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急性リンパ性白血病寛解期に両眼に相次いで発症した浸潤性視神経症の1例

2016年7月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科33(7):1073〜1077,2016©急性リンパ性白血病寛解期に両眼に相次いで発症した浸潤性視神経症の1例仲嶺盛*1,2早坂香恵*1澤口昭一*2*1那覇市立病院眼科*2琉球大学大学院医学研究科・医科学専攻眼科学講座ACaseofSuccessivelyInvolvedInfiltrativeOpticNeuropathyinCompleteRemissionStageofAcuteLymphoblasticLeukemiaSakariNakamine1,2),KaeHayasaka1)andShoichiSawaguchi2)1)DepartmentofOphthalmology,NahaCityHospital,2)DepartmentofOphthalmology,RyukyuUniversitySchoolofMedicine症例は30歳,女性.急性リンパ性白血病の寛解期に軽度の右眼痛,頭痛を訴え眼科を受診した.右眼に軽度の乳頭浮腫と網膜血管の拡張,蛇行を認めた.経過中,右眼に急激な視力低下を訴え,再受診した.右眼の浸潤性視神経症が疑われ,放射線治療を行ったが失明に至った.右眼失明し放射線治療終了後の20日目に同様に左眼痛と頭痛・吐き気を訴え受診した.左眼にも同様に軽度の乳頭浮腫と網膜静脈の蛇行が出現した.浸潤性視神経症と診断し,早急に放射線治療(+髄腔内化学療法)を行い視機能を温存できた.Wereportacaseofa30-year-oldfemalewithbilateralinfiltrativeopticneuropathyduringcompleteremissionofacutelymphoblasticleukemia(ALL).Firstcomplainingofrightocularpainandheadache,shewasreferredtoanophthalmologist,showingmilddiscedemawithdilatedandtortuousretinalvesselsinherrighteye.Duringthefollowup,shecomplainedofsuddenvisuallossinherrighteye,stronglysuggestingALL-relatedinfiltrativeopticneuropathy.Radiationtherapywasthenapplied,butvisuallosscontinued.At20daysaftercompletionofradiationtherapy,sheagaincomplainedofleftocularpain,headacheandnausea.InfiltrativeopticneuropathyassociatedwithALLwasdiagnosed.Earlyradiationtherapywasappliedtogetherwithintra-thecalanticancerchemotherapy,andvisualfunctionwassustainedthereafter.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(7):1073〜1077,2016〕Keywords:急性リンパ性白血病,両眼性浸潤性視神経症,放射線治療,寛解期.acutelymphoblasticleukemia,bilateralinfiltrativeopticneuropathy,radiationtherapy,incompleteremissionstage.はじめに急性リンパ性白血病(acutelymphoblasticleukemia:ALL)の予後はその治療法の進歩により近年著しく改善した.一方で,生存期間の延長とともに白血病細胞の中枢神経への浸潤による再発は増加傾向にある.わが国においても中枢神経,とくに視神経にALLによる白血病細胞が浸潤する報告例が増加している1〜5).さらに急性骨髄性白血病,悪性リンパ腫の視神経浸潤の報告も増加している.その理由として,視神経は血液・脳(眼)関門内の組織であり,またその解剖学的特徴から抗癌剤全身投与の効果が及びにくいことがあげられている1,6).今回,筆者らは短期間に両眼に相ついで発症したALLによる浸潤性視神経症(infiltrativeopticneuropathy:If-ON)を経験し,早期発見および放射線治療を含めた早期治療の重要性を再確認した.これまでのIf-ONの報告と比較し,放射線治療を中心とした治療内容,治療までの期間とその予後を中心に検討し報告する.I症例患者は30歳,女性.既往症にALLがあり,以前に右眼黄斑部の出血を認めており,視力不良があった.ALLは全身化学療法により寛解していた.平成27年7月24日の定期受診時に軽度の右眼痛と頭痛を訴え,眼底には右網膜血管の軽度の拡張・蛇行,乳頭浮腫を認めた(図1).視力は右眼0.04(0.3×sph−6.0D(cyl−1.0DAx180°),左眼0.04(1.2×sph−5.0D(cyl−1.0DAx180°)であった.内科主治医からは,ALLは寛解期とのことであり,経過観察となった.8月3日起床時,右眼光覚を消失し再受診した.視力は右眼光覚なし,左眼矯正1.5であった.右眼眼底には高度の乳頭浮腫,網膜静脈の拡張・蛇行と火炎状網膜出血を認め,蛍光眼底検査では右眼網膜動・静脈はほぼ閉塞していた(図2).左眼眼底に異常は認めなかった.眼窩MRI造影検査(8月5日)では右眼視神経が眼窩内で著しく腫大し,視神経周囲に高信号を認めた(図3).末梢血を含めた検査データに異常はなく,ALLは血液学的寛解の状態であった.骨髄検査(8月18日)ではALL再発徴候はなかった.ALLの既往,眼科所見,MRI所見からIf-ONとそれに伴う網膜中心動・静脈閉塞症が強く疑われた.8月7日から2.0Gy×15回の右眼視神経照射を開始した.右眼痛,頭痛は放射線治療開始後消失したが,右眼視力は光覚なしであった.退院後20日目(9月24日)に左眼痛,頭痛・吐き気を主訴に再度受診した.眼底検査では左眼視神経乳頭に軽度の浮腫と網膜静脈の蛇行が観察された(図4).蛍光眼底検査は正常であった.造影MRI検査では右眼と同様に左眼視神経の腫大,視神経周囲の高信号を認めた(図5).髄液検査(9月25日)で白血病細胞が確認され,ALLの再発・再燃,左眼If-ONと診断された.9月25日より左眼視神経に2.0Gy×15回の放射線治療と26日より抗癌剤の髄腔内投与を開始した.放射線治療と抗癌剤髄注によって症状の消失,乳頭浮腫の改善と,左眼矯正視力1.2を維持している.II考按血液学的に寛解期のALL症例にIf-ONを両眼に相ついで発症した1例を経験した.If-ONは眼科的には視神経症,視神経乳頭炎様の所見を呈し,眼窩造影MRI検査が有用である.その臨床所見は症例ごとに多様であり,その診断に苦慮することも多く,治療開始の時期も症例ごとにさまざまである.多くの症例では視力低下を主訴に受診するが,本症例の右眼はもともと視力が不良のため患者の視力に関する訴えはなく,また内科的に寛解期にあったため診断に手間取った.CTあるいは造影CTだけでも進行例は十分診断可能であるとの報告もあり1,7),既往歴を考慮し,乳頭浮腫が確認された時点で早急にCTを含めた画像検査を行う必要がある.表1,2にわが国におけるIf-ONの報告をまとめ,この15症例27眼についてその臨床経過,治療までの期間,活動内容について検討した.まず,臨床所見として乳頭浮腫を24眼に認めた.また,眼底出血,網膜血管蛇行は19眼に,網膜中心動脈閉塞症(centralretinalarteryocculusion:CRAO)は2眼にそれぞれ認めた.今回の筆者らの症例を含め,眼底検査では軽度の乳頭浮腫,網膜血管の拡張・蛇行を見逃さないことが重要である.また,血液学的寛解期における発症は11眼であり,そのうち9眼では髄液検査で異常を認めなかった.本症例は血液学的寛解期に発症し,また左眼発症の際に髄液で白血病細胞を認めた.髄液検査陽性は確定診断に至るが,寛解期では多くの症例で陰性であることを理解する必要がある.眼窩CTやMRIで異常所見を認めた症例は25眼で,画像検査は診断のうえできわめて重要である.造影MRIは診断のうえで重要で,その所見として視神経腫脹や視神経周囲の増強効果を認め,また視神経周囲の白血病細胞の浸潤部位はMRI・shortT1inversionrecovery(STIR)像でリング状に白く描出される8).If-ONの治療としては,放射線治療と抗癌剤の髄腔内投与の併用が効果的である5,8,9).視神経は放射線感受性が低く,白血病細胞は放射線感受性が高いため発症早期からの放射線照射が推奨される1,4,5,10).一方,全身化学療法は抗癌剤が血液-脳関門を通過しにくいため効果が期待できず1,5),また髄腔内化学療法も単独ではその効果は期待できない4,5).表2に示すように,わが国ではほとんどの症例で放射線治療が行われている.ステロイドパルス治療は2例で行われているが,これは当初(特発性)視神経炎として診断・加療されていたが,その後の全身検査で胃癌からの転移であることが明らかとなった症例である.図6は治療前後のlogarithmofminimalangleofresolution(logMAR)視力変化である.放射線無治療群(▲・■)は放射線治療群(●)に比べ視力不良となる傾向がみられる.図7に放射線治療の開始時期をIf-ON発症から10日未満(●),10日〜1カ月(■),1カ月以上(▲)で記した.発症後1カ月以上経過してから放射線治療を開始した群(▲)では明らかに視力は不良であり,とくに2例はCRAOを発症した.視力低下を自覚した時点から放射線治療開始までの期間が,If-ONの視力予後を決定する重要な因子である1).今回の文献的検討からは発症後,可能な限り早期に,遅くとも1カ月以内に放射線治療を開始することが重要であり,その点からも早期発見・早期診断は重要である.白血病細胞によるIf-ONは血液学的寛解期においても発症することに十分留意し,わずかな患者の訴えや軽度の眼底所見の変化を見逃さず,疑わしいようであればMRIやCT検査による視神経の評価や髄液検査などを早期に行い診断・治療につなげる必要がある.文献1)中尾佳男,中林正雄,多田玲:放射線治療が奏効した浸潤性視神経症.臨眼33:853-858,19772)山崎有香里,山田晴彦,寺井実知子ほか:予防的な全脳脊髄放射線照射が無効で,再発時に浸潤性視神経症をみた急性リンパ性白血病の1例.眼紀54:60-64,20033)平野佳男,滝昌弘,高木規夫:白血病により視神経乳頭浮腫をきたした2例.臨眼57:691-695,20034)駒井潔,宮崎茂雄,青山さつきほか:放射線治療が有効であった白血病性視神経症の1剖検例.眼紀44:926-931,19935)NikaidoH,MishimaH,OnoHetal:Luekemicinvolvementoftheopticnerve.AmJOphthalmol105:294-298,19886)脇本直樹,吉田昌功,中村幸嗣ほか:視神経浸潤をきたし,放射線照射が奏効した急性骨髄性白血病の1例.臨放40:613-616,19957)松村明,木村章:乳頭浮腫を初発徴候とした浸潤性視神経症の2例.眼臨89:670-673,19958)徳丸阿耶,大内敏宏:Meningiealenhancement─最近の知見─.画像診断13:740-750,19939)MurrayKH,PaolinoF,GoldmanJMetal:Ocularinvolvementinleukemia.Reportofthreecases.Lancet16:829-831,197710)RosenthalAR:Ocularmanifestationofleukemia,Areview.Ophthalmology90:899-905,1983図1眼底写真(平成27年7月24日)定期検査の際の右眼底所見.軽度の乳頭浮腫と網膜静脈の軽度の怒張と蛇行が観察される.図2眼底写真(平成27年8月3日)右眼視力低下時の右眼底所見.乳頭浮腫,火炎状出血,高度の網膜静脈の怒帳と蛇行を認める.蛍光眼底検査(下)では後期相においても動脈・静脈造影は陰性であった.図3眼窩造影MRI(平成27年8月5日)右視神経に著しい腫脹を認め,脂肪抑制T1強調画像で右視神経周囲に造影効果を認める.図4眼底写真(平成27年9月24日)左眼に軽度の乳頭浮腫と軽度の網膜静脈の蛇行が観察される.蛍光眼底造影検査では異常なかった.図5眼窩造影MRI(平成27年9月24日)両側視神経の著しい腫脹を認め,脂肪抑制T1強調画像で両側視神経周囲に強い造影効果を認める.表1浸潤性視神経の過去の報告(15症例27眼)年齢性別病名罹患眼右左症例治療前治療後治療前治療後51M膠芽細胞腫両0.6SI+1.50.01平成3年石黒ら18MAML両1.5Sl−1.21.2平成7年松村ら57M悪性リンパ腫両0.011.50.011.5平成7年松村ら62FAPL両Sl+1.2mm1.2平成7年玉田ら42MAML両0.0110.1Sl−平成8年西勝ら60M悪性リンパ腫右Sl+11.21.2平成9年田中ら70M悪性リンパ腫右0.080.10.30.3平成10年飯野ら58M胃癌両0.9Sl+mmSl+平成10年辻ら62FAML両0.11.20.011.2平成11年岩崎ら14FAML両1.51.5mm0.04平成11年村田ら28FALL両11.20.150.9平成15年山崎ら44MAML両mm0.40.040.6平成15年平野ら18MALL両0.110.81.2平成16年井上ら59M胃癌両1.51.21.20.3平成20年木村ら74FAML右0.7mm0.90.9平成23年芳原ら浸潤性視神経の原疾患,治療前後の視力変化,報告年月をまとめた.表2表1の症例の治療内容(15症例27眼)放射線治療+化学療法(髄注)17(16)眼*放射線治療+骨髄移植2眼放射線治療+ステロイド3眼ステロイドパルス+化学療法1眼ステロイドパルスのみ4眼*放射線治療+化学療法(髄注)では17眼中,16眼において髄腔内投与が行われた.図6治療前後のlogMAR視力の変化放射線治療併用群(●),化学療法+ステロイド(■)とステロイドパルス(▲)の3群に分類し治療の効果を示した.放射線治療を併用しない群では視力の悪化傾向がみられる.図7放射線治療の開始時期とlogMAR視力による予後発症後10日以内,10日〜1カ月,1月以上の3群で検討した.とくに1カ月以上経過してから放射線治療を開始した群(▲)は視力がとくに不良であった.またこの中の2眼でCRAOを発症した.〔別刷請求先〕仲嶺盛:〒903-0125沖縄県中頭郡西原町字上原207番地琉球大学大学院医学研究科・医科学専攻眼科学講座Reprintrequests:SakariNakamine,DepartmentofOphthalmology,RyukyuUniversitySchoolofMedicine,207Uehara,Nishiharacho,Nakagami-gun,Okinawa903-0125,JAPAN0910-1810/16/¥100/頁/JCOPY(147)10731074あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(148)(149)あたらしい眼科Vol.33,No.7,201610751076あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(150)(151)あたらしい眼科Vol.33,No.7,20161077

高齢者に発生した視神経膠腫の1例(視交叉神経膠腫)

2009年1月31日 土曜日

———————————————————————-Page1(121)1210910-1810/09/\100/頁/JCLSあたらしい眼科26(1):121126,2009cはじめに成人の原発性視神経膠腫は,まれな疾患とされ1,2),小児では神経線維腫type1と関連し予後良好3,4)であるのと対照的に,通常は予後不良な悪性視神経膠腫57)とされている.初症状は突然の視力低下を呈し,急速に進行し,失明,死亡に至る812).眼底は,視神経炎や虚血性視神経症に似た所見〔視神経乳頭の浮腫,蒼白(萎縮)〕を呈する13).視路の神経膠腫の25%が視神経に限局し,残りが視交叉,視索に「浸潤する」13).今回筆者らは,視交叉部が原発と考えられた高齢者の神経膠腫症例を経験したので報告する.患者は発症時85歳と視神経膠腫の既報のなかでは最高齢の部類で,その原発部位が視交叉部であると推定されることから,その治療〔別刷請求先〕深作貞文:〒113-8602東京都文京区千駄木1-1-5日本医科大学眼科学教室Reprintrequests:SadafumiFukasaku,M.D.,D.MSc.,DepartmentofOphthalmology,NipponMedicalSchool,1-1-5Sendagi,Bunkyo-ku,Tokyo113-8602,JAPAN高齢者に発生した視神経膠腫の1例(視交叉神経膠腫)深作貞文*1,2藤江和貴*1前原忠行*3新井一*4若倉雅登*1*1井上眼科病院*2日本医科大学眼科学教室*3順天堂大学医学部放射線医学講座*4順天堂大学医学部脳神経外科学講座ACaseofPrimaryOpticGlioma(OriginatingintheChiasma)inan85-Year-OldFemaleSadafumiFukasaku1,2),WakiFujie1),TadayukiMaehara3),HajimeArai4)andMasatoWakakura1)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,NipponMedicalSchool,3)DepartmentofRadiology,JuntendoUniversity,SchoolofMedicine,4)DepartmentofNeurosurgery,JuntendoUniversity,SchoolofMedicine高齢女性での視交叉部神経膠腫を発症したまれな症例を経験したので報告する.症例は85歳,女性.左眼耳側の視野異常を主訴に井上眼科病院(以下,当院)に来院,前眼部は白内障を認め,眼底は左視神経乳頭がやや蒼白であった.左相対的瞳孔求心路障害(RAPD)陽性,左眼中心フリッカー値低下,Amsler検査で両耳側の暗点,Goldmann視野計にて両耳側半盲を認めた.以上より視交叉の病変を疑い,頭部磁気共鳴画像(MRI)を施行した.視交叉部視神経膠腫が強く疑われ,患者は順天堂大学病院(以下,同院)脳神経外科にて化学および,放射線治療を施行された.退院後当院眼科での経過観察中,再び左眼視力低下,フリッカー値低下をきたした.同院にて副腎皮質ステロイド薬治療を受けたが,状態は悪化し当院初診から1年後永眠した.高齢者の突然の視力低下を呈する疾患としては,視神経膠腫はきわめてまれであり,診断過程では画像検査(MRI)が有用であった.年齢と病変部位(視交叉部)を考慮して化学および,放射線治療が施行された.しかしながらこの疾患の予後は依然として不良であった.Wereportararecaseofopticchiasmalgliomainaveryelderlyfemale.Thepatient,85yearsofage,present-edwithtemporalvisualelddefectinherlefteye.Slit-lampexaminationdisclosedbilateralcataract;fundscopyrevealedapaleleftopticdisc.Inthelefteye,relativeaerentpupillarydefect(RAPD)waspositive,andcentralickerfrequency(CFF)waslow.Amsler’schartdisclosedbilateraltemporalscotoma.Goldmannperimetryrevealedbilateraltemporalhemianopia.Onthebasisofthesesignsandsymptoms,achiasmallesionwassuspected.Cranialmagneticresonanceimaging(MRI)stronglysuggestedanopticchiasmalglioma.Thepatientunderwentradiotherapyandchemotherapyatauniversityhospital.Duringpost-treatmentobservation,weagainfounddecreasedvisualacuityandCFFinthelefteye.Thepatientwasthereforehospitalizedandmedicatedwithste-roids.Despitethesemeasures,herconditiondeterioratedandshedied12monthsafterinitialpresentation.Primaryopticgliomasinveryelderlyindividuals,causeearlylossofvisionareveryrare.Insuchcases,cranialMRIwasusefulforearlydiagnosis.Consideringthispatient’sageandlesion(chiasmal),sheunderwentradiotherapyandchemotherapy.Nevertheless,thecourseofthediseaseinthiscasewasunsatisfactory.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(1):121126,2009〕Keywords:高齢者,視神経膠腫,視交叉,両耳側半盲,放射線治療.veryelderlyindividuals,opticglioma,opticchiasma,bitemporalhemianopia,radiotherapy.———————————————————————-Page2122あたらしい眼科Vol.26,No.1,2009(122)方針,および経過につき参考になると思われるものである.I症例呈示患者:85歳,女性.初診:2007年5月18日.主訴:左眼耳側の視朦.現病歴:近医にて左眼白内障と指摘され2種類の点眼にて経過観察されていた.以前はよく見えていたというが,井上眼科病院(以下,当院)受診の半月前から左眼の主訴を感じていた.上記主訴にて当院初診となった.家族歴・既往歴:特記すべきことはない.初診時所見:視力は,VD=0.04(0.09×sph+5.00D(cyl1.50DAx95°),VS=0.05(0.08×sph+3.75D(cyl1.25DAx95°),眼圧は正常(右眼=14mmHg,左眼=16mmHg),眼位は外斜視であった.瞳孔不同はなく,眼球運動の制限なく,円滑であった.対光反射は左右とも迅速,十分で,相対的入力瞳孔反射異常(RAPD)はなかった.前眼部は,深前房,両眼白内障(E2)があり,散瞳がやや不良であった.眼底は,乳頭,黄斑,周辺部に異常はなかった.Amslerチャートで両耳側に暗点,動的視野計にて両耳側半盲を呈していた(図1).フリッカー値は,右眼30Hz,左眼17Hzと左眼が有意に低下していた.視交叉病変が疑われ,頭部磁気共鳴画像法(MRI)を施行した.経過:再診時(2007年5月25日)視力は,VD=0.03(0.2×sph+5.00D(cyl1.50DAx95°),VS=0.02(0.09×sph+3.75D(cyl1.25DAx95°),静的視野計(Humphrey30-2fast-pac)にても両耳側半盲を認め,左眼は中心窩閾値が測定できなかった.MRI所見では,視交叉から右眼窩内視神経の腫大とガドリニウム増強効果を認め,視交叉は左右対称的に腫大と増強効果がみられた(図2,3).下垂体には図1動的量的視野所見両耳側半盲を呈している.図2井上眼科病院初診時MRIT1強調画像(Gd造影).矢印部に増強効果を呈している.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.1,2009123(123)異常なく,硬膜,髄膜に増強効果は認めなかった.画像診断では,視交叉から右眼窩内視神経腫瘍で,神経膠腫の凝いが強いとされた.鑑別疾患としては悪性リンパ腫,肉芽腫性疾患が指摘された.当院神経眼科医の精査では,瞳孔は3.5mm同大で,対光反射は直接反応が両眼ともに迅速であり,左眼のRAPDが陽性であった.フリッカー値は,右眼2933Hz,左眼17Hzと低下していた.眼底は,乳頭の色がやや蒼白であった.以上の経過より視交叉部神経膠腫疑いとし,順天堂大学病院(以下,同院)脳神経外科へ紹介した.同院入院治療経過:6月初診時の同院MRI所見にて視交叉部神経膠腫と診断された(図4).7月4日患者の両眼の視力低下が進行し(光覚弁),入院治療となった.治療は局所放射線療法が施行された.約1カ月間に48Gy(LINAC)照射された.同時に内服治療も試行され,開始時プレドニゾロン30mg/日であり,退院時は3mg/日となった.入院中の7月末の視力は,右眼(0.08),左眼(0.02)であり,MRI所見では腫瘍縮小を認め(図5),8月6日退院となった.9月に当院の再診時は,視力はVD=(0.09×sph+5.00D(cyl1.50DAx95°),VS=0.04(0.04×sph+3.75D(cyl1.25DAx80°),フリッカー値は右眼78Hz,左眼17Hzと両眼図3図2と同一症例のMRI(右視神経から視交叉部まで)T1強調画像(Gd造影).矢印部に右視神経の腫大がみられる.図4順天堂大学病院受診時MRIT1強調画像(Gd造影).視交叉部の腫大を認める.———————————————————————-Page4124あたらしい眼科Vol.26,No.1,2009(124)がともに有意に低下していた.このときは右眼にRAPDが陽性であり,白内障(右眼に強い)を認め,左視神経乳頭は蒼白を呈していた.静的視野計は中心固視点が見えず計測できなかった.腫瘍が再び増大した可能性もあり,同院に再紹介となった.9月にテモダール療法のため入院となり,5日間100mg/日を内服した.その後全身倦怠感や胸部不快感があり,再度入院して点滴治療を行った.通院中も視力,視野に関しては改善傾向は認めなかった.さらにMRIで脳幹部にも造影効果を受ける部位も出現し,視交叉の病変も増大していたが,プレドニゾロン10mg投与で軽度改善した.12月末に全身状態悪化から入院し,視力は光覚弁であった.退院後自宅近くの病院で保存的治療を受けていたが,6月腫瘍の播種による頭蓋内ヘルニアをきたし,自宅にて永眠した.II考按成人の原発性視神経膠腫(opticglioma)は,中枢神経腫瘍の1%を占める1,2)まれな疾患である.小児では,毛様性星状細胞腫(pilocyticastrocytoma)で神経線維腫type1と関連し予後良好3,4)であるのに対し,一方,成人では予後不良な悪性視神経膠腫〔悪性星状細胞腫(astrocytoma)〕57)で,多くが数カ月以内に失明し,1年以内に死亡する812).特徴的な所見として,急激な視力低下,および視神経炎や虚血性視神経症に似た眼底所見〔視神経乳頭の浮腫,蒼白(萎縮)〕を呈することが知られている13).この時点では乳頭に異常所見が現れないものも多い9).悪性視神経膠腫の鑑別診断として,突然の視力低下を示すものでは,視神経炎,虚血性視神経症がある8,10,13).本症例でも,白内障で経過観察中に,両耳側の視野異常,視力の急速な低下という初期症状を呈しており,視神経乳頭は正常所見でRAPD陽性,フリッカー値の低下,静的および動的視野計での両耳側半盲所見に加え,MRIによる画像診断によって視神経膠腫が強く疑われたものであった.視神経膠腫の徴候や症状は,通常その腫瘍の解剖的浸潤程度に相関しているとされ,一側の遠位側の視神経が腫瘍に巻き込まれると片側の視機能不全をきたし(視力低下70%,視野欠損43%),眼底検査で,乳頭浮腫(41%),静脈の捩れ,視神経萎縮(14%),腫瘍による閉塞性乳頭血管の虚血性梗塞を呈することもある9,10).本症例の視交叉部神経膠腫でも左眼の乳頭において初診時は白色調,3カ月後は蒼白であった.本疾患の診断においては,早期のMRI画像が強力な手段である12,14).悪性視神経膠腫では,T1強調画像で脳実質と等信号輝度から低信号輝度,T2強調画像では,高信号輝度を示し,ガドリニウム造影剤ではわずかに増強される15,16).Anaplasticastrocytomでは,造影剤で増強される肥厚した視神経や,視交叉,鞍上部の腫瘍がみられる10,15).実際に本症例の当院初診時のT1強調造影画像では,視交叉において左右対称的に腫大と増強効果がみられていた.ここで先にあげた鑑別診断を検討した.虚血性視神経症の初期では眼窩内の腫瘍性病変を疑わせる他覚的所見を通常欠如しているとさ図5図4と同一症例の退院時MRIT1強調画像(Gd造影).放射線療法後腫瘍は縮小した.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.1,2009125(125)れ9),多発性硬化症で特徴的な側脳室周辺の病変が,本症例のMRIではみられない10).また視神経炎では,突然の視力低下,乳頭腫脹に加え球後痛がみられ,副腎皮質ステロイド薬の静脈注射で視力は急速に回復することが多い9).これらの病態と比較検討してみると,この症例では球後痛はなく,視力も結果的に回復しなかったことから,本症例においては,視神経炎や虚血性視神経症は否定的であった.しかしながら,悪性視神経膠腫はまれな症例であるため,開頭術や生検を施行する前に,診断がつくのはごく限られた症例となっている14,17,18).治療では,眼窩内視神経に限局するもの(前部型)では経過観察し,症状の進行があった場合外科的切除,放射線療法,化学療法併用(アクチノマイシン,ビンクリスチン)を行うが,視交叉,視索に発生あるいは浸潤したもの(後部型)では腫瘍の根治はむずかしく,外科的治療は限界があり,放射線治療を含むadjuvant療法が利用される12,14,17,19).小児例では自然治癒もあり,臨床的に症状悪化がみられた場合は手術も行われ,予後は比較的良好である3,11,19)が,反対に成人の悪性視神経膠腫は視交叉,視索に沿って急速に視交叉,下垂体に浸潤するとされる8,13,16).これらのことを考慮すると病変を縮小させるための手術は疑問とされ,腫瘍の部分摘出術の危険性は,生検術に比して疑いなく大きいと考えられている14,17).一方では,放射線療法はより良い術後療法とみられており,施行された患者は,されない場合に比べてより長い生存率を示している17).放射線療法を施行された患者の平均生存率期間は,9.7カ月とされ,化学療法を併用した場合としない場合では,それぞれ12.2カ月,8.8カ月との報告もあるが,統計的に有意ではないとされる9).放射線治療を施行する場合,最適な放射線量は57Gy,または54Gy以下とされ,その量では周辺組織のダメージを避けることができる1,2,14,20).病変が片側の場合には補助的療法も残りの対眼を維持するために考慮される必要がある.本症例では,年齢(85歳)と,また家族の意向もあり,手術ではなく放射線治療が同院で施行された.現在可能な治療法では予後を改善することはできないが,部分的には放射線治療で病状進行の抑制はできる10).今回本患者には,約33日間で48Gyが照射された.照射後の患者の自覚所見は改善がみられ,眼底は,視神経乳頭がなお蒼白を呈していたが,その他の副作用であるⅢ,Ⅳ,Ⅵ脳神経の障害などは確認されていない.本症例では2回目の入院以後は,視力は光覚弁となっていた.その後も同院にて副腎皮質ステロイド薬による内科的治療を受けていたが,12月末に全身状態悪化から入院した.ただ意識は清明であり,流動食によって体力は維持されていた.退院後は,自宅近くの病院で保存的治療を受けていたが,6月初旬に腫瘍の播種による頭蓋内ヘルニアをきたし,自宅にて永眠した.当院初診から約1年であった.悪性視神経膠腫の確定診断は,開頭術による生検でなされる(前述).その組織形はglioblastomaや,低悪性度astro-cytomaが報告されてきた8,10).成人の視神経膠腫の予後は不良であり,平均生存期間はanaplasticastrocytomaで8.1カ月,glioblastomaで8.3カ月と報告されている10,14).本症例の患者は発症時85歳と視神経膠腫の既報のなかでは最高齢の部類に入り,また疾患の原発部位が,片側の視神経から視交叉部であると推定され,以上の点により当疾患の診断過程,他の疾患との鑑別点,治療方針,および経過につき眼科的に参考になると思われるものである.文献1)SafneckJR,NapierLB,HallidayWC:Malignantastrocy-tomaoftheopticnerveinachild.CanJNeurolSci19:498-503,19922)HamiltonAM,GarnerA,TripathiRCetal:Malignantopticnerveglioma.BrJOphthalmol57:253-264,19733)RushJA,YoungeBR,CampbellRJetal:Opticglioma:long-termfollow-upof85histopathologicallyveriedcases.Ophthalmology89:1213-1219,19824)EggersH,JakobiecFA,JonesIS:Opticnervegliomas.DiseasesoftheOrbit(edbyJonesIS,JakobiecFA),p417-433,Harper&Row,NewYork,19795)RuddA,ReesJE,KennedyPetal:Malignantopticnervegliomasinadults.JClinNeuro-ophthalmol5:238-243,19856)CummingsTJ,ProvenzaleJM,HunterSBetal:Gliomasoftheopticnerve:histological,immunnohistochemical(MIB-1andp53),andMRIanalysis.ActaNeuropathol99:563-570,20007)SpoorTC,KennerdellJS,MartinezAJetal:Malignantgliomasoftheopticnervepathways.AmJOphthalmol89:284-292,19808)HoytWF,MeshelLG,LessellSetal:Malignantopticgliomaofadulthood.Brain96:121-132,19739)WabbelsB,DemmlerA,SeitzJetal:Unilateraladultmalignantopticnerveglioma.GraefesArchClinExpOph-thalmol242:741-748,200410)HartelPH,RosenC,LarzoCetal:Malignantopticnerveglioma(Glioblastomamultiforme):Acasereportandlit-eraturereview.WVaMedJ102:29-31,200611)AlbersGW,HoytWF,FornoLSetal:Treatmentresponseinmalignantopticgliomaofadulthood.Neurolo-gy38:1071-1074,198812)AstrupJ:Naturalhistoryandclinicalmanagementofopticpathwayglioma.BrJNeurosurg17:327-335,200313)KosmorskyGS,MillerNR:Inltrativeopticneuropathies.Walsh&Hoyt’sClinicalNeuro-Ophthalmology(edbyMillerNR,NewmanNJ),Chapter15:681-689,Williams&Wilkins,Baltimore,199814)MiyamotoJ,SasajimaH,OwadaKetal:Surgicaldecisionforadultopticgliomabasedon[18F]uorodeoxyglucose———————————————————————-Page6126あたらしい眼科Vol.26,No.1,2009(126)positronemissiontomographystudy─casereport─.Neu-rolMedChir(Tokyo)46:500-503,200615)TanakaA:Imagingdiagnosisandfundamentalknowl-edgeofcommonbraintumorsinadults.RadiatMed24:482-492,200616)中尾雄三:腫瘍による視神経症.眼科プラクティス,第5巻これならわかる神経眼科(根木昭編),p198-201,文光堂,200517)DarioA,IadiniA,CeratiMetal:Malignantopticgliomaofadulthood.Casereportandreviewofliterature.ActaNeurolScand100:350-353,199918)ManorRS,IsraeliJ,SandbankU:Malignantopticgliomaina70-year-oldpatient.ArchOphthalmol94:1142-1144,197619)宮崎茂雄:視神経膠腫.眼科診療プラクティス眼科診療ガイド(丸尾敏夫,本田孔士臼井正彦,田野保雄編),p467,文光堂,200420)北島美香:中枢神経系放射線治療後の変化.画像診断26:922-931,2006***