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原発閉塞隅角病における網膜血管密度に対する 水晶体再建術の影響

2023年9月30日 土曜日

《原著》あたらしい眼科40(9):1238.1243,2023c原発閉塞隅角病における網膜血管密度に対する水晶体再建術の影響北村優佳力石洋平澤口翔太新垣淑邦古泉英貴琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座CEvaluationofRetinalVascularDensityafterCataractSurgeryinPrimaryAngleClosureGlaucomaYukaKitamura,YoheiChikaraishi,ShotaSawaguchi,YoshikuniArakakiandHidekiKoizumiCDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyusC目的:原発閉塞隅角病(PACD)における水晶体再建術後の視神経乳頭周囲血管密度(p-VD)および黄斑部血管密度(m-VD)の変化を評価すること.対象および方法:2020年C6.12月に琉球大学病院にて水晶体再建術を行ったPACD症例C13例C21眼を対象とした.疾患の内訳は原発閉塞隅角症(PAC)がC10眼,原発閉塞隅角症疑い(PACS)が11眼,原発閉塞隅角緑内障(PACG)がC0眼であった.術前,術後C1週,1カ月,3カ月,6カ月の眼圧,前眼部形状変化,網膜血管密度を評価した.光干渉血管断層撮影を用いて視神経乳頭を中心としたC4.5×4.5Cmmの上方,耳側,下方,鼻側部位の網膜血管密度をCp-VDとして測定し,中心窩を中心としたC6×6Cmmの上方,耳側,下方,鼻側,中央部位の網膜血管密度をCm-VDとして測定した.結果:水晶体再建術後,眼圧は術後C1カ月で有意に下降した.p-VDは術後C1週で下方において有意に増加した.その後,上方・下方では術後C1週から術後C1カ月で有意に減少したが,術後C6カ月ではその変化は消失した.m-VDは術前後で一貫して変化しなかった.結論:PACおよびCPACSにおける水晶体再建術後の網膜血管密度変化は一過性かつ限局的であり網膜への影響が小さいことが示唆された.CPurpose:ToCevaluateCchangesCinCperipapillaryCvasculardensity(pVD)andCmacularCvasculardensity(mVD)CafterCcataractCsurgeryCinCprimaryCangle-closuredisease(PACD).CSubjectsandMethods:Twenty-oneCeyesCofC13CPACDpatientswereincluded.Teneyeshadprimaryangleclosure(PAC),11eyeshadprimaryangleclosuresus-pect(PACS),and0eyeshadprimaryangle-closureglaucoma(PACG).Usingopticalcoherencetomographyangi-ography,pVDandmVDweremeasuredina4.5×4.5Cmmareacenteredontheopticdiscanda6×6Cmmareacen-teredConCtheCcentralCfovea.CEvaluationCwasCperformedCpreoperativelyCandCatC1Cweek,C1Cmonth,C3Cmonths,CandC6CmonthsCpostoperatively.CResults:AtC1-weekCpostoperative,CpVDCincreasedCsigni.cantlyCinCtheCinferiorCarea,CandCthenCdecreasedCsigni.cantlyCinCtheCinferiorCandCsuperiorCareasCfromC1-weekCtoC1-monthCpostoperative.CHowever,CthoseCchangesCdisappearedCatC6-monthsCpostoperative.CNoCchangeCinCmVDCwasCobservedCbetweenCtheCpre-andCpostoperativeCperiods.CConclusions:TheCchangesCinCretinalCvascularCdensityCafterCcataractCsurgeryCinCPACCandCPACSweretemporaryandlimited.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(9):1238.1243,C2023〕Keywords:原発閉塞隅角症,水晶体再建術,血管密度,光干渉断層血管撮影,眼圧.primaryangleclosure,cata-ractsurgery,vesseldensity,opticalcoherencetomographyangiography,intraocularpressure.Cはじめにい(primaryCangleCclosuresuspect:PACS)などのCPACG緑内障診療ガイドライン(第C5版)では原発閉塞隅角緑内の前駆病変のすべてを包括する呼称として,新たに原発閉塞障(primaryangleclosureglaucoma:PACG)と,原発閉塞隅角病(primaryangleclosuredisease:PACD)という用語隅角症(primaryCangleclosure:PAC)や原発閉塞隅角症疑が定義された1).PACDの治療は根本的には閉塞隅角の解除〔別刷請求先〕北村優佳:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原C207琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座Reprintrequests:YukaKitamura,M.D.,DepartmentofOpthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,207Uehara,Nishihara-cho,Nakagami-gun,Okinawa903-0215,JAPANC1238(116)表1患者背景(平均値±標準偏差)症例13例21眼年齢(歳)C63.85±7.56C性別男性3例C5眼(2C3.8%)女性10例C16眼(C76.2%)病型PAC11眼(52.4%)PACS10眼(47.6%)PACG0眼(0%)術前眼圧(mmHg)C15.57±3.22緑内障・高眼圧症治療薬の使用14眼(66.7%)術前屈折値(D)C0.41±3.26C前眼部COCT所見ACD(mm)C2.08±0.26TISAC500(mmC2)C0.08±0.03PAC:原発閉塞隅角症,PACS:原発閉塞隅角症疑い,PACG:原発閉塞隅角緑内障,ACD:前房深度,TISA:trabecularCirusCspacearea.が必要であり,Azuara-Blancoら2)が瞳孔ブロック機序の存在するCPACDに対し水晶体再建術の有効性を報告し,わが国でも水晶体再建術が第一選択になりつつある.しかし,水晶体再建術は,術後合併症として.胞様黄斑浮腫や糖尿病網膜症の進行,加齢黄斑変性の発症など,手術侵襲による網膜への影響が示唆されている3).光干渉断層計(opticalCcoher-encetomography:OCT)を用いた検討では,水晶体再建術後に黄斑部の網膜厚や脈絡膜厚,体積が増加し,加齢黄斑変性が発症する可能性が報告されており4,5),網脈絡膜変化の原因として,手術侵襲による血液網膜関門の破綻,網膜血管密度の増加,硝子体牽引,術中術後の低眼圧,炎症による機序などが提唱されているが3),水晶体再建術後における眼底変化の正確な病態や機序はいまだ不明である.網膜血流を測定する方法として非侵襲的に網脈絡膜循環を描出する光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)があり,近年,網脈絡膜疾患だけでなく,緑内障においても網膜血流との関連が報告されている6).2018年にCInら7)はOCTAを用いて開放隅角緑内障(primaryCopenCangleCglau-coma:POAG)患者の線維柱帯切除術後に,視神経乳頭周囲の網膜血管密度を測定し,眼圧下降により網膜血管密度が増加したことを報告した.一方で,PACD眼では水晶体再建術後に眼圧が下降することが示されている8.10)が,これまでPACD眼における水晶体再建術後の網膜血管密度の評価はされていない.本研究ではCOCTAを用いてCPACD眼における水晶体再建術後の網膜血管密度の変化を後ろ向きに評価した.図1TISA500AOD500,角膜後面,AOD500と平行に強膜岬(SS)から引いた線および虹彩表面で囲まれた面積I対象および方法2020年C6.12月に,琉球大学病院にて水晶体再建術を行った患者のうち,術後C6カ月まで経過観察が可能であり,かつCOCTAで評価が可能であったCPACD患者C13例C21眼(男性C3例C5眼,女性C10例C16眼,年齢C63.85C±7.56歳)を対象とした.PACDは,前眼部所見および隅角所見から,Inter-nationalSocietyofGeographicandEpidemiologicalOpthal-mology(ISGEO)分類11)に従い定義した.PACGに関しては,MD(meandeviation)値C.6CdB未満を対象とした.疾患の内訳はPACが10眼,PACSが11眼,PACGが0眼であった.水晶体再建術は緑内障専門医C3人が全症例でC2.4Cmm耳側角膜切開にて行った.屈折値は等価球面度数を用いて求めた.症例の詳細を表1に示す.検討項目は眼圧,前房深度(anteriorCchamberdepth:ACD),隅角形状および網膜血管密度とした.眼圧はノンコンタクトトノメーターを用いて,3回測定した平均値を採用した.ACDと隅角形状は前眼部COCT(CASIA2,トーメーコーポレーション)を用いて測定し,角膜後面から水晶体前面または眼内レンズ前面までの距離をCACDと定義した.また,角膜後面の強膜岬(scleralspur:SS)からC500Cμmの点から垂直に下した虹彩までの距離であるCAOD(angleopen-ingdistance)500,角膜後面,AOD500と平行にCSSから引いた線および虹彩表面で囲まれた面積のCtrabecularCirisCspacearea(TISA)500を隅角形状として評価した(図1).網膜血管密度はスウェプトソースCOCTA(SS-OCTA)(DRI-OCTTriton,トプコン)を用いて,網膜表層の視神経乳頭周囲血管密度(peripapillaryCvesseldensity:p-VD)および黄斑部血管密度(macularCvesseldensity:m-VD)を評価した.p-VDは視神経乳頭周囲を中心とした4.5C×4.5CmmC図2OCTAを用いた網膜血管密度の測定a:視神経乳頭周囲血管密度(p-VD).b:黄斑部血管密度(m-VD).平方をスキャンしCETDRS(EarlyCTreatmentCDiabeticCReti-nopathyStudy)サークル内の直径C3Cmmの範囲を上方,耳側,下方,鼻側の部位で測定(図2a),m-VDは黄斑部中心窩を中心としたC6C×6Cmm平方をスキャンしCETDRSサークル内の直径C3Cmmの範囲を,上方,耳側,下方,鼻側,中央の部位で測定した(図2b).網膜血管密度の解析はCSS-OCTAに内蔵されている自動解析ソフトで行った.各項目は,水晶体再建術の術前,水晶体再建術後C1週,1カ月,3カ月,6カ月で測定した.網膜硝子体疾患を有する症例,取得した画像が不鮮明で解析困難な症例は除外した.統計解析は対応のある一元配置分散分析を使用し,すべての時点での比較を行い,最終的にCBonferroni法で補正した.p<0.05の場合に,統計学的に有意と判断した.本検討はヘルシンキ宣言に則り行い,琉球大学の人を対象とする生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:1267).CII結果屈折値は術前でC0.41C±3.26D,術後C1週でC.0.49±0.66Dであり,術前と比較して有意差はみられなかった.眼圧の経過を図3aに示す.眼圧は術前でC15.57C±3.22mmHg,術後C1週でC14.94C±2.80mmHg,術後C1カ月でC14.31±2.65mmHg,術後C3カ月でC14.69C±2.56CmmHg,術後C6カ月でC14.55C±2.51CmmHgであり,術前と比較して術後1カ月のみ有意に眼圧が下降した(p<0.05).全症例のうち,14眼は術前に緑内障・高眼圧症治療薬が投与されていた.また,術後の観察期間中はすべての症例で緑内障・高眼圧症治療薬は使用されなかった.前眼部COCTにおけるCACDとCTISA500の結果を図3bに示す.ACDは術前でC2.08C±0.26mm,術後C1週でC3.56C±0.30Cmm,術後C1カ月でC3.72C±0.21Cmm,術後C3カ月でC3.76C±0.22Cmm,術後C6カ月でC3.79C±0.19Cmmであり,すべての時点で術前と比較して深くなった(p<0.01)(図3b-1).TISA500は術前でC0.08C±0.03Cmm2,術後C1週でC0.14C±0.06Cmm2,術後C1カ月でC0.16C±0.06Cmm2,術後C3カ月でC0.15C±0.05Cmm2,術後C6カ月でC0.15C±0.06Cmm2であり,すべての時点で術前より有意に開大した(p<0.01)(図3b-2).p-VDとCm-VDの経過を図4に示す.p-VDは視神経乳頭上方において,術前でC46.48%,術後C1週でC48.70%,術後C1カ月でC45.35%,術後C3カ月でC45.99%,術後C6カ月で45.33%であった.術後C1週と比較して術後C1カ月,術後C3カ月,術後C6カ月で有意に低下がみられた(p<0.05)が,術前と比較して術後各測定時点での変化はなかった.視神経乳頭下方では,術前でC46.68%,術後C1週でC49.82%,術後C1カ月でC46.07%,術後C3カ月でC46.32%,術後C6カ月でC47.07%であった.術後C1週と比較し術後C1カ月,術後C3カ月で有意に低下した(p<0.05)が,術前との比較では術後C1週で有意に増加した(p<0.05)のみであった.視神経乳頭耳側では,術前でC49.06%,術後C1週でC48.67%,術後C1カ月で48.34%,術後C3カ月でC48.04%,術後C6カ月でC47.94%,視神経乳頭鼻側では,術前でC45.01%,術後1週でC44.61%,術後C1カ月でC44.64%,術後C3カ月でC44.26%,術後C6カ月でC44.43%であり,術前後,および術後の経過中に変化はみられなかった(図4a).m-VDはすべての測定時点,測定部位において有意な変化はなかった(図4b).CIII考按本研究ではCPACD眼における水晶体再建術後の眼圧,前房深度,隅角形状,p-VDおよびCm-VDの変化を術後C6カ月まで評価した.水晶体再建術により前房深度は深くなり,TISAは拡大した.術後C1カ月時点で眼圧は有意に下降したが,その後は有意な変化はみられなかった.また,視神経乳頭周囲において,術後C1週で一部の領域で網膜血管密度の上昇がみられたが,その後,網膜血管密度は低下した.術後C6カ月の時点では,視神経乳頭周囲,黄斑部のいずれの領域においても,網膜血管密度は術前と差がなかった.水晶体再建術後の網膜血管密度の変化は,既報では眼圧のa*眼圧(mmHg)20181614121086420術前術後術後術後術後1週1カ月3カ月6カ月平均値±標準偏差*:p<0.05,Bonferroni法b-1***b-2***4.5*0.25*0.500術前術後術後術後術後術前術後術後術後術後1週1カ月3カ月6カ月1週1カ月3カ月6カ月平均値±標準偏差平均値±標準偏差ACD:前房深度TISA500:TrabecularIrusSpaceArea500*:p<0.01,Bonferroni法*:p<0.01,Bonferroni法4TISA500(mm2)0.23.532.52ACD(mm)0.150.11.510.05図3水晶体再建術前後における眼圧,ACD,TISAの経過a:水晶体再建術前後における眼圧の変化.Cb-1:水晶体再建術前後におけるCACDの経過.Cb-2:水晶体再建術前後におけるCTISAの経過.C*b5550454035a55p-VD(%)50453025201510403530術前術後術後術後術後術前術後術後術後術後1週1カ月3カ月6カ月1週1カ月3カ月6カ月上方耳側下方鼻側上方耳側下方鼻側中央平均値±標準偏差平均値±標準偏差p-VD:視神経乳頭周囲血管密度m-VD:黄斑部血管密度*:p<0.05,Bonferroni法図4水晶体再建術前後における網膜血管密度の経過a:水晶体再建術前後におけるCp-VDの経過.Cb:水晶体再建術前後におけるCm-VDの経過.変動,あるいは術後の炎症による影響が指摘されていHiltonら14)は水晶体再建術後の眼圧レベル低下により拍動る3,12,13).PACD眼に対する水晶体再建術は,前房容積の拡性眼血流が改善することを報告した.また,POAG患者に大による眼圧の低下を引き起こすと考えられており10),対する線維柱帯切除術後C3カ月における報告7)では,眼圧は下降し,視神経乳頭周囲血管密度が増加したと報告されている.また,観察期間中,視神経乳頭周囲血管密度は術後C1週でわずかに減少したが,その後は徐々に増加し術後C3カ月で術前と比較して有意な増加がみられた.眼圧下降と視神経乳頭血管密度の増加は有意に関連していたと述べられている.本研究においてもCPACD眼は水晶体再建術後,ACDは深くなり眼圧は術後C1週で不変,1カ月で下降した.本研究ではp-VD,m-VDは術後C1週で一部増加したのみで,眼圧下降がみられた術後C1カ月での増加はなく,眼圧と関連した変化はみられなかった.Zhaoら12)は水晶体再建術後の黄斑部の網膜血管密度増加を報告しており,彼らのコホートでは水晶体再建術後にC2.80C±1.12CmmHgの眼圧下降がみられているが,本研究では術後C1カ月時点でC0.87C±2.09CmmHgと下降幅が小さかった.既報では術前の眼圧が低い症例は水晶体再建術後の眼圧下降が低いことが示唆されており10),本検討の対象眼は,術前に緑内障・高眼圧症治療薬を使用されている症例がC21眼中C14眼あり,眼圧上昇をきたしている症例は少なかったため,眼圧の下降幅が小さく,網膜血管密度に影響をおよぼさなかった可能性がある.水晶体再建術については,Pilottoら15)が術後の局所的な炎症反応により血管系の変化が起こることを示唆している.Zhouら3)は術後の網膜血管密度増加を報告しているが,その原因として,炎症反応によりプロスタグランジンの放出が誘発され,血液-房水関門の崩壊を引き起こし,房水に他の炎症メディエーターが蓄積され,硝子体に拡散することで網膜血管系の一時的な拡張と,網膜毛細血管の開通を引き起こすことを提唱している.また,合併症のない水晶体再建術後の炎症反応は術後C1週からC1カ月の間に最大となり,2.6カ月後にはベースラインに戻ると報告されている5).本研究の結果も術後C1週時点でのCp-VD増加,その後のCp-VD低下という網膜血管密度変化と術後炎症の転機は,既報と合致するものであった.これまで水晶体再建術後にCOCTAにて視神経乳頭周囲血管密度および黄斑部血管密度を測定した既報3)と,黄斑部血管密度のみを測定した既報12,13)では,術後にすべての追跡期間で血管密度の増加がみられている.本研究では,既報3,12,13)と異なり,p-VDの増加は限定的で,m-VDは有意な変化はなかった.原因として本研究の対象がCPACD眼であることや,既報3,12,13)と比較し若年であり,水晶体核硬度が低かった可能性や,手術時の切開幅が本研究ではC2.4Cmmと既報3)のC2.8Cmm切開より小さいことなどから,炎症惹起が少なかったことが考えられる.超音波乳化吸引装置による累積使用エネルギー値と網膜血管密度変化は相関することが報告されており3),柔らかい水晶体核や極小切開水晶体再建術は,網膜血管密度への影響が小さい可能性が示唆される.また,m-VDはCp-VDに比べて血管密度が低く,眼圧変化や炎症の影響を受けにくい可能性があるが,水晶体再建術後に網膜の部位別に血管密度変化の比較を行った報告はなく,まだ十分には検討されていない.最後に,本研究の限界としてつぎの二点があげられる.1点目は対象についてである.今回は,条件を満たす症例がいなかったためCPACGは含まれず,PACSおよびCPACが対象となった.緑内障性視神経症は網膜血管密度へ影響を及ぼすことが推察され,PACGを含む検討では異なる結果となった可能性がある.2点目は術前後の拡大率の違いである.今回はCOCTA測定時に屈折値補正は行っていないが,術前後の屈折値の変化により,OCTA撮像範囲が変化した可能性が考えられる.本研究では術前と比較し術後の屈折値に有意差はなかったものの,対象症例では遠視眼が多く,術前後の拡大率の違いが結果に影響を与えた可能性も推察される.これら二点は本研究の限界であり,今後はさらなる多数例での観察と屈折値を考慮した測定が必要であると考える.今回,PACDにおける水晶体再建術後の網膜血管密度の変化を検討した.既報3,12,13)と同じく術後C1週時点ではp-VDの増加がみられたが,m-VDの増加はみられず,網膜血管密度の変化は限定的であった.本研究におけるCPACD眼に対する侵襲がきわめて少ない極小切開水晶体再建術は,前房深度増大とCTISA増加の有用性と,網膜血流や網膜血管密度への影響が軽微であることを示す結果となった.水晶体再建術における網脈絡膜血管に対する影響は,OCTAにおける網膜血管の層別解析や脈絡膜血流の解析によるさらなる検討が必要である.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)Azuara-BlancoCA,CBurrCJ,CRamsayCCCetal:E.ectivenessCofCearlyClensCextractionCforCtheCtreatmentCofCprimaryangle-closureCglaucoma(EAGLE):aCrandomisedCcon-trolledtrial.LancetC388:1389-1397,C20163)ZhouCY,CZhouCM,CWangCYCetal:Short-termCchangesCinCretinalCvasculatureCandClayerCthicknessCafterCphacoemul-si.cationsurgery.CurrEyeResC45:31-37,C20204)NodaY,OgawaA,ToyamaTetal:Long-termincreaseinCsubfovealCchoroidalCthicknessCafterCsurgeryCforCsenileCcataracts.AmJOphthalmolC158:455-9Ce1,C20145)FalcaoMS,GoncalvesNM,Freitas-CostaPetal:Choroi-dalCandCmacularCthicknessCchangesCinducedCbyCcataractCsurgery.ClinOphthalmolC8:55-60,C20146)AkilH,HuangAS,FrancisBAetal:Retinalvesseldensi-tyCfromCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCtoCdi.erentiateearlyglaucoma,pre-perimetricglaucomaandnormaleyes.PLoSOneC12:e0170476,C20177)PaulCJF,CRaufCB,CHarryCAQCetal:TheCde.nitionCandCclassi.cationCofCglaucomaCinCprevalenceCsurveys.CBrJOpthalmolC86:238-242,C20028)InJH,LeeSY,ChoSHetal:PeripapillaryvesseldensityreversalCafterCtrabeculectomyCinCglaucoma.CJCOphthalmolC2018;8909714,C20189)VuCAT,CBuiCVA,CVuCHLCetal:EvaluationCofCanteriorCchamberCdepthCandCanteriorCchamberCangleCchangingCafterCphacoemulsi.cationCinCtheCprimaryCangleCcloseCsus-pectCeyes.COpenCAccessCMacedCJCMedCSciC7:4297-4300,C201910)MelanciaD,AbegaoPintoL,Marques-NevesC:CataractsurgeryCandCintraocularCpressure.COphthalmicCResC53:C141-148,C201511)CarolanJA,LiuL,Alexee.SEetal:IntraocularpressurereductionCafterphacoemulsi.cation:ACmatchedCcohortCstudy.OphthalmolGlaucomaC4:277-285,C202112)ZhaoCZ,CWenCW,CJiangCCCetal:ChangesCinCmacularCvas-culatureCafterCuncomplicatedCphacoemulsi.cationCsur-gery:OpticalCcoherenceCtomographyCangiographyCstudy.CJCataractRefractSurgC44:453-458,C201813)KrizanovicA,BjelosM,BusicMetal:MacularperfusionanalysedCbyCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCafteruncomplicatedCphacoemulsi.cation:bene.tsCbeyondCrestoringvision.BMCOphthalmolC21:71,C202114)HiltonEJ,HoskingSL,GherghelDetal:Bene.ciale.ectsofCsmall-incisionCcataractCsurgeryCinCpatientsCdemonstrat-ingreducedocularblood.owcharacteristics.Eye(Lond)C19:670-675,C200515)PilottoE,LeonardiF,StefanonGetal:EarlyretinalandchoroidalCOCTCandCOCTCangiographyCsignsCofCin.ammationCafterCuncomplicatedCcataractCsurgery.CBrJOphthalmolC103:1001-1007,C2019***

原発閉塞隅角緑内障に対するレーザー虹彩切開術の角膜内皮細胞に及ぼす長期的影響

2020年4月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科37(4):490.492,2020c原発閉塞隅角緑内障に対するレーザー虹彩切開術の角膜内皮細胞に及ぼす長期的影響窪倉真樹子中元兼二白鳥宙髙野靖子高橋浩日本医科大学眼科学教室CLong-TermE.ectofLaserIridotomyonCornealEndothelialCellDensityinCasesofPrimaryAngle-ClosureGlaucomaMakikoKubokura,KenjiNakamoto,NakaShiratori,YasukoTakanoandHiroshiTakahashiCDepartmentofOphthalmology,NipponMedicalSchoolC日本医科大学付属病院緑内障外来を受診した患者のうち,原発閉塞隅角症(PAC)および原発閉塞隅角緑内障(PACG)患者を対象に,レーザー虹彩切開術(LI)による角膜内皮細胞密度(CD)への影響を調べた.CD減少率を目的変数,LI施行日から最終CCD検査日までの期間(観察期間)を説明変数として回帰分析を行った.PAC(G)患者は15例26眼(男性3例5眼,女性12例21眼),年齢64±12歳,LI施行日からの観察期間はC34.5±15.7月であった.CDはCLI:治療前C2,810±173個/mm2,治療後C2,682±197個/mm2で有意に減少していた(p=0.02).CD減少率と観察期間との間に有意な正の関係があった(CD減少率=.0.4+0.1×観察期間(月),p=0.046,r2=0.16).PAC(G)に対する予防的CLIでは,CDは年間C1.6%減少し,約C40年間で半減すると予測された.CWeevaluatedthee.ectoflaseriridotomy(LI)oncornealendothelialcelldensity(ECD)inprimaryangle-clo-sureandprimaryangle-closureglaucomapatients.Thesubjectswere26eyesof15cases(male:3cases,5eyes;female:12Ccases,C21eyes).CTheCmeanCpatientCageCwasC64±12Cyears,CandCtheCmeanCfollow-upCperiodCwasC34.5±15.7months.ThemeancornealECDsigni.cantlydecreasedfrom2,810±173Ccells/mm2CpreLIto2,682±197Ccells/Cmm2CpostLI(p=0.02).Asigni.cantcorrelationwasfoundbetweentherateofcornealECDreductionandlengthofthepostoperativeobservationperiod(p=0.046).CornealECDwasestimatedtodecrease1.6%peryearpostLI,withanestimatedlossof50-percentat40-yearspostoperative.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(4):490.492,C2020〕Keywords:原発閉塞隅角症,原発閉塞隅角緑内障,レーザー虹彩切開術,角膜内皮細胞,長期的影響.primaryCangleclosure,primaryangleclosureglaucoma,laseriridotomy,cornealendothelialcell,long-terme.ect.Cはじめに緑内障はわが国の中途失明原因の第一位であるが1),原発閉塞隅角緑内障(primaryCangleCclosureglaucoma:PACG)は原発開放隅角緑内障に比し数倍失明率が高く2),臨床上注意を要する緑内障病型である.また,原発閉塞隅角症(pri-maryangleclosure:PAC)は無治療で経過観察すると,5年以内にC22%がCPACGに移行することが報告されており3),PACG発症予防のため外科的治療が必要である.わが国における緑内障の治療指針を示した緑内障診療ガイドライン第4版では,瞳孔ブロックによるCPACおよびCPACGに対しては,レーザー虹彩切開術(laseriridotomy:LI)または水晶体再建術が標準治療となっている4).LIは外来で簡便に瞳孔ブロックを解除できるので有用な治療法であるが,術後長期を経て発症する水疱性角膜症の合併はいまだ皆無ではない5.7).今回,筆者らは日本医科大学付属病院眼科(以下,当科)における急性緑内障発作の既往のないCPACおよびCPACGに対するCLIが角膜内皮細胞に及ぼす影響を後ろ向きに検討し,角膜内皮障害への長期的影響が予測できたので報告する.〔別刷請求先〕窪倉真樹子:〒113-8603東京都文京区千駄木C1-1-5日本医科大学眼科学教室Reprintrequests:MakikoKubokura,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NipponMedicalSchool,1-1-5Sendagi,Bunkyo-ku,Tokyo113-8603,JAPANC490(114)0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(114)C4900910-1810/20/\100/頁/JCOPY3,5003,000LI後細胞密度(個/mm2)LI後眼圧(mmHg)151052,500005101520LI前眼圧(mmHg)図1LI前後の眼圧変化眼圧はCLI前後で有意差はなかった(p=0.60).C1510500102030405060702,0002,0002,5003,0003,50025LI前細胞密度(個/mm2)図2LI前後の角膜内皮細胞密度の変化角膜内皮細胞密度はCLI施行後にC129C±136個/mmC2有意に減少していた(p=0.02).しているものとした.LIの術式は全例アルゴンレーザー・Nd:YAGレーザー法であった.アルゴンレーザー(グリーン)で穿孔予定部位周囲を照射し虹彩を伸展菲薄化後,Nd:YAGレーザーで穿孔した.それぞれのレーザー設定と照射数は,アルゴンレーザーにて第一段階としてC200Cμm,0.2秒,200CmWでC4発,第二段階としてC50Cμm,0.02秒,1,000CmWでC10.20発したのち,Nd:YAGレーザーにてC1.5CmJで1.2発照射とし,全例この範囲で施行した.CD減少率(%)-5観察期間(月)図3CD減少率と観察期間との関係CD減少率と観察期間との間に有意な正の関係があった(CD減少率=0.4+0.1×観察期間(月),rC2=0.16,Cp=0.046).CI対象および方法2016年C6月.2016年C11月に当科を受診した患者のうち,緑内障専門医(K.N.)が施行した予防的CLI後のCPACおよびPACG患者を対象とした.内訳は,年齢(平均値C±標準偏差)C64±12歳(39.78歳),男性C3例(5眼),女性C12例(21眼)のC15例C26眼であった.病型の内訳は,PACがC11例C19眼,PACGがC4例C7眼であった.選択基準は,LI前後に角膜内皮細胞測定が行われているものとした.除外基準は,内眼手術の既往,滴状角膜,Fuchs角膜内皮ジストロフィなど,緑内障以外の眼疾患を有するものとした.PACおよびCPACGの診断は,LI術前のカルテ所見より行った.緑内障診療ガイドライン4)に準じて,PACは,原発隅角閉塞によって眼圧上昇(少なくともC20CmmHgをC1回でも超える)をきたしている,もしくは周辺虹彩前癒着があるが緑内障性視神経症がないものとした.PACGはCPACに緑内障性視神経症を有角膜内皮細胞はスペキュラマイクロスコープCSP-2000P(トプコン)を用いて測定し,角膜中央部のデータを解析に用いた.視力,眼圧,角膜内皮細胞密度(celldensity:CD)(個/Cmm2)をCLI前後で比較した(WilcoxonCsigned-ranktest).また,CD減少率を[(LI前CCD-最終観察時CCD)/LI前CCD]C×100(%)として算出し,目的変数をCCD減少率,説明変数をCLI施行日から最終角膜内皮細胞検査日までの期間(観察期間)として,直線回帰分析を行った.統計解析は,JMP8(SASInstitute社)を用いて,有意水準p<0.05(両側検定)で検定した.CII結果1.視力(logMAR)および眼圧の変化視力については,LI前後で視力測定が行われていたC15例24眼で検討した.LI前(平均値C±標準誤差):.0.06±0.04(.0.08.0),LI後:0.02C±0.20(C.0.08.0.7)(p=0.03)であり,白内障進行により有意に低下した.また,眼圧の検討では,LI前:13.8C±3.8CmmHg(7.5.21CmmHg),LI後:C13.5±3.7CmmHg(8.21CmmHg)であり,LI前後に有意差はなかった(p=0.60,図1).C2.CDの変化およびCD減少率と観察期間との関係観察期間はC34.5C±15.7月であった.角膜内皮細胞数はCLI前:2,810C±173/mm2,LI後:2,682C±197mm2であり,LI(115)あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020C491施行後にC129C±136個/mmC2有意に減少していた(p=0.02,図2).また,目的変数をCCD減少率(%),説明変数を観察期間(月)として直線回帰分析を行ったところ,両者に有意な正の関係があった〔CD減少率=0.4+0.1×観察期間(月),Cr2=0.16,Cp=0.046,図3〕.CIII考按今回,アルゴンレーザー・Nd:YAGレーザー法によるLIが施行されたCPACおよびCPACG患者を対象に,LIの角膜内皮細胞への影響について後ろ向きに検討したところ,LI後のCCD減少率はC1.6%/年であり,加齢によるCCD減少率は0.3.0.7%/年8)に比し早かった.また,これは同様の検討をした宇高らの報告9)におけるCCD減少率C1%/年より早かった.本検討の結果から算出すると,CDはCLI施行後約C40年間で半減することがわかった.ただし,回帰式の決定係数はCr2=0.16と低く,回帰式の精度の問題がある.PACGにおけるCLI後では,通常,眼圧は有意に下降することが多いが10),今回の検討では有意な眼圧下降はなかった.この原因として,対象にCPACGの割合が少ないこと,治療前に眼圧下降薬が使用されている症例が含まれていることなどが考えられる.本検討の問題点および限界としては,①CCDがCLI前後で1回ずつしか測定されていないため,測定値の精度が低い可能性があること,②大学病院での後ろ向き研究のため,通院困難などの理由で近医に転院した症例が多く,結果として症例数が少ないこと,③今回対象から除外された症例のなかには,LIではなく水晶体再建術が施行されたものも多く,とくに隅角閉塞機序に水晶体因子の影響が強い症例などは除外されている可能性が高いこと,などがあげられる.最近,白内障のないCPACおよびCPACGを対象としたCLIと水晶体再建術の前向き比較試験(EAGLEstudy)10)の結果が報告され,水晶体再建術のほうが,LIより生活の質,経済面および眼圧コントロールにおいて優れていることが高いエビデンス・レベルで実証された.そのため,最近ではPACおよびCPACGにおける第一選択は水晶体再建術となりつつある11).しかし,PACおよびCPACGに対する水晶体再建術は通常の手術に比し手術難易度が高いため,術中合併症のリスクがより高くなることが知られている4).元来,水晶体再建術でもCCDは減少し,ときに水疱性角膜症もきたしうるという問題もある5).ただし,角膜内皮細胞の再生医療の進歩は目覚ましく12),将来は,LIによるものも含めて水疱性角膜症が現在ほど重篤な合併症の扱いではなくなる可能性がある.今回の結果からCPACおよびCPACGに対するCLIによって,CD減少率は年間C1.6%/年減少し,CDはCLI後約C40年間で半減すると予測された.LIは簡便で瞳孔ブロック解除に有用な治療法であるが,現時点では年齢およびCLI前のCCDを考慮して慎重に適応を決める必要がある.文献1)白神史雄:厚生労働科学研究研究費補助金,難治性疾患克服研究事業2)QuigleyCHA,CBromanAT:TheCnumberCofCpeopleCwithCglaucomaCworldwideCinC2010CandC2020.CBrCJCOphthalmolC90:262-267,C20063)ThomasCR,CParikhCR,CMuliyilCJCetal:Five-yearCriskCofCprogressionofprimaryangleclosuretoprimaryangleclo-sureglaucoma:ACpopulation-basedCstudy.CActaCOphthal-molScandC81:480-485,C20034)日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン第C4版.日眼会誌C122:5-53,C20185)ShimazakiJ,AmanoS,UnoTetal:NationalsurveryonbullouskeratopathyinJapan.CorneaC26:274-278,C20076)SchwartzAL,MartinNF,WeberPAetal:Cornealdecom-pensationCafterCargonClaserCiridectomy.CArchCOphthalmolC106:1572-1574,C19887)LimLS,HoCL,AngLPetal:Inferiorcornealdecompen-sationfollowinglaserperipheraliridotomyinthesuperioriris.AmJOphthalmolC142:166-168,C20068)天野史郎:正常者の角膜内皮細胞.あたらしい眼科C26:C147-152,C20099)宇高靖,横内裕敬,木本龍太ほか:レーザー虹彩切開術が角膜内皮細胞密度に与える長期的影響.あたらしい眼科C28:553-557,C201110)Azuara-BlancoCA,CBurrCJ,CRamsayCCCetal:E.ectivenessCofCearlyClensCextractionCforCtheCtreatmentCofCprimaryangle-closureCglaucoma(EAGLE):aCrandomisedCcon-trolledtrial.LancetC388:1389-1397,C201611)KimCYY,CJungHR:ComparisonCofC2007-2012CKoreanCtrendsinlaserperipheraliridotomyandcataractsurgeryrates.JpnJOphthalmolC58:40-46,C201412)KinoshitaCS,CKoizumiCN,CUenoCMCetal:InjectionCofCcul-turedcellswithaROCKinhibitorforbullouskeratopathy.NEnglJMedC378:995-1003,C2018***(116)

角膜内皮細胞が減少している原発閉塞隅角症および原発閉塞 隅角緑内障に対する白内障手術後の角膜内皮細胞の変化

2010年4月30日 金曜日

———————————————————————-Page1(133)5490910-1810/10/\100/頁/JCOPYあたらしい眼科27(4):549553,2010cはじめに原発閉塞隅角症(primaryangle-closure:PAC)および原発閉塞隅角緑内障(primaryangle-closureglaucoma:PACG)に対する治療としては,薬物治療ではなく手術治療が第一選択とされる1).外来にて短時間で簡便に施行可能で,合併症が少ないレーザー虹彩切開術(laseriridotomy:LI)はPAC(G)の治療の中心として位置づけられている.しかしながらLI後の眼圧コントロールは中長期的には不良であることが報告されている2).またLIの晩期合併症として,近年わが国において水疱性角膜症(bullouskeratopathy:BK)の発症が注目されている3).一方,PAC(G)の発症には水晶体が大きく関与することが知られており,白内障手術もPAC(G)症例において隅角開大効果,眼圧コントロールの両面において有効であることが報告されている46).しか〔別刷請求先〕江夏亮:〒903-0125沖縄県中頭郡西原町字上原207琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野Reprintrequests:RyoEnatsu,M.D.,DepartmentofOphthalmology,UniversityofRyukyusFacultyofMedicine,207Uehara,Nishihara-cho,Nakagami-gun,Okinawa903-0125,JAPAN角膜内皮細胞が減少している原発閉塞隅角症および原発閉塞隅角緑内障に対する白内障手術後の角膜内皮細胞の変化江夏亮*1酒井寛*2與那原理子*2平安山市子*2新垣淑邦*2早川和久*2澤口昭一*2*1江口眼科病院*2琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野PhacoemulsicationandAspirationforPrimaryAngle-ClosureandPrimaryAngle-ClosureGlaucomawithCornealEndothelialCellLossRyoEnatsu1),HiroshiSakai2),MichikoYonahara2),IchikoHenzan2),YoshikuniArakaki2),KazuhisaHayakawa2)andShoichiSawaguchi2)1)EguchiEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,UniversityofRyukyusFacultyofMedicine超音波水晶体乳化吸引術(phacoemulsicationandaspiration:PEA)と眼内レンズ(intraocularlens:IOL)挿入術を行った原発閉塞隅角症(primaryangle-closure:PAC)および原発閉塞隅角緑内障(primaryangle-closureglau-coma:PACG)の症例のうち,術前の角膜内皮細胞密度が1,000cells/mm2以下まで減少していた11例15眼の術後角膜内皮細胞密度および術後経過について検討し,症例を呈示する.術後1カ月に1眼が水疱性角膜症(bullousker-atopathy:BK)を発症した.術後2,6,12カ月の平均角膜内皮細胞減少率は11.4%,13.0%,および15.4%であった.角膜内皮細胞密度1,000cells/mm2以下のPACおよびPACG症例に対する白内障手術は,術後のBK発症を考慮して行うことが求められる.Weevaluatedcornealendothelialcelllossafterphacoemulsicationcataractsurgeryin15primaryangle-clo-sure(PAC)andprimaryangle-closureglaucoma(PACG)eyesthatalreadyhadcornealendothelialcelldecreasetolessthan1,000cells/mm2.At1monthafterthesurgery,oneeyedevelopedbulluskeratopathy.Averagecornealendothelialcellreductionof11.4%,13.0%and15.4%wereobservedat2,6,and12monthsaftersurgery,respectively.InPACandPACGeyeswithcornealendothelialcelldecreasetolessthan1,000cells/mm2,bullouskeratopathyshouldbepreoperativelyconsideredasapossiblecomplicationfollowingpost-phacoemulsicationsur-gery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(4):549553,2010〕Keywords:角膜内皮細胞,原発閉塞隅角症,超音波水晶体乳化吸引術,レーザー虹彩切開術,水疱性角膜症.cornealendotheliumcell,primaryangle-closure,phacoemulsicationandaspiration,laseriridotomy,bulluskeratopathy.———————————————————————-Page2550あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(134)し白内障手術の合併症として角膜内皮細胞減少が考えられており,白内障手術後の角膜内皮細胞減少率は過去の検討において平均7%前後と報告されている7,8).BKの原因としては手術に関連する医原性のものが過半数を占めており,その内訳として第1位に白内障手術,第2位にLIがあげられている9).そのため,角膜内皮障害を有するPAC(G)に対する治療としてはLI,白内障手術のどちらもBK発症を念頭に置く必要があると考えられる.今回筆者らは術前の角膜内皮細胞密度が1,000cells/mm2以下と強度の角膜内皮障害を有するPACおよびPACGの症例に対して超音波水晶体乳化吸引術(phacoemulsicationandaspiration:PEA)と眼内レンズ(intraocularlens:IOL)挿入術を施行し,術後の角膜内皮細胞密度について検討したので報告する.I対象および方法対象は2004年12月から2005年11月までに琉球大学医学部附属病院眼科において熟練した同一術者により耳側角膜切開の単独手術でPEA+IOLを行ったPACおよびPACG症例のうち,術前の角膜内皮細胞密度が1,000cells/mm2以下であった11例15眼である.術後に通院を自己中断したことにより,術後6カ月以上経過観察できなかった症例は今回の検討から除外した.PAC(G)の診断はISGEO(Inter-nationalSocietyofGeographicalandEpidemiologicalOph-thalmology)分類に準拠し,2名の緑内障専門医により隅角鏡検査および超音波生体顕微鏡検査(ultrasoundbiomicro-scope:UBM)を施行し診断した.対象の内訳は男性2例,女性9例,年齢は6684歳(平均76.5歳)であった.急性緑内障発作の既往があるものが3眼〔発作後LI施行1眼,周辺虹彩切除術(peripheraliridectomy:PI)施行1眼,未処置1眼〕,予防的LI施行後5眼,未治療7眼であった.眼軸長は21.0522.94mm(平均21.90mm),前房深度は1.282.48mm(平均1.72mm),水晶体核硬度はEmery-Little分類にてGrade1が5眼,Grade2が7眼,Grade3が3眼であった.術後観察期間は最短6カ月,最長52カ月で平均25.7カ月であった.白内障手術を選択した理由として,①緑内障発作眼およびその僚眼(3眼)や,②UBM上機能的隅角閉塞が全周性にあり(2眼),緑内障発作の危険が高いと判断された,③LI施行後,抗緑内障薬使用にても眼圧コントロールが不良であった(1眼)といった閉塞隅角治療を目的とした例,④進行性の角膜内皮細胞減少を認めており(3眼),角膜内皮減少の進行を抑えることを目的とした,もしくは角膜内皮細胞減少の進行により今後いっそう白内障手術が困難になっていくと予測された例,⑤白内障による視力低下のため手術希望が強く(6眼),視力改善を目的とした例があった.術前にBK発症の可能性,治療としての角膜移植術の必要性について十分に説明し同意を得て手術を施行した.手術は点眼麻酔下に耳側透明角膜3.2mm切開で行った.灌流液はエピネフリンを0.2ml/500ml添加したBSSプラスR(日本アルコン)を使用し,粘弾性物質としてオペガンハイR(参天製薬)+ビスコートR(日本アルコン)を用いたソフトシェルテクニック10)を用いた.前切開は27ゲージ針チストトームにて行った.アルコン社製インフィニティRにてPEA施行した後,折り畳み式アクリル眼内レンズを,インジェクターを用いて挿入した.角膜切開創には手術終了時ハイドレーションを用い,縫合は行わなかった.術中合併症は認めなかった.術前,術後の診察時に非接触性角膜内皮細胞測定装置(TOPCONMicroscope,SP2000PR)を用いて角膜中央部を撮影し角膜内皮細胞密度を測定した.II結果15眼中1眼で術後1カ月にBKを発症した.他の14眼は経過観察中,角膜は透明性を維持していた.術前角膜内皮細胞密度483968cells/mm2(平均730.3±152.5)に対して術後2カ月の角膜内皮細胞密度は433927cells/mm2(平均639.9±136.4),術後6カ月の角膜内皮細胞密度は348927cells/mm2(平均642.3±178.2),術後12カ月の角膜内皮細胞密度は416822cells/mm2(平均620.8±144.2)であった.術前に比べて,術後2カ月,術後6カ月,術後12カ月の角膜内皮細胞密度は有意に減少していた(p<0.05,Wil-coxon符号付順位和検定).術後2カ月,術後6カ月,術後12カ月の角膜内皮細胞密度の間に有意差はなかった(図1).術後2カ月の角膜内皮細胞減少率は最高51.2%で平均11.4%,術後6カ月の角膜内皮細胞減少率は最高40.0%で平均13.0%,術後12カ月の角膜内皮細胞減少率は最高手術前(n=15)2カ月後(n=14)6カ月後(n=14)12カ月後(n=10)1,000900800700600500400角膜内皮細胞密度(cells/mm2)***図1術前後の角膜内皮細胞密度の平均値術前に比べて術後2カ月,術後6カ月,術後12カ月の角膜内皮細胞密度は有意に減少していた(*p<0.05,Wilcoxon符号付順位和検定).術後2カ月,術後6カ月,術後12カ月の角膜内皮細胞密度の間に有意差はなかった.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010551(135)45.3%で平均15.4%であった.LogMAR視力にて2段階以上改善した例が8眼,不変が6眼,2段階以上悪化した例が1眼であった(図2).眼圧は全体としては術前後で有意な変化を認めなかったが,眼圧33mmHgの1眼において眼圧は14mmHgに低下した(図3).今回の検討した症例の一覧を示し(表1),BK発症例(症例1)および角膜内皮細胞減少率が特に高かった3症例(症例2,3,4),そして緑内障発作に対してアルゴンレーザーおよびYAGレーザーによるLIを施行した後より進行性の角膜内皮細胞減少を認めていた症例(症例5)を呈示する.〔症例1.BK発症〕緑内障発作に対してPIを施行されていた.他眼はLI後にBKを発症していた.前房深度は1.48mmであった.隅角鏡検査では全周性の周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsyn-echia:PAS)があった.眼圧コントロールは30mmHg以上と不良であったうえ,白内障による視力低下が進行したため手術を施行した.術後1カ月でBKを発症し,角膜内皮細胞密度は測定不能であった(図4).本人の希望により角膜移植術は施行せずに経過観察となった.術後の眼圧は14mmHgまで低下した.〔症例2.角膜内皮細胞減少率-40.0%〕他眼も角膜内皮細胞密度700cells/mm2台であった.前房深度は1.79mmであった.UBMおよび隅角鏡検査にて4/4周の機能的隅角閉塞があった(図5).緑内障発作の危険が高いと判断し手術を施行した.角膜内皮細胞減少率は術後2,6カ月で24.1%,40.0%であった.経過観察中角膜は透明性を維持していた.表1対象の詳細症例年齢(歳)核硬度眼軸長(mm)前房深度(mm)角膜内皮細胞密度角膜内皮細胞減少率(%)視力備考術前6カ月後術前術後173G222.521.48558BKBK0.40.3LI(),PI(+),glaattack(+),guttata()284G121.801.7979047440.00.40.5LI(),PI(),glaattack(),guttata()366G221.942.1650634831.20.50.8LI(),PI(),glaattack(),guttata(+)472G322.301.5788857535.20.20.6LI(+),PI(),glaattack(),guttata(+)564G222.481.39633726+14.60.91.0LI(+),PI(),glaattack(+),guttata()676G321.621.5473965211.80.41.2LI(+),PI(),glaattack(),guttata()774G222.781.6760647321.90.51.0LI(),PI(),glaattack(+),guttata()881G323.041.52483488+1.00.31.2LI(+),PI(),glaattack(),guttata()973G320.541.5792274719.00.30.8LI(+),PI(),glaattack(),guttata()1066G221.882.04722927+28.40.70.7LI(),PI(),glaattack(),guttata(+)1174G222.821.8969155919.10.81.0LI(),PI(),glaattack(),guttata()1284G221.631.9072050929.30.30.5LI(),PI(),glaattack(),guttata()1373G220.021.8896880017.40.060.04LI(+),PI(),glaattack(),guttata()1458G221.051.288758493.00.91.0LI(),PI(),glaattack(),guttata()1568G222.122.48853865+1.40.71.0LI(),PI(),glaattack(),guttata()BK:水疱性角膜症,LI:レーザー虹彩切開術,PI:周辺虹彩切除術,glaattack:急性緑内障発作,guttata:滴状角膜.00.20.40.60.8術前視力(LogMAR視力)術後視力(LogMAR視力)11.21.41.41.210.80.60.40.20-0.2図2術前視力と術後視力(n=15眼)改善した例が8眼,不変が6眼,悪化した例が1眼であった.3530252015105005101520術前眼圧(mmHg)術後眼圧(mmHg)253035図3術前眼圧と術後眼圧(n=15眼)術前後の眼圧は統計学的に有意な変化は認めなかった.術前に33mmHgであった1眼では14mmHgまで低下した.———————————————————————-Page4552あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(136)〔症例3.角膜内皮細胞減少率-31.2%〕両眼に滴状角膜を認め,他眼の角膜内皮細胞密度も500cells/mm2台であった.この症例の子供も両眼とも角膜内皮細胞密度800cells/mm2台であった.上記よりFuchs角膜内皮ジストロフィが疑われた.前房深度は2.16mmであった.角膜内皮細胞密度の減少が進行性であり,白内障による視力低下もあったため手術を施行した.術後2カ月では角膜内皮細胞は減少していなかったが,術後6カ月の角膜内皮減少率は31.2%であった.経過観察中角膜は透明性を維持していた.〔症例4.角膜内皮細胞減少率-35.2%〕緑内障発作に対してLI施行されていた.前房深度は1.57mmであった.隅角鏡検査では3/4周にPASがあり,眼圧は2022mmHgであった.白内障による視力低下が進行し,本人の手術希望が強く手術を施行した.術後2,6,12カ月の角膜内皮細胞減少率は51.2,35.2,30.0%であったが,経過観察中角膜は透明性を維持していた.術後眼圧は2022mmHgであった.〔症例5.角膜内皮細胞減少率+14.6%〕LI前2,397cells/mm2であった角膜内皮細胞密度は進行性に減少し,白内障手術前は633cells/mm2であった.術後2,6,12カ月の角膜内皮細胞減少率は+11.4,+14.7,+29.9%であった.術後30カ月までの期間,角膜内皮細胞は減少していなかった.III考按PEA+IOLの術後,約0.3%の症例にBKを発症するとの報告がある11).角膜内皮細胞密度の低い症例において,PEA+IOLはさらなる細胞密度の低下をもたらしBK発症の可能性があり,手術は困難であった.しかし近年の白内障手術機器の革新や,角膜内皮保護に有用とされるソフトシェル法の開発などの技術の進歩により,角膜内皮細胞数の少ない症例に対してもより積極的に手術が行われるようになってきた.白内障手術後の角膜内皮細胞減少率は過去の検討において平均7%前後と報告されている7,8).今回の検討では術後6カ月の角膜内皮細胞減少率は平均13.0%であり,過去の報告に比べて高い結果であった.理由としては,全例が浅前房の症例で前房深度2mm以下の例を15眼中12眼含んでいたこと,緑内障発作の既往がある例や両眼性もしくは進行性に角膜内皮細胞が減少していた例のように,術前より角膜内皮細胞の脆弱性が予測される例を含んでいたことが考えられた.今回の検討では手術前より進行性に角膜内皮細胞が減少していた例を3眼含んでいた.症例5のLI施行後の1眼では白内障手術後より角膜内皮細胞減少の進行が停止していた.過去に白内障手術により進行が停止したLI後の角膜内皮減少症の1例が報告されている12).LI後の房水灌流異常が白内障手術によって除去されたことにより角膜内皮細胞減少が図5症例2の超音波生体顕微鏡(UBM)写真4/4周に機能的隅角閉塞があった.図4症例1の術前後の細隙灯顕微鏡写真A:術前の細隙灯顕微鏡写真.B:術後の細隙灯顕微鏡写真.術後1カ月で水疱性角膜症を発症した.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010553(137)停止したと仮説づけられているが,今回筆者らが経験した症例もこの仮説を支持するものと考えた.症例3のFuchs角膜内皮ジストロフィが疑われた症例では,片眼は角膜内皮細胞の減少は進行し,片眼は経過観察中角膜内皮細胞の減少は進行しなかった.進行性の角膜内皮減少症に対する白内障手術の影響については報告が少なく,今後検討していく必要があると思われた.高度の角膜内皮障害を認める例における白内障手術は,リスクは高いものの良好な視力の維持や長期的な眼圧コントロールを得るためには必要な治療法である.最も適切な手術時期を決定するためにも今回の検討結果は有用な情報を与えると思われた.まとめ今回の検討では15眼中1眼でBKを発症し,術後6カ月の角膜内皮細胞減少率は最高40.0%,平均13.0%であった.高度の角膜内皮障害を有する症例においても白内障手術は視力の維持や良好な眼圧コントロールを得るためには必要な治療法であるが,術後のBK発症を考慮して行うことが求められると考えた.文献1)阿部春樹,桑山泰明,白柏基宏ほか:緑内障診療ガイドライン(第2版).日眼会誌110:779-814,20062)AlsaqoZ,AungT,AnqLPetal:Long-termclinicalcourseofprimaryangle-closureglaucomainanAsianpopulation.Ophthalmology107:2300-2304,20003)AngLP,HigashiharaH,SotozonoCetal:Argonlaseriri-dotomy-inducedbullouskeratopathyagrowingprobleminJapan.BrJOphthalmol91:1613-1615,20074)JacobiPC,PietleinTS,LukeCetal:Primaryphacoe-mulsicationandintraocularlensimplantationforacuteangle-closureglaucoma.Ophthalmology109:1597-1603,20025)NonakaA,KondoT,KikuchiMetal:Cataractsurgeryforresidualangleclosureafterperipherallaseriridotomy.Ophthalmology112:974-979,20056)NonakaA,KondoT,KikuchiMetal:Anglewideningandalterationofciliaryprocesscongurationaftercata-ractsurgeryforprimaryangleclosure.Ophthalmology113:437-441,20067)佐古博恒,清水公也:眼内レンズ移植眼における角膜内皮細胞の変化.IOL4:102-106,19908)池田芳良,三方修,内田強ほか:IOL挿入眼の角膜内皮細胞長期経過観察.IOL6:247-253,19929)ShimazakiJ,AmanoS,UnoTetal:NationalsurveyonbullouskeratopathyinJapan.Cornea26:274-277,200710)MiyataK,NagamotoT,MaruokaSetal:Ecacyandsafetyofthesoft-shelltechniqueincaseswithahardlensnucleus.JCataractRefractSurg28:1546-1550,200211)PoweNS,ScheinOD,GieserSCetal:Synthesisoftheliteratureonvisualacuityandcomplicationsfollowingcat-aractextractionwithintraocularlensimplantation.Cata-ractPatientOutcomeResearchTeam.ArchOphthalmol112:239-252,199412)園田日出男,中枝智子,根本大志:白内障手術により進行が停止したレーザー虹彩切開術後の角膜内皮減少症の1例.臨眼58:325-328,2004***