behcet’sdiseaseocularattackscore24:BOS24)4)でCADA導入前C6カ月から導入まで,ADA導入から導入後C6カ月まで,ADA導入C7.12カ月までの積算スコアで評価した.VKHではプレドニゾロン(prednisolone:0.010.11ADA導入前の最良矯正視力:Behcet病:Vogt-小柳-原田病図1アダリムマブ(ADA)導入前後の視力変化縦軸にCADA導入後の最良矯正視力,横軸にCADA導入後の最良矯正視力を示す.ADA導入前後では有意差を認めなかった(p=0.93).表1全症例ADA導入時観察期間症例年齢(歳)性別疾患名ADA導入理由(月)1C65男特殊型CBD(腸管CBD併発)IFX二次無効(腸管BD)C53C2C51女特殊型CBD(腸管CBD併発)IFX投与時反応C52C3C10男不全型CBD(脊椎関節炎併発)IFXコントロール困難C3C4C31男完全型CBDIFX二次無効C30C5C46女不全型CBDIFX中断後再燃C0.5C6C32男不全型CBDIFX投与時反応C11C7C39男完全型CBD免疫抑制剤の副作用C8C8C61女CVKHステロイド・免疫抑制薬でコントロール困難C19C9C72男CVKHステロイド・免疫抑制薬でコントロール困難C13C10C75男CVKHステロイド・免疫抑制薬でコントロール困難C4BD:BehcetC’sdisease(ベーチェット病),VKH:Vogt-Koyanagi-Haradadisease(フォークト-小柳-原田病),IFX:in.iximab(インフリキシマブ).表2Behcet病の症例ADA導入前ADA導入後症例発作頻度前眼部炎症硝子体混濁網膜病変発作頻度前眼部炎症硝子体混濁網膜病変C併用薬剤効果11回/年+..0回/年C…なし有効C24回/年++CME2.6回/年++.コルヒチン,MTX有効C32回/年++CME,VH中止++CME,VHCMTX,PSL無効・中断C410回/年++.2.5回/年++.MTX,PSL有効C51回/年++CME中止++CMECMTX無効・中断C65回/年++網膜血管炎1.8回/年++.CsA有効C74回/年++.0回/年C…なし有効CME:.胞様黄斑浮腫,VH:硝子体出血,MTX:メトトレキサート,PSL:プレドニゾロン,CsA:シクロスポリン.表3Vogt.小柳.原田病の症例症例ADA導入前PSL投与量(mg)CsA投与量(mg)ADA導入後最終CPSL投与量(mg)C効果判定8C7.5C150C4有効C9C7C150C0有効C10C15C100C17.5経過観察中PSL:プレドニゾロン,CsA:シクロスポリン.入前の平均発作回数がC4.8C±2.9回/年から,ADA導入後の平均発作回数はC1.4C±1.2回/年に減少した(p=0.06).眼炎症の重症度では,BOS24でCADA導入前C6カ月から導入までの積算スコアは平均C8.0C±4.7,ADA導入から導入後C6カ月までの積算スコアは平均C2.4C±3.2,ADA導入後7.12カ月までの積算スコアは平均C2.2C±2.4であり,導入前に比べて,導入後の積算スコアは優位に低値を示した(p=0.02,0.03)(図2).効果判定は,有効C5例,中断・無効C2例であり,中断・無効のうち,症例C3はCIFXとメトトレキサート(methotrexate:MTX)治療に加えて,眼炎症発作時にCPSL頓用を行っていたが,CMEとCVHを伴うような眼炎症の発作を認めたためにCADA導入となった.ADA導入後もCCMEの改善がなく,VHの悪化を認め,関節症状も考慮してインターロイキンC6受容体阻害薬であるトシリズマブ(tocilizum-ab:TCZ)に変更となった.症例C5はCADAの投与時反応にて中断となり,IFXに変更になった.以下にCBDの代表症例を示す.〔BDの代表症例:症例4〕31歳,男性.2010年にCBDを発症しコルヒチンを投与したが,強い硝子体混濁を伴うような眼炎症発作を起こしたためにC2011年よりCIFXを導入した.IFXの導入後も発作回数が頻回なために,IFXの投与量や投与間隔を変更し,併用薬剤にCCsAとCMTXを追加するなどを試みた.薬剤変更により最初は発作回数の軽減はあったが,徐々に効果がなくなり,IFXのC6週間隔投与とコルヒチン,MTXを併用したが,眼炎症発作回数がC10回/年であったためにCADAの導入となった(図3).ADAの導入後は眼炎症発作回数がC1.8回/年に減少した.VKHではCADA導入前にもっとも少なかったときのCPSLの平均投与量がC9.8C±3.7Cmgであり,最終受診時のCPSLの平均投与量C7.2C±7.5Cmgであった(p=0.67).2例でPSL量の減量を認め,1例はCADA導入後にCPSL漸減中に再燃を認めたために現在CPSLを増量している.また,当院ではCADA導入後は全例でCCsA内服を中止している.以下にCVKHの代表症例を示す.〔VKHの代表症例:症例8〕61歳,女性.2016年にCVKHを発症(図4a)し,ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロンC1,000Cmg点滴静注,3日間)をC2クール行った.炎症の残存を認めたためにトリアムシノロンTenon.下注射(sub-Tenon’striamcinoloneacetonideinjec-tion:STTA)を併用しながら,初期投与量のCPSL60CmgからCPSL15Cmgまで漸減したが,再燃を認めた.PSLを増量し,CsAとCSTTAを併用しながら,PSL10Cmgまで漸減したが,再燃を認めた.そこでCPSL量は維持のまま,ADAを導入したが,光干渉断層計(OCT)で網膜色素上皮ラインの波打ち像を認めたためにCPSL30Cmgまでいったん増量し改善を得た.その後,ステロイドを漸減し,現在CPSL4Cmgまで減量できており,再燃は認めていない(図4b).ADA投与に伴う副作用はC10例中C5例に認めた.2例で注射部位反応,2例で咽頭炎,2例で肝酵素上昇,1例でCCRP・赤沈上昇,1例で乾癬様皮疹,1例で好酸球高値を認めた(重複あり).症例C5では,IFX投与が挙児希望のため中断となったが,中断後にCCMEを認め,通院の関係からCADAでのTNF阻害薬の再開となった.初回・2回目のCADA投与で注射部位反応を認め,2回目の注射後に注射部位の発赤がC7cm程度まで拡大し,注射部位以外の発疹や口唇浮腫も認めたために中止となった.CIII考按今回,既存治療でコントロール困難な難治性非感染性ぶどう膜炎に対し,当院でCADAを導入した各疾患における効果判定と安全性の結果を検討した.海外の報告においては,さまざまな難治性ぶどう膜炎に対するCADA導入の有用性が示されている5,6).また,国内でもCADAの認可に伴い,小野らC18*16*1412BOS241086420ADA導入ADA導入後ADA導入後6カ月前~導入0~6カ月7~12カ月図2BS24(Behcet'sdiseaseocularattackscore244))の経過BOS24でCADA導入前C6カ月から導入までの積算スコアは平均C8.0C±4.7,ADA導入から導入後C6カ月までの積算スコアは平均C2.4C±3.2,ADA導入C7.12カ月までの積算スコアは平均C2.2C±2.4であった(*p<0.05).図3症例4(31歳,男性,Behcet病)アダリムマブ(ADA)導入前には発作を繰り返しており,前眼部に前房蓄膿と虹彩後癒着を伴う強い炎症を認め(a),びまん性の硝子体混濁,網膜血管炎,滲出斑を認めた(Cb).ADA導入後は新規病変を認めず,硝子体混濁は改善した.図4症例8(61歳,女性,Vogt.小柳.原田病)Ca:初診時COCT.両眼眼底に隔壁を伴う漿液性網膜.離と脈絡膜の肥厚,網膜色素上皮ラインの不整を認めた.Cb:ADA導入後のCOCT.ADA導入後,脈絡膜の肥厚は認めるが,漿液性網膜.離や網膜色素上皮不整の改善を認めた.が難治性ぶどう膜炎に対する短期の使用経験と有用性を示している7).疾患別にみると,難治性CBDに対しては,国内では先に認可されたCIFXが主流であるが,海外では生物学的製剤(IFX,ADA)の報告が多数なされている8).ValletらはCBDに対して,IFXまたはCADA投与によりC91%で完全寛解/部分寛解を認め,IFXとCADAで同様の有効性であったと報告している9).また,IFXの継続困難や二次無効の症例のCADAへの変更は有用性を示されている10,11).当院の症例では,IFXからCADAへの変更がC6例あり,1例が新規導入であった.既報と同様にCIFXでの継続困難の症例や二次無効の症例においてもCADA変更後は改善を示していた.また,ADA新規導入例もCADA導入後は眼炎症発作を認めておらず,IFXと同様の効果を期待ができると考えられた.BDに対して生物学的製剤導入の際にCADAは選択肢の一つとして非常に有用であり,また,IFXによる眼炎症コントロール不良例ではCADAへの変更も考慮に入れるべきである.ADAは自己注射で行えるために,病院拘束時間が短くなることも注目すべき点であり,若年男性に重症例の多いCBDにおいては治療選択における根拠の一つとなると考えられる.Deitchらは免疫抑制療法でコントロールできない小児の難治性非感染性ぶどう膜炎におけるCIFXとCADAの有効性を報告している12).当院では症例C3が小児ぶどう膜炎(BD)のCADA導入例であったが,IFX,ADAで効果がなく,TCZに変更になった.今回のようにCIFXやCADAで効果がない場合にCTNFではなくCIL-6をターゲットとする生物学的製剤が有効な症例もある13).VKHに関して,Coutoらはステロイド,免疫抑制薬でコントロール困難なCVKHにCADA追加によりステロイドの減量または離脱が可能であったと報告している14).当院でのVKHの治療方針として,ステロイドパルス療法後にCPSL内服(1Cmg/kg/日,またはC60Cmg/日の低い用量から開始)を漸減し,再燃を認める場合にはCPSLの増量とCCsA併用を行い,症例によっては年齢や全身状態などを考慮してCSTTAの併用を行っている.さらにCPSLとCCsA併用で再燃を認めたCVKHに対してCADAの導入を検討し,ADA導入後はCsAを終了している.今回CADA導入したC3例はすべて,症例C8のようにCCsA併用でCPSL投与量漸減中に再燃を認めた症例である.症例C8はCPSL投与量を維持したままCADAを追加したが,再燃を認めたため,PSLを増量した経緯から,症例C9と症例C10ではCADA導入前にCPSLの増量も行った.この結果から,VKHではCADA投与だけでは炎症のコントロールができない可能性があり,ADA導入とともにPSLの増量を考慮する必要があると考えられた.添付文書より,ADAの副作用は国内臨床試験で全体の82.9%に認められ,当院ではC5例(50%)に注射時反応を認めた.当院では症例C5は,ADAのみに強い投与時反応を認め,IFXに変更になった.一般的にCIFXがマウス蛋白とのキメラ型であるに対して,ADAは完全ヒト型のために,IFXのほうがアレルギー反応多いとされているが,ADAでも強いアレルギー反応を認める症例があり,注意が必要である.ADAの登場により難治性ぶどう膜炎に生物学的製剤を使用することが可能になった.当院でも既存治療で難治例に対して使用し,BDでは中断例以外は非常に有効であり,VKHに関しても有効であると考えられた.ADAは国内で認可されてから日が浅いために,疾患別の有効性,導入時期,併用PSLの漸減方法などが不明確である.また,今後導入した症例に対しては,中止するタイミングの検討も必要となる.当院でのCADAは症例数もまだ少なく,今後症例を増やしてADAの適切な治療の検討が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)TakeuchiM,KezukaT,SugitaSetal:Evaluationofthelong-termCe.cacyCandCsafetyCofCin.iximabCtreatmentCforCuveitisCinCBehcet’sdisease:aCmulticenterCstudy.COphthal-mologyC121:1877-1884,C20142)厚生労働省べ一チェット病診断基準:http://www.nanbyou.Cor.jp/upload_.les/Bechet2014_1,20143)ReadCRW,CHollandCGN,CRaoCNACetal:RevisedCdiagnosticCcriteriaCforCVogt-Koyanagi-Haradadisease:reportCofCanCinternationalCcommitteeConCnomenclature.CAmCJCOphthal-molC131:647-652,C20014)KaburakiT,NambaK,SonodaKHetal:Behcet’sdiseaseocularattackscore24:evaluationofoculardiseaseactivi-tyCbeforeCandCafterCinitiationCofCin.iximab.CJpnCJCOphthal-molC58:120-130,C20145)Diaz-LlopisM,SalomD,Garcia-de-VicunaCetal:Treat-mentCofCrefractoryCuveitisCwithadalimumab:aCprospec-tiveCmulticenterCstudyCofC131Cpatients.COphthalmologyC119:1575-1581,C20126)SuhlerEB,LowderCY,GoldsteinDAetal:AdalimumabtherapyCforCrefractoryuveitis:resultsCofCaCmulticentre,Copen-label,CprospectiveCtrial.CBrCJCOphthalmolC97:481-486,C20137)小野ひかり,吉岡茉依子,春田真実ほか:非感染性ぶどう膜炎に対するアダリムマブの治療効果.臨眼C72:795-801,C20188)AridaCA,CFragiadakiCK,CGiavriCECetal:Anti-TNFCagentsCforCBehcet’sdisease:analysisCofCpublishedCdataConC369Cpatients.SeminArthritisRheumC41:61-70,C20119)ValletCH,CRiviereCS,CSannaCACetal:E.cacyCofCanti-TNFCalphainsevereand/orrefractoryBehcet’sdisease:MultiC-centerCstudyCofC124Cpatients.CJCAutoimmunC62:67-74,C201510)OlivieriI,LecceseP,D’AngeloSetal:E.cacyofadalim-umabCinCpatientsCwithCBehcet’sCdiseaseCunsuccessfullyCtreatedCwithCin.iximab.CClinCExpCRheumatolCIntC67:54-57,C201111)TakaseK,OhnoS,IdeguchiHetal:SuccessfulswitchingtoCadalimumabCinCanCin.iximab-allergicCpatientCwithCsevereBehcetdisease-relateduveitis.RheumatolIntC31:C243-245,C201112)DeitchI,AmerR,Tomkins-NetzerOetal:Thee.ectofanti-tumornecrosisfactoralphaagentsontheoutcomeinpediatricCuveitisCofCdiverseCetiologies.CGraefesCArchCClinCExpOphthalmolC256:801-808,C201813)Atienza-MateoCB,CCalvo-RioCV,CBeltranCECetal:Anti-interleukinC6CreceptorCtocilizumabCinCrefractoryCuveitisCassociatedCwithCBehcet’sdisease:multicentreCretrospec-tivestudy.Rheumatology(Oxford)C57:856-864,C201814)CoutoC,SchlaenA,FrickMetal:AdalimumabtreatmentinCpatientsCwithCVogt-Koyanagi-HaradaCdisease.COculCImmunolIn.ammC26:485-489,C2018***

インフリキシマブ中断後,神経症状が顕性化したBehçet病の1例

2015年5月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科32(5):755.758,2015cインフリキシマブ中断後,神経症状が顕性化したBehcet病の1例三橋良輔毛塚剛司臼井嘉彦鈴木潤後藤浩東京医科大学眼科学教室ACaseofBehcet’sDiseaseinwhichNeurologicalSymptomsAppearedafterDiscontinuationofInfliximabTreatmentRyosukeMitsuhashi,TakeshiKezuka,YoshihikoUsui,JyunSuzukiandHiroshiGotoDepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversity目的:抗ヒト腫瘍壊死因子(TNF)-a抗体であるインフリキシマブ(INF)はBehcet病によるぶどう膜網膜炎に有効な治療薬であるが,INF治療の自己中断後に,重篤な神経病変をきたした1例を経験したので報告する.症例:38歳,男性.近医よりBehcet病が疑われたため当院を紹介され,INF治療を開始した.INF導入後,眼発作はほぼ抑制され,視力も0.6前後に回復した.その後,計33回にわたる治療を行い経過良好であったが,通院が途絶え,治療が中断された.4カ月後に中枢神経症状が出現し,磁気共鳴画像(MRI)で脳幹に腫瘍を思わせる病変がみられたが,臨床経過から神経Behcet病を疑い,ベタメタゾン内服治療を行った.治療2カ月後に撮像したMRIでは病変は縮小しており,INF治療も再開され,その後は中枢神経症状,眼症状ともに落ち着いている.結論:INF治療の中止に際しては眼症状のみならず,眼外症状の再燃や顕性化にも注意を払う必要がある.Purpose:Infliximab(INF),ananti-humantumornecrosisfactor(TNF)-aantibody,isahighlyeffectivetreatmentforuveoretinitisinBehcet’sdisease.WereportacaseofocularBehcet’sdiseaseinwhichanewneurallesiondevelopedafterdiscontinuationofINFtreatment.Case:A38-year-oldmalewasreferredtoTokyoMedicalUniversityHospitalbecauseofsuspectedocularBehcet’sdisease.WeconfirmedthediagnosisandstartedINFtreatment.Aftertreatmentinitiation,ocularattacksduetoBehcet’sdiseasewerealmostcontrolled,andvisualacuitywasrestoredto0.6.Afterthe33thtreatment,however,thepatientdroppedoutoftreatmentbecauseoffatigue.Fourmonthsaftertreatmentdiscontinuation,amasslesioninthebrainstemwasdetectedbymagneticresonanceimaiging(MRI)atanotherhospital;neuro-Behcet’sdiseasewassuspectedfromtheclinicalcourse.Thepatientwasthentreatedwithoralbetamethasone.Twomonthslater,anMRIscanshowedshrinkageoftheneurallesion,andINFtreatmentwasrestarted.Thereafter,withINFandsteroidtherapy,bothcentralnervousandocularsymptomsofBehcet’sdiseaseimproved.Conclusion:AfterdiscontinuingINFtreatment,itisnecessarytopayattentionnotonlytoeyesymptoms,butalsotorecurrenceormanifestationofextraocularsymptoms.arashiiGanka(JournaloftheEye)32(5):755.758,2015〕Keywords:ベーチェット病,インフリキシマブ,神経ベーチェット病,ぶどう膜炎.Behcet’sdisease,infliximab,neuro-Behcet’sdisease,uveoretinitis.はじめに抗ヒト腫瘍壊死因子(TNF)-a抗体であるインフリキシマブ(INF)の使用が認可されて以来,難治性Behcet病の治療の選択肢が増えた.INFは既存の治療法に比べて,Behcet病による眼炎症発作を強力に抑制することが多数報告されている1.5).しかし,INF治療の中止に伴い症状の再燃や悪化をきたす可能性もある一方,本治療法の中止に関する基準は現在のところ確立されていない.今回筆者らは,INF治療の自己中断後に重篤な神経Behcet病と思われる症状を呈した1例を経験したので報告〔別刷請求先〕三橋良輔:〒160-0023東京都新宿区西新宿6-7-1東京医科大学眼科学教室Reprintrequests:RyosukeMitsuhashi,DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversity,6-7-1Nishishinjyuku,Shinjyukuku,Tokyo160-0023,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(145)755 する.I症例患者:39歳,男性.主訴:左眼視力低下.現病歴:2005年に左眼の視力低下を自覚し,近医受診.網膜静脈分枝閉塞症と診断され,治療を開始されたが,右眼にも同様の症状,所見がみられた.増悪と寛解を繰り返すため,Behcet病が疑われ,2006年2月に東京医科大学眼科に紹介受診となった.初診時眼所見:視力は右眼0.1(矯正不能),左眼0.1(0.2×sph.1.50D),眼圧は右眼12mmHg,左眼14mmHgであった.前眼部所見は前房に炎症細胞は認めなかったが,角膜後面沈着物があり,隅角にはpigmentpelletがみられた.中間透光体に異常はなく,眼底は両眼に視神経乳頭の発赤,黄斑浮腫が認められた(図1).眼外症状は口腔粘膜の再発性アフタ潰瘍,関節痛,カミソリ負けなどの症状がみられた.ヒト白血球抗原(HLA)検索では,HLA-B51陰性,HLA-A26陽性であった.経過:不全型Behcet病と診断し,コルヒチン1mg/日の内服治療を開始した.その後,黄斑浮腫に対してトリアムシノロンのTenon.下注射を施行した.一時,黄斑浮腫の改善を認めたが,初診から3カ月後に右眼の視力低下(0.03),眼底に網膜静脈分枝閉塞症様出血と滲出性変化を伴った眼炎症発作を繰り返した(図2).さらに左眼にも同様の所見がみられたため,プレドニゾロン30mg/日の内服を開始した.しかし,その後も発作と寛解を繰り返すため,翌年の2007年5月よりINF点滴(5mg/kg)単独療法として治療を開始した.その後,小発作を起こすこともあったが,両眼ともに矯正視力0.6まで改善した.しかし,INFを33回施行したが,34回目(2012年2月)に来院せず,治療中断となった.INF中止4カ月後に右片麻痺,構音障害が出現したため,近医脳外科受診となった.造影磁気共鳴画像(MRI)上,T2強調で脳幹部の左側に15mm径の結節病変があり,病変に図1初診時眼底所見両眼の視神経乳頭の発赤と黄斑浮腫を認める.図2眼炎症発作時の眼底所見両眼に網膜静脈閉塞症様の出血と滲出性変化がみられる.756あたらしい眼科Vol.32,No.5,2015(146) 図3神経症状出現時の造影MRI所見脳幹部の左側に15mm径の結節病変(白矢印)があり,結節病図4神経症状発症から2カ月後の造影MRI所見変に沿ってリング状増強効果がみられる.病変部周辺は不規則脳幹部の腫瘤(白矢印)は縮小している.な高信号を呈している.図5神経症状消失後の眼底所見両眼とも視神経乳頭の発赤や黄斑浮腫はなく,経過は落ち着いている.沿ってリング状増強効果がみられた.また,病変周辺に不規則な高信号を呈していた(図3).脳浮腫改善のため,ベタメタゾン4mg,グリセオール200mlを静脈注射された.近医では脳腫瘍が疑われたため,腫瘤精査の目的で東京医科大学病院脳神経外科受診となった.改めて撮像したMRI上,前医受診時と比較し腫瘤の著明な縮小がみられ(図4),さらに不全型Behcet病の既往,ステロイドにより中枢神経症状改善が認められたことから神経Behcet病が疑われた.髄液検査は患者の拒否により施行できなかった.経過中の眼所見は両眼ともに矯正視力0.6であり,炎症所見はみられなかったが(図5),神経Behcet病発現のことも考え合わせ,INF治療を再開した.その後,中枢神経症状の改善を認め,現在に至るまで眼症状,中枢神経症状ともに落ち着いている.II考按神経Behcet病はBehcet病の約10%に認められ,男性が女性に比べて3.4倍多く,なかでも中枢神経症状は発症後6.7年経過して発症することが多いとされる6,7).遺伝的素因としてBehcet病はHLA-B51の保有率が高いことが知られているが,神経Behcet病ではより高いと報告されている6,7).初期症状としては頭痛,頭重感,中枢神経症状としては四肢麻痺,片麻痺,対麻痺,構音障害や複視などがあげられ,後期症状にはうつ病や統合失調症,記名障害などの精神症状がみられることが多い6,7).検査所見としては髄液検査にて髄液圧の上昇,好中球とリンパ球の増加,インターロイキン(IL)-6の上昇がみられる.MRIではT1強調で低信号から等信号,T2強調で高信号を示し,病変部位は大脳皮質,脳幹,脊髄とさまざまであるが,脳幹が多い6,7).治療としてはステロイドが有効とされているが8),近年ではINFが有効という報告もある9.11).慢性進行型神経Behcet病にはステロイド抵抗性の症例もある6).一方,少量のメトトレキサート(MTX)パルス療法が有効との報告もある12).これらの報告も踏まえ,本症例に対してはリウマチ・膠原病内科などとも相談のうえ,INF治療を再開することにした.今回,本症例の腫瘤が発生した原因として,2つの可能性があると考えられた.1つは悪性腫瘍に代表されるINFの(147)あたらしい眼科Vol.32,No.5,2015757 副作用によるものである.本症例にみられたMRIで脳幹のリング状増強効果を呈する腫瘍には悪性リンパ腫や膠芽腫があげられるが,これらにはステロイドが著効することはなく,原因としては否定的であった.他にもINF治療の副作用として多発性硬化症に代表される脱髄性疾患が報告されているが13,14),そのほとんどはINF治療中に発症しており,本症例ではINF中止から4カ月後に発症したエピソードからも,脱髄性疾患は否定的であった.以上より,INFの副作用による可能性は少ないと考えた.一方で,神経Behcet病にINFが有効との報告から9.11),脳幹に腫瘤性病変が発生した原因として,INFの中断による可能性が考えられた.すなわち,本症例はINF治療中には神経Behcet病が抑制されていたが,自己中断後に顕性化した可能性が考えられた.当症例ではもともと眼外症状として頭痛があり,これが神経Behcet病の初期症状であった可能性も否定はできない.本症例では髄液検査を施行していないが,ステロイドやINF治療に反応がみられたことや,不全型Behcet病の既往より,最終的に本症例にみられた脳幹の病変は神経Behcet病によるものと考えた.現在のところ,眼症状に対するINF治療の中止に関しては明確な基準はないが,本治療法の中止に際しては,眼症状のみならず,眼外症状の再燃や顕性化の可能性にも注意を払う必要があると考えられた.本稿の要旨は第47回日本眼炎症学会(2013)にて発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)NakamuraS,YamakawaT,SugitaMetal:Theroleoftumornecrosisfactor-alphaintheinductionofexperimentalautoimmuneuveoretinitisinmice.InvestOphthalmolVisSci35:3884-3889,19942)河合太郎,多月芳彦:Behcetによる難治性網膜ぶどう膜炎に対する抗ヒトTNFaモノクローナル抗体レミケードRの有効性と安全性.眼薬理23:11-17,20093)SuhlerEB,SmithJR,GilesTRetal:Infliximabtherapyforrefractoryuveitis:2-yearresultsofaprospectivetrial.ArchOphthalmol127:819-822,20094)Al-RayesH,Al-SwilemR,Al-BalawiMetal:SafetyandefficacyofinfliximabthrepyinactiveBehcet’suveitis:anopen-labeltrial.RheumatolInt29:53-57,20085)OhnoS,NakamuraS,HoriSetal:Efficasy,safety,andpharmacokineticsofmultipleadministrationofinfliximabinBehcet’sdiseasewithrefractoryuveoretinitis.JRheumatol31:1362-1368,20046)菊地弘敏,廣畑俊成:神経ベーチェット.リウマチ科40:519-525,20087)KawaiM,HirohataS:CerebrospinalfluidB2-microglobluininneuro-Behcet’ssyndrome.JNeurolSci179:132139,20008)SchmolckH:Largethalamicmassduetoneuro-Behcetdisease.Neurology65:436,20059)HirohataS,SudaH,HashimotoT:Low-doseweeklymethotrexateforprogressiveneuropsychiatricmanifestationsinBehcet’sdisease.JNeurolSci159:181-185,199810)SawarH,McGrathHJr,EspinozaLR:Successfultreatmentoflong-standingneuro-Behcet’sdiseasewithinfliximab.JRheumatol32:181-183,200511)FujikawaK,IdaH,KawakamiAetal:Successfultreatmentofrefractoryneuro-Behcet’sdiseasewithinfliximab:acasereporttoshowitsefficacybymagneticresonanceprofile.AnnRheumDis66:136-137,200712)RibiC,SztajzelR,DelavelleJetal:EfficacyofTNFablockadeincyclophosphamideresistantneuro-Behcetdisease.JNeurolNeurosurgPsychiatry76:1733-1735,200513)WolfSM,SchotlandDL,PhilipsLL:InvolvementofnervoussysteminBehcet’ssyndrome.ArchNeurol12:315325,196514)HirohataS,IshikiK,OguchiHetal:Cerebrospinalfluidinterleukin-6inprogressiveneuro-Behcet’ssyndrome.ClinImmunolImmunopathol82:12-17,1997***758あたらしい眼科Vol.32,No.5,2015(148)

インフリキシマブ投与時反応による治療中止後も寛解維持 できたBehçet 病の1例

2012年12月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科29(12):1701.1704,2012cインフリキシマブ投与時反応による治療中止後も寛解維持できたBehcet病の1例小池直子*1尾辻剛*1木本高志*2三間由美子*1西村哲哉*1髙橋寛二*3*1関西医科大学附属滝井病院眼科*2済生会野江病院眼科*3関西医科大学附属枚方病院眼科ACaseofBehcet’sDiseaseAccompaniedbyUveoretinitis,InWhichNoOcularAttacksWereObservedafterDiscontinuationofInfliximabBecauseofInfusionReactionNaokoKoike1),TsuyoshiOtsuji1),TakashiKimoto2),YumikoMitsuma1),TetsuyaNishimura1)andKanjiTakahashi3)1)DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalSchoolTakiiHospital,2)3)DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalSchoolHirakataHospitalDepartmentofOphthalmology,SaiseikaiNoeHospital,目的:Behcet病に対する新しい治療としてインフリキシマブの全身投与が行われているが,約9.5%に投与時反応が起こるとされている.反復する投与時反応のためインフリキシマブ治療が中止された後,約1年にわたり寛解維持ができている症例を経験した.症例:35歳,男性.右眼矯正視力0.03.前医にてBehcet病との診断でコルヒチン内服を開始したが再燃し当科を受診した.診断確定後5カ月でインフリキシマブ投与を開始し,導入1カ月後には消炎しその後発作はなかった.導入12カ月後,投与時に全身に蕁麻疹が発現しその後も投与時反応を繰り返すためインフリキシマブ投与を中止した.中止後約1年経過しても発作の再燃は認めていない.考察と結論:本症例はインフリキシマブ導入時期が早く,導入前発作回数も2回と少なかった.導入後には発作がなく本症例のように安定した症例ではインフリキシマブが中止可能であることが示唆された.Purpose:TheeffectivenessofinfliximabforBehcet’sdiseasehasbeenshown.Recentreportshavestatedthatinfusionreactionstoinfliximabwereobservedin9.5%ofpatients.Wereportacaseinwhichthediseasehasbeensuccessfullycontrolledbyinfliximabtreatmentforoneyearafterdiscontinuationbecauseofrefractoryinfusionreaction.Case:Thepatient,a35-year-oldmalewithiridocyclitis,receivedinfusionsofinfliximabbecauseofuncontrollableocularattacks.Athiseighthadministration,infusionreactionappearedandthetreatmentwasdiscontinuedbecausetherefractoryinfusionreactioncouldnotbecontrolledwithglucocorticoids.Therehavebeennoocularattackssincethediscontinuationofinfliximabtherapy.Discussion:Inthiscase,onlytwoocularattackshadoccurredbeforetheinitiationofinfliximabtherapy;therewerenoocularattacksafterthetherapy.Thisindicatesthatinfliximabtherapymaybeterminatedinsomewell-controlledcases,asinthiscase.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(12):1701.1704,2012〕Keywords:ベーチェット病,インフリキシマブ,抗TNF-a(腫瘍壊死因子-a)抗体,投与時反応.Behcet’sdisease,infliximab,antiTNF-a(tumornecrosisfactor-a)antibody,infusionreaction.はじめにBehcet病の治療としては,その発作抑制のため以前よりコルヒチン,シクロスポリンが広く用いられてきた.しかし,これらの薬剤では完全に眼発作を抑制することはむずかしく,また投与により重篤な副作用をきたす可能性もあった.近年,Behcet病に対する新しい治療として,抗TNF-a(tumornecrosisfactor-a)抗体であるインフリキシマブの全身投与が行われている.インフリキシマブは,炎症性サイトカインであるTNF-aに対するキメラ型単クローン抗体製剤で,関節リウマチや大腸Crohn病などの自己免疫疾患に対する治療薬として広く使われている.TNF-aはBehcet病による炎症において重要な役割を果たしているとされており,Behcet病による難治性ぶどう膜炎に対して2007年1月に適応が追加承認された.しかし,寛解患者に対する中止時〔別刷請求先〕小池直子:〒570-8607守口市文園町10-15関西医科大学附属滝井病院眼科Reprintrequests:NaokoKoike,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversityTakiiHospital,10-15Fumizonocho,Moriguchi,Osaka570-8607,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(111)1701 期にはいまだ明確な指針がないため,発作予防のために治療を継続せざるをえないのが現状である.インフリキシマブの投与時に約10%にアレルギー反応が起こることがあり,これは投与時反応とよばれ,インフリキシマブ投与中または投与終了後2時間以内に認められる副作用である1).市販後調査の中間報告によると,おもな症状は発疹で,重篤なものには発熱,アナフィラキシー反応がある.Behcet病眼病変診療ガイドラインによると,投与時反応が起きてもインフリキシマブ治療を継続する場合には,抗ヒスタミン薬やステロイド薬を併用すれば良いとされている1).今回,反復する投与時反応のためインフリキシマブ治療が中止された後,約1年にわたって寛解維持できている症例を経験したので報告する.I症例患者:35歳,男性.初診日:平成21年1月26日.主訴:右眼視力低下.現病歴:平成19年10月頃より右眼虹彩毛様体炎を繰り返し前医に通院していた.平成20年9月,前医再診日に右眼前房内炎症細胞浸潤,びまん性硝子体混濁,黄斑部近傍の網膜滲出斑を認めた.矯正視力は0.02であった.前医にてステロイド薬内服,トリアムシノロンアセトニドのTenon.下注射を施行し,1カ月で消炎した.結節性紅斑,副睾丸炎,口腔内アフタ,関節炎を認めたため,前医にてBehcet病と診断され,コルヒチン内服を開始し,その後発作はなかった.平成21年1月から右眼視力低下を自覚し,平成21年1月22日前医受診時,右眼前房内炎症の悪化,硝子体混濁の増悪,網膜に出血と滲出斑を認めた.フルオレセイン蛍光眼底造影(fluoresceinangiography:FA)では右眼視神経乳頭の過蛍光,網膜血管からのシダ状の蛍光漏出を認め(図1),矯正視力は0.01に低下していたため関西医科大学附属滝井病院眼科紹介受診となった.既往歴:特記すべきことなし.初診時所見:視力は右眼0.01(0.03×sph.6.5D),左眼0.03(1.2×sph.7.5D(cyl.0.5DAx105°).眼圧は右眼22mmHg,左眼18mmHgであった.右眼に前房内炎症細胞浸潤,硝子体混濁,黄斑浮腫を認めた.全身症状として副睾丸炎,結節性紅斑,口腔内アフタ,関節炎症状を認めた.経過:コルヒチン投与を行ってもBehcet病の発作が抑えられないため,診断確定から5カ月後の平成21年2月24日よりインフリキシマブ投与を開始した.インフリキシマブ投与開始後もコルヒチン内服は継続した.インフリキシマブは0,2,6週目,それ以降は8週ごとに投与した.投与開始1カ月後には右眼矯正視力は0.4に回復し,前房内炎症,硝1702あたらしい眼科Vol.29,No.12,2012ab図1前医でのFAa:視神経乳頭の過蛍光を認める.b:網膜血管からのシダ状の蛍光漏出を認める.子体混濁,黄斑浮腫は軽減し,その後発作はなくなり寛解状態となった.また,投与前に認めた副睾丸炎,結節性紅斑,口腔内アフタ,関節炎症状は軽快した.インフリキシマブ投与開始から12カ月後の8回目の投与時に,投与開始直後から胸部,背部に皮疹が出現したためインフリキシマブ投与を中断した.9回目の投与時,ステロイド薬と抗ヒスタミン薬の前投与を行った後,点滴速度を遅くしてインフリキシマブを投与したが,再度皮疹が出現した.内科担当医よりインフリキシマブ投与の継続は困難との連絡があり,平成22年4月19日を最後に,インフリキシマブ投与は中止となった.中止後はコルヒチン内服を継続した.投与中止5カ月後に施行したFAでは右眼に網膜血管からの蛍光漏出を認めたものの軽度であり(図2),矯正視力も0.5であった.投与中止12カ月後には,右眼にわずかに硝子体混濁を認めるのみで(図3),矯正視力は0.7と改善していた.投与中止から1年以上経過した現在も矯正視力は0.7を維持しており,炎症の再燃は認めていない.II考按TNF-aは炎症性サイトカインの一つで,Behcet病の病(112) abcabcabc図2投与中止5カ月後の眼底およびFAa:眼底.眼底透見良好で炎症はみられない.b:FA早期.網膜血管からわずかな蛍光漏出がみられる.c:FA後期.視神経乳頭からもわずかな蛍光漏出がみられる.態に深く関与することが示唆されている2.4).抗TNF-a抗体であるインフリキシマブは,2002年にCrohn病に,2003年に関節リウマチに対する治療薬として使用が開始された5.7).そして新たに,Behcet病によるぶどう膜炎に対して行われた臨床治験で,インフリキシマブが眼発作回数を有意(113)図3投与中止12カ月後の眼底およびFAa:眼底.硝子体混濁をわずかに認める.b:FA早期.蛍光漏出はみられない.c:FA後期.蛍光漏出はみられない.に減少させ,視力の改善が得られたと報告され8),Behcet病に対して効能追加されるに至った.インフリキシマブは,既存の治療に抵抗性の難治例に対して用いられるべきとされている.しかし,視力の低下につながるような発作は発症後1.3年目という早期に多く起こっており,インフリキシマブのように眼発作を強力に抑制できるような薬剤を早期から使あたらしい眼科Vol.29,No.12,20121703 用することによって,Behcet病による不可逆的な視力低下を阻止することができる可能性がある9).既存の治療で十分な効果が得られず難治性と判断したならば,インフリキシマブの導入も考慮することが重要である.インフリキシマブに対する市販後調査の中間報告によると,インフリキシマブ開始前の6カ月当たりの発作回数は1.3回が最も多く,57.2%であった.また,Behcet病の平均罹病期間は7.6年であった.インフリキシマブ投与前後の6カ月当たりの平均発作回数の変化については,インフリキシマブ投与前が3.25回であったのに対し,投与後は0.72回と減少していた.今回の症例では,初診時すでにBehcet病と診断されてから4カ月が経過しており,この時点でコルヒチンによる発作抑制は困難であると判断し,初診から1カ月でインフリキシマブ導入に至っている.このように比較的早く導入することができたことも,致命的な視力低下に至らなかった原因の一つであると考えられた.インフリキシマブによる投与時反応発症時には,点滴を中止したうえで,アセトアミノフェンや抗ヒスタミン薬の投与を行い,次回点滴の際にはアセトアミノフェン,抗ヒスタミン薬,ステロイド薬などを前投与し,点滴速度を遅くするなどの対応が必要であるとされている1).インフリキシマブをいつ中止すべきかという問題に対する明確な解答は現時点ではない.種々の理由でインフリキシマブを中止した後にも,眼炎症発作が長期にわたり抑制されているとの報告もあり10),このことはインフリキシマブを中止できる可能性があることを示唆している.今回の筆者らの症例は,インフリキシマブ導入前発作回数も2回と少なく,また導入後も一度も発作が起きることはなかった.今回は反復する投与時反応のため,投与を中止せざるをえない状態となったが,このような安定した症例ではインフリキシマブの中止は可能なのかもしれない.しかし,投与間隔を延ばすと眼発作を起こす例も報告されており11),投与中止は慎重に行う必要がある.また,インフリキシマブは副腎皮質ステロイド薬のように減量しながら中止することにより,インフリキシマブに対する自己抗体の産生を促すという報告もあり12),中止の仕方に関しても今後さらなる検討が必要と考えられる.投与時反応は2.4年間の間隔をおいて再投与した場合に,より重篤な反応が起こりやすいとされており13),投与の再開は慎重に行うべきであると考えられた.中止後の再燃があった場合にインフリキシマブ投与の再開が可能か否か,また別の薬剤に変更するのかについては今後の課題である.III結語本症例では,インフリキシマブ導入時期がBehcet病と診断されてから5カ月と比較的早く,導入前発作回数も2回と少なく,また導入後も一度も発作が起きることはなかった.1704あたらしい眼科Vol.29,No.12,2012このような安定した症例ではインフリキシマブが中止可能であることが示唆された.本稿の要旨は第45回日本眼炎症学会で発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)大野重昭,蕪城俊克,北市伸義ほか:ベーチェット病眼病変診療ガイドライン.日眼会誌116:394-426,20122)NakamuraS,YamakawaT,SugitaMetal:Theroleoftumornecrosisfactor-aintheinductionofexperimentalautoimmuneuveoretinitisinmice.InvestOphthalmolVisSci35:3884-3889,19943)中村聡:ぶどう膜炎の細胞生物学.日眼会誌101:975986,19974)中村聡,杉田美由紀,田中俊一ほか:ベーチェット病患者における末梢血単球のinvitrotumornecrosisfactor-alpha産生能.日眼会誌96:1282-1285,19925)ElliottMJ,MainiRN,FeldmannMetal:Repeatedtherapywithmonoclonalantibodytotumornecrosisfactora(cA2)inpatientswithrheumatoidarthritis.Lancet344:1125-1127,19946)MainiR,StClairEW,BreedveldFetal:Infliximab(chimericanti-tumornecrosisfactoramonoclonalantibody)versusplaceboinrheumatoidarthritispatientsreceivingconcomitantmethotrexate:arandomizedphaseIIItrial.Lancet354:1932-1939,19997)HanauerSB,FeaganBG,LichtensteinGRetal:MaintenanceinfliximabforCrohn’sdisease:theACCENTⅠrandomizedtrial.Lancet359:1541-1549,20028)OhnoS,NakamuraS,HoriSetal:Efficacy,safety,andpharmacokineticsofmultipleadministrationofinfliximabinBehcet’sdiseasewithrefractoryuveoretinitis.JRheumatol31:1362-1368,20049)KaburakiT,ArakiF,TakamotoMetal:Best-correctedvisualacuityandfrequencyofocularattacksdurintheinitial10yearsinpatientswithBehcet’sdisease.GraefesArchClinExpOphthalmol248:709-714,201010)田中宏幸,杉田直,山田由季子ほか:Behcet病に伴う難治性網膜ぶどう膜炎に対するインフリキシマブ治療の有効性と安全性.日眼会誌114:87-95,200011)TakamotoM,KaburakiT,NumagaJetal:Long-terminfliximabtreatmentforBehcet’sdisease.JpnJOphthalmol51:239-240,200712)MainiRN,BreedveldFC,KaldenJRetal:Therapeuticefficacyofmultipleintravenousinfusionsofanti-tumornecrosisfactoramonoclonalantibodycombinedwithlow-doseweeklymethotrexateinrheumatoidarthritis.ArthritisRheum41:1552-1563,199813)竹内勤,天野宏一:新しい治療法の考え方:生物製剤の現状と展望.日内会誌89:2146-2153,2000(114)